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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024605
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】電力変換器及び電力変換器の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
H02M3/00 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126857
(22)【出願日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2022126755
(32)【優先日】2022-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500091520
【氏名又は名称】株式会社アイケイエス
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】可知 純夫
(72)【発明者】
【氏名】松井 剛生
(72)【発明者】
【氏名】今井 尊史
(72)【発明者】
【氏名】後藤 隆雄
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA20
5H730AS08
5H730AS17
5H730BB82
5H730DD02
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD31
5H730FD41
5H730FD51
5H730FF09
5H730FG05
5H730FG06
5H730FG07
5H730XX03
5H730XX15
5H730XX23
5H730XX35
(57)【要約】
【課題】並列の電力変換部の動作が不安定となるのを抑える。
【解決手段】電力変換器は、直流バスに対して直流電力を授受する第1電力変換部と、前記第1電力変換部に並列であって、前記直流バスに対して直流電力を授受する第2電力変換部と、一端が前記第1電力変換部に接続され他端が前記直流バスに電気的に接続される第1電線を流れる第1電流の方向と、一端が前記第2電力変換部に接続された他端が前記直流バスに電気的に接続される第2電線を流れる第2電流の方向とが逆となるように前記第1電線と前記第2電線とが貫通した零相変流器と、前記零相変流器の二次巻線の両端の電圧差に基づいて、前記第1電流と前記第2電流との差を演算する差分演算部と、前記差分演算部が演算した差に基づいて、前記差を減少させるように前記第1電力変換部又は前記第2電力変換部を制御する制御部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流バスに対して直流電力を授受する第1電力変換部と、
前記第1電力変換部に並列であって、前記直流バスに対して直流電力を授受する第2電力変換部と、
一端が前記第1電力変換部に接続され他端が前記直流バスに電気的に接続される第1電線を流れる第1電流の方向と、一端が前記第2電力変換部に接続された他端が前記直流バスに電気的に接続される第2電線を流れる第2電流の方向とが逆となるように前記第1電線と前記第2電線とが貫通した零相変流器と、
前記零相変流器の二次巻線の両端の電圧差に基づいて、前記第1電流と前記第2電流との差を演算する差分演算部と、
前記差分演算部が演算した差に基づいて、前記差を減少させるように前記第1電力変換部又は前記第2電力変換部を制御する制御部と、
を備える電力変換器。
【請求項2】
前記制御部は、前記差の平均値を減少させるように前記第1電力変換部と前記第2電力変換部を制御する
請求項1に記載の電力変換器。
【請求項3】
前記第1電力変換部及び前記第2電力変換部に並列で前記直流バスに対して直流電力を授受する1以上の電力変換部をさらに有し、
前記制御部は、前記第1電力変換部、前記第2電力変換部、及び前記電力変換部から前記直流バスへ流れる電流の差が減少するように、それぞれの電力変換部を制御する
請求項1に記載の電力変換器。
【請求項4】
直流バスに対して直流電力を授受する第1電力変換部と、
前記第1電力変換部に並列であって、前記直流バスに対して直流電力を授受する第2電力変換部と、
一端が前記第1電力変換部に接続され他端が前記直流バスに電気的に接続される第1電線を流れる第1電流の方向と、一端が前記第2電力変換部に接続された他端が前記直流バスに電気的に接続される第2電線を流れる第2電流の方向とが逆となるように前記第1電線と前記第2電線とが貫通した零相変流器と、
を備える電力変換器の制御方法であって、
前記零相変流器の二次巻線の両端の電圧差に基づいて、前記第1電流と前記第2電流との差を演算する差分演算ステップと、
