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特開2024-24252活性エネルギー線硬化性組成物、硬化物、積層体及びレンズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024252
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性組成物、硬化物、積層体及びレンズ
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20240215BHJP
   G02B 1/115 20150101ALI20240215BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20240215BHJP
   C08J 7/046 20200101ALI20240215BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20240215BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240215BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20240215BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20240215BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
C08F2/44 A
G02B1/115
G02B1/04
C08J7/046 Z CEZ
C09D4/02
C09D7/61
C09D183/04
G02B1/14
G02B3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126942
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】長野 尭
(72)【発明者】
【氏名】麸山 解
【テーマコード(参考)】
2K009
4F006
4J011
4J038
【Fターム(参考)】
2K009AA02
2K009CC03
2K009DD03
2K009DD04
4F006AA31
4F006AB39
4F006AB43
4F006AB76
4F006BA02
4F006CA05
4F006EA03
4J011PA13
4J011PA99
4J011PB40
4J011PC02
4J011PC08
4J011QA12
4J011QA13
4J011QA17
4J011QA23
4J011QA24
4J011QA33
4J011QA39
4J011QA49
4J011QB16
4J011QB19
4J011QB20
4J011QB22
4J011QB24
4J011QB25
4J011SA02
4J011SA03
4J011SA06
4J011SA14
4J011SA15
4J011SA16
4J011SA20
4J011SA22
4J011SA23
4J011SA24
4J011SA26
4J011SA27
4J011SA28
4J011SA29
4J011SA61
4J011SA62
4J011SA64
4J011SA76
4J011SA83
4J011SA84
4J011TA07
4J011UA01
4J011UA02
4J011UA03
4J011UA04
4J011VA01
4J011VA09
4J011WA10
4J038DL032
4J038FA111
4J038HA446
4J038MA02
4J038PA17
4J038PB08
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】本発明は、環状オレフィン樹脂フィルム等の基材表面に塗工して硬化させることで、プライマー処理やコロナ処理等の前処理を必要とすることなく、基材との優れた密着性、高硬度、及び高屈折率を両立得る両立得る活性エネルギー線硬化性組成物、並びに、その硬化物、積層体、及びそれを用いたレンズを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、 多官能(メタ)アクリレート化合物(A)、シリカ微粒子(B)、及び光重合開始剤(C)を含有し、前記多官能(メタ)アクリレート化合物(A)の水酸基濃度が1mmol/g以下であり、前記シリカ微粒子(B)の表面シラノール基濃度が120~300μmol/gの範囲である活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多官能(メタ)アクリレート化合物(A)、シリカ微粒子(B)、及び光重合開始剤(C)を含有し、
前記多官能(メタ)アクリレート化合物(A)の水酸基濃度が1mmol/g以下であり、
前記シリカ微粒子(B)の表面シラノール基濃度が120~300μmol/gの範囲である活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項2】
前記シリカ微粒子(B)の含有量が、前記組成物における固形分中に1~30質量%である請求項1記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
シリコーン樹脂(D)をさらに含有する請求項1記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項4】
前記シリコーン樹脂(D)が、分子内に(メタ)アクリロイル基を有する請求項3記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項5】
前記シリコーン樹脂(D)の含有量が、前記組成物における固形分中に0.1~5質量%の範囲である請求項3記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項6】
前記光重合開始剤(C)が、α開裂型又は水素引き抜き型である請求項1記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物。
【請求項8】
環状オレフィン樹脂フィルム基材の少なくとも1面に、請求項1~6のいずれか一項記
載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜を有する積層体。
【請求項9】
前記硬化塗膜と接する無機層をさらに有する請求項8記載の積層体。
【請求項10】
請求項9記載の積層体を含有するレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化性組成物、硬化物、積層体、並びに当該組成物を用いたレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
環状オレフィン樹脂(COP又はCOC)フィルムは、高透明性、低複屈折、低吸湿性、低透湿性等に優れており、光学部材、医療、包装フィルム、自動車、半導体等の用途に幅広く用いられている。特に光学用途では、テレビ等のディスプレイの大面積化に伴い、従来用いられていたポリエチレンテレフタレート(PET)やトリアセチルセルロース(TAC)等のプラスチックフィルムの代替として環状オレフィン樹脂フィルムを用いることが検討されている。
【0003】
一方で、環状オレフィン樹脂フィルムは表面硬度が不十分であるため加工時や使用時に傷が付くおそれがあり、耐摩耗性及び耐擦傷性の向上を目的として、表面に活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜からなるハードコート層等の保護層を設けることがある。
