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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025177
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】非熟成チーズソースの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 23/00 20160101AFI20240216BHJP
【FI】
A23L23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128413
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】株式会社日清製粉ウェルナ
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 知佳子
【テーマコード(参考)】
4B036
【Fターム(参考)】
4B036LC01
4B036LF03
4B036LH13
4B036LH32
4B036LH39
4B036LH50
4B036LP01
4B036LP17
4B036LP24
(57)【要約】
【課題】非熟成チーズを高含有する非熟成チーズソースを効率よく製造し得る製造技術を提供すること。
【解決手段】本発明の製造方法の製造目的物である非熟成チーズソースは、喫食時に流動性を有する液状部を含み、該液状部における非熟成チーズの含有量が10質量%超である。本発明の非熟成チーズソースの製造方法は、1)非熟成チーズを品温0~15℃に調節する第1の調温工程と、2)前記液状部の原料のうち非熟成チーズ以外のものを少なくとも1種以上含有するベースソース又はその中間品を用意し、該ベースソース又はその中間品の品温を50~80℃に調節する第2の調温工程と、3)前記第1の調温工程を経た非熟成チーズと、前記第2の調温工程を経たベースソース又はその中間品とを混合し、攪拌する混合攪拌工程とを有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
喫食時に流動性を有する液状部を含み、該液状部における非熟成チーズの含有量が10質量%超である、非熟成チーズソースの製造方法であって、
非熟成チーズを品温0~15℃に調節する第1の調温工程と、
前記液状部の原料のうち非熟成チーズ以外のものを少なくとも1種以上含有するベースソース又はその中間品を用意し、該ベースソース又はその中間品の品温を50~80℃に調節する第2の調温工程と、
前記第1の調温工程を経た非熟成チーズと、前記第2の調温工程を経たベースソース又はその中間品とを混合し、攪拌する混合攪拌工程と
を有する、非熟成チーズソースの製造方法。
【請求項2】
非熟成チーズが、クリームチーズ、マスカルポーネ、モツァレラ、フロマージュ・プラン、カッテージ、リコッタ、フェタ、ブルマン、バノン、ブロッチュ及びクワルクから選択される1種以上であり、
前記液状部における非熟成チーズの含有量が、10質量%超30質量%以下である、請求項1に記載の非熟成チーズソースの製造方法。
【請求項3】
前記混合攪拌工程において、非熟成チーズとベースソース又はその中間品との混合物を、ブレンダー、ミキサー、ホイッパー又はホモジナイザーを用いて攪拌する、請求項1又は2に記載の非熟成チーズソースの製造方法。
【請求項4】
前記非熟成チーズソースがパスタソースである、請求項1~3の何れか1項に記載の非熟成チーズソースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソース原料として非熟成チーズを用いた非熟成チーズソースの製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
チーズソースは、チーズが有する乳の風味とコクに加えて、チーズの酸味があり、濃厚な味わいを楽しむことができるソースである。チーズソースに用いるチーズとしては、ナチュラルチーズ及びプロセスチーズが従来知られており、所望の風味に合わせて適宜選択されている。ナチュラルチーズは、熟成工程を経た熟成チーズと、これを実質的に経ていない非熟成チーズとに大別される。熟成チーズは、その熟成中に生成したアミノ酸やアミン、脂肪酸など種々の芳香や呈味性を示す成分により、非常に複雑な風味を有しており、これを用いて製造されたチーズソースは、嗜好性の高いものとなり得る。一方、非熟成チーズは、熟成チーズのような複雑な風味には乏しいものの、原料乳の風味とコク、さわやかな酸味を有しており、これを用いて製造されたチーズソースは、種々の食品と合わせやすく、使いやすいものとなり得る。
