(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022690
(43)【公開日】2024-02-19
(54)【発明の名称】光学積層体、画像表示装置及びガラス複合体
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240209BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20240209BHJP
G02F 1/13363 20060101ALI20240209BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20240209BHJP
G02F 1/1337 20060101ALI20240209BHJP
G02F 1/1347 20060101ALI20240209BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240209BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20240209BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240209BHJP
G02B 27/01 20060101ALN20240209BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335
G02F1/1335 510
G02F1/13363
G02F1/13 505
G02F1/1337 525
G02F1/1347
G09F9/00 313
H10K50/86
H10K59/10
G02B27/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023188079
(22)【出願日】2023-11-02
(62)【分割の表示】P 2022515269の分割
【原出願日】2021-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2020072359
(32)【優先日】2020-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021034423
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】大室 克文
(72)【発明者】
【氏名】山田 直良
(72)【発明者】
【氏名】三戸部 史岳
(72)【発明者】
【氏名】柴田 直也
(57)【要約】
【課題】 本発明は、高精細な画像表示装置と組み合わせて使用した場合にもモアレの発生がなく、かつ、フィルムの法線方向から斜めとなる方向に出射する光を十分に遮光することができる、光学積層体、画像表示装置及びガラス複合体を提供することを課題とする。
【解決手段】少なくとも第1の光吸収異方性層、一層以上のツイスト構造を有する液晶性化合物を含有する屈折率異方性層、および、第2の光吸収異方性層をこの順に有し、上記第1の光吸収異方性層、および、第2の光吸収異方性層は、異方性吸収材料を含有し、吸収軸が膜面に対し60度~90度の角度で配向している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の光吸収異方性層、一層以上のツイスト構造を有する液晶性化合物を含有する屈折率異方性層、および、第2の光吸収異方性層をこの順に有し、
前記第1の光吸収異方性層、および、前記第2の光吸収異方性層は、異方性吸収材料を含有し、吸収軸が膜面に対し60度~90度の角度で配向している、光学積層体。
【請求項2】
前記第1の光吸収異方性層および前記第2の光吸収異方性層は、吸収軸が膜面に対し80度~90度の角度で配向している、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記ツイスト構造を有する屈折率異方性層のツイスト角が、式Iを満たす請求項1または2に記載の光学積層体。
135・(2n-1) ≧ツイスト角(度)≧45・(2n-1) 式I
前記式I中、nは自然数を表す。
【請求項4】
前記屈折率異方性層の両面それぞれに配置され且つ少なくとも一方が透明電極を有する第1の基板及び第2の基板を有し、前記屈折率異方性層が液晶セルであり、前記屈折率異方性層、前記第1の基板および前記第2の基板が、電気的に複屈折性スイッチングできる液晶パネルを構成している請求項1~3のいずれか一項に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記液晶セルが電気的に複屈折性スイッチングできるTN液晶セルまたは電圧印加状態でツイスト構造を発現するVATN液晶セルである請求項4に記載の光学積層体。
【請求項6】
前記屈折率異方性層が、膜厚方向にツイスト配向した状態に固定された円盤状液晶性化合物または棒状液晶性化合物を含有する組成物を重合して形成される請求項1~3のいずれか一項に記載の光学積層体。
【請求項7】
前記異方性吸収材料が、2色性物質である請求項1~6のいずれか一項に記載の光学積層体。
【請求項8】
前記2色性物質が、二色性色素、カーボンナノチューブ、及び、異方性金属ナノ粒子のいずれかである請求項7に記載の光学積層体。
【請求項9】
前記第1の光吸収異方性層および前記第2の光吸収異方性層が液晶性化合物と、少なくとも1種類の2色性物質が膜面に対し垂直に配向している、請求項7または8に記載の光学積層体。
【請求項10】
前記異方性金属ナノ粒子の材料が、金、銀、銅、及びアルミニウムから選択される少なくとも1種である請求項8に記載の光学積層体。
【請求項11】
前記第1の光吸収異方性層および前記第2の光吸収異方性層の一方もしくは両方に対して、液晶化合物と2色性物質が膜面に対し水平に配向している偏光子を積層した請求項1~10のいずれか一項に記載の光学積層体。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の光学積層体が前面に配置された画像表示装置。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の光学積層体が液晶セルとバックライト光源の間に配置された画像表示装置。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか一項に記載の光学積層体と、位相差層と、吸収軸が膜面に対し水平配向した偏光子とを、この順に有する、画像表示装置。
【請求項15】
表示部分に曲面部を有する、請求項12~14のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項16】
少なくともガラスと、請求項1~11のいずれか一項に記載の光学積層体と、を有するガラス複合体。
【請求項17】
2枚の板ガラス間に中間層を有する合わせガラスであり、前記中間層が請求項1~11のいずれか一項に記載の光学積層体を含むガラス複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツイスト構造を有する液晶性化合物を含有する屈折率異方性層と吸収軸が膜面に対し60度~90度の角度で配向している光吸収異方性層を有する光学積層体、ならびに、この光学積層体を液晶ディスプレイや有機ELなどの表示装置と組み合わせた画像表示装置、および、この光学積層体をガラスと組み合わせたガラス複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置および有機EL表示装置等の画像表示装置は、スマートフォンおよびノートパソコン等のディスプレイとして多く使用されている。これらのデバイスは、近年、薄型化および軽量化が進み持ち運びやすくなったため、列車、航空機等の交通機関、ならびに、図書館、飲食店等の公共の場で使用されることが多くなってきている。そこで、個人情報および機密情報等を保護する必要性から、画像表示装置の表示内容が他者に覗き見られることを防止する技術が求められている。
また、画像表示装置は、近年、自動車の車内に設置される車載ディスプレイとしても利用されている。車載ディスプレイの大型化が進んだ結果、ディスプレイから出射する光がフロントガラスおよびサイドガラス等に映り込み、運転の妨げとなる場合があることが問題となっており、映り込みを防止する技術が求められている。
【0003】
液晶表示装置の覗き込み防止および視角制御のため、厚さ方向に吸収軸を持つ異方性光吸収層を併用する技術が知られている。例えば特許文献1及び2では2色性物質を含有し、吸収軸とフィルム面の法線とのなす角が0°~45°であるフィルムを用いた視角制御システムに関する偏光素子が提案されている。
【0004】
また、特許文献3には、フィルムの面内において光透過領域と光吸収領域とを交互に配置し、フィルムの法線方向に対し斜め方向への光の出射が制限される視角制御システムが開示されている。このような視角制御システムは、一般的にルーバーフィルムと呼ばれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4902516号公報
【特許文献2】国際公開第2018/079854号
【特許文献3】特許第6345732号公報
【特許文献4】特開2008-165201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3に記載のルーバーフィルムは、フィルムの法線方向に対して斜め方向に出射する光を十分に遮光することができるため、ノートパソコン等の覗き見防止、ならびに、車載ディスプレイのフロントガラスおよびサイドガラス等への映り込み防止を目的として、一般的に使用されている。
しかし、ルーバーフィルムは光透過領域と光吸収領域とが数十μm程度のピッチで交互に積層されるため、それらの周期構造が画像表示装置の画素と干渉し、モアレと呼ばれる縞模様が発生することがある。特に、近年の画像表示装置は画素が高精細化しているため、モアレの問題が顕著になりつつある。
また、ルーバーフィルムは一般的にポリカーボネートフィルム等からなる基材層を有し、300μm以上の厚みがあるため、折り曲げることが容易ではない。近年、車載ディスプレイ等として用いられる画像表示装置には表示面が曲面となっているものがあり、これらの画像表示装置に対しては、ルーバーフィルムを適用することが困難である。
さらに、ルーバーフィルムは上下方向または左右方向の視野角制御のため、ノートパソコン等の覗き見防止、ならびに、車載ディスプレイのフロントガラスおよびサイドガラス等への映り込み防止を目的とした、正面方向のみの視野角制御を実現するには、縦、横2枚のルーバーフィルムを重ねる必要があるが、正面輝度低下や、モアレ、画像のボケによる表示品位低下が課題となる。
