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特開2024-253ナノ結晶、発光粒子、発光粒子含有分散液及びナノ結晶の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000253
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】ナノ結晶、発光粒子、発光粒子含有分散液及びナノ結晶の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/61 20060101AFI20231225BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20231225BHJP
   C01G 9/00 20060101ALI20231225BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20231225BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20231225BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20231225BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20231225BHJP
   H10K 50/15 20230101ALI20231225BHJP
   H01L 33/26 20100101ALI20231225BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALI20231225BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20231225BHJP
【FI】
C09K11/61 ZNM
C09K11/08 G
C09K11/08 A
C01G9/00 B
G02B5/20
G02B5/20 101
H05B33/14 Z
H05B33/12 E
H05B33/22 B
H05B33/22 D
H01L33/26
B82Y20/00
B82Y40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098937
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】林 卓央
【テーマコード(参考)】
2H148
3K107
4G047
4H001
5F241
【Fターム(参考)】
2H148AA07
2H148AA18
2H148AA24
2H148AA25
2H148BD25
2H148BG01
3K107AA06
3K107AA07
3K107CC07
3K107DD55
3K107DD56
3K107DD57
3K107DD72
3K107DD75
3K107EE22
3K107FF14
4G047AA04
4G047AA05
4G047AB02
4G047AC03
4G047AD02
4G047AD04
4H001CA02
4H001CC13
4H001CF01
4H001XA17
4H001XA30
4H001XA35
4H001XA55
4H001YA25
4H001YA29
5F241CA45
(57)【要約】
【課題】低毒性であって環境への影響が少なく、青色及び緑色の発光強度に優れたナノ結晶、前記ナノ結晶の製造方法、前記ナノ結晶を用いた発光粒子、及び前記発光粒子を用いた発光粒子含有分散体を提供すること。
【解決手段】化学式CsZnX(式中、Xは、塩化物イオン及び臭化物イオンの少なくとも1種である。)で表される金属化合物を含有する、ナノ結晶。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式CsZnX(式中、Xは、塩化物イオン及び臭化物イオンの少なくとも1種である。)で表される金属化合物を含有する、ナノ結晶。
【請求項2】
化学式CsZnX(式中、Xは、塩化物イオン及び臭化物イオンの少なくとも1種である。)で表される金属化合物に、1価の銅イオン又は2価のマンガンイオンの少なくとも1種が、前記金属化合物の0.5モル%以上30モル%以下でドープされた金属化合物を含有する、ナノ結晶。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のナノ結晶と、前記ナノ結晶の表面に配位した配位子とを備える、発光粒子。
【請求項4】
請求項3に記載の発光粒子と、前記発光粒子を分散する溶媒とを含有する、発光粒子含有分散体。
【請求項5】
陽極と、
前記陽極に対向して配置された陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に設けられた発光層と、
前記発光層と前記陽極との間に設けられ、前記発光層に正孔を輸送する正孔輸送層と、
前記発光層と前記陰極との間に設けられ、前記発光層に電子を輸送する電子輸送層とを備え、可視光を発する発光ダイオードである発光素子であって、
前記発光層が請求項1又は2に記載のナノ結晶を含む、発光素子。
【請求項6】
請求項5に記載の発光素子と、カラーフィルタとを備える、カラー表示デバイス。
【請求項7】
励起光を発する発光ダイオードと、前記発光ダイオードの表面に形成され、前記励起光の波長を変換する光変換層とを備え、
前記光変換層が請求項1又は2に記載のナノ結晶を含有する、発光素子。
【請求項8】
請求項7に記載の発光素子と、カラーフィルタとを備える、カラー表示デバイス。
【請求項9】
セシウム化合物と、亜鉛化合物と、溶媒とを含有し、前記亜鉛化合物の亜鉛原子含有量に対する前記セシウム化合物のセシウム含有量のモル比が1以上である混合溶液に、温度80℃以上で含ハロゲン化合物を混合した後に、温度50℃以下に冷却することにより、化学式CsZnX(式中、Xは、塩化物イオン及び臭化物イオンの少なくとも1種である。)で表される金属化合物を含有するナノ結晶を析出させる、ナノ結晶の製造方法。
【請求項10】
1価の銅化合物及び2価のマンガン化合物の少なくとも1種と、セシウム化合物と、亜鉛化合物と、溶媒とを含有し、前記亜鉛化合物の亜鉛含量に対する前記セシウム化合物のセシウム含量のモル比が1以上である混合溶液に、温度80℃以上で含ハロゲン化合物を混合した後に、温度50℃以下に冷却することにより、化学式CsZnX(式中、Xは、塩化物イオン及び臭化物イオンの少なくとも1種である。)で表される金属化合物に、1価の銅イオン又は2価のマンガンイオンの少なくとも1種が、前記金属化合物の0.5モル%以上30モル%以下でドープされた金属化合物を含有するナノ結晶を析出させる、ナノ結晶の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CsZnXで表される金属化合物を含有するナノ結晶、該ナノ結晶の製造方法、該ナノ結晶を用いた発光粒子、該発光粒子を用いた発光粒子含有分散体、該ナノ結晶を用いた発光素子及びカラー表示デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代の表示素子に要求される国際規格BT.2020を満たす材料として、半導体性のナノ結晶(ナノ結晶粒子)が注目されており、ナノ結晶をバックライトに用いた表示デバイスや照明装置が提案されている。中でも、一般式CsPbβ(式中、βはハロゲン原子のアニオンを表す。)で示される、ペロブスカイト型構造を有する、セシウムと鉛とハロゲンとからなるメタルハライド化合物であるナノ結晶は、ハロゲン原子の種類とその存在割合を調整することにより発光波長を制御できる利点があり、発光材料としての物性に優れることが非特許文献1に開示されている。
しかし、環境保全に対する配慮から、鉛、水銀、カドミウム等の特定有害物質を排除する傾向が高まり、欧州を中心に使用禁止令(RoHS指令)が発令され施行されている。そのため、低毒性であって環境への影響が少なく、可視光領域での発光強度に優れたナノ結晶材料が求められている。
【0003】
鉛非含有の発光材料として、非特許文献2には、セシウムと亜鉛とハロゲンとからなるメタルハライド化合物である、一般式CsZnβ(式中、βは上記と同様である。)で示される材料が提示され、金属イオンをさらにドープすることで発光特性を高められること、特にマンガンイオン(Mn2+)のドープにより緑色発光を得られることが開示されている。
また、非特許文献3には、セシウムと亜鉛とハロゲンとからなるメタルハライド化合物である、一般式CsZnβ(式中、βは上記と同様である。)で示されるナノ結晶に、銅イオン(Cu)をドープすることにより青色発光を得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Loredana Protesescu et al. Nanocrystals of Cesium Lead Halide Perovskites (CsPbX3, X= Cl, Br, and I): Novel Optoelectronic Materials Showing Bright Emission with Wide Color Gamut, Nano Letters, 2015, 15, 3692-3696
【非特許文献2】Viktoriia Morad et al. Manganese(II) in Tetrahedral Halide Environment: Factors Governing Bright Green Luminescence, Chemistry of Materials, 2019, 31, 10161-10169
【非特許文献3】Dongxu Zhu et al. Bright Blue Emitting Cu-Doped Cs2ZnCl4 Colloidal Nanocrystals, Chemistry of Materials, 2020, 32, 5897-5903
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献2に開示される、マンガンイオンをドープしたCsZnβで示される発光材料は、溶融法によってミクロンオーダーのバルク結晶の態様として合成される。そのため、係る発光材料を用いた発光素子等の各種デバイスの作製に際し高温・高真空の蒸着装置が必要になる等、プロセスの面で課題が残る。また、CsZnβ、及び金属イオンをさらにドープしたCsZnXに関しては、非特許文献2の他にもバルク結晶として合成及び評価例は存在するが、ナノ結晶の合成報告例はない。
一方、非特許文献3に開示される、銅イオンをドープした一般式CsZnβ(式中、βは上記と同様である。)で示される、ナノ結晶の発光特性は青色発光のみであり緑色発光は示さない。また、空気に対する安定性が比較的低く非発光となりやすい。
【0006】
発光粒子が最大で100nmオーダーでの均一な分布を有するナノ結晶であると、溶液として発光面へ塗布して乾燥することで発光層を形成でき、発光素子等の各種デバイスの作製に際して高温・高真空の蒸着装置が不要となり、有利である。この観点から、本発明者らは、一般式CsZnXで示される化合物、及びさらに金属イオンをドープした前記CsZnXで示される化合物を、ナノ結晶として製造する方法について検討した。
その結果、特定比で原料を用いることにより、前記ナノ結晶を、好適にはナノ結晶表面に配位子が配位した発光粒子の態様で得ることができることを見出した。係るナノ結晶は青色発光及び緑色発光に優れており、発光素子、カラー表示デバイス、液晶表示素子等の各種デバイスへ適用できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
