IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭硝子株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-無アルカリガラス基板 図1
  • 特開-無アルカリガラス基板 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023627
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】無アルカリガラス基板
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/091 20060101AFI20240214BHJP
   C03B 5/225 20060101ALI20240214BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
C03C3/091
C03B5/225
G02F1/1333 500
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023209092
(22)【出願日】2023-12-12
(62)【分割の表示】P 2019208583の分割
【原出願日】2019-11-19
(31)【優先権主張番号】P 2019051570
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 元之
(72)【発明者】
【氏名】榎本 高志
(57)【要約】
【課題】減圧雰囲気下、溶融ガラスに含まれる泡を容易に除去できる無アルカリガラス基板を提供する。
【解決手段】酸化物基準の質量%表示で、SiO2:54~68%、Al23:10~25%、B23:1.8~5.5%、MgO+CaO+SrO+BaO:8~26%を含有する無アルカリガラス基板であって、β-OHが0.15~0.32mm-1であり、Cl含有量が0.15~0.25質量%であり、下記式(1)で表される泡成長指数Iが320以上であることを特徴とする無アルカリガラス基板。
I=590.5×[β-OH]+874.1×[Cl]-5.7×[B23]-33.3(1)
なお、式(1)中、[β-OH]は前記無アルカリガラス基板のβ-OH(mm-1)を示し、[Cl]は前記無アルカリガラス基板のCl含有量(質量%)を示し、[B23]は前記無アルカリガラス基板のB23含有量(質量%)を示す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物基準の質量%表示で、SiO2:54~68%、Al23:10~25%、B23:1.8~5.5%、MgO+CaO+SrO+BaO:8~26%を含有する無アルカリガラス基板であって、
β-OHが0.15~0.32mm-1であり、Cl含有量が0.15~0.25質量%であり、
下記式(1)で表される泡成長指数Iが320以上であることを特徴とする無アルカリガラス基板。
I=590.5×[β-OH]+874.1×[Cl]-5.7×[B23]-33.3(1)
なお、式(1)中、[β-OH]は前記無アルカリガラス基板のβ-OH(mm-1)を示し、[Cl]は前記無アルカリガラス基板のCl含有量(質量%)を示し、[B23]は前記無アルカリガラス基板のB23含有量(質量%)を示す。
【請求項2】
前記式(1)で表される泡成長指数Iが400以下である、請求項1に記載の無アルカリガラス基板。
【請求項3】
歪点が690~750℃である、請求項1または2に記載の無アルカリガラス基板。
【請求項4】
酸化物基準の質量%表示で、MgO:0~12%、CaO:0~15%、SrO:0~16%、BaO:0~15%を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の無アルカリガラス基板。
【請求項5】
酸化物基準の質量%表示で、SiO2:58.5~67.5%、Al23:18~24%、B23:1.8~5.5%、MgO:4~8.5%、CaO:3~8.5%、SrO:2~10%、BaO:0~2.5%を含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の無アルカリガラス基板。
【請求項6】
酸化物基準の質量%表示で、SiO2:57~67.5%、Al23:17~25%、B23:1.8~5.5%、MgO:2~8.5%、CaO:1.5~8%、SrO:0.5~8.5%、BaO:0~1%を含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の無アルカリガラス基板。
【請求項7】
ヤング率が78GPa以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の無アルカリガラス基板。
