(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024120
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】照光装置及び育成システム
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20240214BHJP
A01G 9/20 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A01G7/00 601C
A01G9/20 B
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024002902
(22)【出願日】2024-01-12
(62)【分割の表示】P 2020532489の分割
【原出願日】2019-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2018141474
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松本 美佳
(72)【発明者】
【氏名】藤尾 多茂
(72)【発明者】
【氏名】涌井 貞一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 朋和
(72)【発明者】
【氏名】藤原 正人
(72)【発明者】
【氏名】福永 宗毅
(57)【要約】
【課題】
白色光源を利用して、植物育成に好適な光の出力制御を行う。
【解決手段】
グリーンハウスと、前記グリーンハウス内において、育成される植物の上方に設けられた複数の照光装置と、を有する、自然光を利用した育成システムであって、複数の白色光源と、赤色光及び遠赤色光を照射する複数の補助光源と、複数の照光装置からの白色光源または補助光源による光の照射の度合いを制御する照光制御部と、を有し、照光制御部は、日の出または日の入に合わせて、白色光源または補助光源による光の照射制御を開始または終了する育成システム。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然光と組み合わせて植物育成に利用される照光装置であって、
白色光源と、
赤色光及び遠赤色光を照射する補助光源と、
前記白色光源または補助光源による光の照射の度合いを制御する照光制御部と、を有し、
前記照光制御部は、
前記補助光源による光の照射の度合いを制御することで前記赤色光の照射と前記遠赤色光の照射を一体的に制御する照光装置。
【請求項2】
前記照光制御部は、前記補助光源による赤色光及び遠赤色光の照射の度合いを維持し、かつ、自然光による光の放射照度に応じて前記白色光源による光の照射の度合いを弱める、あるいは強めるように制御する請求項1に記載の照光装置。
【請求項3】
複数の前記白色光源と、
複数の前記補助光源と、を有し、
前記照光制御部は、複数の前記白色光源による光、または、複数の前記補助光源による光の照射の度合いを制御し、また、複数の前記補助光源による光の照射の度合いを制御することで前記赤色光の照射と前記遠赤色光の照射を一体的に制御する、請求項1または2に記載の照光装置。
【請求項4】
前記白色光源は、複数の白色発光装置を有し、
前記補助光源は、複数の補助発光装置を有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の照光装置。
【請求項5】
前記複数の補助発光装置は、少なくとも第一発光装置または第二発光装置のいずれかと、第三発光装置と、を含み、
前記第一発光装置は、
400nm以上490nm以下の波長範囲における青色光の光量子束Bに対する620nm以上700nm未満の波長範囲における赤色光の光量子束Rの比R/Bが4を超えて50以下であり、700nm以上780nm以下の波長範囲における遠赤色光の光量子束Frに対する上述の光量子束Rの比R/Frが0.1以上10以下である発光装置であり、
前記第二発光装置は、
380nm以上490nm以下の範囲における光量子束Bに対する620nm以上700nm未満の範囲における光量子束Rの比を示すR/Bが2.0以上4.0以下であり、700nm以上780nm以下の範囲における光量子束FRに対する620nm以上700nm未満の範囲における光量子束Rの比を示すR/FRが0.7以上13.0以下である発光装置であり、
前記第三発光装置は、
400nm以上490nm以下の範囲における青色光の光量子束Bに対する620nm以上700nm以下の範囲における赤色光の光量子束Rの比R/Bが20を超えて200以下である発光装置である請求項4に記載の照光装置。
【請求項6】
グリーンハウスと、前記グリーンハウス内に設けられた複数の照光装置と、を有する、自然光を利用した育成システムであって、
複数の白色光源と、
赤色光及び遠赤色光を照射する複数の補助光源と、
前記複数の照光装置からの前記白色光源または補助光源による光の照射の度合いを制御する照光制御部と、を有し、
前記照光制御部は、
前記補助光源による光の照射の度合いを制御することで前記赤色光の照射と前記遠赤色光の照射を一体的に制御する育成システム。
【請求項7】
前記照光制御部は、前記補助光源による赤色光及び遠赤色光の照射の度合いを維持し、かつ、自然光による光の放射照度に応じて前記白色光源による光の照射の度合いを弱める、あるいは強めるように制御する請求項6に記載の育成システム。
【請求項8】
複数の前記白色光源と、
複数の前記補助光源と、を有し、
前記照光制御部は、複数の前記白色光源による光、または、複数の前記補助光源による光の照射の度合いを制御し、また、複数の前記補助光源による光の照射の度合いを制御することで前記赤色光の照射と前記遠赤色光の照射を一体的に制御する、請求項6または7に記載の育成システム。
【請求項9】
前記白色光源は、複数の白色発光装置を有し、
前記補助光源は、複数の補助発光装置を有する、請求項6乃至8のいずれか一項に記載の育成システム。
【請求項10】
前記複数の補助発光装置は、少なくとも第一発光装置または第二発光装置のいずれかと、第三発光装置と、を含み、
前記第一発光装置は、
400nm以上490nm以下の波長範囲における青色光の光量子束Bに対する620nm以上700nm未満の波長範囲における赤色光の光量子束Rの比R/Bが4を超えて50以下であり、700nm以上780nm以下の波長範囲における遠赤色光の光量子束Frに対する上述の光量子束Rの比R/Frが0.1以上10以下である発光装置であり、
前記第二発光装置は、
380nm以上490nm以下の範囲における光量子束Bに対する620nm以上700nm未満の範囲における光量子束Rの比を示すR/Bが2.0以上4.0以下であり、700nm以上780nm以下の範囲における光量子束FRに対する620nm以上700nm未満の範囲における光量子束Rの比を示すR/FRが0.7以上13.0以下である発光装置であり、
前記第三発光装置は、
400nm以上490nm以下の範囲における青色光の光量子束Bに対する620nm以上700nm以下の範囲における赤色光の光量子束Rの比R/Bが20を超えて200以下である発光装置である請求項9に記載の育成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照光装置、育成システム、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人工的に光を照らして、果物や野菜、花などの植物を育成する方法が知られている。また、このような植物育成における人工光の利用方法としては、太陽からの自然光と組み合わせる方法や、日光や外気から遮断された室内空間で人工光の光のみを利用する方法などがある。
【0003】
日光を利用する場合、人工光は補助的な役割として用いられることが多い。例えば、日照時間の短い季節に足りない時間を補うために、あるいは、曇りや雨などの影響で晴れに比べて少なくなった光量を補うために、人工光で補助をする。特許文献1には、自然光等の光源の光量に応じて、青色光源及び遠赤色光源の出力を制御するシステムが開示される。また、青色及び遠赤色の補助光源には、LED(発光ダイオード)が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、白色光源の出力を制御するシステムについては開示されていない。また、白色光源に、赤色光源や遠赤色光源などを組み合わせた好適なシステムについて検討されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る照光装置は、白色光源と、赤色光及び遠赤色光を照射する補助光源と、白色光源または補助光源による光の照射の度合いを制御する照光制御部と、を有し、照光制御部は、日の出または日の入に合わせて、白色光源または補助光源による光の照射制御を開始または終了する照光装置である。
【0007】
