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特開2024-23640電磁波シールド用組成物、電磁波シールド用シート、電磁波シールド膜及び電子部品装置
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  • 特開-電磁波シールド用組成物、電磁波シールド用シート、電磁波シールド膜及び電子部品装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023640
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】電磁波シールド用組成物、電磁波シールド用シート、電磁波シールド膜及び電子部品装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20240214BHJP
   H01F 1/28 20060101ALI20240214BHJP
   H01F 1/37 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H05K9/00 W
H01F1/28
H01F1/37
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023209619
(22)【出願日】2023-12-12
(62)【分割の表示】P 2019207277の分割
【原出願日】2019-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】曽根 圭太
(72)【発明者】
【氏名】増田 宏
(72)【発明者】
【氏名】山岸 秀明
(57)【要約】      (修正有)
【課題】比透磁率の高い皮膜を形成可能な電磁波シールド用組成物を提供する。
【解決手段】電磁波シールド用組成物は、軟磁性体粒子と樹脂とを含有し、前記軟磁性体粒子の粒度分布が、少なくとも2つのピークを有するものである。少なくとも2つのピークのうちの最も大粒子径側のピークの頂点が、粒度分布における10μm以上の範囲に位置する。最も大粒子径側のピークに帰属する軟磁性体粒子についての平均アスペクト比が、2以上である。少なくとも2つのピークのうちの大粒子径側から2番目に位置するピークの頂点が、粒度分布における3μm以下の範囲に位置する。粒度分布における、最も大粒子径側のピークの頂点をAμmとし、大粒子径側から2番目に位置するピークの頂点をBμmとしたときに、比(A/B)が、10以上である。前記軟磁性体粒子は、鉄、鉄合金又はフェライトの粒子を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟磁性体粒子と樹脂とを含有し、
前記軟磁性体粒子の粒度分布が、少なくとも2つのピークを有する電磁波シールド用組成物。
【請求項2】
前記少なくとも2つのピークのうちの最も大粒子径側のピークの頂点が、前記粒度分布における10μm以上の範囲に位置する請求項1に記載の電磁波シールド用組成物。
【請求項3】
前記最も大粒子径側のピークに帰属する前記軟磁性体粒子についての平均アスペクト比が、2以上である請求項2に記載の電磁波シールド用組成物。
【請求項4】
前記少なくとも2つのピークのうちの大粒子径側から2番目に位置するピークの頂点が、前記粒度分布における3μm以下の範囲に位置する請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の電磁波シールド用組成物。
【請求項5】
前記粒度分布における、前記最も大粒子径側のピークの頂点をAμmとし、前記大粒子径側から2番目に位置するピークの頂点をBμmとしたときに、比(A/B)が、10以上である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の電磁波シールド用組成物。
【請求項6】
前記軟磁性体粒子が、鉄、鉄合金又はフェライトの粒子を含む請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の電磁波シールド用組成物。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の電磁波シールド用組成物を含む樹脂組成物層を有する電磁波シールド用シート。
【請求項8】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の電磁波シールド用組成物により形成された電磁波シールド膜。
【請求項9】
請求項8に記載の電磁波シールド膜により覆われた領域を有する電子部品装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電磁波シールド用組成物、電磁波シールド用シート、電磁波シールド膜及び電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に外部から不要な電磁波が入射すると、誤作動を起こす可能性がある。そこで、電子機器には外部からの不要な電磁波をシールドする電磁波シールド材が用いられている。
【0003】
多くの電磁波シールド材は金属で構成されており、電磁波を反射することで電子機器を電磁波からシールドする。
しかし、一般的に用いられる金属のシールド材では低周波の磁界をほとんど反射することができず、電子機器を低周波の磁界からシールドすることが困難となる。
【0004】