【請求項8】
板厚が0.1mm~0.5mmである、請求項1~7のいずれか一項に記載の無アルカリガラス基板。
【請求項9】
基板サイズが短辺2100mm以上であり、長辺2400mm以上である、請求項1~8のいずれか一項に記載の無アルカリガラス基板。
【請求項10】
基板サイズが短辺2900mm以上であり、長辺3200mm以上である、請求項1~9のいずれか一項に記載の無アルカリガラス基板。
【請求項11】
泡径100μm超の泡密度が0.06個/kg以下である、請求項1~10のいずれか一項に記載の無アルカリガラス基板。
【請求項12】
前記無アルカリガラス基板を溶融し、1450℃で保持しながら、大気圧から44kPaまで減圧速度一定で20分で減圧し、44kPaで5分間保持したとき、
減圧を開始する前の1450℃の溶融ガラスに含まれる、径が0.1mm~0.3mmである泡を初期泡とし、
44kPaで5分間保持した後の前記初期泡に対応する泡を成長泡として、前記成長泡の径は、前記初期泡の径の3倍以上である、請求項1~11のいずれか一項に記載の無アルカリガラス基板。
【請求項13】
前記成長泡の径は、前記初期泡の径の15倍以下である、請求項12に記載の無アルカリガラス基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種ディスプレイ用ガラス基板として好適な無アルカリガラス基板に関する。
【背景技術】
【0002】
各種ディスプレイ用ガラス基板、特に表面に金属ないし酸化物薄膜等を形成するものには、アルカリ金属酸化物を含有していると、アルカリ金属イオンが薄膜中に拡散して膜特性を劣化させるため、実質的にアルカリ金属イオンを含まない無アルカリガラス基板の使用が好ましい。
【0003】
上記の目的で使用される無アルカリガラス基板は、所定の配合比で調合したガラス原料を溶解槽で加熱溶融してガラス化し、この溶融ガラスを清澄した後、フロート法やフュージョン法により、所定の板厚のガラスリボンに成形し、このガラスリボンを所定の形状に切断して得られる。
【0004】
溶融ガラスの清澄では、減圧雰囲気内に溶融ガラスを導入し、この減圧雰囲気下、連続的に流れる溶融ガラス流内の泡を大きく成長させて溶融ガラスに含まれる泡を浮上させ破泡させて除去し、その後減圧雰囲気から排出する減圧脱泡方法が知られている。例えば、特許文献1では、溶融ガラスを減圧脱泡槽において減圧脱泡する工程を具備するガラス製造方法が開示されている。
【0005】
ガラスのリサイクルや溶解性向上のために、使用済みガラスのカレットがガラス原料の一部として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2008/093580号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】田中千禾夫著「環境対応型のガラス溶融技術:特に脱泡技術について」NEW GLASS 83 Vol.21 No.4 (2006)、p.31-36
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年、液晶ディスプレイの大型化の需要が高まり、液晶ディスプレイに用いられるガラス基板の大型化が望まれている。大型のガラス基板を効率よく製造するには、溶融ガラスの流量を増やすのに、減圧脱泡装置の寸法を大きくする必要が生じる場合がある。特に、減圧脱泡装置に白金製または白金合金製の溶融ガラス導管(減圧脱泡槽、上昇管または下降管)が用いられる場合、設備の投資費用が大きくなるという問題がある。
【0009】
また、ガラス基板は、基板中の泡欠点の平均密度が同じであっても、基板サイズが大きくなるにつれ、製品歩留が低下する(非特許文献1の図参照)。そのため、製造するガラス基板を大型化するには、これまで以上に、基板中の泡密度を低減する必要がある。
【0010】
上述した問題点を解決するため、本発明は、減圧雰囲気下、溶融ガラスに含まれる泡を容易に除去できる無アルカリガラス基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するため、本発明は、酸化物基準の質量%表示で、SiO2:54~68%、Al23:10~25%、B23:0.1~5.5%、MgO+CaO+SrO+BaO:8~26%を含有する無アルカリガラス基板であって、
β-OHが0.15~0.35mm-1であり、Cl含有量が0.15~0.3質量%であり、
下記式(1)で表される泡成長指数Iが320以上であることを特徴とする無アルカリガラス基板を提供する。
I=590.5×[β-OH]+874.1×[Cl]-5.7×[B23]-33.3 (1)
なお、式(1)中、[β-OH]は前記無アルカリガラス基板のβ-OH(mm-1)を示し、[Cl]は前記無アルカリガラス基板のCl含有量(質量%)を示し、[B23]は前記無アルカリガラス基板のB23含有量(質量%)を示す。
