(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023022
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/539 20060101AFI20240214BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20240214BHJP
D04H 1/4374 20120101ALI20240214BHJP
B32B 5/22 20060101ALI20240214BHJP
B32B 7/05 20190101ALI20240214BHJP
【FI】
A61F13/539
A61F13/511 300
A61F13/511 400
A61F13/511 100
D04H1/4374
B32B5/22
B32B7/05
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126553
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003247
【氏名又は名称】弁理士法人小澤知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 青
(72)【発明者】
【氏名】黒田 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】奥田 風花
【テーマコード(参考)】
3B200
4F100
4L047
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA16
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3B200DC07
4F100AJ04B
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4L047CC05
(57)【要約】
【課題】肌触りの低下を抑制しつつ吸収性物品の性能を維持できる吸収性物品を提供する。
【解決手段】吸収性物品(1)は、着用者の肌に当接するトップシート(10)と、トップシートの非肌面に当接する非肌側部材(40)と、を有する。トップシートは、トップシートの肌面に配置された第1繊維層(11)と、第1繊維層(11)の非肌面に当接する第2繊維層(12)と、を有する不織布である。第1繊維層は、熱可塑性樹脂繊維(51)を含む。第2繊維層は、熱可塑性樹脂繊維(51)とセルロース系繊維(52)を含む。第1繊維層と第2繊維層の接合強度は、トップシートと非肌側部材の接合強度よりも低い。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の肌に当接するトップシートと、
前記トップシートの非肌面に当接する非肌側部材と、を有する吸収性物品であって、
前記トップシートは、前記トップシートの肌面に配置された第1繊維層と、前記第1繊維層の非肌面に当接する第2繊維層と、を有する不織布であり、
前記第1繊維層は、熱可塑性樹脂繊維を含み、
前記第2繊維層は、熱可塑性樹脂繊維とセルロース系繊維を含み、
前記第1繊維層と前記第2繊維層の接合強度は、前記トップシートと前記非肌側部材の接合強度よりも低い、吸収性物品。
【請求項2】
前記トップシートと前記非肌側部材は、平面方向に間隔を空けて配置された接着剤によって接合されており、
前記接着剤同士の間隔は、前記トップシートの非肌面に配置された繊維の平均繊維長よりも短い、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記トップシートと前記非肌側部材は、平面方向に間隔を空けて配置された圧搾部によって接合されており、
前記圧搾部同士の間隔は、前記トップシートの非肌面に配置された繊維の平均繊維長よりも短い、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記トップシートの前記肌面には、肌側に向かって突出した複数の凸部と、前記凸部間において非肌側に向かって窪んでいる複数の凹部と、が形成されており、
前記凹部の繊維密度は、前記凸部の繊維密度よりも高く、
前記凸部同士の間隔は、前記トップシートの非肌面に配置された繊維の平均繊維長よりも短い、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記凹部には、少なくとも前記第1繊維層及び前記第2繊維層を厚み方向に圧縮した圧搾部が形成されている、請求項4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記凸部が配置された領域における前記トップシートの非肌面は、周囲の前記トップシートの前記非肌面よりも肌側に位置しており、
前記凸部は、少なくとも前記第1繊維層及び前記第2繊維層に形成されている、請求項4に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記凸部が配置された領域における前記トップシートの非肌面は、周囲の前記トップシートの前記非肌面と厚み方向において同じ位置、又周囲の前記トップシートの前記非肌面よりも非肌側に位置している、請求項4に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記第1繊維層は、熱可塑性樹脂繊維を90重量%から100重量%の割合で含む、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記第1繊維層の厚みは、前記第2繊維層の厚み以上である、請求項8に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記トップシートの非肌面には、前記第2繊維層が配置されている、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記トップシートは、前記第2繊維層よりも非肌側に位置し、前記トップシートの非肌面に配置された第3繊維層を有し、
前記第3繊維層の熱可塑性樹脂繊維の重量比率は、前記第2繊維層の熱可塑性樹脂繊維の重量比率よりも高い、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記吸収性物品は、前後方向と、前記前後方向と直交する幅方向と、を有し、
前記第1繊維層と前記第2繊維層の前記幅方向に沿った接合強度は、前記第1繊維層と前記第2繊維層の前記前後方向に沿った接合強度よりも高い、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記吸収性物品は、前後方向と、前記前後方向と直交する幅方向と、を有し、
前記非肌側部材は、吸収コアの肌側を覆うコアラップシートであり、
前記コアラップシートと前記吸収コアの前記幅方向に沿った接合強度は、前記第1繊維層と前記第2繊維層の前記幅方向に沿った接合強度よりも低い、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項14】
前記トップシートの側部を覆うサイドシートを有し、
前記サイドシートの一部は、吸収コアよりも非肌側に配置された液不透過性のバックシートに接合されており、
前記トップシートと前記サイドシートの接合強度は、前記第1繊維層と前記第2繊維層の接合強度よりも高い、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項15】
前記セルロース系繊維は、レーヨン繊維であって前記第2繊維層の全体に亘って分散して配置されている、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の繊維層を含むトップシートを有する吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の繊維層を含む不織布、及び当該不織布をトップシートとして用いた吸収性物品が開示されている。トップシートに用いられる不織布は、第1繊維層と、第1繊維層の一方の主表面に位置する第2繊維層と、を含む。第1繊維層は、芯鞘型複合繊維(熱可塑性樹脂繊維)を含み、第2繊維層は、芯鞘型複合繊維(熱可塑性樹脂繊維)と、セルロース系繊維と、を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の吸収性物品の不織布は、第1繊維層側から使用者の肌に近い側に配置される。よって、着用者から排出された体液は、第1繊維層から第2繊維層に導かれ、第2繊維層側からトップシートの非肌側に位置するセカンドシート又は吸収体に導かれる。このとき、トップシートとセカンドシートの間、又はトップシートと吸収体の間において層間剥離が生じると、互いの位置がずれたり、体液の移行性が低下したりして、吸収性物品の性能を維持できないことがあった。また、当該層間剥離を防止するために、トップシートとセカンドシート又はトップシートと吸収体の接合強度を高めることが考えられる。しかし、当該接合強度を高めると、肌に対するトップシートの追従性が低下して、肌触りが低下することがあった。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、肌触りの低下を抑制しつつ吸収性物品の性能を維持できる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様に係る吸収性物品は、着用者の肌に当接するトップシートと、前記トップシートの非肌面に当接する非肌側部材と、を有する。前記トップシートは、前記トップシートの肌面に配置された第1繊維層と、前記第1繊維層の非肌面に当接する第2繊維層と、を有する不織布である。前記第1繊維層は、熱可塑性樹脂繊維を含む。前記第2繊維層は、熱可塑性樹脂繊維とセルロース系繊維を含む。前記第1繊維層と前記第2繊維層の接合強度は、前記トップシートと前記非肌側部材の接合強度よりも低い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る吸収性物品の平面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る吸収性物品用の不織布の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(1)実施形態の概要
