IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社SUMCOの特許一覧

特開2024-22708接合シリコンウェーハ及びその製造方法
<>
  • 特開-接合シリコンウェーハ及びその製造方法 図1A
  • 特開-接合シリコンウェーハ及びその製造方法 図1B
  • 特開-接合シリコンウェーハ及びその製造方法 図2
  • 特開-接合シリコンウェーハ及びその製造方法 図3
  • 特開-接合シリコンウェーハ及びその製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022708
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】接合シリコンウェーハ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
H01L27/12 B
H01L21/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124377
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】古賀 祥泰
(57)【要約】      (修正有)
【課題】厚みが薄く、かつ、赤外線反射率が高い接合シリコンウェーハ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】支持基板用シリコンウェーハと前記支持基板用シリコンウェーハ上の単結晶シリコン層と、前記支持基板用シリコンウェーハ及び前記単結晶シリコン層との間に設けられた、赤外反射シリコン膜とシリコン酸化膜と、を有する接合シリコンウェーハであって、前記赤外反射シリコン膜は、アモルファスシリコン又は多結晶シリコンを含み、前記赤外反射シリコン膜の厚みが15nm以上であり、前記シリコン酸化膜の厚みが100nm以下である、接合シリコンウェーハ。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板用シリコンウェーハと、
前記支持基板用シリコンウェーハ上の単結晶シリコン層と、
前記支持基板用シリコンウェーハ及び前記単結晶シリコン層との間に設けられた、赤外反射シリコン膜とシリコン酸化膜と、を有する接合シリコンウェーハであって、
前記赤外反射シリコン膜は、アモルファスシリコン又は多結晶シリコンを含み、
前記赤外反射シリコン膜の厚みが15nm以上であり、
前記シリコン酸化膜の厚みが100nm以下である、接合シリコンウェーハ。
【請求項2】
前記赤外反射シリコン膜の厚みが25nm以上である、請求項1に記載の接合シリコンウェーハ。
【請求項3】
前記単結晶シリコン層の厚みが3μm以上30μm以下である、請求項1に記載の接合シリコンウェーハ。
【請求項4】
請求項1に記載の接合シリコンウェーハの製造方法であって、支持基板用シリコンウェーハの表面上に厚さが15nm以上の前記赤外反射シリコン膜を形成する赤外反射シリコン膜形成工程と、
単結晶シリコン層用シリコンウェーハの表面に厚さが100nm以下のシリコン酸化膜を形成するシリコン酸化膜形成工程と、
前記赤外反射シリコン膜及び前記シリコン酸化膜を介して、700℃以下の温度で熱処理することにより、前記支持基板用シリコンウェーハ及び前記単結晶シリコン層用シリコンウェーハを貼り合わせて両ウェーハを接合する接合工程と、
前記接合工程の後、前記単結晶シリコン層用シリコンウェーハを減厚して前記単結晶シリコン層を得る減厚工程と、を含むことを特徴とする接合シリコンウェーハの製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の接合シリコンウェーハの製造方法であって、単結晶シリコン層用シリコンウェーハの表面上に厚さが15nm以上の前記赤外反射シリコン膜を形成する赤外反射シリコン膜形成工程と、
支持基板用シリコンウェーハの表面に厚さが100nm以下のシリコン酸化膜を形成するシリコン酸化膜形成工程と、
前記赤外反射シリコン膜及び前記酸化膜を介して、700℃以下の温度で熱処理することにより、前記単結晶シリコン層用シリコンウェーハ及び前記支持基板用シリコンウェーハを貼り合わせて両ウェーハを接合する接合工程と、
前記接合工程の後、前記単結晶シリコン層用シリコンウェーハを減厚して前記単結晶シリコン層を得る減厚工程と、を含むことを特徴とする接合シリコンウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合シリコンウェーハ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
接合シリコンウェーハとして、重ね合わせ基板に接合熱処理を施して製造されるSOIウェーハが知られている(例えば特許文献1を参照)。一方、近年、監視用カメラや自動車の衝突防止センサ等の分野において高感度の赤外光受光センサが必要とされており、従来可視光の領域のセンサとして用いられているシリコンウェーハを利用する取り組みが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-216356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