低周波の磁界から電子機器をシールドする場合、比透磁率の高い軟磁性体を用いるのが効果的である。磁界が比透磁率の高い領域を通りやすいという性質を利用し、保護したい部分に磁界が通らないようにすることで電子機器をシールドする。平面的な部分にシールド材を設ける場合は、シート又はフィルムのような形態でもよいが、表面形状の複雑な被着体にシールド材を設ける場合は、塗装のような方法で行うのが好ましい。その場合、シールド材は塗料で提供され、軟磁性体は粉末として樹脂等と一緒に混合される。
【0005】
しかし、軟磁性体は塗料で用いられるような粒径が10μm程度の大きさになると、バルクで高い比透磁率を持っていたとしてもほぼ粉末形状に依存する比透磁率になってしまう。粉末形状では、球よりもアスペクト比が大きな扁平形状のほうが高い比透磁率を持つ。
【0006】
一方、軟磁性体粉末同士の間に比透磁率の低い領域(空隙、塗料中に混合する樹脂等)が存在すると比透磁率の低い領域に磁束が漏れてしまい、シールド膜全体の比透磁率が低下してしまう。
【0007】
粒径が10μm程度の軟磁性体粉末を用いて高い比透磁率を得るために、アスペクト比の大きな扁平形状の軟磁性粉末をより密に充填し、磁束が漏れてしまう領域をなるべく少なくすることが試みられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6394137号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
扁平形状の軟磁性粒子を高密度に充填するには、プレス等の方法が考えられるが、表面形状の複雑な被着体に塗装する場合はプレスにより高密度充填化することは困難である。従って、軟磁性体扁平粉末が密に充填されず、高い比透磁率を得ることが困難となる場合がある。
また、特許文献1のように軟磁性体扁平粉末を密に充填させたとしても、未だ軟磁性体扁平粉末間には比透磁率の低い領域(空気、樹脂等)がある程度存在する。そのため、特許文献1の方法によっても高い比透磁率を得られない場合がある。
本開示は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであり、比透磁率の高い皮膜を形成可能な電磁波シールド用組成物、並びに、この電磁波シールド用組成物を用いた電磁波シールド用シート、電磁波シールド膜及び電子部品装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 軟磁性体粒子と樹脂とを含有し、
前記軟磁性体粒子の粒度分布が、少なくとも2つのピークを有する電磁波シールド用組成物。
<2> 前記少なくとも2つのピークのうちの最も大粒子径側のピークの頂点が、前記粒度分布における10μm以上の範囲に位置する<1>に記載の電磁波シールド用組成物。
<3> 前記最も大粒子径側のピークに帰属する前記軟磁性体粒子についての平均アスペクト比が、2以上である<2>に記載の電磁波シールド用組成物。
<4> 前記少なくとも2つのピークのうちの大粒子径側から2番目に位置するピークの頂点が、前記粒度分布における3μm以下の範囲に位置する<1>~<3>のいずれか1項に記載の電磁波シールド用組成物。
<5> 前記粒度分布における、前記最も大粒子径側のピークの頂点をAμmとし、前記大粒子径側から2番目に位置するピークの頂点をBμmとしたときに、比(A/B)が、10以上である<1>~<4>のいずれか1項に記載の電磁波シールド用組成物。
<6> 前記軟磁性体粒子が、鉄、鉄合金又はフェライトの粒子を含む<1>~<5>のいずれか1項に記載の電磁波シールド用組成物。
<7> <1>~<6>のいずれか1項に記載の電磁波シールド用組成物を含む樹脂組成物層を有する電磁波シールド用シート。
<8> <1>~<6>のいずれか1項に記載の電磁波シールド用組成物により形成された電磁波シールド膜。
<9> <8>に記載の電磁波シールド膜により覆われた領域を有する電子部品装置。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、比透磁率の高い皮膜を形成可能な電磁波シールド用組成物、並びに、この電磁波シールド用組成物を用いた電磁波シールド用シート、電磁波シールド膜及び電子部品装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例及び比較例で作製した試験片の比透磁率の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0014】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、各成分には、該当する物質が複数種含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において、各成分に該当する粒子には、複数種の粒子が含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において「層」又は「膜」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本開示において「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味する。
本開示において、層又は膜の平均厚みは、対象となる層又は膜の5点の厚みを測定し、その算術平均値として与えられる値とする。
本開示において、層又は膜の厚みを直接測定可能な場合には、マイクロメーターを用いて測定する。一方、1つの層の厚み又は複数の層の総厚みを測定する場合には、電子顕微鏡を用いて、測定対象の断面を観察することで測定してもよい。
【0015】
<電磁波シールド用組成物>
本開示の電磁波シールド用組成物は、軟磁性体粒子と樹脂とを含有し、前記軟磁性体粒子の粒度分布が、少なくとも2つのピークを有するものである。電磁波シールド用組成物は、上記成分以外のその他の成分を含有してもよい。
