IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古河電気工業株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社アイケイエスの特許一覧

<>
  • 特開-電力変換器及び電力変換器の制御方法 図1
  • 特開-電力変換器及び電力変換器の制御方法 図2
  • 特開-電力変換器及び電力変換器の制御方法 図3
  • 特開-電力変換器及び電力変換器の制御方法 図4
  • 特開-電力変換器及び電力変換器の制御方法 図5
  • 特開-電力変換器及び電力変換器の制御方法 図6
  • 特開-電力変換器及び電力変換器の制御方法 図7
  • 特開-電力変換器及び電力変換器の制御方法 図8
  • 特開-電力変換器及び電力変換器の制御方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024148
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】電力変換器及び電力変換器の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
H02M3/00 P
H02M3/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126756
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500091520
【氏名又は名称】株式会社アイケイエス
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】可知 純夫
(72)【発明者】
【氏名】松井 剛生
(72)【発明者】
【氏名】阿部 飛鳥
(72)【発明者】
【氏名】今井 尊史
(72)【発明者】
【氏名】後藤 隆雄
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA20
5H730AS17
5H730BB57
5H730CC01
5H730EE57
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD31
5H730FD41
5H730FF09
5H730FG05
5H730FG12
(57)【要約】
【課題】スイッチング素子を用いた電力変換器の損傷を防ぐ。
【解決手段】電力変換器は、スイッチング素子のスイッチング動作により電力を変換して出力する電力変換部と、前記電力変換部の出力の電気特性値を測定するセンサと、前記スイッチング素子をパルス信号でスイッチング動作させて前記電力変換部の出力を制御し、前記パルス信号のデューティ比又は周波数が所定値以上のときの前記電気特性値の時間変化が所定の条件を満たしている場合、前記スイッチング素子の駆動を停止する制御部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子のスイッチング動作により電力を変換して出力する電力変換部と、
前記電力変換部の出力の電気特性値を測定するセンサと、
前記スイッチング素子をパルス信号でスイッチング動作させて前記電力変換部の出力を制御し、前記パルス信号のデューティ比又は周波数が所定値以上のときの前記電気特性値の時間変化が所定の条件を満たしている場合、前記スイッチング素子の駆動を停止する制御部と、
を備える電力変換器。
【請求項2】
前記スイッチング素子が正常であって、前記パルス信号のデューティ比又は周波数が所定値以上のときの前記電気特性値の時間変化を記憶する記憶部を有し、
前記制御部は、前記記憶部に記憶された前記時間変化と、前記センサで測定された前記電気特性値の時間変化との差の累積が予め定められた閾値以上の場合、前記スイッチング素子の駆動を停止する
請求項1に記載の電力変換器。
【請求項3】
複数の前記電力変換部を並列に有し、
前記制御部は、出力の前記電気特性値が他の電力変換部の出力の前記電気特性値より予め定められた閾値以上に小さい電力変換部の前記スイッチング素子の駆動を停止する
請求項1に記載の電力変換器。
【請求項4】
前記電気特性値は、電流、電力、又は電圧である
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電力変換器。
【請求項5】
スイッチング素子のスイッチング動作により電力を変換して出力する電力変換部と、
前記電力変換部の出力の電気特性値を測定するセンサと、
を有する電力変換器の制御方法であって、
前記スイッチング素子をパルス信号でスイッチング動作させて前記電力変換部の出力を制御するステップと、
前記パルス信号のデューティ比又は周波数が所定値以上のときの前記電気特性値の時間変化が所定の条件を満たしている場合、前記スイッチング素子の駆動を停止するステップと、
