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  • 特開-膜電極接合体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024047
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】膜電極接合体
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1004 20160101AFI20240214BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20240214BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20240214BHJP
   H01M 8/1058 20160101ALI20240214BHJP
   H01M 8/1039 20160101ALI20240214BHJP
   H01M 8/1023 20160101ALI20240214BHJP
   H01M 8/1062 20160101ALI20240214BHJP
【FI】
H01M8/1004
H01M8/10 101
H01M4/86 B
H01M8/1058
H01M8/1039
H01M8/1023
H01M8/1062
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024000109
(22)【出願日】2024-01-04
(62)【分割の表示】P 2021505141の分割
【原出願日】2020-03-12
(31)【優先権主張番号】P 2019046159
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 貢
(57)【要約】
【課題】触媒層の割れを抑制できる膜電極接合体の提供。
【解決手段】本発明の膜電極接合体は、プロトン伝導性ポリマーを含む触媒層を有するアノードと、プロトン伝導性ポリマーを含む触媒層を有するカソードと、アノードとカソードとの間に配置された固体高分子電解質膜と、を有する膜電極接合体であって、アノードおよびカソードの少なくとも一方の触媒層に含まれるプロトン伝導性ポリマーが、環状エーテル構造を含む単位を有し、スルホン酸型官能基を有するポリマー(H)であり、固体高分子電解質膜が、含フッ素ポリマーを含む多孔体と、スルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマー(S)と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトン伝導性ポリマーおよび触媒を含む触媒層を有するアノードと、プロトン伝導性ポリマーおよび触媒を含む触媒層を有するカソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置された固体高分子電解質膜と、を有する膜電極接合体であって、
前記アノードおよび前記カソードの少なくとも一方の前記触媒層に含まれる前記プロトン伝導性ポリマーが、環状エーテル構造を含む単位を有し、スルホン酸型官能基を有するポリマー(H)であり、
前記固体高分子電解質膜が、含フッ素ポリマーを含む多孔体と、スルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマー(S)と、を含むことを特徴とする、膜電極接合体。
【請求項2】
前記環状エーテル構造を含む単位が、式(u12)で表される単位および式(u22)で表される単位からなる群より選択される少なくとも1種の単位を含む、請求項1に記載の膜電極接合体。
【化1】
式(u12)中、R21は、炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基または炭素-炭素結合間にエーテル結合性酸素原子を有する炭素数2~6のペルフルオロアルキレン基であり、R22は、フッ素原子、炭素数1~6のペルフルオロアルキル基、炭素-炭素結合間にエーテル結合性酸素原子を有する炭素数2~6のペルフルオロアルキル基または-R21(SOX(SOで表される基である。Mは、H、1価の金属カチオンまたは1以上の水素原子が炭化水素基で置換されていてもよいアンモニウムイオンであり、Rは、エーテル結合性酸素原子を有してもよい直鎖または分岐のペルフルオロアルキル基であり、Xは、酸素原子、窒素原子または炭素原子であり、Xが酸素原子の場合a=0であり、Xが窒素原子の場合a=1であり、Xが炭素原子の場合a=2である。
式(u22)中、sは、0または1であり、R51およびR52はそれぞれ独立に、フッ素原子、炭素数1~5のペルフルオロアルキル基または互いに連結して形成されたスピロ環(ただし、sが0の場合)であり、R53およびR54はそれぞれ独立に、フッ素原子または炭素数1~5のペルフルオロアルキル基であり、R55は、フッ素原子、炭素数1~5のペルフルオロアルキル基または炭素数1~5のペルフルオロアルコキシ基である。
【請求項3】
前記環状エーテル構造を含む単位の含有量が、前記ポリマー(H)が含む全単位に対して、30モル%以上である、請求項1または2に記載の膜電極接合体。
【請求項4】
前記ポリマー(H)のイオン交換容量が、0.9~1.8ミリ当量/g乾燥樹脂である、請求項1~3のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
【請求項5】
前記ポリマー(H)中のスルホン酸型官能基がスルホン酸型基に変換し得る基であるポリマーである、前駆体ポリマー(H)のTQ値が、200~300℃である、請求項1~4のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
TQ値:長さ1mm、内径1mmのノズルを用い、2.94MPaの押出し圧力の条件で前記前駆体ポリマー(H)の溶融押出しを行った際の押出し量が100mm/秒となる温度である。
【請求項6】
前記含フッ素ポリマー(S)が、式(u31)で表される単位、式(u32)で表される単位および式(u41)で表される単位からなる群より選択される少なくとも1種の単位を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
【化2】
式(u31)中、Zは、フッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、qは、0または1であり、mは、0~3の整数であり、pは、0または1であり、nは、1~12の整数であり、m+p>0である。Mは、H、1価の金属カチオンまたは1以上の水素原子が炭化水素基で置換されていてもよいアンモニウムイオンである。
式(u32)中、Qは、エーテル結合性酸素原子を有してもよいペルフルオロアルキレン基であり、Qは、単結合、または、エーテル結合性酸素原子を有してもよいペルフルオロアルキレン基であり、Yは、フッ素原子または1価のペルフルオロ有機基であり、qは、0または1であり、Rは、エーテル結合性酸素原子を有してもよい直鎖または分岐のペルフルオロアルキル基であり、Xは、酸素原子、窒素原子または炭素原子であり、Xが酸素原子の場合、該Xに結合する(SOのうちのaは0であり、Xが窒素原子の場合、該Xに結合する(SOのうちのaは1であり、Xが炭素原子の場合、該Xに結合する(SOのうちのaは2である。2個以上のR、aおよびXを含む場合、2個以上のR、aおよびXは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
式(u41)中、RF1およびRF2はそれぞれ独立に、炭素数1~3のペルフルオロアルキレン基であり、Zは、H、1価の金属カチオンまたは1以上の水素原子が炭化水素基で置換されていてもよいアンモニウムイオンである。2個のZは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【請求項7】
前記含フッ素ポリマー(S)のイオン交換容量が、0.9~2.5ミリ当量/g乾燥樹脂である、請求項1~6のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
【請求項8】
前記含フッ素ポリマー(S)中のスルホン酸型官能基がスルホン酸型基に変換し得る基であるポリマーである、前駆体ポリマー(S)のTQ値が、200~350℃である、請求項1~7のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
TQ値:長さ1mm、内径1mmのノズルを用い、2.94MPaの押出し圧力の条件で前記前駆体ポリマー(S)の溶融押出しを行った際の押出し量が100mm/秒となる温度である。
【請求項9】
前記多孔体の形態が、織布、不織布、発泡体またはフィルムである、請求項1~8のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
【請求項10】
前記多孔体に含まれる含フッ素ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、およびテトラフルオロエチレン-ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~9のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
【請求項11】
前記多孔体の平均孔径が、0.01~500μmである、請求項1~10のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
【請求項12】
前記多孔体の平均厚さが、1~300μmである、請求項1~11のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
【請求項13】
前記ポリマー(H)が、ペルフルオロモノマーに基づく単位、および/またはテトラフルオロエチレン(TFE)に基づく単位を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
【請求項14】
前記ポリマー(S)が、ペルフルオロモノマーに基づく単位、および/またはテトラフルオロエチレン(TFE)に基づく単位を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
