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特開2024-23008情報処理装置、推論装置、機械学習装置、基板めっき装置、情報処理方法、推論方法、及び、機械学習方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023008
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】情報処理装置、推論装置、機械学習装置、基板めっき装置、情報処理方法、推論方法、及び、機械学習方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20240214BHJP
   C25D 21/10 20060101ALI20240214BHJP
   C25D 17/10 20060101ALI20240214BHJP
   C25D 19/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
C25D21/10 301
C25D17/10 Z
C25D19/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126524
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100214248
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 純
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】小泉 竜也
【テーマコード(参考)】
2G024
【Fターム(参考)】
2G024AD08
2G024BA27
2G024CA13
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】基板めっき装置の動作状態に応じてパドルの振動特性を適切に予測することを可能とする情報処理装置を提供する。
【解決手段】情報処理装置4は、基板めっき装置により行われる運転動作として、処理対象のパドルに対応する対象パドルの撹拌動作を示す対象パドル動作情報、めっき槽へのめっき液の供給動作を示すめっき液動作情報、及び、基板の搬送動作を示す搬送機動作情報を含む運転動作情報と、当該運転動作が行われたときの対象パドルの振動特性を示す運転動作時パドル振動情報とで構成されるめっき処理情報を取得する情報取得部400と、めっき処理情報と撹拌動作時パドル振動情報との相関関係を機械学習により学習させた学習モデル10に、情報取得部400により取得されためっき処理情報を入力することで、当該めっき処理情報に対する撹拌動作時パドル振動情報を生成する情報生成部401とを備える。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板のめっきに使用されるめっき液を貯留する1又は複数のめっき槽、前記めっき槽内に設置されて前記めっき液を撹拌する1又は複数のパドル、及び、前記めっき槽に前記基板を搬送する1又は複数の搬送機を備える基板めっき装置により行われる運転動作として、処理対象の前記パドルに対応する対象パドルの撹拌動作を示す対象パドル動作情報、前記めっき槽への前記めっき液の供給動作を示すめっき液動作情報、及び、前記基板の搬送動作を示す搬送機動作情報を含む運転動作情報と、当該運転動作が行われたときの前記対象パドルの振動特性を示す運転動作時パドル振動情報とで構成されるめっき処理情報を取得する情報取得部と、
前記めっき処理情報と、当該めっき処理情報を構成する前記運転動作情報のうち前記対象パドル動作情報が示す前記撹拌動作のみが行われたときの前記対象パドルの振動特性を示す撹拌動作時パドル振動情報との相関関係を機械学習により学習させた学習モデルに、前記情報取得部により取得された前記めっき処理情報を入力することで、当該めっき処理情報に対する前記撹拌動作時パドル振動情報を生成する情報生成部とを備える、
情報処理装置。
【請求項2】
前記対象パドル動作情報は、
前記対象パドルの動作速度、
前記対象パドルの動作周波数、及び、
前記対象パドルの動作ストロークの少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記めっき液動作情報は、
前記めっき槽に貯留された前記めっき液の液量、
前記めっき液を循環させる循環ポンプが動作中か否かを示す動作状態、及び、
前記循環ポンプの回転速度の少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記搬送機動作情報は、
前記搬送機が動作中か否かを示す動作状態、
前記搬送機の動作速度、
前記対象パドルに対する前記搬送機の位置、及び、
前記対象パドルと前記搬送機との距離、
の少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記基板めっき装置は、
複数の前記めっき槽として、前記対象パドルが設置された前記めっき槽に対応する対象めっき槽と、前記対象めっき槽の周囲に配置された前記めっき槽に対応する周囲めっき槽とを備えるとともに、
複数の前記パドルとして、前記対象パドルと、前記周囲めっき槽に設置された前記パドルに対応する周囲パドルとを備え、
前記運転動作情報は、
前記周囲パドルの撹拌動作を示す周囲パドル動作情報をさらに含む、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記周囲パドル動作情報は、
前記周囲パドルが動作中か否かを示す動作状態、
前記周囲パドルの動作速度、
前記周囲パドルの動作周波数、
前記周囲パドルの動作ストローク、及び、
前記対象パドルに対する前記周囲パドルの位相差の少なくとも1つを含む、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記運転動作情報は、
前記めっき槽及び前記パドルの配置に関する装置配置情報をさらに含み、
前記装置配置情報は、
前記対象パドルに対する前記周囲パドルの位置、
前記対象パドルと前記周囲パドルとの距離、
前記対象めっき槽に対する前記周囲めっき槽の位置、及び、
前記対象めっき槽と前記周囲めっき槽との距離の少なくとも1つを含む、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記運転動作情報は、
前記めっき槽内に設置されたアノード電極に関するアノード電極情報をさらに含み、
前記アノード電極情報は、
前記アノード電極の重量を少なくとも含む、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記情報生成部により生成された前記撹拌動作時パドル振動情報に基づいて、前記対象パドルの異常の発生状況を判定する異常判定部をさらに備える、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
メモリと、プロセッサとを備える推論装置であって、
前記プロセッサは、
基板のめっきに使用されるめっき液を貯留する1又は複数のめっき槽、前記めっき槽内に設置されて前記めっき液を撹拌する1又は複数のパドル、及び、前記めっき槽に前記基板を搬送する1又は複数の搬送機を備える基板めっき装置により行われる運転動作として、処理対象の前記パドルに対応する対象パドルの撹拌動作を示す対象パドル動作情報、前記めっき槽への前記めっき液の供給動作を示すめっき液動作情報、及び、前記基板の搬送動作を示す搬送機動作情報を含む運転動作情報と、当該運転動作が行われたときの前記対象パドルの振動特性を示す運転動作時パドル振動情報とで構成されるめっき処理情報を取得する情報取得処理と、
前記情報取得処理にて前記めっき処理情報を取得すると、当該めっき処理情報を構成する前記運転動作情報のうち前記対象パドル動作情報が示す前記撹拌動作のみが行われたときの前記対象パドルの振動特性を示す撹拌動作時パドル振動情報を推論する推論処理と、を実行する、
推論装置。
【請求項11】
基板のめっきに使用されるめっき液を貯留する1又は複数のめっき槽、前記めっき槽内に設置されて前記めっき液を撹拌する1又は複数のパドル、及び、前記めっき槽に前記基板を搬送する1又は複数の搬送機を備える基板めっき装置により行われる運転動作として、処理対象の前記パドルに対応する対象パドルの撹拌動作を示す対象パドル動作情報、前記めっき槽への前記めっき液の供給動作を示すめっき液動作情報、及び、前記基板の搬送動作を示す搬送機動作情報を含む運転動作情報と、当該運転動作が行われたときの前記対象パドルの振動特性を示す運転動作時パドル振動情報とで構成されるめっき処理情報と、当該めっき処理情報を構成する前記運転動作情報のうち前記対象パドル動作情報が示す前記撹拌動作のみが行われたときの前記対象パドルの振動特性を示す撹拌動作時パドル振動
情報とからなる学習用データを複数組記憶する学習用データ記憶部と、
複数組の前記学習用データを学習モデルに入力することで、前記めっき処理情報と前記撹拌動作時パドル振動情報との相関関係を機械学習により前記学習モデルに学習させる機械学習部と、
前記機械学習部により前記相関関係を学習させた前記学習モデルを記憶する学習済みモデル記憶部と、を備える、
機械学習装置。
【請求項12】
前記運転動作を行う前記基板めっき装置であって、
請求項1に記載の情報処理装置、及び、
請求項11に記載の機械学習装置のうち、少なくとも一方の装置として動作する、
基板めっき装置。
【請求項13】
基板のめっきに使用されるめっき液を貯留する1又は複数のめっき槽、前記めっき槽内に設置されて前記めっき液を撹拌する1又は複数のパドル、及び、前記めっき槽に前記基板を搬送する1又は複数の搬送機を備える基板めっき装置により行われる運転動作として、処理対象の前記パドルに対応する対象パドルの撹拌動作を示す対象パドル動作情報、前記めっき槽への前記めっき液の供給動作を示すめっき液動作情報、及び、前記基板の搬送動作を示す搬送機動作情報を含む運転動作情報と、当該運転動作が行われたときの前記対象パドルの振動特性を示す運転動作時パドル振動情報とで構成されるめっき処理情報を取得する情報取得工程と、
前記めっき処理情報と、当該めっき処理情報を構成する前記運転動作情報のうち前記対象パドル動作情報が示す前記撹拌動作のみが行われたときの前記対象パドルの振動特性を示す撹拌動作時パドル振動情報との相関関係を機械学習により学習させた学習モデルに、前記情報取得工程により取得された前記めっき処理情報を入力することで、当該めっき処理情報に対する前記撹拌動作時パドル振動情報を生成する情報生成工程とを備える、
情報処理方法。
【請求項14】
メモリと、プロセッサとを備える推論装置により実行される推論方法であって、
前記プロセッサは、
