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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025473
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
B41J2/165 305
B41J2/165 303
B41J2/165 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128948
(22)【出願日】2022-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】赤石 信之
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056JB04
2C056JB07
2C056JB08
2C056JB09
2C056JB15
2C056JC10
(57)【要約】
【課題】清掃部材による液体吐出ヘッドの清掃能力を低下させる等の問題を抑制する。
【解決手段】液体吐出ヘッド100と、前記液体吐出ヘッドの吐出面に付着する液体を払拭して清掃する清掃部材71,72と、前記清掃部材に付着する液体を付着させて該清掃部材から除去する除去部材81,82と、を有する液体を吐出する装置であって、前記液体の粘性を低下させる粘性低下液を前記除去部材に供給する供給手段60を有することを特徴とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドの吐出面に付着する液体を払拭して清掃する清掃部材と、
前記清掃部材に付着する液体を付着させて該清掃部材から除去する除去部材と、を有する液体を吐出する装置であって、
前記液体の粘性を低下させる粘性低下液を前記除去部材に供給する供給手段を有することを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体を吐出する装置において、
前記清掃部材を移動させる移動手段を有し、
前記供給手段は、前記清掃部材の移動に連動して前記除去部材に前記粘性低下液を供給することを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体を吐出する装置において、
前記供給手段は、前記粘性低下液を保持するタンク部と、前記タンク部から供給口を介して供給される粘性低下液を前記除去部材に供給する液供給部と、前記供給口を開閉する開閉部とを備え、
前記開閉部は、前記清掃部材の移動に連動して開閉することを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液体を吐出する装置において、
前記開閉部は、前記清掃部材の当接部が該開閉部の被当接部に当接することで、前記供給口を開状態にし、前記清掃部材の当接部が該開閉部の被当接部から離間することで、前記供給口を閉状態にすることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の液体を吐出する装置において、
前記液供給部は、前記タンク部から供給される粘性低下液をスポンジ部材に保持し、該スポンジ部材に前記除去部材を押し付けることで、該スポンジ部材に保持された粘性低下液を該除去部材に供給することを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドの吐出面に付着する液体を払拭して清掃する清掃部材と、前記清掃部材に付着する液体を付着させて該清掃部材から除去する除去部材と、を有する液体を吐出する装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、インクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)の吐出面をワイパーブレード(清掃部材)で払拭し、これによりワイパーブレードに付着したインク(液体)をワイパー払拭部(除去部材)で払拭するインクジェット印刷装置が開示されている。