(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022849
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】蓋付きホッパー及び蓋構造
(51)【国際特許分類】
B65D 88/26 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
B65D88/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126248
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】細川 隼
【テーマコード(参考)】
3E170
【Fターム(参考)】
3E170AA15
3E170AB11
3E170GB05
3E170GB08
3E170GB20
3E170VA12
3E170VA15
3E170VA20
3E170WC15
3E170WD10
(57)【要約】
【課題】粉体充填袋内に収容される粉体をホッパーに導入する際の作業を簡単に行うことができ、しかも上記粉体の微粉の飛散を確実に防止し、さらに同粉体の粒度分布を維持しながら下流側の設備にこの粉体を供給することができる蓋付きホッパーを提供する。
【解決手段】粉体充填袋より粉体9を導入する開口2aを上部に有し、導入された粉体9を排出する粉体排出用配管3を下部2bに有するホッパー2と、開口2aに取設される蓋構造4aと、を備え、この蓋構造4aは、開口2aを塞ぐ遮蔽部5aと、平面方向に伸縮性を有し、遮蔽部5aの一部又は全部をなすシート部材6と、このシート部材6に形成される1以上のスリット7と、を備え、このスリット7の端縁同士は、接近又は接触又は重なり合っていることを特徴とする蓋付きホッパー1Aによる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体充填袋より粉体を導入する開口を上部に有し、導入された前記粉体を排出する粉体排出用配管を下部に有するホッパーと、
前記開口に取設される蓋構造と、を備え、
前記蓋構造は、
前記開口を塞ぐ遮蔽部と、
平面方向に伸縮性を有し、前記遮蔽部の一部又は全部をなすシート部材と、
前記シート部材に形成される1以上のスリットと、を備え、
前記スリットの端縁同士は、接近又は接触又は重なり合っていることを特徴とする蓋付きホッパー。
【請求項2】
前記粉体排出用配管に接続され、前記ホッパーから吸引される前記粉体を下流側の設備に空送する送給配管を備えていることを特徴とする請求項1に記載の蓋付きホッパー。
【請求項3】
粉体充填袋より粉体が導入されるホッパー上部の開口に取設される蓋構造であって、
前記開口を塞ぐ遮蔽部と、
平面方向に伸縮性を有し、前記遮蔽部の一部又は全部をなすシート部材と、
前記シート部材に形成される1以上のスリットと、を備え、
前記スリットの端縁同士は、接近又は接触又は重なり合ってなり、
前記スリットは、前記端縁間が前記粉体充填袋の挿入により押し広げられて前記粉体の導入口を形成するように成したことを特徴とする蓋構造。
【請求項4】
前記シート部材は、ゴム製又はシリコン製であることを特徴とする請求項3に記載の蓋構造。
【請求項5】
前記開口に取設される支持枠を備え、
前記遮蔽部は、前記支持枠に設けられていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の蓋構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体充填袋内に収容される粉体をホッパーに導入する際の作業を簡単に行うことができ、しかも上記粉体の微粉の飛散を確実に防止し、さらに同粉体の粒度分布を維持しながら下流側の設備にこの粉体を供給することができる蓋付きホッパー及びそれに用いられる蓋構造に関する。
【0002】
従来、例えば工業用セラミック製品の製造時や、その原料である粉体材料の製造時等に、ホッパーにより原料である粉体がそれぞれの製造ラインに供給される。
また、工業用セラミック製品や、その粉体材料の品質(例えば熱伝導率等)に影響を与える要因の1つとして、原料である粉体の粒度分布が挙げられる。
このため、原料である粉体は、その粒度分布が所望に調整された状態で粉体充填袋に充填されて提供される。