前記差分演算ステップで演算した差に基づいて、前記差を減少させるように前記第1電力変換部又は前記第2電力変換部を制御する制御ステップと、
を有する電力変換器の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換器及び電力変換器の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
交流電力と直流電力の電力変換装置を並列に運転したときに出力が不釣り合いとなるのを防ぐ発明として例えば特許文献1に開示された発明がある。この発明に係る無停電電源装置は、負荷と並列に接続されて順逆両方向に電力変換可能な第1の変換器と、交流電源を開閉するスイッチと、スイッチと負荷との間に交流出力側を直列接続されて順逆両方向に電力変換可能な第2の変換器とを有する。この無停電電源装置は、交流電源電圧が正常な場合にはスイッチを閉じ、第2の変換器の交流出力電圧と交流電源電圧との和が所定の値となるように第2の変換器を制御するとともに、第1の変換器を第2の変換器と電力貯蔵装置とに電力を供給するように制御し、交流電源電圧が許容電圧範囲を逸脱したときには、スイッチを開いて、第1の変換器を前記負荷に印加する交流電圧が所定の値となるように制御する。
【0003】
この無停電電源装置を複数台、その入力電源および負荷を共通にして互いに並列運転するときは、負荷の電流を検出し、その検出信号から所望の負荷分担量を算出し、無停電電源装置の出力電流を検出する。そして、算出した負荷分担量を出力電流指令とし、出力電流指令と検出した出力電流とが一致するように制御する電流調節器(ACR)と、出力電圧振幅指令に基準波形を乗算して得られる瞬時電圧波形指令に電流調節器の出力を加算して得られる瞬時電圧波形指令と交流出力電圧瞬時波形との偏差を零にする電圧調節器(AVR)とを用い、この電圧調節器の出力に基準波形を乗算して得られる電圧波形指令に基づき第2の変換器を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4400442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電力を供給するネットワークにおいては、再生可能エネルギーを用いて発電する発電装置である太陽光発電装置(PhotoVoltaic:PV)、定置型蓄電装置、電気自動車(Electric Vehicle:EV)等の多種多様な直流機器を、電力変換器を介して直流バスに接続した電力ネットワーク(直流グリッド)がある。直流グリッドに用いられる電力変換器においては、大電力を得るためにDC/DC変換器を並列に設けたものがある。このような電力変換器において、例えば、電気自動車から直流バスへ電力を供給する場合、並列のDC/DC変換器で電流が不釣り合いとなると、DC/DC変換器の動作が不安定となって過電流に至り、電力変換器が損傷してしまう虞がある。特許文献1に開示された方法は、並列の電力変換器の出力が不釣り合いとなるのを防ぐものであるが、交流電力と直流電力の変換を行う変換器を用いたフィードバック制御によるものであるため、応答速度が間に合わず過電流に至り、電力変換器の損傷を回避するのは難しい場合がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、並列の電力変換部の動作が不安定となるのを抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る電力変換器は、直流バスに対して直流電力を授受する第1電力変換部と、前記第1電力変換部に並列であって、前記直流バスに対して直流電力を授受する第2電力変換部と、一端が前記第1電力変換部に接続され他端が前記直流バスに電気的に接続される第1電線を流れる第1電流の方向と、一端が前記第2電力変換部に接続された他端が前記直流バスに電気的に接続される第2電線を流れる第2電流の方向とが逆となるように前記第1電線と前記第2電線とが貫通した零相変流器と、前記零相変流器の二次巻線の両端の電圧差に基づいて、前記第1電流と前記第2電流との差を演算する差分演算部と、前記差分演算部が演算した差に基づいて、前記差を減少させるように前記第1電力変換部又は前記第2電力変換部を制御する制御部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様に係る電力変換器においては、前記制御部は、前記差の平均値を減少させるように前記第1電力変換部と前記第2電力変換部を制御してもよい。
【0009】
本発明の一態様に係る電力変換器においては、前記第1電力変換部及び前記第2電力変換部に並列で前記直流バスに対して直流電力を授受する1以上の電力変換部をさらに有し、前記制御部は、前記第1電力変換部、前記第2電力変換部、及び前記電力変換部から前記直流バスへ流れる電流の差が減少するように、それぞれの電力変換部を制御するようにしてもよい。
【0010】
