(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025745
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】パターン状粘着テープ用粘着剤組成物、パターン状粘着テープおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 201/00 20060101AFI20240216BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240216BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130414
(22)【出願日】2023-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2022128832
(32)【優先日】2022-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100215935
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 茂輝
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(72)【発明者】
【氏名】今井 克明
(72)【発明者】
【氏名】中村 健二
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004CE03
4J004FA08
4J040DF021
4J040JA09
4J040JB09
4J040LA06
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、被着体との界面から速やかに気泡が抜け、前記界面に気泡が残存することを防止でき、かつ、接着力に優れた薄型のパターン状粘着テープ、及びパターン状粘着テープ用粘着剤組成物を提供することである。
【解決手段】本発明のパターン状粘着テープ用粘着剤組成物は、30℃で測定した際の伸長粘度が1,000mPa・s以上650,000mPa・s以下である。前記パターン状粘着テープは、粘着剤層を有する。前記粘着剤層が、2以上の粘着部(B)と、前記2以上の粘着部(B)の間に粘着部(B)を有しない非粘着部領域と有し、前記非粘着部領域がシート平面の外周に通じるパターン状である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン状粘着テープの形成に用いられる、パターン状粘着テープ用粘着剤組成物であって、
前記パターン状粘着テープ用粘着剤組成物の、30℃で測定した際の伸長粘度が1,000mPa・s以上650,000mPa・s以下であり、
前記パターン状粘着テープは、粘着剤層を有し、
前記粘着剤層が、2以上の粘着部(B)と、前記2以上の粘着部(B)の間に粘着部(B)を有しない非粘着部領域と有し、
前記非粘着部領域がシート平面の外周に通じるパターン状である、パターン状粘着テープ用粘着剤組成物。
【請求項2】
支持体(A)と粘着剤層とを含み、
前記粘着剤層が、請求項1に記載の、パターン状粘着テープ用粘着剤組成物を用いて形成され、
前記粘着剤層が、2以上の粘着部(B)、前記2以上の粘着部(B)の間に粘着部(B)を有しない非粘着部領域と有し、
前記非粘着部領域がシート平面の外周に通じるパターン状である、パターン状粘着テープ。
【請求項3】
前記支持体(A)の一方の面(a)側から前記粘着部(B)を観察した際の前記粘着部(B)の形状が、略円形状、略四角形状または略六角形状である請求項2に記載のパターン状粘着テープ。
【請求項4】
前記2以上の粘着部(B)から選択される任意の粘着部(b1)と、前記粘着部(b1)に近接する粘着部(b2)との距離が0.5mm以下である請求項2又は3に記載のパターン状粘着テープ。
【請求項5】
前記支持体(A)の一方の面(a)の面積に占める、前記粘着部(B)を有する領域の割合が10%~99%である請求項2又は3に記載のパターン状粘着テープ。
【請求項6】
前記粘着部(B)を有する面に平滑なステンレス板を載置し、2kgローラーを用い1往復させることでそれらを圧着させ、23℃及び50%RHの条件下で1時間放置して得られた試験片を用いて測定される180°ピール接着力が2N/20mm~12N/20mmの範囲である請求項2又は3に記載のパターン状粘着テープ。
【請求項7】
支持体(A)の表面に、請求項1に記載のパターン状粘着テープ用粘着剤組成物を用いて、粘着剤層を形成する粘着剤層形成工程を含み、
前記粘着剤層が、2以上の粘着部と、前記2以上の粘着部(B)の間に粘着部(B)を有しない非粘着部領域と、を有する、パターン状粘着テープの製造方法。
【請求項8】
前記粘着剤層形成工程において、前記支持体(A)の少なくとも一方の面に、グラビア印刷方法またはスクリーン印刷方法で、前記パターン状粘着テープ用粘着剤組成物を塗布することによって、略円形状、略四角形状または略六角形状の2以上の粘着部(B)形成する、請求項7に記載のパターン状粘着テープの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン状粘着テープ用粘着剤組成物、パターン状粘着テープおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープは、作業性に優れ、接着信頼性も高いことから、例えばOA機器や家電製品等の電子機器の製造場面で広く使用されている。
【0003】
前記電子機器には、近年、高機能化と小型化と薄型化とが求められており、特にパソコン、デジタルビデオカメラ、電子手帳、携帯電話、PHS、スマートフォン、ゲーム機器、電子書籍等の携帯電子端末には、さらなる小型化や薄型化が求められている。それに伴って、前記携帯電子端末を構成する粘着テープ等にもまた、薄型化が求められている。
【0004】
前記薄型の粘着テープとしては、例えば重量平均分子量が70万以上で、アクリル酸ブチル単位の含有量が90質量%以上のアクリル酸エステル系共重合体と、粘着性付与剤を主成分とし、かつ該粘着性付与剤の含有量が40~60質量%の粘着剤層を、芯材の両面に有する両面粘着テープであって、該芯材及び両面の粘着剤層を合せた総厚さが30μm以下であり、両面の粘着剤層の厚さが、それぞれ2~10μmである両面粘着テープが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
しかし、前記薄型の粘着テープは、被着体と貼り合わせる際に、それらの界面に気泡が残存しやすく、その結果、粘着テープの膨れ等に起因した外観不良を引き起こす場合があった。
【0006】
また、前記残存した気泡は熱抵抗となるため、前記薄型の粘着テープを放熱部材と発熱部材等との貼りあわせに使用した場合に、放熱性の低下を引き起こす場合があった。
【0007】
