(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022400
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ジバニリン酸由来のポリエステル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 63/06 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
C08G63/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125956
(22)【出願日】2022-08-05
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (その1) ウェブサイトの掲載日 令和4年3月1日 ウェブサイトのアドレス https://www.jwrs.org/wood2022/index.html (その2) 集会名 第72回日本木材学会大会(オンライン開催) 開催日 令和4年3月15日~令和4年3月17日(公開日は令和4年3月16日) (その3) ウェブサイトの掲載日 令和4年5月10日 ウェブサイトのアドレス https://member.spsj.or.jp/convention/spsj2022/ (その4) 集会名 第71回高分子学会年次大会(オンライン開催) 開催日 令和4年5月25日~令和4年5月27日(公開日は令和4年5月25日)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 委託研究、ムーンショット型研究開発事業、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現/生分解開始スイッチ機能を有する海洋分解性プラスチックの研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受けるもの
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎本 有希子
(72)【発明者】
【氏名】岩田 忠久
(72)【発明者】
【氏名】藤枝 謙太郎
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA02
4J029AA05
4J029AB01
4J029AD01
4J029AE01
4J029AE03
4J029BA02
4J029BA03
4J029BA04
4J029BA05
4J029BA07
4J029CA02
4J029CA03
4J029CA04
4J029CA05
4J029CA06
4J029CA09
4J029EF04
4J029FC38
4J029HA07
4J029JA091
4J029JB131
4J029JC712
4J029JF321
4J029JF371
4J029JF471
4J029KD02
4J029KE02
4J029KE05
4J029KH01
(57)【要約】
【課題】新規なジバニリン酸由来のポリエステルを提供する。
【解決手段】
式(1)で表され、重量平均分子量が10000以上である重合体。
(式(1)中、R
1は炭素数1~20の炭化水素鎖であり、nは1以上の整数を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表され、重量平均分子量が10000以上である重合体。
【化1】
(式(1)中、R
1は炭素数1~20の炭化水素鎖であり、nは1以上の整数を表す。)
【請求項2】
R1が炭素数1~20の脂肪族炭化水素鎖である請求項1に記載の重合体。
【請求項3】
窒素雰囲気下での熱重量分析において、質量減少率が5%になるときの温度が350℃以上である請求項1又は2に記載の重合体。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の重合体の水酸基をエステル化、カーボネート化、エーテル化、シリル化、ウレタン化、又はアセタール化した請求項1又は2に記載の重合体の誘導体。
【請求項5】
式(2)で表されるジバニリン酸ジメチルの水酸基をシリル保護基で保護した化合物。
【化2】
(式(2)中、X
1はトリエチルシリルよりもかさ高いシリル保護基である)
【請求項6】
生分解性を有する請求項1に記載の重合体。
【請求項7】
式(2)で表されるジバニリン酸ジメチルの水酸基をシリル保護基で保護した化合物と、式(3)で表されるジオールとを重合させる工程、および
【化3】
(式(2)中、X
1はトリエチルシリルよりもかさ高いシリル保護基である)
【化4】
(式(3)中、R
1は炭素数1~20の炭化水素鎖である。)
得られた式(4)で表される重合体のシリル保護基を脱保護し、式(1)で表される重合体を得る工程
【化5】
(式(4)中、X
1はトリエチルシリルよりもかさ高いシリル保護基であり、R
1は炭素数1~20の炭化水素鎖であり、nは1以上の整数を表す。)
【化6】
(式(1)中、R
1は炭素数1~20の炭化水素鎖であり、nは1以上の整数を表す。)
を含む、式(1)で表され、重量平均分子量が10000以上である重合体の製造方法。
【請求項8】
式(5)で表される共重合体。
【化7】
(式(5)中、R
1は炭素数1~20の炭化水素鎖であり、R
2は炭素数1~20の炭化水素鎖であり、式(5)中の各構成単位のモル比率がm/(m+n)=0.001~0.999、m/(m+n))が0.001~0.999である)。
【請求項9】
重量平均分子量が10000以上である請求項8に記載の共重合体。
【請求項10】
生分解性を有する請求項9に記載の共重合体。
【請求項11】
式(2)で表されるジバニリン酸ジメチルの水酸基をシリル保護基で保護した化合物、式(3)で表されるジオール、および式(6)で表されるジカルボン酸又はジカルボン酸ジエステルを混合し、重合させる工程、および
【化8】
(式(2)中、X
1はトリエチルシリルよりもかさ高いシリル保護基である)
【化9】
(式(3)中、R
1は炭素数1~20の炭化水素鎖である。)
【化10】
(式(6)中、R
2は炭素数1~20の炭化水素鎖であり、R
3は水素又は炭化水素基である。)
得られた式(7)で表される重合体のシリル保護基を脱保護し、式(5)で表される共重合体を得る工程
【化11】
(式(7)中、X
1はトリエチルシリルよりもかさ高いシリル保護基であり、R
1は炭素数1~20の炭化水素鎖であり、R
2は炭素数1~20の炭化水素鎖であり、nは1以上の整数を表す。)
【化12】
(式(5)中、R
1は炭素数1~20の炭化水素鎖であり、R
2は炭素数1~20の炭化水素鎖であり、式(5)中の各構成単位のモル比率がm/(m+n)=0.001~0.999、m/(m+n))が0.001~0.999である)。
を含む、式(5)で表される共重合体の製造方法。
【請求項12】
請求項1に記載の重合体又は請求項8に記載の共重合体を含む成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジバニリン酸由来のポリエステル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油由来のプラスチックの大量消費の見直しから、バイオマスプラスチックおよび生分解性プラスチックを含む種々のバイオプラスチックが開発されている。高耐熱性のバイオプラスチックも開発されていたが、生分解性ポリエステルの耐熱性を上げることを目的として芳香族単位をポリエステル分子鎖に導入すると、得られたポリエステルは生分解性を失うという課題があった。
【0003】
バイオマス由来かつ生分解性を示す高耐熱性プラスチックの開発において、本発明者らは、ジバニリン酸メチルに種々のクロロシランを作用させ、ジバニリン酸メチルの水酸基をシリル基で保護したモノマーを重合することによる、生分解性を有し、かつ耐熱性が向上されたポリエステルの合成に成功した(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】第70回高分子学会年次大会 2021年5月27日 ポスター発表 2Pa075
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1では、4種類のトリアルキルクロロシランの各々をシリル化剤として使用したが、水酸基がトリエチルシリル基により保護されたモノマーの場合にしか重合が進行しなかった。しかも、水酸基がトリエチルシリル基により保護されたモノマーの重合の時間や温度を変更しても、最大でも重量平均分子量が8600のポリマーしか合成することができなかった。
【0006】
本発明が解決すべき課題は、生分解性を有し、かつ耐熱性が向上された新規な重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に記載の実施形態を包含する。
項1.