【発明の効果】
【0012】
本発明の無アルカリガラス基板によれば、減圧雰囲気下、溶融ガラスに含まれる泡を容易に除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の無アルカリガラス基板を製造するのに用いるガラス製造装置の一構成例を示した断面図である。
図2】実験例1の減圧条件下における泡径の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[無アルカリガラス基板]
以下、本発明の一実施態様における無アルカリガラス基板について説明する。無アルカリガラスとは、Na2O、K2O等のアルカリ金属酸化物を実質的に含有しないガラスをいう。ここで、アルカリ金属酸化物を実質的に含有しないとは、アルカリ金属酸化物の含有量の合量が0.1質量%以下を意味する。
【0015】
本発明に係る無アルカリガラス基板は、酸化物基準の質量%表示で、SiO2:54~68%、Al23:10~25%、B23:0.1~5.5%、MgO+CaO+SrO+BaO:8~26%を含有する。
以下、本明細書において、酸化物基準の質量%を単に「%」と記載する。
【0016】
次に各成分の組成範囲について説明する。
SiO2が54%以上だと、無アルカリガラス基板の歪点が向上し、耐薬品性が良好となる。57%以上が好ましく、58.5%以上がより好ましく、59.5%以上がさらに好ましい。
SiO2が68%以下だと、ガラス溶解時の溶解性が良好となる。67.5%以下が好ましく、66%以下がより好ましく、65%以下がさらに好ましい。
【0017】
Al23が10%以上だと、分相が抑えられ、無アルカリガラス基板の歪点が向上する。16%以上が好ましく、17%以上がより好ましく、18%以上がさらに好ましい。
Al23が25%以下だと、ガラス溶解時の溶解性が良好となる。24%以下が好ましく、23%以下がより好ましく、22%以下がさらに好ましい。
【0018】
23が0.1%以上だと、ガラス溶解時の溶解性が良好となる。0.5%以上が好ましく、1%以上がより好ましく、1.8%以上がさらに好ましい。
23が5.5%以下だと、無アルカリガラス基板の歪点が向上する。4.5%以下が好ましく、3.0%以下がより好ましく、2.5%以下がさらに好ましい。
【0019】
MgO、CaO、SrO、BaOは合量(すなわち、MgO+CaO+SrO+BaO)で8%以上だと、ガラス溶解時の溶解性が良好となる。10%以上が好ましく、12%以上がより好ましく、14%以上がさらに好ましい。
MgO+CaO+SrO+BaOが26%以下だと、無アルカリガラス基板の歪点が向上する。24%以下が好ましく、22%以下がより好ましく、20%以下がさらに好ましい。
【0020】
MgOは、ガラス溶解時の溶解性を向上させるため含有できる。含有量は好ましくは2%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは4%以上、特に好ましくは4.5%以上である。
MgOが12%以下だと、分相が抑えられるため好ましい。8.5%以下がより好ましく、7.5%以下がさらに好ましく、7%以下が特に好ましい。
【0021】
CaOは、ガラス溶解時の溶解性を向上させるため含有できる。含有量は好ましくは1.5%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは4%以上である。
CaOが15%以下だと、CaO原料である石灰石(CaCO3)中の不純物であるリンの混入が少ないため好ましい。8.5%以下がより好ましく、8%以下がさらに好ましく、7%以下が特に好ましい。
【0022】
SrOは、ガラス溶解時の溶解性を向上させるため含有できる。含有量は好ましくは0.5%以上、より好ましくは2%以上、さらに好ましくは2.5%以上である。
SrOが16%以下だと、耐酸性が良好であるため好ましい。10%以下がより好ましく、8.5%以下がさらに好ましく、8%以下が特に好ましい。
【0023】
BaOは溶解性向上のために含有できる。含有量は好ましくは0.1%以上である。
BaOが15%以下だと、原料溶解時のセグリゲーションが生じにくくなるため好ましい。10%以下がより好ましく、8%以下がさらに好ましく、4%以下がよりさらに好ましく、2.5%以下が特に好ましい。
【0024】
本発明に係る無アルカリガラス基板の好適組成の第1態様は、
SiO2:58.5~67.5%、
Al23:18~24%、
23:0.1~1.7%、
MgO:4~8.5%、
CaO:3~8.5%、
SrO:2~10%、
BaO:0~2.5%を含有する。
【0025】
本発明に係る無アルカリガラス基板の好適組成の第2態様は、
SiO2:57~67.5%、
Al23:17~25%、
23:1.8~5.5%、
MgO:2~8.5%、
CaO:1.5~8%、
