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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024380
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20240215BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
C23C14/34 J
H01L21/68 N
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127169
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(72)【発明者】
【氏名】吉田 大介
【テーマコード(参考)】
4K029
5F131
【Fターム(参考)】
4K029CA05
4K029JA01
4K029JA02
4K029JA05
4K029KA01
4K029KA09
5F131AA03
5F131AA10
5F131AA23
5F131AA33
5F131BA01
5F131BA03
5F131BA19
5F131BB04
5F131BB13
5F131CA06
5F131CA07
5F131CA09
5F131CA15
5F131CA22
5F131CA32
5F131CA45
5F131DA02
5F131DA09
5F131DA32
5F131DA33
5F131DA36
5F131DA42
5F131DA52
5F131DA62
5F131DB52
5F131DB76
5F131EA03
5F131EA13
5F131EA14
5F131EA22
5F131EA23
5F131EA25
5F131EB31
5F131EB32
5F131EB36
5F131EB37
5F131EB62
5F131EB72
5F131FA10
5F131FA17
5F131FA32
5F131FA33
5F131JA16
5F131JA22
5F131KA14
5F131KA72
5F131KB12
5F131KB32
5F131KB52
(57)【要約】
【課題】衝撃発生を防止する。
【解決手段】基板処理装置は、処理室4mと、後背室4nと、マスク20と、回転支持機構10とを有する。回転支持機構10は、回転軸12と、基板保持部13とを有する。水平搬送位置から成膜起立位置に向かう基板保持部13の回転方向において、成膜起立位置における基板保持部13の重心の位置は、鉛直方向における回転軸12の直上の位置を超えない。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する装置であって、
前記基板に表面処理を施す処理室と、
前記処理室に隣接し、前記基板が通過する搬送口を有し、前記処理室における表面処理の際に前記基板を支持する後背室と、
前記後背室内に配置され、前記処理室に対向するように立設されたマスクと、
回転中心回りに回転可能な回転軸と、前記回転軸に取り付けられているとともに前記基板を前記後背室内で支持可能な基板保持部とを有し、前記基板を支持した前記基板保持部を水平搬送位置と成膜起立位置との間で回転させる回転支持機構と、
を備え、
前記基板の前記水平搬送位置においては、前記基板保持部は、前記搬送口を介して前記基板を水平方向に移動可能なように、前記水平方向に向くように前記基板を支持し、
前記基板の前記成膜起立位置においては、前記基板保持部は、前記基板を表面処理する際に前記マスクに前記基板が対向するように前記基板を支持し、
前記水平搬送位置から前記成膜起立位置に向かう前記基板保持部の回転方向において、前記成膜起立位置における前記基板保持部の重心の位置は、鉛直方向における前記回転軸の直上の位置を超えない、
基板処理装置。
【請求項2】
前記回転支持機構は、
前記回転軸と一体に設けられた台部と、
前記基板保持部と一体に設けられたフランジ部と、
前記フランジ部を貫通して前記台部に締結される締結部材と、
を備え、
前記台部は、前記フランジ部に当接する第1取付平面を有し、
前記フランジ部は、前記台部に当接する第2取付平面を有し、
前記第1取付平面は、前記回転軸の軸方向と、前記回転軸の外周面に対する接線方向とに沿う面であり、
前記第1取付平面と前記第2取付平面とが当接した状態で、前記第2取付平面と交差する方向に前記フランジ部を貫通する前記締結部材によって前記基板保持部が前記回転軸に締結される、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第1取付平面には、第1係合部が形成されており、
前記第2取付平面には、第2係合部が形成されており、
前記第1取付平面と前記第2取付平面とが当接した状態で、前記第1係合部と前記第2係合部とは互いに係合している、
請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記回転支持機構は、前記水平搬送位置から前記成膜起立位置まで前記基板保持部を回転させる回転駆動において前記基板保持部を前記成膜起立位置で停止させる非接触停止部を有する、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記マスクは、
前記処理室と前記後背室との間の境界位置と、前記成膜起立位置にある前記基板との間に配置されている、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記処理室は、前記マスクに対向するとともに前記基板に表面処理を行う基板処理部を有し、
前記基板処理部は、前記処理室と前記後背室との間の境界位置から前記後背室に向かって突出する、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記基板処理部は、蒸着源を有し、
前記処理室において蒸着処理が行われる、
請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記基板処理部は、カソード電極を有し、
前記処理室においてスパッタ処理が行われる、
請求項6に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置に関する。特に、本発明は、縦型(成膜起立位置)で被処理基板を処理する、蒸着、スパッタリング、CVD等の成膜処理、加熱処理等の基板に対する処理に用いられる基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス分野、フラットパネルディスプレイ(FPD)分野においては、基板(被処理体)に各種の薄膜を形成する方法として、スパッタリングや蒸着が用いられている。スパッタリング装置においては、減圧雰囲気が維持されたチャンバ内にて、カソードに取り付けられたターゲットに対向するようにマスクと基板が配置され、基板に対して成膜を行う。蒸着装置においては、減圧雰囲気が維持されたチャンバ内にて、蒸着源と基板との間にマスクが配置され、基板に対して成膜を行う。
【0003】
従来、特許文献1に開示されているように、水平搬送位置と成膜起立位置との間で、基板を支持しながら回転させる回転支持機構が知られている。回転支持機構は、基板を保持する基板保持部と、基板保持部を回転させる回転軸とを有する。このような回転支持機構を備える基板処理装置においては、基板保持部は、チャンバの内部に水平搬送された基板を支持し、回転軸は、基板保持部を回転させ、基板保持部は垂直状態となる。これにより、基板は、略垂直に立てた状態となる。成膜時においては、基板保持部とともに基板を垂直に立てた状態で、基板に対して縦型成膜を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-165571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水平搬送位置から成膜起立位置まで基板の位置を変えることで基板を略垂直に立てる回転動作においては、基板保持部によって支持されている基板の重心及び基板保持部の重心が移動する。この重心移動に伴って、基板の位置や、回転支持機構を構成する部品(以下、構成部品と称する)の間の相対的な位置が変動する場合がある。近年、基板の大型化に伴って、基板を回転させる回転支持機構の重量が増大しており、上記のような重心移動による部品の位置の変動が無視できなくなってきた。
【0006】
特に、回転支持機構の駆動に伴って構成部品の位置が変動すると、構成部品の間に衝撃が発生し、この衝撃が発生することに起因してパーティクルが発生する恐れがある。
さらに、基板が大型化しているために、回転支持機構の駆動に伴って構成部品の位置が変動すると、回転軸から離れた位置では変動量が大きくなる。このため、基板のアライメント精度が低下し、成膜源と基板との間の距離が変化して、基板に形成される膜の厚さが所望の厚さにならないという問題があった。また、回転駆動により構成部品の位置が変動することでアライメント精度が低下した場合、構成部品が互いに接触してしまい、必要な電位を維持することができないという問題があった。このため、成膜条件を要求される状態に維持できない恐れがあった。
【0007】
このように、水平搬送位置と成膜起立位置との間で基板を回転させる動作に起因して、構成部品の間での変位や衝撃が発生し、これにより、FPD製造における歩留まりが低下する可能性があるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、以下の目的を達成する。
1.水平搬送位置から成膜起立位置まで基板の位置を変えることで基板を略垂直に立てる回転動作において回転支持機構を構成する構成部品における衝撃の発生を抑制する。
2.基板の回転に起因して、成膜条件が変動すること抑制する。
3.パーティクルの発生を抑制する。
4.作業性の向上を図る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、回転支持機構による回転駆動の際における構成部品の間での変位や衝撃が発生する原因を鋭意検討した結果、回転支持機構の重心移動に起因して、そのような構成部品の間での変位や衝撃が発生する可能性があることに着目した。
具体的に、基板保持部が水平搬送位置にある場合、基板保持部の重心は、回転軸から見た略水平方向に延びる線上に位置している。回転軸の回転が始まると、基板を支持した基板保持部は、水平搬送位置から起き上がるように回転し始め、成膜起立位置に徐々に近づく。基板保持部の重心の位置も、回転軸の回転に伴って移動する。基板保持部が成膜起立位置に到達する前に、基板を支持した基板保持部の重心の位置は、回転軸から鉛直方向に延びる線(以下、鉛直方向線と称する)上の位置を通過する。言い換えると、回転軸の回転に伴って、基板を支持した基板保持部の重心の位置は、鉛直方向線を跨ぐように移動する。基板保持部が成膜起立位置に到達すると、基板保持部の回転は停止する。このとき、成膜起立位置における基板保持部の重心の位置は、回転軸をから見て、水平搬送位置における基板保持部の重心とは反対側に位置する。
