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特開2024-25185ガラス振動板、振動子付きガラス振動板、ガラス振動板の製造方法及び振動子付きガラス振動板の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025185
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】ガラス振動板、振動子付きガラス振動板、ガラス振動板の製造方法及び振動子付きガラス振動板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/02 20060101AFI20240216BHJP
   H04R 7/04 20060101ALI20240216BHJP
   B60J 1/17 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H04R1/02 105A
H04R7/04
B60J1/17 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128423
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 研人
(72)【発明者】
【氏名】秋山 順
【テーマコード(参考)】
3D127
5D016
5D017
【Fターム(参考)】
3D127BB01
3D127CB05
3D127CC05
3D127EE15
5D016AA01
5D017AG02
5D017AG13
(57)【要約】
【課題】ガラス板構成体に振動子を安定して取り付けできるとともに、振動子の脱落を抑制でき、しかも、音の品質低下を抑制できるガラス振動板、振動子付きガラス振動板、ガラス振動板の製造方法及び振動子付きガラス振動板の製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス板構成体15と、ガラス板構成体15に固定され、ガラス板構成体15を振動させる振動子13が取り付けられるマウント部17と、ガラス板構成体15の端辺に沿って、ガラス板構成体15の第1主面15aと対向するホルダ16と、を有し、マウント部17は、接続部19を含む主マウント部21と、主マウント部21とホルダ16とを接続する延長部23と、を含み、延長部23は、減衰係数ηが0.01以上であり、ガラス板構成体15から少なくとも一部が離間して配置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板構成体と、
前記ガラス板構成体に固定され、前記ガラス板構成体を振動させる振動子が取り付けられるマウント部と、
前記ガラス板構成体の端辺に沿って、前記ガラス板構成体の第1主面と対向するホルダと、を有し、
前記マウント部は、前記振動子が取り付けられる接続部を含む主マウント部と、前記主マウント部と前記ホルダとを接続する延長部と、を含み、
前記延長部は、減衰係数ηが0.01以上であり、前記ガラス板構成体から少なくとも一部が離間して配置される、ガラス振動板。
【請求項2】
前記延長部は、コア層と、前記コア層の少なくとも一部を覆うとともに前記コア層より高い剛性を有する被覆部と、を有する、請求項1に記載のガラス振動板。
【請求項3】
前記コア層は、前記ガラス板構成体の平面視において、前記主マウント部側の端部から前記主マウント部側とは反対側の端部まで連続して配置される、請求項2に記載のガラス振動板。
【請求項4】
前記コア層は樹脂である、請求項2又は3に記載のガラス振動板。
【請求項5】
前記被覆部は、金属及び硬質プラスチックの少なくとも1つを有する、請求項2から4のいずれか1項に記載のガラス振動板。
【請求項6】
前記延長部は板状であって、
前記コア層は、第1主面と第2主面とを有し、
前記被覆部は、前記第1主面側に配置される第1被覆部を有する、請求項2から5のいずれか1項に記載のガラス振動板。
【請求項7】
前記被覆部は、前記第2主面側に配置される第2被覆部を有する、請求項6に記載のガラス振動板。
【請求項8】
前記延長部は、前記ガラス板構成体の平面視における短手方向の幅をWとし、前記ガラス板構成体の前記第1主面の法線方向に相当する、厚さをtとするとき、
アスペクト比(W/t)は、0.1~50である、請求項1から7のいずれか1項に記載のガラス振動板。
【請求項9】
前記延長部は、少なくとも1箇所の屈曲部を有する、請求項1から8のいずれか1項に記載のガラス振動板。
【請求項10】
前記ホルダは、前記ガラス板構成体の平面視において、前記ガラス板構成体の端辺よりも外側に連結部を有し、
前記延長部は、前記連結部と接続される、請求項1から9のいずれか1項に記載のガラス振動板。
【請求項11】
前記延長部は、前記ガラス板構成体から離間して配置され、
前記ガラス板構成体と前記延長部との間の媒体は空気である、請求項1から10のいずれか1項に記載のガラス振動板。
【請求項12】
前記延長部は、前記主マウント部側の端部が、前記主マウント部と機械的に締結されている、請求項1から11のいずれか1項に記載のガラス振動板。
【請求項13】
前記延長部は、前記ガラス板構成体の平面視において、前記主マウント部から突出する突起部に配置される、請求項12に記載のガラス振動板。
【請求項14】
前記主マウント部は、壁面に溝部を有し、
前記延長部は、前記主マウント部側の端部が、前記溝部の内部に配置される、請求項12に記載のガラス振動板。
【請求項15】
前記延長部の少なくとも一部は、前記主マウント部と一体に形成されている、請求項1から11のいずれか1項に記載ガラス振動板。
【請求項16】
前記延長部は、前記主マウント部とは反対側の端部が、前記ガラス板構成体の平面視において、前記ホルダと重複する、請求項1から15のいずれか1項に記載のガラス振動板。
【請求項17】
複数の前記延長部を備え、それぞれの前記延長部が1つの前記ホルダに接続される、請求項1から16のいずれか1項に記載のガラス振動板。
【請求項18】
複数の前記延長部及び複数の前記ホルダを備え、複数の前記延長部が複数の前記ホルダにそれぞれ接続される、請求項1から16のいずれか1項に記載のガラス振動板。
【請求項19】
前記ガラス板構成体は、車両用摺動窓である、請求項1から18のいずれか1項に記載のガラス振動板。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか1項に記載のガラス振動板と、前記マウント部の前記接続部に接続された前記振動子を有する、振動子付きガラス振動板。
【請求項21】
ガラス板構成体と、前記ガラス板構成体を振動させる振動子が取り付けられる主マウント部と、前記ガラス板構成体に固定されるホルダと、前記主マウント部と前記ホルダとを繋ぐ延長部と、を備えるガラス振動板の製造方法であって、
前記ガラス板構成体に、前記主マウント部及び前記ホルダを取り付け、
コア層と、前記コア層を覆うとともに前記コア層より高い剛性を有する被覆部と、を有する前記延長部を、前記主マウント部と前記ホルダとの間に、前記ガラス板構成体に接触させずに繋げて固定する、ガラス振動板の製造方法。
【請求項22】
ガラス板構成体と、前記ガラス板構成体を振動させる振動子が取り付けられ、外側に板状体で延伸する被覆部が一体化されている主マウント部と、前記ガラス板構成体に固定されるホルダと、を備えるガラス振動板の製造方法であって、
前記ガラス板構成体に、前記主マウント部及び前記ホルダを取り付け、
前記被覆部の主面に前記被覆部よりも低い剛性を有するコア層を積層させた部分を含む延長部を前記ホルダに、前記ガラス板構成体に接触させずに繋げて固定する、ガラス振動板の製造方法。
【請求項23】
請求項21又は22に記載のガラス振動板の製造方法の後に、