SrO:0.5~8.5%、
BaO:0~1%を含有する。
【0026】
本発明の無アルカリガラス基板は、β-OHが0.15~0.35mm-1である。β-OHは、ガラス中の水分量の指標として用いられる。β-OHが0.15mm-1以上だと、ガラス中の水分が減圧雰囲気下で泡の中に流入し、泡が成長しやすくなる。0.18mm-1以上が好ましく、0.2mm-1以上がより好ましく、0.22mm-1以上がさらに好ましい。
β-OHが0.35mm-1以下だと、泡の成長が大きくなりすぎるのを抑制できるため、減圧脱泡処理中に、泡層の肥大化による泡のすり抜けが生じることを抑制できる。0.32mm-1以下が好ましく、0.3mm-1以下がより好ましく、0.28mm-1以下がさらに好ましい。
【0027】
β-OHは、減圧脱泡後の溶融ガラスを板状に成形した無アルカリガラス試験片の透過率を、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いて測定し、下記式を用いて求めることができる。
【0028】
β-OH = (1/X)log10(T1/T2
X:ガラス板厚(mm)
1:参照波数4000cm-1における透過率(%)
2:水酸基吸収波数3570cm-1付近における最小透過率(%)
β-OHは、ガラス原料中の水分量、溶解槽中の水蒸気濃度、溶解槽におけるバーナ燃焼方法(酸素燃焼、空気燃焼)などに支配される。特に、β-OHは、バーナ燃焼方法を調整することにより、簡便に調整できる。具体的には、β-OHを高くするには、バーナ燃焼の酸素燃焼比率を高くし、β-OHを低くするには、バーナ燃焼の空気燃焼比率を高くする。
【0029】
本発明の無アルカリガラス基板は、ガラスの母組成に対するClの含有量が0.15~0.3質量%である。ガラス中のClは、減圧雰囲気下、溶融ガラスに含まれる泡を成長しやすくする成分である。Cl含有量が0.15質量%未満だと、泡の成長が不充分となりやすい。好ましくは0.18質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。Cl含有量が0.3質量%超だと、減圧脱泡処理中に、泡層の肥大化により、泡層が形成されやすくなる。好ましくは0.28質量%以下、より好ましくは0.25質量%以下である。
【0030】
本発明の無アルカリガラス基板は、下記式(1)で表される泡成長指数Iが320以上である。
I=590.5×[β-OH]+874.1×[Cl]-5.7×[B23]-33.3 (1)
式(1)中、[β-OH]は無アルカリガラス基板のβ-OH(mm-1)を示し、[Cl]は無アルカリガラス基板のCl含有量(質量%)を示し、[B23]は無アルカリガラス基板のB23含有量(質量%)を示す。
【0031】
泡成長指数Iは、減圧雰囲気下、溶融ガラスに含まれる泡の成長しやすさの指標である。泡成長指数Iが320以上だと、減圧雰囲気下、溶融ガラスに含まれる泡が成長しやすくなる。好ましくは330以上、より好ましくは340以上である。
泡成長指数Iが400以下だと、減圧脱泡槽を流れる溶融ガラスでのリボイルの発生を防止できるため好ましい。ここで、リボイルとは、白金製若しくは白金合金製、または緻密質耐火物製の溶融脱泡槽と接するガラス界面で泡が発生する現象をいう。泡成長指数Iは390以下がより好ましく、380以下がさらに好ましい。
【0032】
本明細書において、泡成長指数Iは、以下のように定義される圧力Pの値と相関関係にある。
温度一定の条件で、減圧脱泡槽を減圧していった場合、減圧脱泡槽内の溶融ガラス中に存在する泡の体積(泡の径)はボイルの法則にしたがって増加する。しかしながら、減圧脱泡槽内がある圧力まで減圧されると、溶融ガラス中の泡の体積(泡の径)がボイルの法則を外れて急激に増加する。この圧力を圧力Pとする。
【0033】
圧力Pは、以下の手順で求めることができる。
減圧脱泡槽内の状況を再現するために、無アルカリガラスのカレットが入った石英ガラス製のるつぼを真空減圧容器内に配置する。るつぼを1450℃まで加熱して、無アルカリガラスを溶融させる。無アルカリガラスが完全に溶融した後、真空減圧容器内を減圧しながら、溶融ガラス中の泡の径を観察する。溶融ガラス中の泡の径を観察するには、例えば、溶融ガラス中の泡を真空減圧容器に設けた覗き窓からCCDカメラを用いて撮影すればよい。なお、泡の径の測定を行う泡のサンプル個数は20個以上である。
真空減圧容器内の圧力を下げていくと、溶融ガラス中の泡の径がボイルの法則にしたがって増加する。しかしながら、真空減圧容器内がある圧力まで減圧されると、溶融ガラス中の泡の径がボイルの法則から外れて急激に増加してくる。この時の真空減圧容器内の圧力を圧力Pとする。
本発明者らは、複数種の無アルカリガラス基板における圧力Pの測定結果に基づき、泡成長指数Iを求めたところ、減圧雰囲気下、溶融ガラスに含まれる泡を容易に除去できる無アルカリガラス基板について、式(1)で表される泡成長指数Iが320以上であることを見出した。
