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  • 特開-炭酸リチウム粉末 図1
  • 特開-炭酸リチウム粉末 図2
  • 特開-炭酸リチウム粉末 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022514
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】炭酸リチウム粉末
(51)【国際特許分類】
   C01D 15/08 20060101AFI20240208BHJP
   H01M 4/485 20100101ALN20240208BHJP
   H01M 4/525 20100101ALN20240208BHJP
【FI】
C01D15/08
H01M4/485
H01M4/525
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122437
(22)【出願日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2022124949
(32)【優先日】2022-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和人
(72)【発明者】
【氏名】漁師 一臣
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA17
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA07
(57)【要約】
【課題】高い供給性により粉体材料の製造における生産性を向上させることが可能な炭酸リチウム粉末を提供する。
【解決手段】レーザー回折散乱粒度分布測定による、体積基準の90%積算粒径であるD90が9μm以上であり、比表面積が1.0m/g超であり、圧縮率が50%未満である、炭酸リチウム粉末。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー回折散乱粒度分布測定による、体積基準の90%積算粒径であるD90が9μm以上であり、比表面積が1.0m/g超であり、圧縮率が50%未満である、炭酸リチウム粉末。
【請求項2】
レーザー回折散乱粒度分布測定による、体積基準の50%積算粒径であるD50が3μm以上9μm未満である、請求項1に記載の炭酸リチウム粉末。
【請求項3】
レーザー回折散乱粒度分布測定による、体積基準の10%積算粒径であるD10が1μm以上3μm未満である、請求項1または請求項2に記載の炭酸リチウム粉末。
【請求項4】
カールフィッシャー法による120℃における水分率が0.5質量%以下である、請求項1または請求項2に記載の炭酸リチウム粉末。
【請求項5】
前記炭酸リチウム粉末は、リチウム金属複合酸化物の原料粉末である、請求項1または請求項2に記載の炭酸リチウム粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸リチウム粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸リチウム粉末は、工業原料として様々な分野に用いられている。炭酸リチウム粉末は、セラミックスなどの粉体材料の原料粉末として用いられている。例えば、携帯電話やノート型パソコンなどの電源として用いられるリチウムイオン二次電池において、炭酸リチウムと金属複合化合物から製造されるリチウム金属複合酸化物が、正極材料として用いられている。
【0003】
特許文献1には、重量平均粒径が1~20μm及び比表面積が2~200m/gであるオキシ水酸化コバルト粉末と、重量平均粒径が1~50μm及び比表面積が0.1~10m/gである炭酸リチウム粉末とを混合し、該混合物を酸素含有雰囲気で焼成してなる、リチウム二次電池用六方晶系リチウムコバルト複合酸化物の製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、NiおよびCoのいずれか一方または両方と、Mnと、Liとを含み、Liのモル量がNi、CoおよびMnの総モル量に対して1.2倍超である複合酸化物(I)を含むリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法であって、水を分散媒としてレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置で測定される体積基準のD50径が3~15μmであり、D90径が40μm未満であり、NiおよびCoのいずれか一方または両方とMnとを含む炭酸化合物と、2-プロパノールを分散媒としてレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置で測定される体積基準のD50径が3~15μmであり、D90径が40μm未満である炭酸リチウムとの混合物を、焼成するリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-002661号公報
