(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023262
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】イブルチニブを含む配合物/組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20240214BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240214BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240214BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240214BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240214BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240214BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240214BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240214BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240214BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240214BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20240214BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20240214BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240214BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240214BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240214BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P35/00
A61P35/02
A61P7/00
A61K9/10
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/18
A61K47/22
A61K47/02
A61K47/20
A61K47/40
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/42
A61K47/04
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023191535
(22)【出願日】2023-11-09
(62)【分割の表示】P 2020569159の分割
【原出願日】2019-06-14
(31)【優先権主張番号】18177987.7
(32)【優先日】2018-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】397060175
【氏名又は名称】ヤンセン ファーマシューティカ エヌ.ベー.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【弁理士】
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(72)【発明者】
【氏名】ベルニーニ,マリステラ
(72)【発明者】
【氏名】ドン,ウェンユ
(72)【発明者】
【氏名】ホルム,ルネ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】イブルチニブを含む安定な配合物/組成物を提供する。
【解決手段】(i)任意選択的に薬学的に許容可能な担体(例えば、水性担体)の存在下での、化合物(I)
の構造を有する化合物であるイブルチニブ又はその薬学的に許容可能な塩/溶媒和物と、懸濁化剤と、(ii)ベンジルアルコールである1つ以上の防腐剤と、任意選択的に、1つ以上の他の薬学的に許容可能な賦形剤とを含む安定な薬学的配合物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)任意選択的に薬学的に許容可能な担体(例えば、水性担体)の存在下での、化合物1
【化1】
の構造を有する化合物であるイブルチニブ又はその薬学的に許容可能な塩/溶媒和物と
、懸濁化剤と、
(ii)ベンジルアルコールである1つ以上の防腐剤と、
任意選択的に、1つ以上の他の薬学的に許容可能な賦形剤と
を含む安定な薬学的配合物。
【請求項2】
(i)薬学的に許容可能な担体(例えば、水性担体)中に懸濁されている、化合物1
【化2】
の構造体を有する化合物であるイブルチニブ又はその薬学的に許容可能な塩/溶媒和物と
、
(ii)ベンジルアルコールである少なくとも1つの防腐剤と、
任意選択的に、1つ以上の他の薬学的に許容可能な賦形剤と
を含む懸濁液の形態である、請求項1に記載の薬学的配合物。
【請求項3】
抗菌剤、抗酸化剤、遊離基捕捉剤、脱酸素剤及び/又はキレート剤の1つ以上から選択
される、例えば安息香酸、パラベン(メチル又はエチルパラベン)、ブチル化ヒドロキシ
アニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、クロルブトール、没食
子酸塩、ヒドロキシベンゾエート、EDTA、フェノール、クロロクレゾール、メタクレ
ゾール、塩化ベンゼトニウム、ミリスチル-γ-ピコリニウムクロリド、酢酸フェニル水
銀、チメロサール、ソルビン酸、プロピオン酸、プロピレングリコール、ビタミンE、ア
スコルビン酸パルミテート、アスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、L-システ
イン、アセチルシステイン、メチオニン、チオグリセロール、アセトン重亜硫酸ナトリウ
ム、イソアスコルビン酸、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、クエン酸ナトリウム
、ナトリウムEDTA、リンゴ酸、酢酸及びこれらの混合物からなる群から選択される防
腐剤も含有する、請求項1又は2に記載の薬学的配合物。
【請求項4】
前記防腐剤は、(重量基準で)50%超のベンジルアルコール、例えば90%超のベン
ジルアルコールを含み、例えば、前記防腐剤は、ベンジルアルコールから本質的になる、
請求項1、2又は(適用可能な場合には)3に記載の薬学的配合物。
【請求項5】
約0.1w/v%~10w/v%又は約1mg/ml~50mg/mlの防腐剤を含む
、請求項1~4のいずれか一項に記載の薬学的配合物。
【請求項6】
前記防腐剤は、約0.5w/v%~2w/v%又は約5mg/ml~20mg/mlで
ある、請求項5に記載の薬学的配合物。
【請求項7】
アルギン酸塩、セルロースエーテル、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース
、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロ
ース、アカシア、トラガカント、キサンタンガム、ベントナイト、カルボマー、カラギー
ナン、粉末セルロース及びゼラチンから選択される懸濁化剤を含む、請求項1~6のいず
れか一項に記載の薬学的配合物。
【請求項8】
前記懸濁化剤は、微結晶セルロース(例えば、ケイ化微結晶セルロースSMCC)など
のセルロースエーテルである、請求項7に記載の薬学的配合物。
【請求項9】
懸濁化剤を0.1w/v%~10w/v%又は約1mg/ml~50mg/mlの量で
含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の薬学的配合物。
【請求項10】
前記懸濁化剤の前記量は、約0.5w/v%~2w/v%又は約5mg/ml~20m
g/mlである、請求項9に記載の薬学的配合物。
【請求項11】
1つ以上の湿潤剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース又はヒドロキシプロピルメ
チルセルロースなどのセルロースエーテル)、1つ以上の緩衝剤(例えば、クエン酸.H
2O及び/又はリン酸水素ナトリウムを含有する)、1つ以上のpH調整剤(例えば、水
酸化ナトリウム及び/又は塩酸)及び/又は(例えば、任意選択的に)甘味剤(例えば、
スクラロース)を更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の薬学的配合物。
【請求項12】
1mlの精製水である前記薬学的担体を基準として、20~200mg/mlのイブル
チニブ;2.5~25mg/mlのベンジルアルコール防腐剤;2~24mg/mlの懸
濁化剤;任意選択的に例えば0.5~10mg/mlの湿潤剤;任意選択的に例えば0.
5~10mg/mlの緩衝液;任意選択的に例えば0.1~5mg/mlの甘味剤;及び
任意選択的にpH調整剤(q.s.)を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の薬
学的配合物。
【請求項13】
1mlの精製水である前記薬学的担体を基準として、60~80mg/mlのイブルチ
ニブ;8~12mg/mlのベンジルアルコール防腐剤;10~14mg/mlの懸濁化
剤;任意選択的に例えば2~3mg/mlの湿潤剤;任意選択的に例えば1.5~2.5
mg/mlの緩衝液;任意選択的に例えば0.5~1.5mg/mlの甘味剤;及び任意
選択的にpH調整剤(q.s.)を含む、請求項12に記載の薬学的配合物。
【請求項14】
前記成分の(互いに対する)且つ70mgのイブルチニブと比較した以下の相対量(w
/w):5~15mgのベンジルアルコール防腐剤;6~18mgの懸濁化剤;任意選択
的に例えば1~5mgの湿潤剤;任意選択的に例えば1~3mgの緩衝液;任意選択的に
例えば0.2~2mgの甘味剤;及び任意選択的にpH調整剤(q.s.)を含み、薬学
的に許容可能な担体(例えば、精製水)は、所定の量で存在する、請求項1~11のいず
れか一項に記載の薬学的配合物。
【請求項15】
8~12mgのベンジルアルコール防腐剤;10~14mgの、微結晶セルロースとカ
ルボキシメチルセルロースナトリウムとの混合物(例えば、Avicel(登録商標))
;任意選択的に2~3mgのヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC);任意選
択的に1.5~2.5mgのクエン酸.H2O及び/又はリン酸水素ナトリウムなどのリ
ン酸塩;任意選択的に0.5~1.5mgのスクラロース;並びに任意選択的に、pHを
調整するためのNaOH及び/又はHCl(q.s.)を含み、薬学的に許容可能な担体
(例えば、精製水)は、本明細書に記載される所定の量(例えば、10mgのイブルチニ
ブ当たり1ml~210mgのイブルチニブ当たり1ml、例えば70mgのイブルチニ
ブ当たり約1ml)で存在する、請求項14に記載の薬学的配合物。
【請求項16】
前記イブルチニブは、塩又は溶媒和物の形態ではなく、すなわち、前記イブルチニブは
、その遊離形態である、請求項1~15のいずれか一項に記載の薬学的配合物。
【請求項17】
疾患の治療を、前記治療を必要とする患者において行う方法であって、治療有効量の、
請求項1~16のいずれか一項に記載の薬学的配合物を前記患者に投与することを含む方
法。
【請求項18】
B細胞増殖性疾患を治療する方法であって、治療有効量の、請求項1~16のいずれか
一項に記載の薬学的配合物を、必要とする患者に投与することを含む方法。
【請求項19】
前記B細胞増殖性疾患は、瀰漫性大B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫又は慢性リンパ球
白血病である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記疾患は、B細胞悪性腫瘍である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記疾患は、慢性リンパ球白血病(CLL)/小リンパ球リンパ腫(SLL)、マント
ル細胞リンパ腫(MCL)、瀰漫性大B細胞リンパ腫(DLBCL)及び多発性骨髄腫か
ら選択されるB細胞悪性腫瘍である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記疾患は、リンパ腫又は白血病である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記疾患は、瀰漫性大B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ球リンパ腫、慢性
リンパ球白血病、B細胞前リンパ球白血病、リンパ形質細胞リンパ腫/ワルデンシュトレ
ームマクログロブリン血症、脾辺縁帯リンパ腫、形質細胞骨髄腫、形質細胞腫、節外性辺
縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)
大B細胞リンパ腫、血管内大B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、バーキットリンパ
腫/白血病又はリンパ腫様肉芽腫症である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
請求項1~16のいずれか一項に記載の薬学的配合物を調製するプロセスであって、前
記成分を互いに混合することを含むプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤、特にイブルチニブの配合物
に関する。本発明は、イブルチニブを含むこうした配合物/組成物を調製するプロセス及
び血液悪性腫瘍の治療にこうした配合物/組成物を使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
イブルチニブは、IUPAC名1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノ
キシフェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-イル]
プロプ-2-エン-1-オンを有する有機小分子である。これは、国際特許出願の国際公
開第2008/039218号パンフレット(実施例1b)を含む多くの既刊の文献に説
明されており、Btkの不可逆的阻害剤として記載されている。
【0003】
イブルチニブは、B細胞悪性腫瘍を標的化する上で役割を果たす。イブルチニブは、制
御不能に成長及び分裂するように悪性B細胞を刺激するシグナルをブロックする。したが
って、これは、慢性リンパ球白血病、マントル細胞リンパ腫、瀰漫性大B細胞リンパ腫、
ワルデンシュトレームマクログロブリン血症及び多発性骨髄腫などの各種の血液悪性腫瘍
に対する臨床試験の研究が進められている。また、一部の郡では、これは、特定の疾患に
対して規制当局の承認が得られている。例えば、これは、米国FDAにより、2013年
11月にマントル細胞リンパ腫の治療に対して、2014年2月に慢性リンパ球白血病の
治療に対して、2015年1月にワルデンシュトレームマクログロブリン血症の治療に対
して承認された。これは、Imbruvica(登録商標)の商標名で市販されている。
【0004】
イブルチニブの結晶形態は、国際公開第2013/184572号パンフレットに開示
されている。イブルチニブの配合物は、例えば、国際公開第2014/004707号パ
ンフレット、同第2014/0336203号パンフレット、同第2016/02294
2号パンフレット、同第2016/141068号パンフレット、同第2016/164
404号パンフレット、同第2017/125423号パンフレット及び同第2017/
125424号パンフレットなどの文献に記載されている。イブルチニブの共結晶も、例
えば、国際公開第2016/160604号パンフレット及び同第2016/15612
7号パンフレットに開示されている。
【0005】
イブルチニブの代替的な配合物は、特に小児科集団に必要とされ且つ/又は望まれてい
る。小児科配合物の場合、追求することのできる多くの可能な代替形態が存在する。懸濁
液の場合、保存寿命安定性などの多くの課題が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、
(i)化合物1
【化1】
の構造体と、任意選択的に薬学的に許容可能な担体の存在下での懸濁化剤とを有する化合
物であるイブルチニブと;
(ii)ベンジルアルコールである少なくとも1つの防腐剤と;
任意選択的に、1つ以上の他の薬学的に許容可能な賦形剤と
を含む(懸濁液の形成を目的とした)薬学的配合物が提供され、この配合物は、本明細書
で「本発明の配合物」と称され得る。
【0007】
本発明の配合物は、再構成可能である場合があり、すなわち薬学的に許容可能な担体(
例えば、精製水又は本明細書で定義される別の好適な担体)を含有しない場合があるか、
又は既に担体(例えば、精製水又は本明細書で定義される別の好適な担体)を含有する懸
濁液生成物である場合がある。したがって、後者の場合、
(i)薬学的に許容可能な担体中に懸濁されている、化合物1
【化2】
の構造体を有する化合物であるイブルチニブと;
(ii)ベンジルアルコールである少なくとも1つの防腐剤と;
任意選択的に、1つ以上の他の薬学的に許容可能な賦形剤と
を含む懸濁液形態の薬学的配合物が提供される。
【0008】
したがって、本発明は、イブルチニブ又はその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物
を含有する懸濁液であり、ベンジルアルコールが存在する主な防腐剤である様々な配合物
に関し、配合物は、1つ以上の更なる薬学的に許容可能な賦形剤を更に含有し得る。本発
明は、こうした薬学的配合物を調製する方法に更に関する。本発明は、例えば、本明細書
で後述する疾患の治療においてこうした配合物を薬剤として使用することにまた更に関す
る。本発明は、疾患の治療を、こうした治療を必要とする患者において行う方法であって
、治療有効量のこうした薬学的配合物を患者に投与することを含む方法にも関する。
【0009】
本明細書では、ベンジルアルコールは、本発明の配合物中に存在する主な防腐剤である
ことが示され、これは、防腐に関して同じ若しくは同様の有効性を有し、同じ若しくは同
様の安定性プロファイルを有し、且つ/又は活性成分(イブルチニブ)と共結晶を形成し
ない、同じ効果を達成するベンジルアルコールの好適な均等物を包含することが当業者に
よって理解される。上記の全ては、本明細書で後述する実験の項で用いられる試験におい
て試験され得る。例えば、十分な防腐が、本明細書に記載されるPET(防腐有効性試験
)に記載されるとおりに試験されて、例えば以下の有機体が採用された場合、28日後に
4log超の低下をもたらすことができる:A.ブラジリエンシス(A.brasili
ensis)、C.アルビカンス(C.albicans)、P.アエルギノーサ(P.