また、本発明に係る照光装置は、白色光源と、赤色光及び遠赤色光を照射する補助光源と、 白色光源または補助光源による光の照射の度合いを制御する照光制御部と、を有し、照光制御部は、複数の天候区分から特定される1の天候区分に応じて、白色光源または補助光源による光の照射を制御する照光装置である。
【0008】
また、本発明に係る、グリーンハウスと、グリーンハウス内において、育成される植物の上方に設けられた複数の照光装置と、を有する育成システムは、複数の白色光源と、赤色光及び遠赤色光を照射する複数の補助光源と、複数の照光装置からの白色光源または補助光源による光の照射の度合いを制御する照光制御部と、を有し、照光制御部は、日の出または日の入に合わせて、白色光源または補助光源による光の照射制御を開始または終了する育成システムである。
【0009】
また、本発明に係る、グリーンハウスと、グリーンハウス内において、育成される植物の上方に設けられた複数の照光装置と、を有する育成システムは、複数の白色光源と、赤色光及び遠赤色光を照射する複数の補助光源と、複数の照光装置からの白色光源または補助光源による光の照射の度合いを制御する照光制御部と、を有し、照光制御部は、複数の天候区分から特定される1の天候区分に応じて、白色光源または補助光源による光の照射を制御する育成システムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、白色光源を利用して、植物育成に好適な光の出力制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る照光装置の模式的な斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る照光装置の上面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る照光装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る照光装置のハードウェア構成の他の例を示す図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る照光装置の機能ブロックを示す図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態に係る照光装置の機能ブロックを示す図である。
【
図8】
図8は、照光装置の光量測定部と太陽との位置関係についての模式図である。
【
図9】
図9は、補正データ保持部が保持する補正データのデータ構成例を示す図である。
【
図10】
図10は、第4実施形態に係る育成システムのシステム構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら以下に説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、本発明を限定するものではない。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするために誇張していることがある。また、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係等は、JIS Z8110に従う。
【0013】
最初に、植物の成長について説明する。植物の光に対する反応は、光合成と光形態形成に分けられ、光合成は、光エネルギーを利用して有機物を合成する反応である。一方、光形態形成は、光を信号として利用する形態的な反応であり、種子の発芽、分化(発芽形成、葉の形成など)、運動(気孔開閉、葉緑体運動)、光屈性などを行なう反応である。植物には、光受容体(色素)が複数存在し、クロロフィルやカロテノイドは光合成を行なう。
【0014】
また、植物には、クロロフィルやカロテノイドの他に、光受容体(色素)として、赤色光及び遠赤色光の光受容体であるフィトクロム、青色光、近紫外線(UV-A)の光受容体であるクリプトクロム及びフォトトロピンが存在する。例えばフィトクロムは、赤色光及び遠赤色光を吸収し、種子発芽の誘導、子葉の展開、茎の伸長、光屈性などの植物の光形態形成を促進させる。
【0015】
植物は、光受容体を使用して、光環境を感じ取り光合成反応や光形態形成の反応を起こ す。植物が光合成や光形態形成に利用できる波長域(300nm以上800nm以下)は、可視光の波長域(380nm以上780nm以下)とほぼ一致しており、植物の分野において、光合成反応や光形態形成の反応に使用できる波長域の放射を生理的有効放射(Physiologically Active Radiation)という。また、その中でも、植物の生育のエネルギー源となる400nm以上700nm以下の波長域の放射を、光合成有効放射(Photosynthetically Active Radiation)という。
【0016】
なお、植物の分野において、約400nmから約500nmの波長域を青色光B、約500nmから約600nmの波長域を緑色光G、約600nmから約700nmの波長域を赤色光R、約700nmから約800nmの波長域を遠赤色光Frで表す場合がある。また、光合成や光形態形成に有効な光量の指標は、放射束ではなく、光量子束(Photon flux)や光量子束密度(Photon flux density)で表される。光量子束密度(μmol・m-2・s-1)とは、単位時間当たりに単位面積に到達する光量子の数である。光量子束(μmol・s-1)とは、単位時間当たりの光量子の数である。
【0017】
植物の成長に影響を及ぼす光源の分光分布は、特定の波長領域における光量子束に対する他の特定の波長域における光量子束の比 R/B又はや比R/Frによって異なる。例えば、「白井花菜他、分光分布の異なる白色LEDの植物育成効果、日本生物環境工学会2016年金沢大会講演要旨集、日本、40、41頁」において、光源の分光分布の違いが、例えばロメインレタスの草丈に影響し、R/Frが小さいほど、ロメインレタスの草丈が高くなることが記されている。
【0018】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る照光装置10の模式的な斜視図を示す。また、
図2は、照光装置10の模式的な上面図を示す。照光装置10は、複数の白色光源110、複数の補助光源111、照光検知部として機能する第一太陽光パネル132、光量測定部113として機能する第二太陽光パネル133、を有する。また、二行×N列(Nは1以上)で配された白色光源110の行間に、一行×M列(Mは1以上)の補助光源111が配されており、三行で配列された白色及び補助光源111が、計二セット配されている。なお、白色光源及び補助光源の配置はこれに限らない。例えば、各行で白色光源と補助光源が交互に配置されてもよく、その他の配置方法であってもよい。
【0019】
照光装置10における白色光源110は、複数の白色発光装置130を有して構成される。白色発光装置130としては例えば白色LEDを採用することができる。また、白色LEDは、紫~青色に発光ピークを持つ発光素子と、発光素子からの光により、青、緑、黄、橙、赤、遠赤色などに発光する蛍光体と、を適宜組み合わせることで実現できる。
【0020】
照光装置10における補助光源111は、複数の補助発光装置131を有して構成される。補助発光装置131には、400nm以上490nm以下の波長範囲における青色光の光量子束Bに対する620nm以上700nm未満の波長範囲における赤色光の光量子束Rの比R/Bが4を超えて50以下であり、700nm以上780nm以下の波長範囲における遠赤色光の光量子束Frに対する上述の光量子束Rの比R/Frが0.1以上10以下である発光装置を採用する。
【0021】
このような発光装置は、例えば、380nm以上490nm以下の波長範囲(以下、「近紫外から青色領域」と称する場合もある。)内に発光ピーク波長を有する発光素子と、発光素子からの光により励起されて580nm以上680nm未満の波長範囲内に少なくとも一つの発光ピーク波長を有する光を発する第一蛍光体と、発光素子からの光により励起されて680nm以上800nm以下の波長範囲内に少なくとも一つの発光ピーク波長を有する光を発する第二蛍光体とにより実現できる。
【0022】
第一蛍光体としては、Mn4+賦活フルオロジャーマネート蛍光体、Eu2+賦活窒化物蛍光体、Eu2+賦活アルカリ土類硫化物蛍光体、及びMn4+賦活ハロゲン化物蛍光体等が挙げられる。また、第一蛍光体は、これらの蛍光体から選択された一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0023】
第二蛍光体は、Alと、Crを含む組成を有する第一のアルミン酸塩蛍光体、及びCeを除く希土類元素からなる群より選択される少なくとも一種の元素を含む第一元素Lnと、Alと、必要に応じてGa及びInからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含む第二元素Mと、Ceと、Crとを含む組成を有し、Alと第二元素Mの合計のモル組成比を5としたときに、Ceのモル組成比が変数xと3の積であり、Crのモル組成比が変数yと3の積であり、変数xが0.0002を超えて0.50未満の数であり、前記変数yが0.0001を超えて0.05未満の数である第二のアルミン酸塩蛍光体からなる群から選択される少なくとも一種の蛍光体である。