【0010】
このような回転支持機構における駆動では、回転軸の回転に伴って、基板を支持した基板保持部の重心の位置は、回転軸から鉛直方向に延びる線を跨いで水平方向へ移動する。したがって、回転軸が延在する方向に回転支持機構を見た場合、回転軸に発生するモーメントの方向は、基板を支持した基板保持部の重心の移動に伴って、時計回り方向から反時計回り方向に転換する。もしくは、回転軸が延在する上記方向とは反対方向に回転支持機構を見た場合、回転軸に発生するモーメントの方向は、基板を支持した基板保持部の重心の移動に伴って、反時計回り方向から時計回り方向に転換する。
【0011】
本発明者は、回転軸から鉛直方向に延びる線を跨ぐように基板を支持した基板保持部の重心が移動することによって、言い換えると、回転軸に発生するモーメントの方向が一方の方向から他方の方向に転換することによって、構成部品の間での変位や衝撃が発生することを見出した。
【0012】
特に、基板の大型化に伴って、大型基板を支持する基板保持部の重心の位置と回転軸の回転中心との間の距離も大きくなっている。このため、回転軸が基板保持部を回転させる回転駆動においては、回転軸に発生するモーメントも大きくなる。これが、構成部品の間での変位量や衝撃の大きさを増加させていると考えられる。さらに、成膜処理や加熱処理を行う真空雰囲気においては、回転支持機構の構成部品に熱変形が生じる。熱変形に起因する構成部品の間におけるずれや隙間の発生を実測することが難しい。このような部品の間に発生するずれや隙間が、構成部品の間での変位量や衝撃の大きさの増大に影響を与えていると考えられる。
【0013】
このため、本発明者は、以下の点を実現する構造を得ることが可能であれば、回転支持機構を構成する基板保持部を含む構成部品の間での変位や衝撃を抑制することができると考えた。
・基板保持部に発生する荷重の変動を抑制すること。
・回転軸に回転力を付与する減速機を構成する駆動ギアにおけるバックラッシの発生を抑制すること。
・回転軸のねじれの発生を抑制すること。
・基板保持部における撓み等の変形を抑制すること。
・回転支持機構の構成部品の間におけるクリアランスの変動を抑制すること。
・回転支持機構の構成部品の間におけるずれの発生を抑制すること。
・回転軸から鉛直方向に延びる線を跨ぐような基板保持部の移動を抑制すること。
【0014】
本発明の一態様に係る基板処理装置は、前記基板に表面処理を施す処理室と、前記処理室に隣接しかつ前記基板が通過する搬送口を有するとともに前記処理室における表面処理の際に前記基板を支持する後背室と、前記後背室内に配置され、前記処理室に対向するように立設されたマスクと、回転中心回りに回転可能な回転軸と、前記回転軸に取り付けられているとともに前記基板を前記後背室内で支持可能な基板保持部とを有しかつ前記基板を支持した前記基板保持部を水平搬送位置と成膜起立位置との間で回転させる回転支持機構と、を備える。前記基板の前記水平搬送位置においては、前記基板保持部は、前記搬送口を介して前記基板を水平方向に移動可能なように、前記水平方向に向くように前記基板を支持する。前記基板の前記成膜起立位置においては、前記基板保持部は、前記基板を表面処理する際に前記マスクに前記基板が対向するように前記基板を支持する。前記水平搬送位置から前記成膜起立位置に向かう前記基板保持部の回転方向において、前記成膜起立位置における前記基板保持部の重心の位置は、鉛直方向における前記回転軸の直上の位置を超えない。
【0015】
言い換えると、水平搬送位置から成膜起立位置まで基板保持部を回転させる回転駆動が行われても、成膜起立位置における基板保持部の水平方向における重心の位置は、回転方向において、回転軸から鉛直方向に延びる線を越えない。
また、回転方向において、水平方向における基板保持部の重心の位置は、回転軸から鉛直方向に延びる線を跨ぐように移動しない。
基板保持部の回転動作において、水平搬送位置における基板保持部の重心と成膜起立位置における基板保持部の重心との間の移動範囲は、回転軸から鉛直方向に延びる線を跨いでいない。
また、成膜起立位置において、水平方向における基板保持部の重心は、鉛直方向における回転軸の直上に位置するか、又は、回転方向において回転軸の直上の位置よりも僅かに手前の位置に達する。ここで、「僅かに手前の位置」とは、回転軸から鉛直方向に延びる線(90°)の位置に対してよりも僅かに少ない角度を意味する。
【0016】
上記の構成によれば、水平搬送位置から成膜起立位置に向かう基板保持部の回転駆動においては、基板保持部の重量に起因して回転軸に作用するモーメントの大きさは、基板保持部の回転に伴って変化する。しかし、水平方向における基板保持部の重心の位置は、回転軸から鉛直方向に延びる線を跨ぐように移動せず、鉛直方向における回転軸の直上の位置を超えない。
このため、回転軸に作用するモーメントの大きさが変化しても、水平搬送位置と成膜起立位置との間の回転において回転軸に作用するモーメントの向きは、逆方向に転換しない。すなわち、水平搬送位置から成膜起立位置に向かう基板保持部の回転駆動においては、水平搬送位置から成膜起立位置に向かう回転方向に対して逆方向に作用するモーメントが発生するが、回転方向に対して順方向にモーメントが発生することを防止できる。
【0017】
これにより、回転軸の回転による基板保持部の重心が移動しても、回転支持機構を構成する構成部品の間での変位や衝撃を抑制することができる。したがって、1800mmを超えるような長さの辺を有する大型基板が基板保持部によって支持された状態で基板保持部を回転した場合であっても、過大な衝撃の発生を抑制することができ、以下の効果を得ることができる。
・基板保持部に発生する荷重の変動を抑制することができる。
・回転軸に回転力を付与する減速機を構成する駆動ギアにおけるバックラッシの発生を抑制することができる。
・回転軸のねじれの発生を抑制することができる。
・基板保持部における撓み等の変形を抑制することができる。
・回転支持機構の構成部品の間におけるクリアランスの変動を抑制することができる。
・回転支持機構の構成部品の間におけるずれの発生を抑制することができる。
・回転軸から鉛直方向に延びる線を跨ぐような基板保持部の移動を抑制することができる。
【0018】
したがって、回転支持機構での衝撃に起因するパーティクルの発生を抑制することができ、衝撃に起因する基板の割れや欠け等を防止することができる。これにより、成膜等の基板に対する処理における処理特性を向上させることができる。
【0019】
さらに、回転支持機構における成膜起立位置において、基板保持部の重心は、鉛直方向における回転軸の直上に位置するか、又は、回転方向において回転軸の直上の位置よりも僅かに手前の位置に達する。このため、処理室が備える基板処理部と基板との間の距離変動を抑制することができる。また、基板保持部とマスクとの間の距離の変動を抑制することができる。これにより、基板保持部とマスクとの間の接触を防止することができる。また、基板処理する際に、基板の電位等の電気的状態の変化を防止することができる。これにより、成膜等の基板に対する処理における処理特性を向上させることができる。
【0020】
本発明の一態様に係る基板処理装置においては、前記回転支持機構は、前記回転軸と一体に設けられた台部と、前記基板保持部と一体に設けられたフランジ部と、前記フランジ部を貫通して前記台部に締結される締結部材と、を備える。前記台部は、前記フランジ部に当接する第1取付平面を有する。前記フランジ部は、前記台部に当接する第2取付平面を有する。前記第1取付平面は、前記回転軸の軸方向と、前記回転軸の外周面に対する接線方向とに沿う面である。前記第1取付平面と前記第2取付平面とが当接した状態で、前記第2取付平面と交差する方向に前記フランジ部を貫通する前記締結部材によって前記基板保持部が前記回転軸に締結されてもよい。
【0021】
上記の構成によれば、回転軸と基板保持部とが締結される締結箇所においては、締結摩擦面が生じている。このような締結摩擦面において発生する滑り等のずれが発生する方向、つまり、回転軸と基板保持部とが互いにずれる方向を、第1取付平面と第2取付平面とに沿った方向にすることができる。このため、回転軸の回転方向における基板保持部の回転位置に依存することなく、回転軸と基板保持部とが互いにずれる方向を限定することができる。回転軸と基板保持部とが互いにずれる可能性を低減することができる。
また、回転軸と基板保持部との間のずれが発生する基板保持部の成膜起立位置では、締結箇所が基板保持部における最も下方に位置する。このため、基板保持部の最も下方での位置におけるずれの発生を抑制することができ、回転支持機構の構成部品の間での変位や衝撃を小さくすることができる。特に、回転軸と基板保持部との間での変位や衝撃を小さくすることができる。
【0022】
なお、従来の基板保持部と回転軸との固定構造においては、径方向外側において回転軸に形成されたフランジ部と、基板保持部に形成されているとともにフランジに接触する締結面とが、回転軸に平行に延在する締結部材により締結されていた。この構造においては、フランジ部と締結面との間の締結摩擦面において、フランジ部と締結面とが回転軸の周方向にて互いにずれてしまう。
これに対し、上記の構成によれば、第2取付平面と交差する方向において締結部材がフランジ部を貫通し、締結部材によって基板保持部が回転軸に締結されている。したがって、回転軸の周方向におけるずれが発生しない構造が得られている。
【0023】
本発明の一態様に係る基板処理装置においては、前記第1取付平面には、第1係合部が形成されている。前記第2取付平面には、第2係合部が形成されている。前記第1取付平面と前記第2取付平面とが当接した状態で、前記第1係合部と前記第2係合部とは互いに係合してもよい。
【0024】
上記の構成によれば、第1取付平面と第2取付平面とが互いに滑ってしまうといったずれの発生を防止することができる。特に、回転支持機構では、回転軸に対して基板保持部が重力に応じて落下する方向におけるずれの発生を防止することができる。このため、第1係合部及び第2係合部は、摺動防止部と称することができる。
このような第1係合部及び第2係合部を利用して、回転軸に対する基板保持部の取り付け時における作業性を向上し、作業時間を短縮することができる。なお、摺動防止部は、水平搬送位置における第1取付平面と第2取付平面との下端位置に形成することができる。
【0025】
本発明の一態様に係る基板処理装置においては、前記回転支持機構は、前記水平搬送位置から前記成膜起立位置まで前記基板保持部を回転させる回転駆動において前記基板保持部を前記成膜起立位置で停止させる非接触停止部を有してもよい。
【0026】
上記の構成によれば、回転軸の回転駆動に伴って基板保持部が水平搬送位置から成膜起立位置に向けて回転した際に、非接触停止部は、マスク等の部材と基板保持部とが接触しないように基板保持部の回転を停止することができる。これにより、マスク等の部材と基板保持部が接触しないので、基板保持部における衝撃に起因するパーティクルの発生を防止することができる。したがって、パーティクルの発生が防止された雰囲気において、基板に表面処理を施すことが可能となる。さらに、回転軸の回転駆動を容易に制御することができる。
