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特開2024-23276シクロペンタジエニル配位子を含む金属錯体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023276
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】シクロペンタジエニル配位子を含む金属錯体
(51)【国際特許分類】
   C07F 17/00 20060101AFI20240214BHJP
   C07F 5/00 20060101ALI20240214BHJP
   C23C 16/18 20060101ALI20240214BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C07F17/00 CSP
C07F5/00 G
C23C16/18
C23C16/455
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023192115
(22)【出願日】2023-11-10
(62)【分割の表示】P 2022021191の分割
【原出願日】2017-11-03
(31)【優先権主張番号】62/418,981
(32)【優先日】2016-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ミン
(72)【発明者】
【氏名】エルド,ジョビー
(72)【発明者】
【氏名】デゼラ,チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】モーザー,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】カンジョリア,ラヴィ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シクロペンタジエニル配位子を含有する金属錯体およびその金属錯体を使用して金属含有膜を調製する方法を提供する。
【解決手段】構造が式Iに対応する金属錯体:
[(R)nCp]2M(I)
式中、Mは、イットリウムまたはランタンであり;Rは、それぞれ独立して、C~C-アルキルであり;nは1、2、3、4、または5であり;Cpはシクロペンタジエニル環であり;およびLは、R35、R36-CHOであり;R35およびR36は、それぞれ独立して、C~C-アルキルである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造が式Iに対応する金属錯体:
[(RCp](I)
式中、
は、イットリウムまたはランタンであり;
は、それぞれ独立して、C~C-アルキルであり;
nは1、2、3、4、または5であり;
Cpはシクロペンタジエニル環であり;および
は、R35、R36-CHOであり;R35およびR36は、それぞれ独立して、C~C-アルキルである。
【請求項2】
35およびR36は、それぞれ独立して、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、又はtert-ブチルである、請求項1に記載の金属錯体。
【請求項3】
上記Rは、それぞれ独立して、C~C-アルキルである、請求項1に記載の金属錯体。
【請求項4】
上記Rは、メチルまたはエチルである、請求項1に記載の金属錯体。
【請求項5】
35およびR36は、それぞれ独立して、メチル、エチル、または、プロピルである、請求項1に記載の金属錯体。
【請求項6】
35およびR36は、それぞれエチルである、請求項1に記載の金属錯体。
【請求項7】
気相蒸着プロセスにより金属含有膜を形成する方法であって、構造が式Iに対応する少なくとも一つの金属錯体を蒸発させる工程を含む方法:
(RCp)(I)
式中、
は、イットリウムまたはランタンであり;
は、それぞれ独立して、C~C-アルキルであり;
Cpはシクロペンタジエニル環であり;および
は、R35、R36-CHOであり、;R35およびR36は、それぞれ独立して、C~C-アルキルである。
【請求項8】
上記R35およびR36は、それぞれ独立して、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、またはtert-ブチルである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
35およびR36は、それぞれ独立して、メチル、エチル、または、プロピルである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
35およびR36は、それぞれエチルである、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
上記Rは、それぞれ独立して、C~C-アルキルである、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
上記Rは、メチルまたはエチルである、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
上記気相蒸着プロセスが化学気相蒸着である、または上記気相蒸着プロセスが原子層堆積である、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
上記金属錯体は酸素供給源のパルスと交互のパルスで基板に送達され、上記酸素供給源がHO、H、O、オゾン、空気、i-PrOH、t-BuOH、およびNOからなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
水素、水素プラズマ、酸素、空気、水、アンモニア、ヒドラジン、ボラン、シラン、オゾン、およびそれらの任意の二つ以上の組み合わせからなる群より選択される少なくとも一つの共反応物を蒸発させる工程をさらに含み、上記ヒドラジンがヒドラジン(N)またはN,N-ジメチルヒドラジンである、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な発明】
【0001】
〔技術分野〕
本技術は、一般に、シクロペンタジエニル配位子を含む金属錯体、その錯体の調製方法、およびその錯体を用いて金属含有薄膜を調製する方法に関する。
【0002】
〔背景技術〕
薄膜を形成するために様々な前駆体が使用され、様々な蒸着技術が用いられてきた。当該技術としては、反応性スパッタリング、イオンアシスト蒸着、ゾルゲル蒸着、化学気相蒸着(CVD)(有機金属CVDまたはMOCVDとしても知られている)、および原子層堆積(ALD)(原子層エピタキシーとしても知られている)が挙げられる。CVDおよびALDプロセスは、合成制御の向上、高い膜均一性、およびドーピングの効果的な制御といった利点を有するため、ますます使用されている。さらに、CVDおよびALDプロセスは、現代の超小型デバイスに関連する高度な非平面の構造において優れたコンフォーマルな段差被覆性を提供する。
【0003】
CVDは、基板表面上に薄膜を形成するために前駆体を使用する化学的プロセスである。典型的なCVDプロセスにおいて、前駆体は、低圧力または大気圧の反応チャンバ内で基板(例えば、ウェーハ)の表面上を通過する。前駆体は、基板表面上で反応および/または分解し、蒸着材料の薄膜を形成する。揮発性の副産物は、反応チャンバを通るガスフローによって除去される。蒸着膜厚の制御は困難となり得る。なぜなら、温度、圧力、ガスフロー体積および均一性、化学的減耗効果、並びに時間等の多くの指標の組み合わせに依存するからである。
【0004】
ALDもまた、薄膜を蒸着する方法である。ALDは、表面反応に基づく自己制限的、連続的で独特な膜成長技術である。この表面反応は、正確な厚さ制御を可能にし、様々な組成の基板表面上に前駆体由来の材料のコンフォーマルな薄膜を蒸着することができる。ALDにおいては、前駆体は反応中に分離される。第1の前駆体は、基板表面上を通過し、基板表面上に単層を形成する。過剰な未反応の前駆体は、反応チャンバからポンプで排出される。その後、第2の前駆体は基板表面上を通過し、第1の前駆体と反応する。そして、基板表面上の第1の形成された単層膜の上に第2の単層膜を形成する。このサイクルを、所望の厚さの膜を形成するまで繰り返す。
【0005】
薄膜、特に薄い金属含有膜には、ナノテクノロジーおよび半導体デバイスの製造等の様々な重要な用途がある。そのような用途の例として、高屈折率光学的被膜、腐食保護被膜、光触媒自己洗浄ガラス被膜、生体適合性被膜、電界効果トランジスタ(FET)における誘電性キャパシタ層およびゲート誘電絶縁膜、キャパシタ電極、ゲート電極、付着性分散バリア、および集積回路が含まれる。誘電性薄膜は、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)用の高κ誘電酸化物、赤外線検出器や非揮発性強誘電性ランダムアクセスメモリ(NV-FeRAMs)に使用される強誘電体ペロブスカイト等の超小型電子用途にも使用される。超小型電子部品のサイズの継続的な縮小により、そのような薄膜技術の改善の必要性が高まっている。
【0006】
スカンジウム含有薄膜およびイットリウム含有薄膜(例えば、酸化スカンジウム、酸化イットリウム等)の調製に関する技術が特に興味深い。例えば、スカンジウム含有膜は、触媒、電池、メモリデバイス、ディスプレイ、センサー、ならびに超微細および超小型電子技術および半導体デバイス等の分野において多くの実用的な用途が見出されている。電子用途の場合、揮発性、低い融点、反応性および安定性を含む適切な特性を有するスカンジウム含有前駆体およびイットリウム含有前駆体を使用する商業的に実行可能な蒸着法が必要とされる。しかし、このような適切な特性を有する利用可能なスカンジウム含有化合物およびイットリウム含有化合物の数は限られている。したがって、スカンジウム含有膜およびイットリウム含有膜を調製するための気相蒸着プロセスにおける前駆体材料としての使用に適切な性能特性を有するスカンジウム錯体およびイットリウム錯体の開発に大きな関心がある。例えば、改良された性能特性(例えば、熱安定性、蒸気圧、および蒸着速度)を有するスカンジウム含有前駆体およびイットリウム含有前駆体が必要であり、そのような前駆体から薄膜を蒸着する方法も必要である。
【0007】
〔発明の概要〕
一態様によれば、式Iの金属錯体が提供される:[(RCp](I);
式中、Mは、3族金属またはランタニド(例えば、スカンジウム、イットリウムおよびランタン)であり;Rは、それぞれ独立して、水素、C~C-アルキルまたはシリルであり;nは1、2、3、4、または5であり;Cpはシクロペンタジエニル環であり;そしてLはNR;N(SiR;3,5-R-CHN;1-(R32)C;1-R33-3-R34-C;およびR35、R36-CHOからなる群から選択され;式中、R、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素またはC~C-アルキルであり、R32、R33、R34、R35およびR36は、それぞれ独立して、アルキルまたはシリルであり;式中、Mがイットリウムであり、Lが3,5-R-CHNである場合、RはC~C-アルキルまたはシリルであり;式中、Mがイットリウムであり、LがN(SiRである場合、nは1、2、3、または4である。