式(1)で表され、重量平均分子量が10000以上である重合体。
【0008】
【0009】
(式(1)中、R1は炭素数1~20の炭化水素鎖であり、nは1以上の整数を表す。)
項2.
R1が炭素数1~20の脂肪族炭化水素鎖である項1に記載の重合体。
項3.
窒素雰囲気下での熱重量分析において、質量減少率が5%になるときの温度が350℃以上である項1又は2に記載の重合体。
項4.
項1又は2に記載の重合体の水酸基をエステル化、カーボネート化、エーテル化、シリル化、ウレタン化、又はアセタール化した項1又は2に記載の重合体の誘導体。
項5.
式(2)で表されるジバニリン酸ジメチルの水酸基をシリル保護基で保護した化合物。
【0010】
【0011】
(式(2)中、X1はトリエチルシリルよりもかさ高いシリル保護基である)
項6.
生分解性を有する項1に記載の重合体。
項7.
式(2)で表されるジバニリン酸ジメチルの水酸基をシリル保護基で保護した化合物と、式(3)で表されるジオールとを重合させる工程、および
【0012】
【0013】
(式(2)中、X1はトリエチルシリルよりもかさ高いシリル保護基である)
【0014】
【0015】
(式(3)中、R1は炭素数1~20の炭化水素鎖である。)
得られた式(4)で表される重合体のシリル保護基を脱保護し、式(1)で表される重合体を得る工程
【0016】
【0017】
(式(4)中、X1はトリエチルシリルよりもかさ高いシリル保護基であり、R1は炭素数1~20の炭化水素鎖であり、nは1以上の整数を表す。)
【0018】
【0019】
(式(1)中、R1は炭素数1~20の炭化水素鎖であり、nは1以上の整数を表す。)
を含む、式(1)で表され、重量平均分子量が10000以上である重合体の製造方法。
項8.
式(5)で表される共重合体。
【0020】
【0021】
(式(5)中、R1は炭素数1~20の炭化水素鎖であり、R2は炭素数1~20の炭化水素鎖であり、式(5)中の各構成単位のモル比率がm/(m+n)=0.001~0.999、m/(m+n))が0.001~0.999である)。
項9.
重量平均分子量が10000以上である項8に記載の共重合体。
項10.
生分解性を有する項9に記載の共重合体。
項11.
式(2)で表されるジバニリン酸ジメチルの水酸基をシリル保護基で保護した化合物、式(3)で表されるジオール、および式(6)で表されるジカルボン酸又はジカルボン酸ジエステルを混合し、重合させる工程、および
【0022】
【0023】
(式(2)中、X1はトリエチルシリルよりもかさ高いシリル保護基である)
【0024】
【0025】
(式(3)中、R1は炭素数1~20の炭化水素鎖である。)
【0026】
【0027】
(式(6)中、R2は炭素数1~20の炭化水素鎖であり、R3は水素又は炭化水素基である。)
得られた式(7)で表される重合体のシリル保護基を脱保護し、式(5)で表される共重合体を得る工程
【0028】
【0029】
(式(7)中、X1はトリエチルシリルよりもかさ高いシリル保護基であり、R1は炭素数1~20の炭化水素鎖であり、R2は炭素数1~20の炭化水素鎖であり、nは1以上の整数を表す。)
【0030】
【0031】
(式(5)中、R1は炭素数1~20の炭化水素鎖であり、R2は炭素数1~20の炭化水素鎖であり、式(5)中の各構成単位のモル比率がm/(m+n)=0.001~0.999、m/(m+n))が0.001~0.999である)。
を含む、式(5)で表される共重合体の製造方法。
項12.
項1に記載の重合体又は項8に記載の共重合体を含む成形体。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、耐熱性を有する新規な芳香族ポリエステルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】トリイソプロピルシリルにより水酸基を保護したジバニリン酸ジメチルのH
1H NMRデータ。
【
図2】(a)トリイソプロピルシリルにより水酸基を保護したジバニリン酸ジメチルのポリマーP6DVA-TIPSの
1H NMRデータ。(b)脱保護した(a)のポリマーP6DVAの
1H NMRデータ。
【
図3】P6DVA-TIPSフィルム(左)およびP6DVAフィルム(右)をプレスしたときの写真。
【
図4】ポリマーP6DVA-TIPSおよびP6DVAの各々の熱重量分析(TGA)のグラフ。
【
図5】ポリマーP6DVA-TIPSおよびP6DVAの各々の示差走査熱量測定(DSC)のグラフ。
【
図6】各種試料の経時的なBOD分解率を示すグラフ。
【
図8】反応前のP6DVAとアセチル基を導入したポリエステル(P6DVA-Ac)のFT-IRスぺクトル。
【
図9】PHADV50ポリマーのNMRスペクトル。
【
図10】各種PHADVポリマーの熱重量分析(TGA)のグラフ。
【
図11】各種PHADVポリマーの示差走査熱量測定(DSC)のグラフ。
【
図12】熱プレスしたフィルム。(左)PHADV25、(中央)PHADV50、(右)PHADV75
【
図13】PHADV50フィルムの応力-ひずみ曲線。
【
図14】PHADV25、PHAT25、PHAT50の各フィルムの酵素分解による経時的な重量減少率のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書において、「生分解」とは、「細胞の作用から生じる酵素処理によって引き起こされる分解」を指し、これはIUPACの定義に従う(Pure Appl. Chem., Vol. 84, No. 2, pp. 377-410, 2012.)。生分解には微生物による分解が含まれる。
【0035】
本明細書において、別段の定めがない場合、「重量平均分子量」とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定される重量平均分子量を指す。
【0036】
本明細書において、「トリエチルシリルよりもかさ高いシリル保護基」とは、以下の(i)又は(ii)のいずれか、または両方の要件を満たすシリル保護基を指す:
(i)シリル保護基のケイ素原子と結合している3つの官能基のうちの少なくともいずれか一つの官能基がエチル基の炭素数の合計である2より多いシリル保護基
(ii)シリル保護基のケイ素原子と結合している3つの官能基中の炭素数の総和がトリエチルシリル基の炭素数の合計である6より大きい官能基であるシリル保護基
本発明らは、木材中の成分であるリグニンとよばれる芳香族ポリマーが、フェノール性水酸基でのラジカル発生を起点として、木材腐朽菌により分解を受けることに着目した。リグニンの部分構造と同じ化学構造を有するジバニリン酸由来の構成単位が、水酸基を有するまま重合体の分子鎖に導入された新規ポリエステルを合成した。
【0037】
一態様において、本開示は、式(1)で表され、重量平均分子量が10000以上である重合体に関する。
【0038】
【0039】
(式(1)中、R1は炭素数1~20の炭化水素鎖であり、nは1以上の整数を表す。)
一つの実施形態において、R1は好ましくは炭素数1~20の脂肪族炭化水素鎖、炭素数1~20の脂環式炭化水素鎖、または炭素数1~20の芳香族炭化水素鎖であり、より好ましくは炭素数1~12の脂肪族炭化水素鎖、炭素数1~12の脂環式炭化水素鎖、または炭素数1~12の芳香族炭化水素鎖であり、さらにより好ましくは炭素数1~6の脂肪族炭化水素鎖、炭素数1~6の脂環式炭化水素鎖、または炭素数5又は6の芳香族炭化水素鎖である。
【0040】
R1が炭素数1~20の脂肪族炭化水素の場合は、製造の容易さ及び生分解性の点で好ましい。
【0041】