また、前記薄型化を実現するために粘着剤層の薄型化も検討されているなかで、薄型で、かつ、単に前記気泡の逃げ道を設けた粘着剤層では、実用上十分な接着力を保持することができない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、被着体との界面から速やかに気泡が抜け、前記界面に気泡が残存することを防止でき、かつ、接着力に優れたパターン状粘着テープを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の内容は、以下の実施態様を含む。
[1] パターン状粘着テープの形成に用いられる、パターン状粘着テープ用粘着剤組成物であって、
前記パターン状粘着テープ用粘着剤組成物の、30℃で測定した際の伸長粘度が1,000mPa・s以上650,000mPa・s以下であり、 前記パターン状粘着テープは、粘着剤層を有し、
前記粘着剤層が、2以上の粘着部(B)と、前記2以上の粘着部(B)の間に粘着部(B)を有しない非粘着部領域と有し、
前記非粘着部領域がシート平面の外周に通じるパターン状である、パターン状粘着テープ用粘着剤組成物。
[2] 支持体(A)と粘着剤層とを含み、
前記粘着剤層が、[1]に記載の、パターン状粘着テープ用粘着剤組成物を用いて形成され、
前記粘着剤層が、2以上の粘着部(B)、前記2以上の粘着部(B)の間に粘着部(B)を有しない非粘着部領域と有し、
前記非粘着部領域がシート平面の外周に通じるパターン状である、パターン状粘着テープ。
[3] 前記支持体(A)の一方の面(a)側から前記粘着部(B)を観察した際の前記粘着部(B)の形状が、略円形状、略四角形状または略六角形状である[2]に記載のパターン状粘着テープ。
[4] 前記2以上の粘着部(B)から選択される任意の粘着部(b1)と、前記粘着部(b1)に近接する粘着部(b2)との距離が0.5mm以下である[2]又は[3]に記載のパターン状粘着テープ。
[5] 前記支持体(A)の一方の面(a)の面積に占める、前記粘着部(B)を有する領域の割合が10%~99%である[2]~[4]の何れかに記載のパターン状粘着テープ。
[6] 前記粘着部(B)を有する面に平滑なステンレス板を載置し、2kgローラーを用い1往復させることでそれらを圧着させ、23℃及び50%RHの条件下で1時間放置して得られた試験片を用いて測定される180°ピール接着力が2N/20mm~12N/20mmの範囲である[2]~[5]の何れかに記載のパターン状粘着テープ。
[7] 支持体(A)の表面に、[1]に記載のパターン状粘着テープ用粘着剤組成物を用いて、粘着剤層を形成する粘着剤層形成工程を含み、
前記粘着剤層が、2以上の粘着部と、前記2以上の粘着部(B)の間に粘着部(B)を有しない非粘着部領域と、を有する、パターン状粘着テープの製造方法。
[8] 前記粘着剤層形成工程において、前記支持体(A)の少なくとも一方の面に、グラビア印刷方法またはスクリーン印刷方法で、前記パターン状粘着テープ用粘着剤組成物を塗布することによって、略円形状、略四角形状または略六角形状の2以上の粘着部(B)形成する、[7]に記載のパターン状粘着テープの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のパターン状粘着テープは、被着体との界面から速やかに気泡が抜け、前記界面に気泡が残存しにくく、かつ、接着力に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】略ひし形状の粘着部を有するパターン状粘着テープをその粘着部側からみた上面図である。
【
図2】略円形状の粘着部を有するパターン状粘着テープをその粘着部側からみた上面図である。
【
図3】略六角形状の粘着部を有するパターン状粘着テープをその粘着部側からみた上面図である。
【
図4】略ライン形状の粘着部を有するパターン状粘着テープをその粘着部側からみた上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(パターン状粘着テープ用粘着剤組成物)
本発明の一実施形態のパターン状粘着テープ用粘着剤組成物(本実施形態の粘着剤組成物をいうことがある)は、後述のパターン状粘着テープの形成に用いられるものである。本実施形態の粘着剤組成物の、30℃で測定した際の伸長粘度が1,000mPa・s以上650,000mPa・s以下である。前記パターン状粘着テープは、粘着剤層を有し、前記粘着剤層が、2以上の粘着部(B)と、前記2以上の粘着部(B)の間に粘着部(B)を有しない非粘着部領域と有し、前記非粘着部領域がシート平面の外周に通じるパターン状である。
【0014】
前記パターン状粘着テープは、被着体との界面から速やかに気泡が抜け、前記界面に気泡が残存しにくくなるために、気泡が抜ける流路となる非粘着部領域が粘着部(B)の変形等により塞がれないことが求められる。一方で、前記パターン状粘着テープは、優れた接着力を発現するために、粘着部が安定した寸法で形成され、粘着部により十分な接着面積が得られることが求められる。
本実施形態の粘着剤組成物は、30℃で測定した際の伸長粘度を所定の範囲内とすることで、粘着部の形成において粘着剤組成物により非粘着部領域が塞がれるのを防ぐことができる。また、形状精度が良好であり、保形性を有する粘着部を形成することが可能となる。これにより、本実施形態の粘着剤組成物を用いて形成されるパターン状粘着テープは、良好な気泡抜け及び接着力の両立を達成することができる。
【0015】
本実施形態の粘着剤組成物の、30℃で測定した際の伸長粘度が1000mPa・s以上650000mPa・s以下であることが好ましく、10000mPa・s以上450000mPa・s以下であることがより好ましく、50000mPa・s以上350000mPa・s以下であることが更に好ましい。
パターン状粘着テープを形成する際に、30℃で測定した際の伸長粘度が1000mPa・s以上である本実施形態の粘着剤組成物を用いることで、良好な形状精度及び保形性を有する粘着部を形成することができる。特に各種印刷方法を用いて粘着部を形成する際に、印刷版からの粘着剤組成物の転移性、及び転移後の粘着部の保形性に優れる。パターン状粘着テープを形成する際に30℃で測定した際の伸長粘度が650000mPa・s以下である本実施形態の粘着剤組成物を用いることで、粘着剤組成物を塗工する印刷方法の種類を問わず、形状精度が良好な粘着部を容易に形成できる。特に印刷版を用いて粘着部を形成する場合に、版上のドットの形状寸法に対する該ドットにより転移形成される粘着部の形状寸法の誤差が小さい粘着部を容易に形成できる。
【0016】
また、後述のパターン状粘着テープを製造する方法において、本実施形態の粘着剤組成物を塗布する方法がグラビア印刷方法である場合、30℃で測定した際の伸長粘度が1000mPa・s以上650000mPa・s以下であることが好ましく、中でも1000mPa・s以上500000mPa・s以下であることが好ましく、1000mPa・s以上75000mPa・s以下であることがより好ましく、1300mPa・s以上20000mPa・s以下であることが更に好ましい。
グラビア印刷法で用いる粘着剤組成物の伸長粘度を上記範囲内とすることで、粘着部に対応するグラビア版の凹部から粘着剤組成物が流出しやすくなり、支持体や剥離ライナーに粘着剤組成物を容易に転移することができる。また、粘着剤組成物が支持体等に転移することにより形成される粘着部(転移後の粘着部)の保形性及び寸法精度が優れる。