【特許文献2】特開2015-135800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で得られる六方晶系リチウムコバルト複合酸化物は、リチウム二次電池用の正極活物質に用いることにより、広い電圧範囲での使用を可能とし、重量容量密度、体積容量密度などの大きな電気容量、優れた高温での貯蔵安定性、充放電サイクル耐久性及び安全性などの特性が得られるとされている。
【0007】
特許文献2では、リチウムイオン二次電池の初期の放電容量および初期の充放電効率を向上できる正極活物質を製造できるとされている。
【0008】
近年、リチウムイオン二次電池を大型二次電池に用いようという動きも盛んであり、中でもハイブリッド自動車用や電気自動車用の電源としての期待が大きい。自動車用の電源として用いる場合、高容量かつ高出力であるという性能面も重要である一方で、コストを低減したリチウムイオン二次電池が望まれている。
【0009】
粉体材料の工業的な生産においては、原料供給設備によって原料供給を自動化することが多いが、その際、原料粉末の流動性が低いと、原料供給設備における供給速度が低下して生産性が低下する。さらに原料詰まりが発生すると稼働を停止させるトラブルの原因となる。
【0010】
そこで上記従来技術が有する問題に鑑み、本発明の一側面では、高い供給性により粉体材料の製造における生産性を向上させることが可能な炭酸リチウム粉末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、レーザー回折散乱粒度分布測定による、体積基準の90%積算粒径であるD90が9μm以上であり、比表面積が1.0m/g超であり、圧縮率が50%未満である、炭酸リチウム粉末を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、高い供給性により粉体材料の製造における生産性を向上させることが可能な炭酸リチウム粉末を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施例で用いた供給試験装置の構成を示す概略図である。
図2図2は、炭酸リチウム粉末のD90と供給速度の関係を示すグラフである。
図3図3は、炭酸リチウム粉末の比表面積と供給速度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について詳細を説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更することができる。また、以下の説明において、「A~B」との記載は、「A以上B以下」を意味する。
[炭酸リチウム粉末]
本発明の発明者らは、炭酸リチウム粉末を用いた粉体材料の製造における生産性の向上について検討した。その結果、炭酸リチウム粉末を工程中に供給する際に、炭酸リチウム粉末の流動性が低下すると、粉末の混合装置などへの供給性が低下するため、粉体材料の製造における生産性が低下するとの知見を得た。さらに、炭酸リチウム粉末の物性を制御することで、炭酸リチウム粉末の流動性を改善して供給性を向上させることができ、粉体材料の製造における生産性を向上させることが可能であるとの知見を得て、本発明を完成した。
【0015】
なお、本明細書における供給性とは、炭酸リチウム粉末をホッパー等から供給した場合に、供給経路における詰まりの発生を抑制でき、供給速度に優れることを意味する。
(1)D90、比表面積
本実施形態の炭酸リチウム粉末(以下、単に「炭酸リチウム」と記載することがある。)は、レーザー回折散乱粒度分布測定による体積基準の90%積算粒径であるD90が9μm以上であり、比表面積が1.0m/g超である。これにより、炭酸リチウムの流動性を高めて供給性を向上し、粉体材料の製造における生産性を向上させることができる。
【0016】
炭酸リチウムの真密度は、2.11g/cmである。しかし、粉体材料、例えばリチウムイオン二次電池用正極活物質のような微細な粉体の製造に使用する炭酸リチウムの嵩密度は、0.3g/cm~0.4g/cm程度であり嵩密度が低い。このため、炭酸リチウムを供給するホッパー内などでの詰まりの発生や供給速度が低くなる等の供給時のトラブル頻度は高く、炭酸リチウムを供給して混合する原料混合工程などにおいて、トラブル発生が生産性に与える影響は大きなものとなる。
(D90)