【0034】
本発明の無アルカリガラス基板は、微量成分としてFe23を含有してもよい。Fe23は、0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましい。
【0035】
本発明の無アルカリガラス基板は、歪点が690℃以上だと、パネル製造時の熱収縮を抑えられるため好ましく、700℃以上がより好ましい。
歪点が750℃以下だと、フロートバス内及びフロートバス出口の温度をあまり高くする必要が無く、フロートバス内及びフロートバス下流側に位置する金属部材の寿命に影響を及ぼすことが少ないため好ましく、740℃以下がより好ましく、730℃以下がさらに好ましい。
なお、歪点は、JIS R3103-2(2001年)に規定されている方法に従い、繊維引き伸ばし法により測定した。
【0036】
本発明の無アルカリガラス基板は、ヤング率が78GPa以上だと、ガラス基板の大板化、薄板化に伴い、搬送時のガラス基板のたわみが抑制されるため好ましく、79GPa以上がより好ましく、80GPa以上がさらに好ましく、82GPa以上が特に好ましい。一方、ヤング率が高すぎるとガラスの切断性が悪化するため、95GPa以下が好ましく、92GPa以下がより好ましく、90GPa以下がさらに好ましい。
なお、ヤング率は、超音波法により測定した。
【0037】
本発明の無アルカリガラス基板は、基板サイズが短辺2100mm以上で、長辺2400mm以上が好ましく、短辺2800mm以上で、長辺3000mm以上がより好ましく、短辺2900mm以上で、長辺3200mm以上がさらに好ましい。基板サイズが大きくなるにつれ、基板中の泡密度を低減する必要があるところ、本発明の無アルカリガラス基板は、泡密度が低いため、基板サイズが大きくても製品歩留が低下しにくく、基板サイズが大きい場合に好適である。また、基板サイズは短辺6000mm以下で、長辺6500mm以下が好ましい。基板サイズが大きすぎると、設備の肥大化により設備の投資費用が大きくなるとともに、ガラス基板を運搬するのが困難となるからである。
【0038】
本発明の無アルカリガラス基板は、泡径100μm超の泡密度が0.06個/kg以下が好ましく、0.03個/kg以下がより好ましく、0.01個/kg以下がさらに好ましい。
なお、泡径100μm超の泡密度は、ガラス基板について、暗室の中でガラス基板側面から光を照射し、ガラス基板主表面を検査するエッジライト検査により、100μm超サイズの泡欠陥の個数を調べて算出した。
【0039】
本発明の無アルカリガラス基板は、フロートガラスが好ましい。フロート法は、フュージョン法に比べて、基板サイズが大きいガラス基板を採板するのに優れている。
【0040】
本発明の無アルカリガラス基板は、無アルカリガラス基板を溶融し、1450℃で保持しながら、大気圧から44kPaまで減圧速度一定で20分で減圧し、44kPaで5分間保持したとき、減圧を開始する前の1450℃の溶融ガラスに含まれる、径が0.1mm~0.3mmである泡を初期泡とし、44kPaで5分間保持した後の初期泡に対応する泡を成長泡として、成長泡の径が、初期泡の径の3倍以上であることが好ましい。
成長泡の径が初期泡の径の3倍以上だと、減圧雰囲気下、溶融ガラスに含まれる泡が、成長しやすく、溶融ガラス内を浮上しやすい。そのため、溶融ガラスに含まれる泡を容易に除去できる。
【0041】
初期泡の径および成長泡の径は、以下の手順で求めることができる。
【0042】
無アルカリガラス基板のカレットが入った石英セルを真空減圧容器内に配置する。石英セルを1450℃まで加熱し、カレットを溶融させた後、真空減圧容器内を減圧する。溶融ガラスに含まれる泡を真空減圧容器に設けた覗き窓からCCDカメラを用いて撮影し、画像解析によって泡の径(以下、泡径という。)を測定する。なお、泡径は、画像で観察される複数の泡のうち、全ての泡について測定する必要はない。具体的には、石英セルの壁面に付着した泡や、複数の泡が合体した泡等は、測定対象から除外される。本発明の一実施態様における初期泡の径に対する成長泡の径の比(以下、泡成長率という。)は、画像で観察される複数の泡について、それぞれ泡成長率を算出し、それらの平均値を求めたものである。
【0043】
評価のための減圧条件は、大気圧から44kPaまで減圧速度一定で20分で減圧する。溶融ガラスを44kPaまで減圧すると、溶融ガラスに含まれる泡を充分に成長させることができるため、泡径の成長を評価するのに適している。また、減圧時間が20分だと、評価時間を短縮しながら、泡径の成長を適切に評価することができる。
【0044】
初期泡は、泡径が0.1mm~0.3mmであるものを選択する。初期泡の径が0.1mm以上だと、CCDカメラによる泡径の測定が容易になる。初期泡の径が0.3mm以下だと、成長泡が肥大化して破泡することを防止できるため、泡径の成長を適切に評価することができる。
