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特開2024-23052ネガ型感光性樹脂組成物、ネガ型感光性樹脂組成物被膜、ネガ型感光性樹脂組成物フィルム、硬化膜、およびこれらを用いた電子部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023052
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ネガ型感光性樹脂組成物、ネガ型感光性樹脂組成物被膜、ネガ型感光性樹脂組成物フィルム、硬化膜、およびこれらを用いた電子部品
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20240214BHJP
   G03F 7/037 20060101ALI20240214BHJP
   C08G 59/32 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/004 503Z
G03F7/037
G03F7/004 512
C08G59/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126604
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 和行
(72)【発明者】
【氏名】加藤 圭悟
(72)【発明者】
【氏名】有光 晃二
【テーマコード(参考)】
2H225
4J036
【Fターム(参考)】
2H225AE06P
2H225AF23P
2H225AF78P
2H225AM77P
2H225AM92P
2H225AM99P
2H225AN11P
2H225AN50P
2H225AN54P
2H225AN74P
2H225BA05P
2H225CA12
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC12
4J036AB17
4J036GA01
4J036GA26
4J036HA02
4J036JA09
(57)【要約】
【課題】高分子化合物を配合する組成においても、十分な露光感度を有するネガ型感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)高分子化合物、(B)カチオン重合性化合物、及び(C)光カチオン重合開始剤を含有するネガ型感光性樹脂組成物であって、さらに、(D)酸増殖剤を含有する、ネガ型感光性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)高分子化合物、(B)カチオン重合性化合物、及び(C)光カチオン重合開始剤を含有するネガ型感光性樹脂組成物であって、
さらに(D)酸増殖剤を含有する、ネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C)光カチオン重合開始剤がオニウム塩である、請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(D)酸増殖剤が、モノまたはジスルホン酸シクロアルキルエステルである、請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(D)酸増殖剤が、ペンタフルオロベンゼンに由来する構造を含有する、請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)高分子化合物が、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、及びポリベンゾオキサゾールからなる群より選ばれる少なくとも1つの高分子化合物である、請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(B)カチオン重合性化合物が、イソシアヌレート骨格を有するエポキシ化合物である、請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物から形成されたネガ型感光性樹脂組成物被膜。
【請求項8】
請求項7に記載のネガ型感光性樹脂組成物被膜、及び、支持体を有する、ネガ型感光性樹脂組成物フィルム。
【請求項9】
請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物を硬化した硬化膜。
【請求項10】
請求項9に記載の硬化膜を含む、電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネガ型感光性樹脂組成物、ネガ型感光性樹脂組成物被膜、ネガ型感光性樹脂組成物フィルム、硬化膜、および電子部品に関する。より詳しくは、半導体素子や電子部品の表面保護膜、層間絶縁膜、MEMS(マイクロエレクトロメカニカルシステムズ)の構造体などに好適に用いられる樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の表面保護膜や層間絶縁膜には、耐熱性や電気絶縁性及び機械特性に優れたポリイミド系材料やポリベンゾオキサゾール系材料が広く使用されている。近年の半導体素子の高密度化や高性能化の要求に伴い、生産効率の観点から、表面保護膜や層間絶縁膜には、感光性を有する材料が求められている。
【0003】
一方、感光性材料には、近年の半導体素子の様々なパッケージング構造や、MEMS向けに高アスペクト比の加工が要求されている。そのような要求に応えるために、化学増幅型のカチオン重合系の感光性材料が開示されている(例えば、特許文献1)。更に、カチオン重合系材料にポリイミドを含有させることで、MEMS等の構造体として用いられた際に必要となってくる機械特性や熱特性の向上を意図したポリイミド系光カチオン重合材料が開示されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/007764号
【特許文献2】国際公開第2021/059843号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2のようなポリイミド系光カチオン重合材料では、高分子化合物が配合されることで、カチオン重合性モノマーの反応性が抑制され、パターン加工性材料として用いるには、高分子化合物を含有しない組成と比較して、感度が悪いといった課題があった。
【0006】
そこで本発明は、高分子化合物を配合する組成においても、十分な露光感度を有するネガ型感光性樹脂組成物、ネガ型感光性樹脂組成物被膜、ネガ型感光性樹脂組成物フィルム、硬化膜、および電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが、鋭意検討した結果、光カチオン重合系材料に酸増殖剤を含有させることによって、高分子化合物を含有した組成においても十分な露光感度が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
(A)高分子化合物、(B)カチオン重合性化合物、及び(C)光カチオン重合開始剤を含有するネガ型感光性樹脂組成物であって、さらに(D)酸増殖剤を含有する、ネガ型感光性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高分子化合物を配合する組成においても、十分な露光感度を有するネガ型感光性樹脂組成物、ネガ型感光性樹脂組成物被膜、ネガ型感光性樹脂組成物フィルム、硬化膜、および電子部品を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、(A)高分子化合物、(B)カチオン重合性化合物、及び(C)光カチオン重合開始剤を含有するネガ型感光性樹脂組成物であって、さらに(D)酸増殖剤を含有する、ネガ型感光性樹脂組成物である。
【0011】
(A)高分子化合物
本発明のネガ型感光性樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」と称することがある)は、(A)高分子化合物を含有する。
【0012】
(A)高分子化合物は、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、及びポリベンゾオキサゾールからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であることが好ましい。なお、本発明においてポリイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体は、それぞれ、上記のポリアミドに相当する。