【請求項15】
固体高分子形燃料電池に用いられる、請求項1~14のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜電極接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子燃料電池が有する膜電極接合体は、プロトン伝導性ポリマーを含む触媒層を有するアノードと、プロトン伝導性ポリマーを含む触媒層を有するカソードと、上記アノードと上記カソードとの間に配置された固体高分子電解質膜と、を有することが知られている。
特許文献1には、環状エーテル構造を有する単位を含むプロトン伝導性ポリマーを、アノードまたはカソードの触媒層に使用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/104380号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、固体高分子燃料電池は長期間に使用される場合があるので、これに含まれる膜電極接合体について耐久性のさらなる向上が求められている。
本発明者は、特許文献1に記載されているような、環状エーテル構造を有する単位を含むプロトン伝導性ポリマーを触媒層に使用した場合、触媒層の割れが生じる場合があることを知見した。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、触媒層の割れを抑制できる膜電極接合体の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、アノードおよびカソードの少なくとも一方の触媒層に含まれるプロトン伝導性ポリマーが、環状エーテル構造を含む単位を有し、スルホン酸型官能基を有する場合において、含フッ素ポリマーを含む多孔体とスルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーとを含む固体高分子電解質膜を用いれば、触媒層の割れを抑制できることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
[1] プロトン伝導性ポリマーおよび触媒を含む触媒層を有するアノードと、プロトン伝導性ポリマーおよび触媒を含む触媒層を有するカソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置された固体高分子電解質膜と、を有する膜電極接合体であって、
前記アノードおよび前記カソードの少なくとも一方の前記触媒層に含まれる前記プロトン伝導性ポリマーが、環状エーテル構造を含む単位を有し、スルホン酸型官能基を有するポリマー(H)であり、
前記固体高分子電解質膜が、含フッ素ポリマーを含む多孔体と、スルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマー(S)と、を含むことを特徴とする、膜電極接合体。
[2] 前記環状エーテル構造を含む単位が、後述の式(u12)で表される単位および後述の式(u22)で表される単位からなる群より選択される少なくとも1種の単位を含む、[1]に記載の膜電極接合体。
[3] 前記環状エーテル構造を含む単位の含有量が、前記ポリマー(H)が含む全単位に対して、30モル%以上である、[1]または[2]に記載の膜電極接合体。
[4] 前記ポリマー(H)のイオン交換容量が、0.9~1.8ミリ当量/g乾燥樹脂である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
[5] 前記ポリマー(H)中のスルホン酸型官能基がスルホン酸型基に変換し得る基であるポリマーである、前駆体ポリマー(H)のTQ値が、200~300℃である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
TQ値:長さ1mm、内径1mmのノズルを用い、2.94MPaの押出し圧力の条件で前記前駆体ポリマー(H)の溶融押出しを行った際の押出し量が100mm/秒となる温度である。
[6] 前記含フッ素ポリマー(S)が、後述の式(u31)で表される単位、後述の式(u32)で表される単位および後述の式(u41)で表される単位からなる群より選択される少なくとも1種の単位を有する、[1]~[5]のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
[7] 前記含フッ素ポリマー(S)のイオン交換容量が、0.9~2.5ミリ当量/g乾燥樹脂である、[1]~[6]のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
[8] 前記含フッ素ポリマー(S)中のスルホン酸型官能基がスルホン酸型基に変換し得る基であるポリマーである、前駆体ポリマー(S)のTQ値が、200~350℃である、[1]~[7]のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
TQ値:長さ1mm、内径1mmのノズルを用い、2.94MPaの押出し圧力の条件で前記前駆体ポリマー(S)の溶融押出しを行った際の押出し量が100mm/秒となる温度である。
[9] 前記多孔体の形態が、織布、不織布、発泡体またはフィルムである、[1]~[8]のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
[10] 前記多孔体に含まれる含フッ素ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、およびテトラフルオロエチレン-ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]~[9]のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
[11] 前記多孔体の平均孔径が、0.01~500μmである、[1]~[10]のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
[12] 前記多孔体の平均厚さが、1~300μmである、[1]~[11]のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
[13] 前記ポリマー(H)が、ペルフルオロモノマーに基づく単位、および/またはテトラフルオロエチレン(TFE)に基づく単位を有する、[1]~[12]のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
[14] 前記ポリマー(S)が、ペルフルオロモノマーに基づく単位、および/またはテトラフルオロエチレン(TFE)に基づく単位を有する、[1]~[13]のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
[15] 固体高分子形燃料電池に用いられる、[1]~[14]のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、触媒層の割れを抑制できる膜電極接合体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の膜電極接合体の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明における用語の意味は以下の通りである。
ポリマーにおける「単位」は、モノマーが重合して形成された、該モノマー1分子に由来する原子団を意味する。単位は、重合反応によって直接形成された原子団であってもよく、重合反応によって得られたポリマーを処理して該原子団の一部が別の構造に変換された原子団であってもよい。ポリマーが含む全単位に対する、それぞれの単位の含有量(モル%)は、ポリマーを核磁気共鳴スペクトル法により分析して求められる。
「スルホン酸型官能基」とは、スルホン酸基(-SOH)、またはスルホン酸塩基(-SO。ただし、Mはアルカリ金属または第4級アンモニウムカチオンである。)を意味する。
「前駆体基」とは、加水分解処理、酸型化処理、その他金属カチオンへの塩交換等の処理によって、スルホン酸型基に変換できる基を意味する。
「前駆体ポリマー」とは、ポリマー中のスルホン酸型官能基が前駆体基の状態であり、スルホン酸型官能基を有するポリマーに変換し得るポリマーを意味する。
「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
式(u11)で表される単位を単位(u11)と記す。他の式で表される単位も同様に記す。
また、式(m11)で表されるモノマーをモノマー(m11)と記す。他の式で表されるモノマーも同様に記す。
また、式(g1)で表される基を基(g1)と記す。他の式で表される基も同様に記す。
【0012】
本発明の膜電極接合体は、プロトン伝導性ポリマーおよび触媒を含む触媒層を有するアノードと、プロトン伝導性ポリマーおよび触媒を含む触媒層を有するカソードと、上記アノードと上記カソードとの間に配置された固体高分子電解質膜と、を有する膜電極接合体である。
また、上記アノードおよび上記カソードの少なくとも一方の上記触媒層に含まれる上記プロトン伝導性ポリマーが、環状エーテル構造を含む単位(以下、「環状エーテル構造単位」ともいう。)を有し、スルホン酸型官能基を有するポリマー(H)である。
また、固体高分子電解質膜が、含フッ素ポリマーを含む多孔体と、スルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマー(S)(以下、「ポリマー(S)」ともいう。)と、を含む。 本発明の膜電極接合体は、固体高分子形燃料電池に好適に用いられる。
本発明の膜電極接合体によれば、触媒層の割れを低減できる。この理由の詳細は明らかになっていないが、以下の理由によると推測される。
【0013】
環状エーテル構造単位を有するポリマー(H)を含む触媒層は、非環状の構造単位を含む触媒層と比較して、硬くなる傾向にある。そのため、固体高分子電解質膜とポリマー(H)を含む触媒層との応力差によって、触媒層が割れてしまう場合がある。
このような問題に対して、固体高分子電解質膜が含フッ素ポリマーを含む多孔体を有する場合、多孔体が補強材として機能して、上述の応力差が緩和される結果、触媒層の割れの発生を抑制できたと推測される。
【0014】