一つの実施形態において、R1は好ましくは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~20の脂肪族炭化水素鎖、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~20の脂環式炭化水素鎖、または炭素数1~20の芳香族炭化水素鎖であり、より好ましくは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~12の脂肪族炭化水素鎖、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~12の脂環式炭化水素鎖、または炭素数1~12の芳香族炭化水素鎖であり、さらにより好ましくは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~6の脂肪族炭化水素鎖、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~6の脂環式炭化水素鎖、または炭素数5又は6の芳香族炭化水素鎖である。
【0042】
別の実施形態において、R1は好ましくは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~20の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素鎖、より好ましくは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~12の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素鎖、さらにより好ましくは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~6の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素鎖である。
【0043】
一つの実施形態において、式(1)で表される重合体の重量平均分子量は、20000以上、30000以上、または35000以上である。
【0044】
一つの実施形態において、式(1)で表される重合体の重量平均分子量は、
2000000以下、1000000以下、または500000以下である。
【0045】
一つの実施形態において、式(1)で表される重合体の重量平均分子量は、10000以上、かつ2000000以下である。
【0046】
一つの実施形態において、式(1)で表される重合体の重量平均分子量は、20000以上、かつ1000000以下である。
【0047】
一つの実施形態において、式(1)で表される重合体の重量平均分子量は、30000以上、かつ500000以下である。
【0048】
式(1)で表された重合体は、10000以上という従来よりも大きい重量平均分子量を有するジバニリン酸由来の構成単位中に水酸基を保持したポリエステルである。
【0049】
式(1)で表された重合体は、ジバニリン酸由来の構成単位の代わりに脂肪族カルボン酸又は脂肪族カルボン酸エステル由来の構成単位を有する重合体に比べて、ジバニリン酸由来の構成単位を有するため、耐熱性が高い。また、式(1)で表され、重量平均分子量が10000以上である重合体は、ジバニリン酸由来の構成単位中に水酸基を保持したポリエステルであるため、ポリエステルの加水分解で生じるジバニリン酸由来のモノマー自体が生分解性を示すだけでなく、ジバニリン酸由来の構成単位が木材腐朽菌やリグニン分解酵素などの分解を受けて分子鎖が開裂あるいは分解され得るため、生分解性を備え得る。
【0050】
一つの実施形態において、式(1)で表された重合体は、窒素雰囲気下での熱重量分析において、質量減少率が5%になるときの温度が295℃以上である。
【0051】
一つの実施形態において、式(1)で表された重合体は、窒素雰囲気下での熱重量分析において、質量減少率が5%になるときの温度が350℃以上である。
【0052】
一つの実施形態において、式(1)で表された重合体は、窒素雰囲気下での熱重量分析において、質量減少率が5%になるときの温度が380℃以上である。
【0053】
一つの実施形態において、式(1)で表された重合体は、ガラス転移点が108℃以上である。
【0054】
一つの実施形態において、上記重合体の水酸基を修飾した上記重合体の誘導体が提供される。水酸基の修飾には、エステル化、カーボネート化、エーテル化、シリル化、ウレタン化、アセタール化などが挙げられる。
【0055】
重合体の水酸基のエステル化には公知のエステル化剤が使用され、そのようなエステル化剤としては、カルボン酸、カルボン酸無水物などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0056】
重合体の水酸基のカーボネート化には、例えばフェニルクロロフォルメートなどが使用されるが、これに限定されない。
【0057】
重合体の水酸基のエーテル化には、例えばヨウ化エチル、ベンジルクロリドなどが使用されるが、これに限定されない。
【0058】
重合体の水酸基のシリル化には、公知のシリル化剤を使用することができる。
【0059】
別の態様において、本開示は、式(1)で表され、重量平均分子量が10000以上である重合体の製造方法に関する。
【0060】
(第1工程)
まず、上記製造方法は、式(2)で表される化合物を提供する工程を含む。この化合物は、ジバニリン酸ジメチルの水酸基をシリル保護基で保護した化合物である。
【0061】
【0062】
(式(2)中、X1はトリエチルシリルよりもかさ高いシリル保護基である)
一つの実施形態において、X1はシリル保護基のケイ素原子と結合している3つの官能基のうちの少なくともいずれか一つの官能基が3以上であるシリル保護基である。
【0063】
一つの実施形態において、X1はシリル保護基のケイ素原子と結合している3つの官能基中の炭素数の総和が7以上であるシリル保護基である。
【0064】
X1は好ましくは、(R1)(R2)(R3)-Si-で表され、好ましくはトリプロピルシリル、トリイソプロピルシリル、ジメチルブチルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、ジブチルエチルシリル、トリブチルシリル、tert-ブトキシジフェニルシリル、tert-ブチルジフェニルシリル、ジメチルオクタデシルシリル、ベンジルジメチルシリル、ジメチルフェニルシリルなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0065】
ジバニリン酸ジメチルの水酸基のシリル保護基による保護は、ジバニリン酸ジメチルと、シリル化剤とを、塩基試薬の存在下で有機溶媒中で混合することにより行われることが好ましい。塩基試薬としては、イミダゾール、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジンなどが挙げられるがこれらに限定されない。有機溶媒としては、テトラヒドロフランTHF、DMF(N,N-ジメチルホルムアミド)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、シクロヘキサンなどが挙げられるがこれらに限定されない。ジバニリン酸ジメチルとシリル化剤との反応温度は0~100℃が好ましく、0~40℃がより好ましいがこれらに限定されない。反応時間は、0℃~100℃が好ましいがこれに限定されない。
【0066】
有機溶媒の量は特に限定されないが、ジバニリン酸ジメチル1モルに対して1~3Lであることが好ましい。
【0067】