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
一態様に係る吸収性物品は、着用者の肌に当接するトップシートと、前記トップシートの非肌面に当接する非肌側部材と、を有する。前記トップシートは、前記トップシートの肌面に配置された第1繊維層と、前記第1繊維層の非肌面に当接する第2繊維層と、を有する不織布である。前記第1繊維層は、熱可塑性樹脂繊維を含む。前記第2繊維層は、熱可塑性樹脂繊維とセルロース系繊維を含む。前記第1繊維層と前記第2繊維層の接合強度は、前記トップシートと前記非肌側部材の接合強度よりも低い。本態様によれば、第1繊維層よりも非肌側に位置する第2繊維層は、セルロース系繊維を含む。当該セルロース系繊維は、肌に直に触れ難い第2繊維層に配置されている。よって、第2繊維層のセルロース系繊維が体液を保持することで体液の吸液性能を維持しつつ、当該体液を保持したセルロース系繊維が肌に触れることによる肌へのべたつきを抑制できる。また、トップシートの肌面にセルロース系繊維が配置され難く、セルロース系繊維の毛羽立ちを抑制できる。第1繊維層と第2繊維層の接合強度が比較的低いため、肌に対してトップシートが擦れた際に、第1繊維層が追従し易く、トップシートの肌触りの低下を抑制できる。また、エアスルー不織布等、一体化して製造された不織布においては、少なくとも繊維が交わるによって第1繊維層と第2繊維層に架けわたされる繊維が配置され、第1繊維層と第2繊維層の接合強度が比較的低くても第1繊維層と第2繊維層の分断を抑制でき、不織布の性能を維持できる。トップシートと非肌側部材との接合強度が比較的高いため、トップシートと非肌側部材の層間剥離を防止するとともに、トップシートと非肌側部材の位置ずれを抑制し、かつ体液の移行性を確保できる。よって、吸収性物品の吸収性能を維持できる。
【0009】
態様2に係る発明は、態様1に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記トップシートと前記非肌側部材は、平面方向に間隔を空けて配置された接着剤によって接合されている。前記接着剤同士の間隔は、前記トップシートの非肌面に配置された繊維の平均繊維長よりも短い。本態様によれば、トップシートの非肌面に配置された繊維は、接着剤に重なって配置され易く、接着剤によって接着され易い。よって、トップシートの非肌面に配置された繊維は、不織布から抜け難くなり、トップシート内に留まり易く、吸収性物品の性能を維持できる。また、接着剤同士の間隔においては、繊維が接着されてなく、繊維の変形の自由度が高くなる。よって、第1繊維層と第2繊維層の層間剥離を抑制しつつ、トップシートの追従性をより向上できる。加えて、繊維の変形の自由度が高いため、繊維の切断を抑制し、切断した繊維の毛羽立ちによる肌触りの悪化を抑制できる。
【0010】
態様3に係る発明は、態様1又は態様2に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記トップシートと前記非肌側部材は、平面方向に間隔を空けて配置された圧搾部によって接合されている。前記圧搾部同士の間隔は、前記トップシートの非肌面に配置された繊維の平均繊維長よりも短い。本態様によれば、トップシートの非肌面に配置された繊維は、圧搾部に重なって配置され易く、圧搾部によって接合され易い。よって、トップシー
トの非肌面に配置された繊維は、不織布から抜け難くなり、トップシート内に留まり易く、吸収性物品の性能を維持できる。また、圧搾部同士の間隔においては、繊維が接着されてなく、繊維の変形の自由度が高くなる。よって、第1繊維層と第2繊維層の層間剥離を抑制しつつ、トップシートの追従性をより向上できる。加えて、繊維の変形の自由度が高いため、繊維の切断を抑制し、切断した繊維の毛羽立ちによる肌触りの悪化を抑制できる。
【0011】
態様4に係る発明は、態様1から態様3に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記トップシートの前記肌面には、肌側に向かって突出した複数の凸部と、前記凸部間において非肌側に向かって窪んでいる複数の凹部と、が形成されている。前記凹部の繊維密度は、前記凸部の繊維密度よりも高い。前記凸部同士の間隔は、前記トップシートの非肌面に配置された繊維の平均繊維長よりも短い。本態様によれば、凸部同士の間隔がトップシートの非肌面に配置された繊維の平均繊維長よりも短いため、繊維は、凸部同士の間隔である凹部に配置され易い。凹部は、比較的繊維密度が高く、繊維の抜けが生じ難い。一方、凸部は、比較的繊維密度が低い。そのため、繊維間に隙間があり、クッション性が高く、繊維の端部がトップシートの肌面に露出し難く、毛羽立ちによる肌触りの悪化を抑制できる。また、凸部は肌と触れやすい一方で、凹部は肌と触れにくいため、繊維が抜けることを抑制して、繊維をトップシート内に留め、吸収性物品の性能を維持できる。また、凸部においては、繊維密度が低いため、繊維の変形の自由度が高く、トップシートの追従性をより向上できる。加えて、繊維の変形の自由度が高いため、繊維の切断を抑制し、切断した繊維の毛羽立ちによる肌触りの悪化を抑制できる。
【0012】
態様5に係る発明は、態様1から態様4に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記凹部には、少なくとも前記第1繊維層及び前記第2繊維層を厚み方向に圧縮した圧搾部が形成されている。本態様によれば、圧搾部によって第1繊維層の繊維及び第2繊維層の繊維が抜けることを抑制し、繊維の抜けによる毛羽立ちを抑制できる。また、圧搾部は、凸部よりも凹んだ凹部に設けられており、身体に対して直に接しにくい。よって、圧搾部が身体に当たることによる違和感を抑制できる。
【0013】
態様6に係る発明は、態様1から態様5に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記凸部が配置された領域における前記トップシートの前記非肌面は、周囲の前記トップシートの前記非肌面よりも肌側に位置している。前記凸部は、少なくとも前記第1繊維層及び第2繊維層に形成されている。本態様によれば、凸部が配置された領域における前記トップシートの前記非肌面は、周囲の前記トップシートの前記非肌面よりも肌側に位置しており、周囲よりも非肌側部材に対して浮き上がっている。凸部が身体に対して擦れた際に、第1繊維層の繊維及び第2繊維層の繊維が当該擦れによって抜けてしまうことがある。このとき、融着されていないセルロース系繊維は、融着される熱可塑性樹脂繊維よりも抜けやすい。凸部が配置された領域におけるトップシートと非肌側部材の間に空間が形成されているため、肌と凸部がすれることに起因してセルロース系繊維が抜けた際に、セルロース系繊維が当該空間に導かれ易い。よって、繊維層から露出したセルロース系繊維が肌に当たることの違和感を抑制できる。
【0014】
態様7に係る発明は、態様1から態様5に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記凸部が配置された領域における前記トップシートの前記非肌面は、周囲の前記トップシートの前記非肌面と厚み方向において同じ位置、又周囲の前記トップシートの前記非肌面よりも非肌側に位置している。本態様によれば、凸部が配置された領域における前記トップシートの前記非肌面が、周囲に対して肌側に浮き上がっていないため、トップシートから非肌側部材への体液の移行をより促し、体液の非肌側への移行性を向上できる。加えて、凸部が配置された領域における前記トップシートの前記非肌面が周囲に対して肌側に浮き上がっていないため、吸収性物品の使用中に凸部が潰れにくく、凸部の形状を維持し易い。
【0015】
