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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025108
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/039 20060101AFI20240216BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240216BHJP
   C08F 12/22 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
G03F7/039 601
G03F7/004 503A
C08F12/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128288
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】磯部 信吾
(72)【発明者】
【氏名】山地 晃大
(72)【発明者】
【氏名】倉田 岬
【テーマコード(参考)】
2H225
4J100
【Fターム(参考)】
2H225AC09
2H225AF27P
2H225AF43P
2H225AF83P
2H225AF85P
2H225AH04
2H225AH12
2H225AH13
2H225AJ04
2H225AJ13
2H225AJ44
2H225AJ48
2H225AN39P
2H225AN63P
2H225AN64P
2H225AN85P
2H225BA26P
2H225CA19
2H225CB08
2H225CC03
2H225CC15
4J100AB02Q
4J100AB07P
4J100AL03R
4J100BA02Q
4J100BA03P
4J100BA06Q
4J100BA22Q
4J100CA04
4J100CA05
4J100DA01
4J100JA37
(57)【要約】
【課題】広いフローマージンを示し、現像後の過度の膜厚の減少がなく、矩形の断面を有するドットからなるパターンを形成できるポジ型感光性樹脂組成物、前述のポジ型感光性樹脂組成物の硬化物からなるマイクロレンズ、及び前述のポジ型感光性樹脂組成物を用いるマイクロレンズの製造方法を提供すること。
【解決手段】酸解離性溶解抑制基を有し、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(A)と、樹脂(A)を架橋する官能基を備える化合物(B)と、光酸発生剤(C)と、クエンチャー(D)と、を含有するポジ型感光性樹脂組成物において、光酸発生剤(C)としてのオニウム塩系光酸発生剤と、クエンチャー(D)としての第二級脂肪族アミン、又は第三級脂肪族アミンを用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸解離性溶解抑制基を有し、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(A)と、前記樹脂(A)を架橋する官能基を備える化合物(B)と、光酸発生剤(C)と、クエンチャー(D)と、を含有するポジ型感光性樹脂組成物であって、
前記樹脂(A)は、樹脂(A1)、及び樹脂(A2)を含み、
前記樹脂(A1)は、下記式(a1)で表される構成単位及び下記式(a2-1)で表される構成単位を有し、
前記樹脂(A2)は、下記式(a1)で表される構成単位及び下記式(a2-2)又は(a2-3)で表される構成単位とを有し、
前記光酸発生剤(C)は、オニウム塩系光酸発生剤を含み、
前記クエンチャー(D)は、第二級脂肪族アミン、及び第三級脂肪族アミンから選択される1種以上を含む、ポジ型感光性樹脂組成物。
【化1】
(式(a1)中、Ra1は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、又はハロゲン化アルキル基を示し、Ra2は水素原子又はアルキル基を示し、pは1以上5以下の整数を示し、qは0以上4以下の整数を示す。)
【化2】
(式(a2-1)~(a2-3)中、Ra3は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、又はハロゲン化アルキル基を示し、Ra4、Ra5及びRa6は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を示し、Ra7はアルキル基又はシクロアルキル基を示し、Ra8は第三級炭素原子を有する有機基を示し、式(a2-2)、及び式(a2-3)中の、OとRa8との間の結合は、酸素原子と前記第三級炭素原子との結合であり、rは1以上5以下の整数を示し、s及びtは、それぞれ独立に、0以上4以下の整数を示す。)
【請求項2】
前記光酸発生剤(C)が、下記式(c9):
20cSO ・・・(c9)
(式(c9)中、R20cは炭素原子数1以上4位以下の直鎖又は分岐状のフッ素化アルキル基を表す。)
で表されるアニオン部を有するオニウム塩系光酸発生剤を含む、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂(A)を構成する全構成単位に対する、前記式(a2-1)で表される構成単位の比率が、10モル%以上35モル%以下であり、
前記樹脂(A)を構成する全構成単位に対する、前記式(a2-2)で表される構成単位、及び/又は前記式(a2-3)で表される構成単位の比率が、2モル%以上15モル%以下である請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポジ型感光性樹脂組成物における前記光酸発生剤(C)に含まれるオニウム塩系光酸発生剤の含有量が、前記クエンチャー(D)に対し2当量以上10当量以下である請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のポジ型感光性組成物の硬化物からなるマイクロレンズ。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物を用いてポジ型感光性樹脂組成物層を形成することと、
前記ポジ型感光性樹脂組成物層を位置選択的に露光することと、
露光された前記ポジ型感光性樹脂組成物層を現像することと、
現像後の前記ポジ型感光性樹脂組成物層を加熱して、マイクロレンズ形状に変形させることと、を含むマイクロレンズの製造方法。
【請求項7】
レンズ材料層上に、請求項1から4のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物を用いてポジ型感光性樹脂組成物層を積層することと、
前記ポジ型感光性樹脂組成物層を位置選択的に露光することと、
露光された前記ポジ型感光性樹脂組成物層を現像することと、
現像後の前記ポジ型感光性樹脂組成物層を加熱して、マイクロレンズパターンを有するマスク層を形成することと、
前記レンズ材料層及び前記マスク層をドライエッチングして、前記レンズ材料層に前記マイクロレンズパターンの形状を転写することと、を含むマイクロレンズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造の構成単位を含むポジ型感光性樹脂組成物と、当該ポジ型感光性樹脂組成物の硬化物からなるマイクロレンズと、前述のポジ型感光性樹脂組成物を用いるマイクロレンズの製造方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラ、ビデオカメラ等には、固体撮像素子が用いられている。この固体撮像素子には、CCD(charge-coupled device)イメージセンサや、CMOS(complementary metal-oxide semiconductor)イメージセンサが用いられている。イメージセンサには集光率の向上を目的とした微細な集光レンズ(以下、マイクロレンズと呼ぶ)が設けられている。
【0003】
かかるマイクロレンズを形成する方法として、サーマルフロー法と呼ばれる方法が工業的に広く採用されている。
サーマルフロー法においては、まず、CCD素子等の上部にフォトレジスト膜が形成される。フォトレジスト膜は、感光性樹脂組成物等により構成される膜である。その後、フォトレジスト膜を、露光、現像することで、素子上に樹脂からなるドットパターンを形成する。ドットパターンは、マイクロレンズが形成されるべき箇所に位置する、複数のドットからなる。ドットパターンを構成する各ドットは、略円筒形状、又は略円錐台形状を有する。ドットパターンを、ドットを構成する樹脂材料のガラス転移点以上の温度で加熱することでドットを構成する樹脂材料が流動し、表面張力により、各ドットの形状が半球状のレンズ形状に変化する。このようにして、マイクロレンズのパターンが形成される(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
また、CCD又はCMOSイメージセンサ用マイクロレンズの作製方法の1つとして、エッチバック法が知られている(特許文献2及び3)。この方法では、まず、カラーフィルター上にマイクロレンズ用樹脂層を形成する。次いで、上記のサーマルフロー法と同様の方法により、感光性樹脂組成物を用いて、マイクロレンズ用樹脂層上にレンズパターンを形成する。このようにして形成されたレンズパターンをエッチングマスクとして下層のマイクロレンズ用樹脂層をエッチバックし、レンズパターン形状をマイクロレンズ用樹脂層に転写することによってマイクロレンズが作製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-33518号公報
【特許文献2】特開平1-10666号公報
【特許文献3】特開平6-112459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のサーマルフロー法やエッチバック法において、マイクロレンズのパターンや、マイクロレンズ形状を有するマスクパターンを形成するためには、熱流動性の点からポジ型感光性樹脂組成物が用いられることが多い。
サーマルフローによるマイクロレンズのパターン、又はマイクロレンズ形状を有するマスクパターンに供されるドットには、マイクロレンズのパターン、又はマイクロレンズ形状を有するマスクパターンを形成する際の作業性や、所望する形状のマイクロレンズのパターン、又はマイクロレンズ形状を有するマスクパターンの形成しやすさの点で、広いフローマージンが求められる。ここで、フローマージンは、所望する形状のマイクロレンズのパターン、又はマイクロレンズ形状を有するマスクパターンを形成できる最低温度と最高温度との幅である。
また、サーマルフローによるマイクロレンズのパターン、又はマイクロレンズ形状を有するマスクパターン供されるドットには、所望する形状、及びサイズのマイクロレンズを形成するため、現像後の過度の膜厚の減少がないことや、基板に対して垂直な方向の断面形状が矩形であることが求められる。
しかしながら、従来知られるポジ型感光性樹脂組成物を用いる場合、広いフローマージンを示し、現像後の過度の膜厚の減少がなく、矩形の断面を有するドットからなるパターンを形成することが困難である。
【0007】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、広いフローマージンを示し、現像後の過度の膜厚の減少がなく、矩形の断面を有するドットからなるパターンを形成できるポジ型感光性樹脂組成物、前述のポジ型感光性樹脂組成物の硬化物からなるマイクロレンズ、及び前述のポジ型感光性樹脂組成物を用いるマイクロレンズの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、酸解離性溶解抑制基を有し、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(A)と、樹脂(A)を架橋する官能基を備える化合物(B)と、光酸発生剤(C)と、クエンチャー(D)と、を含有するポジ型感光性樹脂組成物において、光酸発生剤(C)としてのオニウム塩系光酸発生剤と、クエンチャー(D)としての第二級脂肪族アミン、又は第三級脂肪族アミンを用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。具体的には本発明は以下のものを提供する。
【0009】
本発明の第1の態様は、酸解離性溶解抑制基を有し、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(A)と、樹脂(A)を架橋する官能基を備える化合物(B)と、光酸発生剤(C)と、クエンチャー(D)と、を含有するポジ型感光性樹脂組成物であって、
樹脂(A)は、樹脂(A1)、及び樹脂(A2)を含み、
樹脂(A1)は、下記式(a1)で表される構成単位及び下記式(a2-1)で表される構成単位を有し、
樹脂(A2)は、下記式(a1)で表される構成単位及び下記式(a2-2)又は(a2-3)で表される構成単位とを有し、
