(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024843
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】圧力スイング法用二酸化炭素吸着剤
(51)【国際特許分類】
B01J 20/16 20060101AFI20240216BHJP
B01D 53/047 20060101ALI20240216BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B01J20/16
B01D53/047
B01J20/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127770
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100140198
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 保子
(74)【代理人】
【識別番号】100145089
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100127513
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100158665
【弁理士】
【氏名又は名称】奥井 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199691
【弁理士】
【氏名又は名称】吉水 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100206829
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 悟
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正哉
(72)【発明者】
【氏名】万福 和子
【テーマコード(参考)】
4D012
4G066
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012CA03
4D012CB16
4D012CD07
4D012CE03
4D012CF03
4D012CG01
4D012CG02
4G066AA30B
4G066AA47A
4G066AA63B
4G066AA71A
4G066BA31
4G066BA36
4G066CA35
4G066DA01
4G066FA37
4G066GA14
(57)【要約】
【課題】燃焼排ガスなどに含まれる二酸化炭素を、大気圧以上に圧力を高くして吸着させ、その圧力を大気圧まで低くするだけで、大気圧以下にすることなく脱着させることが可能な圧力スイング法用二酸化炭素吸着剤において、二酸化炭素の圧力が10~100kPaの範囲における吸脱着量が優れたアルミニウムケイ酸塩複合体を有効成分とする二酸化炭素吸着剤を提供する。
【解決手段】Si/Alモル比が1.0~1.5で、X線源としてCuを用いたX線粉末回折において、2θ=21、26、34、39°付近にブロードなピークを有するアルミニウムケイ酸塩複合体は、二酸化炭素の圧力が10~100kPaの範囲における吸脱着量が4.5wt%以上の優れた二酸化炭素吸着性能を有しており、圧力スイング吸着法における二酸化炭素吸着剤の有効成分として用いることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si/Alモル比が1.0~1.5で、X線源としてCuを用いたX線粉末回折において、2θ=21、26、34、39°付近にブロードなピークを有するアルミニウムケイ酸塩複合体を有効成分とする、圧力スイング法用二酸化炭素吸着剤。
【請求項2】
前記アルミニウムケイ酸塩複合体が、二酸化炭素の圧力が10~100kPaの範囲における吸脱着量が4.5wt%以上の二酸化炭素吸着性能を有する、請求項1に記載の圧力スイング法用二酸化炭素吸着剤。
【請求項3】
前記Si/Alモル比が1.1~1.4である、請求項1に記載の圧力スイング法用二酸化炭素吸着剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の圧力スイング法用二酸化炭素吸着剤を用いて、圧力スイング吸着法により排ガスから二酸化炭素を分離回収する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力スイング法用二酸化炭素吸着剤に関し、特に、燃焼排ガスなどに含まれる二酸化炭素を、大気圧以上に圧力を高くして吸着させ、その圧力を低くするだけで、大気圧以下にすることなく脱着させることが可能な、アルミニウムケイ酸塩複合体を有効成分とする二酸化炭素吸着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