を備える電力変換器の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換器及び電力変換器の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング素子のオンオフを繰り返すことにより入力電圧を変換して出力する電圧変換装置の異常を検知する発明として、例えば特許文献1に開示された電圧変換装置がある。この電圧変換装置は、出力電圧を制御量とし、オンオフのデューティ比を操作する操作値が上限値以上、又は下限値以下である場合に異常を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4325284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シリコンカーバイドを用いるスイッチング素子による電圧変換においては、スイッチング素子に劣化が生じている場合、上限値より小さいデューティ比でも過電流が流れて破壊に至る場合がある。この場合、特許文献1の発明では、操作値が上限値以下であるため異常と判定されず、過電流となって電圧変換装置が損傷する虞がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、スイッチング素子を用いた電力変換器の損傷を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る電力変換器は、スイッチング素子のスイッチング動作により電力を変換して出力する電力変換部と、前記電力変換部の出力の電気特性値を測定するセンサと、前記スイッチング素子をパルス信号でスイッチング動作させて前記電力変換部の出力を制御し、前記パルス信号のデューティ比又は周波数が所定値以上のときの前記電気特性値の時間変化が所定の条件を満たしている場合、前記スイッチング素子の駆動を停止する制御部と、を備える。
【0007】
本発明の一態様に係る電力変換器は、前記スイッチング素子が正常であって、前記パルス信号のデューティ比又は周波数が所定値以上のときの前記電気特性値の時間変化を記憶する記憶部を有し、前記制御部は、前記記憶部に記憶された前記時間変化と、前記センサで測定された前記電気特性値の時間変化との差の累積が予め定められた閾値以上の場合、前記スイッチング素子の駆動を停止するようにしてもよい。
【0008】
本発明の一態様に係る電力変換器は、複数の前記電力変換部を並列に有し、前記制御部は、出力の前記電気特性値が他の電力変換部の出力の前記電気特性値より予め定められた閾値以上に小さい電力変換部の前記スイッチング素子の駆動を停止するようにしてもよい。
【0009】
本発明の一態様に係る電力変換器においては、前記電気特性値は、電流、電力、又は電圧であるようにしてもよい。
【0010】
本発明の一態様に係る電力変換器の制御方法は、スイッチング素子のスイッチング動作により電力を変換して出力する電力変換部と、前記電力変換部の出力の電気特性値を測定するセンサと、を有する電力変換器の制御方法であって、前記スイッチング素子をパルス信号でスイッチング動作させて前記電力変換部の出力を制御するステップと、前記パルス信号のデューティ比又は周波数が所定値以上のときの前記電気特性値の時間変化が所定の条件を満たしている場合、前記スイッチング素子の駆動を停止するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スイッチング素子を用いた電力変換器の損傷を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係る電力システムの構成を示す図である。
図2図2は、電力変換器の構成の一例を示す図である。
図3図3は、制御部の機能の構成を示すブロック図である。
図4図4は、PWM信号のデューティ比の時間変化と測定値の時間変化の一例を示す図である。
図5図5は、PWM信号のデューティ比の時間変化と測定値の時間変化の一例を示す図である。
図6図6は、制御部が行う処理の流れを示すフローチャートである。
図7図7は、PWM信号のデューティ比の時間変化と、PWM信号で目標とする電気特性値の時間変化と、測定値の時間変化の一例を示す図である。
図8図8は、PWM信号のデューティ比の時間変化と、PWM信号で目標とする電気特性値の時間変化と、測定値の時間変化の一例を示す図である。
図9図9は、変形例に係る電力変換器の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には適宜同一の符号を付している。
【0014】
[実施形態]
<電力システムの構成>
図1は、本発明の実施形態に係る電力システムの構成を示す図である。電力システム1は、電力変換器11~15と、電力要素21~25と、バス30とを備えている。
【0015】
電力変換器11~13、15は、直流電圧を変換するDC/DC変換器である。電力変換器14は、直流電圧と交流電圧との変換を行うAC/DC変換器である。バス30は、電力システム1では直流バスであり、電力変換器11~15が接続されている。
【0016】
