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特開2024-22694原子層堆積法用薄膜形成原料、薄膜の製造方法及びアルミニウム化合物
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  • 特開-原子層堆積法用薄膜形成原料、薄膜の製造方法及びアルミニウム化合物 図1
  • 特開-原子層堆積法用薄膜形成原料、薄膜の製造方法及びアルミニウム化合物 図2
  • 特開-原子層堆積法用薄膜形成原料、薄膜の製造方法及びアルミニウム化合物 図3
  • 特開-原子層堆積法用薄膜形成原料、薄膜の製造方法及びアルミニウム化合物 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022694
(43)【公開日】2024-02-20
(54)【発明の名称】原子層堆積法用薄膜形成原料、薄膜の製造方法及びアルミニウム化合物
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/42 20060101AFI20240213BHJP
   C23C 16/40 20060101ALI20240213BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20240213BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
C23C16/42
C23C16/40
H01L21/31 B
H01L21/31 C
H01L21/316 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218268
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】吉野 智晴
(72)【発明者】
【氏名】遠津 正揮
(72)【発明者】
【氏名】西田 章浩
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA11
4K030AA14
4K030BA43
4K030BA44
4K030CA04
4K030JA01
4K030JA09
4K030JA10
4K030JA11
5F045AA06
5F045AA08
5F045AA11
5F045AA15
5F045AB31
5F045AC00
5F045AC07
5F045AC08
5F045AC09
5F045AC11
5F045AC12
5F045AC15
5F045AC16
5F045AC17
5F045AD04
5F045AD05
5F045AD06
5F045AD07
5F045AD08
5F045AE15
5F045AE17
5F045AE19
5F045AE21
5F045AE23
5F045AF03
5F045AF07
5F045AF10
5F045BB08
5F045BB14
5F045BB15
5F045DP03
5F045EE02
5F045EE19
5F045HA16
5F058BA20
5F058BB05
5F058BB06
5F058BB07
5F058BC02
5F058BC03
5F058BC08
5F058BC09
5F058BF04
5F058BF05
5F058BF07
5F058BF27
5F058BF29
5F058BF30
5F058BF37
5F058BG02
5F058BH02
5F058BH03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】融点が低く、熱安定性に優れ、生産性よくアルミニウム原子及びケイ素原子を含有する薄膜を製造することができる原子層堆積法用薄膜形成原料と、その原料を用いた薄膜の製造方法及びアルミニウム化合物の提供。
【解決手段】式(1)で表されるアルミニウム化合物を含有する原子層堆積法用薄膜形成原料、その原料を用いた薄膜の製造方法及びアルミニウム化合物である。

(式中、R~Rは各々独立に、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のフッ素原子含有アルキル基を表し、Aは酸素原子又は炭素原子数1~5のアルカンジイル基を表し、nは1~3を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるアルミニウム化合物を含有する原子層堆積法用薄膜形成原料。
【化1】
(式中、R~Rは各々独立に、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のフッ素原子含有アルキル基を表し、Aは酸素原子又は炭素原子数1~5のアルカンジイル基を表し、Lは下記一般式(L-1)~(L-4)で表される基を表し、nは1~3の数を表す。)
【化2】
(式中、R~R17は各々独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のフッ素原子含有アルキル基を表し、*は結合手を表す。)
【請求項2】
がメチル基である、請求項1に記載の原子層堆積法用薄膜形成原料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の原子層堆積法用薄膜形成原料を用いて、原子層堆積法により薄膜を製造する、薄膜の製造方法。
【請求項4】
前記原子層堆積法用薄膜形成原料を気化させることにより得られる前記化合物を含有する蒸気を処理雰囲気に導入する工程と、
反応性ガスを処理雰囲気に導入する工程と、を含み、
処理雰囲気内の基体の表面にアルミニウム原子とケイ素原子を含む薄膜を製造する、請求項3に記載の薄膜の製造方法。
【請求項5】
前記蒸気を処理雰囲気に導入する工程では、前記蒸気中の前記アルミニウム化合物を前記基体の表面に堆積させて、前駆体薄膜を形成し、
前記反応性ガスを処理雰囲気に導入する工程では、前記前駆体薄膜と前記反応性ガスを反応させて前記基体の表面にアルミニウム原子及びケイ素原子を含有する薄膜を製造する、請求項4に記載の薄膜の製造方法。
【請求項6】
前記反応性ガスが酸化性ガスである、請求項4又は5に記載の薄膜の製造方法。
【請求項7】
前記酸化性ガスが酸素、オゾン又は水蒸気を含有するガスである、請求項6に記載の薄膜の製造方法。
【請求項8】
前記薄膜がアルミニウムシリケート薄膜である、請求項3~7のいずれか一項に記載の薄膜の製造方法。
【請求項9】
下記一般式(2)で表されるアルミニウム化合物。
【化3】
(式中、R21~R23は各々独立に、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のフッ素原子含有アルキル基を表し、Aは酸素原子又は炭素原子数1~5のアルカンジイル基を表し、Lは下記一般式(L-5)~(L-8)で表される基を表し、mは1~2の数を表す。)
【化4】
(式中、R24~R37は各々独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のフッ素原子含有アルキル基を表し、*は結合手を表す。)
【請求項10】
21がメチル基である、請求項9に記載のアルミニウム化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有するアルミニウム化合物を含有する原子層堆積法用薄膜形成原料、その原料を用いた薄膜の製造方法及びアルミニウム化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムシリケート薄膜は、化合物半導体デバイスを構成するための成分として用いられており、これらの薄膜を製造するための薄膜形成原料としては、様々な原料が報告されている。