他方、上記ホッパーに粉体充填袋内に収容された粉体を目的とする設備に供給する場合は、粉体充填袋を開封して、ホッパーの上部にある開口から粉体を導入するのであるが、この時粉立ちして、特に粒径が小さい粉体がホッパー外に飛散するという現象が生じる。そして、そのせいでホッパーの下流側の設備に供給される粉体の粒度分布が当初粉体充填袋内に充填されていた時のものから変わってしまい、最終製品の品質に影響を及ぼすという課題が生じていた。
上述のような粉体の飛散という課題に対処するため、例えば以下に示すような技術が知られている。
【0003】
特許文献1には「飛散防止構造を有する粉砕機のホッパー」という名称で、合成樹脂の原材料等を粉砕する粉砕機のホッパーにおける原材料の外部への飛散防止構造に関する考案が開示されている。
特許文献1に開示される考案である「飛散防止構造を有する粉砕機のホッパー」は、合成樹脂原材料等を粉砕する粉砕機のホッパーに於いて、ホッパー内に懸垂する原材料投入用の開閉蓋を、粉砕原材料等の流路に対して挟む如く、その一方側にホッパーの内周壁面に対して所要に応じて選択的に適度の角度を有する第1の飛散防止片を固着すると共に、他方側に第2の飛散防止片を固着したことを特徴とする。
上述のような特許文献1に開示される考案によれば、ホッパー外部への原材料等の飛散を完全に防止できるので、省資源化を達成できると同時に、清潔な作業環境及び作業者の健康管理に寄与できるという効果を奏する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1に開示される考案によれば、粉砕機(1)の稼働時に、粉砕機から生じる原材料の粉末がホッパー(2)上部の開口(原材料投入口(2a))から漏れ出るのを防止できると考えられる。
その一方で、特許文献1に開示されるホッパー(2)を、例えば工業用セラミック製品の製造ラインや、その原料である粉体材料の製造ライン等において、原料である粉体を供給するホッパーとして用いる場合は、特許文献1に開示されるホッパー(2)の原材料投入口(2a)に、粉体充填袋の粉体導入口が形成される側を挿入してホッパー(2)内に粉体を供給することになる。
この場合、原材料投入口(2a)の近傍に設けられる開閉蓋(3)により粉体充填袋から投入される粉体の周囲への飛散をある程度抑制できると考えられるものの、原材料投入口(2a)の内壁とそこに挿入される粉体充填袋の間に生じる隙間から粉体の漏出が起こると考えられる。
この場合、粒径の小さい粉体ほど周囲に飛散しやすいため、特許文献1に開示されるホッパー(2)の下流側に送給される粉体の粒度分布が、当初粉体充填袋に収容されていた時の粉体の粒度分布から変わってしまうという不具合が生じる可能性が高いという課題があった。
【0006】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものでありその目的は、粉体充填袋内に収容される粉体の粒度分布を維持しながら下流側の設備に粉体を供給することができる蓋付きホッパー及びそれに用いられる蓋構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の発明である蓋付きホッパーは、粉体充填袋より粉体を導入する開口を上部に有し、導入された粉体を排出する粉体排出用配管を下部に有するホッパーと、開口に取設される蓋構造と、を備え、この蓋構造は、開口を塞ぐ遮蔽部と、平面方向に伸縮性を有し、遮蔽部の一部又は全部をなすシート部材と、このシート部材に形成される1以上のスリットと、を備え、スリットの端縁同士は、接近又は接触又は重なり合っていることを特徴とする。
上記構成の第1の発明において、ホッパーは、その上部に配される開口から粉体充填袋内に収容される粉体を受け入れてその粉体を収容するとともに、その下部側に設けられる粉体排出用配管に、ホッパーに収容された粉体を排出するという作用を有する。
また、遮蔽部はホッパーの開口を閉じて、この開口から粉体の一部が飛散又は漏出して失われるのを防ぐという作用を有する。さらに、遮蔽部の少なくとも一部をなすシート部材はその伸縮性により、このシート部材に形成されるスリットを所望に開閉させるという作用を有する。
そして、粉体充填袋内に収容される粉体をホッパーに供給しない場合、つまりシート部材に形成されるスリットが閉じている場合は、スリットからホッパー内に収容される粉体の一部がホッパーの外に飛散又は漏出するのを防ぐという作用を有する。つまり、ホッパーの開口は、遮蔽部により閉じられた状態になる。
また、シート部材に形成されるスリットは、粉体を収容する粉体充填袋によりシート部材の平面方向に押し広げられることで、粉体充填袋内の粉体をホッパー内に導き入れる導入口として作用する。