電力要素21は、一例として電力の供給、消費および充電が可能な車載蓄電装置であり、電力変換器11に接続される。車載蓄電装置は電気自動車EVに搭載されており、移動する非定置型の蓄電装置の一例である。電力変換器11は、電力要素21が供給した直流電力の電圧を変換してバス30に出力し、かつバス30から供給された直流電力の電圧を変換して電力要素21に出力し、充電させる機能を有する。電力変換器11はたとえば充電ステーションや住宅用充電設備に設けられるが、電気自動車EVに搭載されてもよい。
【0017】
電力要素22は、一例として電力の発電および供給が可能な太陽光発電装置であり、電力変換器12に接続される。太陽光発電装置は、再生可能エネルギーを用いて発電する発電装置の一例である。電力変換器12は、電力要素22が供給した直流電力の電圧を変換してバス30に出力する機能を有する。
【0018】
電力要素23は、一例として電力の供給、消費および充電が可能な定置型蓄電装置であり、電力変換器13に接続される。定置型蓄電装置は、常設される設備内蓄電装置の一例である。電力変換器13は、電力要素23が供給した直流電力の電圧を変換してバス30に出力し、かつバス30から供給された直流電力の電圧を変換して電力要素23に出力し、充電させる機能を有する。
【0019】
電力要素24は、一例として商用電力系統であり、電力変換器14に接続される。電力変換器14は、電力要素24が供給した交流電力を直流電力に変換してバス30に出力し、かつバス30から供給された直流電力を交流電力に変換して電力要素24に出力する。
【0020】
電力要素25は、一例として電力の供給、消費および充電が可能なZEH(Net Zero Energy House)であり、電力変換器15に接続される。ZEHは、例えば太陽光発電装置や蓄電池、電力負荷であるエアコンや冷蔵庫などの電化製品などを有する。電力変換器15は、電力要素25が供給した直流電力の電圧を変換してバス30に出力し、かつバス30から供給された直流電力の電圧を変換して電力要素25に出力し、蓄電池を充電させ、電力負荷を動作させる機能を有する。
【0021】
<電力変換器の構成>
つぎに、電力変換器11の具体的構成について説明する。図2は、電力変換器11において本発明に係る部分の構成の一例を示す図である。電力変換器11は、制御部100、電力変換部101、及びセンサ103を有する。
【0022】
電力変換部101は、放電している電力要素21から供給された直流電力の電圧を変換してバス30に出力するDC/DC変換器である。電力変換部101は、バス30から供給された直流電力の電圧を変換して電力要素21に出力し、電力要素21を充電することもできる。電力変換部101は、たとえばコイル、コンデンサ、ダイオード、SiC(シリコンカーバイド)で構成されたスイッチング素子101aなどを含む電気回路で構成されている。スイッチング素子101aはたとえば電界効果トランジスタや絶縁ゲート型バイポーラトランジスタである。電力変換部101は、たとえばPWM(Pulse Width Modulation)制御のためのパルス信号であるPWM信号を制御部100から取得し、取得したパルス信号のPWM制御によってスイッチング素子101aを駆動して出力を制御する。
【0023】
センサ102は、電力変換部101のバス30側の電力の電気特性値と、電力要素21側の電力の電気特性値とを測定する。したがって、センサ102は、電力変換器11に入力される電力の電気特性値と、電力変換器11から出力する電力の電気特性値を測定する。センサ102は、電気特性値として電流値、電圧値、電力値などを測定することができる。センサ102は、測定部の一例である。センサ102は、電気特性値の測定値を制御部100に出力する。
【0024】
制御部100は、各種演算処理を行うプロセッサと記憶部とを含んで構成されている。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサを含んで構成される。記憶部は、プロセッサが演算処理を行うために使用する各種プログラムやデータなどが格納される、たとえばROM(Read Only Memory)を備えている。また、記憶部は、プロセッサが演算処理を行う際の作業スペースやプロセッサの演算処理の結果などを記憶するなどのために使用される、たとえばRAM(Random Access Memory)を備えている。
【0025】
制御部100の機能は、プロセッサが記憶部から各種プログラムを読み出して実行することで、電力変換部101を制御するための機能部として実現される。図3は、制御部100の主に本発明に係る機能の構成を示す図である。制御部100は、プログラムの実行によってソフトウエア的に実現される機能部である出力制御部100a、判定部100b、及び記憶部100cを備えている。
【0026】
判定部100bは、センサ102から供給された測定値を用いて電力変換部101でPWM制御されるスイッチング素子101aの異常を判定する。判定部100bは、センサ102から供給された測定値が所定の条件を満たしている場合、スイッチング素子101aに異常があると判定し、センサ102から供給された測定値が所定の条件を満たしていない場合、スイッチング素子101aに異常がないと判定する。
