(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023748
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】薬液供給装置
(51)【国際特許分類】
E03D 9/02 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
E03D9/02
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023214943
(22)【出願日】2023-12-20
(62)【分割の表示】P 2020063826の分割
【原出願日】2020-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】笠川 郁
(72)【発明者】
【氏名】中谷 耕治
(72)【発明者】
【氏名】中山 裕司
(72)【発明者】
【氏名】羅 丹
(57)【要約】
【課題】設置場所の確保が容易であるとともに、安定して薬液を供給することが可能な薬液供給装置を提供する。
【解決手段】薬液供給装置は、便器に供給される薬液が収容される内部空間を有する容器と、前記内部空間に連通し、前記薬液を前記内部空間から前記便器内に洗浄水を供給する貯水タンク内又は前記便器内まで案内する通路を画定する、可撓性を有するチューブと、前記薬液を前記内部空間から受け取り、前記通路に供給することにより、前記内部空間を前記通路に間接的に連通させる接続部材と、を備える。前記接続部材は、前記容器と接続されるカバー部材と、前記カバー部材を収容する下容器と、を含む。前記カバー部材は、基台と、前記基台の上面から前記容器に向けて起立する穿刺部と、を有する。前記下容器は、前記チューブと接続される、または、前記チューブと他の要素を介して接続される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器に供給される薬液が収容される内部空間を有する容器と、
前記内部空間に連通し、前記内部空間から送り出された前記薬液を前記便器内に洗浄水を供給する貯水タンク内又は前記便器内まで案内する通路を画定する、可撓性を有するチューブと、
前記薬液を前記内部空間から受け取り、前記通路に供給することにより、前記内部空間を前記通路に間接的に連通させる接続部材と、を備え、
前記接続部材は、
前記容器と接続されるカバー部材と、
前記カバー部材を収容する下容器と、を含み、
前記カバー部材は、
基台と、
前記基台の上面から前記容器に向けて起立する穿刺部と、を有し、
前記下容器は、前記チューブと接続される、または、前記チューブと他の要素を介して接続される、
薬液供給装置。
【請求項2】
前記チューブは、第1要素と第2要素との間に挟まれるように設置され、
前記第1要素は、前記貯水タンクに含まれるタンク本体であり、かつ、前記第2要素は、前記貯水タンクに含まれる前記タンク本体の蓋である、或いは、前記第1要素は、前記便器のリムであり、かつ、前記第2要素は、前記便器に取り付けられた便座である、
請求項1に記載の薬液供給装置。
【請求項3】
前記通路の閉塞を防止するべく、前記第1要素と前記第2要素との間に挟まれるように設置されるスペーサ
をさらに備える、
請求項2に記載の薬液供給装置。
【請求項4】
前記チューブは、前記第1要素と前記第2要素との間に挟まれる部分において部分的に剛性を有する、
或いは、
前記薬液供給装置は、前記チューブにおいて前記第1要素と前記第2要素との間に挟まれる部分に取り付けられる、剛性を有するガード部材をさらに備える、
請求項2又は3に記載の薬液供給装置。
【請求項5】
前記接続部材は、前記内部空間から受け取った前記薬液を貯留する貯留空間を有するリザーバーをさらに有し、
前記チューブは、前記通路が前記貯留空間に連通するように前記リザーバーに接続され、前記リザーバーは、前記下容器と接続され、前記貯留空間内に貯留される前記薬液を前記通路に供給する、
請求項1から4のいずれかに記載の薬液供給装置。
【請求項6】
前記容器が前記貯水タンクに含まれるタンク本体の蓋上、前記貯水タンクの側方、又は前記便器の側方に設置されるように支持する支持部材
をさらに備える、