単結晶シリコン及び酸化シリコンはいずれも赤外光に対して反射率が低く比較的透明である。そのため、赤外光受光センサの赤外反射層として単結晶シリコン又は酸化シリコンを用いようとすると、その赤外反射層は100μm程の厚みを要してしまう。赤外反射層の厚みを薄くすることができれば、赤外光受光センサを小型化することができる。そこで本発明は、厚みが薄く、かつ、赤外線反射率が高い接合シリコンウェーハ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく検討し、シリコンウェーハ系デバイスにおける赤外反射シリコン膜として一般的に用いられてきた酸化シリコンに替えて、アモルファスシリコン又は多結晶シリコンを用いることを検討した。アモルファスシリコン及び多結晶シリコンはいずれも酸化シリコンよりも赤外線反射率が高いため、赤外線反射効率に優れた接合シリコンウェーハが得られることを期待して鋭意検討した。そして本発明者は、赤外線反射層におけるアモルファスシリコン層又は多結晶シリコン層の厚みを制御し、また製造方法の観点からは、接合時における熱処理条件を制御することで、上記赤外線反射率を著しく改善した接合シリコンウェーハを得られることを本発明者は知見した。本発明は、上記知見に基づいて完成されたものであり、その要旨構成は以下のとおりである。
【0006】
<1>支持基板用シリコンウェーハと、前記支持基板用シリコンウェーハ上の単結晶シリコン層と、前記支持基板用シリコンウェーハ及び前記単結晶シリコン層との間に設けられた、赤外反射シリコン膜とシリコン酸化膜と、を有する接合シリコンウェーハであって、前記赤外反射シリコン膜は、アモルファスシリコン又は多結晶シリコンを含み、前記赤外反射シリコン膜の厚みが15nm以上であり、前記シリコン酸化膜の厚みが100nm以下である、接合シリコンウェーハ。
【0007】
<2>前記赤外反射シリコン膜の厚みが25nm以上である、<1>に記載の接合シリコンウェーハ。
【0008】
<3>前記単結晶シリコン層の厚みが3μm以上30μm以下である、<1>又は<2>に記載の接合シリコンウェーハ。
【0009】
<4>上記<1>~<3>のいずれか1項に記載の接合シリコンウェーハの製造方法であって、支持基板用シリコンウェーハの表面上に厚さが15nm以上の前記赤外反射シリコン膜を形成する赤外反射シリコン膜形成工程と、単結晶シリコン層用シリコンウェーハの表面に厚さが100nm以下のシリコン酸化膜を形成するシリコン酸化膜形成工程と、前記赤外反射シリコン膜及び前記シリコン酸化膜を介して、700℃以下の温度で熱処理することにより、前記支持基板用シリコンウェーハ及び前記単結晶シリコン層用シリコンウェーハを貼り合わせて両ウェーハを接合する接合工程と、前記接合工程の後、前記単結晶シリコン層用シリコンウェーハを減厚して前記単結晶シリコン層を得る減厚工程と、を含むことを特徴とする接合シリコンウェーハの製造方法。
【0010】
<5>上記<1>~<3>のいずれか1項に記載の接合シリコンウェーハの製造方法であって、単結晶シリコン層用シリコンウェーハの表面上に厚さが15nm以上の前記赤外反射シリコン膜を形成する赤外反射シリコン膜形成工程と、支持基板用シリコンウェーハの表面に厚さが100nm以下のシリコン酸化膜を形成するシリコン酸化膜形成工程と、前記赤外反射シリコン膜及び前記酸化膜を介して、700℃以下の温度で熱処理することにより、前記単結晶シリコン層用シリコンウェーハ及び前記支持基板用シリコンウェーハを貼り合わせて両ウェーハを接合する接合工程と、前記接合工程の後、前記単結晶シリコン層用シリコンウェーハを減厚して前記単結晶シリコン層を得る減厚工程と、を含むことを特徴とする接合シリコンウェーハの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、厚みが薄く、かつ赤外線反射率が高い接合シリコンウェーハ及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本発明による、接合シリコンウェーハの第1の態様を説明する模式断面図である。
図1B】本発明による、接合シリコンウェーハの第2の態様を説明する模式断面図である。
図2】本発明による接合シリコンウェーハの製造方法の第1実施形態を説明する模式断面図である。
図3】本発明による接合シリコンウェーハの製造方法の第2実施形態を説明する模式断面図である。
図4】本発明の一実施形態による接合シリコンウェーハの赤外光の反射率の測定方法を説明するための接合シリコンウェーハ断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1.概要)
本発明に従う実施形態の説明に先立ち、各図面の対応関係について説明する。図1A及び図1Bはそれぞれ、本発明に従う接合シリコンウェーハ1及び2の模式断面図である。このとき、接合シリコンウェーハ1及び2は、支持基板用シリコンウェーハと、支持基板用シリコンウェーハ上の単結晶シリコン層と、支持基板用シリコンウェーハ及び単結晶シリコン層との間に設けられた、赤外反射シリコン膜とシリコン酸化膜と、を含む接合シリコンウェーハであって、接合シリコンウェーハ1はシリコン酸化膜が赤外反射シリコン膜の上に設けられる態様を示し、接合シリコンウェーハ2は赤外反射シリコン膜がシリコン酸化膜の上に設けられる態様を示す。赤外反射シリコン膜30はアモルファスシリコンであってもよく、多結晶シリコンあってもよく、アモルファスシリコン及び多結晶シリコンからなる混合層であってもよい。
【0014】
図2は、アモルファスシリコン層の上にシリコン酸化膜が形成される場合の接合シリコンウェーハ1の製造方法の実施形態(以下、第1実施形態)を説明する模式断面図である。なお、図2に示す第1実施形態では、支持基板用シリコンウェーハ110にアモルファスシリコン層131を形成しているが、これに替えて、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120にアモルファスシリコン層を形成して接合シリコンウェーハ2のような態様とすることもできる。
