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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022704
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】農業用保水材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 24/35 20180101AFI20240214BHJP
   C08F 8/28 20060101ALI20240214BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20240214BHJP
   A01G 24/42 20180101ALI20240214BHJP
【FI】
A01G24/35
C08F8/28
A01G7/00 602C
A01G24/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219318
(22)【出願日】2020-12-28
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】馬場 正博
(72)【発明者】
【氏名】三枝 裕典
(72)【発明者】
【氏名】藤井 結稀
(72)【発明者】
【氏名】加藤 利典
【テーマコード(参考)】
2B022
4J100
【Fターム(参考)】
2B022BA24
2B022BB01
4J100AG04P
4J100AL03Q
4J100CA04
4J100CA31
4J100DA37
4J100EA09
4J100FA03
4J100FA21
4J100HA09
4J100HA43
4J100HA53
4J100HB39
4J100HC16
4J100JA64
(57)【要約】
【課題】吸水速度に優れ、カルシウム塩の存在下であっても吸水量が十分高く、この吸水量が長期間にわたって低下しにくい、農業用保水材を提供すること。
【解決手段】吸水性樹脂を含んでなる農業用保水材であって、吸水性樹脂は、吸水性樹脂の全構成単位に対して0.1モル%以上、50モル%以下のイオン性基を有しており、超音波を付与することにより20質量%塩化ナトリウム水溶液を保水材に吸液させる保水材膨潤試験における、超音波を付与する前後の保水材の体積基準10%粒子径D10の変化率:D10の変化率=(超音波を付与した後の保水材のD10)/(超音波を付与する前の保水材のD10)は1以下である、保水材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性樹脂を含んでなる農業用保水材であって、
吸水性樹脂は、吸水性樹脂の全構成単位に対して0.1モル%以上、50モル%以下のイオン性基を有しており、
超音波を付与することにより20質量%塩化ナトリウム水溶液を保水材に吸液させる保水材膨潤試験における、超音波を付与する前後の保水材の体積基準10%粒子径D10の変化率:
10の変化率
=(超音波を付与した後の保水材のD10)/(超音波を付与する前の保水材のD10)
は1以下である、保水材。
【請求項2】
前記保水材は、公称目開き3000μmの篩を通過し、かつ公称目開き10μmの篩を通過しない粒度を有する、請求項1に記載の保水材。
【請求項3】
前記保水材膨潤試験において超音波を付与した後の状態における、最も小粒子径側の極大粒子径は1μm以上、1000μm以下である、請求項1または2に記載の保水材。
【請求項4】
前記吸水性樹脂は、前記イオン性基として、カルボキシル基、スルホン酸基およびアンモニウム基からなる群から選択される1以上を有する、請求項1~3のいずれかに記載の保水材。
【請求項5】
前記吸水性樹脂は、ビニルアルコール系重合体、アクリル酸系重合体、アクリルアミド系重合体およびメタクリル酸系重合体からなる群から選択される1以上を含む、請求項1~4のいずれかに記載の保水材。
【請求項6】
前記ビニルアルコール系重合体は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸およびそれらの誘導体からなる群から選択される1種以上のモノマー構成単位を含む、請求項5に記載の保水材。
【請求項7】
前記吸水性樹脂は架橋構造を有する、請求項1~6のいずれかに記載の保水材。
【請求項8】
育苗用である、請求項1~7のいずれかに記載の保水材。
【請求項9】
一次粒子として存在する吸水性樹脂を、膨潤させた状態で接触させることにより凝集させる凝集工程、および
凝集した吸水性樹脂を、0.2MPa以下の圧力下で乾燥する乾燥工程
を含む、請求項1~8のいずれか記載の保水材の製造方法。
【請求項10】
前記凝集工程の前、前記凝集工程と同時、または前記凝集工程の後に、吸水性樹脂を架橋させる架橋工程を更に含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用保水材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、慢性的な水資源の枯渇に伴い、農業用水を有効にかつ適切に利用すること、および従来よりも少量の灌漑水量でも農産物の収穫量を維持若しくは増大させる試みが、いわゆる農業用保水材を用いて検討されている(例えば、特許文献1~2を参照)。これらの農業用保水材は高吸水性樹脂(SAP)を主要構成成分としており、例えば、土壌全体の保水性の改善に用いられるピートモス等と比べると、極めて少量で保水効果を発現することから、農家が用いる際の負担が少ないという利点がある。
【0003】
特許文献1および2には、ポリアクリル酸塩ゲルを主成分とする吸水性樹脂を農業用保水材として使用できることが開示されている。特許文献3には、複雑な表面形状特徴を有するポリビニルアルコール系吸水性樹脂粒子が開示されている。特許文献4には、逆相懸濁重合法によって得られる凝集したポリアクリル酸系吸水性樹脂が開示されており、この樹脂は通液性能が高く、衛生材料用途に好適に使用できることが開示されている。特許文献5には、特定の細孔を有するポリビニルアルコール系吸水性樹脂が開示されており、この樹脂は水および液体肥料の吸収性に優れ、農業用に好適に利用できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第1998/005196号パンフレット
【特許文献2】特表2013-544929号公報
【特許文献3】特表2013-540164号公報
【特許文献4】国際公開第2012/023433号パンフレット
【特許文献5】特開2019-119891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1、2および4に開示されているポリアクリル酸系吸水性樹脂は、土壌中に含まれるカルシウム塩により吸水性能が著しく低下するため、農業用として用いた場合、吸水量が十分でなく、長期間安定した吸水量を発現することも困難である。また、特許文献3および5に開示されたビニルアルコール系吸水性樹脂では、より一層向上した吸水速度が求められる場合があった。
本発明が解決しようとする課題は、上記問題を解決することであり、吸水速度に優れ、カルシウム塩の存在下であっても吸水量が十分高く、この吸水量が長期間にわたって低下しにくい、農業用保水材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するために、農業用保水材について詳細に検討を重ね、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、以下の好適な態様を包含する。
[1]吸水性樹脂を含んでなる農業用保水材であって、
吸水性樹脂は、吸水性樹脂の全構成単位に対して0.1モル%以上、50モル%以下のイオン性基を有しており、
超音波を付与することにより20質量%塩化ナトリウム水溶液を保水材に吸液させる保水材膨潤試験における、超音波を付与する前後の保水材の体積基準10%粒子径D10の変化率:
超音波を付与する前後の保水材の体積基準10%粒子径D10の変化率
=(超音波を付与した後の保水材のD10)/(超音波を付与する前の保水材のD10)
は1以下である、保水材。
[2]前記保水材は、公称目開き3000μmの篩を通過し、かつ公称目開き10μmの篩を通過しない粒度を有する、前記[1]に記載の保水材。
[3]前記保水材膨潤試験において超音波を付与した後の状態における、最も小粒子径側の極大粒子径は1μm以上、1000μm以下である、前記[1]または[2]に記載の保水材。
[4]前記吸水性樹脂は、前記イオン性基として、カルボキシル基、スルホン酸基およびアンモニウム基からなる群から選択される1以上を有する、前記[1]~[3]のいずれかに記載の保水材。
[5]前記吸水性樹脂は、ビニルアルコール系重合体、アクリル酸系重合体、アクリルアミド系重合体およびメタクリル酸系重合体からなる群から選択される1以上を含む、前記[1]~[4]のいずれかに記載の保水材。
[6]前記ビニルアルコール系重合体は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸およびそれらの誘導体からなる群から選択される1種以上のモノマー構成単位を含む、前記[5]に記載の保水材。
[7]前記吸水性樹脂は架橋構造を有する、前記[1]~[6]のいずれかに記載の保水材。
[8]育苗用である、前記[1]~[7]のいずれかに記載の保水材。
[9]一次粒子として存在する吸水性樹脂を、膨潤させた状態で接触させることにより凝集させる凝集工程、および
凝集した吸水性樹脂を、0.2MPa以下の圧力下で乾燥する乾燥工程
を含む、前記[1]~[8]のいずれか記載の保水材の製造方法。
[10]前記凝集工程の前、前記凝集工程と同時、または前記凝集工程の後に、吸水性樹脂を架橋させる架橋工程を更に含む、前記[9]に記載の方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吸水速度に優れ、カルシウム塩の存在下であっても吸水量が十分高く、この吸水量が長期間にわたって低下しにくい、農業用保水材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施態様について説明するが、本発明は、本実施態様に限定されない。
【0009】
[農業用保水材]
本発明の農業用保水材(以下、単に「保水材」とも称する)は吸水性樹脂を含んでなる。本発明は、前記吸水性樹脂が、吸水性樹脂の全構成単位に対して0.1モル%以上、50モル%以下のイオン性基を有することを特徴とする。また、本発明は、保水材膨潤試験における、超音波を付与する前後の保水材の体積基準10%粒子径D10の変化率:
【数1】

が1以下であることも特徴とする。ここで、体積基準10%粒子径とは、これ以下の粒子の比率が体積基準で10%である粒子径を意味する。
【0010】
1以下のD10変化率は、例えば、保水材において、吸水性樹脂が凝集体として存在することにより達成できる。本発明の好ましい一実施態様では、保水材において、吸水性樹脂は、粒子の凝集体として、好ましくは一次粒子の凝集体として存在する。本明細書において一次粒子とは、凝集していない粒子を意味する。
【0011】
意外なことに、本発明者らは、保水材が上記特徴を有することにより、保水材が優れた吸水速度を示し、カルシウム塩の存在下であっても十分高い吸水量を示し、この吸水量が長期間にわたって低下しにくいことを見出した。
その理由は明らかではないが、非限定的な作用機構として下記理由が推定される。本発明の保水材は吸水性樹脂を含むため、吸水すると膨潤する。その一方で、保水材における吸水性樹脂の凝集力が適度に弱いため、膨張に伴って保水材の崩壊が進行する。保水材が崩壊すると、水と接触する吸水性樹脂の表面積が拡大することから、吸水速度が速くなると推定される。また、吸水性樹脂が高すぎないイオン性基含有量、即ち吸水性樹脂の全構成単位に対して50モル%以下のイオン性基含有量を有することにより、水と接している吸水性樹脂表面だけが急激に吸水するのではなく保水材内部の吸水性樹脂の空隙にも水がうまく入り込むことができ、その結果、保水材の崩壊により拡大した吸水性樹脂の表面積を水との接触に、より有効に利用できたため、吸水速度が著しく速くなると推定される。更に、吸水性樹脂が上述した特定のイオン性基含有量を有することにより、カルシウム塩とイオン性基によるイオン架橋が起こりにくいため、カルシウム塩の存在下であっても保水材の吸水量は十分高く、この吸水量は長期間にわたって低下しにくくなることが推定される。
【0012】
保水材膨潤試験において、保水材に速やかに吸収される媒体(例えば水)ではなく、保水材があまり吸液しない媒体に保水材を分散させることにより、吸水初期の保水材の状態を再現することができる。本発明では、そのようなあまり吸液されない媒体として20質量%塩化ナトリウム水溶液を用いている。その後、前記水溶液中の保水材に超音波を付与することにより、前記水溶液を保水材に吸液させることができ、これにより保水材の膨潤および崩壊の様子を再現することができる。
保水材膨潤試験は、下記手順にて実施できる。まず、分散媒に試料である保水材を分散させ、例えばレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて、体積基準10%粒子径D10(超音波を付与する前の保水材のD10に相当)を測定する。次いで、5分間の超音波照射により分散媒を保水材に吸液させることで保水材を膨潤させた後、保水材の体積基準10%粒子径D10(超音波を付与した後の保水材のD10に相当)を測定する。測定条件を以下に示す。