本実施形態の炭酸リチウムは、D90を9μm以上とすることで、粗い粒子の存在によるキャリア効果、すなわち粒子が大きくなることで質量が大きくなり、重力落下速度が高くなることによる粉体流動に寄与する効果が得られる。このため、本実施形態の炭酸リチウムは、流動性が高くなると推測される。本実施形態の炭酸リチウムのD90は、粉体材料製造における生産性を特に向上させ、かつ粉体材料の品質を維持する観点から、好ましくは9.5μm以上である。
【0017】
炭酸リチウムのD90の上限は特に限定されないが、例えば好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下とすることができる。
【0018】
炭酸リチウムのD90を30μm以下とすることで、炭酸リチウムと他の原料粉末との反応性を高め、粉体材料の合成時間を抑制できる。すなわち、炭酸リチウムのD90を30μm以下とすることで、供給性以外の点で生産性を向上させることができる。また、炭酸リチウムのD90を30μm以下とすることで、粉末の混合物中での組成の偏在を抑制し、粉体材料の均一性を高めることができる。
(比表面積)
本実施形態の炭酸リチウムは、比表面積を1.0m/g超とすることで流動性を高められる。これは、比表面積を1.0m/g超とすることで、炭酸リチウムの粒子表面にサブミクロンの炭酸リチウム粒子が付着している状態となり、該サブミクロン粒子の存在により、物理的に粒子間のファンデルワールス力を抑えて、流動性が改善されるためと考えられる。本実施形態の炭酸リチウムの比表面積は、特に炭酸リチウムの流動性を改善して粉体材料製造における生産性を向上させる観点から、好ましくは1.1m/g以上、より好ましくは1.2m/g以上とすることができる。
【0019】
また、本実施形態の炭酸リチウムの比表面積の上限は、特に限定されないが、好ましくは3.0m/g以下、より好ましくは2.5m/g以下とすることができる。本実施形態の炭酸リチウムの比表面積を3.0m/g以下とすることで、炭酸リチウム中の微細粒子の割合を抑制し、相対的に粒子の大きさが小さくなることを抑制できる。このため、上述の重力落下速度による粉体流動に寄与する効果を特に高めることができる。
(2)D50、D10
本実施形態の炭酸リチウムは、上記D90、および比表面積を特定の範囲とすることで流動性を改善するものである。このため、本実施形態の炭酸リチウムは、レーザー回折散乱粒度分布測定による体積基準の50%積算粒径であるD50や体積基準の10%積算粒径であるD10などの他の粒度分布を示す指標は、特に限定されない。
【0020】
しかしながら、粉体材料を製造する際の反応性を高める観点から、本実施形態の炭酸リチウムのD50は、好ましくは3μm以上9μm未満、より好ましくは4μm以上8μm以下とすることができる。また、流動性をさらに高める観点から、本実施形態の炭酸リチウムのD10は、好ましくは1μm以上3μm未満、より好ましくは、1.5μm以上2.5μm以下とすることができる。
【0021】
本実施形態の炭酸リチウムのD50およびD10を上記範囲とすることで、炭酸リチウムの供給性と反応性をより改善することができ、生産性をさらに向上させることができる。
(3)圧縮率
本実施形態の炭酸リチウムの流動性を示す指標の値は、特に限定されないが、せん断式流動性評価装置による圧縮率を50%未満とすることが好ましい。本実施形態の炭酸リチウムの圧縮率を50%未満、より好ましくは49%以下、さらに好ましくは45%以下、特に好ましくは44%以下とすることで炭酸リチウム粉末の粉末流動性を安定して高いものとすることができ、供給時の堆積が少なくなり、より良好な供給性を得ることができる。ここで、圧縮率は粉体層の変位量であり、以下の手順で測定、算出できる。
【0022】
まず、評価を行う粉を測定用のシリンダーに圧接せずに静かに入れ、粉の上に杵を配置する。そして、粉に103N/cmの荷重を加え、所定のタイミングで、レーザーによって基準点と杵との間の距離を測り、測定値から下記式1で計算される指標となる。
【0023】
圧縮率(%)=[初期厚み(mm)-荷重後の厚み(mm)]/初期厚み(mm)×100 ・・・ (式1)
本実施形態の炭酸リチウムの圧縮率の下限は、特に限定されないが、例えば20%以上とすることができる。
(4)水分率
本実施形態の炭酸リチウムの水分率は特に限定されないが、カールフィッシャー法による120℃における水分率を0.5質量%以下とすることが好ましい。本実施形態の炭酸リチウムの上記水分率を0.5質量%以下とすることで、過度な凝集の発生や、供給配管内への付着を抑制し、流動性を特に高めることができる。さらに流動性を高く維持する観点から、前記水分率を好ましくは0.2質量%以下とすることができる。
【0024】
(5)嵩密度
本実施形態の炭酸リチウムの嵩密度は特に限定されないが、0.2g/cm以上0.5g/cm以下であることが好ましく、0.25g/cm以上0.45g/cm以下であることがより好ましい。