aeruginosa)、S.アウレウス(S.aureus)及び/又はE.コリ(E
.coli)(例えば、下記の実験の項で示されるとおりの有機体の初期濃度において)
。安定性は、実験の項における試験において記載されるとおりに試験することができる(
特定の条件下で1ヶ月、2ヶ月及び6ヶ月の安定性試験)。共結晶の形成も、同様に本明
細書で後述される実験の項に記載される条件下で観察することによって試験することがで
きる。
【0010】
本発明は、全てが本開示の一部を形成する添付の実施例に関連して解釈される以下の説
明を参照することにより、より容易に理解することができる。本発明は、本明細書に記載
され且つ/又は示される特定の生成物、方法、条件又はパラメータに限定されるものでは
なく、本明細書で使用される専門用語は、単に例として特定の実施形態を説明することを
目的とし、いかなる特許請求される本発明も限定することを意図するものではないことを
理解されたい。同様に、特に明記されない限り、可能な機構若しくは作用様式又は改善の
理由に関する任意の説明は、例示のみを意図しており、本明細書の本発明は、こうした提
案される機構若しくは作用様式又は改善の理由の正確性若しくは不正確性によって束縛さ
れるものではない。本明細書全体を通して、説明は、本明細書に記載される配合物の特徴
並びに製造及び使用方法の両方に関するものであることが認められる。
【0011】
本明細書でイブルチニブが言及される場合、上記の化合物1又は例えば本明細書で後述
されるその薬学的に許容可能な塩若しくはその溶媒和物が言及される。更に、イブルチニ
ブ(又はその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物)は、本発明の配合物中の活性成分
であり、治療有効量で存在する。例えば、一態様では、配合物が小児科集団を目的とする
場合、70mgの活性成分イブルチニブが配合物中に存在し得る(しかし、イブルチニブ
が例えば塩形態である場合、より大きい質量が存在し得る)。しかしながら、一実施形態
において、本発明の態様では、用いられるイブルチニブの形態は、塩又は溶媒和物ではな
く、遊離形態である。
【0012】
一態様では、本発明の配合物のイブルチニブは、その非塩形態で用いられる。別の態様
では、本発明の配合物中で用いられるイブルチニブは、例えば、国際特許出願の国際公開
第2013/184572号パンフレットで記載及び調製される結晶形態Aである。
【0013】
本発明の配合物では、活性薬学的成分のイブルチニブ(又はその塩/溶媒和物)は、治
療的に有効である好適な量で存在し得る。本発明の配合物は、懸濁液を包含し、この場合
、懸濁液は、薬学的に許容可能な担体の存在下で耐えられる限り多くのイブルチニブ(又
はその塩/溶媒和物)を含有することが好ましい。一態様では、薬学的に許容可能な担体
(存在する場合)は、水溶液であり、特定の態様では、これは、水、例えば精製水又は滅
菌水である。しかしながら、担体は、水(例えば、水道水、精製水又は滅菌水)、エタノ
ール、プロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコールなど、又はこれら
の組み合わせのいずれかから選択され得;例えば、一実施形態では、担体は、最大90%
の水を含み、残部は、エタノールなどの他の上述の担体のいずれかであり、別の実施形態
では、担体は、少なくとも90%の水を含む(且つ最大10%の残部は、他の上述の担体
の1つ以上を含む)。更なる態様では、イブルチニブの量は、1w/v%~20w/v%
、例えば約2w/v%~15w/v%の量で存在し得、また一実施形態では、これは、約
3w/v%~10w/v%、例えば約7w/v%の量で存在し得、これが、懸濁液である
配合物に関連する場合、担体(例えば、精製水)は、w/v比内であることが意図され、
これが、再構成のためのものである配合物(例えば、粉末)に関連する場合、w/v比は
、添加が意図される(又は添加されることになる)担体(又は水などの液体)の量を考慮
に加える。したがって、一実施形態では、イブルチニブ(又はその塩/溶媒和物)は、約
20mg/ml~150mg/mlの量で存在し、更なる実施形態では約30mg/ml
~100mg/ml、約60mg/ml~80mg/ml、例えば約70mg/mlの量
で存在する。
【0014】
比w/vが本明細書で述べられる場合、且つ量が単位mg/ml(又は本明細書で互換
的に用いられるmg/ml)で述べられる場合、体積は、本発明の配合物が懸濁液である
場合に担体(例えば、精製水)を含むものと理解され、本発明の配合物が、再構成のため
のものである場合(例えば、粉末)、w/v比及びmg/mlは、添加が意図される(又
は添加されることになる)担体(又は水などの液体)を含む。これらの場合、担体又は薬
学的に許容可能な担体は、希釈剤とも称され得る。担体は、水であり得、懸濁液の場合、
精製水であることが好ましく(さもなければ保存寿命が影響を受ける場合があるため)、
また例えば再構成用粉末の場合、これは、精製水であり得るが、飲用水(例えば、水道水
)でもあり得る。
【0015】
本明細書では、ベンジルアルコールである少なくとも1つの防腐剤が本発明の配合物中
に存在することが示される。したがって、例えば、下記のリストから選択される1つ以上
の他の防腐剤が存在し得る。しかしながら、一実施形態では、本発明の配合物の防腐剤は
、(重量基準で)25%超、例えば50%超のベンジルアルコールを含み、またこの場合
でも、配合物は、ベンジルアルコール以外の他の防腐剤、例えば下記に記載する他の防腐
剤を更に含有し得る(但し、他の防腐剤の総重量百分率は、必要に応じて75%又は50
%を超えないものとする)。一態様では、本発明の配合物中の防腐剤は、70%超のベン
ジルアルコール、例えば90%超のベンジルアルコールを含み、また一態様では、防腐剤
は、ベンジルアルコールから本質的になる(すなわち本発明の配合物の防腐剤は、99%
超又は約100%のベンジルアルコールであり、他の防腐剤は、1%未満であるか又は本
質的に存在しない)。これは、下記で説明されるように、ベンジルアルコールの存在が他
の防腐剤と比較して予想外に有利であるためである。これは、懸濁液が適切な安定性を有
するために極めて重要であり、これを達成することは、依然として課題である。しかしな
がら、ベンジルアルコールを防腐剤として使用することは、以下に関連する利益を有し得
る:(i)本発明の配合物の保存寿命;(ii)配合物の安定性(例えば、物理的安定性
)及びその殺菌活性(例えば、PET(防腐有効性試験)によって測定した);(iii
)副生成物、例えば配合物/懸濁液中の沈殿又は粒子(例えば、イブルチニブ粒子)が十
分に分散されていないことにより生じ得る懸濁液中の望ましくない共結晶及び他の目に見
える不純物又は斑点の低減された形成。こうした目に見える不純物又は斑点は、凝集塊が
形成された兆候であり、したがって不安定性の兆候である。
【0016】
本明細書で述べられたように、本発明の配合物は、ベンジルアルコールに加えて1つ以
上の他の防腐剤を含有し(しかし、一態様では、防腐剤は、専らベンジルアルコールであ
る)、この点に関して、防腐剤は、抗菌剤、抗酸化剤、遊離基捕捉剤、脱酸素剤及び/又
はキレート剤の1つ以上を含み得る。例えば、抗菌剤及び抗酸化剤は、安息香酸、パラベ
ン(例えば、メチル又はエチルパラベン)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、
ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、クロルブトール、没食子酸塩、ヒドロキシベン
ゾエート、EDTA、フェノール、クロロクレゾール、メタクレゾール、塩化ベンゼトニ
ウム、ミリスチル-γ-ピコリニウムクロリド、酢酸フェニル水銀、チメロサール、ソル
ビン酸及びプロピオン酸からなる群から選択され得る(またプロピレングリコールも言及
され得る)。遊離基捕捉剤としては、BHA、BHT、ビタミンE及びアスコルビン酸パ
ルミテート並びにこれらの混合物が挙げられる。酸素捕捉剤としては、アスコルビン酸ナ
トリウム、亜硫酸ナトリウム、L-システイン、アセチルシステイン、メチオニン、チオ
グリセロール、アセトン重亜硫酸ナトリウム、イソアスコルビン酸、ヒドロキシプロピル
シクロデキストリンが挙げられる。キレート剤としては、クエン酸ナトリウム、ナトリウ
ムEDTA及びリンゴ酸が挙げられる。言及され得る他の防腐剤としては、酢酸(例えば
、抗酸化剤又はキレート剤として作用し得るもの)などが挙げられる。一態様では、他の
防腐剤は、酸素捕捉剤ではなく、更なる態様では、他の防腐剤は、抗菌剤及び/又は抗酸
化剤である。本発明の一実施形態では、本発明の配合物は、ベンジルアルコール以外の防
腐剤を含まない。
【0017】
例えば、防腐剤の量は、0.1w/v%~10w/v%、例えば約0.1w/v%~5
w/v%の量で存在し得、一実施形態では約0.5w/v%~2w/v%、例えば約1w
/v%の量で存在し得る。したがって、一実施形態では、防腐剤は、約1mg/ml~5
0mg/mlの量で存在し、更なる実施形態では、約2mg/ml~25mg/ml、約
5mg/ml~20mg/ml、例えば約10mg/mlの量で存在する。本明細書で示
されるように、本発明の配合物は、ベンジルアルコールである防腐剤を含有し、一実施形
態では、これは、少なくとも約0.1w/v%又は少なくとも約1mg/mlのベンジル
アルコールを含有し、更なる実施形態では、これは、少なくとも約0.5w/v%又は少
なくとも約5mg/mlのベンジルアルコールを含有する。例えば、本明細書において、
防腐剤が50%超のベンジルアルコールを含むと述べられる場合、これは、具体的には、
1w/v%の防腐剤が存在する場合、0.5w/v%のベンジルアルコール及び0.5w
/v%の1つ以上の他の防腐剤と解釈する(例えば、本明細書で上述したとおり)。しか
しながら、一態様では、防腐剤は、ベンジルアルコールから本質的になると示されている
ため、本明細書で上述した範囲は、存在するベンジルアルコールの量に具体的に適用され
(例えば、約0.5w/v%~2w/v%又は約5mg/ml~20mg/mlのベンジ
ルアルコール)、この態様では本発明の配合物中に他の防腐剤が実質的に存在しない。
【0018】
示されるように、本発明の配合物は、懸濁液であり得る。したがって、一態様では、本
発明の配合物は、懸濁化剤である更なる賦形剤を含む。懸濁化剤は、粒子の懸濁若しくは
分散を促進し、且つ/又は懸濁液内の点において粒子の沈殿若しくは蓄積(若しくは凝集
)を低減させる任意の物質であり得る。懸濁化剤は、粘度を増加させて十分な表面活性も
促進し得る(例えば、これが更に湿潤剤でもある場合)。この点において、懸濁化剤は、
以下の剤の1つ以上であり得る:アルギン酸塩、セルロースエーテル、メチルセルロース
、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロ
ースナトリウム、微結晶セルロース、アカシア、トラガカント、キサンタンガム、ベント
ナイト、カルボマー、カラギーナン、粉末セルロース及びゼラチン。言及され得る他の懸
濁化剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びヒドロキシプロ
ピルセルロース(HPC)が挙げられ;こうした剤は、懸濁化剤及び湿潤剤としての役割
を果たすことができるが、湿潤剤がHPMC及び/又はHPCから選択される一実施形態
では、懸濁化剤は、同じではない。
【0019】
一態様では、本発明の配合物中で用いられ得る懸濁化剤としては、カラギーナン、キサ
ンタン(又はキサンタンガム;例えば、グラム陰性菌による炭水化物の発酵によって生成
される任意の好適な多糖)又はセルロースエーテル(例えば、通常、アルカリセルロース
のエーテル化によって製造される任意の好適なセルロースエーテル)が挙げられる。一態
様では、懸濁化剤がセルロースエーテル、例えば微結晶セルロース及び/又はカルボキシ
メチルセルロースナトリウム(例えば、商標名Avicel(登録商標)で入手可能な懸
濁化剤)であり、且つ保存寿命安定性が望まれる懸濁液で使用するための適合性に基づい
て選択され得る、本発明の配合物が提供される。当業者であれば、微結晶セルロース及び
/又はカルボキシメチルセルロースナトリウムが懸濁化剤として用いられる場合、最適な
形態が好まれることになり、例えば一実施形態では、本発明の配合物は、再構成可能な懸
濁液であり得るか、又は別の実施形態では、配合物は、既に薬学的に許容可能な担体(例
えば、精製水)を含有し得、これらの場合のそれぞれにおいて、各実施形態に対してより
好適なAvicel(登録商標)製品が存在し得ることを理解するであろう。
【0020】
いくつかの実施形態では、懸濁化剤は、天然デンプン、アルファ化デンプン、ナトリウ
ムデンプン、メチル結晶性セルロース、メチルセルロース(例えば、Methocel(
登録商標))、クロスカルメロース、クロスカルメロースナトリウム、架橋ナトリウムカ
ルボキシメチルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロース、架橋クロスカルメロース
、架橋デンプン、例えばナトリウムデンプングリコレート、架橋ポリマー、例えばクロス
ポビドン、架橋ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、粘土及びゴムからなる群
から選択される。一実施形態では、デンプンは、粘度を、望まれるものを超えて過度に増
加させ得るため、懸濁化剤として用いられない。
【0021】
本発明の配合物中で懸濁化剤として用いられ得る微結晶セルロースは、任意の好適な供
給源に由来し得、例えば、これは、SMCC HD90(例えば、JRS Pharma
から入手可能であり得るPROSOLV SMCC(登録商標))などのケイ化微結晶セ
ルロース(SMCC)であり得るか、又はこれは、微結晶セルロースとカルボキシメチル
セルロースナトリウムとの混合物(例えば、商標名Avicel(登録商標)で市販され
る)であり得る。
【0022】
懸濁化剤の量は、0.1w/v%~10w/v%、例えば約0.1w/v%~5w/v
%の量で存在し得、一実施形態では約0.5w/v%~2w/v%、例えば約1.2w/
v%の量で存在し得る。したがって、一実施形態では、懸濁化剤は、約1mg/ml~5
0mg/mlの量で存在し、更なる実施形態では約2mg/ml~25mg/ml、約5
mg/ml~20mg/ml、例えば約12mg/mlの量で存在する。一実施形態では
、懸濁化剤は、本発明の配合物の必須成分である。
【0023】
本発明の配合物は、他の賦形剤又は担体も含有し得る。例えば、一態様では、本発明の
配合物は、湿潤剤又は界面活性剤を更に含有し得、代表的な例としては、以下のリストか
ら選択されるものなど、表面張力を低下させるものが挙げられる:ゼラチン、カゼイン、
レシチン、負荷電リン脂質の塩又はその酸形態(ホスファチジルグリセロール、ホスファ
チジルイノサイト、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸及びアルカリ金属塩などの
それらの塩、例えばそれらのナトリウム塩、例えばLipoid(商標)EPGの商標名
で入手可能な製品などの卵ホスファチジルグリセロールナトリウム)、アラビアゴム、ス
テアリン酸、ベンズアルコニウムクロリド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例え
ばマクロゴールエーテル、例えばセトマクロゴール1000、ポリオキシエチレンヒマシ
油誘導体;ステアリン酸ポリオキシエチレン、コロイド状二酸化ケイ素、ドデシル硫酸ナ
トリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、胆汁塩、例えばタウロコール酸ナト
リウム、デソキシタウロコール酸ナトリウム、デソキシコール酸ナトリウム;メチルセル
ロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロ
ピルメチルセルロース、マグネシウムアルミネートシリケート、ポリビニルアルコール(
PVA)、Pluronic(商標)F68、F108及びF127などのエチレンオキ
シドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマーであるポロキサマー;チロキサポール
;ビタミンE-TGPS(α-トコフェリルポリエチレングリコールスクシネート、具体
的にはα-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート);ポロキサミン
、例えばエチレンジアミンへのエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの逐次付加から
誘導される四官能性ブロックコポリマーであるTetronic(商標)908(T90
8);デキストラン;レシチン;スルホコハク酸ナトリウムのジオクチルエステル、例え
ばAerosol OT(商標)(AOT)の商標名で市販される製品;ラウリル硫酸ナ
トリウム(Duponol(商標)P);Triton(商標)X-200の商標名で入
手可能なアルキルアリールポリエーテルスルホネート;ポリオキシエチレンソルビタン脂
肪酸エステル(Tweens(商標)20、40、60及び80);脂肪酸のソルビタン
エステル(Span(商標)20、40、60及び80又はArlacel(商標)20
、40、60及び80);ポリエチレングリコール(例えば、Carbowax(商標)
3550及び934の商標名で市販されているもの);スクロースステアレート及びスク
ロースジステアレート混合物、例えばCrodesta(商標)F110又はCrode
sta(商標)SL-40の商標名で入手可能な製品;ヘキシルデシルトリメチルアンモ
ニウムクロリド(CTAC);ポリビニルピロリドン(PVP);非イオン性界面活性剤
、例えばポリエトキシレート化ヒマシ油(例えば、商標名Kolliphorで市販され
る)。必要に応じて、2つ以上の湿潤剤及び/又は界面活性剤を組み合わせて用い得る。
【0024】
一態様では、湿潤剤又は界面活性剤は、例えば、セルロース、例えばヒドロキシプロピ
ルセルロース(様々な市販製品を含むHPC)又はヒドロキシプロピルメチルセルロース
(例えば、市販製品HPMC2208)などのセルロースエーテルから誘導される水溶性
ポリマーである。上記で示したように、懸濁化剤は、湿潤剤と重複し得、この点に関して
、一態様では、湿潤剤(存在する場合)は、界面活性剤と異なる。したがって、懸濁化剤
及び湿潤剤が両方ともセルロースエーテルである場合、一実施形態では、これらは、異な
るセルロースエーテルである(例えば、懸濁化剤は、微結晶セルロース及び/又はカルボ
キシメチルセルロースナトリウムであり得、湿潤剤は、HPMCであり得る)。
【0025】
一態様では、本発明の配合物中に界面活性剤/湿潤剤が存在する。こうした剤の量は、
0.05w/v%~10w/v%又は0.05w/v%~5w/v%(例えば、0.05
w/v%~2w/v%)、例えば約0.05w/v%~1w/v%の量で存在し得、一実
施形態では約0.1w/v%~0.5w/v%、例えば約0.25w/v%の量で存在し
得る。したがって、一実施形態では、界面活性剤/湿潤剤は、約0.5mg/ml~10
0mg/ml又は0.5mg/ml~50mg/ml(例えば、0.5mg/ml~20
mg/ml)の量で存在し、更なる実施形態では約0.5mg/ml~10mg/ml、
約1mg/ml~5mg/ml、例えば約2.5mg/mlの量で存在する。一実施形態
では、湿潤剤(又は界面活性剤)は、本発明の配合物の必須成分である。
【0026】
一実施形態では、本発明の配合物は、任意選択的に、1つ以上の緩衝剤及び/又はpH
調整剤を含有し得る。これは、本発明の一態様では、本発明の配合物のpHが好ましくは
約pH4~pH8(例えば、pH5~pH7)の範囲内であり、具体的には約pH6であ
るからである。緩衝液又は緩衝剤は、典型的には2つの成分、例えば弱酸及びその共役塩
基又は弱塩基及びその共役酸の混合物である。例えば、これに関連して、用いられ得る緩
衝液又は緩衝剤の成分としては、弱酸の塩を挙げることができ、一態様では、緩衝剤は、
クエン酸(クエン酸.H2Oなど;これは、予形成され得るか、又は本発明の配合物を調
製するプロセス中に形成され得る)及びリン酸水素ナトリウム(例えば、それぞれリン酸
水素二ナトリウム又はリン酸二水素ナトリウム、Na2HPO4又はNaH2PO4)を
含有し得、また一態様では、pH調整剤は、水酸化ナトリウム(NaOH)及び/又は塩
酸(HCl)などの強酸又は強塩基であり得る。したがって、緩衝剤(緩衝液)及びpH
調整剤の成分の例としては、これらの混合物を含めて、酒石酸、マレイン酸、グリシン、
乳酸ナトリウム/乳酸、アスコルビン酸、クエン酸ナトリウム/クエン酸、酢酸ナトリウ
ム/酢酸、重炭酸ナトリウム/炭酸、コハク酸ナトリウム/コハク酸、安息香酸ナトリウ
ム/安息香酸、リン酸ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、重炭酸ナ
トリウム/炭酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、ベンゼンスルホン酸、ベンゾエートナ
トリウム/酸、ジエタノールアミン、グルコノデルタラクトン、塩酸、臭化水素、リジン
、メタンスルホン酸、モノエタノールアミン、水酸化ナトリウム、トロメタミン、グルコ
ン酸、グリセリン酸、グルタル酸、グルタミン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)
、トリエタノールアミンの1つ以上が挙げられる。一実施形態では、本発明の配合物とし
ては、弱酸又は好ましくは酸の無機塩、例えばクエン酸及び/又はリン酸塩(例えば、N
aH2PO4又は好ましくはNa2HPO4などのリン酸水素ナトリウム)などの成分を
含有する緩衝剤が挙げられる。本明細書において、クエン酸が緩衝液/緩衝剤の成分に関
連して言及される場合、クエン酸水和物、すなわち1:1比のクエン酸及び水(クエン酸
.H2O)が引用される(他の場合にはクエン酸自体が吸湿性であるため)。
【0027】
一態様では、本発明の配合物中に存在する緩衝液(又は緩衝剤)の総量は、0.05w
/v%~2w/v%、例えば約0.05w/v%~1w/v%の量であり、一実施形態で
は約0.1w/v%~0.5w/v%、例えば約0.2w/v%の量で存在し得る。した
がって、一実施形態では、緩衝剤は、約0.5mg/ml~20mg/mlの量で存在し
、更なる実施形態では約0.5mg/ml~10mg/ml、約1mg/ml~5mg/
ml、例えば約2mg/mlの量で存在する(又は約2mmol/ml~150mmol
/ml、例えば5mmol/ml~30mmol/ml、例えば約15mmol/mlの
量で存在し;それにより、クエン酸水和物及びNa2HPO4が用いられる場合、量は、
それぞれ約3~4mmol/ml及び9~11mmol/mlとなり得る)。一実施形態
では、緩衝剤(又は2つ以上の緩衝剤を含有する混合物)は、本発明の配合物の必須成分
であり、一態様では、これは、クエン酸(クエン酸.H2O)及びリン酸ナトリウム(例
えば、リン酸水素ナトリウム(Na2HPO4))を例えばmg/mlに対して相対的に
1:3~3:1(例えば、約1:2~2:1、例えば約1:1)の比で含むが、しかしな
がら、比は、約1:2であることが好ましい(mg/mlに対して相対的に示されるとお
り;モル比への変換も、例えば、mmol/mlに対して相対的に決定することができ、
比は、1:5~1:1、例えば約1:4~1:2、例えば約1:3となり得る)。その後
、本発明の配合物は、pH調整を目的とした酸及び塩基、例えば本明細書で上述した強酸
及び/又は強塩基pH調整剤を更に含み得;例えば、所望のpH(例えば、pH6.0±
0.1)のためにq.s.のNaOH及び/又はHClを本発明の配合物に添加し得る。
精製水もこの目的のために添加され得、且つ薬学的に許容可能な担体(又は溶媒)として
も存在し、且つ本明細書で提供されるw/v比に基づいてq.s.で添加される。
【0028】
一態様では、本発明の配合物は、任意選択的に甘味剤を含有し得る。天然若しくは人工
甘味剤又はこれらの組み合わせなどの甘味剤は、本明細書に記載される配合物に含まれ得
る。一実施形態では、天然甘味剤は、原料糖、グラニュー糖、黒砂糖、製菓用糖及び中白
糖、フルクトース、蜂蜜、果糖、高フルクトースコーンシロップ、コーンシロップ、マン
ニトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトールなどの糖アルコール、水素化デ
ンプン加水分解物、ラクチトール若しくはマルチトール、オスマルト、デキストロース、
転化糖、アガベネクター、グルコース、ラクトース、マルトース、カエデ糖、デーツ糖、
糖蜜、ステビア抽出物、タガトース、トレハロース又はこれらの任意の組み合わせを含む
スクロースである。別の実施形態では、人工甘味剤は、スクラロース、アスパルテーム、
サッカリン、ネオテーム、アドバンテーム又はアセスルファムカリウムである。なお更な
る実施形態では、甘味剤は、スクラロースである。
【0029】
甘味剤が本発明の配合物中に存在する場合、存在する総量は、0.01w/v%~1w
/v%、例えば約0.05w/v%~0.5w/v%の量であり、一実施形態では約0.
05w/v%~0.2w/v%、例えば約0.1w/v%の量で存在し得る。したがって
、一実施形態では、甘味剤は、約0.1mg/ml~10mg/mlの量で存在し、更な
る実施形態では約0.5mg/ml~5mg/ml、約0.5mg/ml~2mg/ml
、例えば約1mg/mlの量で存在する。
【0030】
本発明の配合物の各成分の量は、以下に指定するような特定の割合であり得る:
イブルチニブ - 70mg/ml
ベンジルアルコール防腐剤 - 10mg/ml
懸濁化剤 - 12mg/ml
湿潤剤 - 2.5mg/ml
緩衝液 - 2.1mg/ml
甘味剤 - 1mg/ml
pH調整剤(例えば、NaOH及び/又はHCl)、q.s.、ad pH6.0±0.
1
薬学的担体 - 精製水、q.s.ad 1ml。
【0031】
本発明の配合物は、懸濁液であり、従って一態様では精製水である薬学的に許容可能な
担体を有する。配合物の成分の量は、1mlの担体(精製水)に対して相対的(w/v)
であるとして本明細書で示されている。したがって、懸濁液の所定の体積を、特定の用量
を投与するために用いることができる。この点に関して、懸濁液は、より低濃度であるか
又はより高濃度であり得る。懸濁液がより低濃度である場合、活性成分の相対量(w/v
)は、これらが二等分される(例えば、2mlの精製水中に70mgのイブルチニブ又は
1mlの精製水中に35mgのイブルチニブが存在し得る)ように変わり得る。この場合
、残りの成分もこれに応じて調整され得るが、好ましくは、これらは、同じままであり、
すなわちベンジルアルコール、懸濁化剤、湿潤剤、緩衝液、甘味剤及びpH調整剤などの
任意の残りの成分(存在する場合/存在するとき)に対して、本発明の配合物に関して本
明細書で言及される、1mlの担体(例えば、精製水)と相対的に測定したときのこれら
の量(単位mg/ml又はw/v)は、ここでも適用される(例えば、1mlの担体当た
りに10mg/mlのベンジルアルコールなど)。1ml当たり35mgのAPI(イブ
ルチニブ)が存在する場合、70mgの用量が望まれる場合、2mlが懸濁液の所定の体
積となる(1ml当たり35mgのイブルチニブが存在することなどを前提として)。懸
濁液は、より高濃度でもあり得、この場合、API(イブルチニブ)の相対量は、これら
が2倍、例えば1mlの精製水中に140mgのイブルチニブとなるように変わり得、こ
の場合、70mg用量の場合には0.5mlが所定の体積となる。懸濁液がより高濃度で
ある場合、ここでも、残りの成分もこれに応じて調整され得るが、好ましくは、これらは
、同じままであり、すなわちベンジルアルコール、懸濁化剤、湿潤剤、緩衝液、甘味剤及
びpH調整剤などの任意の残りの成分(存在する場合/存在するとき)に対して、本発明
の配合物に関して本明細書で言及される、1mlの担体(例えば、精製水)と相対的に測
定したときのこれらの量(単位mg/ml又はw/v)は、ここでも適用される。そのた
め、本発明の配合物又は懸濁液は、より低濃度であるか又は高濃度であり得、従って、配
合物/懸濁液の所定の体積は、これに応じて調整される。この点に関して、本発明の配合
物は、存在するAPI(イブルチニブ)に対して調整され得る(1mlの担体中で7mg
/ml~700mg/mlの範囲であり得るか、又は本明細書で言及される他の範囲のい
ずれかであり得る(例えば、20~200mg/mlなど))。
【0032】
本明細書では、w/v(一般には担体の体積、例えば精製水の体積に対する成分の重量
に関する)が説明されているが、本明細書に記載される本発明は、本明細書で記載される
配合物/懸濁液の各成分の互いに対する相対重量に関して説明することもできることも理
解されるであろう。こうした場合、薬学的に許容可能な担体(例えば、精製水)は、成分
の重量基準の体積の範囲で存在し得、例えば、これは、70mgのイブルチニブ当たり1
ml(特定の実施形態として本明細書に記載されるように)であり得る一方、例えば10
mgのイブルチニブ当たり1ml及び210mgのイブルチニブ当たり1mlなど、任意
の他の実行可能な希釈であり得る(例えば、35mgのイブルチニブ当たり1ml及び1
40mgのイブルチニブ当たり1ml)。こうした場合、本発明の配合物/懸濁液の他の
全ての成分の量もこれに応じて調整される。例えば、一態様では、本発明の配合物が提供
され、成分の(互いに対する)且つ70mgのイブルチニブと比較した相対量(w/w)
は、以下:
5~15mgのベンジルアルコール防腐剤;
6~18mgの懸濁化剤;
任意選択的に例えば1~5mgの湿潤剤;
任意選択的に例えば1~3mgの緩衝液;
任意選択的に例えば0.2~2mgの甘味剤;及び
任意選択的にpH調整剤(q.s.)
のとおりであり、薬学的に許容可能な担体(例えば、精製水)は、本明細書に記載される
所定の量(例えば、10mgのイブルチニブ当たり1ml~210mgのイブルチニブ当
たり1ml、例えば70mgのイブルチニブ当たり約1ml)で存在する。これらの場合
、懸濁化剤、湿潤剤、緩衝液、甘味剤及びpH調整剤は、本発明の態様において本明細書
に記載されるもの(例えば、特定のもの)のいずれかであり得る。この点に関して、以下
の配合物は、本発明の一態様であり、70mgのイブルチニブと比較した成分の相対量(
w/w)は、以下:
8~12mgのベンジルアルコール防腐剤;
10~14mgの、微結晶セルロースとカルボキシメチルセルロースナトリウムとの混合
物(例えば、Avicel(登録商標));
任意選択的に2~3mgのヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC);
任意選択的に1.5~2.5mgのクエン酸.H2O及び/又はリン酸水素ナトリウムな
どのリン酸塩;
任意選択的に0.5~1.5mgのスクラロース;及び
任意選択的に、pHを調整するためのNaOH及び/又はHCl(q.s.)、
のとおりであり、上記で示したように、薬学的に許容可能な担体(例えば、精製水)は、
本明細書に記載される所定の量(例えば、10mgのイブルチニブ当たり1ml~210
mgのイブルチニブ当たり1ml、例えば70mgのイブルチニブ当たり約1ml)で存
在する。
【0033】
本明細書に記載されるとおり、本発明の配合物は、精製水などの薬学的担体を含有する
。したがって、用量は、一定容量の懸濁液として投与される。本明細書に記載される場合
、用量が70mgのイブルチニブである場合、担体(例えば、精製水)の量は、1mlで
ある。本明細書で示されるように、懸濁液は、より低濃度であるか又はより高濃度であり
得るが、いかなる場合でも、特定の用量に必要な懸濁液の体積は、所定である。
【0034】
本発明の更なる態様では、本発明の配合物の成分は、1mlの精製水である薬学的担体
を基準として、以下の割合のいずれか1つであり得る:
20~200mg/mlのイブルチニブ;2.5~25mg/mlのベンジルアルコール
防腐剤;2~24mg/mlの懸濁化剤;任意選択的に例えば0.5~10mg/mlの
湿潤剤;任意選択的に例えば0.5~10mg/mlの緩衝液;任意選択的に例えば0.
1~5mg/mlの甘味剤;及び任意選択的にpH調整剤(q.s.);
40~100mg/mlのイブルチニブ;5~15mg/mlのベンジルアルコール防腐
剤;6~18mg/mlの懸濁化剤;任意選択的に例えば1~5mg/mlの湿潤剤;任
意選択的に例えば1~3mg/mlの緩衝液;任意選択的に例えば0.2~2mg/ml
の甘味剤;及び任意選択的にpH調整剤(q.s.);又は
60~80mg/mlのイブルチニブ;8~12mg/mlのベンジルアルコール防腐剤
;10~14mg/mlの懸濁化剤;任意選択的に例えば2~3mg/mlの湿潤剤;任
意選択的に例えば1.5~2.5mg/mlの緩衝液;任意選択的に例えば0.5~1.
