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特開2024-25025樹脂組成物、硬化物、積層体、透明アンテナ及び画像表示装置
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  • 特開-樹脂組成物、硬化物、積層体、透明アンテナ及び画像表示装置 図1
  • 特開-樹脂組成物、硬化物、積層体、透明アンテナ及び画像表示装置 図2
  • 特開-樹脂組成物、硬化物、積層体、透明アンテナ及び画像表示装置 図3
  • 特開-樹脂組成物、硬化物、積層体、透明アンテナ及び画像表示装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025025
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】樹脂組成物、硬化物、積層体、透明アンテナ及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/02 20060101AFI20240216BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20240216BHJP
   C08F 287/00 20060101ALI20240216BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240216BHJP
   B32B 25/08 20060101ALI20240216BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240216BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
C08L53/02
C08L33/04
C08F287/00
C08F2/44 C
B32B25/08
B32B27/30 B
B60J1/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128115
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【弁理士】
【氏名又は名称】古下 智也
(72)【発明者】
【氏名】大槻 大介
(72)【発明者】
【氏名】野尻 剛
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4J011
4J026
【Fターム(参考)】
4F100AB17C
4F100AB33C
4F100AG00D
4F100AK12A
4F100AK25A
4F100AK42B
4F100AK73A
4F100AL02A
4F100AL07A
4F100AL09A
4F100AR00C
4F100AT00B
4F100AT00D
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100DC11C
4F100EH46
4F100EJ24
4F100EJ86
4F100GB41
4F100JG01C
4F100JK06
4F100JN01A
4F100YY00A
4F100YY00C
4J002BG052
4J002BG072
4J002BP011
4J002GF00
4J002GQ00
4J011AA05
4J011CA01
4J011PA34
4J011PA79
4J011PC02
4J011PC08
4J026AA17
4J026AA68
4J026AC11
4J026AC16
4J026AC32
4J026BA28
4J026BA30
4J026BB01
4J026BB03
4J026CA03
4J026DB06
4J026DB15
4J026GA07
(57)【要約】
【課題】極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得ることが可能な樹脂組成物を提供する。
【解決手段】エラストマーと、重合性化合物と、重合開始剤と、を含有する樹脂組成物であって、リン含有化合物を含有する、樹脂組成物。基材フィルムと、当該基材フィルム上に配置された透明樹脂層と、を備え、前記透明樹脂層が、前記樹脂組成物及びその硬化物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、積層体。ガラスにより形成された透明部材210aと、透明部材210a上に配置された透明基材210bと、透明基材210b上に配置された導電部材210cと、を備え、透明基材210bが前記樹脂組成物の硬化物を含む、透明アンテナ210。透明アンテナ210を備える、画像表示装置200。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマーと、重合性化合物と、重合開始剤と、を含有する樹脂組成物であって、
リン含有化合物を含有する、樹脂組成物。
【請求項2】
前記リン含有化合物が、(メタ)アクリロイル基を有するリン酸エステルを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記リン含有化合物の含有量が、前記重合性化合物100質量部に対して0.1~30質量部である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記エラストマーがスチレン系ブロック共重合体を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記エラストマーがスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記エラストマーの含有量が、当該樹脂組成物の全質量を基準として50質量%以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記重合性化合物が(メタ)アクリル化合物を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記重合性化合物がアルカンジオールジ(メタ)アクリレートを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記重合性化合物が、下記一般式(I)で表される化合物を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【化1】

[式中、Rは、9以下の炭素原子及び2以上の酸素原子を含む基を表し、R2a及びR2bは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表す。]
【請求項10】
前記重合開始剤が過酸化物を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記重合開始剤がパーオキシエステルを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項13】
基材フィルムと、当該基材フィルム上に配置された透明樹脂層と、を備え、
前記透明樹脂層が、請求項1~11のいずれか一項に記載の樹脂組成物及びその硬化物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、積層体。
【請求項14】
前記透明樹脂層上に配置された導電部材を更に備える、請求項13に記載の積層体。
【請求項15】
前記導電部材が銅を含有する、請求項14に記載の積層体。
【請求項16】
前記導電部材の厚さが5μm以下である、請求項14に記載の積層体。
【請求項17】
透明基材と、当該透明基材上に配置された導電部材と、を備え、
前記透明基材が、請求項1~11のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、透明アンテナ。
【請求項18】
前記透明基材を支持する支持部材を更に備え、
前記支持部材がガラスを含む、請求項17に記載の透明アンテナ。
【請求項19】
前記導電部材がメッシュ状である、請求項17に記載の透明アンテナ。
【請求項20】
前記導電部材が銅を含有する、請求項17に記載の透明アンテナ。
【請求項21】
請求項17に記載の透明アンテナを備える、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂組成物、硬化物、積層体、透明アンテナ、画像表示装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
電波を受信するためのアンテナは、画像表示装置(例えば、パソコン、ナビゲーションシステム、携帯電話、時計、電子辞書等の各種電子機器における画像表示装置)、自動車の構成部材、建物などに設置されている。例えば、アンテナを内蔵する画像表示装置が用いられる場合があり、近年、画像表示装置の小型化、薄型化、形状の多様化等に対応し、設計の尤度を確保するために、画像を表示するための画像表示部上に、透明で視認性が低いアンテナ(以下、「透明アンテナ」ともいう)を配置することが提案されている。透明アンテナを得るための部材に対しては、各種部材が検討されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-091788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
透明アンテナの構成部材として、樹脂組成物の硬化物と、当該硬化物に当接する部材と、を有する積層体を用いる場合がある。このような積層体における樹脂組成物の硬化物に対しては、硬化物に当接する部材に対する高い密着性が求められ、特に、極性基を有する部材(例えば、ガラスを含む部材(ガラス部材))に対する高い密着性が求められる。
【0005】
本開示の一側面は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得ることが可能な樹脂組成物を提供することを目的とする。本開示の他の一側面は、当該樹脂組成物の硬化物を提供することを目的とする。本開示の他の一側面は、当該樹脂組成物又はその硬化物を用いた積層体を提供することを目的とする。本開示の他の一側面は、当該樹脂組成物の硬化物を用いた透明アンテナを提供することを目的とする。本開示の他の一側面は、当該透明アンテナを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、いくつかの側面において、下記の[1]~[21]等に関する。
[1]エラストマーと、重合性化合物と、重合開始剤と、を含有する樹脂組成物であって、リン含有化合物を含有する、樹脂組成物。