【0025】
嵩密度は、メスシリンダー等に炭酸リチウムを圧接せずに静かに入れ、その際の体積と質量から算出できる。
【0026】
本実施形態の炭酸リチウムは、粉体材料の製造における原料粉末として用いることができ、例えばリチウム金属複合酸化物の製造における原料粉末として用いることができる。すなわち、本実施形態の炭酸リチウムは、リチウム金属複合酸化物の原料粉末とすることができる。既述のように、本実施形態の炭酸リチウムは、他の原料粉末との反応性が高く、装置への供給性に優れるものであることから、微細粉末からなるリチウム金属複合酸化物の原料粉末として用いることで、製造工程における生産性を高めることができる。
[炭酸リチウム粉末の製造方法]
本実施形態の炭酸リチウムの製造方法の構成例について説明する。本実施形態の炭酸リチウムの製造方法によれば、既述の炭酸リチウムを製造できるため、重複する説明は一部省略する。
【0027】
本実施形態の炭酸リチウムの製造方法は特に限定されない。本実施形態の炭酸リチウムは、例えば原料となる炭酸リチウムである粗粒炭酸リチウムを粉砕してD90や、必要に応じてさらにD50、D10などと、比表面積を調整することで製造できる。なお、以下の説明で、D90、D50、D10をまとめて「粒度」と記載することがある。
【0028】
例えば、粒径が大きい炭酸リチウムを粉砕機によって目的とする粒度分布を有するように粉砕(解砕)することで、既述の炭酸リチウムを得ることができる。すなわち、本実施形態の炭酸リチウムの製造方法は、原料となる炭酸リチウムである粗粒炭酸リチウム等を粉砕機により粉砕する粉砕工程を有することができる。上記粗粒炭酸リチウムとしては、例えば目的とする炭酸リチウムよりもD50等の粒度が大きい炭酸リチウムを用いることができる。
【0029】
粉砕工程で用いる粉砕機は、特に限定されるものではないが、例えばハンマーミルやピンミルなどの高速回転粉砕機や、気流粉砕機を用いることが好ましく、高速回転粉砕機を用いることがより好ましい。高速回転粉砕機は、衝撃力が強く、過粉砕による微粒子が多く発生するため、発生した微粒子(微粉)が粒径のより大きな粒子の表面に付着し、比表面積を高めることができる。また、微粒子を多く発生させることで、圧縮した際に粒径がより大きな粒子の間に微粒子が充填されるため、圧縮率を低下させることができる。
【0030】
高速回転粉砕機において、ハンマーミルは、出口側に多孔板やスクリーン、グリットなどを設置して、いわゆるスクリーンミルとすることもできる。スクリーンミルは、得られる炭酸リチウムの粒度のコントロールが容易であり、粉砕工程で好ましく用いることができる。
【0031】
粉砕工程における、粉砕機による粉砕条件は、粉砕前の粗粒炭酸リチウムの粒度や比表面積によって異なるため特に限定されないが、所望の粒度や比表面積となるように調整、選択できる。例えば、高速回転粉砕機の回転数を高くすることで、微粒子の発生を多くし、粒度を小さくすることができる。また、ハンマーミルでは、出口のスクリーンなどを選択することで、微粒子を適度に発生させながら粒度を調整することができる。
【0032】
本実施形態の炭酸リチウムの製造方法は、さらに、必要に応じて粉砕工程後の炭酸リチウムを篩にかける篩掛け工程を有することもできる。また、水分率を調整するため、炭酸リチウムを乾燥する乾燥工程を有することもできる。
【実施例0033】
以下、実施例を参照しながら本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
(1)評価方法
以下の実施例、比較例で作製した炭酸リチウムの評価には、下記に示す分析方法を用いた。
【0035】
(1-1)粒度分布、粒度
2-プロパノールを分散媒としてレーザー回折散乱粒度分布測定装置により炭酸リチウムの粒度分布を求め、その粒度分布から体積基準の積算粒径として粒度(D10、D50、D90、D100)を算出した。
【0036】
(1-2)比表面積
窒素ガス吸着によるBET法により、比表面積を求めた。
【0037】
(1-3)圧縮率
圧縮率はせん断式流動性評価装置(株式会社ナノシーズ製 型式:NS-S300)に付属される測定用シリンダーに評価を行う粉を圧接せずに静かに充填し、粉の上に杵を配置した。そして、粉に103N/cmの荷重を加え、所定のタイミング、すなわち粉の上に杵を配置した直後と、荷重を加えた後と、でレーザーによって基準点と杵との距離を測り、既述の式1を用いて求めた。
(1-4)水分率
カールフィッシャー法により、120℃で2時間保持して水分率を求めた。なお、表1中の「<0.1」は水分率が0.1質量%未満であることを意味している。
【0038】
(1-5)嵩密度
250mLのメスシリンダーに炭酸リチウムを圧接せずに静かに入れ、その際の体積と質量から嵩密度を算出した。