気体の回収あるいは分離に関する技術はそれぞれの目的や用途に応じ発展している。中でも二酸化炭素に関する分離・回収技術は、カーボンニュートラルに向けた次世代の産業を支える重要な基盤技術として、実用化が強く期待されており、その実現に向け、重要な課題となっている。
【0003】
従来、二酸化炭素を乾燥ガスから回収する方法としては、シリカゲル、アルミナ、ゼオライト、活性炭、珪藻土などの多孔質物質や、シリカ、酸化カルシウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化鉄などの吸着剤が用いられている(特許文献1、2)。
【0004】
二酸化炭素を圧力スイング吸着(PSA)法により分離・回収することも検討されている。圧力スイング吸着法は、常温下で吸着及び減圧脱着を行わせる方法であり、吸着剤としてゼオライト13Xを用いた態様が大半を占めている(非特許文献1)。ゼオライト13Xは、0~1気圧程度の範囲において優れた二酸化炭素の吸着量を有する。しかしながら、吸着した二酸化炭素を脱離させる際には、真空引きを行い、0.2気圧以下まで減圧しなければならないという問題があった。
【0005】
上記背景の中、圧力スイング吸着法において、より低コストで二酸化炭素を回収することを目的として、大気圧以上に圧力を高くして吸着させた二酸化炭素を、真空引きすることなく、大気圧まで圧力を低くするだけで脱着させることができる吸着剤が開発された(特許文献3)。
【0006】
該特許文献3に記載の吸着剤は、原料にオルトケイ酸ナトリウム水溶液と塩化アルミニウム水溶液とを用いて、ケイ素とアルミニウムのモル比(以下、「Si/Alモル比」とする。)が0.7~1.0となるように混合し、110℃以上で加熱合成することにより得られる、X線粉末回折において2θ=20、26、35、40°付近にブロードなピークを有する、低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩との複合体(以下、「アルミニウムケイ酸塩複合体」という。)を有効成分とするものである。そして、該アルミニウムケイ酸塩複合体は、圧力100~900kPaにおける吸脱着量が12wt%以上であり、同圧力範囲における比較例のゼオライト13Xの吸脱着量(5.4wt%)に比べて2倍以上多いことが示されたとしている。
【0007】
このように、特許文献3記載のアルミニウムケイ酸塩複合体は、圧力スイング吸着法において、圧力100~900kPaにおける二酸化炭素吸脱着量が優れているが、当該アルミニウムケイ酸塩複合体の製造には、比較的、高価な原料を必要とするという難点があった。
【0008】
一方、X線粉末回折において2θ=20、26、35、40°付近にブロードなピークを有するアルミニウムケイ酸塩複合体を安価に得る方法として、水ガラスと硫酸アルミニウム水溶液とを、Si/Alモル比が0.7~1.3かつ混合時のpHが3.5~4.8となるように混合し、攪拌した後、これにアルカリを添加してpH6~10に調整し、脱塩処理及び120~300℃での加熱処理を行う方法が開発された(特許文献4)。
しかしながら、得られたアルミニウムケイ酸塩複合体の、圧力スイング吸着法における二酸化炭素の吸脱着性能については何ら検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003-019435号公報
【特許文献2】特開2005-040753号公報
【特許文献3】国際公開第2009/084632号
【特許文献4】特開2019-26487号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】最新吸着技術便覧新訂三版 NTS出版(2020年)第141~145頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
圧力を10気圧に上昇させた後に大気圧に戻す圧力スイング法による二酸化炭素の回収においては、二酸化炭素濃度が10vol%程度の排ガスの場合には、分圧10~100kPaの範囲にて二酸化炭素を吸脱着させることとなる。
しかしながら、特許文献3に記載のアルミニウムケイ酸塩複合体を有効成分とする二酸化炭素吸着剤は、前述のとおり二酸化炭素の圧力が100~900kPaにおける吸脱着量は12wt%以上であるものの、二酸化炭素の圧力が10~100kPaの範囲における吸脱着量は4.3wt%であり(後述する比較例1参照)、さらなる吸脱量の向上が望まれる。