本発明の樹脂組成物は、上記の化合物である(A)高分子化合物を含有することにより、樹脂組成物をフィルム状の樹脂組成物被膜にする際の製膜性に優れ、また硬化膜とした際に膜の引張強度・引張伸度に優れる。
【0013】
(A)高分子化合物は、その重量平均分子量は特に限定されないが、重量平均分子量が1,000以上200,000以下であることが好ましい。(A)高分子化合物は、単独で使用しても2種以上を併用してもよい。本発明における(A)高分子化合物の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)によって測定し、ポリスチレン換算で算出することによって求められる。
【0014】
(A)高分子化合物は、アルカリ可溶性であることが好ましい。アルカリ可溶性であると、パターン加工時の現像で、環境負荷の要因となる有機溶媒を使用することなく、アルカリ水溶液で現像をすることができるため好ましい。ここで言うアルカリ可溶性とは、水酸化テトラメチルアンモニウムの2.38質量%水溶液100gに対して、25℃で0.1g以上溶解するものを指す。
【0015】
アルカリ可溶性を発現するために、(A)高分子化合物は、アルカリ可溶性の官能基を有することが望ましい。アルカリ可溶性の官能基とは酸性を有する官能基であり、具体的には、フェノール性水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基などが挙げられる。上記、アルカリ可溶性の官能基の中でも、樹脂組成物の保存安定性や、導体である銅配線への腐食等の問題から、アルカリ可溶性の官能基はフェノール性水酸基であることが好ましい。(A)高分子化合物は、分子鎖内にフェノール性水酸基を有する化合物であることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明の樹脂組成物は、(A)高分子化合物の分子鎖末端が、カルボン酸残基に由来する構造であることが好ましい。本発明の樹脂組成物は、分子鎖末端がカルボン酸残基に由来する構造となった(A)高分子化合物を含むことが好ましいが、分子鎖末端がカルボン酸残基に由来する構造とはなっていない高分子化合物を含むことも可能である。
【0017】
本発明の樹脂組成物において、分子鎖末端がカルボン酸残基に由来する構造とはなっていない高分子化合物を含む場合には、その含有量は少ないほど好ましく、具体的には、分子鎖末端がカルボン酸残基に由来する構造となった(A)高分子化合物の合計100質量部に対して、分子鎖末端がカルボン酸残基に由来する構造とはなっていない(A)高分子化合物の含有量は0質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0質量部以上5質量部以下であることがより好ましく、0質量部以上2質量部以下であることが特に好ましい。
【0018】
分子鎖末端がカルボン酸残基に由来する構造となった(A)高分子化合物の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物100質量%において、20質量%以上95質量%以下含むことが好ましく、30質量%以上85質量%以下含むことがより好ましく、30質量%以上70質量%以下含むことが特に好ましい。分子鎖末端がカルボン酸残基に由来する構造となった(A)高分子化合物を樹脂組成物中に20質量%以上含むことによって、樹脂組成物を硬化膜とした際の膜強度が向上する。一方、分子鎖末端がカルボン酸残基に由来する構造となった(A)高分子化合物の含有量を樹脂組成物中に95質量%以下とすることにより、カチオン重合反応が進行し易くなり、硬化膜の耐薬品性が向上する。
【0019】
(A)高分子化合物の分子鎖末端がカルボン酸残基に由来する構造であることによって、分子鎖末端が、カチオン重合の阻害官能基となり得る。さらに、アミン末端構造を保有しない分子構造とすることができ、結果として、ポリアミド、ポリイミドおよびポリアミドイミドを用いた際においても、十分なカチオン重合性を発現することができる点で好ましい。
【0020】
ここで、(A)高分子化合物の分子鎖末端におけるカルボン酸残基に由来する構造とは、ポリアミド、ポリイミドまたはポリアミドイミドを構成し得る、カルボン酸残基に由来する有機基であり、モノカルボン酸やジカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、ジ酸クロリド化合物、テトラカルボン酸または酸無水物、酸二無水物等に由来する構造を言う。上記の中でも特に、(A)高分子化合物の分子鎖末端のカルボン酸残基に由来する構造が、テトラカルボン酸二無水物に由来する構造であることが好ましい。
【0021】
分子鎖末端がテトラカルボン酸二無水物に由来する構造であると、熱硬化前の樹脂組成物の保存安定性が向上する点で好ましい。さらに、樹脂組成物を硬化膜とした際に、末端のカルボン酸無水物基が反応性官能基となり、熱硬化後の耐熱性や耐薬品性が向上する点で好ましい。
【0022】
(A)高分子化合物の分子鎖末端がカルボン酸残基に由来する構造(有機基)としては、芳香族ジカルボン酸、芳香族酸二無水物、脂環式ジカルボン酸、脂環式酸二無水物、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族酸二無水物などを挙げることができるが、これらに限定されない。また、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用される。
【0023】
これらの中でも、パターニングの際に使用する波長に対して、透明な樹脂を設計することができ、結果として厚膜で微細なパターン加工性を発現することができる点から、脂環式のカルボン酸残基に由来する有機基であることが好ましい。
【0024】
本発明において、前記(A)高分子化合物は、ポリアミド、ポリイミド、およびポリアミドイミドであることが好ましいが、これらが下記に示す一般式(1)および一般式(2)で表される構造から選ばれる少なくとも1種類以上の構造を有する化合物であることがより好ましい。
【0025】
【化1】
【0026】
(一般式(1)および(2)中、Xは2~10価の有機基を示し、Xは4~10価の有機基を示し、YおよびYはそれぞれ独立に2~4価の有機基を示し、Rは水素原子または炭素数1~20の有機基を示す。qは0~2の整数であり、r,s,t,uはそれぞれ独立に0~4の整数である。)
【0027】
一般式(1)および(2)中のYおよびYはそれぞれ独立に2~4価の有機基を示し、ジアミン由来の有機基を表している。
【0028】
前記(A)高分子化合物の一般式(1)および(2)中のYおよびYは、フェノール性水酸基を有するジアミン残基を含有することが好ましい。フェノール性水酸基を有するジアミン残基を含有させることで、樹脂のアルカリ現像液への適度な溶解性が得られるため、露光部と未露光部の高いコントラストが得られ、所望のパターンが形成できる。
【0029】
フェノール性水酸基を有するジアミンの具体的な例としては、例えば、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)メチレン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシ)ビフェニル、2,2’-ジトリフルオロメチル-5,5’-ジヒドロキシル-4,4’-ジアミノビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-5,5’-ジヒドロキシベンジジンなどの芳香族ジアミンや、これらの芳香族環や炭化水素の水素原子の一部を、炭素数1~10のアルキル基やフルオロアルキル基、ハロゲン原子などで置換した化合物、また、下記に示す構造を有するジアミンなどを挙げることができるが、これらに限定されない。共重合させる他のジアミンは、そのまま、あるいは対応するジイソシアネート化合物、トリメチルシリル化ジアミンとして用いることができる。また、これら2種以上のジアミン成分を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
【化2】
【0031】
【化3】