【0003】
薄膜の製造法としては、例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法、塗布熱分解法やゾルゲル法等のMOD法、CVD法等が挙げられる。これらの中でも、組成制御性及び段差被覆性に優れること、量産化に適すること、ハイブリッド集積が可能である等多くの長所を有しているので、CVD法の一種である、原子層堆積法(ALD法という場合もある)が最適な製造プロセスである。
【0004】
CVD法及びALD法のような気相薄膜形成法に用いることができる材料は種々報告されているが、ALD法に適用可能な薄膜形成用原料は、ALDウィンドウと呼ばれる温度領域を有する必要があり、この温度領域が十分な広さであることが必要である。よって、CVD法に使用可能な薄膜形成用原料であっても、ALD法に適さない場合が多くあることは当該技術分野における技術常識である。また、アルミニウム原子及びケイ素原子を含有する薄膜を製造する際には、アルミニウム原子を含有する薄膜形成用原料及びケイ素原子を含有する薄膜形成原料に各原子を含有する異なる原料を用いることが一般的である。
【0005】
特許文献1及び2には、トリメチルアルミニウム及びテトラキスジメチルアミノシランを薄膜形成用原料として用い、ALD法によりアルミニウムシリケート薄膜を形成する方法が開示されている。また、特許文献3には、トリメチルシリル基を含むアルミニウム化合物を用い、ALD法により酸化アルミニウム膜を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-318174号公報
【特許文献2】特開2007-274002号公報
【特許文献3】特開2017-034103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
原子層堆積法用薄膜形成原料には、融点が低く、熱安定性に優れていることが求められている。更に、アルミニウム原子及びケイ素原子を含有する薄膜を製造する際には、少ない工程数で生産性よく製造することが求められている。しかしながら、特許文献1及び2に開示されている方法によって、アルミニウム原子及びケイ素原子を含有する薄膜を製造した場合は、アルミニウム原子を含有する薄膜形成用原料及びケイ素原子を含有する薄膜形成原料をそれぞれ別工程で供給することから、薄膜の製造工程が多くなるという問題があった。また、特許文献3に開示されているアルミニウム化合物を用いてALD法により薄膜を製造した場合は、アルミニウムシリケート薄膜を得ることができなかった。
従って、本発明は、融点が低く、熱安定性に優れ、生産性よくアルミニウム原子及びケイ素原子を含有する薄膜を製造することができる原子層堆積法用薄膜形成原料、その原料を用いた薄膜の製造方法及びアルミニウム化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、検討を重ねた結果、特定の構造を有するアルミニウム化合物を含有する原子層堆積法用薄膜形成原料が上記課題を解決し得ることを知見し、本発明に到達した。
即ち、本発明は、下記一般式(1)で表されるアルミニウム化合物を含有する原子層堆積法用薄膜形成原料である。
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、R~Rは各々独立に、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のフッ素原子含有アルキル基を表し、Aは酸素原子又は炭素原子数1~5のアルカンジイル基を表し、Lは下記一般式(L-1)~(L-4)で表される基を表し、nは1~3の数を表す。)
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、R~R17は各々独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のフッ素原子含有アルキル基を表し、*は結合手を表す。)
【0013】
また、本発明は、上記薄膜形成原料を用いて、原子層堆積法により薄膜を製造する、薄膜の製造方法である。
【0014】
また、本発明は、下記一般式(2)で表されるアルミニウム化合物である。
【0015】
【化3】
【0016】
(式中、R21~R23は各々独立に、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のフッ素原子含有アルキル基を表し、Aは酸素原子又は炭素原子数1~5のアルカンジイル基を表し、Lは下記一般式(L-5)~(L-8)で表される基を表し、mは1~2の数を表す。)
【0017】
【化4】
【0018】
(式中、R24~R37は各々独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のフッ素原子含有アルキル基を表し、*は結合手を表す。)
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、融点が低く、熱安定性に優れ、生産性よくアルミニウム原子及びケイ素原子を含有する薄膜を製造することができる原子層堆積法用薄膜形成原料を提供することができる。また、本発明によれば、原子層堆積法により生産性よくアルミニウム原子及びケイ素原子を含有する薄膜を製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る薄膜の製造方法に用いられる原子層堆積法用装置の一例を示す概略図である。
図2】本発明に係る薄膜の製造方法に用いられる原子層堆積法用装置の別の例を示す概略図である。
図3】本発明に係る薄膜の製造方法に用いられる原子層堆積法用装置の更に別の例を示す概略図である。
図4】本発明に係る薄膜の製造方法に用いられる原子層堆積法用装置の更に別の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の原子層堆積法用薄膜形成原料は、上記一般式(1)で表されるアルミニウム化合物を含有することを特徴とするものである。
【0022】
上記一般式(1)において、R~Rは各々独立に、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のフッ素原子含有アルキル基を表し、Aは酸素原子又は炭素原子数1~5のアルカンジイル基を表し、Lは上記一般式(L-1)~(L-4)で表される基を表し、nは1~3の数を表す。
【0023】
上記R~Rで表される炭素原子数1~5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられる。
【0024】
上記R~Rで表される炭素原子数1~5のフッ素原子含有アルキル基としては、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロプロピル基などが挙げられる。
【0025】
上記Aで表される炭素原子数1~5のアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、ブチレン基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-2,3-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、ペンチレン基などが挙げられる。
【0026】