態様8に係る発明は、態様1から態様7に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記第1繊維層は、熱可塑性樹脂繊維を90重量%から100重量%の割合で含む。本態様によれば、第1繊維層の90重量%以上が熱可塑性樹脂繊維であり、セルロース系繊維を多く含む形態と比較して、肌に対するべたつきを抑制し、トップシートの肌面をドライに保つことができる。更に、第1繊維層の90重量%以上が熱可塑性樹脂繊維であり、第1繊維層がセルロース系繊維を多く含む形態と比較して、トップシートの肌面にセルロース系繊維が配置されず、肌と直接セルロース系繊維が接する確率が低いことで、セルロース系繊維の毛羽立ちを抑制できる。
【0016】
態様9に係る発明は、態様1から態様8に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記第1繊維層の厚みは、前記第2繊維層の厚み以上である。本態様によれば、第1繊維層の厚みが厚く、セルロース系繊維を主として構成された第2繊維層と肌の距離を確保できる。よって、トップシートの肌面の液残りを抑制し、トップシートの肌面をドライに保つことができる。また、第1繊維層が主として熱可塑性樹脂繊維を有するため、第1繊維層に引き込んだ体液を非肌側に迅速に移行でき、液捌け性を向上できる。
【0017】
態様10に係る発明は、態様1から態様9に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記トップシートの非肌面には、前記第2繊維層が配置されている。第2繊維層のセルロース系繊維は、熱可塑性樹脂繊維と比較して融着によって接合し難いため、繊維の抜けが生じ易い。しかし、本態様によれば、第2繊維層と非肌側部材の接合強度が比較的高く、当該接合によってセルロース系繊維の抜けを抑制できる。
【0018】
態様11に係る発明は、態様1から態様9に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記トップシートは、前記第2繊維層よりも非肌側に位置し、前記トップシートの非肌面に配置された第3繊維層を有する。前記第3繊維層の熱可塑性樹脂繊維の重量比率は、前記第2繊維層の熱可塑性樹脂繊維の重量比率よりも高い。本態様によれば、第2繊維層の非肌側に第3繊維層が配置され、当該第3繊維層の熱可塑性樹脂繊維の重量比率が高いため、第2繊維層に引き込まれた体液を第3繊維層側に引き込み易い。特に、第3繊維層の熱可塑性樹脂繊維の重量比率が高く、第3繊維層の厚みが比較的低い形態にあっては、第3繊維層の繊維密度が高くなり、体液の引き込み性をより向上できる。トップシートの肌面の液残りをより抑制し、トップシートの肌面をドライに保つことができる。また、熱可塑性樹脂繊維の重量比率が高い第1繊維層と第3繊維層が、トップシートの肌面と非肌面に配置されているため、熱可塑性樹脂繊維の融着によってトップシートの両面の強度が向上し、トップシートの機能(体液の引き込み性等)を維持できる。また、トップシートの両面に繊維同士の融着部分が形成されることにより、トップシートからの繊維の抜けを抑制できる。
【0019】
態様12に係る発明は、態様1から態様11に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記吸収性物品は、前後方向と、前記前後方向と直交する幅方向と、を有する。前記第1繊維層と前記第2繊維層の前記幅方向に沿った接合強度は、前記第1繊維層と前記第2繊維層の前記前後方向に沿った接合強度よりも高い。着用時に吸収性物品は、座位時に脚によって挟まれたり、歩行時に脚の動きによって引っ張られたりして種々の方向からの力を受ける。このとき、吸収性物品は、幅方向に沿う力を前後方向に沿う力よりも受けやすい。当該第1繊維層と前記第2繊維層の前記幅方向に沿った接合強度が高いため、外力に対して意図せずに第1繊維層と第2繊維層が剥離することを抑制できる。また、第1繊維層と第2繊維層の前後方向に沿った接合強度が低いため、肌に対して第1繊維層がすれた際に、第1繊維層と第2繊維層が前後方向において一部弱接着又は剥離することで、第1繊維層が肌に追従し易く、肌触りを向上できる。
【0020】
態様13に係る発明は、態様1から態様12に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記吸収性物品は、前後方向と、前記前後方向と直交する幅方向と、を有する。前記非肌側部材は、吸収コアの肌側を覆うコアラップシートである。前記コアラップシートと前記吸収コアの前記幅方向に沿った接合強度は、前記第1繊維層と前記第2繊維層の前記幅方向に沿った接合強度よりも低い。吸収性物品は、幅方向に沿う力を前後方向に沿う力よりも受けやすい。このとき、吸収性物品は、非肌側よりも肌側が脚によってより力を受けやすく、幅方向に沿った断面視における吸収性物品の形状は、肌側の幅方向の長さが非肌側の幅方向の長さよりも短い台形又は三角形となる。肌側に位置する該第1繊維層と前記第2繊維層の前記幅方向に沿った接合強度が高いため、外力に対して意図せずに第1繊維層と第2繊維層が剥離することを抑制できる。また、非肌側に位置するコアラップシートと吸収コアの接合強度が比較的低くても、受ける外力が低く、その接合状態を維持できる。
【0021】
態様14に係る発明は、態様1から態様13に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記トップシートの側部を覆うサイドシートを有する。前記サイドシートの一部は、吸収コアよりも非肌側に配置された液不透過性のバックシートに接合されている。前記トップシートと前記サイドシートの接合強度は、前記第1繊維層と前記第2繊維層の接合強度よりも高い。本態様によれば、前記トップシートと前記サイドシートの接合強度が比較的高い。サイドシートの少なくとも一部は、バックシートに接合されている。そのため、第1繊維層と第2繊維層が層間剥離して身体に追従しても、サイドシートを介して吸収性物品全体のずれを抑制できる。
【0022】
態様15に係る発明は、態様1から態様14に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記セルロース系繊維は、レーヨン繊維であって、前記第2繊維層の全体に亘って分散して配置されている。レーヨン繊維は、経血等の排泄物に加えて、特に汗を吸収し易く、吸汗性能を向上できる。当該レーヨン繊維が平面方向の全体に亘って分散しているため、トップシートの全面に亘って汗を吸収することができる。また、第2繊維層内においてセルロース系繊維が繊維塊で存在しているのでなく、セルロース系繊維が全体に亘って分散して配置されていることにより、不織布における繊維の坪量のバラツキが少なく、地合いが良好な不織布を得ることができる。
【0023】
(2)実施形態に係る吸収性物品及び吸収性物品用不織布の製造方法
以下、図面を参照して、実施形態に係る吸収性物品1及び吸収性物品用不織布の製造方法について説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法等は、以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。吸収性物品1は、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド、糞便パッド、使い捨ておむつ、ショーツ型ナプキン等の吸収性物品であってよい。吸収性物品1は、下着のような着用物品に装着されて使用される物品であってもよいし、着用物品に装着されずに使用される吸収性物品であってもよい。実施形態の吸収性物品1は、生理用ナプキンである。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なる場合があることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法等は、以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれる場合がある。また、断面図においては、説明の便宜上、各構成部材を離間して示しているが、実際の製品においては、各構成部材は当接している。
【0024】
図1は、吸収性物品1の肌側T1から見た平面図である。
図2は、
図1に示すA-A線に沿った断面図である。
図3は、トップシート10の模式断面図である。
図3(A)は、凸部18及び凹部19が形成されていないトップシートの断面を模式的に示した図である。
図3(B)は、凸部18及び凹部19が形成されたトップシートの第1形態の断面を模式的に示した図である。
図3(C)は、凸部18及び凹部19が形成されたトップシートの第2形態の断面を模式的に示した図である。ここで、「肌側」は、使用中に着用者の肌に面するに相当する。「非肌側」は、使用中に着用者の肌とは反対に向けられる側に相当する。吸収性物品1は、互いに直交する前後方向L、幅方向W、及び厚み方向Tを有する。吸収性物品1の前後方向Lにおいて、使用者の下腹部に当接する側を「前側」といい、使用者の臀部に当接する側を「後側」という。
【0025】
