(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024237
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】自動分析装置および洗浄液量の調整方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
G01N35/10 E
G01N35/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126916
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】江藤 隼
(72)【発明者】
【氏名】高橋 拓也
(72)【発明者】
【氏名】越智 学
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】川原 鉄士
(72)【発明者】
【氏名】坂田 健士郎
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CB15
2G058CD04
2G058EA02
2G058EA04
2G058ED03
2G058FB06
2G058FB07
2G058FB12
2G058FB13
2G058FB21
2G058GA01
2G058GB04
2G058GB10
2G058GE10
(57)【要約】
【課題】正確かつ短時間に洗浄液量を調整できる自動分析装置および調整方法を提供する。
【解決手段】分注プローブの洗浄時に、前記分注プローブの先端を洗浄位置とした状態で、基準液量の洗浄液を洗浄ノズルから吐出する自動分析装置であって、前記洗浄ノズルからの水平距離が前記洗浄位置よりも遠く、かつ、前記洗浄位置よりも低く、当該位置に前記分注プローブの先端があるときに前記基準液量の洗浄液が吐出された場合に接液が検知される位置を第1調整位置とした場合、洗浄液量の調整時に、制御部は、前記分注プローブの先端を前記第1調整位置とした状態で洗浄液を吐出させ、接液を検知したか否かを確認した後、前記分注プローブの先端を前記第1調整位置よりも上方または下流の位置とした状態で洗浄液を吐出させ、接液を検知したか否かを確認し、これらの確認結果に基づいて、洗浄液量を前記基準液量にするために必要な液量調整手段の設定を決定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料又は試薬を反応容器に分注する分注プローブを含む分注機構と、
前記分注プローブの外面へ洗浄液を吐出する洗浄ノズルと、
前記洗浄ノズルから吐出される洗浄液量を調整する液量調整手段と、
前記分注機構に設けられ前記分注プローブへの接液を検知する洗浄液検知手段と、
前記分注機構、前記液量調整手段及び前記洗浄液検知手段を制御する制御部と、
を備え、
前記分注プローブの洗浄時に、前記制御部は、前記分注プローブの先端を洗浄位置とした状態で、基準液量の洗浄液を前記洗浄ノズルから吐出する自動分析装置であって、
前記洗浄ノズルからの水平距離が前記洗浄位置よりも遠く、かつ、前記洗浄位置よりも低く、当該位置に前記分注プローブの先端があるときに前記基準液量の洗浄液が前記洗浄ノズルから吐出された場合に前記洗浄液検知手段によって接液が検知される位置を第1調整位置とした場合、
洗浄液量の調整時に、前記制御部は、
前記分注プローブの先端を前記第1調整位置とした状態で前記洗浄ノズルから洗浄液を吐出させ、前記洗浄液検知手段が接液を検知したか否かを確認した後、
前記分注プローブの先端を前記第1調整位置よりも上方の位置、又は、前記洗浄ノズルからの水平距離が前記第1調整位置よりも遠い位置とした状態で前記洗浄ノズルから洗浄液を吐出させ、前記洗浄液検知手段が接液を検知したか否かを確認し、
これらの確認結果に基づいて、洗浄液量を前記基準液量にするために必要な前記液量調整手段の設定を決定することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置において、
洗浄液量の調整時に、前記制御部は、
前記洗浄液検知手段が接液を検知しなくなるまで、前記分注プローブの先端を、上方に移動、又は、前記洗浄ノズルからの水平距離が遠くなるように移動させ、
前記第1調整位置からの移動量に基づいて、前記液量調整手段の設定を決定することを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項2に記載の自動分析装置において、
前記移動量が準正常範囲内の場合、前記制御部は前記液量調整手段により洗浄液量を増加させ、