【0024】
また、補助発光装置131には、380nm以上490nm以下の範囲における光量子束Bに対する620nm以上700nm未満の範囲における光量子束Rの比を示すR/Bが2.0以上4.0以下であり、700nm以上780nm以下の範囲における光量子束FRに対する620nm以上700nm未満の範囲における光量子束Rの比を示すR/FRが0.7以上13.0以下である発光装置を採用してもよい。なお、先述の発光装置と区別する場合には、それぞれ第一発光装置140、第二発光装置141、と表記する。
【0025】
第二発光装置141は、例えば、近紫外から青色領域に発光ピーク波長を有する発光素子と、発光素子からの光により励起されて580nm以上680nm未満の範囲に少なくとも一つの発光ピーク波長を有する光を発する第一蛍光体と、発光素子からの光により励起されて680nm以上800nm以下の範囲に一以上の発光ピーク波長を有する光を発する第二蛍光体とにより実現できる。第一蛍光体としては、上述の第一発光装置140のものと同様のものを利用することができる。
【0026】
第二蛍光体は、Ceを除く希土類元素からなる群より選択される少なくとも一種の元素を含む第一元素Lnと、Al、Ga及びInからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含む第二元素Mと、Ce、Crを含み、アルミン酸塩の組成を有する蛍光体であって、第二元素Mのモル組成比を5としたときに、Ceのモル組成比がxと3の積であり、Crのモル組成比がyと3の積であり、前記xが0.0002を超えて0.50未満の数であり、前記yが0.0001を超えて0.05未満の数である。
【0027】
また、補助発光装置131には、400nm以上490nm以下の範囲における青色光の光量子束Bに対する620nm以上700nm以下の範囲における赤色光の光量子束Rの比R/Bが20を超えて200以下である発光装置を採用してもよい。なお、先述の第一発光装置140及び第二発光装置141と区別する場合には、これを第三発光装置142と表記する。
【0028】
第三発光装置142は、近紫外から青色領域に発光ピーク波長を有する発光素子と、前記発光素子からの光により励起されて580nm以上680nm以下の範囲に少なくとも一つの発光ピーク波長を有する光を発する赤色蛍光体とにより実現できる。
【0029】
赤色蛍光体には、Eu2+賦活窒化物蛍光体、Mn4+賦活フルオロジャーマネート蛍光体、Eu2+賦活アルカリ土類硫化物蛍光体、及びMn4+賦活ハロゲン化物蛍光体等が挙げられる。赤色蛍光体は、これらの蛍光体から選択された一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0030】
なお、補助光源111は、複数の補助発光装置131として、第一発光装置140、第二発光装置141、及び、第三発光装置142の中から複数の発光装置を適宜選択し、これらを組み合わせて採用してもよい。また、別の発光装置、例えば、蛍光体を有さない赤色のLEDによる発光装置や遠赤のLEDによる発光装置を採用してもよい。
【0031】
第一発光装置140及び第二発光装置141は、赤及び遠赤領域の光を放射する。また、第一発光装置140は、第二発光装置141に比べてR/Bが大きい。言い換えると、第一発光装置140の方が青の発光が抑えられている。例えば、白色光源110や太陽光などの自然光と共に利用することで、青の光を補助光源111により補光する必要がないような場合には第一発光装置140を採用する、といった選択ができる。
【0032】
第三発光装置142は、第一発光装置140や第二発光装置141と比べて、遠赤の光の放射が比較的少ない代わりに、赤の発光を強めることが出来る。遠赤の光よりも赤の光による補光を強めたい場合には第三発光装置142を採用する、といった選択ができる。例えば、第三発光装置142のように遠赤色の光は放射せずに赤色の光を放射する発光装置と、第一発光装置140または第二発光装置141のように赤色と遠赤色の光を放射する発光装置と、を配置した補助光源111を用いると、自然光や白色光に加えて、バランスよく赤色及び遠赤色の光を補うことができる。なお、遠赤色の光を放射しないというのは、全く放射しないという意味に限らず、ほとんど放射しない状態も含む。
【0033】
第一太陽光パネル132及び第二太陽光パネル133は、太陽電池を有し、太陽からの光エネルギーを電力に変換する。第一太陽光パネル132は、照光装置10の各側面に設けられており、照光装置10において複数の第一太陽光パネル132が取り付けられる。この第一太陽光パネル132によって変換された電力の値に基づき太陽の昇降を検知する昇降検知部112が実現される。第二太陽光パネル133は、照光装置10の上面に設けられており、照光装置10において1以上の第二太陽光パネル133が取り付けられる。この第二太陽光パネル133によって変換された電力の値に基づき、太陽光などの自然光によって照光装置10に依らず照光される光の光量を測定する光量測定部113が実現される。
【0034】
図3は、照光装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。照光装置10は、上述した複数の白色光源110及び補助光源111、昇降検知部112、光量測定部113に加えて、電源ユニット116、照光制御スイッチ114及び白色制御スイッチ115を有する。電源ユニット116は、白色光源110や補助光源111による補光を行うための電力を供給する。照光制御スイッチ114は、電力供給のON/OFFを制御することで白色光源110及び補助光源111による補光を制御する。白色制御スイッチ115も同様に、白色光源110による補光を制御する。なお、照光制御スイッチ114がOFFとなっていた場合は、白色制御スイッチ115がONであっても白色光源110は発光しない。また、照光制御スイッチ114がONとなっていても、白色制御スイッチ115がOFFとなっていた場合は、白色光源110は発光しない。
【0035】
図4は、照光装置10のハードウェア構成の他の例を示す図である。複数の白色光源110及び補助光源111、昇降検知部112、光量測定部113、電源ユニット116、照光制御スイッチ114、及び、白色制御スイッチ115を有する点は
図3と同様である。なお、便宜上、複数の白色光源110及び補助光源111をそれぞれ1のブロック図で記している。
図4の例では、さらに、通信I/F121と、ROM118(Read Only Memory)、RAM119(Random Access Memory)、CPU117(Central Processing Unit)、及び、HDD120(Hard Disk Drive)を有する。これらの各ハードウェアは、それぞれがバスで接続されている。
【0036】
通信I/F121は、ネットワーク接続するためのインターフェースである。HDD120は、プログラムやデータを格納している不揮発性の記憶装置である。ROM118は、電源を切ってもプログラムやデータを保持することができる不揮発性の半導体メモリである。RAM119は、プログラムやデータを一時保持する揮発性の半導体メモリである。CPU117は、ROM118やHDD120等の記憶装置からプログラムやデータをRAM119上に読み出し、処理を実行することで、照光装置10全体の制御や機能を実現する演算装置である。
【0037】
図4の例では、照光装置10における白色光源110及び補助光源111の発光制御はCPU117によって制御される。具体的には、第一太陽光パネル132や第二太陽光パネル133によって得られた電力の値を取得し、その値に基づいて照光制御スイッチ114や白色制御スイッチ115をONにするかOFFにするか判定し、これを制御する。
【0038】
図5は、照光装置10を有する育成システム1のシステム構成図を示す。育成システム1において、グリーンハウス20の天井に、複数の照光装置10が設置されている。各照光装置10は、同じく天井に張られた配線と接続し電力の供給を受ける。また、グリーンハウス20の天井及び側面は、透光性のガラスやビニール等で覆われており、太陽からの光がグリーンハウス20内に届くようになっている。
【0039】
なお、育成システム1では、太陽光などの自然光を出来る限り取り込むために、グリーンハウス20は透光性のものを採用する。しかし、太陽光などの自然光が強い地域、例えば赤道直下の国などでは、自然光をそのまま取り入れると光が強すぎて植物が育たないことが起こり得る。このような場合には、あえて透過率を下げたグリーンハウス20において、複数の照光装置10を有する育成システム1を構築することもできる。例えば、R、G、B、Frの波長領域において60%から80%程度の透過率のグリーンハウス20を利用することが考えられる。
【0040】