装置名:堀場製作所製 レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-950V2
測定方式:湿式(循環式)
試料屈折率:1.51
分散媒:20質量%塩化ナトリウム水溶液(屈折率:1.368)
循環速度:10
撹拌速度:10
超音波強さ:7
透過率:80~90%
循環液量:280mL
続いて、下記式により、超音波を付与する前後の保水材の体積基準10%粒子径D10の変化率を求める。
【数2】

本発明者らは、保水材を形成している吸水性樹脂粒子のうち、比較的小さい粒子径を有する粒子が、保水材全体の吸水速度を決める因子の1つであることを見出した。そのため、本発明では、優れた吸水速度をもたらすための構成要件に、D10を用いている。
【0013】
保水材膨潤試験における、超音波を付与する前後の保水材の体積基準10%粒子径D10の変化率は、1以下である。D10の変化率が1より大きいと、所望の吸水速度を得ることは困難である。D10の変化率は、好ましくは0.95以下、より好ましくは0.94以下、より好ましくは0.93以下、より好ましくは0.92以下、より好ましくは0.91以下、更に好ましくは0.90以下、更により好ましくは0.85以下、特に好ましくは0.80以下、特により好ましくは0.75以下である。D10の変化率が前記上限値以下であると、吸水時に保水材の膨張と崩壊とがバランス良く進行し、より好ましい吸水速度を得やすい。
10の変化率の下限値は特に限定されない。D10の変化率は、例えば0.30以上である。D10の変化率が前記下限値以上であると、使用前に保水材が崩壊して粉塵発生を招きやすくなることを抑制しやすい。
10の変化率は、例えば、保水材において吸水性樹脂を凝集体として存在させること、吸水性樹脂を凝集させる工程におけるバインダー量、圧力、温度若しくは可塑剤量の調整、凝集した吸水性樹脂を乾燥する工程における圧力、温度若しくは可塑剤量の調整、または凝集前の吸水性樹脂粒子の粒子径若しくは形状の調整により、前記下限値以上、前記上限値以下に調整できる。
【0014】
保水材膨潤試験において超音波を付与した後の状態における、最も小粒子径側の極大粒子径は、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上、特に好ましくは30μm以上であり、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、更に好ましくは200μm以下、特に好ましくは100μm以下である。前記極大粒子径は、0.011μm、0.013μm、0.015μm、0.017μm、0.02μm、0.023μm、0.026μm、0.03μm、0.034μm、0.039μm、0.044μm、0.051μm、0.058μm、0.067μm、0.076μm、0.087μm、0.1μm、0.115μm、0.131μm、0.15μm、0.172μm、0.197μm、0.226μm、0.259μm、0.296μm、0.339μm、0.389μm、0.445μm、0.51μm、0.584μm、0.669μm、0.766μm、0.877μm、1.005μm、1.151μm、1.318μm、1.51μm、1.729μm、1.981μm、2.269μm、2.599μm、2.976μm、3.409μm、3.905μm、4.472μm、5.122μm、5.867μm、6.72μm、7.697μm、8.816μm、10.097μm、11.565μm、13.246μm、15.172μm、17.377μm、19.904μm、22.797μm、26.111μm、29.907μm、34.255μm、39.234μm、44.938μm、51.471μm、58.953μm、67.523μm、77.34μm、88.583μm、101.46μm、116.21μm、133.103μm、152.453μm、174.616μm、200μm、229.075μm、262.376μm、300.518μm、344.206μm、394.244μm、451.556μm、517.2μm、592.387μm、678.504μm、777.141μm、890.116μm、1019.515μm、1167.725μm、1337.481μm、1531.914μm、1754.613μm、2009.687μm、2301.841μm、2636.467μm、または3000μmでの頻度により求めた値である。前記極大粒子径が前記下限値以上であり、前記上限値以下であると、より好ましい吸水速度を得やすい。前記極大粒子径は、例えば、凝集前の吸水性樹脂粒子の粒子径を調整することにより前記下限値以上、前記上限値以下に調整できる。
【0015】
本発明の好ましい一実施態様において、保水材に含まれる吸水性樹脂は、一次粒子の凝集体として存在している。保水材に含まれる吸水性樹脂の一次粒子の平均粒子径は、好ましくは1μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは30μm以上、特に好ましくは50μm以上であり、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1000μm以下、更に好ましくは700μm以下、特に好ましくは150μm以下である。一次粒子の平均粒子径が前記下限値以上であり、前記上限値以下であると、より好ましい吸水速度を得やすい。また、一次粒子の平均粒子径が前記下限値以上であると、保水材の製造時に粉塵発生を抑制しやすい。一次粒子の平均粒子径は、例えば、電子顕微鏡または特定の目開きの篩を用いて測定できる。
【0016】
保水材に含まれる吸水性樹脂は、吸水性樹脂の全構成単位に対して0.1モル%以上、好ましくは0.5モル%以上、より好ましくは1.0モル%以上、更に好ましくは2.0モル%以上、特に好ましくは3.0モル%以上のイオン性基を有する。ここで、「構成単位」とは、吸水性樹脂を構成する繰り返し単位のことを意味する。イオン性基含有量が前記下限値以上であると、吸水性樹脂は、より向上した吸水量または吸水速度を有しやすい。吸水性樹脂は、吸水性樹脂の全構成単位に対して50モル%以下、好ましくは40モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは20モル%以下、特に好ましくは10モル%以下のイオン性基を有する。イオン性基含有量が前記上限値以下であると、吸水性樹脂は、土壌中に含まれる二価イオン(例えばカルシウムイオン)の存在下でも優れた吸液量または吸液速度を維持しやすく、この吸液量または吸液速度は、長期間にわたって低下しにくく、紫外線による吸水性樹脂の分解が起こりにくい。
吸水性樹脂中のイオン性基の含有量、および後述する各種構成単位の含有量は、例えば、固体13C-NMR(核磁気共鳴分光法)、FTIR(フーリエ変換赤外分光法)または酸塩基滴定等によって測定できる。
また、吸水性樹脂中のイオン性基の含有量、および後述する各種構成単位の含有量は、例えば、イオン性基をもたらすモノマーおよび各種構成単位を形成するモノマーの配合比、反応時のそれらの消費率若しくは反応性比、反応温度、または溶媒等を調整することによって調整できる。
【0017】
イオン性基は、イオン性基またはその誘導体として存在してよい。イオン性基は、好ましくはカルボキシル基、スルホン酸基、アンモニウム基またはその塩であり、より好ましくはカルボキシル基、アンモニウム基またはその塩であり、特に好ましくは、カルボキシル基またはその塩である。従って、本発明の好ましい一実施態様では、吸水性樹脂は、イオン性基として、カルボキシル基、スルホン酸基およびアンモニウム基からなる群から選択される1以上を有する。
なお、吸水性樹脂に含まれるイオン性基の一部または全部がその誘導体(例えば塩)の形態をとっている場合、上述のイオン性基含有量は、イオン性基およびその誘導体の含有量またはイオン性基の誘導体の含有量である。
【0018】
保水材は、好ましくは公称目開き3000μmの篩を通過し、より好ましくは公称目開き2000μmの篩を通過し、更に好ましくは公称目開き1500μmの篩を通過し、特に好ましくは公称目開き1000μmの篩を通過する粒度を有し、好ましくは公称目開き10μmの篩を通過しない、より好ましくは公称目開き50μmの篩を通過しない、更に好ましくは公称目開き100μmの篩を通過しない、特に好ましくは公称目開き200μmの篩を通過しない粒度を有する。好ましい一実施態様において、保水材は、公称目開き3000μmの篩を通過し、かつ公称目開き10μmの篩を通過しない粒度を有する。保水材がこのような粒度を有すると、より優れた取扱い性およびより優れた吸水速度を得やすい。
【0019】
吸水性樹脂は、潅水による吸水性樹脂の溶出を抑制する観点から、架橋構造を有することが好ましい。吸水性樹脂が架橋構造を有する場合、吸水性樹脂は吸水時にゲル状態となる。架橋構造の形態に特に制限はなく、その例としては、エステル結合、エーテル結合、アセタール結合、および炭素-炭素結合等による架橋構造を挙げることができる。
【0020】
保水材に含まれる吸水性樹脂は特に限定されない。製造容易性および保水性の観点からは、吸水性樹脂は、好ましくはビニルアルコール系重合体、アクリル酸系重合体、アクリルアミド系重合体およびメタクリル酸系重合体からなる群から選択される1以上を含み、より好ましくはビニルアルコール系重合体およびアクリルアミド系重合体からなる群から選択される1以上を含み、更に好ましくはビニルアルコール系重合体またはアクリルアミド系重合体からなる。
本明細書において、ビニルアルコール系重合体とは、ビニルアルコールに由来する構成単位(以下、「ビニルアルコール単位」と称する)の含有量が全構成単位の中で最も多い重合体を意味する。このことは、アクリル酸系重合体、アクリルアミド系重合体およびメタクリル酸系重合体についても同様に当てはまる。
【0021】
<ビニルアルコール系重合体>
ビニルアルコール系重合体〔以下、ビニルアルコール系重合体(A)と称することがある〕の例としては、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、およびそれらのビニルアルコール単位がアセタール化剤によりアセタール化されたものを挙げることができる。前記吸水性樹脂におけるビニルアルコール系重合体(A)の含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0022】
本発明における吸水性樹脂はイオン性基を有する。従って、本発明の好ましい一実施態様では、ビニルアルコール系重合体(A)は、ビニルアルコール単位とイオン性基またはその誘導体を有するモノマー構成単位との共重合体からなる。ビニルアルコール系重合体(A)が有するイオン性基またはその誘導体は、好ましくはカルボキシル基、スルホン酸基、アンモニウム基、またはそれらの塩であり、より好ましくはカルボキシル基、アンモニウム基、またはそれらの塩であり、特に好ましくはカルボキシル基またはそれらの塩である。ビニルアルコール系重合体(A)における前記共重合体の含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更により好ましくは95質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。
【0023】
ビニルアルコール系重合体(A)がイオン性基としてカルボキシル基、スルホン酸基およびアンモニウム基を有する場合、ビニルアルコール系重合体(A)としては、例えば、(i-1)カルボキシル基、スルホン酸基およびアンモニウム基を有するモノマーおよび該モノマーの誘導体からなる群から選択される1種以上とビニルエステルとの共重合体のケン化物;等を挙げることができる。
【0024】
上記(i-1)において、カルボキシル基を有するモノマーとしては特に制限はなく、その例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、およびイタコン酸等を挙げることができる。また、上記カルボキシル基を有するモノマーの誘導体の例としては、該モノマーの無水物、エステル化物、および中和物等を挙げることができ、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、マレイン酸モノメチル、イタコン酸ジメチル、および無水マレイン酸等を用いることができる。従って、本発明の一実施態様では、ビニルアルコール系重合体(A)は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸およびそれらの誘導体からなる群から選択される1種以上のモノマー構成単位を含む。
【0025】
上記(i-1)において、スルホン酸基を有するモノマーとしては特に制限はなく、その例としては、ビニルスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、およびp-スチレンスルホン酸等を挙げることができる。また、上記スルホン酸基を有するモノマーの誘導体の例としては、該モノマーのエステル化物、および中和物等を挙げることができ、例えば、ビニルスルホン酸ナトリウム、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム、およびp-スチレンスルホン酸ナトリウム等を用いることができる。
【0026】