前記移動量が前記準正常範囲より大きい正常範囲内の場合、前記制御部は洗浄液量を変更せず、
前記移動量が前記正常範囲よりも大きい過剰範囲内の場合、前記制御部は洗浄液量を減少させることを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記第1調整位置よりも所定高さだけ上方の位置、又は、前記洗浄ノズルからの水平距離が前記第1調整位置よりも所定距離だけ遠い位置を第2調整位置とし、
前記第2調整位置よりもさらに所定高さだけ上方の位置、又は、前記洗浄ノズルからの水平距離が前記第2調整位置よりもさらに所定距離だけ遠い位置を第3調整位置とすると、
洗浄液量の調整時に、前記制御部は、
前記分注プローブの先端を前記第2調整位置とした状態で前記洗浄ノズルから洗浄液を吐出させ、前記洗浄液検知手段が接液を検知したか否かを確認した後、
前記分注プローブの先端を前記第3調整位置とした状態で前記洗浄ノズルから洗浄液を吐出させ、前記洗浄液検知手段が接液を検知したか否かを確認し、
前記第1調整位置、前記第2調整位置及び前記第3調整位置における確認結果から、4段階の接液度のうちいずれであるかを判定し、
判定した接液度に基づいて、前記液量調整手段の設定を決定することを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項4に記載の自動分析装置において、
前記4段階の接液度は、すべての調整位置で接液が検知されない場合の不足範囲、前記第1調整位置のみで接液が検知される場合の準正常範囲、前記第1調整位置及び前記第2調整位置で接液が検知される場合の正常範囲、すべての調整位置で接液が検知される場合の過剰範囲、であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記第1調整位置において、前記洗浄液検知手段が接液を検知しなかった場合、
前記制御部は、前記洗浄液検知手段が接液を検知するまで、前記液量調整手段により洗浄液量を増加させることを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項1に記載の自動分析装置において、
洗浄液量の調整前に、前記制御部は、
前記分注プローブの先端を前記洗浄位置とした状態で、前記液量調整手段により液量を最大にして前記洗浄ノズルから洗浄液を吐出させ、前記洗浄液検知手段が接液を検知したか否かを確認し、
前記洗浄液検知手段が接液を検知しなかった場合、警告を出力することを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項1に記載の自動分析装置において、
洗浄液量の調整時に、前記分注プローブの先端が、前記第1調整位置から上方の位置へ移動するときの速度、又は、前記洗浄ノズルからの水平距離が前記第1調整位置よりも遠い位置へ移動するときの速度は、前記分注プローブの洗浄時に、前記分注プローブの先端が移動するときの速度よりも遅いことを特徴とする自動分析装置。
【請求項9】
試料又は試薬を分注する分注プローブと、
前記分注プローブの外面へ洗浄液を吐出する洗浄ノズルと、
前記分注プローブへの接液を検知する洗浄液検知手段と、
前記分注プローブの先端を洗浄位置とした状態で、基準液量の洗浄液を前記洗浄ノズルから吐出させることで前記分注プローブを洗浄する制御部と、
を備えた自動分析装置の洗浄液量の調整方法であって、
前記洗浄ノズルからの水平距離が前記洗浄位置よりも遠く、かつ、前記洗浄位置よりも低く、当該位置に前記分注プローブの先端があるときに前記基準液量の洗浄液が前記洗浄ノズルから吐出された場合に前記洗浄液検知手段によって接液が検知される位置を第1調整位置とした場合、
前記制御部が、前記分注プローブの先端を前記第1調整位置とした状態で前記洗浄ノズルから洗浄液を吐出させ、前記洗浄液検知手段が接液を検知したか否かを確認するステップと、
前記制御部が、前記分注プローブの先端を前記第1調整位置よりも上方の位置、又は、前記洗浄ノズルからの水平距離が前記第1調整位置よりも遠い位置とした状態で前記洗浄ノズルから洗浄液を吐出させ、前記洗浄液検知手段が接液を検知したか否かを確認するステップと、
前記制御部が、これらの確認結果に基づいて、洗浄液量を前記基準液量にするために必要な液量調整手段の設定を決定するステップと、