[2]前記リン含有化合物が、(メタ)アクリロイル基を有するリン酸エステルを含む、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記リン含有化合物の含有量が、前記重合性化合物100質量部に対して0.1~30質量部である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]前記エラストマーがスチレン系ブロック共重合体を含む、[1]~[3]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
[5]前記エラストマーがスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体を含む、[1]~[4]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
[6]前記エラストマーの含有量が、当該樹脂組成物の全質量を基準として50質量%以上である、[1]~[5]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
[7]前記重合性化合物が(メタ)アクリル化合物を含む、[1]~[6]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
[8]前記重合性化合物がアルカンジオールジ(メタ)アクリレートを含む、[1]~[7]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
[9]前記重合性化合物が、下記一般式(I)で表される化合物を含む、[1]~[8]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
【化1】

[式中、Rは、9以下の炭素原子及び2以上の酸素原子を含む基を表し、R2a及びR2bは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表す。]
[10]前記重合開始剤が過酸化物を含む、[1]~[9]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
[11]前記重合開始剤がパーオキシエステルを含む、[1]~[10]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
[12][1]~[11]のいずれか一つに記載の樹脂組成物の硬化物。
[13]基材フィルムと、当該基材フィルム上に配置された透明樹脂層と、を備え、前記透明樹脂層が、[1]~[11]のいずれか一つに記載の樹脂組成物及びその硬化物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、積層体。
[14]前記透明樹脂層上に配置された導電部材を更に備える、[13]に記載の積層体。
[15]前記導電部材が銅を含有する、[14]に記載の積層体。
[16]前記導電部材の厚さが5μm以下である、[14]又は[15]に記載の積層体。
[17]透明基材と、当該透明基材上に配置された導電部材と、を備え、前記透明基材が、[1]~[11]のいずれか一つに記載の樹脂組成物の硬化物を含む、透明アンテナ。
[18]前記透明基材を支持する支持部材を更に備え、前記支持部材がガラスを含む、[17]に記載の透明アンテナ。
[19]前記導電部材がメッシュ状である、[17]又は[18]に記載の透明アンテナ。
[20]前記導電部材が銅を含有する、[17]~[19]のいずれか一つに記載の透明アンテナ。
[21][17]~[20]のいずれか一つに記載の透明アンテナを備える、画像表示装置。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一側面によれば、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得ることが可能な樹脂組成物を提供することができる。本開示の他の一側面によれば、当該樹脂組成物の硬化物を提供することができる。本開示の他の一側面によれば、当該樹脂組成物又はその硬化物を用いた積層体を提供することができる。本開示の他の一側面によれば、当該樹脂組成物の硬化物を用いた透明アンテナを提供することができる。本開示の他の一側面によれば、当該透明アンテナを用いた画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】積層体の例を示す模式断面図である。
図2】積層体の例を示す模式断面図である。
図3】画像表示装置の例を示す模式断面図である。
図4】画像表示装置の例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。数値範囲の「A以上」とは、A、及び、Aを超える範囲を意味する。数値範囲の「A以下」とは、A、及び、A未満の範囲を意味する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。本明細書において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、及び、それに対応するメタクリレートの少なくとも一方を意味する。「(メタ)アクリル」等の他の類似の表現においても同様である。(メタ)アクリル化合物の含有量は、アクリル化合物及びメタクリル化合物の合計量を意味する。エラストマー、重合性化合物又は重合開始剤の含有量は、これらの成分に該当するリン含有化合物の含有量を含み、エラストマー、重合性化合物又は重合開始剤の下位概念の成分(例えば(メタ)アクリル化合物)の含有量についても同様である。
【0011】
本実施形態に係る樹脂組成物は、エラストマーと、重合性化合物と、重合開始剤と、を含有する樹脂組成物であって、リン含有化合物を含有する。本実施形態に係る樹脂組成物は、少なくとも一種のリン含有化合物を含有しており、リン含有化合物として、エラストマー、重合性化合物及び重合開始剤からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有してよく、エラストマー、重合性化合物及び重合開始剤に該当しないリン含有化合物を含有してよい。エラストマー、重合性化合物及び重合開始剤からなる群より選ばれる少なくとも一種がリン含有化合物である場合、本実施形態に係る樹脂組成物は、エラストマー、重合性化合物及び重合開始剤に該当しないリン含有化合物を含有してよい。
【0012】
本実施形態に係る樹脂組成物は、熱硬化性の樹脂組成物として用いてよく、光硬化性の樹脂組成物として用いてよい。本実施形態に係る硬化物は、本実施形態に係る樹脂組成物を硬化することにより得られ、本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物である。本実施形態に係る硬化物は、半硬化状態であってよく、完全硬化状態であってよい。
【0013】
本実施形態に係る樹脂組成物によれば、極性基を有する部材(硬化物と当接する表面に極性基を有する部材(基板等);例えばガラス部材)に対する高い密着性を有する硬化物を得ることができる。本実施形態に係る樹脂組成物によれば、後述の実施例に記載の評価方法において、例えば0.20kN/m以上(好ましくは、0.40kN/m以上、0.50kN/m以上、0.60kN/m以上等)の引張応力を得ることができる。極性基(ヒドロキシ基、カルボキシル基等)とリン含有部(例えばP=O(OH)構造)とが相互作用することにより、高い密着性を有する硬化物が得られると推測される。但し、高い密着性が得られる要因は当該内容に限定されない。本実施形態に係る樹脂組成物は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得ることが可能であればよく、極性基を有する部材に硬化物が当接する態様のみならず、極性基を有する部材に硬化物が当接しない態様に用いられてよい。
【0014】
本実施形態に係る樹脂組成物の一態様によれば、極性基を有する部材に対する高い密着性、及び、優れた透明性を有する硬化物を得ることができる。
【0015】
本実施形態に係る樹脂組成物は、リン含有化合物(リン原子を含む化合物)を含有する。リン含有化合物は、エラストマー、重合性化合物及び重合開始剤からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよく、エラストマー、重合性化合物及び重合開始剤に該当しない化合物であってよい。リン含有化合物は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、重合性化合物であってよい。
【0016】
リン含有化合物は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、P=O(OH)構造を有するリン含有化合物を含んでよい。P=O(OH)構造を有するリン含有化合物では、下記一般式(P1)に示すとおり、二重結合を介してリン原子に酸素原子が結合すると共に、単結合を介して当該リン原子にヒドロキシ基が結合している。リン含有化合物において、P=O(OH)構造の数(一分子中の数)は、1であってよい。
【0017】
【化2】

[式中、p11は1~3の整数を示し、p12は0~2の整数を示し、p11+p12は3であり、Rp1は1価の基を示す。]
【0018】
p11は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、1~2、又は、2~3であってよい。
【0019】
リン含有化合物は、リン原子に結合する官能基として、ヒドロキシ基とは異なる1価の基(一般式(P1)のRp1)を有してよい。当該1価の基としては、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基(例えばフェニル基)、(メタ)アクリロイル基含有基等が挙げられる。(メタ)アクリロイル基含有基は、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選ばれる少なくとも一種を有する基である。
【0020】
リン含有化合物は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、P=O(OH)構造を有する(メタ)アクリレート化合物を含んでよく、(メタ)アクリロイル基を有するリン酸エステルを含んでよく、下記一般式(P2)で表される化合物、及び、下記一般式(P3)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。
【0021】
【化3】

[式中、p21は1又は2の整数を示し、p22は1又は2の整数を示し、p21+p22は3であり、p23は1以上の整数を示し、Rp2は水素原子又はメチル基を示す。]
【0022】
【化4】

[式中、p31は1又は2の整数を示し、p32は1又は2の整数を示し、p31+p32は3であり、p33及びp34は、それぞれ独立に1以上の整数を示し、Rp3は水素原子又はメチル基を示す。]
【0023】