5mg/mlの甘味剤;及び任意選択的にpH調整剤(q.s.)。
【0035】
特定の実施形態では、本発明の配合物は、指定される成分(例えば、本明細書の上記に
おいて本発明の態様に記載されるとおりの)を有し、例えば、
懸濁化剤は、微結晶セルロースとカルボキシメチルセルロースナトリウムとの混合物(例
えば、商標名Avicel(登録商標)、例えばAvicel(登録商標)RC-591
で市販される)であり;
湿潤剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)であり;
緩衝液は、クエン酸.H2O及び/又はリン酸水素ナトリウムなどのリン酸塩(例えば、
本明細書に記載される比での2つの混合物)であり;
甘味剤は、スクラロースであり;及び/又は
pH調整剤は、NaOH及びHClである。
【0036】
したがって、本発明の特定の態様では、以下の本発明の配合物が含まれる:
60~80mg/mlのイブルチニブ;
8~12mg/mlのベンジルアルコール防腐剤;
10~14mg/mlの、微結晶セルロースとカルボキシメチルセルロースナトリウムと
の混合物(例えば、Avicel(登録商標));
任意選択的に2~3mg/mlのヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC);
任意選択的に1.5~2.5mg/mlのクエン酸.H2O及び/又はリン酸水素ナトリ
ウムなどのリン酸塩;
任意選択的に0.5~1.5mg/mlのスクラロース;及び
任意選択的に、pHを調整するためのNaOH及び/又はHCl(q.s.)。
【0037】
一実施形態では、本発明の配合物は、湿潤剤も含有する(例えば、HPMC;例えば本
明細書に記載される量において)。一実施形態では、配合物は、緩衝液も含有する(例え
ば、クエン酸.H2O及び/又はリン酸水素ナトリウム;例えば本明細書に記載される量
において)。一実施形態では、配合物は、甘味剤も含有する(例えば、スクラロース;例
えば本明細書で言及される量において)。一実施形態では、pHを調整するために、Na
OH及び/又はHClが本発明の配合物に添加される。pHは、配合物の適切な保存寿命
を可能にする(又は保つ)任意の好適な範囲内であり得、これは、懸濁液にとって特に重
要であり、また防腐剤の選択が重要であることの主な理由である。所望のpHを達成する
ために、例えばNaOH及び/又はHClでの適切な調整を試み得る。一態様では、本発
明の配合物/懸濁液のpHは、約pH3~pH9であるが、更なる実施形態では、pHは
、約pH4~pH8(例えば、約pH5~pH7、例えば約pH5.5~pH6.5)で
ある。一態様では、本明細書に記載される配合物/懸濁液のpHは、約pH6に調整され
る。
【0038】
本発明の重要な態様は、防腐剤としてのベンジルアルコールの存在であることが本明細
書で示される。これは、実施例及び行われた試験を含む本明細書で説明されるとおり、ベ
ンジルアルコールが最も好適な防腐剤であったからである。例えば、API(イブルチニ
ブ)との共結晶化は、例外的に観察されなかった。
【0039】
本発明の配合物/懸濁液は、粒度分布(PSD)が特定の閾値内に留まるものである。
本発明の配合物/懸濁液は、PSDが経時的に且つ特定の応力条件(例えば、温度及び他
の様々な貯蔵条件)下で特定の閾値内に留まることを考慮しても、他のものと比べて有利
であり得る。
【0040】
一実施形態では、API(イブルチニブ)が薬学的に許容可能な担体(例えば、精製水
)全体に均等に分散することを保証するために、好適な撹拌が、本明細書に記載される懸
濁液を調製するプロセスに用いられる。均等に分散するとは、例えば、振盪しない場合、
懸濁液がゲル様のテクスチャを有し得るため、振盪(又は軽い振盪)後、API粒子(す
なわちイブルチニブ粒子)が懸濁液の担体(例えば、水)全体に分散するか又は広がる/
分布することを意味する。これにより、ほぼ等しい量のAPI(イブルチニブ)粒子(重
量基準)を含有する担体(例えば、水)の任意の等しい部分が生じ、これにより、本発明
者らは、±25%、好ましくは±15%及び特に±10%(又はそれ未満、例えば±5%
以内)の偏差以内を意味する。したがって、700mgのイブルチニブが10mlの水に
分散している場合、2.5mlの水(分割した場合)の各部分は、約175mgのイブル
チニブを含有するはずであるが、±25%(すなわち±43.75mg)、好ましくは±
15%(すなわち±26.25mg)及び特に±10%(すなわち±17.5mg)の偏
差の可能性があり、最も好ましくは、偏差は、±5%(すなわち±8.75mg)である
。したがって、懸濁液は、それが入れられている担体(例えば、水媒体)全体に物理的に
実質的に均一又は均質である(例えば、撹拌による分散に必要な時間後;上記を参照され
たい)。1mgの活性成分当たりの水の体積が大きいほど、分散に関する偏差がより小さ
くなり得る可能性がある。
【0041】
本発明の配合物は、特定の粒度も有し、また特定の粒度分布(PSD)を有するような
活性成分(API)、すなわちイブルチニブも有し得る。例えば、dv
50は、一実施形
態では、100μm未満、例えば25μm未満である。
【0042】
更に、本発明に関連して、特定の実施形態では、
- dv
10は、5μm未満(好ましくは2μm未満、例えば1.5μm未満、例えば1
.0又は1.1μm前後(又は更にこれ未満)であり、
- dv
50は、10μm未満(好ましくは8μm未満、例えば6μm未満、例えば4~
5μm前後(又は更にこれ未満)であり、
- dv
90は、20μm未満(好ましくは15μm未満、例えば10μm未満、例えば
8~9μm前後(又は更にこれ未満)である。
【0043】
本明細書で使用するとき、用語d50(又はdv
50)は、当業者に既知のその慣習的
な意味を有し、当技術分野で既知の粒度測定技術、例えば沈降場流動分画法、光子相関分
光法、レーザー回折法又はディスク遠心分離法によって測定することができる。本明細書
で言及されるdv
50は、粒子の体積分布に関連し得る。その場合、「5μmのdv
50
」とは、粒子の体積の少なくとも50%が5μm未満の粒度を有することを意味する。同
じことは、言及される他の粒度にも当てはまり、dv
10及びdv
90は、類似の意味を
有する。通常、体積分布及び重量分布から平均粒度に関して同じ又は概ね同じ値が得られ
る。
【0044】
本発明に関連して、本明細書に記載される本発明の配合物(例えば、懸濁液)は、粒度
分布(PSD)が最適を維持し、そのため、生成物の品質に影響を及ぼさないという利点
を有し得る。
【0045】
所与の添加剤は、現場で異なる施術者により異なる分類がされるか、又はいくつかの異
なる機能のいずれかのために共通して用いられる場合が多いため、本明細書に記載される
配合物(例えば、懸濁液)に使用される添加剤(賦形剤/希釈剤など)間に重複があるこ
とを認識されたい。したがって、本明細書で言及される添加剤は、本明細書に記載の配合
物に含まれ得る添加剤の種類の単なる例示に過ぎず、限定するものではないとみなすべき
である。かかる添加剤の量は、当業者であれば特定の所望の性質に従って容易に決定可能
である。
【0046】
別の態様では、疾患の治療を、こうした治療を必要とする患者において行う方法であっ
て、治療有効量の、本明細書に記載の薬学的組成物又は配合物を患者に投与することを含
む方法である。
【0047】
別の態様では、血液悪性腫瘍の治療を、こうした治療を必要とする患者において行う方
法であって、治療有効量の、本明細書に記載の薬学的組成物又は配合物を患者に投与する
ことを含む方法である。いくつかの実施形態では、癌は、B細胞増殖性疾患である。いく
つかの実施形態では、B細胞増殖性疾患は、瀰漫性大B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫又
は慢性リンパ球白血病である。いくつかの実施形態では、癌は、B細胞悪性腫瘍である。
いくつかの実施形態では、癌は、慢性リンパ球白血病(CLL)/小リンパ球リンパ腫(
SLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、瀰漫性大B細胞リンパ腫(DLBCL)及
び多発性骨髄腫から選択されるB細胞悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、癌は、
リンパ腫又は白血病である。いくつかの実施形態では、癌は、瀰漫性大B細胞リンパ腫、
濾胞性リンパ腫、慢性リンパ球リンパ腫、慢性リンパ球白血病、B細胞前リンパ球白血病
、リンパ形質細胞リンパ腫/ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、脾辺縁帯リン
パ腫、形質細胞骨髄腫、形質細胞腫、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リ
ンパ腫、マントル細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大B細胞リンパ腫、血管内大B細胞リンパ
腫、原発性滲出液リンパ腫、バーキットリンパ腫/白血病又はリンパ腫様肉芽腫症である
。
【0048】
別の態様では、イブルチニブを含む薬学的組成物又は配合物(例えば、本明細書に記載
される)を調製するプロセスであり、プロセスは、組成物/配合物の成分を互いに混合し
て調製することを含む。一態様では、ベンジルアルコールである必須の防腐剤が最初に添
加され、続いて本発明の組成物/配合物の他の成分(例えば、担体、イブルチニブ及び懸
濁化剤など)が添加され、また更なる特定の態様では、組成物/配合物は、下記の実施例
に記載されるとおりに調製され得る。
【0049】
別の態様では、化合物1を含有する、本明細書に記載される配合物(例えば、懸濁液)
を投与することにより、患者を治療する方法が本明細書で提供される。
【0050】
本明細書に記載の方法及び組成物/配合物の他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な
説明から明らかになるであろう。しかしながら、この詳細な説明から、本開示の趣旨及び
範囲に含まれる様々な変更形態及び修正形態が当業者に明らかになるため、詳細な説明及
び具体的な実施例は、具体的な実施形態を示すものの、例示を目的として与えられたもの
に過ぎないことを理解されたい。本明細書で使用される項目の見出しは、単に構成目的で
あるに過ぎず、記載される主題を限定するものと解釈されるべきではない。特許、特許出
願、論文、書籍、マニュアル及び専門書を含むが、これらに限定されない、本出願に引用
される文献又は文献の一部の全ては、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細
書に明示的に組み込まれる。
【0051】
参照による組込み
本明細書に挙げられる刊行物及び特許出願は、全て適用可能な関連する範囲内で参照に
より本明細書に組み込まれる。
【発明を実施するための形態】
【0052】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、例えば、瀰漫性大B細胞リンパ腫
、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ球リンパ腫、慢性リンパ球白血病、B細胞前リンパ球白血
病、リンパ形質細胞リンパ腫/ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、脾辺縁帯リ
ンパ腫、形質細胞骨髄腫、形質細胞腫、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞
リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大B細胞リンパ腫、血管内大B細胞リン
パ腫、原発性滲出液リンパ腫、バーキットリンパ腫/白血病及びリンパ腫様肉芽腫症が挙
げられるが、これらに限定されないB細胞増殖障害などの癌の治療に使用可能である。
【0053】
血液悪性腫瘍
特定の実施形態では、血液悪性腫瘍の治療を、それを必要とする個体において行う方法
であって、一定量の化合物1を含む、本明細書に記載される配合物(例えば、懸濁液)を
個体に投与することを含む方法が本明細書で開示される。
【0054】
いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、非ホジキンリンパ腫(NHL)である。い
くつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、慢性リンパ球白血病(CLL)、小リンパ球リ
ンパ腫(SLL)、高リスクCLL又は非CLL/SLLリンパ腫である。いくつかの実
施形態では、血液悪性腫瘍は、濾胞性リンパ腫(FL)、瀰漫性大B細胞リンパ腫(DL
BCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血
症、多発性骨髄腫(MM)、辺縁帯リンパ腫、バーキットリンパ腫、非バーキット高悪性
度B細胞リンパ腫又は節外性辺縁帯B細胞リンパ腫である。いくつかの実施形態では、血
液悪性腫瘍は、急性若しくは慢性骨髄(若しくはミエロイド)白血病、骨髄異形成症候群
、急性リンパ芽球白血病又は前駆B細胞急性リンパ芽球白血病である。いくつかの実施形
態では、血液悪性腫瘍は、慢性リンパ球白血病(CLL)である。いくつかの実施形態で
は、血液悪性腫瘍は、マントル細胞リンパ腫(MCL)である。いくつかの実施形態では
、血液悪性腫瘍は、瀰漫性大B細胞リンパ腫(DLBCL)である。いくつかの実施形態
では、血液悪性腫瘍は、瀰漫性大B細胞リンパ腫(DLBCL)のABCサブタイプであ
る。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、瀰漫性大B細胞リンパ腫(DLBCL)
のGCBサブタイプである。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、ワルデンシュト
レームマクログロブリン血症(WM)である。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は
、多発性骨髄腫(MM)である。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、バーキット
リンパ腫である。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、濾胞性リンパ腫(FL)で
ある。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、形質転換濾胞性リンパ腫である。いく
つかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、辺縁帯リンパ腫である。
【0055】
いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、再発性又は難治性の非ホジキンリンパ腫(
NHL)である。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、再発性又は難治性の瀰漫性
大B細胞リンパ腫(DLBCL)、再発性又は難治性のマントル細胞リンパ腫(MCL)
、再発性又は難治性の濾胞性リンパ腫(FL)、再発性又は難治性のCLL、再発性又は
難治性のSLL、再発性又は難治性の多発性骨髄腫、再発性又は難治性のワルデンシュト
レームマクログロブリン血症、再発性又は難治性の多発性骨髄腫(MM)、再発性又は難
治性の辺縁帯リンパ腫、再発性又は難治性のバーキットリンパ腫、再発性又は難治性の非
バーキット高悪性度B細胞リンパ腫、再発性又は難治性の節外性辺縁帯B細胞リンパ腫で
ある。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、再発性若しくは難治性の急性若しくは
慢性の骨髄(若しくはミエロイド)白血病、再発性若しくは難治性の骨髄異形成症候群、
再発性若しくは難治性の急性リンパ芽球白血病又は再発性若しくは難治性の前駆B細胞急
性リンパ芽球白血病である。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、再発性又は難治
性の慢性リンパ球白血病(CLL)である。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、
再発性又は難治性のマントル細胞リンパ腫(MCL)である。いくつかの実施形態では、
血液悪性腫瘍は、再発性又は難治性の瀰漫性大B細胞リンパ腫(DLBCL)である。い
くつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、再発性又は難治性の瀰漫性大B細胞リンパ腫(
DLBCL)のABCサブタイプである。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、再
発性又は難治性の瀰漫性大B細胞リンパ腫(DLBCL)のGCBサブタイプである。い
くつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、再発性又は難治性のワルデンシュトレームマク
ログロブリン血症(WM)である。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、再発性又
は難治性の多発性骨髄腫(MM)である。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、再
発性又は難治性のバーキットリンパ腫である。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は
、再発性又は難治性の濾胞性リンパ腫(FL)である。
【0056】
いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、高リスクに分類される血液悪性腫瘍である
。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は、高リスクCLL又は高リスクSLLである
。
【0057】
B細胞リンパ増殖性障害(BCLD)は、血液の新生物であり、とりわけ非ホジキンリ
ンパ腫、多発性骨髄腫及び白血病を包含する。BCLDは、リンパ組織(例えば、リンパ
腫の場合)又は骨髄(例えば、白血病及び骨髄腫の場合)のいずれかに由来し得るととも
に、それらは、全てリンパ球又は白血球の無制御増殖に関与する。BCLDには、例えば
、慢性リンパ球白血病(CLL)及び非ホジキンリンパ腫(NHL)などの多くのサブタ
イプが存在する。BCLDの疾患経過及び治療は、BCLDのサブタイプに依存する。し
かしながら、臨床所見、形態的外観及び治療に対する反応は、各サブタイプ内でも不均一
である。
【0058】
悪性リンパ腫は、主にリンパ組織内に存在する細胞の悪性形質転換である。悪性リンパ
腫の2つのグループは、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫(NHL)である。リ
ンパ腫の両方のタイプは、細網内皮組織に浸潤する。しかしながら、それらは、起源の新
生細胞、疾患の部位、全身症状の存在及び治療に対する反応が異なる(Freedman
et al.,“Non-Hodgkin’s Lymphomas”Chapter
134,Cancer Medicine,(an approved public
ation of the American Cancer Society,B.C
.Decker Inc.,Hamilton,Ontario,2003)。
【0059】
非ホジキンリンパ腫
特定の実施形態では、非ホジキンリンパ腫の治療を、それを必要とする個体において行
う方法であって、一定量の化合物1を含む、本明細書に記載される配合物(例えば、懸濁
液)を個体に投与することを含む方法が本明細書で開示される。
【0060】
特定の実施形態では、再発性又は難治性の非ホジキンリンパ腫の治療を、それを必要と
する個体において行う方法であって、個体に治療有効量の化合物1を含む、本明細書に記
載される配合物を投与することを含む方法が本明細書で更に開示される。いくつかの実施
形態では、非ホジキンリンパ腫は、再発性若しくは難治性の瀰漫性大B細胞リンパ腫(D
LBCL)、再発性若しくは難治性のマントル細胞リンパ腫、再発性若しくは難治性の濾
胞性リンパ腫又は再発性若しくは難治性のCLLである。
【0061】
非ホジキンリンパ腫(NHL)は、主にB細胞起源である様々な一群の悪性腫瘍である
。NHLは、脾臓、リンパ節又は扁桃などのリンパ系に関連するいかなる器官でも発生し
得るとともに、いかなる年齢でも起こり得る。NHLは、多くの場合、リンパ節腫大、発
熱及び体重減少が顕著である。NHLは、B細胞又はT細胞のいずれかのNHLに分類さ
れる。骨髄又は幹細胞の移植後のリンパ球増殖性障害に関連するリンパ腫は、通常、B細
胞NHLである。ワーキングフォーミュレーション分類スキームでは、NHLは、その自
然歴に基づいて低悪性度、中悪性度及び高悪性度のカテゴリーに分類された(“The
Non-Hodgkin’s Lymphoma Pathologic Classi
fication Project,”Cancer 49(1982):2112-2
135を参照されたい)。低悪性度リンパ腫は、緩慢性であり、5~10年の平均生存期
間を有する(Horning and Rosenberg(1984)N.Engl.