【0027】
本発明の一態様に係る基板処理装置においては、前記マスクは、前記処理室と前記後背室との間の境界位置と、前記成膜起立位置にある前記基板との間に配置されてもよい。
【0028】
上記の構成によれば、後背室を形成するチャンバ壁に回転軸を取り付けるための位置的な余裕を十分に有するように、回転軸を回転支持機構に配置することができる。ここで、成膜起立位置においては、回転軸は、マスクに沿って立ち上がっている基板保持部の直下の位置を支持している。また、後背室の外部に配置された回転駆動源から出力される動力を基板保持部に伝達するために、回転軸を後背室のチャンバ壁を貫通させる必要がある。さらに、回転軸回りには、シール部材等をチャンバ壁に配置する必要がある。このため、後背室のチャンバ壁を貫通するように後背室に取り付けられる回転軸の配置においては、位置的な余裕を十分に有することが必要である。
ここで、位置的な余裕がある回転軸の配置としては、例えば、後背室のチャンバ壁において回転軸が貫通する位置が処理室と後背室との間の境界位置に近接し過ぎていない配置、又は、後背室のチャンバ壁において回転軸が貫通する位置が、後背室のチャンバ壁の底部に近接し過ぎていない配置等が例示できる。
これにより、マスクが処理室と後背室との間の境界位置に近接した場合に発生する問題点、つまり、後背室を形成するチャンバ壁に回転軸を取り付けるための位置的な余裕がなくなってしまうという問題を解消することができる。
【0029】
本発明の一態様に係る基板処理装置においては、前記処理室は、前記マスクに対向するとともに前記基板に表面処理を行う基板処理部を有する。前記基板処理部は、前記処理室と前記後背室との間の境界位置から前記後背室に向かって突出してもよい。
【0030】
具体的に説明すると、処理室及び後背室の各々は、接続端を有している。処理室の接続端と後背室の接続端とが接続する位置は、処理室と後背室との間の境界位置に相当する。ここで、処理室と後背室とが互いに分離された状態では、処理室の接続端は、後背室の接続端から離間する。このような分離状態では、基板処理部は、処理室の接続端から突出している。
したがって、処理室及び後背室のメンテナンスを行う際など、処理室と後背室とを互いに分離した状態では、メンテナンスに用いられるクレーン等の吊り上げ機構を基板処理部の上方向における位置に容易に近接することができる。吊り上げ機構によって基板処理部を吊り上げて、基板処理部を処理室から上方向に容易に取り外すことが可能となり、基板処理部を処理室の外部へと移動させることができる。これにより、基板処理部の取り付けや取り外し等、メンテナンスに必要な作業を簡略化して容易に行うことができ、作業時間を短縮することができる。
【0031】
一方、処理室の接続端から突出することなく処理室の内部に基板処理部が配置されている構造では、基板処理部を取り外す際に、処理室と後背室との間の境界位置における開口部から、基板処理部を処理室から水平方向に移動させ、その後、基板処理部を処理室から上方向に移動させる必要がある。つまり、処理室から基板処理部を取り外すには、2段階の取り外し作業が必要となる。
これに対し、本発明の一態様に係る基板処理装置によれば、1段階の取り外し作業によって、基板処理部を処理室から上方向に容易に取り外すことが可能となる。
【0032】
ここで、基板処理部が蒸着源を有する場合には、蒸着源を移動することが容易となる。また、基板処理部がカソードユニットを有する場合には、カソードユニットを構成するバッキングプレートやターゲットを移動することが容易となる。
【0033】
本発明の一態様に係る基板処理装置においては、前記基板処理部は、蒸着源を有する。前記処理室において蒸着処理が行われてもよい。
【0034】
上記の構成によれば、蒸着によって基板に成膜する際に、回転支持機構における基板保持部の回転動作に起因して、処理される基板での割れや欠け等の発生による基板の破損を防止することができる。同時に、マスクと基板との間の距離を適正に維持して、成膜特性の悪化を防止することができる。同時に、パーティクルの発生を抑制することができ、成膜特性の悪化を防止することができる。
【0035】
本発明の一態様に係る基板処理装置においては、前記基板処理部は、カソード電極を有する。前記処理室においてスパッタ処理が行われてもよい。
【0036】
上記の構成によれば、スパッタリングによって基板に成膜する際に、回転支持機構における基板保持部の回転動作に起因して、処理される基板での割れや欠け等の発生による基板の破損を防止する。同時に、マスクと基板との間の距離を適正に維持して、スパッタリングに必要な電位状態を維持し、成膜特性の悪化を防止することができる。同時に、パーティクルの発生を抑制することができ、成膜特性の悪化を防止することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の一態様に係る基板処理装置によれば、搬送位置である水平搬送位置と処理位置である成膜起立位置との間で基板を回転する際に、回転支持機構を構成する構成部品の間での変位や衝撃を抑制することができる。さらに、基板の割れや欠けの発生防止、パーティクル発生抑制、基板及びマスクに対する基板処理部の距離を適正に維持することができ、基板の表面処理状態の変動を防止することができる。成膜等の基板に対する処理における処理特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置を示す模式平面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置における後背室及び処理室を示す模式側面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置における回転支持機構を示す模式側面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置における回転支持機構の要部を拡大して示す図であって、基板保持部と回転軸との間の締結構造を示す断面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置における回転支持機構の基板保持部を示す模式平面図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置における後背室及び処理室を示す模式側面図であって、基板に対する表面処理の工程を説明するための図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置における後背室及び処理室を示す模式側面図であって、基板に対する表面処理の工程を説明するための図である。
図8】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置における後背室及び処理室を示す模式側面図であって、基板に対する表面処理の工程を説明するための図である。
図9】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置における後背室及び処理室を示す模式側面図であって、基板に対する表面処理の工程を説明するための図である。
図10】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置における後背室及び処理室を示す模式側面図であって、基板に対する表面処理の工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置を、図面に基づいて説明する。
なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0040】
本実施形態では、XYZ直交座標系を設定して各構成の位置関係を説明する。重力方向、つまり、鉛直方向に平行な方向をZ方向と称する。Z方向のうち、重力方向に一致する方向を下方向(下方)、重力方向とは反対方向を上方向(上方)と称する。以下の説明において、「平面視」は、対象物を重力方向又は下方向に見ることを意味する。ガラス基板の搬送方向を水平方向又はX方向と称する。Z方向及びX方向に直交する方向をY方向と称する。
【0041】
<基板処理装置>
図1は、本実施形態における基板処理装置を示す模式平面図である。図1において、符号1は、基板処理装置である。基板処理装置1は、ガラスや樹脂からなる基板11に対して、真空環境下で加熱処理、成膜処理、エッチング処理等を行うインターバック式のスパッタリング装置や有機ELの製造に用いる蒸着装置に適用される。基板処理装置1は、例えば、FPD(Flat Panel Display)の製造工程に用いられる。この場合、基板11には、例えば、TFT(Thin Film Transistor)を形成することができる。本実施形態においては、基板処理装置1がスパッタリング装置である場合を説明する。言い換えると、基板処理装置1において行われる表面処理は、成膜処理であり、すなわち、スパッタ処理である。
【0042】
基板処理装置1は、成膜室4、4Aとロード・アンロード室2、2Aとを備える。複数のチャンバ2、2A、4、4Aは、搬送室(トランスファチャンバ)3の周囲を取り囲むように配置されている。複数のチャンバ2、2A、4、4Aの各々は、例えば、互いに隣接して形成された2つのロード・アンロード室(チャンバ)2、2A、及び2つの成膜室(チャンバ)4、4Aである。また、基板処理装置1は、基板処理装置1を制御する不図示の制御装置を有する。制御装置は、成膜室4、4A及びロード・アンロード室2、2Aにおける動作を制御する。後述するように、制御装置は、成膜室4、4Aにおける回転支持機構10の回転動作を制御する。
【0043】
<ロード・アンロード室>
例えば、一方のロード・アンロード室2は、基板処理装置1の外部から内部に向けてガラス基板11を搬入するロード室として機能する。他方のロード・アンロード室2Aは、基板処理装置1の内部から外部に向けてガラス基板11を搬出するアンロード室として機能する。また、成膜室4と成膜室4Aとにおいては、同じ成膜工程が行われてもよいし、互いに異なる成膜工程が行われてもよい。ガラス基板11は、「基板」の一例である。
【0044】
ロード・アンロード室2と搬送室3との間、ロード・アンロード室2Aと搬送室3との間、成膜室4と搬送室3との間、及び成膜室4Aと搬送室3との間には、それぞれ、仕切りバルブが配置されている。
【0045】
ロード・アンロード室2には、位置決め部材が配置されている。位置決め部材には、ロード・アンロード室2の外部から内部に搬入されたガラス基板11が載置される。位置決め部材は、ガラス基板11の位置を設定して、ガラス基板11のアライメントを可能としている。ロード・アンロード室2には、ロード・アンロード室2の内部空間を減圧する(粗真空引きする)粗引き排気部が接続されている。粗引き排気部は、例えば、ロータリーポンプ等である。