光酸発生剤(C)は、オニウム塩系光酸発生剤を含み、
クエンチャー(D)は、第二級脂肪族アミン、及び第三級脂肪族アミンから選択される1種以上を含む、ポジ型感光性樹脂組成物である。
【化1】
(式(a1)中、Ra1は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、又はハロゲン化アルキル基を示し、Ra2は水素原子又はアルキル基を示し、pは1以上5以下の整数を示し、qは0以上4以下の整数を示す。)
【化2】
(式(a2-1)~(a2-3)中、Ra3は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、又はハロゲン化アルキル基を示し、Ra4、Ra5及びRa6は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を示し、Ra7はアルキル基又はシクロアルキル基を示し、Ra8は第三級炭素原子を有する有機基を示し、式(a2-2)、及び式(a2-3)中の、OとRa8との間の結合は、酸素原子と前記第三級炭素原子との結合であり、rは1以上5以下の整数を示し、s及びtは、それぞれ独立に、0以上4以下の整数を示す。)
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様にかかるポジ型感光性樹脂組成物の硬化物からなるマイクロレンズである。
【0011】
本発明の第3の態様は、第1の態様にかかるポジ型感光性樹脂組成物を用いてポジ型感光性樹脂組成物層を形成することと、
ポジ型感光性樹脂組成物層を位置選択的に露光することと、
露光されたポジ型感光性樹脂組成物層を現像することと、
現像後のポジ型感光性樹脂組成物層を加熱して、マイクロレンズ形状に変形させることと、を含むマイクロレンズの製造方法である。
【0012】
本発明の第4の態様は、レンズ材料層上に、第1の態様にかかるポジ型感光性樹脂組成物を用いてポジ型感光性樹脂組成物層を積層することと、
ポジ型感光性樹脂組成物層を位置選択的に露光することと、
露光されたポジ型感光性樹脂組成物層を現像することと、
現像後のポジ型感光性樹脂組成物層を加熱して、マイクロレンズパターンを有するマスク層を形成することと、
レンズ材料層及び前記マスク層をドライエッチングして、レンズ材料層にマイクロレンズパターンの形状を転写することと、を含むマイクロレンズの製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フォトリソグラフィー法により、広いフローマージンを示し、現像後の過度の膜厚の減少がなく、矩形の断面を有するドットからなるパターンを形成できるポジ型感光性樹脂組成物と、当該ポジ型感光性組成物の硬化物からなるマイクロレンズと、前述のポジ型感光性樹脂組成物を用いるマイクロレンズの製造方法とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートの総称である。
【0015】
≪ポジ型感光性樹脂組成物≫
ポジ型感光性樹脂組成物は、酸解離性溶解抑制基を有し、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(A)と、上記樹脂(A)を架橋する官能基を備える化合物(B)と、光酸発生剤(C)と、クエンチャー(D)とを含むことを特徴とする。以下、酸解離性溶解抑制基を有し、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(A)を、「樹脂(A)」とも記す。以下、樹脂(A)を架橋する官能基を備える化合物(B)を、「化合物(B)」とも記す。以下、ポジ型感光性樹脂組成物に含有される各成分について詳細に説明する。
【0016】
<樹脂(A)>
酸解離性溶解抑制基を有し、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(A)は、所謂、化学増幅型ポジ型感光性樹脂組成物においてベース樹脂として用いることのできる樹脂の中から選択することができる。
具体的に、酸解離性溶解抑制基を備えるヒドロキシスチレンに由来する構造単位を備える樹脂や、酸解離性溶解抑制基を備える(メタ)アクリレートに由来する構造単位を備える樹脂を用いることができる。典型的には、樹脂(A)は、フェノール性水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基等のアルカリ可溶性基を有する。
これらの樹脂のうち、入手の容易性、優れた熱フロー性等から、酸解離性溶解抑制基を備えるヒドロキシスチレンに由来する構成単位を含む樹脂が、樹脂(A)として好ましい。
樹脂(A)は、上述の樹脂を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0017】
樹脂(A)は、後述する樹脂(A1)及び後述する樹脂(A2)を含むのが好ましい。樹脂(A)として、樹脂(A1)と樹脂(A2)とを用いることにより、広いフローマージンを示し、現像後の過度の膜厚の減少がなく、矩形の断面を有するドットからなるパターンを形成できるポジ型感光性樹脂組成物を得やすい。樹脂(A)は、所望する目的が損なわれない範囲で、樹脂(A1)及び樹脂(A2)以外のその他の樹脂を含んでいてもよい。
【0018】
樹脂(A1)は、下記式(a1)で表される構成単位、及び下記式(a2-1)で表される構成単位を有する。樹脂(A2)は、下記式(a1)で表される構成単位と、下記式(a2-2)又は下記式(a2-3)で表される構成単位とを有する。
以下、式(a1)で表される構成単位を、「構成単位(a1)」とも記す。式(a2-1)で表される構成単位を「構成単位(a2-1)」とも記す。式(a2-2)で表される構成単位を「構成単位(a2-2)」とも記す。式(a2-3)で表される構成単位を「構成単位(a2-3)」とも記す。
【0019】
【化3】
(式(a1)中、Ra1は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、又はハロゲン化アルキル基を示し、Ra2は水素原子又はアルキル基を示し、pは1以上5以下の整数を示し、qは0以上4以下の整数を示す。)
【0020】
【化4】
(式(a2-1)~(a2-3)中、Ra3は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、又はハロゲン化アルキル基を示し、Ra4、Ra5及びRa6は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を示し、Ra7はアルキル基又はシクロアルキル基を示し、Ra8は第三級炭素原子を有する有機基を示し、式(a2-2)、及び式(a2-3)中の、OとRa8との間の結合は、酸素原子と前記第三級炭素原子との結合であり、rは1以上5以下の整数を示し、s及びtは、それぞれ独立に、0以上4以下の整数を示す。)
【0021】
式(a1)、式(a2-1)、式(a2-2)、及び式(a2-3)中、Ra1、及びRa3は、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、又はハロゲン化アルキル基を表す。
a1及びRa3としてのアルキル基の炭素原子数は特に限定されない。Ra1及びRa3としてのアルキル基の炭素原子数は、1以上5以下が好ましい。Ra1及びRa3としてのアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。Ra1及びRa3としてのアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、及びネオペンチル基等が挙げられる。工業的にはメチル基が好ましい。
a1及びRa3としてのハロゲン原子、又はハロゲン化アルキルにおけるハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等が挙げられる。これらの中では、フッ素原子が好ましい。ハロゲン化アルキル基としては、上述した炭素原子数1以上5以下のアルキル基における一部又は全部の水素原子がハロゲン原子で置換された基が好ましい。ハロゲン化アルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。ハロゲン化アルキル基の好適な具体例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、及びノナフルオロブチル基等のフッ素化アルキル基が挙げられる。
a1及びRa3としては、水素原子、及びメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0022】
a2及びRa4としてのアルキル基の炭素原子数は、1以上5以下が好ましい。Ra2及びRa4としてのアルキル基の好適な例は、Ra1及びRa3としてのアルキル基の好適な例と同様である。
【0023】
q、s、及びtは、それぞれ独立に0以上4以下の整数である。これらのうち、q、s、及びtは0又は1であることが好ましく、特に工業上0であることが好ましい。
【0024】
式(a1)において、qが1である場合、Ra2の置換位置は、式(a1)中のベンゼン環上の、Ra1と結合する炭素原子に結合する炭素原子の位置に対して、o-位、m-位、p-位のいずれでもよい。
qが2以上4以下の整数である場合、Ra2は、式(a1)中のベンゼン環上の任意の位置に結合し得る。
【0025】
式(a2-1)、及び式(a2-3)において、tが1である場合、Ra4の置換位置は、式(a2-1)、及び式(a2-3)中のベンゼン環上の、Ra3と結合する炭素原子に結合する炭素原子の位置に対して、o-位、m-位、p-位のいずれでもよい。
tが2以上4以下の整数である場合、Ra4は、式(a2-1)、及び式(a2-3)中のベンゼン環上の任意の位置に結合し得る。
【0026】
式(a1)において、pは、1以上5以下の整数であり、1以上3以下の整数が好ましく、1がより好ましい。
式(a2-1)、及び式(a2-3)において、sは0以上4以下の整数であり、0以上3以下が好ましく、0又は1がより好ましい。
pが1であるか、sが1である場合、式(a1)、式(a2-1)、及び式(a2-3)における水酸基の置換位置は、式(a1)、式(a2-1)、又は式(a2-3)中のベンゼン環上の、Ra1、又はRa3と結合する炭素原子に結合する炭素原子の位置に対して、o-位、m-位、p-位のいずれでもよく、式(a1)、式(a2-1)、又は式(a2-3)で表される構成単位を与える単量体が容易に入手可能で低価格であることからp-位が好ましい。
式(a1)において、pが2以上5以下の整数であるか、式(a2-1)、及び式(a2-3)において、sが2以上4以下の整数である場合、水酸基は、式(a1)、式(a2-1)、及び式(a2-3)中のベンゼン環上の任意の位置に結合し得る。
【0027】
式(a2-1)、及び式(a2-3)において、rは1以上5以下の整数であり、1以上3以下が好ましく、1がより好ましい。
rが1である場合、式(a2-1)、及び式(a2-3)における-C(Ra5)(Ra6)ORa7で表される基、又は-O-CO-O-Ra8で表される基の置換位置は、式(a2-1)、又は式(a2-3)中のベンゼン環上の、Ra3と結合する炭素原子に結合する炭素原子の位置に対して、o-位、m-位、p-位のいずれでもよい。
式(a2-1)、及び式(a2-3)において、rが2以上5以下の整数である場合、-C(Ra5)(Ra6)ORa7で表される基、又は-O-CO-O-Ra8で表される基は、式(a2-1)、及び式(a2-3)中のベンゼン環上の任意の位置に結合し得る。
【0028】
式(a2-1)中の-C(Ra5)(Ra6)ORa7で表される酸解離性溶解抑制基において、Ra5及びRa6は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を示す。Ra7は、アルキル基又はシクロアルキル基を示す。Ra5、Ra6、及びRa7の少なくとも2種は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0029】
式(a2-2)、又は式(a2-3)において、Ra8は第三級炭素原子を有する有機基を示す。式(a2-2)及び式(a2-3)中のOとRa8との間の結合は、酸素原子と前記第三級炭素原子との結合である。
【0030】
a5又はRa6としてのアルキル基の炭素原子数は、1以上6以下が好ましい。Ra5又はRa6としてのアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
a7としてのアルキル基の炭素原子数は、1以上10以下が好ましい。Ra7としてのアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
a7としてのシクロアルキル基の炭素原子数は、例えば、3以上10以下が好ましい。