しかしながら、環状オレフィン樹脂フィルムはその主構造が脂環構造であることからフィルム表面の極性が低く、表面の濡れ性が悪く、溶剤によって浸食され難いという特徴を有する。そのため、環状オレフィン樹脂フィルム上にハードコート層形成用の活性エネルギー線硬化性組成物を塗工した場合、塗材が塗れ広がりにくく、環状オレフィン樹脂フィルム表面とハードコート層との間の密着性が低いという問題があった。
【0004】
環状オレフィン樹脂フィルムとハードコート層との間の密着性を向上する方法として、プライマー処理やコロナ処理等の前処理をすることでCOPフィルム表面を親水化する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法によりCOPフィルム表面とハードコート層との間の密着性を向上することはできるが、プライマー層の塗工、乾燥により工程数が増加し、歩留まり低下、コストアップ、環境負荷発生等の問題があるため、前処理無しでCOPフィルムに密着する塗材が求められている。
【0005】
上述のような課題に対し、特許文献2に記載の発明では、ハードコート層形成用の活性エネルギー線硬化性組成物として、ベンゾフェノン系開始剤及び/又はチオキサントン系開始剤と、シリカ微粒子と、特定のウレタン(メタ)アクリレートとを用いることで、前処理を施すことなく、耐擦傷性及び基材密着性に優れたハードコート層を得ることが提案されている。しかし、組成物中のシリカ微粒子の含有量の多さから、ハードコート層の屈折率の低下や、外観不良が発生する可能性があった。したがって、基材密着性、硬度、及び屈折率の両立は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-284158号公報
【特許文献2】特開2018-203887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、環状オレフィン樹脂フィルム等の基材表面に塗工して硬化させることで、プライマー処理やコロナ処理等の前処理を必要とすることなく、基材との優れた密着性と高硬度、及び高屈折率を両立得る活性エネルギー線硬化性組成物、
並びに、その硬化物、積層体、及びそれを用いたレンズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定の範囲の水酸基濃度を有する多官能(メタ)アクリレート化合物、特定の範囲の表面シラノール基濃度を有するシリカ微粒子、及び光重合開始剤を含有することにより、プライマー処理やコロナ処理等の前処理を省略し、基材と硬化塗膜との密着性に優れ、高硬度、及び高屈折率を示す硬化塗膜を形成可能な活性エネルギー線硬化性組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち本発明は、以下[1]~[10]に記載の発明に関するものである。
[1]多官能(メタ)アクリレート化合物(A)、シリカ微粒子(B)、及び光重合開始剤(C)を含有し、多官能(メタ)アクリレート化合物(A)の水酸基濃度が1mmol/g以下であり、前記シリカ微粒子(B)の表面シラノール基濃度が120~300μmol/gの範囲である活性エネルギー線硬化性組成物。
[2]シリカ微粒子(B)の含有量が、前記組成物における固形分中に1~30質量%である[1]記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
[3]シリコーン樹脂(D)をさらに含有する[1]又は[2]記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
[4]シリコーン樹脂(D)が、分子内に(メタ)アクリロイル基を有する[3]記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
[5]シリコーン樹脂(D)の含有量が、組成物における固形分中に0.1~5質量%の範囲である[3]又は[4]記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
[6]光重合開始剤(C)が、α開裂型又は水素引き抜き型である[1]~[5]記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
[7][1]~[6]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物。
[8]環状オレフィン樹脂フィルム基材の少なくとも1面に、[1]~[6]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜を有する積層体。
[9]前記硬化塗膜と接する無機層をさらに有する[8]に記載の積層体。
[10][8]又は[9]に記載の積層体を含有するレンズ。
【発明の効果】
【0010】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、COPフィルム又はCOCフィルム等の基材表面に塗工した後に硬化させることで、基材のプライマー処理やコロナ処理等の前処理を必要とすることなく、基材との密着性に優れたハードコート層を形成することができるものである。
また、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物や硬化塗膜は、硬度及び屈折率が高いことから、幅広い用途で使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<<活性エネルギー線硬化性組成物>>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物(以下、単に「組成物」ということがある。)は、多官能(メタ)アクリレート化合物(A)、シリカ微粒子(B)、及び光重合開始剤(C)を含有するものである。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基とメタクリロイル基の一方又は両方をいう。
【0012】
[多官能(メタ)アクリレート化合物(A)]
多官能(メタ)アクリレート化合物(A)(以下、(A)成分ともいう)の水酸基濃度が1mmol/g以下であり、この範囲であれば各種公知のものを特に制限無く使用することができる。
【0013】
(A)成分の水酸基濃度は、0mmol/g以上0.8mmol/g以下の範囲がより好ましく、0.1mmol/g以上0.5mmol/g以下の範囲が特に好ましい。これら範囲とすることで、基材密着性が高まる。
【0014】
(A)成分は、具体的には、1分子に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、或いは、1分子に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を2種以上含有する混合物等が挙げられる。
【0015】
(A)成分の水酸基濃度とは、(A)成分全体での水酸基濃度である。例えば(A)成分として1種の化合物のみを使用する場合は、その1種の化合物の質量における水酸基の物質量である。また(A)成分として2種以上の化合物を併用する場合は、(A)成分として用いた全化合物の合計の質量に対する水酸基の物質量である。
【0016】
1分子に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物として、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAの1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、ポリペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
前記1分子に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂等であっても構わない。