この場合は、シート部材の伸縮性により、粉体充填袋の嵌入に伴って開いたスリット(導入口)の端縁やその近傍が、粉体充填袋の外側面に密着してスリットが塞がれた状態になる。これにより、粉体充填袋内に収容される粉体をホッパーに導入している最中もホッパーの導入口(開いた状態のスリット)からホッパー内の微粉がホッパーの外に飛散することが好適に抑制される。
したがって、上述のような第1の発明では、ホッパー上部の開口が、遮蔽部により、又は遮蔽部と粉体充填袋の組み合わせにより、常時閉じられているので、粉体充填袋からホッパーに導出される粉体の一部がホッパーの外に飛散して遺失するのを防ぐという作用を有する。
なお、ここでいう「ホッパーの開口が閉じられている」とは、ホッパーの開口に遮蔽部を取設するために必要な隙間や、設計上又は製造上の誤差及び必要なクリアランス、並びに上記隙間やクリアランスから僅かに粉体がホッパーの外に漏れ出ることは許容され、「ホッパーの開口から実質的に粉体の漏出が起こらない」という意味である。
【0008】
第2の発明は、上述の第1の発明であって、粉体排出用配管に接続され、ホッパーから吸引される粉体を下流側の設備に空送する送給配管を備えていることを特徴とする。
上記構成の第2の発明は、上述の第1の発明による作用と同じ作用を有する。さらに、第2の発明は、送給配管を備えるとともに、この送給配管に対してホッパーから粉体が吸引されて供給されることで、ホッパー内に収容される粉体のうち特に粒径が小さくて空気中に浮遊し易い粉体についても確実に送給配管に送給できる。
よって、第2の発明によれば、蓋付きホッパーの下流側の設備に対して、ホッパー内に収容される粉体の粒度分布を維持しながら粉体を供給するという作用を有する。
また、第2の発明では、送給配管との接続によりホッパー内が減圧状態になる。これにより、蓋構造自体に、あるいは蓋構造とホッパー上部の開口の間に、多少の隙間が存在したとしても、ホッパー内の気相部に浮遊している粉体が、これら隙間からがホッパーの外に漏れ出ることはない。つまり、ホッパー内が減圧状態である場合は、上記隙間において外部からホッパー内に向かう空気の流れが生じるため、上記隙間から粉体が外部に漏れ出ることが好適に抑制される。
【0009】
第3の発明である蓋構造は、上述の第1の発明における蓋構造を物の発明として特定したものである。
より詳細には第3の発明は、粉体充填袋より粉体が導入されるホッパー上部の開口に取設される蓋構造であって、開口を塞ぐ遮蔽部と、平面方向に伸縮性を有し、遮蔽部の一部又は全部をなすシート部材と、シート部材に形成される1以上のスリットと、を備え、スリットの端縁同士は、接近又は接触又は重なり合ってなり、スリットは、その端縁間が粉体充填袋の挿入により押し広げられて粉体の導入口を形成するように成したことを特徴とする。
よって、第3の発明による作用は、上述の第1の発明における蓋構造が奏する作用と同じである。
【0010】
第4の発明は、上述の第3の発明であって、シート部材は、ゴム製又はシリコン製であることを特徴とする。
上記構成の第4の発明は、上述の第3の発明において伸縮性を有するシート部材の好ましい材質として、ゴム製又はシリコン製であることを具体的に特定したものである。よって、第4の発明は、上述の第3の発明による作用と同じ作用を有する。
【0011】
第5の発明は、上述の第3又は第4の発明であって、開口に取設される支持枠を備え、遮蔽部は、支持枠に設けられていることを特徴とする。
上記構成の第5の発明は、上述の第3又は第4の発明による作用と同じ作用を有する。さらに、第5の発明では、蓋構造が支持枠を備えるとともに、この支持枠に遮蔽部が設けられることで、支持枠を介してホッパーの開口に間接的に遮蔽部を取設することが可能になる。
この場合、ホッパーの開口に直接遮蔽部を取設する場合に比べて、ホッパーの開口への遮蔽部の着脱を確実かつ容易にするという作用を有する。
【発明の効果】
【0012】
上述のような第1の発明によれば、粉体充填袋に収容されている粉体をホッパー内に導入している時もそうでない時も、ホッパー上部の開口は本発明に係る蓋構造により、常にホッパー内の粉体の飛散が起こらない、閉じられた状態が実現される。
これにより、粉体充填袋内に収容されている粉体のうち、特に粒径が小さくて空気中に浮遊しやすい粉体が、ホッパー上部の開口からホッパーの外に飛散して、ホッパー内に導入された粉体の粒度分布が変化してしまうのを好適に防ぐことができる。