次に、グリーンハウス20内に照光装置10を設置した育成システム1における、照光装置10の動作について説明する。照光制御スイッチ114は、複数の第一太陽光パネル132のいずれからも所定の値以上の電力が得られなかった場合にスイッチがOFFとなり、これによって白色光源110及び補助光源111による照光は停止する。また、電源ユニット116から電力が供給されており、複数の第一太陽光パネル132のいずれかによって所定の値以上の電力が得られている間は、スイッチONの状態が維持される。
【0041】
この所定の値は、太陽が沈み夜となった状態と、そうでない状態とを区分する第一閾値となるよう設定される。つまり、地平線から太陽が昇り明るくなってから太陽が沈むまでの間であれば、天気が晴れであっても曇りであっても雨であっても、得られる電力が所定の値以上となるように、この第一閾値は設定されるのが望ましい。但し、厳密に夜とそうでない状態との境界を定義し、第一閾値を定めなければならないわけではない。第一閾値は、多少の時間のずれが生じたとしても、およそ太陽の昇降に応じて、白色光源110及び補助光源111による照光が制御できればよい。
【0042】
また、第一太陽光パネル132は、照光装置10の各側面に配されており、太陽の昇降に合わせて照光装置10の向きを決めるときの配置の自由度を与えることができる。白色光源110や補助光源111による光は植物に向かって放射されるため、白色光源110や補助光源111は地面側を向く。また、植物の並びに従って、照光装置10を並べるときの向きも調整されることとなる。そのため、適切に太陽の昇降を検知できるように、照光装置10の各側面に光の放射照度を測るための検知領域を設けておく。
【0043】
なお、必ずしも全側面に設けなくてよい。第1実施形態に係る照光装置10における昇降検知部112は、少なくとも日の出を検知するための第一検知領域と、日の入りを検知するための第二検知領域を有する。その具体例として、対向する側面にそれぞれ第一太陽光パネル132が設けられる。この第一太陽光パネル132は、物理的に別になっていてもよく、1の太陽光パネルで構成されてもよい。
【0044】
昇降検知部112により、照光装置10による補光は、太陽の昇降に応じて動作することとなる。つまり、日が昇ると、いずれの第一太陽光パネル132からも第一閾値以上の電力が得られなかった状態から、少なくとも第一検知領域における第一太陽光パネル132から得られる電力が第一閾値以上となる状態へと変わる。これにより、日が昇ると照光制御スイッチ114がONとなり、白色光源110及び補助光源111による補光が開始する。
【0045】
その後、太陽は移動するが、辺りが夜と同等の暗さにならない限りは、複数の第一太陽光パネル132のうち、いずれかの第一太陽光パネル132が第一閾値以上の電力を得るため、照光制御スイッチ114がONの状態は保たれる。そして、日が沈むときには、第二検知領域における第一太陽光パネル132が、他の第一太陽光パネル132よりも大きな電力を得ることとなるが、日の沈むことで第二検知領域における第一太陽光パネル132が第一閾値未満の電力となる。このとき、必然的に全ての第一太陽光パネル132から得られる電力が第一閾値未満となるため、照光制御スイッチ114がOFFとなり、白色光源110及び補助光源111による補光は翌朝まで終了する。
【0046】
なお、照光装置10の側面は、上方に向かって、つまり、白色光源110等が配され照光を行う光放射面と交わる位置から第二太陽光パネル133が配される方向に向かって、内側に傾斜している。これは、第一太陽光パネル132による電力の変換において、白色光源110及び補助光源111からの光の影響を考慮したものである。つまり、日が沈んだ後も、白色光源110及び補助光源111からの光によって所定の値以上の電力が得られてしまうと、照光制御スイッチ114が日没に応じてOFFになるような制御が働かなくなる。
【0047】
しかし、白色光源110及び補助光源111による光の影響分を補正して(上方修正して)第一閾値の値を設定すると、日が昇ってもONとならない事態が起こり得る。また、白色光源110及び補助光源111からの光が届かないように遮光板を追加するような方法では、太陽などの自然光の利用を妨げることとなってしまう。このことからも、第一太陽光パネル132から得られる電力が出来るだけ白色光源110及び補助光源111からの光の影響を受けず、それでいて自然光による照射を邪魔しない構造として、傾斜を設けている。但し、傾斜を設けなければならないわけではなく、補正など他の方法によって実現することは可能である。
【0048】
白色制御スイッチ115は、第二太陽光パネル133において変換された電力が所定の値以上であった場合に、スイッチがOFFとなり白色光源110への電力供給が止まる。その結果、白色光源110による発光は中断し、かつ、補助光源111による補光が継続した状態に切り替わる。これにより、太陽などの自然光によって植物に十分な光が照射されている場合に、白色光源110による照光を止める制御を行うことが出来る。
【0049】
白色光源110の補光による過度な照射を抑制することで、良好な育成環境を提供するだけでなく、省エネルギーにも繋がる。第二太陽光パネル133における所定の値は、十分な光が植物に届いていると判断できる下限となる第二閾値を設定するのがよい。この値は、どの植物を育成するかによっても変わり得るため、その植物の育成が促進される適切な白色光の光量に基づいて設定するのがよい。少なくとも第二閾値は第一閾値より高い値となる。なお、第二太陽光パネル133が上面を向いて配されることで、一般に太陽光による放射照度が強くなる日中において過度な照射とならないように制御することができる。
【0050】
次に、第二太陽光パネル133において変換された電力が所定の値未満になると、白色制御スイッチ115がONとなり白色光源110による発光が再開する。但し、照光制御スイッチ114がOFFであった場合には、白色光源110による発光は行われない。これにより、日照時間帯であれば白色光源110による補光のON/OFFは制御されるが、日没後は、日の出により照光制御スイッチ114がONになるまで白色光源110が発光することはない。
【0051】
なお、白色制御スイッチ115により、全ての白色光源110による補光を停止しなくてもよい。例えば、一部の白色光源110による補光を停止するようにしてもよく、一部の白色発光装置130による光の放射を停止するようにしてもよい。また、停止ではなく、強度を弱めるか強めるといった処理でもよい。つまり、白色光源110による光の照射の度合いを、自然光による光が弱くなれば補うように強め、強くなれば余分を除くように弱めればよい。なお、光量測定部113は、1の第二太陽光パネル133で構成されていてもよく、複数の第二太陽光パネル133で構成されていてもよい。
【0052】
このように、第1実施形態に係る育成システム1における照光装置10は、太陽の昇降に応じて白色光源110及び補助光源111による補光(光の照射の度合い)を制御する照光制御手段を有する。また、自然光による光の放射照度(照光の度合い)に応じて白色光源110による補光を制御する照光制御手段を有する。これにより、日の出から日の入りまでの一日のサイクルに合わせて白色光源110または補助光源111による補光(照射制御)の開始と終了を動的に制御することができる。
【0053】
また、昇降検知部112は、放射照度に応じた昇降パラメータを与え、照光制御手段は、この昇降パラメータと第一閾値とに基づき補光を制御する。光量測定部113は、放射照度に応じた光量パラメータを与え、照光制御手段は、この光量パラメータと第二閾値とに基づき補光を制御する。
【0054】
昇降検知部112により与えられる昇降パラメータは、日の出及び日の入に限らず与えられ、日の出及び日の入における検知感度が高くなるよう設計されている。光量測定部113により与えられる光量パラメータは、日の出及び日の入に限らず与えられ、日の出及び日の入よりも正午(太陽が最も上にあるとき)における測定感度が高くなるよう設計されている。
【0055】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態に係る育成システム1において照光装置11が有する機能を示した機能ブロック図である。
図6に基づき説明される各種の機能及び処理は、例えば
図4で示したハードウェア構成を有する照光装置11において、CPU117が動作することにより実現される。従って、第2実施形態に係る照光装置11のハードウェア構成は、第1実施形態の照光装置10と同様のものでよい。
【0056】
第2実施形態に係る育成システム1は、第1実施形態で説明したような、太陽の昇降に補光のON/OFFを連動させる制御以外に、太陽の日照時間よりも長い時間、植物に光を照射するための仕組みを提供する。
【0057】
昇降判定部250は、昇降検知部112により得られた昇降パラメータに基づき、太陽の昇降を判定する。照度判定部251は、光量測定部113により得られた光量パラメータに基づき、照光の度合いを判定する。照光制御部252は、昇降判定部250による判定の結果に基づき、白色光源110及び補助光源111による補光を行うか否かを制御する。また、照度判定部251による判定の結果に基づき、白色光源110による補光を行うか否かを制御する。また、タイマー253に基づき、白色光源110及び補助光源111による補光を行うか否かを制御する。