請求項1から5のいずれかに記載の薬液供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器に薬液を供給する薬液供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、トイレの貯水タンクの上部の手洗い用の給水受け皿に設置され、洗浄、消臭及び芳香のための薬液を貯水タンク内の洗浄水に供給する薬液供給装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、便器の内面上にゲル状の薬剤を吐出し、スタンプのように付着させる吐出器具も知られている(例えば、特許文献2及び3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-79496号公報
【特許文献2】特開2016-124596号公報
【特許文献3】特開2017-218234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような薬液供給装置は、手洗い用の給水受け皿が存在しない場合には、設置することができない。また、たとえ給水受け皿があったとしても、例えば、給水受け皿に装飾品が置かれている等の事情がある場合には、やはり薬液供給装置を設置することができない。一方、特許文献2及び3のような吐出器具が用いられる場合、一回のスタンプで便器の内面上に付着させておくことができる薬剤の量が限られるとともに、便器の内面上の薬剤がフラッシュで剥がれてしまう虞もあり、安定して薬剤を供給することができない。
【0005】
本発明は、設置場所の確保が容易であるとともに、安定して薬液を供給することが可能な薬液供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る薬液供給装置は、便器に供給される薬液が収容される内部空間を有する容器と、前記内部空間に連通し、前記内部空間から送り出された前記薬液を前記便器内に洗浄水を供給する貯水タンク内又は前記便器内まで案内する通路を画定する、可撓性を有するチューブとを備える。
【0007】
本発明の第2観点に係る薬液供給装置は、第1観点に係る薬液供給装置であって、前記チューブは、第1要素と第2要素との間に挟まれるように設置される。前記第1要素は、前記貯水タンクに含まれるタンク本体であり、かつ、前記第2要素は、前記貯水タンクに含まれる前記タンク本体の蓋である、或いは、前記第1要素は、前記便器のリムであり、かつ、前記第2要素は、前記便器に取り付けられた便座である。
【0008】
本発明の第3観点に係る薬液供給装置は、第2観点に係る薬液供給装置であって、前記通路の閉塞を防止するべく、前記第1要素と前記第2要素との間に挟まれるように設置されるスペーサをさらに備える。
【0009】
本発明の第4観点に係る薬液供給装置は、第2観点又は第3観点に係る薬液供給装置であって、前記チューブは、前記第1要素と前記第2要素との間に挟まれる部分において部分的に剛性を有する、或いは、前記薬液供給装置は、前記チューブにおいて前記第1要素と前記第2要素との間に挟まれる部分に取り付けられる、剛性を有するガード部材をさらに備える。
【0010】
本発明の第5観点に係る薬液供給装置は、第1観点から第4観点のいずれかに係る薬液供給装置であって、前記容器及び前記チューブに接続され、前記薬液を前記内部空間から受け取り、前記通路に供給することにより、前記内部空間を前記通路に間接的に連通させる接続部材をさらに備える。
【0011】
本発明の第6観点に係る薬液供給装置は、第5観点に係る薬液供給装置であって、前記接続部材は、前記内部空間から受け取った前記薬液を貯留する貯留空間を有するリザーバーを有する。前記チューブは、前記通路が前記貯留空間に連通するように前記リザーバーに接続され、前記リザーバーは、前記貯留空間内に貯留される前記薬液を前記通路に供給する。
【0012】
本発明の第7観点に係る薬液供給装置は、第1観点から第6観点のいずれかに係る薬液供給装置であって、前記容器が前記貯水タンクに含まれるタンク本体の蓋上、前記貯水タンクの側方、又は前記便器の側方に設置されるように支持する支持部材をさらに備える。
【発明の効果】
【0013】
以上の観点によれば、容器に収容される薬液を便器に供給するために、容器に連通するチューブが使用される。このチューブは、可撓性を有し、様々な形状に変形することができるため、容器がどのような場所に設置されようとも、容器内から送り出される薬液を貯水タンク内又は便器内まで容易に案内することができる。従って、薬液供給装置の設置場所の確保が容易であるとともに、安定して薬液を供給することできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る薬液供給装置の正面図。