【0008】
他の態様では、式IIの金属錯体が提供される:[((RCp)(II);
式中、Mは、3族金属またはランタニド(例えば、スカンジウム、イットリウムおよびランタン)であり;Rは、それぞれ独立して、水素またはC~C-アルキルであり;nは1、2、3、4または5であり;Cpはシクロペンタジエニル環であり;LはCl、F、Br、Iおよび3,5-R1011-CHNからなる群から選択され;式中、R10およびR11は、それぞれ独立して、水素またはC~C-アルキルであり;式中、Mがスカンジウムであり、LがClである場合、RはC~C-アルキルである。
【0009】
他の態様では、CVDおよびALD等の気相蒸着によって金属含有膜を形成する方法が、本明細書にて提供される。当該方法は、式I:(RCp)(I)に構造が対応する少なくとも一つの金属錯体を蒸発させることを含み、式中、Mは、3族金属またはランタニド(例えば、スカンジウム、イットリウムおよびランタン)であり、Rは、それぞれ独立して、水素、C~C-アルキルまたはシリルであり;Cpはシクロペンタジエニル環であり;LはNR;N(SiR;3,5-R-CHN;1-(R32)C;1-R33-3-R34-C;およびR35、R36-CHOからなる群から選択され;式中、R、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素またはC~C-アルキルであり、R32、R33、R34、R35およびR36は、それぞれ独立して、アルキルまたはシリルである。
【0010】
上記で要約された本実施形態の特定の態様を含んでいる他の実施形態は、以下の詳細な説明によって明らかになるであろう。
【0011】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、Sc(MeCp)(3,5-ジメチル-ピラゾラート)を用いたSc膜のXPS(X線光電子分光法)解析を示す。
【0012】
図2は、Sc(MeCp)(3,5-ジメチル-ピラゾラート)を用いたSc膜のXPS解析を示す。
【0013】
図3は、Sc(MeCp)(3,5-ジメチル-ピラゾラート)を用いたSc膜のXPS解析を示す。
【0014】
図4は、Sc(MeCp)(3,5-ジメチル-ピラゾラート)を用いたSc膜のXPS解析を示す。
【0015】
図5は、Sc(MeCp)(3,5-ジメチル-ピラゾラート)を用いたSc膜のXPS解析を示す。
【0016】
図6は、Sc(MeCp)(3,5-ジメチル-ピラゾラート)を用いたSc膜のXPS解析を示す。
【0017】
図7は、Sc(MeCp)(3,5-ジメチル-ピラゾラート)を用いたSc膜のXPS解析を示す。
【0018】
図8は、Sc(MeCp)(3,5-ジメチル-ピラゾラート)を用いたSc膜のXPS解析を示す。
【0019】
図9は、Sc(MeCp)(3,5-ジメチル-ピラゾラート)を用いたSc膜のXPS解析を示す。
【0020】
図10は、Sc(MeCp)(3,5-ジメチル-ピラゾラート)を用いたSc膜のXPS解析を示す。
【0021】
図11は、Sc(MeCp)(3,5-ジメチル-ピラゾラート)を用いたSc膜のXPS解析を示す。
【0022】
図12は、Sc(MeCp)(3,5-ジメチル-ピラゾラート)を用いたSc膜のXPS解析を示す。
【0023】
図13は、Sc(MeCp)(3,5-ジメチル-ピラゾラート)を用いたSc膜のXPS解析を示す。
【0024】
図14は、Sc(MeCp)(3,5-ジメチル-ピラゾラート)を用いたSc膜のXPS解析を示す。
【0025】
図15は、ALDにおける、[Y(MeCp)(3,5-MePn-CHN)]を蒸着する場合の蒸着温度に対するサイクル当たりのYの成長速度の依存性を示す。
【0026】
図16は、ALDにおける、125℃、150℃および200℃で[Y(MeCp)(3,5-MePn-CHN)]を蒸着する場合のHOパージ時間に対するサイクル当たりのYの成長速度の依存性を示す。
【0027】
図17は、前駆体/キャリアガスフロー方向に沿ったクロスフロー反応器内の三つの異なった位置である前駆体入口、反応器中心、および前駆体出口でのALDにおけるサイクル当たりのY成長速度を示す。
【0028】
〔詳細な説明〕
本技術のいくつかの実施形態の例を説明する前に、本技術は、以下の記述で説明される構成またはプロセス段階の細部に限定されないことを理解されたい。本技術は他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施または実行されることが可能である。また、金属錯体および他の化合物は、特定の立体化学的な配置を有する構造式を用いて本明細書に例示することができることも理解されたい。これらの例示は例としてのみ意図しており、開示された構造を特定の立体化学的な配置に限定するものとして解釈されるべきではない。むしろ、記載された構造は、示された化学式を有する全ての金属錯体および化合物を包含することを意図する。
【0029】
様々な態様において、金属錯体、その金属錯体の製造方法、および気相蒸着プロセスによって薄い金属含有膜を形成するためにその金属錯体を使用する方法が提供される。
【0030】
本明細書中で使用される場合、用語「金属錯体」(またはより単純には「錯体」)および「前駆体」は、互換的に使用され、そして、例えば、ALDまたはCVD等の気相蒸着プロセスによって金属含有膜を調製するために使用され得る金属含有分子または化合物を指す。金属錯体は金属含有膜を形成するように、基板またはその表面上に蒸着、吸着、分解、送達、および/または通過させることができる。一つ以上の実施形態において、本明細書に開示される金属錯体は、ニッケル錯体である。
【0031】
本明細書中で使用される場合、用語「金属含有膜」は、以下でより十分に定義されるような元素金属膜だけでなく、例えば、金属酸化物膜、金属窒化物膜、金属ケイ化物膜等の、一つ以上の元素と金属とを含む膜も含む。本明細書中で使用される場合、用語「元素金属膜」および「純金属膜」は、互換的に使用され、純金属からなる、または本質的に純金属からなる膜を指す。例えば、元素金属膜は、100%の純金属を含んでもよく、または元素金属膜は一つ以上の不純物と共に、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.9%、または少なくとも約99.99%の純金属を含んでもよい。文脈上別段の指示がない限り、用語「金属膜」は、元素金属膜を意味するものと解釈されるべきである。いくつかの実施形態において、金属含有膜は、元素スカンジウム膜または元素イットリウム膜である。他の実施形態において、金属含有膜は、酸化スカンジウム膜、酸化イットリウム膜、窒化スカンジウム膜、窒化イットリウム膜、ケイ化スカンジウム膜またはケイ化イットリウム膜である。このスカンジウム含有膜およびイットリウム含有膜は、本明細書に記載される種々のスカンジウム錯体およびイットリウム錯体から調製され得る。
【0032】
本明細書中で使用される場合、用語「気相蒸着プロセス」は、CVDおよびALDを含むが、これらに限定されず、任意の種類の気相蒸着技術を指すために使用される。様々な実施形態において、CVDは、従来の(すなわち連続フロー)CVD、液体注入CVD、または光アシストCVDの形態を採ることができる。CVDは、パルス技術、すなわちパルスCVDの形態を採ることもできる。他の実施形態において、ALDは、従来の(すなわち、パルス注入)ALD、液体注入ALD、光アシストALD、プラズマアシストALD、またはプラズマ促進ALDの形態を採ることができる。用語「気相蒸着プロセス」は、Chemical Vapour Deposition: Precursors, Processes, and Applications; Jones, A. C.; Hitchman, M. L., Eds. The Royal Society of Chemistry: Cambridge, 2009; Chapter 1, pp 1-36.に記載された種々の気相蒸着技術をさらに含む。
【0033】
(単独で、または別の用語(単数または複数)と組み合わせて)用語「アルキル」は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル等の、しかしこれらに限定されない、長さが1~約12個の炭素原子の飽和炭化水素鎖を指す。アルキル基は、直鎖でも分枝鎖でもよい。「アルキル」は、アルキル基の全ての構造異性体を包含することを意図する。例えば、本明細書中で使用される場合、プロピルはn-プロピルおよびイソプロピルの両方を包含し;ブチルはn-ブチル、sec-ブチル、イソブチルおよびtert-ブチルを包含し;ペンチルはn-ペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、sec-ペンチルおよび3-ペンチルを包含する。さらに、本明細書中で使用される場合、「Me」はメチルを指し、「Et」はエチルを指し、「Pr」はプロピルを指し、「i-Pr」はイソプロピルを指し、「Bu」はブチルを指し、「t-Bu」はtert-ブチルを指し、「iBu」はイソブチルを指し、「Pn」および「Npn」はネオペンチルを指す。いくつかの実施形態において、アルキル基は、C~C-またはC~C-アルキル基である。
【0034】
用語「アリル」は、金属中心に結合したアリル(C)配位子を指す。本明細書中で使用される場合、アリル配位子は共鳴二重結合を有し、アリル配位子の三つの炭素原子の全ては、π結合によるη-配位で金属中心に結合する。したがって、本発明の錯体はπ錯体である。これらの特徴は両方とも、破線の結合によって表される。アリル部が一つのX基で置換されている場合、X基はアリル水素を置換して[X]になり、二つのX基XおよびXで置換されている場合、[X]になり、XおよびXは同一または異なり、以下同様である。
【0035】
用語「シリル」は、-SiZ基を指し、ここで、Z、Z、およびZの各々は、独立して、水素および場合により置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0036】
用語「トリアルキルシリル」は、-SiZ基を指し、ここで、Z、Z、およびZはアルキルであり、Z、Z、およびZは、同じまたは異なるアルキルであってもよい。トリアルキルシリルの非限定的な例としては、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、トリイソプロピルシリル(TIPS)およびtert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)が挙げられる。
【0037】
スカンジウムおよびイットリウムを含むいくつかの金属の堆積は、熱安定性の問題のために達成することが困難であるか、堆積に対して不安定であるか、または安定すぎるかのいずれかであり得る。本実施形態に開示される有機金属錯体は物性の制御を可能にし、安定性の向上および簡単で高い収率の合成を提供する。この点に関して、本明細書で提供される金属錯体は、様々な気相蒸着プロセスにおいて薄い金属含有膜を調製するための優れた候補である。
【0038】