【0058】
モード設定部は、太陽の昇降に補光を連動させる第1モード、所定時間の補光が日の出に連動して開始する第2モード、所定時間の補光が日の入りに連動して終了する第3モード、の中からユーザにより選択されたモードを設定する。また、第2モード及び第3モードにおける補光時間を設定する。これらの設定は、例えば、通信I/F121を介してネットワーク接続するコンピュータによる入力を受信して行うことができる。タイマー253は、設定された補光時間の経過を通知する。
【0059】
第2実施形態に係る育成システム1における照光装置11の動作制御は、設定されたモードに応じて異なる。また、第1モードにおける動作制御は、第1実施形態の照光装置11により行われる動作制御と同様である。
【0060】
第2モードが設定されていた場合、昇降判定部250により、いずれかの第一太陽光パネル132から得られた電力値を示す昇降パラメータが第一閾値以上であると判定されると、白色光制御部により白色光源110の発光が開始され、補助光制御部により補助光源111の発光が開始され、さらにタイマー253が開始される。タイマー253が開始されてから終了するまでの間、照度判定部251による判定は有効となり、第二太陽光パネル133から得られた電力値を示す光量パラメータが第二閾値以上であると判定された場合には、白色光制御部は白色光源110の発光を停止する。この時、昇降パラメータが第一閾値以上であったとしても白色光源110の発光は停止する。
【0061】
また、照度判定部251により、第二太陽光パネル133から得られた電力値を示す光量パラメータが第二閾値未満であると判定された場合には、白色光源110の発光が再開する。タイマー253が終了するまでの間は、照度判定部251による白色光源110の発光制御が機能する。
【0062】
第2モードが設定されていた場合、昇降判定部250は、日没の判定を行わない。つまり、昇降パラメータが第一閾値未満となったか否かの判定は行わない。代わりに、タイマー253が終了すると、白色制御部は白色光源110の発光を停止し、補助光制御部は補助光源111の発光を停止する。これにより、日の出から補光時間が経過した段階で、照光装置11による補光は、次の日の出まで停止する。なお、所定時間の経過に基づき補光の停止制御を行う場合、徐々に補光量を少なくしていき、一定の時間を掛けて補光が停止するようにしてもよい。
【0063】
第3モードが設定されていた場合、昇降判定部250により、昇降パラメータが第一閾値未満であると判定されるとタイマー253が開始する。タイマー253は、一日の時間から補光時間を引いた時間が経過すると終了を通知する。タイマー253終了の通知を受けると、白色光制御部により白色光源110の発光が開始され、補助光制御部により補助光の発光が開始される。また、照度判定部251の判定に基づく白色光源110の制御は、タイマー253がOFFになっている間、つまり、タイマー253終了の通知からタイマー253開始までの間、有効に機能する。これにより、補光時間の経過を日没に合わせることが出来る。
【0064】
なお、前日の日没と、当日の日没の時刻に大きな差が生じると、補光時間の経過と日没のタイミングが大きくずれることになるが、南極や北極などの特定の場所を除けば、一日の間に日没時刻が大きく変わる環境はほとんどないと言える。従って、基本的には、前日の日没時刻に基づいて補光開始のタイミングを決定すれば翌日の日没時刻と補光終了のタイミングが大きくずれることはなく、適切な補光制御を行うことができる。
【0065】
第2実施形態の育成システム1によれば、ユーザの意向に応じて、日照時間に合わせた補光を行うか、日照時間よりも長い時間補光を行うか、を適宜設定できる。また、日照時間よりも短い時間補光を行うことも設定可能である。このように、ユーザは複数の制御パターンから1の制御パターンを選択でき、照光装置11は選択された制御パターンを設定として保持する。なお、このようなモードの制御は、照光装置11単位で設定することが出来るため、グリーンハウス20における一部の栽培区画と他の栽培区画とを異なるモードで制御することが可能である。
【0066】
例えば、日照時間の短い秋や冬の季節に、その季節に合った野菜を栽培する栽培区画においては第1モードで補光を制御し、夏の日照時間の長い季節に合った野菜を栽培する栽培区画においては第2モードあるいは第3モードで補光を制御する、といった使い分けができる。
【0067】
なお、第2実施形態に係る育成システム1に適用される照光装置11として、第1モード乃至第3モードのうち任意のモードを設定できる照光装置11を説明したが、モードの選択機能は有していなくてもよい。つまり、それぞれのモードに対応した照光装置11を用意し、使用したいモードに対応した照光装置11を設置するようにしてもよい。その意味で、モード設定部を有さない照光装置11であっても、第2実施形態に係る育成システム1を構成することはできる。
【0068】
なお、第2モードに対応した照光装置11、あるいは、第3モードに対応した照光装置11を実現する場合には、第一太陽光パネル132は1つでもよくなる。日の出、あるいは、日の入のいずれかを検知できればいいため、第一太陽光パネル132が日の出や日の入の方向に合うように照光装置11を配置すれば、1側面にだけ配された1の第一太陽光パネル132によって補光の制御は可能となる。
【0069】
<第3実施形態>
これまで説明してきた照光装置は、上面に第二太陽光パネル133が設置される。設置面は上面に限るわけではないが、第二太陽光パネル133が特定の面を向いて設置されている一方で、太陽の位置は時間と共に移動する。従って、太陽の移動に追従して第二太陽光パネル133による太陽光の受光領域が移動しないと、第二太陽光パネル133による受光条件が変わり、例え太陽から同じ強さの光が放射されていたとしても、第二太陽光パネル133により変換される電力の値は異なることが考えられる。
【0070】
第二太陽光パネル133が配置される面、つまり、光源が配置される面とは反対側の面に半球形状の配置面を形成し、その半球面において複数の第二太陽光パネル133を複数配置することで、太陽が移動を考慮した光量の測定が可能となる。複数の第二太陽光パネル133のうちおよそ太陽と向き合う位置に配置された第二太陽光パネル133から得られた電力値に基づき判定を行えば、太陽の移動による受光条件の違いを抑えることができる。
【0071】
複数の第二太陽光パネル133のうち最も大きな電力を得た第二太陽光パネル133を、およそ太陽と向き合う位置に配置された第二太陽光パネル133とみなせばよく、太陽に対する向きの精度は複数の太陽光パネルの配置の仕方による。小面積の太陽光パネルを多数用いて半球面を覆うように敷き詰めれば、精度は向上する。但し、装置の構造が複雑になり、それだけコストも掛かることが予想される。
【0072】
このような照光装置を有する育成システム1を実現することも本願発明の開示範囲となるが、第3実施形態に係る育成システム1における照光装置12では、別の実現方法を説明する。第3実施形態に係る育成システム1は、予め計測して得られた補正データを保持しておき、その補正データに基づいて、受光条件の違いを抑制し、第1実施形態及び第2実施形態よりも精度の高い照度判定が行えるようにする。
【0073】
図7は、第3実施形態に係る照光装置12の機能ブロック図である。
図7に基づき説明される各種の機能及び処理は、例えば
図4で示したハードウェア構成を有する照光装置12において、CPU117が動作することにより実現される。従って、第2実施形態に係る照光装置12のハードウェア構成は、第1実施形態の照光装置10と同様のものでよい。
【0074】
照光装置12は、照度補正部355及び補正データ保持部356を有する点で、第2実施形態の照光装置11と異なる。補正データ保持部356は、光量測定部113により得られた光量パラメータに対する補正量を示す補正パラメータを決定するための補正データを保持する。照度補正部355は、得られた光量パラメータに対する補正パラメータを決定し、補正を行う。照度判定部351は、補正後の光量パラメータに基づいて、第二閾値以上か否かの判定を行う。
【0075】
図8は、得るべき補正データを説明するために、照光装置12と太陽との位置関係を簡略的に示した模式図である。照光装置12は固定的に設置され、従って、光量測定部113も上面において固定的に設置されることとなる。一方で、太陽は時間に応じて傾きを変えるため光量測定部113と太陽とが成す角度は変わっていく。例えば、時刻t1において太陽が
図8に示すT1に位置していたとする。この時、T1に位置する太陽からの自然光の光量を正面から測定するには、第二太陽光パネル133を角度θだけ傾ける必要がある。
【0076】