【
図3】第1実施形態に係る薬液供給装置の設置例を示す図。
【
図4A】第1実施形態に係る接続部材を斜め上から視た斜視図。
【
図4B】第1実施形態に係る接続部材を斜め下から視た斜視図。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る薬液供給装置の正面図。
【
図7】第2実施形態に係る薬液供給装置の設置例を示す図。
【
図9】変形例に係る薬液供給装置の設置例を示す図。
【
図10】別の変形例に係る薬液供給装置の設置例を示す図。
【
図11】さらに変形例に係る薬液供給装置の設置例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の幾つかの実施形態に係る薬液供給装置について説明する。
【0016】
<1.第1実施形態>
<1-1.薬液供給装置の概略>
図1は、本発明の第1実施形態に係る薬液供給装置100の正面図であり、
図2は、その分解図であり、
図3は、薬液供給装置100の典型的な設置例を示す図である。薬液供給装置100は、トイレの便器に薬液を供給する装置であり、これらの図に示す通り、便器に供給される薬液が収容される容器1と、容器1に接続されるチューブ2とを備える。なお、ここでの説明においては、特に断らない限り、「上(天面)」「下(底面)」「左」「右」は、
図1及び
図2に示す通りに定義され、「前(正面)」は、
図1及び
図2の手前側、「後(背面)」は、
図1及び
図2の奥側を意味する。
【0017】
薬液供給装置100は、便器内に洗浄水を供給する貯水タンク9内に薬液を供給できるように、貯水タンク9の周辺に設置される。貯水タンク9は、上部が開口したタンク本体91と、タンク本体91の上部の開口を覆う蓋92とを含む。
図3に示すように、薬液供給装置100は、容器1が貯水タンク9の蓋92の上面上に配置され、チューブ2がタンク本体91と蓋92との間に挟まれるように設置される。なお、ここでの蓋92の上面は、略水平面を構成しており、蓋92の上面に手洗い用の給水受け皿は配置されていない。
【0018】
本実施形態の薬液供給装置100は、スペーサ3をさらに備える。チューブ2は、その内部に、容器1に収容される薬液を貯水タンク9内まで案内する通路S2を画定する。スペーサ3は、チューブ2内の薬液の通路S2の閉塞を防止するべく、チューブ2と同様に、タンク本体91と蓋92との間に挟まれるように設置される。
【0019】
また、本実施形態の薬液供給装置100は、容器1及びチューブ2に接続される接続部材4をさらに備える。チューブ2は、接続部材4を介して、容器1に間接的に接続される。詳細は後述するが、接続部材4は、容器1からの薬液の供給量を制御する役割を果たす。
【0020】
薬液には、洗浄剤、除菌剤、消臭剤及び芳香剤を含む群から選択される1以上の要素が含有され、その他、着色料が含有されてもよい。薬液は、洗浄水と混合され、薬液に含有される成分の効能を便器内、又はトイレの部屋内に提供する。例えば、薬液に洗浄剤及び除菌剤が含まれる場合には、便器を洗浄し、除菌することができ、消臭剤及び芳香剤が含まれる場合には、トイレの部屋内において嫌な臭いを消臭し、良い香りを漂わせることができる。
【0021】
<1-2.各部の構成>
<1-2-1.容器>
図1~
図3に示すように、容器1は、薬液が収容される内部空間S1を有する容器本体10と、内部空間S1を閉じるキャップ12とを有する。容器本体10の形状は、特に限定されないが、本実施形態では、左右の幅が奥行方向の幅よりも広く、左右方向にやや扁平なドーム状である。
【0022】
容器本体10は、その下部中央に、内部空間S1と外部空間とを連通させる排出口部11を有し、排出口部11は、上下方向に延びる円筒状である。キャップ12は、排出口部11を覆い、これを閉じるように、排出口部11に固定される。
図2には、排出口部11の中心軸を通り、左右方向に平行な面で切断したときの、排出口部11及びキャップ12の断面が、参考のため、部分的に点線で示されている。
【0023】
容器1を構成する材料は、特に限定されないが、典型的には、硬質の樹脂又は金属を使用することができる。例えば、容器本体10は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂から好ましく構成することができる。キャップ12についても同様である。