【0003】
特許文献1~3には、ソース原料として非熟成チーズを用いた非熟成チーズソースの製造方法が開示されている。
特許文献1には、小麦粉と非熟成チーズ0.5~10質量%とを含有するクリーム系ソース(非熟成チーズソース)の製造方法として、小麦粉を牛乳や油脂とともに攪拌加熱し、水でのばした後、その加熱混合物が品温50~98℃の状態で、非熟成チーズを加えて10~40分間程度加熱する工程を有するものが記載されている(特許文献1の[0020])。
特許文献2には、植物ステロール類が配合された冷凍ソースの製造例として、冷凍カルボナーラソースの製造例が記載されている。この製造例では、クリームチーズ(非熟成チーズ)10kgと、パルミジャーノレジャーノ(熟成チーズ)1kgと、その他の原料とを釜に投入し、攪拌しながら加熱してそれらの混合物の品温を90℃に調節し、合計104kgのカルボナーラソース(非熟成チーズソース)を製造している(特許文献2の[0050]、[0051])。
特許文献3には、バジル入り緑色ソースの製造例として、釜にバターと小麦粉を加えて炒め、そこにその他の原料とともにクリームチーズ(非熟成チーズ)6.5kgを加え攪拌混合し、それらの混合物の品温を85℃に調節した後、生クリームとバジルペーストを加えて品温80℃で30分間加熱攪拌して、合計100kgのバジル入り緑色クリームソース(非熟成チーズソース)を製造している(特許文献3の[0023])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/143213号
【特許文献2】特開2007-259834号公報
【特許文献3】特開2008-125394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~3に記載の非熟成チーズソースにおける非熟成チーズの含有量は10質量%以下である。非熟成チーズの含有量がより増量され、嗜好性がより高められた非熟成チーズソースが要望されているが、斯かる要望に十分に応え得る技術は未だ提供されていない。
【0006】
本発明の課題は、非熟成チーズを高含有する、より具体的には、非熟成チーズの含有量が10質量%超である非熟成チーズソースを、効率よく製造し得る製造技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が、パスタソースとして好適な非熟成チーズソースの製造技術について種々検討した結果、非熟成チーズソースの液状部(喫食時に流動性を有する部分)における非熟成チーズの含有量を10質量%超にすると、該液状部の攪拌操作において高確率で発泡が発生するという問題が確認された。このソース製造時の発泡の問題は、非熟成チーズを高含有する非熟成チーズソースに特有の問題であり、その原因は、非熟成チーズが、微生物発酵が比較的少なく高分子の蛋白質及び脂質が比較的多いものであるためと推察される。ソースの製造中に発泡が生じると、ソースにおける泡状になった部分が過加熱となり、延いては乾燥し、結果として、ソースの風味が損なわれるおそれがある。また、ソースの製造中に発泡が生じると、ソース製造の際の操作性が大きく低下するとともに、泡でソースが視認しづらくなるため、製造効率が低下するおそれがある。
【0008】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたもので、喫食時に流動性を有する液状部を含み、該液状部における非熟成チーズの含有量が10質量%超である、非熟成チーズソースの製造方法であって、非熟成チーズを品温0~15℃に調節する第1の調温工程と、前記液状部の原料のうち非熟成チーズ以外のものを少なくとも1種以上含有するベースソース又はその中間品を用意し、該ベースソース又はその中間品の品温を50~80℃に調節する第2の調温工程と、前記第1の調温工程を経た非熟成チーズと、前記第2の調温工程を経たベースソース又はその中間品とを混合し、攪拌する混合攪拌工程とを有する、非熟成チーズソースの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、非熟成チーズを高含有し、乳原料の風味及びコクを有するとともに、爽やかな酸味のある非熟成チーズソースを効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の製造方法の製造目的物である非熟成チーズソース(以下、単に「非熟成チーズソース」とも言う。)