本開示の電磁波シールド用組成物によれば、比透磁率の高い皮膜を形成可能となる。その理由は明確ではないが、以下のように推察される。
本開示の電磁波シールド用組成物では、電磁波シールド用組成物に含有される軟磁性体粒子の粒度分布が、少なくとも2つのピークを有する。軟磁性体粒子の粒度分布が少なくとも2つのピークを有するとは、つまり、軟磁性体粒子が、平均粒子径が大きな第1の粒子群と、第1の粒子群よりも平均粒子径の小さい第2の粒子群とを少なくとも含有することを示す。
電磁波シールド用組成物により形成された皮膜中において、軟磁性体粒子の第1の粒子群に帰属される粒子間の空隙に、第1の粒子群よりも平均粒子径の小さい第2の粒子群に帰属される粒子が配置されることで、軟磁性体粒子が密に充填されやすくなる。軟磁性体粒子が密に充填されることで、軟磁性体粒子間に比透磁率が低く磁束の漏れの生じやすい領域が生じにくくなる。そのため、本開示の電磁波シールド用組成物によれば、比透磁率の高い皮膜を形成可能になると推察される。
【0016】
以下、本開示の電磁波シールド用組成物を構成する成分について詳細に説明する。
【0017】
(軟磁性体粒子)
本開示の電磁波シールド用組成物は、軟磁性体粒子を含有する。
本開示で用いられる軟磁性体粒子の粒度分布は、少なくとも2つのピークを有する。軟磁性体粒子の粒度分布は、5個以下のピークを有するものであってもよく、3つのピークを有するものであってもよく、2つのピークを有するものであってもよい。
軟磁性体粒子の粒度分布は、レーザー回折法を用いて測定される。レーザー回折法は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、株式会社島津製作所、SALD3000J)を用いて行うことができる。具体的には、軟磁性体粒子を、水等の分散媒に分散させて分散液を調製する。この分散液について、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて体積基準の粒度分布を求める。
また、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて小径側から体積累積分布曲線を描いた場合に、累積50%となる粒子径(D50、体積平均粒子径)を、軟磁性体粒子の平均粒子径とする。
電磁波シールド用組成物から軟磁性体粒子を抽出する方法は、特に限定されるものではない。例えば、電磁波シールド用組成物を溶媒で希釈し、遠心分離により軟磁性体粒子を抽出することができる。また、電磁波シールド用組成物を燃焼し、軟磁性体粒子を灰分として得ることもできる。
【0018】
少なくとも2つのピークのうちの最も大粒子径側のピークの頂点は、磁性体粒子の粒度分布における10μm以上の範囲に位置することが好ましく、25μm以上の範囲に位置することがより好ましく、40μm以上の範囲に位置することがさらに好ましい。少なくとも2つのピークのうちの最も大粒子径側のピークの頂点は、磁性体粒子の粒度分布における150μm以下の範囲に位置していてもよい。
【0019】
磁性体粒子の粒度分布における最も大粒子径側のピークに帰属する軟磁性体粒子についての平均アスペクト比は、高い比透磁率を得る観点から、2以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、20以上であることがさらに好ましい。磁性体粒子の粒度分布における最も大粒子径側のピークに帰属する軟磁性体粒子についての平均アスペクト比は、100以下であってもよい。
【0020】
磁性体粒子の粒度分布における最も大粒子径側のピークに帰属する軟磁性体粒子についての平均アスペクト比は、下記方法により測定される。
電磁波シールド用組成物を用いて電磁波シールド膜を形成する。電磁波シールド膜の厚み方向に平行な断面を走査型電子顕微鏡により500倍の条件で撮影し、断面写真を得る。得られた断面写真から、長手方向の長さ(Lμm)が、最も大粒子径側のピークの頂点の値の±40%の長さの軟磁性体粒子を、10個選択する。選択された軟磁性体粒子の各々について、長径(Lμm)及び短径(Sμm)を測定する。なお、粒子の長径とは、粒子の外接長方形の長さをいい、粒子の短径とは、粒子の外接長方形の幅をいう。各軟磁性体粒子について、長径(Lμm)と短径(Sμm)とのアスペクト比(L/S)を求める。各軟磁性体粒子のアスペクト比(L/S)の算術平均値を、最も大粒子径側のピークに帰属する軟磁性体粒子についての平均アスペクト比とする。
【0021】
なお、本開示で用いられる軟磁性体粒子が、平均粒子径の異なる少なくとも2種類の軟磁性体粒子の混合物である場合、最も平均粒子径の大きい軟磁性体粒子についての平均アスペクト比を、最も大粒子径側のピークに帰属する軟磁性体粒子についての平均アスペクト比としてもよい。最も平均粒子径の大きい軟磁性体粒子についての平均アスペクト比は、下記方法により測定される。
最も平均粒子径の大きい軟磁性体粒子について、走査型電子顕微鏡により500倍の条件で撮影して電子顕微鏡写真を得る。得られた電子顕微鏡写真から、10個の軟磁性体粒子の各々について、長径(Lμm)及び短径(Sμm)を測定する。各軟磁性体粒子について、長径(Lμm)と短径(Sμm)とのアスペクト比(L/S)を求める。各軟磁性体粒子のアスペクト比(L/S)の算術平均値を、最も平均粒子径の大きい軟磁性体粒子についての平均アスペクト比とする。
【0022】