本発明の一態様に係る電力変換器の制御方法は、直流バスに対して直流電力を授受する第1電力変換部と、前記第1電力変換部に並列であって、前記直流バスに対して直流電力を授受する第2電力変換部と、一端が前記第1電力変換部に接続され他端が前記直流バスに電気的に接続される第1電線を流れる第1電流の方向と、一端が前記第2電力変換部に接続された他端が前記直流バスに電気的に接続される第2電線を流れる第2電流の方向とが逆となるように前記第1電線と前記第2電線とが貫通した零相変流器と、を備える電力変換器の制御方法であって、前記零相変流器の二次巻線の両端の電圧差に基づいて、前記第1電流と前記第2電流との差を演算する差分演算ステップと、前記差分演算ステップで演算した差に基づいて、前記差を減少させるように前記第1電力変換部又は前記第2電力変換部を制御する制御ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、並列の電力変換部の動作が不安定となるのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係る電力システムの構成を示す図である。
図2図2は、電力変換器の構成の一例を示す図である。
図3図3は、制御部が行う処理の流れを示すフローチャートである。
図4図4は、変形例に係る電力変換器の構成の一例を示す図である。
図5図5は、変形例に係る電力変換器の構成の一例を示す図である。
図6図6は、変形例に係る制御部が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には適宜同一の符号を付している。
【0014】
[実施形態]
<電力システムの構成>
図1は、本発明の実施形態に係る電力システムの構成を示す図である。電力システム1は、電力変換器11~15と、電力要素21~25と、バス30とを備えている。
【0015】
電力変換器11~13、15は、直流電圧を変換するDC/DC変換器である。電力変換器14は、直流電圧と交流電圧との変換を行うAC/DC変換器である。バス30は、電力システム1では直流バスであり、電力変換器11~15が接続されている。
【0016】
電力要素21は、一例として電力の供給、消費および充電が可能な車載蓄電装置であり、電力変換器11に接続される。車載蓄電装置は電気自動車EVに搭載されており、移動する非定置型の蓄電装置の一例である。電力変換器11は、電力要素21が供給した直流電力の電圧を変換してバス30に出力し、かつバス30から供給された直流電力の電圧を変換して電力要素21に出力し、充電させる機能を有する。電力変換器11はたとえば充電ステーションや住宅用充電設備に設けられるが、電気自動車EVに搭載されてもよい。
【0017】
電力要素22は、一例として電力の発電および供給が可能な太陽光発電装置であり、電力変換器12に接続される。太陽光発電装置は、再生可能エネルギーを用いて発電する発電装置の一例である。電力変換器12は、電力要素22が供給した直流電力の電圧を変換してバス30に出力する機能を有する。
【0018】
電力要素23は、一例として電力の供給、消費および充電が可能な定置型蓄電装置であり、電力変換器13に接続される。定置型蓄電装置は、常設される設備内蓄電装置の一例である。電力変換器13は、電力要素23が供給した直流電力の電圧を変換してバス30に出力し、かつバス30から供給された直流電力の電圧を変換して電力要素23に出力し、充電させる機能を有する。
【0019】
電力要素24は、一例として商用電力系統であり、電力変換器14に接続される。電力変換器14は、電力要素24が供給した交流電力を直流電力に変換してバス30に出力し、かつバス30から供給された直流電力を交流電力に変換して電力要素24に出力する。バス30から電力要素24への電力の出力は逆潮流とも呼ばれる。
【0020】
電力要素25は、一例として電力の供給、消費および充電が可能なZEH(Net Zero Energy House)であり、電力変換器15に接続される。ZEHは、例えば太陽光発電装置や蓄電池、電力負荷であるエアコンや冷蔵庫などの電化製品などを有する。電力変換器15は、電力要素25が供給した直流電力の電圧を変換してバス30に出力し、かつバス30から供給された直流電力の電圧を変換して電力要素25に出力し、蓄電池を充電させ、電力負荷を動作させる機能を有する。
【0021】
<電力変換器の構成>
つぎに、電力変換器11の具体的構成について説明する。図2は、電力変換器11の構成の一例を示す図である。図2においては、本発明に係る構成を図示している。電力変換器11は、制御部100、第1電力変換部101、第2電力変換部102、センサ103、及び零相変流器104を有する。
【0022】