【0039】
(1-6)供給性評価
以下の実施例、比較例で作製した炭酸リチウムの供給性を、図1に示す供給試験装置を用いて、供給詰まりの発生状態、該発生状態となる際の、具体的には該発生状態となる過程での供給速度として評価した。
【0040】
用いた供給試験装置10は、評価を行う炭酸リチウムを入れたホッパー11と、振動フィーダー12と、回収容器13とを有する。供給性評価は、ホッパー11内に実施例、比較例で作製した炭酸リチウム粉末14を入れ、振動フィーダー12を介して、回収容器13までの供給過程を観察することで行った。
【0041】
そして、回収容器13の下方に図示しない電子天秤を配置しておき、回収容器13に供給された炭酸リチウム粉末14の質量変化を測定し、供給速度を算出した。なお、供給速度の算出には、炭酸リチウム粉末14の供給開始後、供給速度が安定したことを確認してから、1分間の炭酸リチウム粉末14の供給量から算出した。
【0042】
供給詰まりの発生状態は、下記の基準で評価した。
【0043】
〇:問題なし
△:詰まりは発生するが、ノッキングで解消
×:詰まりによる供給停止
【0044】
具体的には、ホッパー11の出口や、振動フィーダー12における供給詰まりの観察を行っており、上記いずれの場所でも供給詰まりが発生せずに、安定して炭酸リチウムを供給できた場合には、問題なしとして、〇と評価した。
【0045】
上記いずれかの場所で詰まりが発生したものの、供給停止には至らず、ノッキング、すなわち振動フィーダー12等を外表面から複数回叩くことで詰まりが解消できた場合には△と評価した。
【0046】
上記いずれかの場所で詰まりが発生し、ノッキングによっても詰まりが解消できず、供給停止に至った場合には×と評価した。
【0047】
上記供給詰まりの発生状態の評価は炭酸リチウム粉末14の供給開始後、供給速度が安定したことを確認してから、3分間実施した。
(2)炭酸リチウム粉末の製造について
[実施例1]
粗粒炭酸リチウム(D50:100μm)を気流粉砕機(ACMパルペライザ)で粉砕することにより炭酸リチウム粉末を得た。得られた炭酸リチウム粉末の粒度、比表面積、水分率、嵩密度、圧縮率を評価した。評価結果を表1に示す。
【0048】
また、既述の供給性評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0049】
[実施例2]
実施例1と同じ粗粒炭酸リチウムを高速回転粉砕機(ハンマーミル)で粉砕することにより炭酸リチウム粉末を得た。得られた炭酸リチウム粉末について、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1および表2に示す。
【0050】
[実施例3]
実施例1と同じ粗粒炭酸リチウムをハンマーミルで粉砕することにより炭酸リチウム粉末を得た。ハンマーミルで粉砕する際に、ハンマーミルの回転数を落としてD50が実施例2より大きくなるように調整した。得られた炭酸リチウム粉末について、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1および表2に示す。
【0051】
[比較例1]
実施例1と同じ粗粒炭酸リチウムをACMパルペライザで粉砕することにより炭酸リチウム粉末を得た。ACMパルペライザで粉砕する際に、ACMパルペライザの回転数を落としてD50が実施例1より大きくなるように調整した。得られた炭酸リチウム粉末について、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1および表2に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
表に示した結果より、D90が9μm以上であり、比表面積が1.0m/g超である実施例1~実施例3は、比較例1より供給詰まりが発生しにくく、供給速度を高くできることを確認できた。特に、実施例1の炭酸リチウムより比表面積が大きい、実施例2および実施例3の炭酸リチウムは、さらに供給速度を高くすることが可能である。
【0054】
また、実施例1~実施例3では圧縮率が50%未満になることを確認できた。
【0055】
図2にD90と供給速度の関係を、図3に比表面積と供給速度の関係をそれぞれ示す。図2および図3から、D90が大きくなるほど、また比表面積が大きくなるほど供給速度が向上することがわかる。
【0056】
したがって、D90および比表面積が大きい本開示に係る炭酸リチウムによれば、供給性が高く、供給詰まりや供給速度の低下などのトラブルを防ぐことが可能であり、粉体材料の製造における生産性を向上させることが可能である。
【符号の説明】
【0057】
10 供給試験装置
11 ホッパー
12 振動フィーダー
13 回収容器
14 炭酸リチウム粉末
図1
図2
図3