上記一般式(1)において、生産性よくアルミニウム原子及びケイ素原子を含有する薄膜を形成することができることから、R~Rは、炭素原子数1~3のアルキル基又は炭素原子数1~3のフッ素原子含有アルキル基が好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が特に好ましく、メチル基が最も好ましい。また、生産性よくアルミニウム原子及びケイ素原子を含有する薄膜を形成することができることから、Aは酸素原子又は炭素原子数1~3のアルカンジイル基が好ましく、酸素原子、メチレン基又はエチレン基がより好ましく、メチレン基が特に好ましい。更に、アルミニウム化合物の熱安定性が高いことから、nは2~3の数が好ましく、2であることがより好ましい。
【0027】
上記一般式(L-1)~(L-4)において、式中、R~R17は各々独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のフッ素原子含有アルキル基を表す。
上記R~R17で表される炭素原子数1~5のアルキル基としては、上記R~Rで表される炭素原子数1~5のアルキル基と同じである。
上記R~R17で表される炭素原子数1~5のフッ素原子含有アルキル基としては、上記R~Rで表される炭素原子数1~5のフッ素原子含有アルキル基と同じである。
【0028】
上記一般式(L-1)において、アルミニウム化合物の熱安定性が高いことから、R及びRは炭素原子数3~5のアルキル基が好ましく、炭素原子数3~5の第二級又は第三級のアルキル基がより好ましく、第三ブチル基が特に好ましい。また、生産性よくアルミニウム原子及びケイ素原子を含有する薄膜を形成することができることから、Rは炭素原子数1~3のアルキル基又は炭素原子数1~3のフッ素原子含有アルキル基が好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
【0029】
上記一般式(L-2)において、生産性よくアルミニウム原子及びケイ素原子を含有する薄膜を形成することができることから、R及びRは炭素原子数1~5のアルキル基もしくは炭素原子数1~3のフッ素原子含有アルキル基が好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基もしくは炭素原子数1~2のフッ素原子含有アルキル基がより好ましく、エチル基、メチル基もしくはトリフルオロメチル基が特に好ましい。また、生産性よくアルミニウム原子及びケイ素原子を含有する薄膜を形成することができることから、Rは炭素原子数1~3のアルキル基もしくは水素原子が好ましく、エチル基、メチル基もしくは水素原子がより好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0030】
上記一般式(L-3)において、生産性よくアルミニウム原子及びケイ素原子を含有する薄膜を形成することができることから、R10及びR11は、炭素原子数1~5のアルキル基もしくは炭素原子数1~3のフッ素原子含有アルキル基が好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基もしくは炭素原子数1~2のフッ素原子含有アルキル基が好ましく、エチル基、メチル基もしくはトリフルオロメチル基が特に好ましい。また、生産性よくアルミニウム原子及びケイ素原子を含有する薄膜を形成することができることから、R12は炭素原子数1~4のアルキル基もしくは炭素原子数1~4のフッ素含有アルキル基が好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基もしくは炭素原子数1~3のフッ素含有アルキル基がより好ましく、エチル基、メチル基もしくはトリフルオロメチル基が特に好ましい。更に、生産性よくアルミニウム原子及びケイ素原子を含有する薄膜を形成することができることから、R13が炭素原子数1~3のアルキル基もしくは水素原子が好ましく、エチル基、メチル基もしくは水素原子がより好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0031】
上記一般式(L-4)において、生産性よくアルミニウム原子及びケイ素原子を含有する薄膜を形成することができることから、R14及びR15は炭素原子数1~3のアルキル基もしくは炭素原子数1~3のフッ素含有アルキル基が好ましく、炭素原子数1~2のアルキル基もしくは炭素原子数1~2のフッ素含有アルキル基がより好ましく、エチル基、メチル基もしくはトリフルオロメチル基が特に好ましい。また、生産性よくアルミニウム原子及びケイ素原子を含有する薄膜を形成することができることから、R16及びR17は、炭素原子数1~3のアルキル基もしくは炭素原子数1~3のフッ素含有アルキル基が好ましく、炭素原子数1~2のアルキル基もしくは炭素原子数1~2のフッ素含有アルキル基がより好ましく、エチル基、メチル基もしくはトリフルオロメチル基が特に好ましい。
【0032】
上記一般式(1)で表されるアルミニウム化合物の具体例としては、下記化合物No.1~No.64が挙げられる。なお、下記化合物No.1~No.64において「Me」はメチル基を表し、「Et」はエチル基を表し、「nPr」はノルマルプロピル基を表し、「iPr」はイソプロピル基を表し、「iBu」はイソブチル基を表し、「tBu」は第三ブチル基を表し、「tAm」は第三ペンチル基を表し、「TMS」はトリメチルシリル基を表し、「TES」はトリエチルシリル基を表す。なお、「tAm」は下記式(3)で表される基と同義である。
【0033】
【化5】
(式中、*は結合手を表す。)
【0034】
【化6】
【0035】
【化7】
【0036】
【化8】
【0037】
【化9】
【0038】
【化10】
【0039】
【化11】
【0040】
【化12】
【0041】
上記一般式(1)で表されるアルミニウム化合物は、その製造方法により特に制限されることはなく、周知の合成方法で製造することができる。例えば、塩化アルミニウムと(トリアルキルシリル)アルキルリチウムとを反応させる方法、塩化アルミニウムと(トリアルキルシリル)アルキルリチウムとアミジン化合物とを反応させる方法、塩化アルミニウムとトリアルキルシラノール酸ナトリウムとを反応させる方法等により製造することができる。(トリアルキルシリル)アルキルリチウムとしては、(トリメチルシリル)メチルリチウム、(トリエチルシリル)メチルリチウム、2-(トリメチルシリル)エチルリチウムなどを用いることができる。トリアルキルシラノール酸ナトリウムとしては、トリメチルシラノール酸ナトリウム、トリエチルシラノール酸ナトリウム、エチルジメチルシラノール酸ナトリウムなどを用いることができる。アミジン化合物としては、N,N’-ジ-tert-ブチルアセトアミジン、N,N’-ジイソプロピルアセトアミジン、N-tert-ブチル-N’-イソプロピルアセトアミジン、N,N’-ジ-tert-ブチルホルムアミジンなどを用いることができる。
【0042】
本発明の原子層堆積法用薄膜形成原料は、上記一般式(1)で表されるアルミニウム化合物をプレカーサとして含有するものであればよく、その組成は、目的とする薄膜の種類によって異なる。例えば、金属及び半金属としてアルミニウム原子及びケイ素原子のみを含む薄膜を製造する場合、本発明の原子層堆積法用薄膜形成原料は、上記一般式(1)で表されるアルミニウム化合物以外の金属化合物及び半金属化合物を非含有である。一方、アルミニウム原子及びケイ素原子と、アルミニウム原子及びケイ素原子以外の金属及び/又は半金属とを含む薄膜を製造する場合、本発明の原子層堆積法用薄膜形成用原料は、上記一般式(1)で表されるアルミニウム化合物に加えて、アルミニウム原子及びケイ素原子以外の金属及び/又は半金属を含む化合物(以下、他のプレカーサともいう)を含有することもできる。本発明の原子層堆積法用薄膜形成原料は、後述するように、更に、有機溶剤及び/又は求核性試薬を含有してもよい。