【0007】
特許文献1および2に記載の視角制御システムは、画像表示装置の画素と干渉するような周期構造を有さないため、モアレの発生なく使用することができる。また、特許文献1および2に記載の視角制御システムは、偏光子が数~数十μmの厚みであり、その他の基材層を含めても全体の厚みを薄くすることができるため、容易に曲面に追従させることができる。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1および2に記載の視角制御システムは、フィルムの法線方向に対し斜めの方向における透過率を十分に小さくすることができず、斜めに出射する光の遮光が不十分であるため、ノートパソコン等の覗き見防止、ならびに、車載ディスプレイのフロントガラスおよびサイドガラス等への映り込み防止の目的に使用するには、遮光性能が不足している。
また、特許文献4に記載の視角制御システムでは、偏光軸を垂直方向に有する偏光子の間にλ/2位相差を挟む構成が開示されている。しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献4記載の視角制御システムにおいても、フィルムの法線方向に対し斜めの方向における透過率を十分に小さくすることができず、斜めに出射する光の遮光が不十分であることがわかった。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、高精細な画像表示装置と組み合わせて使用した場合にもモアレの発生がなく、かつ、フィルムの法線方向から斜めとなる方向に出射する光を十分に遮光することができる、光学積層体、画像表示装置及びガラス複合体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、液晶ディスプレイなどの表示装置の表示面または、BL(バックライト)側に、ツイスト構造を有する液晶性化合物を含有する屈折率異方性層と、吸収軸が膜面に対し60度~90度の角度で配向している光吸収異方性層を有する光学積層体と組み合わせることで、優れた視野制御可能であることを見出した。
【0010】
<1>
少なくとも第1の光吸収異方性層、一層以上のツイスト構造を有する液晶性化合物を含有する屈折率異方性層、および、第2の光吸収異方性層をこの順に有し、
上記第1の光吸収異方性層、および、第2の光吸収異方性層は、異方性吸収材料を含有し、吸収軸が膜面に対し60度~90度の角度で配向している、光学積層体。
<2>
上記第1の光吸収異方性層および第2の光吸収異方性層は、吸収軸が膜面に対し80度~90度の角度で配向している<1>に記載の光学積層体。
<3>
上記ツイスト構造を有する屈折率異方性層のツイスト角が、式Iを満たす<1>または<2>に記載の光学積層体。
135・(2n-1) ≧ツイスト角(度)≧45・(2n-1) 式I
上記式I中、nは自然数を表す。
<4>
上記屈折率異方性層の両面それぞれに配置され且つ少なくとも一方が透明電極を有する第1の基板及び第2の基板を有し、屈折率異方性層が液晶セルであり、前記屈折率異方性層、第1の基板および第2の基板が、電気的に複屈折性スイッチングできる液晶パネルを構成している<1>~<3>のいずれかに記載の光学積層体。
<5>
上記液晶セルが電気的に複屈折性スイッチングできるTN液晶セルまたは電圧印加状態でツイスト構造を発現するVATN液晶セルである<4>に記載の光学積層体。
<6>
上記屈折率異方性層が、膜厚方向にツイスト配向した状態に固定された円盤状液晶性化合物または棒状液晶性化合物を含有する組成物を重合して形成される<1>~<3>のいずれかに記載の光学積層体。
<7>
上記異方性吸収材料が、2色性物質である<1>~<6>のいずれかに記載の光学積層体。
<8>
2色性物質が、二色性色素、カーボンナノチューブ、及び、異方性金属ナノ粒子のいずれかである<7>に記載の光学積層体。
<9>
上記第1の光吸収異方性層および第2の光吸収異方性層が液晶性化合物と、少なくとも1種類の2色性物質が膜面に対し垂直に配向してある、<7>または<8>に記載の光学積層体。
<10>
上記異方性金属ナノ粒子の材料が、金、銀、銅、及びアルミニウムから選択される少なくとも1種である<8>に記載の光学積層体。
<11>
上記第1の光吸収異方性層および第2の光吸収異方性層の一方もしくは両方に対して、液晶化合物と2色性物質が膜面に対し水平に配向している偏光子を積層した<1>~<10>のいずれかに記載の光学積層体。
<12>
<1>~<11>のいずれかに記載の光学積層体が前面に配置された画像表示装置。
<13>
<1>~<11>のいずれかに記載の光学積層体が液晶セルとバックライト光源の間に配置された画像表示装置。
<14>
<1>~<11>のいずれかに記載の光学積層体と、位相差層と、吸収軸が膜面に対し水平配向した偏光子とを、この順に有する、画像表示装置。
<15>
表示部分に曲面部を有する、<12>~<14>のいずれかに記載の画像表示装置。
<16>
少なくともガラスと、<1>~<11>のいずれかに記載の光学積層体と、を有するガラス複合体。
<17>
2枚の板ガラス間に中間層を有する合わせガラスであり、上記中間層が<1>~<11>のいずれかに記載の光学積層体を含むガラス複合体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、正面方向から見た場合の透過率が高く、且つ、斜め方向の透過率を低くすることができる光学積層体、画像表示装置及びガラス複合体を提供することができる。さらに、本発明の好ましい態様においては、ツイスト構造を有する液晶性化合物をTN液晶セルまたは、VATN液晶セルに置き換えることで、電気的に液晶層の屈折異方性を制御することで、狭い視野と広い視野を電気的に制御可能な画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】従来技術の視角制御システムを表す模式図である。
【
図2】本発明の光学積層体を有する画像表示装置の一例を表す模式図である。
【
図3】本発明の光学積層体を有する画像表示装置の他の一例を表す模式図である。
【
図4】本発明の光学積層体を有する画像表示装置の他の一例を表す模式図である。
【
図5】本発明の光学積層体を有する画像表示装置の他の一例を表す模式図である。
【
図6】本発明の光学積層体を有する画像表示装置の他の一例を表す模式図である。
【
図7】本発明の光学積層体を有する画像表示装置の他の一例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
本明細書において、平行、直交とは厳密な意味での平行、直交を意味するのではなく、平行または直交から±5°の範囲を意味する。また、本明細書において、特に記載がないとき、極角とは、フィルムの法線方向とのなす角を意味する。
【0015】
また、本明細書において、液晶性組成物、液晶性化合物とは、硬化等により、もはや液晶性を示さなくなったものも概念として含まれる。
【0016】
また、本明細書において、各成分は、各成分に該当する物質を1種単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上の物質を併用する場合、その成分についての含有量とは、特段の断りが無い限り、併用した物質の合計の含有量を指す。
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を表す表記であり、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を表す表記であり、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」または「メタクリロイル」を表す表記である。
【0017】
本発明において、屈折率nxおよびnyは、それぞれ、光学部材の面内方向における屈折率であり、通常、nxが遅相軸方位の屈折率、nyが進相軸方位(すなわち、遅相軸と直交する方位)の屈折率である。また、nzは厚み方向における屈折率である。nx、ny、およびnzは、例えば、アッベ屈折計(NAR-4T、アタゴ(株)製)を使用し、光源にナトリウムランプ(λ=589nm)を用いて測定することができる。また、波長依存性を測定する場合は、多波長アッベ屈折計DR-M2(アタゴ(株)製)にて、干渉フィルタとの組合せで測定できる。また、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することもできる。
【0018】
本明細書において、Re(λ)およびRth(λ)は、各々、波長λにおける面内の位相差および厚み方向の位相差を表し、屈折率nx、ny、およびnzと、膜厚d(μm)を用いて、以下の式(1)および式(2)で表される。
式(1) : Re(λ)=(nx-ny)×d×1000(nm)
式(2) : Rth(λ)=((nx+ny)/2-nz)×d×1000(nm)
特に記載がないとき、波長λは550nmとする。
遅相軸方位、Re(λ)、およびRth(λ)は、例えば、AxoScan OPMF-1(オプトサイエンス社製)を用いて測定することができる。
【0019】
本明細書において、Δndとは、ツイスト構造を有する棒状または円盤状液晶化合物及びTN液晶セルまたは、VATN液晶セルのレタデーションを示すもので、液晶層の厚さdと液晶の複屈折率Δnの積で示される。また、ツイスト角は、屈折率異方性層の液晶ダイレクタが基板上下面で回転している確度を示す。
また、本発明での、ツイスト構造を有する屈折率異方性層は、下記式を満足していると、本発明の効果が得られるので好ましい。
式(3) : 200nm≦Δn・d≦1500nm。
式(4) :135・(2n-1) ≧ツイスト角(度)≧45・(2n-1)
上記、式(4)でnは自然数
特に記載がないとき、Δnは波長550nmにおける値とする。
【0020】
従来技術の説明。
はじめに、特許文献1に記載の従来の視角制御システムについて、視角を制御する仕組みを説明する。
図1は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、μLEDディスプレイ等の表示装置200の上に、フィルムの法線方向に吸収軸11を有する光吸収異方性層101aと、フィルムの面内方向に吸収軸21を有する第2の偏光子101bとが積層されてなる、従来の視角制御システムの断面図である。
図1に示すように、視角制御システムを正面1(すなわち、フィルムの法線方向)から視認したとき、吸収軸11は視線方向に対し水平となるため、光吸収異方性層101aは視線方向に進む光を吸収しない。したがって、従来の視角制御システムは光を透過する。