磁性体粒子の粒度分布における少なくとも2つのピークのうちの大粒子径側から2番目に位置するピークの頂点は、軟磁性体粒子を密に充填する観点から、磁性体粒子の粒度分布における3μm以下の範囲に位置することが好ましく、2μm以下の範囲に位置することがより好ましく、1μm以下の範囲に位置することがさらに好ましい。少なくとも2つのピークのうちの大粒子径側から2番目に位置するピークの頂点は、磁性体粒子の粒度分布における0.05μm以上の範囲に位置していてもよい。
【0023】
磁性体粒子の粒度分布における、最も大粒子径側のピークの頂点をAμmとし、大粒子径側から2番目に位置するピークの頂点をBμmとしたときに、比(A/B)は、軟磁性体粒子を密に充填する観点から、10以上であることが好ましく、25以上であることがより好ましく、40以上であることがさらに好ましい。比(A/B)は、500以下であってもよい。
【0024】
例えば、軟磁性体粒子の粒度分布が、少なくとも3つのピークを有する場合、少なくとも3つのピークのうちの最も大粒子径側のピークの頂点が粒度分布における10μm以上の範囲に位置し、少なくとも3つのピークのうちの大粒子径側から2番目に位置するピークの頂点が粒度分布における1μm~3μmの範囲に位置し、少なくとも3つのピークのうちの大粒子径側から3番目に位置するピークの頂点が粒度分布における0.05μm~1μmの範囲に位置することが好ましい。
【0025】
軟磁性体粒子を構成する材料は特に限定されるものではなく、高い比透磁率を持つ物質であればよい。軟磁性体としては、ナノ結晶系軟磁性体、アモルファス系軟磁性体、フェライト系軟磁性体等が挙げられる。
また、軟磁性体としては、鉄、鉄合金、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金、フェライト等が挙げられる。
軟磁性体粒子としては、安価に入手することができることから、鉄、鉄合金又はフェライトの粒子が好ましい。
鉄合金としては、センダスト、ケイ素鋼、パーメンジュール等が挙げられる。
フェライトとしては、マンガン亜鉛フェライト、ニッケル亜鉛フェライト、銅亜鉛フェライト、コバルトフェライト、ニッケルフェライト、マグネタイト等が挙げられる。
【0026】
本開示において、軟磁性体粒子の粒度分布が少なくとも2つのピークを有するためには、平均粒子径の異なる少なくとも2種類の軟磁性体粒子を混合することが好ましい。平均粒子径の異なる少なくとも2種類の軟磁性体粒子の組み合わせとしては、平均粒子径が10μm以上の第1の軟磁性体粒子と、平均粒子径が3μm以下の第2の軟磁性体粒子との組み合わせが挙げられる。この場合、平均粒子径が10μm以上の第1の軟磁性体粒子が第1の粒子群に、平均粒子径が3μm以下の第2の軟磁性体粒子が第2の粒子群に該当する。
なお、平均粒子径が10μm以上の第1の軟磁性体粒子の平均アスペクト比は、2以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、20以上であることがさらに好ましい。第1の軟磁性体粒子の平均アスペクト比は、100以下であってもよい。
【0027】
電磁波シールド用組成物中における軟磁性体粒子の含有率は特に制限されない。例えば、電磁波シールド用組成物の固形分全体に占める軟磁性体粒子の割合は、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。電磁波シールド用組成物の固形分全体に占める軟磁性体粒子の割合は、99質量%以下であってもよい。
【0028】
本開示の電磁波シールド用組成物は、電磁波シールド用組成物の効果を阻害しない範囲内で、軟磁性体粒子以外のその他の無機粒子を含有してもよい。その他の無機粒子としては、シリカ、ベントナイト、ヘクトライト等が挙げられる。その他の無機粒子の平均粒子径は、900nm以下であることが好ましい。また、その他の無機微粒子の含有率は、軟磁性体粒子及び必要に応じて用いられるその他の無機粒子の合計に対して30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
【0029】
(樹脂)
本開示の電磁波シールド用組成物は、樹脂を含有する。電磁波シールド用組成物が樹脂を含むことで、電磁波シールド用組成物から形成される電磁波シールド膜の接着性が向上する傾向にある。
【0030】
電磁波シールド用組成物に含まれる樹脂は、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であっても、これらの組み合わせであってもよい。樹脂は、接着性を示すことが好ましい。また、樹脂は、加熱により重合反応を生じうる官能基を有するモノマーの状態であっても、すでに重合したポリマーの状態であってもよい。
【0031】
耐熱性の観点からは、樹脂として熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。熱硬化性樹脂としては、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ヒドロキシ基、ビニル基、カルボキシ基、アミノ基、マレイミド基、酸無水物基、チオール基、チオニル基等の官能基を有する樹脂が挙げられる。
【0032】
熱可塑性樹脂として具体的には、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
熱硬化性樹脂として具体的には、エポキシ樹脂、オキサジン樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
これら樹脂の中でも、エポキシ樹脂が好ましい。
【0033】
エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂及び環式脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。樹脂成分は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0034】