本発明の目的は、低毒性であって環境への影響が少なく、青色及び緑色の発光強度に優れたナノ結晶、前記ナノ結晶の製造方法、前記ナノ結晶を用いた発光粒子、及び前記発光粒子を用いた発光粒子含有分散体を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、前記ナノ結晶を用いた発光素子、及び係る発光素子を用いたカラー表示デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記の態様を有する。
[1] 化学式CsZnX(式中、Xは、塩化物イオン及び臭化物イオンの少なくとも1種である。)で表される金属化合物を含有する、ナノ結晶。
[2] 化学式CsZnX(式中、Xは、塩化物イオン及び臭化物イオンの少なくとも1種である。)で表される金属化合物に、銅イオン(Cu)又はマンガンイオン(Mn2+)の少なくとも1種が、前記金属化合物の0.5モル%以上30モル%以下でドープされた金属化合物を含有する、ナノ結晶。
[3] [1]又は[2]に記載のナノ結晶と、前記ナノ結晶の表面に配位した配位子とを備える、発光粒子。
[4] [3]に記載の発光粒子と、前記発光粒子を分散する溶媒とを含有する、発光粒子含有分散体。
[5] 陽極と、前記陽極に対向して配置された陰極と、前記陽極と前記陰極との間に設けられた発光層と、前記発光層と前記陽極との間に設けられ、前記発光層に正孔を輸送する正孔輸送層と、前記発光層と前記陰極との間に設けられ、前記発光層に電子を輸送する電子輸送層とを備え、可視光を発する発光ダイオードである発光素子であって、前記発光層が[1]又は[2]に記載のナノ結晶を含む、発光素子。
[6] [5]に記載の発光素子と、カラーフィルタとを備える、カラー表示デバイス。
[7] 励起光を発する発光ダイオードと、前記発光ダイオードの表面に形成され、前記励起光の波長を変換する光変換層とを備え、前記光変換層が[1]又は[2]に記載のナノ結晶を含有する、発光素子。
[8] [7]に記載の発光素子と、カラーフィルタとを備える、カラー表示デバイス。
[9] セシウム化合物と、亜鉛化合物と、溶媒とを含有し、前記亜鉛化合物の亜鉛原子含有量に対する前記セシウム化合物のセシウム含有量のモル比が1以上である混合溶液に、温度80℃以上で含ハロゲン化合物を混合した後に、温度50℃以下に冷却することにより、化学式CsZnX(式中、Xは、塩化物イオン及び臭化物イオンの少なくとも1種である。)で表される金属化合物を含有するナノ結晶を析出させる、ナノ結晶の製造方法。
[10] 1価の銅化合物及び2価のマンガン化合物の少なくとも1種と、セシウム化合物と、亜鉛化合物と、溶媒とを含有し、前記亜鉛化合物の亜鉛含量に対する前記セシウム化合物のセシウム含量のモル比が1以上である混合溶液に、温度80℃以上で含ハロゲン化合物を混合した後に、温度50℃以下に冷却することにより、化学式CsZnX(式中、Xは、塩化物イオン及び臭化物イオンの少なくとも1種である。)で表される金属化合物に、1価の銅イオン又は2価のマンガンイオンの少なくとも1種が、前記金属化合物の0.5モル%以上30モル%以下でドープされた金属化合物を含有するナノ結晶を析出させる、ナノ結晶の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低毒性であって環境への影響が少なく、青色及び緑色の発光強度に優れたナノ結晶、前記ナノ結晶の製造方法、前記ナノ結晶を用いた発光粒子、及び前記発光粒子を用いた発光粒子含有分散体を提供できる。
また、本発明によれば、前記ナノ結晶を用いた発光素子及び係る発光素子を用いたカラー表示デバイスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る可視光を発する発光素子の、第1の実施形態を模式的に示す断面図である。
図2】本発明に係る可視光を発する発光素子の、第2の実施形態を模式的に示す断面図である。
図3】本発明に係る可視光を発する発光素子の、第3の実施形態を模式的に示す断面図である。
図4】本発明に係る発光素子を搭載したカラー表示デバイスの一例を示した模式図である。
図5】本発明に係る発光素子を搭載した画像表示装置の実施形態を示す概略図である。
図6図5に示す画像表示装置を構成するトランジスタ層の回路構成を示す概略図である。
図7図6に示すトランジスタ層の回路構成を示す概略図である。
図8】実施例3~7の発光粒子を含む発光素子を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.ナノ結晶
本発明に係るナノ結晶は、化学式CsZnX(式中、Xは、塩化物イオン及び臭化物イオンの少なくとも1種である。)で表される金属化合物(以下、「金属化合物1」とも記す。)を含有する(以下、「ナノ結晶1」とも記す。)。
Xは、塩化物イオン及び臭化物イオンの少なくとも1種であり、いずれかの1種単独であっても、両者が共存していてもよい。Xとして塩化物イオン及び臭化物イオンが共存する場合、その共存比には特に制限はない。
【0012】
本発明に係るナノ結晶の別の態様は、金属化合物1に、1価の銅イオン(Cu)又は2価のマンガンイオン(Mn2+)の少なくとも1種が、金属化合物1の0.5モル%以上30モル%以下でドープ(添加)された金属化合物を含有する(以下、「ナノ結晶2」とも記す。)。係るナノ結晶2は、ナノ結晶1の発光特性をより向上させることができるため、好ましい。
銅イオン又はマンガンイオンの少なくとも1種は、金属化合物1の0.5モル%以上25モル%以下でドープされているのが好ましく、1モル%以上20モル%以下でドープされているのがより好ましい。銅イオン又はマンガンイオンの添加量が金属化合物1の0.5モル%未満では、添加による発光の強度を高める効果及び発光波長を制御する効果が不十分となる。一方、銅イオン又はマンガンイオンの添加量が金属化合物1の30モル%を超えると、本発明に係るナノ結晶であるCsZnXとは相異する結晶構造となり、発光波長を制御する効果を十分に得ることができない。
【0013】
<ナノ結晶の形状>
本発明に係るナノ結晶の形状は、特に限定されず、任意の幾何学的形状であってもよく、任意の不規則な形状であってもよい。例えば、直方体状、立方体状、球状、正四面体状、楕円体状、角錐形状、ディスク状、枝状、網状、ロッド状である。ナノ結晶の形状は、直方体状、立方体状又は球状であることが好ましい。
【0014】
<ナノ結晶の粒径>
本発明に係るナノ結晶の粒径は、1nm~100nmの範囲であることが好ましく、5nm~50nmの範囲がより好ましい。ナノ結晶の粒径が上記範囲であれば、所望の発光波長を得ることができると共に、ナノ結晶の凝集による二次粒子の形成を抑制でき、蛍光量子収率、輝度及び色再現性の低下を抑制できる。
なお、ナノ結晶の粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)又はX線回折装置(XRD)等によって測定できる。
【0015】
また、本発明に係るナノ結晶の平均粒径(体積基準)は、1nm以上100nm以下であることが好ましく、5nm以上50nm以下がより好ましい。ナノ結晶の平均粒径が上記範囲であれば、所望の発光波長を得ることができると共に、ナノ結晶の凝集による二次粒子の形成を抑制でき、蛍光量子収率、輝度及び色再現性の低下を抑制できる。
なお、ナノ結晶の平均粒径は、TEM、SEM、XRD等によってナノ結晶の粒径を測定し、体積基準の平均粒径を算出して得られる。
【0016】
2.ナノ結晶の製造方法
本発明のナノ結晶(ナノ結晶1又はナノ結晶2)の製造方法としては、例えば、ホットインジェクション法や、LARP(Ligand-Assisted Reprecipitation)法が挙げられるが、ホットインジェクション法により製造するのが好ましい。以下、ナノ結晶1及びナノ結晶2の製造方法について説明する。
【0017】
2-1.ナノ結晶1の製造方法
ナノ結晶1を製造する場合は、セシウム化合物と、亜鉛化合物と、溶媒とを含有し、亜鉛化合物の亜鉛原子含有量に対するセシウム化合物のセシウム含有量のモル比が1以上である混合溶液(以下、単に「混合溶液1」とも記す。)に、温度80℃以上で含ハロゲン化合物を混合した後に、温度50℃以下に冷却することにより、ナノ結晶1を析出させる。
【0018】
セシウム化合物としては、例えば酢酸セシウム、炭酸セシウム、硝酸セシウム、酸化セシウム、水酸化セシウム、硫酸セシウム;これらの水和物;等が挙げられる。
亜鉛化合物としては、例えば酢酸亜鉛、炭酸亜鉛、硝酸亜鉛、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫酸亜鉛、硫化亜鉛;これらの水和物;等が挙げられる。
【0019】
混合溶液1中の、亜鉛化合物の亜鉛原子含有量に対するセシウム化合物のセシウム原子含有量のモル比(Cs/Zn)は1以上である。係るモル比は1~4の範囲であるのが好ましく、1.5~3の範囲がより好ましい。Cs/Znが前記範囲内であると、ナノ結晶1が収率よく得られる。一方、Cs/Znが1未満である場合はCsZnXで示されるナノ結晶の生成が優先し、係るCsZnXで示されるナノ結晶は発光特性が不十分となるか又は発現しなくなる。
【0020】
溶媒としては、例えば、1-オクタデセン、ジオクチルエーテル、ジフェニルエーテル等が挙げられる。
【0021】
混合溶液1の調製に際しては、セシウム化合物と、亜鉛化合物と、溶媒とを混合し、好ましくは50℃~200℃、より好ましくは80℃~150℃で予め撹拌して溶解させておくのが好ましい。混合の手順には特に制限されず、セシウム化合物と亜鉛化合物と溶媒とを一括で混合してもよく、溶媒にセシウム化合物を溶解させた溶液に亜鉛化合物を添加して混合してもよく、溶媒に亜鉛化合物を溶解させた溶液にセシウム化合物を添加して混合してもよく、溶媒にセシウム化合物を溶解させた溶液と、溶媒に亜鉛化合物を溶解させた溶液とを混合してもよい。
【0022】
含ハロゲン化合物としては、上記したセシウム化合物、亜鉛化合物に該当する化合物以外の、カルボン酸ハロゲン化物、ハロゲン化有機ケイ素化合物、ハロゲン化水素、アンモニウム塩が挙げられる。
カルボン酸ハロゲン化物としては、例えば、塩化ベンゾイル、臭化ベンゾイルが挙げられる。ハロゲン化有機ケイ素化合物としては、例えば、トリメチルシリルクロリド、トリメチルシリルブロミドが挙げられる。ハロゲン化水素としては、例えば、塩化水素、臭化水素が挙げられる。アンモニウム塩としては、例えば、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、オレイルアミン塩化水素酸塩、オレイルアミン臭化水素酸塩が挙げられる。
混合溶液1への含ハロゲン化合物の混合量は、混合溶液1中の亜鉛化合物の亜鉛原子含有量に対する含ハロゲン化合物の有するハロゲン原子含有量のモル比(X/Zn)として1~10の範囲であるのが好ましく、1.5~5の範囲がより好ましい。X/Znが前記範囲内であると、ナノ結晶1の収率を高くすることができる。
【0023】
混合溶液1に含ハロゲン化合物を混合する際の温度は80℃以上であり、80℃~300℃の範囲が好ましく、目的のナノ結晶1を得る反応を円滑に進行させる観点から、100℃~200℃の範囲がより好ましく、130℃~170℃の範囲がより好ましい。
混合溶液1に含ハロゲン化合物を混合した後の反応時間は、ナノ結晶を良好に得る観点から、5分以内であるのが好ましく、1秒~60秒の範囲がより好ましく、3秒~10秒の範囲がさらに好ましい。
【0024】
混合溶液1に含ハロゲン化合物を混合して反応させた後、温度50℃以下に冷却することにより、ナノ結晶1を析出させる。冷却する温度は、ナノ結晶1を速やかに析出させる観点から、-20℃~50℃の範囲が好ましく、-10℃~20℃がより好ましい。
また、冷却時間は、混合溶液1に含ハロゲン化合物を混合する際の設定温度や、反応のスケールによっても異なり得るが、ナノ結晶1を速やかに析出させる観点から、通常、1~60分の範囲であるのが好ましい。
なお、冷却手段には特に制限はなく、目的とする冷却温度と冷却までの時間に応じて、氷水、水-エチレングリコール混合系冷媒、ドライアイス-アセトン浴等を適宜選択して使用できる。
【0025】