一方、従来の視角制御システムを斜め方位2から視認した場合、フィルムの法線方向に吸収軸11を有する光吸収異方性層101aと、フィルムの面内方向に吸収軸21を有する第2の偏光子層101bの吸収軸21の方位(紙面奥行き方向)が直交するため光が透過しないため、光が横方向に漏れない。また、従来の視角制御システムを上下方向(紙面奥行き方向;図示せず)で視認した場合、フィルムの法線方向に吸収軸11を有する光吸収異方性層101aと、フィルムの面内方向に吸収軸21を有する第2の偏光子層101bの吸収軸21の方位(紙面奥行き方向)は平行となり光が透過することとなる。そのため、従来の視角制御システムでは、全方位での十分な遮光性が得られず、十分な遮光性が得られないことがわかった。
【0021】
本発明では、正面方向から見た場合の透過率が高く、且つ、斜め方向の透過率を低くすることができる光学積層体、及び斜め全方位で遮光可能な、よりのぞき見できないセキュリティの高い視角を制御できる画像表示装置を実現することができる。さらに、本発明では、ツイスト構造を有する液晶性化合物をTN液晶セルまたは、VATN液晶セルに置き換えることで、電気的に液晶層の屈折異方性を制御することで、狭い視野と広い視野を電気的に制御可能な視野角制御な画像表示装置を実現できる。
【0022】
(本発明の光学積層体および画像表示装置の基本構成)
次に、本発明の光学積層体および画像表示装置において、遮光する角度範囲が拡大する仕組みについて説明する。
本発明者は、さらに検討を進めた結果、
図2に示すように液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、μLEDディスプレイ等の表示装置200の上に、フィルムの法線方向に吸収軸11を有する2枚の光吸収異方性層101aの間に、90°ツイスト構造を有する(光学的に旋光性)屈折率異方性層102を積層することにより、全方位の斜め光を遮光し、優れた視野角制御が実現できることを見出した。また、本発明の効果は、膜厚方向にツイスト配向した状態に固定された棒状液晶性化合物だけでなく、円盤状液晶でも実現できることを発見した。また、90°ツイスト構造に限定されるものでなく、光学的に旋光性を示せばよく、より好ましくは、下記式Iを満たすツイスト角の屈折率異方性層の実現で、斜め方位を遮光し、視野角を制御できることを見出した。
135・(2n-1) ≧ツイスト角(度)≧45・(2n-1) 式I
上記式I中、nは自然数を表す。
さらに、本発明者らは鋭意検討を進めた結果、
図3に示すように、屈折率異方性層102cとして、電気的に複屈折制御可能なTN型液晶セルまたは、特開平10-123576に開示されている電圧印加状態でツイスト構造を発現するVATN型液晶セルを用いることで、正面方向から見た場合の透過率が高く、且つ、斜め方向の透過率を低くすることができるセキュリティーモードと、正面方向および斜め方向の透過率が高い広視野角モードを電気的に切り替え可能なセキュリティの高い視野角制御できる画像表示装置を実現した。
【0023】
本発明の光学積層体は、フィルム表面に対して斜め方向(ある極角方向)から観察した場合に、2枚の光吸収異方性層101aの吸収軸11は平行になる。2枚の光吸収異方性層101aの間に配置される屈折率異方性層102は、入射した直線偏光の偏光方向を略90°旋光させる。そのため、一方の光吸収異方性層101aを通過した直線偏光は、屈折率異方性層102によって偏光方向を略90°旋光される。これにより、屈折率異方性層102によって旋光された直線偏光の偏光方向は、他方の光吸収異方性層101aの吸収軸の方向と略平行になり、他方の光吸収異方性層101aによって吸収される。これにより、フィルム表面に対して斜め方向の光を遮光する。ここで、屈折率異方性層102は、直線偏光の偏光方向に依らず、入射した光を旋光させることができるため、全方位の斜め光を遮光することができる。
直線偏光の偏光方向を90°旋回させる光学素子として、λ/2板が知られているが、λ/2板は特定の方向の直線偏光にのみ作用するため、特定の方位の斜め光を遮光することはできるが、方位によっては斜め光を遮光することができない。これに対して、本発明では、ツイスト構造を有する屈折率異方性層を用いているため、全方位の斜め光を遮光することができる。
【0024】
(本発明の画像表示装置の実施形態の一例)
図4に示すように、液晶セル301及び、液晶セル301の上下に配置したクロスニコルの偏光板302a、302bで構成された液晶パネル300及び面光源400で構成される液晶ディスプレイ(IPS、VA、TN等)において、液晶パネル300と面光源400との間に、フィルムの法線方向に吸収軸11を有する、2枚の光吸収異方性層101aの間に、90°ツイスト構造を有する(光学的に旋光性)屈折率異方性層102を積層した本発明の光学積層体を設けることにより、全方位の斜め光を遮光する画像表示装置が実現できた。
【0025】
(本発明の光学積層体および画像表示装置の実施形態の他の一例)
図5に示すように、上記
図4の構成にて、上記屈折率異方性層に、電気的に複屈折性を制御可能なTN型液晶セルまたは、特開平10-123576に開示されている電圧印加状態でツイスト構造を発現するVATN型液晶セルを用いることで、正面方向から見た場合の透過率が高く、且つ、斜め方向の透過率を低くすることができるセキュリティーモードと、正面方向および斜め方向の透過率が高い広視野角モードを電気的に切り替え可能なセキュリティの高い視野角制御できる画像表示装置を実現できた。
すなわち、屈折率異方性層の両面それぞれに第1の基板及び第2の基板を設け、第1の基板及び第2の基板の少なくとも一方が透明電極を有する構成として、屈折率異方性層、第1の基板及び第2の基板で液晶パネルを構成してもよい。
【0026】
(本発明の画像表示装置の実施形態の他の一例)
図6に示すように、液晶セル301及び、液晶セル301の上下に配置したクロスニコルの偏光板302a、302bで構成された液晶パネル300及び面光源400で構成される液晶ディスプレイ(IPS、VA、TN等)の液晶パネル300の視認側に、フィルムの法線方向に吸収軸11を有する、2枚の光吸収異方性層101aの間に、90°ツイスト構造を有する(光学的に旋光性)屈折率異方性層102を積層した本発明の光学積層体を設けることにより、全方位の斜め光を遮光する視野角制御できる画像表示装置が実現できた。
【0027】
(本発明の光学積層体の実施形態の他の一例)
本発明の光学積層体は、第1の光吸収異方性層および第2の光吸収異方性層の一方もしくは両方に対して、液晶化合物と2色性物質が膜面に対し水平に配向している光吸収異方性層(偏光子層)を積層した構成としてもよい。
このような構成とすることで、偏光子層を、液晶パネルにおける偏光子として用いることができる。また、偏光子層を、有機EL表示装置や、マイクロLED表示装置等の反射防止用偏光子として用いることもできる。このようにして、全方位の斜め光を遮光する視野角制御ができる画像表示装置を構成することができる。
なお、光学積層体が画像表示装置と組み合わせて用いられる場合に、液晶ディスプレイ等のように、画像表示装置が偏光子(偏光板)を有する場合には、画像表示装置の偏光子を上記偏光子層として用いてもよい。
【0028】
(本発明の光学積層体および画像表示装置の実施形態の他の一例)
図7に示す例は、液晶セル301及び、液晶セル301の上下に配置したクロスニコルの偏光板302a、302bで構成された液晶パネル300及び面光源400で構成される液晶ディスプレイ(IPS、VA、TN等)と、液晶パネル300の視認側に、フィルムの法線方向に吸収軸11を有する、2枚の光吸収異方性層101aの間に、90°ツイスト構造を有する(光学的に旋光性)屈折率異方性層102cを積層した本発明の光学積層体と、光学積層体と液晶パネル300との間に配置される位相差層500とを有する。すなわち、
図7に示す例は、光学積層体と、位相差層と、偏光子とをこの順に有する。
【0029】
光学積層体と偏光子とを組み合わせた場合には、ある方位方向では常に遮光状態となってしまう。そのため、屈折率異方性層として、電気的に複屈折制御可能な液晶層を用いて斜め方向の透過率を低くするモードと、正面方向および斜め方向の透過率が高い広視野角モードとを電気的に切り替え可能な屈折率異方性層102cを用いた場合に、広視野角モードにしても、ある方位方向では遮光状態となってしまう。
これに対して、光学積層体と偏光子との間に、位相差層を設けることにより、ある方位方向では常に遮光状態となってしまうことを抑制し、広視野角モードにおいて、全方位の斜め方向の透過率を高くすることができる。
【0030】
位相差層としては、一般的なλ/4位相差板、あるいは、遅相軸が膜面に対してチルトしているOプレートを、好適に用いることができる。
【0031】
以下、本発明の光学積層体および画像表示装置に用いることができる光学部材について、詳細に説明する。
【0032】
(光吸収異方性層)
本発明における第1の光吸収異方性層および第2の光吸収異方性層(以下、まとめて、光吸収異方性層として説明する)は、吸収軸の方向が膜面に対し60°以上90°以下の角度をなすことを特徴とする。光吸収異方性層の吸収軸の方向は、画像表示装置の透過率が最も高くなる方向に略一致する。
例えば、画像表示装置の覗き見防止に使用する場合等には、正面方向の透過率を最大にすることが好ましい。この場合、光吸収異方性層の吸収軸は、フィルムの法線方向と一致させ、膜面に対し垂直になるようにすればよい。正面方向の透過率を最大にする観点から、光吸収異方性層は、吸収軸が膜面に対し80度~90度の角度で配向していることが好ましい。
また、光吸収異方性層の吸収軸は、場所により異なる方向となるようにしてもよい。例えば、表示面が曲面となっている車載ディスプレイにおいて、どの位置からの出射光もフロントガラス等に映り込まず、かつ、運転者から適切に視認できるようにするためには、光吸収異方性層の吸収軸の方向を曲面に合わせて調整することが好ましい。
【0033】
本発明における光吸収異方性層は、少なくとも1種の二色性物質(色素)がフィルム面に対し垂直に配向している光吸収異方性層を有することができる。光吸収異方性層は、複数種の二色性物質を含むこともできる。例えば、赤色の波長域において二色性を示すシアン色素、緑色の波長域において二色性を示すマゼンタ色素、および、青色の波長域において二色性を示すイエロー色素を含むことが好ましい。複数種の二色性物質を含んでいると、色味をニュートラルにし、可視光の波長域全体にわたって視角制御効果を発現させることができる。
なお、二色性物質とは二色性を示す物質のことであり、二色性とは、偏光方向によって吸光度が異なる性質を意味する。
二色性物質の波長550nmにおける配向度は、0.95以上であることが好ましい。二色性物質の配向度が0.95以上であると、吸収軸の方向(すなわち、光を透過させたい方向)における透過率を高くすることができる。また、色味をニュートラルにできる点で、二色性物質の波長420nmにおける配向度は、0.93以上であることが好ましい。