第1電力変換部101及び第2電力変換部102は、放電している電力要素21から入力された直流電力の電圧を変換してバス30に出力するDC/DC変換器である。第1電力変換部101及び第2電力変換部102は、バス30から入力された直流電力の電圧を変換して電力要素21に出力し、電力要素21を充電することもできる。第1電力変換部101及び第2電力変換部102は、たとえばコイル、コンデンサ、ダイオード、スイッチング素子などを含む電気回路で構成されている。スイッチング素子はたとえば電界効果トランジスタや絶縁ゲート型バイポーラトランジスタである。また、第1電力変換部101及び第2電力変換部102は、大電流から電気回路を保護するヒューズを有する。第1電力変換部101及び第2電力変換部102は、たとえばPWM(Pulse Width Modulation)制御によって電力変換特性が制御される。なお、本実施形態においては、第1電力変換部101と第2電力変換部102は、バス30と電力要素21との間で並列に接続されている。このように複数の電力変換器を並列にすることにより、一つの電力変換器では得ることができない大きな電力を得ることができる。
【0023】
センサ103は、第1電力変換部101と第2電力変換部102のバス30側の電力の電気特性値を測定する。したがって、センサ103は、電力変換器11に入力されるまたは電力変換器11から出力する電力の電気特性値を測定する。センサ103は、電流値、電圧値、電力値などを測定することができる。センサ103は、測定部の一例である。センサ103は、電気特性値の測定値を制御部100に出力する。
【0024】
零相変流器104は、地絡電流を検出する変流器である。本実施形態では、零相変流器104は、2本の電線に流れる電流の差の検出に用いられる。本実施形態においては、第1電線の一例である電線L1と第2電線の一例である電線L2が、零相変流器104が有する図示省略した鉄心を貫通している。電線L1の一端は、第1電力変換部101に接続されている。電線L2の一端は、第2電力変換部102に接続されている。電線L1の他端と電線L2の他端は互いに接続されており、その接続点はバス30に電気的に接続される。なお、電線L1と電線L2は、電線L2を流れる電流の方向が電線L1を流れる電流の方向と反対方向となるように零相変流器104の鉄心を貫通している。零相変流器104が有する二次巻線の両端は、制御部100に接続されている。電線L1を流れる第1電流である電流I1と電線L2を流れる第2電流である電流I2との間に差がない場合、零相変流器104の二次巻線に電流が流れないため二次巻線の両端の電位差は0となる。電線L1を流れる電流I1と電線L2を流れる電流I2との間に差がある場合、零相変流器104の二次巻線には電流差に応じた電流が流れ、二次巻線の両端は電流差に応じた電位差となる。
【0025】
制御部100は、各種演算処理を行うプロセッサと記憶部とを含んで構成されている。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサを含んで構成される。記憶部は、プロセッサが演算処理を行うために使用する各種プログラムやデータなどが格納される、たとえばROM(Read Only Memory)を備えている。また、記憶部は、プロセッサが演算処理を行う際の作業スペースやプロセッサの演算処理の結果などを記憶するなどのために使用される、たとえばRAM(Random Access Memory)を備えている。
【0026】
制御部100の機能は、プロセッサが記憶部から各種プログラムを読み出して実行することで、第1電力変換部101及び第2電力変換部102を制御するための機能部として実現される。例えば制御部100においては、プログラムの実行によってソフトウェア的に実現される機能部として、差分演算部100aと、指示部100bとが実現する。
【0027】
差分演算部100aは、零相変流器104の二次巻線の両端の電圧差を測定し、測定した電圧差から電線L1を流れる電流と電線L2を流れる電流との差を演算する。また、差分演算部100aは、演算した差の平均値を演算する。
【0028】
第1電力変換部101及び第2電力変換部102を制御する制御部としての指示部100bは、センサ103による測定結果と目標値との差分が所定範囲内となるように第1電力変換部101をPWM制御するための操作量(たとえば、デューティ比)と、第2電力変換部102をPWM制御するための操作量(たとえば、デューティ比)とを設定するフィードバック制御を行う。なお、目標値は、例えば電圧値である。指示部100bは、設定した操作量の情報を第1電力変換部101及び第2電力変換部102に出力し、第1電力変換部101及び第2電力変換部102を制御する。操作量設定部100caが行うフィードバック制御は、予め記憶部に記憶された比例ゲイン、積分時間、微分時間などのパラメータを読み出して実行されるPID制御等の、公知の手法を用いて実行できる。また、指示部100bは、差分演算部100aの演算結果に基づいて、電流I1と電流I2との差が0となるように操作量を設定する。
【0029】