【0024】
<1-2-2.接続部材>
図4A~
図4Dは、接続部材4を様々な方向から視た図である。接続部材4は、容器1とチューブ2との間に、これらを接続するように配置される。
【0025】
図4A及び
図4Cに示すように、接続部材4は、矩形板状の基台40と、基台40の上面中央から起立する円筒状の穿刺部41とを有する。穿刺部41は、上下方向に延びる円筒の上部が斜めに切り取られた形状を有し、その上部が先鋭である。穿刺部41は、容器1のキャップ12の底面を下方から突き破るようにして、排出口部11内に挿入される。接続部材4は、円筒状の周壁部42をさらに有し、周壁部42は、穿刺部41から間隔をあけて、穿刺部41を囲むように基台40の上面から起立する。穿刺部41の外面と周壁部42の内面とにより囲まれる円環状の空間は、容器1のキャップ12及び排出口部11を受け取る。このとき、キャップ12の外面と周壁部42の内面とが密に接触し、両者の間に生じる摩擦力により、容器1に対し接続部材4が固定される。
【0026】
また、
図4B及び
図4Dに示すように、接続部材4は、基台40の下面中央から垂下する細長い円柱状の棒体43をさらに有する。棒体43の外面には、棒体43の全長に亘り、上下方向に延びる微細溝S4が形成されている。微細溝S4は、棒体43のみならず、基台40を貫通するように延びており、穿刺部41の内側の空間S3に連通している。従って、穿刺部41がキャップ12を突き破り、容器1と接続部材4とが接続された状態では、微細溝S4は、穿刺部41の内側の空間S3を介して容器1の内部空間S1に連通し、内部空間S1から送り出される薬液が流れる通路となる。本実施形態では、微細溝S4の断面は、底側が先鋭なV字状である。
【0027】
棒体43は、チューブ2の一端部において、チューブ2内の通路S2に挿入される。このとき、チューブ2の内面と棒体43の外面とが密に接触し、両者の間に生じる摩擦力により、接続部材4に対しチューブ2が固定される。以上の結果、微細溝S4と通路S2とが連通し、内部空間S1から送り出された薬液は、微細溝S4を通過した後、さらに通路S2へと送られる。このとき、薬液は、重力の他、毛細管現象の作用により、ゆっくりとした速度で内部空間S1から微細溝S4へ、さらには通路S2へと流れ出す。
【0028】
接続部材4は、円筒状の周壁部44をさらに有し、周壁部44は、棒体43から間隔をあけて、棒体43を囲むように基台40の下面から垂下する。棒体43の外面と周壁部44の内面とにより囲まれる円環状の空間は、棒体43に取り付けられたチューブ2の一端部を受け取る。
【0029】
以上の通り、接続部材4は、容器1の内部空間S1をチューブ2内の通路S2に間接的に連通させ、内部空間S1から薬液を受け取り、これを通路S2に供給する。接続部材4は、微細溝S4の断面積が適宜調整されていることにより、容器1からの薬液の供給量を制御することができ、より下流のチューブ2内の通路S2、ひいては貯水タンク9内へと、所望の流量の薬液を安定して供給する。
【0030】
また、接続部材4には、容器1が貯水タンク9の蓋92上に設置されるように支持する支持部材45が接続される。支持部材45は、容器1が所定の位置に安定して設置されるように支持する役割を果たす。接続部材4と支持部材45とは、一体的に形成してもよいし、別々に形成した後に、連結してもよい。本実施形態では、支持部材45は、基台40の下面から垂下する複数本の脚部から構成され、これらの脚部は、上下方向に延び、略矩形状の基台40の4つのコーナーにそれぞれ配置される。
図3に示すように、支持部材45を構成するこれらの脚部は、貯水タンク9の蓋92の上面上に起立するように設置され、容器1が蓋92の上面上に安定して設置されるように支持する。
【0031】
接続部材4及び支持部材45を構成する材料は、特に限定されないが、典型的には、硬質の樹脂又は金属を使用することができる。例えば、接続部材4は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂から好ましく構成することができる。支持部材45についても、同様である。
【0032】
<1-2-3.チューブ>
