(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024556
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】電波センサ装置
(51)【国際特許分類】
G01S 13/56 20060101AFI20240215BHJP
G01S 7/03 20060101ALI20240215BHJP
H01Q 13/02 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
G01S13/56
G01S7/03 230
H01Q13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127478
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】及川 和夫
【テーマコード(参考)】
5J045
5J070
【Fターム(参考)】
5J045AA05
5J045AA21
5J045AB05
5J045DA01
5J070AB15
5J070AB24
5J070AC02
5J070AD02
5J070AE09
5J070AG03
5J070AH31
5J070AK40
(57)【要約】
【課題】鋭い指向性と高いアンテナ利得が得られ、小型化が可能な電波センサ装置を提供する。
【解決手段】電波センサ装置100Aは、高周波信号を発生させる発振器、送信アンテナ10、受信アンテナ11、ミキサおよび信号処理装置を備え、送信アンテナ10および受信アンテナ11は、それぞれ送信アンテナ部21と送信ホーン部22A、および受信アンテナ部23と受信ホーン部24Aを有し、送信アンテナ部21および受信アンテナ部23は同一平面上に離間して配置され、送信ホーン部22Aの内壁および受信ホーン部24Aの内壁は、送信アンテナ10と受信アンテナ11を分離する壁部27を有し、この壁部27が送信ホーン部22Aおよび受信ホーン部24Aの開口端側からそれぞれ送信アンテナ部21および受信アンテナ部23に向けて、平面に垂直な壁面領域を有し、かつ送信ホーン部22Aと受信ホーン部24Aが壁部27を介して隣接して配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号を発生させる発振器と、
前記高周波信号を空間に放射する送信アンテナと、
対象物からの前記高周波信号の反射波を受信する受信アンテナと、
前記高周波信号と前記受信アンテナで受信された反射波とを混合して受信信号を生成させるミキサと、
前記受信信号から前記対象物の検知信号を生成させる信号処理装置と
を備え、
前記送信アンテナは、送信アンテナ部と送信ホーン部とを有し、
前記受信アンテナは、受信アンテナ部と受信ホーン部とを有し、
前記送信アンテナ部および前記受信アンテナ部は、同一平面上に離間して配置され、
前記送信ホーン部の内壁および前記受信ホーン部の内壁は、前記送信アンテナと前記受信アンテナとを分離する壁部を有し、前記壁部は、前記送信ホーン部および前記受信ホーン部の開口端側からそれぞれ前記送信アンテナ部および前記受信アンテナ部に向けて、前記平面に垂直な壁面領域を有し、かつ
前記送信ホーン部と前記受信ホーン部が、前記壁部を介して隣接して配置されている
電波センサ装置。
【請求項2】
前記送信ホーン部および前記受信ホーン部は、円錐ホーンが前記壁部により高さ方向に均等に分割されることにより構成されている、
請求項1記載の電波センサ装置。
【請求項3】
前記送信ホーン部および前記受信ホーン部は、角錐ホーンが前記壁部により高さ方向に均等に分割されることにより構成されている、
請求項1記載の電波センサ装置。
【請求項4】
前記送信ホーン部および前記受信ホーン部は、複モードホーンが前記壁部により高さ方向に均等に分割されることにより構成されている、
請求項1記載の電波センサ装置。
【請求項5】
前記送信ホーン部および前記受信ホーン部は一体として、高さ方向に隔壁を有する貫通孔を備えた円柱または角柱の部材からなり、前記隔壁が前記送信アンテナと前記受信アンテナとを分離する前記壁部である、
請求項1~4いずれか1項に記載の電波センサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電波センサ装置に関し、特にマイクロ波帯域やミリ波帯域の電波を利用して検知領域内にある対象物を検知する電波センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電波を利用して検知領域内にある対象物を検知する電波センサ装置は、電波を送信信号として空間に放射し、対象物によって反射された反射波を信号処理することにより、対象物の有無、移動状態、対象物までの距離等を検知することができる。この種の電波センサ装置は、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図26は、一般的な電波センサ装置の構成を説明する図である。
図26に示すように、電波センサ装置100は、対象物200が存在する空間に高周波信号(マイクロ波帯域またはミリ波帯域の電波)を放射する送信アンテナ10と、対象物200からの高周波信号の反射波を受信する受信アンテナ11と、所定の周波数の高周波信号を発生させる発振器12と、発振器12で発生する高周波信号を増幅して送信アンテナ10に供給する送信側増幅器13と、受信アンテナ11で受信される反射波を増幅する受信側増幅器14と、発振器12で発生する高周波信号と受信側増幅器14で増幅される反射波を混合し、低周波の受信信号を生成するミキサ15と、ミキサ15で生成される低周波の受信信号を増幅する増幅器16と、増幅器16で増幅される受信信号をA/D変換するA/D変換器17と、A/D変換器17で変換される受信信号に所望の信号処理を行う信号処理装置18とで構成されている。信号処理装置18の信号処理に応じて、対象物200の有無の検知、移動状態の検知、対象物までの距離の検知等を行うことができる。19は発振器12やミキサ15等で構成されているセンサ回路部で、プリント基板上にセンサ回路部を構成する機能素子を配置するマイクロ波集積回路あるいはIC(集積回路)基板上にセンサ回路部を構成する機能素子を配置するモノリシックマイクロ波・ミリ波集積回路で構成することができる。
【0005】
このような構成の電波センサ装置100では、送信アンテナ10および受信アンテナ11は、パッチアンテナ、パッチアレーアンテナ、ホーンアンテナ等で構成することができる。
【0006】