【0027】
出力制御部100aは、電力変換部101の出力の目標値とセンサ102から入力された測定値との差が所定範囲以下となるように出力するPWM信号のデューティ比を設定するフィードバック制御を行う。具体的には、出力制御部100aは、センサ102から入力された測定値と、記憶部100cから取得した目標値と、に基づいて、PWM信号のデューティ比を設定して電力変換部101に出力する。この目標値は、例えば電力値又は電圧値である。なお、出力制御部100aが行うフィードバック制御は、たとえば記憶部100cに記憶された比例ゲイン、積分時間、微分時間などのパラメータを読み出して実行されるPID制御等の、公知の手法を用いて実行できる。また、出力制御部100aは、スイッチング素子101aに異常があると判定部100bが判定した場合、スイッチング素子101aの駆動を停止する。
【0028】
なお、他の電力変換器12、13、14、15は、電力変換器11と同様の構成を有していてもよい。ただし、電力変換器14の電力変換部101は、電力要素24から供給される交流電力を直流電力に変換してバス30に出力するAC/DC変換と、バス30から供給された直流電力を交流電力に変換して電力要素24に出力するDC/AC変換を行う。
【0029】
<電力変換器の動作例>
次に電力変換器11の動作例について説明する。例えば電力要素21から放電してバス30へ電力を供給する場合、制御部100は、センサ102で測定される電力変換部101のバス30側の電気特性値が、バス30へ供給する電力の目標値となるようにPWM信号のデューティ比を設定し、PWM信号を電力変換部101へ出力する。電力変換部101は、制御部100から出力されたPWM信号でスイッチング素子101aを駆動してスイッチング動作させ、電力要素21から供給された直流電力の電圧を変換してバス30に出力する。
【0030】
なお、本実施形態において制御部100は、PWM信号の出力に際し、PWM信号の出力を開始してから時間経過とともにPWM信号のデューティ比を変更していく。図4は、電力要素21からバス30へ電力を供給するときに制御部100が出力するPWM信号のデューティ比の時間変化と、センサ102で測定された測定値の時間変化の一例を示す図である。図4に示す実線の線L11は、制御部100が出力するPWM信号のデューティ比の時間変化であり、図4に示す破線の線L12は、センサ102で測定された電力変換部101のバス30側の測定値の時間変化である。電力変換部101のスイッチング素子101aに異常がない場合、PWM制御を開始してから線L11で示すようにデューティ比を増加するにつれて、測定値も線L12で示すように増加し、目標値に対応した操作量を出力すると、センサ102で測定される測定値が目標値に到達する。一方、スイッチング素子101aに劣化が生じると、図4の一点鎖線L13で示すように、測定値は異常がない場合より低い値となり、この状態が続くとスイッチング素子101aが損傷することを発明者は観察した。
【0031】
また、バス30から電力要素21へ電力を供給して電力要素21を充電する場合、制御部100は、センサ102で測定される電力変換部101の電力要素21側の電気特性値が、電力要素21へ供給する電力の目標値となるようにPWM信号のデューティ比を設定し、PWM信号を電力変換部101へ出力する。電力変換部101は、制御部100から出力されたPWM信号でスイッチング素子101aを駆動し、バス30から供給された直流電力の電圧を変換して電力要素21に出力する。
【0032】
図5は、バス30から電力要素21電力を供給するときに制御部100が出力するPWM信号のデューティ比の時間変化と、センサ102で測定された測定値の時間変化の一例を示す図である。図5に示す実線の線L21は、制御部100が出力するPWM信号のデューティ比の時間変化であり、図5に示す破線の線L22は、センサ102で測定された電力変換部101の電力要素21側の測定値の時間変化である。電力変換部101のスイッチング素子101aに異常がない場合、PWM制御を開始してから線L21で示すようにデューティ比を増加するにつれて、測定値も線L22で示すように増加し、目標値に対応した操作量を出力すると、センサ102で測定される測定値が目標値に到達する。一方、スイッチング素子101aに劣化が生じると、図5の一点鎖線L23で示すように、測定値は異常がない場合より低い値となり、この状態が続くとスイッチング素子101aが損傷することを発明者は観察した。
【0033】
そこで、発明者は、PWM信号のデューティ比に応じた出力が得られていない状態を検出することにより、スイッチング素子101aの異常を判定する技術を見出した。
【0034】