上記した混合溶液1の調製や、混合溶液1に含ハロゲン化合物を混合して反応させ、その後冷却する操作は、大気雰囲気下で行っても、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。
【0026】
上記の混合溶液1の調製において配位子を共存させると、含ハロゲン化合物を混合して反応させることで、ナノ結晶1の表面に配位した配位子を備える発光粒子を得ることができる。配位子を共存させることで、過剰な結晶成長を防ぎ、目的の粒径範囲内のナノ結晶1を得ることができる。また、表面に配位子で構成される表面層を設けたナノ結晶1(すなわち発光粒子)は、合成後の凝集を抑制でき、発光特性を十分に発揮できる。
本発明の製造方法においては、ナノ結晶1の製造時に、上記混合溶液に配位子を共存させるのが好ましい。
【0027】
配位子は、ナノ結晶1に含まれるカチオンに結合する結合性基を有する化合物が好ましい。結合性基としては、例えば、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、スルホン酸基及びボロン酸基のうちの少なくとも1種が挙げられる。
配位子として、具体的にはカルボキシル基含有化合物、アミノ基含有化合物、ホスフィン化合物、ホスフィンオキシド化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0028】
カルボキシル基含有化合物としては、例えばアラキドン酸、クロトン酸、trans-2-デセン酸、エルカ酸、3-デセン酸、cis-4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸、4-デセン酸、all cis-5,8,11,14,17-エイコサペンタエン酸、all cis-8,11,14-エイコサトリエン酸、cis-9-ヘキサデセン酸、trans-3-ヘキセン酸、trans-2-ヘキセン酸、2-ヘプテン酸、3-ヘプテン酸、2-ヘキサデセン酸、リノレン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、3-ノネン酸、2-ノネン酸、trans-2-オクテン酸、ペトロセリン酸、エライジン酸、オレイン酸、3-オクテン酸、trans-2-ペンテン酸、trans-3-ペンテン酸、リシノール酸、ソルビン酸、2-トリデセン酸、cis-15-テトラコセン酸、10-ウンデセン酸、2-ウンデセン酸、酢酸、酪酸、ベヘン酸、セロチン酸、デカン酸、アラキジン酸、ヘンエイコサン酸、ヘプタデカン酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ヘプタコサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、メリシン酸、オクタコサン酸、ノナデカン酸、ノナコサン酸、n-オクタン酸、パルミチン酸、ペンタデカン酸、プロピオン酸、ペンタコサン酸、ノナン酸、ステアリン酸、リグノセリン酸、トリコサン酸、トリデカン酸、ウンデカン酸、吉草酸等の、炭素数1~30の直鎖状又は分岐状の脂肪族カルボン酸が挙げられる。
【0029】
アミノ基含有化合物としては、例えば1-アミノヘプタデカン、1-アミノノナデカン、ヘプタデカン-9-アミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、2-n-オクチル-1-ドデシルアミン、アリルアミン、アミルアミン、2-エトキシエチルアミン、3-エトキシプロピルアミン、イソブチルアミン、イソアミルアミン、3-メトキシプロピルアミン、2-メトキシエチルアミン、2-メチルブチルアミン、ネオペンチルアミン、プロピルアミン、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、1-アミノデカン、ノニルアミン、1-アミノウンデカン、ドデシルアミン、1-アミノペンタデカン、1-アミノトリデカン、ヘキサデシルアミン、テトラデシルアミン等の、炭素数1~30の直鎖状又は分岐状の脂肪族アミンが挙げられる。
【0030】
ホスフィン化合物としては、例えばトリオクチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の、総炭素数が3~20であるアルキルホスフィン又はアリールホスフィン等が挙げられる。
ホスフィンオキシド化合物としては、例えばトリオクチルホスフィンオキシド、トリブチルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド等の、総炭素数が3~20であるアルキルホスフィンオキシド又はアリールホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0031】
上記した化合物の中でも、本発明においては、配位子として、オレイン酸、オレイルアミン、オクチルアミン、トリオクチルホスフィン、トリオクチルホスフィンオキシドが好ましい。
【0032】
上記の混合溶液に配位子を共存させる場合、配位子の量は、溶媒の体積量に対して10%~100%の範囲であるのが、ナノ結晶1の表面に配位した配位子を備える発光粒子を得やすい観点、また配位子を共存させておくことによる過剰な結晶成長を防ぐ効果を得られる観点から好ましい。
【0033】
2-2.ナノ結晶2の製造方法
一方、ナノ結晶2を製造する場合は、1価の銅化合物及び2価のマンガン化合物の少なくとも1種と、セシウム化合物と、亜鉛化合物と、溶媒とを含有し、亜鉛化合物の亜鉛含量に対するセシウム化合物のセシウム含量のモル比が1以上である混合溶液(以下、単に「混合溶液2」とも記す。)に、温度80℃以上で含ハロゲン化合物を混合した後に、温度50℃以下に冷却することにより、ナノ結晶2を析出させる。
セシウム化合物、亜鉛化合物、セシウム化合物と亜鉛化合物の量比、溶媒、含ハロゲン化合物、含ハロゲン化合物を混合する際の温度、反応時間、冷却温度及び冷却時間の詳細は、ナノ結晶1の製造方法において説明したのと同様である。
以下、ナノ結晶1の製造と異なる点について説明する。
【0034】
1価の銅化合物としては、例えば酢酸銅(I)、酸化銅(I)、硫酸銅(I)、チオシアン酸銅(I);これらの水和物;等が挙げられる。
1価の銅化合物を用いる場合、その量は、混合溶液2における亜鉛化合物中の亜鉛含有量に対して0.1モル%~20モル%の範囲であるのが好ましく、1モル%~5モル%がより好ましい。
【0035】
2価のマンガン化合物としては、例えば酢酸マンガン(II)、炭酸マンガン(II)、硝酸マンガン(II)、酸化マンガン(II)、水酸化マンガン(II)、硫酸マンガン(II)、硫化マンガン(II);これらの水和物;等が挙げられる。
2価のマンガン化合物を用いる場合、その量は、混合溶液2における亜鉛化合物中の亜鉛含有量に対して5モル%~100モル%の範囲であるのが好ましく、20モル%~80モル%がより好ましい。
【0036】
ナノ結晶2を製造する場合、すなわち1価の銅化合物及び2価のマンガン化合物の少なくとも1種を混合溶液2にさらに共存させる場合は、混合溶液2の調製や、混合溶液2に含ハロゲン化合物を混合して反応させ、その後冷却する操作を、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。反応を不活性ガス雰囲気下で行うことで、特に1価の銅カチオンの酸化を抑制でき、得られるナノ結晶2の発光特性を一層良好にできる。
【0037】
また、ナノ結晶2を製造する場合も、上記した、1価の銅化合物及び2価のマンガン化合物の少なくとも1種を共存させた混合溶液2に、さらに配位子を共存させると、含ハロゲン化合物を混合して反応させることで、ナノ結晶2の表面に配位した配位子を備える発光粒子を得ることができる。配位子の種類や共存量の詳細、また、配位子を共存させることによる効果については、ナノ結晶1の製造方法にて説明したのと同様である。
【0038】
3.発光粒子
3-1.発光粒子の構成
発光粒子は、上述したナノ結晶を含む。発光粒子は、ナノ結晶自体であってもよく、ナノ結晶と、それを担持する多孔性粒子とを備えるものであってもよい。また、発光粒子は、ナノ結晶と、その表面に配位した配位子とを備えるものであってもよい。さらに、発光粒子は、その表面にポリマー層を備えるものであってもよい。
本発明に係る発光粒子は、好適には、ナノ結晶1又はナノ結晶2と、これらいずれかのナノ結晶の表面に配位した配位子とを備える。配位子については上述したとおりである。
本発明に係る発光粒子は、それを構成するナノ結晶1又はナノ結晶2が鉛、水銀、カドミウムを含有しないため、低毒性であって環境への影響が少なく、欧州を中心とした使用禁止令(RoHS指令)に適切に対応できる。
ナノ結晶は、通電されたとき(電流が流れたとき)に発光を生じる。又は、励起光が照射されたときに、ナノ結晶に含まれる電子が基底状態から励起状態に励起されて、基底状態に戻る際に発光を生じる。本発明に係る発光粒子は、ナノ結晶の発光に伴い、青色に対応する波長域(420~495nm)、緑色に対応する波長域(495~570nm)において強い発光スペクトルを示す、すなわち、青色及び緑色の優れた発光強度を得ることができる。そして、赤色発光素子と組み合わせれば白色発光を得ることができるため、得られた発光を、RGBのカラーフィルタに通したときに、RGBを一定以上の強度で抽出でき、カラーディスプレイの用途に好適である。
【0039】
[多孔性粒子]
発光粒子が、上述したナノ結晶と、それを担持する多孔性粒子とを備えるものである場合、多孔性粒子を構成する材質は、担持されるナノ結晶を保護できれば特に限定されない。合成の容易さ、透過率、コスト等の観点から、シリカ、アルミナ、酸化チタン、樹脂が好ましく、シリカがより好ましい。
多孔性粒子の形状は特に限定されず、球状、貫通孔を有する柱状、円筒状、紐状、立方体状、直方体状等のいずれでもよい。また、多孔性粒子は、内部空間を備えた多孔性中空粒子であってもよい。
【0040】
多孔性粒子の細孔にナノ結晶を担持させる場合には、多孔性粒子を、ナノ結晶の原料溶液に浸漬した後に当該原料溶液から取り出して乾燥させることによって、当該多孔性粒子の細孔内にナノ結晶を析出させる。細孔の孔径は、ナノ結晶を細孔内に凝集させることなく析出させる観点から、0.5nm~100nmの範囲が好ましい。
【0041】
多孔性粒子の平均外径に特に限定はないが、通常、5~300nmの範囲であることが好ましく、6~100nmがより好ましく、8~50nmがさらに好ましく、10~25nmが特に好ましい。多孔性粒子の平均外径が上記範囲であると、ナノ結晶の熱に対する安定性を十分に確保できる。
【0042】
一方、多孔性中空粒子は、内部空間と該内部空間に連通する細孔とを有する。多孔性中空粒子の内部空間にナノ結晶を担持させる場合、例えば、多孔性中空粒子を、ナノ結晶の原料溶液に浸漬した後、当該原料溶液から取り出して乾燥させることによって、当該多孔性中空粒子の内部空間内にナノ結晶を析出させる。
細孔の孔径は、原料溶液が内部空間内に浸入しやすい観点、また内部空間に優先的にナノ結晶を析出させる観点から、0.5nm~100nmの範囲が好ましい。また、多孔性中空粒子の内部空間の内径は、ナノ結晶の粒径よりも大きく、かつナノ結晶の凝集を抑制する観点から、500nm以下であることが好ましい。
【0043】
多孔性中空粒子の平均外径に特に限定はないが、通常、5~300nmの範囲であることが好ましく、6~100nmがより好ましく、8~50nmがさらに好ましく、10~25nmが特に好ましい。多孔性中空粒子の平均外径が上記範囲であると、ナノ結晶の熱に対する安定性を十分に確保できる。
【0044】
[ポリマー層]
発光粒子が、その表面にポリマー層を備えるものである場合、発光粒子に酸素に対する高い安定性や高い耐水性を付与できる。
