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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022636
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】撮像素子
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/34 20210101AFI20240208BHJP
   G03B 13/36 20210101ALI20240208BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20240208BHJP
   H04N 23/54 20230101ALI20240208BHJP
【FI】
G02B7/34
G03B13/36
H01L27/146 A
H01L27/146 D
H04N23/54
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023205180
(22)【出願日】2023-12-05
(62)【分割の表示】P 2021085081の分割
【原出願日】2014-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】高原 宏明
(57)【要約】
【課題】1つのマイクロレンズに対して設けられた一対の光電変換部のそれぞれへ入射量を確保する。
【解決手段】撮像素子は、光学系と第1マイクロレンズとを透過した光を光電変換し、第1方向に並んで設けられる第1光電変換部と第2光電変換部とをそれぞれ有し、前記第1光電変換部と前記第2光電変換部との受光面積の差が前記第1方向における前記光学系の光軸からの位置によって第1の関係で変化し、前記第1方向に設けられる複数の第1画素と、前記光学系と第2マイクロレンズとを透過した光を光電変換し、前記第1方向に並んで設けられる第3光電変換部と第4光電変換部とをそれぞれ有し、前記第3光電変換部と前記第4光電変換部との受光面積の差が前記第1方向における前記光学系の光軸からの位置によって前記第1の関係と異なる第2の関係で変化し、前記第1方向に設けられる複数の第2画素と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系と第1マイクロレンズとを透過した光を光電変換し、第1方向に並んで設けられる第1光電変換部と第2光電変換部とをそれぞれ有し、前記第1光電変換部と前記第2光電変換部との受光面積の差が前記第1方向における前記光学系の光軸からの位置によって第1の関係で変化し、前記第1方向に設けられる複数の第1画素と、
前記光学系と第2マイクロレンズとを透過した光を光電変換し、前記第1方向に並んで設けられる第3光電変換部と第4光電変換部とをそれぞれ有し、前記第3光電変換部と前記第4光電変換部との受光面積の差が前記第1方向における前記光学系の光軸からの位置によって前記第1の関係と異なる第2の関係で変化し、前記第1方向に設けられる複数の第2画素と、
を備える撮像素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一つのマイクロレンズに対して一対の受光素子が設けられ、マイクロレンズの光軸に対して一対の受光素子が対称となるように配列された焦点検出画素と、マイクロレンズの光軸に対して一対の受光素子が非対称となるように配置される焦点検出画素とが配列されたイメージセンサが知られている(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011―221253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、同一のマイクロレンズに対して配列された一対の受光素子のそれぞれに入射する光量が異なるため、何れか一方の受光素子の出力が飽和して焦点検出演算に用いることができずに焦点検出精度を維持できないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様によれば、撮像素子は、光学系と第1マイクロレンズとを透過した光を光電変換し、第1方向に並んで設けられる第1光電変換部と第2光電変換部とをそれぞれ有し、前記第1光電変換部と前記第2光電変換部との受光面積の差が前記第1方向における前記光学系の光軸からの位置によって第1の関係で変化し、前記第1方向に設けられる複数の第1画素と、前記光学系と第2マイクロレンズとを透過した光を光電変換し、前記第1方向に並んで設けられる第3光電変換部と第4光電変換部とをそれぞれ有し、前記第3光電変換部と前記第4光電変換部との受光面積の差が前記第1方向における前記光学系の光軸からの位置によって前記第1の関係と異なる第2の関係で変化し、前記第1方向に設けられる複数の第2画素と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、複数の画素のうちの周辺付近に位置する画素においても、一対の光電変換部の一方の出力が飽和することを防ぎ、焦点検出精度の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施の形態による撮像装置の構成を説明する横断面図
図2】実施の形態による撮像装置の要部構成を説明するブロック図
図3】実施の形態による撮像画素の配列の一例を示す図
図4】実施の形態における撮像画素の第1光電変換部および第2光電変換部の面積と、撮影レンズ系の射出瞳領域との投影関係を模式的に示す図
図5】変形例における撮像画素の配列の一例を示す図
図6】変形例における撮像画素の配列の一例を示す図
図7】変形例における撮像画素の配列の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照しながら、本発明の一実施の形態による撮像素子と、当該撮像素子を備える焦点検出装置および撮像装置とについて説明する。図1は実施の形態による撮像装置であるデジタルカメラ100の構成を説明する横断面図である。なお、説明の都合上、x軸、y軸、z軸からなる座標系を図示の通りに設定する。
【0009】
デジタルカメラ100は、カメラ本体200と撮影レンズ本体300とにより構成され、撮影レンズ本体300はマウント部(不図示)を介して装着される、いわゆるミラーレスカメラである。カメラ本体200には、マウント部を介して種々の撮影光学系を有する撮影レンズ本体300が装着可能である。上記のマウント部には電気接点201、202が設けられ、カメラ本体200と撮影レンズ本体300とが結合された時には、電気接点201および202を介して電気的な接続が確立される。
【0010】
撮影レンズ本体300は、撮影レンズ系1と、絞り2と、駆動機構3と、レンズデータ部4とを備えている。撮影レンズ系1は、被写体像を所定の予定焦点面に結像させるための光学系であり、焦点調節レンズを含む複数のレンズによって構成されている。絞り2は、撮影レンズ系1を通過する光束、すなわち入射光量を制限するために、光軸Lを中心に開口径が可変な開口を形成する。駆動機構3は、電気接点201を介してカメラ本体200側から入力したデフォーカス量を用いてレンズ駆動量を算出し、レンズ駆動量に応じて撮影レンズ系1を構成する焦点調節レンズを光軸Lの方向(z軸方向)に沿って合焦位置へ駆動する。また、駆動機構3は、カメラ本体200側からの指令に応じて絞り駆動信号を出力して、絞り2の駆動を制御する。
【0011】
レンズデータ部4は、たとえば不揮発性の記録媒体により構成され、撮影レンズ本体300に関連する各種のレンズ情報、たとえばレンズの焦点距離や明るさ(開放F値)等が格納されている。レンズデータ部4は電気接点202を介してカメラ本体200との間で上記のレンズ情報等を送信する。
【0012】
カメラ本体200内部には、演算処理制御部5と、撮像素子制御回路6と、メカシャッタ7と、撮像素子8と、電子ビューファインダ(EVF)9と、接眼レンズ10とが設けられている。カメラ本体200には操作部11が設けられている。撮像素子8には、CCDやCMOS等の撮像画素がxy平面上において二次元状(行と列)に配置される。撮像素子8の撮像画素には、それぞれR(赤)、G(緑)、B(青)のカラーフィルタが設けられている。撮像素子8は、撮影レンズ系1およびメカシャッタ7を介して入射される光束を受光して被写体像を撮像して、撮像信号を撮像素子制御部6に出力する。撮像信号は、画像データ生成用の信号(画像信号)として、また、焦点検出用の信号(焦点検出用信号)として使用される。撮像素子8がカラーフィルタを通して被写体像を撮像するため、撮像素子8の撮像画素から出力される撮像信号はRGB表色系の色情報を有する。なお、撮像素子8については、詳細を後述する。
【0013】