【0017】
後述のパターン状粘着テープを製造する方法において、本実施形態の粘着剤組成物を塗布する方法がスクリーン印刷方法である場合、30℃で測定した際の伸長粘度が1000mPa・s以上650000mPa・s以下であることが好ましく、50000mPa・s以上650000mPa・s以下であることがより好ましく、100000mPa・s以上650000mPa・s以下であることが更に好ましい。
スクリーン印刷法で用いる粘着剤組成物の伸長粘度を上記範囲内とすることで、粘着部に対応するスクリーン版の孔に粘着剤組成物を保持でき、転移の際は前記孔から粘着剤組成物が流出しやすくなるため、支持体や剥離ライナーに粘着剤組成物を容易に転移することができる。また、転移後の粘着部の保形性及び寸法精度が優れる。
【0018】
本実施形態の粘着剤組成物としては、例えばアクリル系粘着剤組成物、ゴム系粘着剤組成物、シリコーン系粘着剤組成物、ウレタン系粘着剤組成物、ポリエステル系粘着剤組成物、スチレン-ジエンブロック共重合体系粘着剤組成物、ビニルアルキルエーテル系粘着剤組成物、ポリアミド系粘着剤組成物、フッ素系粘着剤組成物、クリ-プ特性改良型粘着剤組成物、放射線硬化型粘着剤組成物などの公知の粘着剤組成物が挙げられる。なかでも、アクリル系粘着剤組成物を用いて形成されたパターン状粘着テープが、接着信頼性に優れるため、本実施形態の粘着剤組成物がアクリル系粘着剤組成物であることが好ましい。
【0019】
[アクリル系粘着剤組成物]
前記アクリル系粘着剤組成物としては、アクリル重合体を含有するものを使用することができる。
【0020】
<アクリル重合体>
前記アクリル重合体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の(メタ)アクリル単量体を含む単量体成分を重合させることによって得られるものを使用することができる。
【0021】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等を単独または2種以上組合せすることができる。なかでも、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、前記アルキル基の炭素原子数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用することが好ましく、前記アルキル基の炭素原子数が4~18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用することがより好ましい。前記アルキル基は、直鎖または分岐したアルキル基が挙げられる。
【0022】
前記アルキル基の炭素原子数が4~18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸ブチルを使用することが、前記粘着剤層の表面形状(粘着部の表面形状)を保持しやすいため、経時的な変化を防止しやすく、被着体との界面から気泡が抜けやすく(エア抜け性)、かつ、良好な接着力を保持できるパターン状粘着テープを得るうえで好ましい。
【0023】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、アクリル共重合体を構成する単量体全量中80質量%~98.5質量%の範囲であることが好ましく、90質量%~98.5質量%の範囲であることがより好ましい。中でもアルキル基の炭素原子数が4~18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が上記範囲であることが好ましい。粘着部が良好な接着力を保持できるからである。
【0024】
前記(メタ)アクリル単量体としては、前記したもの以外に、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のカルボキシル基を有する単量体又はその無水物;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基を有する単量体;アクリロニトリルなどのシアノ基を有する単量体;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基を有する単量体;(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、グリセリンジメタクリレートなどのヒドロキシル基を有する単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリロイルモルホリン等のアミノ基を有する単量体;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド等のイミド基を有する単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル等のエポキシ基を有する単量体;2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基を有する単量体、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等の単量体を単独または2種以上組み合わせ使用することができる。
【0025】
中でも、アクリル重合体は単量体成分としてカルボキシル基を有する単量体を含むことが好ましい。カルボキシル基を有する単量体の含有量は、アクリル共重合体を構成する単量体全量中0.2質量%~15質量%であることが好ましく、0.4質量%~10質量%であることがより好ましく、0.5質量%~6質量%であることさらに好ましい。カルボキシル基を有する単量体の含有量が上記の範囲にあることで、粘着部を形成した際に、粘着部が好適な凝集力を発現でき、接着性が良好となるからである。
【0026】
また、アクリル重合体は単量体成分としてヒドロキシル基を有する単量体を含むことが好ましい。ヒドロキシル基を有する単量体の含有量は、アクリル共重合体を構成する単量体全量中0.01質量%~1.0質量%であることが好ましく、0.03質量%~0.3質量%であることがさらに好ましい。ヒドロキシル基を有する単量体の含有量が上記の範囲にあることで、粘着剤組成物により形成される粘着部が良好な接着性を発揮することができ、更に、粘着剤組成物の印刷塗工性を阻害せずに粘性の向上を図ることができる。
【0027】
また、前記単量体としては、前記(メタ)アクリル単量体の他に、スチレン、置換スチレンなどの芳香族ビニル化合物;エチレン、プロピレン、ブタジエンなどのオレフィン類;酢酸ビニルなどのビニルエステル類;塩化ビニル等を使用することもできる。
【0028】
前記アクリル重合体は、前記単量体を、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の方法で重合させることによって製造することができ、溶液重合法を採用することが、アクリル重合体の生産効率を向上するうえで好ましい。
【0029】
前記溶液重合法としては、例えば前記単量体と、重合開始剤と、有機溶剤とを、好ましくは40℃~90℃の温度下で混合、攪拌し、ラジカル重合させる方法が挙げられる。