光吸収異方性層の厚さは、特に限定されないが、フレキシブル性の観点から、100~8000nmであることが好ましく、300~5000nmであることがより好ましい。
【0034】
[二色性物質]
本発明に用いられる二色性物質は、二色性を示す物質であれば特に限定されず、二色性色素、二色性アゾ化合物、紫外線吸収物質、赤外線吸収物質、非線形光学物質、カーボンナノチューブ、異方性金属ナノ粒子、無機物質などが挙げられる。特に好ましくは、二色性アゾ色素化合物である。
【0035】
本発明に用いられる二色性アゾ色素化合物は、特に限定されず、従来公知の二色性アゾ色素を使用することができる。二色性アゾ色素化合物は、液晶性を示してもよいし、液晶性を示さなくてもよい。二色性アゾ色素化合物が液晶性を示す場合には、ネマチック性またはスメクチック性のいずれを示してもよい。液晶相を示す温度範囲は、室温(約20℃~28℃)~300℃が好ましく、取扱い性および製造適性の観点から、50℃~200℃であることがより好ましい。
【0036】
本発明においては、耐押圧性がより良好となる観点から、二色性アゾ色素化合物が架橋性基を有していることが好ましい。架橋性基としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、オキセタニル基、スチリル基などが挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0037】
二色性物質が異方性金属ナノ粒子である場合は、異方性金属ナノ粒子の材料が、金、銀、銅、及びアルミニウムから選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0038】
[液晶性化合物]
光吸収異方性層は、液晶性化合物を有することができる。液晶性化合物を有することで、二色性物質の析出を抑止しながら、二色性物質を高い配向度で配向させることができる。
液晶性化合物としては、低分子液晶性化合物および高分子液晶性化合物のいずれを用いることも可能であり、両方を併用することも好ましい。ここで、「低分子液晶性化合物」とは、化学構造中に繰り返し単位を有さない液晶性化合物のことをいう。また、「高分子液晶性化合物」とは、化学構造中に繰り返し単位を有する液晶性化合物のことをいう。
【0039】
低分子液晶性化合物としては、ネマチック液晶性を示す化合物、スメクチック液晶性を示す化合物のどちらでも良いが、高配向度の観点では、スメクチック液晶性を示す化合物が好ましい。例えば、特開2013-228706号公報に記載されている液晶性化合物が挙げられる。
【0040】
高分子液晶性化合物としては、例えば、特開2011-237513号公報に記載されているサーモトロピック液晶性高分子が挙げられる。また、高分子液晶性化合物は、強度(特に、フィルムの耐屈曲性)が優れるという観点から、末端に架橋性基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。架橋性基としては、例えば、特開2010-244038号公報の[0040]~[0050]段落に記載された重合性基が挙げられる。これらの中でも、反応性および合成適性の向上の観点から、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、オキセタニル基、および、スチリル基が好ましく、アクリロイル基およびメタクリロイル基がより好ましい。
【0041】
光吸収異方性層が高分子液晶性化合物を含む場合、高分子液晶性化合物は、ネマチック液晶相を形成するのが好ましい。ネマチック液晶相を示す温度範囲は、室温(23℃)~450℃が好ましく、取り扱いや製造適性の観点から、50℃~400℃が好ましい。
【0042】
光吸収異方性層における液晶性化合物の含有量は、二色性物質の含有量100質量部に対して、25~2000質量部が好ましく、100~1300質量部がより好ましく、200~900質量部がさらに好ましい。液晶性化合物の含有量が上記範囲内にあることで、二色性物質の配向度がより向上する。
液晶性化合物は、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。液晶性化合物が2種以上含まれる場合、上記液晶性化合物の含有量は、液晶性化合物の含有量の合計を意味する。
【0043】
[添加剤]
光吸収異方性層は、さらに、溶媒、垂直配向剤、界面改良剤、レベリング剤、重合性成分、重合開始剤(例えば、ラジカル重合開始剤)、耐久性改良剤等の添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、適宜、公知のものを用いることができる。
【0044】
[基材層]
光吸収異方性層は、基材層を有しても良い。
基材層としては、特に限定されないが、透明なフィルムまたはシートが好ましく、公知の透明樹脂フィルム、透明樹脂板、透明樹脂シート、ガラスなどを用いることができる。透明樹脂フィルムとしては、セルロースアシレートフィルム(例えば、セルローストリアセテートフィルム、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム)、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルニトリルフィルム等が使用できる。
その中でも、透明性が高く、光学的に複屈折が少なく、製造が容易であり、偏光板の保護フィルムとして一般に用いられているセルロースアシレートフィルムが好ましく、セルローストリアセテートフィルムが特に好ましい。
透明基材フィルムの厚さは、20μm~100μmが好ましい。
【0045】
[配向膜]
光吸収異方性層は、基材層と光吸収異方性層との間に、配向膜を有していてもよい。
配向膜は、配向膜上において二色性物質(液晶性化合物)を所望の配向状態とすることができるものであれば、どのような層でもよい。
例えば、多官能アクリレート化合物から形成される膜やポリビニルアルコールを用いても良い。特にポリビニルアルコールが好ましい。
アゾ化合物やシンナモイル化合物のような光配向膜に対して斜め方向からUV照射することで、吸収軸をフイルムの法線方向に対して傾けることが可能となる。
【0046】
[バリア層]
光学異方性層は、バリア層を有していることが好ましい。
ここで、バリア層は、ガス遮断層(酸素遮断層)とも呼ばれ、大気中の酸素等のガス、水分、または、隣接する層に含まれる化合物等から光吸収異方性層を保護する機能を有する。
バリア層については、例えば、特開2014-159124号公報の[0014]~[0054]段落、特開2017-121721号公報の[0042]~[0075]段落、特開2017-115076号公報の[0045]~[0054]段落、特開2012-213938号公報の[0010]~[0061]段落、特開2005-169994号公報の[0021]~[0031]段落の記載を参照できる。
【0047】
[屈折率調整層]
光吸収異方性層は、上述した光吸収異方性層が二色性物質を有し、光吸収異方性層の高屈折率に起因する内部反射が問題となる場合がある。その場合に、光学積層体に屈折率調整層が存在することが好ましい。屈折率調整層は、光吸収異方性層に接するように配置され、所謂インデックスマッチングを行うための屈折率調整層であり、波長550nmにおける面内平均屈折率が1.55以上1.70以下であることが好ましい。
【0048】
[光吸収異方性層の形成方法]
光吸収異方性層の形成方法は特に限定されず、例えば、光吸収異方性層形成用組成物を塗布して塗布膜を形成する工程(以下、「塗布膜形成工程」ともいう。)と、塗布膜に含まれる液晶性成分や二色性物質を配向させる工程(以下、「配向工程」ともいう。)と、をこの順に含む方法が挙げられる。
なお、液晶性成分とは、上述した液晶性化合物だけでなく、上述した二色性物質が液晶性を有している場合は、液晶性を有する二色性物質も含む成分である。
【0049】
[塗布膜形成工程]
塗布膜形成工程は、光吸収異方性層形成用組成物を塗布して塗布膜を形成する工程である。
溶媒を含有する光吸収異方性層形成用組成物を用いたり、光吸収異方性層形成用組成物を加熱などによって溶融液などの液状物としたものを用いたりすることにより、光吸収異方性層形成用組成物を塗布することが容易になる。
光吸収異方性層形成用組成物の塗布方法としては、具体的には、例えば、ロールコーティング法、グラビア印刷法、スピンコート法、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、スプレー法、および、インクジェット法などの公知の方法が挙げられる。
【0050】
[配向工程]
配向工程は、塗布膜に含まれる液晶性成分を配向させる工程である。これにより、光吸収異方性層が得られる。
配向工程は、乾燥処理を有していてもよい。乾燥処理によって、溶媒などの成分を塗布膜から除去することができる。乾燥処理は、塗布膜を室温下において所定時間放置する方法(例えば、自然乾燥)によって行われてもよいし、加熱および/または送風する方法によって行われてもよい。
ここで、光吸収異方性層形成用組成物に含まれる液晶性成分は、上述した塗布膜形成工程または乾燥処理によって、配向する場合がある。例えば、光吸収異方性層形成用組成物が溶媒を含む塗布液として調製されている態様では、塗布膜を乾燥して、塗布膜から溶媒を除去することで、光吸収異方性を持つ塗布膜(すなわち、光吸収異方性膜)が得られる。
塗布膜に含まれる液晶性成分が液晶相から等方相へと転移する温度以上の温度で乾燥処理が行われる場合には、後述する加熱処理は実施しなくてもよい。
【0051】
塗布膜に含まれる液晶性成分の液晶相から等方相への転移温度は、製造適性等の面から10~250℃が好ましく、25~190℃がより好ましい。転移温度が10℃以上であると、液晶相を呈する温度範囲にまで温度を下げるための冷却処理等が不要であり、好ましい。また、転移温度が250℃以下であると、配向欠陥を抑制する目的で等方相となるまで加熱する場合にも高温を要さず、熱エネルギーの浪費、ならびに、基板の変形および変質等を低減できるため、好ましい。
【0052】
配向工程は、加熱処理を有することが好ましい。これにより、塗布膜に含まれる液晶性成分を配向させることができるため、加熱処理後の塗布膜を光吸収異方性膜として好適に使用できる。
加熱処理は、製造適性等の面から10~250℃が好ましく、25~190℃がより好ましい。また、加熱時間は、1~300秒が好ましく、1~60秒がより好ましい。
【0053】
配向工程は、加熱処理後に実施される冷却処理を有していてもよい。冷却処理は、加熱後の塗布膜を室温(20~25℃)程度まで冷却する処理である。これにより、塗布膜に含まれる液晶性成分の配向を固定することができる。冷却手段としては、特に限定されず、公知の方法により実施できる。
