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特開2024-24414骨切り術用治具及び骨切り術用治具の使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024414
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】骨切り術用治具及び骨切り術用治具の使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/90 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
A61B17/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127220
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 隆史
(72)【発明者】
【氏名】布施 直哉
(72)【発明者】
【氏名】上田 浩大
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL12
4C160LL27
4C160LL28
4C160LL29
(57)【要約】
【課題】骨補填材の配置スペースを確保するために抜去する必要がなく、骨切り部の開大状態を保持したまま、必要な骨補填材を骨切り部に配置させることができる骨切り術用治具を提供すること。
【解決手段】骨100に形成された骨切り部101に挿入される複数のプレート部10と、複数のプレート部10を連結する連結部20と、を備えた骨切り術用治具1である。プレート部10は、骨切り部101への挿入方向Xに延びると共に幅方向Yに所定の厚さW1を有する板形状を呈し、骨切り部101の第1骨切り面101aに接する第1接触面11と、骨切り部101の第2骨切り面101bに接する第2接触面12と、を有する。連結部20は、幅方向Yに所定の間隔W2をあけて並列された複数のプレート部10の第1接触面11同士を連結する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨に形成された骨切り部に挿入される複数のプレート部と、
複数の前記プレート部を連結する連結部と、を備え、
前記プレート部は、前記骨切り部への挿入方向に延びると共に前記挿入方向に直交する幅方向に所定の厚さを有する板形状を呈し、前記骨切り部の第1骨切り面に接する第1接触面と、前記第1骨切り面に対向した前記骨切り部の第2骨切り面に接する第2接触面と、を有し、
前記連結部は、前記幅方向に所定の間隔をあけて並列された複数の前記プレート部の前記第1接触面同士又は前記第2接触面同士のいずれか一方を連結する
ことを特徴とする骨切り術用治具。
【請求項2】
請求項1に記載された骨切り術用治具において、
前記プレート部の前記挿入方向の一方の端部を先端部とし、前記プレート部の前記挿入方向の他方の端部を基端部としたとき、
前記プレート部は、前記先端部から前記骨切り部に挿入され、
前記連結部は、複数の前記プレート部の前記基端部同士を連結する
ことを特徴とする骨切り術用治具。
【請求項3】
請求項2に記載された骨切り術用治具において、
前記プレート部は、前記先端部に向かうにしたがって、前記第1接触面と前記第2接触面が次第に近づく楔状に形成されている
ことを特徴とする骨切り術用治具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載された骨切り術用治具において、
前記連結部に設けられ、前記連結部から前記プレート部が延びる方向とは反対方向に向かって、前記挿入方向に沿って延びる棒形状に形成された把持部を備えた
ことを特徴とする骨切り術用治具。
【請求項5】
請求項4に記載された骨切り術用治具において、
前記連結部は、内周面に雌ネジが形成されたネジ穴を有する板形状を呈し、
前記把持部は、一端部に前記雌ネジに螺合可能な雄ネジが形成され、前記雄ネジが前記雌ネジに螺合して前記連結部に設けられる
ことを特徴とする骨切り術用治具。
【請求項6】
請求項5に記載された骨切り術用治具において、
前記ネジ穴は、前記連結部を貫通する貫通孔であり、
前記把持部は、前記一端部が前記ネジ穴を貫通し、
前記雄ネジの長さは、前記連結部の厚さよりも大きい
ことを特徴とする骨切り術用治具。
【請求項7】
請求項6に記載された骨切り術用治具において、
前記把持部は、前記ネジ穴を貫通した前記一端部の先端に、前記骨に対向する対向面を有する先端部材が設けられ、
前記対向面の面積は、前記把持部の断面積よりも大きい
ことを特徴とする骨切り術用治具。