ところで、マイクロ波帯域やミリ波帯域の電波を利用する電波センサ装置では、上記のようにセンサ回路部19が集積化され小型化が進んでいる。そのため、送信アンテナ10および受信アンテナ11についても、小型でセンサ回路部19を構成する集積回路との接続が容易なパッチアンテナが用いられることが多い。しかし、単体のパッチアンテナは利得が低く検知距離が短い。また広い指向性を有するため、所望の検知領域以外の物体の動き等を検知してしまう。検知距離を伸ばすという観点から、パッチアンテナを複数接続し、特定方向のアンテナ利得を高くするパッチアレーアンテナを採用することも考えられるが、パッチアレーアンテナはパッチアンテナ間を接続する伝送線路が長くなり、その損失によりアンテナの効率が低下するという問題があった。
【0007】
一方、ホーンアンテナは、パッチアンテナと比べて高いアンテナ効率を得ることができる。また、アンテナの指向性を適切に設計することにより、所望の検知領域以外からの不要な反射波(ノイズ)を低減することができ、感度の向上も期待される。
図27は、関連技術における送信アンテナ10と受信アンテナ11をホーンアンテナで構成する電波センサ装置100の断面模式図である。
図27に示すように、基板20上に送信アンテナ部21と送信アンテナ部21を覆うように送信ホーン部22が配置されて送信アンテナ10が構成される。また受信アンテナ部23と受信アンテナ部23を覆うように受信ホーン部24が配置されて受信アンテナ11が構成される。
図28は、
図27にも対応する基板20上に配置されるコプレーナー型パッチアンテナで構成する送信アンテナ部21と受信アンテナ部23を示す平面模式図である。送信アンテナ部21および受信アンテナ部23をそれぞれコプレーナー型パッチアンテナで構成する場合、
図28に示すように基板20上の送信アンテナ部21と受信アンテナ部23の周囲に接地面26が配置され、この接地面26上にそれぞれ送信ホーン部22と受信ホーン部24が配置される。送信アンテナ部21および受信アンテナ部23には、
図26に示す発振器12やミキサ15等が形成されているセンサ回路部19が伝送線路25によって接続される。
【0008】
図27に示すように、大きな開口を備える送信ホーン部22および受信ホーン部24を基板20上に隣接して配置すると、送信アンテナ10の送信アンテナ部21と受信アンテナ11の受信アンテナ部23は、それぞれセンサ回路部19と比較的長い伝送線路25で接続される。このような構成の電波センサ装置100において、マイクロ波帯域またはミリ波帯域の高周波信号を利用する場合、長い伝送線路25によって損失が大きくなってしまう。また大きな開口の送信ホーン部22および受信ホーン部24を配置する必要があるためセンサ回路部19と送信アンテナ部21および受信アンテナ部23とを含むセンサ回路領域101が大きくなってしまうという問題があった。
【0009】
そこで本発明は、鋭い指向性と高いアンテナ利得が得られ、センサ回路部と送信アンテナ部および受信アンテナ部を含むセンサ回路領域の小型化が可能な電波センサ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電波センサ装置は、高周波信号を発生させる発振器と、前記高周波信号を空間に放射する送信アンテナと、対象物からの前記高周波信号の反射波を受信する受信アンテナと、前記高周波信号と前記受信アンテナで受信された反射波とを混合して受信信号を生成させるミキサと、前記受信信号から前記対象物の検知信号を生成させる信号処理装置とを備え、前記送信アンテナは、送信アンテナ部と送信ホーン部とを有し、前記受信アンテナは、受信アンテナ部と受信ホーン部とを有し、前記送信アンテナ部および前記受信アンテナ部は、同一平面上に離間して配置され、前記送信ホーン部の内壁および前記受信ホーン部の内壁は、前記送信アンテナと前記受信アンテナとを分離する壁部を有し、前記壁部は、前記送信ホーン部および前記受信ホーン部の開口端側からそれぞれ前記送信アンテナ部および前記受信アンテナ部に向けて、前記平面に垂直な壁面領域を有し、かつ前記送信ホーン部と前記受信ホーン部が、前記壁部を介して隣接して配置されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電波センサ装置によれば、送信ホーン部の内壁および受信ホーン部の内壁は、送信アンテナと受信アンテナとを分離する壁部を有し、この壁部は、送信ホーン部および受信ホーン部の開口端側からそれぞれ送信アンテナ部および受信アンテナ部に向けて、送信アンテナ部および受信アンテナ部が配置される平面に垂直な壁面領域を有し、かつ送信ホーン部と受信ホーン部が、壁部を介して隣接して配置されているため、電波センサ装置、特にセンサ回路部と送信アンテナ部および受信アンテナ部とを含むセンサ回路領域の小型化が可能となる。その結果、伝送線路を短くすることができアンテナ効率を高くすることができる。さらにまた送信アンテナと受信アンテナは、ホーンアンテナ構造で構成されるため、鋭い指向性と高いアンテナ利得を有する電波センサ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態である電波センサ装置(実施形態1)における送信アンテナと受信アンテナの平面模式図である。
【
図2】
図1の電波センサ装置のA-A線における断面模式図である。
【
図3】実施形態1の電波センサ装置の送信アンテナおよび受信アンテナのE面におけるアンテナ利得を説明する図である。
【
図4】実施形態1の電波センサ装置の送信アンテナおよび受信アンテナのH面におけるアンテナ利得を説明する図である。
【
図5】実施形態1の電波センサ装置の検知エリアを説明する図である。
【
図6】実施形態1の電波センサ装置の
図5のa-a断面での検知エリアを説明する図である。
【
図7】本発明の一実施形態である電波センサ装置(実施形態2)における送信アンテナと受信アンテナの平面模式図である。
【
図8】
図7の電波センサ装置のB-B線における断面模式図である。
【
図9】実施形態2の電波センサ装置の送信アンテナおよび受信アンテナのH面におけるアンテナ利得を説明する図である。
【
図10】実施形態2の電波センサ装置の電界分布を説明する図である。
【
図11】実施形態2の電波センサ装置の送信アンテナおよび受信アンテナのE面におけるアンテナ利得を説明する図である。
【
図12】実施形態2の電波センサ装置の検知エリアを説明する図である。
【
図13】実施形態2の変形例の電波センサ装置における送信アンテナと受信アンテナの平面模式図である。
【
図14】実施形態2の別の変形例の電波センサ装置における送信アンテナと受信アンテナの平面模式図である。
【
図15】本発明の一実施形態である電波センサ装置(実施形態3)における送信アンテナと受信アンテナの断面模式図である。
【
図16】実施形態3の電波センサ装置の電界分布を説明する図である。
【
図17】実施形態3の電波センサ装置の送信アンテナおよび受信アンテナのH面におけるアンテナ利得を説明する図である。
【
図18】実施形態3の電波センサ装置の送信アンテナおよび受信アンテナのE面におけるアンテナ利得を説明する図である。
【
図19】実施形態3の電波センサ装置の検知エリアを説明する図である。
【