電磁波シールド用組成物中における樹脂の含有率は特に制限されない。例えば、電磁波シールド用組成物の固形分全体に占める樹脂の割合は、5質量%~70質量%であることが好ましく、10質量%~60質量%であることがより好ましく、15質量%~50質量%であることがさらに好ましい。
また、軟磁性体粒子及び必要に応じて用いられるその他の無機粒子を除く電磁波シールド用組成物の固形分に占める樹脂の割合は、10質量%~99質量%であることが好ましく、20質量%~98質量%であることがより好ましく、30質量%~97質量%であることがさらに好ましい。
【0035】
本開示の電磁波シールド用組成物は、接着性を向上するために、樹脂の1種として、ポリビニルアルコール樹脂、水溶性セルロース等の、樹脂中に水酸基を豊富に含む水溶性の有機高分子結合剤を併用してもよい。
【0036】
(硬化剤)
樹脂が熱硬化性樹脂である場合、電磁波シールド用組成物は、熱硬化性樹脂を硬化する硬化剤を含有してもよい。
硬化剤の種類は特に限定されるものではなく、熱硬化性樹脂の種類に応じて適宜選択される。
【0037】
熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、硬化剤としては、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤等が挙げられる。硬化剤は、液体状のものでも固体状のものでも使用可能である。
硬化剤は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0038】
アミン系硬化剤としては、m-フェニレンジアミン、1,3-ジアミノトルエン、1,4-ジアミノトルエン、2,4-ジアミノトルエン、3,5-ジエチル-2,4-ジアミノトルエン、3,5-ジエチル-2,6-ジアミノトルエン、2,4-ジアミノアニソール等の芳香環が1個の芳香族アミン硬化剤;4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-メチレンビス(2-エチルアニリン)、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン等の芳香環が2個の芳香族アミン硬化剤;芳香族アミン硬化剤の加水分解縮合物;ポリテトラメチレンオキシドジ-p-アミノ安息香酸エステル、ポリテトラメチレンオキシドジ-p-アミノベンゾエート等のポリエーテル構造を有する芳香族アミン硬化剤;芳香族ジアミンとエピクロロヒドリンとの縮合物;芳香族ジアミンとスチレンとの反応生成物;などが挙げられる。
【0039】
酸無水物系硬化剤としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、メチルハイミック酸無水物、ハイミック酸無水物、無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、クロレンド酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸マレイン酸付加物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、水素化メチルナジック酸無水物、無水マレイン酸とジエン化合物からディールス・アルダー反応で得られ、複数のアルキル基を有するトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸等の各種環状酸無水物が挙げられる。
【0040】
フェノール系硬化剤としては、フェノール化合物(例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA及びビスフェノールF)並びにナフトール化合物(例えば、α-ナフトール、β-ナフトール及びジヒドロキシナフタレン)からなる群より選択される少なくとも1種と、アルデヒド化合物(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド及びサリチルアルデヒド)とを、酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂;フェノール・アラルキル樹脂;ビフェニル・アラルキル樹脂;ナフトール・アラルキル樹脂;等が挙げられる。
【0041】
硬化剤の官能基(例えば、アミン系硬化剤の場合にはアミノ基の活性水素、フェノール系硬化剤の場合にはフェノール性水酸基、酸無水物系硬化剤の場合には酸無水物基)の当量数とエポキシ樹脂の当量数との比(硬化剤の当量数/エポキシ樹脂の当量数)を、0.6~1.4の範囲に設定することが好ましく、0.7~1.3の範囲に設定することがより好ましく、0.8~1.2の範囲に設定することがさらに好ましい。
【0042】
(硬化促進剤)
電磁波シールド用組成物が熱硬化性樹脂を含有する場合、電磁波シールド用組成物は熱硬化性樹脂の硬化反応又は熱硬化性樹脂と硬化剤との硬化反応を促進する硬化促進剤を含有してもよい。
硬化促進剤の種類は特に限定されるものではなく、熱硬化性樹脂及び硬化剤の種類に応じて適宜選択される。
【0043】