【0032】
一般式(1)および(2)中のYおよびYは、前記以外の芳香族を有するジアミン残基を含んでもよい。これらを共重合することで、耐熱性が向上できる。芳香族を有するジアミン残基の具体的な例としては、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、2,6-ナフタレンジアミン、ビス(4-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’,3,3’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’,4,4’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルなどの芳香族ジアミンや、これらの芳香族環や炭化水素の水素原子の一部を、炭素数1~10のアルキル基やフルオロアルキル基、ハロゲン原子などで置換した化合物などを挙げることができるが、これらに限定されない。共重合させる他のジアミンは、そのまま、あるいは対応するジイソシアネート化合物、トリメチルシリル化ジアミンとして用いることができる。また、これら2種以上のジアミン成分を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
本発明における上記一般式(1)や一般式(2)中、XおよびXはカルボン酸残基が好ましく、Xは2~10価の有機基であり、Xは4~10価の有機基である。
【0034】
前記カルボン酸残基としては、脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来する構造を有することが好ましい。つまり(A)高分子化合物が、ポリアミド、ポリイミド、及びポリアミドイミドからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であって、さらに、脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来する構造を有することが好ましい。
【0035】
カルボン酸残基が、脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来する構造を有することにより、露光波長に対する樹脂組成物の光透過率が高くなり、20μm以上の厚膜での加工が容易となる。更に理由は定かではないが、(A)高分子化合物が脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来する構造を有することにより、芳香族酸二無水物と比較して、カチオン重合の反応性が高くなり、樹脂組成物を硬化膜とした際の膜の耐薬品性が向上する点で好ましい。
【0036】
脂環式テトラカルボン酸二無水物の中でも、硬化物とした際の耐薬品性が向上し、イオンマイグレーション耐性が向上する点から、多環構造を有する脂環式テトラカルボン酸二無水物であることが好ましい。
【0037】
本発明における(A)高分子化合物が多環構造を有する脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来する構造を有する場合、(A)高分子化合物は下記一般式(3)または(4)の少なくとも一方で表される化合物に由来する構造を有することが好ましい。
【0038】
【化4】
【0039】
(式中、R、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。)
【0040】
(A)高分子化合物が前記一般式(3)または(4)で表される化合物に由来する構造を有することで、樹脂骨格が屈曲性を有するため、硬化前の樹脂組成物として、有機溶剤への溶解性が高く、樹脂組成物中において樹脂の析出が発生し難く、保存安定性に優れる点から好ましい。
【0041】
多環構造を有する脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来する有機基の具体的な例としては、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸二無水物、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-4メチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸二無水物、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-7メチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-2’-シクロペンタノン-5’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-2’-シクロヘキサノン-6’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0042】
前記カルボン酸残基としては、前記多環構造を有する脂環式テトラカルボン酸二無水物以外の酸二無水物を含んでもよい。具体的には、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物、9,9-ビス{4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}フルオレン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシ-2-シクロペンタン酢酸二無水物、2,3,4,5-テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物などを挙げることができるが、これらに限定されない。また、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用される。
【0043】
本発明における一般式(1)および(2)で表される構造のモル比は、重合する際に用いるモノマーのモル比から算出する方法や、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて、得られた樹脂、樹脂組成物、硬化膜におけるポリアミド構造やイミド前駆体構造、イミド構造のピークを検出する方法において確認できる。
【0044】
分子鎖末端がカルボン酸残基に由来する構造である(A)高分子化合物は、例えば分子鎖末端がカルボン酸残基であるポリイミドの場合には、重合の際に用いるジアミンに対して酸無水物の含有量を多くすることで得ることができる。
【0045】
その際、(A)高分子化合物のカルボン酸残基の合計を100モル%とした場合、アミン残基の合計は60モル%以上98モル%以下であることが好ましい。つまり(A)高分子化合物は、カルボン酸残基の合計を100モル%とした場合に、アミン残基の合計を60モル%以上98モル%以下として重合させて得られる化合物であることが好ましい。アミン残基の合計が60モル%以上であると、高分子化合物の重量平均分子量が1,000以上となり易く、樹脂組成物をフィルム状にする際の製膜性に優れ、98モル%以下であると末端がアミン残基となる高分子化合物が含有される割合が小さくなり、カチオン重合反応が進行し易くなり、硬化膜とした際の耐薬品性が向上する。
【0046】
分子鎖末端がカルボン酸残基に由来する構造である(A)高分子化合物を得る別の方法として、一般に末端封止剤として用いられる化合物の中から特定の化合物、具体的には、酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物を用いることによっても得る事ができる。
【0047】
また、(A)高分子化合物の分子鎖末端を水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、チオール基、ビニル基、エチニル基、またはアリル基を有するカルボン酸または酸無水物の末端封止剤により封止することで、前記(A)高分子化合物のアルカリ水溶液に対する溶解速度や得られる硬化膜の機械特性を好ましい範囲に容易に調整することができる。また、複数の末端封止剤を反応させ、複数の異なる末端基を導入してもよい。
【0048】