は、喫食時に流動性を有する液状部を含み、該液状部における非熟成チーズの含有量が10質量%超である。
前記液状部は、非熟成チーズが溶解又は乳化状に分散した状態で含まれている液状食品であり、典型的には、非熟成チーズとベースソースとを含む。
非熟成チーズソースの喫食時における雰囲気温度は通常20~30℃であるので、前記液状部は、雰囲気温度が斯かる範囲にあるときに流動性を有することが好ましい。
【0011】
本発明で用いる非熟成チーズはナチュラルチーズである。一般的にナチュラルチーズとは、生乳にレンネットを加えて凝固させたカードから、乳清を除去したものであり、このカードを熟成させて製造された熟成チーズと、該熟成工程を経ないか又は該熟成工程がほとんど行われずに製造された非熟成チーズとに大別される。
本発明では、種類を問わず種々の非熟成チーズを用いることができる。本発明で好ましく用いられる非熟成チーズとしては、例えば、クリームチーズ、マスカルポーネ、モツァレラ、フロマージュ・プラン、カッテージ、リコッタ、フェタ、ブルマン、バノン、ブロッチュ、クワルクが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】
非熟成チーズの前記液状部における非熟成チーズの含有量は、該液状部の全質量(湿重量)に対して10質量%超である。前記液状部における非熟成チーズの含有量が10質量%以下では、前述したソース製造時の発泡の問題は生じにくくなるものの、非熟成チーズソースにおけるチーズの風味が不十分となるおそれがある。
前記液状部における非熟成チーズの含有量の上限は特に制限されないが、該含有量が多すぎると、非熟成チーズの種類によっては、該液状部の粘性が高くなりすぎてしまい、その結果、製造条件によっては、発泡を抑制することが難しくなる場合がある。このような点を考慮すると、前記液状部における非熟成チーズの含有量は、該液状部の全質量(湿重量)に対して30質量%以下が好ましい。
前記液状部における非熟成チーズの含有量は、好ましくは10質量%超30質量%以下、より好ましくは11質量%以上30質量%以下、更に好ましくは12質量%以上20質量%以下である。特に非熟成チーズとして、前記のクリームチーズ等の好ましいものを用いる場合は、前記液状部における含有量を斯かる好ましい範囲に設定すると良い。
【0013】
前記液状部に含まれる前記ベースソースとしては、非熟成チーズを含み得るものであれば特に限定されず、例えば、ベシャメルソース、クリームソース、ホワイトソース、カルボナーラソース、トマトソース、カレーソースが挙げられる。
【0014】
前記液状部におけるチーズ以外の原料、すなわち前記ベースソースの原料としては、例えば、清水等の水性液体;液油、固形油脂等の油脂類;粉末野菜、野菜ピューレ、レバーペースト等の動植物性原料;小麦粉、米粉等の穀粉類;コーンスターチ、タピオカ澱粉等の澱粉類及びこれらの加工澱粉類;糖類;卵類;乳類;液体調味料、固形調味料等の調味料類;香料;香辛料;増粘剤;塩類;アミノ酸類が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記液状部におけるチーズ以外の原料の含有量、すなわち前記液状部における前記ベースソースの含有量は、該液状部の全質量(湿重量)に対して90質量%未満であり、好ましくは70~89質量%、より好ましくは80~88質量%である。
【0015】
非熟成チーズソースは、前記液状部のみを含んでいてもよく、前記液状部に加えて更に固形部を含んでいてもよい。前記固形部は、喫食時に流動性を有しない固形食品であり、例えば、固形具材、該固形具材よりも寸法の小さいトッピング材が挙げられる。