【0030】
前記重合開始剤としては、例えば過酸化ベンゾイルや過酸化ラウリル等の過酸化物、アゾビスイソブチルニトリル等のアゾ系熱重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンジルケタール系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系の光重合開始剤等を使用することができる。
【0031】
前記方法で得たアクリル重合体は、例えば溶液重合法で製造した場合であれば、有機溶剤に溶解または分散した状態であってもよい。
【0032】
前記方法で得られたアクリル重合体としては、30万~120万の重量平均分子量を有するものを使用することが好ましく、40万~110万の重量平均分子量を有するものを使用することがより好ましく、50万~100万の重量平均分子量を有するものを使用することが、薄型であってもより一層優れた接着力と、気泡の除去しやすさとを備えたパターン状粘着テープを得るうえで好ましい。
【0033】
なお、前記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC法)により測定され、標準ポリスチレン換算して算出された値を指す。具体的には、前記重量平均分子量は、東ソー株式会社製GPC装置(HLC-8329GPC)を用い、以下の条件で測定することができる。
【0034】
サンプル濃度:0.5質量%(テトラヒドロフラン溶液)
サンプル注入量:100μl
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0ml/分
測定温度:40℃
本カラム:TSKgel GMHHR-H(20)2本
ガードカラム:TSKgel HXL-H
検出器:示差屈折計
標準ポリスチレンの重量平均分子量:1万~2000万(東ソー株式会社製)
【0035】
本実施形態の粘着剤組成物としては、より一層優れた接着力、引張強度及び引張破断強度を備えた粘着部(パターン状の粘着剤層)を形成するうえで、粘着付与樹脂を含有するものを使用することが好ましい。
【0036】
前記粘着付与樹脂としては、例えばロジン系粘着付与樹脂、重合ロジン系粘着付与樹脂、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂、ロジンフェノール系粘着付与樹脂、安定化ロジンエステル系粘着付与樹脂、不均化ロジンエステル系粘着付与樹脂、水添ロジンエステル系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、テルペンフェノール系粘着付与樹脂、及び、スチレン系粘着付与樹脂等の石油樹脂系粘着付与樹脂等を使用することができる。
【0037】
前記粘着付与樹脂としては、ロジン系粘着付与樹脂及び石油樹脂系粘着付与樹脂を組み合わせ使用することが、薄型であってもより一層優れた接着力と、気泡の除去しやすさとを備えたパターン状粘着テープを得るうえで好ましい。前記ロジン系粘着付与樹脂及び石油樹脂系粘着付与樹脂は、とりわけ前記アクリル重合体と組合せ使用することが好ましく、(メタ)アクリル酸ブチルを含有する単量体を重合して得られるアクリル重合体と組み合わせ使用することが、薄型であってもより一層優れた接着力と、気泡の除去しやすさとを備えたパターン状粘着テープを得るうえで好ましい。
【0038】
また、前記粘着付与樹脂としては、前記粘着部(B)の初期接着力をより一層向上させるうえで、常温で液状の粘着付与樹脂を使用することが好ましい。常温で液状の粘着付与樹脂としては、例えば、プロセスオイル、ポリエステル系可塑剤、ポリブテン等の低分子量の液状ゴムが挙げられ、テルペンフェノール樹脂を使用することができ、市販品としてはヤスハラケミカル社製YP-90L等が挙げられる。
【0039】
前記粘着付与樹脂は、前記アクリル重合体100質量部に対し、20質量部~60質量部の範囲で使用することが好ましく、30質量部~55質量部の範囲で使用することが、より一層優れた接着力を備えたパターン状粘着テープを得るうえでより好ましい。
【0040】
また、前記粘着部(B)を構成する粘着剤組成物としては、前記アクリル重合体等の他に、必要に応じて、軟化剤、可塑剤、充填剤、老化防止剤、着色剤等を含有するものを使用することができる。
【0041】
なかでも、架橋剤を使用することが、前記粘着部(B)のゲル分率を好適な範囲に調製することができ、その結果、前記粘着部(B)の形状を保持しやすいため、経時的な変化を防止しやすく、被着体と粘着剤層(B)との界面から気泡を容易に除去することができ、かつ、優れた接着力を備えたパターン状粘着テープを得ることができるため好ましい。
【0042】
前記架橋剤としては、例えばイソシアネート架橋剤またはエポキシ架橋剤を使用することが好ましい。
【0043】
前記イソシアネート架橋剤としては、例えばトリレンジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート等を使用することができ、トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート等のトルエンジイソシアネート付加物を使用することが好ましい。前記トルエンジイソシアネート付加物とは、分子中にトルエンジイソシアネートに由来する構造を有するものであり、市販品でいえば、例えば、コロネートL(日本ポリウレタン工業株式会社製)等が挙げられる。
【0044】
前記イソシアネート架橋剤を使用する場合、前記アクリル重合体としては、水酸基を有するアクリル重合体を使用することが好ましい。前記水酸基を有するアクリル重合体は、その製造に使用する単量体として、例えば(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル等を使用することができ、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルを使用することがより好ましい。
【0045】
また、エポキシ架橋剤としては、例えば三菱瓦斯化学株式会社製のテトラッドXやテトラッドC、または、総研化学株式会社製のE-05X等を使用することができる。
【0046】
前記エポキシ架橋剤を使用する場合、前記アクリル重合体としては、酸基を有するアクリル重合体を使用することが好ましい。前記酸基を有するアクリル重合体は、その製造に使用する単量体として、例えば(メタ)アクリル酸、アクリル酸ダイマー、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸等を使用することが好ましく、(メタ)アクリル酸を使用することがより好ましい。
【0047】
本実施形態の粘着剤組成物としては、必要に応じて溶媒を含有するものを使用することが好ましい。前記粘着剤組成物としては、粘着部の形成方法によるが、そのせん断粘度が、125mPa・s~1625mPa・sの範囲に調製されたものを使用することができ、400mPa・s~1200mPa・sの範囲に調製されたものを使用することが好ましく、500mPa・s~1000mPa・sの範囲に調製されたものを使用することが、所定の形状の粘着部(B)を形成しやすいためさらに好ましい。