このため、第1の発明である蓋付きホッパーを用いて、例えば工業用セラミック製品の製造ラインや、その原料である粉体材料の製造ライン等に原料である粉体を供給する場合に、最終製品の品質(例えば熱伝導率等)の管理を高精度に行うことができる。
【0013】
第2の発明では、蓋付きホッパーが、ホッパーから導入(吸引)される粉体を下流側に空送(空気輸送)する送給配管を備えていることで、ホッパー内の気相部は減圧される。そして、この状態は、ホッパー内の気相部に浮遊している粉体が、蓋構造自体に生じる隙間、あるいはホッパー上部の開口と蓋構造の隙間、から外部に飛散するのを防止するのに好都合である。
よって、第2の発明によれば、上述の第1の発明による効果をより確実に発揮させることができる。
【0014】
第3の発明は、先にも述べたように上述の第1の発明における蓋構造を抽出して物の発明として特定したものである。
よって、第3の発明によれば、第1の発明における蓋構造による効果と同じ効果を奏する。
【0015】
第4の発明は、上述の第3の発明による効果と同じ効果を奏する。
【0016】
第5の発明は、上述の第3又は第4の発明による効果と同じ効果を奏する。さらに、第5の発明によれば、ホッパー上部の開口に対する蓋構造の着脱作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係る蓋付きホッパーの一部を欠いて示す側面図である。
【
図2】(a)本実施形態に係る蓋付きホッパーにおけるスリットの端縁同士が接近した状態を示す部分断面図であり、(b)同スリットの端縁同士が接触した状態の部分断面図であり、(c)同スリットの端縁同士が重なり合った状態を示す部分断面図である。
【
図3】本実施形態に係る蓋付きホッパーに粉体を導入している状態の側面図である。
【
図4】本実施形態に係る蓋付きホッパーに粉体を導入している様子を発明品の一部を欠いた状態で示す側面図である。
【
図5】(a)本実施形態に係る蓋付きホッパーの遮蔽部の平面図であり、(b)同遮蔽部のスリットに粉体の導入口が形成されている状態の平面図である。
【
図6】本実施形態に係る蓋付きホッパーの遮蔽部の変形例を示す平面図である
【
図7】本実施形態の他の変形例に係る蓋付きホッパーに粉体を導入している様子を発明品の一部を欠いた状態で示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係る蓋付きホッパー及びその蓋構造について
図1乃至
図7を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
[1:蓋付きホッパー(及び蓋構造)の基本構成について]
まず、
図1及び
図2を参照しながら本発明の実施形態(以下、本実施形態という)に係る蓋付きホッパー1Aの構造について説明する。
図1は本実施形態に係る蓋付きホッパーの一部を欠いて示す側面図である。また、
図2(a)は本実施形態に係る蓋付きホッパーにおけるスリットの端縁同士が接近した状態を示す部分断面図であり、(b)は同スリットの端縁同士が接触した状態の部分断面図であり、(c)は同スリットの端縁同士が重なり合った状態を示す部分断面図である。
本実施形態に係る蓋付きホッパー1Aは、
図1に示すように、図示していない粉体充填袋より粉体を導入する開口2aを上部に有し、導入された粉体9を排出する粉体排出用配管3を下部2bに有するホッパー2と、このホッパー2の開口2aに取設される蓋構造4aを備えてなるものである。
また、この蓋構造4aは、
図1に示すように、例えばホッパー2の開口2aを塞ぐ遮蔽部5aと、この遮蔽部5aの一部をなしかつ平面方向に伸縮性を有するシート部材6と、このシート部材6に形成されるスリット7により構成されている。
【0020】
さらに、
図1では、遮蔽部5aをなすシート部材6に1のスリット7が形成されている場合を例に挙げて説明しているが、このスリット7の数は1以上でもよい。
なお、シート部材6に1以上のスリット7を備える場合については、後段において
図6及び
図7を参照しながら説明する。
【0021】
また、本実施形態に係る蓋構造4aにおけるスリット7は、例えば
図2(a)に示すようにシート部材6の端縁6a同士が接近していてもよいし、
図2(b)に示すように端縁6a同士が互いに接触していてもよいし、あるいは
図2(c)に示すように端縁6a同士が互いに重なり合っていてもよい。