ポリマー層は、疎水性ポリマーを含むワニスに、発光粒子を添加して混合することにより、発光粒子の表面を疎水性ポリマーで被覆する方法(方法I)、発光粒子の表面に、非水溶媒に可溶な重合性不飽和基を含有する重合体と共に、非水溶媒に可溶であってかつ重合後に不溶又は難溶である少なくとも1種の重合性不飽和単量体を担持させた後、重合体と重合性不飽和単量体とを重合させる方法(方法II);等により形成できる。
なお、方法Iにおける疎水性ポリマーには、方法IIにおける重合体と重合性不飽和単量体とを重合させた重合物が含まれる。
均一な厚さのポリマー層を発光粒子に高い密着性で形成できる観点から、方法IIによりポリマー層を形成することが好ましい。
【0045】
方法I又は方法IIで使用する、非水溶媒に可溶な重合性不飽和基を含有する重合体には、炭素数4以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート若しくは重合性不飽和基を有する含フッ素化合物を主成分とする重合性不飽和単量体の共重合体に重合性不飽和基を導入したポリマー、又は、炭素数4以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート若しくは重合性不飽和基を有する含フッ素化合物を主成分とする重合性不飽和単量体の共重合体からなるマクロモノマー等が含まれる。
【0046】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートが挙げられる。ここで、本明細書中において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート及びアクリレートの双方を意味する。「(メタ)アクリロイル」との表現についても同様である。
【0047】
重合性不飽和基を有する含フッ素化合物としては、例えば、下記一般式(B1)で表される化合物が挙げられる。
【0048】
【化1】
【0049】
上記式(B1)中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基、シアノ基、フェニル基、ベンジル基又は-C2n-Rf’(nは1~8の整数であり、Rf’は下記式(Rf-1)~(Rf-7)のいずれか1つの基である。)である。
また、上記式(B1)中、Lは下記式(L-1)~(L-10)のいずれか1つの基である。
【0050】
【化2】
【0051】
上記式(L-1)、(L-3)、(L-5)、(L-6)及び(L-7)中のnは1~8の整数である。上記式(L-8)、(L-9)及び(L-10)中のmは1~8の整数であり、nは0~8の整数である。上記式(L-6)及び(L-7)中のRf’’は下記式(Rf-1)~(Rf-7)のいずれか1つの基である。)
また、上記一般式(B1)中、Rfは下記式(Rf-1)~(Rf-7)で表されるいずれか1つの基である。
【0052】
【化3】
【0053】
上記式(Rf-1)~(Rf-4)中のnは4~6の整数である。上記式(Rf-5)中のmは1~5の整数であり、nは0~4の整数であり、かつm及びnの合計は4~5である。上記式(Rf-6)中のmは0~4の整数であり、nは1~4の整数であり、pは0~4の整数であり、かつm、n及びpの合計は4~5である。
【0054】
重合性不飽和基を有する含フッ素化合物としてはまた、例えば、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖と、その両末端に重合性不飽和基とを有する化合物が挙げられる。ここで、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖は、炭素数1~3の2価フッ化炭素基と酸素原子とが交互に連結した構造を有することが好ましい。係るポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖は、炭素数1~3の2価フッ化炭素基を1種のみを含んでもよく、複数種を含んでもよい。
【0055】
3-2.発光粒子含有分散体
本発明はまた、ナノ結晶1又はナノ結晶2の表面に配位した配位子を備える発光粒子と、係る発光粒子を分散させる溶媒とを含有する、発光粒子含有分散体である。
溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素が好ましい。
発光粒子含有分散体の調製方法には特に制限はなく、上述したナノ結晶1の製造方法又はナノ結晶2の製造方法において、混合溶液中に配位子を共存させることによって、ナノ結晶1又はナノ結晶2の表面に配位した配位子を備える発光粒子を得、単離した発光粒子と溶媒を任意の比で混合して調製できる。
本発明に係る発光粒子含有分散体は、ナノ結晶1又はナノ結晶2の表面に配位子が配位した発光粒子が、溶媒によって分散されたコロイド溶液となっている。
【0056】
4.発光素子
上述の発光粒子を用いて、可視光を発する発光素子(以下、「発光素子1」とも記す。)、及び励起光を発する発光素子(以下、「発光素子2」とも記す。)を構成できる。
各発光素子の実施の形態について詳細に説明する。各図では、便宜上、各部の寸法及び比率を誇張して示し、実際とは異なる場合がある。また、以下に示す材料、寸法等は一例であり、本発明はそれらに限定されず、その要旨を変更しない範囲で適宜変更できる。なお、各図では煩雑さを避けるため、断面を示すハッチングの記載を省略している。
【0057】
4-1.可視光を発する発光素子
<第1の実施形態>
図1は、可視光を発する発光素子の第1の実施形態(以下、「発光素子11」とも記す。)を模式的に示す断面図である。図1に示す発光素子11は、可視光を発する発光ダイオードである。発光素子11は、下基板2と、下基板2と対向して配置された上基板3と、下基板2の上面に設けられた陽極4と、上基板3の下面に設けられた陰極5と、陽極4と陰極5との間に、陽極4側から順次積層された正孔輸送層6、上述の発光粒子を含む発光層7及び電子輸送層8とを有している。換言すれば、発光素子11は、陽極4と、陽極4と対向して配置された陰極5と、陽極4と陰極5との間に設けられた発光層7と、発光層7と陽極4との間に設けられた正孔輸送層6と、発光層7と陰極5との間に設けられた電子輸送層8とを有している。なお、正孔輸送層6と電子輸送層8は、必要に応じて設ければよく、省略してもよい。
以下、各部について順次説明する。
【0058】
[下基板2及び上基板3]
下基板2及び上基板3は、それぞれ発光素子1を構成する各層を支持及び/又は保護する機能を有する。発光素子11がトップエミッション型である場合、上基板3が透明基板で構成される。一方、発光素子11がボトムエミッション型である場合、下基板2が透明基板で構成される。ここで、透明基板とは、可視光領域の波長の光を透過可能な基板を意味し、透明には、無色透明、着色透明、半透明が含まれる。
透明基板としては、例えば、ガラス基板;石英基板;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリカーボネート等で構成される樹脂基板;鉄、ステンレス、アルミニウム、銅等で構成される金属基板;シリコン基板、ガリウム砒素基板等を使用できる。
下基板2及び上基板3の平均厚さに特に限定はなく、通常、100~1000μmの範囲が好ましく、300~800μmの範囲がより好ましい。
発光素子11に可撓性を付与する場合、下基板2及び上基板3には、それぞれ樹脂基板又は比較的厚さの小さい金属基板を選択できる。なお、発光素子11の使用形態に応じ、下基板2及び上基板3のいずれか一方又は双方を省略してもよい。
【0059】
[陽極4]
陽極4は、外部電源から発光層7に向かって正孔を供給する機能を有する。陽極4の構成材料(陽極材料)としては、例えば、金、アルミニウム等の金属;ヨウ化銅等のハロゲン化金属;インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)等の金属酸化物;等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
陽極4の平均厚さに特に限定はなく、通常、10~1000nmの範囲が好ましく、10~200nmの範囲がより好ましい。
陽極4は、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法のような乾式成膜法により形成できる。この際、フォトリソグラフィー法やマスクを用いた方法により、所定のパターンを有する陽極4を形成してもよい。
【0060】
[陰極5]
陰極5は、外部電源から発光層7に向かって電子を供給する機能を有する。陰極5の構成材料(陰極材料)としては、例えば、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、銀、ナトリウム-カリウム合金、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、希土類金属、ITO、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、SnO、ZnO等の金属又は金属酸化物等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
陰極5の平均厚さに特に限定はなく、通常、0.1~1000nmの範囲が好ましく、1~200nmの範囲がより好ましい。
陰極5は、例えば、蒸着法やスパッタリング法のような乾式成膜法により形成できる。
【0061】
発光素子11がトップエミッション型である場合、陰極5はITO等で形成される透明電極で構成される。この場合、陽極4はアルミニウム等で形成される反射電極で構成してもよい。
一方、発光素子11がボトムエミッション型である場合、陽極4はITO等で形成される透明電極で構成される。この場合、陰極5はアルミニウム等で形成される反射電極で構成してもよい。
【0062】
[正孔輸送層6]
正孔輸送層6は、陽極4から正孔を受け取り、発光層7まで効率的に輸送する機能を有する。正孔輸送層6は、電子の輸送を防止する機能を有していてもよい。
正孔輸送層6の構成材料(正孔輸送材料)としては、電子輸送能より正孔輸送能の高い材料を用いることが好ましい。係る正孔輸送材料としては、例えば芳香族アミン、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、スチルベン誘導体等が挙げられ、π電子過剰型複素芳香族又は芳香族アミン等を好適に使用できる。
【0063】