メカシャッタ7は撮像素子8の直前に設けられ、複数の遮光羽根より成る先幕と後幕とによって構成される。メカシャッタ7は、駆動モータ(たとえばDCモータやステッピングモータ等の電動モータ)により構成される駆動機構(不図示)の駆動により走行して、撮像素子8を被写体光から遮光する。電子ビューファインダ9は、演算処理制御部5により生成された表示画像データに対応する画像の表示を行う。また、電子ビューファインダ9は、撮影条件に関連する各種情報(シャッタ速度、絞り値、ISO感度など)の表示を行う。電子ビューファインダ9に表示された画像や各種情報は、接眼レンズ10を介してユーザにより観察される。
【0014】
操作部11はユーザによって操作される種々の操作部材に対応して設けられた種々のスイッチを含み、操作部材の操作に応じた操作信号を演算処理制御部5へ出力する。操作部材は、たとえばレリーズボタンや、カメラ本体200の背面に設けられた背面モニタ(不図示)にメニュー画面を表示させるためのメニューボタンや、各種の設定等を選択操作する時に操作される十字キー、十字キーにより選択された設定等を決定するための決定ボタン、撮影モードと再生モードとの間でデジタルカメラ100の動作を切替える動作モード切替ボタン、露出モードを設定する露出モード切替ボタン等を含む。
【0015】
さらに、図2に示すブロック図を用いて、デジタルカメラ100の制御系について説明する。図2に示すようにデジタルカメラ100は、A/D変換部12と、画像処理回路13と、焦点検出演算回路14と、ボディ-レンズ通信部15とを有している。演算処理制御部5は、CPU、ROM、RAMなどを有し、制御プログラムに基づいて、デジタルカメラ100の各構成要素を制御したり、各種のデータ処理を実行したりする演算回路である。制御プログラムは、演算処理制御部5内の不図示の不揮発性メモリに格納されている。撮像素子駆動回路6は、演算処理制御部5によって制御され、撮像素子8およびA/D変換部12の駆動を制御して、撮像素子8に電荷蓄積および撮像信号の読み出し等を行わせる。A/D変換部12は、撮像素子8から出力されたアナログの撮像信号をデジタルに変換する。
【0016】
画像処理回路13は、撮像素子8から出力された撮像信号を画像信号として用い、画像信号に対して種々の画像処理を施して画像データを生成した後、付加情報等を付与して画像ファイルを生成する。画像処理回路13は、生成した画像ファイルをメモリカード等の記録媒体(不図示)に記録する。画像処理回路13は、生成した画像データや記録媒体に記録されている画像データに基づいて、電子ビューファインダ9や背面モニタ(不図示)に表示するための表示画像データを生成する。
【0017】
焦点検出演算回路14は、撮像素子8から出力された撮像信号を焦点検出用信号として使用して、公知の位相差検出方式を用いてデフォーカス量を算出する。ボディ-レンズ通信部15は、演算処理制御部5に制御され、電気接点201、202を介して撮影レンズ本体300内の駆動機構3やレンズデータ部4と通信を行い、カメラ情報(デフォーカス量や絞り値など)の送信やレンズ情報の受信を行う。
【0018】
次に、本実施の形態における撮像素子8について詳細に説明する。
図3(a)は撮像素子8の中心部を含む一部の領域を模式的に示す平面図であり、図3(b)は撮像素子8の中心付近に設けられた1つの撮像画素80の断面を模式的に示す図であり、図3(c)は撮像素子8の周辺部に設けられた1つの撮像画素80の断面を模式的に示す図である。なお、図3においても、x軸、y軸、z軸からなる座標系を、図1に示す例と同様にして設定する。撮像素子8は、複数の撮像画素80が行方向(x方向)と列方向(y方向)とに二次元配列される。撮像画素80の各画素位置には、たとえばベイヤー配列の規則に従って上述したカラーフィルタ(R:赤色フィルタ、G:緑色フィルタ、B:青色フィルタ)が配置される。図3(a)においては、撮像画素80に配置されたカラーフィルタの色を、「R」、「G」または「B」と表記して模式的に表す。
【0019】
撮像画素80は、マイクロレンズ81と、1つのマイクロレンズ81の下に設けられた第1光電変換部82および第2光電変換部83とによって構成される。第1光電変換部82と第2光電変換部83とは、x方向に並んで配列される。図3に示す例では、第1光電変換部82はx方向+側、第2光電変換部83はx方向-側に設けられる。第1光電変換部82および第2光電変換部83には、それぞれ撮影レンズ系1の異なる領域を介して入射された光が入射する。すなわち、焦点検出演算回路14が位相差検出演算に用いる一対の被写体光束が入射する。
【0020】