いずれの場合も、遮蔽部5aに形成されるスリット7が閉じた状態であり、このスリット7からホッパー2の外に浮遊粉体9aが積極的に出ていかない状態である。
【0022】
そして、上述のような本実施形態に係る蓋付きホッパー1Aでは、ホッパー2の上部に配される開口2aが、蓋構造4aをなす遮蔽部5aにより閉じられている。
なお、ここでいう「ホッパー2の開口2aが閉じられている」とは、ホッパー2の開口に蓋構造4a(より詳細には遮蔽部5a)を取設するために必要な隙間や、設計上又は製造上の誤差及び必要なクリアランス、並びに上記隙間やクリアランスから僅かに粉体9(特に浮遊粉体9a)がホッパー2の外に漏れ出ることは許容され、「ホッパー2の開口2aから実質的に粉体9の漏出が起こらない」という意味である。
【0023】
また、本実施形態に係る蓋構造は、上述のような本実施形態に係る蓋付きホッパー1Aに用いられる蓋構造4aを物の発明として捉えたものであり、その構造は上述の蓋構造4aと同じである。
【0024】
[2:蓋付きホッパー(及び蓋構造)の使用方法について]
続いて、
図3乃至
図5を参照しながら本実施形態に係る蓋付きホッパー1A(及び蓋構造4a)の使用方法について説明する。
図3は本実施形態に係る蓋付きホッパーに粉体を導入している状態の側面図である。
図4は同蓋付きホッパーに粉体を導入している様子を発明品の一部を欠いた状態で示す側面図である。なお、
図4は
図3中の符号Xで示す方向から見た図である。また、
図5(a)は本実施形態に係る蓋付きホッパーの遮蔽部の平面図であり、(b)は同遮蔽部のスリットに粉体の導入口が形成されている状態の平面図である。なお、
図1及び
図2に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
本実施形態に係る蓋付きホッパー1Aに、粉体充填袋10内に充填される粉体9を供給するには、まず、粉体9が充填された粉体充填袋10の角部付近を切除する又は切れ目を入れるなどして粉体充填袋10を開封する(ステップS0)。つまり、このステップS0は、粉体充填袋10に粉体導出口10aを形成する工程である。
【0025】
次に、粉体充填袋10において粉体導出口10aが形成される部分を、
図5(a)に示す遮蔽部5aのスリット7に押し込んで(嵌入して)、粉体充填袋10の粉体導出口10aをホッパー2の中空部内に配置する(ステップS1)。
そして、この動作に伴い
図3に示すように、ホッパー2の中空部内に配された粉体充填袋10の粉体導出口10aから粉体9がホッパー2内に導出される(ステップS2)。
【0026】
この時、
図4及び
図5(b)に示すように、スリット7をなすシート部材6の端縁6a同士が粉体充填袋10により押し広げられて粉体導入口11が形成される。
この時、シート部材6が平面方向に伸縮性を有していることで、シート部材6の端縁6aは、粉体充填袋10の外側面の形状に沿うように押し広げられる。
つまり、粉体充填袋10の嵌入により押し広げられたシート部材6の端縁6a又はその近傍は、シート部材6自体の伸縮性によって粉体充填袋10の外側面に密着した状態になる。
これにより、
図4及び
図5(b)に示すように、ステップS2においても、スリット7と粉体充填袋10との隙間が塞がった状態が維持される。
このように、本実施形態に係る蓋付きホッパー1Aでは、粉体充填袋10内に収容される粉体9をホッパー2の中空部内に供給している最中も、遮蔽部5aによりホッパー2の開口2aが閉じられた状態になる。より詳細には、ホッパー2の開口2aが、遮蔽部5aと粉体充填袋10の組み合わせにより閉じた状態になる。
【0027】
さらに、粉体充填袋10内に収容される粉体9がホッパー2内に導出された後は、スリット7に押し込まれた粉体充填袋10を抜き取ればよい(ステップS3)。
そして、この動作によりスリット7をなすシート部材6の端縁6a同士がシート部材6自体の復元力によって自動的に閉動して、再び
図5(a)に示すように閉じた状態になる。あるいは、先の
図2(a)に示すような端縁6a同士が接近した状態や、先の
図2(a)に示すような端縁6a同士が重なり合った状態になる(ステップS4)。
【0028】
[3:蓋付きホッパー(及び蓋構造)による作用・効果について]
そして、上述のような本実施形態に係る蓋付きホッパー1A(又は蓋構造4a)によれば、粉体充填袋10内に充填される粉体9をホッパー2内に導出している最中も、そうでない時もホッパー2の開口2aは常時閉じられているので、ホッパー2内の粉体9(特に空気中に浮遊する浮遊粉体9a)がホッパー2の外に飛散するのを好適に防ぐことができる。