上記(i-1)において、アンモニウム基を有するモノマーとしては特に制限はなく、その例としては、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ビニルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、p-ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、および3-(メタクリルアミド)プロピルトリメチルアンモニウムクロライド等を挙げることができる。また、上記アンモニウム基を有するモノマーの誘導体の例としては、該モノマーのアミン等を挙げることができ、例えば、ジアリルメチルアミン、ビニルアミン、アリルアミン、p-ビニルベンジルジメチルアミン、および3-(メタクリルアミド)プロピルジメチルアミン等を用いることができる。
【0027】
上記(i-1)において、ビニルエステルとしては特に制限はなく、その例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル、およびピバル酸ビニル等を挙げることができ、酢酸ビニルが好ましい。
【0028】
上記(i-1)のケン化物を製造する方法に特に制限はない。上記(i-1)のケン化物は、例えば、カルボキシル基を有するモノマーおよび該モノマーの誘導体からなる群から選択される1種以上とビニルエステルとを、公知の重合開始剤を用いて公知の重合反応を行い、次いで公知の方法でケン化反応を行うことで製造できる。
【0029】
本発明の一実施態様において、ビニルアルコール系重合体(A)が有するイオン性基(例えばカルボキシル基)の一部または全部は、塩(イオン性基がカルボキシル基の場合はカルボン酸塩)の形態であってもよい。塩のカウンターカチオンの例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、およびセシウムイオン等のアルカリ金属イオン;マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、およびバリウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アルミニウムイオン、および亜鉛イオン等のその他金属イオン;アンモニウムイオン、イミダゾリウム類、ピリジニウム類、およびホスホニウムイオン類等のオニウムカチオン;等を挙げることができる。中でも、より好ましい吸水量または吸水速度を得やすい観点から、カリウムイオン、アンモニウムイオン、カルシウムイオン、およびマグネシウムイオンが好ましい。植物の生育の観点からはカリウムイオン、およびアンモニウムイオンがより好ましく、土壌中に含まれる二価イオンとの接触時にも吸液量または吸液速度を維持しやすい観点からはカルシウムイオンがより好ましい。
【0030】
イオン性基がカルボキシル基である場合、カルボキシル基の一部または全部がカルボン酸塩であるビニルアルコール系重合体(A)の製造方法としては、例えば、上記(i-1)においてカルボキシル基を有するモノマーの中和物を用いる方法(I);上記(i-1)においてカルボキシル基を有するビニルアルコール系重合体(A)を製造した後、中和する方法(III);等を挙げることができ、中でも上記方法(III)が好ましい。
【0031】
ビニルアルコール系重合体(A)中のイオン性基の含有量は、ビニルアルコール系重合体(A)の全構成単位に対して0.1モル%以上、好ましくは1モル%以上、より好ましくは3モル%以上、更に好ましくは4モル%以上、特に好ましくは5モル%以上であり、50モル%以下、好ましくは40モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは25モル%以下、更により好ましくは20モル%以下、特に好ましくは15モル%以下、更に特に好ましくは10モル%以下である。上記イオン性基の含有量が前記下限値以上であると、ビニルアルコール系重合体(A)は、より向上した吸水量または吸水速度を有しやすい。上記イオン性基の含有量が前記上限値以下であると、ビニルアルコール系重合体(A)は、土壌中に含まれる二価イオンとの接触時にも優れた吸液量または吸液速度を維持しやすく、この吸液量または吸液速度は、長期間にわたって低下しにくく、紫外線によるビニルアルコール系重合体(A)の分解が起こりにくい。
【0032】
また、ビニルアルコール系重合体(A)がイオン性基としてカルボキシル基を有する場合、上記カルボキシル基のうちアクリル酸またはその塩に由来するカルボキシル基の量は、ビニルアルコール系重合体の全構成単位に対して、好ましくは20モル%以下、より好ましくは15モル%以下、特に好ましくは10モル%以下であり、0モル%であってもよい。上記カルボキシル基のうちアクリル酸またはその塩に由来するカルボキシル基の量が前記上限値以下であると、より優れた耐候性(特に耐紫外線性)を得やすい。
好ましい一実施態様において、ビニルアルコール系重合体(A)に含まれるイオン性基の半分以上は誘導体の形態であり、より好ましい一実施態様において、ビニルアルコール系重合体(A)に含まれるイオン性基のほとんどは誘導体の形態であり、特に好ましい一実施態様において、ビニルアルコール系重合体(A)に含まれるイオン性基の全ては誘導体の形態である。
本明細書では、上述した通り「構成単位」とは重合体を構成する繰り返し単位のことを意味するが、例えば、ビニルアルコール単位は「1単位」、2単位のビニルアルコール単位がアセタール化された構造は「2単位」と数えることとする。
【0033】
ビニルアルコール系重合体(A)のビニルアルコール単位の含有量は、上記ビニルアルコール系重合体(A)の全構成単位に対して好ましくは20モル%超、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは60モル%以上であり、好ましくは98モル%以下、より好ましくは95モル%以下、更に好ましくは90モル%以下である。上記ビニルアルコール単位の含有量は、上述した通りFTIRまたは固体13C-NMR等により測定できるが、一定量の無水酢酸と反応させた際の無水酢酸の消費量から算出することもできる。
【0034】
ビニルアルコール系重合体(A)は、ビニルアルコール単位以外の他の構成単位を含む。上記他の構成単位の例としては、酢酸ビニル、およびピバル酸ビニル等のカルボン酸ビニル由来の構成単位;エチレン、1-ブテン、およびイソブチレン等のオレフィン由来の構成単位;アクリル酸およびその誘導体、メタクリル酸およびその誘導体、アクリルアミドおよびその誘導体、メタクリルアミドおよびその誘導体、マレイン酸およびその誘導体、およびマレイミド誘導体等に由来する構成単位;等を挙げることができる。上記他の構成単位は1種を含有していても複数種を含有していてもよい。上記他の構成単位の含有量は、ビニルアルコール系重合体(A)の全構成単位に対して、好ましくは50モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは20モル%以下、更により好ましくは10モル%以下、特に好ましくは5モル%以下であり、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上、更に好ましくは1モル%以上、更により好ましくは2モル%以上、特に好ましくは3モル%以上である。上記他の構成単位の含有量が前記下限値以上であり、前記上限値以下であると、本発明の保水材のより優れた吸水量または吸水速度を得やすい。
【0035】
ビニルアルコール系重合体(A)の粘度平均重合度に特に制限はないが、製造容易性の観点から、好ましくは20000以下、より好ましくは10000以下、更に好ましくは4000以下、特に好ましくは3000以下である。一方、ビニルアルコール系重合体(A)の力学特性および水への耐溶出性の観点からは、粘度平均重合度は、好ましくは100以上、より好ましくは200以上、更に好ましくは400以上である。ビニルアルコール系重合体(A)の粘度平均重合度は、JIS K 6726に準拠した方法により測定できる。ビニルアルコール系重合体(A)が後述のように架橋構造を有する場合、例えばビニルアルコール系重合体(A)が架橋構造としてアセタール構造またはエステル構造を有する場合、粘度平均重合度の測定は、架橋構造を切断した後に行うことができる。前記切断は、一般的な方法(例えば、酸若しくはアルカリを用いた加水分解)により行うことができる。
【0036】
ビニルアルコール系重合体(A)は、潅水によるビニルアルコール系重合体の溶出を抑制する観点から、架橋構造を含むことが好ましい。架橋構造の形態に特に制限はなく、その例としては、エステル結合、エーテル結合、アセタール結合、および炭素-炭素結合等による架橋構造を挙げることができる。ビニルアルコール系重合体(A)中の架橋構造の有無は、例えば100℃の熱水またはジメチルスルホキシド中での溶出率により調べることができる。具体的には、試料の質量に対する、溶出した試料の質量の割合(溶出した試料の質量の割合×100/試料の質量)で示される溶出率が一定の値以下(例えば90質量%以下)であることにより、架橋構造の存在を確認できる。
【0037】
上記エステル結合の例としては、ビニルアルコール系重合体(A)がイオン性基としてカルボキシル基を有する場合に、ビニルアルコール系重合体(A)が有する水酸基とカルボキシル基との間で形成されるエステル結合を挙げることができる。上記エーテル結合の例としては、ビニルアルコール系重合体(A)が有する水酸基間の脱水縮合により形成されるエーテル結合を挙げることができる。上記エーテル結合の別の例としては、ビニルアルコール系重合体(A)の製造において、1分子中に複数のエポキシ基を有する多価エポキシ化合物を用いた場合に形成されるエーテル結合を挙げることができる。上記アセタール結合の例としては、ビニルアルコール系重合体(A)の製造においてカルボキシル基を有するアルデヒドを用いた場合に、2つのビニルアルコール系重合体(A)が有する水酸基同士が上記アルデヒドとアセタール化反応することにより形成されるアセタール結合を挙げることができる。上記アセタール結合の別の例としては、ビニルアルコール系重合体(A)の製造において、1分子中に複数のアルデヒド基を有する多価アルデヒド化合物を用いた場合に形成されるアセタール結合を挙げることができる。上記炭素-炭素結合としては、例えば活性エネルギー線をビニルアルコール系重合体(A)に照射したときに生じる、ビニルアルコール系重合体(A)の炭素ラジカル間のカップリングにより形成される炭素-炭素結合を挙げることができる。これらの架橋構造は1種が含まれていても、複数種が含まれていてもよい。中でも、製造容易性の観点からエステル結合またはアセタール結合による架橋構造が好ましく、育苗時における保水性維持、および耐紫外線性の観点から、アセタール結合による架橋構造がより好ましい。
【0038】
このような架橋構造は、例えば、多価アルデヒド化合物から選択される1種以上により少なくとも一部のビニルアルコール単位をアセタール化する工程においてアセタール化反応と同時に形成されてもよいし、アセタール化反応工程以外の別の工程であって後述する凝集工程の前に架橋剤を更に添加することにより凝集工程の前に形成されてもよいし、凝集工程において架橋剤を更に添加することにより凝集工程と同時に形成されてもよいし、凝集工程後に架橋剤を更に添加することにより凝集工程の後に形成されてもよい。本発明においては、架橋剤を更に添加することにより架橋構造を形成することが好ましい。
【0039】
架橋剤の例としては、多価エポキシ化合物および多価アルデヒド化合物が挙げられ、中でも多価アルデヒド化合物が好ましい。
多価エポキシ化合物としては例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル等の2官能のエポキシ化合物が挙げられる。
多価アルデヒド化合物としては例えば、グリオキサール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、1,9-ノナンジアール、アジポアルデヒド、マレアルデヒド、タルタルアルデヒド、シトルアルデヒド、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、およびテレフタルアルデヒド等の2官能のアルデヒドを挙げることができる。架橋剤として多価アルデヒド化合物を用いた場合、2つのビニルアルコール系重合体(A)のうち一方が有する水酸基が、上記多価アルデヒド化合物の有する1つのアルデヒド基とアセタール化反応をし、また、2つのビニルアルコール系重合体(A)のうち他方が有する水酸基が、当該多価アルデヒド化合物の有する別の1つのアルデヒド基とアセタール化反応をすることで、アセタール結合を2つ導入することができる。
【0040】
架橋剤を添加する場合、ビニルアルコール系重合体(A)中の架橋剤量としては、土壌中での保水性を維持しやすい観点から、好ましくは0.001モル%以上、より好ましくは0.005モル%以上、更に好ましくは0.01モル%以上、より更に好ましくは0.03モル%以上であり、好ましくは0.5モル%以下、より好ましくは0.4モル%以下、更に好ましくは0.3モル%以下である。
【0041】
<アクリル酸系重合体>
本発明における吸水性樹脂が含んでもよいアクリル酸系重合体は、アクリル酸またはアクリル酸誘導体に由来する構成単位(以下、「アクリル酸由来構成単位」と称する)を、全構成単位の中で最も多い含有量で含む。アクリル酸系重合体の原料の例としては、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、アクリル酸カルシウム、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、およびアクリル酸-2-ヒドロキシエチル等を挙げることができる。これら1種または2種以上のモノマーと共重合が可能な他の少なくとも1種のモノマーとを公知の方法を用いて共重合させたものを、アクリル酸系重合体の例として挙げることができる。共重合が可能な他のモノマーの例としては、後述する、アクリル酸由来構成単位以外の他の構成単位をもたらすモノマーを挙げることができる。