本実施の形態においては、各行において、撮像画素80が配置される位置に応じて、第1光電変換部82と第2光電変換部83との境界部84が、マイクロレンズ81の中心からずれる(図3(c)参照)。全ての撮像画素80において、第1光電変換部82の面積と第2光電変換部83の面積とを合計した値は実質的に同一である。換言すると、第1光電変換部82のサイズ(面積)と、第2光電変換部83のサイズ(面積)とが異なる。撮像素子8の中心列Cからx方向+側においては、マイクロレンズ81の中心に対して境界部84はx方向-側へずれ、中心列Cからx方向-側においては、マイクロレンズ81の中心に対して境界部84はx方向+側へずれる。換言すると、第1光電変換部82の面積は第2光電変換部83の面積よりも大きく、かつ、中心列Cからの距離に応じて第1光電変換部82の面積と第2光電変換部83の面積との差分が大きくなる。x方向-側においては、第2光電変換部83の面積は第1光電変換部82の面積よりも大きく、かつ、中心列Cからの距離に応じて第2光電変換部83の面積と第1光電変換部82の面積との差分が大きくなる。
【0021】
マイクロレンズ81に対する境界部84のずれ量、すなわち第2光電変換部83の面積と第1光電変換部82の面積との差分は、中心列Cからの距離に応じて線形的に変化してもよいし、所定個数の撮像画素80ごとに段階的に変化してもよい。各行において、撮像素子8の中心列Cに配列される撮像画素80では、マイクロレンズ81の中心と境界部84とは実質的に一致、すなわち第1光電変換部82の面積と第2光電変換部83の面積とは等しい。上述したように、全ての撮像画素80において、第1光電変換部82の面積と第2光電変換部83の面積とを合計した値は実質的に同一なので、撮像画素80は、撮像素子8の中心列Cからのx方向の距離に応じて、第1光電変換部82と第2光電変換部83との面積比が異なる。
【0022】
図3(a)に示すように、撮像素子8の中心列Cに配列された撮像画素80aに設けられた第1光電変換部82aと第2光電変換部83aとの境界部84aはマイクロレンズ81aの中心と実質的に等しい。すなわち第1光電変換部82aと第2光電変換部83aとは面積が等しい。撮像画素80aよりもx方向+側に配列された撮像画素80bにおいては、境界部84bはマイクロレンズ81bの中心に対してx方向-側にずれている。すなわち、第1光電変換部82bの面積は第2光電変換部83bの面積よりも大きい。上述したように、全ての撮像画素80において、第1光電変換部82の面積と第2光電変換部83の面積とを合計した値は同一に形成されている。したがって、撮像画素80aの第1光電変換部82aの面積よりも撮像画素80bの第1光電変換部82bの面積の方が大きく、撮像画素80aの第2光電変換部83aの面積よりも撮像画素80bの第2光電変換部83bの面積の方が小さい。
【0023】
撮像画素80bよりもx方向+側に配列された撮像画素80cにおいては、境界部84cのマイクロレンズ81cの中心に対するずれ量は、境界部84bのマイクロレンズ81bの中心に対するずれ量と比べて大きい。すなわち、撮像画素80がx方向+側に配置されるほど、境界部84とマイクロレンズ81の中心とのずれ量がx方向-側へ大きくなる。撮像画素80bの第1光電変換部82bの面積よりも撮像画素80cの第1光電変換部82cの面積の方が大きく、撮像画素80bの第2光電変換部83bの面積よりも撮像画素80cの第2光電変換部83cの面積の方が小さい。
【0024】
撮像画素80aよりもx方向-側に配列された撮像画素80dにおいては、境界部84dはマイクロレンズ81dの中心に対してx方向+側にずれている。すなわち第2光電変換部83dの面積は第1光電変換部82dの面積よりも大きい。したがって、撮像画素80aの第1光電変換部82aの面積よりも撮像画素80dの第1光電変換部82dの面積の方が小さく、撮像画素80aの第2光電変換部83aの面積よりも撮像画素80dの第2光電変換部83dの面積の方が大きい。撮像画素80dよりもx方向-側に配列された撮像画素80eにおいては、境界部84eはマイクロレンズ81eの中心に対するx方向+側へのずれ量は、境界部84dのマイクロレンズ81dの中心に対するx方向+側のずれ量と比べて大きい。すなわち、撮像画素80dの第2光電変換部83dの面積よりも撮像画素80eの第2光電変換部83eの面積の方が大きく、撮像画素80dの第1光電変換部82dの面積よりも撮像画素80eの第1光電変換部82eの面積の方が小さい。
なお、境界部84とマイクロレンズ81の中心との関係および第1光電変換部82の面積と第2光電変換部83の面積との関係については、詳細を後述する。
【0025】