を有することを特徴とする洗浄液量の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置および洗浄液量の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置では、試料などを分注した後、分注プローブを洗浄槽により洗浄を行うことで、分析の信頼性を保っている。しかし、洗浄液を供給するポンプの経年劣化などにより、洗浄液の液量が変化する可能性がある。このため、作業者が洗浄液量を調整するメンテナンスを定期的に行うのが一般的となっている。ただし、手動での調整は、時間がかかったり、バラツキが生じたりするので、洗浄液量を自動で調整する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、洗浄液量の調整時に、分注プローブの先端の高さを、目標洗浄範囲の上端とした状態で、液量変更手段により洗浄液量を変更し、洗浄液検知手段が洗浄液を検知したときの洗浄液量を調整後液量として、基準液量を更新する自動分析装置が開示されている(特許文献1の請求項1、
図4など)。また、特許文献1には、洗浄液の液量確認時に、分注プローブの洗浄時と比べ、分注プローブの水平位置を、洗浄ノズルに対して下流側に位置させる自動分析装置も開示されている(特許文献1の請求項6、
図10など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の請求項1などに記載の技術では、洗浄液量の変化の影響を受け難い洗浄位置に分注プローブの水平位置を固定した状態で、分注プローブの高さのみを変えて洗浄液量を調整しているため、調整の精度が高くない。また、特許文献1の請求項6などに記載の技術では、洗浄液を検知しない基準高さから分注プローブを徐々に下降させ、洗浄液を検知するまでの下降距離に基づいて液量を確認しているため、液量の確認に時間を要し、調整に時間がかかる。
【0005】
本発明の目的は、正確かつ短時間に洗浄液量を調整できる自動分析装置および調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するため、本発明は、分注プローブの洗浄時に、前記分注プローブの先端を洗浄位置とした状態で、基準液量の洗浄液を洗浄ノズルから吐出する自動分析装置であって、前記洗浄ノズルからの水平距離が前記洗浄位置よりも遠く、かつ、前記洗浄位置よりも低く、当該位置に前記分注プローブの先端があるときに前記基準液量の洗浄液が前記洗浄ノズルから吐出された場合に洗浄液検知手段によって接液が検知される位置を第1調整位置とした場合、洗浄液量の調整時に、制御部は、前記分注プローブの先端を前記第1調整位置とした状態で前記洗浄ノズルから洗浄液を吐出させ、接液を検知したか否かを確認した後、前記分注プローブの先端を前記第1調整位置よりも上方の位置、又は、前記洗浄ノズルからの水平距離が前記第1調整位置よりも遠い位置とした状態で前記洗浄ノズルから洗浄液を吐出させ、接液を検知したか否かを確認し、これらの確認結果に基づいて、洗浄液量を前記基準液量にするために必要な液量調整手段の設定を決定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、正確かつ短時間に洗浄液量を調整できる自動分析装置および調整方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】本実施形態の自動分析装置における洗浄液の供給経路の概略構成図。
【
図3】実施例1に係る自動分析装置における洗浄液量の調整方法を示すフローチャート。
【
図4】分注プローブの洗浄位置と液量調整位置を示す図。
【
図5】分注プローブの先端が第1調整位置に保持された状態で、液量調整手段により洗浄液量を増加させた場合における、洗浄液の軌跡の変化を示す図。
【
図6】分注プローブの先端が第1調整位置にある状態(左)と、液面が検知されなくなるまで分注プローブを上昇させた状態(右)と、を示す図。
【
図7】接液度を区分けする目安となる各境界ラインの一例を示す図。
【
図8】
図7に示す各境界ラインでの接液有無情報と液量状態との対応関係の一例を示す接液度テーブル。
【
図9】接液しなくなるまでの移動量と、洗浄液を基準液量にするために必要な増減量と、の関係を示すグラフ。
【
図10】実施例3に係る自動分析装置における洗浄液量の調整方法を示すフローチャート。
【
図11】分注プローブの先端が第1調整位置にある状態(上)と、液面が検知されなくなるまで分注プローブを洗浄ノズルから遠ざけた状態(下)と、を示す図。
【
図12】実施例4に係る自動分析装置における洗浄液量の調整方法を示すフローチャート。
【