本実施形態の粘着剤組成物を用いて、後述のパターン状粘着テープを形成する方法において、粘着部の形成方法がグラビア印刷方法を用いる場合、前記粘着剤組成物としては、そのせん断粘度が、125mPa・s~1500mPa・sの範囲に調製されたものを使用することができる。125mPa・s~520mPa・sの範囲に調製されたものを使用することが好ましく、140mPa・s~200mPa・sの範囲に調製されたものを使用することが、印刷版からの粘着剤組成物の転移性が良好であり、所定の形状の粘着部(B)を形成しやすいためさらに好ましい。
【0048】
また、本実施形態の粘着剤組成物を用いて、後述のパターン状粘着テープを形成する方法において、粘着部の形成方法がスクリーン印刷方法を用いる場合、前記粘着剤組成物としては、そのせん断粘度が、500mPa・s~1625mPa・sの範囲に調製されたものを使用することができ、1000mPa・s~1625mPa・sの範囲に調製されたものを使用することが好ましく、1200mPa・s~1625mPa・sの範囲に調製されたものを使用することが、印刷版からの粘着剤組成物の転移性が良好であり、所定の形状の粘着部(B)を形成しやすいためさらに好ましい。
【0049】
本実施形態の粘着剤組成物の不揮発分の含有量は、所望の伸長粘度を具備することが可能であれば特に限定されないが、例えば15質量%以上が好ましく、中でも20質量%以上がより好ましく、25質量%以上がより好ましい。また、上記不揮発分の含有量は、40質量%未満が好ましく、中でも38質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましい。粘着剤組成物の不揮発分の含有量を上記範囲とすることで、粘着部を形成する際の各種印刷方法に対する適性(印刷版からの粘着剤組成物の転移性及び転移後の粘着部の保形性等)に優れる。
【0050】
(パターン状粘着テープ)
本発明の一実施形態のパターン状粘着テープ(本実施形態の粘着テープをいうことがある)は、支持体(A)と粘着剤層とを有し、前記粘着剤層が、2以上の粘着部(B)と、前記2以上の粘着部(B)の間に粘着部(B)を有しない非粘着部領域と有する。前記非粘着部領域がシート平面の外周に通じるパターン状である。
【0051】
本実施形態の粘着テープの具体的な実施態様としては、前記支持体(A)の少なくとも一方の面(a)側に、直接、2以上の粘着部(B)を有するパターン状粘着テープ、または、前記支持体(A)の少なくとも一方の面(a)側に、その他の層を介して、前記粘着部(B)を有するパターン状粘着テープが挙げられる。
【0052】
本実施形態の粘着テープとして両面パターン状粘着テープを使用する場合、前記支持体(A)の両方の面(a)側に前記特定の粘着部(B)を2以上有し、前記2以上の粘着部(B)の間には粘着部(B)を有しない領域が存在し、前記領域が前記パターン状粘着テープの端部に通じた構成を有する両面粘着テープ、または、前記支持体(A)の一方の面(a)側に前記特定の粘着部(B)を2以上有し、前記2以上の粘着部(B)の間には粘着部(B)を有しない領域が存在し、前記領域が前記パターン状粘着テープの端部に通じた構成を有し、かつ、前記支持体(A)の他方の面側には、その全面に粘着剤(ベタ状の粘着剤層)を有する両面粘着テープを使用することができる。
【0053】
前記2以上の粘着部(B)の間にある、粘着部(B)を有しない非粘着部領域とは、前記粘着部(B)を構成する成分が存在しない、または、粘着性を奏しない程度に存在してもよい領域である。そのため、本実施形態の粘着テープを側面方向から観察した場合には、前記支持体(A)の面(a)に対して前記粘着部(B)が凸形状を形成していることが観察される。
【0054】
また、本実施形態の粘着テープは、前記2以上の粘着部(B)の間の粘着部(B)を有しない領域が、パターン状粘着テープの端部(外縁部)の一部に通じた構成を有する。前記構成を有するパターン状粘着テープを使用することによって、パターン状粘着テープを被着体へ貼付する際に、気泡が前記領域を通じて、パターン状粘着テープと被着体との界面から外部へ抜けるため、パターン状粘着テープの膨れ等に起因した外観不良を防止でき、かつ、優れた熱伝導性や接着力等を保持することができる。
【0055】
本実施形態の粘着テープとしては、総厚さ50μm以下であるものを使用することが好ましく、中でも20μm以下であるものを使用することが好ましく、2μm~15μmであるものを使用することがより好ましく、3μm~10μmであるものを使用することがさらに好ましく、3μm~6μmであるものを使用することが、例えば携帯電子端末等の薄型化に貢献するうえで特に好ましい。本実施形態の粘着テープの支持体(A)が発泡体シートを含む場合、本実施形態の粘着テープの総厚さは、300μm以下が好ましく、30μm~250μmがより好ましく、50μm~200μmがさらに好ましく、50μm~100μmであることが、例えば携帯電子端末等の薄型化に貢献するうえで特に好ましい。本実施形態の粘着テープは、上記したように非常に薄型であっても、優れた気泡の抜けやすさを保持し、かつ、優れた接着力や熱伝導性を備える。なお、前記パターン状粘着テープの総厚さは、JIS K6783にしたがい、ダイヤルゲージを用いた方法で、ダイヤルゲージの接触面が平面、その径が5mm及び荷重が1.23Nである条件で測定されたパターン状粘着テープの厚さを指し、剥離ライナーの厚さを含むものではない。上記厚さは、例えば、テスター産業製の厚さ計TH-102等で測定することができる。
【0056】
本実施形態の粘着テープとしては、1N/20mm~12N/20mmのピール接着力(単に「接着力」ということもある。)を有するものを使用することが好ましく、1.5N/20mm~10N/20mmの接着力を有するものを使用することがより好ましく、3N/20mm~8N/20mmの接着力を有するものを使用することが、薄型であっても、被着体とパターン状粘着テープとの界面から気泡が除去されやすく、かつ、優れた接着力を備えたパターン状粘着テープを得るうえで好ましい。より一層優れた接着性が求められる場合には、前記パターン状粘着テープとしては、4N/20mm~10N/20mmの接着力を有するものを使用することがより好ましく、4.5N/20mm~8N/20mmの接着力を有するものを使用することがより好ましい。
【0057】
なお、前記接着力はJISZ0237に準じて測定される値をさす。具体的には、前記接着力は、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムで裏打ちされたパターン状粘着テープの粘着部(B)を有する面と、清潔で平滑なステンレス板(BA板)とを重ね、その上面を、2kgローラーを用いて1往復させることで加圧したものを、23℃及び50%RHの条件下で1時間または24時間放置した後、180°方向に0.3m/minの速度で前記パターン状粘着テープを引き剥がすことによって測定された値である。なお、前記裏打ちは、前記粘着部(B)を有しない表面に対して行い、本発明の構成要件である粘着部(B)を有する面に対して行わないようにした。また、前記パターン状粘着テープが両面に前記粘着部(B)を有するものである場合には、そのいずれか一方の粘着部(B)を有する面を裏打ちした。