シリル化剤は、(R1)(R2)(R3)-Si-Xで表されるシリル化剤の、(R1)(R2)(R3)-Si-の部分が、トリエチルシリルに比べてかさ高いものが好ましい。R1、R2、およびR3はそれぞれアルキル基、フェニル基又はベンジル基であり、かつXは塩素、臭素、アミン、トリフラート基であることが好ましい。好ましいシリル化剤の例としては、例えばトリイソプロピルシリルクロリド(TIPS)、tert-ブチルジメチルシリルクロリド(TBDMS)などのシリルクロリド;トリブチルクロロシラン、tert-ブトキシジフェニルクロロシラン、tert-ブチルジフェニルクロロシラン、ジメチルオクタデシルクロロシラン、ベンジルクロロジメチルシラン、クロロジメチルフェニルシランなどのクロロシラン;トリプロピルシリルアミン、トリブチルシリルアミン、ジメチルブチルシリルアミン、ジブチルエチルシリルアミン、1,3-ジフェニルテトラメチルジシラザンなどのシリルアミン;トリイソプロピルシリルトリフラート、ジエチルイソプロピルシリルトリフラート、tert-ブチルジメチルシリルトリフラート、トリフルオロメタンスルホン酸tert-ブチルジフェニルシリルなどのシリルトリフラート;などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0068】
シリル化剤の量は特に限定されないが、ジバニリン酸ジメチル1モルに対して2~10当量であることが好ましい。
【0069】
第1工程で得られた式(2)で表される化合物は、後続の第2工程の重合反応を促進するために、精製することがさらに好ましい。精製は、カラムクロマトグラフィー、再結晶などの公知の方法であってよい。式(2)で表される化合物の純度を挙げることで、第2工程の重合反応が促進され、より高分子量の式(1)で表される重合体を製造することができる。
【0070】
(第2工程)
次に、上記製造方法は、式(2)で表される化合物と、式(3)で表されるジオールとを重合させる工程を含む。
【0071】
【0072】
(式(3)中、R1は炭素数1~20の炭化水素鎖である。)
R1は式(1)のR1に関して説明した通りである。
【0073】
一つの実施形態において、R1は好ましくは炭素数1~20の脂肪族炭化水素鎖、炭素数1~20の脂環式炭化水素鎖、または炭素数1~20の芳香族炭化水素鎖であり、より好ましくは炭素数1~12の脂肪族炭化水素鎖、炭素数1~12の脂環式炭化水素鎖、または炭素数1~12の芳香族炭化水素鎖であり、さらにより好ましくは炭素数1~6の脂肪族炭化水素鎖、炭素数1~6の脂環式炭化水素鎖、または炭素数5又は6の芳香族炭化水素鎖である。
【0074】
R1が炭素数1~20の脂肪族炭化水素の場合は、製造の容易さ及び生分解性の点で好ましい。
【0075】
一つの実施形態において、R1は好ましくは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~20の脂肪族炭化水素鎖、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~20の脂環式炭化水素鎖、または炭素数1~20の芳香族炭化水素鎖であり、より好ましくは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~12の脂肪族炭化水素鎖、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~12の脂環式炭化水素鎖、または炭素数1~12の芳香族炭化水素鎖であり、さらにより好ましくは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~6の脂肪族炭化水素鎖、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~6の脂環式炭化水素鎖、または炭素数5又は6の芳香族炭化水素鎖である。
【0076】
別の実施形態において、R1は好ましくは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~20の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素鎖、より好ましくは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~12の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素鎖、さらにより好ましくは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~6の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素鎖である。
【0077】
式(2)で表される化合物と、式(3)で表されるジオールの比は特に限定されないが、式(2)で表される化合物:式(3)で表されるジオールの比は、10:9~1:2であることがより好ましい。(ii)
式(2)で表される化合物と、式(3)で表されるジオールとの重合は、金属触媒下で行われることが好ましい。
【0078】
金属触媒としては、Ti(OiPr)4(iPrはイソプロピル)、Ti(OBu)4、Sb2O3、Bu2・SnO、が挙げられるがこれらに限定されない。
【0079】
重合温度は150~250℃が好ましい。重合時間は30分~24時間が好ましく、1~6時間がより好ましい。
【0080】
金属触媒の量は特に限定されないが、ジバニリン酸ジメチル1モルに対して、0.001モル~0.1モルであることが好ましい。
【0081】
式(5)で表される共重合体の分子量は、第2工程における重合反応の温度及び時間により当業者には適宜調節することができる。
【0082】
(第3工程)
次に、上記製造方法は、式(2)で表される化合物と式(3)で表されるジオールとを重合させて得られた式(4)で表される重合体のシリル保護基を脱保護し、式(1)で表される重合体を得る工程を含む。
【0083】
【0084】
(式(4)中、X1はトリエチルシリルよりもかさ高いシリル保護基であり、R1は炭素数1~20の炭化水素鎖であり、nは1以上の整数を表す。)
【0085】
【0086】
(式(1)中、R1は炭素数1~20の炭化水素鎖であり、nは1以上の整数を表す。)
式(4)中のX1は式(2)のX1に関して説明した通りである。
【0087】
X1は好ましくは、(R1)(R2)(R3)-Si-で表され、好ましくはトリイソプロピルシリル、ジエチルイソプロピルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、トリブチルシリル、tert-ブトキシジフェニルシリル、tert-ブチルジフェニルシリル、ジメチルオクタデシルシリル、ベンジルジメチルシリル、ジメチルフェニルシリル、などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0088】
式(1)のR1,nに関しては上記に説明した通りである。
【0089】
式(4)で表される重合体のシリル保護基の脱保護は、式(4)で表される重合体を、酸の存在下で、脱保護剤と極性有機溶媒中で混合することにより行われる。酸としては無機酸および有機酸が挙げられ、強酸であっても弱酸であってもよいが、強酸が好ましく、例えば塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸が挙げられる。極性有機溶媒としては、DMF(N,N-ジメチルホルムアミド)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、などが挙げられるがこれらに限定されない。式(4)で表される重合体と脱保護剤との反応温度は0~160℃がより好ましいがこれらに限定されない。脱保護の時間は、1~5日が好ましいがこれに限定されない。
【0090】