末端封止剤としての酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、ナジック酸無水物、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、3-ヒドロキシフタル酸無水物などの酸無水物、3-カルボキシフェノール、4-カルボキシフェノール、3-カルボキシチオフェノール、4-カルボキシチオフェノール、1-ヒドロキシ-7-カルボキシナフタレン、1-ヒドロキシ-6-カルボキシナフタレン、1-ヒドロキシ-5-カルボキシナフタレン、1-メルカプト-7-カルボキシナフタレン、1-メルカプト-6-カルボキシナフタレン、1-メルカプト-5-カルボキシナフタレン、3-カルボキシベンゼンスルホン酸、4-カルボキシベンゼンスルホン酸などのモノカルボン酸類およびこれらのカルボキシル基が酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物、テレフタル酸、フタル酸、マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、1,5-ジカルボキシナフタレン、1,6-ジカルボキシナフタレン、1,7-ジカルボキシナフタレン、2,6-ジカルボキシナフタレンなどのジカルボン酸類の一方のカルボキシル基だけが酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物、モノ酸クロリド化合物とN-ヒドロキシベンゾトリアゾールやイミダゾール、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミドとの反応により得られる活性エステル化合物などが好ましい。これらを2種以上用いてもよい。
【0049】
これらの末端封止剤を導入した高分子化合物は、分子鎖末端がカルボン酸残基に由来する構造である(A)高分子化合物となる。そして分子鎖末端がカルボン酸残基に由来する構造である(A)高分子化合物を得るために用いることのできる末端封止剤は、以下の方法で容易に検出できる。例えば、末端封止剤が導入された(A)高分子化合物を、酸性溶液に溶解し、構成単位であるアミン成分と酸無水物成分に分解し、これをガスクロマトグラフィー(GC)や、NMRにより、本発明に使用された末端封止剤を容易に検出できる。これとは別に、末端封止剤が導入された樹脂成分を直接、熱分解ガスクロマトグラフ(PGC)や赤外スペクトルおよび13C-NMRスペクトルで測定することによっても、容易に検出できる。
【0050】
本発明において、(A)高分子化合物は、たとえば、次の方法により合成されるが、これに限定はされない。
【0051】
ポリイミド構造は、ジアミンの一部を末端封止剤である1級モノアミンに置き換えて、または、テトラカルボン酸二無水物を、末端封止剤であるジカルボン酸無水物に置き換えて、公知の方法で合成される。例えば、低温中でテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とモノアミンを反応させる方法、低温中でテトラカルボン酸二無水物とジカルボン酸無水物とジアミン化合物を反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後ジアミンとモノアミンと縮合剤の存在下で反応させる方法などの方法を利用して、ポリイミド前駆体を得る。その後、公知のイミド化反応法を利用してポリイミドを合成することができる。
【0052】
本発明において、(A)高分子化合物は、上記の方法で重合させた後、多量の水またはメタノールおよび水の混合液などに投入し、沈殿させて濾別乾燥し、単離することが好ましい。乾燥温度は40~100℃が好ましく、より好ましくは50~80℃である。この操作によって未反応のモノマーや、2量体や3量体などのオリゴマー成分が除去され、熱硬化後の膜特性を向上させることができる。
【0053】
本発明における、イミド化率は、例えば以下の方法で容易に求めることができる。まず、ポリマーの赤外吸収スペクトルを測定し、ポリイミドに起因するイミド構造の吸収ピーク(1780cm-1付近、1377cm-1付近)の存在を確認する。次に、そのポリマーを350℃で1時間熱処理したもののイミド化率を100%のサンプルとして赤外吸収スペクトルを測定し、熱処理前後の樹脂の1377cm-1付近のピーク強度を比較することによって、熱処理前樹脂中のイミド基の含量を算出し、イミド化率を求める。熱硬化時の閉環率の変化を抑制し、低応力化の効果が得られるため、イミド化率は50%以上が好ましく、80%以上がさらに好ましい。
【0054】
(B)カチオン重合性化合物
本発明の樹脂組成物は、(B)カチオン重合性化合物を含有する。本発明の樹脂組成物は、(B)カチオン重合性化合物を含有することで、光カチオン重合が進行し、ネガ型のパターン加工性に優れる。
(B)カチオン重合性化合物は、環状エーテル化合物(エポキシ化合物及びオキセタン化合物等)、エチレン性不飽和化合物(ビニルエーテル及びスチレン類等)、ビシクロオルトエステル、スピロオルトカーボネート及びスピロオルトエステル等が挙げられる。
【0055】
エポキシ化合物としては、公知のもの等が使用でき、芳香族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物が含まれる。
【0056】
芳香族エポキシ化合物としては、少なくとも1個の芳香環を有する1価又は多価のフェノール(フェノール、ビスフェノールA、フェノールノボラック及びこれらのアルキレンオキシド付加体した化合物)のグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0057】
脂環式エポキシ化合物としては、少なくとも1個のシクロヘキセンやシクロペンテン環を有する化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られる化合物(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、等)が挙げられる。
【0058】
脂肪族エポキシ化合物としては、脂肪族多価アルコール又はこのアルキレンオキシド付加体のポリグリシジルエーテル(1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等)、脂肪族多塩基酸のポリグリシジルエステル(ジグリシジルテトラヒドロフタレート等)、長鎖不飽和化合物のエポキシ化合物(エポキシ化大豆油及びエポキシ化ポリブタジエン等)が挙げられる。
【0059】
オキセタン化合物としては、公知のもの等が使用でき、例えば、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、2-エチルヘキシル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-ヒドロキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-ヒドロキシプロピル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、オキセタニルシルセスキオキセタン及びフェノールノボラックオキセタン等が挙げられる。
【0060】
エチレン性不飽和化合物としては、公知のカチオン重合性単量体等が使用でき、脂肪族モノビニルエーテル、芳香族モノビニルエーテル、多官能ビニルエーテル、スチレン及びカチオン重合性窒素含有モノマーが含まれる。
【0061】
脂肪族モノビニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル及びシクロヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。
【0062】
芳香族モノビニルエーテルとしては、2-フェノキシエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル及びp-メトキシフェニルビニルエーテル等が挙げられる。
【0063】
多官能ビニルエーテルとしては、ブタンジオール-1,4-ジビニルエーテル及びトリエチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0064】
スチレン類としては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン及びp-tert-ブトキシスチレン等が挙げられる。
【0065】