硬化促進剤としては、具体的には、1,8-ジアザ-ビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、1,5-ジアザ-ビシクロ[4.3.0]ノネン、5,6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザ-ビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7等のシクロアミジン化合物;シクロアミジン化合物に無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂などのπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン化合物;3級アミン化合物の誘導体;イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;イミダゾール化合物の誘導体;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2-エチル-4-メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート、N-メチルモルホリニウムテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボレート塩;テトラフェニルボレート塩の誘導体;トリフェニルホスフィン-トリフェニルボラン錯体、モルホリン-トリフェニルボラン錯体等のトリフェニルボラン錯体;などが挙げられる。硬化促進剤は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0044】
硬化促進剤の含有率は、熱硬化性樹脂及び必要に応じて用いられる硬化剤の合計量に対して、0.1質量%~15質量%であることが好ましい。
【0045】
(溶剤)
本開示の電磁波シールド用組成物は、水、有機溶剤等の溶剤を含有してもよい。樹脂を充分に溶解する観点から、溶剤は有機溶剤が好ましく、電磁波シールド用組成物を付与する工程での作業性及び電磁波シールド用組成物の乾燥を抑制する観点から、50℃以上の沸点を有している有機溶剤であることが好ましく、乾燥又は硬化時のボイドの発生を抑制する観点から300℃以下の沸点を有している有機溶剤であることが好ましい。
【0046】
有機溶剤の例としては、テルピネオール、ステアリルアルコール、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(別名、エトキシエトキシエタノール)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(別名、ヘキシルカルビトール)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコールフェニルエーテル、2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール等のアルコール類;酢酸ブチル、クエン酸トリブチル、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、γ-ブチロラクトン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、グリセリントリアセテート等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類;シクロヘキサン等のシクロアルカン類;N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム;フェニルアセトニトリル等のニトリル類;などを挙げることができる。溶剤は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0047】
電磁波シールド用組成物中の溶剤の割合は、電磁波シールド用組成物がスクリーン印刷法、スプレー塗布法等の付与方法に適した粘度となる量であることが好ましい。
電磁波シールド用組成物中の溶剤の割合は、例えば、0.1質量%~85質量%であることが好ましく、0.5質量%~75質量%であることがより好ましく、1質量%~70質量%であることがさらに好ましい。
【0048】
(その他の成分)
本開示の電磁波シールド用組成物は、上述した成分に加え、必要に応じて当該分野で通常用いられるその他の成分をさらに含むことができる。その他の成分としては、可塑剤、分散剤、界面活性剤、チキソ剤等が挙げられる。
【0049】
(電磁波シールド用組成物の製造方法)
本開示の電磁波シールド用組成物の製造方法は、特に限定されるものではない。電磁波シールド用組成物を構成する成分を混合し、さらに撹拌、溶解、分散等の処理をすることにより得ることができる。これらの混合、撹拌、分散等のための装置としては、特に限定されるものではなく、3本ロールミル、プラネタリーミキサ、遊星式ミキサ、自転公転型撹拌装置、らいかい機、二軸混練機、薄層せん断分散機等を使用することができる。また、これらの装置を適宜組み合わせて使用してもよい。上記処理の際、必要に応じて加熱してもよい。
処理後、ろ過により電磁波シールド用組成物の最大粒径を調整してもよい。ろ過は、ろ過装置を用いて行うことができる。ろ過用のフィルタとしては、例えば、金属メッシュ、メタルフィルター及びナイロンメッシュが挙げられる。
【0050】
<電磁波シールド用シート>
本開示の電磁波シールド用シートは、本開示の電磁波シールド用組成物を含む樹脂組成物層を有するものである。本開示の電磁波シールド用シートは、必要に応じて、離型フィルムをさらに含んで構成されてもよい。
【0051】
樹脂組成物層は、例えば、本開示の電磁波シールド用組成物に溶剤を添加して調製されるワニス状の電磁波シールド用組成物(以下、「樹脂ワニス」ともいう)をポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム等の離型フィルム上に付与し、乾燥することで製造することができる。
【0052】