基板のめっきに使用されるめっき液を貯留する1又は複数のめっき槽、前記めっき槽内に設置されて前記めっき液を撹拌する1又は複数のパドル、及び、前記めっき槽に前記基板を搬送する1又は複数の搬送機を備える基板めっき装置により行われる運転動作として、処理対象の前記パドルに対応する対象パドルの撹拌動作を示す対象パドル動作情報、前記めっき槽への前記めっき液の供給動作を示すめっき液動作情報、及び、前記基板の搬送動作を示す搬送機動作情報を含む運転動作情報と、当該運転動作が行われたときの前記対象パドルの振動特性を示す運転動作時パドル振動情報とで構成されるめっき処理情報を取得する情報取得処理と、
前記情報取得処理にて前記めっき処理情報を取得すると、当該めっき処理情報を構成する前記運転動作情報のうち前記対象パドル動作情報が示す前記撹拌動作のみが行われたときの前記対象パドルの振動特性を示す撹拌動作時パドル振動情報を推論する推論処理と、を実行する、
推論方法。
【請求項15】
基板のめっきに使用されるめっき液を貯留する1又は複数のめっき槽、前記めっき槽内に設置されて前記めっき液を撹拌する1又は複数のパドル、及び、前記めっき槽に前記基板を搬送する1又は複数の搬送機を備える基板めっき装置により行われる運転動作として、処理対象の前記パドルに対応する対象パドルの撹拌動作を示す対象パドル動作情報、前記めっき槽への前記めっき液の供給動作を示すめっき液動作情報、及び、前記基板の搬送動作を示す搬送機動作情報を含む運転動作情報と、当該運転動作が行われたときの前記対
象パドルの振動特性を示す運転動作時パドル振動情報とで構成されるめっき処理情報と、当該めっき処理情報を構成する前記運転動作情報のうち前記対象パドル動作情報が示す前記撹拌動作のみが行われたときの前記対象パドルの振動特性を示す撹拌動作時パドル振動情報とからなる学習用データを学習用データ記憶部に複数組記憶する学習用データ記憶工程と、
複数組の前記学習用データを学習モデルに入力することで、前記めっき処理情報と前記撹拌動作時パドル振動情報との相関関係を機械学習により前記学習モデルに学習させる機械学習工程と、
前記機械学習工程により前記相関関係を学習させた前記学習モデルを学習済みモデル記憶部に記憶する学習済みモデル記憶工程と、を備える、
機械学習方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、推論装置、機械学習装置、基板めっき装置、情報処理方法、推論方法、及び、機械学習方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に対して所定のめっき膜を形成する基板めっき装置では、めっき槽に貯留されためっき液を撹拌する撹拌部(パドル)により、めっき液を揺動させながらめっき処理が行われる(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-152377号公報
【特許文献2】特開2009-299128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2に開示されたように、パドルを用いてめっき液を撹拌する場合、そのパドルを動作させるための構成部品として、動力伝達機構、動力変換機構等の機械部品や、モータ等の電気部品が用いられる。このような構成部品は、何らかの突発的な事象や経時的な劣化により、破損、破断、摩耗等の異常が発生することが想定されるため、パドルやその構成部品に対して異常の発生状況を監視することが望まれる。
【0005】
その際、例えば、振動を検出するセンサをパドルに取り付けて、そのセンサの検出値によりパドルやその構成部品における異常の発生状況を監視することが考えられる。しかしながら、基板めっき処理装置の運転動作において、めっき処理を行う場合、パドル以外にも、例えば、基板を搬送する搬送機、めっき液を循環するためのポンプ等の各部が、めっき処理の処理状況に応じて適宜動作されるため、それらの動作に起因する振動も上記のセンサにて検出される。その結果、センサの検出値には、各種のノイズが重畳して含まれることになり、センサの検出値を解析しても、ノイズの影響によりパドルの異常の発生状況を判定することが困難であった。また、各部の運転動作では、基板Wの搬送やめっき処理が次々に行われるので、各部が動作するときのタイミングや制御パラメータ(速度や位置関係等)が一定ではなく、ノイズの影響もその都度変動することから、センサの検出値からノイズだけを適切に除去することも困難であった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑み、基板めっき装置の動作状態に応じてパドルの振動特性を適切に予測することを可能とする情報処理装置、推論装置、機械学習装置、基板めっき装置、情報処理方法、推論方法、及び、機械学習方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る情報処理装置は、
基板のめっきに使用されるめっき液を貯留する1又は複数のめっき槽、前記めっき槽内に設置されて前記めっき液を撹拌する1又は複数のパドル、及び、前記めっき槽に前記基板を搬送する1又は複数の搬送機を備える基板めっき装置により行われる運転動作として、処理対象の前記パドルに対応する対象パドルの撹拌動作を示す対象パドル動作情報、前記めっき槽への前記めっき液の供給動作を示すめっき液動作情報、及び、前記基板の搬送動作を示す搬送機動作情報を含む運転動作情報と、当該運転動作が行われたときの前記対
象パドルの振動特性を示す運転動作時パドル振動情報とで構成されるめっき処理情報を取得する情報取得部と、
前記めっき処理情報と、当該めっき処理情報を構成する前記運転動作情報のうち前記対象パドル動作情報が示す前記撹拌動作のみが行われたときの前記対象パドルの振動特性を示す撹拌動作時パドル振動情報との相関関係を機械学習により学習させた学習モデルに、前記情報取得部により取得された前記めっき処理情報を入力することで、当該めっき処理情報に対する前記撹拌動作時パドル振動情報を生成する情報生成部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様に係る情報処理装置によれば、基板めっき装置により行われる運転動作を示す運転動作情報と、当該運転動作が行われたときの対象パドルの振動特性を示す運転動作時パドル振動情報とで構成されるめっき処理情報を学習モデルに入力することで、撹拌動作のみが行われたときの対象パドルの振動特性を示す撹拌動作時パドル振動情報が生成されるので、基板めっき装置の動作状態に応じてパドルの振動特性を適切に予測することができる。
【0009】
上記以外の課題、構成及び効果は、後述する発明を実施するための形態にて明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】基板めっきシステム1の一例を示す全体構成図である。
図2】基板めっき装置2の一例を示す平面図である。
図3】めっき処理部23の一例を示す縦断正面図である。
図4】めっき処理部23の一例を示す縦断側面図である。
図5】基板ホルダ搬送部24の一例を示す縦断側面図である。
図6】基板めっき装置2の一例を示すブロック図である。
図7】コンピュータ900の一例を示すハードウエア構成図である。
図8】機械学習装置3の一例を示すブロック図である。
図9】学習モデル10及び学習用データ11の一例を示す図である。
図10】対象パドル及び対象めっき槽と、周囲パドル及び周囲めっき槽との配置関係を示す平面図である。
図11】機械学習装置3による機械学習方法の一例を示すフローチャートである。
図12】機械学習装置3による機械学習方法の一例を示すフローチャート(図11の続き)である。
図13】情報処理装置4の一例を示すブロック図である。
図14】情報処理装置4の一例を示す機能説明図である。
図15】情報処理装置4による情報処理方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明を実施するための実施形態について説明する。以下では、本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0012】
図1は、基板めっきシステム1の一例を示す全体構成図である。本実施形態に係る基板めっきシステム1は、基板の表面に所定のめっき膜を形成するめっき処理の工程管理を行うためのシステムとして機能する。
【0013】
基板は、例えば、半導体基板(ウェハ)、ガラス基板、プリント基板等であり、例えば、金属材料、樹脂材料、又はこれらの複合材料で形成されている。基板の形状は、円形状
でもよいし、多角形状でもよい。本実施形態では、基板は、円形状の半導体基板である場合について説明する。
【0014】
基板めっきシステム1は、その主要な構成として、基板めっき装置2と、機械学習装置3と、情報処理装置4と、ユーザ端末装置5とを備える。各装置2~5は、例えば、汎用又は専用のコンピュータ(後述の図7参照)で構成されるとともに、有線又は無線のネットワーク6に接続されて、各種のデータ(図1には一部のデータの送受信を破線の矢印にて図示)を相互に送受信可能に構成される。なお、各装置2~5の数やネットワーク6の接続構成は、図1の例に限られず、適宜変更してもよい。
【0015】
基板めっき装置2は、各部の構成要素(詳細は後述)を備え、複数の基板に対する一連の運転動作として、例えば、ロ―ド、搬送、めっき処理、アンロード等を並行して行う装置である。その際、基板めっき装置2は、各部にそれぞれ設定された複数の装置パラメータからなる装置設定情報255と、めっき処理の運転動作等を定める基板レシピ情報256とを参照しつつ、各部の運転動作を制御する。めっき処理では、基板のめっきに使用されるめっき液がめっき槽に貯留されて、パドルで撹拌されることで、めっき処理が行われる。めっき液は、任意の種類でよく、例えば、基板の材質や用途、めっき膜の種類等に応じて適宜選択される。
【0016】
基板めっき装置2は、各部の運転動作に応じて、各種のレポート情報257を生成し、例えば、機械学習装置3、情報処理装置4、ユーザ端末装置5等に送信する。レポート情報257には、例えば、基板めっき装置2により運転動作が行われたときの動作情報、基板めっき装置2にて検出されたイベント情報、基板めっき装置2に対するユーザ(オペレータ、生産管理者、保守管理者等)の操作情報等が含まれる。基板めっき装置2には、固有の装置IDが割り当てられ、基板には、固有の基板IDが割り当てられることで、各種のレポート情報257は管理される。
【0017】
機械学習装置3は、機械学習の学習フェーズの主体として動作し、例えば、基板めっき装置2、又は、基板めっき装置2の運転動作で行われるめっき処理を再現可能な試験装置(不図示)により生成されたレポート情報257等に基づいて学習用データ11を取得し、学習モデル10の機械学習を実施する。学習済みの学習モデル10は、ネットワーク6や記録媒体等を介して情報処理装置4に提供される。
【0018】