【0012】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、燃焼排ガスなどに含まれる二酸化炭素を、大気圧以上に圧力を高くして吸着させ、その圧力を大気圧まで低くするだけで、大気圧以下にすることなく脱着させることが可能な圧力スイング法用二酸化炭素吸着剤において、二酸化炭素の圧力が10~100kPaの範囲における吸脱着量が優れたアルミニウムケイ酸塩複合体を有効成分とする二酸化炭素吸着剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成すべく検討を重ねた結果、Si/Alモル比を、1.0~1.5とすることにより、原料に水ガラスと硫酸アルミニウムという比較的安価なものを用いても、二酸化炭素の圧力が10~100kPaの範囲における二酸化炭素吸脱着量が4.5wt%以上のアルミニウムケイ酸塩複合体が得られるという新たな知見を得た。
【0014】
本発明は、該知見に基づいて完成に至ったものであり、上記課題を解決するための手段は、以下の態様を含む。
[1]Si/Alモル比が1.0~1.5で、X線源としてCuを用いたX線粉末回折において、2θ=21、26、34、39°付近にブロードなピークを有するアルミニウムケイ酸塩複合体を有効成分とする、圧力スイング法用二酸化炭素吸着剤。
[2]前記アルミニウムケイ酸塩複合体が、二酸化炭素の圧力が10~100kPaの範囲における吸脱着量が4.5wt%以上の二酸化炭素吸着性能を有する、[1]の圧力スイング法用二酸化炭素吸着剤。
[3]前記Si/Alモル比が1.1~1.4である、[1]又は[2]の圧力スイング法用二酸化炭素吸着剤。
[4][1]~[3]のいずれかの圧力スイング法用二酸化炭素吸着剤を用いて、圧力スイング吸着法により排ガスから二酸化炭素を分離回収する方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、二酸化炭素の圧力が10~100kPaの範囲において優れた二酸化炭素吸着性能を有する、圧力スイング法用二酸化炭素吸着剤を提供することができる。そして、本発明の圧力スイング法用二酸化炭素吸着剤を用いることにより、二酸化炭素濃度が10vol%程度の排ガスから、圧力スイング吸着法により二酸化炭素を効率よく分離回収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例及び比較例で得られた生成物の、X線源としてCuを用いた粉末X線回折図形を示す図
【
図2】実施例及び比較例で得られた生成物の、二酸化炭素吸着等温線における二酸化炭素吸着量を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について、その最良の形態を含めて、さらに具体的な本発明の実施形態について説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内であれば、その他の様々な実施の形態が含まれる。
なお、数値範囲等を「~」を用いて表す場合、その下限及び上限として記載された数値をも含む意味である。
【0018】
<アルミニウムケイ酸塩複合体>
本発明の圧力スイング法用二酸化炭素吸着剤の有効成分であるアルミニウムケイ酸塩複合体は、Si/Alモル比が1.0~1.5で、X線粉末回折において、2θ=21、26、34、39°付近にブロードなピークを有する、低結性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩との複合体であり、二酸化炭素吸着等温線において二酸化炭素の圧力が10~100kPaの範囲における吸脱着量が4.5wt%以上の優れた二酸化炭素吸脱着性能を有している。
【0019】
本発明における上記のアルミニウムケイ酸塩複合体は、主な構成元素をケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、酸素(O)、及び水素(H)とし、多数のSi-O-Al結合で組み立てられた水和ケイ酸アルミニウムである。
【0020】
<アルミニウムケイ酸塩複合体の製造方法>
本発明における前記のアルミニウムケイ酸塩複合体は、水ガラスと硫酸アルミニウム水溶液とをSi/Alモル比が1.0~1.5かつ混合時のpHが3.5~4.8となるように混合し、攪拌した後、これにアルカリを添加してpH6~10に調整し、脱塩処理及び120℃以上300℃以下での加熱処理を行うことにより得られる。
【0021】