吸水性樹脂におけるアクリル酸系重合体の含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0042】
本発明の一実施態様において、アクリル酸系重合体が有するイオン性基(例えばカルボキシル基)の一部または全部は、塩(イオン性基がカルボキシル基の場合はカルボン酸塩)の形態であってもよい。塩のカウンターカチオンの例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、およびセシウムイオン等のアルカリ金属イオン;マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、およびバリウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アルミニウムイオン、および亜鉛イオン等のその他金属イオン;アンモニウムイオン、イミダゾリウム類、ピリジニウム類、およびホスホニウムイオン類等のオニウムカチオン;等を挙げることができる。中でも、より好ましい吸水量または吸水速度を得やすい観点から、カリウムイオン、アンモニウムイオン、カルシウムイオン、およびマグネシウムイオンが好ましい。植物の生育の観点からはカリウムイオン、およびアンモニウムイオンがより好ましく、土壌中に含まれる二価イオンとの接触時にも吸液量または吸液速度を維持しやすい観点からはカルシウムイオンがより好ましい。
【0043】
アクリル酸系重合体中のイオン性基の含有量は、アクリル酸系重合体の全構成単位に対して0.1モル%以上、好ましくは1モル%以上、より好ましくは3モル%以上、更に好ましくは4モル%以上、特に好ましくは5モル%以上であり、50モル%以下、好ましくは40モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは25モル%以下、更により好ましくは20モル%以下、特に好ましくは15モル%以下、更に特に好ましくは10モル%以下である。上記イオン性基の含有量が前記下限値以上であると、アクリル酸系重合体は、より向上した吸水量または吸水速度を有しやすい。上記イオン性基の含有量が前記上限値以下であると、アクリル酸系重合体は、土壌中に含まれる二価イオンとの接触時にも優れた吸液量または吸液速度を維持しやすく、この吸液量または吸液速度は、長期間にわたって低下しにくく、紫外線によるアクリル酸系重合体の分解が起こりにくい。
【0044】
また、アクリル酸系重合体がイオン性基としてカルボキシル基を有する場合、上記カルボキシル基のうちアクリル酸またはその塩に由来するカルボキシル基の量は、アクリル酸系重合体の全構成単位に対して、好ましくは20モル%以下、より好ましくは15モル%以下、特に好ましくは10モル%以下であり、0モル%であってもよい。上記カルボキシル基のうちアクリル酸またはその塩に由来するカルボキシル基の量が前記上限値以下であると、より優れた耐候性(特に耐紫外線性)を得やすい。
好ましい一実施態様において、アクリル酸系重合体に含まれるイオン性基の半分以上は誘導体の形態であり、より好ましい一実施態様において、アクリル酸系重合体に含まれるイオン性基のほとんどは誘導体の形態であり、特に好ましい一実施態様において、アクリル酸系重合体に含まれるイオン性基の全ては誘導体の形態である。
【0045】
アクリル酸系重合体のアクリル酸由来構成単位の含有量は、上記アクリル酸系重合体の全構成単位に対して好ましくは20モル%超、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは60モル%以上であり、好ましくは98モル%以下、より好ましくは95モル%以下、更に好ましくは90モル%以下である。
【0046】
アクリル酸系重合体は、アクリル酸由来構成単位以外の他の構成単位を含む。上記他の構成単位の例としては、ビニルアルコール単位;酢酸ビニル、およびピバル酸ビニル等のカルボン酸ビニル由来の構成単位;エチレン、1-ブテン、およびイソブチレン等のオレフィン由来の構成単位;メタクリル酸およびその誘導体、アクリルアミドおよびその誘導体、メタクリルアミドおよびその誘導体、マレイン酸およびその誘導体、およびマレイミド誘導体等に由来する構成単位;等を挙げることができる。上記他の構成単位は1種を含有していても複数種を含有していてもよい。上記他の構成単位の含有量は、アクリル酸系重合体の全構成単位に対して、好ましくは50モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは20モル%以下、更により好ましくは10モル%以下、特に好ましくは5モル%以下であり、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上、更に好ましくは1モル%以上、更により好ましくは2モル%以上、特に好ましくは3モル%以上である。上記他の構成単位の含有量が前記下限値以上であり、前記上限値以下であると、本発明の保水材のより優れた吸水量または吸水速度を得やすい。
【0047】
アクリル酸系重合体の重量平均分子量に特に制限はないが、製造容易性の観点から、好ましくは10,000,000以下、より好ましくは5,000,000以下、更に好ましくは3,000,000以下、特に好ましくは1,000,000以下である。一方、アクリル酸系重合体の力学特性および水への耐溶出性の観点からは、重量平均分子量は、好ましくは1000以上、より好ましくは5000以上、更に好ましくは10000以上である。アクリル酸系重合体の重量平均分子量は、例えばGPCにより測定できる。アクリル酸系重合体が後述のように架橋構造を有する場合、例えばアクリル酸系重合体が架橋構造としてアセタール構造またはエステル構造を有する場合、重量平均分子量の測定は、架橋構造を切断した後に行うことができる。前記切断は、一般的な方法(例えば、酸若しくはアルカリを用いた加水分解)により行うことができる。
【0048】
アクリル酸系重合体は、潅水によるアクリル酸系重合体の溶出を抑制する観点から、架橋構造を含むことが好ましい。架橋構造の形態に特に制限はなく、その例としては、一般的な架橋剤による架橋構造を挙げることができる。アクリル酸系重合体中の架橋構造の有無は、先に述べたように、例えば100℃の熱水またはジメチルスルホキシド中での溶出率により調べることができる。
【0049】
架橋構造は、例えば、アクリル酸由来構成単位をもたらすモノマーとアクリル酸由来構成単位以外の他の構成単位をもたらすモノマーとの共重合工程において共重合反応と同時に形成されてもよいし、共重合反応工程以外の別の工程であって後述する凝集工程の前に架橋剤を更に添加することにより凝集工程の前に形成されてもよいし、凝集工程において架橋剤を更に添加することにより凝集工程と同時に形成されてもよいし、凝集工程後に架橋剤を更に添加することにより凝集工程の後に形成されてもよい。本発明においては、架橋剤を更に添加することにより架橋構造を形成することが好ましい。
【0050】
架橋剤の例としては、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、2-ヒドロキシ-3-メタクリルプロピルアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートおよびトリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート等を挙げることができる。
【0051】
架橋剤を添加する場合、アクリル酸系重合体中の架橋剤量としては、土壌中での保水性を維持しやすい観点から、好ましくは0.001モル%以上、より好ましくは0.01モル%以上、更に好ましくは1.0モル%以上、より更に好ましくは2.0モル%以上であり、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、更に好ましくは3モル%以下である。
【0052】
アクリル酸系重合体の具体的な例としては、アクリル酸-アクリル酸ナトリウム共重合体の架橋物等を挙げることができる。市販品としては、高吸収性ポリマー(アクリル酸塩系、和光純薬工業株式会社製)、アクリホープ(登録商標)(株式会社日本触媒製)、およびサンウェット(登録商標)(三洋化成工業株式会社製)等を挙げることができる。
【0053】
<アクリルアミド系重合体>
本発明における吸水性樹脂が含んでもよいアクリルアミド系重合体は、アクリルアミドまたはアクリルアミド誘導体に由来する構成単位(以下、「アクリルアミド由来構成単位」と称する)を、全構成単位の中で最も多い含有量で含む。アクリルアミド系重合体の原料の例としては、アクリルアミド、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、N-アルキルアクリルアミド、およびトリメチル[3-(アクリロイルアミノ)プロピル]アミニウム・クロリドを挙げることができる。これら1種または2種以上のモノマーと共重合が可能な他の少なくとも1種のモノマーとを公知の方法を用いて共重合させたものを、アクリルアミド系重合体の例として挙げることができる。共重合が可能な他のモノマーの例としては、後述する、アクリルアミド由来構成単位以外の他の構成単位をもたらすモノマーを挙げることができる。
吸水性樹脂におけるアクリルアミド系重合体の含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0054】
本発明の一実施態様において、アクリルアミド系重合体が有するイオン性基(例えばカルボキシル基)の一部または全部は、塩(イオン性基がカルボキシル基の場合はカルボン酸塩)の形態であってもよい。塩のカウンターカチオンの例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、およびセシウムイオン等のアルカリ金属イオン;マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、およびバリウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アルミニウムイオン、および亜鉛イオン等のその他金属イオン;アンモニウムイオン、イミダゾリウム類、ピリジニウム類、およびホスホニウムイオン類等のオニウムカチオン;等を挙げることができる。中でも、より好ましい吸水量または吸水速度を得やすい観点から、カリウムイオン、アンモニウムイオン、カルシウムイオン、およびマグネシウムイオンが好ましい。植物の生育の観点からはカリウムイオン、およびアンモニウムイオンがより好ましく、土壌中に含まれる二価イオンとの接触時にも吸液量または吸液速度を維持しやすい観点からはカルシウムイオンがより好ましい。
【0055】
アクリルアミド系重合体中のイオン性基の含有量は、アクリルアミド系重合体の全構成単位に対して0.1モル%以上、好ましくは1モル%以上、より好ましくは3モル%以上、更に好ましくは4モル%以上、特に好ましくは5モル%以上であり、50モル%以下、好ましくは40モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは25モル%以下、更により好ましくは20モル%以下、特に好ましくは15モル%以下、更に特に好ましくは10モル%以下である。上記イオン性基の含有量が前記下限値以上であると、アクリルアミド系重合体は、より向上した吸水量または吸水速度を有しやすい。上記イオン性基の含有量が前記上限値以下であると、アクリルアミド系重合体は、土壌中に含まれる二価イオンとの接触時にも優れた吸液量または吸液速度を維持しやすく、この吸液量または吸液速度は、長期間にわたって低下しにくく、紫外線によるアクリルアミド系重合体の分解が起こりにくい。
【0056】
また、アクリルアミド系重合体がイオン性基としてカルボキシル基を有する場合、上記カルボキシル基のうちアクリルアミドまたはその塩に由来するカルボキシル基の量は、アクリルアミド系重合体の全構成単位に対して、好ましくは20モル%以下、より好ましくは15モル%以下、特に好ましくは10モル%以下であり、0モル%であってもよい。上記カルボキシル基のうちアクリルアミドまたはその塩に由来するカルボキシル基の量が前記上限値以下であると、より優れた耐候性(特に耐紫外線性)を得やすい。
好ましい一実施態様において、アクリルアミド系重合体に含まれるイオン性基の半分以上は誘導体の形態であり、より好ましい一実施態様において、アクリルアミド系重合体に含まれるイオン性基のほとんどは誘導体の形態であり、特に好ましい一実施態様において、アクリルアミド系重合体に含まれるイオン性基の全ては誘導体の形態である。
【0057】
アクリルアミド系重合体のアクリルアミド由来構成単位の含有量は、上記アクリルアミド系重合体の全構成単位に対して好ましくは20モル%超、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは60モル%以上であり、好ましくは98モル%以下、より好ましくは95モル%以下、更に好ましくは90モル%以下である。
【0058】