有機溶媒の量は特に限定されないが、式(4)で表される重合体1モルに対して1~3Lであることが好ましい。
【0091】
式(4)で表される重合体のシリル保護基を脱保護のために使用される脱保護剤は、公知の脱保護剤であってよく、例えば、テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)、フッ化水素ピリジン(HF・pyr)、フッ化カリウム、ジフルオロトリメチルケイ酸トリス(ジメチルアミノ)スルホニウム(TASF)などのフッ素系試薬;塩化水素(HCl)、トリフルオロ酢酸(TFA)、パラトルエンスルホン酸ピリジニウム(PPTS)などの酸;水酸化ナトリウム(NaOH)、ナトリウムメトキシド(CH3ONa)、酢酸リチウム(LiOAc)、酢酸カリウム(KOAc)などの塩基;などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0092】
脱保護剤の量は特に限定されないが、式(4)で表される重合体に対して0.01~10当量であることが好ましい。
【0093】
本発明の態様の上記製造方法では、式(2)で表される化合物と式(3)で表されるジオールとを重合させる前に、式(2)で表される化合物の水酸基を、トリエチルシリルよりもかさ高いシリル保護基で保護している。従来の方法では、ジバニリン酸メチルの2つの水酸基をトリエチルシリルで重合反応中に、金属触媒の作用により、シリル基が外れ、重合反応の進行が抑制されており、分子量の大きい重合体を得ることが困難であったが、本発明の態様の上記製造方法では、シリル基がトリエチルシリルよりもかさ高く化学的に安定であるため、重合反応の進行が促進される。
【0094】
また、本発明の態様の上記製造方法では、式(2)で表される化合物を重合前に精製することで重合が進行する。
【0095】
このため、上記製造方法によれば、式(1)で表され、重量平均分子量が10000以上であるポリエステルを合成することができる。を見出し、目的のポリエステルを得た。
【0096】
【0097】
一態様において、本開示は、式(5)で表される共重合体に関する。
【0098】
【0099】
(式(5)中、R1は炭素数1~20の炭化水素鎖であり、R2は炭素数1~20の炭化水素鎖であり、式(5)中の各構成単位のモル比率がm/(m+n)=0.001~0.999、m/(m+n))が0.001~0.999である)。
【0100】
ここで、mおよびnは、当該構成単位の構成比を表しているのみであって、式(5)で表される共重合体が構成単位の2つのブロックからなるブロック共重合体のみを意味するものではない。式(5)で表される共重合体は、式(5)中の括弧内の2つの構成単位のランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよく、あるいは、ランダム部とブロック部が混在する共重合体であってもよい。また、交互共重合体の部分が存在してもよい。
【0101】
構成単位の構成比を表すmおよびnの比は、任意に調整可能である。
【0102】
一つの実施形態において、R1は好ましくは炭素数1~20の脂肪族炭化水素鎖、炭素数1~20の脂環式炭化水素鎖、または炭素数1~20の芳香族炭化水素鎖であり、より好ましくは炭素数1~12の脂肪族炭化水素鎖、炭素数1~12の脂環式炭化水素鎖、または炭素数1~12の芳香族炭化水素鎖であり、さらにより好ましくは炭素数1~6の脂肪族炭化水素鎖、炭素数1~6の脂環式炭化水素鎖、または炭素数5又は6の芳香族炭化水素鎖である。
【0103】
R1が炭素数1~20の脂肪族炭化水素の場合は、製造の容易さ及び生分解性の点で好ましい。
【0104】
一つの実施形態において、R1は好ましくは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~20の脂肪族炭化水素鎖、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~20の脂環式炭化水素鎖、または炭素数1~20の芳香族炭化水素鎖であり、より好ましくは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~12の脂肪族炭化水素鎖、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~12の脂環式炭化水素鎖、または炭素数1~12の芳香族炭化水素鎖であり、さらにより好ましくは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~6の脂肪族炭化水素鎖、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~6の脂環式炭化水素鎖、または炭素数5又は6の芳香族炭化水素鎖である。
【0105】
別の実施形態において、R1は好ましくは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~20の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素鎖、より好ましくは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~12の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素鎖、さらにより好ましくは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~6の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素鎖である。
【0106】
一つの実施形態において、 式(5)中の各構成単位のモル比率は、m/(m+n)=0.10~0.90、n/(m+n)=0.10~0.90である。
【0107】
別の実施形態において、 式(5)中の各構成単位のモル比率は、m/(m+n)=0.25~0.75、n/(m+n)=0.25~0.75である。
【0108】
一つの実施形態において、式(5)で表される共重合体の重量平均分子量は、10000以上、20000以上、30000以上、または35000以上である。
【0109】
一つの実施形態において、式(5)で表される共重合体の重量平均分子量は、
2000000以下、1000000以下、または500000以下である。
【0110】
一つの実施形態において、式(5)で表される共重合体の重量平均分子量は、10000以上、かつ2000000以下である。
【0111】
一つの実施形態において、式(5)で表される共重合体の重量平均分子量は、20000以上、かつ1000000以下である。
【0112】
一つの実施形態において、式(5)で表される共重合体の重量平均分子量は、30000以上、かつ500000以下である。
【0113】
式(5)で表される共重合体は、ジバニリン酸由来の構成単位中に水酸基を保持したポリエステルであるため、リグニン分解酵素との親和性が高いと考えられる上、エステル結合が分解して生成するジバニリン酸の生分解性は保証されているため、分解時には有利である。また、式(5)で表された共重合体は、ジバニリン酸由来の構成単位の代わりに脂肪族カルボン酸又は脂肪族カルボン酸エステル由来の構成単位を有する共重合体に比べて、耐熱性が高い。式(5)で表される共重合体の耐熱性は、ジバニリン酸由来の構成単位の比が高くなるほど、高くなる。
【0114】
一つの実施形態において、上記式(5)で表される共重合体は、窒素雰囲気下での熱重量分析において、質量減少率が5%になるときの温度が350℃以上である。
【0115】