図20】本発明の一実施形態である電波センサ装置(実施形態4)における送信アンテナと受信アンテナの平面模式図である。
【
図21】実施形態4の電波センサ装置における送信アンテナと受信アンテナの断面模式図である。
【
図22】実施形態4の電波センサ装置の送信アンテナおよび受信アンテナのH面におけるアンテナ利得を説明する図である。
【
図23】実施形態4の電波センサ装置の送信アンテナおよび受信アンテナのE面におけるアンテナ利得を説明する図である。
【
図24】実施形態4の電波センサ装置の検知エリアを説明する図である。
【
図25】実施形態4の変形例の電波センサ装置における送信アンテナと受信アンテナの平面模式図である。
【
図26】一般的な電波センサ装置の構成の説明図である。
【
図27】関連技術における送信アンテナと受信アンテナをホーンアンテナで構成する電波センサ装置の断面模式図である。
【
図28】関連技術における基板上に配置されるコプレーナー型パッチアンテナで構成する送信アンテナ部と受信アンテナ部を示す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の電波センサ装置について、図面を参照して説明するが、本発明はこれらの形態に限定されるものではなく、以下に説明する部材、材料等は、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。また図面において同一符号は同等あるいは同一のものを示し、各構成要素間の大きさや位置関係などは便宜上のものであり、実態を反映したものではない。
【0014】
(実施形態1)
本実施形態の電波センサ装置100Aは、
図26で説明した電波センサ装置100同様、対象物200が存在する空間に高周波信号(マイクロ波帯域またはミリ波帯域の電波)を放射する送信アンテナ10と、対象物200からの高周波信号の反射波を受信する受信アンテナ11と、所定の周波数の高周波信号を発生させる発振器12と、発振器12で発生する高周波信号を増幅して送信アンテナ10に供給する送信側増幅器13と、受信アンテナ11で受信される反射波を増幅する受信側増幅器14と、発振器12で発生する高周波信号と受信側増幅器14で増幅される反射波を混合し、低周波の受信信号を生成するミキサ15と、ミキサ15で生成される低周波の受信信号を増幅する増幅器16と、増幅器16で増幅される受信信号をA/D変換するA/D変換器17と、A/D変換器17で変換される受信信号に所望の信号処理を行う信号処理装置18とで構成されている。信号処理装置18の信号処理に応じて、対象物200の有無の検知、移動状態の検知、対象物までの距離の検知等を行うことができる。発振器12やミキサ15等が形成されているセンサ回路部19は、発振器12やミキサ15等で構成される高周波回路部とミキサ15から出力された低周波の信号の増幅およびAD変換回路とデジタル化された信号を用いて演算を行い必要な情報を抽出する信号処理回路で形成される。高周波回路部は、プリント基板上にセンサ回路部を構成する機能素子を配置するマイクロ波集積回路あるいはIC(集積回路)基板上にセンサ回路部を構成する機能素子を配置するモノリシックマイクロ波・ミリ波集積回路で構成することができる。
【0015】
本実施形態の電波センサ装置100Aは、送信アンテナ10と受信アンテナ11を鋭い指向性と高いアンテナ効率が得られるホーンアンテナ構造とし、かつセンサ回路部19と送信アンテナ部21および受信アンテナ部23とを含むセンサ回路領域101Aの小型化が可能な構成としている。センサ回路領域101Aの小型化に伴い、伝送線路を短くすることができ、送信および受信効率を高くすることが可能となっている。
図1は、本発明の実施形態1の電波センサ装置100Aにおける送信アンテナ10と受信アンテナ11の平面模式図であり、送信アンテナ10と受信アンテナ11が配置される基板20の一部を示している。
図2は、
図1に示す電波センサ装置100AのA-A線における断面模式図である。
図1および2に示すように本実施形態1に係るセンサ領域101Aは、基板20上に送信アンテナ10を構成する送信アンテナ部21と受信アンテナ11を構成する受信アンテナ部23が配置されている。送信アンテナ部21と受信アンテナ部23はそれぞれコプレーナー型パッチアンテナで構成することができる。ここで、送信アンテナ部21と受信アンテナ部23は、壁部27が配置できる程度に近接して配置することができ、例えば送信アンテナ部21と受信アンテナ部23のそれぞれの中心間の寸法を使用される高周波信号の1波長とすることができる。その結果、センサ回路部19と送信アンテナ部21および受信アンテナ部23とを含むセンサ回路領域101Aの小型化が可能となる。
【0016】
送信アンテナ部21と受信アンテナ部23を覆うように配置される送信ホーン部22Aと受信ホーン部24Aは、送信アンテナ部21と受信アンテナ部23の間に壁部27を配置する構成とされている。壁部27は接地面26に接続され、送信アンテナ10と受信アンテナ11のアイソレーション(分離)特性を改善する役割を有する。壁部27の壁面を除く送信ホーン部22Aと受信ホーン部24Aの内壁は、所望のアンテナ利得および指向性が得られるように設計される一般的な円錐ホーンの内壁の一部で構成することができる。本実施形態においては、所望の特性が得られる円錐ホーンが壁部27で高さ方向に均等に分割され、この分割された円錐ホーンの一方の内壁と壁部27の一方の面により送信ホーン部22Aが構成され、円錐ホーンの他方の内壁と壁部27の他方の面により受信ホーン部24Aが構成される。送信ホーン部22Aと受信ホーン部24Aはそれぞれ、接地面26を介して基板20上に配置され、送信アンテナ部21および受信アンテナ部23近傍の形状を矩形導波管形状とし、開口面積が送信アンテナ部21および受信アンテナ部23から離れる高さ方向に拡がるように構成され、開口部がそれぞれ半円形状となる。
【0017】
また壁部27が基板20の表面に対して垂直に配置され、送信ホーン部22Aおよび受信ホーン部24Aの開口端側から、それぞれ送信アンテナ部21および受信アンテナ部23に向かって垂直な壁面領域が構成されている。このように壁部27により空間を均等に分割することで、隣接して配置される送信ホーン部22Aと受信ホーン部24Aを壁部27に対して対称形状とすることができ、特性の揃った送信アンテナ10と受信アンテナ11が隣接して配置される。ここで「垂直に配置」とは、基板20の表面に対して完全に直交する方向に壁面領域が形成される場合のほか、所望の特性が得られる範囲内であって基板20の表面に対して直交する方向からわずかに傾いた壁面領域が形成される場合を含むものとする。また壁面領域の一部が基板20の表面に対して直交する方向からわずかに傾いている場合も含むものとする。例えば、送信ホーン部22Aと受信ホーン部24Aをダイカストなどの金型を用いた方法で作製する場合、壁面には抜き勾配が必要となり、必ずしも垂直とはならない。