アクリルアミド系重合体は、アクリルアミド由来構成単位以外の他の構成単位を含む。上記他の構成単位の例としては、ビニルアルコール単位;酢酸ビニル、およびピバル酸ビニル等のカルボン酸ビニル由来の構成単位;エチレン、1-ブテン、およびイソブチレン等のオレフィン由来の構成単位;アクリル酸およびその誘導体、メタクリル酸およびその誘導体、メタクリルアミドおよびその誘導体、マレイン酸およびその誘導体、およびマレイミド誘導体等に由来する構成単位;等を挙げることができる。上記他の構成単位は1種を含有していても複数種を含有していてもよい。上記他の構成単位の含有量は、アクリルアミド系重合体の全構成単位に対して、好ましくは50モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは20モル%以下、更により好ましくは10モル%以下、特に好ましくは5モル%以下であり、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上、更に好ましくは1モル%以上、更により好ましくは2モル%以上、特に好ましくは3モル%以上である。上記他の構成単位の含有量が前記下限値以上であり、前記上限値以下であると、本発明の保水材のより優れた吸水量または吸水速度を得やすい。
【0059】
アクリルアミド系重合体の重量平均分子量に特に制限はないが、製造容易性の観点から、好ましくは10,000,000以下、より好ましくは5,000,000以下、更に好ましくは3,000,000以下、特に好ましくは1,000,000以下である。一方、アクリルアミド系重合体の力学特性および水への耐溶出性の観点からは、重量平均分子量は、好ましくは1000以上、より好ましくは5000以上、更に好ましくは10000以上である。アクリルアミド系重合体の重量平均分子量は、例えばGPCにより測定できる。アクリルアミド系重合体が後述のように架橋構造を有する場合、例えばアクリルアミド系重合体が架橋構造としてアセタール構造またはエステル構造を有する場合、重量平均分子量の測定は、架橋構造を切断した後に行うことができる。前記切断は、一般的な方法(例えば、酸若しくはアルカリを用いた加水分解)により行うことができる。
【0060】
アクリルアミド系重合体は、潅水によるアクリルアミド系重合体の溶出を抑制する観点から、架橋構造を含むことが好ましい。架橋構造の形態に特に制限はなく、一般的な架橋剤による架橋構造を挙げることができる。アクリルアミド系重合体中の架橋構造の有無は、先に述べたように、例えば100℃の熱水またはジメチルスルホキシド中での溶出率により調べることができる。
【0061】
架橋構造は、例えば、アクリルアミド由来構成単位をもたらすモノマーとアクリルアミド由来構成単位以外の他の構成単位をもたらすモノマーとの共重合工程において共重合反応と同時に形成されてもよいし、共重合反応工程以外の別の工程であって後述する凝集工程の前に架橋剤を更に添加することにより凝集工程の前に形成されてもよいし、凝集工程において架橋剤を更に添加することにより凝集工程と同時に形成されてもよいし、凝集工程後に架橋剤を更に添加することにより凝集工程の後に形成されてもよい。本発明においては、架橋剤を更に添加することにより架橋構造を形成することが好ましい。
【0062】
架橋剤の例としては、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、2-ヒドロキシ-3-メタクリルプロピルアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートおよびトリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート等を挙げることができる。
【0063】
架橋剤を添加する場合、アクリルアミド系重合体中の架橋剤量としては、土壌中での保水性を維持しやすい観点から、好ましくは0.001モル%以上、より好ましくは0.005モル%以上、更に好ましくは0.01モル%以上、より更に好ましくは0.03モル%以上であり、好ましくは0.5モル%以下、より好ましくは0.4モル%以下、更に好ましくは0.3モル%以下である。
【0064】
アクリルアミド系重合体の具体的な例としては、アクリルアミド-アクリル酸-アクリル酸ナトリウム共重合体の架橋物、およびアクリルアミド-アクリル酸-アクリル酸カリウム共重合体の架橋物等を挙げることができる。市販品としては、Miracle-Gro(登録商標)ウォーターストアーリングクリスタル(Scotts Miracle-Gro社製)、およびアクアソーブ(登録商標)(株式会社SNFホールディングカンパニー製)等を挙げることができる。
【0065】
<メタクリル酸系重合体>
本発明における吸水性樹脂が含んでもよいメタクリル酸系重合体は、メタクリル酸またはメタクリル酸誘導体に由来する構成単位(以下、「メタクリル酸由来構成単位」と称する)を、全構成単位の中で最も多い含有量で含む。メタクリル酸系重合体の原料の例としては、メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸(2-エチルヘキシル)、メタクリル酸(t-ブチルシクロヘキシル)、メタクリル酸ベンジルおよびメタクリル酸(2,2,2-トリフルオロエチル)およびトリメチル[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル]アミニウム・クロリドを挙げることができる。これら1種または2種以上のモノマーと共重合が可能な他の少なくとも1種のモノマーとを公知の方法を用いて共重合させたものを、メタクリル酸系重合体の例として挙げることができる。共重合が可能な他のモノマーの例としては、後述する、メタクリル酸由来構成単位以外の他の構成単位をもたらすモノマーを挙げることができる。
吸水性樹脂におけるメタクリル酸系重合体の含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0066】
本発明の一実施態様において、メタクリル酸系重合体が有するイオン性基(例えばカルボキシル基)の一部または全部は、塩(イオン性基がカルボキシル基の場合はカルボン酸塩)の形態であってもよい。塩のカウンターカチオンの例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、およびセシウムイオン等のアルカリ金属イオン;マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、およびバリウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アルミニウムイオン、および亜鉛イオン等のその他金属イオン;アンモニウムイオン、イミダゾリウム類、ピリジニウム類、およびホスホニウムイオン類等のオニウムカチオン;等を挙げることができる。中でも、より好ましい吸水量または吸水速度を得やすい観点から、カリウムイオン、アンモニウムイオン、カルシウムイオン、およびマグネシウムイオンが好ましい。植物の生育の観点からはカリウムイオン、およびアンモニウムイオンがより好ましく、土壌中に含まれる二価イオンとの接触時にも吸液量または吸液速度を維持しやすい観点からはカルシウムイオンがより好ましい。
【0067】
メタクリル酸系重合体中のイオン性基の含有量は、メタクリル酸系重合体の全構成単位に対して0.1モル%以上、好ましくは1モル%以上、より好ましくは3モル%以上、更に好ましくは4モル%以上、特に好ましくは5モル%以上であり、50モル%以下、好ましくは40モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは25モル%以下、更により好ましくは20モル%以下、特に好ましくは15モル%以下、更に特に好ましくは10モル%以下である。上記イオン性基の含有量が前記下限値以上であると、メタクリル酸系重合体は、より向上した吸水量または吸水速度を有しやすい。上記イオン性基の含有量が前記上限値以下であると、メタクリル酸系重合体は、土壌中に含まれる二価イオンとの接触時にも優れた吸液量または吸液速度を維持しやすく、この吸液量または吸液速度は、長期間にわたって低下しにくく、紫外線によるメタクリル酸系重合体の分解が起こりにくい。
【0068】
また、メタクリル酸系重合体がイオン性基としてカルボキシル基を有する場合、上記カルボキシル基のうちメタクリル酸またはその塩に由来するカルボキシル基の量は、メタクリル酸系重合体の全構成単位に対して、好ましくは20モル%以下、より好ましくは15モル%以下、特に好ましくは10モル%以下であり、0モル%であってもよい。上記カルボキシル基のうちメタクリル酸またはその塩に由来するカルボキシル基の量が前記上限値以下であると、より優れた耐候性(特に耐紫外線性)を得やすい。
好ましい一実施態様において、メタクリル酸系重合体に含まれるイオン性基の半分以上は誘導体の形態であり、より好ましい一実施態様において、メタクリル酸系重合体に含まれるイオン性基のほとんどは誘導体の形態であり、特に好ましい一実施態様において、メタクリル酸系重合体に含まれるイオン性基の全ては誘導体の形態である。
【0069】
メタクリル酸系重合体のメタクリル酸由来構成単位の含有量は、上記メタクリル酸系重合体の全構成単位に対して好ましくは20モル%超、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは60モル%以上であり、好ましくは98モル%以下、より好ましくは95モル%以下、更に好ましくは90モル%以下である。
【0070】
メタクリル酸系重合体は、メタクリル酸由来構成単位以外の他の構成単位を含む。上記他の構成単位の例としては、ビニルアルコール単位;酢酸ビニル、およびピバル酸ビニル等のカルボン酸ビニル由来の構成単位;エチレン、1-ブテン、およびイソブチレン等のオレフィン由来の構成単位;アクリル酸およびその誘導体、アクリルアミドおよびその誘導体、メタクリルアミドおよびその誘導体、マレイン酸およびその誘導体、およびマレイミド誘導体等に由来する構成単位;等を挙げることができる。上記他の構成単位は1種を含有していても複数種を含有していてもよい。上記他の構成単位の含有量は、メタクリル酸系重合体の全構成単位に対して、好ましくは50モル%以下、より好ましくは40モル%以下、更に好ましくは30モル%以下、更により好ましくは20モル%以下、特に好ましくは10モル%以下であり、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上、更に好ましくは1モル%以上、更により好ましくは2モル%以上、特に好ましくは3モル%以上である。上記他の構成単位の含有量が前記下限値以上であり、前記上限値以下であると、本発明の保水材のより優れた吸水量または吸水速度を得やすい。
【0071】
メタクリル酸系重合体の重量平均分子量に特に制限はないが、製造容易性の観点から、好ましくは10,000,000以下、より好ましくは5,000,000以下、更に好ましくは3,000,000以下、特に好ましくは1,000,000以下である。一方、メタクリル酸系重合体の力学特性および水への耐溶出性の観点からは、重量平均分子量は、好ましくは1000以上、より好ましくは5000以上、更に好ましくは10000以上である。メタクリル酸系重合体の重量平均分子量は、例えばGPCにより測定できる。メタクリル酸系重合体が後述のように架橋構造を有する場合、例えばメタクリル酸系重合体が架橋構造としてアセタール構造またはエステル構造を有する場合、重量平均分子量の測定は、架橋構造を切断した後に行うことができる。前記切断は、一般的な方法(例えば、酸若しくはアルカリを用いた加水分解)により行うことができる。
【0072】
メタクリル酸系重合体は、潅水によるメタクリル酸系重合体の溶出を抑制する観点から、架橋構造を含むことが好ましい。架橋構造の形態に特に制限はなく、一般的な架橋剤による架橋構造を挙げることができる。メタクリル酸系重合体中の架橋構造の有無は、先に述べたように、例えば100℃の熱水またはジメチルスルホキシド中での溶出率により調べることができる。
【0073】
架橋構造は、例えば、メタクリル酸由来構成単位をもたらすモノマーとメタクリル酸由来構成単位以外の他の構成単位をもたらすモノマーとの共重合工程において共重合反応と同時に形成されてもよいし、共重合反応工程以外の別の工程であって後述する凝集工程の前に架橋剤を更に添加することにより凝集工程の前に形成されてもよいし、凝集工程において架橋剤を更に添加することにより凝集工程と同時に形成されてもよいし、凝集工程後に架橋剤を更に添加することにより凝集工程の後に形成されてもよい。本発明においては、架橋剤を更に添加することにより架橋構造を形成することが好ましい。
【0074】
架橋剤の例としては、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリおよびテトラアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、2-ヒドロキシ-3-メタクリルプロピルアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートおよびトリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート等を挙げることができる。
【0075】
架橋剤を添加する場合、メタクリル酸系重合体中の架橋剤量としては、土壌中での保水性を維持しやすい観点から、好ましくは0.001モル%以上、より好ましくは0.005モル%以上、更に好ましくは0.01モル%以上、より更に好ましくは0.03モル%以上であり、好ましくは0.5モル%以下、より好ましくは0.4モル%以下、更に好ましくは0.3モル%以下である。
【0076】
メタクリル酸系重合体の具体的な例としては、メタクリル酸-メタクリル酸ナトリウム共重合体の架橋物、およびメタクリル酸-メタクリル酸ナトリウム-アクリル酸共重合体の架橋物等を上げることができる。
【0077】
本発明の好ましい一実施態様において、本発明の保水材の含水率は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは33質量%以下、更により好ましくは30質量%以下である。