非熟成チーズソースが前記固形部として非熟成チーズを含む場合、その固形部としての非熟成チーズは、前記液状部に10質量%超で含まれている非熟成チーズではない。換言すれば、非熟成チーズソースに前記固形部として非熟成チーズが該ソースの全質量に対して10質量%超含有されていても、それだけでは「前記液状部における非熟成チーズの含有量が10質量%超」を満たすことにはならない。
【0016】
前記固形部としては、例えば、牛、豚、鶏等の肉類;さわら、イカ、タコ等の魚介類;ニンジン、ジャガイモ等の野菜類;シメジ、マッシュルーム等のキノコ類が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
非熟成チーズソースにおける前記液状部と前記固形部との含有質量比は、前記ベースソースの種類、非熟成チーズソースが提供される状況等に応じて適宜調整すればよく、特に制限されないが、液状部:固形部(固形具材)として、好ましくは100:10~200である。
【0017】
本発明によって提供された非熟成チーズソースには、パスタソースやディップソースなどの、他の食材にかけて食される「ソース」と、それ自体の喫食が目的とされる「スープ」とが包含される。
本発明によって提供された非熟成チーズソースは、例えば、シチュー、ハンバーグ、スパゲティ、グラタン等の食品に適用できる。本発明によって提供された非熟成チーズソースは、特にパスタソースとして有用である。
本発明によって提供された非熟成チーズソースは、製造後にそのまま喫食することもできるし、製造後に密封して殺菌するか又は冷蔵若しくは冷凍して低温状態とした上で保存することもできる。本発明によって提供された非熟成チーズソースは、冷凍後に電子レンジ等の加熱調理器で再加熱しても、風味の良い状態で喫食することができる。
【0018】
本発明の非熟成チーズソースの製造方法(以下、「本発明の製造方法」とも言う。)は、少なくとも下記工程1~3を有する。本発明の製造方法は、下記工程3の前に下記工程1及び工程2を実施することで、非熟成チーズとベースソースとを混合撹拌する前に、両者の品温をそれぞれ下記特定範囲に調節する点で特徴付けられる。
・工程1:非熟成チーズを品温0~15℃に調節する(第1の調温工程)。
・工程2:前記液状部の原料のうち非熟成チーズ以外のものを少なくとも1種以上含有するベースソース又はその中間品を用意し、該ベースソース又はその中間品の品温を50~80℃に調節する(第2の調温工程)。
・工程3:前記第1の調温工程を経た非熟成チーズと、前記第2の調温工程を経たベースソース又はその中間品とを混合し、攪拌する(混合攪拌工程)。
【0019】
前記工程1で調節された非熟成チーズの品温が0℃未満では、非熟成チーズが凍結して乳化構造が破壊されてしまい、これを用いた非熟成チーズソースにおいて固液分離が発生するおそれがある。また、前記工程1で調節された非熟成チーズの品温が15℃を超えると、前記工程3において前述した発泡が発生しやすくなるおそれがある。前記工程1で調節する非熟成チーズの品温は、好ましくは1~12℃、より好ましくは2~9℃である。
【0020】
前記工程2で用意するベースソースについては、前述したとおりである。前記工程2で用意するベースソースは、常法に従って製造することができる。
前記工程2では、ベースソースに代えて、その中間品を用意してもよい。ここで言う「ベースソースの中間品」とは、ベースソースの製造の中間プロセスで製造され、更に以降の製造プロセスを経ることによって最終製品であるベースソースとなるものを指す。前記工程2でベースソースの中間品を用意した場合、例えば、次工程の前記工程3で、該中間品に含まれていない該ベースソースの原料を混合してもよい。
【0021】
前記工程2で調節されたベースソース又はその中間品の品温が50℃未満であるか又は80℃超であると、前記工程3において前述した発泡が発生しやすくなるおそれがある。前記工程2で調節するベースソース又はその中間品の品温は、好ましくは55~76℃、より好ましくは58~72℃である。
【0022】
前記工程3において、非熟成チーズとベースソース又はその中間品との混合物の攪拌方法は特に制限されず、食品の製造で利用可能な公知の攪拌方法を特に制限無く用いることができるが、前記工程1で調節された非熟成チーズの品温を維持しつつ、非熟成チーズのベースソース又はその中間品への分散性を一層向上させる観点から、ブレンダー、ミキサー、ホイッパー又はホモジナイザーを用いて攪拌する方法が好ましい。