このように、アルミニウムケイ酸塩複合体のSi/Alモル比は、当該アルミニウムケイ酸塩複合体の製造時の原料である、ケイ素(Si)源及びアルミニウム(Al)源の使用比から容易に求めることができるが、最終生成物であるアルミニウムケイ酸塩複合体のSi/Alモル比についても、定法にしたがって、ICP発光分析などによって、Si及びAlを定量することで求めることもできる。
【0022】
(水ガラスと硫酸アルミニウム水溶液の混合)
本発明においては、水ガラスと硫酸アルミニウム水溶液とを、Si/Alモル比が1.0~1.5の範囲であり、Si/Alモル比の下限は好ましくは1.1以上であるように混合することが必要である。また、水ガラスと硫酸アルミニウム水溶液との混合時のpHが3.5~4.8となるように混合することが必要であり、かかるpHになるように、水ガラスと硫酸アルミニウム水溶液のそれぞれの濃度などを調整する。必要に応じて、予備テストなどを行って、水ガラスと硫酸アルミニウム水溶液それぞれの性状を定めてもよい。
【0023】
上記の所定の範囲になるように混合するための方法は特に限定されないが、水ガラス及び硫酸アルミニウムについて、それぞれ所定の濃度の溶液となるように溶液を調製した後、これらを混合するのが好ましい。
【0024】
具体的には、硫酸アルミニウムについては、純水に溶解させることにより、所定の濃度の水溶液を調製する。また、水ガラスについては、該硫酸アルミニウム水溶液と混合した際にpHが3.5~4.8となるように、純水及び/又は水酸化ナトリウムにて希釈させるか、あるいは純水で濃度調整した水酸化ナトリウム水溶液にて希釈させることにより、所定の濃度の溶液を調製する。
【0025】
水ガラス中のケイ素の濃度は1~3000mmol/Lであることが好ましく、硫酸アルミニウム水溶液中のアルミニウムの濃度は1~3000mmol/Lであることが好ましい。さらに好適には、ケイ素の濃度が1~1500mmol/Lの水ガラスと、アルミニウムの濃度が1~1500mmol/Lの硫酸アルミニウム水溶液とを混合することが好ましい。
【0026】
こうして調製された所定濃度の水ガラスの水溶液と所定濃度の硫酸アルミニウム水溶液とを、混合時のpHが3.5~4.8となるように混合した後、均一な溶液が得られるまで攪拌を行う。
【0027】
(pH調整・脱塩処理・加熱処理)
攪拌後、この溶液をアルカリにてpH6~10に調製し、脱塩処理及び120℃以上300℃以下で加熱熟成させる加熱処理を行い、最終的に乾燥させた固形分がアルミニウムケイ酸塩複合体である。
【0028】
本発明における脱塩処理とは、pH調整により得られた生成物(非晶質アルミニウムケイ酸塩を含む溶液)から共存イオンを取り除く処理であり、その方法は特に限定されない。好ましくは、脱水及び/又は洗浄により行う方法が挙げられる。具体的には、遠心分離やフィルタープレスなどで、固形分と溶液とに分離させることにより、相当量の共存イオンを、その塩を含んだ溶液として取り除くことができる。また、遠心分離による脱塩処理では、遠心分離により分離された固形分に、純水を加えて攪拌し、再度遠心分離を行うことにより、固形分に含まれる共存イオンの塩の量をさらに減少させることができる。
【0029】
本発明において、120℃以上300℃以下での加熱処理とは、加熱により非晶質アルミニウムケイ酸塩を、低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩とからなるアルミニウムケイ酸塩複合体にするための処理である。加熱温度は、処理時間にもよるが、温度を上げることで処理時間を短縮することができ、例えば120℃で加熱することにより、アルミニウムケイ酸塩複合体を2日で合成することが可能となり、180℃では3時間で合成することができる。
【0030】
また、本発明において、前記脱塩処理及び前記加熱処理の工程は、その順序と回数は限定されるわけではなく、例えば、脱塩処理工程→加熱処理工程、又は加熱処理工程→脱塩処理工程のみならず、脱塩処理工程→加熱処理工程→脱塩処理工程なども含まれる。
【0031】
<圧力スイング吸着法により二酸化炭素を分離回収する方法>
本発明は、上記のようにして製造されたアルミニウムケイ酸塩複合体を有効成分、すなわち、二酸化炭素の吸着剤として用いて、圧力スイング吸着法により二酸化炭素を分離回収する方法を提供する。圧力スイング吸着法に用いる装置については特に限定はなく、例えば、非特許文献1に記載されている、従来から周知の装置が適用可能である。
【0032】