p21は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、2であってよい。p23は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、1~4、2~4、1~3、又は、1~2であってよい。p33は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、1~8、1~6、1~5、3~8、3~6、3~5、5~8、又は、5~6であってよい。p34は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、1~4、2~4、1~3、又は、1~2であってよい。
【0024】
リン含有化合物としては、リン酸エステル、リン酸、フェニルホスホン酸、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。リン含有化合物は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、リン酸エステルを含んでよく、リン酸モノエステル及びリン酸ジエステルからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。リン酸エステルは、リン酸の3個の水素原子(リン原子に結合する水素原子)の少なくとも一部が有機基で置換された構造を有する化合物である。
【0025】
リン酸エステルとしては、モノ又はビス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)リン酸エステル、モノ又はビス(2-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)リン酸エステル、モノ又はビス(3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)リン酸エステル、モノ又はビス(6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル)リン酸エステル、モノ又はビス(10-(メタ)アクリロイルオキシデシル)リン酸エステル、モノ又はビス(1-クロロメチル-2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)リン酸エステル、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルリン酸エステル、2-ヒドロキシエチルメタクリレートの6-ヘキサノリド付加重合物と無水リン酸との反応生成物、これらのラクトン変性物又はポリオキシアルキレン変性物等が挙げられる。
【0026】
リン含有化合物の含有量、P=O(OH)構造を有するリン含有化合物の含有量、リン酸エステルの含有量、又は、(メタ)アクリロイル基を有するリン酸エステルの含有量として、含有量P1は、エラストマー100質量部、スチレン系重合体100質量部、又は、スチレン系ブロック共重合体100質量部に対して下記の範囲であってよい。含有量P1は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、0.01質量部以上、0.05質量部以上、0.1質量部以上、0.2質量部以上、0.3質量部以上、0.4質量部以上、0.5質量部以上、又は、0.6質量部以上であってよい。含有量P1は、極性基を有する部材に対する密着性を調整する観点から、0.7質量部以上、0.8質量部以上、1質量部以上、1.5質量部以上、2質量部以上、3質量部以上、又は、5質量部以上であってもよい。含有量P1は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、10質量部以下、8質量部以下、5質量部以下、3質量部以下、2質量部以下、1.5質量部以下、1質量部以下、0.8質量部以下、又は、0.7質量部以下であってよい。含有量P1は、極性基を有する部材に対する密着性を調整する観点、及び、相溶性に優れる観点から、0.6質量部以下、0.5質量部以下、0.4質量部以下、0.3質量部以下、又は、0.2質量部以下であってもよい。これらの観点から、含有量P1は、0.01~10質量部、0.01~3質量部、0.01~1質量部、0.1~10質量部、0.1~3質量部、0.1~1質量部、0.3~10質量部、0.3~3質量部、0.3~1質量部、0.5~10質量部、0.5~3質量部、又は、0.5~1質量部であってよい。
【0027】
重合性化合物が、リン含有化合物に該当しない化合物を含む場合、リン含有化合物の含有量、P=O(OH)構造を有するリン含有化合物の含有量、リン酸エステルの含有量、又は、(メタ)アクリロイル基を有するリン酸エステルの含有量として、含有量P2は、重合性化合物100質量部、又は、(メタ)アクリル化合物100質量部に対して下記の範囲であってよい。含有量P2は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、0.1質量部以上、0.3質量部以上、0.4質量部以上、0.5質量部以上、1質量部以上、又は、2質量部以上であってよい。含有量P2は、極性基を有する部材に対する密着性を調整する観点から、3質量部以上、4質量部以上、5質量部以上、8質量部以上、10質量部以上、又は、15質量部以上であってもよい。含有量P2は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、30質量部以下、20質量部以下、15質量部以下、10質量部以下、8質量部以下、5質量部以下、4質量部以下、又は、3質量部以下であってよい。含有量P2は、極性基を有する部材に対する密着性を調整する観点、及び、相溶性に優れる観点から、2質量部以下、1質量部以下、又は、0.5質量部以下であってもよい。これらの観点から、含有量P2は、0.1~30質量部、0.1~10質量部、0.1~3質量部、0.4~30質量部、0.4~10質量部、0.4~3質量部、1~30質量部、1~10質量部、1~3質量部、2~30質量部、2~10質量部、又は、2~3質量部であってよい。
【0028】
リン含有化合物の含有量、P=O(OH)構造を有するリン含有化合物の含有量、リン酸エステルの含有量、又は、(メタ)アクリロイル基を有するリン酸エステルの含有量として、含有量P3は、樹脂組成物の全質量(有機溶剤の質量を除く)、エラストマー、重合性化合物及び重合開始剤の合計量、エラストマー、(メタ)アクリル化合物及び重合開始剤の合計量、スチレン系ブロック共重合体、(メタ)アクリル化合物及び重合開始剤の合計量、エラストマー及び重合性化合物の合計量、エラストマー及び(メタ)アクリル化合物の合計量、又は、スチレン系ブロック共重合体及び(メタ)アクリル化合物の合計量を基準として下記の範囲であってよい。含有量P3は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.09質量%以上、0.1質量%以上、0.15質量%以上、0.2質量%以上、0.25質量%以上、0.3質量%以上、0.35質量%以上、0.4質量%以上、又は、0.45質量%以上であってよい。含有量P3は、極性基を有する部材に対する密着性を調整する観点から、0.5質量%以上、0.6質量%以上、0.7質量%以上、0.8質量%以上、0.9質量%以上、1質量%以上、1.5質量%以上、1.8質量%以上、2質量%以上、2.5質量%以上、3質量%以上、又は、3.5質量%以上であってもよい。含有量P3は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、10質量%以下、8質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、3.5質量%以下、3質量%以下、2.5質量%以下、2質量%以下、1.8質量%以下、1.5質量%以下、1質量%以下、0.9質量%以下、0.8質量%以下、0.7質量%以下、0.6質量%以下、又は、0.5質量%以下であってよい。含有量P3は、極性基を有する部材に対する密着性を調整する観点、及び、相溶性に優れる観点から、0.45質量%以下、0.4質量%以下、0.35質量%以下、0.3質量%以下、0.25質量%以下、0.2質量%以下、0.15質量%以下、又は、0.1質量%以下であってもよい。これらの観点から、含有量P3は、0.01~10質量%、0.01~2質量%、0.01~1質量%、0.01~0.5質量%、0.2~10質量%、0.2~2質量%、0.2~1質量%、0.2~0.5質量%、0.4~10質量%、0.4~2質量%、0.4~1質量%、又は、0.4~0.5質量%であってよい。
【0029】
本実施形態に係る樹脂組成物は、エラストマーを含有する。エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、シリコーン系エラストマー等が挙げられる。エラストマーは、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、スチレン系エラストマーを含んでよい。エラストマーとしては、リン原子を含まないエラストマーを用いてよい。
【0030】
スチレン系エラストマーは、スチレン化合物を単量体単位として有する重合体(スチレン化合物に由来する単量体単位を有する重合体。以下、「スチレン系重合体」という。)であってよい。スチレン化合物としては、スチレン;メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、オクチルスチレン等のアルキルスチレン;フルオロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン等のハロゲン化スチレン;ニトロスチレン;アセチルスチレン;メトキシスチレンなどが挙げられる。スチレン系重合体は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、スチレンを単量体単位として有してよい。
【0031】
スチレン系重合体としては、スチレン-ブタジエンランダム共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体、これらの水素添加型共重合体等が挙げられる。
【0032】
エラストマーは、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、スチレン系ブロック共重合体を含んでよい。スチレン系ブロック共重合体は、一のスチレン化合物の単量体単位、及び、他のスチレン化合物の単量体単位を有するブロック共重合体であってよく、スチレン化合物の単量体単位、及び、スチレン化合物に該当しない化合物の単量体単位を有するブロック共重合体であってよい。エラストマーは、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体を含んでよい。
【0033】