【0054】
[その他の工程]
光吸収異方性層の形成方法は、上記の配向工程の後に、光吸収異方性層を硬化させる工程(以下、「硬化工程」ともいう。)を有していてもよい。
硬化工程は、例えば、光吸収異方性層が架橋性基(重合性基)を有している場合には、加熱および/または光照射(露光)によって実施される。中でも、硬化工程は光照射によって実施されることが、生産性の観点から好ましい。
硬化に用いる光源は、赤外線、可視光または紫外線など、種々の光源を用いることが可能であるが、紫外線であることが好ましい。また、硬化時に加熱しながら紫外線を照射してもよいし、特定の波長のみを透過するフィルタを介して紫外線を照射してもよい。
露光が加熱しながら行われる場合、露光時の加熱温度は、液晶膜に含まれる液晶性成分の転移温度にもよるが、25~140℃であることが好ましい。
また、露光は、窒素雰囲気下で行われてもよい。ラジカル重合によって液晶膜の硬化が進行する場合において、酸素による重合の阻害が低減されるため、窒素雰囲気下で露光することが好ましい。
【0055】
(垂直方向に吸収軸がある光吸収異方性層の別形態)
光吸収異方性層は、例えば、特表2013-541727号公報に記載されているような、二色性色素とゲストホスト液晶材料を含み、二色性色素の配向方向を電気的に駆動できるものであってもよい。この場合、視角を制御する状態と、視角を制限しない状態とを、電気的に切り替えることが可能になるため、好ましい。また、二色性色素の吸収軸の方向を電気的に制御することができる点でも、好ましい。
【0056】
(屈折率異方性層)
本発明における屈折率異方性層は、2枚の光吸収異方性層の間に設置される。屈折率異方性層は1層または2層以上で構成されるが、本発明においては、1層又は2層で構成されることが好ましい。また、屈折率異方性層の厚みは、光学積層体または画像表示装置を薄型化する観点で、光学特性、機械物性、及び、製造適性を損ねない限りは薄いことが好ましく、具体的には、1~150μmが好ましく、1~70μmがより好ましく、1~30μmがさらに好ましい。
【0057】
ツイスト構造を有する屈折率異方性層は、製造のしやすさ等の観点から、棒状または円盤状の液晶性化合物にカイラル材を添加して形成されるツイスト構造を有するフィルムであることが好ましい。また、薄さを追求する点でも、ポリマーを用いた位相差よりも薄く作製することができる。一方、ポリマーフィルムを用いる場合は、ツイスト構造及び旋光性を得るためには、複数枚のポリマーフィルムを、ポリマーフィルムの遅相軸を面内で、少しずつ角度変えて貼合するなど製造する点では難しい。ただし、ポリマーフィルムとしては、セルロースアシレート系フィルム、シクロオレフィン系ポリマーフィルム(シクロオレフィン系ポリマーを用いたポリマーフィルム)、ポリカーボネート系ポリマーフィルム、ポリスチレン系ポリマーフィルム、または、アクリル系ポリマーフィルムが好ましい。アクリル系ポリマーフィルムとしては、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、及び、グルタル酸無水物単位から選ばれる少なくとも1種の単位を含むアクリル系ポリマーを含むことが好ましい。
【0058】
[液晶性化合物を用いた屈折率異方性層]
液晶性化合物を用いて形成される屈折率異方性層としては、液晶性化合物がツイスト配向した状態で固定化したフィルムが好ましい。なかでも、重合性基を有する液晶性化合物を含む組成物を塗布して塗膜を形成し、塗膜中の液晶性化合物を配向させて、硬化処理を施して液晶性化合物の配向を固定化してなるフィルムがより好ましい。
液晶性化合物としては、棒状液晶性化合物および円盤状液晶性化合物が挙げられ、配向状態を固定化するために重合性基を有していることが好ましい。また、目的のツイスト角で配向させるためにはカイラル剤の添加量調整で実現できる。また、液晶性化合物を使用した位相差層は薄型化に有利であり、厚みを10μm以下にすることも容易である。
【0059】
<液晶化合物>
液晶化合物としては、棒状液晶化合物および円盤状液晶化合物が挙げられる。
棒状液晶化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶性分子だけではなく、高分子液晶性分子も用いることができる。
【0060】
棒状液晶化合物を重合によって配向を固定することがより好ましく、重合性棒状液晶化合物としては、Makromol. Chem., 190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許4683327号公報、同5622648号公報、同5770107号公報、WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1-272551号公報、同6-16616号公報、同7-110469号公報、同11-80081号公報、および特願2001-64627号公報などに記載の化合物を用いることができる。さらに棒状液晶化合物としては、例えば、特表平11-513019号公報や特開2007-279688号公報に記載のものも好ましく用いることができる。
【0061】
円盤状液晶化合物としては、例えば、特開2007-108732号公報や特開2010-244038号公報に記載のものを好ましく用いることができるが、これらに限定されない。
以下に、円盤状液晶化合物の好ましい例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
【0063】
<キラル剤>
キラル剤は、コレステリック液晶性化合物の螺旋周期を調整するための化合物であり、カイラル剤とも言う。本発明においては、公知の種々のキラル剤(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4-3項、TN、STN用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第一42委員会編、1989に記載)を用いることができる。キラル剤は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物あるいは面性不斉化合物もキラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファンおよびこれらの誘導体が含まれる。キラル剤は、重合性基を有していてもよい。キラル剤が重合性基を有するとともに、併用する棒状液晶化合物も重合性基を有する場合は、重合性基を有するキラル剤と重合性棒状液晶合物との重合反応により、棒状液晶化合物から誘導される繰り返し単位と、キラル剤から誘導される繰り返し単位とを有するポリマーを形成することができる。この態様では、重合性基を有するキラル剤が有する重合性基は、重合性棒状液晶化合物が有する重合性基と、同種の基であることが好ましい。従って、キラル剤の重合性基も、不飽和重合性基、エポキシ基又はアジリジニル基であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基であることが特に好ましい。
【0064】
また、上述のキラル剤は、液晶化合物であってもよい。
強い捩れ力を示すキラル剤としては、例えば、特開2010-181852号公報、特開2003-287623号公報、特開2002-80851号公報、特開2002-80478号公報、特開2002-302487号公報に記載のキラル剤などが挙げられ、本発明に好ましく用いることができる。さらに、これらの公開公報に記載されているイソソルビド化合物類については対応する構造のイソマンニド化合物類を用いることもでき、これらの公報に記載されているイソマンニド化合物類については対応する構造のイソソルビド化合物類を用いることもできる。
【0065】
液晶性化合物としては、逆分散の波長分散性を示す液晶性化合物を用いることも好ましい。例えば、WO2017/043438号パンフレットに記載される逆分散の波長分散性を示す液晶性化合物が挙げられる。逆分散の波長分散性を示す液晶性化合物を用いた屈折率異方性層(位相差層)は、視角制御システムにおいて、可視光の波長域全体にわたって光学補償を行うことができる。
ここで、逆分散の波長分散性とは、Re(λ)およびRth(λ)が、波長λが大きくなるに従って大きな値となることを言う。
【0066】
屈折率異方性層が液晶性化合物を用いて形成される位相差フィルムである場合には、配向膜を有していてもよい。配向膜は、一般的にはポリマーを主成分とする。配向膜用ポリマー材料としては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手することができる。利用されるポリマー材料は、ポリビニルアルコールまたはポリイミド、および、その誘導体が好ましい。特に、変性または未変性のポリビニルアルコールが好ましい。本発明に使用可能な配向膜については、WO01/88574A1号公報の43頁24行~49頁8行、特許第3907735号公報の段落[0071]~[0095]に記載の変性ポリビニルアルコール等を参照することができる。なお、前述の配向膜には、通常、公知のラビング処理が施される。
配向膜の厚さは、薄い方が好ましいが、屈折率異方性層形成のための配向能の付与、および、フィルムの表面凹凸を緩和して均一な膜厚の屈折率異方性層を形成するという観点からは、ある程度の厚みが必要となる。具体的には、配向膜の厚さは、0.01~10μmであることが好ましく、0.01~1μmであることがより好ましく、0.01~0.5μmであることがさらに好ましい。
また、本発明では光配向膜を利用することも好ましい。光配向膜としては特に限定されないが、WO2005/096041号公報の段落[0024]~[0043]に記載のものやRolic echnologies社製の商品名LPP-JP265CPなどを好適に用いることができる。
【0067】
[ポリマーフィルムを用いた屈折率異方性層]
屈折率異方性層に、ポリマーフィルムを延伸することによって得られる位相差を用いる場合は、溶融成膜方式および溶液成膜方式等の適宜な方式で製造したポリマーフィルム(例えば、セルロースアシレートフィルム、環状ポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、および、メタクリル酸メチル、スチレン、無水マレイン酸を含む共重合体)を、例えば、ロールの周速制御による縦延伸方式、テンターによる横延伸方式、および、二軸延伸方式等により、延伸処理することにより得られる。より具体的には、特開2005-338767号公報の記載を参照することができる。