カチオン重合性窒素含有モノマーとしては、N-ビニルカルバゾール及びN-ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0066】
ビシクロオルトエステルとしては、1-フェニル-4-エチル-2,6,7-トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン及び1-エチル-4-ヒドロキシメチル-2,6,7-トリオキサビシクロ-[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0067】
スピロオルトカーボネートとしては、1,5,7,11-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン及び3,9-ジベンジル-1,5,7,11-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等が挙げられる。
【0068】
スピロオルトエステルとしては、1,4,6-トリオキサスピロ[4.4]ノナン、2-メチル-1,4,6-トリオキサスピロ[4.4]ノナン及び1,4,6-トリオキサスピロ[4.5]デカン等が挙げられる。
【0069】
これらのカチオン重合性化合物のうち、エポキシ化合物、オキセタン化合物及びビニルエーテルが好ましく、さらに好ましくはエポキシ化合物及びオキセタン化合物、特に好ましくはエポキシ化合物である。
【0070】
(B)カチオン重合性化合物としてイソシアヌレート骨格を有するエポキシ化合物を含むことによって、カチオン重合性を保持したまま、樹脂組成物を硬化させた硬化膜の誘電率や誘電正接を低く抑えることができる。さらに、アルカリ水溶液で現像を行う際に、理由は定かではないが、それ自身はアルカリ水溶液に溶解しないが、アルカリ可溶性である(A)高分子化合物と相溶させることにより、樹脂組成物として、アルカリ可溶性を阻害することなく、アルカリ水溶液でのパターン加工を可能とする。
【0071】
イソシアヌレート骨格を含有するエポキシ化合物としては、例えばトリグリシジルイソシアヌレートであるTEPIC-S,TEPIC-L、TEPIC-VL、TEPIC-PASB26L、TEPIC-PASB22、TEPIC-FL、TEPIC-UC(商品名、いずれも日産化学(株)製)等があげられる。
【0072】
(B)カチオン重合性化合物としてイソシアヌレート骨格を有するエポキシ化合物を含有する場合、その含有量は、(B)カチオン重合性化合物の合計100質量%に対して、40質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。また、イソシアヌレート骨格を有するエポキシ化合物の含有量の上限は100質量%である。
【0073】
また、(B)カチオン重合性化合物として、常温で液体である多官能エポキシ化合物を用いることにより、(A)高分子化合物との相溶性が向上し、微細なパターン加工性が得られるから好ましい。このとき、当該多官能エポキシ化合物はエポキシ当量が80g/eq.以上、160g/eq.以下であることが好ましい。多官能エポキシ化合物のエポキシ当量が、80g/eq.以上、160g/eq.以下であることにより、硬化膜とした際に、硬化膜の耐熱性や耐薬品性が向上し得る。多官能エポキシ化合物のエポキシ当量は、80g/eq.以上、150g/eq.以下であることがより好ましく、85g/eq.以上、130g/eq.以下がさらに好ましい。
【0074】
常温で液状である多官能エポキシ化合物であって、エポキシ当量が80g/eq.以上、160g/eq.以下であるエポキシ化合物としては、例えばTEPIC-VL、(商品名、日産化学(株)製)、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ショウフリーBATG、ショウフリーPETG(商品名、いずれも昭和電工(株)製)等が挙げられる。
【0075】
(B)カチオン重合性化合物は単独で使用してもよく、または2種以上を併用してもよい。
(B)カチオン重合性化合物の含有量は、十分なカチオン硬化性を示し、パターン加工性を向上させる点から、(A)高分子化合物を100質量部とした場合、前記(B)カチオン重合性化合物が30質量部以上であることが好ましく、より好ましくは50質量部以上である。一方、フィルム状、つまり樹脂組成物被膜にした際に、樹脂組成物被膜の表面のタックが無く、ハンドリングし易くなる観点や、硬化膜の強伸度が向上する点から、(A)高分子化合物を100質量部とした場合、前記(B)カチオン重合性化合物が200質量部以下であることが好ましく、より好ましくは150質量部以下である。
【0076】
(C)光カチオン重合開始剤
本発明の樹脂組成物は、(C)光カチオン重合開始剤を含有する。
(C)光カチオン重合開始剤は、光により酸を発生しカチオン重合を生じさせるものである。本発明の樹脂組成物が、(C)光カチオン重合開始剤を含有することで、ネガ型のパターン加工性に優れる。また、(C)光カチオン重合開始材は、オニウム塩であることが好ましい。
【0077】
(C)光カチオン重合開始剤について具体的には、例えば、芳香族ヨードニウム錯塩、芳香族スルホニウム錯塩、芳香族ボレート錯塩や芳香族ガレート錯塩等を挙げることができる。
【0078】
芳香族ヨードニウム錯塩の具体例としては、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4-ノニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
【0079】
(C)光カチオン重合開始剤の具体例として上記の芳香族ヨードニウム錯塩のほかに、例えば、ベンゼンスルホン酸(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルスルホニウム、ベンゼンスルホン酸(4-((メトキシカルボニル)オキシ)フェニル)ジメチルスルホニウム、ベンゼンスルホン酸ベンジル(4-ヒドロキシフェニル)メチルスルホニウム、ベンゼンスルホン酸ベンジル(4-((メトキシカルボニル)オキシ)フェニル)メチルスルホニウム、ベンゼンスルホン酸(4-ヒドロキシフェニル)メチル((2-メチルフェニル)メチル)スルホニウム、カンファースルホン酸(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルスルホニウム、カンファースルホン酸(4-((メトキシカルボニル)オキシ)フェニル)ジメチルスルホニウム、ベンゼンスルホン酸ベンジル(4-ヒドロキシフェニル)メチルスルホニウム、カンファースルホン酸ベンジル(4-((メトキシカルボニル)オキシ)フェニル)メチルスルホニウム、カンファースルホン酸(4-ヒドロキシフェニル)メチル((2-メチルフェニル)メチル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ベンジル(4-ヒドロキシフェニル)メチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ベンジル(4-((メトキシカルボニル)オキシ)フェニル)メチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(4-ヒドロキシフェニル)メチル((2-メチルフェニル)メチル)スルホニウム、“サンエイド”(登録商標)、SI-145、SI-200、SI-250、SI-B2A、SI-B3A、SI-B3、SI-B4、SI-B5(三新化学工業(株)製)、CPI-310FG(商品名、サンアプロ(株)製)などが挙げられる。これらの(C)光カチオン重合開始剤は単独で使用してもよく、または2種以上を併用してもよい。
【0080】
(C)光カチオン重合開始剤としてオニウム塩を用いることで、環状エーテル化合物を用いた際に、十分なカチオン重合の開始反応を進行することができる。
【0081】
上記(C)光カチオン重合開始剤の含有量は、上記(B)カチオン重合性化合物を100質量部とした場合、0.3質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、0.7質量部以上がさらに好ましい。これにより、カチオン重合性化合物が十分な硬化性を示し、パターン加工性を向上させることができる。一方、樹脂組成物の硬化前の保存安定性が向上する点から、10質量部以下が好ましく、より好ましくは8質量部以下である。