なお、本発明における外側部とは、幅方向Wにおける外側縁を含む幅方向Wに一定の範囲を占める部分であり、外側縁とは、幅方向Wにおける外側縁である。なお、前後方向に一定の範囲を占める構成部材の外側縁は、当該構成部材において幅方向の外側に位置する点を、構成部材全体に亘って繋いだ縁である。本発明における内側部とは、幅方向Wにおける内縁を含む幅方向Wに一定の範囲を占める部分であり、内側縁とは、幅方向Wにおける内縁である。なお、前後方向に一定の範囲を占める構成部材の内側縁は、当該構成部材において幅方向の内側に位置する点を、構成部材全体に亘って繋いだ縁である。また、本発明における前端部及び後端部は、前後方向Lにおける縁を含む前後方向Lに一定の範囲を占める部分であり、前端縁及び後端縁は、前後方向Lにおける縁である。外端部は、前端部及び後端部を含んでおり、外端縁は、前端縁及び後端縁を含んでいる。また、内側辺は、内側縁を含み、かつ前後方向Lに沿って延びる辺である。外側辺は、外側縁を含み、かつ前後方向Lに沿って延びる辺である。なお、本明細書において、「前後方向Lに沿って」という用語は、前後方向Lに対して45°未満の角度を持った方向を意味し、「幅方向Wに沿って」という用語は、幅方向Wに対して45°未満の角度を持った方向を意味する。
【0026】
吸収性物品1は、前側域S1、後側域S2及び股下域S3を有する。股下域S3は、吸収性物品1が着用物品に装着されたときに着用物品の股下に配置され、着用者の両脚の間に配置される領域である。前側域S1は、股下域S3よりも前側に位置する。前側域S1の前端縁は、吸収性物品1の前端縁を規定する。後側域S2は、股下域S3よりも後方に位置する。後側域S2の後端縁は、吸収性物品1の後端縁を規定する。股下域S3は、ウイングを有する吸収性物品にあっては、ウイングが設けられた領域であってよく、吸収コアが幅方向の内側に括れる括れ部を有する形態にあっては、括れ部が設けられた領域であってよい。または、股下域S3は、吸収性物品を前後方向Lに三等分した領域のうち中央に位置する領域であってよい。
【0027】
吸収性物品1は、吸収コア31、トップシート10及びバックシート20を少なくとも有する。吸収性物品1は、縦長の形状である。トップシート10は、着用者の肌に当接するシートである。トップシート10は、液透過性のシートである。トップシート10は、本実施形態のように、吸収性物品1の肌面全体を1枚のシートによって覆う構成であってもよいし、吸収コア31の幅方向Wの中央を覆うセンターシートと、センターシートよりも幅方向Wの外側に配置されるサイドシートと、を有していてもよい。本実施の形態のトップシート10は、後述する製造方法によって製造される不織布によって構成される。トップシート10については、後述にて詳細に説明する。
【0028】
バックシート20は、吸収コア31よりも非肌側T2に配置され、液不透過性のシートである。バックシート20は、液不透過性のシートである。バックシート20は、ポリエチレンシート、ポリプロピレン等を主体としたラミネート不織布、通気性の樹脂フィルム、スパンボンド、又はスパンレース等の不織布に通気性の樹脂フィルムが接合されたシートなどを用いることができる。
【0029】
吸収コア31は、吸収体を構成する。吸収コア31は、液体を吸収する吸収材料によって構成されてよい。吸収コア31を構成する吸収材料は、例えば、親水性繊維、パルプ及び高吸水性高分子(SAP)から形成できる。
図2に示すように、吸収体は、吸収コア31を覆うコアラップシート32を有してもよいし、変形例においてコアラップシートを有していなくてもよい。
【0030】
吸収性物品1は、トップシート10の非肌面に当接する非肌側部材40を有する。非肌側部材40は、トップシート10の非肌面に当接する部材であり、本実施の形態は、コアラップシート32によって構成されている。非肌側部材40は、セカンドシート、吸収体(コアラップシート)を例示できる。なお、トップシート10の非肌面に複数の部材が当接する形態にあっては、当該複数の部材のそれぞれが非肌側部材40を構成してよい。トップシート10と非肌側部材40は、接着剤等によって接合されていてもよいし、接合されずに重なっていてもよい。
【0031】
本実施形態の吸収性物品1は、肌触りの低下を抑制しつつ吸収性物品の性能を維持できるように構成されている次いで肌触りの低下を抑制しつつ吸収性物品の性能を維持するための構成について詳細に説明する。トップシート10は、トップシートの肌面(着用者の肌に触れる面)に配置された第1繊維層11と、第1繊維層11の非肌面に当接する第2繊維層12と、を有する不織布である。当該不織布は、後述する製造方法のように、エアスルー法によって得られた不織布であってもよいし、他の方法によって得られた不織布であってもよい。トップシート10は、少なくとも第1繊維層11と第2繊維層12を含んでいればよく、第1繊維層11と第2繊維層12のみによって構成されていてもよいし、本実施の形態のように、第3繊維層13を有してもよい。
【0032】
本実施の形態のトップシート10は、エアスルー式によって製造された不織布であり、第1繊維層11、第2繊維層12及び第3繊維層13を有する。
図3(A)に示すように、第1繊維層11、第2繊維層12及び第3繊維層13は、厚み方向Tに積層されている。エアスルー法は、不織布の製造方法の一例であり、繊維を積層したウエブを形成し、熱風(例えば、100℃以上)を貫通させる熱風貫通工程を有する。なお、トップシート10の製造方法については、後述にて詳細に説明する。
【0033】
第1繊維層11は、第1繊維層11の総重量を基準として、熱可塑性樹脂繊維51を90重量%から100重量%の割合で含んでよい。熱可塑性樹脂繊維51は、繊維形成性を有するエステル系重合体、オレフイン系重合体、アミド系重合体、アクリル系重合体、ビニルアルコール系重合体、これらを主成分とした共重合体、またはこれらの重合体の組合せからなるブレンド体が挙げられる。熱可塑性樹脂繊維51の重量%が90%以上100%未満の場合、第1繊維層11は、熱可塑性樹脂繊維51以外の繊維としてレーヨン等のセルロース系繊維を有してよい。なお、繊維層を構成する繊維の割合は、不織布の表面から繊維を所定数(例えば、100本)引き抜き、引き抜いた繊維の重量の比率によって算出できる。第1繊維層11の90重量%以上が熱可塑性樹脂繊維51であり、第1繊維層11がセルロース系繊維52を多く含む形態と比較して、肌に対するべたつきを抑制し、トップシート10の肌面をドライに保つことができる。また、第1繊維層11が主として熱可塑性樹脂繊維51を有するため、第1繊維層11に引き込んだ体液を非肌側に迅速に移行でき、液捌け性を向上できる。更に、第1繊維層の90重量%以上が熱可塑性樹脂繊維51であり、第1繊維層11がセルロース系繊維52を多く含む形態と比較して、トップシート10の肌面にセルロース系繊維52が配置されず、肌と直接セルロース系繊維が接する確率が低いことで、セルロース系繊維52の毛羽立ちを抑制できる。
【0034】
第2繊維層12は、熱可塑性樹脂繊維51とセルロース系繊維52を含む。熱可塑性樹脂繊維51は、第1繊維層11の熱可塑性樹脂繊維51と同等のものを用いることができる。セルロース系繊維52は、麻などの天然繊維;ビスコースレーヨン、キュプラ、および溶剤紡糸セルロース系繊維(例えば、レンチングリヨセル(登録商標)およびテンセル(登録商標))等の再生繊維を用いることができる。なお、第2繊維層12における熱可塑性樹脂繊維51とセルロース系繊維52の割合は、特に限定されないが、好適には、第2繊維層12の総重量を基準として、熱可塑性樹脂繊維51が、30~90重量%であり、セルロース系繊維52が10~70重量%であってよい。第2繊維層12がセルロース系繊維52を10重量%以上有していることにより、不織布の吸汗性能を向上できる。また、第2繊維層12が熱可塑性樹脂繊維51を30%以上有していることにより、セルロース系繊維内に熱可塑性樹脂繊維51が混在し、第2繊維層12のシート強度を維持することができる。
【0035】
第3繊維層13は、第3繊維層13の総重量を基準として、熱可塑性樹脂繊維51を90重量%から100重量%の割合で含む。熱可塑性樹脂繊維51は、第1繊維層11の熱可塑性樹脂繊維51と同等のものを用いることができる。熱可塑性樹脂繊維51の重量%が90%以上100%未満の場合、第3繊維層13は、熱可塑性樹脂繊維51以外の繊維としてレーヨン等のセルロース系繊維を有してよい。
【0036】
第1繊維層11の繊維の坪量は、9g/m2以上18g/m2以下であってよく、第2繊維層12の繊維の坪量は、9g/m2以上18g/m2以下であってよく、第3繊維層13の繊維の坪量は、6g/m2以上12g/m2以下であってよい。本実施の形態のトップシート10は、以下のように構成されている。第1繊維層11は、熱可塑性樹脂繊維51を100重量%有し、第1繊維層11全体の坪量は、12g/m2である。第2繊維層12は、熱可塑性樹脂繊維51とセルロース系繊維52をそれぞれ50重量%ずつ有し、第2繊維層12全体の坪量は、12g/m2である。第3繊維層13は、熱可塑性樹脂繊維51を100重量%有し、第3繊維層13全体の坪量は、9g/m2である。
【0037】