撮像画素80の第1光電変換部82と第2光電変換部83とのそれぞれにおいては、y方向の長さを変化させず、x方向の長さを変化させることによって、第1光電変換部82および第2光電変換部83との面積比を変化させる。すなわち、x方向+側に配列された撮像画素80では、撮像素子8の中心列Cからの距離が離れる程、第1光電変換部82のx方向の長さが増加し、第2光電変換部83のx方向の長さが減少する。x方向-側に配列された撮像画素80では、撮像素子8の中心列Cからの距離が離れる程、第1光電変換部82のx方向の長さが減少し、第2光電変換部83のx方向の長さが増加する。
【0026】
撮像素子8のうち、列方向(y方向)に配列された撮像画素80においては、それぞれの第1光電変換部82および第2光電変換部83は同一の面積を有する。すなわち、たとえば撮像画素80cと同一の列に配列された撮像画素80については、第1光電変換部82cと同一の面積の第1光電変換部82と、第2光電変換部83cと同一の面積の第2光電変換部83とが設けられる。
【0027】
本実施の形態においては、撮像画素80の第1光電変換部82および第2光電変換部83を上述した形状にすることにより、撮像素子8の周辺領域におけるケラレの影響を低減する。以下、その原理について説明する。
図4は撮像画素80の第1光電変換部82および第2光電変換部83の面積と、撮影レンズ系1の射出瞳領域との投影関係を模式的に示す。図4(a)は撮影レンズ系1の射出瞳距離PO1と撮像画素80の射出瞳距離PO2とが実質的に等しい場合、すなわち撮影レンズ系1がミラーレスカメラであるデジタルカメラ100に適合するように設計された専用の交換レンズ等の場合を示す。図4(b)は撮影レンズ系1の射出瞳距離PO1が撮像画素80の射出瞳距離PO2と比べて長い場合、すなわち撮影レンズ系1が、たとえば一眼レフカメラ用に設計された交換レンズや、ミラーレスカメラであるデジタルカメラ100に適合するように設計された専用の交換レンズであるが長い射出瞳距離PO1が設定されている場合を示す。なお、図4(b)においては、理解を容易にすることを目的として、射出瞳距離PO1とPO2が等しい場合の撮影レンズ系1を破線により示す。また、本実施の形態においては、撮像画素80の射出瞳距離PO2は、種々の専用の交換レンズごとに異なる射出瞳距離PO1のうちの中心値と比べて短くなるように設定されている。以下の説明では、図3においてx方向+側の周辺領域に配列された撮像画素80cを例に挙げて説明を挙げる。
【0028】
図4(a)に示すように、第1光電変換部82cは、被写体からの光束のうち、撮影レンズ系1の一対の射出瞳領域841および842のうち、射出瞳領域841を通過した光束851をマイクロレンズ81cを介して受光し、第2光電変換部83cは射出瞳領域842を通過した光束852をマイクロレンズ81cを介して受光する。上述したように、図4(a)は射出瞳距離PO1およびPO2が実質的に等しい場合を示しているので、光束851および852は撮影レンズ本体300の構造等によるケラレが無い、もしくはケラレが少ない状態にて第1光電変換部82cおよび第2光電変換部83cにそれぞれ入射する。
【0029】
図4(b)に示すように、被写体からの光束852は、撮影レンズ系1の射出瞳領域842を通過し、撮像画素80cのマイクロレンズ81cを介して第2光電変換部83cに入射する。撮影レンズ系1の射出瞳距離PO1が撮像画素80の射出瞳距離PO2と比べて長いため、被写体からの光束851は一部がケラレる。すなわち光束851のうち、光束851aが撮影レンズ系1の射出瞳領域841を通過し、マイクロレンズ81cを介して第1光電変換部82cに入射し、光束851bはケラレて第1光電変換部82cに入射しない。
【0030】
図4(c)の撮像画素80cの平面模式図において、光束852および上記のようにケラレの影響を受けた光束851と、撮像画素80cの第1光電変換部82cおよび第2光電変換部83cとの位置関係を示す。なお、図4(c)においては、光束851bにケラレの発生がなければ第1光電変換部82cに入射したであろう領域を破線で示す。本実施の形態においては、第1光電変換部82cは、光束851aが入射する領域82c1と、光束851bがケラレなければ入射したであろう領域821c2とを有する。撮像画素80cにおいては、第1光電変換部82cの領域82c1と光束852が入射する第2光電変換部83cとが同一の面積を有するように、境界部84cのx方向-側へのずれ量が決定されている。したがって、境界部84cがマイクロレンズ81cの中心に対してx方向-側にずれることにより、入射した光束852および851aは、第1光電変換部82cおよび第2光電変換部83cにおいて、それぞれ実質的に同一面積にて受光される。
【0031】