図13】実施例5に係る自動分析装置における洗浄液量不足エラー時の処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1は、本実施形態の自動分析装置の概略構成図である。自動分析装置100は、反応容器102内で化学反応させた反応液を測定して成分分析を行うための装置である。この自動分析装置100は、主要な構成として、反応ディスク101、洗浄機構103、分光光度計104、撹拌機構105、洗浄槽106、第1試薬分注機構107、第2試薬分注機構107a、洗浄槽108、試薬ディスク109、第1試料分注機構111、第2試料分注機構111a、洗浄槽113、試料搬送機構117、コントローラ118、を有している。また、第1試薬分注機構107、第2試薬分注機構107a、第1試料分注機構111、第2試料分注機構111aは、液面検知機能を有している。
【0011】
反応ディスク101には、反応容器102が円周状に配置されている。反応容器102は試料と試薬とを混合させた混合液を収容するための容器であり、反応ディスク101上に複数並べられている。反応ディスク101の近くには、試料容器115を搭載した試料ラック116を搬送する試料搬送機構117が配置されている。
【0012】
反応ディスク101と試料搬送機構117との間には、回転及び上下動可能な第1試料分注機構111及び第2試料分注機構111aが配置されており、各々試料分注プローブ111bを備えている。試料分注プローブ111bには各々試料用シリンジ122が接続されている。試料分注プローブ111bは回転軸を中心に円弧を描きながら水平移動し、上下移動して試料容器115から反応容器102への試料分注を行う。
【0013】
試薬ディスク109は、その中に試薬を収容した試薬ボトル110や洗剤ボトル112等が複数個円周上に載置可能となっている保管庫である。試薬ディスク109は保冷されている。
【0014】
反応ディスク101と試薬ディスク109の間には、回転及び上下動が可能な第1試薬分注機構107、第2試薬分注機構107aが設置されており、それぞれ試薬分注プローブ120を備えている。試薬分注プローブ120は、第1試薬分注機構107又は第2試薬分注機構107aにより、上下および水平移動が行われる。試薬分注プローブ120には各々試薬用シリンジ121が接続されている。この試薬用シリンジ121により、試薬分注プローブ120を介して試薬ボトル110、洗剤ボトル112、希釈液ボトル、前処理用試薬ボトル等から吸引した試薬、洗剤、希釈液、前処理用試薬等を反応容器102に分注する。
【0015】
反応ディスク101の周囲には、反応容器102内部を洗浄する洗浄機構103、反応容器102内の混合液を通過した光の吸光度を測定するための分光光度計104、反応容器102へ分注した試料と試薬とを混合する撹拌機構105等が配置されている。
【0016】
また、第1試薬分注機構107や第2試薬分注機構107aの動作範囲上に、試薬分注プローブ120用の洗浄槽108が、第1試料分注機構111や第2試料分注機構111aの動作範囲上に、試料分注プローブ111b用の洗浄槽113が、撹拌機構105の動作範囲上に、撹拌機構105用の洗浄槽106が、それぞれ配置されている。
【0017】
各機構はコントローラ118に接続され、コントローラ118によりその動作が制御されている。制御部であるコントローラ118は、コンピュータ等から構成され、自動分析装置内の上述した各機構の動作を制御するとともに、血液や尿等の液体試料中の所定の成分の濃度を求める演算処理を行う。
【0018】
上述のような自動分析装置100による検査試料の分析処理は、以下の順に従い実行される。まず、試料搬送機構117によって反応ディスク101近くに搬送された試料ラック116の上に載置された試料容器115内の試料を、第1試料分注機構111,第2試料分注機構111aの試料分注プローブ111bにより反応ディスク101上の反応容器102へと分注する。次に、分析に使用する試薬を、試薬ディスク109上の試薬ボトル110から第1試薬分注機構107又は第2試薬分注機構107aにより、先に試料を分注した反応容器102に対して分注する。続いて、撹拌機構105で反応容器102内の試料と試薬との混合液の撹拌を行う。
【0019】
その後、光源から発生させた光を混合液の入った反応容器102を透過させ、透過光の光度を分光光度計104により測定する。分光光度計104により測定された光度を、A/Dコンバータ及びインターフェイスを介してコントローラ118に送信する。そしてコントローラ118によって演算を行い、血液や尿等の液体試料中の所定の成分の濃度を求め、結果を表示部(不図示)等に表示させる。なお、分光光度計104を用いて所定の成分の濃度を求める自動分析装置を例として説明するが、後述の実施例にて開示される技術は他の光度計を用いて試料を測定する免疫自動分析装置や凝固自動分析装置に用いても良い。