【0018】
センサ回路部19に形成されている発振器12で発生する高周波信号は、伝送線路25を通り送信アンテナ部21に伝送される。本実施形態では、送信アンテナ部21と受信アンテナ部23のそれぞれの中心間の寸法を使用される高周波信号の1波長程度まで隣接して配置するため、伝送線路25の長さを短くすることができる。そのため伝送線路25の伝送による損失が少なく、発振器12で発生する高周波信号は、コプレーナー型のパッチアンテナで構成される送信アンテナ部21から効率的に送出され、送信ホーン部22Aにおいて所望の方向に電波が向かうように整形されて、送信アンテナ10の開口部から空間に放射される。そのため、所望の方向での利得(アンテナ利得)が高められる。本実施形態では、
図1に示す壁部27に平行なN軸に平行な面をE面、N軸に直交するM軸に平行な面をH面として説明する。
【0019】
高周波信号が放射された空間に対象物200が存在すると、送信アンテナ10から放射された高周波信号は、対象物200で反射する。この反射波は受信アンテナ11が受信する。受信アンテナ11では、反射波が受信ホーン部24Aを通り受信アンテナ部23で導波管モードから伝送線路モードに変換され、伝送線路25を通りセンサ回路部19に伝送される。センサ回路部19で所望の信号処理を施すことにより、対象物200の有無の検知、移動状態の検知、対象物までの距離の検知等を行うことができる。なお、センサ回路部19は、所望の検知を行うために必要な処理回路を含む信号処理装置に相当する。
【0020】
図3は、本実施形態の電波センサ装置100Aの送信アンテナ10と受信アンテナ11のアンテナ利得を説明する図であり、
図1に示す壁部27に平行な面(E面)のアンテナ利得を示している。
図3において、送信アンテナ10のアンテナ利得を実線で示し、受信アンテナ11のアンテナ利得を破線で示しており、角度0度は
図1に示す送信アンテナ部21の中心または受信アンテナ部23の中心における基板20の表面に対して垂直方向となる。
図3に示すように、送信アンテナ10と受信アンテナ11は、開口の正面(送信アンテナ部21および受信アンテナ部23が配置される基板20の表面に対して垂直方向)のアンテナ利得が最も高いことがわかる。また送信アンテナ10と受信アンテナ11との間でアンテナ利得に差がないことがわかる。
【0021】
図4は、本実施形態の電波センサ装置100Aの送信アンテナ10と受信アンテナ11のアンテナ利得を説明する図であり、
図1に示す壁部27に直交する面(H面)のアンテナ利得を示している。
図4において、送信アンテナ10のアンテナ利得を実線で示し、受信アンテナ11のアンテナ利得は破線で示している。
図4に示すように、送信アンテナ10と受信アンテナ11は、開口の正面のアンテナ利得が最も高いことがわかる。また送信アンテナ10と受信アンテナ11との間でアンテナ利得にほとんど差がないことがわかる。
【0022】
図5は、
図3および4に示すアンテナ利得の送信アンテナ10と受信アンテナ11を備えた電波センサ装置100Aの検知エリアを説明する図であり、ミリ波帯域(周波数60GHz)の高周波信号を送受信した場合の例である。
図5において、
図1に示す壁部27に平行な面(E面)の検知エリアを実線で示し、直交する面(H面)の検知エリアを破線で示す。このような検知エリアを有する電波センサ装置100Aでは、例えば電波センサ装置100からみたa-a線の検知エリアの形状は、
図6に示すように楕円形の検知エリアとなる。また本実施形態ではホーンアンテナ構造とすることで、サイドローブの少ない鋭い指向性が得られていることが確認できる。さらにまた伝送線路25が短く、送信および受信効率が高く、アンテナ効率が高いため、送信アンテナ10および受信アンテナ11をパッチアンテナで構成する場合と比較して同じ開口サイズでも遠方の対象物を検知することができる。
【0023】
(実施形態2)
次に、本発明の電波センサ装置の実施形態2について説明する。本実施形態の電波センサ装置100Bは、実施形態1同様、
図26で説明した電波センサ装置100と同様の構成と信号処理により対象物200の有無の検知、移動状態の検知、対象物までの距離の検知等を行うことができる。また、送信アンテナ10と受信アンテナ11の形状が実施形態1と相違している。
【0024】
本実施形態の電波センサ装置100Bも、送信アンテナ10と受信アンテナ11を鋭い指向性と高いアンテナ効率が得られるホーンアンテナ構造とし、かつセンサ回路部19と送信アンテナ部21および受信アンテナ部23とを含むセンサ回路領域101Bの小型化が可能な構成としている。センサ回路領域101Bの小型化に伴い、伝送線路を短くすることができ、送信および受信効率を高くすることが可能となっている。
図7は、本発明の実施形態2の電波センサ装置100Bにおける送信アンテナ10と受信アンテナ11の平面模式図であり、送信アンテナ10と受信アンテナ11が配置される基板20の一部を示している。
図8は、
図7に示す電波センサ装置100BのB-B線における断面模式図である。
図7および8に示すように本実施形態2に係る電波センサ装置100Bは、基板20上に送信アンテナ10を構成する送信アンテナ部21と受信アンテナ11を構成する受信アンテナ部23が配置されている。送信アンテナ部21と受信アンテナ部23はそれぞれコプレーナー型パッチアンテナで構成することができる。ここで、送信アンテナ部21と受信アンテナ部23は、壁部27が配置できる程度に近接して配置することができ、例えば送信アンテナ部21と受信アンテナ部23のそれぞれの中心間の寸法を使用される高周波信号の1波長とすることができる。その結果、センサ回路部19と送信アンテナ部21および受信アンテナ部23とを含むセンサ回路領域101Bの小型化が可能となる。
【0025】
送信アンテナ部21と受信アンテナ部23を覆うように配置される送信ホーン部22Bと受信ホーン部24Bは、送信アンテナ部21と受信アンテナ部23の間に壁部27を配置する構成とされている。壁部27は接地面26に接続され、送信アンテナ10と受信アンテナ11のアイソレーション(分離)特性を改善する役割を有する。壁部27の壁面を除く送信ホーン部22Bと受信ホーン部24Bの内壁は、所望のアンテナ利得および指向性が得られるように設計される一般的な角錐ホーンの内壁の一部で構成することができる。本実施形態においては、所望の特性が得られる角錐ホーンが壁部27で高さ方向に均等に分割され、この分割された角錐ホーンの一方の内壁と壁部27の一方の面により送信ホーン部22Bが構成され、角錐ホーンの他方の内壁と壁部27の他方の面により受信ホーン部24Bが構成される。送信ホーン部22Bと受信ホーン部24Bはそれぞれ、接地面26を介して基板20上に配置され、送信アンテナ部21および受信アンテナ部23近傍の形状を矩形導波管形状とし、開口面積が送信アンテナ部21および受信アンテナ部23から離れる高さ方向に拡がるように構成され、送信ホーン部22Bと受信ホーン部24Bの開口部はそれぞれ正方形となる。