【0015】
図3は、多結晶シリコン層の上にシリコン酸化膜が形成される場合の接合シリコンウェーハ1の製造方法の実施形態(以下、第2実施形態)を説明する模式断面図である。また、第1実施形態と同様に、図3に示す第2実施形態では、支持基板用シリコンウェーハ110に多結晶シリコン層135を形成しているが、これに替えて、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120に多結晶シリコン層を形成して接合シリコンウェーハ2のような態様とすることもできる。
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態を詳細に説明する。まず、図1A及び図1Bを参照して本発明による接合シリコンウェーハ1、2の概要を説明する。ここで、図1Aの接合シリコンウェーハ1における赤外反射シリコン膜30は、アモルファスシリコンであってもよく、多結晶シリコンであってもよく、アモルファスシリコン及び多結晶シリコンであってもよい。次に、接合シリコンウェーハ1を得るための第1及び第2の実施形態による接合シリコンウェーハの製造方法を説明しつつ、併せて各構成の詳細を説明する。その後、本発明に適用可能な具体的態様を説明する。なお、各図面では説明の便宜上、各構成の厚さを誇張して示す。そのため、各構成の厚さは、実際の厚さの割合とは異なる。
【0017】
(2.接合シリコンウェーハ)
図1A及びBを参照する。本発明による接合シリコンウェーハ1及び2は、支持基板用シリコンウェーハ10と、支持基板用シリコンウェーハ10上の単結晶シリコン層21と、支持基板用シリコンウェーハ10及び単結晶シリコン層21との間に設けられた赤外反射シリコン膜30とシリコン酸化膜と、を有し、赤外反射シリコン膜30はアモルファスシリコン又は多結晶シリコンを含む。赤外反射シリコン膜30及びシリコン酸化膜40の積層順序はいずれでもよく、図1Aの接合シリコンウェーハ1ではシリコン酸化膜40が赤外反射シリコン膜30の上に設けられ、図1Bの接合シリコンウェーハ2では赤外反射シリコン膜30がシリコン酸化膜40の上に設けられる。
【0018】
ここで、支持基板用シリコンウェーハ10及び単結晶シリコン層21の材質としての単結晶シリコン並びにシリコン酸化膜40の材質としての酸化シリコンは赤外線に対して透明であり、一方、赤外反射シリコン膜30の材質としてのアモルファスシリコン及び多結晶シリコンは赤外線に対して不透明である。アモルファスシリコン又は多結晶シリコンからなる赤外反射シリコン膜30を15nm以上の厚みとすることで、厚みが薄く、かつ赤外線反射率が高い接合シリコンウェーハを得ることができる。赤外反射シリコン膜30は、アモルファスシリコンであってもよく、多結晶シリコンであってもよく、アモルファスシリコン及び多結晶シリコンであってもよいが、厚みは15nmよりも薄いと赤外線を十分に反射することができない。赤外反射シリコン膜30の厚みは20nm以上とすることが好ましく、25nm以上とすることがより好ましく、30nm以上とすることがさらに好ましい。赤外反射シリコン膜30の厚みは厚いほど反射率が100%に近づくものの、概ね25nmで飽和し、その上限は特に制限されないが、接合シリコンウェーハを小型化する観点では、上限を40nmと設定することが可能である。また、シリコン酸化膜は絶縁層としての機能は必要ないため、接合するための接着層として機能する程度に十分な厚みがあればよい。熱酸化法によるシリコン酸化膜の形成を考慮すると、生産性の観点から100nm以下の厚みであることが要求され、5nm以上50nm以下とすることが好ましく、10nm以上20nm以下とすることがより好ましい。そして、赤外線が入射する単結晶シリコン層21の厚みは、特に制限されないものの、3μm以上30μm以下であることが好ましい。接合シリコンウェーハの用途に応じて、単結晶シリコン層21の厚みを5μm以上としてもよいし、10μm以上としてもよいし、20μm以下としてもよいし、15μm以下としてもよい。
【0019】
シリコン酸化膜40が赤外反射シリコン膜30の上に設けられる場合と、赤外反射シリコン膜30がシリコン酸化膜40の上に設けられる場合とは、製造方法の実施形態に由来して定まる。以下、赤外反射シリコン膜が、アモルファスシリコンからなる場合及び赤外反射シリコン膜が多結晶シリコンからなる場合の接合シリコンウェーハ1及び2を製造するための実施形態を順次説明する。
【0020】
(3.接合シリコンウェーハの製造方法の第1実施形態)
図2を参照して、第1実施形態による接合シリコンウェーハ100の製造方法を説明する。本実施形態は、図1Aの接合シリコンウェーハ1を製造する方法であり、図1Aの接合シリコンウェーハ1において、赤外反射シリコン膜30がアモルファスシリコンからなる場合の実施形態である。
【0021】
接合シリコンウェーハ100の製造方法は、支持基板用シリコンウェーハ110の表面上に、厚さが15nm以上のアモルファスシリコン層131を形成する赤外反射シリコン膜形成工程(図2のS110、S120参照)と、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120の表面に、シリコン酸化膜を形成するシリコン酸化膜形成工程(図2のS110、S120参照)と、この赤外反射シリコン膜形成工程及びシリコン酸化膜形成工程に引き続き、700℃以下の温度で熱処理することにより、支持基板用シリコンウェーハ及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハを貼り合わせて両ウェーハを接合する接合工程(図2のS130参照)と、接合工程の後、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120を減厚して単結晶シリコン層121を得る減厚工程(図2のS140参照)と、を含む。以下、各工程の詳細を順次説明する。