樹脂ワニスの付与は公知の方法により実施することができる。具体的には、コンマコート、ダイコート、リップコート、グラビアコート等の方法、アプリケーターを用いた方法などが挙げられる。所定の厚みに樹脂組成物層を形成するための樹脂ワニスの付与方法としては、ギャップ間に被塗工物を通過させるコンマコート法、ノズルから流量を調節した樹脂ワニスを塗布するダイコート法等が挙げられる。乾燥前の樹脂組成物層の厚みが50μm~500μmの場合には、コンマコート法を用いることが好ましい。
樹脂ワニスを付与する際には、付与される樹脂ワニスに磁界を印加してもよい。樹脂ワニスに磁界を印加することで、樹脂組成物層中において、軟磁性体粒子の第2の粒子群に帰属される粒子が第1の粒子群に帰属される粒子間の空隙に効率的に移動し、当該隙間が埋められやすい。これによってより高い比透磁率を得ることができる傾向にある。
【0053】
乾燥方法は、樹脂ワニス中に含まれる有機溶剤の少なくとも一部を除去できれば特に制限されず、通常用いられる乾燥方法から適宜選択することができる。
乾燥方法は、常温(例えば、25℃)放置による乾燥、加熱乾燥又は減圧乾燥を用いることができる。加熱乾燥又は減圧乾燥には、ホットプレート、温風乾燥機、温風加熱炉、窒素乾燥機、赤外線乾燥機、赤外線加熱炉、遠赤外線加熱炉、マイクロ波加熱装置、レーザー加熱装置、電磁加熱装置、ヒーター加熱装置、蒸気加熱炉等を用いることができる。
乾燥のための温度及び時間は、使用した溶剤の種類及び量に合わせて適宜調整することができ、例えば、40℃~180℃で、1分間~120分間乾燥させることが好ましい。
【0054】
樹脂組成物層の平均厚みは、3μm~300μmが好ましく、5μm~200μmがより好ましく、10μm~100μmがさらに好ましい。
【0055】
<電磁波シールド膜>
本開示の電磁波シールド膜は、本開示の電磁波シールド用組成物により形成されたものである。本開示の電磁波シールド膜は、本開示の電磁波シールド用組成物を含む樹脂組成物層であってもよい。電磁波シールド用組成物が樹脂として熱硬化性樹脂を含有する場合、本開示の電磁波シールド膜は、本開示の電磁波シールド用組成物を含む樹脂組成物層の硬化物であってもよい。
電磁波シールド膜の平均厚みは、3μm~300μmが好ましく、5μm~200μmがより好ましく、10μm~100μmがさらに好ましい。
【0056】
本開示の電磁波シールド膜が本開示の電磁波シールド用組成物を含む樹脂組成物層である場合、被着体の電磁波シールド膜を形成したい箇所にワニス状の電磁波シールド用組成物を付与し、乾燥することで、電磁波シールド膜を形成することができる。また、被着体の電磁波シールド膜を形成したい箇所に本開示の電磁波シールド用シートを付着することで、電磁波シールド膜を形成することができる。
電磁波シールド用組成物が樹脂として熱硬化性樹脂を含有する場合、被着体の電磁波シールド膜を形成したい箇所にワニス状の電磁波シールド用組成物を付与し、乾燥し、加熱により熱硬化性樹脂を硬化することで、電磁波シールド膜を形成することができる。また、被着体の電磁波シールド膜を形成したい箇所に本開示の電磁波シールド用シートを付着し、加熱により熱硬化性樹脂を硬化することで、電磁波シールド膜を形成することができる。
【0057】
被着体にワニス状の電磁波シールド用組成物を付与する方法としては、スプレー塗布法、既述のコンマコート、ダイコート、リップコート、グラビアコート等の方法、アプリケーターを用いた方法などが挙げられる。
ワニス状の電磁波シールド用組成物を乾燥する方法としては、既述の常温(例えば、25℃)放置による乾燥、加熱乾燥又は減圧乾燥を用いることができる。
電磁波シールド用組成物又は電磁波シールド用シートに含有される熱硬化性樹脂を硬化するには、加熱処理で行ってもよいし、加熱加圧処理で行ってもよい。
加熱処理には、ホットプレート、温風乾燥機、温風加熱炉、窒素乾燥機、赤外線乾燥機、赤外線加熱炉、遠赤外線加熱炉、マイクロ波加熱装置、レーザー加熱装置、電磁加熱装置、ヒーター加熱装置、蒸気加熱炉等を用いることができる。
また、加熱加圧処理には、熱板プレス装置等を用いてもよいし、加圧しながら上述の加熱処理を行ってもよい。
加熱温度は、熱硬化性樹脂の種類によるが、80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。当該加熱温度の上限は、特に制限されないが、例えば200℃以下である。
加熱時間は、熱硬化性樹脂の種類によるが、5分間~2時間であることが好ましく、10分間~90分間であることがより好ましく、30分間~60分間であることがさらに好ましい。
被着体としては、ケーブル、建築材、後述の電子部品装置等が挙げられる。
【0058】
<電子部品装置>
本開示の電子部品装置は、本開示の電磁波シールド膜により覆われた領域を有するものである。
電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハー等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、抵抗アレイ、コイル、スイッチ等の受動素子などの電子部品を搭載したものが挙げられる。
電子部品及び支持部材のうちの、電磁波を発生する箇所又は電磁波の影響を受けやすい箇所を本開示の電磁波シールド膜で覆うことにより、本開示の電子部品装置を得ることができる。
電子部品又は支持部材を電磁波シールド膜で覆う方法としては、ワニス状の電磁波シールド用組成物を電磁波シールド膜で覆いたい箇所に付与し、乾燥し、必要に応じて加熱する方法が挙げられる。付与方法としては、スクリーン印刷法、スプレー塗布法等が挙げられる。ワニス状の電磁波シールド用組成物を付与する際、樹脂ワニスに磁界を印加してもよい。