【0031】
a5、Ra6、又はRa7としてのアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、及びネオペンチル基等が挙げられる。
a7としてのシクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0032】
式(a2-1)中の-C(Ra5)(Ra6)ORa7で表される酸解離性溶解抑制基の具体例としては、1-メトキシエチル基、1-エトキシエチル基、1-n-プロポキシエチル基、1-イソプロポキシエチル基、1-n-ブトキシエチル基、1-イソブトキシエチル基、1-tert-ブトキシエチル基、1-シクロヘキシロキシエチル基、1-メトキシプロピル基、1-エトキシプロピル基、1-メトキシ-1-メチル-エチル基、及び1-エトキシ-1-メチルエチル基等が挙げられる。
【0033】
式(a2-2)中のRa8は、第三級炭素原子を有する有機基である。かかる有機基としては、-C(RA1)(RA2)(RA3)で表される基が好ましい。
A1、RA2、及びRA3は、それぞれ独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のフッ素化アルキル基、又は炭素原子数5以上20以下の脂肪族環式基である。
A1、RA2、及びRA3としてのアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、及びn-ヘキシル基等が挙げられる。
A1、RA2、及びRA3としてのフッ素化アルキル基は、上記アルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換された基である。
A1、RA2、及びRA3としての脂肪族環式基の具体例としては、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が挙げられる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が挙げられる。特に、シクロヘキサン、アダマンタンから1個の水素原子を除いた基(さらに置換基を有していてもよい)が好ましい。
【0034】
-C(RA1)(RA2)(RA3)で表される基の具体例としては、以下の基が挙げられる。下記の基の中では、tert-ブチル基が好ましい。
【化5】
【0035】
式(a2-3)中、-COORa8で表される酸解離性溶解抑制基の具体例としては、tert-ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0036】
樹脂(A1)は、1種又は2種以上の構成単位(a1)を含んでいてもよい。樹脂(A1)は、1種又は2種以上の構成単位(a2-1)を含んでいてもよい。
樹脂(A1)における構成単位(a1)の比率と、構成単位(a2-1)の比率との合計は、樹脂(A1)を構成する全構成単位のモル数に対し、10モル%以上100モル%以下が好ましく、25モル%以上100モル%以下がより好ましく、35モル%以上100モル%以下がさらに好ましく、50モル%以上100モル%以下が特に好ましく、100モル%が最も好ましい。上記割合が上記範囲内であると、広いフローマージンを示し、現像後の過度の膜厚の減少がなく、矩形の断面を有するドットからなるパターンを形成できるポジ型感光性樹脂組成物を得やすい。
【0037】
構成単位(a1)のモル数と、構成単位(a2-1)のモル数との合計に対する、構成単位(a2-1)のモル数の割合は、10モル%以上60モル%以下が好ましく、20モル%以上40モル%以下がより好ましい。この比率は、ヒドロキシスチレンに由来する水酸基の保護率である。保護率が上記範囲内であると、広いフローマージンを示し、現像後の過度の膜厚の減少がなく、矩形の断面を有するドットからなるパターンを形成できるポジ型感光性樹脂組成物を得やすい。
【0038】
樹脂(A)を構成する全構成単位のモル数に対する、構成単位(a2-1)のモル数の割合は、10モル%以上50モル%以下が好ましく、15モル%以上40モル%以下がより好ましい。
【0039】
樹脂(A2)は、1種又は2種以上の構成単位(a1)を含んでいてもよい。樹脂(A2)は、1種又は2種以上の構成単位(a2-2)を含んでいてもよい。樹脂(A2)は、1種又は2種以上の構成単位(a2-3)を含んでいてもよい。
樹脂(A2)における構成単位(a1)の比率と、構成単位(a2-2)の比率と、構成単位(a2-3)の比率との合計は、樹脂(A2)を構成する全構成単位のモル数に対し、10モル%以上100モル%以下が好ましく、30モル%以上100モル%以下がより好ましく、50モル%以上100モル%以下がさらに好ましく、70モル%以上100モル%以下が特に好ましく、100モル%が最も好ましい。上記割合が上記範囲内であると、広いフローマージンを示し、現像後の過度の膜厚の減少がなく、矩形の断面を有するドットからなるパターンを形成できるポジ型感光性樹脂組成物を得やすい。
【0040】
構成単位(a1)のモル数と、構成単位(a2-2)のモル数と、構成単位(a2-3)のモル数との合計中、構成単位(a2-2)又は(a2-3)の割合(すなわち、(メタ)アクリレートの保護率又はヒドロキシスチレンの保護率)は、10モル%以上60モル%以下であることが好ましく、20モル%以上40モル%以下がより好ましい。ヒドロキシスチレンの保護率が上記範囲内であると、得られるポジ型感光性樹脂組成物は、広いフローマージンを示し、現像後の過度の膜厚の減少がなく、矩形の断面を有するドットからなるパターンを形成できるポジ型感光性樹脂組成物を得やすい。
【0041】
樹脂(A)を構成する全構成単位のモル数に対する、構成単位(a2-2)及び/又は構成単位(a2-3)の割合は、2モル%以上30モル%以下が好ましく、6モル%以上25モル%以下がより好ましい。
【0042】
樹脂(A1)は、構成単位(a1)、及び構成単位(a2-1)以外のその他の構成単位を含んでいてもよい。樹脂(A2)は、構成単位(a1)、構成単位(a2-2)、及び構成単位(a2-3)以外のその他の構成単位を含んでいてもよい。
【0043】
その他の構成単位を与える他の単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン類、及びマレイミド類等が挙げられる。これらの化合物は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0044】
(メタ)アクリル酸エステルの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、tert-オクチル(メタ)アクリレート等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル(メタ)アクリレート;クロロエチル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート;脂環式骨格を有する基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
脂環式骨格を有する基を有する(メタ)アクリル酸エステルにおいて、脂環式骨格を構成する脂環式基は、単環であっても多環であってもよい。単環の脂環式基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。また、多環の脂環式基としては、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等が挙げられる。
【0045】
(メタ)アクリルアミド類の例としては、(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N-アリール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-アリール(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-フェニル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル-N-メチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0046】
アリル化合物の例としては、酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリル等のアリルエステル類;アリルオキシエタノール;等が挙げられる。
【0047】
ビニルエーテル類の例としては、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、1-メチル-2,2-ジメチルプロピルビニルエーテル、2-エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル等の脂肪族ビニルエーテル;ビニルフェニルエーテル、ビニルトリルエーテル、ビニルクロロフェニルエーテル、ビニル-2,4-ジクロロフェニルエーテル、ビニルナフチルエーテル、ビニルアントラニルエーテル等のビニルアリールエーテル;等が挙げられる。
【0048】
ビニルエステル類の例としては、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルジクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、ビニルアセトアセテート、ビニルラクテート、ビニル-β-フェニルブチレート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロロ安息香酸ビニル、テトラクロロ安息香酸ビニル、ナフトエ酸ビニル等が挙げられる。
【0049】
スチレン類の例としては、スチレン;メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン等のアルキルスチレン;メトキシスチレン、4-メトキシ-3-メチルスチレン、ジメトキシスチレン等のアルコキシスチレン;クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレン、テトラクロロスチレン、ペンタクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、トリフルオロスチレン、2-ブロモ-4-トリフルオロメチルスチレン、4-フルオロ-3-トリフルオロメチルスチレン等のハロスチレン;等が挙げられる。
【0050】
マレイミド類としては、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-n-プロピルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-n-ブチルマレイミド、N-n-ペンチルマレイミド、N-n-ヘキシルマレイミド等の炭素原子数1以上10以下のアルキル基でN置換されたマレイミド;N-シクロペンチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-シクロヘプチルマレイミド等の炭素原子数3以上20以下の脂環式基でN置換されたマレイミド:N-フェニルマレイミド、N-α-ナフチルマレイミド、N-β-ナフチルマレイミド等の炭素原子数6以上20以下のアリール基でN置換されたN-アリールマレイミド;N-ベンジルマレイミド、N-フェネチルマレイミド等の炭素原子数7以上20以下のアラルキル基でN置換されたN-アラルキルマレイミドが挙げられる。
【0051】
<他の樹脂(A3)>
樹脂(A)は、樹脂(A1)及び樹脂(A2)に加えて、さらに、樹脂(A1)及び(A2)以外の他の樹脂(A3)を含有してもよい。他の樹脂(A3)としては、所望する効果が損なわれない範囲で特に限定されない。他の樹脂(A3)としては、アルカリ現像液により現像し得るポジ型感光性樹脂組成物に従来より配合されている種々の樹脂を特に限定なく用いることができる。
【0052】
所望する効果の得やすさから、樹脂(A)の質量に対する、樹脂(A1)の質量と樹脂(A2)の質量との合計の割合は、好ましくは50質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは80質量%以上100質量%以下であり、最も好ましくは100質量%である。
樹脂(A)が、かかる割合で樹脂(A1)及び(A2)を含むことにより、得られるポジ型感光性樹脂組成物は、広いフローマージンを示し、現像後の過度の膜厚の減少がなく、矩形の断面を有するドットからなるパターンを形成できるポジ型感光性樹脂組成物を得やすい。
【0053】
また、樹脂(A)中、樹脂(A1)と(A2)との質量比は、30:70~95:5が好ましく、35:75~90:10がより好ましく、40:60~80:20がさらに好ましい。
【0054】
樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、5000以上30000以下であることが好ましい。樹脂(A1)及び樹脂(A2)の質量平均分子量についても同様である。上記重量平均分子量が上記範囲内であると、広いフローマージンを示し、現像後の過度の膜厚の減少がなく、矩形の断面を有するドットからなるパターンを形成できるポジ型感光性樹脂組成物を得やすい。なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0055】
ポジ型感光性樹脂組成物中の樹脂(A)の含有量は、形成しようとするレジスト膜厚に応じて調整すればよい。
【0056】
<化合物(B)>
ポジ型感光性樹脂組成物は、化合物(B)を含む。化合物(B)は前述の樹脂(A)を架橋する官能基を備える。
この官能基としては、樹脂(A)の備えうるフェノール性水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基等のプロトン供与性を示す基と反応しうる基が挙げられる。化合物(B)が有する架橋性の官能基の具体例としては、ビニルオキシ基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、エポキシ基、オキセタニル基等の官能基が挙げられる。このような架橋性の官能基を備える化合物、又はこれらの化合物の誘導体を、化合物(B)として用いることができる。
これらの官能基を備える化合物、及びこれらの化合物の誘導体のうち、樹脂(A)との反応性の高さ、入手容易性の高さ、架橋後の耐薬品性の高さ等の観点から、分子内にビニルオキシ基、イソシアネート基、アルコキシメチル基、又はメチロール基を備える化合物又はこれらの化合物の誘導体が好ましい。
典型的には、化合物(B)は、このような架橋性の官能基を、分子中に2つ以上備えるのが好ましい。
【0057】
化合物(B)の好適な例としては、少なくとも2個のビニルオキシ基を有する化合物(B1)が挙げられる。
化合物(B1)において、ビニルオキシ基は、炭素原子に結合する。ポジ型感光性樹脂組成物がかかる化合物を含有することにより、広いフローマージンを示し、現像後の過度の膜厚の減少がなく、矩形の断面を有するドットからなるパターンを形成できるポジ型感光性樹脂組成物を得やすい。化合物(B1)は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
化合物(B1)は、樹脂(A)に対して架橋剤として作用する。樹脂(A)が、化合物(B1)により架橋される結果、上記の効果が得られると考えられる。ポストベーク時に樹脂(A)との架橋がさらに進行することにより、フローマージンが広がると推測される。
【0058】
化合物(B1)の具体例としては、特開平6-148889号公報、特開平6-230574号公報等に多数列挙される多官能ビニルエーテル化合物が挙げられる。化合物(B1)は、これらの中から任意に選択して使用することができる。特に、熱架橋性と酸による分解性に起因するレジストプロファイル形状、及び露光部と未露光部とのコントラストの特性を考慮すると、下記式(b1)で表されるアルコールの水酸基の一部又は全部において、水酸基中の水素原子がビニル基で置換された化合物が好ましい。
-(OH) (b1)
式(b1)中、Rは、b価の脂肪族炭化水素基である。当該脂肪族炭化水素基の構造は、直鎖状、分岐鎖状、環状、及びこれらの構造の組み合わせのいずれであってもよい。当該脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。当該脂肪族炭化水素基中の炭化水素鎖は、酸素原子(エーテル結合)で中断されていてもよい。bは2、3、又は4を示す。
【0059】
式(b1)で表されるポリオール由来するビニルオキシ基を有する化合物(B)の具体例としては、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,3-ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0060】
化合物(B1)としては、下記式(b2)で表される化合物も好ましい。
式(b2)において、Rb1は、炭素原子数1以上10以下のアルキレン基、又は下記式(b2-1)で表される基である。Rb1としてのアルキレン基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。Rb1としてのアルキレン基は、置換基を有していてもよい。Rb1としてのアルキレン基は、酸素原子(エーテル結合)を含んでいてもよい。ただし、式(b2)で表される化合物において、ビニルオキシ基はRb1中の炭素原子に結合する。
式(b2-1)において、Rb2は、炭素原子数1以上10以下のアルキレン基である。Rb2としてのアルキレン基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。Rb2としてのアルキレン基は、置換基を有していてもよい。Rb2としてのアルキレン基は、酸素原子(エーテル結合)を含んでいてもよい。
式(b2-1)において、Rb3は、シクロヘキサン-1,4-ジイル基、シクロヘキサン-1,3-ジイル基、又はシクロヘキサン-1,2-ジイル基である。
式(b1-1)において、cは、それぞれ独立に、0又は1である。
CH=CH-O-Rb1-O-CH=CH (b2)
-(Rb2-Rb3-(Rb2- (b2-1)
【0061】
b1としては、-(CH-、-(COC)-、-(COCOC)-、及び式(b2-1)で表される基等が好ましく、式(b2-1)で表される基がより好ましい。式(b2-1)で表される基としては、式(b2-1)で表され、Rb2がメチレン基であり、cが1である基が好ましい。
式(b2)で表される化合物としては、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルが好ましい。1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルを、CHDVEとも称する。
【0062】
ポジ型感光性樹脂組成物中の化合物(B)の含有量は、広いフローマージンを示し、現像後の過度の膜厚の減少がなく、矩形の断面を有するドットからなるパターンを形成できるポジ型感光性樹脂組成物を得やすいことから、樹脂(A)100質量部に対して、0.1質量部以上15質量部以下が好ましく、0.5質量部以上8質量部以下がより好ましい。
【0063】
<光酸発生剤(C)>
光酸発生剤(C)は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物であれば、特に限定されない。光酸発生剤(C)は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。光酸発生剤(C)は、オニウム塩系光酸発生剤(C)を必須に含む。
【0064】
光酸発生剤(C)としては、以下に説明する、第一~第五の態様の光酸発生剤が好ましい。以下、光酸発生剤(C)の好適な例について、第一~第五の態様として説明する。
なお、第一~第五の態様にかかる光酸発生剤のうち、第一の態様にかかる光酸発生剤、及び第四の態様にかかる光酸発生剤がオニウム塩系光酸発生剤である。
【0065】
光酸発生剤(C)における第一の態様としては、下記式(c1)で表される化合物が挙げられる。
【0066】
【化6】
【0067】
上記式(c1)中、X1cは、原子価gの硫黄原子又はヨウ素原子を表し、gは1又は2である。hは括弧内の構造の繰り返し単位数を表す。R1cは、X1cに結合している有機基であり、炭素原子数6以上30以下のアリール基、炭素原子数4以上30以下の複素環基、炭素原子数1以上30以下のアルキル基、炭素原子数2以上30以下のアルケニル基、又は炭素原子数2以上30以下のアルキニル基を表し、R1cは、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールチオカルボニル、アシロキシ、アリールチオ、アルキルチオ、アリール、複素環、アリールオキシ、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキレンオキシ、アミノ、シアノ、ニトロの各基、及びハロゲンからなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。R1cの個数はg+h(g-1)+1であり、R1cはそれぞれ互いに同じであっても異なっていてもよい。また、2個以上のR1cが互いに直接、又は-O-、-S-、-SO-、-SO-、-NH-、-NR2c-、-CO-、-COO-、-CONH-、炭素原子数1以上3以下のアルキレン基、若しくはフェニレン基を介して結合し、X1cを含む環構造を形成してもよい。R2cは炭素原子数1以下5以上のアルキル基又は炭素原子数6以下10以上のアリール基である。
【0068】
2cは下記式(c2)で表される構造である。
【0069】
【化7】
【0070】
上記式(c2)中、X4cは炭素原子数1以上8以下のアルキレン基、炭素原子数6以上20以下のアリーレン基、又は炭素原子数8以上20以下の複素環化合物の2価の基を表し、X4cは炭素原子数1以上8以下のアルキル、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ、炭素原子数6以上10以下のアリール、ヒドロキシ、シアノ、ニトロの各基、及びハロゲンからなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。X5cは-O-、-S-、-SO-、-SO-、-NH-、-NR2c-、-CO-、-COO-、-CONH-、炭素原子数1以上3以下のアルキレン基、又はフェニレン基を表す。hは括弧内の構造の繰り返し単位数を表す。h+1個のX4c及びh個のX5cはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R2cは前述の定義と同じである。
【0071】
3c-はオニウムの対イオンであり、下記式(c17)で表されるフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオン又は下記式(c18)で表されるボレートアニオン、並びに水素原子の一部又は全部がフッ素化されたフルオロアルキルスルホン酸イオン又はアリールスルホン酸イオンが挙げられる。
【0072】
【化8】
【0073】
上記式(c17)中、R3cは水素原子の80%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。jはその個数を示し、1以上5以下の整数である。j個のR3cはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0074】
【化9】
【0075】
上記式(c18)中、R4c~R7cは、それぞれ独立にフッ素原子又はフェニル基を表し、該フェニル基の水素原子の一部又は全部は、フッ素原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。
【0076】
上記式(c1)で表される化合物中のオニウムイオンとしては、トリフェニルスルホニウム、トリ-p-トリルスルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、(4-メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム)、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4-{ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4-[ビス(4-フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジ-p-トリルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジフェニルスルホニウム、2-[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、ジフェニルフェナシルスルホニウム、2-ナフチルメチル(1-エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、フェニル[4-(4-ビフェニルチオ)フェニル]4-ビフェニルスルホニウム、フェニル[4-(4-ビフェニルチオ)フェニル]3-ビフェニルスルホニウム、[4-(4-アセトフェニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウム、オクタデシルメチルフェナシルスルホニウム、ジフェニルヨードニウム、ジ-p-トリルヨードニウム、ビス(4-ドデシルフェニル)ヨードニウム、ビス(4-メトキシフェニル)ヨードニウム、(4-オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウム、ビス(4-デシルオキシ)フェニルヨードニウム、4-(2-ヒドロキシテトラデシルオキシ)フェニルフェニルヨードニウム、4-イソプロピルフェニル(p-トリル)ヨードニウム、又は4-イソブチルフェニル(p-トリル)ヨードニウム、等が挙げられる。