【0043】
本発明の原子層堆積法用薄膜形成原料の形態は使用される原子層堆積法の輸送供給方法等の手法により適宜選択されるものである。
【0044】
上記の輸送供給方法としては、本発明の原子層堆積法用薄膜形成原料が貯蔵される容器(以下、単に「原料容器」と記載することもある)中で加熱及び/又は減圧することにより気化させて蒸気となし、必要に応じて用いられるアルゴン、窒素、ヘリウム等のキャリアガスと共に、該蒸気を基体が設置された成膜チャンバー内(以下、「処理雰囲気」と記載することもある)へと導入する気体輸送法、本発明の原子層堆積法用薄膜形成原料を液体又は溶液の状態で気化室まで輸送し、気化室で加熱及び/又は減圧することにより気化させて蒸気となし、該蒸気を成膜チャンバー内へと導入する液体輸送法がある。気体輸送法の場合は、上記一般式(1)で表されるアルミニウム化合物そのものを原子層堆積法用薄膜形成原料とすることができる。液体輸送法の場合は、上記一般式(1)で表されるアルミニウム化合物そのもの又は該アルミニウム化合物を有機溶剤に溶かした溶液を原子層堆積法用薄膜形成原料とすることができる。これらの原子層堆積法用薄膜形成原料は、他のプレカーサ、求核性試薬等を更に含んでもよい。
【0045】
また、多成分系のALD法においては、原子層堆積法用薄膜形成原料を各成分独立で気化、供給する方法(以下、「シングルソース法」と記載することもある)と、多成分原料を予め所望の組成で混合した混合原料を気化、供給する方法(以下、「カクテルソース法」と記載することもある)がある。カクテルソース法の場合、上記一般式(1)で表されるアルミニウム化合物と他のプレカーサとの混合物若しくは該混合物を有機溶剤に溶かした混合溶液を原子層堆積法用薄膜形成原料とすることができる。この混合物や混合溶液は、求核性試薬等を更に含んでいてもよい。
【0046】
上記の有機溶剤としては、特に制限を受けることはなく周知一般の有機溶剤を用いることができる。該有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等の酢酸エステル類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;1-シアノプロパン、1-シアノブタン、1-シアノヘキサン、シアノシクロヘキサン、シアノベンゼン、1,3-ジシアノプロパン、1,4-ジシアノブタン、1,6-ジシアノヘキサン、1,4-ジシアノシクロヘキサン、1,4-ジシアノベンゼン等のシアノ基を有する炭化水素類;ピリジン、ルチジン等が挙げられる。これらの有機溶剤は、溶質の溶解性、使用温度と沸点、引火点の関係等により、単独で用いてもよいし、又は二種類以上を混合して用いてもよい。
【0047】
また、多成分系のALD法の場合において、上記一般式(1)で表されるアルミニウム化合物と共に用いられる他のプレカーサとしては、特に制限を受けず、原子層堆積法用薄膜形成原料に用いられている周知一般のプレカーサを用いることができる。
【0048】
上記の他のプレカーサとしては、アルコール化合物、グリコール化合物、β-ジケトン化合物、シクロペンタジエン化合物、有機アミン化合物等の有機配位子として用いられる化合物からなる群から選択される一種類又は二種類以上と珪素や金属との化合物が挙げられる。また、プレカーサの金属種としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、スカンジウム、ルテニウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム又はルテチウムが挙げられる。
【0049】
上記の他のプレカーサの有機配位子として用いられるアルコール化合物としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、第2ブチルアルコール、イソブチルアルコール、第3ブチルアルコール、ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール、第3ペンチルアルコール等のアルキルアルコール類;2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-(2-メトキシエトキシ)エタノール、2-メトキシ-1-メチルエタノール、2-メトキシ-1,1-ジメチルエタノール、2-エトキシ-1,1-ジメチルエタノール、2-イソプロポキシ-1,1-ジメチルエタノール、2-ブトキシ-1,1-ジメチルエタノール、2-(2-メトキシエトキシ)-1,1-ジメチルエタノール、2-プロポキシ-1,1-ジエチルエタノール、2-s-ブトキシ-1,1-ジエチルエタノール、3-メトキシ-1,1-ジメチルプロパノール等のエーテルアルコール類;ジメチルアミノエタノール、エチルメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、ジメチルアミノ-2-ペンタノール、エチルメチルアミノ-2-ペンタノール、ジメチルアミノ-2-メチル-2-ペンタノール、エチルメチルアミノ-2-メチル-2-ペンタノール、ジエチルアミノ-2-メチル-2-ペンタノール等のジアルキルアミノアルコール類等が挙げられる。
【0050】
上記の他のプレカーサの有機配位子として用いられるグリコール化合物としては、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2,4-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2,4-ブタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-ブタンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ヘキサンジオール、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオール等が挙げられる。
【0051】
また、β-ジケトン化合物としては、アセチルアセトン、ヘキサン-2,4-ジオン、5-メチルヘキサン-2,4-ジオン、ヘプタン-2,4-ジオン、2-メチルヘプタン-3,5-ジオン、5-メチルヘプタン-2,4-ジオン、6-メチルヘプタン-2,4-ジオン、2,2-ジメチルヘプタン-3,5-ジオン、2,6-ジメチルヘプタン-3,5-ジオン、2,2,6-トリメチルヘプタン-3,5-ジオン、2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオン、オクタン-2,4-ジオン、2,2,6-トリメチルオクタン-3,5-ジオン、2,6-ジメチルオクタン-3,5-ジオン、2,9-ジメチルノナン-4,6-ジオン、2-メチル-6-エチルデカン-3,5-ジオン、2,2-ジメチル-6-エチルデカン-3,5-ジオン等のアルキル置換β-ジケトン類;1,1,1-トリフルオロペンタン-2,4-ジオン、1,1,1-トリフルオロ-5,5-ジメチルヘキサン-2,4-ジオン、1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロペンタン-2,4-ジオン、1,3-ジパーフルオロヘキシルプロパン-1,3-ジオン等のフッ素置換アルキルβ-ジケトン類;1,1,5,5-テトラメチル-1-メトキシヘキサン-2,4-ジオン、2,2,6,6-テトラメチル-1-メトキシヘプタン-3,5-ジオン、2,2,6,6-テトラメチル-1-(2-メトキシエトキシ)ヘプタン-3,5-ジオン等のエーテル置換β-ジケトン類等が挙げられる。
