(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024162
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】ウェーハの片面研磨方法、ウェーハの製造方法、およびウェーハの片面研磨装置
(51)【国際特許分類】
B24B 37/005 20120101AFI20240215BHJP
B24B 37/12 20120101ALI20240215BHJP
B24B 37/30 20120101ALI20240215BHJP
B24B 53/017 20120101ALI20240215BHJP
B24B 53/00 20060101ALI20240215BHJP
B24B 53/12 20060101ALI20240215BHJP
B24B 37/24 20120101ALI20240215BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
B24B37/005 Z
B24B37/12 D
B24B37/30 Z
B24B53/017 A
B24B53/00 A
B24B53/12 Z
B24B37/24 A
H01L21/304 622F
H01L21/304 622R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126786
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 卓也
(72)【発明者】
【氏名】杉森 勝久
(72)【発明者】
【氏名】大久保 翔平
【テーマコード(参考)】
3C047
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C047AA05
3C047AA34
3C047EE04
3C158AA07
3C158AA13
3C158AA19
3C158BA05
3C158BA07
3C158BC01
3C158BC03
3C158CB01
3C158CB10
3C158DA17
3C158EA12
3C158EB01
3C158EB20
5F057AA02
5F057AA24
5F057BA11
5F057BB03
5F057CA02
5F057CA03
5F057CA11
5F057CA19
5F057CA25
5F057DA05
5F057DA08
5F057DA15
5F057DA28
5F057DA38
5F057EB02
5F057EB06
5F057EB07
5F057EB13
5F057EB24
5F057EB30
5F057FA14
5F057FA20
5F057FA37
5F057FA42
5F057GA02
5F057GA16
5F057GA27
(57)【要約】
【課題】所望の形状のウェーハを得ることができるウェーハの片面研磨方法を提供すること。
【解決手段】ウェーハの片面研磨方法は、研磨ヘッドに保持されたウェーハを当該ウェーハよりも大きいスウェードタイプの研磨パッドに押し付けて、前記研磨ヘッドおよび前記研磨パッドを回転させることにより、前記ウェーハを研磨するウェーハの片面研磨方法であって、前記研磨ヘッドを揺動させつつ径方向に圧縮率分布を有する前記研磨パッドを用いて行う研磨における取り代に基づいて、前記研磨ヘッドの揺動条件を求める揺動条件演算工程と、前記揺動条件に基づき前記研磨ヘッドを前記研磨パッドの研磨面に対して平行な方向に揺動させつつ、前記研磨パッドを用いて前記ウェーハを研磨する研磨工程と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨ヘッドに保持されたウェーハを当該ウェーハよりも大きいスウェードタイプの研磨パッドに押し付けて、前記研磨ヘッドおよび前記研磨パッドを回転させることにより、前記ウェーハを研磨するウェーハの片面研磨方法であって、
前記研磨ヘッドを揺動させつつ径方向に圧縮率分布を有する前記研磨パッドを用いて行う研磨における取り代に基づいて、前記研磨ヘッドの揺動条件を求める揺動条件演算工程と、
前記揺動条件に基づき前記研磨ヘッドを揺動させつつ、前記研磨パッドを用いて前記ウェーハを研磨する研磨工程と、を備える、ウェーハの片面研磨方法。
【請求項2】
請求項1に記載のウェーハの片面研磨方法において、
前記研磨パッドを回転させつつブラシを前記研磨パッドに押し付けることにより、他の領域とは異なる圧縮率の円環状の領域を前記研磨パッドに形成する研磨パッド調整工程を備える、ウェーハの片面研磨方法。
【請求項3】
請求項2に記載のウェーハの片面研磨方法において、
前記研磨パッド調整工程は、前記圧縮率分布を有する領域の厚さが実質的に等しくなるように、前記円環状の領域を形成する、ウェーハの片面研磨方法。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のウェーハの片面研磨方法において、
前記研磨工程は、前記ウェーハが前記研磨パッドの回転中心よりも外側に位置する状態で前記ウェーハを研磨し、
前記研磨パッド調整工程は、前記ブラシを用いて1つの円環状の領域を形成し、
前記円環状の領域は、前記研磨パッドの前記回転中心を0%の位置、前記研磨パッドが揺動していない場合の前記ウェーハにおける前記回転中心から最も遠い外縁上の位置を100%の位置とした場合、99%の位置よりも外側かつ100%の位置よりも内側の位置を内縁とする領域であって、内側の領域よりも圧縮率が大きい領域である、ウェーハの片面研磨方法。
【請求項5】
ウェーハの製造方法であって、
前記ウェーハを仕上げ加工する仕上げ工程を備え、
前記仕上げ工程において、請求項1に記載のウェーハの片面研磨方法により、前記ウェーハを研磨する、ウェーハの製造方法。
【請求項6】
研磨ヘッドに保持されたウェーハを当該ウェーハよりも大きいスウェードタイプの研磨パッドに押し付けて、前記研磨ヘッドおよび前記研磨パッドを回転させることにより、前記ウェーハを研磨する片面研磨装置であって、
前記研磨ヘッドおよび前記研磨パッドを回転させる回転駆動部と、
前記研磨ヘッドを前記研磨パッドの研磨面に対して平行な方向に揺動させる揺動駆動部と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記研磨ヘッドを揺動させつつ径方向に圧縮率分布を有する前記研磨パッドを用いて行う研磨における取り代に基づいて、前記研磨ヘッドの揺動条件を求める揺動条件演算部と、