【0077】
上記式(c1)で表される化合物中のオニウムイオンのうち、好ましいオニウムイオンとしては下記式(c19)で表されるスルホニウムイオンが挙げられる。
【0078】
【化10】
【0079】
上記式(c19)中、R8cはそれぞれ独立に水素原子、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルオキシカルボニル、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアリール、アリールカルボニル、からなる群より選ばれる基を表す。X2cは、上記式(c1)中のX2cと同じ意味を表す。
【0080】
上記式(c19)で表されるスルホニウムイオンの具体例としては、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、フェニル[4-(4-ビフェニルチオ)フェニル]4-ビフェニルスルホニウム、フェニル[4-(4-ビフェニルチオ)フェニル]3-ビフェニルスルホニウム、[4-(4-アセトフェニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウム、ジフェニル[4-(p-ターフェニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウムが挙げられる。
【0081】
上記式(c17)で表されるフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオンにおいて、R3cはフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、好ましい炭素原子数は1以上8以下、さらに好ましい炭素原子数は1以上4以下である。アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチル等の直鎖アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル等の分岐アルキル基;さらにシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基等が挙げられ、アルキル基の水素原子がフッ素原子に置換された割合は、通常、80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは100%である。フッ素原子の置換率が80%未満である場合には、上記式(c1)で表されるオニウムフッ素化アルキルフルオロリン酸塩の酸強度が低下する。
【0082】
特に好ましいR3cは、炭素原子数が1以上4以下、且つフッ素原子の置換率が100%の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基であり、具体例としては、CF、CFCF、(CFCF、CFCFCF、CFCFCFCF、(CFCFCF、CFCF(CF)CF、(CFCが挙げられる。R3cの個数jは、1以上5以下の整数であり、好ましくは2以上4以下、特に好ましくは2又は3である。
【0083】
好ましいフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオンの具体例としては、[(CFCFPF、[(CFCFPF、[((CFCF)PF、[((CFCF)PF、[(CFCFCFPF、[(CFCFCFPF、[((CFCFCFPF、[((CFCFCFPF、[(CFCFCFCFPF、又は[(CFCFCFPFが挙げられ、これらのうち、[(CFCFPF、[(CFCFCFPF、[((CFCF)PF、[((CFCF)PF、[((CFCFCFPF、又は[((CFCFCFPFが特に好ましい。
【0084】
上記式(c18)で表されるボレートアニオンの好ましい具体例としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([B(C)、テトラキス[(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート([B(CCF)、ジフルオロビス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([(CBF)、トリフルオロ(ペンタフルオロフェニル)ボレート([(C)BF)、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート([B(C)等が挙げられる。これらの中でも、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([B(C)が特に好ましい。
【0085】
フルオロアルキルスルホン酸イオンにおけるアルキル基は、炭素原子数1以上20以下の直鎖状でも分岐状でも環状でもよく、発生する酸の嵩高さとその拡散距離から、炭素原子数1以上10以下であることが好ましい。特に、分岐状や環状のアルキル基は拡散距離が短いため好ましい。また、安価に合成可能なことから、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等を好ましいものとして挙げることができる。
【0086】
アリールスルホン酸イオンにおけるアリール基は、炭素原子数6以上20以下のアリール基であって、アルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもされていなくてもよいフェニル基、ナフチル基が挙げられる。特に、安価に合成可能なことから、炭素原子数6以上10以下のアリール基が好ましい。好ましいアリール基の具体例として、フェニル基、トルエンスルホニル基、エチルフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基等を挙げることができる。
【0087】
上記フルオロアルキルスルホン酸イオン又はアリールスルホン酸イオンにおいて、水素原子の一部又は全部がフッ素化されている場合のフッ素化率は、好ましくは10%以上100%以下、より好ましくは50%以上100%以下であり、特に水素原子を全てフッ素原子で置換したものが、酸の強度が強くなるので好ましい。このようなものとしては、具体的には、トリフルオロメタンスルホネート、パーフルオロブタンスルホネート、パーフルオロオクタンスルホネート、パーフルオロベンゼンスルホネート等が挙げられる。
【0088】
これらの中でも、好ましいアニオン部として、下記式(c9)で表されるものが挙げられる。
【0089】
【化11】
【0090】
上記式(c9)において、R20cは、下記式(c10)、(c11)、及び(c12)で表される基である。
【0091】
【化12】
【0092】
上記式(c10)中、xは1以上4以下の整数を表す。また、上記式(c11)中、R21cは、水素原子、水酸基、炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基を表し、yは1以上3以下の整数を表す。これらの中でも、安全性の観点からトリフルオロメタンスルホネート、パーフルオロブタンスルホネートが好ましい。
【0093】
光酸発生剤(C)における第二の態様としては、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-ピペロニル-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(2-フリル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(5-メチル-2-フリル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(5-エチル-2-フリル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(5-プロピル-2-フリル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3,5-ジメトキシフェニル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3,5-ジエトキシフェニル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3,5-ジプロポキシフェニル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3-メトキシ-5-エトキシフェニル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3-メトキシ-5-プロポキシフェニル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3,4-メチレンジオキシフェニル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-(2-フリル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-(5-メチル-2-フリル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-(3,5-ジメトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、トリス(1,3-ジブロモプロピル)-1,3,5-トリアジン、トリス(2,3-ジブロモプロピル)-1,3,5-トリアジン等のハロゲン含有トリアジン化合物、並びにトリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレート等の下記式(c3)で表されるハロゲン含有トリアジン化合物が挙げられる。
【0094】
【化13】
【0095】
上記式(c3)中、R9c、R10c、R11cは、それぞれ独立にハロゲン化アルキル基を表す。
【0096】
また、光酸発生剤(C)における第三の態様としては、α-(p-トルエンスルホニルオキシイミノ)-フェニルアセトニトリル、α-(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)-2,4-ジクロロフェニルアセトニトリル、α-(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)-2,6-ジクロロフェニルアセトニトリル、α-(2-クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)-4-メトキシフェニルアセトニトリル、α-(エチルスルホニルオキシイミノ)-1-シクロペンテニルアセトニトリル、並びにオキシムスルホネート基を含有する下記式(c4)で表される化合物が挙げられる。
【0097】
【化14】
【0098】
上記式(c4)中、R12cは、1価、2価、又は3価の有機基を表し、R13cは、置換若しくは未置換の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、又は芳香族基を表し、nは括弧内の構造の繰り返し単位数を表す。
【0099】
上記式(c4)中、芳香族基とは、芳香族化合物に特有な物理的・化学的性質を示す化合物の基を示し、例えば、フェニル基、ナフチル基等のアリール基や、フリル基、チエニル基等のヘテロアリール基が挙げられる。これらは環上に適当な置換基、例えばハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基等を1個以上有していてもよい。また、R13cは、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が特に好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。特に、R12cが芳香族基であり、R13cが炭素原子数1以上4以下のアルキル基である化合物が好ましい。
【0100】
上記式(c4)で表される酸発生剤としては、n=1のとき、R12cがフェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基のいずれかであって、R13cがメチル基の化合物、具体的にはα-(メチルスルホニルオキシイミノ)-1-フェニルアセトニトリル、α-(メチルスルホニルオキシイミノ)-1-(p-メチルフェニル)アセトニトリル、α-(メチルスルホニルオキシイミノ)-1-(p-メトキシフェニル)アセトニトリル、〔2-(プロピルスルホニルオキシイミノ)-2,3-ジヒドロキシチオフェン-3-イリデン〕(o-トリル)アセトニトリル等が挙げられる。n=2のとき、上記式(c4)で表される酸発生剤としては、具体的には下記式で表される酸発生剤が挙げられる。