【0052】
また、シクロペンタジエン化合物としては、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、エチルシクロペンタジエン、プロピルシクロペンタジエン、イソプロピルシクロペンタジエン、ブチルシクロペンタジエン、第2ブチルシクロペンタジエン、イソブチルシクロペンタジエン、第3ブチルシクロペンタジエン、ジメチルシクロペンタジエン、テトラメチルシクロペンタジエン等が挙げられ、上記の有機配位子として用いられる有機アミン化合物としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、第2ブチルアミン、第3ブチルアミン、イソブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、プロピルメチルアミン、イソプロピルメチルアミン等が挙げられる。
【0053】
上記の他のプレカーサは、当該技術分野において公知のものであり、その製造方法も公知である。製造方法の一例を挙げれば、例えば、有機配位子としてアルコール化合物を用いた場合には、先に述べた金属の無機塩又はその水和物と、該アルコール化合物のアルカリ金属アルコキシドとを反応させることによって、プレカーサを製造することができる。ここで、金属の無機塩又はその水和物としては、金属のハロゲン化物、硝酸塩等を挙げることができ、アルカリ金属アルコキシドとしては、ナトリウムアルコキシド、リチウムアルコキシド、カリウムアルコキシド等を挙げることができる。
【0054】
シングルソース法の場合、上記の他のプレカーサとしては、上記一般式(1)で表されるアルミニウム化合物と熱及び/又は酸化分解の挙動が類似している化合物が好ましい。カクテルソース法の場合、上記の他のプレカーサとしては、上記一般式(1)で表されるアルミニウム化合物と熱及び/又は酸化分解の挙動が類似していることに加え、混合時に化学反応等による変質を起こさない化合物が好ましい。
【0055】
また、本発明の原子層堆積法用薄膜形成原料は、必要に応じて、上記一般式(1)で表されるアルミニウム化合物及び他のプレカーサの安定性を向上させるため、求核性試薬を含有してもよい。該求核性試薬としては、グライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のエチレングリコールエーテル類、18-クラウン-6、ジシクロヘキシル-18-クラウン-6、24-クラウン-8、ジシクロヘキシル-24-クラウン-8、ジベンゾ-24-クラウン-8等のクラウンエーテル類、エチレンジアミン、N,N’-テトラメチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、1,1,4,7,7-ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、トリエトキシトリエチレンアミン等のポリアミン類、サイクラム、サイクレン等の環状ポリアミン類、ピリジン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、N-メチルピロリジン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4-ジオキサン、オキサゾール、チアゾール、オキサチオラン等の複素環化合物類、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸-2-メトキシエチル等のβ-ケトエステル類又はアセチルアセトン、2,4-ヘキサンジオン、2,4-ヘプタンジオン、3,5-ヘプタンジオン、ジピバロイルメタン等のβ-ジケトン類が挙げられる。これらの求核性試薬の使用量は、プレカーサ全体の量1モルに対して、0.1モル~10モルの範囲が好ましく、1モル~4モルの範囲がより好ましい。
【0056】
本発明の原子層堆積法用薄膜形成原料には、これを構成する成分以外の不純物金属元素分、不純物塩素などの不純物ハロゲン分、及び不純物有機分が極力含まれないようにする。不純物金属元素分は、元素毎では100ppb以下が好ましく、10ppb以下がより好ましく、総量では、1ppm以下が好ましく、100ppb以下がより好ましい。特に、LSIのゲート絶縁膜、ゲート膜、バリア層として用いる場合は、得られる薄膜の電気的特性に影響のあるアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素の含有量を少なくすることが必要である。不純物ハロゲン分は、100ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましく、1ppm以下が最も好ましい。不純物有機分は、総量で500ppm以下が好ましく、50ppm以下がより好ましく、10ppm以下が最も好ましい。また、水分は、原子層堆積法用薄膜形成原料中でのパーティクル発生や、薄膜形成中におけるパーティクル発生の原因となるので、プレカーサ、有機溶剤及び求核性試薬については、それぞれの水分の低減のために、使用の際にあらかじめできる限り水分を取り除いた方がよい。プレカーサ、有機溶剤及び求核性試薬それぞれの水分量は、10ppm以下が好ましく、1ppm以下がより好ましい。
【0057】
また、本発明の原子層堆積法用薄膜形成原料は、形成される薄膜のパーティクル汚染を低減又は防止するために、パーティクルが極力含まれないようにするのが好ましい。具体的には、液相での光散乱式液中粒子検出器によるパーティクル測定において、0.3μmより大きい粒子の数が液相1mL中に100個以下であることが好ましく、0.2μmより大きい粒子の数が液相1mL中に1,000個以下であることがより好ましく、0.2μmより大きい粒子の数が液相1mL中に100個以下であることが最も好ましい。
【0058】
本発明の薄膜の製造方法は、本発明の原子層堆積法用薄膜形成原料を用いて、原子層堆積法により薄膜を製造する方法である。本発明の薄膜の製造方法は、上記原子層堆積法用薄膜形成原料を気化させることにより得られる、一般式(1)で表されるアルミニウム化合物を含有する蒸気を上記処理雰囲気に導入する工程及び反応性ガスを上記処理雰囲気に導入する工程を含むことが好ましい。また、蒸気を処理雰囲気に導入する工程では、蒸気中のアルミニウム化合物を基体の表面に堆積させて前駆体薄膜を形成し、反応性ガスを処理雰囲気に導入する工程では、前駆体薄膜と反応性ガスを反応させて基体の表面にアルミニウム原子及びケイ素原子を含有する薄膜を形成することがより好ましい。
【0059】
上記基体の材質としては、例えば、シリコン;窒化ケイ素、窒化チタン、窒化タンタル、酸化チタン、窒化チタン、酸化ルテニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ランタン等のセラミックス;ガラス;金属コバルト等の金属が挙げられる。基体の形状としては、板状、球状、繊維状、鱗片状が挙げられる。基体表面は、平面であってもよく、トレンチ構造等の三次元構造となっていてもよい。
【0060】
また、上記原子層堆積法用薄膜形成原料を気化させることにより得られる蒸気を、基体が設置された成膜チャンバー内に導入する方法としては、前述した気体輸送法、液体輸送法、シングルソース法、カクテルソース法等が挙げられる。