スチレン系重合体は、カルボン酸無水物により変性されていてよく、カルボン酸無水物により変性されていなくてよい。カルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸無水物などが挙げられる。エラストマーは、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、カルボン酸無水物により変性されたスチレン系ブロック共重合体を含んでよく、無水マレイン酸により変性されたスチレン系ブロック共重合体を含んでよく、カルボン酸無水物により変性されたスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体を含んでよく、無水マレイン酸により変性されたスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体を含んでよい。
【0034】
スチレン化合物の単量体単位の含有量、又は、スチレンの単量体単位の含有量は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、スチレン系重合体の全質量、又は、スチレン系ブロック共重合体の全質量を基準として下記の範囲であってよい。単量体単位の含有量は、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、又は、40質量%以上であってよい。単量体単位の含有量は、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、又は、40質量%以下であってよい。これらの観点から、単量体単位の含有量は、5~80質量%、5~60質量%、5~50質量%、20~80質量%、20~60質量%、20~50質量%、30~80質量%、30~60質量%、又は、30~50質量%であってよい。
【0035】
スチレン系重合体の含有量、又は、スチレン系ブロック共重合体の含有量は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、エラストマーの全質量を基準として、50質量%以上、50質量%超、70質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、又は、99質量%以上であってよい。樹脂組成物に含まれるエラストマーが実質的にスチレン系重合体又はスチレン系ブロック共重合体からなる態様(スチレン系重合体の含有量、又は、スチレン系ブロック共重合体の含有量が、樹脂組成物に含まれるエラストマーの全質量を基準として実質的に100質量%である態様)であってよい。
【0036】
エラストマーの含有量、スチレン系重合体の含有量、又は、スチレン系ブロック共重合体の含有量として、含有量Aは、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、樹脂組成物の全質量(有機溶剤の質量を除く)、エラストマー、重合性化合物及び重合開始剤の合計量、エラストマー、(メタ)アクリル化合物及び重合開始剤の合計量、スチレン系ブロック共重合体、(メタ)アクリル化合物及び重合開始剤の合計量、エラストマー及び重合性化合物の合計量、エラストマー及び(メタ)アクリル化合物の合計量、又は、スチレン系ブロック共重合体及び(メタ)アクリル化合物の合計量を基準として下記の範囲であってよい。含有量Aは、20質量%以上、20質量%超、30質量%以上、30質量%超、40質量%以上、40質量%超、50質量%以上、50質量%超、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、又は、78質量%以上であってよい。含有量Aは、99質量%以下、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、82質量%以下、又は、80質量%以下であってよい。これらの観点から、含有量Aは、20~99質量%、20~90質量%、20~85質量%、50~99質量%、50~90質量%、50~85質量%、70~99質量%、70~90質量%、又は、70~85質量%であってよい。
【0037】
本実施形態に係る樹脂組成物は、重合性化合物を含有する。重合性化合物としては、リン原子を含む重合性化合物(上述のリン含有化合物)を用いてよく、リン原子を含まない重合性化合物を用いてよい。重合性化合物としては、加熱、活性光線(紫外線等)の照射などによって重合する化合物を用いることができる。
【0038】
重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、アニオン重合性化合物等が挙げられる。重合性化合物は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、ラジカル重合性化合物を含んでよい。
【0039】
重合性化合物としては、(メタ)アクリル化合物((メタ)アクリロイル基を有する化合物)、エポキシ化合物(エポキシ基を有する化合物)、マレイミド化合物、ハロゲン化ビニリデン化合物、ビニルエーテル化合物、ビニルエステル化合物、ビニルアミド化合物、芳香族ビニル化合物(例えばビニルピリジン化合物)、アリル化合物、スチレン化合物、(メタ)アクリルアミド化合物、ナジイミド化合物、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム、オキセタン化合物、ラクトン化合物等が挙げられる。重合性化合物は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、エチレン性不飽和結合を有する化合物を含んでよく、(メタ)アクリル化合物を含んでよい。(メタ)アクリル化合物としては、エポキシ基を有さない化合物を用いてよい。
【0040】
(メタ)アクリル化合物は、単官能(メタ)アクリル化合物、及び、多官能(メタ)アクリル化合物(2官能(メタ)アクリル化合物、又は、3官能以上の(メタ)アクリル化合物)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。例えば、「2官能(メタ)アクリル化合物」は、一分子中におけるアクリロイル基及びメタクリロイル基の合計が2である化合物を意味する。(メタ)アクリル化合物は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、2官能(メタ)アクリル化合物を含んでよい。
【0041】
単官能(メタ)アクリル化合物(リン含有化合物に該当する化合物を除く)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチルヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、モノ(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)スクシネート等の脂肪族(メタ)アクリレート;シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、モノ(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)テトラヒドロフタレート、モノ(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)ヘキサヒドロフタレート等の脂環式(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、o-ビフェニル(メタ)アクリレート、1-ナフチル(メタ)アクリレート、2-ナフチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、p-クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、1-ナフトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ナフトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(o-フェニルフェノキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(1-ナフトキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(2-ナフトキシ)プロピル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート;2-テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-N-カルバゾール等の複素環式(メタ)アクリレート;これらのカプロラクトン変性体などが挙げられる。
【0042】
2官能(メタ)アクリル化合物(リン含有化合物に該当する化合物を除く)としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート(例えば1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート)、デカンジオールジ(メタ)アクリレート(例えば1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート)、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート(例えば1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート)、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化2-メチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート(例えばアルカンジオールジ(メタ)アクリレート);シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート;エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAFジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ビスフェノールAFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化フルオレン型ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化フルオレン型ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化フルオレン型ジ(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート;ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート等の複素環式(メタ)アクリレート;これらのカプロラクトン変性体;ネオペンチルグリコール型エポキシ(メタ)アクリレート等の脂肪族エポキシ(メタ)アクリレート;シクロヘキサンジメタノール型エポキシ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート等の脂環式エポキシ(メタ)アクリレート;レゾルシノール型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAF型エポキシ(メタ)アクリレート、フルオレン型エポキシ(メタ)アクリレート等の芳香族エポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0043】