【0022】
<赤外反射シリコン膜形成工程>
赤外反射シリコン膜形成工程(図3のS110、S120参照)では支持基板用シリコンウェーハ110の表面上に、アモルファスシリコンからなるアモルファスシリコン層131を形成する。アモルファスシリコン層131は一般的な手法により形成することができる。ここで形成するアモルファスシリコン層131の厚みは、接合シリコンウェーハとしたときにアモルファスシリコンの領域が赤外反射シリコン膜として機能するために15nm以上の厚みとする。本工程において形成するアモルファスシリコン層131の厚みは、20nm以上とすることが好ましく、25nm以上とすることがより好ましく、30nm以上とすることがさらに好ましい。アモルファスシリコン層131の厚みの上限は特に制限されないが、工業的な生産性を考慮すれば上限は40nm程度である。
【0023】
<<CVD法によるアモルファスシリコン層の形成>>
また、アモルファスシリコンからなるアモルファスシリコン層131は、プラズマCVD法などのCVD法を用いて、支持基板用シリコンウェーハ110の表面上に成膜することができる。支持基板用シリコンウェーハ110の温度を500℃以上600℃以下にした状態で成膜すれば、アモルファスシリコンからなるアモルファスシリコン層を成長させることができる。
【0024】
<シリコン酸化膜形成工程>
次に、シリコン酸化膜形成工程(図2のS110、S120参照)では、熱酸化法等の酸化法用いて、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120の表面上に酸化シリコンからなるシリコン酸化膜140を形成する。赤外光受光センサとしての用途を想定する場合、シリコン酸化膜140は必ずしも絶縁層としての機能を有しなくてもよく、生産性の観点から厚みは100nm以下であればよい。シリコン酸化膜の厚みは5nm以上50nm以下とすることが好ましく、10nm以上20nm以下とすることがより好ましい。100nm以上であると熱酸化処理をした際に時間を要するため、生産性が著しく低下し、5nm以下であると、続く接合工程においてシリコン酸化膜が接着層として十分に機能しない。
【0025】
シリコン酸化膜形成のために用いられる方法は特に限定されず、上記熱酸化法のほかにも、プラズマCVD法などの成膜(堆積)法を用いてシリコン酸化膜140を形成してもよく、さらに熱処理を加えるシリコン酸化膜緻密化熱処理工程を設けてもよい。
【0026】
<接合工程>
そして、接合工程(図2のS130参照)では、上述の赤外反射シリコン膜形成工程及びシリコン酸化膜形成工程に引き続き、700℃以下の温度で熱処理をすることで、支持基板用シリコンウェーハ110と単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120とを接合する。このとき、支持基板用シリコンウェーハ110と単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120とをそれぞれアモルファスシリコン層131及びシリコン酸化膜140を介して貼り合わせるよう重ね合わせて接合する。接合熱処理は、酸化性ガスまたは不活性ガス雰囲気中において行うことができる。基板温度が700℃を超えると予め支持基板用シリコンウェーハ上に形成していたアモルファスシリコン層のアモルファスシリコンが再結晶化し、再結晶化したシリコンは赤外線を透過するため好ましくない。熱処理は基板温度を400℃以上600℃以下として、10分以上6時間以下の条件下で行うことが好ましい。基板温度を400℃以上とすることで、十分な接合強度が得られ、基板温度を600℃以下とすることで、形成したアモルファスシリコン層への熱による影響をより小さく抑えることができる。
【0027】
<単結晶シリコン層用シリコンウェーハの減厚工程>
上述した熱処理による接合工程を経た後、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120の減厚工程(図2のS140参照)を行う。本工程では、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120を貼り合わせた面とは反対側から減厚することで単結晶シリコンからなる単結晶シリコン層121を得る。減厚するためには、例えば単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120を研削及び研磨すればよい。これにより、所望厚さの単結晶シリコン層121を有する接合シリコンウェーハ100を得ることができる。単結晶シリコン層121の厚さは、そこに形成するデバイスに応じて適宜決定することができ、3μm以上30μm以下とすることが好ましく、5μm以上としてもよいし、10μm以上としてもよいし、20μm以下としてもよいし、15μm以下としてもよい。なお、この研削及び研磨には、公知の研削法及び研磨法を好適に用いることができ、具体的には平面研削法及び鏡面研磨法を用いることができる。
【0028】
こうして得られる接合シリコンウェーハ100は、支持基板用シリコンウェーハ110と、支持基板用シリコンウェーハ110上の単結晶シリコン層121と、支持基板用シリコンウェーハ110及び単結晶シリコン層121との間に設けられた厚みが15nm以上のアモルファスシリコン層131からなる赤外反射シリコン膜130とアモルファスシリコン上の厚みが100nm以下のシリコン酸化膜140と、を有する。