正孔輸送材料の具体例としては、N,N’-ジ(p-トリル)-N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル、N,N’-ビス{4-[ビス(3-メチルフェニル)アミノ]フェニル}-N,N’-ジフェニル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン、1,3,5-トリス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ベンゼン、N,N’-ジ-1-ナフチル-N,N’-ジフェニルベンジジン(NPB)、1,1-ビス[(ジ-4-トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(m-トリル)ベンジジン(TPD)、4,4’,4’’-トリ(9-カルバゾイル)トリフェニルアミン(TCTA)、3-[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール、3,6-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール、3,6-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-(1-ナフチル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール、3-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール、3,6-ビス[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール、3-[N-(1-ナフチル)-N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル、1,3,5-トリス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]ベンゼン、9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール、1,4-ビス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]-2,3,5,6-テトラフェニルベンゼン、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン、2-tert-ブチル-9,10-ジ(1-ナフチル)アントラセン、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン、2-tert-ブチル-9,10-ビス(4-フェニルフェニル)アントラセン、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン、9,10-ジフェニルアントラセン、2-tert-ブチルアントラセン、9,10-ビス(4-メチル-1-ナフチル)アントラセン、2-tert-ブチル-9,10-ビス[2-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン、9,10-ビス[2-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7-テトラメチル-9,10-ジ(1-ナフチル)アントラセン、2,3,6,7-テトラメチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン、9,9’-ビアントリル、10,10’-ジフェニル-9,9’-ビアントリル、10,10’-ビス(2-フェニルフェニル)-9,9’-ビアントリル、10,10’-ビス[(2,3,4,5,6-ペンタフェニル)フェニル]-9,9’-ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11-テトラ(tert-ブチル)ペリレン、4,4’-ビス(2,2-ジフェニルビニル)ビフェニル、9,10-ビス[4-(2,2-ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン、ポリ(N-ビニルカルバゾール)、ポリ(4-ビニルトリフェニルアミン)、ポリ[N-(4-{N’-[4-(4-ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル-N’-フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド]、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン]、ポリ(9,9’-ジオクチルフルオレン-co-N-(4-ブチルフェニル)ジフェニルアミン)、ポリ[2-メトキシ-5-(2’-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]、ポリ[2-メトキシ-5-(3’,7’-ジメチルオクチルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン、4,4’,4’’-トリス(カルバゾール-9-イル)トリフェニルアミン、4,4’,4’’-トリス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン、4,4’,4’’-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン、4,4’,4’’-トリス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-イル)-N―フェニルアミノ]ビフェニル、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン、N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-N-{9,9-ジメチル-2-[N’-フェニル-N’-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミノ]-9H-フルオレン-7-イル}フェニルアミン、N-(9,9-ジメチル-2-ジフェニルアミノ-9H-フルオレン-7-イル)ジフェニルアミン、2-[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]スピロ-9,9’-ビフルオレン、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン、4-フェニルジフェニル-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)アミン、N,N’-ビス(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N,N’-ジフェニルベンゼン-1,3-ジアミン、N,N’,N’’-トリフェニル-N,N’,N’’-トリス(9-フェニルカルバゾール-3-イル)ベンゼン-1,3,5-トリアミン、N-(4-ビフェニル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9-フェニル-9H-カルバゾール-3-アミン、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン、9,9-ジメチル-N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]フルオレン-2-アミン、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-アミン、2-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]スピロ-9,9’-ビフルオレン、2,7-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-スピロ-9,9’-ビフルオレン、N-[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N-(4-フェニル)フェニルアニリン、N,N’-ビス[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニル-9,9-ジメチルフルオレン-2,7-ジアミン、3-[4-(1-ナフチル)フェニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール、3-[4-(9-フェナントリル)フェニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール、3,3’-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール)、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9-フェニルカルバゾール、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾフラン)、1,3,5-トリ(ジベンゾチオフェン-4-イル)-ベンゼン、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン、4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フェニルジベンゾチオフェン、4-[3-(トリフェニレン-2-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン等が挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
正孔輸送層6の平均厚さに特に限定はなく、通常、1~500nmの範囲が好ましく、5~300nmの範囲がより好ましく、10~200nmの範囲がさらに好ましい。
また、正孔輸送層6は、単層でも、2層以上が積層された積層構成であってもよい。
【0065】
このような正孔輸送層6は、湿式成膜法又は乾式成膜法により形成できる。
湿式成膜法では、通常、正孔輸送材料を含有する液状組成物を、インクジェット法(ピエゾ方式又はサーマル形式の液滴吐出法)、スピンコート法、キャスト法、LB法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等により塗布し、得られた塗膜を乾燥する。なお、ノズルプリント印刷法とは、液状組成物をノズル孔から液柱としてストライプ状に塗布する方法である。
乾式成膜法としては、真空蒸着法、スパッタリング法等を好適に使用できる。
【0066】
[電子輸送層8]
電子輸送層8は、陰極5から電子を受け取り、発光層7まで効率的に輸送する機能を有する。また、電子輸送層8は、正孔の輸送を防止する機能を有していてもよい。
電子輸送層8の構成材料(電子輸送材料)としては、正孔輸送能より電子輸送能の高い材料を用いることが好ましい。電子輸送材料としては、例えば、フラーレン、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体又はピリミジン誘導体等の含窒素複素芳香族化合物のようなπ電子不足型複素芳香族;キノリン配位子、ペリレン配位子、ベンゾキノリン配位子、オキサゾール配位子、又はチアゾール配位子を有する金属錯体等が挙げられる。
【0067】
電子輸送材料の具体例としては、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(Alq)、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(Almq3)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム、ビス(8-キノリノラト)亜鉛、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール、バソフェナントロリン、バソキュプロイン(BCP)、1,3,5-トリ[(3-ピリジル)-フェン-3-イル]ベンゼン、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン、2-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f、h]キノキサリン、2-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f、h]キノキサリン、2-[4-(3,6-ジフェニル-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン、7-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン、6-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン、4,6-ビス[3-(フェナントレン-9-イル)フェニル]ピリミジン、4,6-ビス[3-(4-ジベンゾチエニル)フェニル]ピリミジン、4,6-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリミジン等のジアジン、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、3,5-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリジン、1,3,5-トリ[3-(3-ピリジル)フェニル]ベンゼン、4,4’-ビス(5-メチルベンゾオキサゾール-2-イル)スチルベン等の低分子化合物;ポリ(2,5-ピリジンジイル)、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(ピリジン-3,5-ジイル)]、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(2,2’-ビピリジン-6,6’-ジイル)]等の高分子化合物が挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、電子輸送材料として、無機半導体材料を用いてもよい。電子輸送層8を無機半導体材料で構成することにより、電子輸送層8中における電子の移動度を高め、発光層7への電子の注入効率を向上できる。係る電子輸送材料としては、例えば、炭酸セシウム等の金属塩;酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛等の金属酸化物を好適に使用できる。