J.Med.311:1471-1475)。化学療法は、緩慢性リンパ腫の大多数で寛
解を引き起こし得るが、治癒は、稀であり、大半の患者は、最終的に再発して更なる治療
を必要とする。中悪性度及び高悪性度のリンパ腫は、より侵攻性の腫瘍であるが、化学療
法で治癒する可能性がより大きい。しかしながら、こうした患者は、かなりの割合で再発
し、更なる治療を必要とする。
【0062】
非限定的なB細胞NHLのリストには、バーキットリンパ腫(例えば、地方病性バーキ
ットリンパ腫及び散発性バーキットリンパ腫)、皮膚B細胞リンパ腫、皮膚辺縁帯リンパ
腫(MZL)、瀰漫性大細胞リンパ腫(DLBCL)、瀰漫性大及び小細胞混合型リンパ
腫、瀰漫性小分割細胞、瀰漫性小リンパ球リンパ腫、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、濾胞
性リンパ腫、濾胞性小分割細胞(グレード1)リンパ腫、濾胞性小分割及び大細胞混合(
グレード2)リンパ腫、濾胞性大細胞(グレード3)リンパ腫、血管内大B細胞リンパ腫
、血管内リンパ腫症、大細胞免疫芽球リンパ腫、大細胞リンパ腫(LCL)、リンパ芽球
リンパ腫、マルトリンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、免疫芽球大細胞リンパ腫
、前駆Bリンパ芽球リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、慢性リンパ球白血病(CLL)/
小リンパ球リンパ腫(SLL)、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫-粘膜関連リンパ組織(M
ALT)リンパ腫、縦隔大B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、脾辺縁帯B細胞
リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫、リンパ形質細胞リンパ腫、有毛細胞白血病、ワル
デンシュトレームマクログロブリン血症及び原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫が含ま
れる。更なる非ホジキンリンパ腫は、本発明の範囲内であることが企図され、当業者に明
らかである。
【0063】
DLBCL
特定の実施形態では、DLCBLの治療を、それを必要とする個体において行う方法で
あって、一定量の化合物1を含む、本明細書に記載される配合物(例えば、懸濁液)を個
体に投与することを含む方法が本明細書で開示される。特定の実施形態では、再発性又は
難治性のDLCBLの治療を、それを必要とする個体において行う方法であって、治療有
効量の化合物1を含む、本明細書に記載される配合物(例えば、懸濁液)を個体に投与す
ること(又は治療有効量の本明細書に記載される配合物を投与すること)を含む方法が本
明細書で更に開示される。
【0064】
本明細書で用いられる場合、「瀰漫性大B細胞リンパ腫(DLBCL)」という用語は
、瀰漫性成長パターン及び高~中増殖指数を有する胚中心Bリンパ球の新生物を意味する
。DLBCLは、全リンパ腫の約30%を占め、胚中心芽球サブタイプ、免疫芽球サブタ
イプ、T細胞/組織球リッチサブタイプ、未分化サブタイプ及び形質芽球サブタイプをは
じめとするいくつかの形態学的変異体を呈し得る。DLBCLには、様々なサブタイプが
存在することが遺伝子検査により示されている。これらのサブタイプは、様々な前途(予
後)及び治療に対する反応を有するように思われる。DLBCLは、いずれの年齢群でも
罹患し得るが、主に老齢者(平均年齢は60代半ばである)に起こる。
【0065】
特定の実施形態では、瀰漫性大B細胞リンパ腫の活性化B細胞様サブタイプ(ABC-
DLBCL)の治療を、それを必要とする個体において行う方法であって、100mg/
日以上1000mg/日以下の量のイブルチニブを個体に投与することを含む方法が本明
細書で開示される。瀰漫性大B細胞リンパ腫のABCサブタイプ(ABC-DLBCL)
は、細胞質分化時に停止される後胚中心B細胞から生じると考えられる。DLBCLのA
BCサブタイプ(ABC-DLBCL)は、全DLBCL診断の約30%を占める。これ
は、DLBCL分子サブタイプの中で最も治癒し難いと考えられ、そのため、ABC-D
LBCLと診断された患者は、典型的には、DLCBLの他のタイプを有する個体と比較
して生存率の有意な低下を示す。ABC-DLBCLは、胚中心マスターレギュレーター
BCL6をデレギュレートする染色体転座及び形質細胞分化に必要とされる転写リプレッ
サーをコードするPRDM1遺伝子を不活性化する突然変異に最もよく関連付けられる。
【0066】
濾胞性リンパ腫
特定の実施形態では、濾胞性リンパ腫の治療を、それを必要とする個体において行う方
法であって、一定量の化合物1を含む、本明細書に記載される配合物(例えば、懸濁液)
を個体に投与することを含む方法が本明細書で開示される。特定の実施形態では、再発性
又は難治性の濾胞性リンパ腫の治療を、それを必要とする個体において行う方法であって
、治療有効量の化合物1を含む、本明細書に記載される配合物(例えば、懸濁液)を個体
に投与すること(又は治療有効量の本明細書に記載される配合物を投与すること)を含む
方法が本明細書で更に開示される。
【0067】
本明細書で使用するとき、用語「濾胞性リンパ腫」は、リンパ腫細胞が結節又は濾胞に
クラスター化されるいくつかのタイプの非ホジキンリンパ腫のいずれかを意味する。細胞
がリンパ節中で環状又は節状のパターンで成長する傾向があることから、濾胞性という用
語が用いられる。このリンパ腫を有する人々の平均年齢は、約60歳である。
【0068】
CLL/SLL
特定の実施形態では、CLL又はSLLの治療を、それを必要とする個体において行う
方法であって、一定量の化合物1を含む、本明細書に記載される配合物(例えば、懸濁液
)を個体に投与することを含む方法が本明細書で開示される。特定の実施形態では、再発
性又は難治性のCLL又はSLLの治療を、それを必要とする個体において行う方法であ
って、治療有効量の化合物1を含む、本明細書に記載される配合物(例えば、懸濁液)を
個体に投与すること(又は治療有効量の本明細書に記載される配合物を投与すること)を
含む方法が本明細書で更に開示される。
【0069】
慢性リンパ球白血病及び小リンパ球リンパ腫(CLL/SLL)は、通常、わずかに異
なる症状を有する同一の疾患と考えられる。癌細胞が集まる場所により、CLLと呼ばれ
るか又はSLLと呼ばれるかが決定される。癌細胞がリンパ系(体内に見いだされる主に
小脈管の系)のライマメ形構造のリンパ節に主に見いだされる場合、それは、SLLと呼
ばれる。SLLは、全リンパ腫の約5%~10%を占める。癌細胞のほとんどが血流及び
骨髄に存在する場合、それは、CLLと呼ばれる。
【0070】
CLL及びSLLは、両方とも成長の遅い疾患であるが、はるかにより一般的であるC
LLは、より遅く成長する傾向がある。CLL及びSLLは、同じ方法で治療される。こ
れらは、通常、標準的治療で治癒可能と考えられず、疾患のステージ及び成長速度に依存
するが、ほとんどの患者は、10年よりも長く生きる。ときに、経時的に、これらの成長
の遅いリンパ腫は、より侵攻性の強いタイプのリンパ腫に形質転換し得る。
【0071】
慢性リンパ性白血病(CLL)は、白血病の中で最も一般的なタイプである。米国では
、100,760名の人々がCLLを有して生きているか又はCLLから寛解した状態に
あると推定される。CLLと新たに診断された人々の大半(>75%)は、50歳を超え
る年齢である。現在、CLLの治療は、完全な治癒ではなく、疾患及びその症状の抑制に
重点が置かれている。CLLは、化学療法、放射線療法、生物学的療法又は骨髄移植によ
り治療される。症状は、外科的(肥大脾臓の脾摘除去)又は放射線療法(腫大リンパ節の
「減量」)により治療されることもある。CLLは、大半の場合には徐々に進行するが、
治癒不能であると一般に考えられている。特定のCLLは、高リスクに分類される。本明
細書で用いられる場合、「高リスクCLL」とは、1)17p13-;2)11q22-
;3)ZAP-70+及び/又はCD38+を伴う非突然変異IgVH;又は4)トリソ
ミー12の少なくとも1つにより特徴付けられるCLLを意味する。
【0072】
患者の生活の質に影響を及ぼし得る点まで疾患が進行したことが患者の臨床症状又は血
球数から示される場合、典型的にはCLL治療が施される。
【0073】
小リンパ球白血病(SLL)は、上記のCLLに非常に類似しており、これもB細胞の
癌である。SLLでは、異常リンパ球は、主にリンパ節に影響を及ぼす。しかしながら、
CLLでは、異常細胞は、主に血液及び骨髄に影響を及ぼす。脾臓は、両方の病態に影響
を受け得る。SLLは、非ホジキンリンパ腫の全症例の約1/25を占める。これは、青
年期から老齢期までのいずれの時点でも起こり得るが、50歳未満の年齢では稀である。
SLLは、緩慢性リンパ腫と考えられる。すなわち、疾患の進行は、非常に遅く、患者は
、診断後に何年も生きる傾向がある。しかしながら、ほとんどの患者は、進行疾患と診断
され、SLLは、様々な化学療法薬剤に十分に反応するが、治癒不能であると一般に考え
られている。いくつかの癌は、いずれか一方の性別により多く起こる傾向があるが、SL
Lに起因する症例及び死亡は、男性と女性との間で均等に分かれる。診断時の平均年齢は
、60歳である。
【0074】
SLLは、緩慢性であるが、持続的に進行する。この疾患の通常のパターンは、疾患寛
解期を有して放射線療法及び/又は化学療法に対して高い反応率を示すものである。この
後、何ヵ月又は何年か経つと再発が避けられなくなる。再治療により再び反応が現れるが
、再び疾患が再発する。すなわち、SLLの短期予後は、きわめて良好であるが、時間が
経つと、多くの患者は、再発疾患の致命的合併症を発症する。CLL及びSLLと典型的
に診断される個体の年齢を考慮すると、患者の生活の質を妨げない最小限の副作用に抑え
た疾患の簡単且つ効果的な治療の必要性が当技術分野に存在する。本発明は、当技術分野
におけるこの以前からの必要性を満たす。
【0075】
マントル細胞リンパ腫
特定の実施形態では、マントル細胞リンパ腫の治療を、それを必要とする個体において
行う方法であって、一定量の化合物1を含む、本明細書に記載される配合物(例えば、懸
濁液)を個体に投与することを含む方法が本明細書で開示される。特定の実施形態では、
再発性又は難治性のマントル細胞リンパ腫の治療を、それを必要とする個体において行う
方法であって、治療有効量の化合物1を含む、本明細書に記載される配合物(例えば、懸
濁液)を個体に投与すること(又は治療有効量の本明細書に記載される配合物を投与する
こと)を含む方法が本明細書で更に開示される。
【0076】
本明細書で用いられる場合、「マントル細胞リンパ腫」という用語は、通常の胚中心濾
胞を取り囲むマントル帯内のCD5陽性抗原ナイーブ前胚中心B細胞に起因するB細胞リ
ンパ腫のサブタイプを意味する。MCL細胞は、一般に、DNAのt(11:14)染色
体転座に起因してサイクリンD1を過剰発現する。より具体的には、転座は、t(11;
14)(q13;q32)に存在する。リンパ腫の約5%のみがこのタイプである。細胞
は、小サイズ~中サイズである。ほとんどの場合、男性が罹患する。患者の平均年齢は、
60代前半である。リンパ腫は、診断時、通常、リンパ節、骨髄及び非常に多くの場合に
脾臓を含めて広範に広がっている。マントル細胞リンパ腫は、それほど速く成長するリン
パ腫ではないが、治療が困難である。
【0077】
辺縁帯B細胞リンパ腫
特定の実施形態では、辺縁帯B細胞リンパ腫の治療を、それを必要とする個体において
行う方法であって、一定量の化合物1を含む、本明細書に記載される配合物(例えば、懸
濁液)を個体に投与することを含む方法が本明細書で開示される。特定の実施形態では、
再発性又は難治性の辺縁帯B細胞リンパ腫の治療を、それを必要とする個体において行う
方法であって、治療有効量の化合物1を含む、本明細書に記載される配合物(例えば、懸
濁液)を個体に投与すること(又は治療有効量の本明細書に記載される配合物を投与する
こと)を含む方法が本明細書で更に開示される。
【0078】
本明細書で用いられる場合、「辺縁帯B細胞リンパ腫」という用語は、濾胞性マントル
帯の外側の斑状領域である辺縁帯のリンパ組織を含む一群の関連B細胞新生物を意味する
。辺縁帯リンパ腫は、リンパ腫の約5%~10%を占める。このリンパ腫の細胞は、顕微
鏡下で小さく見える。辺縁帯リンパ腫には、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B
細胞リンパ腫及び脾辺縁帯リンパ腫を含む3つの主要なタイプが存在する。
【0079】
MALT
特定の実施形態では、MALTの治療を、それを必要とする個体において行う方法であ
って、一定量の化合物1を含む、本明細書に記載される配合物(例えば、懸濁液)を個体
に投与することを含む方法が本明細書で開示される。特定の実施形態では、再発性又は難
治性のMALTの治療を、それを必要とする個体において行う方法であって、治療有効量
の化合物1を含む、本明細書に記載される配合物(例えば、懸濁液)を個体に投与するこ
と(又は治療有効量の本明細書に記載される配合物を投与すること)を含む方法が本明細
書で更に開示される。
【0080】
本明細書で用いられる「粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫」という用語は、辺
縁帯リンパ腫の節外症状を意味する。ほとんどのMALTリンパ腫は、低悪性度であるが
、少数のものは、初期に中悪性度の非ホジキンリンパ腫(NHL)として発症するか又は
低悪性度の形態から進行するかのいずれかである。MALTリンパ腫のほとんどは、胃に
生じ、胃MALTリンパ腫の約70%は、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobac
ter pylori)感染に関連付けられる。いくつかの細胞遺伝学的異常が同定され
ているが、最も一般的なのは、トリソミー3又はt(11;18)である。これらの他の
MALTリンパ腫の多くも細菌又はウイルスによる感染に関連付けられる。MALTリン
パ腫を有する患者の平均年齢は、約60歳である。
【0081】
節性辺縁帯B細胞リンパ腫
特定の実施形態では、節性辺縁帯B細胞リンパ腫の治療を、それを必要とする個体にお
いて行う方法であって、一定量の化合物1を含む、本明細書に記載される配合物(例えば
、懸濁液)を個体に投与することを含む方法が本明細書で開示される。特定の実施形態で
は、再発性又は難治性の節性辺縁帯B細胞リンパ腫の治療を、それを必要とする個体にお
いて行う方法であって、治療有効量の化合物1を含む、本明細書に記載される配合物(例
えば、懸濁液)を個体に投与すること(又は治療有効量の本明細書に記載される配合物を
投与すること)を含む方法が本明細書で更に開示される。
【0082】
「節性辺縁帯B細胞リンパ腫」という用語は、主にリンパ節に見いだされる緩慢性B細
胞リンパ腫を意味する。この疾患は、稀であり、全非ホジキンリンパ腫(NHL)の1%
を占めるに過ぎない。最も一般的には、老齢患者で診断され、男性よりも女性の方が罹患
しやすい。この疾患は、突然変異がB細胞の辺縁帯で起こるため、辺縁帯リンパ腫に分類
される。この疾患は、リンパ節に限定されることから節性にも分類される。
【0083】
脾辺縁帯B細胞リンパ腫
特定の実施形態では、脾辺縁帯B細胞リンパ腫の治療を、それを必要とする個体におい
て行う方法であって、一定量の化合物1を含む、本明細書に記載される配合物(例えば、
懸濁液)を個体に投与することを含む方法が本明細書で開示される。特定の実施形態では
、再発性又は難治性の脾辺縁帯B細胞リンパ腫の治療を、それを必要とする個体において
行う方法であって、治療有効量の化合物1を含む、本明細書に記載される配合物(例えば
、懸濁液)を個体に投与すること(又は治療有効量の本明細書に記載される配合物を投与
すること)を含む方法が本明細書で更に開示される。
【0084】
「脾辺縁帯B細胞リンパ腫」という用語は、世界保健機関の分類に組み込まれた特定の
低悪性度小B細胞リンパ腫を意味する。特有の特徴は、巨脾症、絨毛形態を有する中等度
リンパ球症、各種器官、特に骨髄の関与する類洞内パターン及び相対的に緩慢な経過であ
る。芽細胞形態及び侵攻性挙動の増加を伴う腫瘍進行が少数の患者で観察される。分子的
及び細胞遺伝学的研究が不均一な結果を示しており、これは、おそらく標準化された診断
基準が欠如しているためである。
【0085】
バーキットリンパ腫
特定の実施形態では、バーキットリンパ腫の治療を、それを必要とする個体において行
う方法であって、一定量の化合物1を含む、本明細書に記載される配合物(例えば、懸濁
液)を個体に投与することを含む方法が本明細書で開示される。特定の実施形態では、再
発性又は難治性のバーキットリンパ腫の治療を、それを必要とする個体において行う方法
であって、治療有効量の化合物1を含む、本明細書に記載される配合物(例えば、懸濁液
)を個体に投与すること(又は治療有効量の本明細書に記載される配合物を投与すること
)を含む方法が本明細書で更に開示される。
【0086】
「バーキットリンパ腫」という用語は、通常、小児が罹患するタイプの非ホジキンリン
パ腫(NHL)を意味する。これは、開始してリンパ節以外の生体部分に関与することが
多い、高侵攻性タイプのB細胞リンパ腫である。成長が速いというその性質にもかかわら
ず、バーキットリンパ腫は、多くの場合、現代の集中療法で治癒可能である。バーキット
リンパ腫には、大きく分けて2つのタイプ、すなわち散発性種及び地方病性種が存在する
。
【0087】
流行性バーキットリンパ腫:この疾患には、成人よりも小児の方がかなり多く含まれ、
症例の95%は、エプスタインバーウイルス(EBV)感染に関連付けられる。これは、
全小児期癌の約半分がバーキットリンパ腫である赤道アフリカで主に起こる。これは、散
発性バーキットでは稀であるやや示差的な特徴として特徴的に顎骨に関与する可能性が高
い。これは、通常、腹部にも関与する。
【0088】
散発性バーキットリンパ腫:欧州及び南北アメリカ大陸を含む世界の残りの地域に影響