【0046】
<搬送室>
図1に示すように、搬送室3は、搬送室3の内部に配置された搬送装置3aを備える。搬送装置3aは、例えば、搬送ロボットである。
搬送装置3aは、回転軸と、回転軸を回転駆動する駆動源と、回転軸に取り付けられたロボットアームと、ロボットアームの一部に形成されたロボットハンドと、上下動機構とを有している。ロボットアームは、互いに交差した第1移動レール及び第2移動レールと、第1移動レールに対して第2移動レールを移動可能な第1ベースと、第2移動レールに対してロボットハンドを移動可能な第2ベースとを備える。搬送装置3aは、被搬送物であるガラス基板11を、チャンバ2、2A、3、4、4A間で移動させることができる。
なお、ロボットアームは、互いに屈曲可能な第1能動アーム、第2能動アーム、第1従動アーム、及び第2従動アームから構成されていてもよい。
【0047】
<成膜室>
成膜室4、4Aは、同じ構成を有する。以下では、成膜室4について説明し、成膜室4Aの説明を省略する。
図2は、本実施形態における成膜室4の一部を示す模式側面図である。
図1及び図2に示すように、成膜室4は、電源4pと、ガス雰囲気設定機構4gと、カソードユニット5とを備える。電源4p、ガス雰囲気設定機構4g、及びカソードユニット5は、ガラス基板11に対して成膜処理を行うために用いられる。電源4p、ガス雰囲気設定機構4g、及びカソードユニット5は、「基板処理部」の一例である。なお、基板処理部を基板処理機構と称してもよいし、成膜源と称してもよい。
成膜室4は、プラズマチャンバ4m及びプラテンチャンバ4nによって構成されている。
【0048】
<電源、ガス雰囲気設定機構>
電源4pは、後述するカソードユニット5のバッキングプレート6に接続されている。電源4pは、バッキングプレート6に負電位のスパッタ電圧を印加する。
ガス雰囲気設定機構4gは、成膜室4の内部におけるガス雰囲気を設定するように構成されている。
ガス雰囲気設定機構4gは、成膜室4の内部に処理ガスを導入するガス導入部と、成膜室4の内部空間を減圧する(高真空引きする)高真空排気部とを有する。ガス導入部は、ガス供給源に接続されている。ガス導入部は、例えば、ガス供給源から供給されるガスの流量を調整するマスフローコントローラである。高真空排気部は、例えば、ターボ分子ポンプ等である。
【0049】
<カソードユニット>
カソードユニット5は、成膜室4の内部に立設されている。
カソードユニット5は、ターゲット7と、ターゲット7を保持するバッキングプレート6とを有する。
バッキングプレート6は、カソード電極として機能する。バッキングプレート6は、成膜室4の内部において、搬送室3と成膜室4との間に位置する搬送口4aから最も遠い位置に立設される。
バッキングプレート6の前面側には、ガラス基板11を処理する際にガラス基板11と略平行に対面するターゲット7が固定される。バッキングプレート6は、ターゲット7に対して負電位のスパッタリング電圧を印加するための電極である。
【0050】
バッキングプレート6の後面側には、ターゲット7上に所定の磁場を形成するためのマグネトロン磁気回路が設置されている。マグネトロン磁気回路は、揺動機構に装着されている。揺動機構は、マグネトロン磁気回路を揺動させる駆動装置を有する。揺動機構の駆動装置は、マグネトロン磁気回路を揺動可能に構成されている。
【0051】
<カソードユニットの変形例>
カソードユニット5の変形例として、複数のロータリーカソードが成膜室4に適用されてもよい。複数のロータリーカソードの構成としては、複数の円筒状のカソードを並列に配置し、各カソードの外周面にターゲットが設けられた構成を採用することができる。複数のロータリーカソードの各々は、円筒軸周りに回転可能であってもよい。成膜室4は、ガラス基板11を処理する際に複数のロータリーカソードに対してマグネトロン磁気回路をガラス基板11と略平行に揺動させる揺動機構を備えてもよい。
【0052】
<プラズマチャンバ、プラテンチャンバ>
プラズマチャンバ4mには、カソードユニット5を構成するターゲット7及びバッキングプレート6が配置されている。プラズマチャンバ4mにおいては、ガラス基板11に対して成膜処理が施される。すなわち、プラズマチャンバ4mは、「処理室」の一例である。
プラテンチャンバ4nは、X方向においてプラズマチャンバ4mに隣接している。プラテンチャンバ4nは、搬送口4aを有する。搬送口4aは、X方向におけるガラス基板11の搬送の際にガラス基板11が通過する開口である。プラテンチャンバ4nは、搬送口4aを介して搬送室3に隣接されている。搬送口4aには、仕切りバルブが配置されている。仕切りバルブの開閉により、プラテンチャンバ4nと搬送室3とが連通したり、搬送室3に対してプラテンチャンバ4nが隔離されたりする。プラテンチャンバ4nは、プラズマチャンバ4mにおける成膜処理の際にガラス基板11を支持する。すなわち、プラテンチャンバ4nは、「後背室」の一例である。
【0053】
プラズマチャンバ4mは、プラテンチャンバ4nに開口する開口部40と、開口部40を囲む接続端41とを有する。接続端41は、プラテンチャンバ4nの接続端43に接続される部位である。
プラテンチャンバ4nは、プラズマチャンバ4mに開口する開口部42と、開口部42を囲む接続端43とを有する。接続端43は、にプラズマチャンバ4mの接続端41に接続される部位である。
接続端41及び接続端43は、互いに対向するように接続されている。接続端41及び接続端43が接続することで、プラズマチャンバ4mとプラテンチャンバ4nとが組み立てられ、成膜室4が形成されている。また、接続端41と接続端43とが接続されていることで、開口部40及び開口部42は互いに連通する。これにより、プラズマチャンバ4mとプラテンチャンバ4nとの間で内部空間44が形成されている。接続端41及び接続端43の接続により、内部空間44は密閉されている。
内部空間44の密閉構造においては、接続端41及び接続端43のうち一方にOリングが配置され、接続端41及び接続端43のうち他方にシール面が形成されている。接続端41と接続端43とが互いに接続されている面は、ドッキング面4dである。ドッキング面は、「処理室と後背室との間の境界位置」の一例である。
【0054】
プラズマチャンバ4mは、ターゲット7及びバッキングプレート6を有する。ターゲット7及びバッキングプレート6は、後述するマスク20に対向している。プラズマチャンバ4mに設けられているターゲット7及びバッキングプレート6は、ドッキング面4d(接続端41)からプラテンチャンバ4nに向けて突出している。
言い換えると、ターゲット7及びバッキングプレート6は、プラズマチャンバ4mの内部には配置されていない。
なお、本実施形態においてドッキング面4dの形状は、略平面である。ドッキング面4dの形状は、平面に限定されない。プラズマチャンバ4mの開口部40の形状及びプラテンチャンバ4nの開口部42の形状に応じて、ドッキング面4dの形状が決定されてもよい。
【0055】
<前側空間、裏側空間>
成膜室4の内部空間44は、図1及び図2に示すように、X方向において並ぶ前側空間45と裏側空間46とを有する。前側空間45は、成膜時にガラス基板11の成膜面が露出する表面に面する空間である。
前側空間45は、プラズマチャンバ4mの内部空間とプラテンチャンバ4nの内部空間との組み合わせによって形成されている。すなわち、前側空間45は、マスク20よりもプラズマチャンバ4mに近接するプラテンチャンバ4nの接続端43で囲まれた開口部42と、プラズマチャンバ4mの接続端41で囲まれた開口部40とによって形成されている。
裏側空間46は、プラテンチャンバ4nの主な内部空間である。裏側空間46は、成膜時にガラス基板11の裏面に面する空間である。
このような前側空間45及び裏側空間46は、プラズマチャンバ4mとプラテンチャンバ4nとで組み立てられた成膜室4の密閉状態での内部空間44を形成している。
【0056】
図2において、符号4bで示された位置は、成膜室4における前側空間45と裏側空間46との間の境界位置である。境界位置4bには、マスク20が配置されている。成膜室4の前側空間45には、ターゲット7が固定されたバッキングプレート6が配置される。
成膜室4の裏側空間46には、搬送口4aから搬入されたガラス基板11を支持した状態でガラス基板11を回転させる回転支持機構10が配置される。回転支持機構10をプラテン機構と称することができる。
【0057】
X方向において、成膜室4における前側空間45と裏側空間46との間の境界位置4bは、プラズマチャンバ4mの接続端41とプラテンチャンバ4nの接続端43とが合わさるドッキング面4dの位置よりも、搬送口4aの位置に近い。
【0058】
なお、プラズマチャンバ4m及びプラテンチャンバ4nは、X方向において互いに分離可能である。プラズマチャンバ4m及びプラテンチャンバ4nが分離した状態では、マスク20は、プラテンチャンバ4nの内部に配置されており、ターゲット7及びバッキングプレート6は、プラズマチャンバ4mの内部に配置される。
【0059】
<マスク>
マスク20は、プラテンチャンバ4nの内部に配置されている。プラテンチャンバ4nの内部において、マスク20の位置は、ドッキング面4dの位置よりも搬送口4aの位置に近い。言い換えると、マスク20は、ドッキング面4dと成膜起立位置にあるガラス基板11との間に配置されている。マスク20は、プラズマチャンバ4mに対向するように立設されている。
マスク20は、略矩形のマスクフレームと、縦方向及び横方向に延在するようにマスクフレームに張られた複数のリブと、を有する。複数のリブは、マスクフレームの内側領域を区画する。
マスクフレームは、剛性を有するSUS等の金属で形成されている。リブは、インバー等とされる金属箔で形成されている。マスクフレームによってリブの両端が引っ張られた状態で、マスクフレームにリブが固定されている。マスクフレームの内側においては、縦方向及び横方向に張られた複数のリブによって囲まれた領域が、成膜領域である。
【0060】
マスク20は、成膜口20bを有する。成膜口20bは、マスクフレームによって形成された開口部分である。成膜口20bは、前側空間45と裏側空間46との間の境界位置4bに開口している。
マスク20は、マスク支持部20gを有する。マスク支持部20gは、マスクフレームにおけるZ方向の両端と、マスクフレームにおけるY方向の両端とに設けられている。マスク20は、マスク支持部20gによって、プラテンチャンバ4nに支持されている。このとき、マスクアライメント部(不図示)によって、成膜前工程において、マスク20の位置をアライメントすることが可能である。
【0061】
<回転支持機構、回転軸、基板保持部>
回転支持機構10は、回転軸12と、基板保持部13とを有する。回転軸12は、回転中心回りに回転可能である。基板保持部13は、回転軸12に取り付けられている。基板保持部13は、例えば、プラテンである。基板保持部13が水平搬送位置にある場合、基板保持部13の形状は、Z方向に見て略矩形平板状である。