【0023】
前記工程3でベースソース又はその中間品と混合する非熟成チーズは、最大差し渡し長さが好ましくは0.3~20mm、より好ましくは0.5~12mmであると良い。これにより、前記工程1で調節された非熟成チーズの品温を維持しつつ、非熟成チーズのベースソース又はその中間品への分散性を一層向上させることが可能となる。
ここで言う「差し渡し長さ」とは、非熟成チーズを任意の方向から観察した場合の最大の差し渡し長さを指す。例えば、非熟成チーズソースの形状が球状の場合、その球の直径が最大差し渡し長さである。また例えば、非熟成チーズソースの形状が直方体又は立方体の場合、その直方体又は立方体の相対向する一対の面の一方の角部と他方の角部とを結ぶ対角線のうち最長のものの長さが最大差し渡し長さである。
前記工程3でベースソース又はその中間品と混合する非熟成チーズの最大差し渡し長さを前記の好ましい範囲に調整する方法の一例として、品温が0℃程度(好ましくは-5~5℃)の低温状態の非熟成チーズから、最大差し渡し長さが前記の好ましい範囲にあるチーズ小片を切り出す方法が挙げられる。前記のチーズ小片の切り出し方法としては、低温状態の非熟成チーズをおろし金で削る方法が挙げられる。
【0024】
なお、非熟成チーズの最大差し渡し長さが前記の好ましい範囲内で且つ小さいほど、非熟成チーズのベースソース又はその中間品への分散性が向上するため、前記工程3の実施に要する時間の短縮化を図ることが可能となる。しかしながら、そのような小サイズの非熟成チーズは空気中で風味を失いやすいので、小サイズの非熟成チーズを使用する場合は特に、非熟成チーズが空気中に晒される時間をなるべく短くすることが好ましい。例えば、品温が0~15℃に調節された非熟成チーズがその品温を維持し得る環境(例えば、冷蔵庫又は冷凍庫)に保存されている場合に、該非熟成チーズを該環境から取り出してから液状物であるベースソース又はその中間品と混合するまでの時間をなるべく短くすることが好ましい。具体的には例えば、前記の「低温状態の非熟成チーズをおろし金で削る方法」において、低温状態の非熟成チーズをおろし金で削ってベースソース又はその中間品と混合するまでの一連の処理は、好ましくは60分以内、より好ましくは30分以内に手早く行うことが好ましい。
【0025】
本発明の製造方法は、前記工程1~3を実施することを前提として、一般的なソースの製造方法に準じて実施できる。
本発明の製造方法の具体例として、ベースソースの中間品を用意し、これと非熟成チーズとを混合し攪拌した後、その混合物に、該中間品に含まれていない該ベースソースの原料を加えて攪拌する方法(以下、「製造方法A」とも言う。)が挙げられる。
製造方法Aは、例えば次のように実施される。すなわち、小麦粉を牛乳及び/又は油脂とともにダマにならないように穏やかに攪拌加熱し、その混合物を水でのばしてベースソースの中間品を得、該中間品の品温を50~80℃に調節した状態で、該中間品と、予め品温が0~15℃に調節された非熟成チーズとを混合し、10~40分間程度攪拌しつつ加熱した後、該中間品に含まれていない該ベースソースの原料を加えて、その混合物全体を加熱しつつ攪拌する。
製造方法Aにおいて、製造目的物の非熟成チーズソースが、前記液状部に加えて前記固形部を含むものである場合は、前記中間品に含まれていないベースソースの原料を加えるのと同じタイミングで、該固形部の原料(例えば固形具材)を加えてもよい。
【0026】
本発明の製造方法の他の具体例として、ベースソースの完成品を用意し、これと非熟成チーズとを混合し攪拌する方法(以下、「製造方法B」とも言う。)が挙げられる。
製造方法Bは、ベースソースがホワイトソースである場合を例に取ると、例えば次のように実施される。すなわち、タマネギ、牛肉等の固形具材を炒め、ここにブイヨンを加えてひと煮立ちさせ、市販のホワイトソースルウを規定量加えて加熱しながら溶解し、調味料で味を整えて、ホワイトソース(ベースソース)を調製する。前記ホワイトソースの品温を50~80℃に調節した状態で、該ホワイトソースと、予め品温が0~15℃に調節された非熟成チーズとを混合し、3~20分間程度攪拌しつつ加熱する。ベースソースとしてホワイトソース以外のもの(例えばトマトソース、カレーソース)を用いる場合も、前記と同様に実施できる。