圧力スイング吸着法には、一般に複数の吸着塔が用いられる。1つの吸着塔を用いて、排ガスなどから二酸化炭素の吸着・分離をしている間に、別の吸着塔では、二酸化炭素の脱着を進めると、二酸化炭素の吸脱着による分離回収が連続的に行えるためである。この複数の吸着塔の少なくとも1つ、好ましくはすべての吸着塔に、本発明の圧力スイング法用二酸化炭素吸着剤を充填することができる。吸着塔のサイズや、それに充填する圧力スイング法用二酸化炭素吸着剤の量は、処理する排ガスなどの量や当該排ガスなどにおける二酸化炭素濃度に応じて調節できる。
【0033】
本発明の圧力スイング法用二酸化炭素吸着剤を用いて二酸化炭素を吸着させた吸着塔は、真空ポンプなどの減圧装置により吸着塔内部を大気圧以下に減圧する必要がなく、例えば、常圧(大気圧)空間に、吸着塔内部を連通するといった簡便な手段で、二酸化炭素の脱着が可能である。そのため、真空装置が不要になり、電力コストやメンテナンスコストなどを軽減できる。
【実施例0034】
次に、本発明を実施例及び比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0035】
(実施例1)
Si濃度が1.00mol/Lになるように、水ガラスを20%水酸化ナトリウム水溶液で希釈した水ガラス溶液100mLを調製した。また、これとは別に、硫酸アルミニウムを純水に溶解させ、Al濃度が0.83mol/Lになるように、硫酸アルミニウムを2Nの硫酸と純水にて希釈した硫酸アルミニウム水溶液100mLを調製した。次に、水ガラス溶液に硫酸アルミニウム水溶液を混合し、攪拌機にて撹拌した。このときのSi/Alモル比は1.2、攪拌30分後のpHは4.0であった。さらに、この混合溶液に、20%水酸化ナトリウム水溶液12.5mLを添加してpHを7.0とした懸濁液を得た。得られた懸濁液を、遠心分離して固形物を分離した後、分離された固形物に水を再度添加して攪拌し、再度遠心分離して、脱塩処理を行った。脱塩処理後の回収物を純水に分散させて全体で200mLとなるようにした後、1時間攪拌して懸濁液を調整した。調整した懸濁液のうち70mLを、100mL用テフロン(登録商標)製容器に量り取った後、ステンレス製回転反応容器に設置して200℃で16時間加熱することで、加熱処理を行った。加熱処理を実施した後、遠心分離により脱水処理を実施し、得られた固形物を60℃で1日乾燥させた。
【0036】
(実施例2)
Si濃度が1.00mol/Lになるように、水ガラスを20%水酸化ナトリウム水溶液で希釈した水ガラス溶液100mLを調製した。また、これとは別に、硫酸アルミニウムを純水に溶解させ、Al濃度が0.91mol/Lになるように、硫酸アルミニウムを2Nの硫酸と純水にて希釈した硫酸アルミニウム水溶液100mLを調製した。次に、水ガラス溶液に硫酸アルミニウム水溶液を混合し、攪拌機にて撹拌した。このときのSi/Alモル比は1.1、攪拌30分後のpHは4.0であった。さらに、この混合溶液に、20%水酸化ナトリウム水溶液12.5mLを添加してpHを7.0とした懸濁液を得た。以下の操作は、実施例1と同じ方法により、固形物を得た。
【0037】
(実施例3)
Si濃度が1.00mol/Lになるように、水ガラスを20%水酸化ナトリウム水溶液で希釈した水ガラス溶液100mLを調製した。また、これとは別に、硫酸アルミニウムを純水に溶解させ、Al濃度が0.71mol/Lになるように、硫酸アルミニウムを2Nの硫酸と純水にて希釈した硫酸アルミニウム水溶液100mLを調製した。次に、水ガラス溶液に硫酸アルミニウム水溶液を混合し、攪拌機にて撹拌した。このときのSi/Alモル比は1.4、攪拌30分後のpHは4.0であった。さらに、この混合溶液に、20%水酸化ナトリウム水溶液12.5mLを添加してpHを7.0とした懸濁液を得た。以下の操作は、実施例1と同じ方法により、固形物を得た。
【0038】
(比較例1)
比較例として、上記特許文献3(国際公開第2009/084632号公報)にて示された物質について、以下のように、本発明の製造方法に準拠して合成を行った。
Si濃度が、0.36mol/Lになるように、純水で希釈したオルトケイ酸ナトリウム水溶液100mLを調製した。また、これとは別に、塩化アルミニウムを純水に溶解させ、Al濃度が0.45mol/Lの塩化アルミニウム水溶液100mLを調製した。次に、塩化アルミニウム水溶液にオルトケイ酸ナトリウム水溶液を混合し、攪拌機にて撹拌した。このときのSi/Alモル比は0.8であり、攪拌30分後のpHは3.6であった。さらに、この混合溶液に、1N水酸化ナトリウム水溶液7mLを添加しpHを7.0とした懸濁液を得た。得られた懸濁液を遠心分離して、2回脱塩処理を行った。脱塩処理後の回収物を純水に分散させて全体で200mLとなるようにした後、1時間攪拌して懸濁液を調整した。調整した懸濁液のうち70mLを、100mL用テフロン(登録商標)製容器に測り取った後、ステンレス製回転反応容器に設置し200℃で16時間加熱することで、加熱処理を行った。加熱処理を実施した後、遠心分離により脱水処理を実施し、得られた固形物を60℃で1日乾燥させた。