本発明の一実施態様では、本発明の保水材は、農業用保水材として使用する前、すなわち保管時(例えば保管容器中)および後述する培地等と組み合わせて使用する直前の保水材において、含水していることが好ましい。保水材が含水している上記一実施態様において、農業用保水材として使用する前の本発明の保水材の含水率は、好ましくは11質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは16%質量以上、更により好ましくは20%質量以上である。
含水率は、ハロゲン水分計を用いて測定することができる。
【0078】
保水材が含水している上記一実施態様において、本発明の保水材の嵩密度は、好ましくは0.20g/mL以上、より好ましくは0.30g/mL以上、更に好ましくは0.35g/mL以上である。本発明の保水材の嵩密度は、好ましくは1.25g/mL以下、より好ましくは0.95g/mL以下、更に好ましくは0.70g/mL以下である。嵩密度は、以下の方法で測定することができる。
50mLのビーカーに保水材10gを一気に入れ、その後タップ等は行わずに静置し、保水材の最上面が位置する高さに印を付ける。保水材を取り出し、当該印を付けたところまで水を投入し、その水の質量を測定する。水が1g/mLであることを用い、以下の式から嵩密度を算出する。
嵩密度(g/mL)=10(g)/投入した水の嵩(mL)
【0079】
<任意の添加剤>
本発明の保水材は、吸水性樹脂に加えて、任意に添加剤を含有してよい。そのような添加剤の例としては、デンプン、変性デンプン、アルギン酸ナトリウム、キチン、キトサン、セルロースおよびその誘導体等の多糖類;エチレン-プロピレン共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリコハク酸、ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミド6・10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6・12、ポリヘキサメチレンジアミンテレフタルアミド、ポリヘキサメチレンジアミンイソフタルアミド、ポリノナメチレンジアミンテレフタルアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリオキシメチレン、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸塩、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-アクリル酸塩共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体、およびエチレン-メタクリル酸塩共重合体等の樹脂類;天然ゴム、合成イソプレンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、およびアミド系熱可塑性エラストマー等のゴム・エラストマー類;紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、有機溶媒、消泡剤、増粘剤、界面活性剤、滑剤、防カビ剤および帯電防止剤等を挙げることができる。これらの添加剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。また、添加剤の例として挙げられている樹脂はいずれも、本発明の吸水性樹脂とは異なる。
保水材が添加剤を含有する場合、その合計含有量は本発明の効果を損なわない範囲であればよく、保水材の総質量に対して通常は20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、例えば5質量%以下である。
なお、保水材若しくは後述する培地における構成成分〔即ち、吸水性樹脂、上述した任意の添加剤、または後述する任意の成分(Z)〕、または後述する製造工程において用いる成分(例えば吸水性樹脂等)の含有量若しくは質量について述べるとき、その含有量若しくは質量は、乾燥状態の質量に基づく。本発明において「乾燥状態」とは、当該構成成分が水または有機溶媒等の揮発成分を含んでいない状態のことを言う。例えば、当該構成成分それぞれの質量が恒量となるまで40℃で真空乾燥を行うことで、それらを乾燥状態とすることができる。
【0080】
[保水材の製造方法]
本発明の保水材は、例えば、
一次粒子として存在する吸水性樹脂を、膨潤させた状態で接触させることにより凝集させる凝集工程、および
凝集した吸水性樹脂を、0.2MPa以下の圧力下で乾燥する乾燥工程
を含む製造方法により製造できる。この製造方法を、以下において、本発明の第一実施態様の製造方法と称することがある。
【0081】
<凝集工程>
前記凝集工程では、一次粒子として存在する吸水性樹脂を、膨潤させた状態で接触させることにより凝集させる。吸水性樹脂として、必要に応じて粉砕および/または篩過により一次粒子の平均粒子径を調整した吸水性樹脂を使用してよい。また、必要に応じて、凝集工程の前、凝集工程と同時、または凝集工程の後に、上述した任意の添加剤を吸水性樹脂と混合してもよい。
本発明の一実施態様では、吸水性樹脂を膨潤させる前、一次粒子として存在する吸水性樹脂の含水率は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは13質量%以下、更により好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。前記含水率が前記上限値以下であると、良好なハンドリング性を得やすい。前記含水率の下限値は特に限定されず、0質量%以上である。含水率は、吸水性樹脂の質量と吸水性樹脂を乾燥状態になるまで乾燥させた後の質量とを用いて計算できる。
【0082】
第一実施態様の製造方法の凝集工程では、一次粒子として存在する吸水性樹脂を膨潤溶媒(例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドンまたは酢酸、好ましくは水)で膨潤させる際、スプレー等を用いてミスト状態で膨潤溶媒を噴霧することで、吸水性樹脂を均一に膨潤させることができる。噴霧する膨潤溶媒の量は、保水材の好ましい粒子径および/または凝集力を得やすい観点から、吸水性樹脂の質量に対して、好ましくは1質量%~500質量%、より好ましくは5質量%~100質量%、更に好ましくは10質量%~50質量%である。
【0083】
噴霧後は、膨潤の均一性を高めるために樹脂を撹拌するが、高いせん断力での撹拌、例えば高速回転する撹拌翼を備えた撹拌機では、一度凝集した粒子の粉砕または凝集の崩壊を招くおそれがある。このため、低いせん断力での撹拌、例えば袋に入れて振り混ぜる方法による撹拌、またはコニカルミキサー等による撹拌が好ましい。せん断力は、好ましくは10000MPa以下、より好ましくは100MPa以下、更に好ましくは1MPa以下である。接触させる時間は、好ましくは0.001秒以上、より好ましくは0.1秒以上、更に好ましくは1秒以上である。
【0084】
凝集工程の前または凝集工程と同時に任意の添加剤を配合してもよく、バインダーを配合することにより、吸水性樹脂の凝集の強固さを調整できる。バインダーの例としては、吸水性樹脂以外の高分子成分、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルブチラール、デンプン、セルロース、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸およびその塩、ポリアクリルアミド、アクリル酸およびその塩とアクリルアミドとの共重合体、並びにスチレンブタジエンゴム等を挙げることができる。バインダーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。バインダーの添加量が多いほど凝集が強固になる。凝集が弱いほど吸水時に保水材が崩壊しやすく、高い吸水速度を発現しやすい。バインダーの添加量は、吸水性樹脂、膨潤溶媒、バインダー、および存在する場合はバインダー以外の任意の添加剤の総質量に対して、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下であり、0質量%でもよい。
【0085】
一次粒子とは、凝集していない粒子のことであり、例えば、吸水性樹脂を溶融若しくは溶媒に溶解させた後に乾燥し粉砕することにより得た粒子、モノマーを溶融若しくは溶媒に溶解させた状態で重合させ乾燥し粉砕させることにより得た粒子、または(凝集体でない)市販の吸水性樹脂若しくはそれを粉砕して得た粒子等を指す。一次粒子は、球形の粒子だけでなく、粉砕により得られるような異形の粒子でもよい。一次粒子の粒子径については、上述した「農業用保水材」の説明に記載した通りである。
【0086】
<乾燥工程>
前記乾燥工程では、凝集した吸水性樹脂を、乾燥機を用いて、0.2MPa以下、好ましくは0.15MPa以下、より好ましくは0.1MPa以下の圧力下、例えば真空下で乾燥する。一般的な乾燥機を使用でき、その例としては、コニカルドライヤー、および熱風乾燥機等を挙げることができる。乾燥温度は、用いる吸水性樹脂に依存するが、通常は20~150℃、好ましくは40~100℃である。乾燥時間は、得られる保水材が乾燥状態となるよう適宜選択すればよく、通常は1~1440分間、好ましくは5~720分間である。また、必要に応じて、乾燥工程の前、乾燥工程と同時、または乾燥工程の後に、上述した任意の添加剤を凝集した吸水性樹脂と混合してもよい。
【0087】
乾燥状態では、高いせん断力で撹拌しながらの乾燥、例えば高速回転する撹拌翼を備えた乾燥機では、一度凝集した粒子の粉砕または凝集の崩壊を招くおそれがある。このため、低いせん断力での乾燥、例えば静置した状態での乾燥、またはコニカルドライヤー等による乾燥が好ましい。この工程では膨潤溶媒を完全に除去してもよいが、崩壊を抑制するという観点からは膨潤溶媒の一部を残存させてもよい。膨潤溶媒を一部残存させる場合、残存させる膨潤溶媒の量は、吸水性樹脂の質量に対して好ましくは50質量%以下である。
【0088】
<架橋工程>
前記製造方法は、前記凝集工程の前、前記凝集工程と同時、または前記凝集工程の後に、吸水性樹脂を架橋させる架橋工程を更に含んでよい。
優れた吸水速度を得やすい観点からは、前記凝集工程の前に吸水性樹脂を架橋させる架橋工程を含むことが好ましい。この場合、架橋後の吸水性樹脂を膨潤状態で接触させることにより凝集させるが、凝集力は過度に強固ではない。このため、吸水時に保水材の膨張と崩壊とがバランス良く進行し、より好ましい吸水速度を得ることができる。
また、吸水性樹脂表面における架橋構造の割合を増大しやすくなり、その結果、保水材からの吸水性樹脂の低い溶出率を得やすい観点、および/または均一な架橋を得やすい観点からは、架橋させる吸水性樹脂の粒子径が特定の値以下であることが好ましい。架橋させる吸水性樹脂の粒子径は、篩過により所望の値に調整できる。凝集工程の前に架橋工程を実施する場合、架橋させる吸水性樹脂の粒子径は、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1000μm以下、更に好ましくは700μm以下、特に好ましくは150μm以下である。前記凝集工程と同時、または前記凝集工程の後に架橋工程を実施する場合、架橋させる吸水性樹脂の粒子径は、好ましくは5000μm以下、より好ましくは3000μm以下、特に好ましくは2000μm以下である。前記凝集工程と同時に架橋工程を実施する場合の粒子径は、架橋工程と凝集工程とが終了した時点の粒子径を指す。
【0089】
本発明の保水材はまた、例えば、粒子として存在する吸水性樹脂を、膨潤させた状態で接触させることにより凝集させる凝集工程を含む製造方法により製造できる。この製造方法を、以下において、本発明の第二実施態様の製造方法と称することがある。
【0090】
<凝集工程>
前記凝集工程では、粒子として存在する吸水性樹脂を、膨潤させた状態で接触させることにより凝集させる。吸水性樹脂として、必要に応じて粉砕および/または篩過により粒子の平均粒子径を調整した吸水性樹脂を使用してよい。また、必要に応じて、凝集工程の前、凝集工程と同時、または凝集工程の後に、上述した任意の添加剤を吸水性樹脂と混合してもよい。
本発明の一実施態様では、吸水性樹脂を膨潤させる前、粒子として存在する吸水性樹脂の含水率は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは13質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。前記含水率が前記上限値以下であると、良好なハンドリング性を得やすい。前記含水率の下限値は特に限定されず、0質量%以上である。含水率は、吸水性樹脂の質量と吸水性樹脂を乾燥状態になるまで乾燥させた後の質量とを用いて計算できる。
【0091】
第二実施態様の製造方法の凝集工程で用いる膨潤溶媒、膨潤方法、吸水性樹脂の質量に対する膨潤溶媒の量、撹拌方法、撹拌機、および撹拌時のせん断力は、第一実施態様の製造方法の凝集工程と同様のものをそれぞれ採用できる。
【0092】
凝集工程の前または凝集工程と同時に任意の添加剤を配合してもよく、バインダーを配合することにより、吸水性樹脂の凝集の強固さを調整できる。使用できるバインダーの種類および添加量は、第一実施態様の製造方法のものをそれぞれ採用できる。
【0093】