なお、他の電力変換器12、13、14、15は、電力変換器11と同様の構成を有していてもよい。ただし、電力変換器14の第1電力変換部101と第2電力変換部102は、電力要素24から供給される交流電力を直流電力に変換してバス30に出力するAC/DC変換と、バス30から供給された直流電力を交流電力に変換して電力要素24に出力するDC/AC変換を行う。
【0030】
<電力変換器の動作例>
次に電力変換器11の動作例について説明する。例えばバス30の電圧を一定の目標電圧にするように電力要素21から電力を供給する場合、電力要素21から供給される電力は、第1電力変換部101と第2電力変換部102へ供給される。制御部100は、センサ103で測定される電圧値に基づいて、バス30の電圧を目標電圧とする操作量を設定し、設定した操作量を第1電力変換部101及び第2電力変換部102へ出力する。第1電力変換部101及び第2電力変換部102は、制御部100から出力された操作量が示すデューティ比のPWM制御により、電力要素21から入力された直流電力の電圧を変換してバス30に出力する。
【0031】
また、制御部100は、電流I1と電流I2との差が0となるように操作量を設定する処理を実行する。図3は、この処理の流れを示すフローチャートである。制御部100は、予め定められた期間、零相変流器104の二次巻線の両端の電圧差を所定の周期で測定する(ステップS11)。次に制御部100は、測定した電圧差毎に、電線L1を流れる電流I1と電線L2を流れる電流I2との電流差、即ち電流I1-電流I2を電圧差に基づいて演算し、演算した電流差の平均値I3を演算する(ステップS12)。なお、第1電力変換部101及び第2電力変換部102の出力によるリップルノイズでバス30の電圧が変動するため、ここではノイズの影響を抑えるために、電流差の平均値I3を演算している。
【0032】
次に制御部100は、ステップS12で演算した平均値I3が0であるか判断する(ステップS13)。制御部100は、平均値I3が0である場合(ステップS13でYES)、処理の流れをステップS11へ戻す。一方、制御部100は、平均値I3が0ではない場合(ステップS13でNO)、平均値I3<0であるか判断する(ステップS14)。
【0033】
制御部100は、平均値I3<0である場合(ステップS14でYES)、第1電力変換部101のPWM制御のデューティ比を変更する(ステップS15)。平均値I3<0である場合、電流I1<電流I2であり、第1電力変換部101からバス30へ流れる電流が第2電力変換部102からバス30へ流れる電流より少ない状態である。ここで制御部100は、例えば、平均値I3が0となるように第1電力変換部101のPWM制御のデューティ比を大きくする操作量を設定する。制御部100は、設定した操作量を第1電力変換部101へ出力して処理の流れをステップS11へ戻す。第1電力変換部101のPWM制御のデューティ比を大きくすることにより、第1電力変換部101が出力する電流が増加して電流I1と電流I2の差がなくなる。即ち、並列の第1電力変換部101と第2電力変換部102とで出力電流が釣り合うため、第1電力変換部101及び第2電力変換部102の動作が不安定となるのを抑えることができる。また、第1電力変換部101及び第2電力変換部102の動作が不安定とならなくなるため、過電流の発生を抑え、機器の損傷を防ぐことができる。
【0034】
制御部100は、平均値I3<0ではない場合(ステップS14でNO)、第2電力変換部102のPWM制御のデューティ比を変更する(ステップS16)。平均値I3>0である場合、電流I1>電流I2であり、第2電力変換部102からバス30へ流れる電流が第1電力変換部101からバス30へ流れる電流より少ない状態である。ここで制御部100は、例えば、平均値I3が0となるように第2電力変換部102のPWM制御のデューティ比を大きくする操作量を設定する。制御部100は、設定した操作量を第2電力変換部102へ出力して処理の流れをステップS11へ戻す。第2電力変換部102のPWM制御のデューティ比を大きくすることにより、第2電力変換部102が出力する電流が増加して電流I1と電流I2の差がなくなる。即ち、並列の第1電力変換部101と第2電力変換部102とで出力電流が釣り合うため、第1電力変換部101及び第2電力変換部102の動作が不安定となるのを抑えることができる。また、第1電力変換部101及び第2電力変換部102の動作が不安定とならなくなるため、過電流の発生を抑え、機器の損傷を防ぐことができる。
【0035】