情報処理装置4は、機械学習の推論フェーズの主体として動作し、例えば、基板めっき装置2から動作情報等を取得し、機械学習装置3により生成された学習モデル10を用いてパドルの振動特性を予測(推論)するとともに、その予測したパドルの振動特性に基づいてパドルの異常の発生状況を判定する。そして、情報処理装置4は、パドルの振動特性の推論結果を示す撹拌動作時パドル振動情報や、パドルの異常の発生状況の判定結果を示すパドル異常発生状況情報を基板めっき装置2、ユーザ端末装置5等に送信する。なお、情報処理装置4が撹拌動作時パドル振動情報やパドル異常発生状況情報を生成するタイミングとしては、運転動作が実際に行われている最中でもよいし、運転動作が行われた後でもよい。
【0019】
ユーザ端末装置5は、ユーザが使用する端末装置であり、据置型の装置でもよいし、携帯型の装置でもよい。ユーザ端末装置5は、例えば、アプリケーションプログラム、ウェブブラウザ等の表示画面を介して各種の入力操作を受け付けるとともに、表示画面を介して各種の情報(例えば、イベントの通知、装置設定情報255、基板レシピ情報256、レポート情報257、撹拌動作時パドル振動情報、異常発生状況情報等)を表示する。
【0020】
(基板めっき装置2)
図2は、基板めっき装置2の一例を示す平面図である。基板めっき装置2は、平面視で略矩形状のハウジング200を備え、そのハウジング200内に、基板ホルダ20に基板Wをロードし、基板ホルダ20から基板Wをアンロードするロード/アンロード部21と、めっき処理の前処理及び後処理を行う前処理/後処理部22と、基板Wに対してめっき処理を行うめっき処理部23と、ロード/アンロード部21、前処理/後処理部22及びめっき処理部23の間で基板ホルダ20(基板Wを保持(ロード)した基板ホルダ20と、基板を保持していない基板ホルダ20とを含む)を搬送する基板ホルダ搬送部24と、基板めっき装置2の各部21~24を制御する制御ユニット25とを備える。
【0021】
(ロード/アンロード部21)
ロード/アンロード部21は、複数の基板Wが収納された基板カセット(不図示)を載置可能な複数のロードポート210と、基板Wのオリフラ(オリエンテーションフラット)やノッチ等の位置を所定の方向に合わせるアライナ211と、めっき処理後の基板Wを高速回転させて乾燥させるスピンリンスドライヤ212と、基板ホルダ20が載置されて基板ホルダ20に対して基板Wの着脱を行う締付ステーション213と、ロードポート210、アライナ211、スピンリンスドライヤ212及び締付ステーション213の間で基板Wの搬送及び受渡しを行うロードロボット214とを備える。アライナ211、スピンリンスドライヤ212、及び、締付ステーション213は、例えば、ロードロボット214を中心に配置される。
【0022】
(前処理/後処理部22)
前処理/後処理部22は、基板ホルダ20を仮置きし、保管するストッカ220と、基板Wを純水に浸漬するプリウェット槽221と、基板Wの表面に形成された酸化膜を有機酸溶液でエッチング除去するプリソーク槽222と、プリソーク後の基板Wを洗浄液で洗浄する第1の洗浄槽223と、洗浄後の基板Wの液切りを行うブロー槽224と、めっき処理後の基板Wを洗浄液で洗浄する第2の洗浄槽225とを備え、例えば、この順で図2のX方向に沿って配置される。
【0023】
(めっき処理部23)
めっき処理部23は、めっき槽230に貯留されためっき液Q内に、基板ホルダ20に保持された基板Wを浸漬させて、基板Wの表面に、例えば、銅、金、銀、はんだ、ニッケル等のめっき処理を行う。
【0024】
図3は、めっき処理部23の一例を示す縦断正面図である。図4は、めっき処理部23の一例を示す縦断側面図である。めっき処理部23は、基板Wのめっきに使用されるめっき液Qを貯留する複数のめっき槽230と、複数のめっき槽230を囲むように配置されたオーバーフロー槽231と、オーバーフロー槽231からめっき槽230にめっき液Qを循環させるめっき液循環部232とを備える。本実施形態では、めっき処理部23は、複数のめっき槽230として、図2のX方向に8列及びY方向に2列の計16個のめっき槽230を備え、16個のめっき槽230で並行してめっき処理が行われる。
【0025】
また、めっき処理部23は、複数のめっき槽230の各々に設置される各部として、パドル233aによりめっき液Qを撹拌するめっき液撹拌部233と、基板Wに作用する電位分布を均一にするための誘電体で形成されたレギュレーションプレート234と、アノード電極235aを有するアノード部235と、基板W及びアノード電極235aに電気的に接続されるめっき電源回路236とを備える。
【0026】
めっき液循環部232は、めっき槽230及びオーバーフロー槽231を接続するめっき液循環流路232aと、めっき液Qを循環させるめっき液循環ポンプ232bと、めっき液Qの温度を調節する恒温器232cと、めっき液Qに含まれる異物を除去するフィル
タ232dとを備える。なお、めっき液循環ポンプ232bは、1つでもよいし、複数でもよく、例えば、複数のめっき槽230で共用するように設置されていてもよいし、複数のめっき槽230に対して個別に設置されていてもよい。
【0027】
めっき液循環部232によるめっき液Qの供給動作は、制御ユニット25からの指令値(例えば、めっき槽230に貯留されるめっき液Qの液量、めっき液循環ポンプ232bの動作タイミング及びめっき液循環ポンプ232bの回転速度等)に応じて行われる。
【0028】
めっき液撹拌部233は、例えば、複数の貫通孔を有する板状部材で構成されたパドル233aと、パドル233aを保持するパドルホルダ233bと、パドルホルダ233bを支持するシャフト233cと、パドル233aを摺動可能に支持するシャフト支持部233dと、シャフト233cの端部に連結されて、パドル233aを動作させるパドル動作機構部233eと、撹拌動作が行われたときにパドル233aに生じる振動を検出するパドル振動センサ233fとを備える。
【0029】
パドル233aは、例えば、チタン等の金属材料で製作され、格子状の隙間(貫通孔)をめっき液Qが通過するように形成される。なお、パドル233aの形状や材質は適宜変更されてもよい。
【0030】
パドル動作機構部233eは、例えば、基板Wの表面と平行に往復移動するように、パドル233aを動作させる。図4では、パドル動作機構部233eの具体的な構成を省略しているが、例えば、回転モータ、リニアモータ、エア駆動アクチュエータ等の駆動力発生用のモジュールと、クランク、リニアガイド、ボールねじ、ギヤ、ベルト、カップリング、軸受等の駆動力伝達機構と、エンコーダセンサ、リニアセンサ、リミットセンサ、トルクセンサ等のセンサとを適宜組み合わせて構成される。
【0031】
パドル振動センサ233fは、例えば、パドル233a、パドルホルダ233b、シャフト233c又はシャフト支持部233dに取り付けられる。パドル振動センサ233fは、例えば、変位センサ、加速度センサ、角速度センサ等で構成され、1軸、2軸及び3軸のいずれでもよい。
【0032】
めっき液撹拌部233によるパドル233aの撹拌動作は、制御ユニット25からの指令値(例えば、パドル233aの動作速度、動作周波数及び動作ストローク等)に応じて行われる。
【0033】
アノード部235は、例えば、基板Wと略同一の形状(本実施形態では、円形状)を有するアノード電極235aと、アノード電極235aを着脱可能に保持するアノードホルダ235bと、アノード電極235aの重量を検出可能なロードセル等で構成されたアノード重量センサ235cとを備える。
【0034】
めっき槽230にてめっき処理が行われる場合、処理対象の基板Wを保持した基板ホルダ20が、第2の搬送機240Bによりめっき槽230内に配置される。その際、基板ホルダ20は、第2の搬送機240Bから取り外されて、めっき槽230の上縁部で支持される。また、パドル233a、レギュレーションプレート234及びアノード電極235aは、図3に示すように、この順で基板Wに対向するようにめっき槽230内に配置される。そして、基板Wとアノード電極235aは、めっき電源回路236を介して電気的に接続され、基板Wとアノード電極235aとの間に電流を流すことにより基板Wの表面にめっき膜が形成される。
【0035】
(基板ホルダ搬送部24)
基板ホルダ搬送部24は、2つの搬送機として、図2に示すように、第1の搬送機240Aと、第2の搬送機240Bとを備える。第1の搬送機240Aは、締付ステーション213、ストッカ220、プリウェット槽221、プリソーク槽222、第1の洗浄槽223及びブロー槽224の間で基板Wを搬送するように構成される。第2の搬送機240Bは、第1の洗浄槽223、ブロー槽224、第2の洗浄槽225及びめっき槽230の間で基板ホルダ20を搬送するように構成される。
【0036】
図5は、基板ホルダ搬送部24の一例を示す縦断側面図である。第1及び第2の搬送機240A、240Bは、基板ホルダ20を着脱可能にそれぞれ保持する2つの基板ホルダ保持部241と、2つの基板ホルダ保持部241を支持する支持アーム242と、支持アーム242を支持する支持ビーム243と、支持アーム242を図5のZ方向に沿って上下移動させる上下移動機構部244と、支持ビーム243を図2のX方向に沿って水平移動させる水平移動機構部245とを備える。
【0037】
図5では、上下移動機構部244及び水平移動機構部245の具体的な構成を省略しているが、パドル動作機構部233eと同様に、例えば、回転モータ、リニアモータ、エア駆動アクチュエータ等の駆動力発生用のモジュールと、クランク、リニアガイド、ボールねじ、ギヤ、ベルト、カップリング、軸受等の駆動力伝達機構と、エンコーダセンサ、リニアセンサ、リミットセンサ、トルクセンサ等のセンサとを適宜組み合わせて構成される。
【0038】
基板ホルダ搬送部24による基板Wの搬送動作は、制御ユニット25からの指令値(例えば、第1及び第2の搬送機240A、240Bの動作タイミング及び動作速度等)に応じて行われる。すなわち、基板ホルダ搬送部24における第1及び第2の搬送機240A、240Bは、ロード/アンロード部21の動作状況と、前処理/後処理部22の動作状況と、めっき処理部23の動作状況(各めっき槽230でのめっき処理の開始・終了)とに応じて、基板ホルダ20を所定の移動位置に随時搬送する。
【0039】
なお、基板めっき装置2が備える各部21~24の構成は適宜変更してもよく、各部21~24の配置や数等は適宜変更されてもよい。例えば、前処理/後処理部22において、ストッカ220、プリウェット槽221、プリソーク槽222、第1の洗浄槽223、ブロー槽224、第2の洗浄槽225、及び、めっき処理部23の配置順は適宜変更されてもよい。めっき処理部23は、図2とは異なる数の複数のめっき槽230及びパドル233aを備えるものでもよいし、1つのめっき槽230及びパドル233aを備えるものでもよい。また、基板ホルダ搬送部24は、3つ以上の搬送機を備えるものでもよいし、1つの搬送機を備えるものでもよいし、搬送機が基板ホルダ20を搬送する範囲は適宜変更してもよい。
【0040】
(制御ユニット25)