【請求項8】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載された骨切り術用治具において、
複数の前記プレート部の並列間隔は、前記骨切り部に挿入される骨補填材を挿入可能な大きさに設定されている
ことを特徴とする骨切り術用治具。
【請求項9】
骨に形成された骨切り部への挿入方向に直交する幅方向に並列され、連結部を介して連結された複数の板形状のプレート部を有する骨切り術用治具の使用方法において、
開大された前記骨切り部に前記プレート部を挿入する治具挿入工程と、
前記プレート部の第1接触面を前記骨切り部の第1骨切り面に接触させ、前記プレート部の第2接触面を前記第1骨切り面に対向した前記骨切り部の第2骨切り面に接触させて、前記骨切り部の開大状態を支持する骨切り部支持工程と、
前記骨切り部内に配置する全ての骨補填材を前記骨切り部に配置する間、前記プレート部を前記骨切り部の内部に保持し続ける治具保持工程と、
前記骨補填材を配置した後、前記プレート部を前記骨切り部から抜去する治具抜去工程と、
を備えることを特徴とする骨切り術用治具の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨切り術用治具及び骨切り術用治具の使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、変形性膝関節症の治療に際し、高位脛骨骨切り術(High Tibial Osteotomy:HTO)や、遠位大腿骨骨切り術(Distal Femoral Osteotomy:DFO)等が行われている。そして、これらの骨切り術の一つとして、脛骨等の骨に骨切り部を設け、開大器(スプレッダー)等を用いて骨切り部を楔状に開大させてから、開大状態の骨切り部に骨補填材を配置する開大式骨切り術がある。
【0003】
そして、開大式骨切り術において、骨切り部に骨補填材を配置する際、骨切り部を開大した状態に保持する骨切り術用治具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6688355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の骨切り術用治具は、骨に接する第1外面を有する第1離間部材と、骨に接する第2外面を有する第2離間部材とを有し、第1離間部材と第2離間部材とが互いの内面を対向した状態で骨切り部の開大方向に沿って開閉可能に連結されている。また、第1離間部材及び第2離間部材の幅は、骨の太さや、開大した状態を保持できるように適宜設定されている。
【0006】
しかしながら、従来の骨切り術用治具では、骨切り部の開大方向に沿って開閉可能な第1離間部材及び第2離間部材で骨切り部の開大状態を保持する。そのため、第1離間部材及び第2離間部材の幅は、骨切り部の開大状態を保持するために十分な幅に設定しなければならず、複数の骨補填材を配置する際に骨切り術用治具が邪魔になるという問題が生じる。すなわち、必要な骨補填材を全て配置するためには、骨切り術用治具を抜き取って骨補填材の配置スペースを確保する必要が生じる。しかし、骨切り術用治具を抜去すると、骨切り術用治具の抜去前に配置した骨補填材に負荷が掛かってしまう。
【0007】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、骨補填材の配置スペースを確保するために抜去する必要がなく、骨切り部の開大状態を保持したまま、必要な骨補填材を骨切り部に配置させることができる骨切り術用治具及び骨切り術用治具の使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の骨切り術用治具は、骨に形成された骨切り部に挿入される複数のプレート部と、複数の前記プレート部を連結する連結部と、を備え、前記プレート部は、前記骨切り部への挿入方向に延びると共に前記挿入方向に直交する幅方向に所定の厚さを有する板形状を呈し、前記骨切り部の第1骨切り面に接する第1接触面と、前記第1骨切り面に対向した前記骨切り部の第2骨切り面に接する第2接触面と、を有し、前記連結部は、前記幅方向に所定の間隔をあけて並列された複数の前記プレート部の前記第1接触面同士又は前記第2接触面同士のいずれか一方を連結する。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の骨切り術用治具の使用方法は、骨に形成された骨切り部への挿入方向に直交する幅方向に並列され、連結部を介して連結された複数の板形状のプレート部を有する骨切り術用治具の使用方法において、開大された前記骨切り部に前記プレート部を挿入する治具挿入工程と、前記プレート部の第1接触面を前記骨切り部の第1骨切り面に接触させ、前記プレート部の第2接触面を前記第1骨切り面に対向した前記骨切り部の第2骨切り面に接触させて、前記骨切り部の開大状態を支持する骨切り部支持工程と、前記骨切り部内に配置する全ての骨補填材を前記骨切り部に配置する間、前記プレート部を前記骨切り部の内部に保持し続ける治具保持工程と、前記骨補填材を配置した後、前記プレート部を前記骨切り部から抜去する治具抜去工程と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