3官能以上の(メタ)アクリル化合物(リン含有化合物に該当する化合物を除く)としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート;エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート等の複素環式(メタ)アクリレート;これらのカプロラクトン変性体;フェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等の芳香族エポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0044】
(メタ)アクリル化合物は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、脂肪族(メタ)アクリレートを含んでよい。(メタ)アクリル化合物は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、アルカンジオールジ(メタ)アクリレートを含んでよく、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、及び、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。(メタ)アクリル化合物は、アクリル化合物を含んでよい。
【0045】
(メタ)アクリル化合物は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、下記一般式(I)で表される化合物を含んでよい。
【0046】
【化5】

[式中、Rは、9以下の炭素原子及び2以上の酸素原子を含む基を表し、R2a及びR2bは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表す。]
【0047】
の炭素原子は、1~9である。Rの炭素原子は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、又は、8以上であってよい。Rの酸素原子は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、6以下、5以下、4以下、3以下、又は、2以下であってよい。Rは、両端に酸素原子が結合した炭化水素基であってよく、「-O-C2n-O-」基(n=1~9)であってよい。Rは、リン原子を含まなくてよい。(メタ)アクリル化合物は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、一般式(I)においてRが環状構造を有さない化合物を含んでよく、一般式(I)においてRが脂環を有さない化合物を含んでよい。
【0048】
一般式(I)で表される化合物の含有量は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、重合性化合物の全質量、又は、(メタ)アクリル化合物の全質量を基準として、50質量%以上、50質量%超、70質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、96質量%以上、97質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、又は、99質量%超であってよい。樹脂組成物に含まれる重合性化合物又は(メタ)アクリル化合物が、実質的に、一般式(I)で表される化合物からなる態様(一般式(I)で表される化合物の含有量が、樹脂組成物に含まれる重合性化合物又は(メタ)アクリル化合物の全質量を基準として実質的に100質量%である態様)であってよい。
【0049】
(メタ)アクリル化合物は、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル化合物を含んでよく、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル化合物を含まなくてよい。ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル化合物の含有量は、重合性化合物の全質量、又は、(メタ)アクリル化合物の全質量を基準として、5質量%以下、5質量%未満、1質量%以下、0.1質量%以下、0.01質量%以下、又は、実質的に0質量%であってよい。
【0050】
(メタ)アクリル化合物の分子量は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、下記の範囲であってよい。(メタ)アクリル化合物の分子量は、80以上、100以上、120以上、150以上、180以上、200以上、220以上、250以上、又は、260以上であってよい。(メタ)アクリル化合物の分子量は、1000以下、800以下、600以下、550以下、500以下、450以下、400以下、350以下、320以下、300以下、又は、280以下であってよい。これらの観点から、(メタ)アクリル化合物の分子量は、80~1000、80~500、80~400、80~300、200~1000、200~500、200~400、200~300、250~1000、250~500、250~400、又は、250~300であってよい。
【0051】
重合性化合物の含有量、又は、(メタ)アクリル化合物の含有量として、含有量B1は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、エラストマー100質量部、スチレン系重合体100質量部、又は、スチレン系ブロック共重合体100質量部に対して下記の範囲であってよい。含有量B1は、1質量部以上、5質量部以上、10質量部以上、15質量部以上、20質量部以上、又は、25質量部以上であってよい。含有量B1は、300質量部以下、200質量部以下、100質量部以下、80質量部以下、60質量部以下、50質量部以下、40質量部以下、30質量部以下、28質量部以下、又は、26質量部以下であってよい。これらの観点から、含有量B1は、1~300質量部、10~300質量部、20~300質量部、1~100質量部、10~100質量部、20~100質量部、1~50質量部、10~50質量部、又は、20~50質量部であってよい。
【0052】
重合性化合物の含有量、又は、(メタ)アクリル化合物の含有量として、含有量B2は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、樹脂組成物の全質量(有機溶剤の質量を除く)、エラストマー、重合性化合物及び重合開始剤の合計量、エラストマー、(メタ)アクリル化合物及び重合開始剤の合計量、スチレン系ブロック共重合体、(メタ)アクリル化合物及び重合開始剤の合計量、エラストマー及び重合性化合物の合計量、エラストマー及び(メタ)アクリル化合物の合計量、又は、スチレン系ブロック共重合体及び(メタ)アクリル化合物の合計量を基準として下記の範囲であってよい。含有量B2は、1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、18質量%以上、又は、20質量%以上であってよい。含有量B2は、80質量%以下、80質量%未満、70質量%以下、70質量%未満、60質量%以下、60質量%未満、50質量%以下、50質量%未満、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、又は、22質量%以下であってよい。これらの観点から、含有量B2は、1~80質量%、1~50質量%、1~30質量%、10~80質量%、10~50質量%、10~30質量%、15~80質量%、15~50質量%、又は、15~30質量%であってよい。
【0053】
本実施形態に係る樹脂組成物は、重合開始剤を含有する。重合開始剤としては、加熱、活性光線(紫外線等)の照射などによって重合を開始させる化合物であれば特に制限はないが、例えば、熱重合開始剤及び光重合開始剤(熱重合開始剤に該当する化合物を除く)が挙げられる。重合開始剤としては、リン原子を含まない重合開始剤を用いてよい。
【0054】
熱重合開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、メチルシクロヘキサノンパーオキシド等のケトンパーオキシド;1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール;p-メンタンヒドロパーオキシド等のヒドロパーオキシド;α,α’-ビス(tert-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキシド、tert-ブチルクミルパーオキシド、ジ-tert-ブチルパーオキシド等のジアルキルパーオキシド;オクタノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ステアリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド;ビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ-3-メトキシブチルパーオキシカーボネート等のパーオキシカーボネート;tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、tert-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシイソブチレート、tert-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシラウリレート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert-ブチルパーオキシアセテート等のパーオキシエステル;無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、無水ジメチルグルタル酸、無水ジエチルグルタル酸、無水コハク酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビフタル酸無水物、4,4’-カルボニルジフタル酸無水物、4,4’-スルホニルジフタル酸無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等の酸無水物;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2’-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物などが挙げられる。