図1は、本発明の膜電極接合体の一例を示す断面図である。膜電極接合体10は、触媒層11およびガス拡散層12を有するアノード13と、触媒層11およびガス拡散層12を有するカソード14と、アノード13とカソード14との間に、触媒層11に接した状態で配置される固体高分子電解質膜15と、を有する。
以下の説明において、アノードおよびカソードを「電極」として総称する場合がある。
【0015】
[電極(アノードおよびカソード)]
アノード13およびカソード14はそれぞれ、触媒層11およびガス拡散層12を有する。
【0016】
<触媒層>
アノード13が有する触媒層11およびカソード14が有する触媒層11のうち、少なくとも一方に含まれるプロトン伝導性ポリマーが、ポリマー(H)であればよく、両方のプロトン伝導性ポリマーがポリマー(H)であってもよい。なお、一方の触媒層11に含まれるプロトン伝導性ポリマーがポリマー(H)であって、他方の触媒層11に含まれるプロトン伝導性ポリマーがポリマー(H)ではない場合、後者の触媒層11に含まれるプロトン伝導性ポリマーとしては、後述のポリマー(S)が好ましい。
本発明の膜電極接合体においては、ガス透過性という点から、少なくともカソードに含まれるプロトン伝導性ポリマーがポリマー(H)であるのが好ましい。
【0017】
触媒層の厚さは、触媒層中のガス拡散を容易にし、固体高分子形燃料電池の発電性能を向上できる点から、1~20μmが好ましく、3~10μmが特に好ましい。
触媒層の厚さは、触媒層の断面を走査型電子顕微鏡等によって観察して測定する。
【0018】
(ポリマー(H))
ポリマー(H)は、環状エーテル構造単位を有し、スルホン酸型官能基を有するポリマーである。
環状エーテル構造単位は、酸素透過性により優れた触媒層が得られる点から、単位(u11)、単位(u12)、単位(u13)、単位(u22)および単位(u24)からなる群より選択される少なくとも1種の単位を含むのが好ましく、単位(u12)および単位(u22)がより好ましく、単位(u22)が特に好ましい。
【0019】
【化1】
【0020】
11は、エーテル結合性酸素原子を有してもよい1価のペルフルオロ有機基、フッ素原子または-R17SOX(SO で表される基である。
1価のペルフルオロ有機基としては、ペルフルオロアルキル基が好ましい。ペルフルオロアルキル基がエーテル結合性酸素原子を有する場合、酸素原子の個数は、1個であっても2個以上であってもよい。また、酸素原子は、ペルフルオロアルキル基の炭素-炭素結合間に位置していてもよく、炭素原子結合末端に位置していてもよい。ペルフルオロアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよいが、直鎖状であるのが好ましい。
17は、エーテル結合性酸素原子を有してもよい2価のペルフルオロ有機基である。有機基は、炭素原子を1個以上有する基である。2価のペルフルオロ有機基としては、ペルフルオロアルキレン基が好ましい。ペルフルオロアルキレン基がエーテル結合性酸素原子を有する場合、酸素原子の個数は、1個であっても2個以上であってもよい。また、酸素原子は、ペルフルオロアルキレン基の炭素-炭素結合間に位置していてもよく、炭素原子結合末端に位置していてもよい。ペルフルオロアルキレン基は、直鎖状であっても分岐状であってもよいが、直鎖状であるのが好ましい。
は、H、1価の金属カチオン(例えば、カリウムイオン、ナトリウムイオン)または1以上の水素原子が炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基)で置換されていてもよいアンモニウムイオンであり、高導電性の観点から、Hが好ましい。
は、エーテル結合性酸素原子を有してもよい直鎖または分岐のペルフルオロアルキル基である。ペルフルオロアルキル基の炭素数は、1~8が好ましく、1~6が特に好ましい。2個以上のRを有する場合、2個以上のRは互いに同一であっても異なっていてもよい。
Xは、酸素原子、窒素原子または炭素原子である。Xが酸素原子の場合、該Xに結合する(SOのうちのaは0であり、Xが窒素原子の場合、該Xに結合する(SOのうちのaは1であり、Xが炭素原子の場合、該Xに結合する(SOのうちのaは2である。
-(SOX(SO基の具体例としては、スルホン酸基(-SO 基)、スルホンイミド基(-SON(SO基)、または、スルホンメチド基(-SOC(SO基)が挙げられる。
12、R13、R15およびR16はそれぞれ独立に、エーテル結合性酸素原子を有してもよい1価のペルフルオロ有機基またはフッ素原子である。1価のペルフルオロ有機基としては、ペルフルオロアルキル基が好ましい。R15およびR16は、重合反応性が高い点から、少なくとも一方がフッ素原子であるのが好ましく、両方がフッ素原子であるのが特に好ましい。
14は、エーテル結合性酸素原子を有してもよい1価のペルフルオロ有機基、フッ素原子または-R17SOX(SO で表される基である。1価のペルフルオロ有機基としては、ペルフルオロアルキル基が好ましい。ペルフルオロアルキル基がエーテル結合性酸素原子を有する場合、酸素原子の個数は、1個であっても2個以上であってもよい。また、酸素原子は、ペルフルオロアルキル基の炭素-炭素結合間に位置していてもよく、炭素原子結合末端に位置していてもよい。ペルフルオロアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよいが、直鎖状であるのが好ましい。
式(u11)中、2個以上のR17、X、a、およびMを含む場合、2個以上のR17、X、a、およびMは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0021】
単位(u11)は、単位(u11-1)または単位(u11-2)が好ましい。
【0022】
【化2】
【0023】
【化3】
【0024】
21は、炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基または炭素-炭素結合間にエーテル結合性酸素原子を有する炭素数2~6のペルフルオロアルキレン基である。ペルフルオロアルレン基がエーテル結合性酸素原子を有する場合、酸素原子の個数は、1個であっても2個以上であってもよい。ペルフルオロアルレン基は、直鎖状であっても分岐状であってもよいが、直鎖状であるのが好ましい。
22は、フッ素原子、炭素数1~6のペルフルオロアルキル基、炭素-炭素結合間にエーテル結合性酸素原子を有する炭素数2~6のペルフルオロアルキル基または-R21(SOX(SOで表される基である。ペルフルオロアルキル基がエーテル結合性酸素原子を有する場合、酸素原子の個数は、1個であっても2個以上であってもよい。ペルフルオロアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよいが、直鎖状であるのが好ましい。式(u12)中、2個のR21を含む場合、2個のR21は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
、R、Xおよびaはそれぞれ、式(u11)のM、R、Xおよびaと同義である。
【0025】
単位(u12)の具体例としては、単位(u12-1)および単位(u12-2)が挙げられる。式中、Mは、式(u11)のMと同義である。
【0026】
【化4】
【0027】
【化5】
【0028】
31は、フッ素原子、炭素数1~6のペルフルオロアルキル基、炭素-炭素結合間にエーテル結合性酸素原子を有する炭素数2~6のペルフルオロアルキル基、-R37SOX(SO で表される基である。
ペルフルオロアルキル基がエーテル結合性酸素原子を有する場合、酸素原子の個数は、1個であっても2個以上であってもよい。ペルフルオロアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよいが、直鎖状であるのが好ましい。
37は、炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基または炭素-炭素結合間にエーテル結合性酸素原子を有する炭素数2~6のペルフルオロアルキレン基である。ペルフルオロアルレン基がエーテル結合性酸素原子を有する場合、酸素原子の個数は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。ペルフルオロアルレン基は、直鎖状であっても分岐状であってもよいが、直鎖状であるのが好ましい。
32~R35はそれぞれ独立に、フッ素原子、炭素数1~6のペルフルオロアルキル基、または炭素-炭素結合間にエーテル結合性酸素原子を有する炭素数2~6のペルフルオロアルキル基である。ペルフルオロアルキル基がエーテル結合性酸素原子を有する場合、酸素原子の個数は、1個であっても2個以上であってもよい。ペルフルオロアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよいが、直鎖状であるのが好ましい。
36は、単結合、炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基または炭素-炭素結合間にエーテル結合性酸素原子を有する炭素数2~6のペルフルオロアルキレン基である。ペルフルオロアルレン基がエーテル結合性酸素原子を有する場合、酸素原子の個数は、1個であっても2個以上であってもよい。ペルフルオロアルレン基は、直鎖状であっても分岐状であってもよいが、直鎖状であるのが好ましい。
、R、Xおよびaはそれぞれ、式(u11)のM、R、Xおよびaと同義である。
【0029】
【化6】
【0030】
sは、0または1であり、0が好ましい。
51およびR52はそれぞれ独立に、フッ素原子、炭素数1~5のペルフルオロアルキル基または互いに連結して形成されたスピロ環(ただし、sが0の場合)である。
53およびR54はそれぞれ独立に、フッ素原子または炭素数1~5のペルフルオロアルキル基である。
55は、フッ素原子、炭素数1~5のペルフルオロアルキル基または炭素数1~5のペルフルオロアルコキシ基である。R55は、重合反応性が高い点から、フッ素原子が好ましい。
ペルフルオロアルキル基およびペルフルオロアルコキシ基は、直鎖状であっても分岐状であってもよいが、直鎖状であるのが好ましい。
【0031】
単位(u22)は、単位(u22-1)が好ましい。
【0032】
【化7】
【0033】
【化8】
【0034】