【0068】
電子輸送層8の平均厚さに特に限定はなく、通常、5~500nmの範囲が好ましく、5~200nmの範囲がより好ましい。また、電子輸送層8は、単層でも、2層以上が積層された積層構成であってもよい。
電子輸送層8は、湿式成膜法又は乾式成膜法により形成できる。湿式製膜法及び乾式製膜法については正孔輸送層6の説明にて上述したとおりである。
【0069】
[発光層7]
発光層7は、正孔輸送層6及び電子輸送層8から注入された正孔及び電子の再結合により生じるエネルギーを利用して、発光粒子から発光を生じさせる機能を有する。
発光層7はホスト材料を含んでもよい。ホスト材料は、発光層7に注入された正孔と電子との再結合の場を提供し、その分子上での正孔-電子対(励起子;エキシトン)の形成を促進する。この励起子の励起エネルギーは、ナノ結晶に移動(フェルスター共鳴エネルギー移動)し、発光粒子が発光する。係る現象を利用することにより、発光層7の発光効率を向上できる。
ホスト材料は、発光粒子より大きなエネルギーギャップを有する化合物から選択して用いられる。また発光粒子が燐光発光する場合、ホスト材料は、発光粒子よりも三重項励起エネルギー(基底状態と三重項励起状態とのエネルギー差)の大きい化合物を選択することが好ましい。
【0070】
ホスト材料の具体例としては、Alq、Almq3、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム、ビス(8-キノリノラト)亜鉛、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)、バソフェナントロリン、BCP、2,6-ビス(3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル)ピリジン、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9,10-ジフェニルアントラセン、N,N-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン、4-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン、N,9-ジフェニル-N-{4-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]フェニル}-9H-カルバゾール-3-アミン、6,12-ジメトキシ-5,11-ジフェニルクリセン、9-[4-(10-フェニル-9-アントラセニル)フェニル]-9H-カルバゾール、3,6-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-フェニル-3-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール、7-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール、6-[3-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン、9-フェニル-10-{4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)ビフェニル-4’-イル}アントラセン、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン、9,9’-ビアントリル、9,9’-(スチルベン-3,3’-ジイル)ジフェナントレン、9,9’-(スチルベン-4,4’-ジイル)ジフェナントレン、1,3,5-トリ(1-ピレニル)ベンゼン、5,12-ジフェニルテトラセン又は5,12-ビス(ビフェニル-2-イル)テトラセン等が挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
また、発光粒子の平均粒径をR[nm]とし、発光層7の平均厚さをH[nm]としたとき、Rに対するHの比(H/R)が1.0~2.0の範囲であることが好ましく、1.2~1.7の範囲がより好ましく、1.3~1.6の範囲がさらに好ましい。H/Rが前述の範囲内である発光層7では、その厚さ方向に発光粒子が積み重ならず、実質的に単層の状態で存在する。このため、発光層7に注入された電子と正孔とが再結合に要する距離を短くでき、発光層7の発光効率をより向上できる。
発光層7の平均厚さは、発光粒子の平均粒径によっても異なるが、前記発光効率をより向上させる観点から、通常、1~150nmの範囲であることが好ましく、3~50nmの範囲がより好ましい。
【0072】
発光層7は、湿式成膜法により形成できる。湿式製膜法については正孔輸送層6の説明にて上述したとおりである。
発光素子11がトップエミッション型である場合、陽極4を、光反射性を有する反射電極として構成し、発光素子11がボトムエミッション型である場合、陰極5を、光反射性を有する反射電極として構成する。このような構成により、発光層7から発せられ出射面と反対側に向かう光を、陽極4又は陰極5で反射して出射面に向かうように、光路変更することができる。このため、発光素子11から取り出される光の強度をより増大させ、より高輝度の発光を得ることができる。
この場合、陽極4又は陰極5の構成材料としては、光を反射する反射率の高い材料が好ましく、例えばアルミニウム、銀、金、アルミニウム-リチウム合金、アルミニウム-ネオジウム合金、アルミニウム-シリコン合金等が挙げられる。また、陽極4又は陰極5は、透明電極と反射電極とを組み合わせて構成してもよい。
【0073】
発光素子11では、正孔輸送層6から発光層7に輸送された正孔と、電子輸送層8から発光層7に輸送された電子とが再結合して生じたエネルギーによって、発光層7に含まれる発光粒子から発光が生じる。この発光は、青色及び緑色の優れた発光強度を示す。
【0074】
<第2の実施形態>
次に、可視光を発する発光素子の第2の実施形態(以下、「発光素子12」とも記す。)について説明する。ここでは、前記発光素子11との相違点を中心に説明し、同様の事項は、その説明を省略する。
図2は、発光素子の第2の実施形態を模式的に示す断面図である。発光素子12は、さらに正孔注入層9及び電子注入層10を有し、それ以外は、発光素子11と同様である。正孔注入層9は、陽極4と正孔輸送層6との間に設けられ、電子注入層10は、陰極5と電子輸送層8との間に設けられている。なお、正孔注入層9と電子注入層10は、必要に応じて設け、そのいずれかを省略してもよい。
【0075】
[正孔注入層9]
正孔注入層9は、陽極4から供給された正孔を受け取り、正孔輸送層6に注入する機能を有する。
正孔注入層9の構成材料(正孔注入材料)としては、例えば、銅フタロシアニン等のフタロシアニン化合物;4,4’,4’’-トリス[フェニル(m-トリル)アミノ]トリフェニルアミン等のトリフェニルアミン誘導体;1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル、2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノ-キノジメタン等のシアノ化合物;ジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル(HAT-CN)等のキノキサリン誘導体;酸化バナジウム、酸化モリブデン等の金属酸化物;アモルファスカーボン;ポリアニリン(エメラルディン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT-PSS)、ポリピロール等の高分子等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、ジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル、金属酸化物又は高分子であることが好ましく、酸化モリブデン、PEDOT-PSSがより好ましい。
【0076】
正孔注入層9の平均厚さに特に限定はなく、通常、0.1~500nmの範囲が好ましく、1~300nmの範囲がより好ましく、2~200nmの範囲がさらに好ましい。また、正孔注入層9は、単層でも、2層以上が積層された積層構成であってもよい。
正孔注入層9は、湿式成膜法又は乾式成膜法により形成できる。湿式製膜法及び乾式製膜法については正孔輸送層6の説明にて上述したとおりである。
【0077】
[電子注入層10]
電子注入層10は、陰極5から供給された電子を受け取り、電子輸送層8に注入する機能を有する。
電子注入層10の構成材料(電子注入材料)としては、例えば、ポリ(エチレンイミン)等の高分子;LiO、LiO、NaS、NaSe、NaO等のアルカリ金属カルコゲナイド;CaO、BaO、SrO、BeO、BaS、MgO、CaSe等のアルカリ土類金属カルコゲナイド;CsF、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl、NaCl等のアルカリ金属ハライド;8-ヒドロキシキノリノラトリチウム(Liq)等のアルカリ金属塩;CaF、BaF、SrF、MgF、BeF等のアルカリ土類金属ハライド等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、高分子、アルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ土類金属ハライド、アルカリ金属塩が好ましい。
【0078】
電子注入層10の平均厚さに特に限定はなく、通常、1~500nmの範囲が好ましく、2~300nmの範囲がより好ましく、2~200nmの範囲がさらに好ましい。また、電子注入層10は、単層でも、2層以上が積層された積層構成であってもよい。
電子注入層10は、湿式成膜法又は乾式成膜法により形成できる。湿式製膜法及び乾式製膜法については正孔輸送層6の説明にて上述したとおりである。
【0079】
発光素子12では、正孔注入層9及び電子注入層10を設けることにより、正孔輸送層6及び電子輸送層8を介した発光層7への正孔及び電子の輸送効率を高めることができる。その結果、発光層7の発光効率をより向上させ、高輝度での発光が可能で、かつ長寿命な発光素子が得られる。
【0080】
<第3の実施形態>
次に、可視光を発する発光素子の第3の実施形態(以下、「発光素子13」とも記す。)について説明する。ここでは、前記発光素子11及び発光素子12との相違点を中心に説明し、同様の事項は、その説明を省略する。
図3は、発光素子の第3の実施形態を模式的に示す断面図である。発光素子13は、さらに正孔ブロック層11を有し、それ以外は、前記発光素子11と同様である。正孔ブロック層11は、発光層7と電子輸送層8との間に設けられている。
正孔ブロック層11は、正孔輸送層6から輸送された正孔が発光層7を通過し、電子輸送層8へ移動することを規制する機能を有する。正孔ブロック層11を設けることにより、発光層7中で電子と再結合できなかった正孔を電子輸送層8へ逃すことなく、発光層7中に留めることができる。発光層7中に留まる正孔は、再度電子との再結合の機会を得られるため無駄にならず、発光層7の発光効率をより向上できる。