ワイパー払拭部は、スポンジで構成され、ワイパーブレードに付着したインクをスポンジで吸収することによりワイパーブレードから除去する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、ワイパーブレード等の清掃部材からワイパー払拭部等の除去部材に付着させたインク等の液体が除去部材から清掃部材へ逆戻りし、清掃部材による液体吐出ヘッドの清掃能力を低下させる等の問題が生じるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドの吐出面に付着する液体を払拭して清掃する清掃部材と、前記清掃部材に付着する液体を付着させて該清掃部材から除去する除去部材と、を有する液体を吐出する装置であって、前記液体の粘性を低下させる粘性低下液を前記除去部材に供給する供給手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、除去部材上の液体を清掃部材へ逆戻りしにくくして、清掃部材による液体吐出ヘッドの清掃能力を低下させる等の問題を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の画像形成システムの一例を示す概略構成図。
図2】同画像形成システムの画像形成装置におけるヘッドユニットの構成を説明するために、ヘッドユニットに対向する連続シートのシート面法線方向からヘッドユニットを見たときの説明図。
図3】同ヘッドユニットを構成する液体吐出ヘッドを示す外観斜視説明図。
図4】同液体吐出ヘッドのノズル列方向と直交する断面説明図。
図5】画像形成装置におけるワイパーユニット及びワイパークリーナユニットを示す斜視図。
図6】(a)~(d)は、同液体吐出ヘッドの吐出性能を回復する際の、同ワイパーユニットによる液体吐出ヘッドの吐出面を払拭するワイピング動作を説明するための説明図。
図7】(a)~(d)は、ワイパークリーナによりワイパーブレードを払拭する従来のワイパー清掃動作を説明するための説明図。
図8】(a)~(c)は、実施形態における洗浄液供給ユニットの構成及び洗浄液供給動作を説明するための説明図。
図9】(a)~(d)は、ワイパークリーナによりワイパーブレードを払拭する実施形態のワイパー清掃動作を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を、液体を吐出する装置であるインクジェットプリンタからなる画像形成装置を含む画像形成システムに適用した一実施形態について説明する。
なお、本発明は、液体吐出ヘッドの方式に限定されることはなく、ピエゾ方式の液体吐出ヘッド、バブルジェット(登録商標)方式の液体吐出ヘッド、静電型の液体吐出ヘッド等のいずれの方式でも適用可能である。
【0009】
図1は、本実施形態の画像形成システム1000の一例を示す概略構成図である。
本実施形態の画像形成システム1000は、記録材としての連続体である連続シート10を搬送する巻き出し装置1と、巻き出し装置1により搬送される連続シート10に対して液体を吐出して画像を形成する画像形成装置5と、画像が形成された連続シート10を排出する巻き取り装置9と、を備えている。画像形成装置5は、巻き出し装置1により搬送された連続シート10をヘッドユニット50に搬送する搬送部3、画像が形成された連続シート10を乾燥する乾燥部7などを備えている。
【0010】
連続シート10は、巻き出し装置1のシートロール11から送り出され、巻き出し装置1、搬送部3、乾燥部7、巻き取り装置9の各ローラによって搬送されて、巻き取り装置9の印刷ロール91にて巻き取られる。連続シート10は、画像形成装置5において、ヘッドユニット50に対向して搬送され、ヘッドユニット50から吐出される液体(画像形成用インク)によって画像が形成される。
【0011】
ヘッドユニット50には、例えば、シート搬送方向Aの上流側から順に4色分のフルライン型ヘッドアレイ51K,51C,51M,51Yと、各ヘッドアレイ51K,51C,51M,51Yにそれぞれ対応する液体循環機構200K,200C,200M,200Yとが配置されている。各ヘッドアレイ51K,51C,51M,51Yは、1又は2以上の液体吐出ヘッドを備えており、それぞれ、搬送される連続シート10に対してブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の液体を吐出する。
【0012】
図2は、ヘッドユニット50の構成を説明するために、ヘッドユニット50に対向する連続シート10のシート面法線方向からヘッドユニット50を見たときの説明図である。
本実施形態の各ヘッドアレイ51K,51C,51M,51Yは、図2に示すように、液体吐出ヘッド100をベース部材52上に千鳥状に並べて配置したものである。詳しくは、各ヘッドアレイ51K,51C,51M,51Yに配置される複数の液体吐出ヘッド100は、ノズル列方向がシート幅方向(シート搬送方向Aに対して直交する方向)に一致するように配置される。そして、隣り合う液体吐出ヘッド100同士のシート搬送方向位置を互い違いにずらして、隣り合う液体吐出ヘッド100のノズル列のシート幅方向位置が互いに部分的に重複するように、配置される。