71~R76はそれぞれ独立に、エーテル結合性酸素原子を有してもよい1価のペルフルオロ有機基またはフッ素原子である。1価のペルフルオロ有機基としては、ペルフルオロアルキル基が好ましい。ペルフルオロアルキル基がエーテル結合性酸素原子を有する場合、酸素原子の個数は、1個であっても2個以上であってもよい。また、酸素原子は、ペルフルオロアルキル基の炭素-炭素結合間に挿入されていてもよく、炭素原子結合末端に挿入されていてもよい。ペルフルオロアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよいが、直鎖状であるのが好ましい。
71~R74は、重合反応性が高い点から、フッ素原子であるのが好ましい。
【0035】
環状エーテル構造単位の含有量は、ポリマー(H)が含む全単位に対して、燃料電池の発電効率がより優れる点から、30モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましく、50モル%以上がさらに好ましく、70モル%以上が特に好ましい。
環状エーテル構造単位の含有量の上限値は、ポリマー(H)が含む全単位に対して、100モル%が好ましく、80モル%が特に好ましい。
ポリマー(H)は、特定環状エーテル構造単位を1種のみ含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。2種以上含む場合の上記含有量は、これらの合計量を意味する。
【0036】
ポリマー(H)は、さらに、ペルフルオロモノマーに基づく単位を有していてもよい。ただし、上記ペルフルオロモノマーに基づく単位は、環状エーテル構造を含まず、スルホン酸型官能基を有する単位を有する。
ペルフルオロモノマーに基づく単位としては、単位(u31)、単位(u32)および単位(u41)が挙げられ、燃料電池の発電効率がより優れる点から、単位(u32)および単位(u41)が好ましい。
【0037】
【化9】
【0038】
Zは、フッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、qは、0または1であり、mは、0~3の整数であり、pは、0または1であり、nは、1~12の整数であり、m+p>0である。
は、上述の式(u11)のMと同義である。
【0039】
【化10】
【0040】
は、エーテル結合性酸素原子を有してもよいペルフルオロアルキレン基である。
は、単結合、または、エーテル結合性酸素原子を有してもよいペルフルオロアルキレン基である。
およびQのペルフルオロアルキレン基がエーテル結合性酸素原子を有する場合、酸素原子の個数は、1個であっても2個以上であってもよい。また、酸素原子は、ペルフルオロアルキレン基の炭素原子-炭素原子結合間に位置していてもよく、炭素原子結合末端に位置していてもよい。
ペルフルオロアルキレン基は、直鎖状であっても分岐状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。ペルフルオロアルキレン基の炭素数は、1~6が好ましく、1~4が特に好ましい。炭素数が6以下であれば、原料の含フッ素モノマーの沸点が低くなり、蒸留精製が容易となる。また、炭素数が6以下であれば、ポリマー(H)のイオン交換容量の低下が抑えられ、プロトン伝導性が良好となる。
【0041】
は、エーテル結合性酸素原子を有してもよい炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基であることが好ましい。Qがエーテル結合性酸素原子を有してもよい炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基であれば、Qが単結合である場合に比べ、長期にわたって燃料電池を運転した際に、発電性能の安定性に優れる。
およびQの少なくとも一方は、エーテル性の酸素原子を有する炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基であるのが好ましい。エーテル性の酸素原子を有する炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基を有するモノマーは、フッ素ガスによるフッ素化反応を経ずに合成できるため、収率が良好で、製造が容易である。
【0042】
Yは、フッ素原子または1価のペルフルオロ有機基である。Yは、フッ素原子、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1~6の直鎖のパーフルオロアルキル基であるのが好ましい。
qは、0または1である。
、Xおよびaはそれぞれ、上述の式(u11)のR、Xおよびaと同義である。2個以上のR、aおよびXを含む場合、2個以上のR、aおよびXは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0043】
単位(u32)は、製造が容易であり、工業的実施が容易である点から、単位(u32-1)~(u32-3)が好ましく、単位(u32-1)が特に好ましい。
【0044】
【化11】
【0045】
【化12】
【0046】
F1およびRF2はそれぞれ独立に、炭素数1~3のペルフルオロアルキレン基である。
F1およびRF2の具体例としては、-CF-、-CFCF-、-CF(CF)-、-CFCFCF-、-CF(CFCF)-、-CF(CF)CF-、-CFCF(CF)-、-C(CF)(CF)-が挙げられる。原料がより安価であり、製造が容易であり、また、イオン交換容量をより高くできる点から、RF1およびRF2は、炭素数1~2が好ましく、また直鎖が好ましい。具体的には、-CF-、-CFCF-または-CF(CF)-が好ましく、-CF-が特に好ましい。
は、H、1価の金属カチオン(例えば、カリウムイオン、ナトリウムイオン)または1以上の水素原子が炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基)で置換されていてもよいアンモニウムイオンであり、高導電性の観点から、Hが好ましい。2個のZは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0047】
ペルフルオロモノマーに基づく単位の含有量は、ポリマー(H)が含む全単位に対して、5~40モル%が好ましく、10~35モル%がより好ましく、15~30モル%が特に好ましい。
ポリマー(H)は、ペルフルオロモノマーに基づく単位を1種のみ含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。2種以上含む場合の上記含有量は、これらの合計量を意味する。
【0048】
ポリマー(H)は、さらに、テトラフルオロエチレン(TFE)に基づく単位を含んでいてもよい。これにより撥水性が付与され、触媒層における水の排出力が上がり、燃料電池の発電効率が向上する。
テトラフルオロエチレンに基づく単位の含有量は、ポリマー(H)が含む全単位に対して、0~40モル%が好ましく、5~35モル%がより好ましく、5~30モル%が特に好ましい。
【0049】
ポリマー(H)は、上記以外の単位(以下、「他の単位」ともいう。)を含んでいてもよい。このような単位の具体例としては、ペルフルオロ(3-ブテニルビニルエーテル)、ペルフルオロ(アリルビニルエーテル)、ペルフルオロα-オレフィン類(ヘキサフルオロプロピレン等)、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)類等のモノマーに基づく単位が挙げられる。
【0050】
ポリマー(H)の好ましい態様としては、燃料電池の発電効率がより優れる点から、単位(u22)を含む態様である。
また、ポリマー(H)のより好ましい態様としては、燃料電池の発電効率が特に優れる点から、単位(u22)と、単位(u11)および単位(u12)の少なくとも一方と、を含む態様である。
また、ポリマー(H)のより好ましい別の態様としては、燃料電池の発電効率が特に優れる点から、単位(u22)と、ペルフルオロモノマーに基づく単位と、テトラフルオロエチレンに基づく単位と、を含む態様である。
【0051】
ポリマー(H)のイオン交換容量は、0.9~1.8ミリ当量/g乾燥樹脂が好ましく、1.0~1.7ミリ当量/g乾燥樹脂がより好ましく、1.0~1.6ミリ当量/g乾燥樹脂が特に好ましい。
イオン交換容量が上記範囲の下限値以上であれば、ポリマー(H)のイオン導電率が高くなるため、固体高分子形燃料電池に膜電極接合体を適用した場合に、充分な電池出力が得られる。イオン交換容量が上記範囲の上限値以下であれば、固体高分子形燃料電池に膜電極接合体を適用した場合に、固体高分子形燃料電池のフラッディングを抑制できる。
ポリマー(H)のイオン交換容量は、後述の実施例欄に記載の方法によって求められる。
【0052】
ポリマー(H)の前駆体ポリマー(H)のTQ値(容量流速値)は、200~300℃が好ましく、220~300℃がより好ましく、240~290℃が特に好ましい。
TQ値が上記範囲の下限値以上であれば、ポリマー(H)が充分な分子量を有し、機械的強度にも優れる。TQ値が上記範囲の上限値以下であれば、ポリマー(H)の溶解性または分散性が向上するので、ポリマー(H)を含む液状組成物を調製しやすい。TQ値は、ポリマー(H)の分子量の指標である。
前駆体ポリマー(H)のTQ値は、後述の実施例欄に記載の方法によって測定される。
【0053】
(ポリマー(H)の製造方法)
ポリマー(H)は、例えば、少なくとも特定環状モノマーを重合して得られるスルホン酸型官能基の前駆体基を有するポリマーの前駆体基を、スルホン酸型官能基に変換することによって製造される。
以下に、ポリマー(H)の製造に使用し得る各モノマーについて説明する。
【0054】
単位(u11)は、モノマー(m11)を重合することによって得られ、モノマー(m11)の好適態様としては、モノマー(m11-1)~(m11-6)が挙げられる。なお、モノマー(m11)は、公知の方法で合成できる。
式(m11)中、R110は、エーテル結合性酸素原子を有してもよい1価のペルフルオロ有機基、フッ素原子または-R17SOFで表される基である。R17は、式(u11)のR17と同義である。
式(m11)のR12~R16はそれぞれ、式(u11)のR11~R16と同義である。
【0055】
【化13】
【0056】
単位(u12)は、モノマー(m12)を重合することによって得られ、モノマー(m12)の好適態様としては、モノマー(m12-1)および(m12-2)が挙げられる。なお、モノマー(m12)は、公知の方法で合成できる。