【0058】
本実施形態の粘着テープとしては、薄型であっても被着体や支持体(A)の反発力等に起因した経時的な剥がれや部品の脱落等を防止でき、とりわけ比較的高温下で使用された場合であっても上記剥がれ等を防止するうえで、接着保持力が2mm以下であるものを使用することが好ましく、0.5mm以下であるものを使用することがより好ましく、0.1mm以下であるものを使用することがさらに好ましい。
【0059】
なお、前記接着保持力はJISZ0237に準じて測定される値を指す。具体的には、前記接着保持力は、厚さ50μmのアルミニウム箔で裏打ちされたパターン状粘着テープの粘着部(B)を有する面と、清潔で平滑なステンレス板(ヘアライン)とを重ね、その上面を2kgローラーを用いて1往復させることで加圧したものを、23℃及び50%RHの条件下で1時間放置したものを試験片とする。次に、100℃の環境下に、前記試験片を構成するステンレス板を垂直方向に固定し、前記試験片を構成するパターン状粘着テープの下端部に100gの荷重をかけた状態で24時間放置した後の、前記ステンレス板とパターン状粘着テープとのズレ距離をノギスで測定することによって得られた値である。
【0060】
[支持体(A)]
本実施形態の粘着テープを構成する支持体(A)としては、支持体(A)の種類に応じて適宜設定することができ、例えば上記支持体(A)が樹脂フィルムであれば、1μm~20μmの厚さのものを使用することが好ましく、1μm~10μmの厚さのものを使用することがより好ましく、1μm~4μmの厚さのものを使用することが好ましく、1.5μm~2.5μmの厚さのものを使用することがより好ましい。また、上記支持体(A)が発泡体シートであれば、好ましくは250μm以下、より好ましくは30μm~200μm、さらに好ましくは50μm~100μmの厚さのものを使用することができる。支持体(A)の厚さを上記の範囲とすることで、パターン状粘着テープを薄型化でき、かつ、前記粘着部(B)を有する面と被着体との界面から気泡を容易に除去することができ、その結果、前記パターン状粘着テープの膨れ等に起因した外観不良や、熱伝導性や接着力等の性能低下をより効果的に防止できる。
【0061】
前記支持体(A)としては、例えば樹脂を用いて得られるシート状のものを使用することができる。樹脂を用いて得られるシート状の支持体(A)として具体的には、非発泡の樹脂フィルム、発泡体シート等が挙げられる。
【0062】
前記支持体(A)の製造に使用できる前記樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂、ポリブチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)等のスチレン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン等のポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエステルイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール、ポリアリーレンエーテル(ポリフェニレンエーテルなど)、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリアリール、ポリウレタン、エポキシ系樹脂、ゴム系樹脂、エラスラストマー等を、単独または2種以上組み合わせ使用することができる。
【0063】
なかでも、前記支持体(A)としては、厚さのばらつきが少なく、引張強度や加工性に優れ、経済的(コスト)であることから、ポリエステルフィルムを使用することが好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用することがより好ましい。前記ポリエステルフィルムは、二軸延伸されたものを使用することが、支持体(A)及びそれを用いて得られるパターン状粘着テープの強度をより一層高めることができるため好ましい。
【0064】
前記支持体(A)は、前記した樹脂をシート状に成形することによって製造することができる。樹脂をシート状に成形する方法としては、溶融押出法等の公知の方法を用いることができる。前記支持体(A)が樹脂フィルムの場合、前記樹脂フィルムは延伸されていてもよく、無延伸であってもよい。
【0065】
前記支持体(A)は、単一の層で構成されたものであってもよく、同一または異なる樹脂等からなる複層によって構成されるものを使用することもできる。例えば上記支持体(A)は、樹脂フィルム(A1)と発泡体シート(A2)とを有する積層体であっても良い。上記支持体(A)が樹脂フィルム(A1)と発泡体シート(A2)とを有する積層体である場合、前記樹脂フィルム(A1)の一方の面に粘着部を有し、他方の面に発泡体シート(A2)を有することが好ましい。
【0066】
すなわち、本実施形態の粘着テープは、例えば樹脂フィルム(A1)である支持体(A)の一方の面(a)に粘着部(B)が設けられた構造を少なくとも有しても良く、発泡体シート(A2)である支持体(A)の一方の面(a)に粘着部(B)が設けられた構造を少なくとも有しても良い。また、本実施形態の粘着テープは、例えば樹脂フィルム(A1)と発泡体シート(A2)とを有する積層体の樹脂フィルム(A1)の面に、粘着部(B)が設けられた構造を少なくとも有しても良い。
【0067】
また、前記支持体(A)としては、前記粘着部(B)やその他の粘着剤層との密着性等とをより一層高めるうえで、その片面または両面に、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露処理、火炎暴露処理、高圧電撃暴露処理、イオン化放射線処理等の酸化処理等が施されたもの、コーティング剤等を用いることによってプライマー層等が形成されたものを使用することができる。
【0068】
[粘着部(B)]
次に、本実施形態の粘着テープを構成する粘着部(B)について説明する。
【0069】
前記粘着部(B)は、前記したとおり、前記支持体(A)の片面または両面に、直接または他の層を介して設けられる。
【0070】
前記2以上の粘着部(B)の間には、前記粘着部(B)を構成する成分が存在しない、または、粘着性を奏しない程度に存在してもよい領域(非粘着部領域)がある。
【0071】
また、前記2以上の粘着部(B)の間の粘着部(B)を有しない領域は、パターン状粘着テープの端部(外縁部)の一部に通じた構成を有する。前記構成を有するパターン状粘着テープを使用することによって、パターン状粘着テープを被着体へ貼付する際に、それらの界面から気泡を容易に除去することができるため、パターン状粘着テープの膨れ等に起因した外観不良を防止し、かつ、優れた熱伝導性や接着力等を保持することができる。
【0072】
前記粘着部(B)の形状は、本実施形態の粘着テープを、前記支持体(A)の一方の面(a)側から観察した際に、略四角形状、略六角形状または略円形状等であることができる。略円形状であることが、被着体との界面から気泡が抜けやすく(エア抜け性)、かつ、良好な接着力を保持できるため好ましい。略円形状の一例としては、