チューブ2は、その内部に、薬液が流れる通路S2を画定する。上記の通り、チューブ2の一端部は、接続部材4の棒体43に、これを外側から覆うように接続される。また、上記の通り、通路S2は、チューブ2の一端部と棒体43とが接続され、容器1と穿刺部41とが接続された状態では、穿刺部41の内側の空間S3及び微細溝S4を介して、容器1の内部空間S1に連通する。また、チューブ2は、
図3に示す通り、その中間部がタンク本体91と蓋92との間に挟まれ、その他端部が貯水タンク9内に収容される。従って、通路S2は、内部空間S1から送り出された薬液を貯水タンク9内まで案内することができる。
【0033】
チューブ2は、可撓性を有し、様々な形状に変形することができる。従って、チューブ2は、自在に折れ曲がることができるため、容器1がどのような場所に設置されようとも、接続部材4を介して容器1と貯水タンク9内とを接続することができる。以上により、薬液供給装置100は、その設置場所の確保が容易であるとともに、容器1内から貯水タンク9内まで安定して薬液を供給することできる。
【0034】
チューブ2を構成する材料は、可撓性を有する限り、特に限定されないが、典型的には、ゴム、熱可塑性エラストマー、又は軟質の樹脂を使用することができる。例えば、チューブ2は、シリコーンゴムから好ましく構成することができる。なお、チューブ2の内面の材質に対する薬液の接触角は、90°以下であることが好ましい。この場合、薬液がチューブ2内を速すぎず、遅すぎず、適当な速度で流れることができる。
【0035】
<1-2-4.スペーサ>
図3に示すように、スペーサ3は、チューブ2と同様に、貯水タンク9のタンク本体91と蓋92との間に挟まれるように設置される。スペーサ3は、上下方向に一定の厚みを有し、タンク本体91と蓋92との間の間隔を維持する。スペーサ3の数は、特に限定されない。スペーサ3は、タンク本体91の環状の上部において、チューブ2の近傍のみに1個又は複数個、配置されてもよいし、タンク本体91の環状の上部の周方向において、その周方向に沿って所定の間隔をあけて複数個、配置されてもよい。
【0036】
図3の例では、スペーサ3は、下面に凹部を有し、当該凹部でタンク本体91の上部を受け取り、これを上方から覆う。従って、スペーサ3は、タンク本体91の上部にしっかりと引っ掛かり、タンク本体91から容易に脱落することがない。
【0037】
チューブ2は、上記の通り、可撓性を有する。しかしながら、チューブ2は、タンク本体91と蓋92との間に挟まれたときにも、これらの間にスペーサ3によりチューブ2が配置される空間が確保されるため、蓋92の重量のせいで過度に潰れることがなく、或いは全く潰れない。従って、通路S2が閉塞され、通路S2内を薬液が流れることができなくなる事態が防止される。また、スペーサ3は、その個数及びその配置を調整することにより、タンク本体91と蓋92との間に挟まれるチューブ2の厚みのせいで、タンク本体91に対し蓋92がガタつくことも防止することができる。
【0038】
スペーサ3を構成する材料は、特に限定されないが、典型的には、硬質の樹脂、ゴム、又は熱可塑性エラストマーを使用することができる。
【0039】
<2.第2実施形態>
<2-1.薬液供給装置の概略>
図5は、本発明の第2実施形態に係る薬液供給装置200の正面図であり、
図6は、その分解図であり、
図7は、薬液供給装置200の典型的な設置例を示す図である。薬液供給装置200も、薬液供給装置100と同様に、トイレの便器に薬液を供給する装置である。以下の説明では、薬液供給装置100及び200との間で共通する要素については、同じ参照符号を付して、適宜説明を省略する。ここでの説明においては、特に断らない限り、「上(天面)」「下(底面)」「左」「右」は、
図5及び
図6に示す通りに定義され、「前(正面)」は、
図5及び
図6の手前側、「後(背面)」は、
図5及び
図6の奥側を意味する。
【0040】
図5~
図7に示す通り、薬液供給装置200も、薬液が収容される容器1と、容器1に接続されるチューブ2とを備え、貯水タンク9内に薬液を供給できるように、貯水タンク9の周辺に設置される。
図7に示すように、薬液供給装置200も、容器1が貯水タンク9の蓋92の上面上に配置され、チューブ2がタンク本体91と蓋92との間に挟まれるように設置される。また、薬液供給装置200も、チューブ2内の通路S2の閉塞を防止するべく、タンク本体91と蓋92との間に挟まれるスペーサ3をさらに備える。また、スペーサ3は、チューブ2の厚みのせいでタンク本体91に対し蓋92がガタつくことも防止することができる。
【0041】