式(m12)のR21およびR22それぞれ、式(u12)のR21~R22と同義である。
【0057】
【化14】
【0058】
単位(u13)は、モノマー(m13)を重合することによって得られ、モノマー(m13)の好適態様としては、モノマー(m13-1)~(m13-4)が挙げられる。なお、モノマー(m13)は、公知の方法で合成できる。
式(m13)のR310は、フッ素原子、炭素数1~6のペルフルオロアルキル基、炭素-炭素結合間にエーテル結合性酸素原子を有する炭素数2~6のペルフルオロアルキル基、-R37SOFで表される基である。R37は、式(u13)のR37と同義である。
式(m13)のR32~R36それぞれ、式(u13)のR32~R36と同義である。
【0059】
【化15】
【0060】
単位(u22)は、モノマー(m22)を重合することによって得られ、モノマー(m22)の好適態様としては、モノマー(m22-1)および(m22-11)が挙げられる。なお、モノマー(m22)は、公知の方法で合成できる。
式(m22)のR51~R55およびsはそれぞれ、式(u22)のR51~R55およびsと同義である。
【0061】
【化16】
【0062】
単位(u24)は、モノマー(m24)を環化重合することによって得られ、モノマー(m24)の好適態様としては、モノマー(m24-1)~(m24-3)が挙げられる。なお、モノマー(m24)は、公知の方法で合成できる。
【0063】
CF(R71)=C(R73)-O-CF(R76)-CF(R75)-C(R74)=CF(R72) (m24)
CF=CF-O-CF-CF-CF=CF (m24-1)
CF=CF-O-CF-CF(CF)-CF=CF (m24-2)
CF=CF-O-CF(CF)-CF-CF=CF (m24-3)
【0064】
ポリマー(H)の製造には、環状エーテル構造を含まず、スルホン酸型官能基の前駆体基を含むペルフルオロモノマーを用いてもよい。
ペルフルオロモノマーとしては、モノマー(m31)、モノマー(m32)およびモノマー(m41)が挙げられ、燃料電池の発電効率がより優れる点から、モノマー(m32)およびモノマー(m41)が好ましい。
【0065】
CF=CF(CF(OCFCFZ)(CFSOF (m31)
【0066】
モノマー(m31)は、単位(u31)に対応する。
Z、q、m、pおよびnはそれぞれ、式(u31)のZ、q、m、pおよびnと同義である。
【0067】
モノマー(m31)は、モノマー(m31-1)~(m31-3)が好ましい。
CF=CFO(CFn1SOF (m31-1)
CF=CFOCFCF(CF)O(CFn2SOF (m31-2)
CF=CF(OCFCF(CF))m3O(CFn3SOF (m31-3)
CF=CFCFO(CFn4SOF (m31-4)
ただし、n1、n2、n3、n4は1~8の整数であり、m3は1~3の整数である。
【0068】
モノマー(m31)は、例えば、Prog.Polym.Sci.、第12巻、1986年、p.233-237;米国特許第4330654号明細書等に記載された方法により合成できる。
【0069】
【化17】
【0070】
、Q、Yおよびqはそれぞれ、式(u32)のQ、Q、Yおよびqと同義である。
【0071】
モノマー(m32)は、単位(u32)に対応する。
モノマー(m32)は、ポリマー(H)の製造が容易であり、工業的実施が容易である点から、モノマー(m32-1)~(m32-3)が好ましく、モノマー(m32-1)が特に好ましい。
【0072】
【化18】
【0073】
モノマー(m32)は、例えば、国際公開第2007/013533号パンフレット、特開2008-202039号公報等に記載された方法により合成できる。
【0074】
【化19】
【0075】
モノマー(m41)は、単位(u41)に対応する。
F1およびRF2はそれぞれ、式(u41)のRF1およびRF2と同義である。
モノマー(m41)の具体例としては、モノマー(m41-1)が挙げられる。
【0076】
【化20】
【0077】
モノマー(m41)は、例えば、後述の実施例欄に記載の方法によって製造できる。
【0078】
ポリマー(H)の製造には、テトラフルオロエチレンを用いてもよい。
【0079】
ポリマー(H)の製造には、上記以外のモノマーを用いてもよい。このようなモノマーの具体例としては、ペルフルオロ(3-ブテニルビニルエーテル)、ペルフルオロ(アリルビニルエーテル)、ペルフルオロα-オレフィン類(ヘキサフルオロプロピレン等)、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)類が挙げられる。
【0080】
前駆体基(-SOF)からスルホン酸型官能基への変換は、公知の方法で行うことができる。
【0081】
なお、スルホン酸型官能基がスルホンイミド基であるポリマー(H)は、モノマー(m11)、(m12)、(m13)、(m31)、(m32)または(m41)の-SOFで表される基をスルホンイミド基に変換したモノマーと、モノマー(m24)と、を重合することによっても製造できる。
-SOFで表される基をスルホンイミド基に変換したモノマーは、モノマー(m11)、(m12)、(m13)、(m32)または(m41)の炭素-炭素二重結合に塩素または臭素を付加し、-SOFで表される基をスルホンイミド基に変換した後、金属亜鉛を用いて脱塩素または脱臭素反応を行うことにより製造できる。
【0082】
(触媒)
触媒層に含まれる触媒は、例えば、カーボン担体に白金または白金合金を担持した担持触媒が挙げられる。
カーボン担体の具体例としては、カーボンブラック粉末、グラファイト化カーボン、カーボンファイバー、カーボンナノチューブが挙げられる。
白金合金は、白金を除く白金族の金属(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム)、金、銀、クロム、鉄、チタン、マンガン、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、およびスズからなる群より選択される少なくとも1種の金属と、白金との合金が好ましい。
担持触媒を用いる場合、触媒の担持量は、燃料電池の発電効率がより優れる点や、コストの点から、担持触媒の全質量に対して、10~80質量%が好ましく、10~70質量%が特に好ましい。
担持触媒を用いる場合、担体の質量に対するポリマー(H)の質量の比(ポリマー(H)の含有量/担体の含有量)は、燃料電池の発電効率が優れる点から、0.5~2.0が好ましく、0.6~1.8が特に好ましい。
【0083】
<ガス拡散層>
ガス拡散層12は、触媒層11に均一にガスを拡散させる機能および集電体としての機能を有する。
ガス拡散層12としては、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルト等が挙げられる。ガス拡散層12は、ポリテトラフルオロエチレン等によって撥水化処理されていることが好ましい。
なお、図1の膜電極接合体10においてはガス拡散層12が含まれるが、ガス拡散層は任意の部材であり、膜電極接合体に含まれていなくてもよい。
【0084】
<他の部材>
アノード13およびカソード14は、上記以外の他の部材を有していてもよい。
他の部材の具体例としては、触媒層11とガス拡散層12との間に設けられるカーボン層(図示せず)が挙げられる。カーボン層を配置すれば、触媒層11の表面のガス拡散性が向上して、燃料電池の発電性能をより向上できる。
カーボン層は、例えば、カーボンと非イオン性含フッ素ポリマーとを含む。カーボンの具体例としては、繊維径1~1000nm、繊維長1000μm以下のカーボンナノファイバーが好ましい。非イオン性フッ素ポリマーの具体例としては、ポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。
【0085】
<触媒層の形成方法>
触媒層11の形成は公知の方法で行うことができる。
【0086】
[固体高分子電解質膜]
固体高分子電解質膜15は、含フッ素ポリマーを含む多孔体と、ポリマー(S)と、を含む膜である。
【0087】
固体高分子電解質膜の厚さは、1~200μmが好ましく、5~100μmが特に好ましい。
固体高分子電解質膜の厚さは、固体高分子電解質膜の断面を走査型電子顕微鏡等によって観察して測定する。
【0088】
<多孔体>
多孔体とは、厚さ方向に多数の孔を有する部材を意味する。孔は、厚さ方向に貫通しているのが好ましい。
多孔体の形態としては、シート状であるのが好ましく、具体的には、織布、不織布、発泡体およびフィルムが挙げられ、これらの中でも、本発明の効果がより優れる点から、フィルム(多孔質フィルム)が好ましく、延伸法によって孔が形成されたフィルムが特に好ましい。
多孔体は、例えば、固体高分子電解質膜の表面または内部に含まれる。
【0089】
多孔体は、含フッ素ポリマーを含む。含フッ素ポリマーとは、フッ素原子を有するポリマーを意味する。
含フッ素ポリマーの具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、テトラフルオロエチレン-ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーが挙げられる。これらの中でも、本発明の効果がより優れる点、ならびに、機械的および化学的耐久性の点から、ポリテトラフルオロエチレンが好ましい。多孔体は、含フッ素ポリマーを1種のみ含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。
【0090】
多孔体は、市販品を用いてもよく、例えば、Tetratex II 3108(ドナルドソン社製)が挙げられる。
【0091】
多孔体の平均孔径は、0.01~500μmが好ましく、0.05~250μmが特に好ましい。多孔体の平均孔径が下限以上であれば、膜電極接合体の性能を良好なレベルに維持できる。また、多孔体の平均孔径が上限以下であれば、多孔体の強度が向上して、固体高分子電解質膜とポリマー(H)を含む触媒層との応力差をより低減できるので、触媒層の割れの発生をより抑制できる。
多孔体の平均孔径は、バブルポイント法(JIS K3832)によって測定できる。
【0092】
多孔体の平均厚さは、膜電極接合体の性能を良好なレベルに維持しつつ、触媒層の割れの発生をより抑制できる点から、1~300μmが好ましく、5~100μmが特に好ましい。