【0055】
光重合開始剤としては、アシルホスフィンオキサイド化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、ベンゾフェノン化合物、イミダゾール化合物、アクリジン化合物、オキシムエステル化合物等が挙げられる。
【0056】
重合開始剤は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、熱ラジカル重合開始剤を含んでよく、熱カチオン重合開始剤を含んでよい。重合開始剤は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、過酸化物を含んでよく、パーオキシエステルを含んでよく、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサンを含んでよい。
【0057】
重合開始剤の含有量は、樹脂組成物の全質量(有機溶剤の質量を除く)、エラストマー、重合性化合物及び重合開始剤の合計量、エラストマー、(メタ)アクリル化合物及び重合開始剤の合計量、スチレン系ブロック共重合体、(メタ)アクリル化合物及び重合開始剤の合計量、エラストマー及び重合性化合物の合計量、エラストマー及び(メタ)アクリル化合物の合計量、又は、スチレン系ブロック共重合体及び(メタ)アクリル化合物の合計量を基準として下記の範囲であってよい。重合開始剤の含有量は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点、及び、優れた硬化性を得やすい観点から、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、0.8質量%以上、又は、0.9質量%以上であってよい。重合開始剤の含有量は、極性基を有する部材に対する高い密着性を有する硬化物を得やすい観点から、10質量%以下、8質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1.5質量%以下、又は、1質量%以下であってよい。これらの観点から、重合開始剤の含有量は、0.01~10質量%、0.01~5質量%、0.01~2質量%、0.1~10質量%、0.1~5質量%、0.1~2質量%、0.5~10質量%、0.5~5質量%、又は、0.5~2質量%であってよい。
【0058】
本実施形態に係る樹脂組成物は、エラストマー、重合性化合物及び重合開始剤以外の添加剤を含有してよい。このような添加剤としては、硬化促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可視光吸収剤、着色剤、可塑剤、安定剤、充填剤(フィラー)、還元剤、炭酸水素塩等が挙げられる。還元剤としては、バナジルアセチルアセトネート、バナジウムアセチルアセトネート、コバルトアセチルアセトネート、銅アセチルアセトネート、ナフテン酸バナジル、ステアリン酸バナジル、ナフテン酸銅、酢酸銅、オクチル酸コバルト等が挙げられる。
【0059】
充填剤(フィラー)の含有量は、エラストマー及び重合性化合物の合計量、エラストマー及び(メタ)アクリル化合物の合計量、又は、スチレン系ブロック共重合体及び(メタ)アクリル化合物の合計量を基準として、100質量%以下、100質量%未満、50質量%以下、20質量%以下、20質量%未満、10質量%以下、1質量%以下、0.1質量%以下、又は、実質的に0質量%であってよい。還元剤の含有量は、重合性化合物100質量部、又は、(メタ)アクリル化合物100質量部に対して、0.01質量部以下、0.01質量部未満、0.001質量部以下、又は、実質的に0質量部であってよい。炭酸水素塩の含有量は、重合性化合物100質量部、又は、(メタ)アクリル化合物100質量部に対して、0.1質量部以下、0.1質量部未満、0.01質量部以下、0.001質量部以下、又は、実質的に0質量部であってよい。
【0060】
本実施形態に係る樹脂組成物は、有機溶剤を含有してよい。本実施形態に係る樹脂組成物は、有機溶剤を用いて希釈することにより樹脂ワニスとして用いてよい。有機溶剤としては、トルエン、キシレン、メシチレン、クメン、p-シメン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等の環状エーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭酸エステル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミドなどが挙げられる。
【0061】
本実施形態に係る積層体は、基材フィルム(支持フィルム)と、当該基材フィルム上に配置された透明樹脂層と、を備え、透明樹脂層が、本実施形態に係る樹脂組成物及びその硬化物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む。
【0062】
基材フィルムの構成材料としては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー等)、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィドなどが挙げられる。基材フィルムの厚さは、1~200μm、10~100μm、又は、20~80μmであってよい。
【0063】
透明樹脂層の厚さは、透明アンテナを薄型化しやすい観点から、1000μm以下、800μm以下、500μm以下、300μm以下、250μm以下、200μm以下、150μm以下、又は、100μm以下であってよい。透明樹脂層の厚さは、伝送損失を低減しやすい観点、及び、アンテナ特性が向上しやすい観点から、1μm以上、5μm以上、10μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、50μm以上、80μm以上、又は、100μm以上であってよい。これらの観点から、透明樹脂層の厚さは、1~1000μm、10~500μm、20~200μm、又は、50~200μmであってよい。
【0064】
本実施形態に係る積層体の第1態様は、透明樹脂層上に配置された保護フィルムを備えてよい。本実施形態に係る積層体の第2態様は、透明樹脂層上に配置された導電部材を備えてよい。
【0065】
保護フィルムの構成材料としては、基材フィルムの構成材料として上述した構成材料を用いることができる。保護フィルムは、基材フィルムと同一のフィルムであってよく、基材フィルムと異なるフィルムであってよい。保護フィルムの厚さは、1~200μm、10~100μm、又は、20~50μmであってよい。
【0066】
導電部材は、中実であってよく、パターン状の部分を有してよい(パターニングされていてよい)。パターン状の部分を有する導電部材(以下、「パターン状の導電部材」という)では、導電部材の一部又は全部がパターニングされていてよい。パターン状の部分の形状としては、メッシュ状、渦状等が挙げられる。中実の導電部材を備える透明アンテナを用いる場合、導電部材はパターニング(例えばメッシュ加工)されなくてよい。パターン状(例えばメッシュ状)の導電部材は、ワイヤ(例えば金属ワイヤ)により構成されてよい。導電部材の構成材料としては、金属材料、炭素材料(例えばグラフェン)、導電性高分子等が挙げられる。金属材料としては、銅、銀、金等が挙げられる。導電部材は、優れた導電性を得やすい観点、及び、製造コストを低減しやすい観点から、銅を含有してよい。
【0067】
導電部材は、単層であってよく、複数層であってよい。複数層の導電部材は、例えば、透明樹脂層上に配置された第1の導電部材(例えば金属部材)と、第1の導電部材上に配置された第2の導電部材(例えば金属部材)と、を有してよい。第1の導電部材及び第2の導電部材からなる群より選ばれる少なくとも一種は、中実であってよく、パターン状(例えばメッシュ状)であってよい。第2の導電部材は、第1の導電部材の汚れ、損傷等を抑制する保護層として用いることが可能であり、これにより、積層体の取扱性を向上させることもできる。第1の導電部材及び第2の導電部材からなる群より選ばれる少なくとも一種は、銅を含有してよい。
【0068】
導電部材の厚さ(導電部材が複数層である場合は総厚)、第1の導電部材の厚さ、又は、第2の導電部材の厚さは、下記の範囲であってよい。厚さは、導電部材が欠けにくい観点、及び、中実の導電部材がパターニング(例えばメッシュ加工)される場合にはパターニングしやすい観点から、50μm以下、45μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、18μm以下、15μm以下、10μm以下、8μm以下、5μm以下、3μm以下、又は、2μm以下であってよい。厚さは、優れた伸びを得やすい観点から、0.1μm以上、0.3μm以上、0.5μm以上、0.8μm以上、1μm以上、1.2μm以上、1.5μm以上、又は、2μm以上であってよい。これらの観点から、厚さは、0.1~50μm、0.1~30μm、0.1~20μm、0.1~10μm、0.5~5μm、又は、1~3μmであってよい。
【0069】
第1の導電部材の厚さは、第2の導電部材の厚さより小さくてよい。導電部材が複数層である場合、導電部材の厚さ(総厚)、又は、第2の導電部材の厚さは、3μm以上、5μm以上、8μm以上、10μm以上、15μm以上、18μm以上、又は、20μm以上であってよい。
【0070】
第2態様に係る積層体は、導電部材上に配置された保護フィルムを備えてよい。保護フィルムとしては、第1態様に係る積層体における保護フィルムとして上述した保護フィルムを用いることができる。保護フィルムにおける導電部材側の面の少なくとも一部に離型処理が施されていてよく、保護フィルムにおける導電部材側の面の少なくとも一部に剥離層が配置されていてよい。例えば、第2態様に係る積層体は、基材フィルムと、透明樹脂層と、導電部材と、保護フィルムと、を備え、導電部材が単層であり、保護フィルムにおける導電部材側の面の少なくとも一部に離型処理が施されている態様であってよい。
【0071】
第2態様に係る積層体は、感光性組成物及びその硬化物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む層として、導電部材上に配置された層Lを備えてよい。感光性組成物は、活性光線(紫外線等)に対する感光性を有しており、ポジ型の感光性を有してよく、ネガ型の感光性を有してよい。感光性組成物は、光照射によって硬化する光硬化性を有してよい。層Lは、未硬化部及び硬化部からなる群より選ばれる少なくとも一種を有してよい。感光性組成物の構成材料は、特に限定されない。