これにより、本発明の骨切り術用治具及び骨切り術用治具の使用方法は、骨補填材の配置スペースを確保するために抜去する必要がなく、骨切り部の開大状態を保持したまま、必要な骨補填材を骨切り部に配置させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の骨切り術用治具を示す斜視図である。
図2】実施例1の骨切り術用治具を幅方向から見た側面図である。
図3図1のA-A断面図である。
図4】実施例1の骨切り術用治具をプレート部の一端部側から見た側面図である。
図5】実施例1の骨切り術用治具の使用方法における治具挿入工程を示す説明図である。
図6】実施例1の骨切り術用治具の使用方法における骨切り部支持工程を示す説明図であり、(a)は骨切り部を側方から見た状態を示し、(b)は骨切り部を正面から見た状態を示す。
図7】実施例1の骨切り術用治具の使用方法における治具保持工程を示す説明図であり、(a)は第1の骨補填材の配置状態を示し、(b)は第2の骨補填材の配置状態を示す。
図8】実施例1の骨切り術用治具の使用方法における治具抜去工程を示す説明図である。
図9】(a)は治具挿入工程での骨切り術用治具の挿入位置を示す説明図であり、(b)は骨切り部支持工程での骨切り術用治具の配置位置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の骨切り術用治具及び骨切り術用治具の使用方法を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【0013】
実施例1の骨切り術用治具1は、例えば、高位脛骨骨切り術(HTO)等の手術(以下、「骨切り術」という)に用いられ、図5図8に示されたように、脛骨等の骨100に形成された骨切り部101に人工骨等の骨補填材103A、103Bを挿入する際、開大器102等を用いて予め楔状に開大された骨切り部101の開大状態を保持する。実施例1の骨切り術用治具1は、図1に示されたように、骨切り部101に挿入される複数(二枚)のプレート部10と、複数のプレート部10を連結する連結部20と、連結部20に設けられた把持部30と、を備えている。
【0014】
なお、本明細書では、説明を容易とするために、プレート部10が骨切り部101へ挿入される方向を「挿入方向X」という。また、骨切り部101が開大する方向の鉛直方向を「開大方向H」という。開大方向Hは、挿入方向Xに対して直交する。さらに、挿入方向X及び開大方向Hのいずれにも直交する方向を「幅方向Y」という。また、実施例1の骨切り術用治具1では、複数(二枚)のプレート部10及び連結部20は、金属製で、一体成型されている。また、把持部30は、金属製で、プレート部10及び連結部20と別体に形成されている。
【0015】
プレート部10は、挿入方向Xに延びると共に、幅方向Yに所定の厚さW1を有する板形状を呈している。ここで、プレート部10の骨切り部101への挿入可能な長さLは、骨切り部101や、骨切り部101に挿入される骨補填材103A、103Bの大きさ等に応じて任意に設定可能であり、例えば30mm程度に設定される。また、プレート部10の厚さW1は、骨切り部101や、骨切り部101に挿入される骨補填材103A、103Bの大きさ、骨切り部101の開大状態を保持する際に作用する荷重等に応じて任意に設定可能であり、例えば3mm~5mm程度に設定される。
【0016】
また、プレート部10は、開大方向Hに沿って互いに反対方向に臨む第1接触面11及び第2接触面12を有している。第1接触面11は、プレート部10が骨切り部101に挿入された際、骨切り部101の第1骨切り面101aに接する面である。第2接触面12は、プレート部10が骨切り部101に挿入された際、第1骨切り面101aに対向する骨切り部101の第2骨切り面101bに接する面である。
【0017】
そして、プレート部10の挿入方向Xの一方の端部を先端部10aとし、プレート部10の挿入方向Xの他方の端部を基端部10bとしたとき、プレート部10は、先端部10aから骨切り部101に挿入される。なお、実施例1のプレート部10は、先端部10aが平坦面に形成されている。
【0018】