【0029】
以上、図2を参照して接合シリコンウェーハの製造方法の第1実施形態を説明した。この第1実施形態では支持基板用シリコンウェーハ110にアモルファスシリコン層131を形成し、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120にシリコン酸化膜140を形成したものの、これに替わる第1実施形態の変形態様として、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120にアモルファスシリコン層131を形成し、支持基板用シリコンウェーハにシリコン酸化膜140を形成する以外は、上記第1実施形態と同様の工程を経ることにより、図2に示す接合シリコンウェーハ100を製造することもできる。すなわち、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120の表面上に、アモルファスシリコンからなるアモルファスシリコン層131を形成する赤外反射シリコン膜形成工程と、支持基板用シリコンウェーハ110の表面上に酸化シリコンからなるシリコン酸化膜140を形成するシリコン酸化膜形成工程と、このアモルファスシリコン形成工程及びシリコン酸化膜形成工程に引き続き、700℃以下の温度で熱処理することにより、支持基板用シリコンウェーハ110及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120を貼り合わせて両ウェーハを接合する接合工程と、接合工程の後、単結晶シリコン層用シリコンウェーハを減厚して単結晶シリコン層121を得る減厚工程と、により接合シリコンウェーハ100を製造することができる。アモルファスシリコン層131及びシリコン酸化膜140の形成、接合、減厚のための研削及び研磨手法等については第1実施形態において上述したのと同様の手法を用いることができるため、重複する説明を省略する。
【0030】
(2.接合シリコンウェーハの製造方法の第2実施形態)
図3を参照して、第2実施形態による接合シリコンウェーハ200の製造方法を説明する。本実施形態は、図1Aの接合シリコンウェーハ1を製造する方法であり、図1Aの接合シリコンウェーハ1において、赤外反射シリコン膜30は第1実施形態と異なり、多結晶シリコンからなる。
【0031】
接合シリコンウェーハ200の製造方法は、支持基板用シリコンウェーハ210の表面上に、厚さが15nm以上の多結晶シリコン層235を形成する赤外反射シリコン膜形成工程(図3のS210、S220参照)と、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ220の表面に、シリコン酸化膜を形成するシリコン酸化膜形成工程(図3のS210、S220参照)と、この赤外反射シリコン膜形成工程及びシリコン酸化膜形成工程に引き続き、700℃以下の温度で熱処理することにより、支持基板用シリコンウェーハ及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハを貼り合わせて両ウェーハを接合する接合工程(図2のS230参照)と、接合工程の後、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ220を減厚して単結晶シリコン層221を得る減厚工程(図3のS240参照)と、を含む。
【0032】
<赤外反射シリコン膜形成工程>
赤外反射シリコン膜形成工程(図3のS210、S220参照)では支持基板用シリコンウェーハ210の表面上に、多結晶シリコンからなる多結晶シリコン層235を形成する。多結晶シリコン層235は一般的な手法により形成することができる。ここで形成する多結晶シリコン層235の厚みは、接合シリコンウェーハ200としたときに多結晶シリコンの領域が赤外反射シリコン膜として機能するために15nm以上の厚みとする。本工程において形成する多結晶シリコン層235の厚みは、20nm以上とすることが好ましく、25nm以上とすることがより好ましく、30nm以上とすることがさらに好ましい。多結晶シリコン層235の厚みの上限は特に制限されないが、工業的な生産性を考慮すれば上限は40nm程度である。
【0033】
<<CVD法による多結晶シリコン層の形成>>
また、多結晶シリコンからなる多結晶シリコン層235は、プラズマCVD法などのCVD法を用いて、支持基板用シリコンウェーハ210の表面上に成膜することができる。支持基板用シリコンウェーハ210の温度を700℃以上900℃以下にした状態で成膜すれば、多結晶シリコンからなる多結晶シリコン層を成長させることができる。
【0034】
<シリコン酸化膜形成工程>
次に、シリコン酸化膜形成工程(図3のS210、S220参照)では、熱酸化法等の酸化法用いて、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ220の表面上に酸化シリコンからなるシリコン酸化膜240を形成する。赤外光受光センサとしての用途を想定する場合、シリコン酸化膜240は必ずしも絶縁層としての機能を有しなくてもよく、生産性の観点から厚みは100nm以下であればよい。シリコン酸化膜の厚みは5nm以上50nm以下とすることが好ましく、10nm以上20nm以下とすることがより好ましい。100nm以上であると熱酸化処理をした際に時間を要するため、生産性が著しく低下し、5nm以下であると、続く接合工程においてシリコン酸化膜が接着層として十分に機能しない。
【0035】