【0082】
(D)酸増殖剤
本発明の樹脂組成物は、(D)酸増殖剤を含有する。
酸増殖剤とは、光カチオン重合開始剤によって発生した酸の作用によって、酸を発生し、さらに自ら発生した酸によっても、自己触媒的に酸を発生するものである。この自己触媒的に酸を発生することにより、少量の光エネルギーにおいても、光カチオン重合を進行させることが出来る。したがって、本発明の樹脂組成物が(D)酸増殖剤を含有することで、優れた露光感度を有する樹脂組成物が得られる。
【0083】
酸増殖剤は比較的強い酸の残基で置換された化合物であって、比較的容易に脱離反応を引き起こして、酸を発生する化合物である。従って、酸触媒反応によって、この脱離反応を大幅に活性化させることができ、酸の不存在下では安定であるが、酸の存在下では容易に酸を生成させることが可能となる。酸増殖剤は酸触媒反応によって分解して再び酸を発生する。すなわち、一回の反応で1つ以上の酸が増えており、反応の進行に伴って加速的に反応が進む。
【0084】
発生した酸自体によって酸増殖剤の自己分解を誘起するために、ここで発生する酸の強度は酸解離定数(pKa)で3以下であり、特に2以下であることが望ましい。これより弱い酸であれば、自己分解を引き起こすことができないおそれがある。
【0085】
発生する酸としては、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、モノフルオロベンゼンスルホン酸、ジフルオロベンゼンスルホン酸、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸、トリフルオロメチルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、トリフェニルホスホン酸などを挙げることができる。この中でも、酸の強度が強く、光カチオン重合が進行し易くなる点から、発生する酸としては、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸が好ましい。したがって、(D)酸増殖剤は、ペンタフルオロベンゼンに由来する構造を含有することが好ましい。
【0086】
また、酸が存在していない状態で、保存安定性が良いことが重要である。この保存安定性が向上する観点から、酸増殖剤は、モノまたはジスルホン酸シクロアルキルエステルであることが好ましい。酸増殖剤の具体例としては、下記で表される化合物等を例示することができる。
【0087】
【化5】
【0088】
これらの(D)酸増殖剤は単独で使用してもよく、または2種以上を併用してもよい。
(D)酸増殖剤の含有量は、(B)カチオン重合性化合物100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましい。(D)酸増殖剤の含有量を1質量部以上とすることで、露光感度を向上することができる。(D)酸増殖剤の含有量は、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましい。また、硬化膜とした際の耐熱性が向上する点から、(B)カチオン重合性化合物100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下がより好ましく、8質量部以下がさらに好ましい。
【0089】
本発明の樹脂組成物は、熱架橋剤を含有してもよい。熱架橋剤としては、アルコキシメチル基、メチロール基を有する化合物であることが好ましい。
【0090】
アルコキシメチル基またはメチロール基を有する例としては、例えば、DML-PC、DML-PEP、DML-OC、DML-OEP、DML-34X、DML-PTBP、DML-PCHP、DML-OCHP、DML-PFP、DML-PSBP、DML-POP、DML-MBOC、DML-MBPC、DML-MTrisPC、DML-BisOC-Z、DML-BisOCHP-Z、DML-BPC、DML-BisOC-P、DMOM-PC、DMOM-PTBP、DMOM-MBPC、TriML-P、TriML-35XL、TML-HQ、TML-BP、TML-pp-BPF、TML-BPE、TML-BPA、TML-BPAF、TML-BPAP、TMOM-BP、TMOM-BPE、TMOM-BPA、TMOM-BPAF、TMOM-BPAP、HML-TPPHBA、HML-TPHAP、HMOM-TPPHBA、HMOM-TPHAP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、NIKALAC(登録商標)MX-290、NIKALAC MX-280、NIKALAC MW-100LM、NIKALAC MX-750LM(以上、商品名、(株)三和ケミカル製)が挙げられる。
【0091】
本発明の樹脂組成物は、さらにシラン化合物を含有することができる。シラン化合物を含有することにより、後述する樹脂組成物被膜の密着性が向上する。シラン化合物の具体例としては、N-フェニルアミノエチルトリメトキシシラン、N-フェニルアミノエチルトリエトキシシラン、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニルアミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニルアミノブチルトリメトキシシラン、N-フェニルアミノブチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどを挙げることができる。
【0092】
さらに、本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、支持体との塗れ性を向上させる目的で界面活性剤、乳酸エチルやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、エタノールなどのアルコール類、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類を含有してもよい。また、熱膨張係数の抑制や高誘電率化、低誘電率化のなどの目的で、二酸化ケイ素、二酸化チタンなどの無機粒子、あるいはポリイミドの粉末などを含有してもよい。
【0093】
本発明の樹脂組成物は、硬化前の形状は限定されず、例えば、ワニス状やフィルム状などが挙げられる。ここでフィルム状とした本発明の樹脂組成物は、本発明のネガ型感光性樹脂組成物被膜(以下、単に「樹脂組成物被膜」と称することがある)ともよぶ。
【0094】
また、本発明のネガ型感光性樹脂組成物フィルム(以下、単に「樹脂組成物フィルム」と称することがある)は、本発明の樹脂組成物の形態をフィルム状としたものと支持体とを有する、つまり本発明の樹脂組成物フィルムは、本発明の樹脂組成物から形成された樹脂組成物被膜及び支持体を有する樹脂組成物フィルムである。そのため本発明の樹脂組成物フィルムは、支持体上に形成されたフィルム状、つまり支持体上に本発明の樹脂組成物から形成された樹脂組成物被膜を有する樹脂組成物フィルムである。
【0095】
本発明の樹脂組成物をワニス状で用いる場合は、(A)~(D)成分および必要に応じ加えられる成分を有機溶媒に溶解させたものを用いることができる。また、樹脂組成物フィルムは、例えば本発明の樹脂組成物を支持体上に塗布し、次いでこれを必要により乾燥することにより得られる。
【0096】
次に、本発明の樹脂組成物を用いて樹脂組成物フィルムを作製する方法について説明する。本発明の樹脂組成物フィルムは樹脂組成物のワニス(以下、単に「樹脂組成物ワニス」と称することがある)を支持体上に塗布し、次いでこれを乾燥することにより得られる。樹脂組成物ワニスに使用される有機溶剤としては、樹脂組成物を溶解するものであればよい。
【0097】
有機溶剤としては、具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテルなどのエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどのアセテート類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、2-ヘプタノンなどのケトン類、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンタノ-ル、4-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-2-ブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、その他、N-メチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0098】