粒子とは、例えば、懸濁若しくは乳化状態で重合して得られた粒子、樹脂溶液をスプレードライして得られた粒子、市販の粒子状吸水性樹脂、またはそれらを粉砕して得られた粒子、或いは上述したような一次粒子等を指す。粒子は、懸濁若しくは乳化状態での重合により得られるような球形の粒子だけでなく、粉砕により得られるような異形の粒子でもよい。粒子の粒子径は、好ましくは1μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは30μm以上、特に好ましくは50μm以上であり、好ましくは3000μm以下、より好ましくは1000μm以下、更に好ましくは600μm以下、特に好ましくは300μm以下である。粒子の平均粒子径が前記下限値以上であり、前記上限値以下であると、より好ましい吸水速度を得やすい。また、粒子の平均粒子径が前記下限値以上であると、保水材の製造時に粉塵発生を抑制しやすい。粒子の平均粒子径は、例えば、電子顕微鏡または特定の目開きの篩を用いて測定できる。
【0094】
<架橋工程>
前記製造方法は、前記凝集工程の前、前記凝集工程と同時、または前記凝集工程の後に、吸水性樹脂を架橋させる架橋工程を更に含んでよい。
優れた吸水速度を得やすい観点からは、前記凝集工程の前に吸水性樹脂を架橋させる架橋工程を含むことが好ましい。この場合、架橋後の吸水性樹脂を膨潤状態で接触させることにより凝集させるが、凝集力は過度に強固ではない。このため、吸水時に保水材の膨張と崩壊とがバランス良く進行し、より好ましい吸水速度を得ることができる。
また、吸水性樹脂表面における架橋構造の割合を増大しやすくなり、その結果、保水材からの吸水性樹脂の低い溶出率を得やすい観点、および/または均一な架橋を得やすい観点からは、架橋させる吸水性樹脂の粒子径が特定の値以下であることが好ましい。架橋させる吸水性樹脂の粒子径は、篩過により所望の値に調整できる。凝集工程の前に架橋工程を実施する場合、架橋させる吸水性樹脂の粒子径は、好ましくは3000μm以下、より好ましくは1000μm以下、更に好ましくは600μm以下、特に好ましくは300μm以下である。前記凝集工程と同時、または前記凝集工程の後に架橋工程を実施する場合、架橋させる吸水性樹脂の粒子径は、好ましくは5000μm以下、より好ましくは3000μm以下、特に好ましくは2000μm以下である。前記凝集工程と同時に架橋工程を実施する場合の粒子径は、架橋工程と凝集工程とが終了した時点の粒子径を指す。
【0095】
本発明の農業用保水材は、必要に応じて任意の成分(Z)と組み合わせて、培地に使用でき、その中でも例えば育苗のための培地に使用できる。従って、一実施態様において、本発明の保水材は育苗用である。本発明の保水材は、優れた吸水速度を示すことができるため、培地に用いた場合、潅水時に保水材が吸水する前に水が流出することに起因する水の利用効率の低下を抑制することができる。また、ベルトコンベヤー等を用いて流れ作業で製造されることの多い水稲育苗箱の製造において、種籾を播種する培地の構成成分として保水材を用いる場合に、培地は十分な吸水速度を示すことができる。
【0096】
[任意の成分(Z)]
そのような任意の成分(Z)の例としては、保水材に含まれる吸水性樹脂以外の樹脂、培土、後述するその他の任意成分、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0097】
<吸水性樹脂以外の樹脂>
吸水性樹脂以外の樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレングリコール、およびポリウレタンを挙げることができる。これらの樹脂は、単独でまたは2つ以上を組み合わせて使用できる。培地が上記樹脂を含む場合、その合計含有量は、培地の総質量に対して好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
【0098】
<培土>
培地が培土を含む場合、培土の間隙に根が生長することで適当に根が互いに絡み合いやすくなり、また、培地の優れた排水性および通気性を得やすくなる。培土は特に限定されず、例えば、市販の培土の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、培土に、後述するその他の任意成分を常法(例えば、その他の任意成分の溶液または分散液を培土に噴霧した後に乾燥させる方法)で付着させ、用いることもできる。
【0099】
より優れた排水性および通気性を得やすい観点から、培土は粒状であることが好ましい。粒状培土の粒径は、好ましくは0.2~20mm、より好ましくは0.5~10mm、特に好ましくは1~5mmである。粒状培土の粒径を前記範囲内に調整するため、市販の粒状培土を篩過して用いることもできる。粒状培土の製造には、圧縮造粒法、押し出し造粒法、転動造粒法、流動層造粒法等の造粒法を用いることができる。粒状培土の粒径は、次の方法で測定できる。粒状培土から粒子をランダムに30個選び、ノギスを用いて各粒子の直径を測定し、その平均値を粒状培土の粒径とする。なお、粒子が球状ではない場合、最も長い辺と最も短い辺の平均値をその粒子の直径とする。
【0100】
培地が培土を含む場合、培土の含有量は、培地の総質量に対して、好ましくは20~99.9999質量%、より好ましくは70~99.95質量%、特に好ましくは80~99.9質量%、最も好ましくは90~99.8質量%である。
【0101】
<その他の任意成分>
その他の任意成分の例としては、泥炭、草炭、ピート、ピートモス、ココピート、籾殻、腐植酵質資材、木炭、珪藻土焼成粒、貝化石粉末、貝殻粉末、カニ殻、VA菌根菌、微生物資材等の動植物質;バーミキュライト、パーライト、ベントナイト、天然ゼオライト、合成ゼオライト、石こう、フライアッシュ、ロックウール、カオリナイト、スメクタイト、モンモリロナイト、セリサイト、クロライト、グローコナイトおよびタルク等の鉱物質;肥料およびこれらの組み合わせを挙げることができる。これらは、必要に応じて消毒または殺菌して用いてもよく、pH調整剤または農薬と一緒に用いてもよい。培地がその他の任意成分を含有する場合、その合計含有量は本発明の効果を損なわない範囲であればよく、培地の総質量に対して通常は50質量%以下、好ましくは30質量%以下である。
【0102】
肥料の例としては、窒素系肥料、リン系肥料およびカリウム系肥料の三大肥料;カルシウム、マグネシウム、硫黄、鉄、銅、マンガン、亜鉛、ホウ素、モリブデン、塩素およびニッケル等の植物に必須の要素を含む肥料;バーク堆肥、牛糞、豚糞、鶏糞、生ごみおよび剪定クズ等の堆肥等を挙げることができる。窒素系肥料の例としては、硫安、塩安、硝安、硝酸ソーダ、硝酸石灰、腐植酸アンモニア肥料、尿素、石灰窒素、硝酸アンモニア石灰、硝酸アンモニアソーダおよび硝酸苦土肥等を挙げることができ;リン系肥料の例としては、過リン酸石灰、重過リン酸石灰、熔性リン肥、腐植酸リン酸肥、焼リン、重焼リン、リンスター、苦土過リン酸、混合リン酸肥料、副産リン酸肥料および高濃度リン酸等を挙げることができ;カリウム系肥料の例としては、硫酸カリ、塩化カリ、硫酸カリ苦土、炭酸カリ、重炭酸カリおよびケイ酸カリ等を挙げることができる。これらの肥料は固形、ペースト、液体または溶液等の状態として用いてもよく、被覆肥料として用いてもよい。
農薬の例としては、殺虫剤、殺菌剤、殺虫殺菌剤、除草剤、殺鼠剤、防腐剤、および植物生長調整剤等を挙げることができる。
【0103】
本発明の保水材を肥料と組み合わせて培地を作製する場合、好ましい一実施態様では、肥料は被覆肥料として用いられる。被覆肥料は肥料を樹脂でコートしたものである。この樹脂は、例えばポリオレフィンであってよい。被覆肥料を用いる場合、樹脂の分解に伴い継時的に培地へ肥料を供給できる。また、粒状の被覆肥料を用いてマット苗を作製した場合、得られるマット苗の強度が高くなる傾向がある。被覆肥料の粒径は好ましくは1mm~10mm、より好ましくは3mm~6mmである。被覆肥料を用いる場合、培地における被覆肥料の含有量は、好ましくは10~99.99質量%、より好ましくは15~90質量%、特に好ましくは20~80質量%、最も好ましくは30~60質量%である。
【0104】
本発明の保水材を任意の成分(Z)と組み合わせて使用する場合、保水材と成分(Z)とを混合して使用するか、または成分(Z)を含み本発明の保水材を含まない培地において出芽を行った後に当該培地の上に本発明の保水材を撒いて使用することができる。保水材と成分(Z)とを混合して使用する場合、その混合方法は特に限定されない。一般的な方法により保水材と成分(Z)とを混合すればよい。出芽後に本発明の保水材を撒いて使用する場合、撒く時期は特に限定されないが、植物が乾燥に弱い育苗期間中(播種から概ね1ヵ月間)であることが好ましい。
【0105】
本発明の保水材を成分(Z)と組み合わせて用いる場合の保水材の量は、組み合わせる成分(Z)の種類によって異なるが、培地全体の総質量に対して、通常は0.0001質量%~20質量%、好ましくは0.05質量%~15質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%である。
【0106】
種籾の播種は、水稲育苗培地が導入された水稲育苗箱に対して行うことが多い。通常、種籾の量は水稲育苗箱(縦28cm×横58cm)1箱あたり100~500gである。
本発明の保水材が水稲育苗用である場合、本発明の保水材を任意に成分(Z)と混合して、種籾を播種するための培地に使用できる。この培地は、床土(種籾を播種する前に水稲育苗箱に導入されている土)または覆土(種籾を播種した後に上から覆う土)のいずれか一方に用いてもよく、両方に用いてもよい。両方に用いる場合、培地の組成は床土と覆土で同じであっても、異なっていてもよい。また、種籾が出芽した培地の上に、本発明の保水材若しくは本発明の保水材と成分(Z)との混合物を撒いてもよい。
【0107】
本発明において、保水材の吸水時間(T1)は、好ましくは200秒以下、より好ましくは30秒以下、更に好ましくは20秒以下である。吸水時間(T1)は、後述の実施例に記載の測定方法によって測定された吸水時間である。
【0108】
本発明において、保水材のカルシウム塩の存在下における吸水量は、好ましくは4g/g以上、より好ましくは6g/g以上、更に好ましくは8g/g以上である。保水材のカルシウム塩の存在下における吸水量は、後述の実施例に記載の通り、塩化カルシウム水溶液を用いた吸液試験により測定できる。
【実施例0109】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例により何ら限定されない。
【0110】
[評価項目および評価方法]
<吸水性樹脂におけるイオン性基の含有量>
実施例および比較例で用いた樹脂について、固体13C-NMR測定を行った(日本電子株式会社製 機種名ECZ-500R、500MHz)。得られた13C-NMRスペクトルにおける、イオン性基に由来するピーク(通常160~180ppmで観測される)、ビニルアルコール単位の水酸基が結合したメチン炭素に由来するピーク(通常60~80ppmで観測される)、酢酸ビニル単位のビニルエステル基のメチル炭素に由来するピーク(通常10~30ppmで観測される)、エチレン単位のメチレン炭素に由来するピーク(通常30~50ppmで観測される)、アクリル酸およびメタクリル酸単位のカルボニル炭素に由来するピーク(通常170~180ppmで観測される)、およびアクリルアミド単位のカルボニル炭素に由来するピーク(通常160~180ppmで観測される)から、樹脂中に含まれるイオン性基のモル数、ビニルアルコール単位のモル数、酢酸ビニル単位のモル数、エチレン単位のモル数、アクリル酸およびメタクリル酸単位のモル数、アクリルアミド単位のモル数を求め、下記式にしたがってイオン性基の含有量を算出した。
【数3】

【数4】

なお、上述した以外の構成単位を含む場合、その構成単位も全構成単位のモル数に含める。
【0111】
<保水材膨潤試験>
分散媒に試料である保水材を分散させ、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-950V2(堀場製作所製)を用いて、平均粒子径および体積基準10%粒子径D10(超音波を付与する前の保水材のD10に相当)を測定した。次いで、5分間の超音波照射により分散媒を保水材に吸液させることで保水材を膨潤させた後、保水材の体積基準10%粒子径D10(超音波を付与した後の保水材のD10に相当)および最も小粒子径側の極大粒子径を測定した。測定条件を以下に示す。
測定方式:湿式(循環式)
試料屈折率:1.51
分散媒:20質量%塩化ナトリウム水溶液(屈折率:1.368)
循環速度:10
撹拌速度:10
超音波強さ:7
透過率:80~90%
循環液量:280mL
なお、前記極大粒子径は、0.011μm、0.013μm、0.015μm、0.017μm、0.02μm、0.023μm、0.026μm、0.03μm、0.034μm、0.039μm、0.044μm、0.051μm、0.058μm、0.067μm、0.076μm、0.087μm、0.1μm、0.115μm、0.131μm、0.15μm、0.172μm、0.197μm、0.226μm、0.259μm、0.296μm、0.339μm、0.389μm、0.445μm、0.51μm、0.584μm、0.669μm、0.766μm、0.877μm、1.005μm、1.151μm、1.318μm、1.51μm、1.729μm、1.981μm、2.269μm、2.599μm、2.976μm、3.409μm、3.905μm、4.472μm、5.122μm、5.867μm、6.72μm、7.697μm、8.816μm、10.097μm、11.565μm、13.246μm、15.172μm、17.377μm、19.904μm、22.797μm、26.111μm、29.907μm、34.255μm、39.234μm、44.938μm、51.471μm、58.953μm、67.523μm、77.34μm、88.583μm、101.46μm、116.21μm、133.103μm、152.453μm、174.616μm、200μm、229.075μm、262.376μm、300.518μm、344.206μm、394.244μm、451.556μm、517.2μm、592.387μm、678.504μm、777.141μm、890.116μm、1019.515μm、1167.725μm、1337.481μm、1531.914μm、1754.613μm、2009.687μm、2301.841μm、2636.467μm、または3000μmでの頻度により求めた。