【0061】
上記反応性ガスとしては、例えば、酸素、オゾン、二酸化窒素、一酸化窒素、水蒸気、過酸化水素、ギ酸、酢酸、無水酢酸等の酸化性ガス、水素等の還元性ガス、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、アルキレンジアミン等の有機アミン化合物、ヒドラジン、アンモニア等の窒化性ガスなどが挙げられる。これらの反応性ガスは、単独で用いてもよいし、又は二種類以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、本発明の原子層堆積法用薄膜形成原料は、酸化性ガスとの反応性が良く、特に酸素、オゾン及び水蒸気との反応性が特に良い。1サイクル当たりに得られる膜厚が厚く、生産性よく薄膜を製造することができるという点で、反応性ガスとして酸素、オゾン又は水蒸気を含有するガスを用いることが好ましく、水蒸気を含有するガスを用いることがより好ましい。
【0062】
上記製造条件として、更に、原子層堆積法用薄膜形成原料を気化させて蒸気とする際の温度及び圧力が挙げられる。原子層堆積法用薄膜形成原料を気化させて蒸気とする工程は、原料容器内で行ってもよく、気化室内で行ってもよい。いずれの場合においても、本発明の原子層堆積法用薄膜形成原料は0℃~200℃で気化させることが好ましい。また、原料容器内又は気化室内で原子層堆積法用薄膜形成原料を気化させて蒸気とする場合に原料容器内の圧力及び気化室内の圧力はいずれも1Pa~10,000Paであることが好ましい。
【0063】
また、本発明の薄膜の製造方法における製造条件としては特に限定されるものではないが、例えば、反応温度(基体温度)、反応圧力、堆積速度等が所望の薄膜の厚さや種類に応じて適宜決めることができる。反応温度については、本発明の原子層堆積法用薄膜形成原料が充分に反応する温度である100℃以上が好ましく、150℃~400℃がより好ましく、反応性ガスに合わせたALDウィンドウ内で使用される。膜厚は、所望の膜厚が得られるようにサイクルの回数でコントロールされる。
【0064】
以下では、上記ALD法の各工程について、金属酸化物含有薄膜を形成する場合を例に詳しく説明する。まず、原子層堆積法用薄膜形成原料の蒸気を成膜チャンバーに導入する(原料導入工程)。原子層堆積法用薄膜形成原料を蒸気とする際の好ましい温度及び圧力は、0℃~200℃、1Pa~10,000Paの範囲内である。次に、成膜チャンバーに導入した蒸気中の薄膜形成原料を基体表面に堆積させることにより、基体表面に前駆体薄膜を形成する(前駆体薄膜形成工程)。
なお、ここでの「堆積」には、基体表面の例えば水酸基と、導入した薄膜形成原料とが反応し、結合している状態も含まれることとする。
【0065】
上記前駆体薄膜形成工程では、基体を加熱するか、又は成膜チャンバーを加熱して、熱を加えてもよい。この際の基体温度は、室温~500℃が好ましく、150℃~400℃がより好ましい。本発明の原子層堆積法用薄膜形成原料と酸化性ガスとを組み合わせて使用した場合のALDウィンドウは概ね150℃~400℃の範囲である。前駆体薄膜形成工程が行われる際の系(成膜チャンバー内)の圧力は1Pa~10,000Paが好ましく、10Pa~1,000Paがより好ましい。
なお、薄膜形成原料が、本発明のアルミニウム化合物以外の他のプレカーサを含む場合は、アルミニウム化合物とともに他のプレカーサも基体の表面に堆積される。
【0066】
次に、基体の表面に堆積しなかった未反応の原子層堆積法用薄膜形成原料の蒸気を成膜チャンバーから排気する(排気工程)。未反応の原子層堆積法用薄膜形成原料の蒸気や副生したガスは、成膜チャンバーから完全に排気されるのが理想的であるが、必ずしも完全に排気される必要はない。排気方法としては、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスにより系内をパージする方法、系内を減圧することで排気する方法、これらを組み合わせた方法などが挙げられる。減圧する場合の減圧度は、0.01Pa~300Paが好ましく、0.01Pa~100Paがより好ましい。
【0067】
次に、成膜チャンバーに反応性ガスとして酸化性ガスを導入し、該酸化性ガスの作用又は該酸化性ガス及び熱の作用により、先の前駆体薄膜形成工程で形成された前駆体薄膜から、炭素原子、窒素原子、フッ素原子等を除去し、金属酸化物含有薄膜を形成する(金属酸化物含有薄膜形成工程)。本工程において熱を作用させる場合の温度は、室温~500℃が好ましく、150℃~400℃がより好ましい。本発明の原子層堆積法用薄膜形成原料と酸化性ガスとを組み合わせて使用した場合のALDウィンドウは概ね150℃~400℃の範囲であるため、150℃~400℃の範囲で前駆体薄膜を酸化性ガスと反応させることが最も好ましい。本工程が行われる際の系(成膜チャンバー内)の圧力は1Pa~10,000Paが好ましく、10Pa~1,000Paがより好ましい。本発明の原子層堆積法用薄膜形成原料は、酸化性ガスとの反応性が良好であり、残留炭素含有量が少ない高品質な金属酸化物含有薄膜を生産性よく製造することができる。
【0068】
本発明の薄膜の製造方法においては、上記の原料導入工程、前駆体薄膜形成工程、排気工程及び金属酸化物含有薄膜形成工程からなる一連の操作による薄膜堆積を1サイクルとし、このサイクルを必要な膜厚の薄膜が得られるまで複数回繰り返してもよい。この場合、1サイクル行った後、上記排気工程と同様にして、成膜チャンバーから未反応の反応性ガス(金属酸化物含有薄膜を形成する場合は酸化性ガス)及び副成したガスを排気した後、次の1サイクルを行うことが好ましい。
【0069】
また、本発明の薄膜の製造方法においては、プラズマ、光、電圧などのエネルギーを印加してもよく、触媒を用いてもよい。該エネルギーを印加する時期及び触媒を用いる時期は、特には限定されず、例えば、原料導入工程における原子層堆積法用薄膜形成原料の蒸気の導入時、前駆体薄膜形成工程又は金属酸化物含有薄膜形成工程における加熱時、排気工程における系内の排気時、金属酸化物含有薄膜形成工程における酸化性ガス導入時でもよく、上記の各工程の間でもよい。
【0070】
また、本発明の薄膜の製造方法においては、薄膜形成の後に、より良好な電気特性を得るために不活性雰囲気下、酸化性雰囲気下又は還元性雰囲気下でアニール処理を行ってもよく、段差埋め込みが必要な場合には、リフロー工程を設けてもよい。この場合の温度は、200℃~1,000℃であり、250℃~500℃が好ましい。
【0071】
本発明の原子層堆積法用薄膜形成原料を用いて薄膜を製造する装置は、周知の原子層堆積法用装置を用いることができる。具体的な装置の例としては図1のようなプレカーサをバブリング供給することのできる装置や、図2のように気化室を有する装置が挙げられる。また、図3及び図4のように反応性ガスに対してプラズマ処理を行うことのできる装置が挙げられる。図1図4のような枚葉式装置に限らず、バッチ炉を用いた多数枚同時処理可能な装置を用いることもできる。
【0072】
本発明の原子層堆積法用薄膜形成原料を用いて製造される薄膜は、他のプレカーサ、反応性ガス及び製造条件を適宜選択することにより、メタル、酸化物セラミックス、窒化物セラミックス、ガラス等の所望の種類の薄膜とすることができる。該薄膜は電気特性及び光学特性等を示すことが知られており、種々の用途に応用されている。例えば、これらの薄膜は、例えばDRAM素子に代表されるメモリー素子の電極材料、抵抗膜、ハードディスクの記録層に用いられる反磁性膜及び固体高分子形燃料電池用の触媒材料等の製造に広く用いられている。