前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸又はその無水物を反応させて得られるものが挙げられる。前記エポキシ樹脂は、例えば、ヒドロキノン、カテコール等の2価フェノールのジグリシジルエーテル;3,3’-ビフェニルジオール、4,4’-ビフェニルジオール等のビフェノール化合物のジグリシジルエーテル;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;1,4-ナフタレンジオール、1,5-ナフタレンジオール、1,6-ナフタレンジオール、2,6-ナフタレンジオール、2,7-ナフタレンジオール、ビナフトール、ビス(2,7-ジヒドロキシナフチル)メタン等のナフトール化合物のポリグリジシルエーテル;4,4’,4”-メチリジントリスフェノール等のトリグリシジルエーテル;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;前記各種のエポキシ樹脂の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体;前記各種のエポキシ樹脂の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体等が挙げられる。
【0018】
前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、ポリイソシアネートと、水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物との反応生成物が挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、例えば、ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルビフェニル、o-トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;これらのイソシアヌレート変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体等を用いることができる。
水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;これら化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体や、上記各種の水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体等を用いることができる。
【0019】
上述した化合物は、1種で用いることも、2種以上併用することもできる。
なかでも(A)成分は、硬化後に高い架橋度が得られ、硬化物及び硬化塗膜の硬度がより一層向上することから、1分子に4つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含有することが好ましく、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を含有することが特に好ましい。
【0020】
(A)成分の含有量は、組成物の固形分中に、40~90質量%の範囲であることが好ましく、50~85質量%の範囲であることがより好ましく、60~82質量%の範囲であることが特に好ましい。これら範囲とすることで、高硬度な硬化物及び硬化塗膜を形成可能な組成物が得られ、基材密着性も向上する。
尚、本発明における固形分とは、組成物中の溶剤を除いたすべての成分の総質量を指す。
【0021】
[シリカ微粒子(B)]
シリカ微粒子(B)(以下(B)成分ともいう)は、その表面に存在するシラノール基(以下、表面シラノール基)の濃度が120~300μmol/gの範囲であれば、各種公知のものを特に制限なく使用することができる。表面シラノール基をこの範囲することで、基材密着性が向上する。
【0022】
また(A)成分の水酸基濃度が1mmol/g以下であり、且つ(B)成分の表面シラノール基濃度が120~300μmol/gであることで、疎水性の(A)成分と親水性の(B)成分が混在することとなり、組成物における(B)成分の分散性が低下する。したがって、基材に対して組成物を塗工した際、基材と組成物の界面付近に(B)成分が偏析し、(B)成分の表面のシラノール基と基材の相互作用が高まったこと等が基材密着性の向上に寄与すると推測できる。
【0023】
(B)成分の表面シラノール基濃度は、130~270μmol/gの範囲であることがより好ましく、135~230μmol/gの範囲であることがさらに好ましく、140~200μmol/gの範囲であることが最も好ましい。これら範囲とすることで、(A)成分と(B)成分の親水性のバランスが最適なものとなり、基材密着性がより向上する。
【0024】
(B)成分として、具体的には、乾式シリカ、湿式シリカ、シリカゲル、カルシウムイオン交換シリカ微粒子、コロイダルシリカ等を挙げることができる。また、(B)成分は、シリカ表面の一部が有機物等で変性されているものでもよく、シリカ表面が変性されていないもの(表面未処理シリカ) でもよい。
ここでの有機物等での変性とは、シリカ微粒子表面に、有機化合物又は有機基を物理的又は化学的(好ましくは、化学的)に導入した複合体の形態となることを意味する。導入される有機化合物又は有機基としては、当該分野で公知のものが挙げられるが、例えば不飽和基等が挙げられる。
【0025】
前記不飽和基とは、ラジカル重合しうる不飽和基を意味し、ラジカル重合しうる不飽和基としては、炭素-炭素間二重結合をもつ官能基であり(重合性二重結合ともいう)、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルエーテル基、アリル基等を挙げることができる。
【0026】
シリカ微粒子(B)は分散媒に分散した状態であっても良く、分散媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、イソブタノール、n-ブタノール等のアルコール系溶媒;エチレングリコール等の多価アルコール系溶媒;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコール誘導体;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトン系溶媒等が挙げられる。
【0027】
コロイダルシリカの市販品としては、メタノールシリカゾル(平均粒子径10~15nm)、MA-ST-M(平均粒子径20~25nm)、IPA-ST(平均粒子径10~15nm)、IPA-ST-ZL(平均粒子径70~100nm)、DMAC-ST(平均粒子径10~15nm)、NPC-ST-30(平均粒子径10~15nm)、PGM-ST(平均粒子径10~15nm)、IPA-ST-UP(平均粒子径9~15nm)、STUP(平均粒子径40~100nm)、ST-OUP(平均粒子径40~100nm)、ST-20L(平均粒子径40~50nm)、ST-30(平均粒子径10~15nm)、ST-O-40(平均粒子径20~25nm)、ST-N-40(平均粒子径20~25nm)、ST-C(平均粒子径10~15nm)、ST-NS(平均粒子径8~11nm)、ST-O(平均粒子径10~15nm)、ST-50(平均粒子径20~25nm)、ST-OL(平均粒子径40~50nm)(いずれも商品名、日産化学工業社製)等が挙げられる。
【0028】
(B)成分の粒子径は、特に制限されないが、平均一次粒径が10~50nm程度、好ましくは10~20nm程度の範囲のものを使用することが好ましい。当該粒径は、BET法によって計測された平均一次粒径である。該粒子径がこの範囲であれば、組成物中に(B)成分が分散し易くなることから、高硬度な硬化物及び硬化塗膜を形成可能な組成物が得られる。
【0029】