したがって、一態様によれば、次式Iの金属錯体が提供される: [(RCp](I);式中、Mは、3族金属またはランタニドであり;Rは、それぞれ独立して、水素、C~C-アルキルまたはシリルであり;nは1、2、3、4、または5であり;Cpはシクロペンタジエニル環であり;そしてLはNR;N(SiR;3,5-R-CHN;1-(R32)C;1-R33-3-R34-C;R35、R36-CHO;R12N=C-C-NR13;R1415N-CH-CH-NR16-CH-CH-NR1718;およびR19O-CH-CH-NR20-CH-CH-OR21からなる群から選択され;式中、R、R、R、R、R、R、R、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、およびR21は、それぞれ独立して、水素またはC~C-アルキルであり、R32、R33、R34、R35およびR36は、それぞれ独立して、アルキルまたはシリルである。
【0039】
いくつかの実施形態において、Mがスカンジウム、イットリウム、およびランタンからなる群から選択され得る。他の実施形態では、Mがスカンジウムおよびイットリウムからなる群から選択され得る。特に、Mはスカンジウムであり得る。
【0040】
別の実施形態において、Mがイットリウムであり、Lが3,5-R-CHNである場合、RはC~C-アルキルまたはシリルであり、および/またはMがイットリウムであり、LがN(SiRである場合、nは1、2、3または4である。
【0041】
いくつかの実施形態において、Lは、NR;N(SiR;3,5-R-CHN;1-(R32)C;1-R33-3-R34-C;およびR35、R36-CHOからなる群から選択される。
【0042】
いくつかの実施形態において、Lは、NR;N(SiR;3,5-R-CHN;1-(SiMe)C(トリメチルシリルアリル);1,3-ビス-(SiMe(ビス-トリメチルシリルアリル)、6-メチル-2,4-ヘプタンジオネートからなる群から選択される。
【0043】
それぞれ存在するRは、同じであっても異なっていてもよい。例えば、もしnが2、3、4または5である場合、それぞれのRは全て水素であり得、または全てアルキル(例えば、C~C-アルキル)、または全てシリルであり得る。あるいは、nが2、3、4または5である場合、それぞれのRは異なり得る。例えば、もしnが2である場合、第1のRは水素であり得、第2のRはアルキル(例えば、C~C-アルキル)またはシリルであり得る。
【0044】
それぞれ存在するR、R、R、R、R、R、R、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20およびR21は、同じであっても異なっていてもよい。例えば、R、R、R、R、R、R、R、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20およびR21は全て水素であり得、または全てアルキル(例えば、C~C-アルキル)であり得る。
【0045】
一実施形態において、R、R、R、R、R、R、R、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20およびR21のうち16個までは、それぞれ水素であり得る。例えば、R、R、R、R、R、R、R、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20およびR21のうち、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個または少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、または少なくとも16個が水素であり得る。
【0046】
別の実施形態において、R、R、R、R、R、R、R、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20およびR21のうち16個までは、それぞれ独立してアルキルであり得る。例えば、R、R、R、R、R、R、R、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20およびR21のうち、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個または少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、または少なくとも16個がアルキルであり得る。
【0047】
それぞれ存在するR32、R33およびR34は、同じであっても異なっていてもよい。例えば、R32、R33およびR34は全てアルキル(例えば、C~C-アルキル)であり得、または全てシリル(例えば、SiMe)であり得る。
【0048】
それぞれ存在するR35およびR36は、同じであっても異なっていてもよい。例えば、R35およびR36は全て同じまたは異なるアルキル(例えば、C~C-アルキル)であり得、R35およびR36は全て同じまたは異なるシリル(例えば、SiMe)であり得、またはR35およびR36はアルキル(例えば、C~C-アルキル)とシリル(例えば、SiMe)であり得る。
【0049】
一実施形態において、R32、R33、R34、R35およびR36のうち2個までは、それぞれ独立してアルキルであり得る。例えば、R32、R33、R34、R35およびR36のうち、少なくとも1個または少なくとも2個はアルキルであり得る。
【0050】
別の実施形態において、R32、R33、R34、R35およびR36のうち2個までは、それぞれ独立してシリルであり得る。例えば、R32、R33、R34、R35およびR36のうち、少なくとも1個または少なくとも2個はシリルであり得る。
【0051】
本明細書で議論されるアルキル基は、C~C-アルキル、C~C-アルキル、C~C-アルキル、C~C-アルキル、C~C-アルキル、C~C-アルキル、C~C-アルキルまたはC-アルキルであってもよい。さらなる実施形態において、アルキルは、C~C-アルキル、C~C-アルキル、C~C-アルキル、C~C-アルキルまたはC-アルキルである。アルキル基は、直鎖または分枝であり得る。特に、アルキルは直鎖である。さらなる実施形態において、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、およびネオペンチルからなる群から選択される。
【0052】
本明細書で議論されるシリル基は、Si(アルキル)、Si(アルキル)H、およびSi(アルキル)Hであってもよいが、これらに限定されず、ここで、アルキルは上記の通りである。例えば、シリルの例としては、SiH、SiMeH、SiMeH、SiMe、SiEtH、SiEtH、SiEt、SiPrH、SiPrH、SiPr、SiBuH、SiBuH、SiBuが挙げられるが、これらに限定されず、「Pr」はi-Prを含み、「Bu」はt-Buを含む。
【0053】
いくつかの実施形態において、Rは、それぞれ独立して、水素、C~C-アルキルまたはシリルであり得る。別の実施形態において、Rは、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、プロピルまたはシリルであり得る。別の実施形態において、Rは、それぞれ独立して、水素、メチル、またはエチルであり得る。特に、Rは、それぞれメチルであり得る。
【0054】
いくつかの実施形態において、R、R、R、R、R、R、R、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20およびR21は、それぞれ独立して、水素またはC~C-アルキルであり得る。他の実施形態において、R、R、R、R、R、R、R、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20およびR21は、それぞれ独立して、水素、メチル、エチルまたはプロピルであり得る。他の実施形態において、R、R、R、R、R、R、R、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20およびR21は、それぞれ独立して、水素、メチルまたはエチルであり得る。特に、R、R、R、R、R、R、R、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20およびR21は、それぞれ独立して、水素またはメチルであり得る。
【0055】
いくつかの実施形態において、Rは、それぞれ独立して、水素、C~C-アルキルまたはシリルであり得;および、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17およびR18は、それぞれ独立して、水素、C~C-アルキルであり得る。
【0056】
他の実施形態において、Rは、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、プロピルまたはシリルであり得;R、R、R、R、R、R、R、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20およびR21は、それぞれ独立して、水素、メチル、エチルまたはプロピルであり得る。
【0057】
いくつかの実施形態において、Rは、それぞれ独立して、水素、メチルまたはエチルであり得;R、R、R、R、R、R、R、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20およびR21は、それぞれ独立して、水素、メチルまたはエチルであり得る。別の実施形態において、Rは、それぞれメチルであって、R、R、R、R、R、R、R、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20およびR21は、それぞれ独立して、水素またはメチルであり得る。
【0058】
いくつかの実施形態において、R32、R33、R34、R35およびR36は、それぞれ独立して、C~C-アルキルまたはシリルであり得る。他の実施形態において、R32、R33、R34、R35およびR36は、それぞれ独立して、C~C-アルキルまたはシリルであり得る。他の実施形態において、R32、R33、R34、R35およびR36は、それぞれ独立して、メチル、エチル、プロピルまたはシリルであり得る。他の実施形態において、R32、R33、R34、R35およびR36は、それぞれ独立して、メチル、エチルまたはシリルであり得る。他の実施形態において、R32、R33、R34、R35およびR36は、それぞれ独立して、SiH、SiMeH、SiMeH、SiMe、SiEtH、SiEtH、SiEt、SiPrH、SiPrH、SiPr、SiBuH、SiBuH、SiBu等のシリルであり得るが、これらに限定されない。特に、R32、R33、R34、R35およびR36は、それぞれ独立してSiMeであってもよい。特に、R32、R33およびR34は、それぞれ独立してSiMeであってもよい。他の実施形態では、R35およびR36は、それぞれ独立して、C~C-アルキル、特にメチルおよび/またはブチルであってもよい。
【0059】
いくつかの実施形態において、Lは、NR;N(SiR;1-(R32)C;および1-R33-3-R34-Cからなる群から選択される。
【0060】