第1繊維層11と第2繊維層12の接合強度は、トップシート10と非肌側部材40の接合強度よりも低い。トップシート10と非肌側部材40の接合強度は、トップシート10の非肌面を構成する繊維層と非肌側部材40の接合強度である。例えば、本実施の形態のように第3繊維層13がトップシート10の非肌面を構成する形態にあっては、第3繊維層13と非肌側部材40の接合強度であり、変形例として第2繊維層12がトップシート10の非肌面を構成する形態にあっては、第2繊維層12と非肌側部材40の接合強度である。第1繊維層11と第2繊維層12は、接着剤によって接合されずに、繊維の交わり又は繊維の融着によって接合されていてもよい。一方、トップシート10と非肌側部材40は、接着剤、又は圧搾部等による熱融着によって接合されていてもよい。また、接合強度を比較する際は、同じ方向に剥離させた際の強度で比較でき、例えば、以下の方法によって評価できる。(1)レーヨン繊維等のセルロース系繊維を着色して、第1繊維層と第2繊維層の層間厚みを確認する。(2)同じロットの別の不織布(剥離方向80mm×幅方向25mm)を用意する。(1)で確認できた層間厚みを、手で剥離し30mmのつかみ部を作る。(3)定速伸長型引張試験機(島津オートグラフ)の条件を設定する。・条件:ピール試験モード・つかみ間隔30mm・チャック間隔50mm・引張速度100mm/min(4)引張試験機の上下のチャックに上層、下層をそれぞれ挟み測定を行う。(1)トップシートと非肌側部材の剥離強度については、層間は容易に判別できるため、上記の(1)を省略し、(2)~(4)と同じ手順で測定する。サンプルは、n=5を測定し、その平均値にて比較する。また、サンプルが指定の寸法(幅方向及び剥離方向)で採取できない場合には、測定可能な寸法で採取して評価を行い、当該評価結果を25mmの幅方向の長さに換算して比較するものとする。
【0038】
本態様によれば、第1繊維層11よりも非肌側T2に位置する第2繊維層12は、セルロース系繊維52を含む。セルロース系繊維52が体液を保持することで体液の吸液性能を向上できる。また、第2繊維層12は、第1繊維層11と第3繊維層13に挟まれており、直接肌に触れ難い。セルロース系繊維52は、肌に直に触れ難い第2繊維層12に配置されている。よって、第2繊維層12のセルロース系繊維52が体液を保持することで体液の吸液性能を維持しつつ、当該体液を保持したセルロース系繊維52が肌に触れることによる肌へのべたつきを抑制できる。当該肌へのべたつきを抑制するため、第1繊維層11は、セルロース系繊維52を含んでいないことが好ましい。また、体液を第2繊維層12で保持させずに吸収体側へ素早く移行するために、第3繊維層13もセルロース系繊維52を含んでいないことが好ましい。
【0039】
第1繊維層11と第2繊維層12の接合強度が比較的低いため、肌に対してトップシート10が擦れた際に、第1繊維層11が追従し易く、トップシート10の肌触りの低下を抑制できる。また、エアスルー不織布等、各繊維層が一体化して製造された不織布においては、少なくとも繊維の交わりによって第1繊維層11と第2繊維層12に架けわたされる繊維が配置され、第1繊維層11と第2繊維層12の接合強度が比較的低くても第1繊維層11と第2繊維層12の分断を抑制でき、不織布の性能を維持できる。トップシート10と非肌側部材40との接合強度が比較的高いため、トップシート10と非肌側部材40の層間剥離を防止するとともに、トップシート10と非肌側部材40の位置ずれを抑制し、かつ体液の移行性を確保できる。よって、吸収性物品1の吸収性能を維持できる。
【0040】
トップシート10の外面(肌側の面、及び非肌側の面)には、第1繊維層11と第3繊維層13がそれぞれ配置されている。セルロース系繊維52は、熱可塑性樹脂繊維51と比較して熱融着し難く、不織布の状態で抜け易かったり、毛羽立ちが生じ易かったりすることがある。一方、熱可塑性樹脂繊維51は、不織布の製造時において加熱されることで熱融着し易く、不織布の状態で抜け難く、また毛羽立ちが生じ難い。着用者の肌に第1繊維層11が触れるため、肌に対して不織布がすれた際に、セルロース系繊維52の毛羽立ちを抑制し、良好な肌触りを維持できる。
【0041】
熱可塑性樹脂繊維51の割合が高い第1繊維層11及び第3繊維層13は、セルロース系繊維52の割合が高い第2繊維層12と比較して、液の引き込み性が高い。着用者の肌側(体液が排出される側)に第1繊維層11が配置されるため、体液を迅速にトップシート10内に引き込み、液残りを抑制でき、またトップシート10の表面をドライに保つことができる。また、非肌側部材40に触れる面に第3繊維層13が配置される。第3繊維層13は、熱可塑性樹脂繊維51を多く含んでおり、第2繊維層12と比較して液の移行性が高い。よって、トップシート10から非肌側部材40への液の移行性を確保できる。
【0042】
第2繊維層12のセルロース系繊維52は、レーヨン繊維であってよい。セルロース系繊維52は、不織布内において繊維塊で存在しているのでなく、第2繊維層12の全体に亘って分散して配置されてよい。すなわち、セルロース系繊維は、平面方向(前後方向L及び幅方向)に連続的に、かつ層状に分布していてよい。レーヨン繊維は、経血等の排泄物に加えて、特に汗を吸収し易く、吸汗性能を向上できる。当該レーヨン繊維が平面方向の全体に亘って分散しているため、トップシート10の全面に亘って汗を吸収することができる。また、不織布内においてセルロース系繊維52が繊維塊で存在しているのでなく、セルロース系繊維52が全体に亘って分散して配置されていることにより、不織布における繊維の坪量のバラツキが少なく、地合いが良好な不織布を得ることができる。加えて、レーヨン繊維はコットンなどの天然繊維と比較すると、繊維長をコントロールすることができるため、製造ラインに天然繊維の細かな部分が残りにくく、他の天然繊維に比して地合いが良好な不織布を安定的に生産することができる。レーヨンの繊維長は、20mm以上60mm以下であってよく、好適には、35mm以上50mm以下であってよい。
【0043】
第3繊維層13の熱可塑性樹脂繊維の重量比率は、第2繊維層12の熱可塑性樹脂繊維の重量比率よりも高くてよい。第2繊維層12の非肌側T2に第3繊維層13が配置され、当該第3繊維層13の熱可塑性樹脂繊維51の重量比率が高いため、第2繊維層12に引き込まれた体液を第3繊維層13側に引き込み易い。特に、第3繊維層の熱可塑性樹脂繊維の重量比率が高く、第3繊維層の厚みが比較的低い形態にあっては、第3繊維層の繊維密度が高くなり、体液の引き込み性をより向上できる。トップシート10の肌面の液残りをより抑制し、トップシート10の肌面をドライに保つことができる。熱可塑性樹脂繊維51の重量比率が高い第1繊維層11と第3繊維層13が、トップシート10の肌面と非肌面に配置されているため、熱可塑性樹脂繊維の融着によってトップシート10の両面の強度が向上し、トップシート10の機能(体液の引き込み性等)を維持できる。また、トップシート10の両面に繊維同士の融着部分が形成されることにより、トップシートからの繊維の抜けを抑制できる。
【0044】
トップシート10の総重量を基準として、トップシート10は、熱可塑性樹脂繊維51を50重量%以上90重量%未満の割合で含んでよい。また、トップシート10の総重量を基準として、トップシート10は、セルロース系繊維52を10重量%以上40重量%以下の割合で含んでよい。
【0045】
第1繊維層11と第2繊維層12の幅方向Wに沿った接合強度は、第1繊維層11と第2繊維層12の前後方向Lに沿った接合強度よりも高くてよい。着用時に吸収性物品1は、座位時に脚によって挟まれたり、歩行時に脚の動きによって引っ張られたりして種々の方向からの力を受ける。このとき、吸収性物品1は、幅方向Wに沿う力を前後方向Lに沿う力よりも受けやすい。当該第1繊維層11と第2繊維層12の幅方向Wに沿った接合強度が高いため、外力に対して意図せずに第1繊維層11と第2繊維層12が剥離することを抑制できる。また、第1繊維層11と第2繊維層12の前後方向Lに沿った接合強度が低いため、肌に対して第1繊維層11が擦れた際に、第1繊維層11と第2繊維層12が前後方向Lにおいて一部弱接着又は剥離することで、第1繊維層11が肌に追従し易く、肌触りを向上できる。
【0046】
非肌側部材40は、コアラップシート32であり、コアラップシート32と吸収コア31の幅方向Wに沿った接合強度は、第1繊維層11と第2繊維層12の幅方向に沿った接合強度よりも低くてよい。吸収性物品1は、幅方向Wに沿う力を前後方向Lに沿う力よりも受けやすい。このとき、吸収性物品1は、非肌側T2よりも肌側T1が脚によってより力を受けやすい。幅方向Wに沿った断面視における吸収性物品1の形状は、肌側T1の幅方向Wの長さが非肌側T2の幅方向Wの長さよりも短い台形又は三角形となる。トップシート10内において肌側T1に位置する第1繊維層11と第2繊維層12の幅方向Wに沿った接合強度が高いため、外力に対して意図せずに第1繊維層11と第2繊維層12が剥離することを抑制できる。また、非肌側T2に位置するコアラップシート32と吸収コア31の幅方向Wに沿った接合強度が比較的低くても、受ける外力が低く、その接合状態を維持できる。