図2のような形状が挙げられる。略六角形状の一例としては、
図3のような形状が挙げられる。前記形状の粘着部は、基本的にそれぞれ独立しているが、粘着部が部分的につながっている箇所があってもよい。前記粘着部(B)の形状は、
図1~
図3に示すような島状(ドット状)であってもよく、例えば、
図4に示すようなライン状でもよい。ライン状の粘着部(B)は、幅方向に位置する端辺に交差する角度で延びていてもよく、流れ方向に位置する端辺に交差する角度で伸びていても良く、幅方向に位置する端辺と流れ方向に位置する端辺を交差する角度で伸びていても良い。中でも前記粘着部が、ドット状(島状)の略四角形状、略六角形状または略円形状であることが、気泡が抜ける流路を多方向に有することができるためより好ましい。
【0073】
略円形状は特に限定されるものではないが、1つの粘着部の最大直径と最小直径との比〔最大直径/最小直径〕が1~4であることが好ましい。さらに好ましくは1~2であり、最も好ましくは1~1.5である。略円形状の一例としては、
図2のような形状が挙げられる。前記形状の粘着部は、基本的にそれぞれ独立しているが、粘着部が部分的につながっている箇所があってもよい。
【0074】
前記略四角形状としては、略正方形、略長方形、略台形、略ひし形等の形状が挙げられ、
図1のような略ひし形状であることが、被着体との界面から気泡が抜けやすく(エア抜け性)、かつ、良好な接着力を保持できるため好ましい。
【0075】
なお、前記略四角形状及び略六角形状等の「略」は、例えば粘着部(B)の表面に離型ライナー等が貼付された際、または、パターン状粘着テープがロールに巻かれた際に、前記粘着部(B)が押圧されることによって、四角形状及び六角形状の角部が丸みを帯びた形状や、直線部が曲線部となった形状を含むことを示す。
【0076】
前記略四角形状の角部は、パターン状粘着テープの流れ方向に向いた角部の角度が90°以下である略ひし形状であることが好ましい。45°~90°の範囲であることが、被着体との界面から気泡が抜けやすく(エア抜け性)、かつ、良好な接着力を保持できるためより好ましい。前記の角度が90°である略ひし形状とは、略正方形である。
【0077】
また、前記2以上の粘着部(B)を構成する粘着部(b1)及び粘着部(b2)は、パターン状粘着テープの流れ方向及び幅方向に対して、正対していないことが好ましい。
【0078】
また、前記パターン状粘着テープは、用途等に応じて任意の形状に裁断され使用されることが多い。その際、前記粘着部(b1)及び粘着部(b2)が、流れ方向及び幅方向に対して正対していない配置であることによって、パターン状粘着テープを任意の位置で裁断した場合に、その端部の一部に粘着部(B)が存在することとなるため、パターン状粘着テープの剥がれを抑制することが可能となる。
【0079】
前記2以上の粘着部(B)から選択される粘着部(b1)と、前記粘着部(b1)に近接する(最も近くに存在する)他の粘着部(b2)との距離は、0.5mm以下であることが好ましく、0.05mm~0.2mmであることがより好ましく、0.06mm~0.15mmであることがさらに好ましく、0.08mm~0.13mmであることが、被着体との界面から気泡が抜けやすく(エア抜け性)、かつ、良好な接着力を保持できるため特に好ましい。
【0080】
また、前記粘着部(b1)と前記粘着部(b2)との距離を上記の範囲とすることで、粘着部の形状および非粘着部領域の形状が視認されにくくなり、粘着部及び非粘着部領域の形状に起因した外観不良の発生を抑制できる。
【0081】
前記粘着部(B)から選択される粘着部(b1)1個あたりの大きさは、面積0.001mm2~100mm2であることが好ましく、0.01mm2~25mm2であることがより好ましく、0.015mm2~16mm2であることがさらに好ましく、0.02mm2~5mm2であることが、被着体との界面から気泡が抜けやすく(エア抜け性)、かつ、良好な接着力を保持できるため特に好ましい。
【0082】
また、前記粘着部(b1)1個あたりの大きさを上記の範囲とすることで、粘着部の形状および非粘着部領域の形状が視認されにくくなり、粘着部及び非粘着部領域の形状に起因した外観不良の発生を抑制できる。
【0083】
前記粘着部(B)は、本発明のパターン状粘着テープの面積(流れ方向5cm及び幅方向5cmの正方形)の範囲に、10個~1000000個存在することが好ましく、150個~500000個存在することが好ましく、400個~100000個存在することが好ましく、1000個~50000個存在することがより好ましく、5000個~40000個存在することが、被着体との界面から気泡が抜けやすく(エア抜け性)、かつ、良好な接着力を保持できるため特に好ましい。
【0084】
また、前記粘着部(B)の個数を上記の範囲とすることで、粘着部の形状および非粘着部領域の形状が視認されにくくなり、粘着部及び非粘着部領域の形状に起因した外観不良の発生を抑制できる。
【0085】
また、前記パターン状粘着テープとしては、貼付の際に被着体との界面から気泡が抜けやすく(エア抜け性)、良好な接着力を保持でき、かつ、グラファイトシート等の被着体がより一層薄型化された場合であっても、粘着部の形状に起因した外観不良を効果的に防止する観点から、パターン状粘着テープの所定面積(流れ方向1cm及び幅方向1cmの正方形)の範囲に、120個~2000個の粘着部を有するものを使用することが好ましく、280個~1600個の粘着部を有するものを使用することがより好ましく、520個~1200個の粘着部を有するものを使用することがさらに好ましい。
なお、上記粘着部の数は、いずれも、パターン状粘着テープの任意の範囲(流れ方向1cm及び幅方向1cmの正方形)または(流れ方向5cm及び幅方向5cmの正方形)を電子顕微鏡で観察し数えることによって求めることができる。
【0086】
前記一方の面(a)の面積に占める、前記粘着部(B)を有する領域の割合は、10%~99%であることが好ましく、中でも20%~90%が好ましく、より好ましくは30%~80%であり、更に好ましくは35%~80%である。上記範囲にあることが後述する略円形状の粘着部を形成することができ、その結果、被着体との界面から気泡が抜けやすく(エア抜け性)、かつ、良好な接着力を保持できるパターン状粘着テープを効率よく生産できるため特に好ましい。なお、上記領域の割合は、流れ方向5cm及び幅方向5cmの正方形のテープの面積おける前記粘着部(B)の面積割合である。
【0087】
前記粘着部(B)の厚さは、特に限定されないが、1μm~20μmが好ましく、中でも2μm~15μmが好ましく、3μm~10μmが、良好な接着力を有することができ、被着体と粘着部(B)との界面から気泡を容易に除去することができ、その結果、前記パターン状粘着テープの膨れ等に起因した外観不良や、熱伝導性や耐熱性や接着力等の性能低下をより効果的に防止できるためより好ましい。前記粘着部(B)の厚さは、JIS K6783にしたがい、ダイヤルゲージを用いた方法で、ダイヤルゲージの接触面が平面、その径が5mm及び荷重が1.23Nである条件で測定された両面粘着テープの厚さを指す。