一方、薬液供給装置200は、接続部材4に代えて、容器1とチューブ2との間に配置されるカバー部材5、下容器6及びリザーバー7をさらに備える。チューブ2は、これらの要素5~7を介して、間接的に容器1に接続される。これらの要素5~7は、全体として、容器1とチューブ2とを接続する接続部材として機能し、接続部材4と同様に、容器1からの薬液の供給量を制御する役割を果たす。
【0042】
<2-2.各部の構成>
以下、カバー部材5、下容器6及びリザーバー7の詳細について、順に説明する。
【0043】
<2-2-1.カバー部材>
図6に示すように、カバー部材5は、円形板状の基台50と、基台50の上面中央から起立する円筒状の穿刺部51とを有する。なお、
図6では、穿刺部51の中心軸を通り、左右方向に平行な面で切断したときの、カバー部材5及び下容器6の断面が、参考のため、部分的に点線で示されている。穿刺部51は、上下方向に延びる円筒の上部が斜めに切り取られた形状を有し、その上部が先鋭である。穿刺部51は、容器1のキャップ12の底面を下方から突き破るようにして、排出口部11内に挿入される。カバー部材5は、円筒状の周壁部52をさらに有し、周壁部52は、穿刺部51から間隔をあけて、穿刺部51を囲むように基台50の外周縁から上方へ起立する。穿刺部51の外面と周壁部52の内面とにより囲まれる環状の空間は、容器1のキャップ12及び排出口部11を受け取る。
【0044】
また、カバー部材5は、基台50の下面中央から垂下する円筒状のポート部材53をさらに有する。基台50の中央には、微細な開口が形成されており、ポート部材53は、当該開口を囲むように配置される。従って、穿刺部51の内側の空間S21は、ポート部材53の内側の空間S22と連通している。なお、ポート部材53は、穿刺部51より径が小さい。
【0045】
カバー部材5は、周壁部52の上端縁に連続し、当該上端縁から径方向外側へ延びる環状の天面部54をさらに有する。天面部54の外周縁は、矩形状である。また、カバー部材5は、天面部54の外周縁から垂下する周壁部55をさらに有する。周壁部55は、角筒状である。周壁部55の左壁部及び右壁部の下部近傍からは、径方向外側へ左右一対の突起部55aが突出している。これらの突起部55aは、後述する下容器6の左右一対の爪部64に引っ掛けられることにより、下容器6とカバー部材5とを接続する。
【0046】
カバー部材5を構成する材料は、特に限定されないが、典型的には、硬質の樹脂又は金属を使用することができる。例えば、カバー部材5は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂から好ましく構成することができる。
【0047】
<2-2-2.下容器>
下容器6は、排出口部11及びキャップ12を含む容器1の下部を下方から受け取る皿状の容器である。下容器6は、底面部61と、底面部61から外方へ向かって上方に起立する外壁部62とを有する。下容器6は、外壁部62の内側において、底面部61の上面から起立する角筒状の周壁部63をさらに有し、周壁部63の内側の空間には、カバー部材5が収容される。このとき、カバー部材5の周壁部52の外面と周壁部55の内面とにより囲まれる角環状の空間に、周壁部63が受け取られる。底面部61の上面において、周壁部63から左右に間隔を空けた位置からは、左右一対の爪部64が起立している。これらの爪部64は、上述したカバー部材5の突起部55aに引っ掛かり、これにより、下容器6をカバー部材5に固定する。従って、下容器6は、カバー部材5から意図せず脱落することがない。
【0048】
下容器6は、底面部61の下面中央から垂下する板部材65をさらに有する。板部材65は、その幅方向が左右方向に広がり、その厚み方向が前後方向に広がる。板部材65の上面中央からは、円筒状の突起部66が起立する。底面部61の中央には、開口が形成されている。突起部66は、底面部61の中央の開口を貫通するように、上下方向に延びる。突起部66は、上下方向に延びる円筒の上部が斜めに切り取られた形状を有し、その上部が先鋭である。板部材65の前後の表面には、上下方向に延びる多数本の微細溝S25が形成されている。
【0049】