【0101】
【化15】
【0102】
また、光酸発生剤(C)における第四の態様としては、カチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩が挙げられる。この「ナフタレン環を有する」とは、ナフタレンに由来する構造を有することを意味し、少なくとも2つの環の構造と、それらの芳香族性が維持されていることを意味する。このナフタレン環は炭素原子数1以上6以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基、水酸基、炭素原子数1以上6以下の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基等の置換基を有していてもよい。ナフタレン環に由来する構造は、1価基(遊離原子価が1つ)であっても、2価基(遊離原子価が2つ)以上であってもよいが、1価基であることが望ましい(ただし、このとき、上記置換基と結合する部分を除いて遊離原子価を数えるものとする)。ナフタレン環の数は1以上3以下が好ましい。
【0103】
このようなカチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩のカチオン部としては、下記式(c5)で表される構造が好ましい。
【0104】
【化16】
【0105】
上記式(c5)中、R14c、R15c、R16cのうち少なくとも1つは下記式(c6)で表される基を表し、残りは炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、水酸基、又は炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基を表す。あるいは、R14c、R15c、R16cのうちの1つが下記式(c6)で表される基であり、残りの2つはそれぞれ独立に炭素原子数1以上6以下の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、これらの末端が結合して環状になっていてもよい。
【0106】
【化17】
【0107】
上記式(c6)中、R17c、R18cは、それぞれ独立に水酸基、炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、又は炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表し、R19cは、単結合又は置換基を有していてもよい炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基を表す。l及びmは、それぞれ独立に0以上2以下の整数を表し、l+mは3以下である。ただし、R17cが複数存在する場合、それらは互いに同じであっても異なっていてもよい。また、R18cが複数存在する場合、それらは互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0108】
上記R14c、R15c、R16cのうち上記式(c6)で表される基の数は、化合物の安定性の点から好ましくは1つであり、残りは炭素原子数1以上6以下の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、これらの末端が結合して環状になっていてもよい。この場合、上記2つのアルキレン基は、硫黄原子を含めて3~9員環を構成する。環を構成する原子(硫黄原子を含む)の数は、好ましくは5以上6以下である。
【0109】
また、上記アルキレン基が有していてもよい置換基としては、酸素原子(この場合、アルキレン基を構成する炭素原子とともにカルボニル基を形成する)、水酸基等が挙げられる。
【0110】
また、フェニル基が有していてもよい置換基としては、炭素原子数1以上6以下の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基、炭素原子数1以上6以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基等が挙げられる。
【0111】
これらのカチオン部として好適なカチオンとしては、下記式(c7)、(c8)で表されるカチオン等を挙げることができ、特に下記式(c8)で表される構造が好ましい。
【0112】
【化18】
【0113】
このようなカチオン部としては、ヨードニウム塩であってもスルホニウム塩であってもよいが、酸発生効率等の点からスルホニウム塩が望ましい。
【0114】
従って、カチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩のアニオン部として好適なアニオンとしては、スルホニウム塩を形成可能なアニオンが望ましい。
【0115】
このような酸発生剤のアニオン部としては、水素原子の一部又は全部がフッ素化されたフルオロアルキルスルホン酸イオン又はアリールスルホン酸イオンである。このようなアニオン部については、第一の態様について説明した水素原子の一部又は全部がフッ素化されたフルオロアルキルスルホン酸イオン又はアリールスルホン酸イオンと同様である。
【0116】
また、アニオン部としては、下記式(c13)、(c14)で表される窒素を含有するアニオン部を用いることもできる。
【0117】
【化19】
【0118】
上記式(c13)、(c14)中、Xは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基の炭素原子数は2以上6以下であり、好ましくは3以上5以下、最も好ましくは炭素原子数3である。また、Y、Zは、それぞれ独立に少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、該アルキル基の炭素原子数は1以上10以下であり、好ましくは1以上7以下、より好ましくは1以上3以下である。
【0119】
のアルキレン基の炭素原子数、又はY、Zのアルキル基の炭素原子数が小さいほど有機溶剤への溶解性も良好であるため好ましい。
【0120】
また、Xのアルキレン基又はY、Zのアルキル基において、フッ素原子で置換されている水素原子の数が多いほど、酸の強度が強くなるため好ましい。該アルキレン基又はアルキル基中のフッ素原子の割合、すなわちフッ素化率は、好ましくは70%以上100%以下、より好ましくは90%以上100%以下であり、最も好ましくは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキレン基又はパーフルオロアルキル基である。
【0121】
このようなカチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩として好ましい化合物としては、下記式(c15)、(c16)で表される化合物が挙げられる。
【0122】
【化20】
【0123】
また、光酸発生剤(C)における第五の態様としては、ビス(p-トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1-ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4-ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン等のビススルホニルジアゾメタン類;p-トルエンスルホン酸2-ニトロベンジル、p-トルエンスルホン酸2,6-ジニトロベンジル、ニトロベンジルトシレート、ジニトロベンジルトシラート、ニトロベンジルスルホナート、ニトロベンジルカルボナート、ジニトロベンジルカルボナート等のニトロベンジル誘導体;ピロガロールトリメシラート、ピロガロールトリトシラート、ベンジルトシラート、ベンジルスルホナート、N-メチルスルホニルオキシスクシンイミド、N-トリクロロメチルスルホニルオキシスクシンイミド、N-フェニルスルホニルオキシマレイミド、N-メチルスルホニルオキシフタルイミド等のスルホン酸エステル類;N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)-1,8-ナフタルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)-4-ブチル-1,8-ナフタルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)-4-ブチルチオ-1,8-ナフタルイミド等のトリフルオロメタンスルホン酸エステル類;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、(4-メトキシフェニル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、(4-メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、(p-tert-ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート等のオニウム塩類;ベンゾイントシラート、α-メチルベンゾイントシラート等のベンゾイントシレート類;その他のジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、フェニルジアゾニウム塩、ベンジルカルボナート等が挙げられる。
【0124】
ポジ型感光性樹脂組成物中、光酸発生剤(C)の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。光酸発生剤(C)の含有量は、樹脂(A)100質量部に対して、0.1質量部以上15質量部以下が好ましく、1質量部以上10質量部以下がより好ましい。
【0125】
第一の態様又は第四の態様におけるオニウム塩系光酸発生剤の使用量は、後述するクエンチャー(D)に対し、1当量以上10当量以下が好ましく、2当量以上8当量以下がより好ましく、3当量以上7当量以下がさらに好ましい。
【0126】
<クエンチャー(D)>
ポジ型感光性樹脂組成物は、クエンチャー(D)を含んでいてもよい。クエンチャー(D)は、第二級脂肪族アミン、及び第三級脂肪族アミンから選択される1種以上を含む。ここで、脂肪族アミンとは、1つ以上の脂肪族基を有するアミンである。脂肪族アミンが有する脂肪族基の炭素原子数は、1以上20以下が好ましい。
【0127】
脂肪族アミンとしては、例えば、アンモニア(NH)の水素原子の少なくとも1つが、炭素原子数20以下のアルキル基で置換されたアルキルアミン、アンモニア(NH)の水素原子の少なくとも1つがヒドロキシアルキル基で置換されたアルカノールアミン、及び環式アミンが挙げられる。
【0128】
第二級脂肪族アミンの好適な具体例としては、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジ-n-ヘプチルアミン、ジ-n-オクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジアルキルアミンや、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、及びジ-n-オクタノールアミン等のジアルカノールアミンが挙げられる。
第三級脂肪族アミンの好適な具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリ-n-ペンチルアミン、トリ-n-ヘキシルアミン、トリ-n-ヘプチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、トリ-n-ノニルアミン、トリ-n-デシルアミン、トリ-n-ドデシルアミン等のトリアルキルアミンや、トリエタノールアミン、トリ-n-オクタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、及びラウリルジエタノールアミン等のアルカノールアミンが挙げられる。
また、トリス(2-メトキシメトキシエチル)アミン、トリス{2-(2-メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2-(2-メトキシエトキシメトキシ)エチル}アミン、トリス{2-(1-メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2-(1-エトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2-(1-エトキシプロポキシ)エチル}アミン、及びトリス[2-{2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ}エチルアミン等も、第三級脂肪族アミンとして好ましい。
【0129】