この結果、本実施形態に係る蓋付きホッパー1A(又は蓋構造4a)によれば、ホッパー2内に導入される粉体9の粒度分布が、当初粉体充填袋10に収容されていた時の粉体9の粒度分布から変わるのを好適に防ぐことができる(効果A)。
つまり、本実施形態に係る蓋付きホッパー1A(又は蓋構造4a)によれば、粉体充填袋10内に充填される粉体9の粒度分布を極力維持しながら、蓋付きホッパー1Aの下流側の設備に粉体9を送給することができる。
この場合、本実施形態に係る蓋付きホッパー1A(又は蓋構造4a)を、例えば工業用セラミック製品の製造ラインや、その原料である粉体材料の製造ライン等において、原料である粉体9を供給するためのホッパーとして使用した際に、最終製品の品質(例えば熱伝導率等)の管理を容易にかつ高精度に行うことができる(効果B)。
なお、最終製品が例えば工業用セラミック製品である場合、その熱伝導率に影響を及ぼす因子は、粉体9の粒度分布だけではないが、粉体9の粒度分布は要因の一つである。
【0029】
また、本実施形態に係る蓋付きホッパー1A(又は蓋構造4a)による副次的な効果として、蓋付きホッパー1Aの周囲に粉体9(特に浮遊粉体9a)が飛散しないので周辺環境の汚損を防止できるとともに、粉体充填袋10からホッパー2に粉体9を移す作業を簡便化することができる(効果C)。
【0030】
さらに、本実施形態に係る蓋構造4aによれば、開口が開放されている既存のホッパーに本実施形態に係る蓋構造4aを付加するだけで、既存のホッパーを本実施形態に係る蓋付きホッパー1Aとして使用することができる。
この場合、例えば既存の工業用セラミック製品の製造ラインや、その原料である粉体材料の既存製造ライン等をそのまま使用しながら、最終製品の品質(例えば熱伝導率等)のばらつきを一層抑制することが可能になり、これにより高品質な製品を容易に製造することが可能になる。
【0031】
[4:本発明の基本構成の細部構造等について]
<4-1:送給配管について>
先の
図1及び
図4に示すように、本実施形態に係る蓋付きホッパー1Aは、粉体排出用配管3に接続されるとともに、ホッパー2から吸引される粉体9を図示しない下流側の設備に空送する送給配管8を備えていてもよい。
本実施形態に係る蓋付きホッパー1Aが、ホッパー2から導入(吸引)される粉体9を下流側に空送する送給配管8を備えている場合は、ホッパー2内の気相部が減圧される。そして、この状態は、ホッパー2内の気相部に浮遊している浮遊粉体9aが、蓋構造4a自体の隙間や、ホッパー2の開口2aと蓋構造4aとの隙間、から外部に漏れ出るのを防止するのに好都合である。
しかも、ホッパー2から粉体9が吸引されて送給配管8に送給されることで、粉体9のうち粒径が特に小さくて空気中に浮遊し易いもの(例えば浮遊粉体9a)についても確実にホッパー2から送給配管8に送給することができる。
この結果、ホッパー2から送給配管8に対して、例えばスクリューフィーダ等の機械的手段を用いて粉体9を送給する場合と比較して、蓋付きホッパー1Aの下流側に送給される粉体9の粒度分布が、当初粉体充填袋10内に収容されていた時の粉体9の粒度分布から変わってしまうのを一層効果的に防ぐことができる。つまり、上述の効果A及び効果Bが顕著に発揮される。
【0032】
<4-2:シート部材の材質等について>
また、本実施形態に係る蓋付きホッパー1A(又は蓋構造4a)におけるシート部材6の材質をゴム製又はシリコン製としてもよい。
この場合、蓋構造4aの構造をシンプルにでき、しかもその製造に要するコストも廉価にできる。この結果、本実施形態に係る蓋付きホッパー1Aの設置に要する設備投資についても廉価にできる。
また、本実施形態に係る蓋付きホッパー1Aでは、ホッパー2の開口2aの直径として50~200cm程度を想定している。また、粉体9が充填される粉体充填袋10のサイズは、幅30~90cm、長さ60~150cm程度である。
この場合、本実施形態に係る蓋構造4aにおいてゴム製又はシリコン製のシート部材6の厚みを2~5mmの範囲内に設定しておくことが好ましい。
この理由として、ゴム製又はシリコン製のシート部材6の厚みが2mmを下回る場合はシート部材6が破損しやすくなる。他方、シート部材6の厚みが5mmを超えて厚いと、スリット7に粉体充填袋10の粉体導出口10aが形成される側を押入した際にスリット7がスムーズに開かない、あるいはスリット7に粉体充填袋10を嵌入できたとしてもスリット7が閉じようとする力が大きくて、粉体導入口11を開いたままにしておくことが難しくなり、そのせいで粉体充填袋10内の粉体9をスムーズにホッパー2内に導出できない等の不具合が起こりやすくなる。