【0039】
(比較例2)
Si濃度が1.00mol/Lになるように、水ガラスを20%水酸化ナトリウム水溶液で希釈した水ガラス溶液100mLを調製した。また、これとは別に、硫酸アルミニウムを純水に溶解させ、Al濃度が0.63mol/Lになるように、硫酸アルミニウムを2Nの硫酸と純水にて希釈した硫酸アルミニウム水溶液100mLを調製した。次に、水ガラス溶液に硫酸アルミニウム水溶液を混合し、攪拌機にて撹拌した。このときのSi/Alモル比は1.6、攪拌30分後のpHは4.0であった。さらに、この混合溶液に、20%水酸化ナトリウム水溶液12.5mLを添加してpHを7.0とした懸濁液を得た。以下の操作は、実施例1と同じ方法により、固形物を得た。
【0040】
(比較例3)
Si濃度が1.00mol/Lになるように、水ガラスを20%水酸化ナトリウム水溶液で希釈した水ガラス溶液100mLを調製した。また、これとは別に、硫酸アルミニウムを純水に溶解させ、Al濃度が0.50mol/Lになるように、硫酸アルミニウムを2Nの硫酸と純水にて希釈した硫酸アルミニウム水溶液100mLを調製した。次に、水ガラス溶液に硫酸アルミニウム水溶液を混合し、攪拌機にて撹拌した。このときのSi/Alモル比は2.0、攪拌30分後のpHは4.0であった。さらに、この混合溶液に、20%水酸化ナトリウム水溶液12.5mLを添加してpHを7.0とした懸濁液を得た。以下の操作は、実施例1と同じ方法により、固形物を得た。
【0041】
実施例1~3及び比較例1~3で得られた生成物について、X線源としてCuを用いた粉末X線回折による測定を行った。
実施例1~3及び比較例1~3で得られた生成物の粉末X線回折図形を示す。
図1に見られるように、いずれも、2θ=20、26、35、39°付近にブロードなピークが見られ、非晶質アルミニウムケイ酸塩複合体であることが明らかになった。このうち20及び35°に見られるピークは、層状粘土鉱物のhk0面の反射から得られるものであり、層状粘土鉱物に一般的に見られる00l反射が見られないことから、積層方向の厚さがほとんどない低結晶性の層状粘土鉱物であると推定される。また2θ=26、39°付近のブロードなピークは、非晶質なアルミニウムケイ酸塩に特徴的なピークである。以上の結果から実施例1~3及び比較例1~3で得られた物質は、低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩とからなるアルミニウムケイ酸塩複合体であることが確認された。
【0042】
実施例1~3及び比較例1~3にて得られた生成物において、日本ベル社製Belsorp-Maxにより測定を行った二酸化炭素吸着等温線から二酸化炭素吸着評価を行った。10kPaでの吸着量を0wt%とした際の吸着時の吸着量を
図2に示す。
【0043】
図2に示すように、実施例1(Si/Alモル比1.2)、実施例2(Si/Alモル比1.1)、及び実施例3(Si/Alモル比1.4)において、10~100kPaにおける二酸化炭素吸脱着量は、実施例1が5.0wt%、実施例2が4.9wt%、実施例3が4.5wt%であった。
【0044】
これに対し比較例1(Si/Alモル比0.8)、比較例2(Si/Alモル比1.6)、及び比較例3(Si/Alモル比2.0)において、10~100kPaにおける二酸化炭素吸脱着量は、比較例1が4.3wt%、比較例2が4.3wt%、比較例3が3.7wt%であった。
【0045】
本実施例の結果、Si/Alモル比が1.0~1.5で、X線源としてCuを用いたX線粉末回折において、2θ=21、26、34、39°付近にブロードなピークを有するアルミニウムケイ酸塩複合体は、二酸化炭素の圧力が10~100kPaの圧力において、4.5wt%以上の二酸化炭素吸脱着量を有していることが示された。
本発明の圧力スイング用二酸化炭素吸着剤は、二酸化炭素の圧力が10~100kPaの範囲において4.5wt%を超える二酸化炭素吸脱着量を有するアルミニウムケイ酸塩複合体を有効成分とするものであり、圧力スイング吸着法による二酸化炭素回収用の吸着剤として有用である。また、当該アルミニウムケイ酸塩複合体は、安価な原料を用いて製造可能であるという利点がある。さらに本発明の圧力スイング用二酸化炭素吸着剤を用いることにより、二酸化炭素脱着時に極端な減圧手段を必要としない圧力スイング吸着法を用いることができることから、二酸化炭素濃度が10vol%程度の排ガスから二酸化炭素を効率的に分離回収することができる。