前記主マウント部に前記振動子を取り付ける、振動子付きガラス振動板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス振動板、振動子付きガラス振動板、ガラス振動板の製造方法及び振動子付きガラス振動板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な板状の部材として、例えば、電子機器用部材、車両用窓部材、車両等の輸送機械の内装用部材を振動させて、スピーカとして機能させる技術が検討されている。例えば、特許文献1~6には、電気的に振動させるエキサイタ(振動子)の振動を、ガラス板などの振動板に伝える各種の構造が開示されている。
【0003】
特許文献1には、ガラス板の主面に、ソール、ベース、アタッチメントをこの順で積層して、ソール及びベースをガラス板の一部を覆うプラスチック部によって固定し、固定されたベース上のアタッチメントに、振動子を接続する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2021/229179号
【特許文献2】国際公開第2021/229180号
【特許文献3】国際公開第2019/172076号
【特許文献4】特開2010-263512号公報
【特許文献5】特開2009-100223号公報
【特許文献6】特開2013-198082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような振動子をガラス板に搭載するための取り付け構造は、振動する振動子の継続使用によって、取り付け位置にずれが生じて音響再生品質が低下したり、振動子そのものが脱落したりするおそれがあった。また、特許文献1に記載の取り付け構造のように、ソール及びベースをプラスチック部によってガラス板に固定する構造では、構成が煩雑になったり、ソール及びベースにプラスチック部を安定してオーバーコートしにくかったりする、などの問題があった。また、温度変化によって、プラスチック部によるソール及びベースの固定強度が低下するおそれがあった。
【0006】
そこで本発明は、ガラス板構成体に振動子を安定して取り付けできるとともに振動子の脱落を抑制でき、かつ、ガラス振動板から発せられる音の品質低下を抑制できるガラス振動板、振動子付きガラス振動板、ガラス振動板の製造方法及び振動子付きガラス振動板の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は下記構成からなる。
(1) ガラス板構成体と、
前記ガラス板構成体に固定され、前記ガラス板構成体を振動させる振動子が取り付けられるマウント部と、
前記ガラス板構成体の端辺に沿って、前記ガラス板構成体の第1主面と対向するホルダと、を有し、
前記マウント部は、前記振動子が取り付けられる接続部を含む主マウント部と、前記主マウント部と前記ホルダとを接続する延長部と、を含み、
前記延長部は、減衰係数ηが0.01以上であり、前記ガラス板構成体から少なくとも一部が離間して配置される、ガラス振動板。
(2) 上記(1)に記載のガラス振動板と、前記マウント部の前記接続部に接続された前記振動子を有する、振動子付きガラス振動板。
(3) ガラス板構成体と、前記ガラス板構成体を振動させる振動子が取り付けられる主マウント部と、前記ガラス板構成体に固定されるホルダと、前記主マウント部と前記ホルダとを繋ぐ延長部と、を備えるガラス振動板の製造方法であって、
前記ガラス板構成体に、前記主マウント部及び前記ホルダを取り付け、
コア層と、前記コア層を覆うとともに前記コア層より高い剛性を有する被覆部と、を有する前記延長部を、前記主マウント部と前記ホルダとの間に、前記ガラス板構成体に接触させずに繋げて固定する、ガラス振動板の製造方法。
(4) ガラス板構成体と、前記ガラス板構成体を振動させる振動子が取り付けられ、外側に板状体で延伸する被覆部が一体化されている主マウント部と、前記ガラス板構成体に固定されるホルダと、を備えるガラス振動板の製造方法であって、
前記ガラス板構成体に、前記主マウント部及び前記ホルダを取り付け、
前記被覆部の主面に前記被覆部よりも低い剛性を有するコア層を積層させた部分を含む前記延長部を前記ホルダに、前記ガラス板構成体に接触させずに繋げて固定する、ガラス振動板の製造方法。
(5) 上記(3)または(4)に記載のガラス振動板の製造方法の後に、
前記主マウント部に前記振動子を取り付ける、振動子付きガラス振動板の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ガラス板構成体に振動子を安定して取り付けできるとともに振動子の脱落を抑制でき、かつ、ガラス振動板から発せられる音の品質低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、振動子付きガラス振動板の概略平面図である。
図2図2は、振動子付きガラス振動板の下縁部分の斜視図である。
図3図3は、図1におけるIII-III断面図である。
図4図4は、ガラス振動板の下縁部分の拡大図である。
図5図5は、マウント支持用のホルダを備えた振動子付きガラス振動板の概略平面図である。
図6図6は、延長部の断面図である。
図7図7は、他の構造の延長部の断面図である。
図8A図8Aは、ガラス振動板の製造工程を説明するガラス振動板の下縁部分における厚さ方向に沿う断面図である。
図8B図8Bは、ガラス振動板の製造工程を説明するガラス振動板の下縁部分における厚さ方向に沿う断面図である。
図9図9は、他の接続構造によって主マウント部と延長部とが接続されたガラス振動板の下縁部分における厚さ方向に沿う断面図である。
図10図10は、延長部の一部が主マウント部に一体に形成されたガラス振動板の下縁部分における厚さ方向に沿う断面図である。
図11A図11Aは、延長部の一部が主マウント部に一体に形成されたガラス振動板の製造工程を説明するガラス振動板の下縁部分における厚さ方向に沿う断面図である。
図11B図11Bは、延長部の一部が主マウント部に一体に形成されたガラス振動板の製造工程を説明するガラス振動板の下縁部分における厚さ方向に沿う断面図である。
図12図12は、変形例1に係るガラス振動板の下縁部分の拡大図である。
図13図13は、変形例2に係るガラス振動板の下縁部分の拡大図である。
図14図14は、変形例3に係るガラス振動板の下縁部分の拡大図である。
図15図15は、変形例4に係るガラス振動板の下縁部分における厚さ方向に沿う断面図である。
図16図16は、変形例4の他の構造例を示すガラス振動板の下縁部分における厚さ方向に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本実施形態の振動子付きガラス振動板は、ガラス振動板と、ガラス振動板を振動させる振動子とを備え、例えば車両用のガラス板を振動させる用途に適用できる。以下の説明では、振動子付きガラス振動板を車両のサイドウインドウ等の窓部に適用する一例を説明するが、適用可能な車両の窓部はこれに限らず、さらに車両以外の窓部の用途に適用してもよい。
【0011】
<ガラス振動板の全体構成>
図1は、振動子付きガラス振動板100の概略平面図である。図2は、振動子付きガラス振動板100の下縁部分の斜視図である。図3は、図1におけるIII-III断面図である。図4は、ガラス振動板11の下縁部分の拡大図である。
【0012】
図1図4に示すように、ガラス振動板11は、ガラス板構成体15と、マウント部17と、接続部19と、ホルダ16とを有している。ガラス振動板11は、ガラス板構成体15の主面上に振動を発生させる振動子13が装着可能である。
【0013】
<振動子付きガラス振動板の構成>
振動子付きガラス振動板100は、ガラス振動板11に、振動子13が装着される構成を有する。振動子13は、接続部19と接続して固定され、接続部19は、マウント部17に固定される。振動子13は、接続部19に対して、ねじ、ボルト・ナット、リベット、キー、ピン、クリップ等による機械締結及び接着剤による接着の少なくとも一方の手段等により固定される。なお、振動子13と接続部19とは、互いに異なる部材でこれらが強固に固定された構成でもよく、これらが同一部材として一体化された構成でもよい。接続部19は、マウント部17に機械的に固定される。マウント部17は、ガラス板構成体15の一方の主面である第1主面15aに固定される。これにより、振動子13が、接続部19及びマウント部17を介してガラス板構成体15の第1主面15aに装着される。マウント部17と第1主面15aとは、接着層31によって接着固定されている。なお、第1主面15aと第2主面15bと接触するようにガラス板構成体15を挟み込むように固定されてもよい。