【0072】
図1及び図2は、積層体の例を示す模式断面図である。図1(a)の積層体10は、基材フィルム10aと、基材フィルム10a上に配置された透明樹脂層10bと、透明樹脂層10b上に配置された保護フィルム10cと、を備える。透明樹脂層10bは、本実施形態に係る樹脂組成物、又は、本実施形態に係る硬化物からなる。図1(b)の積層体20は、基材フィルム20aと、基材フィルム20a上に配置された透明樹脂層20bと、透明樹脂層20b上に配置された導電部材20cと、を備える。透明樹脂層20bは、本実施形態に係る樹脂組成物、又は、本実施形態に係る硬化物からなる。図2の積層体30は、基材フィルム30aと、基材フィルム30a上に配置された透明樹脂層30bと、透明樹脂層30b上に配置された導電部材30cと、導電部材30c上に配置された導電部材30dと、を備える。透明樹脂層30bは、本実施形態に係る樹脂組成物、又は、本実施形態に係る硬化物からなる。
【0073】
本実施形態に係る透明アンテナは、透明基材と、透明基材上に配置された導電部材と、を備え、透明基材が、本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物を含む。導電部材は、単層であってよい。導電部材の構成としては、第2態様に係る積層体における導電部材に関して上述した構成を用いることができる。例えば、導電部材は、銅を含有してよい。また、導電部材は、中実であってよく、パターン状(例えばメッシュ状)であってよい。透明基材の厚さとしては、本実施形態に係る積層体の透明樹脂層に関して上述した厚さを用いることができる。
【0074】
本実施形態に係る透明アンテナは、透明基材を支持する支持部材を備えてよく、すなわち、支持部材と、支持部材上に配置された透明基材と、透明基材上に配置された導電部材と、を備えてよい。
【0075】
支持部材の形状は、特に限定されず、フィルム状、基板状、不定形状等であってよい。支持部材の構成材料としては、樹脂材料、無機材料等が挙げられる。樹脂材料としては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー等)、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィドなどが挙げられる。無機材料としては、ガラス等が挙げられる。支持部材は、透明であることに限られず、透明部材であってよく、透明ではない部材であってよい。支持部材は、90%以上の全光線透過率を有する材料により形成されてよい。支持部材は、低誘電である観点から、ポリオレフィンを含んでよい。支持部材は、透明基材と支持部材との密着性に優れる観点から、極性基(ヒドロキシ基、カルボキシル基等)を有する材料を含んでよく、ガラスを含んでよい。
【0076】
本実施形態に係る透明アンテナの製造方法の第1態様は、本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物を含む透明基材上に配置された導電部材(中実の導電部材)の少なくとも一部をパターニングする(例えばメッシュ状に加工する)加工工程を備える。加工工程では、透明基材と、透明基材上に配置された導電部材と、を備える積層体の導電部材上にパターン状のレジスト層が配置された状態で導電部材をエッチングすることによりパターン状(例えばメッシュ状)の導電部材を得てよい。レジスト層は、導電部材をエッチングした後に除去してよい。パターン状のレジスト層は、導電部材上に配置された感光層(感光性組成物を含む層)に活性光線(例えば紫外線)を照射(露光)した後、感光層の未露光部(感光層がネガ型の感光性を有する場合)又は露光部(感光層がポジ型の感光性を有する場合)を除去(現像)することにより得ることができる。
【0077】
透明基材上に配置された導電部材を備える積層体は、本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物を含む透明基材上に導電部材を形成して得られてよく、例えば、第1態様に係る積層体の保護フィルムを除去した後に透明樹脂層上に導電部材を形成して得られてよい。透明基材上に配置された導電部材を備える積層体は、第2態様に係る積層体であってもよい。
【0078】
本実施形態に係る透明アンテナの製造方法の第2態様は、本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物を含む透明基材上にパターン状のレジスト層が配置された状態でパターン状(例えばメッシュ状)の金属部材を形成する形成工程を備える。形成工程では、レジスト層をマスクとして用いて、めっき又はスパッタリングによりパターン状(例えばメッシュ状)の金属部材を形成してよい。レジスト層は、形成工程の後に除去してよい。
【0079】
本実施形態に係る透明アンテナの製造方法の第3態様は、第2態様に係る積層体における導電部材がパターン状(例えばメッシュ状)である場合において、当該積層体における基材フィルムを除去する除去工程を備える。除去工程時の積層体の透明樹脂層が硬化物を含む場合には、除去工程により、透明アンテナとして、透明基材(透明樹脂層)及びパターン状(例えばメッシュ状)の導電部材の積層体を得ることができる。除去工程時の積層体の透明樹脂層が未硬化である場合には、除去工程の後に透明樹脂層(透明樹脂層の樹脂組成物)を硬化させることにより、透明アンテナとして、透明基材(透明樹脂層)及びパターン状(例えばメッシュ状)の導電部材の積層体を得ることができる。
【0080】
本実施形態に係る透明アンテナの製造方法の第4態様は、本実施形態に係る積層体における透明樹脂層を支持部材上に積層する積層工程を備える。支持部材としては、透明アンテナに関して上述した支持部材を用いることができる。積層工程では、本実施形態に係る積層体における基材フィルムが除去された状態で透明樹脂層を支持部材上に積層してよく、第1態様に係る積層体における保護フィルムが除去された状態で透明樹脂層を支持部材上に積層してよい。第4態様に係る透明アンテナの製造方法は、本実施形態に係る積層体における基材フィルムを除去する除去工程Aを備えてよく、第1態様に係る積層体における保護フィルムを除去する除去工程Bを備えてよい。
【0081】
第2態様に係る積層体を用いる場合、積層工程では、透明樹脂層が導電部材よりも支持部材側に位置する状態で透明樹脂層及び導電部材を支持部材上に積層してよく、透明樹脂層が支持部材に接した状態で透明樹脂層及び導電部材を支持部材上に積層してよい。積層工程では、第2態様に係る積層体における基材フィルムが除去された状態で透明樹脂層及び導電部材を支持部材上に積層することができる。第2態様に係る積層体が、導電部材上に配置された保護フィルムを備えている場合、積層工程では、透明樹脂層が導電部材よりも支持部材側に位置する状態(導電部材が保護フィルムよりも透明樹脂層側に位置する状態)で透明樹脂層、導電部材及び保護フィルムを支持部材上に積層してよい。第2態様に係る積層体が、基材フィルムと、透明樹脂層と、導電部材と、保護フィルムと、を備える場合、本実施形態に係る透明アンテナの製造方法の第4態様は、除去工程A及び積層工程の後に、保護フィルムを除去する除去工程Bを備えてよい。第2態様に係る積層体が上述の層Lを備えている場合、積層工程では、透明樹脂層が導電部材よりも支持部材側に位置する状態で透明樹脂層、導電部材及び層Lを支持部材上に積層してよい。
【0082】
ところで、支持部材と、支持部材上に配置された導電部材と、を有する積層体において支持部材と導電部材とを密着性よく積層する場合、支持部材に表面処理(プラズマ処理、コロナ処理等)を施す場合があり、積層体の製造過程が繁雑化し得る。例えば、支持部材の構成材料としてポリオレフィンを用いる場合、ポリオレフィンと導電部材(例えば、銅等の金属材料)との密着性が低いことから、充分な密着性を得るために表面処理を施すことが求められる場合がある。一方、第4態様に係る透明アンテナの製造方法によれば、支持部材の表面処理を要することなく、支持部材と導電部材との充分な密着性を得つつ、透明アンテナとして支持部材と導電部材との積層体(支持部材、透明樹脂層及び導電部材を有する積層体)を得ることが可能であり、例えば、ポリオレフィンを含有する支持部材と、銅を含有する導電部材との充分な密着性を得つつ透明アンテナを得ることができる。また、第4態様に係る透明アンテナの製造方法によれば、第2態様に係る積層体を支持部材上に積層することにより透明樹脂層及び導電部材を一括して支持部材上に供給することが可能であり、簡便な手法により透明アンテナを得ることができる。第2態様に係る積層体が上述の層Lを備えている場合、第4態様に係る透明アンテナの製造方法によれば、第2態様に係る積層体を支持部材上に積層することにより透明樹脂層、導電部材及び層Lを一括して支持部材上に供給することが可能であり、透明アンテナを製造する度に支持部材上に各部材を形成することを要さず、簡便な手法により透明アンテナを得ることができる。さらに、第4態様に係る透明アンテナの製造方法によれば、透明樹脂層の構成材料として、優れた誘電特性(低い比誘電率、誘電正接等)を有する材料を用いることにより、優れたアンテナ特性を有する透明アンテナを得ることができる。
【0083】
第4態様に係る透明アンテナの製造方法において、除去工程A、除去工程B及び積層工程における透明樹脂層は、未硬化であってよく、硬化物であってよい。透明樹脂層が未硬化である場合、第4態様に係る透明アンテナの製造方法は、積層工程の後に、透明樹脂層(透明樹脂層の樹脂組成物)を硬化させる硬化工程を備えてよい。
【0084】
第4態様に係る透明アンテナの製造方法において、除去工程A、除去工程B及び積層工程における導電部材は、中実であってよく、パターン状(例えばメッシュ状)であってよい。導電部材が中実である場合、第4態様に係る透明アンテナの製造方法は、積層工程の後に、導電部材の少なくとも一部をパターニングする(例えばメッシュ状に加工する)加工工程Aを備えてよい。加工工程Aでは、パターン状のレジスト層をマスクとして用いて、導電部材の少なくとも一部をエッチングすることにより導電部材の少なくとも一部をパターニングしてよい。
【0085】
第2態様に係る積層体が上述の層Lを備えている場合、第4態様に係る透明アンテナの製造方法は、積層工程の後、且つ、加工工程Aの前に、層Lの少なくとも一部をパターニングすることによりパターン状の層L(レジスト層)を得る加工工程Bを備えてよい。加工工程Bでは、未露光部(層Lがネガ型の感光性を有する場合)又は露光部(層Lがポジ型の感光性を有する場合)を除去(現像)することにより層Lの少なくとも一部をパターニングすることが可能であり、層Lを露光した後に未露光部又は露光部を除去(現像)することにより層Lの少なくとも一部をパターニングしてよい。第4態様に係る透明アンテナの製造方法は、積層工程の前に、層Lの少なくとも一部を露光する工程を備えてもよい。