本実施形態によれば、第1電力変換部101及び第2電力変換部102との間で出力する電流が釣り合うため、電力変換器11の動作が不安定となるのを抑えることができる。また、電線L1を一方の変流器に通し、電線L2を他方の変流器に通して電流I1と電流I2とを個別に測定し、測定結果から平均値I3を演算する構成の場合、電流I1を測定する工程、電流I2を測定する工程、電流I1の平均値を演算する工程、電流I2の平均値を演算する工程を要する。一方、本実施形態では、これらの工程を要せずに平均値I3を得ることができるため、平均値I3を0にするための処理を速くすることができ、第1電力変換部101及び第2電力変換部102を素早く安定させることができる。また、特許文献1の発明と比較すると、並列の第1電力変換部101と第2電力変換部102の出力の不平衡を1ステップで得ることができて処理が高速となるため、応答速度が間に合わずに過電流に至ることを回避し、第1電力変換部101と第2電力変換部102の電流が不釣り合いになって不安定となるのを抑えることができる。
【0036】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した実施形態及び以下の変形例は、各々を組み合わせてもよい。上述した各実施形態及び各変形例の構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態や変形例に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0037】
上述した実施形態で制御部100は、ステップS15で第1電力変換部101のPWM制御のデューティ比を変更しているが、第2電力変換部102のPWM制御のデューティ比を小さくするように、第2電力変換部102へ出力する操作量を変更してもよい。この場合、制御部100は、設定した操作量を第2電力変換部102へ出力する。また、上述した実施形態で制御部100は、ステップS16で第2電力変換部102のPWM制御のデューティ比を変更しているが、第1電力変換部101のPWM制御のデューティ比を小さくするように、第1電力変換部101へ出力する操作量を変更してもよい。この場合、制御部100は、設定した操作量を第1電力変換部101へ出力する。
【0038】
また、制御部100は、ステップS15で第1電力変換部101のPWM制御のデューティ比を変更しているが、第1電力変換部101のPWM制御のデューティ比を大きくし、第2電力変換部102のPWM制御のデューティ比を小さくするように、第1電力変換部101へ出力する操作量と第2電力変換部102へ出力する操作量を変更してもよい。また、制御部100は、ステップS16で第2電力変換部102のPWM制御のデューティ比を変更しているが、第1電力変換部101のPWM制御のデューティ比を小さくし、第2電力変換部102のPWM制御のデューティ比を大きくするように、第1電力変換部101へ出力する操作量と第2電力変換部102へ出力する操作量を変更してもよい。
【0039】
上述した実施形態においては、平均値I3が0ではない場合にステップS14の処理を行っているが、平均値I3が増加して所定の閾値を以上となった場合、又は平均値I3が減少して所定の閾値以下となった場合にステップS14の処理を行なうようにしてもよい。
【0040】
上述した実施形態においては、第1電力変換部101と第2電力変換部102とを備える構成であるが、4つ以上の電力変換部を備える構成であってもよい。図4は、電力変換器11の変型例である電力変換器11Aの構成を示すブロック図である。変換ユニット1000Aと変換ユニット1000Bは、第1電力変換部101、第2電力変換部102、及び零相変流器104の組である。制御部100は、変換ユニット1000Aの第1電力変換部101と第2電力変換部102の操作量と、変換ユニット1000Bの第1電力変換部101と第2電力変換部102の操作量を設定する。この変形例によれば、複数の電力変換部により大電力を得ることができる。また、変換ユニット1000Aと変換ユニット1000Bにおいては、第1電力変換部101及び第2電力変換部102との間で出力する電流が釣り合うため、電力変換器11Aの動作が不安定となるのを抑えることができる。
【0041】
上述した実施形態ではPWM制御のデューティ比を変化させて電力変換器の出力を増減する場合について説明したが、PWM制御以外のPFM(Pulse Frequency Modulation)制御又はPAM(Pulse Amplitude Modulation)制御などの異なった変調手法による電力変換も適用可能であることは言うまでもない。
【0042】
また、上述した実施形態ではバス30の電圧を一定の目標電圧にするように電力要素21から電力を供給する場合について説明したが、バス30から入力された直流電力の電圧を変換して電力要素21に出力し、電力要素21を充電する場合にも適用できる。その場合にはセンサ103は電力変換器11、11Aの電力要素21側の電力の電気特性値を測定して測定値を制御部100に出力し、制御部100は、センサ103から出力された測定値を取得する。この場合、零相変流器104は図2のとおり第1電力変換部101および第2電力変換部102のバス30側にあっても良い。また、零相変流器104を第1電力変換部101および第2電力変換部102の電力要素21側に設置し、第1電力変換部101の出力を行う電線と、第2電力変換部102の出力を行う電線とが、流れる電流の方向が反対方向となるように鉄心に挿入する構成であっても良い。