図6は、基板めっき装置2の一例を示すブロック図である。制御ユニット25は、基板めっき装置2の各部21~24と電気的に接続されて、各部21~24を統括的に制御する制御部として機能する。以下では、めっき処理部23及び基板ホルダ搬送部24の制御系(モジュール、センサ、シーケンサ)を例にして説明するが、ロード/アンロード部21及び前処理/後処理部22も基本的な構成や機能は共通するため、説明を省略する。
【0041】
めっき処理部23は、めっき処理部23が備える複数のモジュール237(例えば、めっき槽230、めっき液循環ポンプ232b、恒温器232c、パドル動作機構部233e、アノードホルダ235b、めっき電源回路236等)と、各モジュール237の制御に必要なデータ(検出値)を検出する複数のセンサ238と、各センサ238の検出値に基づいて各モジュール237の動作を制御するシーケンサ239とを備える。
【0042】
めっき処理部23のセンサ238には、例えば、めっき槽230内のめっき液Qの液量を検出するセンサ、めっき槽230内のめっき液Qの温度を検出するセンサ、めっき液循環ポンプ232bの動作中か否かを示す動作状態を検出するセンサ、めっき液循環ポンプ232bの回転速度を検出するセンサ、恒温器232cの動作中か否かを示す動作状態を検出するセンサ、パドル233aの動作速度、動作周波数及び動作ストロークに変換可能なパドル動作機構部233eの動作速度、動作周波数及び動作ストロークを検出するセンサ、パドル233aの振動を検出するセンサ(パドル振動センサ233f)、アノード電極235aの重量を検出するセンサ(アノード重量センサ235c)、めっき処理時の電源電力(電流、電圧)を検出するセンサ等が含まれる。
【0043】
基板ホルダ搬送部24は、基板ホルダ搬送部24が備える複数のモジュール247(例えば、上下移動機構部244、水平移動機構部245等)と、各モジュール247の制御に必要なデータ(検出値)を検出する複数のセンサ248と、各センサ248の検出値に基づいて各モジュール247の動作を制御するシーケンサ249とを備える。
【0044】
基板ホルダ搬送部24のセンサ248には、例えば、第1及び第2の搬送機240A、240Bが動作中か否かを示す動作状態を検出するセンサ、上下移動機構部244及び水平移動機構部245の動作速度を検出するセンサ、パドル233aに対する第1及び第2の搬送機240A、240Bの位置又は距離に変換可能な上下移動機構部244及び水平移動機構部245の位置座標を検出するセンサ等が含まれる。
【0045】
制御ユニット25は、制御部250、通信部251、入力部252、出力部253、及び、記憶部254を備える。制御ユニット25は、例えば、汎用又は専用のコンピュータ(後述の図7参照)で構成される。
【0046】
通信部251は、ネットワーク6に接続され、各種のデータを送受信する通信インターフェースとして機能する。入力部252は、各種の入力操作を受け付けるとともに、出力部253は、表示画面、シグナルタワー点灯、ブザー音を介して各種の情報を出力することで、ユーザインターフェースとして機能する。
【0047】
記憶部254は、基板めっき装置2の動作で使用される各種のプログラム(オペレーティングシステム(OS)、アプリケーションプログラム、ウェブブラウザ等)やデータ(装置設定情報255、基板レシピ情報256、レポート情報257等)を記憶する。装置設定情報255及び基板レシピ情報256は、表示画面を介してユーザにより編集可能なデータである。
【0048】
制御部250は、複数のシーケンサ219、229、239、249(以下、「シーケンサ群」という)を介して複数のセンサ218、228、238、248(以下、「センサ群」という)の検出値を取得するとともに、複数のモジュール217、227、237、247(以下、「モジュール群」という)を連携して動作させることで、ロ―ド、搬送、めっき処理、アンロード等の一連の運転動作を行う。なお、シーケンサ群は省略されてもよく、その場合には、シーケンサ群の機能は制御部250にて実現されるようにすればよい。
【0049】
(各装置のハードウエア構成)
図7は、コンピュータ900の一例を示すハードウエア構成図である。基板めっき装置2の制御ユニット25、機械学習装置3、情報処理装置4、及び、ユーザ端末装置5の各々は、汎用又は専用のコンピュータ900により構成される。
【0050】
コンピュータ900は、図7に示すように、その主要な構成要素として、バス910、プロセッサ912、メモリ914、入力デバイス916、出力デバイス917、表示デバイス918、ストレージ装置920、通信I/F(インターフェース)部922、外部機器I/F部924、I/O(入出力)デバイスI/F部926、及び、メディア入出力部928を備える。なお、上記の構成要素は、コンピュータ900が使用される用途に応じて適宜省略されてもよい。
【0051】
プロセッサ912は、1つ又は複数の演算処理装置(CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-processing unit)、DSP(digital signal processor)、GPU(Graphics Processing Unit)等)で構成され、コンピュータ900全体を統括する制御部として動作する。メモリ914は、各種のデータ及びプログラム930を記憶し、例えば、メインメモリとして機能する揮発性メモリ(DRAM、SRAM等)と、不揮発性メモリ(ROM)、フラッシュメモリ等とで構成される。
【0052】
入力デバイス916は、例えば、キーボード、マウス、テンキー、電子ペン等で構成され、入力部として機能する。出力デバイス917は、例えば、音(音声)出力装置、バイブレーション装置等で構成され、出力部として機能する。表示デバイス918は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー、プロジェクタ等で構成され、出力部として機能する。入力デバイス916及び表示デバイス918は、タッチパネルディスプレイのように、一体的に構成されていてもよい。ストレージ装置920は、例えば、HDD、SSD(Solid State Drive)等で構成され、記憶部として機能する。ストレージ装置920は、オペレーティングシステムやプログラム930の実行に必要な各種のデータを記憶する。
【0053】
通信I/F部922は、インターネットやイントラネット等のネットワーク940(図1のネットワーク6と同じであってもよい)に有線又は無線により接続され、所定の通信規格に従って他のコンピュータとの間でデータの送受信を行う通信部として機能する。外部機器I/F部924は、カメラ、プリンタ、スキャナ、リーダライタ等の外部機器950に有線又は無線により接続され、所定の通信規格に従って外部機器950との間でデータの送受信を行う通信部として機能する。I/OデバイスI/F部926は、各種のセンサ、アクチュエータ等のI/Oデバイス960に接続され、I/Oデバイス960との間で、例えば、センサによる検出信号やアクチュエータへの制御信号等の各種の信号やデータの送受信を行う通信部として機能する。メディア入出力部928は、例えば、DVDドライブ、CDドライブ等のドライブ装置で構成され、DVD、CD等のメディア(非一時的な記憶媒体)970に対してデータの読み書きを行う。
【0054】
上記構成を有するコンピュータ900において、プロセッサ912は、ストレージ装置920に記憶されたプログラム930をメモリ914に呼び出して実行し、バス910を介してコンピュータ900の各部を制御する。なお、プログラム930は、ストレージ装置920に代えて、メモリ914に記憶されていてもよい。プログラム930は、インストール可能なファイル形式又は実行可能なファイル形式でメディア970に記録され、メディア入出力部928を介してコンピュータ900に提供されてもよい。プログラム930は、通信I/F部922を介してネットワーク940経由でダウンロードすることによりコンピュータ900に提供されてもよい。また、コンピュータ900は、プロセッサ912がプログラム930を実行することで実現する各種の機能を、例えば、FPGA、ASIC等のハードウエアで実現するものでもよい。
【0055】
コンピュータ900は、例えば、据置型コンピュータや携帯型コンピュータで構成され、任意の形態の電子機器である。コンピュータ900は、クライアント型コンピュータで
もよいし、サーバ型コンピュータやクラウド型コンピュータでもよい。コンピュータ900は、各装置2~5以外の装置にも適用されてもよい。
【0056】
(機械学習装置3)
図8は、機械学習装置3の一例を示すブロック図である。機械学習装置3は、制御部30、通信部31、学習用データ記憶部32、及び、学習済みモデル記憶部33を備える。
【0057】
制御部30は、学習用データ生成部300及び機械学習部301として機能する。通信部31は、ネットワーク6を介して外部装置(例えば、基板めっき装置2、情報処理装置4、ユーザ端末装置5、試験装置(不図示)等)と接続され、各種のデータを送受信する通信インターフェースとして機能する。
【0058】
学習用データ生成部300は、通信部31及びネットワーク6を介して外部装置と接続され、入力データ(説明変数)としてのめっき処理情報と、出力データ(目的変数)としての撹拌動作時パドル振動情報とで構成される学習用データ11を生成する。学習用データ生成部300は、例えば、基板めっき装置2又は試験装置により生成されたレポート情報を取得したり、必要に応じてユーザ端末装置5によるユーザの入力操作を受け付けたりすることで、学習用データ11を生成する。
【0059】
学習用データ記憶部32は、学習用データ生成部300で取得した学習用データ11を複数組記憶するデータベースである。なお、学習用データ記憶部32を構成するデータベースの具体的な構成は適宜設計すればよい。
【0060】
機械学習部301は、学習用データ記憶部32に記憶された複数組の学習用データ11を用いて機械学習を実施する。機械学習部301は、機械学習の手法として、教師あり学習を実施するものであり、学習用データ11は、教師あり学習における教師データ(トレーニングデータ)、検証データ及びテストデータとして用いられるとともに、学習用データ11の出力データとしての撹拌動作時パドル振動情報は、教師あり学習における正解データとして用いられる。すなわち、機械学習部301は、学習モデル10に学習用データ11を複数組入力し、学習用データ11を構成するめっき処理情報及び撹拌動作時パドル振動情報の相関関係を学習モデル10に学習させることで、学習済みの学習モデル10を生成する。
【0061】
学習済みモデル記憶部33は、機械学習部301により生成された学習済みの学習モデル10(具体的には、調整済みの重みパラメータ群)を記憶するデータベースである。学習済みモデル記憶部33に記憶された学習済みの学習モデル10は、ネットワーク6や記録媒体等を介して実システム(例えば、基板めっき装置2、情報処理装置4等)に提供される。なお、図8では、学習用データ記憶部32と、学習済みモデル記憶部33とが別々の記憶部として示されているが、これらは単一の記憶部で構成されてもよい。