【0020】
図2は、本実施形態の自動分析装置における洗浄液の供給経路の概略構成図である。試料分注機構を構成する試料分注プローブ111bは、分注流路を形成するチューブ201と、ニップル203を介して接続される。また、分注流路の上流は、試料の吸引及び吐出を行う試料用シリンジ122が接続されており、この試料用シリンジ122から試料分注プローブ111bまでの分注流路の途中には、流路内の圧力を検出する圧力センサ204が設けられている。そして、試料分注機構には、試料分注プローブ111bの静電容量を検出する液面検知器210が接続されており、試料分注プローブ111bの先端に試料や洗浄液が接触した場合には、静電容量の変化によってこれを検知する。
【0021】
さらに、本実施例の自動分析装置は、試料分注プローブ111bの洗浄を行う洗浄槽113と、タンク(図示せず)から洗浄液を供給する洗浄液供給ポンプ208と、を備えている。ここで、洗浄槽113は、試料分注プローブ111bが洗浄のためにアクセスしてきたときに通過する上部開口部205と、アクセスしてきた試料分注プローブ111bの外面に向けて洗浄液を吐出する洗浄液吐出口207(洗浄ノズル)と、吐出された洗浄液をドレインする下部開口部206と、を備えている。また、洗浄液供給ポンプ208の下流側は2つの経路に分岐し、一方は試料分注プローブ111bの内面を洗浄する内洗経路となり、他方は試料分注プローブ111bの外面を洗浄する外洗経路となる。
【0022】
内洗経路は、洗浄液供給ポンプ208より高圧なポンプである送液ポンプ211を、更に備えている。この送液ポンプ211の下流側には、送液ポンプ211と試料用シリンジ122とを連通する流路を開閉する、内洗用電磁弁212が設けられている。
【0023】
一方、外洗経路には、洗浄液供給ポンプ208から洗浄液吐出口207へと連通する流路を開閉する、外洗用電磁弁209が設けられている。内洗用電磁弁212及び外洗用電磁弁209は、コントローラ118から入力される電気信号に応じて、開閉及び開度変更が可能となっている。例えば、この外洗用電磁弁209に所定の電流が印加されると、外洗用電磁弁209が所定の開度になり、所定の液量の洗浄液が下流側へ供給される。
【0024】
試料を分注する場合、分注流路内がシステム水(純水)で満たされており、試料用シリンジ122を動作して分注流路内のシステム水を吐出又は吸引することで、試料の吸引又は吐出を行う。このときの分注の成否については、圧力センサ204で検出した圧力データを用いて判定される。なお、試料を分注する場合には、内洗用電磁弁212は閉弁されている。
【0025】
次に、試料分注プローブ111bの内面を洗浄する場合、洗浄液供給ポンプ208を動作させることで、洗浄液を送液ポンプ211へ供給する。送液ポンプ211は、洗浄液を高圧にして下流側へ送液し、システム水として分注流路を通って試料分注プローブ111bの内面を洗浄し、試料分注プローブ111bの先端から洗浄槽113内へ吐出する。
【0026】
一方、試料分注プローブ111bの外面を洗浄する場合、洗浄液供給ポンプ208を動作させるとともに、外洗用電磁弁209を開弁して、洗浄液吐出口207から試料分注プローブ111bの外面に向けて洗浄液を吐出させる。
【0027】
ここで、洗浄液吐出口207から吐出される洗浄液の液量は、外洗用電磁弁209の開度が一定であっても、洗浄液供給ポンプ208の経年劣化や、外洗経路の流路詰まり等により、目標とする液量(基準液量)が得られなくなっている可能性がある。このため、洗浄液吐出口207から吐出される洗浄液が基準液量の範囲内に維持されるよう、定期的に調整することが重要である。例えば、繰り返し外洗を行っているうちに洗浄液量が減少した場合、コントローラ118は、外洗用電磁弁209の開度を大きくすることにより、液量を増加させる。以下では、液量の調整方法に関して、実施例1から実施例4に基づき具体的に説明する。なお、洗浄液の液量の調整とは、試料分注プローブ111bの先端から吐出される単位時間当たりの液量を調整することを意味する。
【実施例0028】
実施例1について、
図3から
図6を用いて説明する。
図3は、実施例1に係る自動分析装置における洗浄液量の調整方法を示すフローチャートであり、
図4は、分注プローブの洗浄位置と液量調整位置を示す図である。
【0029】