また、プレート部10は、先端部10aに向かうにしたがって、第1接触面11と第2接触面12が次第に近づき、幅方向Yに沿って見たときに図2に示されたように楔状に形成されている。ここで、第1接触面11と第2接触面12とでなす角θは、骨切り部101の開大角度に応じて設定可能であり、例えば8°~11°程度に設定される。
【0019】
さらに、実施例1の骨切り術用治具1では、複数(二枚)のプレート部10が幅方向Yに沿って並列されている。複数(二枚)のプレート部10の並列間隔W2は、少なくとも第2の骨補填材103Bを挿入可能な大きさに設定されている。なお、実施例1の並列間隔W2は、約10mmに設定されている。
【0020】
連結部20は、図1等に示されたように、挿入方向Xに所定の厚さW3を有し、骨切り部101への挿入時に骨100に臨む平坦な側面20aを有する板形状を呈している。連結部20は、幅方向Yに所定の間隔W2をあけて並列された複数(二枚)のプレート部10の間に配置され、各プレート部10の基端部10bにおいて第1接触面11同士を連結している。すなわち、連結部20は、挿入方向Xに沿って見たとき、複数(二枚)のプレート部10の間に生じる隙間空間Kに対し、開大方向Hに沿って第1接触面11側にオフセットした状態で、複数(二枚)のプレート部10を連結する(図4参照)。
【0021】
また、連結部20には、内周面に雌ネジ21aが形成されたネジ穴21を有している。ネジ穴21は、図3に示されたように、挿入方向Xに沿って連結部20を貫通する貫通孔である。
【0022】
把持部30は、図1等に示されたように、挿入方向Xに沿って延びる棒形状を呈し、一端部30aが連結部20に連結され、連結部20からプレート部10が延びる方向とは反対方向に延在している。なお、把持部30の他端部30bには、滑り止め部33が形成されている。滑り止め部33では、把持部30の直径が太く、外表面に梨地加工が施されている。
【0023】
また、把持部30の一端部30aには、連結部20に形成された雌ネジ21aに螺合可能な雄ネジ31が形成されている。把持部30は、一端部30aがネジ穴21を貫通すると共に、雄ネジ31が雌ネジ21aに螺合することで連結部20に連結される。また、雄ネジ31の挿入方向Xに沿った長さW4は、連結部20の厚さW3よりも大きい。
【0024】
さらに、把持部30は、ネジ穴21を貫通した一端部30aの先端に、骨100に対向する対向面32aを有する先端部材32が設けられている。先端部材32は、挿入方向Xに所定の厚さを有する板形状部材である。対向面32aの面積は、図4に示されたように、把持部30の断面積よりも大きい。
【0025】
以下、実施例1の骨切り術用治具1の使用方法を図5図8に基づいて説明する。
【0026】
実施例1の骨切り術用治具1を使用するには、骨切り術の施術者は、予め骨切りによって患者の骨100に形成された骨切り部101に、開大器102を差し込み、開大器102を用いて骨切り部101を開大する。
【0027】
そして、図5に示されたように、施術者は、開大された骨切り部101に対し、骨切り術用治具1のプレート部10を挿入する(治具挿入工程)。このとき、骨切り術用治具1では、把持部30の一端部30aに設けられた先端部材32が、連結部20に当接した状態にされている。そして、施術者は、把持部30の滑り止め部33を把持し、先端部10aから骨切り部101と開大器102との間に生じる隙間にプレート部10を徐々に挿入していく。図5に示された例では、骨切り術用治具1は、開大器102よりも患者の後方側に生じた第1隙間領域S1に挿入される。
【0028】
そして、施術者は、図6(a)に示されたように、先端部材32の対向面32aが骨100に接触するまで骨切り術用治具1を挿入する。続いて、施術者は、開大器102を抜去する。これにより、骨切り部101には閉じようとする方向に力が作用する。これに対し、骨切り術用治具1は、プレート部10が骨切り部101に挿入されている。このため、図6(b)に示されたように、プレート部10の第1接触面11が骨切り部101の第1骨切り面101aに接触し、第2接触面12が骨切り部101の第2骨切り面101bに接触する。この結果、骨切り術用治具1は、骨切り部101の開大状態をプレート部10によって支持する(骨切り部支持工程)。
【0029】
次に、施術者は図7(a)、(b)に示されたように、骨切り部101と骨切り術用治具1との間に生じる隙間に第1の骨補填材103A及び第2の骨補填材103Bを順に配置する。このとき、第1の骨補填材103Aは、開大器102よりも患者の前方側に生じた第2隙間領域S2に配置される。また、第2の骨補填材103Bは、複数(二枚)のプレート部10の間に生じる隙間空間Kに配置される。
【0030】