(B)成分は、1種で用いることも、2種以上併用することもできる。
【0030】
上述の通り、本発明の組成物は、疎水性の(A)成分と、親水性の(B)成分を併用していることから、基材への塗工時に基材と組成物の界面付近に(B)成分が偏析可能となる。したがって、(B)成分の含有量が少ない場合でも基材密着性に優れる。さらに、(B)成分の含有量が少ないことで、硬化塗膜の屈折率の低下及び外観の劣化を防ぐことができる。よって(B)成分の含有量は、組成物の固形分中に、1~30質量%の範囲であることが好ましく、5~28質量%の範囲であることがより好ましく、10~20質量%の範囲であることが特に好ましい。
【0031】
[光重合開始剤(C)]
光重合開始剤(C)としては、各種公知のものを使用することができ、例えば、α開裂型又は水素引き抜き型の光重合開始剤を使用できる。
α開裂型の光重合開始剤としては、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、2,2′-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン等が挙げられる。
水素引き抜き型の光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル-4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;キサントン、2-イソプロピルキサントン、2,4-ジメチルキサントン、2,4-ジエチルキサントン、2,4-ジクロロキサントン等のキサントン系化合物;ポリブチレングリコールビス(4-ベンゾイルフェノキシ)アセテート等のベンゾフェノン骨格を持つポリマー等が挙げられる。
【0032】
前記光重合開始剤(C)の市販品としては、例えば、「Omnirad-1173」、「Omnirad-184」、「Omnirad-127」、「Omnirad-2959」、「Omnirad-369」、「Omnirad-379」、「Omnirad-907」、「Omnirad-4265」、「Omnirad-1000」、「Omnirad-651」、「Omnirad-TPO」、「Omnirad-819」、「Omnirad-2022」、「Omnirad-2100」、「Omnirad-754」、「Omnirad-784」、「Omnirad-500」、「Omnirad-81」(IGM社製)、「カヤキュア-DETX」、「カヤキュア-MBP」、「カヤキュア-DMBI」、「カヤキュア-EPA」、「カヤキュア-OA」(日本化薬株式会社製)、「バイキュア-10」、「バイキュア-55」(ストウファ・ケミカル社製)、「トリゴナルP1」(アクゾ社製)、「サンドレイ1000」(サンドズ社製)、「ディープ」(アプジョン社製)、「クオンタキュア-PDO」、「クオンタキュア-ITX」、「クオンタキュア-EPD」(ワードブレンキンソップ社製)、「Runtecure-1104」、「Runtecure-1108」(Runtec社製)等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0033】
前記光重合開始剤の添加量は、例えば、組成物の固形分中に0.05~20質量%の範囲が好ましく、0.1~10質量%の範囲がより好ましい。
【0034】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、シリコーン樹脂(D)をさらに含有しても良い。
【0035】
[シリコーン樹脂(D)]
シリコーン樹脂(D)は、シロキサン結合(Si-O-Si)を含有する樹脂であり、分子内にシラノール基(Si-OH)および/またはアルコキシシリル基(Si-OR)(Rは、アルキル基である。)を有する化合物であれば、各種公知のものを使用することができる。
【0036】
シリコーン樹脂(D)を含有することで、基材、本発明の硬化塗膜、無機層の順で重なる積層体において、硬化塗膜と無機層の密着性が向上する。これは、シリコーン樹脂(D)と(A)成分の相溶性の差により、硬化塗膜の無機層側に偏析することで、硬化塗膜と無機層の相互作用が高まったためと考えられる。
【0037】
シリコーン樹脂(D)は、シラノール基および/またはアルコキシシリル基とを有するシラン化合物を縮合することで得ることができる。この時、シラノール基および/またはアルコキシシリル基以外に、反応性基を有するシラン化合物を用いることで、シリコーン樹脂(D)に反応性基を導入することができる。
【0038】
ここでの反応性基とは、反応性を有する基であればよく、例えば、重合性二重結合を有する基、エポキシ基、アミノ基、ウレイド基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、メルカプト基、酸無水物等が挙げられる。中でも、好ましくは、重合性二重結合を有する基、エポキシ基である。
重合性二重結合を有する基としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、アリル基、マレイミド基等が挙げられる。
【0039】
例えば、重合性二重結合を有する基を導入する場合、使用する重合性二重結合を有する基とシラノール基および/または加水分解性シリル基とを併有するシラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリ(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、2-トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルトリエトキシシラン等を併用する。中でも、加水分解反応を容易に進行でき、また反応後の副生成物を容易に除去することができることからビニルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0040】
また、反応性基にエポキシ基を導入するには、エポキシ基含有シラン化合物を使用すればよい。エポキシ基含有シラン化合物としては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリアセトキシシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシエトキシシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリアセトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルジエトキシメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルジメトキシエトキシメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルジアセトキシメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジエトキシメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシエトキシメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジアセトキシメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルジメトキシエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルジエトキシエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルジメトキシエトキシエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルジアセトキシエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジエトキシエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシエトキシエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジアセトキシエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルジメトキシイソプロピルシラン、γ-グリシドキシプロピルジエトキシイソプロピルシラン、γ-グリシドキシプロピルジメトキシエトキシイソプロピルシラン、γ-グリシドキシプロピルジアセトキシイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジエトキシイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジエトキシイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシエトキシイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジアセトキシイソプロピルシラン、γ-グリシドキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルエトキシジメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルメトキシエトキシジメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルアセトキシジメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシジメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルエトキシジメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシエトキシジメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルアセトキシジメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルメトキシジエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルメトキシエトキシジエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルアセトキシジエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシジエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルエトキシジエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシエトキシジエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルアセトキシジエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルメトキシジイソプロピルシラン、γ-グリシドキシプロピルエトキシジイソプロピルシラン、γ-グリシドキシプロピルメトキシエトキシジイソプロピルシラン、γ-グリシドキシプロピルアセトキシジイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシジイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルエトキシジイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシエトキシジイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルアセトキシジイソプロピルシラン、γ-グリシドキシプロピルメトキシエトキシメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルアセトキシメトキシメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルアセトキシエトキシメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシエトキシメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシアセトキシメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルエトキシアセトキシメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルメトキシエトキシエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルアセトキシメトキシエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルアセトキシエトキシエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシエトキシエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシアセトキシエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルエトキシアセトキシエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルメトキシエトキシイソプロピルシラン、γ-グリシドキシプロピルアセトキシメトキシイソプロピルシラン、γ-グリシドキシプロピルアセトキシエトキシイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシエトキシイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシアセトキシイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルエトキシアセトキシイソプロピルシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α-グリシドキシメチルトリメトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β-グリシドキシメチルトリメトキシシラン、α-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、α-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α-グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、β-グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシブチルトリエトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリプトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリフェノキシシラン、γ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、δ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、δ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジエトキシシラン、α-グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、α-グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、β-グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、β-グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、α-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、α-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ-グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルエチルジプロポキシシラン、γ-グリシドキシプロピルビニルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラン、8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、8-グリシドキシオクチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
その他、反応性基を有さないシラン化合物を用いてもよい。例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ-n-ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、iso-ブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等の各種のオルガノトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ-n-ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン等の、各種のジオルガノジアルコキシシラン類;メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシランもしくは等のクロロシラン類が挙げられる。
【0041】
また、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランもしくはテトラn-プロポキシシランなどの4官能アルコキシシラン化合物や該4官能アルコキシシラン化合物の部分加水分解縮合物を、本発明の効果を損なわない範囲で併用することもできる。前記4官能アルコキシシラン化合物又はその部分加水分解縮合物を併用する場合には、前記ポリシロキサンを構成する全珪素原子に対して、該4官能アルコキシシラン化合物の有する珪素原子が、20モル%を超えない範囲となるように併用することが好ましい。
【0042】
シリコーン樹脂(D)としては、市販品を用いることもできる。例えば、X-12-1048(信越化学工業社製)、X-12-1050(信越化学工業社製)、KR-513(信越化学工業社製)、X-40-9308(信越化学工業社製)、KR-517(信越化学工業社製)、X-40-2670(信越化学工業社製)、X-24-9590(信越化学工業社製)、KR-516(信越化学工業社製)、X40-9296(信越化学工業社製)、TM-100(東亜合成社製)、TA-100(東亜合成社製)、M-100(SiliXan社)、M-140(SiliXan社)等が挙げられる。
【0043】
これら化合物は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0044】
シリコーン樹脂(D)の含有量は、組成物の固形分中に、0.1~5質量%の範囲であることが好ましく、0.5~3質量%の範囲であることがより好ましく、1~2.5質量%の範囲であることが特に好ましい。これら範囲とすることで、無機層への密着性が向上する。
【0045】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、有機溶剤(E)をさらに含有しても良い。
【0046】
[有機溶剤(E)]
有機溶剤(E)は、本発明の組成物の溶液粘度を適宜調整する上で有用であり、特に薄膜コーティングを行うためには、膜厚を調整することが容易となる。ここで使用できる有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロパノール、t-ブタノール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類等が挙げられる。これらの溶剤は、1種で用いることも、2種以上を併用することもできる。
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、基材上に塗工後、溶剤を揮発させたのち、活性エネルギー線を照射することで硬化塗膜とすることができる。
【0047】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物には、上記の成分(A)~(E)以外のその他の成分として、用途、要求特性に応じて、光増感剤、重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤等の表面調整剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、有機顔料、無機顔料、顔料分散剤、有機ビーズ等の添加剤;酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニア、五酸化アンチモン等の無機充填剤などを配合することができる。これらその他の配合物は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0048】
<<硬化物及び硬化塗膜>>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、フィルム等の基材の少なくとも1面に塗工した後に活性エネルギー線を照射して硬化塗膜として用いてもよく、基材を用いずに活性エネルギー線を照射して硬化物としてもよい。
【0049】
硬化塗膜を得る際の基材は、フィルム状でもシート状でもよく、その厚さは特に制限されない。例えば10μm~5mmの範囲で各種公知の基材を用いることができる。
【0050】
前記基材に本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を塗工する方法としては、例えば、ダイコート、マイクログラビアコート、グラビアコート、ロールコート、コンマコート、エアナイフコート、キスコート、スプレーコート、ディップコート、スピンナーコート、刷毛塗り、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート等が挙げられる。
【0051】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させる活性エネルギー線としては、上記の通り、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線である。ここで、活性エネルギー線として紫外線を用いる場合、その紫外線を照射する装置としては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極ランプ(フュージョンランプ)、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、水銀-キセノンランプ、ショートアーク灯、ヘリウム・カドミニウムレーザー、アルゴンレーザー、太陽光、LEDランプ等が挙げられる。