多孔体の平均厚さは、デジマチックインジケータ(Mitutoyo社製、543-250、フラット測定端子:直径5mm)を用いて、任意4箇所の厚さを測定し、これの算術平均値として算出される。
【0093】
<ポリマー(S)>
ポリマー(S)は、固体高分子電解質膜に含まれるスルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーである。
ポリマー(S)は、スルホン酸型官能基を有し、フッ素原子を有するポリマーであればよいが、化学的耐久性が高い点から、ポリマー(H)に含まれ得る上述のペルフルオロモノマーに基づく単位を有するのが好ましい。
ポリマー(S)におけるペルフルオロモノマーに基づく単位の具体例としては、単位(u31)、単位(u32)および単位(u41)が挙げられ、燃料電池の発電効率がより優れる点から、単位(u32)および単位(u41)が好ましく、単位(u32)が特に好ましい。
【0094】
ペルフルオロモノマーに基づく単位の含有量は、ポリマー(S)が含む全単位に対して、5~40モル%が好ましく、10~35モル%がより好ましく、15~30モル%が特に好ましい。
ポリマー(S)は、ペルフルオロモノマーに基づく単位を1種のみ含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。2種以上含む場合の上記含有量は、これらの合計量を意味する。
【0095】
ポリマー(S)は、さらに、テトラフルオロエチレン(TFE)に基づく単位を含んでいてもよい。
テトラフルオロエチレンに基づく単位の含有量は、ポリマー(S)が含む全単位に対して、50~90モル%が好ましく、60~85モル%がより好ましく、65~80モル%が特に好ましい。
【0096】
ポリマー(S)は、上記以外の単位(以下、「他の単位」ともいう。)を含んでいてもよい。このような単位の具体例としては、ポリマー(H)における他の単位と同様である。
【0097】
ポリマー(S)のイオン交換容量は、0.9~2.5ミリ当量/g乾燥樹脂が好ましく、1.1~2.4ミリ当量/g乾燥樹脂がより好ましく、1.2~2.3ミリ当量/g乾燥樹脂が特に好ましい。
イオン交換容量が上記範囲の下限値以上であれば、ポリマー(S)のイオン導電率が高くなるため、固体高分子形燃料電池に膜電極接合体を適用した場合に、充分な電池出力が得られる。イオン交換容量が上記範囲の上限値以下であれば、ポリマー(S)が含水した際の膨潤が抑えられ、固体高分子電解質膜の機械的強度が高くなる。固体高分子形燃料電池のフラッディングを抑制できる。
ポリマー(S)のイオン交換容量は、後述の実施例欄に記載の方法によって求められる。
【0098】
ポリマー(S)の前駆体ポリマー(S)のTQ値は、200~350℃が好ましく、210~340℃がより好ましく、220~330℃が特に好ましい。
TQ値が上記範囲の下限値以上であれば、ポリマー(S)が充分な分子量を有し、機械的強度にも優れる。TQ値が上記範囲の上限値以下であれば、ポリマー(S)の溶解性または分散性が向上するので、ポリマー(S)を含む液状組成物を調製しやすい。
前駆体ポリマー(S)のTQ値は、後述の実施例欄に記載の方法によって測定される。
【0099】
(ポリマー(S)の製造方法)
ポリマー(S)は、例えば、スルホン酸型官能基の前駆体基(-SOF基)を有するモノマーを重合して得られるポリマーの前駆体基を、スルホン酸型官能基に変換することによって製造される。
ポリマー(S)の製造に使用し得るモノマーの具体例としては、ポリマー(H)の製造方法において例示したモノマー(m31)、モノマー(m32)、モノマー(m41)、テトラフルオロエチレン、ペルフルオロ(3-ブテニルビニルエーテル)、ペルフルオロ(アリルビニルエーテル)、ペルフルオロα-オレフィン類(ヘキサフルオロプロピレン等)、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)類が挙げられる。
スルホン酸型官能基の前駆体基をスルホン酸型官能基に変換する方法は、ポリマー(H)の製造方法と同様である。
【0100】
<他の部材>
固体高分子電解質膜15は、耐久性をさらに向上させるために、セリウムおよびマンガンからなる群から選ばれる1種以上の原子を含んでいてもよい。セリウム、マンガンは、固体高分子電解質膜15の劣化を引き起こす原因物質である過酸化水素を分解する。セリウム、マンガンは、イオンとして固体高分子電解質膜15中に存在することが好ましいが、酸化セリウムのように難溶性塩として存在してもよい。
固体高分子電解質膜15は、乾燥を防ぐための保水剤として、シリカ、ヘテロポリ酸(リン酸ジルコニウム、リンモリブデン酸、リンタングステン酸等)を含んでいてもよい。
【0101】
<固体高分子電解質膜の形成方法>
固体高分子電解質膜15は、例えば、ポリマー(S)を含む液状組成物を基材フィルムまたは触媒層11上に塗布し、乾燥させる方法(キャスト法)により形成できる。
液状組成物は、有機溶媒および水の少なくとも一方を含む溶媒に、ポリマー(S)を分散させた分散液である。
【0102】
[膜電極接合体の製造方法]
膜電極接合体10は、例えば、下記の方法にて製造される。
(i)固体高分子電解質膜15上に触媒層11を形成して膜触媒層接合体とし、該膜触媒層接合体をガス拡散層12で挟み込む方法。(ii)ガス拡散層12上に触媒層11を形成して電極(アノード13、カソード14)とし、固体高分子電解質膜15を該電極で挟み込む方法。
【実施例0103】
以下、例を挙げて本発明を詳細に説明する。例1および例2は実施例であり、例3は比較例である。ただし本発明はこれらの例に限定されない。
【0104】
[各単位の割合]
ポリマーにおける各単位の割合については、ポリマーについての19F-NMRの測定結果から求めた。
【0105】
[イオン交換容量]
-SOH基を有する各ポリマーのイオン交換容量は、下記方法により求めた。
ポリマーをグローブボックス中に入れ、乾燥窒素を流した雰囲気中に24時間以上放置し、乾燥させた。グローブボックス中でポリマーの乾燥質量を測定した。
ポリマーを2モル/L(リットル)の塩化ナトリウム水溶液に浸漬し、60℃で1時間放置した後、室温まで冷却した。ポリマーが浸漬されていた塩化ナトリウム水溶液を、0.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液で滴定することにより、ポリマーのイオン交換容量を求めた。
【0106】
[TQ値]
長さ1mm、内径1mmのノズルを備えたフローテスタCFT-500A(島津製作所製)を用い、2.94MPaの押出し圧力の条件で温度を変えて前駆体ポリマーの押出し量を測定し、押出し量が100mm/秒となる温度(TQ値)を求めた。
【0107】
[アノード触媒層形成用液]
カーボン粉末に白金を46質量%担持した担持触媒(田中貴金属工業社製、TEC10E50E)の44gに水の217.8g、エタノールの178.2gを加え、超音波ホモジナイザーを用いて混合粉砕し、触媒の分散液を得た。触媒の分散液に、TFEとモノマー(m31-2-1)とを共重合し、加水分解および酸処理を経て酸型としたポリマー(イオン交換容量:1.10ミリ当量/グラム乾燥樹脂、前駆体ポリマーのTQ値:230℃)を水/エタノール=40/60(質量%)の溶媒に固形分濃度25.8%で分散させた分散液(以下、「分散液X」ともいう。)の80.16gとエタノールの44.4gとゼオローラ-H(日本ゼオン製)の25.32gをあらかじめ混合・混練した混合液を117.4g加え、さらに水の163.42g、エタノールの139.12gを加えて超音波ホモジナイザーを用いて混合し、固形分濃度を7質量%とし、アノード触媒層形成用塗工液を得た。
CF=CFOCFCF(CF)OCFCFSOF (m31-2-1)
【0108】
[カソード触媒層形成用液]
<ポリマー(H-1)の製造>
内容積230mLのステンレス製オートクレーブに、モノマー(m32-1)の133.16g、モノマー(m22-1)の32.67g、および溶媒(AGC社製、アサヒクリン(登録商標) AC-2000)の14.1gを仕込み、液体窒素による冷却下、充分脱気した。TFE(テトラフルオロエチレン)の3.94gを仕込んで、24℃に昇温して、溶媒(CClFCFCHClF)に2.8質量%の濃度で溶解したラジカル重合開始剤((CCOO))の40.17mgを仕込み、AC-2000の1.1gで仕込みラインを洗浄して、反応を開始した。8時間撹拌した後、オートクレーブを冷却して反応を停止した。
生成物をAC-2000で希釈した後、これをAC-2000:メタノール=8:2(質量比)の混合液と混合し、ポリマーを凝集してろ過した。AC-2000:メタノール=7:3(質量比)の混合液中でポリマーを洗浄し、ろ過で分離後、固形分を80℃で一晩減圧乾燥し、ポリマー(H’-1)を得た。
得られたポリマー(H’-1)を、メタノール20質量%および水酸化カリウム15質量%を含む50℃の水溶液に40時間浸漬させることにより、ポリマー(H’-1)中の-SOF基を加水分解し、-SOK基に変換した。ついで、該ポリマーを、3モル/Lの塩酸水溶液に室温で2時間浸漬した。塩酸水溶液を交換し、同様の処理をさらに4回繰り返し、ポリマー中の-SOK基がスルホン酸基に変換されたポリマー(H-1)を得た。
ポリマー(H’-1)を構成する構成単位の組成を、19F-NMRにより分析したところ、ポリマー(H-1)中、ポリマー(H-1)に含まれる全単位に対して、モノマー(m22-1)に基づく単位の含有量は67モル%、モノマー(m32-1)に基づく単位の含有量は18モル%、TFEに基づく単位の含有量は15モル%であった。
また、ポリマー(H’-1)のTQ値は、275℃であった。
また、ポリマー(H-1)のイオン交換容量を求めたところ、1.23ミリ当量/g乾燥樹脂であった。
【0109】
【化21】
【0110】
【化22】
【0111】
<カソード用触媒層形成用液の調製>
ポリマー(H-1)と、水と1-プロパノールとの混合溶媒(水/1-プロパノール=50/50質量比)とをハステロイ製オートクレーブを用い、115℃で8時間、回転数150rpmで撹拌し、ポリマー(H-1)の濃度が18質量%となる分散液を調製した。