を及ぼすバーキットリンパ腫のタイプは、散発性タイプである。ここでも、これは、主に
小児の疾患である。エプスタインバーウイルス(EBV)との関連は、地方病性のものほ
ど強くないが、EBV感染症の直接的証拠は、5名中1名の患者に存在する。リンパ節よ
りも関与が大きいのは、小児の90%超が顕著に罹患する腹部である。骨髄の関与は、散
発性のものよりも多く見受けられる。
【0089】
ワルデンシュトレームマクログロブリン血症
特定の実施形態では、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症の治療を、それを必
要とする個体において行う方法であって、一定量の化合物1を含む、本明細書に記載され
る配合物(例えば、懸濁液)を個体に投与することを含む方法が本明細書で開示される。
特定の実施形態では、再発性又は難治性のワルデンシュトレームマクログロブリン血症の
治療を、それを必要とする個体において行う方法であって、治療有効量の化合物1を含む
、本明細書に記載される配合物(例えば、懸濁液)を個体に投与すること(又は治療有効
量の本明細書に記載される配合物を投与すること)を含む方法が本明細書で更に開示され
る。
【0090】
リンパ形質細胞リンパ腫としても知られる用語「ワルデンシュトレームマクログロブリ
ン血症」は、リンパ球と呼ばれる白血球のサブタイプに関与する癌である。これは、最終
分化Bリンパ球の無制御クローン増殖により特徴付けられる。これは、免疫グロブリンM
(IgM)と呼ばれる抗体を生成するリンパ腫細胞によっても特徴付けられる。IgM抗
体は、血中に大量に循環し、血液の液状部分をシロップのように増粘させる。これにより
、多くの器官への血流が減少する可能性があるため、視覚障害(眼の後部の血管の循環不
良による)及び脳内の血流不良による神経障害(例えば、頭痛、眩暈及び錯乱)を引き起
こす可能性がある。他の症状としては、疲労感及び脆弱感及び易出血傾向が含まれ得る。
根底にある病因は、十分に理解されていないが、染色体6上の位置6p21.3を含めて
いくつかのリスク因子が同定されている。自己抗体による自己免疫疾患の個人歴を有する
人々では、WMの発症するリスクは、2~3倍に増加し、肝炎、ヒト免疫不全ウイルス及
びリケッチア症を伴うリスクは、特に高くなる。
【0091】
多発性骨髄腫
特定の実施形態では、骨髄腫の治療を、それを必要とする個体において行う方法であっ
て、一定量の化合物1を含む、本明細書に記載される配合物(例えば、懸濁液)を個体に
投与することを含む方法が本明細書で開示される。特定の実施形態では、再発性又は難治
性の骨髄腫の治療を、それを必要とする個体において行う方法であって、治療有効量の化
合物1を含む、本明細書に記載される配合物(例えば、懸濁液)を個体に投与すること(
又は治療有効量の本明細書に記載される配合物を投与すること)を含む方法が本明細書で
更に開示される。
【0092】
MM、骨髄腫、形質細胞骨髄腫又はカーラー病(Otto Kahlerに因む)とし
ても知られる多発性骨髄腫は、形質細胞として知られる白血球の癌である。B細胞のタイ
プである形質細胞は、ヒト及び他の脊椎動物において抗体の産生の役割を担う免疫系の極
めて重要な部分である。これらは、骨髄中で生成され、リンパ系を介して輸送される。
【0093】
白血病
特定の実施形態では、白血病の治療を、それを必要とする個体において行う方法であっ
て、一定量の化合物1を含む、本明細書に記載される配合物(例えば、懸濁液)を個体に
投与することを含む方法が本明細書で開示される。特定の実施形態では、再発性又は難治
性の白血病の治療を、それを必要とする個体において行う方法であって、治療有効量の化
合物1を含む、本明細書に記載される配合物(例えば、懸濁液)を個体に投与すること(
又は治療有効量の本明細書に記載される配合物を投与すること)を含む方法が本明細書で
更に開示される。
【0094】
白血病は、血液細胞、通常、白血球(白色血液細胞)の異常増加により特徴付けられる
血液又は骨髄の癌である。白血病とは、一連の疾患を網羅する広義の用語である。第1の
区分は、その急性形態と慢性形態との間にあり、(i)急性白血病は、未熟血球の急激な
増加によって特徴付けられる。こうして密集状態になると、骨髄は、健常血液細胞を生成
できなくなる。急性白血病では、悪性細胞が急速に成長して蓄積されてから血流中に溢れ
出て生体の他の器官に広がるため、緊急治療が必要とされる。白血病の急性型は、子供の
白血病の中で最も一般的な形態である。(ii)慢性白血病は、比較的成熟した(ただし
依然として異常な)白血球の過剰蓄積により識別される。典型的には、何ヵ月又は何年も
かけて進行し、細胞は、正常細胞よりもかなり速い速度で生成されるため、血中に多くの
異常白血球をもたらす。慢性白血病は、主に老齢者で起こるが、理論的にはいずれの年齢
群でも起こり得る。加えて、この疾患は、いずれの種類の血液細胞が侵されるに従って細
分される。この分類により、白血病は、リンパ芽球白血病又はリンパ球白血病と、ミエロ
イド白血病又は骨髄白血病とに分けられる。すなわち、(i)感染に対処する免疫系細胞
であるリンパ球を通常形成し続けるタイプの骨髄細胞で癌性変化が起こる、リンパ芽球白
血病又はリンパ球白血病;(ii)赤血球、いくつかの他のタイプの白血球及び血小板を
通常形成し続けるタイプの骨髄細胞で癌性変化が起こる、ミエロイド白血病又は骨髄白血
病。
【0095】
これらの主要なカテゴリー内には、急性リンパ芽球白血病(ALL)、前駆B細胞急性
リンパ芽球白血病(前駆Bリンパ芽球白血病とも呼ばれる前駆B-ALL)、急性骨髄白
血病(AML)、慢性骨髄白血病(CML)及び有毛細胞白血病(HCL)を含むが、こ
れらに限定されないいくつかのサブカテゴリーが存在する。したがって、特定の実施形態
では、急性リンパ芽球白血病(ALL)、前駆B細胞急性リンパ芽球白血病(前駆Bリン
パ芽球白血病とも呼ばれる前駆B-ALL)、急性骨髄白血病(AML)、慢性骨髄白血
病(CML)又は有毛細胞白血病(HCL)の治療を、それを必要とする個体において行
う方法であって、化合物1を含有する、一定量の、本明細書に記載の配合物を個体に投与
することを含む方法が本明細書で開示される。いくつかの実施形態では、白血病は、再発
性又は難治性の白血病である。いくつかの実施形態では、白血病は、再発性若しくは難治
性の急性リンパ芽球白血病(ALL)、再発性若しくは難治性の前駆B細胞急性リンパ芽
球白血病(前駆Bリンパ芽球白血病とも呼ばれる前駆B-ALL)、再発性若しくは難治
性の急性骨髄白血病(AML)、再発性若しくは難治性の慢性骨髄白血病(CML)又は
再発性若しくは難治性の有毛細胞白血病(HCL)である。
【0096】
上述した病態のそれぞれに対する症状、診断検査及び予後検査は、公知である。例えば
、Harrison’s Principles of Internal Medic
ine(著作権)” 16th ed.,2004,The McGraw-Hill
Companies,Inc.Dey et al.(2006),Cytojourn
al3(24)及び“Revised European American Lymp
homa”(REAL)classification system(例えば、the
National Cancer Instituteによって保守されるウェブサイ
トを参照されたい)を参照されたい。
【0097】
上記の疾患のいずれかを治療するための、化合物1(又は化合物1を含有する本明細書
に記載される配合物)の治療有効用量の範囲を確立するのに、いくつかの動物モデルが有
用である。
【0098】
化合物1及びその薬学的に許容可能な塩
「化合物1」若しくは「1-((R)-3-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェ
ニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)
プロプ-2-エン-1-オン」若しくは「1-{(3R)-3-[4-アミノ-3-(4
-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリ
ジン-1-イル}プロプ-2-エン-1-オン」若しくは「2-プロペン-1-オン,1
-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[
3,4-d]ピリミジン-1-イル]-1-ピペリジニル-」若しくはイブルチニブ又は
任意の他の好適な名称は、以下の構造を有する化合物を指す。
【化3】
【0099】
多様な薬学的に許容可能な塩が化合物1から形成され、これとしては、以下が挙げられ
る:
- 化合物1と、脂肪族モノ及びジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシル
アルカン酸、アルカン二酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族のスルホン酸、アミノ酸などが
挙げられる、例えば酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸
、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸
、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン
酸、サリチル酸などが挙げられる有機酸との反応により形成される酸付加塩;
- 化合物1と、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸
、亜リン酸などが挙げられる無機酸との反応により形成される酸付加塩。
【0100】
化合物1(イブルチニブ)を参照する用語「薬学的に許容可能な塩」は、投与対象の哺
乳動物に有意な刺激を引き起こさず、且つ化合物の生物学的活性及び特性を実質的に阻害
しない化合物1の塩を意味する。
【0101】
薬学的に許容可能な塩に対する参照は、溶媒付加形態(溶媒和物)を含むことを理解さ
れたい。溶媒和物は、化学量論量又は非化学量論量のいずれかの溶媒を含有し、水、エタ
ノール、メタノール、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、ジイソプロピルエ
ーテル(DIPE)、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、イソプロピルアルコ
ール、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン
、ニトロメタン、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(DCM)、ジオキサ
ン、ヘプタン、トルエン、アニソール、アセトニトリルなどの薬学的に許容可能な溶媒を
用いた生成物の形成又は単離のプロセス中に形成される。一態様では、溶媒和物は、限定
されるものではないが、クラス3の溶媒を用いて形成される。溶媒のカテゴリーは、例え
ば、International Conference on Harmonizat
ion of Technical Requirements for Regist
ration of Pharmaceuticals for Human Use
(ICH),“Impurities:Guidelines for Residua
l Solvents,Q3C(R3),(November 2005)で定義されて
いる。水和物は、溶媒が水であるときに形成されるか、又はアルコラートは、溶媒がアル
コールであるときに形成される。いくつかの実施形態では、化合物1(イブルチニブ)の
溶媒和物又はその薬学的に許容可能な塩は、便宜上、本明細書に記載のプロセス中に調製
又は形成される。いくつかの実施形態では、化合物1(イブルチニブ)の溶媒和物は、無
水である。いくつかの実施形態では、化合物1(イブルチニブ)又はその薬学的に許容可
能な塩は、非溶媒和形態で存在する。いくつかの実施形態では、化合物1(イブルチニブ
)又はその薬学的に許容可能な塩は、非溶媒和形態で存在し、且つ無水である。
【0102】
更に他の実施形態では、化合物1(イブルチニブ)又はその薬学的に許容可能な塩は、
非晶質相、結晶形態、ミル粉砕形態及びナノ微粒子形態が挙げられるが、これらに限定さ
れない各種形態で調製される。いくつかの実施形態では、化合物1(イブルチニブ)又は
その薬学的に許容可能な塩は、非晶質である。いくつかの実施形態では、化合物1(イブ
ルチニブ)又はその薬学的に許容可能な塩は、非晶質且つ無水である。いくつかの実施形
態では、化合物1(イブルチニブ)又はその薬学的に許容可能な塩は、結晶質である。い
くつかの実施形態では、化合物1(イブルチニブ)又はその薬学的に許容可能な塩は、結
晶質且つ無水である。
【0103】
いくつかの実施形態では、化合物1(イブルチニブ)は、米国特許第7,514,44
4号明細書に概説されるように調製される。
【0104】
特定の用語
特に定義されない限り、本明細書で用いられる科学技術用語は、全て特許請求される主
題が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるものと同一の意味を有する。以上
の概要及び以下の詳細な説明は、例示的且つ説明的なものに過ぎず、特許請求されるいず
れの主題も限定するものではないことを理解されたい。本出願では、単数形の使用は、特
に断りのない限り、複数形を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合
、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、特に文脈上明確な規
定がない限り、複数形の参照を含むことに留意しなければならない。本出願では、「又は
」の使用は、特に断りのない限り、「及び/又は」を意味する。更に、用語「含んでいる
」並びに「含む(include)」、「含む(includes)」及び「含まれる」
などの他の形態の使用は、非限定的である。
【0105】
本明細書で使用される項目の見出しは、単に構成目的であるに過ぎず、記載される主題
を限定するものと解釈されるべきではない。特許、特許出願、論文、書籍、マニュアル及
び専門書を含むが、これらに限定されない、本出願に引用される文献又は文献の一部の全
ては、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0106】
数値の前で用いられる際の用語「約」は、指定値の±10%、±5%又は±1%以内な
どの合理的なの範囲内で値が変化し得ることを示す。
【0107】
本明細書で使用するとき、用語「含む」は、組成物/配合物及び方法などが、列挙され
た要素を含むが、他のものを除外しないことを意味することが意図されられる。組成物/
配合物及び方法を定義するのに用いられる際の「から本質的になる」とは、意図される使
用のための組合せに対して任意の本質的な重要性を有する他の要素を除外するが、組成物
/配合物又は方法の特徴に実質的な影響を及ぼさない要素を除外しないことを意味するも
のとする。「~からなる」とは、特に列挙されていない要素を除外することを意味するも
のとする。これらの移行用語のそれぞれにより定義される実施形態は、本発明の範囲内で
ある。
【0108】
配合物、組成物又は成分に対する用語「許容可能」又は「薬学的に許容可能」は、本明
細書で使用するとき、治療対象の全体的健康に持続的な有害作用を及ぼすこともなく、又
は化合物の生物学的活性若しくは性質を阻害することもなく、また比較的非毒性であるこ
とを意味する。
【0109】
本明細書で使用するとき、特定の化合物又は薬学的組成物/配合物を投与することによ
る特定の疾患、障害又は病態の症状の「改善」とは、恒久的又は一時的であるか、持続的
又は一過的であるかに関係なく、化合物又は組成物/配合物の投与に起因し得る又は付随
し得る、任意の重症度の低下、発症の遅延、進行の低速化又は持続期間の短縮を指す。
【0110】
「生体内利用率」とは、研究対象である動物又はヒトの体循環に送達される投与化合物
1のパーセンテージを指す。静脈内投与時の薬剤の全暴露(AUC(0~∞))は、通常
、100%生体内利用可能(F%)として定義される。「経口生体内利用率」とは、静脈
内注射と比較して薬学的配合物/組成物を経口摂取したときに化合物1が体循環に吸収さ
れる程度を指す。本発明の一態様では、本明細書に記載される配合物/組成物は、好適な
生体内利用率を有するものと想定される。
【0111】
「血漿濃度」とは、対象の血液の血漿成分中の化合物1の濃度を指す。化合物1の血漿
濃度は、代謝及び/又は他の治療剤との可能な相互作用に関連する変動により、対象間で
有意に変化し得るものと理解される。本明細書に開示される一実施形態によれば、化合物
1の血漿濃度は、対象ごとに変化し得る。同様に、最大血漿濃度(Cmax)、又は最大
血漿濃度到達時間(Tmax)、又は血漿濃度対時間曲線下全面積(AUC(0~∞))
などの値も対象ごとに変化し得る。この変動のために、化合物1又は化合物1を含有する
本明細書に記載される配合物/組成物の「治療有効量」を構成するのに必要な量は、対象
ごとに変化し得る。更に、本明細書に記載される配合物/組成物は、投与後の吸収プロセ
スが原因で、前述の、例えばカプセル配合物と比較してより低いCmaxを有し得る。薬
学的に許容可能な性質及び高いCmax、同等のCmax又は十分なCmaxなどの所望
のPK性質の両方を有するイブルチニブの懸濁液を調製するのは、困難である。
【0112】
本明細書で用いられるとき、用語「ブルトン型チロシンキナーゼ」は、例えば、米国特
許第6,326,469号明細書に開示されるようなホモ・サピエンス(Homo sa
piens)由来のブルトン型チロシンキナーゼを指す(GenBank受託番号NP_
000052)。
【0113】
本明細書で用いられるとき、用語「共投与」などは、単一の患者への選択された治療剤
の投与を包含することを意味し、また同一若しくは異なる投与経路により又は同一若しく
は異なる時間で剤が投与される治療レジメンを含むことが意図される。
【0114】
本明細書で用いられるとき、用語「有効量」又は「治療有効量」は、治療される疾患又
は病態の症状の1つ以上をある程度和らげるのに十分である、投与される剤又は化合物の