【0033】
<4-3:蓋構造の細部構造について>
さらに、本実施形態に係る蓋付きホッパー1A(又は蓋構造4a)では、
図1、3、4及び
図5に示すように、遮蔽部5aは、例えば樹脂製又は金属製で、かつ粉体9が充填された粉体充填袋10の荷重が作用しても容易に破損又は変形しない支持部材12を備えていてもよい。
より具体的には、本実施形態に係る蓋付きホッパー1Aを、ホッパー2の開口2a寄りに配される支持部材12と、この支持部材12の中央部に形成される孔12aを塞ぐように設けられるシート部材6と、このシート部材6に形成される1以上のスリット7により構成してもよい。
この場合は、ホッパー2の開口2aの直径が、粉体充填袋10のサイズに対して大幅に大きい場合で、かつ蓋構造4aのスリット7に粉体充填袋10の粉体導出口10aが形成される側を挿入してホッパー2内に粉体9を供給する場合に、粉体充填袋10の荷重を支持部材12の内縁(孔12aの縁部)で支持することができる。
この場合、粉体充填袋10内に収容される粉体9がホッパー2内に導出されるまでの間作業者が粉体充填袋10を自らの手で保持しておく必要がない。
この結果、本実施形態に係る蓋付きホッパー1Aに、粉体充填袋10に収容される粉体9を補充する作業を行う際の作業者の身体的な負担を軽減することができ、これにより作業効率を向上させることができる。
【0034】
<4-4:蓋構造の変形例について>
ここで、
図6を参照しながら本実施形態に係る蓋付きホッパーにおける蓋構造の変形例について説明する。
図6は本実施形態に係る蓋付きホッパーの遮蔽部の変形例を示す平面図である。なお、
図1乃至
図5に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
本実施形態の変形例に係る蓋付きホッパー1A’は、例えば
図6に示すような蓋構造4bを備えてなるものでもよい。
より具体的には、本実施形態の変形例に係る蓋構造4bは、例えば
図6に示すように、シート部材6に2以上のスリット7を備えていてもよい。また、この場合、スリット7同士は
図6に示すように互いに並設されてもよい。
そして、上述のような蓋構造4bでは、粉体充填袋10の粉体導出口10aが形成される側を遮蔽部5bに押し付けるだけで、最寄りのスリット7が押し広げられて粉体充填袋10の粉体導出口10aがホッパー2の中空部内に導き入れられる。
つまり、シート部材6がスリット7を1のみ備える蓋構造4aと比較して、蓋構造4bでは、粉体充填袋10の粉体導出口10aをホッパー2の中空部側に導入し易くすることができる(効果D)。
また、
図6に示すような遮蔽部5bを有する蓋構造4bを用いる場合は、スリット7同士の間隔を適宜調整することで複数の粉体充填袋10から同時にホッパー2に対して粉体9を供給することもできる(効果E)。
よって、上述のような遮蔽部5bを備える蓋構造4bを用いる場合は(又はこのような蓋構造4bを備える蓋付きホッパー1A’によれば)、上記効果Dや効果Eが発揮されるので、ホッパー2内に粉体9を補充する作業をより効率的に行うことができる(効果F)。
【0035】
さらに、変形例に係る蓋構造4bは、
図6に示すように、ホッパー2の開口2aを塞ぐ遮蔽部5bの大部分をシート部材6により構成してもよい。なお、この場合、シート部材6に形成されるスリット7の数は、
図6に示すように複数でもよいし、先の
図5(a)、(b)等に示すように単数でもよい。
より具体的には、粉体充填袋10の粉体導出口10aが形成される側を蓋構造4bのスリット7に押し込んだ際に、粉体充填袋10の荷重をホッパー2の開口2aで支えることができる場合、つまりホッパー2の開口2aの直径が粉体充填袋10のサイズに対してさほど大きくない場合は、
図6に示すようにホッパー2の開口2aのほぼ全域をシート部材6のみにより遮蔽してもよい。
この場合、支持部材12は主にシート部材6の支持部材として機能し、ホッパー2の開口2aへのシート部材6の着脱を容易にするという効果(効果G)を奏する。
また、上記以外の蓋構造4bによる効果については、先の蓋構造4aによる作用・効果と同じである。
【0036】
<4-5:蓋構造の他の変形例について>
続いて、
図7を参照しながら本実施形態に係る蓋付きホッパーにおける蓋構造の他の変形例について説明する。