第二級脂肪族アミン、及び第三級脂肪族アミンは環式アミンであってもよい。環式の第二級脂肪族アミンとしては、ピペリジン、及びピペラジン等が挙げられる。環式の第三級脂肪族アミンとしては、N-メチルピペリジン、N-エチルピペリジン、N-メチルピペラジン、N-エチルピペラジン、N,N’-ジメチルピペラジン、及びN,N’-ジエチルピペラジン等が挙げられる。
【0130】
これらのクエンチャー(D)は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ポジ型感光性樹脂組成物に含まれるクエンチャーの量は、樹脂(A)100質量部に対して、0.01質量部以上5.0質量部以下、好ましくは0.05質量部以上3.0質量部以下、さらに好ましくは0.10質量部以上1.0質量部以下である。
【0131】
<有機溶剤(S)>
ポジ型感光性樹脂組成物は有機溶剤(S)を含有してもよい。ポジ型感光性樹脂組成物が有機溶剤(S)を含有することで、ポジ型感光性樹脂組成物の塗布性や、ポジ型感光性樹脂組成物を用いて形成されるポジ型感光性樹脂組成物層の膜厚の調整が容易である。有機溶剤(S)は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0132】
有機溶剤(S)の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、及びジプロピレングリコールモノアセテート、並びにこれらのモノメチルエーテル(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル、又はモノフェニルエーテル等の多価アルコール類及びその誘導体;ジオキサン等の環式エーテル類;蟻酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;等を挙げることができる。
【0133】
ポジ型感光性樹脂組成物中、有機溶剤(S)の含有量は、(A)成分100質量部に対して、50質量部以上3000質量部以下であることが好ましく、100質量部以上2000質量部以下であることがより好ましい。含有量が上記範囲内であると、ポジ型感光性樹脂組成物の塗布性が向上しやすく、ポジ型感光性樹脂組成物を用いて形成されるポジ型感光性樹脂組成物層の膜厚の調整が容易となりやすい。
【0134】
<その他の成分>
ポジ型感光性樹脂組成物は、所望する効果が損なわれない範囲で、上記の各成分とともに、種々の添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、従来より、ポジ型感光性樹脂組成物に配合されている種々の添加剤から適宜選択され得る。その他の成分の具体例としては、ポリビニル樹脂、界面活性剤、並びに酸又は酸無水物等が挙げられる。
【0135】
ポジ型感光性樹脂組成物は、形成される被膜の可塑性を向上させるため、ポリビニル樹脂を含有していてもよい。ポリビニル樹脂の具体例としては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリヒドロキシスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニル安息香酸、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルフェノール、及びこれらの共重合体等が挙げられる。
【0136】
ポジ型感光性樹脂組成物は、支持体との接着性を向上させるため、密着助剤を含有していてもよい。
【0137】
ポジ型感光性樹脂組成物は、塗布性、消泡性、レベリング性等を向上させるため、界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤の具体例としては、BM-1000、BM-1100(いずれもBMケミー社製)、メガファックF142D、メガファックF172、メガファックF173、メガファックF183(いずれもDIC社製)、フロラードFC-135、フロラードFC-170C、フロラードFC-430、フロラードFC-431(いずれも住友スリーエム社製)、サーフロンS-112、サーフロンS-113、サーフロンS-131、サーフロンS-141、サーフロンS-145(いずれも旭硝子社製)、SH-28PA、SH-190、SH-193、SZ-6032、SF-8428(いずれも東レシリコーン社製)、ポリフォックスPF-136A、ポリフォックスPF-156A、ポリフォックスPF-151N、ポリフォックスPF-636、ポリフォックスPF-656、ポリフォックスPF-6520(いずれもOMNOVA Solutions社製)等の市販のフッ素系界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0138】
ポジ型感光性樹脂組成物は、現像液に対する溶解性を微調整するために、酸又は酸無水物を含有していてもよい。
【0139】
酸及び酸無水物の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、n-酪酸、イソ酪酸、n-吉草酸、イソ吉草酸、安息香酸、桂皮酸等のモノカルボン酸類;乳酸、2-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、サリチル酸、m-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ桂皮酸、3-ヒドロキシ桂皮酸、4-ヒドロキシ桂皮酸、5-ヒドロキシイソフタル酸、シリンギン酸等のヒドロキシモノカルボン酸類;シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、イタコン酸、ヘキサヒドロフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、1,2,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸等の多価カルボン酸類;無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバニル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ハイミック酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビス無水トリメリタート、グリセリントリス無水トリメリタート等の酸無水物;等を挙げることができる。
【0140】
<ポジ型感光性樹脂組成物の製造方法>
上記のポジ型感光性樹脂組成物は、上記各成分を通常の方法で混合及び撹拌することで調製することができる。必要に応じ、ディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミル等の分散機を用いて分散及び混合を行ってもよい。また、混合した後で、さらにメッシュ、メンブランフィルタ等を用いて濾過してもよい。
【0141】
≪マイクロレンズの製造方法≫
以下、前述のポジ型感光性樹脂組成物を用いるマイクロレンズの製造方法について説明する。
マイクロレンズの製造方法としては、
前述のポジ型感光性樹脂組成物を用いてポジ型感光性樹脂組成物層を形成することと、
ポジ型感光性樹脂組成物層を位置選択的に露光することと、
露光されたポジ型感光性樹脂組成物層を現像することと、
現像後のポジ型感光性樹脂組成物層を加熱して、マイクロレンズ形状に変形させることと、を含むマイクロレンズの製造方法が挙げられる。
この方法を、以下第1の方法とも記す。
【0142】
他のマイクロレンズの製造方法としては、
前述のポジ型感光性樹脂組成物を用いてポジ型感光性樹脂組成物層を形成することと、
ポジ型感光性樹脂組成物層を位置選択的に露光することと、
露光されたポジ型感光性樹脂組成物層を現像することと、
現像後のポジ型感光性樹脂組成物層を加熱して、マイクロレンズ形状に変形させることと、を含むマイクロレンズの製造方法が挙げられる。
この方法を、以下第2の方法とも記す。
【0143】
<第1の方法>
第1の方法では、まず、前述のポジ型感光性樹脂組成物を用いてポジ型感光性樹脂組成物層を形成する。ポジ型感光性樹脂組成物層を形成する方法は特に限定されない。ポジ型感光性樹脂組成物層を形成する方法としては、塗布や、ドライフィルムの貼り付け等が挙げられる。積層方法としては塗布が好ましい。
【0144】
ポジ型感光性樹脂組成物層は、通常基材上に形成される。基材としては、フォトダイオード(有機フォトダイオード、無機フォトダイオード等)等を含む画像素子、カラーフィルター層等が設けられたシリコンウェーハ、場合により反射防止膜がさらに形成されたシリコンウェーハ等の基板等が挙げられる。
【0145】
ポジ型感光性樹脂組成物を塗布する方法は、特に限定されない。例えば、ロールコーター、リバースコーター、バーコーター、スリットコーター等の接触転写型塗布装置や、スピンナー(回転式塗布装置)、カーテンフローコーター等の非接触型塗布装置を用いて、ポジ型感光性樹脂組成物を、所望の膜厚となるよう塗布してポジ型感光性樹脂組成物層を形成できる。
【0146】
ポジ型感光性樹脂組成物層を形成する際に、ポジ型感光性樹脂組成物からなる塗布膜に対して、適宜、加熱処理(プレベーク(ポストアプライベーク(PAB))処理)を施して塗布膜中の溶剤を除去してもよい。
上記加熱処理の条件は、ポジ型感光性樹脂組成物層中の各成分の種類、配合割合、塗布膜厚等によって異なる。加熱温度は、例えば、60℃以上150℃以下が好ましく、70℃以上140℃以下がより好ましい。加熱時間は、例えば、0.5分以上60分以下が好ましく、1分以上50分以下がより好ましい。
ポジ型感光性樹脂組成物層の膜厚は、好ましくは100nm以上4.0μm以下、より好ましくは200nm以上1.0μm以下の範囲である。
【0147】
以上のようにして形成されたポジ型感光性樹脂組成物層に対して、マイクロレンズが形成される位置にドットが形成されるように位置選択的に露光する。位置選択的な露光は、例えば、所望のマスクパターンを介して行うことができる。露光に用いる光線の波長は、特に限定されない。露光は、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、EUV(極紫外線)、VUV(真空紫外線)、EB(電子線)、X線、軟X線等の放射線を用いて行うことができる。
【0148】
露光後は、必要に応じて、ポジ型感光性樹脂組成物層に対してPEB(ポストエクスポージャーベーク)処理(露光後加熱処理)を施す。PEB処理の条件は、ポジ型感光性樹脂組成物中の各成分の種類、配合割合、塗布膜厚等によって異なる。例えば、加熱温度は、60℃以上150℃以下が好ましく、70℃以上140℃以下がより好ましい。加熱時間は、例えば、0.5分以上60分以下が好ましく、1分以上50分以下がより好ましい。
【0149】
次いで、露光されたポジ型感光性樹脂組成物層を現像する。これにより、不要な部分を溶解及び除去する。
【0150】
現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノナン等のアルカリ類の水溶液を使用することができる。また、上記アルカリ類の水溶液にメタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる。現像液としては、濃度0.1質量%以上10質量%以下のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が好ましい。
【0151】
現像時間は、ポジ型感光性樹脂組成物の組成やポジ型感光性樹脂組成物層の膜厚等によっても異なるが、通常、1分以上30分以下である。現像方法は、液盛り法、ディッピング法、パドル法、スプレー現像法等のいずれでもよい。
【0152】
現像されたポジ型感光性樹脂組成物層は、必要に応じて、流水等により洗浄された後、乾燥される。このようにして、ドットパターンが形成される。
現像後のポジ型感光性樹脂組成物層であるドットパターンを構成するドットを加熱によりマイクロレンズ形状に変形させることにより、凸レンズ形状のマイクロレンズが形成される。
加熱の条件は、ポジ型感光性樹脂組成物中の各成分の種類、配合割合、塗布膜厚等によって異なる。例えば、加熱温度は、130℃以上170℃以下が好ましく、140℃以上160℃以下がより好ましい。加熱時間は、例えば、1分以上30分間以下が好ましく、3分以上10分以下がより好ましい。
このようにして形成されるマイクロレンズは、前述のポジ型感光性樹脂組成物の硬化物からなる。
【0153】
<第2の方法>
第2の方法では、まず、レンズ材料層上に、ポジ型感光性樹脂組成物を用いてポジ型感光性樹脂組成物層を積層する。積層方法は特に限定されない。積層方法としては、塗布や、ドライフィルムの貼り付け等が挙げられる。積層方法としては塗布が好ましい。
レンズ材料層は、通常基材上に形成される。基材としては、フォトダイオード(有機フォトダイオード、無機フォトダイオード等)等を含む画像素子、カラーフィルター層等が設けられたシリコンウェーハ、場合により反射防止膜がさらに形成されたシリコンウェーハ等の基板等が挙げられる。