別の実施形態において、Lは、NR;N(SiR;1-(SiMe)C;1,3-ビス-(SiMe:およびR35、R36-CHOからなる群から選択され得る。
【0061】
別の実施形態において、Rは、それぞれ独立して、水素、C~C-アルキルまたはシリルであり得;そしてLは、NRであり、RおよびRは、それぞれ独立して、水素またはC~C-アルキルであり得る。別の実施形態において、Rは、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、プロピルまたはシリルであり得;RおよびRは、それぞれ独立して、水素、メチル、エチルまたはプロピルであり得る。別の実施形態において、Rは、それぞれ独立して、水素、メチル、またはエチルであり得;RおよびRは、それぞれ独立して、水素、メチル、またはエチルであり得る。特に、Rは、それぞれメチルであり得;RおよびRは、それぞれ独立して、水素、メチル、またはエチルであり得る。
【0062】
別の実施形態において、Rは、それぞれ独立して、水素、C~C-アルキルまたはシリルであり得;そしてLは、N(SiRであり、ここで、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素またはC~C-アルキルであり得る。別の実施形態では、Rは、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、プロピルまたはシリルであり得;R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、メチル、エチルまたはプロピルであり得る。別の実施形態において、Rは、それぞれ独立して、水素、メチル、またはエチルであり得;R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素、メチル、またはエチルであり得る。特に、Rは、メチルであり得;R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素、メチル、またはエチルであり得る。
【0063】
いくつかの実施形態において、Rは、それぞれ独立して、水素、C~C-アルキルまたはシリルであり得;そしてLは、3,5-R-CHNであり得、ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、水素またはC~C-アルキルであり得る。他の実施形態では、Rは、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、プロピルまたはシリルであり得る。他の実施形態では、Rは、それぞれ独立して、水素、メチルまたはエチルであり得る。特に、Rは、それぞれメチルであり得る。他の実施形態において、RおよびRは、それぞれ独立して、水素またはC~C-アルキルまたは水素であり得る。他の実施形態において、RおよびRは、それぞれ独立して、メチル、エチル、プロピルまたは水素であり得る。特に、RおよびRは、それぞれ独立して、メチルまたはエチルであり得る。
【0064】
いくつかの実施形態において、Rは、それぞれ独立して、水素、C~C-アルキルまたはシリルであり得;Lは、1-(R32)Cであり、ここで、R32は、C~C-アルキルまたはシリルであり得る。別の実施形態において、R32は、C~C-アルキルまたはシリルであってもよい。他の実施形態において、Rは、それぞれ独立して、水素、メチル、エチルまたはシリルであり得、R32は、シリルであり得る。別の実施形態において、Rは、それぞれ独立して、水素、メチルまたはエチルであり得、R32は、SiH、SiMeH、SiMeH、SiMe、SiEtH、SiEtH、SiEt、SiPrH、SiPrH、SiPr、SiBuH、SiBuH、SiBu等のシリルであり得るが、これらに限定されない。特に、それぞれのRは独立して、メチルまたはエチルであり得、R32はSiMeであり得る。
【0065】
他の実施形態において、Rは、それぞれ独立して、水素、C~C-アルキルまたはシリルであり得;Lは、1-R33-3-R34-Cであり得、ここで、R33およびR34は、C~C-アルキルまたはシリルであり得る。別の実施形態において、Rは、それぞれ独立して、水素、メチル、エチルまたはシリルであり得、R33およびR34は、それぞれ独立して、C~C-アルキルまたはシリルであり得、R32は、シリルであり得る。別の実施形態において、Rは、それぞれ独立して、水素、メチルまたはエチルであり得、R33およびR34は、それぞれ独立して、SiH、SiMeH、SiMeH、SiMe、SiEtH、SiEtH、SiEt、SiPrH、SiPrH、SiPr、SiBuH、SiBuH、SiBu等のシリルであり得るが、これらに限定されない。特に、Rは、それぞれ独立して、メチルまたはエチルであり得、R33およびR34は、SiMeであり得る。
【0066】
他の実施形態において、Rは、それぞれ独立して、水素、C~C-アルキルまたはシリルであり得;Lは、R35、R36-CHOであり得、ここで、R35およびR36は、C~C-アルキルまたはシリルであり得る。別の実施形態において、Rは、それぞれ独立して、水素、メチル、エチルまたはシリルであり得、R35およびR36は、それぞれ独立して、C~C-アルキルまたはシリルであり得る。別の実施形態において、Rは、それぞれ独立して、水素、メチルまたはエチルであり得、R35およびR36は、それぞれ独立して、SiH、SiMeH、SiMeH、SiMe、SiEtH、SiEtH、SiEt、SiPrH、SiPrH、SiPr、SiBuH、SiBuH、SiBu等のシリルであり得るが、これらに限定されない。別の実施形態において、Rは、それぞれ独立して、水素、メチルまたはエチルであり得、R35およびR36は、それぞれ独立して、C~C-アルキルであり得、特にメチルおよび/またはブチルであり得る。特に、Rは、それぞれ独立して、メチルまたはエチルであり得、R35およびR36は、それぞれ独立して、メチルまたはブチルであり得る。特に、Rは、それぞれ独立して、メチルまたはエチルであり得、R35およびR36は、SiMeであり得る。
【0067】
構造が式Iに対応する金属錯体の例を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
一実施形態において、2種以上の式Iの有機金属錯体の混合物が提供される。
【0070】
別の実施形態において、式IIの金属錯体が提供される:[((RCp)(II)、式中、Mは、3族金属またはランタニドであり;Rは、それぞれ独立して、水素またはC~C-アルキルであり;nは1、2、3、4または5であり;Cpはシクロペンタジエニル環であり;およびLはCl;F;Br;I;3,5-R1011-CHN;R22N=C-C-NR23;R2425N-CH-NR26-CH-NR2728およびR29O-CH-NR30-CH-OR31からなる群から選択され、ここで、R10、R11、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、およびR31は、それぞれ独立して、水素またはC~C-アルキルである。
【0071】
いくつかの実施形態において、Mは、スカンジウム、イットリウム、およびランタンからなる群から選択され得る。他の実施形態では、Mは、スカンジウムおよびイットリウムからなる群から選択され得る。特に、Mは、スカンジウムであり得る。
【0072】
他の実施形態では、Mがスカンジウムであり、LがClである場合、RはC~C-アルキルである。
【0073】
いくつかの実施形態において、Lは、Cl;F;Br;I;および3,5-R1011-CHNからなる群より選択される。
【0074】
それぞれ存在するRは、同じであっても異なっていてもよい。例えば、nが2、3、4または5である場合、それぞれのRは、全て水素であり得、または全てがアルキル(例えば、C~C-アルキル)であり得る。あるいは、nが2、3、4、または5である場合、Rは、それぞれ異なり得る。例えば、nが2である場合、第1のRは水素であり得、第2のRはアルキル(例えば、C~C-アルキル)であり得る。
【0075】
それぞれ存在するR10、R11、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、およびR31は、同じであっても異なっていてもよい。例えば、R10、R11、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、およびR31は、全て水素であり得、全てアルキル(例えば、C~C-アルキル)であり得る。
【0076】
一実施形態において、R10、R11、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、およびR31のうちの11個までが、それぞれ水素であり得る。例えば、R10、R11、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、およびR31の少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個または少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個が水素であり得る。
【0077】
別の実施形態において、R10、R11、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、およびR31のうちの11個までが、それぞれ独立してアルキルであり得る。例えば、R10、R11、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、およびR31の少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個または少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個がアルキルであり得る。
【0078】
本明細書で議論されるアルキル基は、C~C-アルキル、C~C-アルキル、C~C-アルキル、C~C-アルキル、C~C-アルキル、C~C-アルキル、C~C-アルキルまたはC-アルキルであってもよい。さらなる実施形態において、アルキルは、C~C-アルキル、C~C-アルキル、C~C-アルキル、C~C-アルキルまたはC-アルキルである。アルキル基は、直鎖または分枝であり得る。特に、アルキルは直鎖である。さらなる実施形態において、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、およびネオペンチルからなる群から選択される。
【0079】
いくつかの実施形態において、Rは、それぞれ独立して、C~C-アルキルであり得る。他の実施形態において、Rは、それぞれ独立して、水素またはC~C-アルキルであり得る。別の実施形態では、Rは、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、またはプロピルであり得る。別の実施形態において、Rは、それぞれ独立して、水素、メチル、またはエチルであり得る。特に、Rは、それぞれメチルであり得る。
【0080】