図7は本実施形態の他の変形例に係る蓋付きホッパーに粉体を導入している様子を発明品の一部を欠いた状態で示す側面図である。なお、
図1乃至
図6に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
本実施形態の他の変形例に係る蓋構造4c(及び蓋付きホッパー1B)は、ホッパー2の開口2aに取設される支持枠13を備え、この支持枠13に遮蔽部5cを備えてなるものである。
なお、
図7では遮蔽部5cの全てをシート部材6により構成するとともに、このシート部材6に2以上のスリット7を形成する場合を例に挙げて説明しているが、ホッパー2の開口2aの直径が粉体充填袋10のサイズに対して大きい場合、遮蔽部5cを、先の
図1、3、4及び
図5に示すような支持部材12とシート部材6の組み合わせにより構成してもよいし、スリット7の数を単数としてもよい。
さらに、他の変形例に係る蓋構造4cの遮蔽部5cが支持部材12を備える場合は、支持部材12と支持枠13を一体に構成してもよい。
【0037】
そして、
図7に示すような他の変形例に係る蓋構造4c及びそれを備えてなる蓋付きホッパー1Bによれば、支持枠13を備えていることでホッパー2の開口2aへの遮蔽部5cの着脱を確実かつ容易にできる(効果G)。
【0038】
<4-6:その他>
上述のような本実施形態に係る蓋構造4a~4cでは、スリット7の形成位置が容易に識別できない場合が想定される。
このため、スリット7を構成するシート部材6の端縁6aは、この端縁6aに沿ってスリット7の形成位置を識別可能にする目印(着色領域等)を備えていてもよい。
この場合、作業者は遮蔽部5a~5cを一見するだけでスリット7の形成位置及びその向きを認識することができるので、粉体充填袋10の粉体導出口10aが形成される側をスリット7に挿入する作業をスムーズに行うことができる。
【0039】
また、本実施形態に係る蓋構造4a~4cでは、シート部材6を単層とする場合を例に挙げて説明しているが、シート部材6として例えばゴム製又はシリコン製のシート材を使用する場合は、ホッパー2への粉体9の補充作業中にシート部材6が破損してしまい、ホッパー2の開口2aを遮蔽する効果が十分に発揮されなくなる懸念がある。
このような事情に対処するため、例えば遮蔽部5a~5cを構成するシート部材6を複数層設けるとともに、それぞれの層に形成されるスリット7を、ホッパー2の開口2aを透視した際に互いに符合するよう配置しておいてもよい。
この場合は、スリット7への粉体充填袋10の挿脱時に、シート部材6が万一破損した場合でも、ホッパー2内の粉体9(特に浮遊粉体9a)の一部がホッパー2の外に飛散してしまうのを好適に防ぐことができる。
【0040】
さらに、本実施形態では支持部材12の内縁(孔12aの縁部)や、支持枠13の内縁の平面形状が円形である場合を例に挙げて説明しているが、これらの平面形状は必ずしも円形である必要はなく、円形以外の任意の形状でもよい。
より具体的には、粉体充填袋10の粉体導出口10aが形成される側をスリット7に挿入した際に、粉体充填袋10の荷重を支える部分を、粉体充填袋10の外形に沿った形状、例えば長楕円形状にしてもよい。
この場合、粉体充填袋10の粉体導出口10aが形成される側をスリット7に挿入した際に、蓋構造4a~4cと粉体充填袋10との間に生じる隙間を極力小さくすることができ、これによりホッパー2からの粉体9(特に浮遊粉体9a)の漏出を一層確実に防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上説明したように本発明は、粉体充填袋内に収容される粉体をホッパーに導入する際の作業を簡単に行うことができ、しかも上記粉体の微粉の飛散を確実に防止し、さらに同粉体の粒度分布を維持しながら下流側の設備にこの粉体を供給することができる蓋付きホッパー及びそれに用いられる蓋構造であり、例えば工業用セラミック製品の製造時や、その原料である粉体材料の製造時等に用いられる製造設備に関する技術分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1A、1A’、1B…蓋付きホッパー 2…ホッパー 2a…開口 2b…下部 3…粉体排出用配管 4a~4c…蓋構造 5a~5c…遮蔽部 6…シート部材 6a…端縁 7…スリット 8…送給配管 9…粉体 9a…浮遊粉体 10…粉体充填袋 10a…粉体導出口 11…粉体導入口 12…支持部材 12a…孔 13…支持枠