【0052】
前記基材上に本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜を形成する際の硬化塗膜の膜厚は、硬化塗膜の硬さを充分なものとし、かつ塗膜の硬化収縮によるフィルムのカールを抑制できることから、1~30μmの範囲が好ましいが、2~15μmの範囲がより好ましく、3~10μmの範囲がさらに好ましい。
【0053】
基材の材質としては、透明性の高い樹脂が好ましく、例えば、環状オレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン-1等のポリオレフィン系樹脂;セルロースアセテート(ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等)、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレート、セルロースアセテートフタレート、硝酸セルロース等のセルロース系樹脂;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂;ポリビニルアルコール;エチレン-酢酸ビニル共重合体;ポリスチレン;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリイミド、ポリエーテルイミド等のポリイミド系樹脂;ノルボルネン系樹脂(例えば、日本ゼオン株式会社製「ゼオノア」)、変性ノルボルネン系樹脂(例えば、JSR株式会社製「アートン」)等が挙げられる。さらに、これらの樹脂からなる基材を2種以上貼り合わせたものを用いても構わない。
【0054】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、従来ハードコート層の基材密着が難しいとされていた環状オレフィン樹脂(COP又はCOC)に対して良好な密着性を有する。
【0055】
<<積層体>>
本発明の積層体は、環状オレフィン樹脂フィルム(COP又はCOC)基材の少なくとも1面に硬化塗膜を有するものである。
【0056】
COP又はCOC基材は、環状オレフィン樹脂をフィルム上に成形したものである。市販品としては、例えば、日本ゼオン株式会社製の「ZEONOR(登録商標)」、「ZEONEX(登録商標)」;JSR株式会社製の「ARTON(登録商標)」;ポリプラスチックス株式会社製の「TOPAS(登録商標)」;三井化学株式会社製「アペル(登録商標)」等が挙げられる。
本発明の組成物は、COP又はCOC基材に対して前処理を施さない場合にも、環状オレフィン樹脂フィルム基材に対して良好な密着性が得られるものである。しかしながら、さらなる密着性の向上を目的として、環状オレフィン樹脂フィルム基材に対して予めサンドブラスト法、溶剤処理法等による表面の凹凸化処理、電気的処理(コロナ放電処理、大気圧プラズマ処理)、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線・電子線照射処理、酸化処理等の処理をしてもよい。
【0057】
本発明の積層体は、無機層をさらに含有しても良い。無機層を含有する場合、基材、硬化塗膜、無機層の順に重なる。
【0058】
無機層としては、無機化合物からなる層を意味し、一般に、反射防止、耐擦り傷性等の機能を有するものである。
【0059】
前記無機化合物としては、例えば、金属酸化物、複酸化物、金属窒化物、金属フッ化物、複フッ化物、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0060】
前記金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン、イットリウム、インジウム、スズ、ジルコニウム、ニオブ、セリウム、ハフニウム、タンタル、等が挙げられる。
【0061】
前記無機層を反射防止膜層として用いる場合、前記反射防止膜層は単層であってもよいが、低屈折率層と、高屈折率層とを有していてもよい。また、低屈折率層と高屈折率層は、それぞれ1 層でも複数層であってもよい。なお、低屈折率層と高屈折率層の積層順序も特に限定されない。
【0062】
前記高屈折率層に用いる無機化合物としては、例えば、チタン酸ランタン、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化ハフニウム、酸化セリウム、酸化イットリウム及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0063】
前記低屈折率層に用いる無機化合物としては、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0064】
前記無機層は、前記硬化塗膜の表面に成膜することで得られるものである。前記無機層の成膜方法は、特に制限されず、適宜公知の成膜方法を用いることができるが、物理蒸着(PVD)又は化学蒸着(CVD)により成膜することが好ましい。
【0065】
前記成膜方法は、成膜工程の一貫性及び簡素化の観点から、前記物理蒸着( P V D ) を用いることがより好ましく、例えば、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等の方法が挙げられる。
【0066】
前記真空蒸着としては、例えば、抵抗加熱方式、高周波誘導加熱方式、電子ビーム加熱方式等を用いることができる。
【0067】
前記スパッタリングは、DCスパッタでもRFスパッタでもよく、マグネトロンスパッタでもイオンビームスパッタでもよい。また、平行平板ターゲット方式でも対向ターゲット方式でもよい。また、真空チャンバー内に導入する気体としては、例えば、アルゴン、クリプトン、酸素、窒素等が挙げられ、各々単独でも2 種以上を混合して用いてもよい。
【0068】
前記無機層の膜厚は、目的とする機能により適宜調整し得るが、反射防止機能を目的とする場合、10nm~5,000nmの範囲が好ましく、無機層の膜強度と生産性の観点から、100nm~2,000nmの範囲がより好ましく、250nm~1,000nm の範囲が特に好ましい。
【0069】
<<レンズ>>
本発明のレンズは、前記積層体を有する。なお、本発明のレンズは、インプリント成形により、ウェハレベルレンズとして用いることもできる。
【0070】
本発明のレンズを製造する方法としては、特に制限されず、どのような方法にて製造してもよいが、例えば、前記活性エネルギー線硬化性組成物を、ウエハーやガラス等の基材上に塗布し、金型により所望の形状に賦形した後、活性エネルギー線を照射して前記組成物を仮硬化させる。金型を離型後、未硬化の活性エネルギー線硬化性組成物を洗浄用溶剤により洗浄する現像工程を経て、再度活性エネルギー線を照射し本硬化を行う。さらに必要に応じて、物理蒸着等により無機化合物からなる無機層を硬化物表面に成膜する。最後に前記基材を個片化する方法等が挙げられる。
【0071】
前記洗浄用溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、イソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤; テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン等の環状エーテル系溶剤; 酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤; トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族系溶剤; シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶剤; カルビトール、セロソルブ、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤; アルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート等のグリコールエーテル系溶剤などが挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【実施例0072】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。