前記回転駆動部および前記揺動駆動部を制御して、前記揺動条件に基づき前記研磨ヘッドを揺動させつつ、前記研磨パッドを用いて前記ウェーハを研磨する研磨制御部と、を備える、ウェーハの片面研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの片面研磨方法、ウェーハの製造方法、およびウェーハの片面研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
研磨パッドを用いてウェーハの片面を研磨するに際し、研磨パッドの表面の物性が取り代に影響を与えることが知られている。このような影響に対応するための技術として、円周方向に気孔率が異なるパッドを使用して、研磨性能を向上させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。他の技術として、研磨布の表面の位置に応じて表面形状の修正量を変えることにより、ウェーハに作用する圧力の偏りを是正するように研磨布の表面形状を修正する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-35773号公報
【特許文献2】特開2002-187059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特にウェーハ周辺部のESFQR(Edge Site flatness Front reference least sQuare Deviation)のような、ウェーハの形状の精度に対する要求が高くなるにつれて、特許文献1~2に記載の技術のように、研磨パッドの気孔率を調整したり、全体の表面形状を均一したりするだけでは、所望の形状のウェーハを得ることが困難になってきている。
【0005】
本発明は、所望の形状のウェーハを得ることができるウェーハの片面研磨方法、ウェーハの製造方法、およびウェーハの片面研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のウェーハの片面研磨方法は、研磨ヘッドに保持されたウェーハを当該ウェーハよりも大きいスウェードタイプの研磨パッドに押し付けて、前記研磨ヘッドおよび前記研磨パッドを回転させることにより、前記ウェーハを研磨するウェーハの片面研磨方法であって、前記研磨ヘッドを揺動させつつ径方向に圧縮率分布を有する前記研磨パッドを用いて行う研磨における取り代に基づいて、前記研磨ヘッドの揺動条件を求める揺動条件演算工程と、前記揺動条件に基づき前記研磨ヘッドを揺動させつつ、前記研磨パッドを用いて前記ウェーハを研磨する研磨工程と、を備える。
【0007】
本発明のウェーハの片面研磨方法において、前記研磨パッドを回転させつつブラシを前記研磨パッドに押し付けることにより、他の領域とは異なる圧縮率の円環状の領域を前記研磨パッドに形成する研磨パッド調整工程を備える、ことが好ましい。
【0008】
本発明のウェーハの片面研磨方法において、前記研磨パッド調整工程は、前記圧縮率分布を有する領域の厚さが実質的に等しくなるように、前記円環状の領域を形成する、ことが好ましい。
【0009】
本発明のウェーハの片面研磨方法において、前記研磨工程は、前記ウェーハが前記研磨パッドの回転中心よりも外側に位置する状態で前記ウェーハを研磨し、前記研磨パッド調整工程は、前記ブラシを用いて1つの円環状の領域を形成し、前記円環状の領域は、前記研磨パッドの前記回転中心を0%の位置、前記研磨パッドが揺動していない場合の前記ウェーハにおける前記回転中心から最も遠い外縁上の位置を100%の位置とした場合、99%の位置よりも外側かつ100%の位置よりも内側の位置を内縁とする領域であって、内側の領域よりも圧縮率が大きい領域である。
【0010】
本発明のウェーハの製造方法は、前記ウェーハを仕上げ加工する仕上げ工程を備え、前記仕上げ工程において、上述のウェーハの片面研磨方法により、前記ウェーハを研磨する。
【0011】
本発明のウェーハの片面研磨装置は、研磨ヘッドに保持されたウェーハを当該ウェーハよりも大きいスウェードタイプの研磨パッドに押し付けて、前記研磨ヘッドおよび前記研磨パッドを回転させることにより、前記ウェーハを研磨する片面研磨装置であって、前記研磨ヘッドおよび前記研磨パッドを回転させる回転駆動部と、前記研磨ヘッドを前記研磨パッドの研磨面に対して平行な方向に揺動させる揺動駆動部と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記研磨ヘッドを揺動させつつ径方向に圧縮率分布を有する前記研磨パッドを用いて行う研磨における取り代に基づいて、前記研磨ヘッドの揺動条件を求める揺動条件演算部と、前記回転駆動部および前記揺動駆動部を制御して、前記揺動条件に基づき前記研磨ヘッドを揺動させつつ、前記研磨パッドを用いて前記ウェーハを研磨する研磨制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る片面研磨装置の概略構成を示す模式図である。
【
図2】実施形態に係る研磨パッドの調整方法を示す平面図である。
【
図3】実施形態に係る制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図4】実施形態に係るウェーハの製造方法を示すフローチャートである。
【
図5】実施形態に係る片面仕上げ工程を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態に係る研磨パッドの圧縮率分布の一例を示す模式図である。
【
図7】実施例1に係る研磨パッドに対するブラシの押し付け量と研磨ヘッドの揺動幅と研磨後のウェーハのESFQRとの関係を示すグラフである。
【
図8】実施例2に係るウェーハの研磨前形状を示すグラフである。
【
図9】実施例2に係る圧縮率分布を有する研磨パッドを用いた研磨における研磨ヘッドの揺動幅と研磨後のウェーハの形状との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態]
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
<片面研磨装置の構成>
まず、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る片面研磨装置1について説明する。
図1に示す片面研磨装置1は、ウェーハWの片面(被研磨面W1)を研磨する(以下、片面研磨装置1における研磨を「片面研磨」という場合がある)。片面研磨装置1は、研磨部2と、研磨パッド調整部4と、制御装置5と、を備える。
【0015】
研磨部2は、研磨ヘッド21と、ヘッド保持部22と、ヘッド昇降部23と、回転駆動部としてのヘッド駆動部24と、定盤25と、研磨パッド26と、回転駆動部としての定盤駆動部27と、ウェーハ加圧力調整部28と、研磨液供給部29と、揺動駆動部30と、を備える。