【0047】
トップシート10と非肌側部材40は、平面方向に間隔を空けて配置された接着剤35(
図3参照)によって接合されてよい。トップシート10と非肌側部材40を接合する接着剤35同士の間隔は、トップシート10の非肌面に配置された繊維の平均繊維長よりも短くてよい。本態様によれば、トップシート10の非肌面に配置された繊維は、接着剤35に重なって配置され易く、接着剤35によって接着され易い。よって、トップシート10の非肌面に配置された繊維は、不織布から抜け難くなり、トップシート10内に留まり易く、吸収性物品の性能を維持できる。また、接着剤35同士の間隔においては、繊維が接着されてなく、繊維の変形の自由度が高くなる。よって、第1繊維層11と第2繊維層12の層間剥離を抑制しつつ、トップシート10の追従性をより向上できる。加えて、繊維の変形の自由度が高いため、繊維の切断を抑制し、切断した繊維の毛羽立ちによる肌触りの悪化を抑制できる。本実施形態の形態では、第3繊維層13がトップシート10の非肌面に配置されており、第3繊維層13は、熱可塑性樹脂繊維を100重量%有する。そのため、接着剤35同士の間隔は、熱可塑性樹脂繊維51の平均繊維長よりも短く構成されている。なお、接着剤35の間隔が変化する形態にあっては、少なくとも一部の接着剤35の間隔よりも平均繊維長が短く構成されていればよい。平均繊維長の測定は、トップシート10の非肌面から繊維をピンセット等で所定数(例えば、100本)引き抜き、当該引き抜いた繊維の長さの平均を算出する。
【0048】
トップシート10と非肌側部材40を接合する接着剤同士の間隔は、セルロース系繊維52の平均繊維長よりも短くてよい。セルロース系繊維52は、熱可塑性樹脂繊維と比較して熱融着し難く、不織布に成形された状態において熱可塑性樹脂繊維51よりも抜け易い。接着剤同士の間隔がセルロース系繊維52の平均繊維長よりも短いため、セルロース系繊維52を接着剤によって接着し、セルロース系繊維52が抜けることを抑制できる。
【0049】
変形例において、トップシート10と非肌側部材40は、平面方向に間隔を空けて配置された圧搾部(図示せず)によって接合されてよい。圧搾部同士の間隔は、トップシート10の非肌面に配置された繊維の平均繊維長よりも短くてよい。本態様によれば、トップシートの非肌面に配置された繊維は、圧搾部に重なって配置され易く、圧搾部によって接着され易い。よって、トップシート10の非肌面に配置された繊維は、不織布から抜け難くなり、トップシート10内に留まり易く、吸収性物品の性能を維持できる。また、圧搾部同士の間隔においては、繊維が接合されてなく、繊維の変形の自由度が高くなる。よって、第1繊維層11と第2繊維層12の層間剥離を抑制しつつ、トップシート10の追従性をより向上できる。加えて、繊維の変形の自由度が高いため、繊維の切断を抑制し、切断した繊維の毛羽立ちによる肌触りの悪化を抑制できる。
【0050】
トップシート10において、第1繊維層11の厚みは、第2繊維層12の厚み以上であってよい。本態様によれば、第1繊維層11の厚みが厚く、セルロース系繊維52を主として構成された第2繊維層12と肌の距離を確保できる。よって、トップシート10の肌面の液残りを抑制し、トップシート10の肌面をドライに保つことができる。また、第1繊維層11が主として熱可塑性樹脂繊維51を有するため、第1繊維層11に引き込んだ体液を非肌側に迅速に移行でき、液捌け性を向上できる。
【0051】
トップシート10において、第3繊維層13の厚みは、第2繊維層12の厚み以上であってよい。本態様によれば、熱可塑性樹脂繊維51を主として構成された第3繊維層13の厚みが厚く、トップシート10から非肌側部材40への体液の移行性を高めることができる。また、第1繊維層11の厚みは、第3繊維層13の厚み以上であってよい。肌に対して不織布がすれた際に、セルロース系繊維52の毛羽立ちを抑制し、良好な肌触りを維持できる。また、第3繊維層13の厚みが比較的低いため、第2繊維層12側から非肌側部材40への体液の移行を促し、体液のリウェットを抑制できる。
【0052】
なお、第1繊維層11、第2繊維層12及び第3繊維層13の厚みは、下記方法で測定する。(1)吸収性物品を液体窒素で凍らせて、カッターで断面方向に切って、乾くのを待つ。(2)40~50℃の水に溶かしたPAC fabric dyeに一時間浸し、引き上げて自然乾燥するのを待つ。(3)染色された部分が、セルロース系繊維となるため、染色された部分を含む層を第2繊維層として特定し、その厚み方向の両側を第1繊維層及び第3繊維層として特定する。(4)株式会社キーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX-7000にて断面の拡大写真を撮影し、平面計測の2点間距離を選択し、不織布の各繊維層の厚みを測定する。(5)各不織布ともに10点の任意の距離を測定し、その平均値を厚みとする。なお、各繊維層の厚みを比較する際は、凸部18及び凹部19が形成されていない位置で比較する。
【0053】
図3(B)に示すように、トップシート10の肌面には、肌側に向かって突出した複数の凸部18と、凸部18間において非肌側T2に向かって窪んでいる複数の凹部19と、が形成されてよい。凸部18は、肌側T1に突出し中実であってよい。本明細書において、「中実」とは、凸部18内での液体の移動を妨げるような、繊維密度が周囲と比較して著しく低い空間を有さないことをいう。トップシートの肌面の高さが最も高い最高部16とトップシートの肌面の高さが最も低い最深部17の高さの差をdとした場合、最深部17からd/2の高さの位置よりも上方側へ突出する部分を凸部18、下方側へ窪む部分を凹部19ということができる。
【0054】
トップシート10は、凹部19における第1繊維層11の厚みTd1が、凸部18における第1繊維層11の厚みTc1より薄くなっている。ここで、凹部19における第1繊維層11の厚みTd1は、最深部17における第1繊維層11の厚みであり、凸部18における第1繊維層11の厚みTc1は、最高部16における第1繊維層11の厚みである。凸部18の寸法としては例えば幅0.25~5mm、高さ0.25~5mm、ピッチ0.5~10mmが挙げられる。これら凸部18の寸法は、無加圧状態におけるトップシート10を走査型電子顕微鏡などの拡大観察手段により拡大観察して、その平面写真又は平面画像から測定することができる。
【0055】
複数の凸部18は、前後方向Lに連続的に伸びる複数本の畝部として形成されており、複数の凹部19は、幅方向Wにおいて畝部と隣接し(すなわち幅方向Wに隣り合う畝部の間に位置し)、かつ前後方向Lに連続的に伸びる複数本の溝部として形成されてよい。トップシート10は、このような畝溝構造を備えているため、厚み方向Tのクッション性に優れ、良好な肌触りを発揮することができるうえ、排泄物を畝部及び溝部が延びる前後方向Lに沿って拡散させることができる。凸部18は、少なくとも第1繊維層11及び第2繊維層12に形成されてよく、第1繊維層11、第2繊維層12及び第3繊維層13に形成されていてもよい。
【0056】
凹部19の繊維密度は、凸部18の繊維密度よりも高くてよい。凸部18同士の間隔は、トップシート10の非肌面に配置された繊維の平均繊維長よりも短くてよい。凸部18同士の間隔がトップシート10の非肌面に配置された繊維の平均繊維長よりも短い。繊維は、凸部同士の間隔である凹部に配置され易い。凹部は、比較的繊維密度が高く、繊維の抜けが生じ難い。また、凸部18は肌と触れやすい一方で、凹部19は肌と触れにくいため、繊維が抜けることを抑制して、繊維をトップシート10内に留め、吸収性物品の性能を維持できる。一方、凸部18は、比較的繊維密度が低い。そのため、繊維間に隙間があり、クッション性が高く、繊維の端部がトップシート10の肌面に露出し難く、毛羽立ちによる肌触りの悪化を抑制できる。また、凸部18においては、繊維密度が低いため、繊維の変形の自由度が高く、トップシートの追従性をより向上できる。加えて、繊維の変形の自由度が高いため、繊維の切断を抑制し、切断した繊維の毛羽立ちによる肌触りの悪化を抑制できる。
【0057】
図3(B)に示すように、トップシート10の非肌面は、略平坦な表面構造を有してよい。よって、凸部18が配置された領域におけるトップシート10の非肌面は、周囲のトップシートの非肌面と厚み方向において同じ位置、又周囲のトップシート10の非肌面よりも非肌側に位置してよい。凸部18が配置された領域におけるトップシート10の非肌面が、周囲に対して肌側に浮き上がっていないため、トップシート10から非肌側部材40への体液の移行をより促し、体液の非肌側への移行性を向上できる。加えて、凸部18が配置された領域におけるトップシートの非肌面が、周囲に対して肌側に浮き上がっていないため、吸収性物品の使用中に凸部18が潰れにくく、凸部18の形状を維持し易い。
【0058】
また、別の例として、