撮像画素80bについても撮像画素80cと同様に、境界部84bのずれ量、すなわち第1光電変換部82bと第2光電変換部83bとの面積が決定される。ただし、上述したように、撮像画素80bは、撮像画素80cよりもx方向-側に配列されるので、境界部84bのずれ量は境界部84cのずれ量と比べて小さい。すなわち、撮像画素80bの第1光電変換部82bの面積は、撮像画素80cの第1光電変換部82cの面積と比べて小さい。また、撮像素子8の中心列Cからx方向-側に配列された撮像画素8については、境界部84がマイクロレンズ81の中心に対してずれる方向、すなわち第1光電変換部82と第2光電変換部83の面積の大小関係が反対になる。
【0032】
図4(d)は撮像画素80cが配列される位置に撮像画素80aが配列されたと仮定した場合、すなわち境界部84がマイクロレンズ81の中心と実質的に一致する場合に、射出瞳距離PO1が射出瞳距離PO2よりも大きいとき、第1光電変換部82aおよび第2光電変換部83aにそれぞれ入射する光束851および852を模式的に示す平面図である。この場合、光束851がケラレることにより、光束851aが第1光電変換部82aは図の斜線を付した領域にて受光される。光束852は第2光電変換部83aの全領域にて受光される。このため、第1光電変換部82aからの撮像信号の出力は、第2光電変換部83aからの撮像信号の出力と比べて低下する。すなわち、第1光電変換部82cからの撮像信号が十分な出力に達する前に、第2光電変換部83cからの撮像信号の出力が飽和する。
【0033】
これに対して本実施の形態においては、図4(c)に示す構造を有している。したがって、第1光電変換部82cからの撮像信号の出力が第2光電変換部83cからの撮像信号の出力と比較して低下することを防ぎ、第1光電変換部82cからの撮像信号が十分な出力に達する前に、第2光電変換部83cからの撮像信号の出力が飽和することを防ぐ。
【0034】
焦点検出演算回路14は、上述した構造を有する撮像画素80から出力された撮像信号を焦点検出用信号として用いて、公知の位相差検出方式を用いてデフォーカス量を算出する。焦点検出演算回路14は、第1光電変換部82からの焦点検出信号を順次並べた第1信号列{an}と、第2光電変換部83からの焦点検出信号を順次並べた第2信号列{bn}との相対的なズレ量を検出し、撮影レンズ系1の焦点調節状態、すなわちデフォーカス量を検出する。
【0035】
画像処理回路13は、画像データを生成する際に、撮像画素80から出力された撮像信号を画像信号として使用する。画像処理回路13は、各撮像画素80について、第1光電変換部82から出力された撮像信号と、第2光電変換部83から出力された撮像信号とを加算して画像信号として扱う。したがって、第1光電変換部82と第2光電変換部83の面積差による影響はない。撮像画素80には、R色、G色またはB色の何れかのカラーフィルタが設けられているので、加算された画像信号は撮像画素80に設けられたカラーフィルタに応じた色情報を有する。画像処理回路13は、加算により生成した画像信号に対して種々の画像処理を施して画像データを生成し、付加情報等を付与して画像ファイルを生成する。
【0036】
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。全ての複数の撮像画素80では、一対の第1光電変換部82と第2光電変換部83との面積の合計が実質的に等しく、複数の撮像画素80の配列位置、すなわち撮像素子8の中心付近からの距離に応じて、一対の第1光電変換部82および第2光電変換部83の面積が異なる。すなわち、撮像素子8の中央付近からの距離が増加するほど、一対の第1光電変換部82と第2光電変換部83との面積差が増加する。したがって、射出瞳距離PO1が撮像素子8の射出瞳距離PO2よりも長い撮影レンズ系1が装着された場合のように、撮像素子8の周辺部にて入射光束がケラレの影響を受けるような場合であっても、第1光電変換部82または第2光電変換部83への入射光量を確保することができる。このため、ケラレの影響を受けた光束851を第1光電変換部82が演算可能となる光量を受光するまでに、第2光電変換部83がケラレの影響を受けていない光束852を受光した第2光電変換部83の出力が飽和することを防ぎ、焦点検出精度の低下を抑制できる。
【0037】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