なお、研磨部2が備える研磨ヘッド21は1つでも良いが、本実施形態では研磨部2が複数の研磨ヘッド21を備える構成を例示する。
【0016】
各研磨ヘッド21は、円板状に形成されている。各研磨ヘッド21は、水の表面張力等により、ウェーハWの被研磨面W1(表面)とは反対側の面(裏面)を保持する。
【0017】
研磨ヘッド21の下面には、当該下面全体を覆うようにバックパッド211が配置されている。バックパッド211は、例えば多孔質樹脂材により構成され、水等の液体を含むことができる。
【0018】
バックパッド211の下面の外周部には、リング状のリテーナリング212が配置されている。リテーナリング212は、当該リテーナリング212の内部に位置するウェーハWの外周端部に接触し、バックパッド211と研磨パッド26の隙間から外れないようにウェーハWを保持する。
【0019】
各研磨ヘッド21の上面中央には、円柱状のヘッド回転軸部材213が配置されている。
【0020】
ヘッド保持部22は、各研磨ヘッド21のヘッド回転軸部材213の上端側の部位を、当該ヘッド回転軸部材213がその軸周りに回転できるように保持する。ヘッド保持部22は、複数の研磨ヘッド21が所定の円の円周上に等間隔で並ぶように、ヘッド回転軸部材213を保持する。
【0021】
ヘッド昇降部23は、ヘッド保持部22を昇降させる。
【0022】
ヘッド駆動部24は、ヘッド保持部22の内部に配置されている。ヘッド駆動部24は、例えばモータにより構成され、当該モータの回転軸に接続されたヘッド回転軸部材213を回転させる。
【0023】
定盤25は、円板状に形成され、複数の研磨ヘッド21の下方に配置されている。定盤25の下面中央には、円柱状の定盤回転軸部材251が配置されている。
【0024】
研磨パッド26は、定盤25の上面に貼り付けられている。研磨パッド26は、ウェーハWよりも大きい円形状に形成され、複数の研磨ヘッド21に保持されたウェーハWを同時に研磨できるように構成されている。研磨パッド26は、スウェードタイプの軟質の研磨パッドである。研磨パッド26の圧縮率は、例えば23%以上36%以下である。研磨パッド26は、ナップ(Nap)層を備える。ウェーハWの被研磨面W1が所定の力で研磨パッド26のナップ層に押圧されることにより、ウェーハWの研磨が行われる。
ここで、ナップ層とは、発泡により形成された多数の孔を有する層をいう。
【0025】
定盤駆動部27は、例えばモータにより構成され、当該モータの回転軸に接続された定盤回転軸部材251を、研磨ヘッド21の回転方向と同じ方向または逆方向に回転させる。
【0026】
ウェーハ加圧力調整部28は、固定加圧方式の装置であり、ウェーハWを研磨パッド26に押圧する圧力を調整する。固定加圧方式では、シリンダ加圧によって研磨ヘッド21全体が押し下げられ、研磨ヘッド21がバックパッド211を介してウェーハWの上面に押し付けられることにより、ウェーハWの被研磨面W1が研磨パッド26に押し付けられる。
【0027】
研磨液供給部29は、ノズル291により、研磨パッド26にスラリー状の研磨液を供給する。この研磨液を用いて、ウェーハWの被研磨面W1が研磨される。
【0028】
揺動駆動部30は、各研磨ヘッド21を研磨パッド26の研磨面に対して平行な方向に揺動させる。例えば、揺動駆動部30は、ヘッド昇降部23を保持し、ウェーハWの研磨中に当該ヘッド昇降部23を一方向に沿って往復させる(例えば、
図1における左右方向に往復させる)ことにより、各研磨ヘッド21を当該研磨ヘッド21の回転軸Dを中心に揺動させる。
【0029】
研磨パッド調整部4は、研磨パッド26が径方向の圧縮率分布を有するように、研磨パッド26を調整する。研磨パッド26における調整された領域は、圧縮率が大きくなり、軟らかくなる。
研磨パッド調整部4は、ブラシ保持部41と、ブラシ42と、位置調整部43と、上述した定盤25および定盤駆動部27と、を備える。
【0030】
ブラシ保持部41は、上下に延びる棒状のブラシ回動軸部材411を備える。ブラシ回動軸部材411の上端には、水平方向に延びる保持アーム412が配置されている。
【0031】
ブラシ42は、保持アーム412の先端側の部位に配置されている。ブラシ42は、円形状に束ねられた複数のナイロン製の毛により構成され、平面視で研磨パッド26の表面よりも小さい形状に形成されている。
詳しくは後述するが、ブラシ42が押し付けられた研磨パッド26を回転させることにより、研磨パッド26におけるブラシ42との接触領域の圧縮率が高くなり、研磨パッド26に圧縮率分布が形成される。
ブラシ42としては、圧縮率分布の分解能を向上させる観点から、束ねられた毛により構成される円柱状の直径が5mm以下であることが好ましい。また、ブラシ42の毛の長さは、ブラシ42を研磨パッド26に押し付けた際の毛の変形による圧縮率のばらつき抑制の観点から、0.5mm以上15mm以下であることが好ましい。
【0032】
位置調整部43は、ブラシ42の位置を調整する。位置調整部43は、ブラシ回動軸部材411を昇降させることにより、ブラシ42の高さ位置を調整する。位置調整部43は、ブラシ回動軸部材411をその軸周りに回転させることにより、研磨パッド26上におけるブラシ42の水平方向の位置を調整する。
【0033】
ここで、研磨パッド調整部4を用いて、圧縮率分布を有するように研磨パッド26を調整する方法について説明する。
位置調整部43は、制御装置5の制御に基づいて、
図2に示すように、保持アーム412を実線で示す位置に位置させた状態で、ブラシ42を研磨パッド26に押し付ける。次に、定盤駆動部27は、制御装置5の制御に基づいて、定盤25を回転させる。この定盤25の回転に伴い、研磨パッド26における二点鎖線で示される円環状の第1調整領域261が調整される。
また、保持アーム412を二点鎖線で示す位置に位置させた状態でブラシ42を研磨パッド26に押し付けて、定盤25を回転させると、研磨パッド26における二点鎖線で示す円環状の第5調整領域265が調整される。
さらに、研磨パッド26におけるブラシ42が押し付けられる位置を所定の位置に設定することにより、それぞれ二点鎖線で示す第2調整領域262、第3調整領域263および第4調整領域264が調整される。
【0034】
調整された領域(調整領域)の圧縮率は、調整されていない領域(未調整領域)の圧縮率、例えば第1調整領域261の内側に位置する未調整領域260の圧縮率よりも大きくなる。
また、調整領域の圧縮率は、ブラシ42の研磨パッド26に対する押し付け量が大きいほど(ブラシ42の高さ位置が低いほど)大きくなる。
また、調整領域の圧縮率は、ブラシ42の研磨パッド26に対する押し付け量が同じ場合、調整時間が長くなるほど大きくなる。
また、未調整領域および各調整領域の厚さは、ブラシ42の研磨パッド26に対する押し付け量に関係なく実質的に等しくなる。
このように、研磨パッド調整部4は、互いに圧縮率が異なる領域が研磨パッド26の径方向に並び、かつ圧縮率分布を有する領域の厚さが実質的に等しくなるように、円環状の調整領域を研磨パッド26に形成することができる。つまり、圧縮率分布とは、圧縮率が異なる円環状の調整領域により形成された分布のことである。
【0035】
また、研磨パッド26における圧縮率が高い領域ほど、研磨時の取り代が小さくなる。
したがって、例えば、外側の領域の圧縮率が内側の領域の圧縮率よりも高くなるように、研磨パッド26に圧縮率分布を形成することにより、ウェーハWにおける外側の領域の取り代を内側の領域の取り代よりも小さくすることができる。
【0036】
なお、
図2には、圧縮率が互いに異なる円環状の調整領域が5つの場合を例示したが、1つ以上4つ以下であっても良いし、6つ以上であっても良い。
また、複数の調整領域の幅は、同じであっても良いし、異なっていても良い。
また、圧縮率分布は、外側の領域の圧縮率が内側の領域の圧縮率よりも大きくなるように形成されても良いし、外側の領域の圧縮率が内側の領域の圧縮率よりも小さくなるように形成されても良い。
また、ブラシ42を水平方向に移動させながら、研磨パッド26全体を調整しても良い。研磨パッド26全体を調整する場合、平面視で研磨パッド26と同じ大きさまたは研磨パッド26より大きいブラシを用いても良い。また、平面視で大きさが異なる複数のブラシ42を保持アーム412に取り付けておき、研磨パッド26の調整領域の大きさに応じて、ブラシ42を選択しても良い。
【0037】
制御装置5は、研磨部2および研磨パッド調整部4を制御する。
図3に示すように、制御装置5は、入力部51と、記憶部52と、制御部53と、を備える。
【0038】
入力部51は、例えばタッチパネルまたは物理ボタンにより構成されている。入力部51は、例えば作業者によるウェーハWの研磨に関する各種設定の入力操作に用いられ、入力操作に対応する信号を制御部53へ出力する。
入力される設定としては、ウェーハWにおける被研磨面W1の目標形状(以下、「ウェーハWの目標形状」と言う場合がある)および研磨パッド26の調整条件を例示することができる。
なお、入力部51は、制御装置5に接続された外部ネットワークから、ウェーハWの研磨に関する各種設定情報を取得しても良い。
【0039】
ここで、ウェーハWの目標形状を表す指標としては、ESFQR、ZDD(Z-height Double Differentiation)およびGBIR(Global flatness Back reference Ideal Range)を例示することができる。
【0040】
ESFQRは、ウェーハWの外周部(エッジ)でのサイトフラットネスを示す指標である。GBIRは、ウェーハWのグローバルフラットネスを示す指標である。ESFQRおよびGBIRは、平坦度測定装置(例えば、KLA-Tencor社製:Wafer sight 2)により測定される。
【0041】
ESFQRは、ウェーハWの外周部を多数(例えば72個)の扇形の領域(サイト)に分割し、サイト内でのデータを最小二乗法にて算出したサイト内平面を基準とし、このサイト内平面からの変位量のことであり、各サイトは1つのデータを持つ。
【0042】
ZDDは、ウェーハWの外周部近傍の傾きの変化(曲率)を表す指標である。ZDDは、ウェーハWの中心から最外周までのウェーハW表面の変位プロファイルを、二次微分することにより得られる。
ZDDが正の値の場合は、はねる方向に表面が変位していることを示し、反対に負の値の場合はダレ方向に表面が変位していることを示す。ZDDの値が0に近いほど、ウェーハWの外周部近傍の傾きがない(平坦である)ことを示す。
【0043】
記憶部52は、例えばウェーハWの研磨に関する各種情報を制御部53で読み取り可能に記憶する。ウェーハWの研磨に関する情報としては、研磨パッド26の調整条件の演算に用いられる第1相関情報と、研磨ヘッド21の揺動条件の演算に用いられる第2相関情報と、を例示することができる。
なお、第1相関情報および第2相関情報を、例えば片面研磨装置1から離れた場所に設置されたサーバ装置に格納しても良い。この場合、サーバ装置に格納された情報を、複数の片面研磨装置1で利用できるようにしても良い。
【0044】
第1相関情報は、研磨パッド26の径方向の圧縮率分布と、研磨パッド26の調整条件と、の相関を表す。第1相関情報に含まれる調整条件としては、ブラシ42の研磨パッド26に対する押し付け位置、押し付け量および調整時間を例示することができる。
なお、調整条件に、ブラシ42の大きさまたは毛の硬さがさらに含まれていても良い。
【0045】
第2相関情報は、予め設定された研磨条件(例えばウェーハWを研磨パッド26に押圧する圧力または研磨時間)における、研磨パッド26の径方向の圧縮率分布と、ウェーハWの目標取り代(径方向の目標取り代分布)と、研磨ヘッド21の揺動条件と、の相関を表す。研磨ヘッド21の揺動条件としては、
図1に示す揺動幅(往復の移動幅)Lおよび揺動速度を例示することができる。
ここで、研磨条件が常に同じであれば、第2相関情報は、上述した構成で良い。しかし、研磨条件が異なることがある場合、第2相関情報として、研磨条件と、研磨パッド26の圧縮率分布と、ウェーハWの目標取り代と、研磨ヘッド21の揺動条件と、の相関関係を表す情報を適用しても良い。
【0046】
なお、上述の第1相関情報および第2相関情報は、テーブル構造を有する情報であっても良いし、関数で表される情報であっても良い。
【0047】
制御部53は、CPUを備え、記憶部52に格納されたプログラムをCPUが実行することにより各種機能を実現する。制御部53は、情報取得部531と、研磨パッド調整条件演算部532と、研磨パッド調整制御部533と、目標取り代演算部534と、揺動条件演算部535と、研磨制御部536と、を備える。
【0048】
情報取得部531は、記憶部52から第1相関情報および第2相関情報を取得する。
情報取得部531は、例えば、入力部51を用いて設定された研磨パッド26の圧縮率分布を表す圧縮率分布情報を取得する。圧縮率分布情報が表す内容としては、ウェーハWの目標形状の指標の種類(ESFQR、ZDDまたはGBIR)に対応する調整領域の位置、幅、圧縮率、または個数を例示することができ。なお、例えば、作業者が入力部51を用いてウェーハWの目標形状の指標の種類を設定した場合、情報取得部531は、当該指標の種類に対応する内容の圧縮率分布情報を取得しても良い。この場合、記憶部52に、目標形状の指標の種類と、研磨パッド26の圧縮率分布と、の関係を表す情報が記憶されていることが好ましい。