シリコン酸化膜形成のために用いられる方法は特に限定されず、上記熱酸化法のほかにも、プラズマCVD法などの成膜(堆積)法を用いてシリコン酸化膜240を形成してもよく、さらに熱処理を加えるシリコン酸化膜緻密化熱処理工程を設けてもよい。
【0036】
<接合工程>
そして、接合工程(図3のS230参照)では、上述の赤外反射シリコン膜形成工程及びシリコン酸化膜形成工程に引き続き、700℃以下の温度で熱処理をすることで、支持基板用シリコンウェーハ210と単結晶シリコン層用シリコンウェーハ220とを接合する。このとき、支持基板用シリコンウェーハ110と単結晶シリコン層用シリコンウェーハ220とをそれぞれアモルファスシリコン層231及びシリコン酸化膜240を介して貼り合わせるよう重ね合わせて接合する。接合熱処理は、酸化性ガスまたは不活性ガス雰囲気中において行うことができる。基板温度が700℃を超えると予め支持基板用シリコンウェーハ上に形成していた多結晶シリコン層の多結晶シリコンが再結晶化するに転位が生じるため好ましくない。熱処理は基板温度を400℃以上600℃以下として、10分以上6時間以下の条件下で行うことが好ましい。基板温度を400℃以上とすることで、十分な接合強度が得られ、基板温度を600℃以下とすることで、形成した多結晶シリコン層への熱による影響をより小さく抑えることができる。
【0037】
<減厚工程>
続く減厚工程は、第1実施形態と同様にして行うことができる。
【0038】
こうして得られる接合シリコンウェーハ200は、支持基板用シリコンウェーハ210と、支持基板用シリコンウェーハ210上の単結晶シリコン層225と、支持基板用シリコンウェーハ210及び単結晶シリコン層221との間に設けられた厚みが15nm以上の多結晶シリコン層235からなる赤外反射シリコン膜230とアモルファスシリコン上の厚みが100nm以下のシリコン酸化膜240と、を有する。
【0039】
以上、図3を参照して接合シリコンウェーハの製造方法の第2実施形態を説明した。この第2実施形態では支持基板用シリコンウェーハ210に多結晶シリコン層235を形成し、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ220にシリコン酸化膜240を形成したものの、これに替わる第2実施形態の変形態様として、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ220に多結晶シリコン層235を形成し、支持基板用シリコンウェーハにシリコン酸化膜240を形成する以外は、上記第2実施形態と同様の工程を経ることにより、図3に示す第2態様による接合シリコンウェーハ200を製造することもできる。すなわち、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ220の表面上に、多結晶シリコンからなる多結晶シリコン層235を形成する赤外反射シリコン膜形成工程と、支持基板用シリコンウェーハ210の表面上に酸化シリコンからなるシリコン酸化膜240を形成するシリコン酸化膜形成工程と、この多結晶シリコン形成工程及びシリコン酸化膜形成工程に引き続き、700℃以下の温度で熱処理することにより、支持基板用シリコンウェーハ210及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ220を貼り合わせて両ウェーハを接合する接合工程と、接合工程の後、単結晶シリコン層用シリコンウェーハを減厚して単結晶シリコン層221を得る減厚工程と、により接合シリコンウェーハ200を製造することができる。多結晶シリコン層235及びシリコン酸化膜240の形成、接合、減厚のための研削及び研磨手法等については第1実施形態において上述したのと同様の手法を用いることができるため、重複する説明を省略する。
【0040】
なお、第1実施形態及び第2実施形態において、活性化処理に先立ち、アモルファスシリコン層及び多結晶シリコン層の表面の平坦化処理を行うことも好ましい。すなわち、第1実施形態及び第2実施形態ではそれぞれアモルファスシリコン層131,231及びシリコン酸化膜140,240の平坦化を行うことが好ましい。
【0041】
平坦化の条件は特に制限されないが、アモルファスシリコン層又は多結晶シリコン層の表面粗さRaが3nm以下となるように平坦化することが好ましく、研磨代を30nm以内とすることがより好ましい。平坦化を行うことにより、活性化後の接合をより確実に行うことができるためである。なお、平坦化には、公知の化学機械研磨(CMP:chemical mechanical polishing)法等を好適に用いることができる。また、本明細書における表面粗さRaとは、JIS B 0601(2001)に規定の算術平均粗さRaの定義に従う。
【0042】
以上の第1実施形態及び第2実施形態の製造方法により、本発明による接合シリコンウェーハを製造することができる。
【0043】
(7.具体的態様)
以下では、本発明において用いることができる支持基板用シリコンウェーハ10、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ20(単結晶シリコン層21)に適用可能なシリコンウェーハの具体的態様を説明する。
【0044】
シリコンウェーハの面方位は任意であり、(100)面のウェーハを用いてもよいし、(110)面のウェーハなどを用いてもよい。
【0045】
シリコンウェーハの厚さは、用いる用途に応じて適宜決定することができ、300μm~1.5mmとすることができる。単結晶シリコン層用シリコンウェーハから得られる単結晶シリコンからなる単結晶シリコン層の膜厚を100nm~1mmの範囲で適宜定めることは既に述べたとおりである。
【0046】