特定の実施形態において、Mは、スカンジウムであり得、Rは、それぞれ独立してC~C-アルキルであり得る。別の実施形態において、Mは、スカンジウムであり得、LはClであり得、Rは、それぞれ独立してメチル、エチルまたはプロピルであり得る。特に、Rは、それぞれ独立して、メチルまたはエチルであり得る。
【0081】
別の特定の実施形態において、Mは、イットリウムであり得、Rは、それぞれ独立してC~C-アルキルであり得る。別の実施形態において、Mは、イットリウムであり得、Lは3,5-R1011-CHNであり得、Rは、それぞれ独立してメチル、エチルまたはプロピルであり得、R10とRは、それぞれ独立して、C~C-アルキルであり得る。特に、Rは、それぞれ独立して、メチルまたはエチルであり得る。
【0082】
構造が式IIに対応する金属錯体の例を表2に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
本明細書で提供されるさらなる他の金属錯体には、Y(MeCp)(3,5-tBu-CHN)(THF)、Y(MeCp)(3,5-MePn-CHN)(THF)、およびY(MeCp)(3,5-tBu、iBu-CHN)(THF)を含む。本明細書中で使用される場合、「THF」は、テトラヒドロフランをいう。
【0085】
本明細書に提供される金属錯体は例えば、下記スキームAに示すように調製され得る。
【0086】
【化1】
【0087】
本明細書において提供される金属錯体は、金属含有膜、例えば、元素スカンジウム、元素イットリウム、酸化スカンジウム、酸化イットリウム、窒化スカンジウム、窒化イットリウム、およびケイ化スカンジウムおよびケイ化イットリウムの膜を調製するために使用することができる。このように、別の態様において、気相蒸着プロセスによって金属含有膜を形成する方法が提供される。当該方法は、本明細書に開示されるように、構造が式(I)、式(II)、またはそれらの組み合わせに対応する少なくとも一つの有機金属錯体を蒸発させることを含む。例えば、これは、(1)少なくとも一つの錯体を蒸発させること、および(2)少なくとも一つの錯体を基板の表面に送達すること、または少なくとも一つの錯体を基板上に通過させること(および/または基板の表面上の少なくとも一つの錯体を分解すること)を含んでもよい。
【0088】
本明細書において開示される蒸着方法では、様々な基板を使用することができる。例えば、本明細書で開示されるような金属錯体は、これらに限定されないが、シリコン、結晶シリコン、Si(100)、Si(111)、酸化ケイ素、ガラス、歪みシリコン、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)、ドープされたシリコンまたは酸化ケイ素(例えば、炭素ドープされた酸化ケイ素)、窒化ケイ素、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、タンタル、窒化タンタル、アルミニウム、銅、ルテニウム、チタン、窒化チタン、タングステン、窒化タングステン、およびナノスケールデバイス製造プロセス(例えば、半導体製造プロセス)で一般に遭遇する任意の数の他の基板等の、基板またはそれらの表面上に送達、通過、または蒸着されてもよい。当業者には理解されるように、基板は基板表面を研磨、エッチング、還元、酸化、ヒドロキシル化、アニール、および/またはベークするために、前処理プロセスに曝すことができる。一つ以上の実施形態において、基材表面は、水素終端表面を含む。
【0089】
ある実施形態において、金属錯体は、気相蒸着プロセスを容易にするために、炭化水素溶媒またはアミン溶媒等の適切な溶媒に溶解することができる。適切な炭化水素の溶媒としては、ヘキサン、ヘプタンおよびノナン等の脂肪族炭化水素;トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素;ならびにジグリム、トリグリムおよびテトラグリム等の脂肪族および環状エーテルが挙げられるが、これらに限定されない。適切なアミン溶媒の例として、オクチルアミンおよびN,N-ジメチルドデシルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、金属錯体をトルエンに溶解して、約0.05M~約1Mの濃度の溶液を生成してもよい。
【0090】
別の実施形態において、少なくとも一つの金属錯体を「ニート」(キャリアガスで希釈していない)で基板表面に送達することができる。
【0091】
一実施形態において、気相蒸着プロセスは化学気相蒸着である。
【0092】
別の実施形態において、気相蒸着プロセスは原子層堆積である。
【0093】
ALDおよびCVDの方法は限定されないが、連続またはパルス注入プロセス、液体注入プロセス、光アシストプロセス、プラズマアシストプロセス、およびプラズマ促進プロセス等の様々なタイプのALDおよびCVDのプロセスを包含する。明確にするために、本技術の方法は特に直接液体注入プロセスを含む。例えば、直接液体注入CVD(DLI-CVD)において、固体または液体の金属錯体を適切な溶媒に溶解し、そこから形成された溶液を蒸着チャンバに注入して金属錯体を蒸発させることができる。次いで、蒸発した金属錯体は、基板表面に輸送/送達される。一般に、DLI-CVDは、金属錯体が比較的低い揮発性を示すか、さもなければ蒸発することが困難であるような場合に特に有用であり得る。
【0094】
一実施形態において、金属含有膜を形成するために従来のCVDまたはパルスCVDを使用して、少なくとも一つの金属錯体を基板表面上に蒸発および/または通過させる。従来のCVDプロセスについては、例えば、Smith, Donald(1995) Thin-Film Depotion: Principles and Practice. McGraw-Hillを参照のこと。
【0095】
一実施形態において、本明細書に開示される金属錯体のCVD成長条件は以下を含むが、これらに限定されない:
a.基板温度:50~600℃
b.エバポレータ温度(金属前駆体温度):0~200℃
c.反応器圧力:0~100Torr
d.アルゴンまたは窒素キャリアガスの流量:0~500sccm
e.酸素流量:0~500sccm
f.水素流量:0~500sccm
g.実行時間:所望の膜厚によって異なる
別の実施形態において、光アシストCVDは、本明細書で開示される少なくとも一つの金属錯体を基板表面上に蒸発および/または通過させることによって金属含有膜を形成するために使用される。
【0096】
さらなる実施形態において、従来の(すなわち、パルス注入)ALDは、本明細書で開示される少なくとも一つの金属錯体を基板表面上に蒸発および/または通過させることによって金属含有膜を形成するために使用される。従来のALDプロセスについては、例えばGeorge SM., et al J. Phys. Chem., 1996, 100, 13121-13131を参照のこと。
【0097】
別の実施形態において、液体注入ALDは、本明細書で開示される少なくとも一つの金属錯体を基板表面上に蒸発および/または通過させることによって金属含有膜を形成するために使用され、少なくとも一つの金属錯体はバブラーによる蒸気吸引とは対照的に、直接液体注入によって反応チャンバに送達される。液体注入ALDプロセスについては、例えばPotter R. J., et al., Chem. Vap. Deposition, 2005, 11(3), 159-169を参照のこと。
【0098】
本明細書中に開示される金属錯体のためのALD成長条件の例は以下を含むが、これらに限定されない:
a.基板温度:0~400℃
b.エバポレータ温度(金属前駆体温度):0~200℃
c.反応器圧力:0~100Torr
d.アルゴンまたは窒素キャリアガスの流量:0~500sccm
e.反応ガス流量:0~500sccm
f.パルスシーケンス(金属錯体/パージ/反応ガス/パージ):チャンバの大きさによって異なる
g.サイクル数:所望の膜厚によって異なる
別の実施形態において、光アシストALDは、本明細書で開示される少なくとも一つの金属錯体を基板表面上に蒸発および/または通過させることによって金属含有膜を形成するために使用される。光アシストALDプロセスについては、例えば、米国特許第4581249号を参照のこと。
【0099】
別の実施形態において、プラズマアシストALDまたはプラズマ促進ALDは、本明細書で開示される少なくとも一つの金属錯体を基板表面上に蒸発および/または通過させることによって金属含有膜を形成するために使用される。
【0100】
別の実施形態において、金属含有膜を基板表面上に形成する方法は、以下を含む:ALDプロセス中に、本明細書に記載の実施形態の一つ以上に係る気相の金属錯体に基板を曝露することにより、金属中心(例えば、ニッケル)によって表面に結合した金属錯体を含む層を表面上に形成させる工程;ALDプロセス中に、共反応物と結合した金属錯体を有する基板を曝露することにより、結合した金属錯体と共反応物との間で交換反応を生じ、これにより、結合した金属錯体を解離させ、基板表面上に元素金属の第1の層を生成する工程;および、上記ALDプロセスおよび上記処理を順次繰り返す工程。
【0101】
反応時間、温度、および圧力は、金属表面相互作用を生成し、基板の表面上に層を形成するように選択される。ALD反応の反応条件は、金属錯体の特性に基づいて選択される。蒸着は、大気圧で実施することができるが、より一般的には減圧で実施される。金属錯体の蒸気圧は、そのような用途において実用的であるために十分に低くあるべきである。基板温度は、表面の金属原子間の結合を保ち、ガス反応物の熱分解を防止するために十分に高くあるべきである。しかし、基板温度は、原料物質(すなわち、反応物質)を気相に保ち、表面反応に十分な活性化エネルギーを提供するのに十分な高さであるべきである。適切な温度は、使用される特定の金属錯体および圧力を含む種々のパラメーターに依存する。本明細書に開示されるALD蒸着法で使用するための特定の金属錯体の特性は、当該技術分野で公知の方法を使用して評価することができ、反応に適切な温度および圧力の選択を可能にする。一般に、より低い分子量および配位子球の回転エントロピーを増加させる官能基の存在は、典型的な送達温度および増加した蒸気圧で液体を生じる融点をもたらす。
【0102】
蒸着法で使用するための金属錯体は、十分な蒸気圧、選択された基板温度での十分な熱安定性、および薄膜中の望ましくない不純物を含まずに基板表面上で反応を生じさせるのに十分な反応性、の要件の全てを有するであろう。十分な蒸気圧は、供給源の化合物の分子が完全な自己飽和反応を可能にするのに十分な濃度で基板表面上に存在することを確実にする。十分な熱安定性は、供給源の化合物が薄膜中に不純物を生成する熱分解を受けないことを確実にする。
【0103】
したがって、これらの方法において利用される本明細書に開示される金属錯体は、液体、固体、または気体であってもよい。典型的には、金属錯体は、プロセスチャンバへの蒸気の一貫した輸送を可能にするのに十分な蒸気圧を有する周囲温度にて液体または固体である。
【0104】