カーボン粉末に白金が46質量%含まれるように担持された触媒(田中貴金属工業社製、TEC10E50E)の10gに、超純水の49.5gとエタノールの40.5gを加え、10分間超音波を照射し、触媒の分散液を調製した。これに、上記ポリマー(H-1)の分散液の20.4gを加え、ポリマー(H-1)と触媒カーボンとの質量比(ポリマー(H-1)質量/触媒カーボン質量)を0.8に設定し、さらに超純水の20.8gとエタノールの29.8gを加え、固形分濃度を8質量%として、カソード触媒層形成用液を得た。
【0112】
[固体高分子電解質膜1]
CF=CFと上記モノマー(m32-1)とを共重合して、ポリマー(S’-1)(イオン交換容量:1.95ミリ当量/グラム乾燥樹脂、TQ値:236℃)を得た。
ポリマー(S’-1)を溶融押し出し法により成形し、ポリマー(S’-1)からなる膜(厚さ:200μm)を得た。
なお、ポリマー(S’-1)の括弧内に示したイオン交換容量は、後述する手順で加水分解した際に得られるポリマーのイオン交換容量を表す。
該膜を、水酸化カリウムの20質量%を含む水溶液に16時間浸漬させることによって、ポリマー(S’-1)中の-SOF基を加水分解し、-SOK基に変換した。該膜を、3モル/Lの塩酸水溶液に2時間浸漬した。塩酸水溶液を交換し、同様の処理をさらに4回繰り返し、ポリマー中の-SOK基をスルホン酸基に変換し、膜状のポリマー(S-1)を得た。
ポリマー(S-1)を用いて、水/エタノール=50/50(質量%)の溶媒に固形分濃度13%で分散させた分散液(以下、「分散液Y1」ともいう。)を得た。
【0113】
次に、多孔体1(ドナルドソン社製、商品名「Tetratex II 3108」、厚さ:20μm、平均孔径;3μm、延伸多孔質PTFEフィルム)に分散液Y1を含浸させて20μmの固体高分子電解質膜1を得た。
【0114】
[固体高分子電解質膜2]
(化合物2-1の合成)
撹拌機、コンデンサー、温度計、滴下ロートを備えた2Lの4つ口フラスコに、窒素ガスシール下、塩化スルホン酸の560gを仕込んだ。フラスコを氷浴で冷却し、内温を20℃以下に保ったまま化合物1-1の139.5gとジクロロメタンの478.7gの混合液を20分かけて滴下した。滴下時は発熱とガスの発生が見られた。滴下完了後、フラスコをオイルバスにセットし、内温を30~40℃に保ったまま7時間反応させた。反応はガスの発生を伴いながら進行し、白色の固体が析出した。反応後、フラスコ内を減圧にしてジクロロメタンを留去した。フラスコ内には黄色味を帯びた白色固体が残った。固体をH-NMRで分析したところ、化合物2-1が生成していることを確認した。
【0115】
【化23】
【0116】
化合物2-1のNMRスペクトル;
H-NMR(溶媒:DO):4.27ppm(-CH-、4H、s)。
13C-NMR(溶媒:DO):62.6ppm(-CH-)、195.3ppm(C=O)。
【0117】
(化合物3-1の合成)
例1-1で得た化合物2-1は単離せずに、次の反応にそのまま用いた。例1-1のフラスコ内に塩化チオニルの2049gを加えた。フラスコを80℃に加熱して15時間還流した。反応の進行に伴い、還流温度は52℃から72℃まで上昇した。反応中はガスの発生が確認された。化合物2-1がすべて溶解し、ガスの発生が収まった点を反応終点とした。反応液を2Lのセパラブルフラスコへ移し、気相部を窒素ガスでシールしながら9時間放冷したところ、セパラブルフラスコ内に黒褐色の固体が析出した。デカンテーションで未反応の塩化チオニルを除去した。トルエンを添加して析出固体を洗浄し、再びデカンテーションでトルエンを除去した。トルエン洗浄は合計3回実施し、トルエンの使用量は合計1207gだった。析出固体を窒素ガス気流下、25℃にて71時間乾燥した。乾燥後の固体を回収し、H-NMRで分析したところ、純度96.2%の化合物3-1の356.5gが得られたことを確認した。化合物1-1基準の収率は56.0%となった。
【0118】
【化24】
【0119】
化合物3-1のNMRスペクトル;
H-NMR:5.20ppm(-CH-、4H、s)。
13C-NMR:72.3ppm(-CH-)、184.6ppm(C=O)。
【0120】
(化合物4-1の合成)
撹拌機、コンデンサー、温度計を備えた1Lの4つ口フラスコに、窒素ガスシール下、化合物3-1の90.0gとアセトニトリルの750mLを仕込んだ。フラスコを氷浴で冷却し、撹拌しながらフッ化水素カリウムの110.3gを加えた。添加に伴う発熱はわずかだった。氷浴を水浴に変え、内温を15~25℃に保ったまま62時間反応させた。反応に伴い、細かい白色の固体が生成した。反応液を加圧ろ過器へ移し、未反応のフッ化水素カリウムと生成物をろ別した。ろ過器にアセトニトリルを加え、ろ液が透明になるまでろ別した固体を洗浄し、洗浄液を回収した。ろ液と洗浄液をエバポレーターにかけてアセトニトリルを留去した。乾固して残った固体にトルエンの950mLを添加し、100℃に加熱して固体をトルエンに溶解させた。溶解液を自然ろ過して未溶解分を除去した。ろ液を1Lのセパラブルフラスコへ移し、気相部を窒素ガスでシールしながら14時間放冷したところ、セパラブルフラスコ内に薄茶色の針状結晶が析出した。トルエンで結晶を洗浄し、窒素ガス気流下、25℃にて30時間乾燥させた。乾燥後の固体を回収しH-NMR及び19F-NMRで分析したところ、純度97.6%の化合物4-1の58.1gが得られたことを確認した。化合物3-1基準の収率は72.3%となった。
【0121】
【化25】
【0122】
化合物4-1のNMRスペクトル;
H-NMR:4.97ppm(-CH-、4H、d、J=3.1Hz)。
19F-NMR:62.4ppm(-SOF、2F、t、J=3.1Hz)。
13C-NMR:60.7ppm(-CH-)、184.9ppm(C=O)。
【0123】
(化合物5-1の合成)
200mLのニッケル製オートクレーブに、化合物4-1の9.93gとアセトニトリルの89.7gを仕込んだ。オートクレーブを冷却し、内温を0~5℃に保ちながら窒素ガスを6.7L/hrの流量でフィードして、反応液を1時間バブリングした。反応液の温度を0~5℃に保ちながら、フッ素ガスと窒素ガスとの混合ガス(混合比=10.3モル%/89.7モル%)を6.7L/hrの流量で6時間かけて導入した。再び窒素ガスを6.7L/hrの流量でフィードし、反応液を1時間バブリングした。オートクレーブから反応液の103.2gを回収した。反応液を19F-NMRで定量分析したところ、化合物5-1が8.4質量%含まれていることを確認した。化合物4-1基準の反応収率は66%となった。
【0124】
【化26】
【0125】
化合物5-1のNMRスペクトル;
19F-NMR:-104.1ppm(-CF-、4F、s)、45.8ppm(-SOF、2F、s)。
【0126】
(モノマー(m41-1)の合成)
撹拌機、コンデンサー、温度計、滴下ロートを備えた50mLの4つ口フラスコに、フッ化カリウムの1.65gとジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)の7.8mLを仕込んだ。フラスコを氷浴で冷却し、撹拌して内温を0~10℃に保ちながら化合物5-1の合成で得た反応液の8.43gをプラスチックシリンジを用いて滴下した。強い発熱を確認し、滴下には15分を要した。滴下完了後に氷浴を水浴に替え、15~20℃で1時間反応させた。再度氷浴にて冷却し、反応液の温度を0~10℃に保ちながら滴下ロートから化合物6-1の6.56gを滴下した。滴下完了後、氷浴を水浴に替えて20~25℃で3.5時間反応させた。吸引ろ過により反応液から副生固体を除去し、ろ液を回収した。ろ過残固体は適当量のアセトニトリルで洗浄し、洗浄液はろ液と混合した。ろ液の37.1gを19F-NMRで定量分析したところ、モノマー(m41-1)が2.04質量%含まれていることを確認した。化合物4-1基準の反応収率は46.6%となった。
【0127】
【化27】
【0128】
モノマー(m41-1)のNMRスペクトル;
19F-NMR:-191.5ppm(CF=CF-、1F、ddt、J=116、38、14Hz)、-133.8ppm(-O-CF-、1F、tt、J=21.3、6.1Hz)、-103.1ppm(-CF-SOF、4F、m)、-101.5ppm(CF=CF-、1F、ddt、J=116、49、27Hz)、-87.6ppm(CF=CF-、1F、ddt、J=49、38、7Hz)、-67.5ppm(-CF-O-、2F、m)、46.8ppm(-SOF、2F、s)。
【0129】
(ポリマー(S’-2)の合成)
オートクレーブ(内容積100mL、ステンレス製)に、モノマー(m41-1)の82.0gを入れ、液体窒素で冷却して脱気した。内温が100℃になるまでオイルバスにて加温した。このときの圧力は0.25MPaG(ゲージ圧)であった。重合開始剤((CFCOOC(CF)の42.3mgと溶媒(CF(CFH)の4.18gとの混合液をオートクレーブ内に圧入した。さらに圧入ラインから窒素ガスを導入し、圧入ライン内の圧入液を完全に押し込んだ。この操作により気相部のTFEが希釈された結果、圧力は0.49MPaGまで増加した。圧力を0.49MPaGで維持したままTFEを連続添加し重合を行った。10.0時間でTFEの添加量が6.49gになったところでオートクレーブ内を冷却して重合を停止し、系内のガスをパージした。反応液を溶媒(CF(CFH)で希釈後、溶媒(CFCHOCFCFH)を添加し、ポリマーを凝集してろ過した。その後、溶媒(CF(CFH)中でポリマーを撹拌して、溶媒(CFCHOCFCFH)で再凝集する操作を2回繰り返した。120℃で真空乾燥して、TFEとモノマー(m41-1)とのコポリマーであるポリマー(S’-2)を得た。
ポリマー(S’-2)中、ポリマー(S’-2)に含まれる全単位に対して、モノマー(m41-1)に基づく単位の含有量は14.1モル%であった。
また、ポリマー(S’-2)は、TQ値が314℃であり、ガラス転移温度(Tg)が39℃であった。
なお、ポリマー(S’-2)におけるイオン交換容量とは、次のように加水分解処理した後のポリマーのイオン交換容量を意味する。まず、後述のポリマー(S’-2)の膜を120℃で12時間真空乾燥した。そして、乾燥後のポリマーの膜の質量を測定した後、ポリマーの膜を0.85モル/gの水酸化ナトリウム溶液(溶媒:水/メタノール=10/90(質量比))に60℃で72時間以上浸漬して、加水分解した。このようにして、ポリマー(S’-2)の前駆体基をスルホン酸基に変換したポリマー(S-2)を得た。上述の方法で測定したポリマー(S-2)のイオン交換容量は、1.90ミリ当量/g乾燥樹脂であった。