【0081】
正孔ブロック層11の構成材料(正孔ブロック材料)としては、上述した電子輸送材料を、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
正孔ブロック層11の平均厚さに特に限定はなく、通常、1~500nmの範囲が好ましく、2~300nmの範囲がより好ましく、3~200nmの範囲がさらに好ましい。また、正孔ブロック層11は、単層でも、2層以上が積層された積層構成であってもよい。
正孔ブロック層11は、湿式成膜法又は乾式成膜法により形成できる。湿式製膜法及び乾式製膜法については正孔輸送層6の説明にて上述したとおりである。
発光素子13は、正孔ブロック層11を備えることにより、正孔を発光層7中に留め、発光層7の発光効率のさらなる向上を図ることができるため、より高輝度での発光が可能となる。
また、発光素子13は、可視光を適切に反射させるための反射層、可視光を適切に透過させるための透明光学調整層、可視光を適切に透過及び散乱させるための光散乱層を有していてもよい。
【0082】
可視光を発する発光素子(発光素子1)の実施の形態は、上述の構成に限定されず、他の任意の構成を追加で備えてもよく、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されてもよい。また、発光素子1は、各層の積層順を反転させてもよく、例えば、図3に示す発光素子11において、下基板2上に、順次、陰極5、電子輸送層8、発光層7、正孔輸送層6及び陽極4を積層してもよい。
発光素子11~13は、上述の発光粒子を含むことから、通電したときに、青色及び緑色の優れた発光強度を示す。
【0083】
4-2.励起光を発する発光素子(発光素子2)
発光素子2は、例えば、青色光~紫外光の範囲の波長の励起光を発する発光ダイオードと、当該発光ダイオードの表面に形成され、上述の発光粒子を光変換層とを備える。
発光素子2は、次のようにして製造できる。まず、上述の発光粒子を熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等の封止材と混合し、スラリーを調製する。そして、表面実装タイプであって青色光~紫外光の範囲の波長の励起光を発する発光ダイオードの表面に前記スラリーを注入し、加熱して硬化させて上述の発光粒子を含む皮膜を形成することで、発光素子2を得る。封止剤としては、分散性や成形性の観点から、熱硬化性と常温での流動性を有するシリコーン樹脂が好ましい。
発光素子2は、発光ダイオードが発した励起光を、光変換層に含まれる発光粒子によって変換するため、青色及び緑色の優れた発光強度を示す。
【0084】
5.アプリケーション
次に、上述の発光粒子を用いたアプリケーションについて説明する。
上述の可視光を発する発光素子及び励起光を発する発光素子は、青色及び緑色の発光強度に優れることから、カラーフィルタを備えたカラー表示デバイスへの適用に好適である。ここで、カラー表示デバイスとは、例えば、テレビ、モニター、スマートフォン、携帯電話等のカラー表示を行うデバイスであり、液晶層を用いないタイプと液晶層を用いるタイプのいずれをも包含する。
【0085】
図4に示すカラー表示デバイス12は、電気的に接続された表示部13と制御部14とを備える。制御部14で表示情報に基づいて表示部13を制御し、表示部13で画像情報を表示する。
カラー表示デバイス12は、フルカラー表示とするために、その内部に、RGBのカラーフィルタを備えると共に、例えば、可視光を発する発光素子を備える。この発光素子は、信号を増幅又はスイッチングするための機構(例えば、後述のトランジスタ層700)をさらに備えたこと以外は、上述した発光素子(発光素子1又は発光素子2)と同じ構成のものを用いることができる。発光素子による発光は、RGBのカラーフィルタを通って、RGB成分として抽出される。
【0086】
以下、カラー表示デバイスの一例としての画像表示装置について説明する。図5は、画像表示装置の実施形態を示す概略図であり、図6及び図7は、それぞれトランジスタ層の回路構成を示す概略図である。
【0087】
図5に示す画像表示装置100は、可視光を発する発光素子とトランジスタ層700とを有する。図5における発光素子は、図1に示す発光素子11と同一の構成を備えるが、この構成に限定されない。発光素子がトップエミッション型である場合、トランジスタ層700は、図5に示すように下基板2と陽極4との間に配置される。
【0088】
図6に示すように、トランジスタ層700は、画素電極を構成する陽極4への電流の供給を制御する信号線駆動回路及び走査線駆動回路と、これらの回路の作動を制御する制御回路と、信号線駆動回路に接続された複数の信号線706と、走査線駆動回路に接続された複数の走査線707とを備える。各信号線706と各走査線707との交差部近傍には、図7に示すように、コンデンサ701と、駆動トランジスタ702と、スイッチングトランジスタ708とが設けられている。
コンデンサ701は、一方の電極が駆動トランジスタ702のゲート電極に接続され、他方の電極が駆動トランジスタ702のソース電極に接続されている。駆動トランジスタ702は、ゲート電極がコンデンサ701の一方の電極に接続され、ソース電極がコンデンサ701の他方の電極及び駆動電流を供給する電源線703に接続され、ドレイン電極が発光素子の陽極4に接続されている。
【0089】
スイッチングトランジスタ708は、ゲート電極が走査線707に接続され、ソース電極が信号線706に接続され、ドレイン電極が駆動トランジスタ702のゲート電極に接続されている。また、共通電極705は、発光素子の陰極5を構成している。なお、駆動トランジスタ702及びスイッチングトランジスタ708は、例えば、薄膜トランジスタ等で構成することができる。
【0090】
走査線駆動回路は、走査線707を介して、スイッチングトランジスタ708のゲート電極に走査信号に応じた走査電圧を供給又は遮断し、スイッチングトランジスタ708のオン又はオフする。これにより、走査線駆動回路は、信号線駆動回路が信号電圧を書き込むタイミングを調整する。一方、信号線駆動回路は、信号線706及びスイッチングトランジスタ708を介して、駆動トランジスタ702のゲート電極に映像信号に応じた信号電圧を供給又は遮断し、発光素子に供給する信号電流の量を調整する。
【0091】
したがって、走査線駆動回路から走査電圧がスイッチングトランジスタ708のゲート電極に供給され、スイッチングトランジスタ708がオンすると、信号線駆動回路から信号電圧がスイッチングトランジスタ708のゲート電極に供給される。このとき、この信号電圧に対応したドレイン電流が電源線703から信号電流として発光素子に供給される。発光素子は供給された信号電流に応じて発光する。この発光が、カラー表示デバイス12に設けられたカラーフィルタによってRGB成分として抽出される。発光素子の発光層に含まれる発光粒子は、青色及び緑色の優れた発光強度を示すため、RGB成分を優れた強度で抽出できる。
【0092】
なお、画像表示装置100は、ボトムエミッション型とすることもでき、この場合、トランジスタ層は、例えば、上基板3と陰極5との間に配置される。また、この場合、陰極5が画素電極を構成し、陽極4が共通電極705を構成する。また、トランジスタ層700は、陽極4及び陰極5のうちの一方の電極のみと電気的に接続されてもよく、双方の電極と電気的に接続されてもよい。
【0093】
画像表示装置100は、励起光を発する発光素子を用いた構成であってもよい。この場合、励起光を発する発光素子は、信号を増幅又はスイッチングするための機構(トランジスタ層700)を設けたものを用い、当該発光ダイオードの表面に上述の発光粒子を含む光変換層を備えたものである。
【0094】
以上、本発明のナノ結晶、ナノ結晶の製造方法、ナノ結晶を用いた発光粒子、発光粒子を用いた発光粒子含有分散体、ナノ結晶を用いた発光素子、及び発光素子を用いたカラー表示デバイスについて説明したが、本発明は、上述した実施形態の構成に限定されない。例えば、本発明の発光粒子、発光粒子分散体、発光素子、及びカラー表示デバイスは、それぞれ、上述した実施形態の構成において、他の任意の構成を追加して有していてもよく、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてもよい。また、本発明のナノ結晶の製造方法は、上述した実施形態の構成において、他の任意の目的の工程を有してもよいし、同様の効果を発揮する任意の工程と置換されていてもよい。
【実施例0095】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。
【0096】
A.ナノ結晶又は発光粒子の製造例
<実施例1>
酢酸セシウム(76.8mg、0.4mmol)、酢酸亜鉛(36.7mg、0.2mmol)、1-オクタデセン(2.0mL)、オレイン酸(1.0mL)及びオレイルアミン(1.0mL)からなる混合物を100℃に加熱し減圧下で1時間攪拌した。前記混合物をアルゴン雰囲気とした後、150℃に加熱し、臭化ベンゾイル(0.2mL、1.7mmol)の1-オクタデセン(0.5mL)溶液を加え、150℃で15秒間攪拌した。攪拌した反応液を氷浴することにより室温まで冷却した。冷却して得られた懸濁液に対してヘキサン(4mL)を加え、遠心分離精製(4000rpm、5分)を行った後、上澄みを除去することにより沈殿物を回収した。この沈殿物にヘキサン(2mL)を加えて再分散させた後、酢酸エチル(2mL)を加えた。得られた懸濁液に対して遠心分離精製(10000rpm、5分)を行った後、上澄みを除去して粒子状の沈殿物を得た。この沈殿物を回収し、ヘキサン(4mL)を加えて再分散させることにより、目的化合物を含むヘキサン溶液を得た。
【0097】
得られたヘキサン溶液における目的化合物の濃度は0.5mg/mLであった。この濃度は、所定量のヘキサン溶液を減圧留去して溶媒を揮発させた後、得られた乾燥物の質量を測定して算出した。
目的化合物の形状及び粒径(体積基準)を透過型電子顕微鏡(TEM)で測定したところ、平均粒径は13nmであった。また、目的化合物における金属元素の含有比をICP発光分光分析装置(ICP-AES)で、粒子サイズ分布を動的光散乱(DLS)で、結晶構造をX線回折装置(XRD)によりそれぞれ分析した結果、目的化合物は、CsZnBrで示されるナノ結晶であると確認できた。
【0098】
<実施例2>
実施例1において、臭化ベンゾイル(0.2mL、1.7mmol)に代えて塩化ベンゾイル(0.2mL、1.7mmol)を使用した以外は、実施例1と同様にして、目的化合物を含むヘキサン溶液を得た。
目的化合物の粒径(体積基準)をTEMで測定したところ、平均粒径は10nmであった。また、ICP-AES、DLS及びXRD分析により、目的化合物は、CsZnClで示されるナノ結晶であると確認できた。
【0099】
<実施例3>
酢酸セシウム(76.8mg、0.4mmol)、酢酸亜鉛(36.7mg、0.2mmol)、酢酸マンガン(17.3mg、0.1mmol)、1-オクタデセン(2.0mL)、オレイン酸(1.0mL)及びオレイルアミン(1.0mL)からなる混合物を100℃に加熱し減圧下で1時間攪拌した。前記混合物をアルゴン雰囲気とした後、150℃に加熱し、臭化ベンゾイル(0.2mL、1.7mmol)の1-オクタデセン(0.5mL)溶液を加え、150℃で15秒間攪拌した。攪拌した反応液を氷浴することにより室温まで冷却した。冷却して得られた懸濁液に対してヘキサン(4mL)を加え、遠心分離精製(4000rpm、5分)を行った後、上澄みを除去することにより沈殿物を回収した。この沈殿物にヘキサン(2mL)を加えて再分散させた後、酢酸エチル(2mL)を加えた。得られた懸濁液に対して遠心分離精製(10000rpm、5分)を行った後、上澄みを除去して粒子状の沈殿物を得た。この沈殿物を回収し、ヘキサン(4mL)を加えて再分散させることにより、目的化合物を含むヘキサン溶液を得た。