(1)実施の形態においては、図4に示すように撮像画素80の射出瞳距離PO2よりも撮影レンズ系1の射出瞳距離PO1が長い場合について説明したが、射出瞳距離PO1が短い撮影レンズ系1が装着された場合について説明する。この場合、光束851にはケラレは生じないが光束852にはケラレが生じる。このため、被写体からの光束851は、撮影レンズ系1の射出瞳領域841を通過し、撮像画素80cのマイクロレンズ81cを介して第1光電変換部82cに入射する。また、光束852がケラレることにより、光束852の一部が撮影レンズ系1の射出瞳領域842を通過し、マイクロレンズ81cを介して第2光電変換部83cに入射する。この場合に撮像素子8の周辺領域におけるケラレの影響を低減するためには、撮像素子80cの第1光電変換部82cの面積を第2光電変換部83cの面積と比べて大きくなるように構成すればよい。すなわち、図3(a)に示す撮像画素80cに代えて撮像画素80eを配列すればよい。
【0038】
図5に、射出瞳距離PO1が射出瞳距離PO2よりも短い撮影レンズ系1に対応させる場合の撮像素子8における撮像画素80の配列の例を示す。図5に示すように、撮像素子8の中心列Cからx方向+側においては、第1光電変換部82の面積は第2光電変換部83の面積よりも小さく、かつ、中心列Cからの距離に応じて第1光電変換部82の面積と第2光電変換部83の面積との差分が大きくなる。x方向-側においては、第2光電変換部83の面積は第1光電変換部82の面積よりも小さく、かつ、中心列Cからの距離に応じて第2光電変換部83の面積と第1光電変換部82の面積との差分が大きくなる。この場合も、各行において、撮像素子8の中心列Cに配列される撮像画素80では、第1光電変換部82の面積と第2光電変換部83の面積とは等しい。
【0039】
(2)図6に、射出瞳距離PO1が射出瞳距離PO2よりも長い撮影レンズ系1と、射出瞳距離PO1が射出瞳距離PO2よりも短い撮影レンズ系1とのいずれの撮影レンズ系1に対しても対応させる場合の撮像素子8の撮像画素80の配列の例を示す。この場合、図3(a)に示す構造を有する撮像画素80が配列された行(図6の行D2、D4、D6)と、図5に示す構造を有する撮像画素80が配列された行(図6の行D1、D3、D5)とがy方向に沿って交互に配置される。したがって、射出瞳距離PO1が射出瞳距離PO2よりも長い撮影レンズ系1の場合には、行D2、D4、D6に配列された撮像画素80から出力された撮像信号を使用し、射出瞳距離PO1が射出瞳距離PO2よりも短い撮影レンズ系1の場合には、行D1、D3、D5に配列された撮像画素80から出力された撮像信号を使用することにより、ケラレによる影響を低減した焦点検出を行うことが可能となる。
【0040】
(3)撮像画素80が有する第1光電変換部82と第2光電変換部83とがx方向に並んで配列されるものに代えて、第1光電変換部82と第2光電変換部とがy方向に並んで配列されるものについても本発明の一態様に含まれる。また、撮像素子8は、第1光電変換部82と第2光電変換部83とがx方向に並んで配列された撮像画素80と、第1光電変換部82と第2光電変換部83とがy方向に並んで配列された撮像画素80とが配列されたものについても本発明の一態様に含まれる。
【0041】
(4)図7に示すように、一対の撮像画素80の一方に第1光電変換部82が配置され、他方の撮像画素80に第2光電変換部83が配置される撮像素子8についても本発明の一態様に含まれる。この場合、撮像素子8の中心列Cに配列された一対の撮像画素80a1および80a2においては、撮像画素80a1が有する第2光電変換部83aと、撮像画素80a2が有する第1光電変換部82aとは、実質的に面積が等しい。撮像素子8の周辺部(図7においてはx方向+側)に配置された一対の撮像画素80c1および80c2においては、撮像画素80c1が有する第2光電変換部83cの面積は、撮像画素80c2が有する第1光電変換部82cの面積と比べて大きい。面積の差分は実施の形態の場合と同様に、撮像素子8の中心列Cからの距離に応じて決定される。したがって、撮像素子8が図7に示す構成を有する撮像画素80により構成される場合であっても、撮像素子8の周辺部における光束のケラレの影響を低減して入射光量を維持することができるので、焦点検出精度の低下を抑制できる。
【0042】
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
8…撮像素子、13…画像処理回路、14…焦点検出演算回路、80…撮像画素、81…マイクロレンズ、82…第1光電変換部、83…第2光電変換部、100…デジタルカメラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7