また、シリコンウェーハにボロン(B)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)などのドーパントがドープされていてもよいし、所望の特性を得るため炭素(C)又は窒素(N)などがドープされていてもよい。
【0047】
シリコンウェーハの直径は何ら制限されない。一般的な直径300mm又は200mmなどのシリコンウェーハに本発明を適用することができる。もちろん、直径300mmよりも直径の大きいシリコンウェーハに対しても、直径の小さいシリコンウェーハに対しても本発明を適用することができる。
【0048】
なお、本明細書における「シリコンウェーハ」とは、表面にエピタキシャル層又は酸化シリコンなどからなる赤外反射シリコン膜などの別の層が形成されていない、いわゆる「バルク」のシリコンウェーハを用いてもよいし、エピタキシャル層などの別の層を別途形成したエピタキシャルシリコンウェーハを用いても構わない。なお、シリコンウェーハの表面には数Å程度の膜厚の自然酸化膜が形成されうるが、こうした自然酸化膜があってもよいし、必要に応じて公知の洗浄方法等を用いて除去してもよい。
【実施例0049】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0050】
[実験例1]
(発明例1-1)
支持基板用シリコンウェーハ及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハとして、直径:8インチ(203.2mm)、厚み:500μmのn型CZシリコンウェーハ(ドーパント:リン)を用意した。次いで、支持基板用シリコンウェーハをプラズマCVD装置に導入し、装置内の真空度を1×10-5Pa以下に保持した。そして、ステージ温度を500℃に維持した状態で、ソースガスとしてシランガス(CHSiH)を55sccm、キャリアガスとしてHガスを110sccm流して、プラズマCVD法により支持基板用シリコンウェーハの表面に膜厚15nmのアモルファスシリコン層を形成した。
【0051】
そして、単結晶シリコン層用シリコンウェーハをファーネス炉で酸素雰囲気下1000℃に維持した状態で1時間保持し、単結晶シリコン層用シリコンウェーハの表面に50nmのシリコン酸化膜を形成した。
【0052】
次いで、支持基板用シリコンウェーハ及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハの両方をファーネス炉に導入し、このとき、支持基板用シリコンウェーハ110と単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120とをそれぞれアモルファスシリコン層131及びシリコン酸化膜140を介して貼り合わせるよう重ね合わせた。そして、酸素雰囲気下で接合熱温度を600℃として1時間保持することで両ウェーハを貼り合わせて接合した。
【0053】
最後に単結晶シリコン層用シリコンウェーハの厚みを10μm残すよう、貼り合せ面とは反対側から、研削及び研磨を行い、発明例1-1に係る接合シリコンウェーハを得た。
【0054】
こうして得られた接合シリコンウェーハの接合界面をTEM観察したところ、15nmの厚みのアモルファスシリコンが形成されていることが確認できた。
【0055】
(発明例1-2)
発明例1-1では支持基板用シリコンウェーハの表面に、プラズマCVD法により、膜厚15nmのアモルファスシリコン層を形成していたところ、発明例1-2においては、膜厚20nmのアモルファスシリコン層を形成した以外は、発明例1-1と同じ条件で発明例1-2に係る接合シリコンウェーハを作製した。
【0056】
(発明例1-3)
発明例1-1では支持基板用シリコンウェーハの表面に、プラズマCVD法により、膜厚15nmのアモルファスシリコン層を形成していたところ、発明例1-3においては、膜厚25nmのアモルファスシリコン層を形成した以外は、発明例1-1と同じ条件で発明例1-3に係る接合シリコンウェーハを作製した。
【0057】
(発明例1-4)
発明例1-1では支持基板用シリコンウェーハの表面に、プラズマCVD法により、膜厚15nmのアモルファスシリコン層を形成していたところ、発明例1-4においては、膜厚30nmのアモルファスシリコン層を形成した以外は、発明例1-1と同じ条件で発明例1-4に係る接合シリコンウェーハを作製した。
【0058】
(比較例1-1)
発明例1-1と同様の支持基板用シリコンウェーハ及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハを用意した。そして、発明例1-1では支持基板用シリコンウェーハの表面に、プラズマCVD法により、膜厚15nmのアモルファスシリコン層を形成していたところ、比較例1においては、膜厚5nmのアモルファスシリコン層を形成した以外は、発明例1-1と同じ条件で比較例1-1に係る接合シリコンウェーハを作製した。
【0059】
(比較例1-2)
発明例1-1では支持基板用シリコンウェーハの表面に、プラズマCVD法により、膜厚15nmのアモルファスシリコン層を形成していたところ、比較例1においては、膜厚10nmのアモルファスシリコン層を形成した以外は、発明例1-1と同じ条件で比較例1-2に係る接合シリコンウェーハを作製した。
【0060】
(評価:赤外線反射率の評価)