情報取得部531は、片面研磨前のウェーハWの形状(以下、「ウェーハWの研磨前形状」という場合がある)を表す研磨前形状情報を取得する。情報取得部531は、研磨前形状情報を入力部51から取得しても良いし、形状の測定装置から取得しても良い。
情報取得部531は、例えば、入力部51を用いて設定されたウェーハWの目標形状を表す目標形状情報を取得する。
【0049】
研磨パッド調整条件演算部532は、情報取得部531で取得された第1相関情報に基づいて、研磨パッド26の圧縮率分布を、情報取得部531で取得された圧縮率分布情報で表される圧縮率分布にするための調整条件を求める。
【0050】
研磨パッド調整制御部533は、研磨パッド調整条件演算部532で求められた調整条件に基づき研磨パッド26を調整するように、研磨パッド調整部4を制御する。
【0051】
目標取り代演算部534は、情報取得部531で取得された研磨前形状情報および目標形状情報に基づいて、ウェーハWを目標形状にするための目標取り代を求める。
【0052】
揺動条件演算部535は、情報取得部531で取得された圧縮率分布情報および第2相関情報に基づいて、研磨ヘッド21を揺動させつつ、径方向に圧縮率分布を有する研磨パッド26を用いて行う研磨における取り代を、目標取り代にすることができる研磨ヘッド21の揺動条件を求める。
【0053】
研磨制御部536は、研磨部2を制御して、研磨ヘッド21および研磨パッド26を回転させるとともに、揺動条件演算部535で求められた揺動条件で研磨ヘッド21を揺動させることにより、ウェーハWの被研磨面W1を研磨する。
【0054】
<ウェーハの製造方法>
次に、片面研磨装置1を用いるウェーハWの片面研磨方法を含むウェーハWの製造方法について説明する。
図4に示すように、ウェーハWの製造方法は、引き上げ工程(ステップS1)と、ブロック加工工程(ステップS2)と、スライス工程(ステップS3)と、前処理工程(ステップS4)と、両面同時研磨工程(ステップS5)と、仕上げ工程としての片面仕上げ工程(ステップS6)と、洗浄工程(ステップS7)と、ウェーハ最終検査工程(ステップS8)と、を備える。
【0055】
ステップS1の引き上げ工程では、チョクラルスキー法を用いて、シリコン融液から円柱状のシリコン単結晶を引き上げる。
【0056】
ステップS2のブロック加工工程では、単結晶インゴットの外周研削を行い、結晶方位に応じてノッチ加工を行う。そして、例えばバンドソーにより、単結晶インゴットを複数のブロックに切断する。
【0057】
ステップS3のスライス工程では、内周刃切断機やワイヤーソーにより、ブロックが例えば厚さ1mm程度の複数のウェーハWにスライスされる。
【0058】
ステップS4の前処理工程では、面取り加工を行うとともに、ウェーハW両面が平行になるように、例えばアルミナ研磨材等で粗研磨(ラッピング)を行う。そして、必要に応じてエッチング等を施した後、ウェーハW表面の凹凸をなくす平坦化加工を行う。
【0059】
ステップS5の両面同時研磨工程では、前処理が行われたウェーハWに対して平坦度を高くする鏡面仕上げを行う。例えばコロイダルシリカ液等を用いて両面研磨(ポリッシング)を行い、平坦度をさらに高くし、所定平坦度のウェーハWを得る。
【0060】
ステップS6の片面仕上げ工程は、本発明のウェーハWの片面研磨方法を含む。片面仕上げ工程では、片面研磨装置1を用いて、両面同時研磨工程で得られたウェーハWの被研磨面W1を研磨する。
片面仕上げ工程により研磨加工を施すことで、ウェーハWの被研磨面W1の傷およびダメージを除去すると同時に、被研磨面W1の表面粗さを整えることができる。
片面仕上げ工程の詳細については後述する。
【0061】
ステップS7の洗浄工程では、例えばアルカリ性溶液等により、片面仕上げ工程で得られたウェーハWを洗浄する。
【0062】
ステップS8のウェーハ最終検査工程では、ウェーハ表面検査装置等を用いて、ウェーハW上に存在する表面パーティクルまたは傷等を検査する。品質上必要な検査が行われた後、合格品は、梱包され、出荷される。
【0063】
次に、ステップS6の片面仕上げ工程の詳細について説明する。
図5に示すように、片面仕上げ工程は、相関情報取得工程(ステップS61)と、圧縮率分布情報取得工程(ステップS62)と、研磨パッド調整条件演算工程(ステップS63)と、研磨パッド調整工程(ステップS64)と、研磨前形状情報取得工程(ステップS65)と、目標形状情報取得工程(ステップS66)と、目標取り代演算工程(ステップS67)と、揺動条件演算工程(ステップS68)と、ウェーハセット工程(ステップS69)と、研磨工程(ステップS70)と、ウェーハ取り出し工程(ステップS71)と、を備える。
【0064】
ステップS61の相関情報取得工程では、制御部53の情報取得部531は、記憶部52から第1相関情報および第2相関情報を取得する。
【0065】
ステップS62の圧縮率分布情報取得工程では、情報取得部531は、作業者による入力部51の入力操作に基づく圧縮率分布情報を取得する。なお、情報取得部531は、入力部51を介して外部ネットワークから圧縮率分布情報を取得しても良い。
【0066】
ここで、圧縮率分布情報の内容に対応する目標形状を表す指標がESFQRまたはZDDの場合、圧縮率分布情報により表される互い異なる圧縮率を有する複数の領域は、2つの領域から構成され、
図6に示すように、調整されていない円形状の1つの未調整領域26Aと、未調整領域26Aを囲む円環状に調整された1つの調整領域26Bと、を含むことが好ましい。
一方、圧縮率分布情報の内容に対応する指標がESFQRの場合、調整領域26Bは、研磨パッド26の回転中心Cを0%の位置、研磨ヘッド21が揺動していない場合のウェーハWにおける研磨パッド26の回転中心Cから最も遠い外縁上の位置を100%の位置とした場合、99%の位置よりも外側かつ100%の位置よりも内側の位置を内縁とする円環状の領域であって、内側の未調整領域26Aよりも圧縮率が大きい領域であることが好ましい。
なお、圧縮率分布情報の内容に対応する指標がZDDの場合、調整領域26Bは、ESFQRの場合と同じ位置に形成されても良いし、ESFQRの場合よりも内側または外側に形成されても良い。
【0067】
ここで、上記100%の位置について具体的に説明すると、研磨部2が1つの研磨ヘッド21を備える場合、揺動幅Lの中心に研磨ヘッド21が配置されている場合のウェーハWにおける、研磨パッド26の回転中心Cから最も遠い外縁上の位置が、100%の位置となる。