【0086】
第4態様に係る透明アンテナの製造方法において、除去工程A、除去工程B及び積層工程における導電部材は、複数層であってよく、透明樹脂層上に配置された第1の導電部材と、第1の導電部材上に配置された第2の導電部材と、を有してよい。第1の導電部材及び第2の導電部材からなる群より選ばれる少なくとも一種は、中実であってよく、パターン状(例えばメッシュ状)であってよい。第1の導電部材及び第2の導電部材からなる群より選ばれる少なくとも一種は、銅を含有してよい。導電部材が第1の導電部材及び第2の導電部材を有する場合、積層工程では、第1の導電部材が第2の導電部材よりも支持部材側に位置する状態で透明樹脂層及び導電部材を支持部材上に積層してよい。第4態様に係る透明アンテナの製造方法は、積層工程の後に、第2の導電部材を除去する除去工程Cを備えてよい。除去工程Cでは、第2の導電部材を第1の導電部材から剥離することができる。第4態様に係る透明アンテナの製造方法は、除去工程Cの後に、第1の導電部材の少なくとも一部をパターニングする(例えばメッシュ状に加工する)加工工程を備えてよい。加工工程では、例えば、第1の導電部材上にパターン状のレジスト層が配置された状態で第1の導電部材をエッチングしてよい。透明樹脂層が未硬化である場合、第4態様に係る透明アンテナの製造方法は、除去工程Cの前、除去工程Cの後、又は、除去工程Cの前後に、透明樹脂層(透明樹脂層の樹脂組成物)を硬化させる硬化工程を備えてよい。
【0087】
本実施形態に係る透明アンテナの製造方法の第5態様は、上述の基材フィルムと、上述の透明樹脂層と、第1の導電部材及び第2の導電部材を有する上述の導電部材と、を備える積層体を用いた透明アンテナの製造方法であって、積層体における透明樹脂層が導電部材よりも支持部材側に位置しつつ透明樹脂層及び導電部材が支持部材上に積層された状態で第2の導電部材を除去する除去工程Cを備える。
【0088】
第5態様に係る透明アンテナの製造方法は、第2の導電部材を除去する前、第2の導電部材を除去した後、又は、第2の導電部材を除去する前後に、透明樹脂層及び導電部材が支持部材上に積層された状態で透明樹脂層(透明樹脂層の樹脂組成物)を硬化させる硬化工程を備えてよい。硬化工程では、透明樹脂層が導電部材よりも支持部材側に位置しつつ透明樹脂層及び導電部材が支持部材上に積層された状態で透明樹脂層を硬化させてよい。第5態様に係る透明アンテナの製造方法は、第2の導電部材を除去した後(除去工程Cの後)に、第1の導電部材の少なくとも一部をパターニングする(例えばメッシュ状に加工する)加工工程を備えてよい。第5態様に係る透明アンテナの製造方法の一例は、上述の基材フィルムと、上述の透明樹脂層(未硬化の透明樹脂層)と、第1の導電部材及び第2の導電部材を有する上述の導電部材と、を備える積層体を用いた製造方法であって、上述の除去工程A(第1の除去工程)、積層工程、硬化工程及び除去工程C(第2の除去工程)を備える。第5態様に係る透明アンテナの製造方法において、第1の導電部材及び第2の導電部材からなる群より選ばれる少なくとも一種は、銅を含有してよい。また、積層体における第1の導電部材は、中実であってよく、パターン状(例えばメッシュ状)であってよい。
【0089】
本実施形態に係る透明アンテナの製造方法の第6態様は、透明樹脂層、導電部材及び保護フィルムがこの順に支持部材上に積層された状態で保護フィルムを除去する除去工程Bを備える。この場合、積層体は、例えば、導電部材が単層であり、保護フィルムにおける導電部材側の面の少なくとも一部に離型処理が施されている態様であってよい。本実施形態に係る透明アンテナの製造方法の第6態様は、除去工程Bの前に、第2態様に係る積層体における基材フィルムを除去する除去工程Aと、透明樹脂層、導電部材及び保護フィルムを支持部材上に積層する積層工程と、を備えてよい。
【0090】
上述した第1~6態様に係る透明アンテナの製造方法では、各態様に関して上述した工程、構成等を相互に組み合わせてよい。例えば、第5態様に係る透明アンテナの製造方法では、第4態様に係る透明アンテナの製造方法に関して上述した工程、構成等を用いることができる。
【0091】
本実施形態に係る透明アンテナは、画像表示装置、自動車の構成部材(フロントガラス、リアガラス、サンルーフ、窓等)、建物などにおいて用いることができる。本実施形態に係る画像表示装置、自動車又は建物は、本実施形態に係る透明アンテナを備える。画像表示装置は、画像を表示する画像表示部と、画像表示部の周囲に位置するベゼル部(額縁部)と、を有してよく、透明アンテナが画像表示部に配置されていてよい。画像表示装置は、パソコン、ナビゲーションシステム、携帯電話、時計、電子辞書等の各種電子機器に用いられてよい。
【0092】
図3及び図4は、画像表示装置の例を示す模式断面図であり、画像表示装置の画像表示部の一部を示す。図3の画像表示装置100は、透明アンテナ110と、透明アンテナ110上に配置された保護層120と、保護層120上に配置された透明な被覆部材130と、を備える。透明アンテナ110は、透明基材110aと、透明基材110a上に配置されたメッシュ状の導電部材110bと、を備える。図4の画像表示装置200は、透明アンテナ210と、透明アンテナ210上に配置された保護層220と、保護層220上に配置された透明な被覆部材230と、を備える。透明アンテナ210は、透明部材210aと、透明部材210a上に配置された透明基材210bと、透明基材210b上に配置されたメッシュ状の導電部材210cと、を備える。透明基材110a,210bは、本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物からなる。導電部材110b,210cは、銅により形成されている。透明部材210aは、ポリオレフィンにより形成されてよく、ガラスにより形成されてよい。保護層120,220は、透明基材110a,210b及び導電部材110b,210cを被覆している。保護層120,220は、本実施形態に係る樹脂組成物及びその硬化物からなる群より選ばれる少なくとも一種により形成されてよく、90%以上の全光線透過率を有する材料により形成されてよい。被覆部材130,230は、ガラス板であってよい。
【実施例0093】
以下、実施例及び比較例を用いて本開示について更に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0094】
<樹脂ワニスの調製>
(実施例1~14)
攪拌しながら、エラストマー(無水マレイン酸変性スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、旭化成株式会社製、商品名:タフプレン912、スチレン含有量:40質量%)80質量部、重合性化合物(1,9-ノナンジオールジアクリレート、昭和電工マテリアルズ株式会社製、商品名:FA-129AS)20質量部、重合開始剤(2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、日本油脂株式会社製、商品名:パーヘキサ25O)1.0質量部、表1に示す種類及び使用量(単位:質量部)のリン含有化合物、及び、溶剤(トルエン)150質量部を混合することにより樹脂ワニスを得た。リン含有化合物1として、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート(共栄社化学株式会社製、商品名:ライトエステルP-1M)を用いた。リン含有化合物2として、2-ヒドロキシエチルメタクリレートの6-ヘキサノリド付加重合物と無水リン酸との反応生成物(日本化薬株式会社製、商品名:KAYAMER PM-21)を用いた。
【0095】
(比較例1)
リン含有化合物を用いなかったこと以外は実施例1~14と同様に行うことにより樹脂ワニスを調製した。
【0096】
<密着性の評価>
基材フィルムとして表面離型処理PETフィルム(藤森工業株式会社製、商品名:HTA、厚さ:75μm)を準備した。ナイフコータ(株式会社康井精機製、商品名:SNC-300)を用いて、このPETフィルムの離型処理面上に上述の樹脂ワニスを塗布した。次いで、乾燥機(株式会社二葉科学製、商品名:MSO-80TPS)中において100℃で10分乾燥することにより樹脂フィルムを形成した。塗工機のギャップを調節することにより、乾燥後の樹脂フィルムの厚さを100μmに調整した。保護フィルムとして表面離型処理PETフィルム(藤森工業株式会社製、商品名:BD、厚さ:75μm)を準備した後、保護フィルムの離型処理面を樹脂フィルムに貼り付けることにより積層フィルムAを得た。
【0097】
銅箔(古河電工株式会社製、商品名:電解銅箔、厚さ:18μm)を準備した。上述の積層フィルムAの保護フィルムを除去した後、加圧式真空ラミネータ(ニッコー・マテリアルズ株式会社製、商品名:V130)を用いて、露出した樹脂フィルム(積層フィルムAの樹脂フィルム)と上述の銅箔とを圧力0.5MPa、真空引き10秒、圧着30秒の条件で貼り合わせた。基材フィルム(積層フィルムAの基材フィルム)を除去した後、加圧式真空ラミネータ(ニッコー・マテリアルズ株式会社製、商品名:V130)を用いて、露出した樹脂フィルムとガラス板(松浪硝子工業株式会社製、商品名:MICLO SLIDE GLASS S9112)とを圧力0.5MPa、真空引き10秒、圧着30秒の条件で貼り合わせることにより積層体Bを得た。
【0098】
乾燥機(株式会社二葉科学製、商品名:MSO-80TPS)において、上述の積層体Bに対して120℃で30分熱処理を施して樹脂フィルムを熱硬化することにより、銅箔、硬化フィルム及びガラス板を備える評価用積層体を得た。
【0099】
上述の評価用積層体における銅箔及び硬化フィルムに直線状の切り込みを形成し、引張応力を測定するための試験部分として、銅箔及び硬化フィルムからなる積層部(幅:5mm)を作製した。25℃の環境の下、オートグラフ(株式会社島津製作所製、商品名:EZ-S)を用いて、銅箔及び硬化フィルムからなる上述の積層部を、ガラス板に対して角度90°の方向に50mm/minの速度でガラス板から引き剥がした。このときの単位幅当たりの引張応力(単位:kN/m)を得た。結果を表1に示す。引張応力が高い(引張応力が0.85kN/m以上である)ため引張応力の測定値が得られない場合を「N/A」と表示した。
【0100】
【表1】
【符号の説明】
【0101】
10,20,30…積層体、10a,20a,30a…基材フィルム、10b,20b,30b…透明樹脂層、10c…保護フィルム、20c,30c,30d,110b,210c…導電部材、100,200…画像表示装置、110,210…透明アンテナ、110a,210b…透明基材、120,220…保護層、130,230…被覆部材、210a…透明部材。

図1
図2
図3
図4