【0045】
44kPaで5分間保持した後の初期泡に対応する泡を成長泡とする。保持時間が5分間だと、成長した泡が初期泡に対して充分に大きくなり、また、泡が肥大化して破泡することを防止できるため、泡径の成長を適切に評価することができる。
【0046】
本発明の無アルカリガラス基板は、成長泡の径が初期泡の径の3.5倍以上がより好ましく、4倍以上がさらに好ましい。
【0047】
本発明の無アルカリガラス基板は、成長泡の径が初期泡の径の15倍以下が好ましい。15倍以下だと、減圧脱泡処理中に、通常10mm以下程度で溶融ガラス表面に存在する泡層が、10mm~数百mmへ肥大化するのを抑制できるため、泡のすり抜けを防止できる。ここで、泡のすり抜けとは、ガラス表面に達した泡が破泡せずに泡層を成すことによって長時間安定的に存在し、後から浮上してくる泡が破泡せずにそのまま後続の工程へ流出する現象である。泡のすり抜けが生じると、減圧脱泡後の溶融ガラスに泡が残存してしまう問題を生じる。
本発明の無アルカリガラス基板は、成長泡の径が初期泡の径の10倍以下がより好ましく、8倍以下がさらに好ましく、6倍以下が特に好ましい。
【0048】
本発明の無アルカリガラス基板は、板厚が0.75mm以下が、液晶ディスプレイ用ガラス基板用途として好ましく、0.55mm以下がより好ましく、0.5mm以下がさらに好ましく、0.45mm以下が特に好ましい。また、板厚が0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましい。
【0049】
[無アルカリガラス基板の製造方法]
次に、図面を用いて本発明の一実施態様における無アルカリガラス基板の製造方法を説明する。図1は、本発明の無アルカリガラス基板を製造するのに用いるガラス製造装置の一構成例を示した断面図である。
【0050】
ガラス製造装置1は、溶解槽10と、減圧脱泡装置20とを備える。減圧脱泡装置20の後続には、フロートバス等の成形装置が配置される。成形装置は、ダウンドロー法に用いられる成形装置であってもよい。
【0051】
無アルカリガラス基板の製造方法は、ガラス原料を溶解槽10にて溶融することで溶融ガラスGを作製し、溶融ガラスGを減圧脱泡装置20にて減圧脱泡処理し、成形装置によって成形された帯板状のガラスリボンを徐冷して切断し、無アルカリガラス基板を得る。
【0052】
溶解槽10は、供給されたガラス原料を溶融するためのバーナを備える。バーナは、天然ガスや重油などの燃料をガスと混合して燃焼することで火炎を形成する。ガスとして主に空気を用いるバーナを空気燃焼バーナ、ガスとして主に酸素を用いるバーナを酸素燃焼バーナという。バーナは、火炎をガラス原料に向かって放射することによって、ガラス原料を上方から加熱する。また、溶解槽10は、ガラス原料を加熱するための電極を備えてもよい。
【0053】
ガラス原料は、例えば珪砂、ホウ酸、石灰石、酸化アルミニウム、炭酸ストロンチウム、酸化マグネシウム等を使用し、目的とする無アルカリガラス基板の組成となるように調合することができる。
上述したように、本発明の無アルカリガラス基板は、減圧雰囲気下、溶融ガラスに含まれる泡を容易に除去できるため、ガラス原料には、無アルカリガラス基板の製造時に発生したカレットや、使用済みの無アルカリガラス基板のカレットの使用が好ましい。
【0054】
ガラス原料には、塩化物系清澄剤が添加されることが好ましい。塩化物系清澄剤は、潮解性の心配が無い観点から、BaCl2・2H2O、SrCl2・6H2O、CaCl2、MgCl2・6H2OまたはNH4Clが好ましい。
【0055】
清澄剤は、泡成長率を適度に調整するため、塩化物系清澄剤以外のものを用いてもよい。この場合、他の清澄剤としては、例えば、SO3、F、SnO2等が挙げられる。これら他の清澄剤は、ガラス原料中の含有量が2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0056】
減圧脱泡装置20は、減圧ハウジング21、減圧脱泡槽22、上昇管23、下降管24および断熱材25を備える。
【0057】
円筒形状をした減圧脱泡槽22は、その長軸が水平方向に配向するように減圧ハウジング21内に収納配置されている。減圧脱泡槽22の一端の下面には垂直方向に配向する上昇管23が、他端の下面には下降管24が取り付けられている。上昇管23および下降管24は、その一部が減圧ハウジング21内に位置している。
【0058】
上昇管23は、減圧脱泡槽22と連通しており、溶解槽10からの溶融ガラスGを減圧脱泡槽22に導入する。下降管24は、減圧脱泡槽22に連通しており、減圧脱泡後の溶融ガラスGを次の処理槽に導出する。減圧ハウジング21内において、減圧脱泡槽22、上昇管23および下降管24の周囲には、これらを断熱被覆する断熱用レンガなどの断熱材25が配設されている。