また、例えば、特開平5-157911号公報、特開2006-72309号公報、または特開2007-298960に記載のように、ポリマーフィルムの片面又は両面に収縮性フィルムを貼り合わせて、加熱延伸することにより、厚み(nz)方向に延伸する方法によって作製することもできる。
ポリマーフィルムは、例えば、Bプレートを作製するために好適に用いることができる。Nz係数が負となる屈折率異方性層を作製するためには、負の固有複屈折性を示すポリマーフィルムを用いることが好ましく、例えば、特開2008-262182号公報の実施例19に記載されている、メタクリル酸メチル-アクリル酸メチルの共重合体と、スチレン-無水マレイン酸共重合体とのブレンドを用いたフィルム等を使用することができる。
【0068】
ポリマーフィルムとしては、逆分散の波長分散性を示すポリマーフィルムを使用することも好ましい。逆分散の波長分散性を示すポリマーフィルムとしては、例えば、変性ポリカーボネートフィルムが知られている。
【0069】
(電気的に制御可能な屈折率異方性層)
屈折率異方性層が液晶セルである場合は、ツイスト構造を有しているTN(Twisted Nematic)モードであることが好ましいが、これらに限定されるものではなく、180°以上のツイスト角を有するSTN(Super Twisted Nematic)モードも本発明の効果が得られることを発明者は見出した。TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、さらに60~120゜にツイスト配向している。一方、特開平10-123576に開示されているように電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直配向し、電圧を印加した状態で液晶層が60~120゜にツイスト配向するVATN(Vertically Aligned Twisted Nematic)モードの液晶を用いることで、本発明の優れた視野角制御が可能なことも発明者は見出した。
【0070】
(光学積層体)
本発明の光学積層体は2枚の光吸収異方性層と屈折率異方性層との組み合わせ(
図2)で実現される。一般的な液晶表示装置および有機EL表示装置等には、表示面の面内方向に吸収軸を有する偏光板が積層されていることが多い。したがって、本発明の光学積層体は、液晶表示装置および有機EL表示装置等にすでに貼合されている偏光板に対して、後から貼り合わせて本発明の画像表示装置を作製することができるため、利便性が高い。
【0071】
(偏光子層)
本発明における偏光子層は、吸収軸の方向がフィルム面と水平方向である一般的な二色性物質を水平に配向させた偏光子を用いることができる。例えば、ポリビニルアルコールやその他の高分子樹脂に二色性物質を染着して延伸することで、水平に配向させた偏光子でも良いし、本発明の光吸収異方性層のように、液晶化合物の配向を活用して二色性物質を水平に配向させた偏光子でも良い。
ポリビニルアルコールを延伸してヨウ素で染色した偏光子は、液晶表示装置および有機EL表示装置等に設置される偏光板の偏光子層として、一般的に用いられている。したがって、本発明の光学積層体を液晶表示装置および有機EL表示装置等に対して使明する場合には、液晶表示装置および有機EL表示装置等に設置される偏光板が、偏光子層を兼ねることができる。
【0072】
また、偏光子層は、反射偏光子であってもよいし、吸収型の偏光子(通常の偏光子)と反射偏光子の積層体であってもよい。反射偏光子は、一方の偏光を反射し、もう一方の偏光を透過する偏光子である。なお、反射偏光子は面内に反射軸と透過軸を有するが、反射軸は、その方位の偏光を透過しないという意味においては、通常の偏光子における吸収軸と同様の働きをするため、本明細書においては、反射軸を吸収軸と読み替えることができる。
偏光子層が反射偏光子である場合は、反射偏光子を透過しない光は反射されるため、例えば、光学積層体を液晶表示装置のバックライト側に組み込んだ場合に、反射光を再利用して光の利用効率を高めることができる。
反射偏光子としては、3M社製輝度向上フィルム「DBEF」または「APF」や、旭化成株式会社製ワイヤグリッド偏光フィルム「WGF」などを好適に用いることができる。
【0073】
本発明の光学積層体は、少なくとも、垂直方向に偏光軸を有する第1の光吸収異方性層、屈折率異方性層、及び、垂直方向に偏光軸を有する第2の光吸収異方性層を含むが、その他の機能層を含んでいてもよい。例えば、粘着層、接着層、反射防止層、または保護層などを含むことができる。
光学積層体の製造方法は、光吸収異方性層、屈折率異方性層、およびその他の機能層をそれぞれ作製し、粘着剤または接着剤で貼り合わせる工程を含んでいてもよい。
また、例えば、基材上に形成した光吸収異方性層を、屈折率異方性層に転写する工程を含んでもよい。
また、光吸収異方性層の上に、屈折率異方性層を直接塗布して作製する工程を含んでいてもよいし、屈折率異方性層を形成した後に、屈折率異方性層の上に光吸収異方性層を直接形成する工程を含んでいてもよい。
各工程は公知の方法に従って実施でき、特に限定されるものではない。
【0074】
(画像表示装置)
本発明の光学積層体は、任意の画像表示装置に対して使用することができる。
画像表示装置としては、特に限定されず、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置、マイクロLED表示装置、ヘッドアップディスプレイ、およびヘッドマウントディスプレイ等が挙げられる。
図4に示すように、液晶表示装置は、通常、液晶セル301とバックライト400を有し、液晶セル301の視認側、およびバックライト側の両方の面に、それぞれ偏光板(302a,b)が設置されている。本発明の光学積層体は、液晶パネル300の視認側(
図6)またはバックライト側(
図4)のいずれかの面に適用することができるし、両方の面に適用することもできる(図示せず)。また、液晶パネル300のいずれかの面、または両方の面の偏光板に対して、本発明の光学積層体を貼合することで、適用することができる。
本発明の光学積層体を液晶表示装置に対して適用する場合には、液晶表示装置の表示性能を高める観点から、液晶セルのバックライト側に配置されることが好ましい。また、本発明の光学積層体を液晶セルのバックライト側に適用する場合には、光の利用効率を高める観点から、液晶セルの偏光子層が反射偏光子であるか、通常の偏光子と反射偏光子の積層体であることが好ましい。
【0075】
画像表示装置の中には、薄型で、曲面に成形することが可能なものがある。本発明の光学積層体は、薄く、折り曲げが容易であるため、表示面が曲面である画像表示装置に対しても好適に適用することができる。
また、画像表示装置の中には、画素密度が250ppiを超え、高精細な表示が可能なものもある。本発明の光学積層体は、このような高精細な画像表示装置に対しても、モアレを生じることなく、好適に適用することができる。
【0076】
〔表示装置用液晶セル〕
液晶表示装置に利用される液晶セルは、VA(Vertical Alignment)モード、OCB(Optically Compensated Bend)モード、IPS(In-Plane-Switching)モード、またはTN(Twisted Nematic)モードであることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、さらに60~120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT(Thin Film Transistor)液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2-176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n-ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58~59(1998)記載)および(4)SURVIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。また、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、およびPSA(Polymer-Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006-215326号公報、および特表2008-538819号公報に詳細な記載がある。
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶性分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の吸収軸は直交している。光学補償シートを用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10-54982号公報、特開平11-202323号公報、特開平9-292522号公報、特開平11-133408号公報、特開平11-305217号公報、特開平10-307291号公報などに開示されている。
【0077】
〔有機EL表示装置〕
本発明の画像表示装置の一例である有機EL表示装置としては、例えば、視認側から、上述した本発明の光学積層体と、λ/4板と、有機EL表示パネルと、をこの順で有する態様が好適に挙げられる。
また、有機EL表示パネルは、電極間(陰極および陽極間)に有機発光層(有機エレクトロルミネッセンス層)を挟持してなる有機EL素子を用いて構成された表示パネルである。有機EL表示パネルの構成は特に制限されず、公知の構成が採用される。
【0078】
〔曲面画像表示装置〕
本発明の曲面画像表示装置の一例としては、特開2017-181821号広報、特開2017-181819号広報、特開2017-102456号広報、特開2014-95901号広報などに開示されている。
【0079】
[ガラス複合体]
本発明の光学積層体は、ガラスと組み合わせることができる。
例えば、本発明の光学積層体を窓ガラス面に配置することで、のぞき見防止が実現できる。また、本発明の光学積層体を太陽光が入射するガラス面に配置することで、日照制御することが可能となり、夏季のエアコンの消費電力を削減できる。また、車載の窓に適用しても同様の効果が得られる。
【0080】
また、ガラス複合体は、2枚の板ガラスの間に中間層を有する合わせガラスであってもよく、中間層として、本発明の光学積層体を含む構成であってもよい。
【実施例0081】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0082】
[光吸収異方性層の作製]
本発明の実施例、および比較例に使用する光吸収異方性層101aを、以下のように作製した。
【0083】
<配向膜付き透明支持体1の作製>