そして、施術者は、骨切り部101内に配置する全ての骨補填材(第1の骨補填材103A及び第2の骨補填材103B)を骨切り部101に配置する間、プレート部10を骨切り部101の内部に保持し続ける(治具保持工程)。つまり、実施例1の骨切り術用治具1を使用する場合、複数(二枚)のプレート部10の間に生じる隙間空間Kに第2の骨補填材103Bを配置することが可能である。このため、施術者は、骨切り術用治具1のプレート部10を骨切り部101に挿入したまま、骨切り部101に挿入予定の全ての骨補填材(第1の骨補填材103A及び第2の骨補填材103B)を骨切り部101に配置することができる。
【0031】
そして、全ての骨補填材(第1の骨補填材103A及び第2の骨補填材103B)を骨切り部101に配置した後、施術者は、把持部30を回転させる。このとき、プレート部10の第1接触面11が骨切り部101の第1骨切り面101aに干渉し、第2接触面12が骨切り部101の第2骨切り面101bに干渉する。これにより、プレート部10の回転が規制され、図8に示されたように、先端部材32が骨100に向かって押圧される一方、プレート部10及び連結部20は、骨切り部101から離れる方向(抜ける方向)へと移動していく。これにより、第1接触面11と第1骨切り面101aとの間及び第2接触面12と第2骨切り面101bとの間には、隙間が生じる。
【0032】
なお、図8では、第1の骨補填材103A及び第2の骨補填材103Bは省略されている。また、把持部30が回転することで、把持部30に設けられた先端部材32も、骨100に接したまま把持部30と一体になって回転する。
【0033】
そして、第1接触面11と第1骨切り面101aとの間と、第2接触面12と第2骨切り面101bとの間とに、十分な隙間が生じたら、施術者は、把持部30を引っ張って、プレート部10を骨切り部101から抜去する(治具抜去工程)。
【0034】
以上のように、実施例1の骨切り術用治具1は、骨切り部101の開大状態を支持し、必要な骨補填材(第1の骨補填材103A及び第2の骨補填材103B)を全て配置する間、骨切り部101の内部に保持され続ける。これにより、実施例1の骨切り術用治具1を使用することで、施術者は、第2の骨補填材103Bの配置スペースを確保するために骨切り術用治具1を抜去する必要がない。この結果、実施例1の骨切り術用治具1を使用することで、先に配置した第1の骨補填材103Aによって骨切り部101の開大状態を支持させた状態で、第2の骨補填材103Bを配置するといったことが生じない。このため、実施例1の骨切り術用治具1は、第1の骨補填材103Aに不要な負荷が作用することを防止できると共に、第2の骨補填材103Bを安定した状態で配置させることができる。
【0035】
以下、実施例1の骨切り術用治具1の作用を説明する。
【0036】
実施例1の骨切り術用治具1は、複数(二枚)のプレート部10と、プレート部10を連結する連結部20と、を備えている。ここで、各プレート部10は、骨切り部101への挿入方向Xに延びると共に幅方向Yに所定の厚さW1を有する板形状を呈している。また、プレート部10は、骨切り部101の第1骨切り面101aに接する第1接触面11と、骨切り部101の第2骨切り面101bに接する第2接触面12と、を有している。一方、連結部20は、幅方向Yに所定の間隔W2をあけて並列された複数(二枚)のプレート部10の第1接触面11同士を連結している。
【0037】
これにより、実施例1の骨切り術用治具1は、幅方向Yに所定の間隔W2をあけた複数(二枚)のプレート部10によって骨切り部101の開大状態を支持する。このため、例えば、一枚のプレート部10によって骨切り部101の開大状態を支持する場合と比べて各プレート部10の厚さW1を薄くすることができる。これにより、骨補填材(第1の骨補填材103A及び第2の骨補填材103B)を配置する際に、プレート部10が邪魔になりにくい。
【0038】
また、実施例1の骨切り術用治具1では、複数(二枚)のプレート部10の第1接触面11同士が連結部20によって連結されている。このため、連結部20は、挿入方向Xから見たとき、複数(二枚)のプレート部10の間に生じる隙間空間Kに対し、開大方向Hに沿って第1接触面11側にオフセットする。これにより、骨切り術中に実施例1の骨切り術用治具1を使用した場合、図7(b)に示されたように、施術者は、複数(二枚)のプレート部10の間に第2の骨補填材103Bを配置することができる。
【0039】
よって、実施例1の骨切り術用治具1は、骨補填材(第1の骨補填材103A及び第2の骨補填材103B)の挿入スペースを形成するために抜去する必要がない。そして、実施例1の骨切り術用治具1は、骨切り部101の開大状態を保持したまま、必要な骨補填材(第1の骨補填材103A及び第2の骨補填材103B)を骨切り部101に全て配置させることができる。
【0040】