【0062】
なお、学習済みモデル記憶部33に記憶される学習モデル10の数は1つに限定されず、例えば、機械学習の手法、めっき処理部23の機構の違い、基板ホルダ搬送部24の機構の違い、めっき処理情報に含まれるデータの種類、撹拌動作時パドル振動情報に含まれるデータの種類等のように、条件が異なる複数の学習モデルが記憶されてもよい。その場合には、学習用データ記憶部32には、条件が異なる複数の学習モデルにそれぞれ対応するデータ構成を有する複数種類の学習用データが記憶されればよい。
【0063】
図9は、学習モデル10及び学習用データ11の一例を示す図である。図10は、対象パドル及び対象めっき槽と、周囲パドル及び周囲めっき槽との配置関係を示す平面図である。学習モデル10の機械学習に用いられる学習用データ11は、入力データとしてのめ
っき処理情報と、出力データとしての撹拌動作時パドル振動情報とからなる。
【0064】
ここで、基板めっき装置2が、本実施形態のように、複数(具体的には16個)のめっき槽230及びパドル233aをそれぞれ備える場合には、複数のパドル233aのうちの任意の1つのパドル233aを、処理対象のパドル233a(=対象パドルTP)として選択することで、基板めっき装置2は、複数のめっき槽230として、対象パドルTPが設置されためっき槽230に対応する対象めっき槽TTと、対象めっき槽TTの周囲に配置されためっき槽230に対応する周囲めっき槽STとを備えるとともに、複数のパドル233aとして、対象パドルTPと、周囲めっき槽STに設置されたパドル233aに対応する周囲パドルSPとを備えるものとして、めっき処理情報及び撹拌動作時パドル振動情報は定義される。なお、複数の周囲パドルSP及び周囲めっき槽STは、図10に示すように、対象パドルTP及び対象めっき槽TTの隣に配置された周囲パドルSP及び周囲めっき槽STだけを対象にしてもよいし、全ての周囲パドルSP及び周囲めっき槽STを対象にしてもよい。また、基板めっき装置2が、1つのめっき槽230及びパドル233aを備える場合には、それらを対象パドルTP及び対象めっき槽TTとし、周囲パドルSP及び周囲めっき槽STを備えないものとして、めっき処理情報及び撹拌動作時パドル振動情報が定義されるようにすればよい。
【0065】
入力データとしてのめっき処理情報は、運転動作情報と、運転動作時パドル振動情報とで構成される。
【0066】
運転動作情報は、対象パドルTPの撹拌動作を示す対象パドル動作情報、めっき槽230へのめっき液Qの供給動作を示すめっき液動作情報、及び、基板Wの搬送動作を示す搬送機動作情報を含む。
【0067】
対象パドル動作情報は、対象パドルTPの動作速度、対象パドルTPの動作周波数、及び、対象パドルTPの動作ストロークの少なくとも1つを含む。パドル233aの動作速度は、例えば、パドル動作機構部233eによるパドル233aの移動速度、回転モータの回転速度、リニアモータの駆動速度等で定められる。パドル233aの動作周波数は、例えば、パドル動作機構部233eによりパドル233aを往復移動させるときの単位時間当たりの移動回数で定められる。パドル233aの動作ストロークは、例えば、パドル動作機構部233eによりパドル233aを往復移動させるときの移動量で定められる。
【0068】
めっき液動作情報は、めっき槽230に貯留されためっき液Qの液量、めっき液循環ポンプ232bが動作中か否かを示す動作状態、及び、めっき液循環ポンプ232bの回転速度の少なくとも1つを含む。めっき液Qの液量は、対象めっき槽TTの液量を少なくとも含むものであるが、周囲めっき槽STの液量をさらに含むようにしてもよい。めっき液循環部232が、複数のめっき液循環ポンプ232bを備える場合には、複数のめっき液循環ポンプ232bの各々における動作状態及び回転速度を含むようにしてもよい。
【0069】
めっき液Qの液量やめっき液循環ポンプ232bの動作は、めっき液Qの揺動状態に影響するだけでなく、その動作に起因する振動(ポンプ振動)が対象めっき槽TTやめっき液撹拌部233に伝播するため、対象パドルTPの撹拌動作やパドル振動センサ233fの検出値に少なからず影響を及ぼすものと推定される。したがって、めっき処理情報がめっき液動作情報を含むことにより、ポンプ振動が対象パドルTPの振動特性に与える影響を学習モデル10に学習させることができる。
【0070】
搬送機動作情報は、第1及び第2の搬送機240A、240Bが動作中か否かを示す動作状態、第1及び第2の搬送機240A、240Bの動作速度、対象パドルTPに対する第1及び第2の搬送機240A、240Bの位置、及び、対象パドルTPと第1及び第2
の搬送機240A、240Bとの距離の少なくとも1つを含む。
【0071】
第1及び第2の搬送機240A、240Bの動作は、その動作に起因する振動(搬送機振動)が対象めっき槽TTやめっき液撹拌部233に伝播するため、対象パドルTPの撹拌動作やパドル振動センサ233fの検出値に少なからず影響を及ぼすものと推定される。そして、対象パドルTPからの第1及び第2の搬送機240A、240Bの位置(距離)が近いほど、搬送機振動の減衰が小さくなるため、対象パドルTPの撹拌動作やパドル振動センサ233fの検出値に大きく作用するものと推定される。また、第1及び第2の搬送機240A、240Bの動作速度に応じて、搬送機振動の周波数や振幅が変動するため、対象パドルTPに生じる振動との干渉度合いが変動するものと推定される。したがって、めっき処理情報が搬送動作情報を含むことにより、搬送機振動が対象パドルTPの振動特性に与える影響を学習モデル10に学習させることができる。
【0072】
なお、運転動作情報は、図9に示すように、周囲パドルSPの撹拌動作を示す周囲パドル動作情報をさらに含むようにしてもよい。周囲パドル動作情報は、周囲パドルSPが動作中か否かを示す動作状態、周囲パドルSPの動作速度、周囲パドルSPの動作周波数、周囲パドルSPの動作ストローク、及び、対象パドルTPに対する周囲パドルSPの位相差の少なくとも1つを含む。位相差は、対象パドルTP及び周囲パドルSPが周期的に往復移動されたときに、対象パドルTPを基準とする周囲パドルSPの位相のずれであり、対象パドルTP及び周囲パドルSPが同期しているような場合には、位相差はないものとして扱われる。めっき処理部23が、複数(本実施形態では15個)の周囲パドルSPを備える場合には、複数の周囲パドルSPの各々における動作状態、動作速度、動作周波数、動作ストローク及び位相差を含む。その際、複数の周囲パドルSPは、図10に示すように、対象パドルTPの隣に配置された周囲パドルSPだけを対象にしてもよいし、全ての周囲パドルSPを対象にしてもよい。
【0073】
周囲パドルSPの動作は、その動作に起因する振動(周囲パドル振動)が対象めっき槽TTやめっき液撹拌部233に伝播するため、対象パドルTPの撹拌動作やパドル振動センサ233fの検出値に少なからず影響を及ぼすものと推定される。そして、対象パドルTPの動作と、周囲パドルSPの動作との関係において、両者の動作速度が同程度で位相差が小さいときは、対象パドルTPの振動波形は周囲パドル振動により増幅され、両者の動作速度が同程度で位相差が大きいときは、対象パドルTPの振動波形は周囲パドル振動により変調又は減衰され、両者の動作速度が異なるときは、対象パドルTPの振動波形は周囲パドル振動と干渉するもの推定される。したがって、めっき処理情報が周囲パドル動作情報を含むことにより、周囲パドル振動が対象パドルTPの振動特性に与える影響を学習モデル10に学習させることができる。
【0074】
また、運転動作情報は、図9に示すように、めっき槽230及びパドル233aの配置に関する装置配置情報をさらに含むようにしてもよい。装置配置情報は、対象パドルTPに対する周囲パドルSPの位置、対象パドルTPと周囲パドルSPとの距離、対象めっき槽TTに対する周囲めっき槽STの位置、及び、対象めっき槽TTと周囲めっき槽STとの距離の少なくとも1つを含む。めっき処理部23が、複数(本実施形態では15個)の周囲パドルSPを備える場合には、複数の周囲パドルSPの各々における位置、距離を含み、複数(本実施形態では15個)の周囲めっき槽STを備える場合には、複数の周囲めっき槽STの各々における位置、距離を含む。その際、複数の周囲パドルSP及び周囲めっき槽STは、図10に示すように、対象パドルTP及び対象めっき槽TTの隣に配置された周囲パドルSP及び周囲めっき槽STだけを対象にしてもよいし、全ての周囲パドルSP及び周囲めっき槽STを対象にしてもよい。
【0075】
周囲パドルSPの動作は、上述したように、対象パドルTPの撹拌動作やパドル振動セ
ンサ233fの検出値に少なからず影響を及ぼすものと推定される。その際、対象パドルTPからの周囲パドルSPの位置(距離)が近いほど、又は、対象めっき槽TTからの周囲めっき槽STの位置(距離)が近いほど、対象パドルTPの撹拌動作やパドル振動センサ233fの検出値に大きく作用するものと推定される。したがって、めっき処理情報が装置配置情報を含むことにより、周囲パドル振動が対象パドルTPの振動特性に与える影響を学習モデル10に学習させることができる。
【0076】
さらに、運転動作情報は、図9に示すように、めっき槽230内に設置されたアノード電極235aに関するアノード電極情報をさらに含むようにしてもよい。アノード電極情報は、アノード電極235aの重量を少なくとも含む。アノード電極235aの重量は、対象めっき槽TTに設置されたアノード電極235aの重量を少なくとも含むものであるが、周囲めっき槽STに設置されたアノード電極235aの重量をさらに含むようにしてもよい。
【0077】
アノード電極235aは、めっき処理が行われることで徐々に消耗し、所定の消耗度に到達すると新品に交換されるため、アノード電極235aの重量は経時的に変動する。そして、アノード電極235aの重量は、めっき液Qの揺動状態に影響するため、対象パドルTPの撹拌動作やパドル振動センサ233fの検出値に少なからず影響を及ぼすものと推定される。したがって、めっき処理情報がアノード電極情報を含むことにより、アノード電極235aの状態が対象パドルTPの振動特性に与える影響を学習モデル10に学習させることができる。
【0078】
運転動作情報に含まれる各種の情報は、センサ群(センサ218、228、238、248)の検出値又はモジュール群(モジュール217、227、237、247)への指令値として取得されてもよいし、センサの検出値又はモジュールへの指令値から換算されるパラメータとして取得されてもよいし、複数のセンサの検出値に基づいて算出されるパラメータとして取得されてもよい。また、運転動作情報は、装置設定情報255又は基板レシピ情報256から取得されてもよい。さらに、運転動作情報は、めっき処理期間全体の時系列データとして取得されてもよいし、めっき処理期間の一部である対象期間の時系列データとして取得されてもよいし、特定の対象時点における時点データとして取得されてもよい。