図6は、スイッチング素子101aの異常を判定する処理の流れを示すフローチャートである。制御部100は、バス30への電力供給又は電力要素21への電力供給の制御を開始すると、図6に示す処理を実行する。まず制御部100は、制御開始時のデューティ比を設定してPWM信号を出力する(ステップS11)。このデューティ比は、例えば後述する閾値未満のデューティ比であり、予め設定されている。電力変換部101においては、制御部100から出力されたPWM信号でスイッチング素子101aが駆動される。スイッチング素子101aがPWM信号で駆動されることにより、電力変換部101の出力が変化する。制御部100は、PWM信号の出力後にセンサ102が測定した電気特性値の測定値を取得する(ステップS12)。ここで取得する測定値は、例えば電流値であるが、電流値に限定されるものではなく、例えば電流値又は電圧値であってもよい。
【0035】
次に制御部100は、PWM信号のデューティ比が予め定められた閾値以上であるか判断する(ステップS13)。なお、この閾値は、例えば予め実験により定められ、記憶部100cに記憶されている。制御部100は、PWM信号のデューティ比が予め定められた閾値未満である場合(ステップS13でNO)、PWM信号のデューティ比を増加して出力し(ステップS16)、処理の流れをステップS12へ戻す。
【0036】
制御部100は、PWM信号のデューティ比が予め定められた閾値以上である場合(ステップS13でYES)、このデューティ比のPWM信号で目標とする電気特性値と測定値との差が予め定められた閾値未満であるか判断する(ステップS14)。なお、この閾値は例えば予め実験により定められる。目標とする電気特性値は、ステップS12で取得する測定値が電流値である場合には電流値であり、ステップS12で取得する測定値が電力値である場合には電力値であり、ステップS12で取得する測定値が電圧値である場合には電圧値である。
【0037】
図7は、電力要素21からバス30へ電力を供給するときに制御部100が出力するPWM信号のデューティ比の時間変化と、PWM信号で目標とする電気特性値の時間変化と、センサ102で測定された測定値の時間変化の一例を示すグラフである。図7に示す実線の線L31は、制御部100が出力するPWM信号のデューティ比の時間変化であり、図7に示す破線の線L32は、PWM信号で目標とする電気特性値の時間変化であり、線L33は、スイッチング素子101aに異常があるときにセンサ102で測定された電力変換部101のバス30側の測定値の時間変化である。制御部100は、電力要素21から放電してバス30へ電力を供給する場合、図7に示すようにデューティ比が閾値以上であって、線L33に示すように、デューティ比で目標とする電気特性値と測定値との差diff1が予め定められた閾値以上である場合、ステップS14でNOと判断する。なお、ステップS14で用いる閾値は、記憶部100cに記憶されている。
【0038】
図8は、バス30から電力要素21へ電力を供給するときに制御部100が出力するPWM信号のデューティ比の時間変化と、PWM信号で目標とする電気特性値の時間変換と、センサ102で測定された測定値の時間変化の一例を示すグラフである。図8に示す実線の線L41は、制御部100が出力するPWM信号のデューティ比の時間変化であり、図8に示す破線の線L42は、PWM信号で目標とする電気特性値の時間変化であり、線L43は、スイッチング素子101aに異常があるときにセンサ102で測定された電力変換部101のバス30側の測定値の時間変化である。制御部100は、バス30から電力要素21へ電力を供給する場合、図8に示すようにデューティ比が閾値以上であって、線L43に示すように、デューティ比で目標とする電気特性値と測定値との差diff2が予め定められた閾値以上である場合、ステップS14でNOと判断する。なお、この閾値は、電力要素21からバス30へ電力を供給するときとは異なる閾値であってもよい。
【0039】
制御部100は、PWM信号で目標とする電気特性値と測定値との差が予め定められた閾値以上である場合(ステップS14でNO)、差が閾値以上の状態が所定時間以上継続したか判断する(ステップS17)。なお、この所定時間は、予め記憶部100cに記憶されている。制御部100は、例えば、電力要素21からバス30へ電力を供給する場合、図7に示すようにPWM信号で目標とする電気特性値と測定値との差が予め定められた閾値以上の状態が時間t1以上継続すると、ステップS17でYESと判断する。また、制御部100は、例えば、バス30から電力要素21へ電力を供給する場合、図8に示すようにPWM信号で目標とする電気特性値と測定値との差が予め定められた閾値以上の状態が時間t2以上継続すると、ステップS17でYESと判断する。制御部100は、ステップS17でYESと判断した場合、0%のデューティ比のPWM信号を出力してスイッチング素子101aの駆動を停止し、電力変換部101の出力を停止する(ステップS18)。即ち制御部100は、所定の条件として、PWM信号のデューティ比が閾値以上であり、PWM信号で目標とする電気特性値と測定値との差が予め定められた閾値以上であり、PWM信号で目標とする電気特性値と測定値との差が閾値以上の状態が所定時間以上継続した、との条件を満たした場合、スイッチング素子101aの駆動を停止する。