赤外反射シリコン膜の赤外線反射率を評価するため、膜厚測定装置(CHRocodile IT500、プレシテック社製)を用いて、接合シリコンウェーハ表面に赤外光を入射し、反射光の信号強度を検出した。図4を参照して、本測定器によるFTIR(Fourier Transform Infrared)法を用いた赤外線反射率の測定原理を簡単に説明する。なお、本測定器の入射光となるレーザ光源は、スーパールミネッセンスダイオードである。本測定器を用いて、近赤外光Lを接合シリコンウェーハに照射したときに得られる反射光L及び反射光Lを検出し、赤外線の反射率L/Lを求めた。ここで、反射光Lは接合シリコンウェーハ300の表面328Aで反射される反射光であり、反射光Lは単結晶シリコン層321及びアモルファスシリコンから形成される領域330の界面からの反射光である。なお、反射されなかった赤外光はさらに支持基板側単結晶シリコンの領域310へと進むこととなる。
【0061】
結果を下記表1に記載する。本評価結果から、発明例1-1から発明例1-4ではアモルファスシリコンの領域が赤外反射膜として十分に機能することが確認された一方、従来例や比較例1で形成されたアモルファスシリコンの領域では赤外反射膜として機能するには不十分であることが確認された。
【0062】
【表1】
【0063】
[実験例2]
(発明例2-1)
支持基板用シリコンウェーハ及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハとして、直径:8インチ(203.2mm)、厚み:500μmのn型CZシリコンウェーハ(ドーパント:リン)を用意した。次いで、支持基板用シリコンウェーハをプラズマCVD装置に導入し、装置内の真空度を1×10-5Pa以下に保持した。そして、ステージ温度を800℃に維持した状態で、ソースガスとしてシランガス(CHSiH)を55sccm、キャリアガスとしてHガスを110sccm流して、プラズマCVD法により支持基板用シリコンウェーハの表面に膜厚15nmの多結晶シリコン層を形成した。
【0064】
そして、単結晶シリコン層用シリコンウェーハをファーネス炉で酸素雰囲気下1000℃に維持した状態で1時間保持し、単結晶シリコン層用シリコンウェーハの表面に50nmのシリコン酸化膜を形成した。
【0065】
次いで、支持基板用シリコンウェーハ及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハの両方をファーネス炉に導入し、このとき、支持基板用シリコンウェーハ110と単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120とをそれぞれアモルファスシリコン層131及びシリコン酸化膜140を介して貼り合わせるよう重ね合わせた。そして、酸素雰囲気下で接合熱温度を600℃として1時間保持することで両ウェーハを貼り合わせて接合した。
【0066】
最後に、単結晶シリコン層用シリコンウェーハの厚みを10μm残すよう、貼り合せ面とは反対側から、研削及び研磨を行い、接合シリコンウェーハを得た。
【0067】
こうして得られた接合シリコンウェーハの接合界面をTEM観察したところ、15nmの厚みの多結晶シリコンが形成されていることが確認できた。
【0068】
(発明例2-2)
発明例2-1では支持基板用シリコンウェーハの表面に、プラズマCVD法により、膜厚15nmの多結晶シリコン層を形成していたところ、発明例2-2においては、膜厚20nmの多結晶シリコン層を形成した以外は、発明例2-1と同じ条件で発明例2-2に係る接合シリコンウェーハを作製した。
【0069】
(発明例2-3)
発明例2-1では支持基板用シリコンウェーハの表面に、プラズマCVD法により、膜厚15nmの多結晶シリコン層を形成していたところ、発明例2-3においては、膜厚25nmの多結晶シリコン層を形成した以外は、発明例2-1と同じ条件で発明例2-3に係る接合シリコンウェーハを作製した。
【0070】
(発明例2-4)
発明例2-1では支持基板用シリコンウェーハの表面に、プラズマCVD法により、膜厚15nmの多結晶シリコン層を形成していたところ、発明例2-4においては、膜厚30nmの多結晶シリコン層を形成した以外は、発明例2-1と同じ条件で発明例2-4に係る接合シリコンウェーハを作製した。
【0071】
(比較例2)
発明例2-1では支持基板用シリコンウェーハの表面に、プラズマCVD法により、膜厚15nmの多結晶シリコン層を形成していたところ、比較例1においては、膜厚10nmの多結晶シリコン層を形成した以外は、発明例2-1と同じ条件で比較例2に係る接合シリコンウェーハを作製した。
【0072】
(評価:赤外線反射率の評価)
実験例2における赤外線反射率の評価は、実験例1と同様に、前述の膜厚測定装置を用いて赤外線反射率を求めた。なお、実験例2において反射光L2は接合シリコンウェーハ300の表面328Aで反射される反射光であり、反射光L3は単結晶シリコン層321とアモルファスシリコン及び多結晶シリコンから形成される領域330の界面からの反射光である。
【0073】
結果を下記表2に記載する。本評価結果から、発明例2-1から発明例2-4ではアモルファスシリコン及び多結晶シリコンから形成される領域が赤外反射膜として機能することが確認された一方、比較例2で形成されたアモルファスシリコン及び多結晶シリコンの領域では赤外反射膜として機能するには不十分であることが確認された。
【0074】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明によれば、
厚みが薄く、かつ、赤外線反射率が高い接合シリコンウェーハを得ることができる。
【符号の説明】
【0076】
1,2,100,200 接合シリコンウェーハ
10,110,210 支持基板用シリコンウェーハ
120,220 単結晶シリコン層用シリコンウェーハ
30,130,230 赤外反射シリコン膜
131,231 アモルファスシリコン層
35,235 多結晶シリコン層
図1A
図1B
図2
図3
図4