基板保持部13は、ガラス基板11の裏面をプラテンチャンバ4n内で支持可能である。回転支持機構10は、基板保持部13によってガラス基板11を支持しながら、水平搬送位置と成膜起立位置との間でガラス基板11を回転させることが可能である。
【0062】
より具体的に説明する。
基板保持部13が水平搬送位置にある場合、基板保持部13は、搬送口4aを介してガラス基板11を水平方向に移動可能なように、X方向に向くようにガラス基板11を支持する。具体的に、回転支持機構10が基板保持部13を水平搬送位置に配置した場合には、ガラス基板11を搬送口4aから成膜室4の内部に搬入することが可能であり、及び、ガラス基板11を搬送口4aから成膜室4の外部への搬出することが可能である。つまり、水平搬送位置においては、回転支持機構10は、ガラス基板11を支持する支持状態を維持し、かつ、支持状態を解除する。
【0063】
ガラス基板11を保持した基板保持部13が成膜起立位置にある場合、基板保持部13は、マスク20にガラス基板11が対向するようにガラス基板11を支持する。この状態で、回転支持機構10は、成膜中にターゲット7と対向するようにガラス基板11を保持(支持)し、ガラス基板11に対して成膜処理が施される。
【0064】
図3は、本実施形態に係る回転支持機構10における基板保持部13を示す模式側面図である。図3は、基板保持部13が水平搬送位置にある状態を示している。
回転支持機構10は、図2及び図3に示すように、プラテンチャンバ4nの内部の裏側空間46における下方に位置する。
回転軸12は、Y方向に延在している。回転軸12は、搬送口4a及びドッキング面4dのうち少なくとも一方と略平行である。
【0065】
<回転駆動部>
図2に示すように、回転軸12には回転駆動部12Aが接続されている。回転駆動部12Aは、回転軸12を回転中心周りに回転可能とする。回転駆動部12Aは、モータ等の回転駆動源と、回転駆動源の駆動力を回転軸12へと伝達する減速機等の回転伝達部と、を有する。
回転軸12は、プラテンチャンバ4nを形成する側壁を貫通している。回転軸12は、プラテンチャンバ4nの裏側空間46を形成する側壁を貫通している。回転軸12がプラテンチャンバ4nの側壁を貫通する位置は、ドッキング面4dから十分に離間している。
回転駆動部12Aは、成膜室4の外側に配置されている。回転駆動部12Aは、Y方向における回転軸12の両端に接続されている。つまり、回転駆動部12Aは、回転軸12の一端(第1端)と他端(第2端)の2箇所に接続されている。このような回転駆動部12Aと回転軸12との接続構造について、以下に具体的に説明する。
【0066】
基板保持部13及びフレーム部14の重量に起因するモーメント荷重は、回転軸12に作用する。特に、基板保持部13が水平搬送位置に配置されている場合、基板保持部13及びフレーム部14のモーメント荷重は、回転軸12に大きく作用する。
例えば、回転軸12を回転させる回転駆動部12Aが回転軸12の一端のみに接続されている場合においては、基板保持部13及びフレーム部14のモーメント荷重に起因して、回転軸12の一端から他端に向かうような捻じれ変形が回転軸12に生じてしまう。モーメント荷重に起因する回転軸12の回転軸周りの変位量(変形量)が生じる回転軸12の位置に着目して説明すると、回転軸12の一端の位置から他端の位置に向けて変位量が増加するように回転軸12が変形する。このような回転軸12における捻じれ変形に伴って、回転軸12の一端に接続されているフレーム部14と、回転軸12の他端に接続されているフレーム部14との間には、ずれが生じてしまう。
【0067】
これに対し、本実施形態に係る回転駆動部12Aと回転軸12との接続構造においては、回転駆動部12Aが回転軸12の両端に接続されている。このような接続構造においては、回転軸12の一端のみに回転駆動部12Aが接続されている構造に比較して、回転軸12における捻じれ変形の発生が抑制される。言い換えると、モーメント荷重に起因する回転軸12の回転軸周りの変位量(変形量)は、回転軸12の一端と回転軸12の他端とにおいて、同じとなる。これにより、回転軸12の一端に接続されているフレーム部14と、回転軸12の他端に接続されているフレーム部14との間には、ずれが生じることがない。
さらに、本実施形態に係る接続構造においては、回転軸12にかかる荷重は、回転軸12の一端及び他端の2箇所に分散される。したがって、回転軸12に生じる応力を低減することができる。このような構造によれば、より大きな重量を有する基板保持部13を回転させることが可能である。例えば、本実施形態に係る接続構造を、より大型化したガラス基板11を処理する基板処理装置に適用することができる。
【0068】
<回転軸と基板保持部との締結構造>
図4は、本実施形態に係る回転支持機構10の要部を拡大して示す図であって、基板保持部13と回転軸12との間の締結構造を示す断面図である。図5は、本実施形態に係る回転支持機構10を示す模式平面図である。なお、図4及び図5は、基板保持部13が水平搬送位置にある状態を示している。
図2図4に示すように、回転軸12には、台部12a及びフレーム部14を介して、基板保持部13が取り付けられる。
【0069】
台部12a及びフレーム部14は、回転軸12に基板保持部13を取り付ける取り付け構造を形成する。
回転軸12に基板保持部13が取り付けられた状態では、基板保持部13のXY方向における平面と、回転軸12のY方向における軸線とが若干離間しており、一致しない。基板保持部13は、回転軸12の回転中心周りの回動に追従して回転する。これにより、基板保持部13は、基板保持部13によって保持されたガラス基板11を、回転軸12の回転中心周りに回転移動させることが可能である。
【0070】
回転支持機構10は、基板保持部13を回転軸12に取り付ける締結構造を有する。
図3図5に示すように、締結構造は、台部12aと、フレーム部14と、複数のボルト15と、を有する。ボルト15は、「締結部材」の一例である。
【0071】
<台部>
台部12aは、回転軸12と一体に設けられている。台部12aは、回転軸12に溶接等により固定接続されてもよい。あるいは、台部12aは、削り出し等の加工により回転軸12と一体に形成されてもよい。台部12aは、回転軸12の直径よりも大きい形状を有するブロック状に形成されている。
台部12aは、後述するフランジ部14fに当接する第1取付平面16aを有する。第1取付平面16aは、Y方向に延在する回転軸12の軸方向と、回転軸12の外周面に対する接線方向であるX方向とに沿う面である。台部12aには、ボルト15に対応する雌ネジ部が形成されている。雌ネジ部は、第1取付平面16aに開口する。
【0072】
<フレーム部>
フレーム部14は、基板保持部13と一体に形成されている。フレーム部14は、径アーム部14rと、軸アーム部14aとを有する。径アーム部14rは、X方向に延在している。言い換えると、径アーム部14rは、回転軸12の径方向に延在している。軸アーム部14aは、Y方向に延在している。言い換えると、軸アーム部14aは、回転軸12の軸方向に延在している。
【0073】
フレーム部14の径アーム部14rと軸アーム部14aとは、平面視において矩形形状の基板保持部13に対応するように、矩形の枠体を形成している。径アーム部14rは、基板保持部13の矩形形状の回転軸12の軸方向における両端に沿って2本設けられている。軸アーム部14aは、回転軸12の軸方向に延在するように、例えば、2本設けられている。径アーム部14rには、Y方向に見て、フレーム部14のZ方向の中央には、フレーム部14を貫通する窓部14bが形成されている。窓部14bを形成することによって、回転支持機構10の軽量化を図ることができる。さらに、回転支持機構10において、回転軸12から離間する位置にある先端13aに近い部分の軽量化を図ることができる。
【0074】
<フランジ部>
フレーム部14は、回転軸12に近接する両端位置に形成された2つのフランジ部14fを有する。フランジ部14fは、基板保持部13と一体に設けられている。2つのフランジ部14fの各々は、径アーム部14rと軸アーム部14aと一体に形成されている。フランジ部14fは、第1取付平面16aに沿って形成されている。フランジ部14fは、径アーム部14rの回転軸12のY方向における両側に設けられている。フランジ部14fには、ボルト15に対応する貫通孔が形成されている。
【0075】
フランジ部14fは、台部12aに当接する第2取付平面16bを有する。
第1取付平面16a及び第2取付平面16bの各々は、平面を有するように形成されている。第1取付平面16a及び第2取付平面16bは、略等しい矩形状に形成されている。
【0076】
<凸部、凹部>
第1取付平面16a及び第2取付平面16bの各々には、摺動防止部17が形成されている。具体的に、摺動防止部17は、互いに係合する凸部及び凹部である。
本実施形態においては、摺動防止部17として、第1取付平面16aに凸部17aを形成されており、第2取付平面16bに凹部17bが形成されている。凸部17aは、「第1係合部」の一例である。凹部17bは、「第2係合部」の一例である。
【0077】
凸部17aは、Z方向における第1取付平面16aの下端に形成されている。ここで、下端とは、基板保持部13の平面が水平方向となる水平搬送位置にある場合、重力方向の下方における位置である。凸部17aは、回転軸12の軸線方向に平行に延在する突条部である。
同様に、凹部17bは、Z方向における第2取付平面16bの下端に形成されている。凹部17bは、回転軸12の軸線方向に平行に延在する凹溝、あるいは、段差部である。
第1取付平面16aと第2取付平面16bとが当接した状態で、凸部17aと凹部17bとは互いに係合している。
【0078】
<ボルト>
フレーム部14と回転軸12とは、複数のボルト15によって締結されている。第1取付平面16aと第2取付平面16bとが当接した状態で、ボルト15は、第1取付平面16a及び第2取付平面16bと交差する方向において、フランジ部14fの貫通孔を貫通し、台部12aに締結されている。複数のボルト15により、基板保持部13が回転軸12に締結されている。
【0079】
ボルト15が締結される方向、つまり、ボルト15がフランジ部14fの貫通孔に挿入される方向及びボルト15が雌ネジ部に螺着される方向は、第1取付平面16a及び第2取付平面16bと直交する方向(X方向)であることが好ましい。複数のボルト15は、基板保持部13の平面が水平方向となる水平搬送位置にある場合、Z方向に並ぶように配置されている。複数のボルト15のうち互いに隣り合う2つのボルト15は、離間している。複数のボルト15による締結により、フランジ部14fが台部12aに押圧され、フランジ部14fと台部12aとが締結されている。台部12aの雌ネジ部に螺着される複数のボルト15の方向は、互いに平行である。
【0080】
<非接触停止部>