【0043】
上述した実施形態及び変形例においては、制御部100は、平均値I3が0となるように操作量を設定してPWM制御を行っているが、平均値I3を減少させるように操作量を設定してPWM制御を行ってもよい。平均値I3を0に近づける制御を行うことにより、並列の第1電力変換部101と第2電力変換部102とで出力電流の差が小さくなるため、第1電力変換部101及び第2電力変換部102の動作が不安定となるのを抑えることができる。
【0044】
図5は、電力変換器11の変型例である電力変換器11Bの構成を示すブロック図である。電力変換器11Bは、変換ユニット1000Cと、前述の変換ユニット1000Aとを備えている。変換ユニット1000Cは、第1電力変換部101、第2電力変換部102、第3電力変換部105、零相変流器104a、及び零相変流器104bの組である。
【0045】
変換ユニット1000Cにおいては、第1電力変換部101とバス30とを電気的に接続する電線L1と、第2電力変換部102とバス30とを電気的に接続する電線L2とが、零相変流器104aが有する図示省略した鉄心を貫通している。なお、電線L1と電線L2は、電線L2を流れる電流の方向が電線L1を流れる電流の方向と反対方向となるように零相変流器104aの鉄心を貫通している。零相変流器104aが有する二次巻線の両端は、制御部100に接続されている。零相変流器104aにおいて電線L1を流れる電流I11と、零相変流器104aにおいて電線L2を流れる電流I21との間に差がない場合、零相変流器104aの二次巻線に電流が流れないため二次巻線の両端の電位差は0となる。電流I11と電流I21との間に差がある場合、零相変流器104aの二次巻線には電流差に応じた電流が流れ、二次巻線の両端は電流差に応じた電位差となる。
【0046】
また、変換ユニット1000Cにおいては、電線L2と、第3電力変換部105とバス30とを電気的に接続する電線L3とが、零相変流器104bが有する図示省略した鉄心を貫通している。なお、電線L2と電線L3は、電線L3を流れる電流の方向が電線L2を流れる電流の方向と反対方向となるように零相変流器104bの鉄心を貫通している。零相変流器104bが有する二次巻線の両端は、制御部100に接続されている。零相変流器104bにおいて電線L2を流れる電流I12と、零相変流器104bにおいて電線L3を流れる電流I22との間に差がない場合、零相変流器104bの二次巻線に電流が流れないため二次巻線の両端の電位差は0となる。なお、電流I12=電流I21である。電流I12と電流I22との間に差がある場合、零相変流器104bの二次巻線には電流差に応じた電流が流れ、二次巻線の両端は電流差に応じた電位差となる。
【0047】
電力変換器11Bの制御部100は、前述の実施形態と同様に零相変流器104の二次巻線の両端の電圧差を測定し、測定結果に基づいて変換ユニット1000Aの第1電力変換部101と第2電力変換部102の操作量を設定する。これにより、変換ユニット1000Aにおいて並列の第1電力変換部101と第2電力変換部102とで出力電流が釣り合うため、第1電力変換部101及び第2電力変換部102の動作が不安定となるのを抑えることができる。
【0048】
また、制御部100は、零相変流器104aの二次巻線の両端の電圧差と、零相変流器104bの二次巻線の両端の電圧差とを測定し、測定結果に基づいて変換ユニット1000Cの第1電力変換部101、第2電力変換部102、及び第3電力変換部105の操作量を設定する。図6は、制御部100が第1電力変換部101、第2電力変換部102、及び第3電力変換部105からバス30へ流れる電流の差が減少するように設定する処理の流れを示すフローチャートである。
【0049】
制御部100は、予め定められた期間、零相変流器104a、104bの二次巻線の両端の電圧差を所定の周期で測定する(ステップS21)。次に制御部100は、第1電力変換部101から流れる電流と第2電力変換部102から流れる電流との電流差の平均値I3と、第2電力変換部102から流れる電流と第3電力変換部105から流れる電流との電流差の平均値I4とを演算する(ステップS22)。
【0050】
具体的には、制御部100は、ステップS21で複数回測定した電圧差毎に、零相変流器104aを貫通する電線L1を流れる電流I11と、零相変流器104aを貫通する電線L2を流れる電流I21との電流差を演算し、演算した電流差の平均値I3を演算する。また、制御部100は、ステップS21で複数回測定した電圧差毎に、零相変流器104bを貫通する電線L2を流れる電流I12と、零相変流器104bを貫通する電線L3を流れる電流I22との電流差を演算し、演算した電流差の平均値I4を演算する。