【0026】
また壁部27が基板20の表面に対して垂直に配置され、送信ホーン部22Bおよび受信ホーン部24Bの開口端側から、それぞれ送信アンテナ部21および受信アンテナ部23に向かって垂直な壁面領域が構成されている。このように壁部27により空間を均等に分割することで、隣接して配置される送信ホーン部22Bと受信ホーン部24Bを壁部27に対して対称形状とすることができ、特性の揃った送信アンテナ10と受信アンテナ11が隣接して配置される。本実施形態においても、「垂直に配置」とは、基板20の表面に対して完全に直交する方向に壁面領域が形成される場合のほか、所望の特性が得られる範囲内であって基板20の表面に対して直交する方向からわずかに傾いた壁面領域が形成される場合を含むものとする。また壁面領域の一部が基板20の表面に対して直交する方向からわずかに傾いている場合も含むものとする。
【0027】
センサ回路部19に形成されている発振器12で発生する高周波信号は、伝送線路25を通り送信アンテナ部21に伝送される。本実施形態においても、送信アンテナ部21と受信アンテナ部23のそれぞれの中心間の寸法を使用される高周波信号の1波長程度まで隣接して配置できるため、伝送線路25の長さを短くすることができる。そのため伝送線路25の伝送による損失が少なく、発振器12で発生する高周波信号は、コプレーナー型のパッチアンテナで構成される送信アンテナ部21から効率的に送出され、送信ホーン部22Bにおいて所望の方向に電波が向かうように整形されて送信アンテナ10の開口部から空間に放射される。そのため、所望の方向での利得(アンテナ利得)が高められる。本実施形態では、
図7に示す壁部27に平行な面をE面、E面に直交する面をH面として説明する。
【0028】
高周波信号が放射された空間に対象物200が存在すると、送信アンテナ10から放射された高周波信号は、対象物200で反射する。この反射波は受信アンテナ11が受信する。受信アンテナ11では、反射波が受信ホーン部24Bを通り受信アンテナ部23で導波管モードから伝送線路モードに変換され、伝送線路25を通りセンサ回路部19に伝送される。センサ回路部19で所望の信号処理を施すことにより、対象物200の有無の検知、移動状態の検知、対象物までの距離の検知等を行うことができる。
【0029】
図9は、本実施形態の電波センサ装置100Bの送信アンテナ10と受信アンテナ11のアンテナ利得を説明する図であり、
図7に示す壁部27に直交する面(H面)のアンテナ利得を示している。
図9において、送信アンテナ10のアンテナ利得を実線で示し、受信アンテナ11のアンテナ利得を破線で示している。
図9に示すように、送信アンテナ10と受信アンテナ11は、開口の正面からずれた位置でアンテナ利得が最も高いことがわかる。これは、
図10に本実施形態の電波センサ装置100Bの送信アンテナ10から高周波信号が放射される場合の電界分布図を示すように、高周波信号が開口の正面から傾いて放射されるため、アンテナ利得が最も高い位置が開口の正面からずれることがわかる。受信アンテナ11についても同様で、開口の正面から送信アンテナ10の傾きとは逆の方向に傾いた方向からの受信アンテナ利得が最も高くなる。
【0030】
図11は、本実施形態の電波センサ装置100Bの送信アンテナ10と受信アンテナ11のアンテナ利得を説明する図であり、
図7に示す壁部27に平行な面(E面)のアンテナ利得を示している。
図11において、送信アンテナ10のアンテナ利得を実線で示し、受信アンテナ11のアンテナ利得は破線で示している。
図11に示すように、送信アンテナ10と受信アンテナ11は、開口の正面のアンテナ利得が最も高いことがわかる。また送信アンテナ10と受信アンテナ11との間でアンテナ利得にほとんど差がないことがわかる。
【0031】
図12は、
図9および11に示すアンテナ利得の送信アンテナ10と受信アンテナ11を備えた電波センサ装置100Bの検知エリアを説明する図であり、ミリ波帯域(周波数60GHz)の高周波信号を送受信した場合の例である。
図12において、
図7に示す壁部27に平行な面(E面)の検知エリアを実線で示し、壁部27に直交する面(H面)の検知エリアを破線で示す。送信アンテナ10と受信アンテナ11の指向性がずれているため正面方向の検知距離はアンテナの開口面積から期待される検知距離より短いものとなっているが、
図12に示すように、送信アンテナ10と受信アンテナ11の前方の検知が可能であることがわかる。また本実施形態ではホーンアンテナ構造とすることで、鋭い指向性が得られていることが確認できる。このように送信アンテナ10と受信アンテナ11の指向性がわずかに正面からずれている場合であっても、電波センサ装置100Bとして使用可能であることが確認された。
【0032】
なお本実施形態では、送信アンテナ10の送信ホーン部22Bと、受信アンテナ11の受信ホーン部24Bの開口において、それぞれE面とH面の幅をほぼ同じ寸法として正方形の開口とした場合について説明したが、送信ホーン部22Bと受信ホーン部24Bの開口において、E面とH面の比は任意に選択した矩形とすることもできる。さらに任意の多角形とすることもできる。また、送信ホーン部22Bと受信ホーン部24Bを壁部27に対して非対称に形成することも可能である。
【0033】
次に、実施形態2の変形例について説明する。一般的に、電波センサ装置を用いる場合、例えば電波法により送信アンテナの送信電力および送信アンテナ利得の最大値が制限される場合がある。そこで実施形態2の変形例は、送信アンテナの開口面積より受信アンテナの開口面積を大きくすることで、受信アンテナのアンテナ利得を大きくする構成としている。
図13は、実施形態2の変形例の電波センサ装置における送信アンテナと受信アンテナの平面模式図である。送信アンテナ10の開口面積と比較し、受信アンテナ11の開口面積が大きくなっている。また実施形態2の別の変形例では、送信アンテナ10の数より受信アンテナ11の数を多くすることで、複数の受信回路を備える構成とすることもできることを示している。
図14は、実施形態2の別の変形例の電波センサ装置における送信アンテナと受信アンテナの平面模式図である。送信アンテナ10の数と比較し、受信アンテナ11の数が多くなっている。このように送信アンテナ部10と受信アンテナ11の開口面積や数を適宜設定することで、送信アンテナ10と受信アンテナ11のアンテナ利得を調整することが可能となる。また、複数の受信回路を備えることで、対象物が存在する角度の検知や干渉対策ができる高機能な電波センサ装置とすることも可能となる。
【0034】
(実施形態3)
次に、本発明の電波センサ装置の実施形態3について説明する。本実施形態の電波センサ装置100Cは、実施形態1同様、