【0013】
図3は、本実施形態における液体吐出ヘッド100を示す外観斜視説明図である。
図4は、本実施形態における液体吐出ヘッド100のノズル列方向と直交する断面説明図である。
本実施形態の液体吐出ヘッド100は、ノズル板101と、流路板102と、振動板部材103とを積層接合した構造部を備えている。また、液体吐出ヘッド100は、振動板部材103の振動領域(振動板)130を変位させる圧力発生手段としての圧電アクチュエータ111と、液体吐出ヘッド100のフレーム部材を兼ねている共通液室部材120と、カバー129とを備えている。なお、流路板102と振動板部材103とで構成される部分を流路部材140という。
【0014】
ノズル板101には、液体を吐出する複数のノズル104が形成されている。
【0015】
流路板102には、ノズル104にノズル連通路105を介して連通している圧力室としての個別液室106、個別液室106に通じる供給側流体抵抗部107、供給側流体抵抗部107に通じる液導入部108となる貫通穴や溝部が形成されている。ノズル連通路105は、ノズル104と個別液室106とにそれぞれ連なって通じる流路である。また、液導入部108は、振動板部材103の開口109を介して供給側共通液室110に通じている。
【0016】
振動板部材103は、流路板102の個別液室106の壁面を形成する変形可能な振動領域130を有する。振動板部材103は、例えば2層構造(限定されない)であり、流路板102側から、薄肉部を形成する第1層と、厚肉部を形成する第2層とで構成され、第1層で個別液室106に対応する部分に変形可能な振動領域130を形成している。
【0017】
振動板部材103の個別液室106とは反対側には、振動板部材103の振動領域130を変形させる駆動手段(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエータ111が配置されている。圧電アクチュエータ111は、例えば、ベース部材113上に接合した圧電部材をハーフカットダイシングによって溝加工して所要数の柱状の圧電素子112を所定の間隔で櫛歯状に形成したものである。圧電素子112は、振動板部材103の振動領域130に形成した島状の厚肉部である凸部130aに接合される。また、圧電素子112には、フレキシブル配線部材115が接続されている。
【0018】
共通液室部材120には、供給側共通液室110と排出側共通液室150とが形成されている。供給側共通液室110は、供給ポート171に通じ、排出側共通液室150は排出ポート181に通じている。共通液室部材120は、例えば、第1共通液室部材121及び第2共通液室部材122によって構成され、第1共通液室部材121が流路部材140の振動板部材103側に接合され、第1共通液室部材121に第2共通液室部材122が積層して接合されている。
【0019】
第1共通液室部材121は、液導入部108に通じる供給側共通液室110の一部である下流側共通液室110Aと、排出流路151に通じる排出側共通液室150とを形成している。また、第2共通液室部材122は、供給側共通液室110の残部である上流側共通液室110Bを形成している。また、流路板102には、各個別液室106にノズル連通路105を介して通じる流路板102の面方向に沿って延びる排出流路151が形成されている。排出流路151は排出側共通液室150に通じている。
【0020】
本実施形態の液体吐出ヘッド100においては、例えば、圧電素子112に印加する電圧を基準電位(中間電位)から下げることによって圧電素子112が収縮し、振動板部材103の振動領域130が引かれて個別液室106の容積が膨張する。これにより、個別液室106内に液体が流入する。一方、圧電素子112に印加する電圧を上げて圧電素子112を積層方向に伸長させ、振動板部材103の振動領域130をノズル104に向かう方向へ変形させることで、個別液室106の容積が収縮する。これにより、個別液室106内の液体が加圧され、ノズル104から液体が吐出される。
【0021】
ノズル104から吐出されない個別液室106内の液体は、排出流路151から排出側共通液室150へと排出され、排出側共通液室150から外部の循環経路を通じて供給側共通液室110に再度供給される。なお、ヘッドの駆動方法については、上記の例(引き-押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行うこともできる。
【0022】