一実施形態において、元素金属、金属窒化物、金属酸化物、または金属ケイ化物の膜は、本明細書に開示されるような少なくとも一つの金属錯体を、独立して、または共反応物と組み合わせて、蒸着のために送達することによって形成され得る。この点に関して、共反応物は、独立して、または少なくとも一つの金属錯体と組み合わせて、基板表面上に蒸着または送達または通過させることができる。容易に理解されるように、使用される特定の共反応物が、得られる金属含有膜の種類を決定するであろう。このような共反応物の例として、水素、水素プラズマ、酸素、空気、水、アルコール、H、NO、アンモニア、ヒドラジン、ボラン、シラン、オゾン、またはそれらの任意の二つ以上の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好適なアルコールの例として、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、t-ブタノール等が挙げられるが、これらに限定されない。好適なボランの例として、ボラン、ジボラン、トリボラン等の水素化(すなわち、還元)ボランが含まれるが、これらに限定されない。好適なシランの例として、シラン、ジシラン、トリシラン等の水素化シランが挙げられるが、これらに限定されない。好適なヒドラジンの例として、ヒドラジン(N)、メチルヒドラジン、tert-ブチルヒドラジン、N,N-またはN,N’-ジメチルヒドラジン等の1個以上のアルキル基で任意に置換されたヒドラジン(すなわち、アルキル置換ヒドラジン)、フェニルヒドラジン等の1個以上のアリール基で任意に置換されたヒドラジン(すなわち、アリール置換ヒドラジン)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
一実施形態において、本明細書に開示される金属錯体が金属酸化物膜を提供するために、酸素含有共反応物のパルスと交互のパルスで基板表面に送達される。そのような酸素含有共反応物の例には、HO、H、O、オゾン、空気、i-PrOH、t-BuOH、またはNO等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
他の実施形態において、共反応物は、還元剤、例えば水素を含む。この実施形態において、元素金属膜が得られる。特定の実施形態において、元素金属膜は、純金属からなるか、または本質的に純金属からなる。このような純金属膜は、約80、85、90、95、または98%を超える金属を含有し得る。さらにより具体的な実施形態において、元素金属膜は、スカンジウム膜またはイットリウム膜である。
【0107】
他の実施形態において、本明細書に開示される少なくとも一つの金属錯体を、独立して、または、限定はしないがアンモニア、ヒドラジン、および/または他の窒素含有化合物(例えば、アミン)等の共反応物と組み合わせて、蒸着のために反応チャンバへ送達することによって金属窒化物膜を形成するために、共反応物が使用される。複数のこのような共反応物が使用され得る。さらなる実施形態において、金属窒化物膜は窒化ニッケル膜である。
【0108】
別の実施形態において、混合金属膜は、本明細書に開示される少なくとも一つの金属錯体を、本明細書に開示される少なくとも一つの金属錯体の金属以外の金属を含む第2の金属錯体と組み合わせて蒸発させるが、必ずしも同時に蒸発するとは限らない気相蒸着プロセスによって形成され得る。
【0109】
特定の実施形態において、本技術の方法は、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)や、シリコンチップ等の基板上の記憶および論理の用途のための相補型金属酸化物半導体(CMOS)等の用途に利用される。
【0110】
本明細書中に開示される金属錯体のいずれも、元素金属、金属酸化物、金属窒化物、および/または金属ケイ化物の薄膜を調製するために使用され得る。このような膜は、酸化触媒、アノード材料(例えば、SOFCまたはLIBアノード)、伝導層、センサー、拡散障壁/コーティング、超および非超伝導材料/コーティング、摩擦コーティング、および/または保護コーティングとしての用途を見出し得る。膜特性(例えば、導電率)は、蒸着に使用される金属、共反応物および/または共錯体の有無、生成される膜の厚さ、成長および後続プロセスの間に使用されるパラメーターおよび基板等の多くの要因に依存することが当業者には理解される。
【0111】
熱駆動CVDプロセスと反応性駆動ALDプロセスとの間には根本的な相違が存在する。最適な性能を達成するための前駆体特性の要件が大きく異なる。CVDでは、必要な化学種を基板上に蒸着させるための錯体のクリーンな熱分解が重要である。しかしながら、ALDにおいては、このような熱分解は何としても回避されなければならない。ALDにおいて、投入試薬間の反応は、表面で迅速でなければならず、その結果、基板上に標的物質が形成される。しかし、CVDでは、化学種間のそのような反応は、基板に到達する前のそれらの気相混合に起因して弊害があり、粒子形成につながる可能性がある。一般に、良好なCVD前駆体は、CVD前駆体に対する緩和された熱安定性要件のために、必ずしも良好なALD前駆体を形成しないことが認められている。本発明において、式Iの金属錯体は、ALD前駆体として機能するために十分な熱安定性および選択された共反応物に対する反応性を有し、それらは、CVDプロセスを通じて所望の材料を形成するために、より高い温度でクリーンな分解経路も有する。したがって、式Iに記載される金属錯体は有利に、実行可能なALDおよびCVD前駆体として有用である。
【0112】
本明細書を通して、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「一つ以上の実施形態」または「実施形態」の参照は、本実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造、物質、または特性が本技術の少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通して様々な場所における「一つ以上の実施形態において」、「特定の実施形態において」、「一実施形態において」、または「実施形態において」等の語句の出現は、必ずしも本発明の同じ実施形態を指すとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、物質、または特性は、一つ以上の実施形態において任意の好適な方法で組み合わせることができる。
【0113】
本明細書中の本技術は特定の実施形態を参照して記載されたが、これらの実施形態は本技術の原理および応用を単に例示しているに過ぎないことを理解されたい。本技術分野の精神および範囲から逸脱することなく、本技術分野の方法および装置に様々な修正および変形を行うことができることは、当業者には明らかであろう。したがって、本技術は、添付の特許請求の範囲およびそれらの同等の適用範囲内にある修正および変形を含むことが意図される。したがって、本技術は一般的に記載されるが、例示を目的として提供され、限定を意図していない以下の実施例を参考にすることによってより容易に理解されるのであろう。
【0114】
これに加えて、またはこれに代えて、本発明は、以下の実施形態の一つ以上を含むことができる。
【0115】
実施形態1。構造が式Iに対応する金属錯体:[(RCp](I);
式中、Mは、3族金属またはランタニド(例えば、スカンジウム、イットリウムおよびランタン)であり;Rは、それぞれ独立して、水素、C~C-アルキルまたはシリルであり;nは1、2、3、4、または5であり;Cpはシクロペンタジエニル環であり;そしてLはNR;N(SiR;3,5-R-CHN;1-(R32)C;1-R33-3-R34-C;およびR35、R36-CHO;R12N=C-C-NR13;R1415N-CH-CH-NR16-CH-CH-NR1718;およびR19O-CH-CH-NR20-CH-CH-OR21からなる群から選択され;式中、R、R、R、R、R、R、R、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、およびR21は、それぞれ独立して、水素またはC~C-アルキルであり、R32、R33、R34、R35およびR36は、それぞれ独立して、アルキルまたはシリルであり;任意に、式中Mがイットリウムであり、Lが3,5-R-CHNである場合、RはC~C-アルキルまたはシリルであり;および任意に、式中Mがイットリウムであり、LがN(SiRであるとき、nは1、2、3、または4である。
【0116】
実施形態2。Rは、それぞれ独立して、水素、C~C-アルキルまたはシリルであり;および、R、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素またはC~C-アルキルであり;およびR32、R33、R34、R35およびR36は、それぞれ独立して、C~C-アルキルまたはシリルである、実施形態1の金属錯体。
【0117】
実施形態3。Rは、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、プロピルまたはシリルであり;好ましくは、水素、メチルまたはエチルであり、より好ましくは、メチルであり;および、R、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、メチル、エチルまたはプロピルであり;好ましくは、水素、メチルまたはエチルであり、より好ましくは、水素またはメチルであり;およびR32、R33、R34、R35およびR36は、それぞれ独立して、C~C-アルキルまたはシリルであり、好ましくはメチル、エチル、プロピルまたはシリルであり、より好ましくはSiMeである、実施形態1または2に記載の金属錯体。
【0118】
実施形態4。Rは、それぞれ独立して、水素、C~C-アルキルまたはシリルであり;LはNRであり、RおよびRは、それぞれ独立して、水素またはC~C-アルキルである、前記実施形態のいずれか一つに記載の金属錯体。
【0119】
実施形態5。Rは、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、プロピルまたはシリルであり、好ましくは、水素、メチルまたはエチルであり、より好ましくは、メチルであり;RおよびRは、それぞれ独立して、水素、メチル、エチルまたはプロピルであり、好ましくは、水素、メチルまたはエチルである、実施形態4に記載の金属錯体。
【0120】
実施形態6。Rは、それぞれ独立して、水素、C~C-アルキルまたはシリルであり;および、LはN(SiRであり、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素またはC~C-アルキルである、前記実施形態のいずれか一つに記載の金属錯体。
【0121】
実施形態7。Rは、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、プロピルまたはシリルであり、好ましくは、水素、メチルまたはエチルであり、より好ましくは、メチルであり;および、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、メチル、エチルまたはプロピルであり、好ましくは、水素、メチルまたはエチルである、実施形態6に記載の金属錯体。
【0122】
実施形態8。Rは、それぞれ独立して、水素、C~C-アルキルまたはシリルであり;および、Lは3,5-R-CHNであり、RおよびRは、それぞれ独立して、水素またはC~C-アルキルである、前記実施形態のいずれか一つに記載の金属錯体。