図26で説明した電波センサ装置100と同様の構成と信号処理により対象物200の有無の検知、移動状態の検知、対象物までの距離の検知等を行うことができる。また、送信アンテナ10と受信アンテナ11の形状が実施形態1および2と相違している。
【0035】
本実施形態の電波センサ装置100Cも、送信アンテナ10と受信アンテナ11を鋭い指向性と高いアンテナ効率が得られるホーンアンテナ構造とし、かつセンサ回路部19と送信アンテナ部21および受信アンテナ部23とを含むセンサ回路領域101Cの小型化が可能な構成としている。
図15は、本発明の実施形態3の電波センサ装置100Cにおける送信アンテナ10と受信アンテナ11の断面模式図であり、送信アンテナ10と受信アンテナ11が配置される基板20の一部を示している。本実施形態の電波センサ装置100Cは、上記実施形態2の電波センサ装置100Bと同一の平面模式図で表すことができるので、平面模式図については図示を省略する。
図15は、上記実施形態2で説明した
図8に相当する断面模式図となる。
図15に示すように本実施形態3に係る電波センサ装置100Cは、基板20上に送信アンテナ10を構成する送信アンテナ部21と受信アンテナ11を構成する受信アンテナ部23が配置されている。送信アンテナ部21と受信アンテナ部23はそれぞれコプレーナー型パッチアンテナで構成することができる。ここで、送信アンテナ部21と受信アンテナ部23は、壁部27が配置できる程度に近接して配置することができ、例えば送信アンテナ部21と受信アンテナ部23のそれぞれの中心間の寸法を使用される高周波信号の1波長とすることができる。その結果、センサ回路部19と送信アンテナ部21および受信アンテナ部23とを含むセンサ回路領域101Cの小型化が可能となる。
【0036】
送信アンテナ部21と受信アンテナ部23を覆うように配置される送信ホーン部22Cと受信ホーン部24Cは、送信アンテナ部21と受信アンテナ部23の間に壁部27を配置する構成とされている。壁部27は接地面26に接続され、送信アンテナ10と受信アンテナ11のアイソレーション(分離)特性を改善する役割を有する。壁部27の壁面を除く送信ホーン部22Cと受信ホーン部24Cの内壁は、所望のアンテナ利得および指向性が得られるように設計される一般的な複モードホーンの内壁の一部で構成することができる。本実施形態においては、所望の特性が得られる複モードホーンが壁部27で高さ方向に均等に分割され、この分割された複モードホーンの一方の内壁と壁部27の一方の面により送信ホーン部22Cが構成され、複モードホーンの他方の内壁と壁部27の他方の面により受信ホーン部24Cが構成される。送信ホーン部22Cと受信ホーン部24Cはそれぞれ、接地面26を介して基板20上に配置され、送信アンテナ部21および受信アンテナ部23近傍の形状を矩形導波管形状とし、開口面積が送信アンテナ部21および受信アンテナ部23から離れる高さ方向に拡がり、その拡がりが所定の位置で変化するように構成されている。送信ホーン部22Cと受信ホーン部24Cの開口部はそれぞれ正方形となる。
【0037】
また壁部27が基板20の表面に対して垂直に配置され、送信ホーン部22Cおよび受信ホーン部24Cの開口端側から、それぞれ送信アンテナ部21および受信アンテナ部23に向かって垂直な壁面領域が構成されている。このように壁部27により空間を均等に分割することで、隣接して配置される送信ホーン部22Cと受信ホーン部24Cを壁部27に対して対称形状とすることができ、特性の揃った送信アンテナ10と受信アンテナ11が隣接して配置される。本実施形態においても、「垂直に配置」とは、基板20の表面に対して完全に直交する方向に壁面領域が形成される場合のほか、所望の特性が得られる範囲内であって基板20の表面に対して直交する方向からわずかに傾いた壁面領域が形成される場合を含むものとする。また壁面領域の一部が基板20の表面に対して直交する方向からわずかに傾いている場合も含むものとする。
【0038】
センサ回路部19に形成されている発振器12で発生する高周波信号は、伝送線路25を通り送信アンテナ部21に伝送される。本実施形態においても、送信アンテナ部21と受信アンテナ部23のそれぞれの中心間の寸法を使用される高周波信号の1波長程度まで隣接して配置できるため、伝送線路25の長さを短くすることができる。そのため伝送線路25の伝送による損失が少なく、発振器12で発生する高周波信号は、コプレーナー型のパッチアンテナで構成される送信アンテナ部21から効率的に送出され、送信ホーン部22Cにおいて所望の方向に電波が向かうように整形されて、送信アンテナ10の開口部から空間に放射される。そのため、所望の方向での利得(アンテナ利得)が高められる。本実施形態においても、壁部27に平行な面をE面、E面に直交する面をH面として説明する。
【0039】
高周波信号が放射された空間に対象物200が存在すると、送信アンテナ10から放射された高周波信号は、対象物200で反射する。この反射波を受信アンテナ11が受信する。受信アンテナ11では、反射波が受信ホーン部24Cを通り受信アンテナ部23で導波管モードから伝送線路モードに変換され、伝送線路25を通りセンサ回路部19に伝送される。センサ回路部19で所望の信号処理を施すことにより、対象物200の有無の検知、移動状態の検知、対象物までの距離の検知等を行うことができる。
【0040】
図16に本実施形態の電波センサ装置100Cの送信アンテナ10から高周波信号が放射される場合の電界分布図を示す。上記実施形態2の電波センサ装置100Bで説明した
図10に示す電界分布図と比較して、高周波信号が放射される方向が正面側に向いていることがわかる。このように高周波信号が放射される方向を変える技術は、一般的な複モードホーンを設計する技術を適用することにより可能となる。
【0041】
図17は、本実施形態の電波センサ装置100Cの送信アンテナ10と受信アンテナ11のアンテナ利得を説明する図であり、壁部27に直交する面(H面)のアンテナ利得を示している。
図17において、送信アンテナ10のアンテナ利得を実線で示し、受信アンテナ11のアンテナ利得を破線で示している。
図17に示すように、送信アンテナ10と受信アンテナ11は、開口の正面のアンテナ利得が最も高いことがわかる。またホーン形状が非対称なためサイドローブの形状が非対称となり片側に比較的大きなサイドローブがあらわれているが、送信アンテナ10のサイドローブと受信アンテナ11のサイドローブの傾きが対称になるため送信アンテナ10のサイドローブが大きな角度では受信アンテナ11のサイドローブが小さくなる。
【0042】
図18は、本実施形態の電波センサ装置100Cの送信アンテナ10と受信アンテナ11のアンテナ利得を説明する図であり、壁部27に平行な面(E面)のアンテナ利得を示している。
図18において、送信アンテナ10のアンテナ利得を実線で示し、受信アンテナ11のアンテナ利得は破線で示している。
図18に示すように、送信アンテナ10と受信アンテナ11は、開口の正面のアンテナ利得が最も高いことがわかる。また送信アンテナ10と受信アンテナ11との間でアンテナ利得にほとんど差がないことがわかる。