続いて、下記式により、超音波を付与する前後の保水材の体積基準10%粒子径D10の変化率を計算した。
【数5】

上述したいずれの測定も1つの試料について2回ずつ行い、得られた測定値およびD10変化率それぞれの平均値を、その試料についての測定値およびD10変化率として採用した。
【0112】
<吸水時間(T1)、吸水速度向上度>
直径3.5cmのシャーレに保水材を0.12g入れ、ピペットで純水3.0gを0.5秒間かけて投入した。投入後から、保水材が吸水し、水面が消失するまでの時間を計測した。この時間が短いほど、保水材の吸水速度が速いことを意味する。
また、保水材のD10変化率が1以下であることによる吸水速度の向上の程度を評価するため、下記式に示す通り、吸水速度向上度として、保水材が1以下のD10変化率を有しているか否かについてのみ異なる保水材の吸水時間(T1)の比を求めた。その際、1以下のD10変化率を有していない保水材の吸水時間(T1)は、後述する比較例で準備した保水材を用いて測定を行った。具体的には、例えば実施例1および4の保水材では、比較例1の保水材と比較することで吸水速度向上度を算出した。
【数6】
【0113】
<保水材1g当たりの純水吸収量>
JIS K 7223に準じて、実施例および比較例における保水材の純水吸収量を測定し、下記式に基づいて、保水材1g当たりの純水吸収量[g/g]を算出した。
【数7】
【0114】
<保水材1g当たりの塩化カルシウム水溶液吸収量>
JIS K 7223の試料設置方法に準じて、実施例および比較例における保水材を1.44g/L塩化カルシウム水溶液に6時間浸漬した。テトロン280メッシュを用い、塩化カルシウム水溶液を吸収させた保水材と、保水材に吸収されなかった塩化カルシウム水溶液とを濾別し、下記式を用いて保水材1g当たりの塩化カルシウム水溶液吸収量[g/g]を算出した。
【数8】
【0115】
[吸水性樹脂]
吸水性樹脂(A1)として、SNFホールディングカンパニー製のアクアソーブ3005KB(アクリルアミド系重合体、凝集体ではない粒子状のもの、平均粒子径644μm、架橋構造有)を用いた。吸水性樹脂(A1)の全構成単位に対するイオン性基の含有量は22モル%であった。
吸水性樹脂(C1)として、アクリル酸系重合体(粒子状)を用いた。吸水性樹脂(C1)の全構成単位に対するイオン性基の含有量は54モル%であった。
【0116】
下記手順により、ビニルアルコール系重合体〔吸水性樹脂(B1)〕を合成した。
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、および開始剤の添加口を備えた反応器に、酢酸ビニル9030g、アクリル酸メチル18.15g、およびメタノール3810gを導入し、窒素バブリングをしながら30分間反応器内を不活性ガス置換した。水浴を用いて反応器の昇温を開始し、反応器の内部温度が60℃となったところで、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を2.40g添加し、重合を開始させた。適宜サンプリングを行い、その固形分濃度から重合の進行を確認し、導入した酢酸ビニルとアクリル酸メチルの合計質量に対する、重合により消費された酢酸ビニルとアクリル酸メチルの合計質量である、消費率を求めた。消費率が4質量%に到達したところで、反応器の内部温度を30℃まで冷却して重合を停止させた。真空ラインに接続し、残留する酢酸ビニルをメタノールとともに30℃で減圧留去した。反応器内を目視で確認しながら、粘度が上昇したところで適宜メタノールを添加しながら留去を続け、5.2モル%のアクリル酸由来構成単位を含有するポリ酢酸ビニルを得た。アクリル酸由来構成単位の含有量は固体13C-NMRを用いて測定した。
次に、上記と同様の反応器に、得られたアクリル酸由来構成単位含有ポリ酢酸ビニル360gおよびメタノール6552gを添加し、アクリル酸由来構成単位含有ポリ酢酸ビニルを溶解させた。水浴を用いて反応器の昇温を開始し、反応器の内部温度が70℃になるまで撹拌しながら加熱した。ここに水酸化ナトリウムのメタノール溶液(メタ苛性、濃度15質量%)280.8gを添加し、70℃で2時間ケン化を行った。
【0117】
ケン化後の溶液を濾過し、40℃で真空乾燥させた。得られた重合体を固形分濃度が15質量%となるように純水に溶解させた後、テフロントレーに流し込み、90℃で熱風乾燥を行った。得られた重合体を粉砕して、5.2モル%のアクリル酸由来構成単位を含有するポリビニルアルコール(以下、「ポリビニルアルコール(b1)」と称する)を165g得た。
【0118】
還流冷却管および撹拌翼を備えた三つ口セパラブルフラスコに、メタノール445.5g、純水47.4g、25質量%グルタルアルデヒド水溶液1.206g、およびポリビニルアルコール(b1)150gを導入し、23℃で撹拌し、ポリビニルアルコール(b1)を分散させた。47質量%硫酸水溶液5.66gと純水3gとの混合液を10分かけて滴加し、65℃に昇温して6時間架橋反応させた。反応後、濾過により重合体を取り出し、濾取した重合体を220gのメタノールに分散して30分間撹拌して濾過することにより洗浄を行った。洗浄は2回繰り返した。
【0119】
洗浄後の重合体を還流冷却管および撹拌翼を備えた三つ口セパラブルフラスコに導入し、メタノール245g、純水40.8g、および50質量%水酸化カリウム24.35gを加え、65℃で2時間反応させた。反応後、濾過により重合体を取り出した後、濾取した重合体を330gのメタノールに分散して30分間撹拌して濾過することにより洗浄を行った。洗浄は2回繰り返した。洗浄後の重合体を40℃で12時間真空乾燥し、目的の吸水性樹脂(B1)を得た。吸水性樹脂(B1)の全構成単位に対するイオン性基の含有量は5モル%であった。
【0120】
実施例1~3
公称目開き53μmの篩を用いて、吸水性樹脂(A1)から、篩過した粒子を採取した。なお、採取した粒子の粒子径を、便宜上「<53」の粒子径と記載する。以下において、篩分けした粒子の粒子径は、篩の公称目開きの値を用いて同様に記載する。
採取した粒子28gを縦28cm、横20cmの袋に入れ、純水9gを少量ずつスプレー噴霧し、その都度振り混ぜ、凝集体を得た。このとき、樹脂同士に圧力をかけて練るようにするのではなく、袋を空気で満たして回転させるようにして振り混ぜた。袋内で純水は全て吸水性樹脂(A1)に吸収されていた。次いで40℃で12時間真空乾燥を行った後、公称目開き300μmの篩、公称目開き600μmの篩、公称目開き1000μmの篩および公称目開き1400μmの篩を用いて、実施例1として粒子径300μm~600μmの粒子、実施例2として粒子径600μm~1000μmの粒子、実施例3として粒子径1000μm~1400μmの粒子をそれぞれ得た。
【0121】
実施例4~6
公称目開き53μmの篩および公称目開き106μmの篩を用いて、吸水性樹脂(A1)から粒子径53μm~106μmの粒子を採取した。採取した粒子28gおよび純水12gを用いたこと以外は実施例1~3と同様にして、凝集体を得た。このとき、袋内で純水は全て吸水性樹脂(A1)に吸収されていた。次いで40℃で12時間真空乾燥を行った後、公称目開き300μmの篩、公称目開き600μmの篩、公称目開き1000μmの篩および公称目開き1400μmの篩を用いて、実施例4として粒子径300μm~600μmの粒子、実施例5として粒子径600μm~1000μmの粒子、実施例6として粒子径1000μm~1400μmの粒子をそれぞれ得た。
【0122】
実施例7~8
公称目開き212μmの篩を用いて、吸水性樹脂(A1)から粒子径212μm以上の粒子を採取した。採取した粒子28gおよび純水12gを用いたこと以外は実施例1~3と同様にして、凝集体を得た。このとき、袋内で純水は全て吸水性樹脂(A1)に吸収されていた。次いで40℃で12時間真空乾燥を行った後、公称目開き600μmの篩、公称目開き1000μmの篩および公称目開き1400μmの篩を用いて、実施例7として粒子径600μm~1000μmの粒子、実施例8として粒子径1000μm~1400μmの粒子をそれぞれ得た。
【0123】
実施例9~10
公称目開き53μmの篩および公称目開き106μmの篩を用いて、吸水性樹脂(B1)から粒子径53μm~106μmの粒子を採取した。採取した粒子28gおよび純水12gを用いたこと以外は実施例1~3と同様にして、凝集体を得た。このとき、袋内で純水は全て吸水性樹脂(A1)に吸収されていた。次いで40℃で12時間真空乾燥を行った後、公称目開き300μmの篩、公称目開き600μmの篩および公称目開き1000μmの篩を用いて、実施例9として粒子径300μm~600μmの粒子、実施例10として粒子径600μm~1000μmの粒子をそれぞれ得た。
【0124】
実施例11
公称目開き300μmの篩および公称目開き600μmの篩を用いて、吸水性樹脂(B1)から粒子径300μm~600μmの粒子を採取した。採取した粒子28gおよび純水12gを用いたこと以外は実施例1~3と同様にして、凝集体を得た。このとき、袋内で純水は全て吸水性樹脂(A1)に吸収されていた。次いで40℃で12時間真空乾燥を行った後、公称目開き600μmの篩および公称目開き1000μmの篩を用いて、粒子径600μm~1000μmの粒子を得た。
【0125】
比較例1
公称目開き300μmの篩および公称目開き600μmの篩を用いて、吸水性樹脂(A1)から粒子径300μm~600μmの粒子を得た。
【0126】
比較例2
公称目開き600μmの篩および公称目開き1000μmの篩を用いて、吸水性樹脂(A1)から粒子径600μm~1000μmの粒子を得た。
【0127】
比較例3
公称目開き300μmの篩および公称目開き600μmの篩を用いて、吸水性樹脂(B1)から粒子径300μm~600μmの粒子を得た。
【0128】
比較例4
公称目開き600μmの篩および公称目開き1000μmの篩を用いて、吸水性樹脂(B1)から粒子径600μm~1000μmの粒子を得た。
【0129】
比較例5
公称目開き106μmの篩および公称目開き212μmの篩を用いて、吸水性樹脂(C1)から粒子径106μm~212μmの粒子を採取した。採取した粒子28gおよび純水12gを用いたこと以外は実施例1~3と同様にして、凝集体を得た。このとき、袋内で純水は全て吸水性樹脂(A1)に吸収されていた。次いで40℃で12時間真空乾燥を行った後、公称目開き300μmの篩および公称目開き600μmの篩を用いて、粒子径300μm~600μmの粒子を得た。
【0130】
比較例6
公称目開き300μmの篩および公称目開き600μmの篩を用いて、吸水性樹脂(C1)から粒子径300μm~600μmの粒子を得た。
【0131】
実施例および比較例においてそれぞれ得た粒子を保水材として評価した。それらの結果を表1に示す。
【表1】
【0132】
表1に示されている通り、実施例の保水材はいずれも、同程度の粒子径を有する比較例の保水材より優れた吸水速度を示した。保水材の粒子径は、保水材の粉塵防止に対する要望または保水材投入用ホッパーの構造等により制限されることがあるため、このような優れた吸水速度を達成できたことは、大きな意味を持つ。
また、保水材において、吸水性樹脂の全構成単位に対して0.1モル%以上、50モル%以下のイオン性基を有する吸水性樹脂がD10変化率1以下の保水材を構成していることにより、吸水速度が著しく向上したことが、吸水速度向上度〔具体的には、実施例1または4の吸水時間(T1)と比較例1の吸水時間(T1)との比(実施例1または4の行に記載の吸水速度向上度)、実施例2または5または7の吸水時間(T1)と比較例2の吸水時間(T1)との比(実施例2または5または7の行に記載の吸水速度向上度)、実施例9の吸水時間(T1)と比較例3の吸水時間(T1)との比(実施例9の行に記載の吸水速度向上度)、実施例10または11の吸水時間(T1)と比較例4の吸水時間(T1)との比(実施例10または11の行に記載の吸水速度向上度)〕から分かる。一方、保水材のD10変化率が1以下であったとしても、吸水性樹脂が前述した特定のイオン性基含有量を有していないと、吸水速度はあまり向上しないという意外な結果が得られたことが、比較例5の吸水時間(T1)と比較例6の吸水時間(T1)との比(比較例5の行に記載の吸水速度向上度)から分かる。
更に、表1に示されている通り、実施例の保水材は、比較例の保水材より高い塩化カルシウム水溶液吸収量も示した。これは、本発明の保水材は、カルシウム塩の存在下であっても吸水量が十分高いことを示している。また、本発明の保水材の、カルシウム塩の存在下での吸水量は、長期間にわたって低下しにくいものであった。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明の保水材は、吸水速度に優れ、カルシウム塩の存在下であっても十分高い吸水量を示し、この吸水量は長期間にわたって低下しにくいため、農業用保水材として好適に利用できる。