特に、実施例1の骨切り術用治具1では、複数(二枚)のプレート部10の並列間隔W2が、骨切り部101に挿入される骨補填材(第2の骨補填材103B)を挿入可能な大きさに設定されている。このため、実施例1の骨切り術用治具1は、第2の骨補填材103Bを、複数(二枚)のプレート部10の間に生じる隙間空間Kに配置することを可能とする。これにより、実施例1の骨切り術用治具1を使用した場合、施術者は、骨切り部101の開大状態を保持したまま、第2の骨補填材103Bを複数(二枚)のプレート部10の間に配置することができる。
【0041】
また、実施例1の骨切り術用治具1では、プレート部10が先端部10aから骨切り部101に挿入され、連結部20が複数(二枚)のプレート部10の基端部10b同士を連結している。
【0042】
このため、施術者がプレート部10を骨切り部101に挿入した際、連結部20が骨100に干渉せず、実施例1の骨切り術用治具1は、プレート部10の挿入方向Xのほぼ全長を骨切り部101に挿入可能とすることができる。これにより、実施例1の骨切り術用治具1は、プレート部10の挿入方向Xの全長を不要に長くしなくても、骨切り部101の奥側もプレート部10によって支持することができ、骨切り部101を安定的に支持することができる。
【0043】
また、実施例1の骨切り術用治具1では、各プレート部10が、先端部10aに向かうにしたがって、第1接触面11と第2接触面12が次第に近づく楔状に形成されている。これにより、実施例1の骨切り術用治具1では、プレート部10の形状が、楔状に開大された骨切り部101の形状に合うため、各プレート部10の骨切り部101への挿入可能な長さLを長くすることができる。このため、実施例1の骨切り術用治具1は、骨切り部101を安定的に支持することが可能である。
【0044】
さらに、実施例1の骨切り術用治具1は、連結部20に設けられた把持部30を備えている。そして、把持部30は、連結部20からプレート部10が延びる方向とは反対方向に向かって、挿入方向Xに沿って延びる棒形状に形成されている。
【0045】
これにより、施術者は、把持部30の他端部30bを把持し、プレート部10を先端部10aから骨切り部101に容易に挿入することができる。また、実施例1の骨切り術用治具1では、把持部30が棒形状であるため、施術者が把持する位置(他端部30b)をプレート部10から離間させることができる。このため、実施例1の骨切り術用治具1を使用した場合では、手が邪魔にならず、骨切り部101等の術野を施術者に容易に視認させることができる。
【0046】
そして、実施例1の骨切り術用治具1では、連結部20が、内周面に雌ネジ21aが形成されたネジ穴21を有する板形状を呈している。また、把持部30は、一端部30aに雌ネジ21aに螺合可能な雄ネジ31が形成されている。そして、把持部30の雄ネジ31が連結部20の雌ネジ21aに螺合することで、把持部30は連結部20に設けられる。このため、実施例1の骨切り術用治具1は、把持部30を連結部20に容易に設けることができる。
【0047】
しかも、実施例1の骨切り術用治具1では、連結部20に形成されたネジ穴21は、連結部20を貫通する貫通孔である。そして、把持部30は、一端部30aがネジ穴21を貫通すると共に、雄ネジ31の挿入方向Xに沿った長さW4は、連結部20の厚さW3よりも大きい。このため、実施例1の骨切り術用治具1は、図8に示されたように、施術者が把持部30を回転させることで、把持部30の先端が骨100に向かって押圧される一方、プレート部10及び連結部20が、骨切り部101から離れる方向(抜ける方向)へと移動する。これにより、第1接触面11と第1骨切り面101aとの間及び第2接触面12と第2骨切り面101bとの間に隙間が生じ、施術者は骨切り術用治具1を骨切り部101から容易に抜去することができる。
【0048】
さらに、実施例1の骨切り術用治具1では、把持部30のネジ穴21を貫通した一端部30aの先端に、骨100に対向する対向面32aを有する先端部材32が設けられている。そして、先端部材32の対向面32aの面積は、把持部30の断面積よりも大きい。
【0049】
このため、骨切り術用治具1が骨切り部101に挿入された際、把持部30の断面積よりも大きい先端部材32の対向面32aが骨100に接触する。これにより、骨切り術用治具1を抜去するために施術者によって把持部30が回転され、把持部30の先端が骨100に向かって押圧されたとき、例えば、棒形状の把持部30の先端が直接骨100に接触する場合よりも、把持部30から骨100に作用する押圧力を分散することができる。よって、実施例1の骨切り術用治具1は、抜去時に作用する骨100への負荷を軽減することができる。
【0050】
以上、本発明の骨切り術用治具及び骨切り術用治具の使用方法を実施例1に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0051】