一つの実施形態において、上記式(5)で表される共重合体は、窒素雰囲気下での熱重量分析において、質量減少率が5%になるときの温度が380℃以上である。
【0116】
一つの実施形態において、上記式(5)で表される共重合体の水酸基をエステル化又はアシル化した上記重合体の誘導体が提供される。エステル化剤およびアシル化剤については式(1)で表される重合体に関して説明した通りである。
【0117】
別の態様において、本開示は、式(5)で表される共重合体の製造方法に関する。
(第1工程)
まず、上記製造方法は、式(2)で表される化合物を提供する工程を含む。この化合物は、ジバニリン酸ジメチルの水酸基をシリル保護基で保護した化合物である。この工程は、式(1)で表される重合体の製造方法の第1工程と同じであるため、説明を省略する。
(第2工程)
次に、上記製造方法は、式(2)で表される化合物、式(3)で表されるジオール、および式(6)で表されるジカルボン酸を混合し、重合させる工程を含む。
【0118】
【0119】
(式(3)中、R1は炭素数1~20の炭化水素鎖である。)
【0120】
【0121】
(式(6)中、R2は炭素数1~20の炭化水素鎖であり、R3は水素又は炭化水素基である。)
式(3)で表されるジオールは、式(1)で表され、重量平均分子量が10000以上である重合体の製造方法の第2工程で説明したため、説明を省略する。
【0122】
R3が炭化水素基の場合、飽和又は不飽和の炭化水素鎖であってよく、脂肪族炭化水素鎖、脂環式炭化水素鎖、芳香族炭化水素鎖、又はそれらの組み合わせであってもよい。R3は炭素鎖の部分が直鎖であっても分岐鎖であってもよい。
【0123】
一つの実施形態において、R3は好ましくは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~20の脂肪族炭化水素鎖であり、より好ましくは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~12の脂肪族炭化水素鎖であり、さらにより好ましくは炭素数1~6の直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素鎖であり、例えばメチル、エチル、プロピル、n-ブチル、又はt-ブチルである。
【0124】
一つの実施形態において、R3は好ましくは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~20の飽和脂肪族炭化水素鎖であり、より好ましくは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素鎖であり、さらにより好ましくは炭素数1~6の直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族炭化水素鎖である。
【0125】
一つの実施形態において、R3は例えばメチル、エチル、プロピル、n-ブチル、又はt-ブチルである。
【0126】
R3が水素の場合、ジカルボン酸をそのままジオールと縮合できる点で好ましい。R2がメチル又はエチルの場合、副生成物であるメタノールやエタノールが低沸点のため、エステル交換反応自体が進みやすく好ましい。
【0127】
一つの実施形態において、式(6)中、R2は好ましくは炭素数1~20の直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素鎖、炭素数1~20の脂環式炭化水素鎖、または炭素数1~20の芳香族炭化水素鎖であり、より好ましくは炭素数1~12の脂肪族炭化水素鎖、炭素数1~12の脂環式炭化水素鎖、または炭素数1~12の芳香族炭化水素鎖であり、さらにより好ましくは炭素数1~6の脂肪族炭化水素鎖、炭素数1~6の脂環式炭化水素鎖、または炭素数5又は6の芳香族炭化水素鎖である。
【0128】
R2が炭素数1~20の脂肪族炭化水素の場合は、製造の容易さ及び生分解性の点で好ましい。
【0129】
一つの実施形態において、R2は好ましくは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~20の脂肪族炭化水素鎖、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~20の脂環式炭化水素鎖、または炭素数1~20の芳香族炭化水素鎖であり、より好ましくは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~12の脂肪族炭化水素鎖、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~12の脂環式炭化水素鎖、または炭素数1~12の芳香族炭化水素鎖であり、さらにより好ましくは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~6の脂肪族炭化水素鎖、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~6の脂環式炭化水素鎖、または炭素数5又は6の芳香族炭化水素鎖である。
【0130】
別の実施形態において、R2は好ましくは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~20の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素鎖、より好ましくは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~12の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素鎖、さらにより好ましくは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~6の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素鎖である。
【0131】
式(2)で表される化合物および式(6)で表される化合物の合計と、式(3)で表されるジオールの比は特に限定されないが、式(2)で表される化合物および式(6)で表される化合物の合計:式(3)で表されるジオールの比は、1:0.9~1:2であることが好ましい。
【0132】
式(2)で表される化合物と式(6)で表される化合物の比は、1:0.01~1:1000であることが好ましい。
【0133】
式(2)で表される化合物と式(3)で表されるジオールとの重合、ならびにおよび式(6)で表される化合物と式(3)で表されるジオールとの重合は、金属触媒下で行われることが好ましい。 金属触媒としては、Ti(OiPr)4(iPrはイソプロピル)、Sb2O3、Bu2・SnO、Bu2・SnOが挙げられるがこれらに限定されない。
【0134】
重合温度は150~250℃が好ましい。重合時間は30分~24時間が好ましく、1~6時間がより好ましい。
【0135】
金属触媒の量は特に限定されないが、ジバニリン酸ジメチル1モルに対して、0.001モル~0.1モルであることが好ましい。
【0136】
式(5)で表される共重合体の分子量は、第2工程における重合反応の温度及び時間により当業者には適宜調節することができる。
(第3工程)
次に、上記製造方法は、式(2)で表される化合物と式(3)で表されるジオール、ならびにおよび式(6)で表される化合物と式(3)で表されるジオールとを重合させて得られた式(7)で表される重合体のシリル保護基を脱保護し、式(5)で表される共重合体を得る工程を含む。
【0137】
【0138】
(式(7)中、X1はトリエチルシリルよりもかさ高いシリル保護基であり、R1は炭素数1~20の炭化水素鎖であり、R2は炭素数1~20の炭化水素鎖であり、nは1以上の整数を表す。)
【0139】