【0014】
例えば、ガラス振動板11を車両のサイドウインドウとして用いる場合、ベルトラインBL(図1参照)よりも下方の領域に振動子13を配置する。これにより、車室内にガラス板構成体15から発生する音響を供給できる。なお、ベルトラインBLは、サイドウインドウを車両(ドア)に取り付けたときに、サイドウインドウが全閉となるときの開口部の下辺に相当する。
【0015】
振動子13は、接触する対象物を振動板として利用し、振動板から音を発生させる加振装置である。振動子13が装着された振動子付きガラス振動板100は、振動子13の駆動によりガラス振動板11を振動させて所望の音響を発生させる。ここで使用される振動子13としては、図示は省略するが、外部機器と電気的に接続されたコイル部と、磁気回路部と、加振部とを含んで構成されるエキサイタが挙げられる。このエキサイタによれば、外部機器からの音の電気信号がコイル部へ入力されると、コイル部と磁気回路部との相互作用により、コイル部又は磁気回路部に振動が生じる。このコイル部又は磁気回路部の振動は加振部へ伝達され、加振部が振動を発生する。なお、振動子13には、振動子13を駆動する導電線(不図示)が付帯される。
【0016】
<ガラス板構成体>
ガラス振動板11を構成するガラス板構成体15は、第1主面15aおよび第2主面15bを有する。ここでは、ガラス板構成体15を単一のガラス板(単板ガラス)として例示しているが、一対のガラス板によって樹脂製の中間膜や液体などの中間層を挟持した合わせガラス等、他の形態でもよい。ガラス板構成体15の厚さは、1[mm]以上が好ましく、2[mm]以上がより好ましく、3[mm]以上が更に好ましい。これにより、ガラス板構成体15における強度を必要十分な強度にできる。
【0017】
<マウント部>
マウント部17は、主マウント部21と、延長部23とを有している。マウント部17は、アルミニウム又はアルミニウム合金、チタン合金、マグネシウム合金、ステンレス鋼等の金属材料、セラミックス、ガラス、樹脂材料、炭素繊維、およびそれらからなる複合材料等の素材で形成できる。樹脂材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等のアクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ウレタン、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、66ナイロン(PA66)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ABS樹脂等が挙げられ、成形性に優れた構成にできる。また、上記材料にガラス繊維などを混錬し、強度を向上させた材料でもよい。上記材料を用いることで、マウント部17に割れ等を生じず、十分な接続強度が得られる。
【0018】
主マウント部21は、ガラス板構成体15の平面視において円形状に形成されている。なお、ガラス板構成体15の平面視における主マウント部21の外縁形状は、円形状に限らず、多角形など任意の形状でもよい。
【0019】
主マウント部21は、ガラス板構成体15との固定側とは反対側に、ねじ孔25を有している。振動子13に設けられた接続部19は、ねじ軸27を有しており、このねじ軸27をガラス板構成体15に固定された主マウント部21のねじ孔25にねじ込むことにより、接続部19が主マウント部21に締結される(図2参照)。また、主マウント部21にねじ込まれた接続部19を緩めることにより、ガラス板構成体15から振動子13(この場合、振動子13と接続部19とが固定された部材)を取り外せるので、振動子13を容易に交換できる。なお、接続部19と主マウント部21とのねじ構造は、接続部19が凸状のねじ部を有し、それにねじ込まれる主マウント部21の凹状のねじ部、の組み合わせに限らず、接続部19が凹状のねじ部を有し、それにねじ込まれる主マウント部21の凸状のねじ部、を有してもよい。さらに、主マウント部21と接続部19との固定構造は、ねじ構造に限らず、例えば、リベット、キー、ピン、クリップ等による機械締結などでもよい。
【0020】
主マウント部21とガラス板構成体15との間には、接着層31が設けられている(図3参照)。この接着層31は、厚さが0.50[mm]以下であり、例えば、アクリル系、エポキシ系、シリコーン系、ウレタン系、あるいはフェノール系などの樹脂製の粘着テープ等が使用される。また、接着層31は、ガラス板構成体15の平面視における面積が50[mm]以上が好ましい。そして、主マウント部21は、接着層31によってガラス板構成体15の第1主面15aに密着された状態で接着固定されている。これにより、振動子13からの振動を良好にガラス板構成体15へ伝達でき、音響効果を高められる。
【0021】
延長部23は、帯板状に形成されており、一端23aが主マウント部21に接続される。主マウント部21と延長部23とは、別部材とすることで、それぞれの部材の形状や構造を簡略にでき、容易に製作できる。なお、延長部23は、主マウント部21と一体に形成された構造でもよい。ここでは、延長部23が主マウント部21と別部材の場合を例示している。
【0022】
主マウント部21には、その周面に、径方向外方へ突出する突起部22を有しており、延長部23は、その一端23aが突起部22に重なるように配置されている(図3参照)。そして、延長部23は、その一端23aが、主マウント部21の突起部22にネジ24によって締結固定されて接続されている。このように、延長部23は、その一端23aが主マウント部21と機械的に締結されている。一端23aが主マウント部21に接続された延長部23は、主マウント部21の外周縁からガラス板構成体15の第1主面15aに沿って、第1主面15aから離れるようにして側方へ延在されている。
【0023】
なお、主マウント部21と延長部23との接続構造としては、ネジ24による締結のほか、ボルト・ナット、リベット、キー、ピン、クリップ等による機械締結、溶接、挿し込みによる係合などの手段等がある。また、主マウント部21と延長部23とは、上記の機械的係合手段と併せて、粘着剤や接着剤でさらに固定してもよい。この場合、延長部23を主マウント部21の突起部22に機械的係合手段で接続する際に、粘着テープ等の粘着剤や接着剤によって仮固定すると好ましい。
【0024】
<ホルダ>
ホルダ16は、ガラス板構成体15の端辺に沿って配置されており、このホルダ16にマウント部17の延長部23の他端23bが接続される。ガラス板構成体15は、例えば、サイドウインドウにおける車両用摺動窓として用いられる場合、車体に組付けられるとホルダ16がガラス板構成体15の下端に取り付けられ、昇降機構(図示略)によって昇降される。つまり、ホルダ16は、例えば、昇降機構のホルダが利用できる。図1に示すように、ホルダ16は、ガラス板構成体15の平面視において、ガラス板構成体15の端辺よりも外側に位置して、ガラス板構成体15を摺動可能に機械的に接続するための連結部35を有する。連結部35は板状に形成されており、昇降機構のロッド(図示略)を接続させるための連結孔37を有している。そして、ホルダ16の連結部35に昇降機構のロッドを機械的に接続することにより、容易にガラス板構成体15を摺動可能にできる。
【0025】