【0079】
運転動作時パドル振動情報は、運転動作情報が示す運転動作が行われたときの対象パドルTPの振動特性を示す情報である。すなわち、運転動作時パドル振動情報は、対象パドルTPの撹拌動作だけでなく、撹拌動作以外の各部の運転動作も行われている環境下で取得される情報であり、各部の運転動作により対象パドルTPに生じる振動(例えば、ポンプ振動、搬送機振動、周囲パドル振動等が含まれる)に基づく情報である。
【0080】
運転動作時パドル振動情報における振動特性は、運転動作が行われたときのパドル振動センサ233fの検出値として取得されてもよいし、パドル振動センサ233fの検出値から換算又は算出される振動特性パラメータとして取得されてもよい。例えば、振動特性は、パドル振動センサ233fの検出値に基づく時間軸波形でもよいし、時間軸波形の特徴量(平均値、ピーク値、標準偏差、分散等)でもよい。また、振動特性は、パドル振動センサ233fの検出値に対して周波数解析を行ったときの周波数軸波形でもよいし、周波数軸波形の特徴量(平均値、ピーク値、オーバオール値、標準偏差、分散等)でもよい。なお、運転動作時パドル振動情報は、めっき処理期間全体の時系列データとして取得されてもよいし、めっき処理期間の一部である対象期間の時系列データとして取得されてもよいし、特定の対象時点における時点データとして取得されてもよい。
【0081】
本実施形態では、運転動作時パドル振動情報は、図9に示すように、周波数解析を行っ
た結果であり、各周波数(F1、F2、…、Fk)に対する振動レベル(A_L1、A_L2、…、A_Lk)で定義される。
【0082】
出力データとしての撹拌動作時パドル振動情報は、入力データとしてのめっき処理情報を構成する運転動作情報のうち対象パドル動作情報が示す撹拌動作のみが行われたときの対象パドルTPの振動特性を示す情報である。すなわち、撹拌動作時パドル振動情報は、対象パドルTPの撹拌動作以外の各部の運転動作が行われていない周囲が静粛な環境下で取得される情報であり、対象パドルTPの撹拌動作により対象パドルTPに生じる振動のみに基づく情報である。
【0083】
撹拌動作時パドル振動情報における振動特性は、運転動作時パドル振動情報における振動特性と同様に、撹拌動作のみが行われたときのパドル振動センサ233fの検出値として取得されてもよいし、パドル振動センサ233fの検出値から換算又は算出される振動特性パラメータとして取得されてもよい。例えば、振動特性は、パドル振動センサ233fの検出値に基づく時間軸波形でもよいし、時間軸波形の特徴量(平均値、ピーク値、標準偏差、分散等)でもよい。また、振動特性は、パドル振動センサ233fの検出値に対して周波数解析を行ったときの周波数軸波形でもよいし、周波数軸波形の特徴量(平均値、ピーク値、オーバオール値、標準偏差、分散等)でもよい。その際、撹拌動作時パドル振動情報における振動特性は、運転動作時パドル振動情報における振動特性と同一のものでもよいし、異なるものでもよい。なお、撹拌動作時パドル振動情報は、めっき処理期間全体の時系列データとして取得されてもよいし、めっき処理期間の一部である対象期間の時系列データとして取得されてもよいし、特定の対象時点における時点データとして取得されてもよい。
【0084】
本実施形態では、撹拌動作時パドル振動情報は、図9に示すように、周波数解析を行った結果であり、各周波数(F1、F2、…、Fk)に対する振動レベル(T_L1、T_L2、…、T_Lk)で定義される。
【0085】
学習モデル10は、例えば、ニューラルネットワークの構造を採用したものであり、入力層100、中間層101、及び、出力層102を備える。各層の間には、各ニューロンをそれぞれ接続するシナプス(不図示)が張られており、各シナプスには、重みがそれぞれ対応付けられている。各シナプスの重みからなる重みパラメータ群が、機械学習により調整される。
【0086】
入力層100は、入力データとしてのめっき処理情報に対応する数のニューロンを有し、めっき処理情報の各値が各ニューロンにそれぞれ入力される。出力層102は、出力データとしての撹拌動作時パドル振動情報に対応する数のニューロンを有し、めっき処理情報に対する撹拌動作時パドル振動情報の推論結果(予測結果)が、出力データとして出力される。本実施形態では、撹拌動作時パドル振動情報の推論結果は、図9に示すように、周波数解析を行った結果を示す各周波数(F1、F2、…、Fk)に対する振動レベル(E_L1、E_L2、…、E_Lk)として出力される。
【0087】
(機械学習方法)
図11及び図12は、機械学習装置3による機械学習方法の一例を示すフローチャートである。以下では、基板めっき装置2を用いて学習用データ11を取得する場合について説明するが、試験装置を用いて学習用データ11を取得する場合にも適用される。
【0088】
まず、ステップS100において、機械学習装置3の学習用データ生成部300は、複数のパドル233aから対象パドルTPを選択し、例えば、対象パドルTPの動作速度、動作周波数、動作ストロークを特定の値に設定することにより、学習対象とする対象パド
ル動作情報を生成する。そして、学習用データ生成部300は、その学習対象の対象パドル動作情報を基板めっき装置2に送信する。
【0089】
次に、ステップS101において、基板めっき装置2は、対象パドルTP及び対象めっき槽TTにて学習対象の対象パドル動作情報が示す撹拌動作のみを行うことで、基板Wに対してめっき処理を行う。
【0090】
そして、ステップS102において、基板めっき装置2は、ステップS101にて撹拌動作のみが行われたときの対象パドルTPの振動特性をパドル振動センサ233fにより計測することで、撹拌動作時パドル振動情報を生成する。そして、基板めっき装置2は、その撹拌動作時パドル振動情報をレポート情報257として機械学習装置3に送信することで、学習用データ生成部300は、学習対象の対象パドル動作情報に対応する撹拌動作時パドル振動情報を取得する。
【0091】
次に、ステップS110において、基板めっき装置2は、複数の基板Wに対してめっき処理を並行して行うことで、各部21~24の運転動作(めっき液循環部232によるめっき液Qの供給動作、めっき液撹拌部233によるパドル233aの撹拌動作、基板ホルダ搬送部24による基板Wの搬送動作等)を行う。その際、めっき処理は、対象パドルTP及び対象めっき槽TTと、周囲パドルSP及び周囲めっき槽STとでそれぞれ行われるが、対象パドルTP及び対象めっき槽TTにて行われる撹拌動作は、学習対象の対象パドル動作情報が示す撹拌動作に従って行われる。
【0092】
そして、ステップS111において、基板めっき装置2は、ステップS110にて運転動作が行われたときの動作情報として、センサ群(センサ218、228、238、248)の検出値又はモジュール群(モジュール217、227、237、247)への指令値等を記録することで、対象パドル動作情報を除く運転動作情報(本実施形態では、めっき液動作情報、搬送機動作情報、周囲パドル動作情報、装置配置情報、及び、アノード電極情報)を生成する。そして、基板めっき装置2は、それらの情報をレポート情報257として機械学習装置3に送信することで、学習用データ生成部300は、学習対象の対象パドル動作情報に対応するめっき液動作情報、搬送機動作情報、周囲パドル動作情報、装置配置情報、及び、アノード電極情報を取得する。
【0093】
また、ステップS112において、基板めっき装置2は、ステップS110にて運転動作が行われたときの対象パドルTPの振動特性をパドル振動センサ233fにより計測することで、運転動作時パドル振動情報を生成する。そして、基板めっき装置2は、その運転動作時パドル振動情報をレポート情報257として機械学習装置3に送信することで、学習用データ生成部300は、学習対象の対象パドル動作情報に対応する運転動作時パドル振動情報を取得する。
【0094】
そして、ステップS113において、学習用データ生成部300は、ステップS100で生成した学習対象の対象パドル動作情報と、ステップS111で取得した学習対象の対象パドル動作情報に対応するめっき液動作情報、搬送機動作情報、周囲パドル動作情報、装置配置情報、及び、アノード電極情報とに基づいて、運転動作情報を生成し、さらに、その運転動作情報と、ステップS112で取得した運転動作時パドル振動情報とを組み合わせることで、めっき処理情報を取得する。
【0095】
次に、ステップS120において、学習用データ生成部300は、ステップS113で生成しためっき処理情報と、ステップS102で取得した撹拌動作時パドル振動情報とを組み合わせることで、1組の学習用データ11を生成し、その生成した学習用データ11を学習用データ記憶部32に記憶する。
【0096】
次に、ステップS130において、学習用データ生成部300は、学習対象の対象パドル動作情報を変更せずに運転動作を繰り返し行うことで、学習用データ11の生成を継続するか否かを判定する。例えば、学習用データ生成部300は、学習用データ11の数が所定のデータ数未満である場合や、ユーザから継続の入力操作を受け付けた場合には、継続すると判定し(ステップS130:Yes)、ステップS110に戻る。そして、ステップS110では、基板めっき装置2の運転動作が継続されて、新たな基板Wに対するめっき処理が、これまでの学習用データ11の取得時の状況とは異なる状況で行われることで、ステップS111~S120により新たな学習用データ11が生成される。
【0097】
一方、ステップS130において、継続しないと判定した場合(ステップS130:No)、ステップS140に進む。
【0098】
次に、ステップS140において、学習対象の対象パドル動作情報を変更して運転動作を行うことで、学習用データ11の生成を継続するか否かを判定する。例えば、学習用データ生成部300は、学習用データ11の数が所定のデータ数未満である場合や、ユーザから継続の入力操作を受け付けた場合には、継続すると判定し(ステップS140:Yes)、ステップS100に戻る。そして、ステップS100では、学習対象の対象パドル動作情報を変更し(例えば、対象パドルTPの動作速度を高く変更する等)、新たな学習対象の対象パドル動作情報を生成し、その新たな学習対象の対象パドル動作情報に基づいて、ステップS102にて撹拌動作時パドル振動情報が取得されるとともに、ステップS110~S113にてめっき処理情報が取得されることで、ステップS120により新たな学習用データ11が生成される。
【0099】
一方、ステップS140において、継続しないと判定した場合(ステップS140:No)、ステップS150に進む。
【0100】
次に、ステップS150において、機械学習部301は、学習対象とする学習モデル10を準備する。学習対象の学習モデル10は、例えば、図9に示すように、ニューラルネットワークのモデルであり、各シナプスの重みが初期値に設定された未学習の学習モデル10でもよいし、再学習を行う場合には、過去に学習済みの学習モデル10でもよい。
【0101】