【0043】
図19は、
図17および18に示すアンテナ利得の送信アンテナ10と受信アンテナ11を備えた電波センサ装置100Cの検知エリアを説明する図であり、ミリ波帯域(周波数60GHz)の高周波信号を送受信した場合の例である。
図19において、壁部27に平行な面(E面)の検知エリアを実線で示し、壁部27に直交する面(H面)の検知エリアを破線で示す。
図19に示すように、電波センサ装置100Cは、送信アンテナ10と受信アンテナ11の前方の検知が可能であることがわかる。また本実施形態ではホーンアンテナ構造とすることで、鋭い指向性が得られていることが確認できる。特に本実施形態の電波センサ装置100Cでは、上記実施形態2で説明した電波センサ装置100Bのように高周波信号が放射される方向が正面から傾くことが抑えられ、電波センサ装置としての検知距離を長くすることができ好ましい。本実施形態の一例では、H面、E面の両方の指向性が鋭く(狭く)、かつアンテナの正面方向に指向性を揃えることができるため正面のアンテナ利得が大きく、検知エリアを長くすることができ、より遠方の対象物を検知することができる。本実施形態の一例では、実施形態2で説明した送信アンテナ10および受信アンテナ11と同じ開口サイズで検知エリアを約2倍にすることができており、より遠方の対象物を検知することができる。また、非対称なサイドローブの影響は送信アンテナ10と受信アンテナ11のアンテナ利得の合成により補償され検知エリアとして対称性のよい形状が得られていることも確認できる。
【0044】
なお本実施形態では、送信アンテナ10の送信ホーン部22Cと、受信アンテナ11の受信ホーン部24Cのそれぞれの開口のE面とH面の幅をほぼ同じ寸法として正方形の開口とした場合について説明したが、送信ホーン部22Cと受信ホーン部24Cの開口において、E面とH面の比は任意に選択した矩形とすることもできる。さらに任意の多角形とすることもできる。また、送信ホーン部22Cと受信ホーン部24Cを壁部27に対して非対称に形成することも可能である。
【0045】
本実施形態においても、上記実施形態2の変形例で説明したように、送信アンテナ10の開口面積と比較して受信アンテナ11の開口面積を大きくすることができる。また上記実施形態2の別の変形例で説明したように、送信アンテナ10の数と比較して受信アンテナ11の数を多くすることもできる。このように送信アンテナ10と受信アンテナ11の開口面積や数を適宜設定することで、送信アンテナ10と受信アンテナ11のアンテナ利得を調整することが可能となる、また、複数の受信回路を備えることで、対象物が存在する角度の検知や干渉対策ができる高機能な電波センサ装置とすることも可能となる。
【0046】
(実施形態4)
次に、本発明の電波センサ装置の実施形態4について説明する。本実施形態の電波センサ装置100Dは、実施形態1同様、
図26で説明した電波センサ装置100と同様の構成と信号処理により対象物200の有無の検知、移動状態の検知、対象物までの距離の検知等を行うことができる。また、送信アンテナ10と受信アンテナ11の形状が実施形態1~3と相違している。
【0047】
本実施形態の電波センサ装置100Dも、送信アンテナ10と受信アンテナ11を鋭い指向性と高いアンテナ効率が得られるホーンアンテナ構造とし、かつセンサ回路部19と送信アンテナ部21および受信アンテナ部23とを含むセンサ回路領域101Dの小型化が可能な構成としている。
図20は、本発明の実施形態4の電波センサ装置100Dにおける送信アンテナ10と受信アンテナ11の平面模式図であり、送信アンテナ10と受信アンテナ11が配置される基板20の一部を示している。
図21は、
図20に示す電波センサ装置100DのD-D線における断面模式図である。
図20および21に示すように本実施形態4に係る電波センサ装置100Dは、基板20上に送信アンテナ10を構成する送信アンテナ部21と受信アンテナ11を構成する受信アンテナ部23が配置されている。送信アンテナ部21と受信アンテナ部23はそれぞれコプレーナー型パッチアンテナで構成することができる。ここで、送信アンテナ部21と受信アンテナ部23は、壁部27が配置できる程度に近接して配置することができ、例えば送信アンテナ部21と受信アンテナ部23のそれぞれの中心間の寸法を使用される高周波信号の1波長とすることができる。その結果、センサ回路部19と送信アンテナ部21および受信アンテナ部23とを含むセンサ回路領域101Dの小型化が可能となる。
【0048】
送信アンテナ部21と受信アンテナ部23を覆うように配置される送信ホーン部22Dと受信ホーン部24Dは、送信アンテナ部21と受信アンテナ部23の間に壁部27を配置する構成とされている。壁部27は接地面26に接続され、送信アンテナ10と受信アンテナ11のアイソレーション(分離)特性を改善する役割を有する。壁部27の壁面を除く送信ホーン部22Dと受信ホーン部24Dの内壁は、所望のアンテナ利得および指向性が得られるように設計される一般的な複モードホーンの内壁の一部で構成することができる。本実施形態においては、E面またはH面のいずれか一方の開口を広くし、もう一方の開口は広くしない短冊状の開口としている。このような形状の開口とすることにより送信アンテナ10および受信アンテナ11の指向性は開口の広い方向においては狭い指向性となり、開口の狭い方向においては広い指向性となる。この指向性の広がり方向を送信アンテナ10と受信アンテナ11で同じ形状となる様に配置することで、検知エリアは、例えば水平方向に広く、垂直方向には狭い扇状の形状とすることができる。このような指向性の送信アンテナ10および受信アンテナ11を備える電波センサ装置100Dは、水平方向の検知を行う場合に、観測に不要な上下方向の指向性を狭くし、所望の方向での利得(アンテナ利得)を高くするとともに、地面や天井などによって反射された電波による干渉なども低減することが可能となり、所望の方向の検知エリアを広くすることが可能となる。
【0049】
本実施形態の電波センサ装置100Dの送信アンテナ10から高周波信号が放射される場合、
図21に示す断面における電界分布は、上記実施形態3で説明した
図16に示す電界分布とほぼ同じとなる。
【0050】
図22は、本実施形態の電波センサ装置100Dの送信アンテナ10と受信アンテナ11のアンテナ利得を説明する図であり、
図20および21に示す壁部27に直交する面(H面)のアンテナ利得を示している。
図22において、送信アンテナ10のアンテナ利得を実線で示し、受信アンテナ11のアンテナ利得を破線で示している。
図22に示すように、送信アンテナ10と受信アンテナ11は、上記実施形態3で説明した
図17に示すアンテナ利得とほぼ同じとなっていることがわかる。
【0051】
図23は、本実施形態の電波センサ装置100Dの送信アンテナ10と受信アンテナ11のアンテナ利得を説明する図であり、