図3(C)に示すように、凸部18は、肌側T1に突出し中実でなく、中空部を有してもよい。凸部18が配置された領域におけるトップシート10の非肌面は、周囲のトップシート10の非肌面よりも肌側T1に位置してよい。凸部18が配置された領域におけるトップシート10の非肌面は、周囲のトップシート10の非肌面よりも肌側T1に位置しており、周囲よりも非肌側部材40に対して浮き上がっている。凸部18は、第1繊維層11及び第2繊維層12に形成されてよく、第3繊維層13にも形成されてよい。凸部18が身体に対して擦れた際に、第1繊維層11の繊維及び第2繊維層12の繊維が当該擦れによって抜けてしまうことがある。このとき、融着されていないセルロース系繊維52は、融着される熱可塑性樹脂繊維51よりも抜けやすい。しかし、凸部18が配置された領域におけるトップシート10と非肌側部材40の間に空間が形成されているため、肌と凸部18がすれることに起因してセルロース系繊維52が抜けた際に、セルロース系繊維52が当該空間に導かれ易い。よって、繊維層から露出したセルロース系繊維52が肌に当たることの違和感を抑制できる。
【0059】
凸部18及び凹部19は、前後方向Lに延び、かつ幅方向に間隔を空けて配置されており、トップシート10の幅方向Wの中央に設けられ、トップシート10の幅方向Wの側部に設けられていなくてもよい。例えば、凸部18及び凹部19は、トップシート10の幅方向Wの中心から左右に20mmまでの範囲内に少なくとも設けられ、トップシート10の幅方向Wの外側縁から20mmまでの範囲内に少なくとも設けられていなくてもよい。凸部18及び凹部19を設けることで、肌に対するトップシート10の接触面積を低減させることができる。一方で、前後方向に延び、かつ幅方向Wに間隔を空けて凸部18及び凹部19を設けることで、トップシートの幅方向の長さが短くなり、製造コストが増大することがある。よって、排泄口(膣口、排尿口)と接しやすい部分(トップシートの幅方向Wの中央)に凸部18及び凹部19を設け、排泄口と接し難い部分(トップシートの外側部)に凸部18及び凹部19を設けないことで、製造コストを抑えることができる。また、トップシートの外側部がサイドシートと重なる形態にあっては、トップシートにおいて凸部18及び凹部19が形成されていない領域をサイドシートと接合させることができ、トップシート10とサイドシートとを安定的に接合させることができる。
【0060】
トップシート10は、
図3(B)に示すように、圧搾部14を備えていてもよい。圧搾部14は、少なくとも第1繊維層11及び第2繊維層12を厚み方向に圧縮してよい。本実施の形態の圧搾部14は、凹部19において前後方向Lに沿って間欠的に配置される。圧搾部14は、凹部19において前後方向Lに等間隔に配置されてもよいし、非等間隔に配置されてもよい。圧搾部14は、幅方向Wに隣り合う凹部19において、前後方向Lに同じ位置でもよいし、異なる位置でもよい。圧搾部14は、第1繊維層11と第2繊維層12とに跨がって形成されてよく、第1繊維層11、第2繊維層12及び第3繊維層13に跨がって形成されてもよい。本態様によれば、圧搾部14によって第1繊維層11の繊維及び第2繊維層12の繊維が抜けることを抑制し、繊維の抜けによる毛羽立ちを抑制できる。また、圧搾部14は、凸部18よりも凹んだ凹部19に設けられており、身体に対して直に接しにくい。よって、圧搾部14が身体に当たることによる違和感を抑制できる。
【0061】
ここで、トップシートを構成する不織布の坪量、厚み、繊維密度及び繊度は下記方法で測定する。
(1)不織布の坪量:不織布を5cm×5cmの大きさに切り出して試料とし、100℃以上の雰囲気での乾燥処理後に質量を測定する。測定した質量を試料の面積で割り算して試料の坪量を算出する。10個の試料の坪量を平均した値を不織布の坪量とする。
(2)不織布の厚み:上記繊維層の厚みの測定に準じた方法で測定できる。具体的には、吸収性物品を液体窒素で凍らせて、カッターで断面方向に切って、株式会社キーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX-7000にて断面の拡大写真を撮影し、平面計測の2点間距離を選択し、不織布の厚みを測定する。
(3)不織布の繊維密度:不織布の繊維密度は、上記方法で求めた不織布の秤量を、上記方法で求めた不織布の厚みで割り算して算出する。
(4)繊維の繊度:繊維の繊度は、走査型電子顕微鏡を用いて、対象となる繊維の断面形状を拡大観察して繊維の断面積を測定し、その断面積と繊維の比重(すなわち、繊維の構成成分の比重)から算出する。
【0062】
次いで、
図4に基づいて、吸収性物品用不織布の製造方法S100について説明する。製造方法S100は、所望の風合い及び吸収速度を確保できる不織布を得るように構成されている。
図4は、製造方法S100を模式的に示した図であり、図示するMDは、搬送方向を示しており、MD方向に沿って順に製造される。なお、本実施の形態では、当該製造方法によって得られた不織布は、トップシート10に用いられる。製造方法S100は、エアスルー法であり、ウエブ形成工程S101と、熱風貫通工程S105と、を少なくとも有する。
【0063】
ウエブ形成工程S101は、熱可塑性樹脂繊維51を90重量%から100重量%の割合で含む第1繊維層11と、熱可塑性樹脂繊維51とセルロース系繊維52を含む第2繊維層12と、熱可塑性樹脂繊維51を90重量%から100重量%の割合で含む第3繊維層13と、を厚み方向Tに積層したウエブを形成する。本実施の形態では、第3繊維層13を形成する繊維を第3供給部(図示せず)から供給し、第3繊維層13を構成する繊維を積層する。そのため、搬送装置120の搬送面121上には、第3繊維層13が当接している。次いで、第2繊維層12を形成する繊維を第2供給部(図示せず)から供給し、第2繊維層12を構成する繊維を積層する。第2繊維層12は、第3繊維層13上に積層される。よって、搬送面121と第2繊維層12の間には、第3繊維層13が配置され、第2繊維層12は、搬送面121に直に接していない。次いで、第1繊維層11を形成する繊維を第1供給部(図示せず)から供給し、第1繊維層11を構成する繊維を積層する。第1繊維層11は、第2繊維層12上に積層される。よって、搬送面121から上側に向かって、第3繊維層13、第2繊維層12及び第1繊維層11の順で積層される。この状態で、各繊維は、積層されただけであり、互いに接合されてなく、容易に分離可能である。
【0064】
熱風貫通工程S105は、ウエブ形成工程S101の後の工程であり、通気性を有する搬送面121にウエブの第3繊維層13を対向して配置した状態で、ウエブに熱風を貫通させる。熱風貫通工程S105は、第1繊維層11、第2繊維層12及び第3繊維層13を積層した状態で、第1繊維層11側から搬送面121に向かって熱風を当てる。搬送面121には、網目状等、通気性を確保するための空隙を有する形態である。熱風は、ウエブを通過し、搬送面121の空隙を介して通過する。熱風は、所定温度の熱風(例えば、100℃以上)であり、熱風が通過する過程でウエブ内の繊維が互いに交わり、各繊維層を馴染ませる。よって、熱風貫通工程S105後の状態で、各繊維及び各繊維層は、互いに部分的に交わり、分離し難くなる。
【0065】
製造方法S100は、ウエブ形成工程S101の後、かつ熱風貫通工程S105の前に、交絡工程S103を有してよい。交絡工程S103は、ウエブに高温の流体を吹き付け、ウエブの繊維同士を交絡させる。また、交絡時の熱によって、熱可塑性樹脂繊維51の交点に融着部15が形成されてもよい。
【0066】
製造方法S100は、熱風貫通工程S105の後に、凹凸形成工程(図示せず)を有してよい。凹凸形成工程は、一対のギアロール(図示せず)間にウエブを通過させ、ウエブを押圧し、第1繊維層11及び第3繊維層13の少なくとも一方側の面に、厚み方向Tの外側に向かう方向に突出する複数の凸部18と、凸部18(
図3参照)間において厚み方向の内側に向かう方向に窪んでいる複数の凹部19(
図3参照)と、を形成する。なお、凹凸形成工程は、熱風貫通工程S105の後に連続して行ってもよいし、一度不織布として巻き取った後に、別工程として行ってもよい。このような製造方法S100によって、上述の不織布を得ることができる。
【0067】
本実施の形態の製造方法S100によれば、搬送面121にウエブの第3繊維層13が対向して配置され、当該状態で熱風が当てられる。よって、セルロース系繊維52を含む第2繊維層12が搬送面121に対向する形態と比較して、セルロース系繊維52が搬送面121に直に接し難く、加えて、第3繊維層13の厚み分、セルロース系繊維52と搬送面121との距離を確保できる。よって、セルロース系繊維52が搬送面121に付着したり、通気性を確保するための搬送面121の空隙にセルロース系繊維52が入り込んだりする不具合を抑制できる。また、第1繊維層11が表面側に配置された状態で熱風が当てられるため、セルロース系繊維52の飛散を抑制できる。よって、セルロース系繊維52が飛散したり搬送面に付着したりする不具合を抑制しつつ、エアスルー法によって所望の風合い及び吸収速度を確保した不織布を得ることができる。
【0068】