【0140】
(式(5)中、R1は炭素数1~20の炭化水素鎖であり、R2は炭素数1~20の炭化水素鎖であり、式(5)中の各構成単位のモル比率がm/(m+n)=0.001~0.9990.01~0.99、n/(m+n)=が0.001~0.999である)。
【0141】
式(7)中のX1は式(2)のX1に関して説明した通りである。
【0142】
X1は好ましくは、(R1)(R2)(R3)-Si-で表され、好ましくはトリイソプロピルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、トリブチルシリル、tert-ブトキシジフェニルシリル、tert-ブチルジフェニルシリル、ジメチルオクタデシルシリル、ベンジルジメチルシリル、ジメチルフェニルシリルなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0143】
式(5)のR1,nに関しては上記に説明した通りである。
【0144】
式(7)で表される重合体のシリル保護基の脱保護に使用される酸および有機溶媒、脱保護の温度および時間については、式(1)で表され、重量平均分子量が10000以上である重合体の製造方法の第3工程で説明した通りである。
【0145】
本発明の態様の上記製造方法でも、式(2)で表される化合物と式(3)で表されるジオール、ならびに式(6)で表される化合物と式(3)で表されるジオールとを重合させる前に、式(2)で表される化合物の水酸基を、トリエチルシリルよりもかさ高いシリル保護基で保護している。このため、低分子量のみならず高分子量の式(5)で表される共重合体を合成することができる。
【0146】
本発明の一態様は、上記の式(1)で表され、重量平均分子量が10000以上である重合(以下、単に式(1)で表される重合体と称する)または式(5)で表される共重合体を含む成形体に関する。成形体は、式(1)で表される重合体または式(5)で表される共重合体のみから形成されてもよいし、式(1)で表される重合体または式(5)で表される共重合体を含むポリマー組成物から形成されてもよい。
【0147】
ポリマー組成物は、式(1)で表される重合体または式(5)で表される共重合体以外に、他の添加剤、例えば可塑剤、界面活性剤、滑剤、有機または無機充填剤、分散剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤などを含んでもよい。これらの添加剤は単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0148】
ポリマー組成物中の式(1)で表される重合体または式(5)で表される共重合体の量は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、または100質量%であってよい。
【0149】
成形体は、上記の式(1)で表される重合体または式(5)で表される共重合体、もしくはこれらのいずれかを含むポリマー組成物を加熱し、押出成形、プレス成形、真空成型、射出成形、ブロー成形、インフレーション成形、発泡成形などの公知の成形技術により、フィルム状、シート状、筒状、ケース状など、任意の三次元の形状に成形加工することにより製造することができる。
【0150】
成形体は、容器、フィルム、シート、生活用品など、種々の用途に使用することができる。なお、本明細書で使用する場合、フィルムとは厚さが250μm未満である薄膜を指す。シートは、厚さが250μm以上の板状部材を指す。
【0151】
本明細書中に引用されているすべての特許出願および文献の開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0152】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例0153】
実施例1 各種ジバニリン酸由来ポリエステルの合成
ジバニリン酸ジメチル(A. Tamai, H. Goto, T. Akiyama, Y. Matsumoto. Revisiting Alkaline Nitrobenzene Oxidation: Quantitative Evaluation of Biphenyl Structures in Cedar Wood Lignin (Cryptomeria Japonica) by a Modified Nitrobenzene Oxidation Method. Holzforschung 69 (2015) 951-8.に従って製造)を、イミダゾールの存在下でDMF中で4種類のシリル化剤の各々と室温にて混合し、ジバニリン酸ジメチルの水酸基が各シリル基で保護された種々のモノマー(MeDVA-Rと総称する)を合成した。
【0154】
4種類のシリル化剤はトリメチルシリルクロリド(TMS)、トリエチルシリルクロリド(TES)、tert-ブチルジメチルシリルクロリド(TBDMS)、トリイソプロピルシリルクロリド(TIPS)とした。4つのシリル化剤のそれぞれのシリル基のかさ高さはこの順に小さいものから大きいものに並んでいる。
【0155】
【0156】
ここで、トリイソプロピルシリル基で保護したモノマーは、オーブンカラムクロマトグラフィーと再結晶による精製を行い、白色固体とした。
【0157】
次に、MeDVA-TIPSとヘキサンジオールをTi(OiPr)4の存在下で130℃~180℃℃で4時間加熱、その後、10Paの減圧下、180℃~220℃で4時間加熱し、溶融重合によりポリエステル(P6DVA-TIPS)を合成し、続いて、生成物をDMFに溶解させ、テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)と塩酸を加えて脱保護し、遊離水酸基を有するポリエステル(P6DVA)を得た。各種ポリエステルの化学構造はNMRと赤外分析(IR)により同定した。
【0158】
【0159】
(結果)
TIPSにより保護されたジバニリン酸ジメチルモノマー(MeDVA-TIPS)のNMRスペクトルを
図1に示し、 MeDVA-TIPSの重合後の保護基が保持されたポリエステル(P6DVA-TIPS)のNMRスぺクトルを
図2(a)に示し、さらにP6DVA-TIPSからシリル基を脱保護したポリエステル(P6DVA)のNMRスぺクトルを
図2(b)に示す。
【0160】
P6DVA-TIPSとP6DVAの重量平均分子量をゲル浸透クロマトグラフィーで測定し、P6DVA-TIPSとP6DVAのガラス転移点をDSCで測定したところ、P6DVA-TIPSのMw=2.7×104、Tg=78℃、P6DVAのMw=3.9×104、Tg=108℃であった。
【0161】
実施例2 ジバニリン酸由来ポリエステルからなる成形シートの製造
実施例1で製造したP6DVA-TIPSからなるシートおよびP6DVAからなるシートをそれぞれ加熱し、プレスして観察した。
(結果)
実施例1で製造したP6DVA-TIPSからなるシートを150℃でプレスすると複数の小片に破断されたが(
図3左)、P6DVAからなるシートは180℃にてシート状に成形することができた(
図3右)。
【0162】
実施例3 熱重量分析(TGA: Thermogravimetric analysis)および示差走査熱量測定(DSC:Differential scanning calorimetry)
実施例1で製造したP6DVA-TIPSおよびP6DVAの粉末をTGA-50装置(島津製作所製)で熱分析測定した。アルミパンに3-6mgのサンプルを入れ、窒素雰囲気下30℃から550℃まで20℃/minで昇温した。また、DSC8500装置(PerkinElmer社製)で示差走査熱量測定(DSC:Differential scanning calorimetry)を行った。20℃/minで2回の連続した温度走査プロセス(30℃から200℃に昇温したのち、0℃に急冷、その後0℃から200℃に昇温)を行い、ガラス転移点を2回目の昇温過程において求めた。