また、研磨部2が複数の研磨ヘッド21を備える場合、揺動幅Lの中心に各研磨ヘッド21が配置されている場合のウェーハWにおける、研磨パッド26の回転中心Cから最も遠い外縁上の位置が、100%の位置となる。別の表現を用いると、複数の研磨ヘッド21の中心が研磨パッド26の中心から等距離にある場合のウェーハWにおける、研磨パッド26の回転中心Cから最も遠い外縁上の位置が、100%の位置となる。
【0068】
このような圧縮率分布の研磨パッド26を用いる研磨により、未調整領域26Aで研磨されるウェーハW外周部を除く領域の取り代を、ほぼ同じにすることができる一方で、調整領域26Bで研磨されるウェーハW外周部の取り代を、その内側の領域よりも小さくすることができる。特に、調整領域26Bを99%の位置よりも外側かつ100%の位置よりも内側の位置を内縁とする円環状の領域にして、研磨パッド26におけるウェーハW外周部に接触する領域のみを調整することにより、ウェーハW全体の形状に影響を与えることなく、ESFQRまたはZDD等の外周部形状を制御することができる。
なお、調整領域26Bの外縁の位置は、特に限定されないが、
図6では、120%の位置である場合を示している。
【0069】
また、圧縮率分布情報の内容に対応する指標がGBIRの場合、圧縮率分布情報により表される互い異なる圧縮率を有する複数の領域は、3つ以上の領域を含み、内側から3番目の領域は、研磨パッド26の回転中心Cを0%の位置、研磨ヘッド21が揺動していない場合のウェーハWにおける、研磨パッド26の回転中心Cから最も遠い外縁上の位置を、100%の位置とした場合、100%の位置よりも内側の位置を内縁とする円環状の領域であることが好ましい。例えば中心が0%の位置であり外縁が25%の位置の円形状の未調整領域、内縁が25%の位置であり外縁が55%の位置の円環状の第1調整領域、および内縁が55%の位置であり外縁が120%の位置の円環状の第2調整領域の圧縮率が、互いに異なることが好ましい。
【0070】
このような圧縮率分布の研磨パッド26を用いる研磨により、径方向の各領域で研磨されるウェーハWの取り代を、外側の領域に向かうにしたがって段階的に小さくすることができ、ウェーハWの形状を細かく制御することができる。
【0071】
なお、中心が0%の位置であり外縁が25%の位置の円形状の領域を、調整領域にしても良い。
また、内縁が25%の位置であり外縁が55%の位置の円環状の領域を、未調整領域にしても良い。この場合、ウェーハWの中心部の取り代を小さくすることもできる。
上述のように研磨パッド26の圧縮率分布を変更することにより、ウェーハWの取り代の分布をウェーハW面内で変化させることができる。また、ウェーハWの研磨前形状にあわせて圧縮率分布を選択することにより、より平坦なウェーハWを製造することができる。
【0072】
ステップS63の研磨パッド調整条件演算工程では、研磨パッド調整条件演算部532は、相関情報取得工程で取得された第1相関情報に基づいて、研磨パッド26の圧縮率分布を、圧縮率分布情報取得工程で取得された圧縮率分布情報に基づく圧縮率分布にするための調整条件を求める。
【0073】
ステップS64の研磨パッド調整工程では、研磨パッド調整制御部533は、研磨パッド調整条件演算工程で求められた調整条件に基づき、研磨パッド調整部4の位置調整部43および定盤駆動部27を制御して、研磨パッド26を調整する。
この研磨パッド調整工程により、ウェーハWの形状を目標形状にすることができる研磨パッド26が得られる。
【0074】
ステップS65の研磨前形状情報取得工程では、情報取得部531は、入力部51または測定装置から研磨前形状情報を取得する。
【0075】
ステップS66の目標形状情報取得工程では、情報取得部531は、作業者による入力部51の入力操作に基づく目標形状情報を取得する。例えば、情報取得部531は、ESFQR、ZDDまたはGBIRを表す情報を目標形状情報として取得する。
【0076】
ステップS67の目標取り代演算工程では、目標取り代演算部534は、研磨前形状情報取得工程で取得された研磨前形状情報および目標形状取得工程で取得された目標形状情報に基づいて、ウェーハWを目標形状にするための目標取り代を求める。
【0077】
ステップS68の揺動条件演算工程では、揺動条件演算部535は、相関情報取得工程で取得された第2相関情報および圧縮率分布情報取得工程で取得された圧縮率分布情報に基づいて、研磨ヘッド21の揺動条件を求める。
【0078】
ステップS69のウェーハセット工程では、両面同時研磨工程で得られたウェーハWを片面研磨装置1にセットする。
【0079】
ステップS70の研磨工程では、研磨制御部536は、予め設定された研磨条件と、揺動条件演算工程で求められた揺動条件と、に基づき、研磨部2のヘッド昇降部23、ヘッド駆動部24、定盤駆動部27、ウェーハ加圧力調整部28、研磨液供給部29、および揺動駆動部30を制御して、研磨ヘッド21を揺動させつつ、研磨パッド調整工程で調整された研磨パッド26を用いて、ウェーハWを研磨する。
この研磨工程により、目標形状のウェーハWが得られる。
【0080】
ステップS71のウェーハ取り出し工程では、片面研磨装置1からウェーハWが取り出される。取り出されたウェーハWは、ステップS7の洗浄工程で洗浄される。
【0081】
<実施形態の効果>
上記実施形態によれば、片面研磨装置1は、研磨ヘッド21を揺動させつつ、径方向に圧縮率分布を有する研磨パッド26を用いて行う研磨における取り代を、目標取り代にすることができる研磨ヘッド21の揺動条件を求める揺動条件演算工程と、揺動条件に基づき研磨ヘッド21を研磨パッド26の研磨面に対して平行な方向に揺動させつつ、研磨パッド26を用いてウェーハWを研磨する研磨工程と、を備える。
このように、径方向に圧縮率分布を有する研磨パッド26、つまり径方向で取り代が異なる研磨パッド26を用いた研磨を行うことにより、ウェーハWの取り代形状を制御することができる。さらに、研磨時に研磨ヘッド21を揺動させることにより、所定の調整領域により研磨されるウェーハW外周部の幅を調整することができ、所望の形状のウェーハWを得ることができる。
【0082】
研磨パッド26として、スウェードタイプの研磨バッドを用いている。
このため、研磨パッド26に圧縮率分布を容易に形成することができる。
【0083】
研磨パッド26に圧縮率分布を形成する方法として、スウェードタイプの研磨パッド26を回転させつつ、ブラシ42を研磨パッド26に押し付けることにより、他の領域とは異なる圧縮率の円環状の領域を形成する方法を用いている。
このため、ブラシ42を用いて研磨パッド26を回転させるだけの簡単な方法で、研磨パッド26に圧縮率分布を形成することができる。