次に、本実施形態におけるワイパーユニット70及びワイパークリーナユニット80の構成及び動作について説明する。
図5は、ワイパーユニット70及びワイパークリーナユニット80を示す斜視図である。
【0023】
ワイパーユニット70は、ワイパーホルダ72に支持された清掃部材としての2つのワイパーブレード71と、ワイパーホルダ72を駆動するワイパー駆動部73とを備えている。2つのワイパーブレード71は、ワイパーホルダ72上にシート搬送方向Aに沿って並ぶように配置されている。各ワイパーブレード71は、例えば、可撓性を有する樹脂製の板状部材によって構成される。なお、清掃部材は、このようなワイパーブレード71の構成に限らず、ローラ構成のものや、他の構成のものであってもよい。
【0024】
本実施形態のワイパーユニット70では、連続シート10の搬送領域に対してシート幅方向の一方側をワイパーホルダ72の待機位置(ワイパー待機位置)(図5に示されるワイパーホルダ72の位置)としている。ワイパー駆動部73は、ヘッドユニット50の各ヘッドアレイ51K,51C,51M,51Yを構成する各液体吐出ヘッド100の吐出面の近傍を通るように、ワイパー待機位置から連続シート10の搬送領域の反対側まで、シート幅方向に平行なワイパー移動方向Bに沿ってワイパーホルダ72を往復移動させる。
【0025】
ワイパーユニット70は、ワイパー駆動部73の駆動によりワイパーホルダ72をワイパー移動方向Bに沿って移動させることにより、ワイパーホルダ72上のワイパーブレード71が液体吐出ヘッド100の吐出面に接触しながらシート幅方向に沿って移動し、液体吐出ヘッド100の吐出面に付着しているインク(液体)や異物を払拭する。
【0026】
ワイパークリーナユニット80は、クリーナホルダ82に支持された除去部材としてのワイパークリーナ81と、クリーナホルダ82を駆動するクリーナ駆動部83とを備えている。ワイパークリーナ81は、ワイパーブレード71に付着するインク(液体)等を付着させてワイパーブレード71から除去する。本実施形態のワイパークリーナ81は、ワイパーブレード71に付着するインク(液体)を吸収して保持することが可能なスポンジ部材で構成されている。ワイパークリーナ81には、ワイパーブレード71が通過可能なスリット81aが形成されており、ワイパーブレード71をシート幅方向両側からワイパークリーナ81のスリット81aで挟み込むようにして、ワイパーブレード71からインクを除去する。
【0027】
なお、除去部材は、このようなワイパークリーナ81の構成に限らず、樹脂製の構成のものや、他の構成のものであってもよい。
【0028】
本実施形態のワイパークリーナユニット80では、ワイパーユニット70のワイパー待機位置に対してシート搬送方向Aの一方側を、クリーナホルダ82の待機位置(クリーナ待機位置)(図5に示されるクリーナホルダ82の位置)としている。クリーナ駆動部83は、ワイパー待機位置に位置するワイパーユニット70のワイパーブレード71の近傍を通過するように、シート搬送方向Aに平行なクリーナ移動方向Cに沿ってクリーナホルダ82を往復移動させる。
【0029】
ワイパークリーナユニット80は、クリーナ駆動部83の駆動によりクリーナホルダ82をクリーナ移動方向Cに沿って移動させることにより、クリーナホルダ82上のワイパークリーナ81のスリット81a内をワイパーブレード71が通過する。この通過時にワイパーブレード71をシート幅方向両側からワイパークリーナ81のスリット81aで挟み込み、ワイパーブレード71からインクを除去する。
【0030】
なお、クリーナ駆動部83は、クリーナホルダ82以外の構成部材を駆動させる駆動部を利用してもよい。例えば、本実施形態のヘッドユニット50が液体吐出ヘッド100の吐出性能の回復、維持などのために、液体吐出ヘッド100の吐出面をキャッピングするキャッピング部材を備えている場合には、キャッピング部材が液体吐出ヘッド100の吐出面に対して接離するようにキャッピング部材を駆動させる駆動部を、クリーナ駆動部83として利用してもよい。
【0031】
図6(a)~(d)は、液体吐出ヘッド100の吐出性能を回復する際の、ワイパーユニット70による液体吐出ヘッド100の吐出面を払拭するワイピング動作を説明するための説明図である。
【0032】
液体吐出ヘッド100の吐出性能を回復する場合、まず、図6(a)に示すように、液体吐出ヘッド100のノズル104からインクIを突出した状態にする。その後、ワイパーユニット70のワイパー駆動部73を駆動して、ワイパーホルダ72をワイパー移動方向Bに沿って移動させる。これにより、図6(b)に示すように、ワイパーホルダ72上のワイパーブレード71が液体吐出ヘッド100の吐出面に接触しながらシート幅方向に沿って移動し、液体吐出ヘッド100の吐出面上のインクIを払拭する。
【0033】
ワイパーブレード71による液体吐出ヘッド100の吐出面上のインクIの払拭が終了すると、図6(c)に示すように、インクIがワイパーブレード71上に付着した状態になる。その後、ワイパーユニット70のワイパー駆動部73は、図6(d)に示すように、ワイパーホルダ72をワイパー移動方向Bに沿ってワイパー待機位置まで戻るように移動させる。ワイパー待機位置へ戻るときには、ワイパーブレード71が液体吐出ヘッド100の吐出面に接触しない移動ルートで移動する。そして、次のワイピング動作が開始されるまではワイパーホルダ72をワイパー待機位置に待機させる。
【0034】
ワイパーブレード71にインクIが付着したまま放置されると、インクIの粘性が乾燥により高まり、以後のワイピング動作において、ワイパーブレード71のインクIが液体吐出ヘッド100の吐出面と粘着して、吐出面に逆戻りするおそれが高くなる。インクIが吐出面に逆戻りすると、液体吐出ヘッド100の吐出不良を引き起こす原因となる。また、ワイパーブレード71にインクIが固着した状態になると、ワイパーブレード71と液体吐出ヘッド100の吐出面との密着性が損なわれ、ワイパーブレード71の清掃能力が低下する結果、液体吐出ヘッド100の吐出不良を引き起こすおそれがある。そのため、従来、ワイパーブレード71に付着したインクIを除去部材であるワイパークリーナによりワイパーブレード71から除去する構成が採用されている。
【0035】
図7(a)~(d)は、ワイパークリーナによりワイパーブレード71を払拭する従来のワイパー清掃動作を説明するための説明図である。
【0036】
液体吐出ヘッド100の吐出面を払拭した後のワイパーブレード71には、図7(a)に示すように、ワイパーブレード71上にインクIが付着している。このインクをワイパーブレード71から除去する場合、図7(b)に示すように、ワイパークリーナユニット80のクリーナ駆動部83を駆動して、クリーナホルダ82をクリーナ移動方向Cに沿って移動させる。これにより、ワイパークリーナ81がワイパーブレード71に接触しながらクリーナ移動方向Cに沿って移動し、ワイパーブレード71に付着しているインクIを払拭する。
【0037】
ワイパークリーナ81によるワイパーブレード71の払拭が終了すると、図7(c)に示すように、インクIがワイパークリーナ81に付着した状態になる。その後、ワイパークリーナユニット80のクリーナ駆動部83は、図7(d)に示すように、クリーナホルダ82をクリーナ移動方向Cに沿ってクリーナ待機位置まで戻るように移動させる。クリーナ待機位置へ戻るときには、ワイパークリーナ81がワイパーブレード71に接触しない移動ルートで移動する。そして、次のワイパー清掃動作が開始されるまではクリーナホルダ82をクリーナ待機位置に待機させる。
【0038】
ここで、ワイパークリーナ81にインクが付着したまま放置されると、インクの粘性が乾燥により高まり、以後のワイパー清掃動作において、ワイパークリーナ81のインクがワイパーブレード71と粘着して、ワイパーブレード71に逆戻りするおそれが高くなる。インクがワイパーブレード71に逆戻りすると、ワイパーブレード71に逆戻りしたインクが液体吐出ヘッド100の吐出面に付着して、液体吐出ヘッド100の吐出不良を引き起こす原因となる。また、ワイパークリーナ81にインクが固着した状態になると、ワイパークリーナ81でインクを吸い取りにくくなり、ワイパーブレード71にインク除去残りが生じて、ワイパーブレード71の清掃能力が低下し、液体吐出ヘッド100の吐出不良を引き起こすおそれがある。
【0039】
そこで、本実施形態においては、インクIの粘性を低下させる粘性低下液である洗浄液Sをワイパークリーナ81に供給する供給手段としての洗浄液供給ユニット60を設けている。この洗浄液供給ユニット60から所定のタイミングでワイパークリーナ81に洗浄液Sを供給することで、ワイパークリーナ81に付着するインクIの粘性が高まることを抑制することができる。その結果、ワイパークリーナ81上のインクIがワイパーブレード71へ逆戻りしにくくなる。
【0040】
図8(a)~(c)は、洗浄液供給ユニット60の構成及び動作(洗浄液供給動作)を説明するための説明図である。
図9(a)~(d)は、本実施形態のワイパークリーナ81によりワイパーブレード71を払拭するワイパー清掃動作を説明するための説明図である。
【0041】