【0154】
ポジ型感光性樹脂組成物をレンズ材料層上に塗布する方法は、第1の方法について説明した塗布方法と同様である。
【0155】
ポジ型感光性樹脂組成物層を形成する際に、ポジ型感光性樹脂組成物からなる塗布膜に対して、適宜、加熱処理(プレベーク(ポストアプライベーク(PAB))処理)を施して塗布膜中の溶剤を除去してもよい。
上記加熱処理の条件は、第1の方法について説明した加熱処理の条件と同様である。
ポジ型感光性樹脂組成物層の膜厚は、好ましくは100nm以上4.0μm以下、より好ましくは200nm以上1.0μm以下の範囲である。
【0156】
以上のようにして形成されたポジ型感光性樹脂組成物層に対して、レンズ材料層上のマイクロレンズが形成される位置に対応する位置にドットが形成されるように位置選択的に露光する。位置選択的な露光は、第1の方法における露光と同様の方法で行われる。
【0157】
露光後は、必要に応じて、ポジ型感光性樹脂組成物層に対してPEB(ポストエクスポージャーベーク)処理(露光後加熱処理)を施す。PEB処理の条件は、第1の方法におけるPEB処理の条件と同様である。
【0158】
次いで、第1の方法と同様にして、ポジ型感光性樹脂組成物層に対する露光、及び現像が行われる。現像後のポジ型感光性樹脂組成物層であるドットパターンを構成するドットを加熱によりマイクロレンズ形状に変形させることにより、凸レンズ形状のマイクロレンズパターンを有するマスク層が形成される。
【0159】
マスクとともにレンズ材料層をエッチングすることにより、マスクの形状が転写されたマイクロレンズが形成される。
エッチング方法は、好ましくはドライエッチングである。ドライエッチングとしては、特に限定されず、例えば、プラズマ(酸素、アルゴン、CF等)、コロナ放電等によるドライエッチングが挙げられる。
【0160】
以上の通り、本発明者により、以下の(1)~(6)が提供される。
(1)酸解離性溶解抑制基を有し、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(A)と、樹脂(A)を架橋する官能基を備える化合物(B)と、光酸発生剤(C)と、クエンチャー(D)と、を含有するポジ型感光性樹脂組成物であって、
樹脂(A)は、樹脂(A1)、及び樹脂(A2)を含み、
樹脂(A1)は、下記式(a1)で表される構成単位及び下記式(a2-1)で表される構成単位を有し、
樹脂(A2)は、下記式(a1)で表される構成単位及び下記式(a2-2)又は(a2-3)で表される構成単位とを有し、
光酸発生剤(C)は、オニウム塩系光酸発生剤を含み、
クエンチャー(D)は、第二級脂肪族アミン、及び第三級脂肪族アミンから選択される1種以上を含む、ポジ型感光性樹脂組成物。
【化21】
(式(a1)中、Ra1は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、又はハロゲン化アルキル基を示し、Ra2は水素原子又はアルキル基を示し、pは1以上5以下の整数を示し、qは0以上4以下の整数を示す。)
【化22】
(式(a2-1)~(a2-3)中、Ra3は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、又はハロゲン化アルキル基を示し、Ra4、Ra5及びRa6は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を示し、Ra7はアルキル基又はシクロアルキル基を示し、Ra8は第三級炭素原子を有する有機基を示し、式(a2-2)、及び式(a2-3)中の、OとRa8との間の結合は、酸素原子と前記第三級炭素原子との結合であり、rは1以上5以下の整数を示し、s及びtは、それぞれ独立に、0以上4以下の整数を示す。)
(2)光酸発生剤(C)が、下記式(c9):
20cSO ・・・(c9)
(式(c9)中、R20cは炭素原子数1以上4位以下の直鎖又は分岐状のフッ素化アルキル基を表す。)
で表されるアニオン部を有するオニウム塩系光酸発生剤を含む、(1)に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
(3)樹脂(A)を構成する全構成単位に対する、式(a2-1)で表される構成単位の比率が、10モル%以上35モル%以下であり、
樹脂(A)を構成する全構成単位に対する、式(a2-2)で表される構成単位、及び/又は式(a2-3)で表される構成単位の比率が、2モル%以上15モル%以下である(1)又は(2)に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
(4)ポジ型感光性樹脂組成物における光酸発生剤(C)に含まれるオニウム塩系光酸発生剤の含有量が、クエンチャー(D)に対し2当量以上10当量以下である(1)~(3)のいずれか1つに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
(5)(1)~(4)のいずれか1つに記載のポジ型感光性組成物の硬化物からなるマイクロレンズ。
(6)えのいずれか1つに記載のポジ型感光性樹脂組成物を用いてポジ型感光性樹脂組成物層を形成することと、
ポジ型感光性樹脂組成物層を位置選択的に露光することと、
露光された前記ポジ型感光性樹脂組成物層を現像することと、
現像後のポジ型感光性樹脂組成物層を加熱する加熱して、マイクロレンズ形状に変形させと、を含むマイクロレンズパターンの製造方法。
(7)レンズ材料層上に、(1)~(4)のいずれか1つに記載のポジ型感光性樹脂組成物を用いてポジ型感光性樹脂組成物層を積層するポジ型感光性樹脂組成物層積層工程と、
ポジ型感光性樹脂組成物層を位置選択的に露光することと、
露光されたポジ型感光性樹脂組成物層を現像することと、
現像後のポジ型感光性樹脂組成物層を加熱して、マイクロレンズパターンを有するマスク層を形成することと、
レンズ材料層及び前記マスク層をドライエッチングして、レンズ材料層に前記マイクロレンズパターンの形状を転写することと、を含むマイクロレンズの製造方法。
【実施例0161】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0162】
[ポジ型感光性樹脂組成物の調製]
表1に示す種類、及び量の樹脂(A)、化合物(B)、光酸発生剤(C)、及びクエンチャー(D)を有機溶剤(S)に均一に溶解し、ポジ型感光性樹脂組成物を調製した。表1中の括弧内の数値は各成分の配合量(単位:質量部)を表す。また、表1中、光酸発生剤(C)のうちオニウム塩系光酸発生剤(C-1)の配合量と、クエンチャー(D)のすべての配合量との比率を、クエンチャー(D)のすべての配合量に対するオニウム塩系光酸発生剤(C-1)の配合量として当量比で表す。
【0163】
【表1】
【0164】
表1に記載される各成分を、以下説明する。
【0165】
<樹脂(A)>
前述の樹脂(A1)、又は樹脂(A2)に該当する樹脂として、以下の樹脂A-1~A-3を用いた。樹脂A-1~A-3を表す下記の各式において、各繰り返し単位に付された添え字(x、y、及びz)は、当該樹脂に含まれる全繰り返し単位に対する各繰り返し単位の比率(モル%)である。
【0166】
A-1:下記式で表される樹脂(重量平均分子量20000、x=65、y=35)
【化23】
【0167】
A-2:下記式で表される樹脂(重量平均分子量20000、x=75、y=25)
【化24】
【0168】
A-3:下記式で表される樹脂(重量平均分子量10000、x=65、y=25、z=10)
【化25】
【0169】
<化合物(B)>
B-1:下記式で表される化合物
【化26】
【0170】
<光酸発生剤(C)>
光酸発生剤(C)として、下記のC-1~C-3を用いた。
【0171】
C-1:下記式で表される化合物
【化27】
【0172】
C-2:下記式で表される化合物
【化28】
【0173】
C-3:下記式で表される化合物
【化29】
【0174】
クエンチャー(D)として、下記のD-1~D-3を用いた。
D-1:トリエチルアミン
D-2:トリエタノールアミン
D-3:2,6-ジ-tert-ブチルピリジン
【0175】
有機溶剤(S)として、下記のS-1を用いた。
S-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0176】
得られた各実施例、及び比較例のポジ型感光性樹脂組成物を用いて、以下の方法に従い、表3に記載の項目の評価を行った。
【0177】
<ドットパターンの形成>
反射防止膜及びアクリル系の透明平坦化膜がその表面に形成されたSi基板上に、スピンナーを用いて、各実施例、及び各比較例のポジ型感光性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成した。上記塗膜について、ホットプレート上で100℃にて90秒プレベーク処理を行って上記塗膜を乾燥させることにより膜厚300nmのポジ型感光性樹脂組成物層を形成した。
次いで、KrF露光装置NSR-S203B(Nikon製、NA=0.68、S=0.75)を用いて、ドット径0.35μm、ドット間距離0.23μmのドットパターン形成用のマスクを介して、上記ポジ型感光性樹脂組成物層にKrFエキシマレーザー(波長:248nm)を照射した。露光量は50mJ/cmであった。
その後、上記ポジ型感光性樹脂組成物層について、110℃で90秒間PEB処理を行った。次いで、露光されたポジ型感光性樹脂組成物層を、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて、室温(23℃)にて60秒間現像した。その後、純水を用いた30秒間のリンスと、110℃、60秒間のデハイドロベーク処理とを行い、複数のドットからなるドットパターンを形成した。
【0178】
<フローマージンの評価>
上記の方法に従い形成されたドットパターンについて、130℃、135℃、140℃、145℃、150℃、155℃、160℃、165℃、及び170℃の各温度で300秒間ポストベーク処理を行った。各温度条件でベークされた、ドットの基板の圧方向の断面形状を走査型電子顕微鏡(SEM、S-9220(日立製作所製))で観察した。SEM観察の結果から、上記のポストベーク処理により、ドットの断面形状が略半円状の凸レンズ形状に変化する最低温度T1を求めた。またSEM観察の結果から、加熱により流動した隣接するドット同士が基板表面近傍で接触した最低温度T2を求めた。T2とT1との差(=T2-T1)の値に基づいて、以下の基準でフローマージンを評価した。結果を表2に示す。
◎(良好):T2-T1が10℃超
○(やや良好):T2-T1が5℃以上10℃以下
×(不良):T2-T1が5℃未満
【0179】
<現像後膜厚変化の評価>
上記の方法と同様にしてドットパターンを形成した。PEB処理後の樹脂膜の膜厚Th1と、デハイドロベーク処理後のドットの厚さTh2を測定した。
膜厚の測定値に基づいて、下記式に基づいて、硬化膜の膜厚の変化率を算出した。
膜厚変化率(%)=Th2/Th1×100
算出された膜厚変化率の値に基づいて、以下の基準に従い現像後膜厚変化を評価した。結果を表2に示す。
◎(良好):膜厚変化率が90%超100%以下
○(やや良好):膜厚変化率が80%超90%以下
×(不良):膜厚変化率が80%以下
【0180】
<矩形性の評価>
上記の方法と同様に形成されたデハイドロベーク処理後のドットの形状を、SEM(走査型電子顕微鏡S-9220(日立製作所製))により観察し、ドットの断面形状が分かる電子顕微鏡画像を得た。得られた電子顕微鏡画像に基づいて、以下の基準にてドットの断面形状の矩形性を評価した。結果を表2に示す。
◎(良好):基板の厚さ方向のドットの形状が矩形、又は略矩形である。
○(やや良好):基板の厚さ方向のドットの断面の形状が台形である。
×(不良):基板の厚さ方向のドットの断面の形状が、丸みを帯び四角形でない。
【0181】
【表2】
【0182】
表1、及び表2によれば、樹脂(A)としての上述した樹脂(A1)及び(A2)と、架橋性の化合物である化合物(B)と、光酸発生剤(C)としてのオニウム塩系光酸発生剤と、クエンチャー(D)としての第三級脂肪族アミンとを含む実施例のポジ型感光性樹脂組成物は、広いフローマージンを示し、現像後に過度に膜減りせず矩形性に優れるレジストパターンを与えることが分かる。
他方、樹脂(A)として、樹脂(A1)及び樹脂(A2)を組み合わせて含まない比較例1、比較例4、及び比較例5のポジ型感光性樹脂組成物や、光酸発生剤(C)としてオニウム塩系光酸発生剤(C-1)を含まない比較例2のポジ型感光性樹脂組成物や、光酸発生剤(C)としてのオニウム塩系光酸発生剤(C-1)と、クエンチャー(D)としての第二級脂肪族アミン又は第三級脂肪族アミンとを含まない、比較例3のポジ型光感光性樹脂組成物は、広いフローマージンと、現像後の膜減りのしにくさと、レジストパターンの良好な矩形性とのうちの、1つ以上を欠いていた。