量を指す。その結果は、疾患の徴候、症状、原因の低減及び/若しくは軽減又は生体系の
任意の他の所望される変化であり得る。例えば、治療に使用される「有効量」は、過度の
有害な副作用を伴うことなく、疾患症状の臨床的に有意な減少を提供するのに必要である
、本明細書に開示される化合物を含む配合物の量である。任意の個々の場合における適切
な「有効量」は、用量増加研究などの技術を用いて判定することができる。用語「治療有
効量」は、例えば、予防的有効量を含む。本明細書に開示された化合物の「有効量」は、
過度の有害な副作用を伴うことなく所望の薬理学的効果又は治療改善を達成するのに有効
な量である。「有効量」又は「治療有効量」は、化合物1の代謝、対象の年齢、体重、全
身状態、治療される病態、治療される病態の重症度及び処方医師の判断の変動により、対
象ごとに変化し得るものと理解される。単なる例として、治療有効量は、用量増加臨床試
験が挙げられるが、これに限定されない日常実験により判定され得る。
【0115】
キナーゼを「阻害する」、「阻害すること」又はその「阻害剤」という用語は、本明細
書で使用するとき、酵素ホスホトランスフェラーゼ活性の阻害を意味する。
【0116】
本明細書で使用するとき、用語「不可逆的阻害剤」は、標的タンパク質(例えば、キナ
ーゼ)に接触すると、タンパク質との又はタンパク質内での新しい共有結合の形成を引き
起こし、それにより、不可逆的阻害剤の後続の存在又は不在に関係なく、標的タンパク質
の生物学的活性の1つ以上(例えば、ホスホトランスフェラーゼ活性)を減少又は消失さ
せる化合物を意味する。
【0117】
本明細書で使用するとき、用語「予防的有効量」は、治療される疾患、病態又は障害の
症状の1つ以上をある程度を和らげる、患者に適用される配合物の量を指す。かかる予防
用途では、かかる量は、患者の健康状態、体重などに依存し得る。用量増加臨床試験が挙
げられるが、これに限定されない日常実験によりかかる予防的有効量を判定することは、
十分に当技術分野の範囲内にあると考えられる。
【0118】
本明細書で使用するとき、用語「個体」、「対象」又は「患者」は、治療、観察又は実
験の対象体である動物を意味する。単なる例として、限定されるものではないが、対象は
、ヒトが挙げられるが、これに限定されない哺乳動物であり得る。
【0119】
本明細書で使用するとき、IC50とは、反応を測定するアッセイにおいてBtkの阻
害などの最大反応の50%阻害を達成する、特定の試験化合物の量、濃度又は投与量を指
す。
【0120】
本明細書で使用するとき、EC50とは、特定の試験化合物により誘発、惹起又は強化
される特定の反応の最大発現の50%で用量依存反応を引き起こす、特定の試験化合物の
投与量、濃度又は量を指す。
【0121】
薬学的組成物/配合物
本明細書で使用するとき、薬学的配合物(例えば、懸濁液)は、化合物1と、担体、希
釈剤、懸濁化剤及び/又は賦形剤などの本明細書に記載される他の化学成分(適用可能な
場合)との混合物を指す。薬学的配合物は、哺乳動物への化合物の投与を容易にする。化
合物は、単独で又は混合物の成分としての1種以上の治療剤との組合せで使用可能である
。
【0122】
本発明の目的は、適正な生体内利用率(例えば、FDAにより承認済みのカプセル剤と
比較して有利な生体内利用率)を有する配合物を提供することである。そのため、一態様
では、CmaxのGMR(幾何平均比)が75%~95%(例えば、80~85%)の範
囲内であり得、AUClastのGMRが85%~110%(例えば、85~100%又
は85~95%)の範囲内であり得、且つ/又はAUCinf(又はAUC∞)のGMR
が80%~105%(例えば、85~95%)の範囲内であり得る、本明細書に記載され
る配合物(例えば、懸濁液)が提供される。
【0123】
暴露に関連するかかる特徴は、本明細書に開示される実施形態のいずれかの一部であり
得る。
【0124】
本明細書に記載される配合物中に用いられる添加剤間に相当な重複が存在することを理
解されたい(例えば、懸濁化剤と湿潤剤との間のように)。したがって、本明細書で言及
される添加剤(又は組成物/配合物の成分)は、本明細書に記載の組成物又は配合物に含
まれ得る添加剤の種類の単なる例示に過ぎず、これを限定するものではないとみなされる
べきである。かかる添加剤の量は、当業者であれば特定の所望の性質に従って容易に決定
可能である。
【0125】
投与及び治療レジメン
下記の投与及び治療レジメンは、化合物1の量を参照しているため、本発明に関連して
、量を適切に外挿して、本明細書に記載される配合物(例えば、懸濁液)中の化合物1の
量に適用することができる。
【0126】
いくつかの実施形態では、哺乳動物に投与される化合物1の量は、300mg/日以上
1000mg/日以下である。いくつかの実施形態では、哺乳動物に投与される化合物1
の量は、420mg/日以上840mg/日以下である。いくつかの実施形態では、哺乳
動物に投与される化合物1の量は、約420mg/日、約560mg/日又は約840m
g/日である。いくつかの実施形態では、哺乳動物に投与される化合物1の量は、約42
0mg/日である。いくつかの実施形態では、哺乳動物に投与される化合物1の量は、約
560mg/日である。いくつかの実施形態では、化合物1のAUC0~24は、約15
0~約3500ng*h/mlである。いくつかの実施形態では、化合物1のAUC0~
24は、約500~約1100ng*h/mlである。いくつかの実施形態では、化合物
1は経口投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、1日1回、1日2回又は1
日3回投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、毎日投与される。いくつかの
実施形態では、化合物1は、毎日1回投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は
、1日おきに投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、維持療法である。
【0127】
いくつかの実施形態では、小児科集団(例えば、18歳までのヒト)に投与される化合
物1の量は、本明細書で上述されたものの半分である。例えば、各用量は、30~140
mg、50~100mg又は60~80mg、例えば約70mg(本明細書に記載される
ように1ml懸濁液形態で投与される)であり得、小児科集団に対する1日用量は、15
0mg/日以上500mg/日以下である。いくつかの実施形態では、小児科集団に投与
される化合物1の量は、210mg/日以上420mg/日以下である。いくつかの実施
形態では、小児科集団に投与される化合物1の量は、約210mg/日、約280mg/
日又は約420mg/日である。いくつかの実施形態では、哺乳動物に投与される化合物
1の量は、約210mg/日である。いくつかの実施形態では、哺乳動物に投与される化
合物1の量は、約280mg/日である。いくつかの実施形態では、化合物1のAUC0
~24は、約150~約3500ng*h/mlである。いくつかの実施形態では、化合
物1のAUC0~24は、約500~約1100ng*h/mlである。いくつかの実施
形態では、化合物1は、経口投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、1日1
回、1日2回又は1日3回投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、毎日投与
される。いくつかの実施形態では、化合物1は、毎日1回投与される。いくつかの実施形
態では、化合物1は、1日おきに投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、維
持療法である。
【0128】
化合物1を含有する配合物は、予防的処置、治療的処置又は維持的処置のために投与可
能である。いくつかの実施形態では、化合物1を含有する配合物は、治療用途に合わせて
投与される(例えば、血液悪性腫瘍と診断された対象に投与される)。いくつかの実施形
態では、化合物1を含有する配合物は、治療用途に合わせて投与される(例えば、血液悪
性腫瘍に罹患しやすいか、又はさもなければ血液悪性腫瘍を発症するリスクのある対象に
投与される)。いくつかの実施形態では、化合物1を含有する配合物は、維持療法として
寛解状態の患者に投与される。
【0129】
いくつかの実施形態では、小児科集団の場合、化合物1の量は、150mg/日以上5
00mg/日以下である。いくつかの実施形態では、化合物1の量は、210mg/日以
上420mg/日以下である。いくつかの実施形態では、化合物1の量は、200mg/
日以上420mg/日以下である。いくつかの実施形態では、化合物1の量は、約180
mg/日である。いくつかの実施形態では、化合物1の量は、約210mg/日である。
いくつかの実施形態では、化合物1の量は、約280mg/日である。いくつかの実施形
態では、化合物1の量は、約420mg/日である。いくつかの実施形態では、小児科集
団の場合、化合物1の量は、2mg/kg/日以上13mg/kg/日以下である。いく
つかの実施形態では、化合物1の量は、2.5mg/kg/日以上8mg/kg/日以下
である。いくつかの実施形態では、化合物1の量は、2.5mg/kg/日以上6mg/
kg/日以下である。いくつかの実施形態では、化合物1の量は、2.5mg/kg/日
以上4mg/kg/日以下である。いくつかの実施形態では、化合物1の量は、約2.5
mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、化合物1の量は、約8mg/kg/日
である。
【0130】
本明細書に記載されるとおり、本発明の配合物は、精製水などの薬学的担体を含有する
。したがって、用量は、一定容量の懸濁液として投与される。本明細書に記載される場合
、用量が70mgのイブルチニブである場合、担体(例えば、精製水)の量は、1mlで
ある。本明細書で示されるように、懸濁液は、より低濃度であるか又はより高濃度であり
得るが、いかなる場合でも、特定の用量に必要な懸濁液の体積は、所定である。
【0131】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の薬学的配合物は、約70mgの化合物1を
含む。いくつかの実施形態では、懸濁液は、所定の体積の懸濁液(例えば、1ml)(注
射器を介して入手可能)中で必要用量が利用可能であり、したがって各1mlが約70m
gの化合物1を含むように調製される。いくつかの実施形態では、1、2、3、4又は5
ml用量の本明細書に記載される懸濁液が毎日投与される。いくつかの実施形態では、2
、3又は4ml用量の本明細書に記載される懸濁液が毎日投与される。いくつかの実施形
態では、本明細書に記載される懸濁液の用量が毎日1回投与される。他の実施形態では、
本明細書に記載される懸濁液の用量が1日に複数回投与される。
【0132】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される配合物(例えば、懸濁液)が毎日投与
される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される配合物(例えば、懸濁液)が1
日おきに投与される。
【0133】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される配合物(例えば、懸濁液)が1日1回
投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される配合物(例えば、懸濁液)
が1日2回投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される配合物(例えば
、懸濁液)が1日3回投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される配合
物(例えば、懸濁液)が1日4回投与される。
【0134】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される配合物(例えば、懸濁液)は、疾患が
憎悪するか、毒性が許容できなくなるか又は個体が選択するまで投与される。いくつかの
実施形態では、本明細書に記載される配合物(例えば、懸濁液)は、疾患が憎悪するか、
毒性が許容できなくなるか又は個体が選択するまで毎日投与される。いくつかの実施形態
では、本明細書に記載される配合物(例えば、懸濁液)は、疾患が憎悪するか、毒性が許
容できなくなるか又は個体が選択するまで1日おきに投与される。
【0135】
本明細書に記載される薬学的組成物又は配合物は、正確な用量を単回投与するための任
意の好適な形態であり得る(例えば、測量注射器を用いる懸濁液として又はサッシェ中に
予め調製した用量を含む再構成用粉末として)。非限定的な例は、バイアル又はアンプル
中の粉末及び単回用量の再密閉不可能容器中にパッケージ化された水性懸濁液配合物/組
成物である。代替的に、複数回用量の再密閉可能容器が使用可能であり、その場合、これ
は、配合物/組成物中に防腐剤を含むのが一般的である。いくつかの実施形態では、各単
位投与形態は、70mgの化合物1を含む(また、これは、1ml又は別の好適な所定の
体積の本明細書に記載される懸濁液であり得る)。いくつかの実施形態では、個体(例え
ば、小児)は、1日に1単位用量(例えば、1mlの本明細書に記載される懸濁液として
、70mgのイブルチニブ)を投与される。いくつかの実施形態では、個体(例えば、小
児)は、1日に2単位用量(例えば、2×1mlの本明細書に記載される懸濁液として、
140mgのイブルチニブ)を投与される。いくつかの実施形態では、個体(例えば、小
児)は、1日に3単位用量(210mgのイブルチニブ)を投与される。いくつかの実施
形態では、個体は、1日に4単位用量(280mgのイブルチニブ)を投与される。
【0136】
個別の治療レジームに関連する変数の数は、多く、またこれらの推奨値からかなり変動
することも稀ではないため、上記の範囲は、単なる提案に過ぎない。かかる投与量は、使
用される化合物の活性、治療される疾患又は病態、投与モード、個々の対象の要件、治療
される疾患又は病態の重症度及び施術者の判断に限定されないいくつかの変数に応じて変
更し得る。
【0137】
かかる治療レジメンの毒性及び治療的有効性は、LD50(集団の50%で致死的な用
量)及びED50(集団の50%で治療上有効な用量)の判定が挙げられるが、これに限
定されない標準的な薬学的手順により、細胞培養物又は実験動物で判定可能である。毒性
作用と治療効果との間の用量比は、治療指数であり、これは、LD50とED50との比
として表すことができる。高い治療指数を呈する化合物が好ましい。細胞培養アッセイ及
び動物研究から得られたデータは、ヒトで使用するための投与量範囲の策定に使用可能で
ある。かかる化合物の投与量は、好ましくは、毒性を最小限に抑えたED50を含む循環
血中濃度の範囲内にある。投与量は、利用される投与形態及び利用される投与経路に応じ
てこの範囲内で変化し得る。
【0138】
併用療法
特定の実施形態では、血液癌の治療を、それを必要とする個体において行う方法であっ
て、化合物1を含有する、一定量の、本明細書に記載される配合物(例えば、懸濁液)を
個体に投与することを含む方法が本明細書で開示される。いくつかの実施形態では、方法
は、第2の血液癌治療レジメンを投与することを更に含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、第2の癌治療レジメンは、シクロホスファミド、ヒドロキシ
ダウノルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾン並びに任意選択的にリツキシマブを含
む。
【0140】
いくつかの実施形態では、第2の癌治療レジメンは、ベンダムスチン及びリツキシマブ
を含む。
【0141】
いくつかの実施形態では、第2の癌治療レジメンは、フルダラビン、シクロホスファミ
ド及びリツキシマブを含む。
【0142】
いくつかの実施形態では、第2の癌治療レジメンは、シクロホスファミド、ビンクリス
チン及びプレドニゾン並びに任意選択的にリツキシマブを含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、第2の癌治療レジメンは、エトポシド、ドキソルビシン、ビ
ンリスチン、シクロホスファミド、プレドニゾロン及び任意選択的にリツキシマブを含む
。
【0144】
いくつかの実施形態では、第2の癌治療レジメンは、デキサメタゾン及びレナリドミド
を含む。
【0145】
キット/製造物品
本明細書に記載される配合物を含有するキット又はパッケージは、本明細書に記載され
る方法での使用のために設計されている。キットは、任意選択的に、配合物を投与するた
めの取扱説明書、配合物に好適な容器、注射器、ピペット、計量スプーンが挙げられるが
、これらに限定されない1つ以上の器具などを更に含有し得る。キットに含むための他の
構成要素は、望まれる送達の指示及びモードを考慮すれば当業者に明らかであろう。
【0146】
例えば、配合物が懸濁液である場合、これは、適切なアダプタ及び/又は密封装置を用
いて琥珀色ガラス瓶などの瓶(例えば、ガラス瓶)にパッケージ化され得る。一実施形態
では、こうしたパッケージングは、ピペット又は注射器であり得る懸濁液の経口投薬のた
めの計量器具を更に含む。一実施形態では、計量器具は、ピペット(例えば、先端部を有
する)及びプランジャ(例えば、懸濁液の計量を視覚的に補助するために、半透明でも不
透明でもないが着色されている(例えば、青色であり得、また現在では紫色である、要求
される法令に従う))であり、一実施形態では、ピペット又は注射器は、ポリプロピレン
などの好適なポリマーから製造され、また更に、プランジャも、ピペットと同じポリマー
又は一実施形態ではポリエチレン(例えば、高密度ポリエチレン)などの特定のポリマー
から製造されるべきできる。
【0147】
キットは、典型的には、内容物を列挙したラベル及び/又は使用説明書並びに使用説明
書を添付したパッケージ挿入物を含む。説明書一式も典型的に含まれるであろう。