ウエブ形成工程S101は、第1繊維層11の熱可塑性樹脂繊維51の坪量を、第2繊維層12のセルロース系繊維52の坪量よりも高くしてよい。本態様によれば、熱風が当てられる面となる表面と第2繊維層12の距離を確保でき、セルロース系繊維52の飛散をより抑制できる。また、第1繊維層11を肌の当接する面に配置した吸収性物品においては、セルロース系繊維を主として構成された第2繊維層と肌の距離を確保できる。肌の当接する面にセルロース系繊維が配置され難く、肌に対して不織布がすれた際に、セルロース系繊維52の毛羽立ちを抑制し、良好な肌触りを維持できる。また、第1繊維層11を肌の当接する面に配置した吸収性物品においては、第1繊維層11の熱可塑性樹脂繊維の坪量が比較的高いため、汗の吸収性と体液の引き込み性を確保し、液残りを抑制できる。第1繊維層11の熱可塑性樹脂繊維51の坪量は、好適には、第2繊維層12のセルロース系繊維52の坪量に対する1.5倍以上であってよく、より好適には、第2繊維層12の繊維の坪量に対する2.0倍以上であってよい。
【0069】
ウエブ形成工程S101は、第3繊維層13の熱可塑性樹脂繊維51の坪量を、第2繊維層12のセルロース系繊維52の坪量よりも高くしてよい。本態様によれば、搬送面121と第2繊維層12の距離を確保でき、セルロース系繊維52が搬送面121上に残ったり通気性を確保するための搬送面121の空隙にセルロース系繊維52が入り込んだりする不具合をより抑制できる。第3繊維層13の熱可塑性樹脂繊維51の坪量は、好適には、第2繊維層12のセルロース系繊維52の坪量に対する1.5倍以上であってよく、より好適には、第2繊維層12のセルロース系繊維52の坪量に対する2.0倍以上であってよい。
【0070】
ウエブ形成工程S101は、第1繊維層11の繊維の坪量を、第3繊維層13の繊維の坪量よりも高くしてよい。本態様によれば、第1繊維層11を肌の当接する面に配置した吸収性物品1においては、セルロース系繊維を主として構成された第2繊維層と肌の距離を確保できる。肌の当接する面にセルロース系繊維が配置され難く、肌に対して不織布がすれた際に、セルロース系繊維52の毛羽立ちを抑制し、良好な肌触りを維持できる。また、第3繊維層13の坪量が比較的低いため、第2繊維層12側から非肌側部材40への体液の移行を促し、体液のリウェットを抑制できる。
【0071】
交絡工程S103は、ウエブに高温の流体を吹き付け、熱可塑性樹脂繊維51を交絡させる。交絡工程S103は、熱可塑性樹脂繊維51同士を融着させた融着部15を形成してよい。交絡工程S103は、第3繊維層13における単位面積あたり融着部15の個数を、第1繊維層11における単位面積あたり融着部15の個数よりも多く形成してよい。本態様によれば、搬送面121に対向する第3繊維層13に多くの融着部15が形成されているため、融着されていない繊維が搬送面121上に残ったり、搬送面121の空隙に融着されていない繊維が入り込んだりする不具合を抑制できる。また、不織布の外面を構成する第1繊維層11と第3繊維層13の一方である第3繊維層13の融着部15を多く形成し、他方である第1繊維層11の融着部15を少なく形成することで、不織布において比較的硬い表面と比較的柔らかい表面の両方を形成できる。そのため、第1繊維層11を肌に当接するように配置した吸収性物品を製造することで、吸収性物品の肌触りを向上できる。また、肌に触れにくい第3繊維層13に融着点を多く形成するころで、肌に擦れにくい部分で不織布の形状を維持し易くなる。よって、不織布自体の風合いを保ちつつ不織布のよれを抑制できる。
【0072】
凹凸形成工程は、ウエブの少なくとも一方側の面に凸部18と凹部19を形成する。当該一方側の面には、第1繊維層11及び第3繊維層13のいずれかが配置されている。一方側の面に配置された繊維層(第1繊維層又は第3繊維層)の厚みは、他方側の面に配置された繊維層(第3繊維層又は第1繊維層)よりも厚く構成されてよい。本態様によれば、凸部18及び凹部19が形成された一方側の繊維層(第1繊維層又は第3繊維層)の厚みが比較的厚いため、凹部においても所定の厚みを維持でき、セルロース系繊維52が不織布の外面に露出することを抑制できる。また、他方側の繊維層(第3繊維層又は第1繊維層)は、一方側の繊維層と比較して、凸部及び凹部の形成による偏りが生じ難く、繊維層全体に亘って均一の厚みを確保し易い。よって、他方側の繊維層の厚みを薄くすることで、繊維の重量を抑え、製造コストを低減できる。
【0073】
凹凸形成工程は、凸部18及び凹部19を前後方向Lに延び、かつ幅方向Wに間隔を空けて複数設け、かつ凸部18及び凹部19を、ウエブの幅方向Wの側部に設けずに、ウエブの幅方向Wの中央に設けてよい。すなわち、凸部18及び凹部19は、前後方向Lに延び、かつ幅方向に間隔を空けて配置されており、トップシート10の幅方向Wの中央に設けられ、トップシート10の幅方向Wの側部に設けられていなくてもよい。例えば、凸部18及び凹部19は、トップシート10の幅方向Wの中心から左右に20mmまでの範囲内に少なくとも設けられ、トップシート10の幅方向Wの外側縁から20mmまでの範囲内に少なくとも設けられていなくてもよい。凸部18及び凹部19を設けることで、肌に対するトップシート10の接触面積を低減させることができる。一方で、前後方向に延び、かつ幅方向Wに間隔を空けて凸部18及び凹部19を設けることで、トップシート10の幅方向Wの長さが短くなり、製造コストが増大することがある。よって、排泄口(膣口、排尿口)と接しやすい部分(トップシート10の幅方向Wの中央)に凸部18及び凹部19を設け、排泄口と接し難い部分(トップシート10の外側部)に凸部18及び凹部19を設けないことで、製造コストを抑えることができる。また、トップシートの外側部がサイドシートと重なる形態にあっては、トップシートにおいて凸部18及び凹部19が形成されていない領域をサイドシートと接合させることができ、トップシート10とサイドシートとを安定的に接合させることができる。
【0074】
ウエブ形成工程S101は、ウエブの搬送方向と直交する直交方向の第1繊維層11の長さを、直交方向の第2繊維層12の長さよりも長くしてよい。ウエブの搬送時、第1繊維層11及び第2繊維層12は、搬送方向MDに連続している。直交方向の第1繊維層11の長さが直交方向の第2繊維層12の長さよりも長いことにより、第2繊維層12の全体を第1繊維層11によって覆うことができる。第2繊維層は、セルロース系繊維を比較的多く配合しているため、繊維の融着性が弱く、熱風貫通工程において直に熱風が当たると、セルロース系繊維が巻き上がる可能性がある。しかし、第1繊維層11によって第2繊維層12を覆うことで、第2繊維層12のセルロース系繊維の巻き上がりを抑制できる。
【0075】
ウエブ形成工程は、ウエブの搬送方向と直交する直交方向の第3繊維層の長さを、直交方向の第2繊維層の長さよりも長くしてよい。ウエブの搬送時、第3繊維層13及び第2繊維層12は、搬送方向MDに連続している。直交方向の第3繊維層13の長さが直交方向の第2繊維層12の長さよりも長いことにより、第2繊維層12の全体を第3繊維層13によって覆うことができる。第2繊維層は、セルロース系繊維を比較的多く配合しているため、繊維の融着性が弱く、熱風貫通工程において、金属又は樹脂のメッシュベルト等の搬送面にセルロース系繊維が触れると、搬送面の空隙にセルロース系繊維が引っかかるおそれがある。しかし、第3繊維層13によって第2繊維層12を覆うことで、第2繊維層12のセルロース系繊維が搬送面に引っかかることを抑制できる。
【0076】
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【0077】
変形例において、トップシート10の非肌面には、第2繊維層12が配置されてよい。すなわち、トップシート10は、第1繊維層11及び第2繊維層12を有し、第3繊維層13を有していなくてもよい。本態様によれば、第2繊維層12のセルロース系繊維52は、熱可塑性樹脂繊維51と比較して融着によって接合し難いため、繊維の抜けが生じ易い。しかし、トップシート10と非肌側部材40の接合強度が第1繊維層11と第2繊維層12の接合強度よりも高く構成されていることにより、第2繊維層12と非肌側部材40の接合強度によってセルロース系繊維52の抜けを抑制できる。
【0078】
また、変形例において、吸収性物品は、トップシート10の側部を覆うサイドシートを有してよい。なお、サイドシートは、トップシート10の肌側T1を覆ってもよいし、トップシート10の非肌側T2を覆ってもよい。サイドシートの少なくとも一部は、吸収コアよりも非肌側に配置された液不透過性のバックシートに接合されてよい。トップシートとサイドシートの接合強度は、第1繊維層と第2繊維層の接合強度よりも高くてよい。本態様によれば、第1繊維層11と第2繊維層12が層間剥離して身体に追従しても、サイドシートを介して吸収性物品全体のずれを抑制できる。
【符号の説明】
【0079】
1 :吸収性物品
10 :トップシート
11 :第1繊維層
12 :第2繊維層
13 :第3繊維層
14 :圧搾部
15 :融着部
18 :凸部
19 :凹部
31 :吸収コア
32 :コアラップシート
40 :非肌側部材
51 :熱可塑性樹脂繊維
52 :セルロース系繊維
L :前後方向
T :厚み方向
T1 :肌側
T2 :非肌側
W :幅方向