従って、太陽と正対した状態で測定された光量の値と、角度θだけ傾いた状態で測定された光量と、の差分を補正データとして保持しておけば、第二太陽光パネル133により測定された光量に基づき、太陽と正対した状態の光量を計算できる。補正データはこの差分を示すデータである。
【0077】
また一方で、時刻t2において太陽がT2に位置していたとすると、第二太陽光パネル133は太陽と正対しているため差分はなく、補正を行う必要もない。このように、太陽の位置に応じて、補正データを得るための測定条件は変わる。従って、同じ月の同じ時間帯において、似た気候の測定データを、太陽と正対した場合のものと、照光装置12に固定された場合のものと、で計測し、似た気候の複数のデータを集めて、平均的あるいは統計的に補正データを算定するのが望ましい。
【0078】
図9は補正データ保持部356において保持される補正データのデータ構成例の一例を示す。補正データは、月、時間帯、天候区分、補正パラメータ、の項目を有しており、天候区分ごとに天候判断条件及び補正パラメータが設定される。補正データは月毎に一年分用意されるが、
図9では一例として5月の補正データを記す。なお、月単位でなく、例えば2週間おきなどより細かな単位で補正データを有していてもよいし、複数月を跨ぐ季節単位で補正データを有していてもよい。また、月毎の補正データは、さらに時間帯で区分される。
図9の例では1時間毎に区切っているが、これについても、より短い時間間隔で区切ってもよく、より長い時間間隔で区切ってもよい。
【0079】
補正データは、月及び時間帯に応じて、天候判断条件、及び、天候に応じた補正パラメータが定められている。
図9の例では、天候区分として、「天候:晴」と「天候:その他」を設けており、晴れかそれ以外かで天候を分けている。なお、天候区分はより細かく分けてもよい。例えば、晴れにも程度の違いがあるため、これを細かく区分けしてもよく、どのような天候区分とするかは適宜設定できる。区分された各天候に応じて、その天候区分に該当すると判断するための天候判断条件が定められる。
【0080】
天候判断条件は、その天候区分に該当する日の時間帯において、育成システム1に照光装置12が設置されたときの測定条件と同等の条件で得られた測定値から決定する。決定した天候区分に応じて補正処理が行われるため、天候区分の判断は、補正前の光量パラメータから判断する必要がある。従って、ある月のある時間帯において得られた測定値を天候区分に分けて集計し、天候区分ごとの集計された測定結果を比較して、互いに重複しない条件値を決定するのがよい。
図9の例では、5時から6時までの間においては、第二太陽光パネル133により測定された光量から得られた光量パラメータがX1以上であれば晴れの天候区分と判断し、X1未満であればその他の天候区分と判断するよう、天候判断条件が設定されている。
【0081】
補正パラメータは、天候区分に応じて定められる。
図9の例に基づけば、該当する月及び時間帯において天候区分が晴れである場合の補正パラメータは、晴れの天候区分に該当する日の該当時間帯における測定結果から得られる。具体的には、育成システム1に照光装置12が設置されたときの測定条件と同等の条件で得られた測定値と、太陽と向き合った場合の測定値とを測定し、この差分に基づき決定される。なお、晴れだった複数日の測定結果から統計的あるいは平均的に算出した値に基づき決定されてもよい。その他の天候についても同様に決定され、天候区分毎に補正パラメータが定められる。
図9の例では、5時から6時までの間においては、天候区分が晴れであれば補正パラメータY1に基づき補正を行い、天候区分がその他であれば補正パラメータZ1に基づき補正を行う。
【0082】
照度補正部355は、補正データ保持部356に保持される補正データを用いて補正処理を行う。具体的には、光量測定部113により得られた光量パラメータを取得すると、取得時に対応する月と時間帯を特定する。次に、特定した月及び時間帯における天候判断条件から、得られた光量パラメータが該当する天候区分を決定する。
図9の例では、晴れであるか否かを決定する。そして特定した月及び時間帯と決定された天候区分に対応する補正パラメータを取得し、この補正パラメータに基づいて光量パラメータを補正する。その後、照度判定部351は、補正した光量パラメータを取得し、補正後の光量パラメータに基づいて照度判定を行う。
【0083】
このように、照光装置12における光量測定の測定条件と実際に太陽と対向した測定条件との測定結果の差を考慮した補正パラメータを保持し、補正パラメータで補正することで、補正後の光量パラメータは実際に植物に放射されている放射照度を精度よく反映したものとなる。よって、照度判定部351による判定結果に基づく制御、つまり、自然光による放射照度が十分である場合に白色光源110による補光を停止する制御の精度も向上する。
【0084】
また、天候区分に応じて補正を行うことで、例えば、実際には曇りの天気で、自然光による十分な放射が行われていないにも関わらず、晴れの補正パラメータによる補正を行った結果十分な放射が得られていると判断され、白色光源110による補光が停止するといった事態を回避することが出来る。
【0085】
つまり、複数の天候区分の中から1の天候区分を特定し、その天候区分に基づいて補正された光量パラメータによって補光の制御を行うことで、天候区分に応じた補光の制御を実行することができる。なお、補正された光量パラメータに基づいて、白色光源の補光量を調整するようにしてもよい。例えば、必要な白色光の光量を設定し、この設定値と補正後の光量パラメータとの差分を補うだけの白色光源を照光装置により補光するようにしてもよい。また、天候区分に応じて補助光源の補光を制御するようにしてもよく、白色光源及び補助光源の両方の補光を制御するようにしてもよい。。
【0086】
<第4実施形態>
第4実施形態は、第1乃至第3実施形態で説明してきた育成システム1の別の構成例である。第4実施形態に係る育成システム1のシステム構成を
図10に示す。
図10に示されるように、第4実施形態に係る育成システム1は、環境測定装置40及び制御装置30を有する点で異なる。また、第4実施形態に係る照光装置13は、第1実施形態の照光装置13と比べて光量測定部113及び昇降検知部112を有しない点で異なる。従って、第4実施形態に係る照光装置13は、第一太陽光パネル132及び第二太陽光パネル133を有していなくてよい。
【0087】
照光装置13において第一太陽光パネル132及び第二太陽光パネル133を利用して行った測定は、第4実施形態の育成システム1においては環境測定装置40が行う。従って、環境測定装置40は、栽培区画を邪魔しない位置に配置され、例えばグリーンハウス20の上に設置される。環境測定装置40では、昇降パラメータと光量パラメータが測定され、また、これ以外にもより詳細な測定が行われてよい。
【0088】
制御装置30は、CPU、ROM、RAM、HDD、通信I/F等を備えた一般的なコンピュータで構成することができ、環境測定装置40により得られた測定結果は制御装置30に送信される。制御装置30は測定結果に基づいて、各照光装置13に対する白色光源110及び補助光源111の補光制御を行う。つまり、制御装置30において、昇降判定や、照度判定が行われ、判定結果に基づき、照光装置13の照光制御スイッチ114及び白色制御スイッチ115のON/OFFが制御される。具体的な制御については、第1乃至第3実施形態で説明したものと同様である。
【0089】
第4実施形態の育成システム1によれば、各照光装置13に昇降検知部112や光量測定部113などの環境測定のための構成を設けることを要せず、多数の照光装置13を配置する大規模な育成システム1においては、コストメリット、集中制御、一元管理といった利点も生じ得る。
【0090】
<第一発光装置140について>
上述した第一発光装置140について説明を補足する。第一蛍光体は、Sr及びCaから選択される少なくとも一種の元素と、Euと、Alと、Siとを含む組成を有する窒化物蛍光体を含むことが好ましい。例えば、第一蛍光体としては、組成式として、(Sr,Ca)AlSiN3:Euで表される窒化物蛍光体が挙げられる。
【0091】
なお、本明細書において、組成式中、カンマ(,)で区切られて記載されている複数の元素は、これら複数の元素のうち少なくとも一種の元素を組成中に含有していることを意味する。組成式中のカンマ(,)で区切られて記載されている複数の元素は、組成中にカンマで区切られた複数の元素から選ばれる少なくとも一種の元素を含み、前記複数の元素のから二種以上を組み合わせて含んでいてもよい。 また、蛍光体の組成を表す式中、コロン(:)の前は母体結晶を表し、コロン(:)の後は賦活元素を表す。
【0092】
第一蛍光体は、下記式(I)で表される組成を有する窒化物蛍光体を含むことが好まし い。
(Ca1-p-qSrpEuq)AlSiN3 (I)
式(I)中、p及びqは、0≦p≦1.0、0<q<0.5、0<p+q≦1.0を満たす数である。
【0093】