【0100】
得られたヘキサン溶液における目的化合物の濃度は0.5mg/mLであった。この濃度は、所定量のヘキサン溶液を減圧留去して溶媒を揮発させた後、得られた乾燥物の質量を測定して算出した。
目的化合物の形状及び粒径(体積基準)をTEMで測定したところ、平均粒径は11nmであった。また、ICP-AES、DLS及びXRD分析により、目的化合物は、2価のマンガン(Mn2+)がドープされた、CsZnBrで示されるナノ結晶であると確認できた。
また、ナノ結晶に対し、高分解能透過型顕微鏡(HR-TEM;ADF-STEM-EDS)によってセシウム(Cs)、亜鉛(Zn)、臭素(Br)及びマンガン(Mn)の各元素マッピングを取得したところ、特定元素の偏在は観測されなかった。したがって、本発明の方法では、Mn元素主相の凝集体は生成していないと推察される。
得られたナノ結晶を発光粒子Aとした。以上により、発光粒子Aを含むヘキサン溶液を得た。
【0101】
<実施例4>
実施例3において、酢酸亜鉛の使用量を0.2mmolから0.196mmolに変更し、酢酸マンガン(17.3mg、0.1mmol)に代えて酢酸銅(I)(0.004mmol)を用い、臭化ベンゾイル(0.2mL、1.7mmol)に代えて塩化ベンゾイル(0.2mL、1.7mmol)を使用した以外は、実施例3と同様にして、目的化合物を含むヘキサン溶液を得た。
目的化合物の粒径(体積基準)をTEMで測定したところ、平均粒径は9nmであった。また、ICP-AES、DLS及びXRD分析により、目的化合物は、1価の銅(Cu)がドープされた、CsZnClで示されるナノ結晶であると確認できた。
得られたナノ結晶を発光粒子Bとした。以上により、発光粒子Bを含むヘキサン溶液を得た。
【0102】
<実施例5>
実施例3において、酢酸亜鉛の使用量を0.2mmolから0.19mmolに変更し、酢酸マンガンの使用量を0.1mmolから0.0095mmolに変更した以外は、実施例3と同様にして、目的化合物を含むヘキサン溶液を得た。
目的化合物の粒径(体積基準)をTEMで測定したところ、平均粒径は12nmであった。また、ICP-AES、DLS及びXRD分析により、目的化合物は、2価のマンガン(Mn2+)がドープされた、CsZnBrで示されるナノ結晶であると確認できた。
得られたナノ結晶を発光粒子Cとした。以上により、発光粒子Cを含むヘキサン溶液を得た。
【0103】
<実施例6>
実施例3において、酢酸セシウムの使用量を0.4mmolから0.3mmolに変更した以外は、実施例3と同様にして、目的化合物を含むヘキサン溶液を得た。
目的化合物の粒径(体積基準)をTEMで測定したところ、平均粒径は10nmであった。また、ICP-AES、DLS及びXRD分析により、目的化合物は、2価のマンガン(Mn2+)がドープされた、CsZnBrで示されるナノ結晶であると確認できた。
得られたナノ結晶を発光粒子Dとした。以上により、発光粒子Dを含むヘキサン溶液を得た。
【0104】
<実施例7>
実施例3において、酢酸セシウムの使用量を0.4mmolから0.6mmolに変更した以外は、実施例3と同様にして、目的化合物を含むヘキサン溶液を得た。
目的化合物の粒径(体積基準)をTEMで測定したところ、平均粒径は13nmであった。また、ICP-AES、DLS及びXRD分析により、目的化合物は、2価のマンガン(Mn2+)がドープされた、CsZnBrで示されるナノ結晶であると確認できた。
得られたナノ結晶を発光粒子Eとした。以上により、発光粒子Eを含むヘキサン溶液を得た。
【0105】
<比較例1>
実施例3において、酢酸セシウムの使用量を0.4mmolから0.2mmolに変更し、酢酸亜鉛の使用量を0.2mmolから0.38mmolに変更した以外は、実施例3と同様にして、目的化合物を含むヘキサン溶液を得た。
ICP-AES、DLS及びXRD分析により、目的化合物は、CsZnBrで示されるナノ結晶であり、2価のマンガン(Mn2+)はドープされておらず発光しないことが確認された。
【0106】
<比較例2>
実施例3において、酢酸セシウムの使用量を0.4mmolから0.2mmolに変更し、酢酸亜鉛の使用量を0.2mmolから0.392mmolに変更し、酢酸マンガン(17.3mg、0.1mmol)に代えて酢酸銅(I)(0.008mmol)を用い、臭化ベンゾイル(0.2mL、1.7mmol)に代えて塩化ベンゾイル(0.2mL、1.7mmol)を使用した以外は、実施例3と同様にして、目的化合物を含むヘキサン溶液を得た。
ICP-AES、DLS及びXRD分析により、目的化合物は、Cuがドープされた、CsZnClで示されるナノ結晶であると確認できた。
得られたナノ結晶を発光粒子Fとした。以上により、発光粒子Fを含むヘキサン溶液を得た。
【0107】
B.発光粒子の発光特性評価
<評価例1>
実施例3で得られた発光粒子Aを含むヘキサン溶液(0.025mL)と第1のシリコーン(東レ・ダウコーニング社、OE6631-B(0.05g)とを混合し、40℃で1時間加熱することにより溶媒を除去した。得られた乾燥物に第2のシリコーン(東レ・ダウコーニング社、OE6631-A(0.025g)を加えた後、減圧下で発泡を除去することにより、発光粒子Aを含む液状組成物を得た。
得られた発光粒子Aを含む液状組成物を発光ダイオードの発光面に塗布し、150℃で2時間加熱して液状組成物を硬化することにより、発光粒子Aを含む光変換層を発光面上に形成して、発光ダイオードの発光面上に発光粒子Aを含む光変換層を備えた評価用チップAを作製した。評価用チップAは、本件発明に係る励起光を発する発光素子に相当する。
評価用チップAにおいて、発光ダイオードから発光粒子Aを含む光変換層に励起光を照射することにより、発光粒子Aの発光スペクトルを測定したところ、励起光450nmで緑色発光が観測された。フォトルミネッセンス量子収率測定装置(浜松ホトニクス株式会社製、「Quantaurus-QY」)による、発光スペクトル及び量子収率励起波長(λex)、量子収率(QY)、吸収率、発光波長(λem)、半値幅(FWHM)を表1に示す。
【0108】
<評価例2~5>
実施例4~7で得られた発光粒子B~Eについて、評価例1と同様にして、各粒子を含む液状組成物を得、評価用チップB~Eを作成して発光スペクトルを測定した。λex、QY、吸収率、λem、FWHMの測定値を表1に示す。
発光粒子Bを含む光変換層を備えた評価用チップBでは、励起光260nmで青色発光が観測された。
発光粒子Cを含む光変換層を備えた評価用チップCでは、励起光370nmで緑色発光が観測された。
発光粒子Dを含む光変換層を備えた評価用チップD、及び発光粒子Eを含む光変換層を備えた評価用チップEでは、いずれも励起光450nmで緑色発光が観測された。
【0109】
<評価例6>
比較例2で得られた発光粒子Fについて、評価例1と同様にして、各粒子を含む液状組成物を得、評価用チップを作成して発光スペクトルを測定したが、発光は観察されなかった。
以上の結果をまとめて表1に示す。
【0110】
【表1】
【0111】
亜鉛に対するセシウムの含有量が本発明で規定する範囲外の場合は、生成物はCsZnXのナノ結晶であり、係るCsZnXにCuがドープされたナノ結晶は酸化を受けやすく、発光特性を有さなかった(比較例2)。
これに対し、上記の実施例のとおり、亜鉛に対するセシウムの含有量を本発明で規定する範囲内とすると、CsZnXをナノ結晶として初めて得ることができた(実施例1~2)。
また、ドープ金属がない、CsZnX及びCsZnXの各々のナノ結晶においては発光が観察されないが、CsZnXにMn2+又はCuをドープしたナノ結晶に基づく発光粒子は、CsZnXにMn2+又はCuがドープされたナノ結晶に基づく発光粒子と比べて、酸素に対し高い許容性を有しており、良好な発光特性(青色発光及び緑色発光)を示した(実施例3~7)。すなわち、本発明のナノ結晶CsZnXは、発光素子の母体として優れることがわかる。
【0112】
<可視光を発する発光ダイオードの作製>
実施例3~7の発光粒子A~Eを用いて、図8に示す可視光を発する発光素子を、発光素子A~Eとして作製した。図8に示す発光素子1は、図3に示す発光素子の下基板2と上基板3との間の積層構造を反転させたものである。
まず、平均厚さ150nmのITO膜が形成されたガラス基板を用意した。ガラス基板は図8に示す下基板2に相当し、ITO膜は陰極5に相当する。次に、前記ガラス基板のITO膜上に複数の膜を成膜した後、さらに他のガラス基板を積層した。各膜は図8に示す各層10,8,11,7,6,9,4に相当し、他のガラス基板は上基板3に相当する。
【0113】
各層の成膜は以下のようにして行った。乾燥窒素置換されたグローブボックス内で、前記ガラス基板のITO膜上に、ポリ(エチレンイミン)の0.1質量%イソプロパノール溶液をスピンコート(5000rpm、60秒)し、真空乾燥させることにより、ポリ(エチレンイミン)からなる膜(第1のPEI膜、電子注入層10に相当)を形成した。第1のPEI膜上に、ZnOナノ結晶のエタノール分散液をスピンコート(3000rpm、60秒)し、真空乾燥させることにより、ZnO膜(電子輸送層8に相当)を形成した。ZnO膜上に、ポリ(エチレンイミン)の2-メトキシエタノール溶液をスピンコート(5000rpm、60秒)し、真空乾燥させることにより、第2のPEI膜(正孔ブロック層11に相当)を形成した。続いて、第2のPEI膜上に、各発光粒子を含むヘキサン溶液をスピンコート(2000rpm、60秒)し、真空乾燥させることにより、発光粒子を含む膜を形成した。この発光粒子を含む膜は図8に示す発光層7に相当する。
【0114】
次に、ITO膜、第1のPEI膜、ZnO膜、第2のPEI膜及び発光粒子を含む膜が積層したガラス基板をチャンバー内に収容し、1×10-4Paの減圧下で真空蒸着法によって以下の化学式で表される化合物(1,1-ビス[(ジ-4-トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン)からなる膜(TAPC膜、正孔輸送層6に相当)を形成した。次いで、同条件で、TAPC膜上にMoO膜(正孔注入層9に相当)とAl膜(陽極4に相当)を順次形成した。チャンバー内を大気圧に戻し、上述の膜が成膜されたガラス基板をチャンバーから取り出した後、Al膜の上にガラス基板(上基板3に相当)を取り付けた。以上によって、図8に示す発光素子(発光素子A~E)を作製した。
各膜の膜厚は、ITO膜が150nmであり、第1のPEI膜が3nmであり、ZnO膜が10nmであり、第2のPEI膜が3nmであり、発光粒子を含む膜が50nmであり、TAPC膜が30nmであり、MoO膜が10nmであり、Al膜が50nmであった。
【0115】
<発光素子のカラー表示デバイスへの適用>
評価用チップA~E、又は上記で作成した可視光を発する発光素子A~Eを、図5に示すカラー表示デバイス12に搭載した。カラー表示デバイス12は、発光粒子による発光をRGBカラーフィルタに通して、RGB成分を抽出することができた。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明のナノ結晶は青色発光及び緑色発光に優れており、発光素子、カラー表示デバイス、液晶表示素子等の各種デバイスへ適用できる。
【符号の説明】
【0117】
1 発光素子
2 下基板
3 上基板
4 陽極
5 陰極
6 正孔輸送層
7 発光層
8 電子輸送層
9 正孔注入層
10 電子注入層
11 正孔ブロック層
12 カラー表示デバイス
13 表示部
14 制御部
100 画像表示装置
700 トランジスタ層
701 コンデンサ
702 駆動トランジスタ
703 電源線
705 共通電極
706 信号線
707 走査線
708 スイッチングトランジスタ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8