次に、ステップS151において、機械学習部301は、学習用データ記憶部32に記憶された複数組の学習用データ11から、例えば、ランダムに1組の学習用データ11を取得する。
【0102】
次に、ステップS152において、機械学習部301は、1組の学習用データ11に含まれるめっき処理情報(入力データ)を、ステップS150にて準備された学習対象(学習前又は学習中)の学習モデル10の入力層100に入力する。その結果、学習モデル10の出力層102から推論結果として撹拌動作時パドル振動情報(出力データ)が出力されるが、当該出力データは、学習対象(学習前又は学習中)の学習モデル10によって生成されたものである。そのため、推論結果として出力された出力データは、学習用データ11に含まれる撹拌動作時パドル振動情報(正解データ)と一致するものではない。
【0103】
次に、ステップS153において、機械学習部301は、ステップS151において取得された1組の学習用データ11に含まれる撹拌動作時パドル振動情報(正解データ)と、ステップS152において出力層から推論結果として出力された撹拌動作時パドル振動情報(出力データ)とを比較し、各シナプスの重みを調整する処理(バックプロバケーション)を実施することで、機械学習を実施する。これにより、機械学習部301は、めっき処理情報と撹拌動作時パドル振動情報との相関関係を学習モデル10に学習させる。
【0104】
次に、ステップS154において、機械学習部301は、所定の学習終了条件が満たされたか否かを、例えば、学習用データ11に含まれる撹拌動作時パドル振動情報(正解データ)と、推論結果として出力された撹拌動作時パドル振動情報(出力データ)とに基づく誤差関数の評価値や、学習用データ記憶部32内に記憶された未学習の学習用データ11の残数に基づいて判定する。
【0105】
ステップS154において、機械学習部301が、学習終了条件が満たされておらず、機械学習を継続すると判定した場合(ステップS154:No)、ステップS151に戻り、学習中の学習モデル10に対してステップS151~S154の工程を未学習の学習用データ11を用いて複数回実施する。一方、ステップS154において、機械学習部301が、学習終了条件が満たされて、機械学習を終了すると判定した場合(ステップS154:Yes)、ステップS160に進む。
【0106】
そして、ステップS160において、機械学習部301は、各シナプスに対応付けられた重みを調整することで生成された学習済みの学習モデル10(調整済みの重みパラメータ群)を学習済みモデル記憶部33に記憶し、図11及び図12に示す一連の機械学習方法を終了する。
【0107】
上記の機械学習方法において、ステップS100~S140が学習用データ生成工程、ステップS120が学習用データ記憶工程、ステップS150~S154が機械学習工程、ステップS160が学習済みモデル記憶工程に相当する。なお、上記の説明では、ステップS140に続けて、ステップS150以降の処理を行うものとして説明したが、ステップS110~ステップS140の学習用データ生成工程と、ステップS150~S160の機械学習工程とは、別々に実行されてもよい。また、学習用データ生成工程は、複数の基板めっき装置2や複数の試験装置を用いて実行されてもよい。さらに、学習用データ生成工程は、例えば、新品や動作確認済みのような正常なパドル233aを用いて実行されることで複数組の学習用データ11を生成するものであるが、その際、パドル233aの使用時間や使用回数等のように使用状況が異なる複数のパドル233aを用いるようにしてもよい。また、複数組の学習用データ11のうちの一部の学習用データ11については、異常が発生したパドル233aを用いて実行することで生成するようにしてもよく、異常の発生レベルや種類等のように異常の発生状況が異なる複数のパドル233aを用いるようにしてもよい。さらに、学習用データ生成工程では、ステップS110にて基板めっき装置2によるめっき処理を実行することで学習用データ11を生成することに代えて又は加えて、学習用データ生成部300が、過去にめっき処理が行われることで記憶部254等に記憶されたレポート情報257を参照し、学習対象の対象パドル動作情報を検索キーとして、ステップS111における対象パドル動作情報を除く運転動作情報と、ステップS112における運転動作時パドル振動情報とを取得することで、学習用データ11を生成するようにしてもよい。
【0108】
以上のように、本実施形態に係る機械学習装置3及び機械学習方法によれば、動作状態情報及び運転動作時パドル振動情報で構成されるめっき処理情報から撹拌動作時パドル振動情報を生成(推論)することが可能な学習モデル10を提供することができる。
【0109】
(情報処理装置4)
図13は、情報処理装置4の一例を示すブロック図である。図14は、情報処理装置4の一例を示す機能説明図である。情報処理装置4は、制御部40、通信部41、及び、記憶部42を備える。
【0110】
制御部40は、情報取得部400、情報生成部401、異常判定部402及び出力処理
部403として機能する。通信部41は、ネットワーク6を介して外部装置(例えば、基板めっき装置2、機械学習装置3、ユーザ端末装置5等)と接続され、各種のデータを送受信する通信インターフェースとして機能する。記憶部42は、情報処理装置4の動作で使用される各種のプログラム(オペレーティングシステムやユーザ端末プログラム等)やデータ(学習モデル10)等を記憶する。
【0111】
情報取得部400は、通信部41及びネットワーク6を介して外部装置と接続され、対象パドルTPに関する動作状態情報及び運転動作時パドル振動情報で構成されるめっき処理情報を取得する。本実施形態では、運転動作時パドル振動情報は、図14に示すように、周波数解析を行った結果であり、各周波数(F1、F2、…、Fk)に対する振動レベル(A_L1、A_L2、…、A_Lk)で定義される。
【0112】
例えば、基板めっき装置2により運転動作が実際に行われている最中の場合には、情報取得部400は、その基板めっき装置2から運転動作に関するレポート情報257を随時受信することで、その基板Wに対してめっき処理が行われている最中の動作状態情報及び運転動作時パドル振動情報を、めっき処理情報として随時取得する。また、基板めっき装置2により運転動作が行われた後の場合には、情報取得部400は、基板めっき装置2の記憶部254に記憶されたレポート情報257を参照することで、その基板Wに対してめっき処理が行われたときの動作状態情報及び運転動作時パドル振動情報を、めっき処理情報として取得する。なお、情報取得部400は、基板めっき装置2の装置設定情報255又は基板レシピ情報256を参照することで、動作状態情報の一部を取得するようにしてもよい。
【0113】
情報生成部401は、情報取得部400により取得されためっき処理情報を入力データとして学習モデル10に入力することで、当該めっき処理情報に対する撹拌動作時パドル振動情報を生成する。本実施形態では、撹拌動作時パドル振動情報は、図14に示すように、周波数解析を行った結果であり、各周波数(F1、F2、…、Fk)に対する振動レベル(E_L1、E_L2、…、E_Lk)として出力される。
【0114】
記憶部42には、情報生成部401にて用いられる学習済みの学習モデル10が記憶されている。なお、記憶部42に記憶される学習モデル10の数は1つに限定されず、例えば、機械学習の手法、めっき処理部23の機構の違い、基板ホルダ搬送部24の機構の違い、めっき処理情報に含まれるデータの種類、撹拌動作時パドル振動情報に含まれるデータの種類等のように、条件が異なる複数の学習モデルが記憶され、選択的に利用可能としてもよい。記憶部42は、外部コンピュータ(例えば、サーバ型コンピュータやクラウド型コンピュータ)の記憶部で代用されてもよく、その場合には、情報生成部401は、当該外部コンピュータにアクセスすればよい。
【0115】
異常判定部402は、情報生成部401により生成された撹拌動作時パドル振動情報に基づいて、対象パドルTPの異常の発生状況を判定する。そして、異常判定部402は、その判定結果を示すパドル異常発生状況情報を生成する。
【0116】
異常判定部402による対象パドルTPの異常判定は、各種の手法を採用することができる。例えば、異常判定部402は、撹拌動作時パドル振動情報が示す振動特性と、パドル233aが正常なときに取得された正常時の振動特性(理論値でもよい)との乖離度を算出し、その乖離度が所定の正常範囲を超えたか否かに応じて、異常の発生状況を判定する。乖離度は、例えば、動的時間伸縮法(DTW)に基づく距離でもよいし、マハラノビス距離でもよい。また、異常判定部402は、撹拌動作時パドル振動情報を教師なし学習の学習モデルを入力し、その学習モデルから出力された判定値に応じて、異常の発生状況を判定するようにしてもよい。なお、異常の発生状況は、異常の予兆を含むものでもよい
し、図14に示すように、異常の発生有無(正常/異常)を判定してもよいし、複数の段階で異常の発生レベルを判定してもよい。また、複数の異常の発生原因が想定される場合には、異常の発生状況は、異常の発生原因別に、異常の発生有無や異常の発生レベルを判定してもよい。
【0117】
出力処理部403は、情報生成部401により生成された撹拌動作時パドル振動情報と、異常判定部402により生成されたパドル異常発生状況情報とを出力するための出力処理を行う。出力処理は、撹拌動作時パドル振動情報及びパドル異常発生状況情報の記憶、通信、表示、印刷等の任意の処理であり、例えば、出力処理部403は、撹拌動作時パドル振動情報及びパドル異常発生状況情報を基板めっき装置2に送信することで、撹拌動作時パドル振動情報及びパドル異常発生状況情報に基づく表示画面が基板めっき装置2に表示されるようにしてもよい。
【0118】
(情報処理方法)
図15は、情報処理装置4による情報処理方法の一例を示すフローチャートである。以下では、基板めっき装置2が、基板Wに対するめっき処理を行ったときに、情報処理装置4が、基板めっき装置2からめっき処理情報を取得することで、パドル233a(対象パドルTP)の異常の発生状況を監視する場合について説明する。
【0119】
まず、ステップS200において、基板めっき装置2は、複数の基板Wに対してめっき処理を並行して行うことで、各部21~24の運転動作(めっき液循環部232によるめっき液Qの供給動作、めっき液撹拌部233によるパドル233aの撹拌動作、基板ホルダ搬送部24による基板Wの搬送動作等)を行う。
【0120】
そして、ステップS201において、基板めっき装置2は、ステップS200にて運転動作が行われたときの動作情報として、センサ群(センサ218、228、238、248)の検出値又はモジュール群(モジュール217、227、237、247)への指令値等を記録することで、対象パドル動作情報、めっき液動作情報、搬送機動作情報、周囲パドル動作情報、装置配置情報、及び、アノード電極情報を生成する。そして、基板めっき装置2は、それらの情報をレポート情報257として情報処理装置4に送信することで、情報取得部400は、対象パドル動作情報、めっき液動作情報、搬送機動作情報、周囲パドル動作情報、装置配置情報、及び、アノード電極情報を含む運転動作情報を取得する。