ホルダ16は、第1板部41と、第2板部42と、第3板部43とを有している(図2及び図3参照)。第1板部41は、ガラス板構成体15の第1主面15aとの対向位置に配置される。第2板部42は、ガラス板構成体15の下端の端面15cとの対向位置に配置される。第3板部43は、ガラス板構成体15の第2主面15bとの対向位置に配置される。このように、第1板部41と、第2板部42と、第3板部43とを有するホルダ16は、ガラス板構成体15の厚さ方向に沿う断面視において、U字状に形成されており、ガラス板構成体15に対して、その下縁に嵌め込まれて取り付けられている。これにより、ガラス板構成体15は、ホルダ16の第1板部41と第3板部43とによって挟持されて把持される。
【0026】
また、ホルダ16は、第1板部41におけるガラス板構成体15の第1主面15aとの対向側及び第3板部43におけるガラス板構成体15の第2主面15bとの対向側に、樹脂部45を有している。そして、ガラス板構成体15は、樹脂部45を介してホルダ16の第1板部41及び第3板部43によって把持されている。この樹脂部45は、ゴムや接着剤などの材料を含む樹脂層であり、損失係数tanδは、0.01以上が好ましく、25[℃]におけるせん断貯蔵弾性率は、1.0×10[Pa]以下が好ましい。さらに、樹脂部45は、-40[℃]~90[℃]での線膨張係数は、1.0×10-5[/℃]以上が好ましい。上記樹脂部45を設けることで、スペーサとしての役割を果たし、第1板部41及び第3板部42と、ガラス板構成体15をゼロ距離で接触させることなく、ガラス板構成体15にホルダ16を保持固定できる。さらに、樹脂部45は、ガラス板構成体15と第1板部41及び第3板部42と、の線膨張差を緩和し、これら材料の割れやホルダ16の脱落リスクを低減できる。
【0027】
ホルダ16には、第1板部41に延長部23の他端23bが重なるように配置されている。そして、延長部23は、その他端23bが、第1板部41にネジ47によって締結固定されて接続されている。このように、延長部23は、その他端23bがホルダ16と機械的に締結されている。なお、ホルダ16と延長部23との接続構造としては、ネジ47による締結のほか、ボルト・ナット、リベット、キー、ピン、クリップ等による機械締結、溶接、挿し込みによる係合などの手段等がある。また、ホルダ16と延長部23とは、上記の機械的係合手段と併せて、粘着剤や接着剤でさらに固定してもよい。この場合、延長部23をホルダ16の第1板部41に機械的係合手段で接続する際に、粘着テープ等の粘着剤や接着剤によって仮固定するのが好ましい。
【0028】
なお、ホルダ16としては、板状の連結部35を有するものに限らず、側面に連結部を有するものでもよい。また、マウント部17の延長部23が接続されるホルダとしては、昇降機構用のホルダ16を用いずにマウント支持用のホルダを設けてもよい。
【0029】
図5は、マウント支持用のホルダ14を備えた振動子付きガラス振動板100の概略平面図である。
図5に示す振動子付きガラス振動板100は、昇降機構のホルダ16とは別に(異なる位置に)、マウント支持用のホルダ14を備えている。このように、ガラス板構成体15にマウント支持用のホルダ14を設け、このホルダ14にマウント部17の延長部23の端部を接続してもよい。この場合、ガラス板構成体15の第1主面15aの任意の位置にマウント部17を配置できるので、ガラス振動板11として、所望の音響を与える位置の配置自由度が高められる。また、ホルダ14は、昇降機構用のホルダ16の連結部35を除いた部品を使用できるので、ホルダ16を改造して、ホルダ14を容易に製造できる利点もある。
【0030】
<延長部の構成>
マウント部17を構成する板状の延長部23は、一端23aが主マウント部21に接続される。さらに、延長部23は、主マウント部21とは反対側の他端23bが、ガラス板構成体15の平面視において、ホルダ16と重複され、この他端23bがホルダ16に接続される。これにより、振動子13に固定される接続部19が取り付けられるマウント部17の主マウント部21は、延長部23によってホルダ16に支持される。また、この主マウント部21とホルダ16とに接続される延長部23は、ガラス板構成体15から離間して配置されている(図2及び図3参照)。つまり、ガラス板構成体15と延長部23との間の媒体は空気である。
【0031】
なお、延長部23は、ガラス板構成体15に対して一部が離間して配置された構造でもよく、また、ガラス板構成体15と延長部23との間には、例えば、スポンジやウレタンフォームなどの気泡構造体が配置されてもよい。即ち、延長部23は、延長部23からガラス板構成体15への振動伝達を抑制できるように、延長部23とガラス板構成体15との間の媒体(空気や気泡構造体等)を与えるとよい。また、一端23aが主マウント部21に接続された延長部23は、その他端23bが、ガラス板構成体15の平面視において、ホルダ16を超えてホルダ16から突出していてもよい。つまり、図4において、延長部23の他端23bが、ホルダ16のうちマウント部17側とは反対側の端部から突出してもよい。
【0032】
主マウント部21とホルダ16とに接続される延長部23は、ワイヤ、繊維、金属メッシュ等、の構造を用いた場合、延長部23自体の変形が生じ位置ずれが生じるおそれがあり、万一マウント部21が落下した場合に、重量保持ができずに、延長部23が断線して分離してしまうおそれがある。また、延長部23は、丸棒、中空棒などの形状を有して両端(23a,23b)を締結することもできるが、主マウント部21からの振動がホルダ16に伝搬されるため、延長部23自体が自励振動してしまい音響性能を損なうおそれがある。そこで、減衰係数ηが高い構造である必要がある。具体的には、減衰係数ηが0.01以上である。しかも、延長部23は、ガラス板構成体15から離間して配置されている。したがって、振動子13からの振動が、マウント部17の主マウント部21からホルダ16へ伝達されるのを抑制できる。これにより、振動子13からの振動を円滑にガラス板構成体15へ伝達させて音響効果を高められ、しかも、延長部23自体の振動による異音の発生も抑えられる。なお、延長部23の減衰係数ηは、0.05以上が好ましく、0.10以上がより好ましく、0.30以上がさらに好ましく、0.50以上が特に好ましい。この延長部23の減衰係数ηの測定法としては、例えば、共振周波数付近で測定する共振法である、減衰率法、半値幅法、機械インピーダンス法などがある。
【0033】
図6は、延長部23の断面図である。図7は、他の構造の延長部23の断面図である。
図6に示すように、延長部23は、コア層51と、このコア層51より高い剛性を有する被覆部61とからなる複合構造を有している。コア層51は、第1主面53と、第2主面55とを有する板状に形成されている。被覆部61は、第1被覆部63と、第2被覆部65とを有している。第1被覆部63は、コア層51の第1主面53に重ね合わされ、コア層51の第1主面53の少なくとも一部を被覆し、第2被覆部65は、コア層51の第2主面55に重ね合わされ、コア層51の第2主面55の少なくとも一部を被覆している。また、第1被覆部63は、コア層51の第1主面53の全部を被覆し、第2被覆部65は、コア層51の第2主面55の全部を被覆すると好ましい。コア層51は、第1被覆部63及び第2被覆部65に対して接着または互いに滑ることなく密着されている。つまり、図6に示すように、延長部23は、粘弾性材料のコア層51からなる制振材の両面に、剛性の高い第1被覆部63及び第2被覆部65を重ね合わせた拘束型の制振部材である。
【0034】
図6における延長部23は、第1被覆部63と第2被覆部65とは、互いに接しない構造を有するとよい。これは、第1被覆部63と第2被覆部65とが、互いに接する部分があると、延長部23における制振効果が低下してしまい、音響効果を劣化させてしまう。また、コア層51は、連続して第1被覆部63と第2被覆部65との間に挟持されるとよいが、コア層51は、延長部23の長手方向において、断続的に配置されてもよく、複数のコア層51の領域が離間して配置されてもよい。この場合、隣り合って離間する複数のコア層51間の空間は空気層でもよい。
【0035】