有機溶剤の添加量は、有機溶剤以外の添加物を固形分とし、固形分濃度が20重量%以上70重量%以下となるように調整することが好ましい。
【0099】
樹脂組成物ワニスは、濾紙やフィルターを用いて濾過してもよい。濾過方法は特に限定されないが、保留粒子径0.4~10μmのフィルターを用いて加圧濾過により濾過する方法が好ましい。
【0100】
本発明の樹脂組成物フィルムは、支持体上に樹脂組成物被膜が形成されて成る。支持体は特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリイミドフィルムなど、通常市販されている各種のフィルムが使用可能である。支持体と樹脂組成物被膜との接合面には、密着性と剥離性を向上させるために、シリコーン、シランカップリング剤、アルミキレート剤、ポリ尿素などの表面処理を施してもよい。また、支持体の厚みは特に限定されないが、作業性の観点から、10~100μmの範囲であることが好ましい。
【0101】
本発明の樹脂組成物フィルムは、表面を保護するために、樹脂組成物被膜上に保護フィルムを有してもよい。これにより、大気中のゴミやチリ等の汚染物質から樹脂組成物フィルム表面を保護することができる。保護フィルムとしては、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられる。保護フィルムは、樹脂組成物フィルムとの接着力が小さいものが好ましい。
【0102】
樹脂組成物ワニスを支持体に塗布する方法としてはスピンナを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティング、スクリーン印刷、ブレードコーター、ダイコーター、カレンダーコーター、メニスカスコーター、バーコーター、ロールコーター、コンマロールコーター、グラビアコーター、スクリーンコーター、スリットダイコーターなどの方法が挙げられる。また、塗布膜厚は、塗布手法、樹脂組成物の固形分濃度、粘度などによって異なるが、通常、乾燥後の膜厚が、0.5μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0103】
乾燥には、オーブン、ホットプレート、赤外線などを使用することができる。乾燥温度および乾燥時間は、有機溶媒を揮発させることが可能な範囲であればよく、樹脂組成物フィルムが未硬化または半硬化状態となるような範囲を適宜設定することが好ましい。具体的には、40℃から120℃の範囲で1分から数十分行うことが好ましい。また、これらの温度を組み合わせて段階的に昇温してもよく、例えば、70℃、80℃、90℃で各1分ずつ熱処理してもよい。
【0104】
次に、本発明の樹脂組成物を用いた樹脂組成物ワニス、または樹脂組成物フィルムをパターン加工する方法、および他の部材に熱圧着する方法について、例を挙げて説明する。
【0105】
まず、本発明の樹脂組成物、または樹脂組成物フィルムを用いて、基板上に樹脂組成物被膜を形成する方法について説明する。
【0106】
樹脂組成物ワニスを用いて、基板上に樹脂組成物被膜を形成する場合は、まず樹脂組成物ワニスを基板上に塗布する。塗布方法としてはスピンナを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティング、スクリーン印刷などの方法が挙げられる。また、塗布膜厚は、塗布手法、樹脂組成物の固形分濃度および粘度などによって異なるが、通常、乾燥後の膜厚が0.5μm以上100μm以下になるように塗布することが好ましい。次に、樹脂組成物ワニスを塗布した基板を乾燥して、樹脂組成物被膜を形成する。
【0107】
乾燥はオーブン、ホットプレート、赤外線などを使用することができる。乾燥温度および乾燥時間は、有機溶媒を揮発させることが可能な範囲であればよく、樹脂組成物被膜が未硬化または半硬化状態となるような範囲を適宜設定することが好ましい。具体的には、50~150℃の範囲で1分から数時間行うのが好ましい。
【0108】
一方、樹脂組成物フィルムを用いる場合は、保護フィルムを有する場合にはこれを剥離し、樹脂組成物フィルムと基板を対向させ、熱圧着により貼り合わせて、基板上に樹脂組成物被膜を形成する。熱圧着は、熱プレス処理、熱ラミネート処理、熱真空ラミネート処理等によって行うことができる。貼り合わせ温度は、基板への密着性、埋め込み性の点から40℃以上が好ましい。また、貼り合わせ時に樹脂組成物フィルムが硬化し、露光・現像工程におけるパターン形成の解像度が悪くなることを防ぐために、貼り合わせ温度は150℃以下が好ましい。
【0109】
いずれの場合にも、用いられる基板は、シリコンウェハ、セラミックス類、ガリウムヒ素、有機系回路基板、無機系回路基板、およびこれらの基板に回路の構成材料が配置されたものなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
有機系回路基板の例としては、ガラス布・エポキシ銅張積層板などのガラス基材銅張積層板、ガラス不織布・エポキシ銅張積層板などのコンポジット銅張積層板、ポリエーテルイミド樹脂基板、ポリエーテルケトン樹脂基板、ポリサルフォン系樹脂基板などの耐熱・熱可塑性基板、ポリエステル銅張フィルム基板、ポリイミド銅張フィルム基板などのフレキシブル基板が挙げられる。
【0111】
また、無機系回路基板の例は、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、炭化ケイ素基板などのセラミックス基板、アルミニウムベース基板、鉄ベース基板などの金属系基板が挙げられる。回路の構成材料の例は、銀、金、銅などの金属を含有する導体、無機系酸化物などを含有する抵抗体、ガラス系材料および/または樹脂などを含有する低誘電体、樹脂や高誘電率無機粒子などを含有する高誘電体、ガラス系材料などを含有する絶縁体などが挙げられる。
【0112】
次に、上記方法によって形成された樹脂組成物被膜上に、所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射し、露光する。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いるのが好ましい。樹脂組成物フィルムにおいて、支持体がこれらの光線に対して透明な材質である場合は、樹脂組成物フィルムから支持体を剥離せずに露光を行ってもよい。
【0113】
パターンを形成するには、露光後、現像液にて未露光部を除去する。現像液としては、水酸化テトラメチルアンモニウムの水溶液、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。また場合によっては、これらのアルカリ水溶液にN-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを単独あるいは数種を組み合わせたものを含有してもよい。
【0114】
現像は、上記の現像液を被膜面にスプレーする、被膜面に現像液を液盛りする、現像液中に浸漬する、あるいは浸漬して超音波をかけるなどの方法によって行うことができる。現像時間や現像ステップ、現像液の温度などの現像条件は、未露光部が除去されパターン形成が可能な条件であればよい。
【0115】
現像後は水にてリンス処理を行うことが好ましい。ここでもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを水に加えてリンス処理をしても良い。
【0116】
必要に応じて現像前にベーク処理を行ってもよい。これにより、現像後のパターンの解像度が向上し、現像条件の許容幅が増大する場合がある。このベーク処理温度は50~180℃の範囲が好ましく、特に60~120℃の範囲がより好ましい。時間は5秒~数時間が好ましい。
【0117】
パターン形成後、樹脂組成物被膜中には未反応のカチオン重合性化合物や光カチオン重合開始剤が残存している。このため、熱圧着あるいは硬化の際にこれらが熱分解しガスが発生することがある。これを避けるため、パターン形成後の樹脂組成物被膜の全面に上述の露光光を照射し、光カチオン重合開始剤から酸を発生させておくことが好ましい。こうすることによって、熱圧着あるいは硬化の際に、未反応のカチオン重合性化合物の反応が進行し、熱分解由来のガスの発生を抑制することができる。