まず、試料分注プローブ111bの洗浄液量を調整するメンテナンスを実行するボタン操作などがされると、コントローラ118は、液量調整モードに遷移する(ステップS301)。すると、コントローラ118は、第1試料分注機構111を動作させ、試料分注プローブ111bの先端の位置を
図4に示す洗浄位置401へ移動させ、試料分注プローブ111bの位置をリセットする(ステップS302)。なお、試料分注プローブ111bの通常の洗浄動作は、試料分注プローブ111bの先端がこの洗浄位置401にある状態で行われる。
【0030】
次に、コントローラ118が、第1試料分注機構111を動作させ、試料分注プローブ111bの先端の位置を
図4に示す第1調整位置402へ移動させる(ステップS303)。ここで、第1調整位置402は、洗浄液吐出口207からの水平距離が洗浄位置401より遠く、かつ、洗浄位置401よりも低い、予め設定された位置であって、当該位置に試料分注プローブ111bの先端があるときに基準液量の洗浄液が洗浄液吐出口207から吐出されると、液面検知器210によって液面(接液)が検知される。なお、液面検知器210は、第1試料分注機構111に既に備わっているものであるため、接液を検知するための特別な装置は不要である。また、洗浄液の調整時にこの第1調整位置402に試料分注プローブ111bを移動させる理由は、
図4に示すように、洗浄液が洗浄液吐出口207から斜め下方向に吐出され、重力によって放物線を描くような軌跡となる場合、洗浄位置401よりも下流側にある第1調整位置402の方が洗浄液量の変化を感度良く検知できるためである。
【0031】
その後、コントローラ118は、外洗用電磁弁209を所定の開度で開弁するとともに、洗浄液供給ポンプ208を動作し、洗浄液吐出口207からの洗浄液の吐出を開始する(ステップS304)。このとき、コントローラ118は、浄液検知手段としての液面検知器210が検知した情報を取得する(ステップS305)。さらに、コントローラ118は、液面検知器210から取得した情報に基づいて、液面を検知したか否か、すなわち、試料分注プローブ111bの先端に洗浄液が存在するか否か、を確認する(ステップS306)。
【0032】
ステップS306において、液面を検知しなかった場合、洗浄液量が不足している。したがって、コントローラ118は、液面検知器210が液面を検知するまで、液量調整手段である外洗用電磁弁209の開度を徐々に大きくすることで、洗浄液量を徐々に増加させる(ステップS307)。外洗用電磁弁209の開度は、連続的に大きくされても良いし、段階的に大きくされても良い。
【0033】
図5は、分注プローブの先端が第1調整位置に保持された状態で、液量調整手段により洗浄液量を増加させた場合における、洗浄液の軌跡の変化を示す図である。洗浄液量が不足している場合、洗浄液吐出口207から吐出される洗浄液は、
図5の矢印403のように途中で勢いを失い、第1調整位置402にある試料分注プローブ111bの先端に接液しない。しかし、ステップS307で、コントローラ118が外洗用電磁弁209の開度を大きくすることで、洗浄液の単位時間当たりの液量が増加し、洗浄液吐出口207から吐出される洗浄液は、
図5の矢印404のように変化し、第1調整位置402にある試料分注プローブ111bの先端に接液するようになる。
【0034】
一方、ステップS306において、液面を検知した場合、コントローラ118は、第1試料分注機構111を動作させ、試料分注プローブ111bの先端を第1調整位置402よりも上方の位置に移動させる(ステップS308)。コントローラ118は、試料分注プローブ111bを上昇させる度に、液面検知器210が検知した情報を取得し(ステップS309)、液面を検知しなかったか否かを確する(ステップS310)。ステップS310において、依然として液面が検知されている場合は、ステップS308に戻り、試料分注プローブ111bがさらに上昇する。ステップS308からステップS310の動作は、液面を検知しなくなるまで、繰り返される。
【0035】
ここで、ステップS308における試料分注プローブ111bの移動速度は、洗浄時の移動速度よりも遅くすることにより、液面検知器210が液面を検知しなくなるタイミングを精度良く判定することが可能である。なお、試料分注プローブ111bの高さは、連続的に上昇させても良いし、段階的に(たとえば1パルスごとに)上昇させても良い。
【0036】
図6は、分注プローブの先端が第1調整位置にある状態(左)と、液面が検知されなくなるまで分注プローブを上昇させた状態(右)と、を示す図である。