【0123】
実施形態9。Rは、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、プロピルまたはシリルであり、好ましくは、水素、メチルまたはエチルであり、より好ましくは、メチルである、実施形態8に記載の金属錯体。
【0124】
実施形態10。Rは、それぞれ独立して、水素、C~C-アルキルまたはシリルであり、好ましくは、水素、メチル、エチルまたはシリルであり;および、Lは1-(R32)Cであり、R32はC~C-アルキルまたはシリルであり、好ましくは、R32は、メチル、エチルまたはシリルであり、より好ましくは、Lは1-(SiMe)Cである、前記実施形態のいずれか一つに記載の金属錯体。
【0125】
実施形態11。Rは、それぞれ独立して、水素、C~C-アルキルまたはシリルであり、好ましくは、水素、メチル、エチルまたはシリルであり;および、Lは1-R33-3-R34-Cであり、R33およびR34は、それぞれ独立して、C~C-アルキルまたはシリルであり、好ましくは、R33およびR34は、それぞれ独立して、メチル、エチルまたはシリルであり、より好ましくは、Lは1,3-ビス-(SiMeである、前記実施形態のいずれか一つに記載の金属錯体。
【0126】
実施形態12。Rは、それぞれ独立して、水素、C~C-アルキルまたはシリルであり、好ましくは、水素、メチル、エチルまたはシリルであり;および、LはR35、R36-CHOであり、R35およびR36は、それぞれ独立して、C~C-アルキルまたはシリルであり、好ましくは、R35およびR36は、それぞれ独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチルまたはシリルであり、より好ましくは、Lは6-メチル-2,4-ヘプタンジオネート、すなわち、Me,iBu-CHOである、前記実施形態のいずれか一つに記載の金属錯体。
【0127】
実施形態13。錯体がSc(MeCp)[1-(SiMe)C];Sc(MeCp)[1,3-ビス-(SiMe];Sc(MeCp)[N(SiMe];Sc(MeCp)(3,5-Me-CHN);Sc(MeCp)(MeCp)(Me,iBu-CHO)であり、好ましくは、Sc(MeCp)[1-(SiMe)C];Sc(MeCp)[1,3-ビス-(SiMe];Sc(MeCp)[N(SiMe];Sc(MeCp)(3,5-Me-CHN)である前記実施形態のいずれか一つに記載の金属錯体。
【0128】
実施形態14。構造が式IIに対応する金属錯体:[((RCp)(II)、式中、Mは、3族金属またはランタニド(例えば、スカンジウム、イットリウムおよびランタン)であり;Rは、それぞれ独立して、水素、またはC~C-アルキルであり;nは1、2、3、4、または5であり;Cpはシクロペンタジエニル環であり;およびLは、Cl;F;Br;I;3,5-R1011-CHN;R22N=C-C-NR23;R2425N-CH-NR26-CH-NR2728およびR29O-CH-NR30-CH-OR31からなる群から選択され;R10、R11、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、およびR31は、それぞれ独立して、水素またはC~C-アルキルであり、任意に、Mがスカンジウムであり、LがClである場合、RはC~C-アルキルである。
【0129】
実施形態15。Rは、それぞれ独立して、C~C-アルキルである、実施形態14に記載の金属錯体。
【0130】
実施形態16。Rは、それぞれ独立して、水素またはC~C-アルキルであり、好ましくは、水素、メチル、エチルまたはプロピルであり、好ましくは、水素、メチルまたはエチルであり、より好ましくは、メチルである、実施形態14または15に記載の金属錯体。
【0131】
実施形態17。Mは、スカンジウムであり;Rは、それぞれ独立して、C~C-アルキルであり、好ましくは、メチル、エチルまたはプロピルであり、より好ましくは、メチルであり;および、好ましくは、LはClである、実施形態14、15または16に記載の金属錯体。
【0132】
実施形態18。Mは、イットリウムであり;Rは、それぞれ独立して、C~C-アルキルであり、好ましくは、メチル、エチルまたはプロピルであり;より好ましくは、メチルまたはエチルであり;および、好ましくは、Lは、3,5-R1011-CHNであり、Rは、それぞれ独立している、実施形態14、15または16に記載の金属錯体。
【0133】
実施形態19。錯体が[Sc(MeCp)Cl]];および[Y(MeCp)(3,5-MePn-CHN)]である、実施形態14、15、16、17または18に記載の金属錯体。
【0134】
実施形態20。気相蒸着プロセスにより金属含有膜を形成する方法であって、前記実施形態のいずれか一つに係る少なくとも一つの金属錯体を蒸発させる工程を含む方法。
【0135】
実施形態21。前記気相蒸着プロセスが、化学気相蒸着、好ましくはパルス化学気相蒸着、連続フロー化学気相蒸着、および/または液体注入化学気相蒸着である、実施形態20に記載の方法。
【0136】
実施形態22。前記気相蒸着プロセスは、原子層堆積、好ましくは液体注入原子層堆積またはプラズマ促進原子層堆積である、実施形態20に記載の方法。
【0137】
実施形態23。前記金属錯体は、酸素供給源のパルスと交互のパルスで基板に送達され、好ましくは前記酸素供給源がHO、H、O、オゾン、空気、i-PrOH、t-BuOH、およびNOからなる群より選択される、実施形態20、21または22のいずれか一つに記載の方法。
【0138】
実施形態24。水素、水素プラズマ、酸素、空気、水、アンモニア、ヒドラジン、ボラン、シラン、オゾン、およびそれらの任意の二つ以上の組み合わせからなる群より選択される少なくとも一つの共反応物を蒸発させる工程をさらに含み、好ましくは、少なくとも一つの共反応物は、ヒドラジン(例えば、ヒドラジン(N)、N,N-ジメチルヒドラジン)である、実施形態20、21、22または23のいずれか一つに記載の方法。
【0139】
実施形態25。前記方法は、DRAMまたはCMOSの用途に使用される、実施形態20、21、22、23または24のいずれか一つに記載の方法。
【0140】
〔実施例〕
特に断りのない限り、全ての合成操作は当技術分野で一般に知られている空気反応性物質を取り扱うための技術(例えば、シュレンク技術)を用いて、不活性雰囲気(例えば、精製窒素またはアルゴン)中で行われる。
【0141】
〔実施例1:錯体11([Sc(MeCp)Cl])の調製〕
マグネチックスターラーを備えた500mLのシュレンクフラスコに、ScCl(15.5g、0.102mol)およびKMeCp(24.2g、0.205mol)を充填し、続いて無水ジエチルエーテル(200mL)を充填した。混合物を室温(18℃~24℃)で12時間、窒素雰囲気下で撹拌し、栗色の懸濁液を得た。溶媒を加圧下で除去し、得られた固体を5×50mLのトルエンで抽出し、中程度のフリットを通して濾過した。濾液から溶媒を減圧下で除去し、最終生成物を黄色の粉末として得た(16.4g、0.0344mol、収率67%)。生成物のH NMR(C):δ2.02(12H、MeC)、6.09(8H、MeC)、6.24(8H、MeC)。生成物の13C NMR(C):δ15.4(MeC)、114.4(MeC)、116.0(MeC)、124.9(MeC)。
【0142】
〔実施例2:錯体3(Sc(MeCp)[N(SiMe])の調製〕
マグネチックスターラーを備えた250mLのシュレンクフラスコに、[Sc(MeCp)Cl](4.6g、0.0098mol)およびKN(SiMe(3.9g、0.020mol)を充填し、続いて無水ジエチルエーテル(100mL)を充填した。混合物を室温(18℃~24℃)で12時間、窒素雰囲気下で撹拌し、桃色の懸濁液を得た。溶媒を加圧下で除去し、得られた固体を3×30mLのヘキサンで抽出し、中程度のフリットを通して濾過した。濾液から溶媒を減圧下で除去し、最終生成物を黄色の粉末として得た(6.7g、0.018mol、収率90%)。生成物のH NMR(C):δ1.10(18H、SiMe)、2.04(6H、MeC)、5.85(4H、MeC)、6.00(4H、MeC)。生成物の13C NMR(C):δ4.2(SiMe)、15.7(MeC)、114.3(MeC)、115.9(MeC)、125.0(MeC)。
【0143】
〔実施例3:錯体2(Sc(MeCp)[1,3-ビス(トリメチルシリル)アリル])の合成〕
マグネチックスターラーを備えた250mLのシュレンクフラスコに、[Sc(MeCp)Cl](1.0g、2.1mmol)およびK(1,3-ビス-トリメチルシリル-アリル)(1.05g、4.7mmol)を充填し、続いて無水ジエチルエーテル(100mL)を加えた。混合物を室温(18℃~24℃)で12時間、窒素雰囲気下で撹拌し、橙色の懸濁液を得た。溶媒を減圧下で除去し、得られた固体を3×30mLのヘキサンで抽出し、中程度のフリットを通して濾過した。濾液から溶媒を減圧下で除去し、最終生成物を赤色の液体として得た(1.0g、2.6mmol、収率62%)。生成物のH NMR(C)、δ0.04(18H、SiMe)、1.84(3H、MeC)、1.94(3H、MeC)、4.90(2H、アリルCH(TMS))、5.97(2H、MeC)、6.04(4H、MeC)、6.29(2H、MeC)、7.67(1H、アリルCH)。
【0144】
〔実施例4:錯体1(Sc(MeCp)(1-トリメチルシリルアリル))の合成〕
マグネチックスターラーを備えた250mLのシュレンクフラスコに、[Sc(MeCp)Cl](5.2g、10.9mmol)およびK(トリメチルシリル-アリル)(3.3g、21.8mmol)を充填し、続いて無水ジエチルエーテル(100mL)を加えた。混合物を室温(18℃~24℃)で12時間、窒素雰囲気下で撹拌し、橙色の懸濁液を得た。溶媒を減圧下で除去し、得られた固体を3×30mLのペンタンで抽出し、中程度のフリットを通して濾過した。濾液から溶媒を減圧下で除去し、最終生成物を赤色の液体として得た(3.7g、11.7mmol、収率54%)。生成物のH NMR(C):δ-0.02(9H、SiMe)、1.82(6H、MeC)、2.29(1H、アリルCH)、4.15(1H、アリルCH)、4.73(1H、アリルCH(TMS))、5.94(8H、MeC)、7.47(1H、アリルCH)。
【0145】
〔実施例5:錯体4(Sc(MeCp)(3,5-ジメチルピラゾラート))の合成〕
マグネチックスターラーを備えた500mLのシュレンクフラスコに、[Sc(MeCp)Cl](12.0g、25.1mmol)およびKMePz(6.75g、50.3mmol)を充填し、続いて無水THF(150mL)を加えた。混合物を室温(18℃~24℃)で12時間、窒素雰囲気下で撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、得られた黄色の粘着性固体を5×20mLのトルエンで抽出し、中程度のフリットを通して濾過した。濾液から溶媒を減圧下で除去し、赤色の油状物を得た。さらに真空下で留去して、最終生成物を淡黄色の液体として得た(10.7g、35.9mmol、収率72%)。生成物のH NMR(C):δ1.85(6H、MeC)、2.28(6H、MePz)、5.84(4H、MeC)、5.96(1H、MePz)、6.20(4H、MeC)。