【0059】
減圧脱泡槽22、上昇管23および下降管24は、溶融ガラスの導管であるため、耐熱性および溶融ガラスに対する耐食性に優れた材料を用いて作製されている。一例を挙げると、白金製、白金合金製、または白金もしくは白金合金に金属酸化物を分散させてなる強化白金製である。また、セラミックス系の非金属無機材料製、すなわち、緻密質耐火物製であってもよい。また、緻密質耐火物に白金または白金合金を内張したものであってもよい。
【0060】
減圧脱泡は、溶解槽10から供給される溶融ガラスGを所定の圧力に減圧された減圧脱泡槽22を通過させて行う。溶融ガラスGは、減圧脱泡槽22に連続的に供給・排出されることが好ましい。なお、溶融ガラスの流量は、1~200トン/日であることが生産性の点から好ましい。
【0061】
溶解槽10から供給される溶融ガラスGとの温度差が生じることを防止するために、減圧脱泡槽22は、内部が1200℃~1600℃、特に1350℃~1550℃の温度範囲になるように加熱されていることが好ましい。
【0062】
減圧脱泡を実施する際、減圧ハウジング21内の空気は、減圧ハウジング21の所定箇所に設けられた吸引開口部を通して、外部から真空ポンプ等の真空減圧手段によって排気される。これにより、減圧ハウジング21内に収容された減圧脱泡槽22内の空気が間接的に排気され、減圧脱泡槽22内部は所定の圧力まで減圧される。
【0063】
減圧脱泡槽22内部の圧力は、15~55kPaであることが好ましい。
【実施例0064】
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに説明する。なお、本発明はこれらの記載に限定されるものではない。なお、例1,4~7,9,10,12,13,15,16,18が実施例であり、例2,3,8,11,14,17が比較例である。
【0065】
[実験例1]
図1に示すガラス製造装置1を用いて、無アルカリガラス組成のガラス原料を溶解槽10にて溶融することで溶融ガラスGを作製し、溶融ガラスGを減圧脱泡装置20にて減圧脱泡処理し、フロート法にて溶融ガラスを帯板状のガラスリボンに成形し、ガラスリボンを徐冷して切断し、板厚0.50mmの無アルカリガラス基板(例1、例2)を準備した。
【0066】
例1のガラス組成は、酸化物基準の質量%表示で、SiO2:61.2%、Al23:20.0%、B23:2.0%、MgO:5.3%、CaO:4.5%、SrO:7.0%、BaO:0.1%(MgO+CaO+SrO+BaO=16.9%)であり、ガラスの母組成に対するClの含有量が0.234質量%であった。また、下記方法で測定したβ-OHは、0.329mm-1であった。
(β-OH)
β-OHは、ガラス試料について波長2.75μm~2.95μmの光に対する吸光度を測定し、吸光度の最大値βmaxを該試料の厚さ(mm)で割ることで求めた。
したがって、泡成長指数I=590.5×0.329+874.1×0.234-5.7×2.0-33.3=354であった。
【0067】
例2のガラス組成は、酸化物基準の質量%表示で、SiO2:62%、Al23:18%、B23:9.5%、MgO:2%、CaO:7%、SrO:1.2%、BaO:0.1%(MgO+CaO+SrO+BaO=10.3%)、SnO2:0.2%であり、ガラスの母組成に対するClの含有量が0質量%であった。また、上記方法で測定したβ-OHは、0.47mm-1であった。
したがって、泡成長指数I=590.5×0.47+874.1×0-5.7×9.5-33.3=190であった。
【0068】
減圧脱泡を実施する雰囲気を再現するために、無アルカリガラス基板のカレットが50g入った石英セルを真空減圧容器内に配置した。真空減圧容器は、Glass Service社製のHTO(High Temperature Observation) Furnaceを用いた。石英セルを室温から1450℃まで加熱し、カレットを溶融させた後、真空減圧容器内の減圧を開始した。真空減圧容器内を1450℃で保持しながら、大気圧から44kPaまで減圧速度一定で20分で減圧し、44kPaで10分間保持した。この間、減圧開始時を0分として、0,3,6,9,12,15,18,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30分に、溶融ガラス中の泡を真空減圧容器に設けた覗き窓からCCDカメラを用いて撮影し、画像解析によって泡の径の測定を行った。実験例1では、0分が初期泡、減圧開始時から25分が成長泡である。
【0069】
図2は、実験例1の減圧条件下における泡径の時間変化を示す図である。例1と例2とを比較すると、44kPaで保持している間に、例1の方が、泡の径が大きく成長していることが分かる。例1は、初期泡の径が0.24mm、成長泡の径が0.97mmであり、成長泡の径が初期泡の径の4.0倍であった。一方、例2は、初期泡の径が0.25mm、成長泡の径が0.47mmであり、成長泡の径が初期泡の径の1.9倍であった。例1の無アルカリガラス基板によれば、減圧雰囲気下、溶融ガラスに含まれる泡を容易に除去できることが分かった。