【0073】
本発明の化合物は、上記一般式(2)で表されるアルミニウム化合物である。本発明の化合物は、融点が低く、熱安定性に優れ、ALD法への適応が可能であり、ALD法等の気化工程を有する薄膜製造方法のプレカーサとして好適な化合物である。
【0074】
上記一般式(2)において、R21~R23は各々独立に、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のフッ素原子含有アルキル基を表し、Aは酸素原子又は炭素原子数1~5のアルカンジイル基を表し、Lは上記一般式(L-5)~(L-8)で表される基を表し、mは1~2の数を表す。
【0075】
上記R21~R23で表される炭素原子数1~5のアルキル基としては、上記一般式(1)中のR~Rで表される炭素原子数1~5のアルキル基と同じである。
【0076】
上記R21~R23で表される炭素原子数1~5のフッ素原子含有アルキル基としては、上記一般式(1)中のR~Rで表される炭素原子数1~5のフッ素原子含有アルキル基と同じである。
【0077】
上記Aで表される炭素原子数1~5のアルカンジイル基としては、上記一般式(1)中のAで表される炭素原子数1~5のアルカンジイル基と同じである。
【0078】
上記一般式(2)において、生産性よくアルミニウム原子及びケイ素原子を含有する薄膜を形成することができることから、R21~R23は炭素原子数1~3のアルキル基又は炭素原子数1~3のフッ素原子含有アルキル基が好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が特に好ましく、メチル基が最も好ましい。また、生産性よくアルミニウム原子及びケイ素原子を含有する薄膜を形成することができることから、Aは酸素原子又は炭素原子数1~3のアルカンジイル基が好ましく、酸素原子、メチレン基又はエチレン基がより好ましく、メチレン基が特に好ましい。更に、アルミニウム化合物の熱安定性が高いことから、mが2であることが好ましい。
【0079】
上記一般式(L-5)~(L-8)において、式中、R24~R37は各々独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のフッ素原子含有アルキル基を表す。
上記R24~R37で表される炭素原子数1~5のアルキル基としては、上記一般式(1)中のR~Rで表される炭素原子数1~5のアルキル基と同じである。
上記R24~R37で表される炭素原子数1~5のフッ素原子含有アルキル基としては、上記一般式(1)中のR~Rで表される炭素原子数1~5のフッ素原子含有アルキル基と同じである。
【0080】
上記一般式(L-5)において、アルミニウム化合物の熱安定性が高いことから、R24及びR25は炭素原子数3~5のアルキル基が好ましく、炭素原子数3~5の第二級又は第三級のアルキル基がより好ましく、第三ブチル基が特に好ましい。また、生産性よくアルミニウム原子及びケイ素原子を含有する薄膜を形成することができることから、R26は炭素原子数1~3のアルキル基又は炭素原子数1~3のフッ素原子含有アルキル基が好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
【0081】
上記一般式(L-6)において、生産性よくアルミニウム原子及びケイ素原子を含有する薄膜を形成することができることから、R27及びR28は、炭素原子数1~5のアルキル基もしくは炭素原子数1~3のフッ素原子含有アルキル基が好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基もしくは炭素原子数1~2のフッ素原子含有アルキル基がより好ましく、エチル基、メチル基もしくはトリフルオロメチル基が特に好ましい。また、生産性よくアルミニウム原子及びケイ素原子を含有する薄膜を形成することができることから、R29は炭素原子数1~3のアルキル基もしくは水素原子が好ましく、エチル基、メチル基もしくは水素原子がより好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0082】
上記一般式(L-7)において、生産性よくアルミニウム原子及びケイ素原子を含有する薄膜を形成することができることから、R30及びR31は炭素原子数1~5のアルキル基もしくは炭素原子数1~3のフッ素原子含有アルキル基が好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基もしくは炭素原子数1~2のフッ素原子含有アルキル基が好ましく、エチル基、メチル基もしくはトリフルオロメチル基が特に好ましい。また、生産性よくアルミニウム原子及びケイ素原子を含有する薄膜を形成することができることから、R32は炭素原子数1~4のアルキル基もしくは炭素原子数1~4のフッ素含有アルキル基が好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基もしくは炭素原子数1~3のフッ素含有アルキル基がより好ましく、エチル基、メチル基もしくはトリフルオロメチル基が特に好ましい。更に、生産性よくアルミニウム原子及びケイ素原子を含有する薄膜を形成することができることから、R33が炭素原子数1~3のアルキル基もしくは水素原子が好ましく、エチル基、メチル基もしくは水素原子がより好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0083】
上記一般式(L-8)において、生産性よくアルミニウム原子及びケイ素原子を含有する薄膜を形成することができることから、R34及びR35は炭素原子数1~3のアルキル基もしくは炭素原子数1~3のフッ素含有アルキル基が好ましく、炭素原子数1~2のアルキル基もしくは炭素原子数1~2のフッ素含有アルキル基がより好ましく、エチル基、メチル基もしくはトリフルオロメチル基が特に好ましい。また、生産性よくアルミニウム原子及びケイ素原子を含有する薄膜を形成することができることから、R36及びR37は炭素原子数1~3のアルキル基もしくは炭素原子数1~3のフッ素含有アルキル基が好ましく、炭素原子数1~2のアルキル基もしくは炭素原子数1~2のフッ素含有アルキル基がより好ましく、エチル基、メチル基もしくはトリフルオロメチル基が特に好ましい。
【0084】
上記一般式(2)で表されるアルミニウム化合物の具体例としては、下記化合物No.1~No.58が挙げられる。
【0085】
上記一般式(2)で表されるアルミニウム化合物は、上記一般式(1)で表されるアルミニウム化合物と同様の方法により製造することができる。
【実施例0086】
以下、実施例及び比較例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
【0087】
[実施例1]化合物No.7の合成
1L4つ口フラスコに、塩化アルミニウム3.60g及びヘキサン100mlを加え、そこに氷冷下(トリメチルシリル)メチルリチウムのTHF溶液(1M)を81ml滴下した。滴下後80℃にて3時間加熱攪拌を行った。加熱攪拌後氷冷し、N,N’-ジ-tert-ブチルアセトアミジン4.6gを滴下し、室温下終夜攪拌を行った。攪拌後減圧下オイルバス80℃にて反応液の脱溶媒を行い、得られた残渣にヘキサン200mlを加え濾過を行った。その後、オイルバス80℃にて得られた濾液の脱溶媒を行った。生成したアルミニウム錯体をオイルバス145℃、40Paにて蒸留し、無色透明液体を得た(収量4.95g、収率49.5%)。
【0088】
(分析値)
(1)常圧TG-DTA