セルロースアシレートフィルム(厚み40μmのTAC基材;TG40 富士フイルム社)の表面をアルカリ液で鹸化し、その上にワイヤーバーで下記配向層形成用塗布液1を塗布した。塗膜が形成されたセルロースアシレートフィルムを60℃の温風で60秒間、さらに100℃の温風で120秒間乾燥し、配向層PA1を形成し、配向層付き透明支持体1を得た。
配向膜PA1の膜厚は0.5μmであった。
【0084】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(配向層形成用塗布液1)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記の変性ポリビニルアルコール 3.80質量部
・開始剤Irg2959 0.20質量部
・水 70質量部
・メタノール 30質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0085】
【0086】
<実施例1~9、比較例1の光吸収異方性層P1の形成>
得られた配向層PA1上に、下記の光吸収異方性層形成用組成物1をワイヤーバーで連続的に塗布し、塗布層を形成した。
次いで、塗布層を140℃で30秒間加熱し、その後、室温(23℃)になるまで冷却した。
次いで、80℃で60秒間加熱し、再び室温になるまで冷却した。
その後、LED灯(中心波長365nm)を用いて照度200mW/cm2の照射条件で2秒間照射することにより、配向層PA1上に光吸収異方性層P1を作製した。
光吸収異方性層P1の膜厚は3μm、550nmにおける配向度は0.92であった。このようにして得た支持体付きの光吸収異方性層P1を、光吸収異方性層101aとした。
また、光吸収異方性層P1の吸収軸を観察したところ、吸収軸が膜面に対して90度であった。
【0087】
<光吸収異方性層の配向角度の測定>
Axometrics社製 ポラリメータAxoScan OPMF-1を用いて、サンプル台上に作製した光吸収異方性層を水平に設置し、光吸収異方性層の表面に対して、P偏光を、入射する方位角および極角を種々変化させながら入射して、透過率を測定し、透過率が最大となる方位角および極角を調べた。
さらに、過率が最大となる方位角に平行、かつ、光吸収異方性層の表面に対する法線を包含する平面に平行に、ミクロトームにより、厚み2μmの切片を採取し、採取した切片を横倒しにして、偏光顕微鏡の回転ステージに設置し、入射する直線偏光に対して、光吸収異方性層の断面が最も消光する、切片の方位角(切片を回転させる角度)を求めた。このようにして、光吸収異方性層の吸収軸の角度を測定した。
【0088】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(光吸収異方性層形成用組成物1)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記二色性物質D-1 0.40質量部
・下記二色性物質D-2 0.15質量部
・下記二色性物質D-3 0.63質量部
・下記高分子液晶性化合物P-1 3.20質量部
・下記低分子液晶性化合物M-1 0.45質量部
・重合開始剤
IRGACUREOXE-02(BASF社製) 0.040質量部
・下記化合物E-1 0.060質量部
・下記化合物E-2 0.060質量部
・下記界面活性剤F-1 0.010質量部
・下記界面活性剤F-2 0.015質量部
・シクロペンタノン 47.00質量部
・テトラヒドロフラン 47.00質量部
・ベンジルアルコール 1.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
<実施例10の光吸収異方性層の作製>
実施例10においては下記の光吸収異方性層形成用組成物2を用いた以外は、光吸収異方性層P1と同様にして、光吸収異方性層を形成した。
【0099】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(光吸収異方性層形成用組成物2)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記二色性物質D-1 0.40質量部
・上記二色性物質D-2 0.15質量部
・上記二色性物質D-3 0.68質量部
・上記高分子液晶性化合物P-1 3.20質量部
・上記低分子液晶性化合物M-1 0.45質量部
・重合開始剤
IRGACUREOXE-02(BASF社製) 0.040質量部
・上記化合物E-1 0.060質量部
・上記化合物E-2 0.060質量部
・上記界面活性剤F-1 0.010質量部
・上記界面活性剤F-2 0.015質量部
・シクロペンタノン 47.00質量部
・テトラヒドロフラン 47.00質量部
・ベンジルアルコール 1.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0100】
<実施例11の光吸収異方性層の作製>
実施例11においては下記の光吸収異方性層形成用組成物3を用いた以外は、光吸収異方性層P1と同様にして、光吸収異方性層を形成した。
【0101】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(光吸収異方性層形成用組成物3)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記二色性物質D-1 0.40質量部
・上記二色性物質D-2 0.09質量部
・上記二色性物質D-3 0.69質量部
・上記高分子液晶性化合物P-1 3.20質量部
・上記低分子液晶性化合物M-1 0.45質量部
・重合開始剤
IRGACUREOXE-02(BASF社製) 0.040質量部
・上記化合物E-1 0.060質量部
・上記化合物E-2 0.060質量部
・上記界面活性剤F-1 0.010質量部
・上記界面活性剤F-2 0.015質量部
・シクロペンタノン 47.00質量部
・テトラヒドロフラン 47.00質量部
・ベンジルアルコール 1.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0102】
<実施例12の光吸収異方性層の作製>
実施例12においては下記の光吸収異方性層形成用組成物4を用いた以外は、光吸収異方性層P1と同様にして、光吸収異方性層を形成した。
【0103】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(光吸収異方性層形成用組成物4)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・カーボンナノチューブ(富士フイルム和光純薬株式会社製)
0.56質量部
・上記高分子液晶性化合物P-1 3.20質量部
・上記低分子液晶性化合物M-1 0.45質量部
・重合開始剤
IRGACUREOXE-02(BASF社製) 0.040質量部
・下記化合物E-1 0.060質量部
・下記化合物E-2 0.060質量部
・下記界面活性剤F-1 0.010質量部
・下記界面活性剤F-2 0.015質量部
・シクロペンタノン 47.00質量部
・テトラヒドロフラン 47.00質量部
・ベンジルアルコール 1.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0104】
<実施例13の光吸収異方性層の作製>
実施例13においては下記の光吸収異方性層形成用組成物5を用いた以外は、光吸収異方性層P1と同様にして、光吸収異方性層を形成した。
【0105】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(光吸収異方性層形成用組成物5)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・銀ナノワイヤー(アルドリッチ社製)
0.66質量部
・上記高分子液晶性化合物P-1 3.20質量部
・上記低分子液晶性化合物M-1 0.45質量部
・重合開始剤
IRGACUREOXE-02(BASF社製) 0.040質量部
・上記化合物E-1 0.060質量部
・上記化合物E-2 0.060質量部
・上記界面活性剤F-1 0.010質量部
・上記界面活性剤F-2 0.015質量部
・シクロペンタノン 47.00質量部
・テトラヒドロフラン 47.00質量部
・ベンジルアルコール 1.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0106】
[屈折率異方性層の作製]
本発明の実施例に使用する各種の位相差層を、以下のように作製した。
【0107】
<比較例1の位相差層(λ/2)の作製>
(押出成形)
シクロオレフィン樹脂 ARTON G7810(JSR社)を、100℃において2時間以上乾燥し、2軸混練押し出し機を用いて、280℃で溶融押し出しした。このとき押し出し機とダイの間にスクリーンフィルター、ギアポンプ、リーフディスクフィルターをこの順に配置し、これらをメルト配管で連結し、幅1000mm、リップギャップ1mmのTダイから押し出し、180℃、175℃、170℃に設定した3連のキャストロール上にキャストし、幅900mm、厚み320μmの未延伸フィルム1を得た。
【0108】
(延伸・熱固定)
搬送されている上記未延伸フィルム1に対し、以下の方法で、延伸工程および熱固定工程を施した。
【0109】
(a)縦延伸
未延伸フィルム1に対し、縦横比(L/W)が0.2であるロール間縦延伸機を用いて搬送しながら下記条件にて縦延伸した。
<条件>
予熱温度:170℃
延伸温度:170℃
延伸倍率:155%
(b)横延伸
縦延伸したフィルムに対し、テンターを用いて搬送しながら下記条件にて横延伸した。
<条件>
予熱温度:170℃
延伸温度:170℃
延伸倍率:80%
【0110】
(c)熱固定
延伸工程の後に続いて、延伸フィルムをテンタークリップで端部を把持して幅が一定(3%以内の拡大または縮小の範囲)となるように延伸フィルム両端部を保持しながら、下記条件にて熱処理して、熱固定を行った。
熱固定温度:165℃
熱固定時間:30秒
なお、予熱温度、延伸温度および熱固定温度は、放射温度計を用いて、幅方向に5点で測定した値の平均値である。
【0111】
(巻き取り)
熱固定の後、両端をトリミングし、張力25kg/mで巻き取り、幅は1340mm、巻長は2000mのフィルムロールを得た。
得られた延伸フィルムのReは275nm、Rthは192nm、Nz係数は1.2、遅相軸はTD方向、膜厚は68μmであった。比較例のλ/2の位相差層として用いた。
【0112】
<実施例1~2、6~9、11~13の屈折率異方性層の作製>
(光配向膜の作製)
特開2012ー155308号公報、実施例3の記載を参考に、光配向膜用塗布液1を調製した。