特に、砥石のように研磨パッド26を削る構成ではなく、毛が変形するブラシ42を用いてスウェードタイプの研磨パッド26を調整することにより、研磨パッド26の厚さを実質的に変化させることなく効率良く圧縮率を微調整することができる。また、砥石を用いて研磨パッド26を調整する場合、砥石成分が研磨パッド26に付着することによるLPD(Light Point Defect)の悪化が発生するおそれがあるが、ブラシ42を用いることにより、LPDの悪化を抑制することができる。
【0084】
ウェーハWの目標形状を表す指標としてESFQRが設定された場合、研磨パッド調整部4は、研磨パッド調整制御部533の制御に基づいて、互いに圧縮率が異なる円形状の未調整領域26Aと円環状の調整領域26Bとを含むように、円環状の領域を研磨パッド26に形成することが好ましい。この場合、調整領域26Bは、99%の位置よりも外側かつ100%の位置よりも内側の位置を内縁とする円環状に、未調整領域26Aよりも圧縮率が大きくなるように形成される。
このような構成により、ウェーハW外周部の形状をより高精度に制御することができる。
【0085】
ウェーハWの目標形状を表す指標としてGBIRが設定された場合、研磨パッド調整部4は、研磨パッド調整制御部533の制御に基づいて、互いに圧縮率が異なる3つ以上の領域が径方向に並ぶように、円環状の領域を研磨パッド26に形成することが好ましい。
このような構成により、ウェーハW全体の形状をより高精度に制御することができる。
【0086】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の種々の改良並びに設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0087】
例えば、目標取り代を、研磨前形状情報と目標形状情報とに基づいて求める構成を例示したが、研磨前形状が同じ複数のウェーハWを研磨対象とし、これら複数の目標形状が同じ場合、目標取り代を一定値として、研磨前形状取得工程、目標形状取得工程および目標取り代演算工程を行わなくても良い。
【0088】
研磨パッド26に、他の領域とは異なる圧縮率の円環状の領域を形成する方法として、ブラシ42を固定して研磨パッド26を回転させる方法を例示したが、研磨パッド26を回転させずに、または研磨パッド26を回転させつつ、円を描くようにブラシ42を移動させても良い。
【0089】
研磨パッド26に対するブラシ42の押し付け量を調整する方法として、研磨パッド26の高さ位置を固定してブラシ42の高さ位置を調整する方法を例示したが、ブラシ42の高さ位置を固定して、または高さ位置を変更させつつ、研磨パッド26の高さ位置を変更させても良い。
【実施例0090】
次に、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は実施例に限定されるもので
はない。
【0091】
[実施例1:研磨パッドに対するブラシの押し付け量(研磨パッドの圧縮率分布)と研磨ヘッドの揺動幅と研磨後のウェーハの形状との関係]
まず、上記実施形態の片面研磨装置1を準備した。また、スウェードタイプの複数の研磨パッド26を準備した。また、同じ研磨前形状を有する直径が300mmの複数のウェーハWを準備した。
【0092】
図6に示す調整領域26Bを調整するように、ブラシ42の水平方向の位置を調整した。このときの調整領域26Bの内縁の位置は、研磨ヘッド21が揺動していない場合における99.7%の位置であり、外縁の位置は120%の位置である。
また、研磨パッド26に対するブラシ42の押し付け量が0.5mmになるように、ブラシ42の高さ位置を調整した。ブラシ42の押し付け量は、毛が曲がっていない状態で毛の先端が研磨パッド26に接している状態が0mmである。
【0093】
そして、定盤25を回転させて30秒間の調整を行った。その結果、未調整領域26Aと調整領域26Bとで圧縮率分布が異なるという圧縮率分布を有する実施例1-1の研磨パッド26を得た。
【0094】
また、ブラシ42の押し付け量を0.8mmにしたこと以外は実施例1-1の研磨パッド26と同じ条件で別の研磨パッド26を調整して、圧縮率分布を有する実施例1-2の研磨パッド26を得た。
また、ブラシ42の押し付け量を1.1mmにしたこと以外は実施例1-1の研磨パッド26と同じ条件で別の研磨パッド26を調整して、圧縮率分布を有する実施例1-3の研磨パッド26を得た。
また、ブラシ42による調整を行っていない別の研磨パッド26を、圧縮率分布を有さない比較例1の研磨パッド26として準備した。
【0095】
ここで、上述したように、ブラシ42の研磨パッド26に対する押し付け量が大きくなるほど、研磨パッド26の圧縮率が大きくなる。このため、実施例1-1~1-3の研磨パッド26における調整領域26Bの圧縮率は、実施例1-3の研磨パッド26が最も大きく、実施例1-1の研磨パッド26が最も小さくなる。
また、実施例1-1~1-3の研磨パッド26における未調整領域26Aの圧縮率は、比較例1の研磨パッド26全体の圧縮率と同じになる。
また、実施例1-1~1-3および比較例1のそれぞれの研磨パッド26全体の厚さは、ほぼ同じになる。
【0096】
そして、研磨ヘッド21の揺動幅Lを0mm、20mm、40mmまたは60mmにそれぞれ設定し、実施例1-1の研磨パッド26を用いて互い異なるウェーハWを研磨して、互いに異なる揺動幅Lで研磨された複数の実施例1-1のウェーハWを得た。
また、実施例1-2の研磨パッド26を用いたこと以外は実施例1-1のウェーハWと同じ条件で別のウェーハWを研磨して、互いに異なる揺動幅Lで研磨された実施例1-2のウェーハWを得た。
また、実施例1-3の研磨パッド26を用いたこと以外は実施例1-1のウェーハWと同じ条件で別のウェーハWを研磨して、互いに異なる揺動幅Lで研磨された実施例1-3のウェーハWを得た。
また、比較例1の研磨パッド26を用いたこと以外は実施例1-1のウェーハWと同じ条件で別のウェーハWを研磨して、互いに異なる揺動幅Lで研磨された比較例1のウェーハWを得た。
【0097】
実施例1-1~1-3および比較例1のウェーハWのESFQRを測定した。その測定結果を
図7に示す。
【0098】
比較例1のウェーハWにおける測定結果から、圧縮率分布を有さない研磨パッド26を用いてウェーハWを研磨する場合、研磨ヘッド21の揺動幅Lに関係なく、ESFQRの値がほぼ同じであること、つまりウェーハW外周部の平坦度がほぼ変わらないことが確認できた。
一方、実施例1-1~1-3のウェーハWにおける測定結果から、圧縮率分布を有する研磨パッド26を用いてウェーハWを研磨する場合、研磨ヘッド21の揺動幅Lが大きくなるほど、ESFQRの値が小さくなる、つまりウェーハW外周部の平坦度が高くなることが確認できた。