乾燥条件及び乾燥方法は、既述の電磁波シールド用シートを製造する際の条件及び方法と同様である。また、加熱条件及び加熱方法は、既述の加熱により熱硬化性樹脂を硬化する際の条件及び方法と同様である。
また、電子部品又は支持部材を電磁波シールド膜で覆う方法としては、本開示の電磁波シールド用シートを電磁波シールド膜で覆いたい箇所に配置し、必要に応じて加熱する方法も挙げられる。電磁波シールド用シートの加熱条件及び加熱方法は、既述の加熱により熱硬化性樹脂を硬化する際の条件及び方法と同様である。
【0059】
本開示の電子部品装置は、支持部材と、支持部材上に配置される電子部品と、電子部品を封止する封止材の硬化物と、封止材の硬化物の表面に配置される本開示の電磁波シールド膜とを備えるものであってもよい。封止材の硬化物の表面に電磁波シールド膜を配置する場合、封止材を硬化した後に電磁波シールド膜を封止材の硬化物の表面に形成してもよいし、硬化する前の封止材の表面に電磁波シールド用組成物又は電磁波シールド用シートを配置してもよい。
【0060】
電子部品装置は、電子部品及び支持部材を収容する筐体をさらに備えてもよい。電子部品及び支持部材が筐体内に収容される場合、筐体の内表面及び外表面の少なくとも一方を本開示の電磁波シールド膜で覆うことにより、本開示の電子部品装置を得ることができる。
筐体の内表面又は外表面を電磁波シールド膜で覆う方法は、電子部品又は支持部材を電磁波シールド膜で覆う方法と同様である。
【実施例0061】
以下、実施例により本開示をさらに具体的に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0062】
[実施例]
軟磁性体扁平粒子としてFe-Si-Al合金(センダスト粉末、山陽特殊製鋼株式会社、平均粒子径45μm、アスペクト比45)を32質量部、軟磁性体微粒子としてFe(戸田工業株式会社、平均粒子径0.17μm)を6質量部、樹脂としてエポキシ樹脂を37質量部、硬化促進剤としてイミダゾール化合物を2質量部、溶剤として酢酸ブチルを23質量部混合し樹脂ワニス1を作製した。
樹脂ワニス1に含まれる軟磁性体粒子の粒度分布は、45μm及び0.2μmに2つのピークを有していた。また、50μmのピークに帰属する軟磁性体粒子についての平均アスペクト比は、50であった。
樹脂ワニス1をギャップ200μmに設定したアプリケーターでポリイミドフィルム上に塗工し塗膜を作製した。その後、50℃で1時間乾燥し、150℃で1時間硬化させて実施例の試験片を得た。
【0063】
[比較例]
軟磁性体扁平粉末としてFe-Si-Al合金(センダスト粉末、山陽特殊製鋼株式会社、平均粒子径45μm、アスペクト比45)を32質量部、樹脂としてエポキシ樹脂を37質量部、硬化促進剤としてイミダゾール化合物を2質量部、溶剤として酢酸ブチルを29質量部混合し樹脂ワニス2を作製した。
樹脂ワニス2に含まれる軟磁性体粒子の粒度分布は、45μmに1つのピークを有していた。
樹脂ワニス2をギャップ200μmに設定したアプリケーターでポリイミドフィルム上に塗工し塗膜を作製した。その後、50℃で1時間乾燥し、150℃で1時間硬化させて比較例の試験片を得た。
【0064】
<評価>
得られた試験片の比透磁率を測定した。比透磁率の測定には、キーサイト・テクノロジー社製のE4991Aを用いた。
図1に実施例及び比較例で作製した試験片の比透磁率の測定結果を示す。軟磁性体扁平粒子と磁性体微粒子とを混合した実施例の方が比較例に比較して高い比透磁率が得られた。
【0065】
以上のように、軟磁性体を原料とした電磁波シールド用組成物を作製するときに、軟磁性体扁平粒子と軟磁性体微粒子を混合して軟磁性体粒子の粒度分布が少なくとも2つのピークを有するようにすることで、電磁波シールド膜の比透磁率を高くすることができることがわかる。
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-01-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟磁性体粒子と樹脂とを含有し、
前記軟磁性体粒子の粒度分布が、少なくとも2つのピークを有し、
前記少なくとも2つのピークのうちの大粒子径側から2番目に位置するピークの頂点が、前記粒度分布における0.2μm以下の範囲に位置する電磁波シールド用組成物。
【請求項2】
前記少なくとも2つのピークのうちの最も大粒子径側のピークの頂点が、前記粒度分布における10μm以上の範囲に位置する請求項1に記載の電磁波シールド用組成物。
【請求項3】
前記最も大粒子径側のピークに帰属する前記軟磁性体粒子についての平均アスペクト比が、2以上である請求項2に記載の電磁波シールド用組成物。
【請求項4】
前記粒度分布における、前記最も大粒子径側のピークの頂点をAμmとし、前記大粒子径側から2番目に位置するピークの頂点をBμmとしたときに、比(A/B)が、10以上である請求項1~請求項のいずれか1項に記載の電磁波シールド用組成物。
【請求項5】
前記軟磁性体粒子が、鉄、鉄合金又はフェライトの粒子を含む請求項1~請求項のいずれか1項に記載の電磁波シールド用組成物。
【請求項6】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の電磁波シールド用組成物を含む樹脂組成物層を有する電磁波シールド用シート。
【請求項7】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の電磁波シールド用組成物により形成された電磁波シールド膜。
【請求項8】
請求項に記載の電磁波シールド膜により覆われた領域を有する電子部品装置。