図6における移動量530は、第1調整位置402から、液面検知器210が液面を検知しなくなる高さまで、試料分注プローブ111bが上昇した高さ(上昇量)に相当する。
【0037】
ステップS310において、液面が検知されなくなった場合、コントローラ118は、第1調整位置からの移動量530に基づいて、洗浄液量を基準液量にするために必要な(液量調整手段の)設定を決定する(ステップS311)。液量調整手段の設定としては、例えば、外洗用電磁弁209の開度に関するものであり、外洗用電磁弁209を当該開度にするための印加電流値などが含まれる。設定値を決定する際に、コントローラ118は、予めテーブルとしてメモリに記録されている、試料分注プローブ111bの移動量530と、洗浄液量を基準液量にするために必要な外洗用電磁弁209の設定値(例えば印加電流値)と、の対応関係を参照する。なお、設定値の決定に用いられる移動量530は、試料分注プローブ111bが上昇した実際の距離でなくても良く、当該距離に相当するパルス数であっても良い。
【0038】
設定値が決定すると、コントローラ118は、その設定値を外洗用電磁弁209に反映することで開度を調整するとともに、その設定値をメモリに記録する。その後、コントローラ118は、外洗用電磁弁209を全閉の状態にし、液量の調整を完了する(ステップS312)。さらに、コントローラ118が、第1試料分注機構111を動作させ、試料分注プローブ111bの先端の位置を洗浄位置401へ移動させる(ステップS313)。最後に、コントローラ118は、スタンバイ状態に遷移させ(ステップS314)、液量調整モードを終了させる(ステップS315)。
【0039】
以上述べたように、試料分注プローブ111bの先端が第1調整位置402に位置した状態で洗浄液を検知できれば、試料分注プローブ111bの先端が洗浄位置401にあるときも、洗浄液が接液することを担保できる。しかし、その洗浄液量は、適度(正常)の量である基準液量であるとは限らない。すなわち、試料分注プローブ111bの先端に僅かに接液する程度の最低限(準正常)の量である可能性もあるし、試料分注プローブ111bの所定高さ範囲を超えた上方にまで接液する過剰な量の可能性もある。特に、洗浄液量が過剰な場合、試料分注プローブ111bの先端に水滴が残ってしまい、分析精度に影響を及ぼす可能性もある。そこで、本実施例では、第1調整位置402から試料分注プローブ111bを上昇させ、洗浄液を検知しなくなるタイミングを特定することで、適度な洗浄液量を得るための外洗用電磁弁209の設定を決定できるようになっている。
【0040】
なお、本実施例の液量調整のメンテナンスが頻繁に実行されている場合、洗浄液量は、仮に正常(基準液量)でない状態が発生しても、少なくとも準正常ではある可能性が高い。そのような場合、試料分注プローブ111bの先端を第1調整位置402に位置させても、洗浄液が検知される可能性が高い。したがって、
図3におけるステップS306およびステップS307は、省略されても良い。
【0041】
また、本実施例では、試料分注プローブ111bの先端が、第1調整位置402に移動する(ステップS303)の前に、洗浄位置401に移動しているが(ステップS302)、洗浄位置401を経ずに第1調整位置402に移動しても良い。すなわち、ステップS302は、省略されても良い。
ここで、洗浄液が各境界ラインに接液するか否かの判定方法について説明する。まず、実施例1におけるステップS306のように、試料分注プローブ111bの先端を第1調整位置402に位置した状態で、液面検知器210が洗浄液を検知できるか否かによって、第1境界ライン501への接液が判定される。このとき洗浄液が検知されなければ、洗浄液は、第1境界ライン501だけでなく、他の境界ラインにも接液しないことが分かる。
次に、第1境界ライン501に洗浄液が接液する場合、実施例1におけるステップS308からステップS310のように、試料分注プローブ111bが上昇し、洗浄液を検知しなくなるまでの第1調整位置402からの移動量530が特定される。そして、移動量530が、第1境界ライン501から第2境界ライン502までの高さより小さい場合、第2境界ライン502には接液しないことになる。一方、移動量530が、第1境界ライン501から第2境界ライン502までの高さ以上の場合、第2境界ライン502に接液することになる。さらに、移動量530が、第1境界ライン501から第3境界ライン503までの高さより小さい場合、第3境界ライン503には接液しないことになる。一方、移動量530が、第1境界ライン501から第3境界ライン503までの高さ以上の場合、第3境界ライン503に接液することになる。