【0118】
現像後、150~500℃の温度を加えて熱架橋反応を進行させる。架橋により、耐熱性および耐薬品性を向上させることができる。この加熱処理の方法は、温度を選び、段階的に昇温する方法や、ある温度範囲を選び連続的に昇温しながら5分間~5時間実施する方法を選択できる。前者の一例として、130℃、200℃で各30分ずつ熱処理する方法が挙げられる。後者の一例として室温より400℃まで2時間かけて直線的に昇温するなどの方法が挙げられる。
【0119】
本発明の硬化膜は、本発明のネガ型感光性樹脂組成物または本発明のネガ型感光性樹脂組成物フィルム中の樹脂組成物被膜を硬化した硬化膜である。本発明の硬化膜は、半導体装置等の電子部品に使用することができる。つまり本発明の電子部品とは、本発明の硬化膜を含む。
【0120】
電子部品の一つである半導体装置とは、半導体素子の特性を利用することで機能し得る装置全般を指す。半導体素子を基板に接続した電気光学装置や半導体回路基板、複数の半導体素子を積層したもの、並びにこれらを含む電子装置は、全て半導体装置に含まれる。また、半導体素子を接続するための多層配線板等の電子部品も半導体装置に含める。具体的には、本発明の電子部品は、半導体のパッシベーション膜、半導体素子の表面保護膜、半導体素子と配線の間の層間絶縁膜、複数の半導体素子の間の層間絶縁膜、高密度実装用多層配線の配線層間の層間絶縁膜、有機電界発光素子の絶縁層などの用途に好適に用いられるが、これに制限されず、様々な用途に用いることができる。
【0121】
以上に説明したように、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) (A)高分子化合物、(B)カチオン重合性化合物、及び(C)光カチオン重合開始剤を含有するネガ型感光性樹脂組成物であって、
さらに(D)酸増殖剤を含有する、ネガ型感光性樹脂組成物。
(2) 前記(C)光カチオン重合開始剤がオニウム塩である、(1)に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
(3) 前記(D)酸増殖剤が、モノまたはジスルホン酸シクロアルキルエステルである、(1)または(2)に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
(4) 前記(D)酸増殖剤が、ペンタフルオロベンゼンに由来する構造を含有する、(1)~(3)のいずれか1つに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
(5) 前記(A)高分子化合物が、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、及びポリベンゾオキサゾールからなる群より選ばれる少なくとも1つの高分子化合物である、(1)~(4)のいずれか1つに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
(6) 前記(B)カチオン重合性化合物が、イソシアヌレート骨格を有するエポキシ化合物である、(1)~(5)のいずれか1つ記載のネガ型感光性樹脂組成物。
(7) (1)~(6)のいずれか1つに記載のネガ型感光性樹脂組成物から形成されたネガ型感光性樹脂組成物被膜。
(8) (7)に記載のネガ型感光性樹脂組成物被膜、及び、支持体を有する、ネガ型感光性樹脂組成物フィルム。
(9) (1)~(6)のいずれか1つに記載のネガ型感光性樹脂組成物を硬化した硬化膜。
(10) (9)に記載の硬化膜を含む、電子部品。
【実施例0122】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0123】
<露光感度の評価>
各実施例および比較例で作製したシリコンウェハ上の樹脂組成物被膜を、露光装置にライン幅/スペース幅が200μm/100μmのパターンを有するマスクをセットし、マスクと樹脂組成物被膜の露光ギャップ100μmの条件下で、i線バンドパスフィルターを備え付けた超高圧水銀灯を用いて、露光量10~200mJ/cm(i線換算)で露光を行った。露光後、ホットプレートで90~120℃、4~10分間、露光後加熱を行った。
その後、ディップ現像にて60秒間、水酸化テトラメチルアンモニウムの2.38質量%水溶液(TMAH)に浸漬し、未露光部を除去し、その後、水にてリンス処理をした。この様にして得られたパターンの現像前の膜厚と現像後の膜厚から残膜率を算出した。得られた残膜率の小数点第一位を四捨五入した。パターンにつまりがなく、かつ残膜率が90%以上となった最小の露光量を求め、露光感度の評価とした。露光感度は、露光量が少ないほど感度が良いことを表す。各実施例および比較例での、露光後加熱処理の条件は表1に示す。
【0124】
合成例1 ポリイミド(A-1)の合成
乾燥窒素気流下、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(以下、BAHFとする)(29.30g、0.08モル)をγ-ブチロラクトン(以下、GBLとする)80gに添加し、120℃で攪拌溶解した。次に、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸二無水物(以下、TDA-100とする)(30.03g、0.1モル)をGBL20gとともに加えて、120℃で1時間攪拌し、次いで200℃で4時間攪拌して反応溶液を得た。次に、反応溶液を水3Lに投入して白色沈殿を集めた。この沈殿をろ過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で5時間乾燥した。
【0125】
実施例1
(A)成分として合成例1で得られたポリイミド(A-1)1g、(B)成分としてTEPIC-VL(商品名、日産化学(株)製)1.2g、(C)成分としてCPI-310FG(商品名、サンアプロ(株)製)0.06g、(D)成分として下記に示す化合物(D-1)0.06g、シラン化合物としてKBM-303(商品名、信越化学工業(株)製)0.06gをGBLに溶解した。溶媒の添加量は、溶媒以外の添加物を固形分とし、固形分濃度が50重量%となるように調整した。その後、保留粒子径1μmのフィルターを用いて加圧ろ過し、樹脂組成物ワニスを得た。
得られた樹脂組成物ワニスを、スピンナを用いて、1500rpm、30秒の条件でシリコンウェハ上に塗布し、ホットプレート上にて80℃で3分間乾燥を行い、シリコンウェハ上に樹脂組成物被膜を形成した。次に、得られた樹脂組成物被膜を用いて、前記のように、露光感度の評価を行った。結果を表1に示す。
【0126】
実施例2~4
(A)~(D)成分および、その他成分を下記の構造の化合物に変更し、それらの混合比を表1に記載のように変更した以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物ワニスを作製し、前記のように、露光感度の評価を行った。結果を表1に示す。
【0127】
比較例1~2
(A)~(D)成分および、その他成分の混合比を表1に記載のように変更した以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物ワニスを作製し、前記のように、露光感度の評価を行った。結果を表1に示す。
【0128】
【表1】
【0129】
各合成例、実施例および比較例で用いた化合物の構造を下記に示した。
(A)高分子化合物
A-1:分子鎖末端がカルボン酸残基のポリイミド。
(B)カチオン重合性化合物
TEPIC-VL(日産化学(株)製)、常温において液体、エポキシ当量=128g/eq.。
【0130】
【化6】
【0131】
(C)カチオン重合開始剤
CPI-310FG(オニウム塩系光酸発生剤、サンアプロ(株)製)。
【0132】
(D)酸増殖剤
D-1:下記式(D-1)で表される化合物。
D-2:下記式(D-2)で表される化合物。
D-3:下記式(D-3)で表される化合物。
D-4:下記式(D-4)で表される化合物。
【0133】
【化7】
【0134】
シラン化合物
KBM-303(2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製)。