前記式(I)中、Euは、窒化物蛍光体の賦活元素である。前記式(I)中、変数qは、前記式(I)で表される組成における賦活元素Euのモル組成比である。変数qは、好ましくは0.0001≦q≦0.4、より好ましくは0.001≦q≦0.3、さらに好ましくは0.0015≦q≦0.2である。前記式(I)中、変数pは、前記式(I)で表される組成におけるSrのモル組成比である。変数pは、好ましくは0.001≦p<0.9、より好ましくは0.002≦p≦0.8、さらに好ましくは0.003≦p≦0.76である。
【0094】
第一蛍光体は、前記式(I)で表される組成を有する窒化物蛍光体とは別のEu2+賦活窒化物蛍光体を含んでいてもよい。Eu2+賦活窒化物蛍光体は、Sr及びCaから選択される少なくとも一種の元素と、Eu、Alと、Siとを含む組成を有する窒化物蛍光体の他に、アルカリ土類金属元素からなる群より選択される少なくとも一種の元素と、アルカリ金属元素からなる群より選択される少なくとも一種の元素とを組成に有し、Eu2+で賦活されるアルミナイトライドを含む蛍光体が挙げられる。
【0095】
Mn4+で賦活されるハロゲン化物蛍光体は、アルカリ金属元素及びアンモニウムイオン(NH4
+)からなる群から選択される少なくとも一種の元素又はイオンと、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素とを組成に有し、Mn4+で賦活されるフッ化物を含む蛍光体であることが好ましい。
【0096】
第一蛍光体は、下記式(II)乃至(VI)で表されるいずれかの組成を有する蛍光体からなる群から選択される少なくとも一種の蛍光体を含んでいてもよい。
(i-j)MgO・(j/2)Sc2O3・kMgF2・mCaF2・(1-n)GeO2・(n/2)M1O3:vMn4+ (II)
式(II)中、M1はAl、Ga及Inからなる群から選択される少なくとも1種であり、i、j、k、m、n及びvはそれぞれ、2≦i≦4、0≦j<0.5、0<k<1.5、0≦m<1.5、0<n<0.5、及び0<v<0.05を満たす数である。
M2
dM3
eM4
fAl3-gSigNh (III)
式(III)中、M2は、Ca、Sr、Ba及びMgからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、M3は、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、M4は、Eu、Ce、Tb及びMnからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、d、e、f、g及びhは、それぞれ0.80≦d≦1.05、0.80≦e≦1.05、0.001<f≦0.1、0≦g≦0.5、3.0≦h≦5.0を満たす数である。
(Ca1-r-s-tSrrBasEut)2Si5N8 (IV)
式(IV)中、r、s及びtは、0≦r≦1.0、0≦s≦1.0、0<t<1.0及びr+s+t≦1.0を満たす数である。
(Ca,Sr)S:Eu (V)
A2[M5
1-uMn4+
uF6] (VI)
式(VI)中、Aは、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH4
+からなる群から選択される少なくとも1種であり、M5は、第4族元素及び第14族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、uは0<u<0.2を満たす数である。
【0097】
第二蛍光体に含まれる第一のアルミン酸塩蛍光体において、Crは賦活元素である。第二のアルミン酸塩蛍光体において、CeとCrは賦活元素である。第二のアルミン酸塩蛍光体の組成において、Alと第二元素Mの合計のモル組成比を5としたときに、Ceのモル組成比が変数xと3の積で表され、Crのモル組成比が変数yと3の積で表される場合、変数xが0.0002を超えて0.50未満(0.0002<x<0.50)を満たす数であり、変数yが0.0001を超えて0.05未満(0.0001<y<0.05)を満たす数であることによって、第二のアルミン酸塩蛍光体の結晶構造中に含まれる発光中心となるCeの賦活量及びCrの賦活量が最適な範囲となり、発光中心が少なくなることによる発光強度の低下を抑制することができ、逆に賦活量が多くなることによって生じる濃度消光による発光強度の低下を抑制し、発光強度を高くすることができる。
【0098】
第二蛍光体は、下記式(VII)で表される組成を有する第一のアルミン酸塩蛍光体及び下記式(VIII)で表される組成を有する第二のアルミン酸塩蛍光体からなる群から選択される少なくとも一種の蛍光体を含むことが好ましい。
(Al1-wCrw)2O3 (VII)
式(VII)中、wは、0<w<1を満たす数である。
(Ln1-x-yCexCry)3(Al1―zMz)5O12 (VIII)
式(VIII)中、Lnは、Ceを除く希土類元素からなる群より選択される少なくとも一種の希土類元素であり、Mは、Ga及びInからなる群より選択される少なくとも一種の元素であり、x、y及びzは、0.0002<x<0.50、0.0001<y<0.05、0≦z≦0.8を満たす数である。
【0099】
第二蛍光体は、少なくとも一種のアルミン酸塩蛍光体を含み、二種以上のアルミン酸塩 蛍光体を含んでいてもよい。前記式(VII)で表される組成を有する第一のアルミン酸塩蛍 光体に含まれるCrは、賦活元素である。前記式(VII)中、変数wと2の積は、前記式(VII)で表される組成における賦活元素Crのモル組成比である。変数wは、好ましくは0<w<1、より好ましくは0.00005≦w≦0.25、さらに好ましくは0.0005≦w≦0.15、よりさらに好ましくは0.001≦w≦0.07である。変数wが0を超えて1未満であることによって、発光中心となる賦活元素であるCrが含まれ、発光強度を高くすることができる。
【0100】
前記式(VIII)中のCe及びCrは、前記式(VIII)で表される組成を有する第二のアルミン酸塩蛍光体の賦活元素である。前記式(VIII)中、変数xと3の積は、前記式(VIII)で表される組成における賦活元素Ceのモル組成比である。変数xは、好ましくは0.0002<x<0.50、より好ましくは0.001≦x≦0.35、さらに好ましくは0.0015≦x≦0.30である。前記式(VIII)中、変数yと3の積は、前記式(VIII)で表される組成における賦活元素Crのモル組成比である。変数yは、好ましくは0.0001<y<0.05、より好ましくは0.0005≦y≦0.04、さらに好ましくは0.001≦y≦0.026である。
【0101】
前記式(VIII)中、Lnは、Ceを除く希土類元素からなる群より選択される少なくとも一種の希土類元素であり、より好ましくはY、Gd、Lu、La、Tb及びPrからなる群から選択される少なくとも一種であり、更に好ましくはY、Gd及びLuからなる群から選択される少なくとも一種である。
【0102】
前記式(VIII)中、Mは、Ga及びInからなる群から選択される少なくとも一種の元素であることが好ましくは、Mは、Gaを含むことが好ましい。前記式(VIII)中、変数zと5の積は、前記式(VIII)中、Alに置き換わる前記元素Mのモル組成比である。前記式(VIII)中、変数zは、好ましくは0≦z≦0.8であり、より好ましくは0.001≦z≦0.6であり、さらに好ましくは0.01≦z≦0.4である。
【0103】
第二蛍光体に含まれる少なくとも一種のアルミン酸塩蛍光体は、ガーネット構造を構成する組成であるため、熱、光及び水分に強い。第二蛍光体に含まれる少なくとも一種のアルミン酸塩蛍光体は、励起吸収スペクトルの吸収ピーク波長が380nm以上470nm付近であり、発光素子からの光を十分に吸収して、第二蛍光体の発光強度を高めることができる。第二蛍光体に含まれる少なくとも一種のアルミン酸塩蛍光体は、具体的には、例えば、(Al0.09Cr0.01)2O3、(Al0.9943Cr0.0057)2O3、(Y0.977Ce0.009Cr0.014)3Al5O12、(Lu0.983Ce0.009Cr0.008)3Al5O12、(Lu0.9725Ce0.0175Cr0.01)3Al5O12、(Y0.9735Ce0.0125Cr0.014)3(Al0.8Ga0.2)5O12、(Y0.7836Gd0.1959Ce0.0125Cr0.008)3Al5O12、(Gd0.9675Ce0.0125Cr0.02)3Al5O12等が挙げられる。
【0104】