実施例1の骨切り術用治具1では、棒形状に形成された把持部30の一端部30aに、連結部20に形成された雌ネジ21aに螺合可能な雄ネジ31が形成されている。そして、雄ネジ31が雌ネジ21aに螺合することで、把持部30が連結部20に設けられる例が示された。しかしながら、把持部30の連結部20への連結方法は、実施例1に示された構成に限らず、例えば、連結部20に把持部30を溶接や接着等によって固定してもよいし、連結部20と把持部30を金属等によって一体形成してもよい。
【0052】
また、実施例1の骨切り術用治具1では、把持部30の一端部30aの先端に設けられた先端部材32が、把持部30に対して固定され、把持部30と一体的に回転する例が示された。しかしながら、例えば、把持部30と先端部材32との間に自在継手等を介在させることで、把持部30の回転が先端部材32に伝達されないようにしてもよい。これにより、骨切り術用治具1を抜去する際に把持部30が回転したとき、先端部材32が回転しないため、骨100に作用する負荷をさらに軽減することができる。
【0053】
なお、実施例1の骨切り術用治具1では、連結部20に棒形状の把持部30が設けられた例が示された。しかしながら、把持部30の形状は任意に設定可能であり、棒形状に限らない。また、把持部30は、必ずしも連結部20に設けられなくてもよく、例えば施術者は、プレート部10や連結部20の一部を把持して骨切り術用治具1を骨切り部101に挿入してもよい。
【0054】
また、実施例1の骨切り術用治具1は、二枚のプレート部10を有する例が示されたが、プレート部10の数は骨切り部101や骨補填材103A、103Bの大きさ等に応じて三枚以上の任意の数に設定することができる。
【0055】
また、実施例1の骨切り術用治具1では、各プレート部10が幅方向Yに沿って見たときに楔状に形成された例が示された。しかしながら、プレート部10の形状はこれに限らず、例えば第1接触面11と第2接触面12とが並行であってもよい。この場合、各プレート部10は、幅方向Yに沿って見たときに矩形状に形成される。
【0056】
また、実施例1の骨切り術用治具1では、連結部20によってプレート部10の第1接触面11同士が連結された例が示された。しかしながら、連結部20は、プレート部10の第2接触面12同士を連結してもよい。さらに、連結部20は、必ずしもプレート部10の基端部10b同士を連結しなくてもよく、例えば、各プレート部10の挿入方向Xの中間部が、連結部20によって連結されてもよい。
【0057】
また、実施例1の骨切り術用治具1の使用方法において、図5に示された治具挿入工程では、開大器102よりも患者の後方側に生じた第1隙間領域S1に挿入されているが、これに限らない。施術者は、治具挿入工程において、例えば、図9(a)に示されたように、二枚のプレート部10で開大器102を挟み込むように骨切り術用治具1を挿入してもよい。この場合、図9(b)に示されたように、開大器102を抜去した状態では、骨切り術用治具1が骨切り部101のほぼ中央に配置される。これにより、骨切り部支持工程では、骨切り術用治具1によって骨切り部101の中央部が支持される。つまり、骨切り術用治具1の挿入位置は、実施例1に示した位置に限らず、プレート部10が開大器102に干渉しなければ任意の位置に挿入されることができる。
【0058】
また、実施例1の骨切り術用治具1は金属製であり、プレート部10と連結部20とが一体成型された例が示された。しかしながら、プレート部10及び連結部20、把持部30はそれぞれ合成樹脂製であってもよいし、それぞれ異素材によって形成されて、組み合わせられてもよい。
【0059】
また、実施例1の骨切り術用治具1は、連結部20が挿入方向Xに所定の厚さW3を有すると共に、骨100に臨む平坦な側面20aを有する板形状を呈する例が示された。しかしながら、連結部20は、複数のプレート部10の第1接触面11同士又は第2接触面12同士のいずれかを連結すればよく、例えば帯形状や棒形状等の任意の形状とすることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 骨切り術用治具
10 プレート部
10a 先端部
10b 基端部
11 第1接触面
12 第2接触面
20 連結部
21 ネジ穴
21a 雌ネジ
30 把持部
30a 一端部
31 雄ネジ
32 先端部材
32a 対向面
100 骨
101 骨切り部
101a 第1骨切り面
101b 第2骨切り面
103A 第1の骨補填材
103B 第2の骨補填材
103B 骨補填材
X 挿入方向
Y 幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9