また、実施例1-1~1-3のウェーハWにおける測定結果から、圧縮率分布を有する研磨パッド26を用いてウェーハWを研磨する場合、研磨ヘッド21の揺動幅Lが同じであれば、調整領域26Bの圧縮率が高くなるほど、ESFQRの値が小さくなる、つまりウェーハW外周部の平坦度が高くなることが確認できた。
【0099】
以上のことから、ウェーハWの研磨時に、単に、圧縮率分布を有する研磨パッド26を用いるだけでなく、さらに研磨ヘッド21を揺動させることにより、ウェーハW外周部の平坦度が高くなることが確認できた。
また、研磨パッド26の圧縮率分布と、研磨ヘッド21の揺動幅Lとを制御することにより、所望の形状のウェーハWを得られることが確認できた。
【0100】
[実施例2:圧縮率分布を有する研磨パッドを用いた研磨における研磨ヘッドの揺動幅と研磨後のウェーハの形状との関係]
まず、上記実施形態の片面研磨装置1を準備した。また、以下の特性を有するスウェードタイプの2つの研磨パッド26を準備した。
研磨パッド26の圧縮率:26.6%
【0101】
片面研磨装置1に、上記研磨パッド26と、ナイロン製の毛の長さが5mmのブラシ42とを取り付けた。
図6に示す調整領域26Bを調整するように、ブラシ42の水平方向の位置を調整した。このときの調整領域26Bの内縁の位置は、研磨ヘッド21が揺動していない場合における99.7%の位置であり、外縁の位置は120%の位置である。
また、研磨パッド26に対するブラシ42の押し付け量が0.5mmになるように、ブラシ42の高さ位置を調整した。
【0102】
そして、定盤25を回転させて30秒間の調整を行った。その結果、中心から99%の位置までの領域の圧縮率が26.6%、99%の位置から120%の位置までの領域の圧縮率が27.8%という圧縮率分布を有する、実施例2の研磨パッド26を得た。
【0103】
また、
図8に示す研磨前形状を有する直径が300mmの複数のウェーハWを準備した。
図8に示されるグラフにおける横軸は、ウェーハW中心からの距離を表し、縦軸は、サイト内の厚さ分布から最小二乗法により求められた基準面(
図8では「第1基準面」と示す)からの変位量を示す。
【0104】
そして、研磨ヘッド21を揺動させずに、実施例2の研磨パッド26を用いてウェーハWを研磨して、比較例2のウェーハWを得た。
また、研磨ヘッド21の揺動幅Lを20mmにしたこと以外は比較例2のウェーハWと同じ条件で別のウェーハWを研磨して、実施例2-1のウェーハWを得た。
また、研磨ヘッド21の揺動幅Lを40mmにしたこと以外は比較例2のウェーハWと同じ条件で別のウェーハWを研磨して、実施例2-2のウェーハWを得た。
また、研磨ヘッド21の揺動幅Lを60mmにしたこと以外は比較例2のウェーハWと同じ条件で別のウェーハWを研磨して、実施例2-3のウェーハWを得た。
【0105】
そして、比較例2および実施例2-1~2-3のウェーハWの研磨取り代形状を測定した。その測定結果を、
図9に示す。
図9に示されるグラフの横軸は、ウェーハW中心からの距離を表し、縦軸は、研磨前後のウェーハW厚さの差分プロファイルを算出し、その差分プロファイルにおいて、サイト内で最小二乗法により求められた基準面(
図9では「第2基準面」と示す)からの変位量を示す。
また、比較例2および実施例2-1~2-3のウェーハWのESFQR_max_1mmおよびGBIRを測定した。その測定結果を表1に示す。
なお、ESFQR_max_1mmとは、各サイトの外縁から1mmの範囲を除く領域を測定対象とした場合における各サイトの変位量のうち、最も大きい変位量を表す。
【0106】
【0107】
圧縮率分布を有する研磨パッド26を用いて研磨された比較例2および実施例2-1~2-3のウェーハWについて、
図9に示すウェーハWの形状およびESFQR_max_1mmの測定結果を比較すると、比較例2のウェーハW外周部と比べて、実施例2-1~2-3のウェーハW外周部の平坦度が高くなることが確認できた。
また、実施例2-1~2-3のウェーハWについて、ESFQR_max_1mmを比較すると、実施例2-3のウェーハWの値が最も小さく、実施例2-1のウェーハWの値が最も大きくなることが確認できた。つまり、実施例2-3のウェーハW外周部の平坦度が最も高く、実施例2-1のウェーハW外周部の平坦度が最も低くなることが確認できた。
【0108】
以上のことから、圧縮率分布を有する研磨パッド26を用いてウェーハWを研磨する場合、研磨ヘッド21の揺動幅Lが大きくなるほど、ウェーハW外周部の平坦度が高くなることが確認できた。特に、
図8に示すような研磨前形状を有するウェーハWに対しては、
図9の実施例2-3に示すような圧縮率分布と揺動幅を選択することにより、外周部の平坦度が高いウェーハWを得られることが確認できた。
【0109】
また、実施例2-1~2-3のウェーハWについて、GBIRの測定結果を比較すると、実施例2-3のウェーハWの値が最も小さく、実施例2-1のウェーハWの値が最も大きくなることが確認できた。特に、実施例2-2,2-3のウェーハWのGBIRの値は、比較例2のウェーハWのGBIRの値よりも小さくなることが確認できた。
【0110】
以上のことから、圧縮率分布を有する研磨パッド26を用いてウェーハWを研磨する場合、ウェーハWの研磨前形状にあわせた取り代が得られる圧縮率分布と揺動幅を選択することにより、平坦度が高いウェーハWが得られることが確認できた。
【0111】
[実施例3:研磨ヘッドを揺動させる研磨における研磨パッドの圧縮率分布の有無と研磨後のウェーハの形状との関係]
実施例2で準備された研磨パッド26のうち、ブラシ42による調整を行っていない研磨パッド26を、圧縮率分布を有さない比較例3の研磨パッド26として準備した。
そして、比較例3の研磨パッド26を用いたこと以外は、実施例2-3のウェーハWと同じ条件でウェーハWを研磨して、比較例3のウェーハWを得た。
【0112】
そして、比較例3および実施例2-3のウェーハWのESFQR_max_1mmおよびGBIRを測定した。その測定結果を表2に示す。
【0113】
【0114】
比較例3および実施例2-3のウェーハWについて、ESFQR_max_1mmおよびGBIRの測定結果を比較すると、比較例3のウェーハWの各値と比べて、実施例2-3のウェーハWの各値が小さくなることが確認できた。
【0115】
以上のことから、
図8に示すような研磨前形状のウェーハWに対しては、研磨パッド26に圧縮率分布を設けて、研磨ヘッド21を揺動させることにより、ウェーハW外周部および全体の平坦度が高くなることが確認できた。
1…片面研磨装置、5…制御装置、21…研磨ヘッド、24…ヘッド駆動部(回転駆動部)、26…研磨パッド、27…定盤駆動部(回転駆動部)、30…揺動駆動部、42…ブラシ、535…揺動条件演算部、536…研磨制御部、W…ウェーハ。