回転支持機構10は、非接触停止部10mgを有する。非接触停止部10mgは、水平搬送位置から成膜起立位置まで基板保持部13を回転させる回転駆動において、基板保持部13を成膜起立位置で停止させるように構成されている。言い換えると、非接触停止部10mgは、水平搬送位置から成膜起立位置に向けて回転した基板保持部13の動きを成膜起立位置において停止させる機能を有する。非接触停止部10mgは、基板保持部13の先端13aに設けられている。
【0081】
非接触停止部10mgは、成膜起立位置にある基板保持部13対応するように、マスク20の上部にも配置される。言い換えると、基板保持部13の先端13aに配置された非接触停止部10mgは、第1非接触停止部である。マスク20の上部に配置された非接触停止部10mgは、第2非接触停止部である。第1非接触停止部及び第2非接触停止部は、例えば、互いに反発する磁石である。第1非接触停止部及び第2非接触停止部は、互いに対向している。第1非接触停止部及び第2非接触停止部を構成する磁石の極性は、互いに同じである。
【0082】
あるいは、非接触停止部10mgの構成として、例えば、互いに引き合う極性を有する磁石が採用されてもよい。この場合、基板保持部13の先端13aには、第1非接触停止部が配置される。マスク20の上部付近の領域において、基板保持部13の回転範囲の外側には、第2非接触停止部が配置される。第1非接触停止部を構成する磁石の極性は、第2非接触停止部を構成する磁石の極性とは異なる。このため、基板保持部13が成膜起立位置にある場合、基板保持部13の先端13aに配置された第1非接触停止部は、基板保持部13の回転範囲の外側に配置された第2非接触停止部に引き付けられる。
【0083】
<水平搬送位置、成膜起立位置>
図2に示すように、基板保持部13は、回転駆動部12Aによって回転軸12の回転中心周りの回動により、回転動作が可能である。基板保持部13は、水平搬送位置と成膜起立位置との間で回転動作するように、基板保持部13の回転可能範囲が設定される。図2においては、この回転可能範囲Rrが円弧状の破線で示されている。
【0084】
ここで、水平搬送位置(臥位)とは、成膜室4へとガラス基板11を移動する際に、プラテンチャンバ4nと成膜室4の外部との間でガラス基板11が移動可能なように、基板保持部13を水平状態に維持した位置である。水平搬送位置では、基板保持部13が、回転軸12よりも若干上方の位置かつ略水平方向位置とされた水平載置位置に配置される。
【0085】
また、成膜起立位置(立位)とは、後背室4nの内部で支持するガラス基板11に表面処理を施す際に、ガラス基板11がマスク20に対向するようにマスク20に沿って基板保持部13が起立した位置である。成膜起立位置では、基板保持部13が回転軸12の直上に位置する。ここで、このような成膜起立位置においては、つまり、基板保持部13が回転軸12の直上に位置する場合においては、基板保持部13の重心Gvは、回転軸12の軸線12rから鉛直方向の上向きに延びる直線RLを超えていない。言い換えると、X方向において、基板保持部13の重心Gvは、直線RLとプラズマチャンバ4mとの間には位置しない。すなわち、水平搬送位置から成膜起立位置に向かう基板保持部13の回転駆動において、成膜起立位置における基板保持部13の重心Gvの位置は、直線RLを超えない。言い換えると、重心Gvの位置は、直線RL上あってもよいし、回転方向において直線RLの手前の位置にあってもよい。直線RLは、「鉛直方向における回転軸の直上の位置」の一例である。
【0086】
また、成膜起立位置では、基板保持部13の重心Gvが、回転軸12の軸線から鉛直方向の上向きに延びる直線RL上よりも、水平搬送位置における基板保持部13の重心Ghに若干近い位置にあってもよい。
成膜起立位置における基板保持部13の重心Gvと、水平搬送位置における基板保持部13の重心Ghとにおいては、基板保持部13がガラス基板11を保持した状態の重心が考慮されている。この重心に基づき、回転可能範囲が設定されている。重心Gvと重心Ghとが、回転軸12から鉛直方向に延びる直線RLに対して、同じ側にある。言い換えると、重心Gvと重心Ghは、直線RLと搬送口4aとの間に位置する。重心Gvと軸線12rとを結ぶ線分に重心Gvから下ろした垂線が交差する。
【0087】
回転支持機構10において、基板保持部13が水平載置位置にある場合、基板保持部13の表面の延長には、搬送口4aが位置する。この状態においては、搬送室3から水平搬送されたガラス基板11が回転支持機構10上に載置可能となる。
【0088】
一方、回転支持機構10において、基板保持部13が鉛直処理位置にある場合、基板保持部13の表面側において、図2に示すように、ガラス基板11の裏面から、ガラス基板11を支持可能である。基板保持部13の表面側は、ガラス基板11よりも大きい輪郭を有する。基板保持部13が鉛直処理位置(成膜起立位置)にある場合、基板保持部13の表面側は、ほぼ境界位置4bを塞ぐように位置する。この状態で、基板保持部13によって支持されたガラス基板11の表面11T(図8参照)がバッキングプレート6と対向し、ガラス基板11の表面11Tに対して成膜が可能となる。
【0089】
基板保持部13には、基板保持部13が水平搬送位置に回転された際に、ガラス基板11の裏面に当接して、ガラス基板11を支持する支持ピンが複数設けられている。支持ピンは、基板保持部13が水平搬送位置から成膜起立位置(鉛直処理位置)まで回転される間、及び、成膜起立位置(鉛直処理位置)にある際に、ガラス基板11をマスク20に押圧させることが可能である。複数の支持ピンは、ガラス基板11の裏面に対向するように基板保持部13の面上において複数個所に分散して配置されている。支持ピンは、ガラス基板11の裏面に作用する押圧力が調整可能とされている。支持ピンの先端には、樹脂で半球状に形成された当接部を有する。
【0090】
基板保持部13には、クランプが複数設けられている。クランプは、基板保持部13が水平搬送位置から成膜起立位置(鉛直処理位置)までの回転範囲において、ガラス基板11の周縁の端面に当接してガラス基板11を支持する。基板保持部13において、クランプは、基板保持部13の上面に載置されたガラス基板11の周縁となる位置に複数配置されている。クランプは、基板保持部13の周縁の外側となる位置に複数設けられている。クランプは、支持ピンにガラス基板11を載置した際に、ガラス基板11の周縁の端面に当接することで、ガラス基板11のアライメントを行う。
【0091】
複数のクランプの各々は、クランプ駆動移動装置(不図示)により、基板保持部13の中心に対して外側となる外側位置と、基板保持部13の中心に対して内側となる支持位置との間で、揺動可能とされている。クランプは、ガラス基板11の周縁の端面に当接した際に、ガラス基板11が基板保持部13から離間することを防止する。基板保持部13に対して、クランプが外側位置と支持位置との間で揺動することで、基板保持部13へのガラス基板11の載置と、基板保持部13からのガラス基板11の搬出と、を可能とする。
【0092】
支持ピンは、ガラス基板11の面と直交する方向に弾性力を付与した状態で、ガラス基板11の裏面に接触して、ガラス基板11の重量を支持する。これに対し、クランプは、ガラス基板11の面と平行な方向に弾性力を付与した状態で、ガラス基板11の端面に接触した状態でガラス基板11の重量を支持する。
【0093】
回転支持機構10は、リフトピン50と、このリフトピン50を上下動させるリフトピン移動装置(不図示)と、を有する。リフトピン50は、基板保持部13に設けられている。リフトピン50は、鉛直方向に延在する。リフトピン50は、基板保持部13の上面に沿ってほぼ均等な間隔となるように、複数配置されている。ガラス基板11が成膜室4(4A)に搬入される際、または、ガラス基板11が成膜室4(4A)から搬出される際に、リフトピン50は、水平搬送位置に配置された基板保持部13から上方に突出して、基板保持部13よりも上側に位置するガラス基板11を支持する。
【0094】
リフトピン50は、水平搬送位置にある基板保持部13よりも上方で、その先端がガラス基板11の裏面に当接して支持するとともに、鉛直下向きに移動して、ガラス基板11を基板保持部13に載置する。リフトピン50は、上昇位置においてその先端が基板保持部13の表面よりも上方に位置し、また、下降位置において基板保持部13の回転動作に干渉しない位置になる。リフトピン50は、基板保持部13に設けられてもよいし、プラテンチャンバ4nの底部に設けられてもよい。
【0095】
リフトピン移動装置は、成膜室4、4Aの外側に配置された駆動モータ等の駆動装置である。リフトピン移動装置は、駆動装置によりリフトピン50が伸長または退避する構成を有する。リフトピン50は、駆動装置によって、チャンバ4の密閉を維持した状態で駆動可能である。この構成により、成膜室4、4Aに対するガラス基板11の搬入または搬出の際に、基板保持部13と搬送装置3aのロボットハンドと間において、ガラス基板11を自在に受け渡すことが可能となる。
【0096】
<成膜方法>
次に、本実施形態に係る基板処理装置1において成膜する方法について説明する。
なお、以下の説明では、2つの成膜室4、4Aのうち、成膜室4において、回転支持機構10によって保持されたガラス基板11に対して成膜を行う基板処理について説明する。なお、ガラス基板11がマスク20に対向するようにガラス基板11を回転させる構造については、成膜室4、4Aにおいて同じであるため、成膜室4Aについては説明を省略する。
【0097】
まず、ガラス基板11は、基板処理装置1の外部から内部に搬入される。基板処理装置1の内部は、真空雰囲気に維持されている(図1参照)。基板処理装置1に搬入されたガラス基板11は、まず、ロード・アンロード室2の内部の位置決め部材に載置される。これにより、ガラス基板11が、位置決め部材上で所定位置にアライメントされる。
【0098】
次に、搬送室3では搬送装置3aが動作して、搬送装置3aのロボットハンドがロード・アンロード室2に挿入される。ロード・アンロード室2では、位置決め部材に載置されたガラス基板11が、搬送装置3aのロボットハンドで支持される。ガラス基板11は、搬送装置3aによって、ロード・アンロード室2から取り出される。そして、ガラス基板11は、搬送装置3aによって、搬送室3を経由して成膜室4へと搬送される。
【0099】
図6図8は、本実施形態における成膜室4で行われる工程を示す模式側面図である。なお、これらの図6図8において、上述した実施形態において説明した構成は省略されている場合がある。
まず、成膜室4では、図6に示すように、回転支持機構10において、回転駆動部12Aによって回転軸12が回転される。これにより、基板保持部13が水平搬送位置に配置される。その後、成膜室4の搬送口4aが開く。リフトピン移動装置によって、リフトピン50が基板保持部13の表面から突出した準備位置とされる。同時に、クランプは、基板保持部13の輪郭に沿って外側に開いた位置となり、基板保持部13の上側位置から退避している。
【0100】