【0130】
(固体高分子電解質膜2の製造)
ポリマー(S-2)を水/エタノール=37/63(質量%)の溶媒に固形分濃度11%で分散させた分散液(以下、「分散液Y2」ともいう。)を、上述の多孔体1に含浸させて、厚さ20μmの固体高分子電解質膜2を得た。
【0131】
[固体高分子電解質膜3]
多孔体1を用いずに、分散液Y1を用いて、キャスト法で作製した厚さ20μmの固体高分子電解質膜3を得た。
【0132】
[例1]
固体高分子電解質膜1の一方の表面に、アノード触媒層形成用液をバーコーターで塗布して、80℃で10分間乾燥させ、さらに150℃で15分間熱処理を施して、白金量が0.1mg/cmのアノード触媒層付き電解質膜を得た。
次に、ETFEシート上にカソード触媒インクをダイコーターで塗布し、80℃で乾燥させ、さらに150℃で15分間熱処理を施し、白金量が0.1mg/cmのカソード触媒層デカールを得た。
アノード触媒層付き電解質膜のアノード触媒層が形成されていない面とカソード触媒層デカールの触媒層が存在する面とを対向させ、プレス温度150℃でプレス時間2分間、圧力3MPaの条件で加熱プレスして、アノード触媒層付き電解質膜とカソード触媒層とを接合し、温度を70℃まで下げたのち圧力を解放して取り出し、カソード触媒層デカールのETFEシートを剥離して、電極面積25cmの例1の膜電極接合体を得た。
【0133】
[例2]
固体高分子電解質膜1の代わりに固体高分子電解質膜2を用いた以外は、実施例1と同様にして、例2の膜電極接合体を得た。
【0134】
[例3]
固体高分子電解質膜1の代わりに固体高分子電解質膜3を用いた以外は、実施例1と同様にして、例3の膜電極接合体を得た。
【0135】
[評価試験]
<カソード触媒層の割れ>
Yeh-Hung Lai,Cortney K.Mittelsteadt,Craig S.Gittleman,David A.Dillard,”VISCOELASTIC STRESS MODEL AND MECHANICAL CHARACTERIZATION OF PERFLUOROSULFONIC ACID(PFSA)POLYMER ELECTROLYTE MEMBRANES”,Proceedings of FUELCELL2005,Third International Conference on Fuel Cell Science,Engineering and Technology,FUELCELL2005,(2005),74120.に記載の方法に準じて、下記方法により湿潤-乾湿サイクル試験を行った。
各例で得られた膜電極接合体を発電用セル(電極面積25cm)に組み込み、セル温度80℃、アノードおよびカソードのそれぞれに窒素ガスを1L/分で供給した。湿度150%RHの窒素ガスを2分間供給した後、湿度0%RHの窒素ガスを2分間供給する工程を1サイクルとして繰り返した。
10,000サイクル後に、膜電極接合体におけるカソード触媒層の割れの有無をデジタルマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-5000)で確認し、下記の基準で評価した。評価結果を表1に示す。
○:倍率300倍で6視野を観察し、割れの占める面積が10%未満
×:倍率300倍で6視野を観察し、割れの占める面積が10%以上
【0136】
【表1】
【0137】
表1に示す通り、アノードおよびカソードの少なくとも一方の触媒層に含まれるプロトン伝導性ポリマーが、環状エーテル構造を含む単位を有しスルホン酸型官能基を有する場合において、含フッ素ポリマーを含む多孔体とスルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーとを含む固体高分子電解質膜を用いれば、膜電極接合体における触媒層の割れを抑制できるのが確認された(例1および例2)。
【符号の説明】
【0138】
10 膜電極接合体
11 触媒層
12 ガス拡散層
13 アノード
14 カソード
15 固体高分子電解質膜
【0139】
なお、2019年3月13日に出願された日本特許出願2019-046159号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-01-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトン伝導性ポリマーおよび触媒を含む触媒層を有するアノードと、プロトン伝導性ポリマーおよび触媒を含む触媒層を有するカソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置された固体高分子電解質膜と、を有する膜電極接合体であって、
前記アノードおよび前記カソードの少なくとも一方の前記触媒層に含まれる前記プロトン伝導性ポリマーが、環状エーテル構造を含む単位を有し、スルホン酸型官能基を有するポリマー(H)であり、
前記環状エーテル構造を含む単位が、式(u12)で表される単位および式(u22)で表される単位からなる群より選択される少なくとも1種の単位を含み、
前記環状エーテル構造を含む単位の含有量が、前記ポリマー(H)が含む全単位に対して、30モル%以上であり、
前記ポリマー(H)のイオン交換容量が、0.9~1.8ミリ当量/g乾燥樹脂であり、
前記固体高分子電解質膜が、含フッ素ポリマーを含む多孔体と、スルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマー(S)と、を含み、
前記含フッ素ポリマー(S)が、式(u31)で表される単位、式(u32)で表される単位および式(u41)で表される単位からなる群より選択される少なくとも1種の単位を有し
前記含フッ素ポリマー(S)のイオン交換容量が、0.9~2.5ミリ当量/g乾燥樹脂であることを特徴とする、膜電極接合体。
【化1】
式(u12)中、R 21 は、炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基または炭素-炭素結合間にエーテル結合性酸素原子を有する炭素数2~6のペルフルオロアルキレン基であり、R 22 は、フッ素原子、炭素数1~6のペルフルオロアルキル基、炭素-炭素結合間にエーテル結合性酸素原子を有する炭素数2~6のペルフルオロアルキル基または-R 21 (SO X(SO で表される基である。M は、H 、1価の金属カチオンまたは1以上の水素原子が炭化水素基で置換されていてもよいアンモニウムイオンであり、R は、エーテル結合性酸素原子を有してもよい直鎖または分岐のペルフルオロアルキル基であり、Xは、酸素原子、窒素原子または炭素原子であり、Xが酸素原子の場合a=0であり、Xが窒素原子の場合a=1であり、Xが炭素原子の場合a=2である。
式(u22)中、sは、0または1であり、R 51 およびR 52 はそれぞれ独立に、フッ素原子、炭素数1~5のペルフルオロアルキル基または互いに連結して形成されたスピロ環(ただし、sが0の場合)であり、R 53 およびR 54 はそれぞれ独立に、フッ素原子または炭素数1~5のペルフルオロアルキル基であり、R 55 は、フッ素原子、炭素数1~5のペルフルオロアルキル基または炭素数1~5のペルフルオロアルコキシ基である。
【化2】
式(u31)中、Zは、フッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、qは、0または1であり、mは、0~3の整数であり、pは、0または1であり、nは、1~12の整数であり、m+p>0である。M は、H 、1価の金属カチオンまたは1以上の水素原子が炭化水素基で置換されていてもよいアンモニウムイオンである。
式(u32)中、Q は、エーテル結合性酸素原子を有してもよいペルフルオロアルキレン基であり、Q は、単結合、または、エーテル結合性酸素原子を有してもよいペルフルオロアルキレン基であり、Yは、フッ素原子または1価のペルフルオロ有機基であり、qは、0または1であり、R は、エーテル結合性酸素原子を有してもよい直鎖または分岐のペルフルオロアルキル基であり、Xは、酸素原子、窒素原子または炭素原子であり、Xが酸素原子の場合、該Xに結合する(SO のうちのaは0であり、Xが窒素原子の場合、該Xに結合する(SO のうちのaは1であり、Xが炭素原子の場合、該Xに結合する(SO のうちのaは2である。2個以上のR 、aおよびXを含む場合、2個以上のR 、aおよびXは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
式(u41)中、R F1 およびR F2 はそれぞれ独立に、炭素数1~3のペルフルオロアルキレン基であり、Z は、H 、1価の金属カチオンまたは1以上の水素原子が炭化水素基で置換されていてもよいアンモニウムイオンである。2個のZ は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【請求項2】
前記多孔体の形態が、織布、不織布、発泡体またはフィルムである、請求項1に記載の膜電極接合体。
【請求項3】
前記多孔体に含まれる含フッ素ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、およびテトラフルオロエチレン-ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の膜電極接合体。
【請求項4】
前記多孔体の平均孔径が、0.01~500μmである、請求項1~のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
【請求項5】
前記多孔体の平均厚さが、1~300μmである、請求項1~のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
【請求項6】
前記ポリマー(H)が、ペルフルオロモノマーに基づく単位、および/またはテトラフルオロエチレン(TFE)に基づく単位を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
【請求項7】
前記ポリマー(S)が、ペルフルオロモノマーに基づく単位、および/またはテトラフルオロエチレン(TFE)に基づく単位を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
【請求項8】
固体高分子形燃料電池に用いられる、請求項1~のいずれか1項に記載の膜電極接合体。