【0148】
一実施形態では、ラベルは、容器上に存在するか又は容器に付随する。一実施形態では
、ラベルを形成する文字、数字又は他の符号が容器自体に貼付、成形又はエッチングされ
る場合、ラベルは、容器上に存在し、容器も保持するレセプタクル又はキャリア内に存在
する場合、ラベルは、容器に付随する(例えば、パッケージ挿入物として)。一実施形態
では、ラベルは、内容物が特定の治療用途に使用されることを示すために使用される。ラ
ベルは、内容物の用法、例えば本明細書に記載の方法の用法も示す。
【実施例0149】
以下の実施例は、本発明を説明することを目的するものであり、本発明の範囲を限定す
るものと解釈すべきではない。
【0150】
実施例1
本発明の配合物の実施例は、以下のように記載することができる。
【0151】
【0152】
ここで、Avicel RC591が用いられ、これは、微結晶セルロースとクロスカ
ルメロースナトリウム(カルボキシメチルセルロースナトリウム)との特定の混合物であ
る。
【0153】
上記の配合物の詳細は、1mlの精製水中の成分に基づく。したがって、100mlの
精製水から開始して、上記の配合物の対応する大規模バージョンを調製することができる
(成分の量を100倍にすることによって)。
【0154】
背景実施例及び参照実施例
パラベンが防腐剤として用いられる(例えば、メチルパラベンナトリウム及び/又はエ
チルパラベンナトリウム)様々な懸濁液の例を試験し、これらは、臨床フェーズ1研究を
支援するように問題なく開発された(国際特許出願の国際公開第2016/164404
号パンフレットを参照されたい)。フェーズ1の概念を修正して(主にパラベンのパーセ
ンテージを増加させて)、フェーズIII臨床研究を支援することを目的とした新規な複
数用量概念を得た。これらの概念は、以下の表にそれぞれ組成物1及び組成物2として示
されている。
【0155】
【0156】
したがって、上記の2つの懸濁液に関して、懸濁化剤(微結晶セルロース及びクロスカ
ルメロースナトリウム)濃度の増加並びに結果的なクエン酸量の増加(最終標的pHに起
因する)などの他の変化とともに、総パラベン量は、20%増加した(組成物1から組成
物2で)。
【0157】
パラベン濃度の増加の結果として、懸濁液組成物2で、数カ月間様々な貯蔵条件で安定
状態であった後、結晶化の問題が観察された。顕微鏡下で微細な新規の針状結晶が大量に
観察された。IR、ラマン及びMS解析により、新規な針結晶をAPIとパラベンとの共
結晶の可能性があるとして特性決定する。このAPI-パラベン共結晶化の固有の結果と
して、下記の表で報告される予想外に不合格であったPET試験によって確立されるよう
に、利用可能なパラベン防腐剤の量は、予期されるよりも乏しい結果となった(例えばU
、S Pharmacopoeia<51>及びPh.Eur.5.1.3などの薬局方
参考文献に従って実施及び解析された防腐有効性試験)。
【0158】
【0159】
最後の3つのエントリ(組成物2並びにpHが5.5及び6.5に調整された以外には
同じ組成物)では、針状の(共)結晶が観察された。
【0160】
したがって、パラベンレベルが120%の組成物/配合物はPETに不合格であったこ
とが見て分かる。
【0161】
上記の配合物/組成物は、製剤保存寿命をカバーするよりロバストな防腐剤系を達成す
るように改善することが可能である。代替の/改善された懸濁液、例えばPET試験の不
合格及び/又は望ましくない結晶(例えば、共結晶)生成物の形成などの欠点を有さない
ものを提供するために、更なる研究が実施された(下記で概説するとおり)。例えば、製
剤保存寿命をカバーするよりロバストな防腐剤系及び/又は例えば本明細書に記載される
ような懸濁液全体にわたる適度な粒度分布を有する懸濁液を達成することが望まれた/模
索された。
【0162】
上記は、懸濁液の変形形態を探求し、且つ懸濁液のための更なる防腐剤を探求する動因
を概説する。
【0163】
pH6での様々な温度におけるメチル、エチル及びプロピルパラベンの溶解度の研究(単
体で又は異なる量のプロピレングリコールの存在下における)
(純粋な又は様々なパーセンテージのプロピレングリコールとの混合物中の)メチル、
エチル及びプロピルパラベンの熱力学的溶解度を緩衝溶液中で評価した。溶解度は、ヒプ
ロメロース濃度(0、2.5mg/ml、5mg/ml及び10mg/ml)の関数とし
て且つ温度(5℃、20℃及び40℃)の関数として評価した。飽和パラベン溶液を、過
剰な活性成分(イブルチニブ)でスパイクし、濾過し、濾過溶液中のイブルチニブ/パラ
ベン濃度を経時的(1、2、3及び4週間)に追跡した。
【0164】
結果/結論
プロピレングリコールの添加は、パラベンの溶解度に対してわずかにプラスの効果を有
し得る。しかしながら、全ての配合物の(及び全ての温度における)パラベン濃度は、イ
ブルチニブの添加後に時間の関数として低下した。これは、バイアル中の粘性物質の出現
などのいくつかの物理的な観測結果を伴い、また40℃の試料全てにおいてクロマトグラ
フデータ中で更なるピークが観察された。
【0165】
したがって、これらの様々な概念のいずれも更なる開発に好適でなかった。特に、メチ
ル/エチルパラベンは、好適でなかった。
【0166】
新規な概念の研究、メチル/エチルパラベン対他の防腐剤
防腐剤の効果を試験するために以下の表に基づいて25個の試料を調製し、各事例で7
0mg/mlのイブルチニブを用い、1mg/mlの甘味剤(スクラロース)を用い、p
Hは、本明細書で言及した調整剤を用いて調整した。
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
疑念を避けるために、上記の表では、Me Paは、メチルパラベンを指し、Et P
aは、エチルパラベンを指し、Pr Paは、プロピルパラベンを指し、1Qは、1H2
Oを指す。
【0171】
したがって、新規な賦形剤又は異なるプロセスと組み合わせて、プロピレングリコール
、アスコルビン酸、安息香酸又はベンジルアルコール及びパラベンを用いた完全に新規な
防腐剤系が試験された。Avicel RC591をCL611と比較し、HPMC29
10 5mPasをHPMC2208 3mPas及びHPCと比較し、緩衝液のクエン
酸/Na2HPO4を緩衝液Na2HPO4/NaH2PO4と比較し、Na塩としての
パラベンの使用(多工程プロセスにおける)を非イオン性パラベンの使用(ワンポットプ
ロセスにおける)と比較した。
【0172】
新規な25個の概念を6Mの研究室安定性研究及びPET試験において1MのASAP
(加速安定性評価プログラム)安定性研究でスクリーニングした(5、40及び60℃貯
蔵条件)。
【0173】
25個の試料の結果
1ヶ月(1M)ASAP(加速安定性評価プログラム)安定性研究の結果(5℃、40
℃及び60℃貯蔵条件)から以下の一般的指標が得られた。
【0174】
- 全ての事例におけるAPIアッセイ、純度プロファイル、pH及び懸濁液外観の結
果は、安定し且つ良好であった。
【0175】
- 防腐剤安定性のみにおいて、異なる概念間にいくつかの重要な差異が観察された。
パラベンでは、60℃で1ヶ月(1M)貯蔵された試料のアッセイにおいて1~6%の低
減が観察された。ソルビン酸アッセイは、約15%低減し、安息香酸は、約5%、ベンジ
ルアルコールでは1%のみ低減した。
【0176】
6ヶ月(6M)研究室安定性の結果
新規な25個の概念を主に様々な応力条件における物理的安定性:粘度、降伏点、視覚
的態様及びAPI(共)結晶化に関してスクリーニングした(様々な時点において)。
【0177】
全ての懸濁液の経時的な粘度及び降伏点は、許容できるものであった。6ヶ月(6M)
後の、pH4の安息香酸を含有する試料のAvicel構造体のみが、降伏点を有するこ
となく完全に破壊した。Avicelは、5<pH<9でより安定であることが予期され
ている。
【0178】
懸濁液の視覚的態様(粉末の沈殿、水の分離、構造の破壊など)の調査は、ガラスシリ
ンダ中に6M静置貯蔵された試料を観察することによって行われた。結論として、全ての
概念において、シリンダ中の懸濁液は、シリンダを10秒間逆さまにしたままでも流動す
ることのできない高密度形態をもたらした。粉末の沈殿も水の分離も観察されなかった。
唯一の例外は、HPCと組み合わせられたAvicelを含有する概念(概念4)によっ
て表され、これは、シリンダの底に約2.5mlの水分離を示した。
【0179】
可能性のある新規な針状結晶(共結晶API-パラベンで典型的な)の調査を、様々な
方法で貯蔵/取り扱いされた懸濁液試料の顕微鏡分析によって行った。
【0180】
- 全ての概念は、40及び60℃で1Mにわたって貯蔵され:概念22及び24のみ
で新規な結晶が発見された。
【0181】
- 全ての概念は、周期的条件(5℃/12時間~40℃/12時間)下で6Mにわた
って貯蔵され:1M後、7つの概念のみ(13~20)で新規な針状結晶が現れなかった
が、これらは、他の全ての試料で観察された。許容可能な概念13~20では、周期的条
件で6Mの貯蔵後、安息香酸をインシピエントとして含有する概念にのみ、新規な結晶化
が観察された。他の試料は、安定であった。
【0182】
- 全ての概念は、ローリングによって物理的応力を受けた。
全ての懸濁液概念は、小児用安全ストッパで閉止されたガラスバイアル中に室温におい
て水平に速度25rpmで1Mにわたってローリングされた。1Mのローリング後に共結
晶が発見されず、他の試験において他の問題が発見されなかった有望な概念9、17、1
8、19及び20に同じ条件で合計3ヶ月間ローリングすることによって過剰応力を加え
、続いて3ヶ月(3M)間室温で静置した。これらの概念間では、概念18、19及び2
0のみが安定であった。概念9では、新規な結晶が観察され、概念17では可能性のある
初期結晶化が観察された。
【0183】
- 共結晶による試料のスパイク。
いくつかの概念をスパイクして、急速な共結晶化の誘発を試みた。メチル及びエチルパ
ラベンを含有する概念をAPI/メチルパラベン及びAPI/Etパラベンの共結晶の粉
末のわずかな顆粒でスパイクした。スパイク後、試料を(手で)振盪することによって均
質化し、顕微鏡下で評価し(試料24及び25ではスパイク前に既にいくつかの結晶が観
察されていた)、最終的に周期的条件下で6M貯蔵した。結論として、周期的条件下で1
M~6M貯蔵した後、全ての試料は、新規な針状結晶を示した。
【0184】
PETの結果及び分析(概念17~20に対して)
全ての概念に対してPET試験を行い、以下に最も有望な概念(上記を参照されたい)
の結果を示す。
【0185】
【0186】
25個のスクリーニングされた概念から得られた結果に基づき(主に試験条件の1つ以
上におけるPET結果及び新規な針(共)結晶の形成)、2Mの安定性データが利用可能
であるときに第1の概念選択を行った。概念17及び18(それぞれ安息香酸及びベンジ
ルアルコールを新規な防腐剤として含有する)のみを更なる調査のために選出した(下記
の表を参照されたい)。
【0187】
【0188】
ベンジルアルコール及び安息香酸の概念に関する更なるデータ
安定性及び防腐剤の効果を試験するために、以下の表に基づき、安息香酸及びベンジル
アルコールを用いて更に13個の試料(概念26~38)を調製し、各事例で70mg/
mlのイブルチニブを遊離塩基として用い、1mg/mlの甘味剤(スクラロース)を用
い、pHは、本明細書で言及した調整剤を用いて調整した。
【0189】
【0190】
【0191】
PET試験及び2M研究室安定性研究において、懸濁液防腐剤ベンジルアルコール及び
安息香酸の濃度を様々なAvicel濃度(12及び14mg/ml)及び異なる湿潤剤
(HPMC2910及びHPMC2208)と組み合わせて標的及び限定pHでスクリー
ニングした(方法については、上記を参照されたい)。
【0192】
概念26~38のPETの結果
新規なスクリーニングされた概念上で行われたPET試験の結果を下記の表で報告する
が、ここでは全ての概念が合格したことが分かる。
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
【0197】
概念26~38からの結論
安息香酸を含有するいくつかの懸濁液概念は、物理的に不安定であった。下限pHでの
2ヶ月の観察後及び標的pHでの6ヶ月の観察後、Avicel構造体は、完全に消失し
た(降伏点は、測定されなかった)。この結果は、おそらく、安息香酸の抗菌活性に必要
であるが、Avicelの不安定性を引き起す、非常に低い適用pHと関連していた。A
vicelは、5<pH<9の範囲内でより安定であることが予期されている。
【0198】
安息香酸概念との組み合わせにおいて、周期的条件下で6Mの貯蔵後並びに3Mのロー
リング及び3Mの静置貯蔵後にいくつかの新規な結晶化が観察された。
【0199】
可能性のあるイブルチニブと安息香酸との共結晶化を示すこれらの暫定的結果は、国際
特許出願の国際公開第2016/156127号パンフレット及び同第2016/160
604号パンフレットの開示によっても確認される。
【0200】
ベンジルアルコールを防腐剤とした含有する概念は、物理的/化学的に安定であり、(
共)結晶化を全く示さなかった。
【0201】
結論として、これらの結果に基づき、安息香酸は、これ以上評価されない一方、ベンジ
ルアルコールは、可能性のある新規な懸濁液防腐剤及び更なる開発研究として選択された
。
【0202】
PETの結果から、ベンジルアルコールの標的量は、予備的に10mg/mlと選択さ
れ:8mg/mlで第1の肯定的な結果が得られ、追加の20%のベンジルアルコールが
プロセスのロバスト性の理由として考慮に入れられた。
【0203】
ベンジルアルコールを用いた概念
湿潤剤
HPMCなどの湿潤剤の必要性を試験した:懸濁液の物理的安定性及び粒度分布(PS
D)を試験し、HPMCの不在は、25℃で1M貯蔵後、物理的に不安定な懸濁液をもた
らし、25℃で2ヶ月貯蔵後により大きい粒度(PS)へのシフトをもたらしたことが判
明した。したがって、HPMC(又は別の好適な湿潤剤)を含まない本発明の配合物/懸
濁液は、推奨されない。湿潤剤なしでは、アグロメレーションのために粒度が(望ましく
なく)増大する場合があることが考えられる。
【0204】
疎水性、水溶性、自由OHの割合及び表面張力に関してHPMC2910と2208と
を比較し、以下の結果を得た。
【0205】
HPMCは、温度の上昇によるポリマーのアグロメレーションと連関した特定の曇り/
ゲル化温度を有する熱可逆性ポリマーである。曇り/ゲル化温度は、ポリマー濃度、疎水
性ブロックの長さ及びポリマーの化学構造の関数である。ポリマーがより疎水性であるほ
ど、曇り/ゲル化温度が低い。HPMC2208は、2910よりも疎水性が低く、その
結果的な曇り温度は、HPMC2910の曇り温度よりも約20℃高い。
【0206】
HPMC2208は、HPMC2910よりも疎水性が低く且つより水溶性である。こ
れは、結果的に、API(イブルチニブ)のための湿潤剤としてより利用しやすいことが
期待される。
【0207】
HPMC2208水溶液の表面張力は、同濃度のHPMC2910水溶液の表面張力よ
りも高い。HPMC2208は、APIのためのより優れた湿潤剤であることが期待され
る。
【0208】
NMR試験から、3mPasのHPMC2208は、見出された他の結果とともに、H
PMC2910よりも約18%多い自由OH基を含有することが観察された。
【0209】
結論:
したがって、一実施形態では、3mPasのHPMC2208が、主に上記に基づいて
より優れた湿潤剤であることが期待されるため、イブルチニブ懸濁液のための新規な湿潤
剤として選択された。
【0210】
他の試験
滴定により、標的懸濁液pH=6.00±0.1を得るためのクエン酸.H2Oの量は
、0.7302mg/mlであると判定された。
【0211】
・懸濁緩衝液容量定量は、中程度/良好であり、懸濁液濃度の判定は、1.021g/
mlである。
【0212】
・PETのロバスト性研究は、肯定的な結果を示した。
【0213】
・API/ベンジルアルコール/分解物アッセイ並びにpH対温度、酸素、光及び鋼鉄
の品質特性の感度を評価するために懸濁液に対して行われたDoE感度研究は、肯定的な
結果を示した。
【0214】
・賦形剤の製造変動(90~110w%)を評価するためにDoEロバスト性研究を懸
濁液に対して行い、肯定的な結果(進行中)を得た。
【0215】
・不適合境界pHロバスト性研究を、pHの境界(5.5及び6.5)で選択された概
念に対して行い、肯定的な結果(進行中)を得た。
【0216】
プロセスのスケールアップ
実施例 - 薬学的配合物/調製プロセス
本発明の薬学的配合物/組成物(上記の懸濁液)は、適切な成分を互いに混合すること
によって調製又は製造することができる。本工程の実施例は、以下を含む:
・本明細書に記載されるイブルチニブの結晶形態Aを調製すること(例えば、国際公開第
2013/184572号パンフレットを参照して);
・成分の残部を互いに混合すること。
【0217】
ラージスケール調製
下記のとおりの50Lスケールでの製造プロセス
・精製水を調合容器1に添加する
・精製水中に溶解したHPMC及びベンジルアルコールの溶液を添加する
・APIを添加し、調製混合物を容器1中で均質になるまで撹拌する
・Avicelを調製容器1に添加する
・精製水中のスクラロース、Na2HPO4及びクエン酸H2Oの溶液を容器1に添加す
る
・調製混合物を均質になるまで撹拌する
・調製物のpHを測定する
・精製水を添加することによって調製混合物を最終体積にする
・調製混合物を均質になるまで混合する
・最終pHを測定する。
【0218】
上記のプロセスは、薬学的配合物/組成物に含まれる成分に応じて(例えば、用いられ
る特定の懸濁化剤、湿潤剤などに基づいて)適応/修正され得る。
【0219】
生物学的実施例
本明細書で定義される疾患(例えば、慢性リンパ球白血病、再発性/難治性マントル細
胞リンパ腫など)を有する対象における(例えば、小児科集団における)、本発明の配合
物(特に懸濁液である配合物)の安全性、耐容性及び/又は有効性を試験するための研究
を行う。類似の研究も、かかる配合物を組み合わせ(本明細書に記載のとおり)で試験す
るために実施することができる。