【0121】
また、ステップS202において、ステップS200にて運転動作が行われたときの対象パドルTPの振動特性をパドル振動センサ233fにより計測することで、運転動作時パドル振動情報を生成する。そして、基板めっき装置2は、その運転動作時パドル振動情報をレポート情報257として情報処理装置4に送信することで、情報取得部400は、運転動作時パドル振動情報を取得する。
【0122】
次に、ステップS203において、情報取得部400は、ステップS201で取得した運転動作情報と、ステップS202で取得した運転動作時パドル振動情報とを組み合わせることで、めっき処理情報を生成する。
【0123】
次に、ステップS210において、情報生成部401は、ステップS203で取得されためっき処理情報を入力データとして学習モデル10に入力することで出力された出力データに基づいて、当該めっき処理情報に対する撹拌動作時パドル振動情報を生成する。
【0124】
次に、ステップS220において、異常判定部402は、ステップS210で生成された撹拌動作時パドル振動情報に基づいて、対象パドルTPの異常の発生状況を判定し、そ
の判定結果を示すパドル異常発生状況情報を生成する。
【0125】
次に、ステップS230において、出力処理部403は、ステップS210で生成された撹拌動作時パドル振動情報と、ステップS220で生成されたパドル異常発生状況情報とを出力するための出力処理として、その撹拌動作時パドル振動情報及びパドル異常発生状況情報を、基板めっき装置2及びユーザ端末装置5の少なくとも一方に送信する。そして、基板めっき装置2及びユーザ端末装置5は、情報処理装置4から撹拌動作時パドル振動情報及びパドル異常発生状況情報を受信し、撹拌動作時パドル振動情報及びパドル異常発生状況情報に基づく表示画面を表示する。なお、パドル異常発生状況情報が、対象パドルTPにて異常が発生したことを示す場合には、異常発生をユーザに通知してもよいし、基板めっき装置2の運転動作を停止してもよい。
【0126】
上記の情報処理方法において、ステップS200~S203が情報取得工程、ステップS210が情報生成工程、ステップS220が異常判定工程、ステップS230が出力処理工程に相当する。なお、本実施形態では、基板めっき装置2は、16個のめっき槽230及びパドル233aを備えるため、ステップS200にて基板めっき装置2による運転動作を実行した場合、16個のめっき槽230で並行してめっき処理が行われることで、16個のパドル233aの各々にて撹拌動作が行われる。そのため、16個のパドル233aの各々を対象パドルTPとして、ステップS201~S230がそれぞれ実行される。
【0127】
以上のように、本実施形態に係る情報処理装置4及び情報処理方法によれば、基板めっき装置2により行われる運転動作を示す運転動作情報と、当該運転動作が行われたときの対象パドルTPの振動特性を示す運転動作時パドル振動情報とで構成されるめっき処理情報を学習モデル10に入力することで、撹拌動作のみが行われたときの対象パドルTPの振動特性を示す撹拌動作時パドル振動情報が生成されるので、基板めっき装置2の動作状態に応じてパドルの振動特性を適切に予測することができる。
【0128】
ここで、めっき処理情報が入力される学習モデル10は、運転動作情報及び運転動作時パドル振動情報を入力データとして、撹拌動作時パドル振動情報を出力データとして、両者の相関関係を学習させたものであるから、入力された運転動作時の対象パドルTPの振動特性(運転動作時パドル振動情報)から、撹拌動作以外の各部の運転動作に起因する振動(例えば、ポンプ振動、搬送機振動、周囲パドル振動等)をノイズとして除去し、撹拌動作のみが行われたときの対象パドルTPの振動特性(撹拌動作時パドル振動情報)を抽出するフィルタのように機能する。したがって、基板めっき装置2の動作状態に応じてパドルの振動特性を適切に予測することができる。そして、その結果として出力された撹拌動作時パドル振動情報を、例えば、対象パドルTPの異常判定に用いることで、撹拌動作以外の各部の運転動作に起因する振動(例えば、ポンプ振動、搬送機振動、周囲パドル振動等)の影響を低減できるため、対象パドルTPにおける異常の発生状況を精度良く判定することができる。
【0129】
(他の実施形態)
本発明は上述した実施形態に制約されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本発明の技術思想に含まれるものである。
【0130】
上記実施形態では、機械学習装置3、情報処理装置4及びユーザ端末装置5は、別々の装置で構成された場合について説明したが、それら3つの装置が、単一の装置で構成されていてもよいし、それら3つの装置のうち任意の2つの装置が、単一の装置で構成されていてもよい。また、機械学習装置3及び情報処理装置4の少なくとも一方が、基板めっき
装置2の制御ユニット25又はユーザ端末装置5に組み込まれていてもよく、基板めっき装置2又はユーザ端末装置5が、機械学習装置3及び情報処理装置4のうち、少なくとも一方の装置として動作してもよい。例えば、基板めっき装置2の記憶部254に学習モデル10を記憶し、制御部250が、情報処理装置4の情報取得部400、情報生成部401、異常判定部402及び出力処理部403として機能するようにしてもよい。
【0131】
上記実施形態では、基板めっき装置2が、所謂ディップ式と呼ばれる基板めっき装置である場合について説明したが、基板めっき装置2は、基板Wに対してめっき処理を行う装置であれば上記の構成に限られず、例えば、カップ式と呼ばれる基板めっき装置2に適用してもよい。
【0132】
上記実施形態では、機械学習部301による機械学習を実現する学習モデルとして、ニューラルネットワークを採用した場合について説明したが、他の機械学習のモデルを採用してもよい。他の機械学習のモデルとしては、例えば、決定木、回帰木等のツリー型、バギング、ブースティング等のアンサンブル学習、再帰型ニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、LSTM等のニューラルネット型(ディープラーニングを含
む)、階層型クラスタリング、非階層型クラスタリング、k近傍法、k平均法等のクラス
タリング型、主成分分析、因子分析、ロジスティク回帰等の多変量解析、サポートベクターマシン等が挙げられる。
【0133】
※上記実施形態では、機械学習装置3及び情報処理装置4が、基板めっき装置2に適用される場合について説明したが、パドル233aと同様に、運転時に往復移動や回転移動により振動するような機構を備える装置であれば、基板めっき装置2以外の任意の装置に適用するようにしてもよい。
【0134】
(機械学習プログラム及び情報処理プログラム)
本発明は、機械学習装置3が備える各部としてコンピュータ900を機能させるプログラム(機械学習プログラム)や、機械学習方法が備える各工程をコンピュータ900に実行させるためのプログラム(機械学習プログラム)の態様で提供することもできる。また、本発明は、情報処理装置4やユーザ端末装置5が備える各部としてコンピュータ900を機能させるためのプログラム(情報処理プログラム)や、上記実施形態に係る情報処理方法が備える各工程をコンピュータ900に実行させるためのプログラム(情報処理プログラム)の態様で提供することもできる。
【0135】
(推論装置、推論方法及び推論プログラム)
本発明は、上記実施形態に係る情報処理装置4(情報処理方法又は情報処理プログラム)の態様によるもののみならず、撹拌動作時パドル振動情報を推論するために用いられる推論装置(推論方法又は推論プログラム)の態様で提供することもできる。その場合、推論装置(推論方法又は推論プログラム)としては、メモリと、プロセッサとを含み、このうちのプロセッサが、一連の処理を実行するものとすることができる。当該一連の処理とは、めっき処理情報を取得する情報取得処理(情報取得工程)と、情報取得処理にてめっき処理情報を取得すると、当該めっき処理情報を構成する運転動作情報のうち対象パドル動作情報が示す撹拌動作のみが行われたときの対象パドルTPの振動特性を示す撹拌動作時パドル振動情報を推論する推論処理(推論工程)とを含む。
【0136】
推論装置(推論方法又は推論プログラム)の態様で提供することで、情報処理装置を実装する場合に比して簡単に種々の装置への適用が可能となる。推論装置(推論方法又は推論プログラム)が撹拌動作時パドル振動情報を推論する際、上記実施形態に係る機械学習装置及び機械学習方法により生成された学習済みの学習モデルを用いて、情報生成部が実施する推論手法を適用してもよいことは、当業者にとって当然に理解され得るものである
【符号の説明】
【0137】
1…基板めっきシステム、2…基板めっき装置、3…機械学習装置、4…情報処理装置、5…ユーザ端末装置、6…ネットワーク、10…学習モデル、11…学習用データ、
20…基板ホルダ21…ロード/アンロード部、22…前処理/後処理部、
23…めっき処理部、24…基板ホルダ搬送部、25…制御ユニット、
30…制御部、31…通信部、32…学習用データ記憶部、
33…学習済みモデル記憶部、40…制御部、41…通信部、42…記憶部、
200…ハウジング、210…ロードポート、211…アライナ、
212…スピンリンスドライヤ、213…締付ステーション、214…ロードロボット、220…ストッカ、221…プリウェット槽、222…プリソーク槽、
223…第1の洗浄槽、224…ブロー槽、225…第2の洗浄槽、
230…めっき槽、231…オーバーフロー槽、
232…めっき液循環部、232a…めっき液循環流路、
232b…めっき液循環ポンプ、232c…恒温器、232d…フィルタ、
233…めっき液撹拌部、233a…パドル、233b…パドルホルダ、
233c…シャフト、233d…シャフト支持部、233e…パドル動作機構部、
233f…パドル振動センサ、234…レギュレーションプレート、
235…アノード部、235a…アノード電極、235b…アノードホルダ、
235c…アノード重量センサ、236…めっき電源回路、
240A…第1の搬送機、240B…第2の搬送機、
241…基板ホルダ保持部、242…支持アーム、243…支持ビーム、
244…上下移動機構部、245…水平移動機構部、
250…制御部、251…通信部、252…入力部、253…出力部、254…記憶部、255…装置設定情報、256…基板レシピ情報、257…レポート情報、
300…学習用データ生成部、301…機械学習部、
400…情報取得部、401…情報生成部、402…異常判定部、403…出力処理部、TP…対象パドル、TT…対象めっき槽、SP…周囲パドル、ST…周囲めっき槽、
Q…めっき液、W…基板
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