カバー部材5が周壁部63の内側の空間に収容され、下容器6とカバー部材5とが接続された状態では、ポート部材53の内側の空間S22内に、突起部66が挿入される。突起部66の外面には、突起部66の全長に亘り、上下方向に延びる微細溝S24が形成されている。従って、下容器6とカバー部材5とが接続され、かつ、穿刺部51がキャップ12を突き破り、容器1とカバー部材5とが接続された状態では、微細溝S24は、容器1の内部空間S1に連通する。より詳細には、微細溝S24は、穿刺部51の内側の空間S21を介して、容器1の内部空間S1に連通し、内部空間S1から送り出される薬液が流れる通路となる。
【0050】
内部空間S1から送り出された薬液は、微細溝S24を通過した後、突起部66の下方の板部材65に達し、板部材65の微細溝S25に流れ込む。このとき、薬液は、重力の他、毛細管現象の作用により、ゆっくりとした速度で内部空間S1から微細溝S24へ、さらには微細溝S25へと流れ込む。板部材65の微細溝S25の下端まで達した薬液は、その後、板部材65から落下し、リザーバー7に収容される。微細溝S25も、内部空間S1から送り出された薬液が流れる通路となる。
【0051】
下容器6は、角筒状の周壁部67をさらに有し、周壁部67は、板部材65から間隔をあけて、板部材65を囲むように底面部61の下面から垂下する。周壁部67の前面中央及び後面中央には、上下方向に延びる前後一対の棒体68が配置される。詳細は、後述するが、前後一対の棒体68は、リザーバー7に対する下容器6の位置決めに使用される。
【0052】
また、下容器6は、外壁部62から下方へ延びる支持部69をさらに有する。本実施形態では、支持部69は、複数本の脚部から構成され、これらの脚部は、上下方向に延び、外壁部62の前面下部において左右方向に一定の間隔をあけて2つ配置され、さらに外壁部62の後面下部において左右方向に一定の間隔をあけて2つ配置される。
【0053】
詳細は後述するが、本実施形態では、下容器6の下方にリザーバー7が配置され、このリザーバー7を介して、容器1が貯水タンク9の蓋92上に設置される。しかし、蓋92に手洗い用の給水受け皿が存在する場合には、リザーバー7を使用せず、カバー部材5及び下容器6のみを使用して、容器1を給水受け皿に設置することもできる。このとき、前後一対の棒体68は、板部材65とともに、貯水タンク9内へ洗浄水を流し込む、給水受け皿に形成される開口に挿入される。また、このとき、支持部69を構成する複数本の脚部は、給水受け皿上に起立するように設置される。支持部69は、容器1が給水受け皿内に安定して設置されるように、容器1を支持する。
【0054】
下容器6を構成する材料は、特に限定されないが、典型的には、硬質の樹脂又は金属を使用することができる。例えば、下容器6は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂から好ましく構成することができる。
【0055】
<2-2-3.リザーバー>
リザーバー7は、上部が開口した箱形であり、その内部に薬液を貯留する貯留空間S26を有する。リザーバー7は、下容器6の下方に配置され、容器1の内部空間S1からカバー部材5及び下容器6を介して薬液を受け取り、これを貯留空間S26内に一時的に貯留する。
【0056】
図8は、
図6のVIII-VIII線断面図ある。リザーバー7は、矩形状の底面部70と、底面部70の前縁、後縁、左縁及び右縁からそれぞれ起立する前壁部71、後壁部72、左壁部73及び右壁部74とを有する。また、リザーバー7は、これらの壁部71~74の上端縁に連続する角環状のフランジ76をさらに有する。
【0057】
前壁部71及び後壁部72の内面上の左右方向の中央には、上下方向に延びる前後一対の凹部75が形成されている。これらの凹部75には、下容器6の前後一対の棒体68が挿入され、これにより、リザーバー7に対し下容器6が位置決めされ、接続される。このとき、下容器6の底面部61は、フランジ76の上面上に載置される。なお、このとき、支持部69を構成する複数本の脚部は、
図5に示すように、フランジ76と干渉しない位置に配置される。
【0058】
リザーバー7の右壁部74において底面部70の近傍には、排出口が形成されており、当該排出口には、チューブ2が挿入される。チューブ2は、図示されない固定手段により、リザーバー7に対し固定されている。以上より、チューブ2は、その内部の通路S2が貯留空間S26に連通するように、リザーバー7に接続される。
【0059】