質量50%減少温度: 212.0℃(760Torr、Ar流量:100ml/分、昇温10℃/分)
(2)減圧TG-DTA
質量50%減少温度: 129.2℃(10Torr、Ar流量:50ml/分、昇温10℃/分)
(3)1H-NMR(重ベンゼン)
-0.636ppm(4H,singlet)、0.284ppm(18H,singlet)、1.137ppm(18H,singlet)、1.670ppm(3H,singlet)
【0089】
[実施例2]化合物No.59の合成
1L4つ口フラスコに、塩化アルミニウム1.11g及びヘキサン25mlを加え、そこに氷冷下(トリメチルシリル)メチルリチウムのTHF溶液(1M)を25ml滴下した。滴下後80℃にて3時間加熱攪拌を行った。加熱攪拌後、減圧下オイルバス80℃にて反応液の脱溶媒を行い、得られた残渣にヘキサン50mlを加え濾過を行った。その後、オイルバス80℃にて得られた濾液の脱溶媒を行った。生成したアルミニウム錯体をオイルバス70℃、40Paにて蒸留し、無色透明液体を得た(収量0.50g、収率20.8%)。
【0090】
(分析値)
(1)常圧TG-DTA
質量50%減少温度: 157.0℃(760Torr、Ar流量:100ml/分、昇温10℃/分)
(2)1H-NMR(重ベンゼン)
-0.399ppm(6H,singlet)、0.142ppm(27H,singlet)
【0091】
[実施例3]化合物No.61の合成
1L4つ口フラスコに、塩化アルミニウム10g及びTHF100mlを加え、そこに氷冷下トリメチルシラノール酸ナトリウム21.6gのTHF溶液310ml滴下した。滴下後3時間加熱還流を行った。還流後減圧下オイルバス80℃にて脱溶媒を行い、得られた残渣にヘキサン500mlを加え濾過を行った。その後、オイルバス80℃にて得られた濾液の脱溶媒を行った。生成したアルミニウム錯体をオイルバス115℃、20Paにて昇華精製し、無色透明結晶を得た(収量10.5g、収率47.5%)。
【0092】
(分析値)
(1)常圧TG-DTA
質量50%減少温度: 205.6℃(760Torr、Ar流量:100ml/分、昇温10℃/分)
(2)減圧TG-DTA
質量50%減少温度: 135.0℃(10Torr、Ar流量:50ml/分、昇温10℃/分)
(3)1H-NMR(重ベンゼン)
0.226ppm(36H,singlet)、0.274ppm(18H,singlet)
【0093】
[評価方法]
実施例1~3で得られた本発明の化合物、並びに比較例1及び2として、下記の比較化合物1及び2について、以下の評価を行った。なお、下記比較化合物2の化学式において「TMS」はトリメチルシリル基を表す。
(1)融点評価
20℃における化合物の状態を目視で観測した。結果を表1に示す。
(2)熱安定性評価
DSC測定装置を用いて、熱分解開始温度を測定した。熱分解開始温度が高いものは熱分解が発生しにくく、原子層堆積法用薄膜形成原料として好ましいと判断することができる。結果を表1に示す。
【0094】
【化13】
【0095】
【表1】
【0096】
表1の結果より、実施例1~3で得られた本発明の化合物は、比較化合物1及び2よりも熱分解開始温度が高いことがわかった。更に、化合物No.7及びNo.59は20℃での状態が液体であり、融点が低い化合物であることがわかった。また、化合物No.61は20℃での状態が固体ではあるものの、20℃での状態が同様に固体である比較化合物2と比べると、熱分解開始温度が340℃以上高いことがわかった。本発明の原子層堆積法用薄膜形成原料は、類似の構造を有する比較化合物と比べて原子層堆積法用薄膜形成原料として適していることがわかった。特に化合物No.7は、融点が低く、熱安定性が特に高く、原子層堆積法用薄膜形成原料として特に適していることがわかった。
【0097】
<ALD法による薄膜の製造>
実施例1~3で得られた本発明の化合物、比較化合物1~2を原子層堆積法用原料とし、図1に示すALD装置を用いて以下の条件のALD法により、シリコンウエハ上にアルミニウムシリケート薄膜を製造した。得られた薄膜について、X線反射率法による膜厚測定、X線回折法により薄膜の化合物の確認及びX線光電子分光法による薄膜中の炭素含有量の測定を行った。結果を表2に示す。
【0098】
[実施例4~6、比較例4]
実施例1~3及び比較例2の化合物を用いたALD法によるアルミニウムシリケート薄膜の製造
(条件)
基体:シリコンウエハ、反応温度(シリコンウエハ温度);200℃、反応性ガス:水蒸気
下記(1)~(4)からなる一連の工程を1サイクルとして、300サイクル繰り返した。
(1)原料容器温度:80℃、原料容器内圧力:100Paの条件で気化させた原子層堆積法用原料の蒸気を基体が配置された成膜チャンバーに導入し、系圧力:100Paで30秒間基体の表面に堆積させる。
(2)15秒間のアルゴンパージにより、堆積しなかった原料の蒸気を排気する。
(3)反応性ガスを成膜チャンバーに導入し、系圧力:100Paで0.1秒間反応させる。
(4)60秒間のアルゴンパージにより、未反応の反応性ガス及び副生ガスを排気する。
【0099】
[比較例3]
比較例1の化合物を用いたALD法によるアルミニウムシリケート薄膜の製造
(条件)
基体:シリコンウエハ、反応温度(シリコンウエハ温度);450℃、反応性ガス:オゾン
下記(1)~(8)からなる一連の工程を1サイクルとして、300サイクル繰り返した。
(1)原料容器温度:80℃、原料容器内圧力:100Paの条件で気化させた原子層堆積法用原料の蒸気を基体が配置された成膜チャンバーに導入し、系圧力:100Paで30秒間基体の表面に堆積させる。
(2)15秒間のアルゴンパージにより、堆積しなかった原料の蒸気を排気する。
(3)反応性ガスを成膜チャンバーに導入し、系圧力:100Paで0.1秒間反応させる。
(4)60秒間のアルゴンパージにより、未反応の反応性ガス及び副生ガスを排気する。
(5)原料容器温度:80℃、原料容器内圧力:100Paの条件で気化させたテトラエトキシシランを成膜チャンバーに導入し、系圧力:100Paで30秒間堆積させる。
(6)15秒間のアルゴンパージにより、堆積しなかった原料の蒸気を排気する。
(7)反応性ガスを成膜チャンバーに導入し、系圧力:100Paで0.1秒間反応させる。
(8)15秒間のアルゴンパージにより、未反応の反応性ガス及び副生ガスを排気する。
【0100】
【表2】
【0101】
表2の結果より、ALD法によって得られるアルミニウムシリケート薄膜中の炭素含量が、比較例3及び4では4~8atm%であるのに対し、実施例4~6では検出限界の0.1atm%未満であった。つまり、本発明の原子層堆積法用原料を用いることにより高品質なアルミニウムシリケート薄膜が得られることが示された。また、得られる薄膜の膜厚が、比較例1及び2では4.5nm以下であるのに対し、実施例4~6では6.0nm以上であり、本発明の原子層堆積法用原料を用いることにより高い生産性でアルミニウムシリケート薄膜が得られた。特に、化合物No.7は20℃で液体であり、原子層堆積法用原料として用いた場合に、特に高い生産性でアルミニウムシリケート薄膜を得ることができたことから、原子層堆積法用原料として特に優れていることが示された。なお、比較例1は、比較化合物1を導入する工程の他に、ケイ素化合物としてテトラエトキシシランを導入する工程が必要であり、薄膜の製造工程が多いため、アルミニウムシリケート薄膜の生産性が悪かった。
以上より、本発明によれば、高品質なアルミニウムシリケート薄膜を生産性よく製造することができるといえる。
図1
図2
図3
図4