【0073】
(実施例1)
ペンタエリスリトールテトラアクリレート(東亜合成社製の「アロニックス M-450」)22.7質量部、脂肪族ウレタンアクリレート(官能基数6、MIWON社製の「PU610」)5.7質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル分散シリカゾル(SiOを30%含有、日産化学社製の「PGM-ST」)15.1質量部、シリコーンオリゴマー(アクリロイル基含有、信越化学社製の「KR-513」)0.7質量部、光重合開始剤1.5質量部(IGM社製の「Runtecure1104」を60%、IGM社製の「Runtecure1108」を40%含有する混合物)、プロピレングリコールモノメチルエーテル54.4質量部を均一に混合して、活性エネルギー線硬化性組成物(1)を調整した。
【0074】
(実施例2~13、比較例1~6)
表1~3に示した組成に変更した以外は実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化性組成物(2)~(13)、(R1)~(R6)を得た。
【0075】
[評価用サンプルαの作製]
各例の活性エネルギー線硬化性組成物を、厚さ4mmのCOC基板(三井化学社製「アペル(登録商標) APL5014CL」)に、バーコーターで塗工し、溶剤を一定温度条件下で一定時間乾燥させた後、窒素囲気下で紫外線照射装置(アイグラフィックス株式会社製、高圧水銀ランプ)を用いて照射光量500mJ/cmで照射し、膜厚4μmの硬化塗膜を有するCOC基板を得、これを評価用サンプルαとした。
【0076】
[基材密着性評価]
各例の評価用サンプルαの硬化塗膜表面に1mm間隔で縦、横11本の切れ目を入れて100個のマス目を作製した。次いで、セロハンテープ(ニチバン株式会社製「セロテープ(登録商標) CT-18」)をその表面に密着させた後、一気に剥がす操作を2回繰り返した。剥離せずに残った残面積比率から、下記の基準により初期密着性を評価した。B評価以上を合格と判定した。
A:残面積比率が100%である。
B:残面積比率が95%以上100%未満である。
C:残面積比率が10%以上95%未満である。
D:残面積比率が10%未満である。
【0077】
[屈折率]
各例の評価用サンプルαについて、ATAGO社製多波長アッベ屈折率計(DR-M2)を用いて、基準波長(589nm)にて測定した。表の数値は、硬化塗膜の屈折率を示した。硬化塗膜の屈折率が1.51以上のものを合格とした。
【0078】
[硬度評価]
各例の評価用サンプルαの硬化塗膜の表面について、JIS K5600-5-4(1999)に準拠して鉛筆硬度を750g荷重条件下で測定した。1つの硬度につき5回測定を行い、傷が付かなかった測定が4回以上あった硬度を積層フィルムの表面硬度とした。
なお、鉛筆の硬度は、硬度が高い順から2H、H、F、HB、Bである。
【0079】
[評価用サンプルβの作製]
評価サンプルαの硬化塗膜側表面に、下記条件でスパッタすることで無機層、硬化塗膜、COC基板からなる積層体を得、これを評価用サンプルβとした。
(スパッタの条件)
以下の条件にて、工程1を実施後、工程2を実施し、積層を実施した。
工程1:逆スパッタ 1.0Pa,Ar20sccm,RF200watt,60sec
工程2:SiO2スパッタ 0.6~0.7Pa,Ar20sccm,RF200wat
t,50nm
【0080】
[無機層密着性評価]
各例の評価用サンプルβを平面摩擦試験機に治具で固定し、評価用サンプルβの無機層側の表面に対してクリーンクロスLTK2010TBCを用いて荷重100g/cm2、回数10往復の摩耗試験を実施した。摩耗試験後の傷付き状態を目視観察し、下記の基準により評価した。
A:無機層の外観変化なし。
B:無機層の残面積比率が95%以上100%未満である。
C:無機層の残面積比率が10%以上95%未満である。
D:無機層の残面積比率が10%未満である。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
【表3】

【0084】
表1~3中に示す略語は下記の化合物を示す。
「M-450」: ペンタエリスリトールテトラアクリレート(東亜合成社製の「アロニックス M-450」)
「PU610」:脂肪族ウレタンアクリレート(官能基数6、MIWON社製の「PU610」)
「M-400」:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを含有する 東亜合成社製の「アロニックス M-400」)
「M-305」:ペンタエリスリトールテトラアクリレート(ペンタエリスリトールトリアクリレートを含有する 東亜合成社製の「アロニックス M-305」)
「PGM-ST」:プロピレングリコールモノメチルエーテル分散シリカゾル(SiOを30%含有、粒子径10~15nm、日産化学社製の「PGM-ST」)
「IPA-ST」:イソプロピルアルコール分散シリカゾル(SiOを30%含有、粒子径10~15nm、日産化学社製の「IPA-ST」)
「MeOH-ST」:メタノール分散シリカゾル(SiOを30%含有、粒子径10~15nm、日産化学社製の「メタノールシリカゾル」)
「MEK-ST-40」:メチルエチルケトン分散シリカゾル(SiOを40%含有、粒子径10~15nm、日産化学社製の「MEK-ST-40」)
「MEK-AC-2140Z」:メチルエチルケトン分散シリカゾルの表面改質グレード(SiOを40%含有、粒子径10~15nm、日産化学社製の「MEK-AC-2140Z」)
「IPA-ST-L」:イソプロピルアルコール分散シリカゾル(SiOを30%含有、粒子径10~15nm、日産化学社製の「IPA-ST-L」)
「MIBK-ST」:メチルイソブチルケトン分散シリカゾル(SiOを30%含有、粒子径10~15nm、日産化学社製の「MIBK-ST」)
「Runtecure1104」:1-ベンゾイルシクロヘキサノール(IGM社製の「Runtecure1104」)
「Runtecure1108」:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(IGM社製の「Runtecure1108」)
「KR-513」:シリコーンオリゴマー(アクリロイル基含有、信越化学社製の「KR-513」)
「X-40-2761」:シリコーンオリゴマー(アクリロイル基含有、信越化学社製の「X-40-2761」)
「X-40-9296」:シリコーンオリゴマー(メタクリロイル基含有、信越化学社製の「X-40-9296」)
「PGME」:プロピレングリコールモノメチルエーテル
「MEK」:メチルエチルケトン
【0085】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜は、環状オレフィン樹脂フィルム基材及び無機層への優れた密着性を有し、且つ、高硬度及び高屈折率を示すことが確認できた。
一方、シリカ微粒子(B)の表面シラノール基濃度が120μmol/g未満である比較例1~3及び5では、基材密着性が著しく劣ることが確認できた。シリカ微粒子(B)を含有しない比較例4や、(A)成分の水酸基濃度が1mmol/gを超える比較例6においては、基材密着性のみならず硬度も低下した。
なお、比較例1~6では十分な基材密着性が得られなかったため、無機層を有する評価用サンプルβを作成できなかった。