【0051】
次に制御部100は、ステップS22で演算した平均値I3が0であるか判断する(ステップS23)。制御部100は、平均値I3が0である場合(ステップS23でYES)、処理の流れをステップS27へ移す。一方、制御部100は、平均値I3が0ではない場合(ステップS23でNO)、平均値I3<0であるか判断する(ステップS24)。平均値I3<0である場合、電流I11<電流I21であり、第1電力変換部101からバス30へ流れる電流が第2電力変換部102からバス30へ流れる電流より少ない状態である。制御部100は、平均値I3<0である場合(ステップS24でYES)、例えば、平均値I3が0に近づくように第2電力変換部102のPWM制御のデューティ比を小さくする操作量を設定する(ステップS25)。
【0052】
制御部100は、平均値I3<0ではない場合(ステップS24でNO)、第1電力変換部101のPWM制御のデューティ比を変更する(ステップS26)。平均値I3>0である場合、電流I11>電流I21であり、第2電力変換部102からバス30へ流れる電流が第1電力変換部101からバス30へ流れる電流より少ない状態である。ここで制御部100は、例えば、平均値I3が0に近づくように第1電力変換部101のPWM制御のデューティ比を小さくする操作量を設定する。
【0053】
制御部100は、ステップS23でYESの場合、又はステップS25、S26の処理を終えた場合、ステップS22で演算した平均値I4が0であるか判断する(ステップS27)。制御部100は、平均値I4が0である場合(ステップS27でYES)、処理の流れをステップS21へ移す。
【0054】
一方、制御部100は、平均値I4が0ではない場合(ステップS27でNO)、平均値I4<0であるか判断する(ステップS28)。平均値I4<0である場合、電流I12<電流I22であり、第2電力変換部102からバス30へ流れる電流が第3電力変換部105からバス30へ流れる電流より少ない状態である。制御部100は、平均値I4<0である場合(ステップS28でYES)、例えば、平均値I4が0に近づくように第3電力変換部105のPWM制御のデューティ比を小さくする操作量を設定する(ステップS29)。
【0055】
制御部100は、平均値I4<0ではない場合(ステップS28でNO)、第2電力変換部102のPWM制御のデューティ比を変更する(ステップS30)。平均値I4>0である場合、電流I12>電流I22であり、第3電力変換部105からバス30へ流れる電流が第2電力変換部102からバス30へ流れる電流より少ない状態である。ここで制御部100は、例えば、平均値I4が0に近づくように第2電力変換部102のPWM制御のデューティ比を小さくする操作量を設定する。
【0056】
なお、ステップS25で第2電力変換部102のPWM制御のデューティ比を制御することにより、電流I12と電流I22との電流差の平均値I4がステップS22で演算した差と異なることになる。また、ステップS30で第2電力変換部102のPWM制御のデューティ比を制御することにより、ステップS24~ステップS26で小さくなるようにした電流I11と電流I21との差が大きくなる場合がある。しかしながら、図6のフローチャートの処理を繰り返し高速で行うことにより、平均値I3と平均値I4が0に近づいていき、第1電力変換部101、第2電力変換部102、及び第3電力変換部105が出力する電流のそれぞれの差を0に近づけることができる。
【0057】
このように制御部100が、平均値I3及び平均値I4に基づいて変換ユニット1000Cの第1電力変換部101、第2電力変換部102、及び第3電力変換部105のPWM制御を行うことにより、第1電力変換部101、第2電力変換部102、及び第3電力変換部105が出力する電流のそれぞれの差が小さくなる。即ち、並列の第1電力変換部101、第2電力変換部102、及び第3電力変換部105で出力電流が釣り合うため、三つの電力変換部を並列にした場合でも、第1電力変換部101、第2電力変換部102、及び第3電力変換部105の動作が不安定となるのを抑えることができる。また、第1電力変換部101、第2電力変換部102、及び第3電力変換部105の動作が不安定とならなくなるため、過電流の発生を抑え、機器の損傷を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0058】
1 電力システム
11、12、13、14、15 電力変換器
21、22、23、24、25 電力要素
30 バス
100 制御部
101 第1電力変換部
102 第2電力変換部
103 センサ
104 零相変流器
105 第3電力変換部
1000A、1000B 変換ユニット
EV 電気自動車
L1、L2 電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6