【0040】
制御部100は、PWM信号で目標とする電気特性値と測定値との差が予め定められた閾値未満である場合(ステップS14でYES)、PWM信号のデューティ比が電力変換部101の出力の目標値に対応したデューティ比であるか判断する(ステップS15)。制御部100は、PWM信号のデューティ比が電力変換部101の出力の目標値に対応したデューティ比ではない場合(ステップS15でNO)、デューティ比を増加したPWM信号を出力し(ステップS16)、処理の流れをステップS12へ戻す。制御部100は、PWM信号のデューティ比が電力変換部101の出力の目標値に対応したデューティ比である場合(ステップS15でYES)、スイッチング素子101aの異常を判定する処理を終了する。
【0041】
本実施形態によれば、スイッチング素子101aが損傷する前に発生する現象を検知してスイッチング素子101aの駆動を停止するため、電力変換部101の損傷を防ぐことができる。
【0042】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した実施形態及び以下の変形例は、各々を組み合わせてもよい。上述した各実施形態及び各変形例の構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態や変形例に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0043】
上述した実施形態においては、PWM制御により電力変換部101の出力を制御しているが、PFM(Pulse Frequency Modulation)制御により電力変換部101の出力を制御してもよい。制御部100は、PFM制御により電力変換部101の出力を制御する場合、スイッチング素子101aのオンオフを行なうパルス信号であるPFM信号について、デューティ比を固定しつつ、周波数を時間経過とともに変化させて電力変換部101へ出力する。電力変換部101は、制御部100から出力されたPFM信号が示す周波数のパルスでスイッチング素子101aを駆動して出力を制御する。電力変換部101は、PFM信号の周波数が上がるにつれて出力の電気特性値を増加させる。
【0044】
制御部100は、PFM信号の出力を開始してから時間経過とともにPFM信号の周波数を増加させる。制御部100は、PFM信号の周波数が所定の閾値以上となったときに、PFM信号の周波数で目標とする電気特性値と測定値との差が閾値以上である状態が所定時間以上継続した場合、スイッチング素子101aの駆動を停止する信号を出力する。この変形例でも、スイッチング素子101aが損傷する前に発生する現象を検知してスイッチング素子101aの駆動を停止するため、電力変換部101の破壊を防ぐことができる。
【0045】
制御部100は、電力変換部101のスイッチング素子101aが正常であるときのPWM信号のデューティ比又はPFM信号の周波数の時間変化と測定値の時間変換の関係を記憶部100cに記憶し、記憶した関係と測定値の時間変化との差の累積が予め定められた閾値以上となった場合、電力変換部101の出力を停止するようにしてもよい。
【0046】
電力変換器11は、直流電力の電圧を変換する電力変換部を並列に備える構成であってもよい。図9は、電力変換部を並列に備える電力変換器11Aの構成を示すブロック図である。電力変換器11Aにおいては、直流電力の電圧を変換して出力する電力変換部101Aと、同じく直流電力の電圧を変換して出力する電力変換部101Bとが並列に接続されている。センサ102は、電力変換部101A、101Bのバス30側の電力の電気特性値と、電力要素21側の電力の電気特性値を測定する。制御部100は、電力変換部101A、101Bの出力側の電気特性値をセンサ102から取得する。制御部100は、センサ102から取得した電力変換部101Aの出力側の測定値と、センサ102から取得した電力変換部101Bの出力側の測定値とを比較し、一方の測定値が他方の測定値より小さく、その差が予め定められた閾値以上である場合、測定値が小さいほうの電力変換部のスイッチング素子101aの駆動を停止するようにしてもよい。なお、並列にする電力変換部の数は、2つに限定されるものではなく、3つ以上であってもよい。
【0047】
上述した実施形態においては、制御部100は、デューティ比が予め定められた閾値以上のときの測定値が予め定められた閾値未満である状態が所定時間以上継続した場合にスイッチング素子101aの駆動を停止してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 電力システム
11、12、13、14、15 電力変換器
21、22、23、24、25 電力要素
30 バス
100 制御部
101、101A、101B 電力変換部
101a スイッチング素子
102 センサ
EV 電気自動車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9