この状態で、搬送装置3aのロボットハンドによって、図6の矢印Aで示すように、ガラス基板11は、搬送口4aを通って成膜室4へと到達する。ガラス基板11は、搬送装置3aのロボットハンドによってプラテンチャンバ4n内部の裏側空間46に搬送される。搬送装置3aのロボットハンドは、裏側空間46の回転支持機構10の基板保持部13上方でガラス基板11を支持している。
【0101】
まず、搬送装置3aのロボットハンドは、ガラス基板11を基板保持部13と略並行状態に支持する。この状態で、搬送装置3aのロボットハンドは、基板保持部13から突出した多数のリフトピン50の上側の位置にガラス基板11が到達するまで、図6の矢印Aで示すように、基板保持部13の面と平行な方向における横方から成膜室4の内側空間に向けてガラス基板11を挿入する。
【0102】
次いで、搬送装置3aのロボットハンドは、図6の矢印Bで示す向きに、基板保持部13に近接するように下降する。これにより、ガラス基板11は、基板保持部13の面内における所定の位置にアライメントされた状態となり、ガラス基板11は、基板保持部13のリフトピン50上に載置される。搬送装置3aからリフトピン50へとガラス基板11の受け渡しが行われる。次に、搬送装置3aのアームは、成膜室4から搬送室3へ後退し、成膜室4の搬送口4aが閉塞する。成膜室4は、ガス雰囲気設定機構4gの高真空排気部によって真空状態に減圧される。
【0103】
そして、リフトピン移動装置が、図6の矢印Bで示す向きに、リフトピン50を下降する。基板保持部13の下側にリフトピン50が格納されることによって、図7に示すように、ガラス基板11は基板保持部13に載置される。
このとき、基板保持部13では、支持ピンの先端に位置する当接部がガラス基板11の裏面11Bに当接してガラス基板11を支持する。
【0104】
次いで、クランプ駆動移動装置の駆動により、クランプが基板保持部13に近接する支持位置に揺動して、ガラス基板11の周縁の端面が複数のクランプに当接する。この状態で、クランプは、ガラス基板11を成膜処理位置にアライメントする。クランプは、ガラス基板11の周縁を係止する。これによって、ガラス基板11が回転支持機構10に保持される。この際、ガラス基板11の重量は、基板保持部13に設けられた支持ピンによって支持される。
【0105】
水平搬送位置にある基板保持部13がガラス基板11を支持した状態で、回転支持機構10の重心Ghは、図7に示すように、回転軸12と先端13aとの間に位置している。つまり、重心Ghは、図2及び図7に示すように、X方向において回転軸12よりも左側に位置する。
【0106】
次いで、回転駆動部12Aにより回転軸12が回動される。これにより、図7及び図8の矢印Cで示すように、台部12a及びフレーム部14を介して取り付けられた基板保持部13が、回転軸12の回転中心周りに回動する。これにより、基板保持部13は、成膜起立位置に達するように回転して立ち上がる。回転動作の間、ガラス基板11が支持ピン及びクランプに接触して基板保持部13に保持された状態が維持される。
【0107】
基板保持部13が成膜起立位置に到達すると、回転駆動部12Aによる回転軸12の制御によって回転動作を停止する。
このとき、基板保持部13が成膜起立位置に近接すると、先端13aに設けられた非接触停止部10mgの磁石と、マスク20の上部付近の非接触停止部10mgの磁石との間で、磁力の作用が生じる。互いの磁石による磁力の作用により、基板保持部13の回転を遅延させ、マスク20に基板保持部13が接触しないように、基板保持部13の回転移動を停止する。
【0108】
基板保持部13が成膜起立位置に達すると、ガラス基板11と基板保持部13とによって成膜口20bがほぼ閉塞された状態となる。成膜起立位置においては、水平方向で先端13aが回転軸12よりも搬送口4aに若干近接する。つまり、基板保持部13は、回転軸12から正確に鉛直方向の上向きとなる位置ではなく。ガラス基板11の表面11Tが若干上向きとなるように傾斜している。このときの傾斜角をチルト角という。
【0109】
成膜起立位置にある基板保持部13がガラス基板11を支持した状態では、回転支持機構10のX方向における重心Gvは、図8に示すように、X方向における回転軸12の位置よりもX方向における先端13aの位置の近くある。言い換えると、重心Gvは、図2及び図8において、X方向における回転軸12よりも若干左側位置にある。
重心Gvは、図2及び図8において、鉛直方向において回転軸12の回転中心を通る直線RLよりも若干左側位置にある。回転動作に伴う重心Ghから重心Gvまでの移動範囲は、回転軸12の回転中心からZ方向に延びる直線RLを跨ぐことがない。
【0110】
このように、直線RLに対して、水平搬送位置での重心Ghと、成膜起立位置での重心Gvとが、X方向において同じ側に位置している。具体的に、図8において、重心Gh、Gvは、直線RLの左側に位置する。言い換えると、重心Gh、Gvは、直線RLの右側に位置しない。このため、基板保持部13から回転軸12へ印加されるモーメント荷重(モーメント)は、回転動作に伴って、モーメント荷重の大きさは変化するが、回転軸12にかかるモーメント荷重が作用する方向が逆向きとなることはない。
【0111】
言い換えると、回転軸12にかかるモーメントは、「基板保持部13の重心」と「回転軸12と基板保持部13との間の距離」との積で表される。このモーメントは、図8に示す矢印Cの方向に基板保持部13が回転する場合、反時計回り方向に作用する。
回転方向において、重心Gvは、直線RLを超えないため、モーメントは、時計回り方向に作用することはない。
【0112】
したがって、回転軸12にかかるモーメントは、回転動作の終点で成膜起立位置に到達しても、回転動作の始点の水平搬送位置から回転動作中を通したモーメントの向きと同じ方向を維持している。このため、回転支持機構10を構成する構成部品の間の微小な隙間が互いに広がっていたとしても、基板保持部13の重心移動による作用モーメントの向きが変化することが無いため、構成部品の間の微小な隙間が狭まることによる衝撃が発生させることがない。これにより、回転軸12の回転により基板保持部13の重心移動が生じたとしても、回転支持機構10では、構成部品の間での変位や衝撃の発生を抑制することができる。
【0113】
基板保持部13が成膜起立位置に到達するのとほぼ同時に、図8に示すように、ガラス基板11がマスク20に近接する。ガラス基板11は、プラテンチャンバ4nの内部で、前側空間45と裏側空間46との間の境界位置4bに近接する。
この状態で、マスクアライメント部によってマスク20のアライメントが行われる。マスクアライメント部は、とガラス基板11との面内における位置をアライメントする。具体的には、撮像装置(不図示)によって、マスク20とガラス基板11との面内における相対位置を検出する。この検出結果に基づいて、マスクアライメント部によってマスク20を駆動して、マスク20とガラス基板11との輪郭の位置合わせを行う。
【0114】
マスク20の面内における位置のアライメントが終了した後、同様に、マスクアライメント部は、マスク20の面に対して鉛直な方向にマスク20を移動する。これにより、マスク20をガラス基板11に当接させる。このとき、成膜起立位置(鉛直処理位置、成膜起立位置)にある基板保持部13は、鉛直処理位置から移動しない。ガラス基板11に対してマスク20を近づけるために、マスク20がガラス基板11に近接する方向に移動するようにマスク20が駆動される。これにより、マスク20がガラス基板11と接触する。
【0115】
このとき、ガラス基板11には、ガラス基板11の自重を支持する以外の押圧力が、支持ピンから作用していない状態となる。
さらに、ガラス基板11にマスク20が接触した後にも、ガラス基板11に対してマスク20を密着させる。このために、マスク20の面と鉛直な方向においてマスク20とガラス基板11とがさらに近接するように、マスク20を駆動する。このとき、成膜起立位置となった基板保持部13は駆動しない。
マスク20の移動により、マスク20に接触しているガラス基板11がマスク20によって押圧される。これにより、ガラス基板11を介して支持ピンとクランプとが押圧される。
【0116】
このように、基板保持部13が成膜起立位置に回転されて、ガラス基板11とマスク20とを密着した状態とする。同時に、プラテンチャンバ4nの内部で、前側空間45と裏側空間46との間の境界位置4bが塞がれる。境界位置4bでは、マスクフレーム20aによって形成された開口部分である成膜口20bからガラス基板11が前側空間45に向けて露出する。ガラス基板11は、バッキングプレート6に対向した位置に配置される。バッキングプレート6は、ガラス基板11に対向する向きに対して、その周囲がプラテンチャンバ4nの壁部によって囲まれている。
【0117】
基板保持部13が成膜起立位置に配置された際、回転支持機構10に保持されたガラス基板11は、マスク20と密着する。基板保持部13が成膜起立位置に配置された際、ガラス基板11は、ガラス基板11の表面11Tとバッキングプレート6の表面とが略平行な状態で保持される。この状態で成膜室4内の前側空間45において成膜工程が行われ、ガラス基板11の表面11Tに膜が形成される。
【0118】
成膜工程においては、ガス雰囲気設定機構4gのガス導入部から成膜室4の前側空間45にスパッタガスと反応ガスとが供給される。成膜工程においては、外部の電源4pからバッキングプレート6にスパッタ電圧を印加する。また、成膜工程においては、マグネトロン磁気回路によりターゲット7上に所定の磁場を形成する。同時に、必要な揺動動作あるいは回転動作を、バッキングプレート6またはマグネトロン磁気回路において行う。
【0119】
これにより、成膜室4の前側空間45内で発生するプラズマによりスパッタガスのイオンが励起される。スパッタガスのイオンは、バッキングプレート6のターゲット7に衝突して、成膜材料の粒子を飛び出させる。そして、ターゲット7から飛び出した成膜材料の粒子と反応ガスとが結合した後、結合した成膜材料の粒子と反応ガスとが、ガラス基板11に付着する。これにより、ガラス基板11の表面11Tに所定の膜が形成される。
【0120】
成膜処理が終了したら、マスクアライメント部によって、マスク20の面に鉛直な方向にガラス基板11の表面11Tから離間するように、マスク20が移動される。これにより、マスク20をガラス基板11から離間させる。
次いで、回転駆動部12Aにより回転軸12を回動する。基板保持部13は、図8及び図7の矢印Cとは逆方向に、回転軸12の回転中心周りで成膜起立位置から水平搬送位置に向けて回転する。回転動作中の基板保持部13は、成膜終了後のガラス基板11を保持した状態を維持する。
成膜起立位置から水平搬送位置に向けた回転動作中、この回転動作に伴う重心Gvから重心Ghまでの移動範囲は、X方向において回転軸12の回転中心を跨ぐことがない。
【0121】