なお、延長部23としては、図7に示すように、粘弾性材料のコア層51の片面である第1主面53に剛性の高い第1被覆部63からなる被覆部61を重ね合わせた非拘束型の制振部材でもよい。さらに、延長部23としては、コア層51の片面である第2主面55に剛性の高い第2被覆部65からなる被覆部61を重ね合わせた非拘束型の制振部材でもよい。
【0036】
延長部23は、コア層51が樹脂であり、被覆部61は、金属及び硬質プラスチックの少なくとも1つを有する。これにより、樹脂からなるコア層51によって、延長部23における振動の減衰効率が高められ、さらに、金属及び硬質プラスチックの少なくとも1つを有する被覆部61によって、延長部23の強度が高められて主マウント部21のホルダ16への支持強度が高められる。
【0037】
延長部23は、コア層51が、ガラス板構成体15の平面視において、主マウント部21側の一端23aから主マウント部21側とは反対側の他端23bまで連続して配置される。これにより、延長部23における振動の減衰効率が高められる。なお、図7に示す延長部23においても、コア層51は、延長部23の長手方向において、断続的に配置されてもよい。
【0038】
コア層51の樹脂材料としては、例えば、ウレタン、エポキシ、シリコーン等が挙げられる。コア層51の樹脂材料の動的粘弾性測定から求められる損失係数tanδは、0.1以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.5以上がさらにより好ましい。なお、損失係数tanδは、動的粘弾性測定装置として、DVA(登録商標)-200(アイティー計測制御株式会社)により測定できる。
【0039】
被覆部61の金属材料としては、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金、ステンレス鋼、チタン合金等が挙げられ、表面への塗装により撥水効果や防錆効果が高められる。また、被覆部61の硬質プラスチック材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等のアクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ウレタン、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、66ナイロン(PA66)、ポリフェニレンサルファイド (PPS)、ABS樹脂等のプラスチック、あるいは上記プラスチックに強化繊維を含有させた繊維強化プラスチック等が挙げられる。被覆部61の硬質プラスチック材料のガラス転移点としては、50[℃]以上が好ましく、60[℃]以上がより好ましく、80[℃]以上がさらに好ましい。
【0040】
延長部23は、短手方向の幅が、0.1[mm]~50[mm]の範囲であればよい。これにより、延長部23による主マウント部21の支持強度を十分に確保できる。なお、延長部23の短手方向の幅は、30[mm]以下が好ましく、10[mm]以下がより好ましい。また、延長部23の短手方向の幅は、振動子13が組付けられて重量が増加する主マウント部21を支持するために、1[mm]以上が好ましく、3[mm]以上がより好ましく、5[mm]以上がさらに好ましい。
【0041】
また、延長部23は、厚さが、20[mm]以下であればよい。これにより、主マウント部21からホルダ16への延長部23を介した振動の伝達を良好に抑制できる。なお、延長部23の厚さは、10[mm]以下が好ましく、5[mm]以下がより好ましく、1[mm]以下がさらに好ましい。また、延長部23の厚さは、振動子13が組付けられて重量が増加する主マウント部21を支持するために、0.1[mm]以上が好ましく、0.2[mm]以上がより好ましく、0.5[mm]以上がさらに好ましい。
【0042】
さらに、延長部は、ガラス板構成体15の平面視における短手方向の幅をWとし、ガラス板構成体15の第1主面15aの法線方向に相当する、厚さをtとするとき、剛体変形しうる適切なアスペクト比の範囲内であれば、せん断力に対して曲げ変形し、振動エネルギーを適切に減衰することができる。アスペクト比(W/t)は、0.1~50であればよく、0.5~30が好ましく、1~20がより好ましい。
【0043】
また、延長部23のヤング率は、1.0×10[Pa]~1.0×1012[Pa]であればよく、1.0×108[Pa]~5.0×1011[Pa]が好ましく、1.0×10[Pa]~1.0×1011[Pa]がより好ましい。
【0044】
また、ガラス板構成体15の平面視において、主マウント部21の中心からホルダ16までの最短距離D(図4参照)は、10[mm]以上であればよい。主マウント部21がホルダ16に近すぎると、主マウント部21に組付けた振動子13の振動が延長部23を介してホルダ16に伝達し易くなるため、主マウント部21はホルダ16から離れている方が好ましい。本構成例では、主マウント部21の中心からホルダ16までの最短距離Dが10[mm]以上であるので、振動子13からの振動が、マウント部17の主マウント部21からホルダ16へ伝達されるのを良好に抑制できる。これにより、マウント部17とガラス板構成体15との間における振動の伝達損失が抑えられ、振動子13からの振動を良好にガラス板構成体15へ伝達させて音響効果を高められる。なお、主マウント部21の中心からホルダ16までの最短距離Dは、30[mm]以上が好ましく、50[mm]以上がより好ましい。なお、最短距離Dの上限はとくに制限されないが、マウント部17の取付けスペースの関係から300[mm]以下が例示できる。
【0045】
このように、本構成例のガラス振動板11によれば、マウント部17の主マウント部21が延長部23によってホルダ16に接続されて支持されている。したがって、振動子13に固定される接続部19が取り付けられるマウント部17の主マウント部21をガラス板構成体15へ強固に固定でき、ガラス板構成体15からの振動子13の脱落を抑えられる。しかも、主マウント部21とホルダ16とを接続する延長部23は、減衰係数ηが0.01以上であり、ガラス板構成体15から少なくとも一部が離間して配置されるとよく、ガラス板構成体15から全部が離間して配置されると好ましい。したがって、振動子13からの振動が、マウント部17の主マウント部21からホルダ16へ伝達されるのを抑制でき、しかも、延長部23自体の振動による異音の発生も抑えられる。
【0046】
また、延長部23は、主マウント部21と別体であり、主マウント部21側の一端23aが、主マウント部21と機械的に締結され、ホルダ16側の他端が、ホルダ16と機械的に締結される。したがって、延長部23を、容易に後付けできる。
【0047】
なお、本構成例のガラス振動板11は、自動車等の車両のサイドウインドウに限らず、ウィンドシールド、リアウインドウ、ルーフグレージング、フロントクォーターウインドウ、リアクォーターウインドウなどに適用できる。これにより、ガラス振動板11と既存スピーカとを組み合わせた立体音響システム、車外からの騒音に逆位相の音波を当てて打ち消すノイズキャンセリングシステム、さらには、車内音楽反響を打ち消す反射制御システムに対し、大きく寄与できる。また、車両用窓以外にも、建築物用窓、構造部材、化粧板にも適用でき、さらに、フラットパネルスピーカーの振動板部材としても使用できる。
【0048】
<ガラス振動板の製造方法>
次に、本構成例に係るガラス振動板11の製造方法について説明する。
図8A及び図8Bは、ガラス振動板11の製造工程を説明するガラス振動板11の下縁部分における厚さ方向に沿う断面図である。
【0049】
(準備工程)
まず、ガラス板構成体15と、主マウント部21と、ホルダ16と、延長部23と、を準備する。このとき、延長部23は、コア層51と被覆部61とを一体化させておく。具体的には、コア層51の第1主面53に被覆部61を構成する第1被覆部63を重ね合わせ、コア層51の第2主面55に被覆部61を構成する第2被覆部65を重ね合わせておく。なお、延長部23において、第2被覆部65の有無は任意に決めてよい。
【0050】
(部品取付工程)