第一蛍光体と第二蛍光体の合計量100質量%に対する第二蛍光体の質量比は、400nm以上490nm以下の波長範囲における青色光の光量子束Bに対する620nm以上700nm未満の波長範囲における赤色光の光量子束Rの比R/Bが4を超えて50以下となる量であり、700nm以上780nm以下の波長範囲における遠赤色光の光量子束Frに対する前記光量子束Rの比R/Frが0.1以上10以下となる量である。前記第一蛍光体と前記第二蛍光体の合計量100質量%に対する第二蛍光体の質量比は、好ましくは0.5質量%以上99.5質量%以下の範囲であり、より好ましくは1質量%以上99質量%以下の範囲であり、さらに好ましくは1質量%以上90質量%以下の範囲であり、よりさらに好ましくは2質量%以上80質量%以下の範囲であり、よりさらに好ましくは5質量%以上78質量%以下の範囲であり、特に好ましくは10質量%を超えて75質量%以下の範囲である。第一蛍光体及び第二蛍光体の合計量100質量%に対する第二蛍光体の質量比が前記範囲内であると、380nm以上490nm以下の波長範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子からの光とともに、前記発光素子からの光に励起された第一蛍光体及び第二蛍光体から発せられる光により、前記光量子束Bに対する前記光量子束Rの比R/Bが4を超えて50以下、前記光量子束Frに対する前記光量子束Rの比R/Frが0.1以上10以下の光を照射するように、混色光を制御することができる。前記第一蛍光体及び前記第二蛍光体の合計量100質量%に対する第二蛍光体の質量比が2質量%以上80質量%以下の範囲であると、前記光量子束Bに対する前記光量子束Rの比R/Bを10を超えて38以下にすることができ、前記光量子束Frに対する前記光量子束Rの比R/Frを1.5以上4.12以下にすることができ、植物の光受容体がより吸収しやすく、光形態形成を促進させやすい光を照射する発光装置を提供することができる。第一蛍光体及び第二蛍光体の合計量100質量%に対する第二蛍光体の質量比が10質量%を超えて75質量%以下の範囲であると、前記光量子束Bに対する前記光量子束Rの比R/Bを10を超えて38以下にすることができ、前記光量子束Frに対する前記光量子束Rの比R/Frを1.5以上4.0以下にすることができ、植物の光受容体がさらに吸収しやすく、光形態形成をより促進させやすい光を照射する発光装置を提供することができる。
【0105】
<第三発光装置142について>
次に、上述した第三発光装置142について説明を補足する。赤色蛍光体は、Sr及びCaから選択される少なくとも一種の元素と、Alとを組成に有し、Eu2+で賦活されるシリコンナイトライドを含む蛍光体(以下、「CASN蛍光体」と記載する場合がある。)を含むことが好ましい。赤色蛍光体は、アルカリ土類金属元素からなる群より選択される少なくとも一種の元素と、アルカリ金属元素からなる群より選択される少なくとも一種の元素とを組成に有し、Eu2+で賦活されるアルミナイトライドを含む蛍光体、Mn4+で賦活されるフルオロジャーマネート蛍光体、Eu2+で賦活されるCa又はSrの硫化物を含む蛍光体、及びアルカリ金属元素及びアンモニウムイオン(NH4
+)からなる群から選択される少なくとも一種の元素又はイオンと、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を組成に有し、Mn4+で賦活されるフッ化物を含む蛍光体からなる群より選択される少なくとも一種の蛍光体を含むことが好ましい。
【0106】
赤色蛍光体は、具体的には、下記式(IX)又は(X)、あるいは、上記式(II)、(IV)乃至(VI)で表される、いずれかの組成を含む蛍光体が挙げられる。中でも、赤色蛍光体は、下記式(IX)で表される組成のシリコンナイトライドを含む蛍光体を含むことが好ましい。下記式(IX)又は(X)、あるいは、上記式(II)、(IV)乃至(VI)で表される、いずれかの組成を含む蛍光体は、発光素子からの励起光により赤色に発光し、発光装置の発光スペクトルにおいて、580nm以上680nm以下の範囲内に存在する発光ピークの半値幅が40nm以上と、発光ピークが比較的ブロードな形状である。赤色蛍光体70の580nm以上680nm以下の範囲内に存在する発光ピークが、その半値幅が40nm以上と、比較的ブロードな形状であるため、より多くの種類の植物の光受容体が、補光された赤色光を光エネルギーとして吸収でき、又は、補光された赤色光を光信号として感知でき、安定して植物の成長を促進することができ、又は、植物の機能的栄養成分を増強できる、赤色光を供給することができる。
【0107】
(Ca1-s-tSrsEut)xAluSivNw (IX)
式(IX)中、s、t、u、v、w及びxは、それぞれ0≦s≦1、0<t<1.0、0<s+t<1.0、0.8≦x≦1.0、0.8≦u≦1.2、0.8≦v≦1.2、1.9≦u+v≦2.1、2.5≦w≦3.5を満たす数である。
【0108】
式(IX)で表される 組成を含む蛍光体を、CaAlSiN3:Eu蛍光体や(Sr,Ca)AlSiN3:Eu蛍光体と表す場合もある。前記式(IX)中、変数tは、前記式(IX)で表される組成における賦活元素Euのモル比である。変数tは、好ましくは0.0001≦t≦0.2、より好ましくは0.0001≦t≦0.1、さらに好ましくは0.0002≦t≦0.05である。前記式(IX)中、変数sは、前記式(IX)で表される組成におけるSrのモル比である。変数sは、好ましくは0≦s≦0.98、より好ましくは0≦s≦0.95、さらに好ましくは0≦s≦0.9である。
【0109】
(CaaSr1-a-c-dBadEuc)fLibAl3Ne (X)
式(X)中、a、b、c、d、e及びfは、それぞれ0≦a<1.0、0.8≦b≦1.05、0.001<c≦0.1、0≦d≦0.2、3.0≦e≦5.0、0.8≦f≦1.05を満たす数である。
【0110】
また、第三発光装置142は、400nm以上490nm以下の範囲における青色光の光量子束Bに対する620nm以上700nm以下の範囲における赤色光の光量子束Rの比R/Bが20を超えて200以下の範囲となるのであれば、赤色蛍光体に加えて、赤色光の波長領域以外の波長領域の光を発する他の種類の蛍光体を含んでいても良い。他の種類の蛍光体としては、発光素子から出射された光の一部を吸収して、緑色に発光する緑色蛍光体や、黄色に発光する黄色蛍光体、680nmを超える範囲に発光ピーク波長を有する遠赤色蛍光体等が挙げられる。
【0111】
緑色蛍光体としては、具体的には、下記式(i)乃至(iii)で表される、いずれかの組成を含む蛍光体が挙げられる。
M11
8MgSi4O16X11
2:Eu (i)
式(i)中、M11はCa、Sr、Ba及びZnからなる群から選択される少なくとも1種であり、X11はF、Cl、Br及びIからなる群から選択される少なくとも1種である。
Si6-bAlbObN8-b:Eu (ii)
式(ii)中、bは0<b<4.2を満たす。
M13Ga2S4:Eu (iii)
式(iii)中、M13は、Mg,Ca,Sr及びBaからなる群から選ばれる少なくとも1種である。さらに、緑色蛍光体として、例えば、(Ca,Sr,Ba)2SiO4:Eu、Ca3Sc2Si3O12:Ce等のケイ酸塩蛍光体も挙げることができる。
【0112】
黄色蛍光体としては、具体的には、下記式(iv)乃至(v)で表される、いずれかの組成を含む蛍光体が挙げられる。
M14
c/eSi12-(c+d)Alc+dOdN16-d:Eu (iv)
式(iv)中、M14は、Sr、Ca、Li及びYからなる群から選ばれる少なくとも1種である。cは0.5から5であり、dは0から2.5であり、eはM14の電荷である。
M15
3(Al,Ga)5O12:Ce (v)
式(v)中、M15は、YまたはLu,Gd,Tbからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0113】
680nmを超える範囲に発光ピーク波長を有する遠赤色蛍光体としては、具体的には、下記式(vi)乃至(xi)で表される、いずれかの組成を含む蛍光体が挙げられる。
(Al1-fCrf)2O3 (vi)
式(vi)中、fは、0<f<1を満たす数である。
(Ln1-x-yCexCry)3(Al1-zM16
z)5O12 (vii)
式(vii)中、Lnは、Ceを除く希土類元素からなる群より選択される少なくとも一種の希土類元素であり、M16は、Ga及びInからなる群より選択される少なくとも一種の元素であり、x、y及びzは、0.0002<x<0.50、0.0001<y<0.05、0≦z≦0.8を満たす数である。
CaYAlO4:Mn (viii)
LiAlO2:Fe (ix)
CdS:Ag (x)
GdAlO3:Cr (xi)
【0114】
以上、本発明を説明してきたが、本発明は、具体的に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0115】
各実施形態に記載の装置あるいはシステムは、植物育成等に使用することができる。
【符号の説明】
【0116】
1…育成システム
10、11、12、13…照光装置
110…白色光源
130…白色発光装置
111…補助光源
140…第一発光装置
141…第二発光装置
142…第三発光装置
112…昇降検知部
113…光量測定部
114…照光制御スイッチ
115…白色制御スイッチ
116…電源ユニット
117…CPU
118…ROM
119…RAM
120…HDD
121…通信I/F
250、350…昇降判定部
251、351…照度判定部
252、352…照光制御部
253、353…タイマー
254、354…モード設定部
355…照度補正部
356…補正データ保持部
20…グリーンハウス
30…制御装置
40…環境測定装置