したがって、回転軸12にかかるモーメントの向きは、回転動作の始点で成膜起立位置から動き出しても、さらに、回転動作中を通して回転動作の終点の水平搬送位置まで、成膜起立位置におけるモーメントと同じ向きを維持している。このため、回転支持機構10を構成する構成部品の間の微小な隙間が互いに広がっていたとしても、基板保持部13の重心移動による作用モーメントの向きが変化することが無いため、構成部品の間の微小な隙間が狭まることによる衝撃が発生させることがない。これにより、回転軸12の回転により基板保持部13の重心移動が生じたとしても、回転支持機構10では、構成部品の間での変位や衝撃の発生を抑制することができる。
【0122】
回転軸12の回動により、基板保持部13が回転して水平搬送位置に到達する。水平搬送位置に到達した後、クランプを支持位置から外側位置へと揺動させて、ガラス基板11の周縁からクランプを離間させ、クランプによるガラス基板11の係止を解除する。
【0123】
次いで、リフトピン移動装置によってリフトピン50を上昇させて、基板保持部13の表面からリフトピン50を突出させる。上昇したリフトピン50によってガラス基板11が支持された状態で、搬送装置3aのロボットハンドがガラス基板11と基板保持部13との間に挿入される。搬送装置3aのロボットハンドは、図6の矢印Bとは逆方向に基板保持部13からガラス基板11を上昇する。搬送装置3aは、図6の矢印Aとは逆方向に移動する。ガラス基板11は、搬送口4aを通って、成膜室4から取り出される。
【0124】
最終的に、搬送室3を介して、ロード・アンロード室2から基板処理装置1の外部に成膜処理の終了したガラス基板11を搬出する。なお、他のチャンバにおいて、その他の処理をガラス基板11に対して行うことも可能である。
これにより、基板処理装置1での成膜処理を終了する。
【0125】
<メンテナンス方法>
次に、本実施形態に係る基板処理装置1におけるメンテナンス方法について説明する。
図9図10は、本実施形態における成膜室4で行われるメンテナンス工程を示す模式側面図である。
なお、以下の説明では、2つの成膜室4、4Aのうち、成膜室4におけるメンテナンス方法について説明する。なお、メンテナンス方法については、成膜室4、4Aにおいて同じであるため、成膜室4Aについては説明を省略する。
【0126】
基板処理装置1のメンテナンスを行う際では、成膜室4において、回転支持機構10の基板保持部13は水平搬送位置に配置する。メンテナンスにおいては、ガラス基板11は、基板処理装置1に搬入されない。
次いで、成膜室4の内部圧力を大気圧にした後、成膜室4を、ドッキング面4dからプラズマチャンバ4mとプラテンチャンバ4nとに分解する。そして、図9の矢印Dで示す向きに、プラズマチャンバ4mとプラテンチャンバ4nとを離間させる。これにより、ドッキング面4dを形成するプラズマチャンバ4mの接続端41とプラテンチャンバ4nの接続端43とは、互いに分離される。
【0127】
このとき、プラズマチャンバ4mは、移動機構4mtにより、プラテンチャンバ4nとドッキング面4dで組み立てられていた位置からメンテナンスに必要な位置まで移動される。移動機構4mtは、公知の機構であり、移動位置規制レール、駆動源、駆動輪、移動台車等を有していればよい。
この状態においては、バッキングプレート6は、図9に示すように、プラズマチャンバ4mのドッキング面4dを形成する接続端41からプラテンチャンバ4nに向かって突出している。プラズマチャンバ4mの接続端41は、バッキングプレート6の上方を覆うように張り出していない。つまり、バッキングプレート6は、プラズマチャンバ4mの上方の空間に露出している。
【0128】
次に、プラズマチャンバ4mとプラテンチャンバ4nとの間の離間距離が十分に得られたら、基板処理部として機能するバッキングプレート6を含むカソードユニット5をプラズマチャンバ4mから取り外す。
このとき、プラズマチャンバ4mの上方の空間において、クレーン等の吊り上げ機構を用いることが可能である。具体的に、プラズマチャンバ4mの上方に吊り上げ機構を近づけて、バッキングプレート6やターゲット7を有するカソードユニット5を吊り上げ機構に取り付ける。この状態で、吊り上げ機構は、図10の矢印Eで示す方向に向けてカソードユニット5を上向きに吊り上げる。この状態で、プラズマチャンバ4mに固定されているカソードユニット5を取り外して、図10の矢印Eで示す上向きにカソードユニット5を移動させる。その後、カソードユニット5には、洗浄等の所定のメンテナンスが施される。
さらに、カソードユニット5を交換する場合には、クレーンで吊り下げた新しいカソードユニット5を、図10の矢印Eとは逆方向に降下させる。新しいカソードユニット5をプラズマチャンバ4mにおける所定の位置に固定する。
【0129】
また、プラズマチャンバ4mとプラテンチャンバ4nとの間の離間距離が十分に得られたら、マスク20をプラテンチャンバ4nから取り外す。
このとき、上述したカソードユニット5の場合と同様に、クレーン等の吊り上げ機構を用いて、図10の矢印Fで示す向きにマスク20を移動させる。このとき、プラテンチャンバ4nに固定されているマスク20をマスク支持部20gから外した後、図10の矢印Fで示す向きにマスク20を移動させる。その後、マスク20には、洗浄等の所定のメンテナンスが施される。
さらに、マスク20を交換する場合には、クレーンで吊り下げた新しいマスク20を、図10の矢印Fとは逆方向に移動させる。プラテンチャンバ4nにおいて、マスク支持部20gの所定の位置にマスク20を固定する。
【0130】
このように、プラズマチャンバ4mとプラテンチャンバ4nとが組み立てられるドッキング面4dよりも、前側空間45と裏側空間46との間の境界位置4bがプラテンチャンバ4nの内側に位置している。このため、カソードユニット5をプラズマチャンバ4mから取り外す際に、作業効率を向上して、作業時間を短縮することができる。
【0131】
本実施形態に係る基板処理装置1によれば、水平搬送位置と成膜起立位置との間で回転可能な基板保持部13において、回転動作に伴う基板保持部13の重心Ghと重心Gvとの間の移動範囲は、回転軸12から鉛直方向に延びる直線RLを跨ぐことがない。このため、回転動作の終点である成膜起立位置に基板保持部13が到達しても、回転動作が行われている最中において水平搬送位置と成膜起立位置との間に基板保持部13があったとしても、回転軸12にかかるモーメントの方向は、同じである。つまり、図6図8において、回転軸12にかかるモーメントの方向は、反時計回り方向である。言い換えると、回転軸12にかかるモーメントが逆向きになることはない。つまり、回転軸12にかかるモーメントの方向が、時計回り方向になることはない。
【0132】
これにより、回転軸12の回転による基板保持部13の重心が移動しても、回転支持機構10を構成する構成部品の間での変位や衝撃を抑制することができる。したがって、1800mmを超えるような長さの辺を有する大型基板が基板保持部13によって支持された状態で基板保持部13を回転した場合であっても、過大な衝撃の発生を抑制することができ、以下の効果を得ることができる。
・基板保持部13に発生する荷重の変動を抑制することができる。
・回転軸12に回転力を付与する減速機を構成する駆動ギアにおけるバックラッシの発生を抑制することができる。
・回転軸12のねじれの発生を抑制することができる。
・基板保持部における撓み等の変形を抑制することができる。
・回転支持機構10の構成部品の間におけるクリアランスの変動を抑制することができる。
・回転支持機構10の構成部品の間におけるずれの発生を抑制することができる。
・回転軸12から鉛直方向に延びる直線RLを跨ぐような基板保持部13の移動を抑制することができる。
【0133】
したがって、基板保持部13が成膜起立位置に配置された際のバッキングプレート6とガラス基板11の表面11Tとの間の距離が変動してしまうことを抑制することができる。また、基板保持部13とマスク20との間の距離の変動を抑制することができ、成膜口20bからの裏側空間46への処理ガスの侵入を抑制することが可能となる。同時に、フローティング電位など、所定の電位に設定する必要があるプラズマ処理において、ガラス基板11やマスク20などが、不用意に接触して導通することがなく、電気的状態が変化してしまうことがない。これにより、成膜条件の変動を抑制して、成膜膜厚等の処理特性を向上させることができる。
【0134】
本実施形態によれば、スパッタリングによってガラス基板11に成膜する際に、回転支持機構10で基板保持部13の回転動作に起因して、処理されるガラス基板11に割れや欠けなどが発生して破損してしまうことを防止する。同時に、回転支持機構10でマスク20とガラス基板11との間の距離を適正に維持して、スパッタリングに必要な電位状態を維持し、成膜特性の悪化を防止することができる。同時に、パーティクルの発生を抑制することで、成膜特性の悪化を防止することができる。
【0135】
<変形例>
上述した実施形態に係る基板処理装置1において行われる表面処理は、スパッタ処理であったが、表面処理は、スパッタ処理に限定されない。スパッタ処理に代えて蒸着処理が行われてもよい。この場合、上述した基板処理部は、蒸着源を有する。上述したプラズマチャンバ4mにおいては、蒸着処理が行われる。
【0136】
本発明の好ましい実施形態及び変形例を説明し、上記で説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではない。
【符号の説明】
【0137】
1…基板処理装置(スパッタリング装置、成膜装置)、2…ロード・アンロード室(チャンバ)、2A…ロード・アンロード室(チャンバ)、3…搬送室(トランスファチャンバ、チャンバ)、3a…搬送装置、4…成膜室(チャンバ)、4a…搬送口、4A…成膜室(チャンバ)、4b…境界位置、4d…ドッキング面、4g…ガス雰囲気設定機構、4m…プラズマチャンバ(処理室)、4mt…移動機構、4n…プラテンチャンバ(後背室)、4p…電源、5…カソードユニット(基板処理部)、6…バッキングプレート(カソード電極)、7…ターゲット、10…回転支持機構(プラテン機構)、10mg…非接触停止部、11…ガラス基板(基板)、11B…裏面、11T…表面、12…回転軸、12a…台部、12A…回転駆動部、12r…軸線、13…基板保持部(プラテン)、13a…先端、14…フレーム部、14a…軸アーム部、14b…窓部、14f…フランジ部、14r…径アーム部、15…ボルト(締結部材)、16a…第1取付平面、16b…第2取付平面、17…摺動防止部、17a…凸部(第1係合部)、17b…凹部(第2係合部)、20…マスク、20a…マスクフレーム、20b…成膜口、20g…マスク支持部、40、42…開口部、41、43…接続端、44…内部空間、45…前側空間、46…裏側空間、50…リフトピン、Rr…回転可能範囲
図1
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図6
図7
図8
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図10