なお、実験例1と以下に述べる実験例2とでは、溶融ガラスの温度が1450℃と1400℃、真空減圧容器(減圧脱泡槽)内の圧力が44kPaと33.33kPaとで異なる。これは、圧力が33.33kPaで実験例1を行うと、溶融ガラス中の泡が膨らみ過ぎて、CCDカメラを用いて撮影することが困難となるためである。
【0070】
[実験例2]
減圧脱泡槽での溶融ガラスの清澄効果をシミュレーションにより評価した。溶融ガラス流内の泡が成長して溶融ガラス内を浮上する浮上速度は、泡径とストークスの式で関係付けられる。そこで、シミュレーションにおいては、泡成長率をもとに泡径を算出し、ストークスの式をもとに泡浮上の挙動を解析した。なお、泡は減圧脱泡槽に上昇管が取り付けられている位置の中央部で発生するものとし、初期泡の径を0.2mmに設定して演算した。
【0071】
減圧脱泡槽の寸法および溶融ガラスの液面の高さはそれぞれ以下の通り。
減圧脱泡槽内における上昇管の中央部から下降管の中央部までの水平方向長さ:10m
減圧脱泡槽の内径:500mm
溶融ガラスの液面の高さ:250mm
減圧脱泡槽を通過する溶融ガラスは以下のように想定した。
ガラス組成は以下の通り。なお、Clの含有量は、後述する表1を参照。
(ガラス母組成は酸化物基準の質量%表示、Clの含有量はガラスの母組成に対する質量%)
例3~14
SiO2:61.2%、Al23:20.0%、B23:2.0%、MgO:5.3%、CaO:4.5%、SrO:7.0%、BaO:0.1%(MgO+CaO+SrO+BaO=16.9%)
例15
SiO2:61.6%、Al23:20.9%、B23:0.1%、MgO:6.1%、CaO:4.6%、SrO:6.8%、BaO:0.1%(MgO+CaO+SrO+BaO=17.6%)
例16
SiO2:61.2%、Al23:20.1%、B23:1.8%、MgO:5.4%、CaO:4.5%、SrO:7.0%、BaO:0.1%(MgO+CaO+SrO+BaO=17.0%)
例17
SiO2:60.9%、Al23:19.5%、B23:3.5%、MgO:4.9%、CaO:4.4%、SrO:7.1%、BaO:0.1%(MgO+CaO+SrO+BaO=16.6%)
例18
SiO2:60.7%、Al23:19.1%、B23:5.5%、MgO:4.6%、CaO:4.4%、SrO:7.3%、BaO:0.1%(MgO+CaO+SrO+BaO=16.3%)
溶融ガラスの流量:0.6m3/hまたは1.5m3/h
減圧脱泡槽内の圧力:33.33kPa
減圧脱泡槽通過時の温度(平均):1400℃
減圧脱泡槽通過時の粘性:150~200Pa・s
減圧脱泡槽通過時の密度:2380kg/m3
脱泡性能については、減圧脱泡槽内における上昇管の中央部から泡が溶融ガラスの液面に浮上した位置までの距離(浮上距離)を評価した。浮上距離が小さいほど脱泡性能に優れている。
【0072】
結果を表1に示す。表1においては、溶融ガラスの流量、B23、β-OH、Cl含有量、泡成長指数I、泡成長率および浮上距離を示している。泡成長率は、実験例1と同一条件で測定した。
【0073】
【表1】
【0074】
表1に示すように、泡成長指数Iが320未満のガラス(例3,8,11,14,17)は、浮上距離が10m超であった。この結果から、ガラス基板の泡径100μm超の泡密度は0.06個/kg超になるものと想定される。
【0075】
これに対して、泡成長指数Iが320以上のガラス(例4~7,9,10,12,13,15,16,18)は、浮上距離が10m以下であった。この結果から、ガラス基板の泡径100μm超の泡密度は0.06個/kg以下になるものと想定される。
【0076】
以上の結果から、実施例のガラスは、大型のガラス基板を効率よく製造するのに、減圧脱泡装置の寸法を敢えて大きくする必要がなく、設備の投資費用が大きくなるという問題を解消できる。また、基板中の泡密度を低減することができるので、基板サイズが大きくなるにつれ、製品歩留が低下するという問題が解消されると想定できる。
【0077】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは、当業者にとって明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0078】
無アルカリガラス基板の用途は、液晶ディスプレイ用、有機ELディスプレイ用、フラットパネルディスプレイ用、またはその他の各種用途が挙げられる。
【符号の説明】
【0079】
1 ガラス製造装置
10 溶解槽
20 減圧脱泡装置
21 減圧ハウジング
22 減圧脱泡槽
23 上昇管
24 下降管
25 断熱材
図1
図2