図20および21に示す壁部27に平行な面(E面)のアンテナ利得を示している。
図23において、送信アンテナ10のアンテナ利得を実線で示し、受信アンテナ11のアンテナ利得は破線で示している。
図23に示すように、送信アンテナ10と受信アンテナ11は、上記実施形態3で説明した
図18に示すアンテナ利得と比較して広いことがわかる。
【0052】
図24は、
図22および23に示すアンテナ利得の送信アンテナ10と受信アンテナ11を備えた電波センサ装置100Dの検知エリアを説明する図であり、ミリ波帯域(周波数60GHz)の高周波信号を送受信した場合の例である。
図23において、壁部27に平行な面(E面)の検知エリアを実線で示し、壁部27に直交する面(H面)の検知エリアを破線で示す。
図24に示すように、本実施形態の電波センサ装置100Dの指向性は、H面では狭く、E面では広い扇型の形状を有することがわかる。そこで、例えばH面を地面に垂直になる様に設置することで広い角度で、遠方の検知が可能となる。この場合、地面などからの反射波は低減され、好ましい。
【0053】
なお上記説明では、送信アンテナ10の送信ホーン部22Dと、受信アンテナ11の受信ホーン部24Dのそれぞれの開口のE面を狭く、H面の幅を広くしたが、
図20および21に示す壁部27に直交する面をE面、E面に直交する面をH面とすることも可能である。
【0054】
次に、実施形態4の変形例について説明する。
図25は、実施形態4の変形例の電波センサ装置における送信アンテナと受信アンテナの平面模式図である。本実施形態の変形例では、複数の送信アンテナ10および複数の受信アンテナ11が配置されている。このように複数の送信アンテナ10および受信アンテナ11を配置することで、複数の受信アンテナ11間の受信信号の位相差から対象物の角度(位置)の検出や、送信アンテナ10を切り替えることによる干渉の影響の低減などの様々な応用に適用することが可能である。なお、送信アンテナ10および受信アンテナ11の配置、数量は、
図25に示す例に限定されず任意に設定できる。本実施形態の変形例では、上記実施形態4で説明した電波センサ装置が隣接した構造となり、実施形態4同様、センサ回路部と送信アンテナ部21および受信アンテナ部23を含むセンサ回路領域101D1の小型化が可能となる。
【0055】
以上の各実施形態において、送信アンテナ部21および受信アンテナ部23は、コプレーナー型パッチアンテナ構造で構成すると説明したが、本発明はそのような形態に限定されるものではなく、スロットアンテナ構造や導波管プローブ構造に変更することが可能である。また、上記実施形態に限定されず受信アンテナ11の数を送信アンテナ10の数より適宜多く配置するなど種々変更することができる。さらにまた、電波センサ装置100A~Dは、送信ホーン部22A~Dと受信ホーン部24A~Dを構成する壁部27に、送信アンテナ部21および受信アンテナ部23が配置される平面に垂直な壁面領域を設けることで小型化が実現できる。上記実施形態においては、壁部27は全体が上記平面に垂直な壁面領域となっているが、電波センサ装置100A~Dの小型化が可能な程度に、送信ホーン部22A~Dおよび受信ホーン部24A~Dの開口端側からそれぞれ送信アンテナ部21および受信アンテナ部23に向けての一定領域を上記平面に垂直な壁面領域とすればよい。
【0056】
また、送信アンテナ10および受信アンテナ11について、E面とそれに直交するH面を特定して説明したが、E面とH面が入れ替わった場合であっても問題はない。
【0057】
上記実施形態で説明した送信ホーン部22A~Dおよび受信ホーン部24A~Dを、一体として、高さ方向に隔壁を有する貫通孔を備えた円柱または角柱の部材で構成すると、基板20上に送信アンテナ10および受信アンテナ11を接合する際の接着性を向上させることができる。また送信アンテナ10および受信アンテナ11全体の外形を円柱形状として外周にネジ加工を施すことにより、電波センサ装置100A~Dをネジ留めにより設置することも容易となる。
【0058】
(まとめ)
(1)本発明の電波センサ装置の一実施形態は、高周波信号を発生させる発振器と、前記高周波信号を空間に放射する送信アンテナと、対象物からの前記高周波信号の反射波を受信する受信アンテナと、前記高周波信号と前記受信アンテナで受信された反射波とを混合して受信信号を生成させるミキサと、前記受信信号から前記対象物の検知信号を生成させる信号処理装置とを備え、前記送信アンテナは、送信アンテナ部と送信ホーン部とを有し、前記受信アンテナは、受信アンテナ部と受信ホーン部とを有し、前記送信アンテナ部および前記受信アンテナ部は、同一平面上に離間して配置され、前記送信ホーン部の内壁および前記受信ホーン部の内壁は、前記送信アンテナと前記受信アンテナとを分離する壁部を有し、前記壁部は、前記送信ホーン部および前記受信ホーン部の開口端側からそれぞれ前記送信アンテナ部および前記受信アンテナ部に向けて、前記平面に垂直な壁面領域を有し、かつ前記送信ホーン部と前記受信ホーン部が、前記壁部を介して隣接して配置されている。
【0059】
本実施形態の電波センサ装置によれば、送信ホーン部の内壁および受信ホーン部の内壁は、送信アンテナと受信アンテナを分離する壁部が、開口端側からそれぞれ送信アンテナ部および受信アンテナ部に向けて垂直な壁面領域を有し、送信ホーン部と受信ホーン部が隣接して配置されているため、小型化が可能となる。また送信アンテナと受信アンテナは、ホーンアンテナ構造で構成されるため、鋭い指向性と高いアンテナ利得を有する電波センサ装置を提供するこが可能となる。
【0060】
(2)前記送信ホーン部および前記受信ホーン部は、円錐ホーンが前記壁部により高さ方向に均等に分割されることにより構成することができる。
【0061】
(3)前記送信ホーン部および前記受信ホーン部は、角錐ホーンが前記壁部により高さ方向に均等に分割されることにより構成することができる。
【0062】
(4)前記送信ホーン部および前記受信ホーン部は、複モードホーンが前記壁部により高さ方向に均等に分割されることにより構成することができる。
【0063】
(5)前記送信ホーン部および前記受信ホーン部は一体として、高さ方向に隔壁を有する貫通孔を備えた円柱または角柱の部材からなり、前記隔壁が前記送信アンテナと前記受信アンテナとを分離する前記壁部とすることができる。
【符号の説明】
【0064】
100、100A~D 電波センサ装置
101、101A~D センサ回路領域
200 対象物
10 送信アンテナ
11 受信アンテナ
12 発振器
13 送信側増幅器
14 受信側増幅器
15 ミキサ
16 増幅器
17 A/D変換器
18 信号処理装置
19 センサ回路部
20 基板
21 送信アンテナ部
22、22A~D 送信ホーン部
23 受信アンテナ部
24、24A~D 受信ホーン部
25 伝送線路
26 接地面
27 壁部