リザーバー7と下容器6とが接続された状態では、下容器6の板部材65及び周壁部67は、貯留空間S26内に受け取られる。上記の通り、薬液は、容器1の内部空間S1から送りされた後、各種経路を辿り、下容器6の板部材65の微細溝S25に達する。その後、薬液は、微細溝S25に沿って下方へ流れ、微細溝S25からリザーバー7内に落下する。リザーバー7は、こうして貯留空間S26に貯留される薬液を、右壁部74の排出口を介して、チューブ2内の通路S2に供給する。その後、薬液は、通路S2を通過し、最終的に貯水タンク9内まで案内される。
【0060】
リザーバー7を構成する材料は、特に限定されないが、典型的には、硬質の樹脂又は金属を使用することができる。例えば、リザーバー7は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂から好ましく構成することができる。
【0061】
以上の通り、カバー部材5、下容器6及びリザーバー7は、容器1の内部空間S1をチューブ2内の通路S2に間接的に連通させる。これらの要素5~7は、内部空間S1から薬液を受け取り、これを通路S2に供給する。これらの要素5~7は、薬液が通過する微細溝S24及びS25の断面積が適宜調整されていることにより、容器1からの薬液の供給量を制御することができ、より下流の通路S2、ひいては貯水タンク9内へと、所望の流量の薬液を安定して供給する。また、薬液供給装置200も、可撓性を有するチューブ2を有するため、薬液供給装置100と同様に、設置場所の確保が容易である。
【0062】
<3.変形例>
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
【0063】
<3-1>
上記実施形態では、容器1は、貯水タンク9の蓋92上に設置され、チューブ2は、タンク本体91と蓋92との間に挟まれるように設置された。しかしながら、薬液供給装置100及び200の設置の態様は、この例に限定されず、様々な場所に設置することができる。
【0064】
例えば、
図9に示すように、容器1を貯水タンク9の側方に設置してもよい。この場合、支持部材45を、容器1が貯水タンク9の側方に設置されるように支持可能な形状へと、適宜改変することが好ましい。
【0065】
また、例えば、
図10に示すように、容器1を便器8の側方に設置し、チューブ2の一端部を便器8内に収容してもよい。この場合、チューブ2内の通路S2は、貯水タンク9を介さずに、薬液を便器8内まで直接案内することができる。また、この場合、支持部材45を、容器1が便器8の側方に設置されるように支持可能な形状へと、適宜改変することが好ましい。また、この場合、チューブ2は、便器8のリム81と、便器8に取り付けられた便座82との間に挟まれるように設置することができる。また、この場合、スペーサ3は、チューブ2と同様に、便器8のリム81と便座82との間に挟まれるように設置することが好ましい。
【0066】
なお、
図9及び
図10には、薬液供給装置100の変形例を示したが、薬液供給装置200についても、容器1を貯水タンク9の側方又は便器8の側方に設置できるように改変することができる。この場合、薬液供給装置200にも、支持部材45と同様の機能を果たす支持部材を設ければよい。
【0067】
<3-2>
上記実施形態において、スペーサ3を省略することができる。この場合、チューブ2において、タンク本体91と蓋92との間(或いは、便器8のリム81と便座82との間)に挟まれる部分が潰れないように、同部分が部分的に剛性を有するように構成してもよい。
【0068】
或いは、
図11に示すように、チューブ2において、タンク本体91と蓋92との間(或いは、便器8のリム81と便座82との間)に挟まれる部分が潰れないように、同部分に剛性を有するガード部材21を取り付けてもよい。例えば、ガード部材21は、硬質の樹脂等の硬質の材料から構成され、チューブ2が挿入される筒状部材として実現することができる。この場合、ガード部材21は、チューブ2の長手方向に沿って自在にスライド可能であることが好ましい。
【0069】
<3-3>
第1実施形態において、接続部材4を省略し、容器1の排出口部11にチューブ2を直接接続してもよい。同様に、第2実施形態においても、カバー部材5、下容器6及びリザーバー7を省略し、容器1の排出口部11にチューブ2を直接接続してもよい。
【符号の説明】
【0070】
100 薬液供給装置
1 容器
2 チューブ
21 ガード部材
3 スペーサ
4 接続部材
45 支持部材
7 リザーバー
S1 内部空間
S2 通路
S26 貯留空間
8 便器
81 リム
82 便座
9 貯水タンク
91 タンク本体
92 蓋