図8Aに示すように、ガラス板構成体15に、主マウント部21及びホルダ16を取り付ける。例えば、ガラス板構成体15の第1主面15aに、接着層31となる接着剤によって、突起部22をホルダ16側へ向けながら主マウント部21を接着固定する。また、ガラス板構成体15の下縁に、U字状のホルダ16を嵌め込んで取り付ける。
【0051】
(延長部架橋工程)
図8Bに示すように、延長部23を、主マウント部21とホルダ16との間に、ガラス板構成体15に接触させずに繋げて固定する。具体的には、延長部23の一端23aを主マウント部21の突起部22に重ね合わせるとともに、延長部23の他端23bをホルダ16の第1板部41に重ね合わせる。そして、延長部23の一端23aを、ネジ24によって突起部22に締結固定するとともに、延長部23の他端23bを、ネジ47によってホルダ16の第1板部41に締結固定する。これにより、延長部23の一端23aを主マウント部21に接続し、延長部23の他端23bをホルダ16に接続する。これにより、延長部23は、ガラス板構成体15から離間した状態で、主マウント部21とホルダ16とに架け渡される。
【0052】
このように、上記の製造方法によれば、主マウント部21及びホルダ16がガラス板構成体15に取り付けられ、主マウント部21が延長部23によってホルダ16に支持されたガラス振動板11を製造できる。しかも、延長部23を後付けできるので、作業性を向上できる。
【0053】
その後、マウント部17に接続部19を固定して振動子13を取り付ければ、振動子13が安定して取り付けられ、ガラス振動板11から発せられる音の品質低下や振動子13の脱落が抑制された振動子付きガラス振動板100が得られる。
【0054】
図9は、他の接続構造によって主マウント部21と延長部23とが接続されたガラス振動板11の下縁部分における厚さ方向に沿う断面図である。
図9に示す構成例のガラス振動板11では、主マウント部21の壁面に、溝部22aを有する突起部22が形成されている。そして、延長部23の一端23aが、主マウント部21の溝部22aに挿し込まれ、溝部22aの内部に配置される。これにより、延長部23は、その一端23aが主マウント部21に挿し込まれて接続される。なお、延長部23の他端23bは、ネジ47によってホルダ16の第1板部41に締結固定される。これにより、延長部23は、一端23aが主マウント部21の溝部22aから抜け出すことなく、主マウント部21とホルダ16とに繋げられる。
【0055】
この挿し込み構造のガラス振動板11を製造する場合、延長部架橋工程において、延長部23の一端23aを主マウント部21の突起部22の溝部22aに挿し込むとともに、延長部23の他端23bをホルダ16に重ね合わせる。この状態において、延長部23の他端23bを、ネジ47によってホルダ16の第1板部41に締結固定する。これにより、延長部23の一端23aを主マウント部21に接続し、延長部23の他端23bをホルダ16に接続できるとともに、延長部23は、ガラス板構成体15から離間した状態で、主マウント部21とホルダ16とに架け渡される。このように、延長部23の一端23aを溝部22aに挿し込む構造であれば、延長部23を主マウント部21へ容易に接続できる。なお、より安定して固定するために、延長部23の一端23aにも(図8Bに示す)ネジ24を締結する構造を有してもよい。
【0056】
なお、延長部23は、少なくとも一部が主マウント部21と一体形成されてもよい。
図10は、延長部23の一部が主マウント部21に一体に形成されたガラス振動板11の下縁部分における厚さ方向に沿う断面図である。
図10に示す構成例のガラス振動板11では、延長部23の第2被覆部65が主マウント部21と一体形成されており、この第2被覆部65に、コア層51及び第1被覆部63が順に積層されて延長部23が構成される。そして、この延長部23は、その他端23bがネジ47によってホルダ16の第1板部41に締結固定され、主マウント部21とホルダ16とに繋げられる。このように、延長部23の一部である第2被覆部65を主マウント部21に一体に形成することで、延長部23の主マウント部21への接続構造を簡素にできる。
【0057】
次に、この構成例のガラス振動板11の製造方法について説明する。
図11A及び図11Bは、延長部23の一部が主マウント部21に一体に形成されたガラス振動板11の製造工程を説明するガラス振動板11の下縁部分における厚さ方向に沿う断面図である。
【0058】
(準備工程)
まず、ガラス板構成体15と、延長部23の第2被覆部65が一体に形成された主マウント部21と、ホルダ16と、を準備する。
【0059】
(部品取付工程)
次に、図11Aに示すように、ガラス板構成体15に、主マウント部21及びホルダ16を取り付ける。このとき、主マウント部21に一体に形成された延長部23の第2被覆部65の端部を、ホルダ16の第1板部41に重なるように主マウント部21をガラス板構成体15に固定する。
【0060】
(延長部架橋工程)
さらに、図11Bに示すように、第2被覆部65の上面からなる主面に、コア層51に第1被覆部63を積層させた延長部23の他の部分となる積層体を、コア層51を第2被覆部65へ向けて重ね合わせる。すると、主マウント部21には、コア層51と被覆部61とからなる延長部23が接続され、この延長部23が、ガラス板構成体15から離間した状態で、主マウント部21とホルダ16とに架け渡される。そして、延長部23の他端23bを、ネジ47によってホルダ16の第1板部41に締結固定する。
【0061】
このように、上記の製造方法によれば、主マウント部21及びホルダ16がガラス板構成体15に取り付けられ、主マウント部21が延長部23によってホルダ16に支持されたガラス振動板11を製造できる。しかも、主マウント部21に一体に形成されて延伸する第2被覆部65の主面に、コア層51と第1被覆部63を積層させた積層体を重ね合わせて延長部23とし、この延長部23をホルダ16に繋げて固定するので、延長部23と主マウント部21との接続作業を省略でき、作業性を向上できる。
【0062】
その後、マウント部17に接続部19を固定して振動子13を取り付ければ、振動子13が安定して取り付けられ、ガラス振動板11から発せられる音の品質低下や振動子13の脱落が抑制された振動子付きガラス振動板100が得られる。
【0063】
なお、主マウント部21に被覆部61を構成する第1被覆部63及び第2被覆部65を所定間隔で一体形成し、これらの第1被覆部63と第2被覆部65との間にコア層51となる樹脂を充填して延長部23としてもよい。
【0064】
また、上記したガラス振動板11の延長部23による主マウント部21の支持構造は一例であって、種々の構成に変更できる。
以下、延長部23による主マウント部21の支持構造の変形例について説明する。なお、以下の説明において、同一又は対応する部位又は部材には、同一又は対応する符号を付与することにより、重複する説明を省略する。また、変形例においては、主マウント部21と別体の延長部23を備える場合を例示して説明する。
【0065】
(変形例1)
図12は、変形例1に係るガラス振動板11の下縁部分の拡大図である。
図12に示すように、変形例1に係るガラス振動板11では、マウント部17の延長部23は、主マウント部21と反対側の端部である他端23bが、ホルダ16におけるガラス板構成体15の端辺よりも外側に突設された連結部35にネジ47によって締結されて接続される。この変形例1では、延長部23の他端23bは、ホルダ16の連結部35に昇降機構のロッドとともにネジ47によって共締めでき、接続作業を簡略にできる。
【0066】
(変形例2)
図13は、変形例2に係るガラス振動板11の下縁部分の拡大図である。