本実施形態の洗浄液供給ユニット60は、図5に示すように、ワイパークリーナユニット80のクリーナ待機位置に対して、ワイパーユニット70のワイパー待機位置とはシート搬送方向反対側に、配置されている。洗浄液供給ユニット60は、洗浄液Sを保持するタンク部としての洗浄液タンク61と、洗浄液タンク61から供給口61aを介して供給される洗浄液Sをワイパークリーナ81に供給する液供給部としての洗浄液供給部62と、洗浄液タンク61の供給口61aを開閉する開閉部としての開閉弁63とを備えている。洗浄液供給部62は、スポンジ部材で構成され、洗浄液タンク61から供給される洗浄液Sを保持する。また、ワイパークリーナ81が洗浄液供給部62に接触すると、洗浄液供給部62に保持されている洗浄液Sが染み出してワイパークリーナ81に供給される。
【0042】
以下の説明では、洗浄液供給ユニット60の洗浄液供給動作を開始するタイミングとして、ワイパークリーナユニット80によるワイパー清掃動作を開始する前のタイミングとする例で説明するが、これに限られない。例えば、ワイパークリーナユニット80がワイパー清掃動作を終了した後のタイミングでもよいし、ワイパークリーナユニット80以外の構成部材の動作(例えば、液体吐出ヘッド100の吐出面をキャッピングするキャッピング部材の動作)に合わせたタイミングであってもよい。
【0043】
ワイパークリーナユニット80によるワイパー清掃動作を行う際、ワイパー清掃動作を開始する前のタイミング、例えば、ワイパーユニット70のワイピング動作のタイミングで、洗浄液供給動作を開始する。洗浄液供給動作では、まず、図8(a)に示すように、ワイパークリーナユニット80のクリーナ駆動部83を駆動して、クリーナホルダ82を、ワイパーユニット70のワイパー待機位置とは反対側の洗浄液供給ユニット60に向けて、クリーナ移動方向Cに沿って移動させる。
【0044】
この移動により、ワイパークリーナユニット80のクリーナホルダ82の移動方向先端側の当接部82aが洗浄液供給ユニット60の開閉弁63の被当接部63aに当接すると、その当接圧によって開閉弁63が開く方向へ移動し、図8(b)に示すように、洗浄液タンク61の供給口61aが開状態になる。供給口61aが開状態になると、洗浄液タンク61内の洗浄液Sが供給口61aから流出し、供給口61aに隣接しているスポンジ部材からなる洗浄液供給部62に染み出るようにして洗浄液供給部62に保持される。
【0045】
一方、開閉弁63が開状態になる位置まで移動したクリーナホルダ82上のワイパークリーナ81は、図8(b)に示すように、洗浄液供給部62に当接し、洗浄液供給部62を押し込む位置まで移動する。これにより、図8(c)に示すように、洗浄液供給部62に保持された洗浄液Sがワイパークリーナ81側に染み出して吸い取られ、ワイパークリーナ81に洗浄液Sが供給される。
【0046】
その後、図9(a)に示すように、ワイパークリーナユニット80のクリーナ駆動部83を駆動して、クリーナホルダ82を、ワイパーユニット70のワイパー待機位置に向けて、クリーナ移動方向Cに沿って移動させる。これにより、クリーナホルダ82の当接部82aが洗浄液供給ユニット60の開閉弁63の被当接部63aから離間すると、開閉弁63が付勢手段としてのバネ64によって閉じる方向へ移動し、図9(a)に示すように、洗浄液タンク61の供給口61aが閉状態になる。
【0047】
そして、ワイパー待機位置に向けてクリーナ移動方向Cに沿って移動するクリーナホルダ82がワイパー待機位置を通過するとき、図9(b)に示すように、ワイパー待機位置に位置するワイパーブレード71にワイパークリーナ81が接触しながら移動し、ワイパーブレード71に付着しているインクIを払拭する。
【0048】
このとき、本実施形態では、洗浄液供給ユニット60によりワイパークリーナ81に洗浄液Sが供給されるため、ワイパークリーナ81に以前から付着しているインクIの乾燥が抑えられている。そのため、インクIの粘性が高まることが抑制され、ワイパークリーナ81からワイパーブレード71へのインクIの逆戻りが抑制される。したがって、インクIの逆戻りによりワイパーブレード71の清掃能力が低下してしまうことが抑制される。
【0049】
ワイパークリーナ81によるワイパーブレード71の払拭が終了すると、図9(c)に示すように、ワイパークリーナ81には新たに払拭したインクIが付着した状態になる。その後、ワイパークリーナユニット80のクリーナ駆動部83は、図9(d)に示すように、クリーナホルダ82をクリーナ移動方向Cに沿ってクリーナ待機位置まで戻るように移動させる。