【0146】
〔実施例6:錯体8(Y(MeCp)(3-メチル-5-ペンチル-ピラゾラート))の合成〕
マグネチックスターラーを備えた500mLのシュレンクフラスコに、[Y(MeCp)Cl](9.33g、16.5mmol)およびK(Me,Pn)Pz(6.28g、33.0mmol)を充填し、続いて無水THF(150mL)を加えた。混合物を室温(18℃~24℃)で12時間、窒素雰囲気下で撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、得られた黄色の粘着性固体を5×20mLのトルエンで抽出し、中程度のフリットを通して濾過した。濾液から溶媒を減圧下で除去し、赤色の油状物を得た。さらに真空下で留去して、最終生成物を淡黄色の液体として得た(7.7g、19.3mmol、収率58%)。生成物のH NMR(C):δ0.94(3H、ペンチル)、1.40(4H、ペンチル)、1.75(2H、ペンチル)、2.16(6H、MeC)、2.17(3H、Me,PnPz)、2.65(2H、ペンチル)、5.66(4H、MeC)、5.90(1H、Me,PnPz)、5.96(4H、MeC)。
【0147】
〔実施例7:錯体9(Sc(MeCp)(6-メチル-2,4-ヘプタンジオネート))の合成〕
マグネチックスターラーを備えた500mLのシュレンクフラスコに、[Sc(MeCp)Cl](1.0g、1.8mmol)およびK(6-メチル-2,4-ヘプタンジオネート)(0.67g、3.7mmol)を充填し、続いて無水THF(150mL)を加えた。混合物を室温(18℃~24℃)で12時間、窒素雰囲気下で撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、得られた黄色の粘着性固体を3×20mLのトルエンで抽出し、中程度のフリットを通して濾過した。濾液から溶媒を減圧下で除去し、橙色の油状物を得た(0.8g、2.1mmol、収率58%)。生成物のH NMR(C):δ0.89(6H、Bu)、1.71(3H、Me)、1.89(2H、Bu)、2.03(6H、MeC)、2.04(1H、Bu)、5.24(1H、ジケトネート)、5.85(4H、MeC)、6.05(2H、MeC)、6.14(2H、MeC)。
【0148】
〔実施例8:錯体10(Y(MeCp)(6-メチル-2,4-ヘプタンジオネート))の合成〕
マグネチックスターラーを備えた500mLのシュレンクフラスコに、[Y(MeCp)Cl](1.5g、2.4mmol)およびK(6-メチル-2,4-ヘプタンジオネート)(0.89g、4.9mmol)を充填し、続いて無水THF(150mL)を充填した。混合物を室温(18℃~24℃)で12時間、窒素雰囲気下で撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、得られた黄色の粘着性固体を3×20mLのトルエンで抽出し、中程度のフリットを通して濾過した。濾液から溶媒を減圧下で除去し、橙色の油状物を得た(1.2g、2.9mmol、収率60%)。生成物のH NMR(C):δ0.89(6H、Bu)、1.72(3H、Me)、1.91(2H、Bu)、2.04(1H、Bu)、2.10(6H、MeC)、5.25(1H、ジケトネート)、5.95(4H、MeC)、6.10(2H、MeC)、6.15(2H、MeC)。
【0149】
〔実施例9:錯体4(Sc(MeCp)(3,5-ジメチル-ピラゾラート))および水を用いたSc膜のALD〕
Sc(MeCp)(3,5-ジメチル-ピラゾラート)をステンレス鋼バブラー中で100~115℃に加熱し、キャリアガスとして約20sccmの窒素を用いてALD反応器中に送達し、約2秒間パルスし、続いて約28~58秒間パージした。次いで、水蒸気のパルス(1秒)を、室温の水シリンダから送出し、その後、60秒間の窒素パージを行った。蒸着チャンバと水シリンダとの間にはニードルバルブが存在し、適度な水蒸気量となるように調整した。酸化スカンジウムは自然酸化物SiOの薄い層を有するシリコンチップ上に、約175~300℃で300サイクルまで堆積させた。この膜を、窒素パージしながら真空下で反応器内を約60℃に冷却した後、取り出した。60~260Åの膜厚が得られ、予備結果は1オングストローム/サイクル以下の成長速度を示した。XPS(X線光電子分光法)解析により、XPS解析の間に除去されたNおよびC汚染物質を有する酸化スカンジウムが最上面上に存在することを確認した。図1~14のXPSデータは、一旦スパッタリングによって表面の汚染が除去されると、膜が所望のスカンジウムおよび酸素を除く任意の元素を1%以下しか有していないことを示している。バルクにはScとOのみが検出され、測定された化学量論はScの理論組成に一致した。
【0150】
〔実施例10:錯体12([Y(MeCp)(3,5-MePn-CHN)])を使用したY膜のALD〕
<方法の概略>
[Y(MeCp)(3,5-MePn-CHN)]をステンレス鋼バブラー中で130~180℃に加熱し、キャリアガスとして窒素を用いて、クロスフローALD反応器に送達し、水を使用してALDによって堆積させた。HOは、室温でステンレス鋼アンプルからの蒸気吸引によって送達した。14~17Åの厚さの自然SiO層を有するシリコンチップを基板として用いた。堆積したままの膜を、光学エリプソメータを用いた厚さおよび光学特性の測定のために使用した。選択されたサンプルは、膜組成および不純物濃度についてXPSによって分析された。
【0151】
<実施例10a>
[Y(MeCp)(3,5-MePn-CHN)]を170℃に加熱し、キャリアガスとして20sccmの窒素を用いて、ALD反応器に送達し、バブラーから7秒間パルスし、続いて20秒間のNパージを行い、その後、それぞれのALDサイクルにおいて0.015秒パルスのHOおよび90秒間のNパージを行い、125~250℃の複数の温度で200サイクル以上堆積させた。堆積したままの膜を、窒素パージ下、反応器内で80℃以下に冷却した後、取り出した。150~420Åの厚さの薄膜が堆積した。固定された反応器入口位置でのサイクル当たりの成長速度のデータを、図15にプロットした。
【0152】
図15のカーブは、最適化されていないHO ALDプロセスからのYの成長速度は同じ蒸着条件の下で温度依存性があるように見えることを示している。温度が高ければ高いほど、成長速度は速くなる。さらなる試験は、より高い温度での成長速度がHOパージ時間によって影響されるようであることを明らかにした。このことは、Y(OH)の最初の生成および/またはより高い温度でのY膜によるHOの強い吸着に起因し得る。例えば、200℃で120秒間のHOパージを行っても、飽和には達しなかったが、HOパージ時間への依存性は、150℃以下では図16に示すように、はるかに小さかった。
【0153】
<実施例10b>
[Y(MeCp)(3,5-MePn-CHN)]を170~176℃に加熱し、キャリアガスとして20sccmの窒素を用いてALD反応器に送達し、バブラーから3~13秒間パルスし、様々な前駆体の用量を生成し、続いて60秒間のNパージを行い、次いでそれぞれのALDサイクルで0.015秒間のHOパルスおよび30秒間のNパージを行い、135℃で350サイクル堆積させた。前駆体/キャリアガスフロー方向に沿って、クロスフロー反応器内の前駆体入口、反応器中心、および前駆体出口の三つの異なった位置で膜の厚さを監視した。サイクル当たりの成長速度データを、図17にプロットした。
【0154】
前駆体量に伴う約0.79Å/サイクル(GPC)での成長速度の飽和、ならびに三つの異なる位置での成長速度の収束は、135℃でのプロセスが成長速度に対するCVD成分のわずかな寄与を有する真のALDプロセスであることを示唆する。最適化した飽和成長条件下では、クロスフロー反応器の6~7インチ径の領域にわたって≦±1.3%の優れた厚さの均一性が達成された。
【0155】
蒸着温度を含む完全なALDウインドウはまだ決定されていない。この前駆体は、≧250℃の高温下で熱的に安定であった。
【0156】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、発行された特許、および他の文書は、あたかもそれぞれの個々の刊行物、特許出願、発行された特許、または他の文書が参照によりその全体が組み込まれるように具体的かつ個々に示されるかのように、参照により本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれる文に含まれる定義は、本開示における定義と矛盾する範囲で除外される。
【0157】
「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含む(comprising)」という用語は、排他的ではなく包括的に解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0158】
図1】Sc(MeCp)(3,5-ジメチル-ピラゾラート)を用いたSc膜のXPS(X線光電子分光法)解析を示す。
図2】Sc(MeCp)(3,5-ジメチル-ピラゾラート)を用いたSc膜のXPS解析を示す。
図3】Sc(MeCp)(3,5-ジメチル-ピラゾラート)を用いたSc膜のXPS解析を示す。
図4】Sc(MeCp)(3,5-ジメチル-ピラゾラート)を用いたSc膜のXPS解析を示す。
図5】Sc(MeCp)(3,5-ジメチル-ピラゾラート)を用いたSc膜のXPS解析を示す。
図6】Sc(MeCp)(3,5-ジメチル-ピラゾラート)を用いたSc膜のXPS解析を示す。
図7】Sc(MeCp)(3,5-ジメチル-ピラゾラート)を用いたSc膜のXPS解析を示す。
図8】Sc(MeCp)(3,5-ジメチル-ピラゾラート)を用いたSc膜のXPS解析を示す。
図9】Sc(MeCp)(3,5-ジメチル-ピラゾラート)を用いたSc膜のXPS解析を示す。
図10】Sc(MeCp)(3,5-ジメチル-ピラゾラート)を用いたSc膜のXPS解析を示す。
図11】Sc(MeCp)(3,5-ジメチル-ピラゾラート)を用いたSc膜のXPS解析を示す。
図12】Sc(MeCp)(3,5-ジメチル-ピラゾラート)を用いたSc膜のXPS解析を示す。
図13】Sc(MeCp)(3,5-ジメチル-ピラゾラート)を用いたSc膜のXPS解析を示す。
図14】Sc(MeCp)(3,5-ジメチル-ピラゾラート)を用いたSc膜のXPS解析を示す。
図15】ALDにおける、[Y(MeCp)(3,5-MePn‐CHN)]を蒸着する場合の蒸着温度に対するサイクル当たりのYの成長速度の依存性を示す。
図16】ALDにおける、125℃、150℃および200℃で[Y(MeCp)(3,5-MePn‐CHN)]を蒸着する場合のHOパージ時間に対するサイクル当たりのYの成長速度の依存性を示す。
図17】前駆体/キャリアガスフロー方向に沿ったクロスフロー反応器内の三つの異なった位置である前駆体入口、反応器中心、および前駆体出口でのALDにおけるサイクル当たりのY成長速度を示す。
図1
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図17