(結果)
図4に示すように、P6DVA-TIPSおよびP6DVAのそれぞれの分解温度は407℃および385℃付近であった。
図5に示されるように、P6DVA-TIPSおよびP6DVAのガラス転移点は78℃および108℃であったが、P6DVAは結晶化ピークがなく、非晶性のポリマーであることが分かった。
【0163】
実施例4 BOD(生物学的酸素要求量)試験
東京大学キャンパス内の三四郎池より淡水5Lと土壌1kgを採取した。淡水と土壌を混合し、122μmの目開きを有するポリエチレンメッシュでろ過し、試験水を調製した。気温は11.0℃、水温は8.2℃、試験水中の生菌数は3.4×104 CFU/mLであった。
【0164】
バニリン酸メチル、バニリン酸、P6DVAの各試料を5~10mgずつ、BOD試験用の瓶に入れた。その後、100mLの試験水と、0.1mLの緩衝液(33.3gのNaHPO4・2H2O、21.8gのK2HPO4、8.5gのKH2PO4、1.7gのNH4Clを1Lの脱イオン水に溶かして調製)、25mgのNH4Cl, 5mgのNaHPO4, 0.5mgのN-allylthioureaを追加し、ふたを閉めた。25℃において40日間試験を行った。一日に一回決まった時間に、BODの値を測定した。
【0165】
BOD分解率は以下の式より算出した。
【0166】
BOD分解率(%)=BOD/ThOD × 100
(ThOD:理論的酸素要求量)
(結果)
BOD試験の結果、
図6に示すように、40日間でP6DVAは8%、ジバニリン酸ジメチルは50%、バニリン酸は75%まで分解した。
【0167】
【0168】
参考例1 水酸基のアセチル化
P6DVA(Mw=8.7×103)170mgをクロロホルム 8mLに溶解させ、2.5当量の無水酢酸(Ac2О)、0.1当量のジメチルアミノピリジン(DMAP)と17時間室温下で反応させた。
【0169】
【0170】
(結果)
反応後に得られた溶液をメタノール中に滴下し再沈殿により、水酸基がアセチル化されたP6DVA-Acを得た(収率60%)。P6DVA-AcのNMRスぺクトルを
図7に示し、反応前のP6DVAとアセチル基を導入したポリエステル(P6DVA-Ac)のFT-IRスぺクトルを
図8に示す。水酸基に由来するピークが消失し、新たにアセチル基に由来するピークが出現していることから、水酸基にアセチル基の導入に成功したことが分かる。
【0171】
実施例5 ジバニリン酸由来芳香族共重合体の合成
実施例1で製造したシリル保護基により水酸基を保護したジバニリン酸ジメチルのモノマーを溶融重合、続く脱保護により、フェノール性水酸基を有したポリエステルを得た。アジピン酸とのコポリエステルも合成し、その熱物性と酵素分解性を評価した。
【0172】
【0173】
PHADV25,50,75 (ジバニリン酸ユニットが25,50,75%)の合成を行った。MeDVA-TIPSとアジピン酸ジメチル、ヘキサンジオールをTi(OiPr)4の存在下で130℃~180℃で4時間加熱、その後、10Paの減圧下、180℃~220℃で4時間加熱し、溶融重合によりポリエステル(PHADV-TIPS)を合成し、続いて、生成物をDMFに溶解させ、酢酸リチウム(AcOLi)を加えて脱保護し、遊離水酸基を有するポリエステル(PHADV)を得た。各種ポリエステルの化学構造はNMRと赤外分析(IR)により同定した。
(結果)
重合に用いたMeDVA-TIPSとアジピン酸ジメチル、ヘキサンジオールの当量を表1に示すように変化させることで、PHADV25,50,75の合成に成功した。PHAは、アジピン酸ジメチルとヘキサンジオールのみの重合から得られた、脂肪族のポリエステルである。P6DVAは、実施例1に示したポリエステルである。重量平均分子量をゲル浸透クロマトグラフィーで測定したところ、PHAのMw=3.0×104、PHADV25のMw=3.1×104、PHADV50のMw=4.9×104、PHADV75のMw=2.3×104である。
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
比較例の共重合体として、テレフタル酸、アジピン酸、ヘキサンジオールを用いたコポリエステルPHATも合成した。重合時間を調整し、5種の重合体を、重合体の大体の分子量をそろえて、ポリマーの組成比を25%刻みで合成した。
【0178】
【0179】
【0180】
実施例6 ジバニリン酸由来ポリエステルの熱特性の解析
実施例5で製造したポリエステルについてTGA-50装置(島津製作所製)で熱分析測定した。アルミパンに3-6mgのサンプルを入れ、窒素雰囲気下30℃から550℃まで20℃/minで昇温した。また、DSC8500装置(PerkinElmer社製)で示差走査熱量測定(DSC:Differential scanning calorimetry)を行った。20℃/minで2回の連続した温度走査プロセス(30℃から200℃に昇温したのち、0℃に急冷、その後0℃から200℃に昇温)を行い、ガラス転移点を2回目の昇温過程において求めた。
(結果)
図10に示すように、それぞれの5%質量減少温度は300~400の間であった。ジバニリン酸ユニットが0%のPHAに比べて、ジバニリン酸ユニットを含むPHADVのほうが、徐々に熱分解温度が上昇した。
【0181】
図11にDSCの結果を示す。一番上がジバニリン酸ユニットが100%のポリエステル、そこから中央のPHAに向かって、徐々にジバニリン酸の比率が下がる。PHAから徐々にテレフタル酸ユニットが多くなり、PHTが100%テレフタル酸ユニットのポリエステルである。まず、下半分のテレフタル酸のポリマーでは、それぞれ融点が観測され、テレフタル酸の含有率に比例して、融点の位置がシフトしていることが観察された。これに対して、ジバニリン酸含有ポリマーでは、全て融点が観測されず、非晶性のポリマーであることが分かった。ガラス転移点は、全てのポリマーでは観測されなかった。
【0182】
実施例7 熱成形フィルムの作製と引っ張り試験
続いて、実施例5で製造したポリエステルの熱プレスフィルムの作製と引張試験を行った。ジバニリン酸ユニットをそれぞれ25,50,75%含むPHADV25,50,75について熱プレスフィルムを作製した。
(結果)
PHADV25,50では柔軟なフィルムが得られたため、引張試験を行った。PHADV75は、硬く脆いフィルムであった(
図12)。PHADV50では、破断伸びが17MPa、破断延びが300%の強いフィルムが得られた(
図13)。表3によると、PHADV50は市販のecoflexに比較的近い機械特性を示した。今回比較のために合成したPHATは、分子量が小さいためか優れた物性は見られなかった。
【0183】
【0184】
実施例8 酵素分解実験
Humicola insolens クチナーゼ酵素は、PBATなどのポリエステルの加水分解が可能な酵素である。サンプル瓶にリン酸バッファーで薄めた酵素溶液に対して、1cm×1cmのフィルムを入れ、45℃で振とうさせたのち、フィルムの重量を追跡した。
(結果)
図14に示すように、テレフタル酸のユニットを含むPHAT25,50は、テレフタル酸ユニットの増加に比例して、重量減少率が低下することが示された。同じ組成比で比較すると、テレフタル酸のユニットを含むPHAT25に比べて、ジバニリン酸のユニットを含むPHADV25の方が酵素分解性が低下した。これはビフェニル骨格の立体障害やベンゼン環を二つ含むことによる疎水性の増加の影響と考えられる。