【0050】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、液体吐出ヘッド100と、前記液体吐出ヘッドの吐出面に付着する液体(例えばインクI)を払拭して清掃する清掃部材(例えばワイパーブレード71及びワイパーホルダ72)と、前記清掃部材に付着する液体を付着させて該清掃部材から除去する除去部材(例えばワイパークリーナ81及びクリーナホルダ82)と、を有する液体を吐出する装置(例えば画像形成装置5)であって、前記液体の粘性を低下させる粘性低下液(例えば洗浄液S)を前記除去部材に供給する供給手段(例えば洗浄液供給ユニット60)を有することを特徴とするものである。
液体吐出ヘッドの吐出面に付着する液体を払拭して清掃部材に付着した液体を除去部材に付着させて清掃部材から除去する従来の構成においては、除去部材に付着させた液体の粘性が乾燥により高まることがある。この場合、除去部材上の液体が粘性の高まりによって清掃部材へ逆戻りしやすくなる。液体が清掃部材に逆戻りすると、清掃部材による液体吐出ヘッドの清掃能力を低下させるだけでなく、清掃部材から液体吐出ヘッドの吐出面への液体の逆戻りが発生して液体吐出ヘッドの吐出不良を引き起こすなどの問題が生じ得る。
本態様においては、液体の粘性を低下させる粘性低下液を供給手段により除去部材に供給することができるので、除去部材に付着させた液体の粘性が高まることを抑制することができる。これにより、除去部材上の液体が清掃部材へ逆戻りしにくくなるので、上述した問題を抑制することができる。
【0051】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記清掃部材を移動させる移動手段(例えばワイパー駆動部73)を有し、前記供給手段は、前記清掃部材の移動に連動して前記除去部材に前記粘性低下液を供給することを特徴とするものである。
これによれば、簡易な構成で、除去部材に粘性低下液を供給することができる。
【0052】
[第3態様]
第3態様は、第2態様において、前記供給手段は、前記粘性低下液を保持するタンク部(例えば洗浄液タンク61)と、前記タンク部から供給口61aを介して供給される粘性低下液を前記除去部材に供給する液供給部(例えば洗浄液供給部62)と、前記供給口を開閉する開閉部(例えば開閉弁63)とを備え、前記開閉部は、前記清掃部材の移動に連動して開閉することを特徴とするものである。
これによれば、簡易な構成で、除去部材に粘性低下液を供給することができる。
【0053】
[第4態様]
第4態様は、第3態様において、前記開閉部は、前記清掃部材の当接部82aが該開閉部の被当接部63aに当接することで、前記供給口を開状態にし、前記清掃部材の当接部が該開閉部の被当接部から離間することで、前記供給口を閉状態にすることを特徴とするものである。
これによれば、清掃部材の移動力を利用して開閉部の開閉動作を実現できるので、簡易な構成を実現できる。
【0054】
[第5態様]
第5態様は、第3又は第4態様において、前記液供給部は、前記タンク部から供給される粘性低下液をスポンジ部材に保持し、該スポンジ部材に前記除去部材を押し付けることで、該スポンジ部材に保持された粘性低下液を該除去部材に供給することを特徴とするものである。
これによれば、粘性低下液を除去部材に供給する際に粘性低下液が機内に漏れ出にくい構成を実現することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 :巻き出し装置
3 :搬送部
5 :画像形成装置
7 :乾燥部
9 :巻き取り装置
10 :連続シート
11 :シートロール
50 :ヘッドユニット
51 :ヘッドアレイ
52 :ベース部材
60 :洗浄液供給ユニット
61 :洗浄液タンク
61a :供給口
62 :洗浄液供給部
63 :開閉弁
63a :被当接部
64 :バネ
70 :ワイパーユニット
71 :ワイパーブレード
72 :ワイパーホルダ
73 :ワイパー駆動部
80 :ワイパークリーナユニット
81 :ワイパークリーナ
81a :スリット
82 :クリーナホルダ
82a :当接部
83 :クリーナ駆動部
100 :液体吐出ヘッド
1000 :画像形成システム
A :シート搬送方向
B :ワイパー移動方向
C :クリーナ移動方向
I :インク
S :洗浄液
【先行技術文献】
【特許文献】
【0056】
【特許文献1】特許第6170775号公報
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
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図9