図13に示すように、変形例2に係るガラス振動板11では、マウント部17が、2つの延長部23を有し、これらの2つの延長部23が1つのホルダ16に接続される。それぞれの延長部23は、その一端23aが主マウント部21の突起部22にネジ24によって締結されて接続されている。一方の延長部23は、その他端23bがホルダ16の第1板部41にネジ47によって締結されて接続され、他方の延長部23は、その他端23bがホルダ16の連結部35にネジ47によって締結されて接続される。この変形例2では、2つの延長部23によって主マウント部21をホルダ16に支持させることにより、高い支持力で主マウント部21を固定できる。なお、延長部23の数は2つに限らず、3つ以上の延長部23を主マウント部21とホルダ16とに接続してもよく、その場合、さらに高い支持力で主マウント部21をホルダ16に固定できる。
【0067】
(変形例3)
図14は、変形例3に係るガラス振動板11の下縁部分の拡大図である。
図14に示すように、変形例3に係るガラス振動板11では、マウント部17が、2つの延長部23を有している。また、ガラス板構成体15には、昇降機構用のホルダ16及びマウント支持用のホルダ14が取り付けられている。主マウント部21は、ホルダ14とホルダ16との間に配置されており、2つの延長部23が、2つのホルダ14,16にそれぞれ接続される。それぞれの延長部23は、その一端23aが主マウント部21の突起部22にネジ24によって締結されて接続されている。一方の延長部23は、その他端23bが昇降機構用のホルダ16の第1板部41にネジ47によって締結されて接続され、他方の延長部23は、その他端23bがマウント支持用のホルダ14にネジ47によって締結されて接続される。この変形例3の場合も、2つの延長部23によって主マウント部21をホルダ14,16に支持させることにより、高い支持力で主マウント部21を支持できる。なお、延長部23及びホルダ14,16の数は、2つに限らず、それぞれ3つ以上備えていてもよく、その場合、さらに高い支持力で主マウント部21をホルダ14,16に固定できる。
【0068】
(変形例4)
図15は、変形例4に係るガラス振動板11の下縁部分における厚さ方向に沿う断面図である。図16は、変形例4の他の構造例を示すガラス振動板11の下縁部分における厚さ方向に沿う断面図である。
【0069】
図15に示すように、変形例4に係るガラス振動板11では、延長部23は、屈曲部23cを有している。屈曲部23cは、延長部23の長手方向の略中央部分に設けられている。延長部23は、屈曲部23cにおいて、厚さ方向に屈曲され、屈曲による突出側を上方に向けて配置されている。延長部23は、一端23aが主マウント部21の突起部22にネジ24によって締結されて接続され、他端23bがホルダ16の第1板部41にネジ47によって締結されて接続されている。延長部23に屈曲部23cを設けることにより、例えば、延長部23を主マウント部21とホルダ16とに架橋させる際に、周辺部材等への干渉を容易に回避しつつ延長部23を配置できる。例えば、ホルダ16の第1板部41及び第3板部43の縁部にフランジ部41a,43aを有する場合には、屈曲部23cが第1板部41のフランジ部41aに対応する位置に配置されるように延長部23を架橋する。これにより、延長部23は、屈曲部23cにおいて、フランジ部41aを越えるように配置され、ホルダ16のフランジ部41aへの干渉を容易に回避しつつ配置できる。
【0070】
また、図16に示すように、延長部23を、その屈曲部23cにおいてもホルダ16の第1板部41へネジ47によって固定すれば、延長部23によって主マウント部21をガラス板構成体15へ押し付ける付勢力を生じさせられる。これにより、延長部23による主マウント部21の支持力が高められる。この場合、延長部23としては、被覆部61がバネ鋼材等であるのが好ましい。
【0071】
なお、変形例4に係るガラス振動板11では、厚さ方向へ屈曲する屈曲部23cを有する延長部23を備える場合を例示したが、延長部23の屈曲部23cは、厚さ方向へ屈曲させる場合に限らず、面方向に屈曲させてもよい。また、屈曲部23cは、延長部23における複数箇所に形成してもよい。
【0072】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0073】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) ガラス板構成体と、
前記ガラス板構成体に固定され、前記ガラス板構成体を振動させる振動子が取り付けられるマウント部と、
前記ガラス板構成体の端辺に沿って、前記ガラス板構成体の第1主面と対向するホルダと、を有し、
前記マウント部は、前記振動子が取り付けられる接続部を含む主マウント部と、前記主マウント部と前記ホルダとを接続する延長部と、を含み、
前記延長部は、減衰係数ηが0.01以上であり、前記ガラス板構成体から少なくとも一部が離間して配置される、ガラス振動板。
この構成のガラス振動板によれば、マウント部の主マウント部が延長部によってホルダに接続されて支持される。したがって、振動子に固定される接続部が取り付けられるマウント部をガラス板構成体へ強固に固定でき、ガラス板構成体からの振動子の脱落を抑えられる。しかも、主マウント部とホルダとを接続する延長部は、減衰係数ηが0.01以上であり、ガラス板構成体から少なくとも一部が離間して配置される。したがって、振動子からの振動が、主マウント部からホルダへ伝達されるのを抑制できる。これにより、振動子からの振動を円滑にガラス板構成体へ伝達させて音響効果を高められ、しかも、延長部自体の振動による異音の発生も抑えられる。
【0074】
(2) 前記延長部は、コア層と、前記コア層の少なくとも一部を覆うとともに前記コア層より高い剛性を有する被覆部と、を有する、(1)に記載のガラス振動板。
このガラス振動板によれば、延長部の高い強度を確保しつつ、良好な振動の減衰効果が得られる。
【0075】
(3) 前記コア層は、前記ガラス板構成体の平面視において、前記主マウント部側の端部から前記主マウント部側とは反対側の端部まで連続して配置される、(2)に記載のガラス振動板。
このガラス振動板によれば、主マウント部側の端部から主マウント部側とは反対側の端部まで連続して配置されるコア層によって、延長部における振動の減衰効率が高められる。
【0076】
(4) 前記コア層は樹脂である、(2)又は(3)に記載のガラス振動板。
このガラス振動板によれば、樹脂からなるコア層によって、延長部における振動の減衰効率が高められる。
【0077】
(5) 前記被覆部は、金属及び硬質プラスチックの少なくとも1つを有する、(2)から(4)のいずれか1つに記載のガラス振動板。
このガラス振動板によれば、金属及び硬質プラスチックの少なくとも1つを有する被覆部によって、延長部の強度が高められ、主マウント部のホルダへの支持強度が高められる。
【0078】
(6) 前記延長部は板状であって、
前記コア層は、第1主面と第2主面とを有し、
前記被覆部は、前記第1主面側に配置される第1被覆部を有する、(2)から(5)のいずれか1つに記載のガラス振動板。
このガラス振動板によれば、コア層の第1主面に第1被覆部が配置された板状の延長部によって、主マウント部のホルダへの高い支持強度を確保しつつ、良好な振動の減衰効果が得られる。
【0079】
(7) 前記被覆部は、前記第2主面側に配置される第2被覆部を有する、(6)に記載のガラス振動板。
このガラス振動板によれば、コア層の第2主面に第2被覆部がさらに配置されることにより、延長部の強度がより高められる。これにより、延長部による主マウント部のホルダへの高い支持強度を確保しつつ、良好な振動の減衰効果が得られる。
【0080】
(8) 前記延長部は、前記ガラス板構成体の平面視における短手方向の幅をWとし、前記ガラス板構成体の前記第1主面の法線方向に相当する厚さをtとするとき、
アスペクト比(W/t)は、0.1~50である、(1)から(7)のいずれか1つに記載のガラス振動板。
このガラス振動板によれば、せん断力に対して曲げ変形し、振動エネルギーを適切に減衰できる。
【0081】
(9) 前記延長部は、少なくとも1箇所の屈曲部を有する、(1)から(8)のいずれか1つに記載のガラス振動板。
このガラス振動板によれば、延長部が屈曲部を有するので、周辺部材等への干渉を容易に回避しつつ延長部を配置できる。
【0082】