富士フイルム株式会社製のセルロースアセテートフィルム「Z-TAC」の片側の面に、先に調製した光配向膜用塗布液1をバーコーターで塗布した。塗布後、120℃のホットプレート上で2分間乾燥して溶剤を除去し、塗膜を形成した。得られた塗膜を偏光紫外線照射(10mJ/cm2、超高圧水銀ランプ使用)することで、光配向膜1を形成した。
【0113】
(棒状液晶性化合物を含む屈折率異方性層の形成)
下記組成の液晶層形成用組成物1を調製した。
光配向膜1上に、液晶層形成用組成物1をバーコーターで塗布し、組成物層を形成した。形成した組成物層をホットプレート上で110℃まで加熱した後、60℃に冷却させて配向を安定化させた。その後、60℃に保ち、窒素雰囲気下(酸素濃度100ppm)で紫外線照射(500mJ/cm2、超高圧水銀ランプ使用)によって配向を固定化し、厚さ3.5μm、キラル剤を調整して90°ツイスト構造を有する屈折率異方性層を作製した。作製した屈折率異方性層のΔnd=450nm(波長550nm)であった。
また、同様にキラル剤を調整して他実施形態の45~315°の任意の屈折率異方性層を作製した。
【0114】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(液晶層形成用組成物1)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・液晶性化合物R1 84.00質量部
・重合性化合物B2 16.00質量部
・重合開始剤P3 0.50質量部
・界面活性剤S3 0.15質量部
・キラル剤 0.1質量部
・ハイソルブMTEM(東邦化学工業社製) 2.00質量部
・NKエステルA-200(新中村化学工業社製) 1.00質量部
・メチルエチルケトン 424.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
<実施例10の屈折率異方性層の作製>
<逆波長分散性のツイスト構造を有する屈折率異方性層の作製>
下記組成の液晶層形成用組成物2を用いた以外は、前述の液晶層形成用組成物1と同様にして、逆波長分散性の90ツイスト構造の屈折率異方性層を形成した。
作製した屈折率異方性層のΔnd=350nm(波長550nm)であった。
【0121】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(液晶層形成用組成物2)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・液晶性化合物R2 42.00質量部
・液晶性化合物R3 42.00質量部
・重合性化合物B2 16.00質量部
・重合開始剤P3 0.50質量部
・界面活性剤S3 0.15質量部
・キラル剤 0.1質量部
・ハイソルブMTEM(東邦化学工業社製) 2.00質量部
・NKエステルA-200(新中村化学工業社製) 1.00質量部
・メチルエチルケトン 424.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0122】
【0123】
【0124】
<実施例3の屈折率異方性層の作製>
前述の光吸収異方性層を作製する際に使用したものと同様の配向膜PA1に対して、ラビング処理を施した。
【0125】
下記の組成の円盤状液晶性化合物を含む液晶層形成用組成物3を、上記作製した配向膜上にワイヤーバーで塗布した。次いで、塗布液の溶媒の乾燥及び円盤状液晶性化合物の配向熟成のために、120℃の温風で90秒間加熱した。続いて、80℃にてUV照射を行い、液晶性化合物の配向を固定化した。このようにして、円盤状液晶を90°ツイストした屈折率異方性層を作製した。作製した屈折率異方性層のΔnd=350nm(波長550nm)であった。
【0126】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(液晶層形成用組成物3)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記の円盤状(円盤状)液晶性化合物 91質量部
・下記アクリレートモノマー 5質量部
・光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 3質量部
・増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1質量部
・下記のピリジニウム塩 0.5質量部
・キラル剤 0.1質量部
・下記のフッ素系ポリマー(FP1) 0.2質量部
・下記のフッ素系ポリマー(FP3) 0.1質量部
・メチルエチルケトン 189質量部
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【0127】
【0128】
アクリレートモノマー:
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製)
【0129】
【0130】
<実施例4のスイッチング可能な光学異方性層1:TN液晶セルの作製)
(TNモード液晶セルの作製)
ITO電極付きガラス基板2枚に水平配向型のポリイミド配向膜を塗布、高温乾燥して配向膜を形成後、TNセルを形成できるようにラビング処理(この実施例では、上下で90°ツイストするように配向処理した)を実施した。その後、2枚の基板の一方に熱硬化シール材、もう一方にビーズスペーサ(径5μ)を散布し、その2枚の基板を貼り合わせた後、真空パックして、加熱処理して空の液晶セルを形成した。このセルに真空液晶注入器を用いて、誘電異方性が正で、屈折率異方性Δn=0.0854(589nm、20°C)、Δε=+8.5程度の液晶(メルク社製のMLC-9100)を注入し、封止処理により、Δnd=430nmであるTN液晶セルを作製した。また、上下基板の内面にはラビング処理が施されているため、電圧無印加時に、液晶層は、上下基板間でツイスト角90°でねじれ配向し、電圧印加により、垂直方向に液晶が配向してくるTNセルを完成した。また、上記スペーサ径を調整することで、任意のΔndのツイスト構造の液晶セルを形成できる。
【0131】
<実施例5のスイッチング可能な光学異方性層2:VATN液晶セルの作製)
(電気的に制御可能な屈折率異方性層)
ITO電極付きガラス基板2枚に垂直配向型のポリイミド配向膜を塗布、高温乾燥して配向膜を形成後、VATNセルを形成できるようにラビング処理(この実施例では、上下で90°ツイストするように配向処理した)を実施した。その後、2枚の基板の一報に熱硬化シール材、もう一方にビーズスペーサ(径5μ)を散布し、その2枚の基板を貼り合わせた後、真空パックして、加熱処理して空の液晶セルを形成した。このセルに真空液晶注入器を用いて、誘電異方性が負で、屈折率異方性Δn=0.0899(589nm、20°C)、Δε=―3.6程度の液晶(メルク社製のMLC-6886)を注入し、封止処理により、Δnd=450nmVATN液晶セルを作製した。また、上下基板の内面にはラビング処理が施されているため、電圧無印加時に、液晶層は、上下基板間で垂直配向し、電圧を印加することで、90°でねじれ配向した。また、上記スペーサ径を調整することで、任意のΔndのツイスト構造の液晶セルを形成できる。
【0132】
[光学積層体の作製]
上記作製した各種屈折率異方性層の両面それぞれに、上記作製した光吸収異方性層を、適宜、市販の粘着剤SK2057(綜研化学製)を用いて貼合し、実施例1~13、および、比較例1の光学積層体をそれぞれ作製した。SK2057の厚みは、約20μmであった。
【0133】
[実施例1から13の視角制御システムの作製]
液晶表示装置を搭載したノートパソコンであるdynabook(株式会社東芝製)の液晶表示装置を分解し、BL(バックライト)と液晶パネル間に、作製した光学積層体各種を粘着剤SK2057を用いて貼合して、画像表示装置を作製した。
また、同様に、上記、ノートパソコンであるdynabook(株式会社東芝製)の液晶表示装置の視認側に光学積層体各種を粘着剤SK2057を用いて貼合しても、同様に本発明の画像表示装置を実現できた。
【0134】
(視角制御システムの斜め遮光性能の評価)
作製した実施例1~13の画像表示装置は、いずれも、全方位での遮光性を確認でき、優れた視野角制御が可能なことが観察により確認できた。一方、比較例1の視角制御システムは、90°ごとの方位角において遮光されていたが、その他の方位においては、遮光されていなかった。
作製した実施例および比較例の画像表示装置の輝度を測定し、得られたデータから、正面輝度を斜めの最大漏れ光(全方位、極角60°)で割った比を正面/斜め輝度比と定義し、遮光性能を評価した。表1に結果を示す。この値が高いほど視野角制御性能が高いことを意味する。なお、セキュリティーモードと広視野角モードとを電気的に切り替え可能な実施例4および5については、セキュリティーモードにおける遮光性能を評価した。
3未満を視野角制御効果が低い:C
3~4が視野角制御効果が十分:B
4~5が視野角制御効果が良好:A
5以上は視野角制御効果が優れる:AA
【0135】
表1に示すように、本発明の画像表示装置は、比較例1と比べ、良好な斜め遮光性能を有していた。
【0136】
(モアレの評価)
作製した光学積層体をApple社製スマートフォンiPhone(登録商標)8 Plusの液晶表示装置の上に貼合し、モアレを評価した。
なお、iPhone(登録商標)8 Plusは高精細な液晶表示装置を搭載したスマートフォンであり、液晶表示装置の画素密度は401ppiであった。この液晶表示装置に、縦方向の1画素ごとに白と黒が入れ替わる白黒ストライプパターンを表示させ、正面から観察して、モアレを目視評価した。実施例1~13および比較例1の光学積層体は、いずれも画像表示装置の画素と干渉するような周期構造を有さないため、モアレが視認されず、正面において良好な表示性能を有していた。特許文献3に記載されるようなルーバーフィルム(市販品)は、モアレと呼ばれる縞模様が発生した。
【0137】
【0138】
表1に示すように、本発明の光学積層体および画像表示装置は、良好な斜め遮光性能を有し、かつ、モアレの発生がなく、正面において良好な表示性能を有していた。
また、本発明の光学積層体(実施例1~3,6~13)は、いずれも厚みが150μm以下であり、折り曲げが容易であった。なお、特許文献3に記載されるようなルーバーフィルムは、厚みが500μmであり、折り曲げが困難であった。
【0139】
本発明の光学積層体を窓ガラス面に配置することで、のぞき見防止が実現できることが確認できた。また、本発明の光学積層体を太陽光が入射するガラス面に配置することで、日照制御することが可能となり、夏季でのエアコンの消費電力を削減できることがわかった。また、車載の窓に適用しても同様の効果が得られることがわかった。