製造方法Bにおいて、製造目的物の非熟成チーズソースが、前記液状部に加えて前記固形部を含むものである場合は、ベースソースと非熟成チーズとを混合するのと同じタイミングで、該固形部の原料(例えば固形具材)を更に混合してもよい。
【実施例0027】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0028】
〔実施例1~26及び比較例1~8:非熟成チーズソースの製造〕
前記製造方法Bにより非熟成チーズソースを製造した。具体的には、ベースソースとしてトマトソースの完成品を用意し、これを非熟成チーズとを混合し攪拌する方法により、非熟成チーズソースを製造した。
トマトソース(ベースソース)は、次のようにして用意した。先ず、オリーブ油とおろしニンニクを鍋に入れて火にかけ、香りが立つまで加熱した。その加熱混合物に、清水と固形ブイヨンとを加え、煮立ったところでトマトピューレとトマトペーストとを加え、沸騰しないよう火加減しながら40分間加熱し、塩、胡椒で味を整え、トマトソースを調製した。調製したトマトソースは、調製直後(加熱直後)に室温で所定時間放置し、必要に応じ加熱するなどして、所定の品温(下記表1~4の「混合前のベースソースの品温(℃)」の欄参照)に調節した。
また別途、非熟成チーズとしてマスカルポーネチーズを用い、これを冷蔵庫又は冷凍庫に収容することで、非熟成チーズの品温を所定の品温(下記表1~4の「混合前の非熟成チーズの品温(℃)」の欄参照)に調節した。
そして、非熟成チーズを、その品温を維持した状態で、おろし金を用いて粉末状にすりおろし、その粉末状の非熟成チーズを、品温が所定の範囲に調節されたトマトソースに投入し、該トマトソースの品温を維持しながら、ハンドミキサーを用いて3分間撹拌して、該非熟成チーズを該トマトソース全体に分散させた(混合攪拌工程)。前記粉末状の非熟成チーズの最大差し渡し長さは、平均で0.5mmであった。こうして目的とする非熟成チーズソースを製造した。
【0029】
〔試験例〕
各実施例、比較例の非熟成チーズソースの製造時において、前記混合攪拌工程でトマトソースと非熟成チーズとの混合物における発泡状態を下記評価基準に従って評価した。
具体的には、訓練されたパネラー10名がそれぞれ個別に前記方法により非熟成チーズソースを製造し、その際の前記混合物における発泡状態を目視観察して、下記評価基準に従って評価した。10名のパネラーの評価点の平均値を下記表1~4に示す。
【0030】
<発泡状態の評価基準>
5点:発泡が全くなく、非常に良好。
4点:発泡があるが、発生後1分以内に消泡し、良好。
3点:ソース液面の一部に消泡しない発泡が残るが、問題ないレベル。
2点:ソース液面全体に消泡しない発泡が残り、泡の厚みが5mm未満であり、不良。
1点:ソース液面全体に消泡しない発泡が残り、泡の厚みが5mm以上となり、非常に不良。
【0031】
【表1】
【0032】
表1に示すとおり、各実施例及び比較例は、非熟成チーズソースの液状部における非熟成チーズの含有量が10質量%超であるため、該液状部の攪拌操作において発泡が発生することが懸念されるが、各実施例は、混合前の非熟成チーズの品温が0~15℃であったため、これを満たさない各比較例に比べて発泡抑制効果に優れる結果となった。
【0033】
【表2】
【0034】
表2に示すとおり、各実施例は、混合前のベースソースの品温が50~80℃であったため、これを満たさない各比較例に比べて、発泡抑制効果に優れる結果となった。
【0035】
【表3】
【0036】
表3の各実施例及び比較例は、表2の各実施例及び比較例に比べて、混合前の非熟成チーズの品温が高いところ、そのことに起因して、表2の各実施例及び比較例に比べて、発泡抑制効果に劣る結果となった。このことから、混合前の非熟成チーズの品温が高くなると、混合攪拌工程で発泡が発生しやすくなることがわかる。
【0037】
【表4】
【0038】
表4の各実施例及び比較例は、表2の各実施例及び比較例に比べて、製造目的物である非熟成チーズソースの液状部における非熟成チーズの含有量が多く、そのため、非熟成チーズソースの製造において非熟成チーズの使用量が多いところ、そのことに起因して、表2の各実施例及び比較例に比べて、発泡抑制効果に劣る結果となった。このことから、非熟成チーズソースの製造において非熟成チーズの使用量が多くなると、混合攪拌工程で発泡が発生しやすくなることがわかる。