(10) 前記ホルダは、前記ガラス板構成体の平面視において、前記ガラス板構成体の端辺よりも外側に連結部を有し、
前記延長部は、前記連結部と接続される、(1)から(9)のいずれか1つに記載のガラス振動板。
このガラス振動板によれば、ホルダにおけるガラス板構成体の端辺よりも外側の連結部に接続した延長部によって主マウント部を良好に支持できる。
【0083】
(11) 前記延長部は、前記ガラス板構成体から離間して配置され、
前記ガラス板構成体と前記延長部との間の媒体は空気である、(1)から(10)のいずれか1つに記載のガラス振動板。
このガラス振動板によれば、延長部がガラス板構成体から離間して配置され、ガラス板構成体と延長部との間の媒体が空気であるので、延長部からガラス板構成体への振動の伝達を抑制できる。これにより、振動子からの振動を円滑にガラス板構成体へ伝達させて音響効果を高められる。
【0084】
(12) 前記延長部は、前記主マウント部側の端部が、前記主マウント部と機械的に締結されている、(1)から(11)のいずれか1つに記載のガラス振動板。
このガラス振動板によれば、主マウント部に対して延長部を後付けできる。
【0085】
(13) 前記延長部は、前記ガラス板構成体の平面視において、前記主マウント部から突出する突起部に配置される、(12)に記載のガラス振動板。
このガラス振動板によれば、主マウント部の突起部に延長部を配置させて容易に接続できる。
【0086】
(14) 前記主マウント部は、壁面に溝部を有し、
前記延長部は、前記主マウント部側の端部が、前記溝部の内部に配置される、(12)に記載のガラス振動板。
このガラス振動板によれば、主マウント部の溝部の内部に延長部の主マウント部側の端部を挿し込んで配置させて容易に接続できる。
【0087】
(15) 前記延長部の少なくとも一部は、前記主マウント部と一体に形成されている、(1)から(11)のいずれか1つに記載ガラス振動板。
このガラス振動板によれば、主マウント部への接続構造を簡素にできる。
【0088】
(16) 前記延長部は、前記主マウント部とは反対側の端部が、前記ガラス板構成体の平面視において、前記ホルダと重複する、(1)から(15)のいずれか1つに記載のガラス振動板。
このガラス振動板によれば、ガラス板構成体の平面視において、主マウント部と反対側の端部がホルダと重複した延長部によって主マウント部がホルダに支持される。
【0089】
(17) 複数の前記延長部を備え、それぞれの前記延長部が1つの前記ホルダに接続される、(1)から(16)のいずれか1つに記載のガラス振動板。
このガラス振動板によれば、1つのホルダに接続された複数の延長部によって、主マウント部がホルダに高い支持力で支持される。
【0090】
(18) 複数の前記延長部及び複数の前記ホルダを備え、複数の前記延長部が複数の前記ホルダにそれぞれ接続される、(1)から(16)のいずれか1つに記載のガラス振動板。
このガラス振動板によれば、複数のホルダにそれぞれ接続された複数の延長部によって、主マウント部がホルダに高い支持力で支持される。
【0091】
(19) 前記ガラス板構成体は、車両用摺動窓である、(1)から(18)のいずれか1つに記載のガラス振動板。
このガラス振動板によれば、ガラス板構成体のマウント部に振動子を取り付け、このガラス板構成体を車両用摺動窓として車両に組付けることで、車室内にガラス板構成体から発生する音響を供給できる。
【0092】
(20) (1)から(19)のいずれか1つに記載のガラス振動板と、前記マウント部の前記接続部に接続された前記振動子を有する、振動子付きガラス振動板。
この振動子付きガラス振動板によれば、ガラス板構成体に固定されたマウント部に接続部を固定して振動子をマウント部に取り付けることにより、ガラス振動板を、振動子を備えた振動子付きガラス振動板にできる。
【0093】
(21) ガラス板構成体と、前記ガラス板構成体を振動させる振動子が取り付けられる主マウント部と、前記ガラス板構成体に固定されるホルダと、前記主マウント部と前記ホルダとを繋ぐ延長部と、を備えるガラス振動板の製造方法であって、
前記ガラス板構成体に、前記主マウント部及び前記ホルダを取り付け、
コア層と、前記コア層を覆うとともに前記コア層より高い剛性を有する被覆部と、を有する前記延長部を、前記主マウント部と前記ホルダとの間に、前記ガラス板構成体に接触させずに繋げて固定する、ガラス振動板の製造方法。
このガラス振動板の製造方法によれば、主マウント部及びホルダがガラス板構成体に取り付けられ、主マウント部が延長部によってホルダに支持されたガラス振動板を製造できる。しかも、主マウント部及びホルダをガラス板構成体に取り付けた後に、延長部を主マウント部とホルダとの間に繋げて固定できる。つまり、延長部を後付けでき、作業性を向上できる。
そして、製造されたガラス振動板は、主マウント部が延長部によってホルダに接続されるので、振動子に固定される接続部が取り付けられるマウント部を強固にガラス板構成体へ支持でき、ガラス板構成体からの振動子の脱落が抑えられる。
また、コア層と、コア層を覆うとともにコア層より高い剛性を有する被覆部を有する延長部を、主マウント部とホルダとの間に、ガラス板構成体に接触させずに繋げて固定するので、延長部の高い強度を確保しつつ、振動子からの振動がマウント部の主マウント部からホルダへ伝達されるのを抑制できる。これにより、振動子からの振動を円滑にガラス板構成体へ伝達させて音響効果を高められる。
【0094】
(22) ガラス板構成体と、前記ガラス板構成体を振動させる振動子が取り付けられ、外側に板状体で延伸する被覆部が一体化されている主マウント部と、前記ガラス板構成体に固定されるホルダと、を備えるガラス振動板の製造方法であって、
前記ガラス板構成体に、前記主マウント部及び前記ホルダを取り付け、
前記被覆部の主面に前記被覆部よりも低い剛性を有するコア層を積層させた部分を含む延長部を前記ホルダに、前記ガラス板構成体に接触させずに繋げて固定する、ガラス振動板の製造方法。
このガラス振動板の製造方法によれば、主マウント部及びホルダがガラス板構成体に取り付けられ、主マウント部が延長部によってホルダに接続されたガラス振動板を製造できる。しかも、主マウント部に一体に形成されて延伸する被覆部の主面にコア層を積層させた部分を含む延長部をホルダに繋げて固定するので、延長部と主マウント部との接続作業を省略でき、作業性を向上できる。
そして、製造されたガラス振動板は、主マウント部が延長部によってホルダに接続されるので、振動子に固定される接続部が取り付けられるマウント部を強固にガラス板構成体へ支持でき、ガラス板構成体からの振動子の脱落が抑えられる。
また、被覆部の主面に被覆部よりも低い剛性を有するコア層を積層させた部分を含む延長部を、ガラス板構成体に接触させずにホルダに繋げて固定するので、延長部の高い強度を確保しつつ、振動子からの振動がマウント部の主マウント部からホルダへ伝達されるのを抑制できる。これにより、振動子からの振動を円滑にガラス板構成体へ伝達させて音響効果を高められる。
【0095】
(23) (21)又は(22)に記載のガラス振動板の製造方法の後に、
前記主マウント部に前記振動子を取り付ける、振動子付きガラス振動板の製造方法。
この振動子付きガラス振動板の製造方法によれば、振動子が安定して取り付けられるとともに、ガラス振動板から発せられる音の品質低下や振動子の脱落が抑制された振動子付きガラス振動板を製造できる。
【符号の説明】
【0096】
11 ガラス振動板
13 振動子
14 ホルダ
15 ガラス板構成体
15a 第1主面
15b 第2主面
16 ホルダ
17 マウント部
19 接続部
21 主マウント部
22 突起部
22a 溝部
23 延長部
23a 一端(端部)
23b 他端(端部)
23c 屈曲部
35 連結部
51 コア層
53 第1主面
55 第2主面
61 被覆部
63 第1被覆部
65 第2被覆部
100 振動子付きガラス振動板
D 最短距離
η 減衰係数
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16