【0088】
前記粘着部(B)は、前述の本実施形態のパターン状粘着テープ用粘着剤組成物を用いて形成することができる。なかでも、前記粘着部(B)としては、アクリル系粘着剤組成物を用いて得られる粘着部を使用することが、接着信頼性に優れるため好ましい。
【0089】
[パターン状粘着テープの製造方法]
本発明の一実施形態の、パターン状粘着テープの製造方法(本実施形態のパターン状粘着テープの製造方法をいうことがある)は、支持体(A)の表面に、前述の本実施形態のパターン状粘着テープ用粘着剤組成物を用いて、粘着剤層を形成する粘着剤層形成工程を含む。前記粘着剤層が、2以上の粘着部と、前記2以上の粘着部(B)の間に粘着部(B)を有しない非粘着部領域と、を有する。
本実施形態の粘着テープは、例えば前記支持体(A)の少なくとも一方の面(a)側に、前述の本実施形態の粘着剤組成物を間欠状に印刷(塗布)し乾燥等させ粘着部(B)を形成することによって製造することができる。印刷に用いる塗布方法としては、グラビア塗布法、コンマ塗布法、バー塗布法、ダイ塗布法、リップ塗布法、スクリーン塗布法等を挙げることができる。
【0090】
前記粘着剤組成物は、例えばグラビア印刷方法やスクリーン印刷方法等の印刷方法で、前記支持体(A)の少なくとも一方の面(a)に、間欠状に塗布することが、粘着部の厚さを調整しやすく、粘着部を均等に形成しやすいため好ましい。
【0091】
また、前記パターン状粘着テープは、前記支持体(A)の両面側に、前記粘着剤組成物をそれぞれ間欠状に印刷(塗布)し、乾燥させることによって製造することもできる。
【0092】
また、前記パターン状粘着テープは、例えば剥離ライナーの表面に前記粘着剤組成物を間欠状に印刷(塗布)し乾燥等することによって粘着部(B)を形成した後、前記粘着部(B)を支持体(A)の少なくとも一方の面(a)側に転写することによって製造することができる。
【0093】
支持体(A)又は剥離ライナーに前記粘着剤組成物を間欠状に印刷(塗布)する塗布方法としては、グラビア塗布法、コンマ塗布法、バー塗布法、ダイ塗布法、リップ塗布法、スクリーン塗布法等を挙げることができる。中でも所望の粘着部(B)の形状を形成可能な印刷版を用いる方法が好ましく、グラビア印刷方法(グラビア塗布法)又はスクリーン印刷(スクリーン塗布法)方法により前記粘着剤組成物を間欠状に塗布することが、粘着部(B)の厚さを調整しやすく、粘着部(B)を均等に形成しやすいため好ましい。
また、本実施形態のパターン状粘着テープの製造方法の前記粘着剤層形成工程において、前記支持体(A)の少なくとも一方の面に、グラビア印刷(塗布)方法またはスクリーン印刷(塗布)方法で、前記パターン状粘着テープ用粘着剤組成物を印刷(塗布)することによって、略円形状、略四角形状または略六角形状の2以上の粘着部(B)形成することが好ましい
【0094】
本発明のパターン状粘着テープは、例えば上記したような剥離ライナーを用いて製造された後、必要に応じて前記剥離ライナーが剥離され、その他の剥離ライナーが貼付されたものであってもよい。
【0095】
本実施形態の粘着テープは、例えば携帯電子端末等の電子機器を構成するきょう体や、グラファイトシート等の放熱部材と、充電池等の発熱部材との接着に好適に使用することができる。本実施形態の粘着テープは、携帯電子端末等の電子機器の製造場面で好適に使用することができる。特に、被着体間のクリアランス(パターン状粘着テープの貼付部位)が、幅20μm以下の非常に狭小な範囲である場合であっても、前記被着体を強固に接着することができる。
【0096】
また、前記パターン状粘着テープは、被着体と粘着部(B)との界面から気泡が抜けやすいため、前記気泡の残存に起因した性能の低下が懸念される放熱シートの固定用途、磁性シートの固定用途等で好適に使用することができる。
【0097】
(放熱シート固定用途での使用)
携帯電子端末等の電子機器には、使用により熱を発する部材が搭載されたものが多い。発熱部材としては、例えば充電池、回路基板等が挙げられる。
【0098】
前記部材が発する熱によって電子機器の一部が局所的に高温になることは、電子機器の誤作動等を防止するうえで避けることが好ましい。そのため、前記発熱部材またはそれに隣接する部材(例えば電子機器に剛性を付与するために使用されるフレーム材である金属部材等)には、前記熱を拡散させることを目的として、放熱シート等の放熱部材が貼付されていることが多い。
【0099】
前記放熱部材としては、例えばグラファイトシートやグラフェンシートが好ましく用いられる。
【0100】
前記グラファイトシートとしては、人工グラファイトシートや天然グラファイトシートの2種類が挙げられる。
【0101】
前記人工グラファイトシートとしては、例えばポリイミドフィルムのような有機フィルムを高温の不活性ガス雰囲気中で熱分解して得られる熱分解グラファイトシートが挙げられる。
【0102】
前記天然グラファイトシートは、例えば天然の黒鉛を酸処理した後、加熱膨張させた黒鉛粉末を加圧してシート状にしたものが挙げられる。
【0103】
前記グラファイトシートとしては、皺が少ないものを使用することが、より一層優れた放熱性を発現するうえで好ましく、皺の少ない人工グラファイトシートを使用することがより好ましい。
【0104】
前記グラファイトシートの厚さは、10μm~100μmであることが好ましく、15μm~50μmであることが、携帯電子端末等の電子機器の薄型化に貢献するうえで好ましい。
【0105】
一方、前記グラファイトシートは、比較的脆いため、一般に、その片面または両面にパターン状粘着テープが貼付されたグラファイト複合シートの状態で使用される。
【0106】
前記グラファイト複合シートとしては、例えば、
図5に示すように、グラファイトシート4が片面パターン状粘着テープ5と両面パターン状粘着テープ6とによって封止された構成を有するグラファイト複合シートを使用することが、グラファイトシートの高強度化と絶縁性とを両立するうえで好ましい。
【0107】
前記グラファイト複合シートとしては、前記グラファイトシートよりも大きい面積であるパターン状粘着テープによって封止(パウチ)されたものを使用することが、グラファイトシートの層間破壊や粉落ち等が発生することを防止でき、好適な加工性を実現しやすくなるため好ましい。
【0108】
本発明のパターン状粘着テープは、前記グラファイトシートをパウチする際に、好適に使用することができる。その際、前記パターン状粘着テープは、その粘着部(B)を有する面が外側(グラファイトシート側でない方向)を向く状態で使用することが好ましい。これにより、グラファイト複合シートと、充電池等の発熱部材またはそれに隣接する部材とを貼り合わせる際に、それらの界面に気泡が残存することを効果的に防止することができる。
【0109】
前記グラファイト複合シートと前記部材との貼付は、例えば前記部材の表面に前記グラファイト複合シートを載置し、軽く圧着させることによってそれらを仮接着させる工程、前記仮接着後、ローラー等を用いて加圧しそれらを強固に接着させる工程を経ることによって行うことができる。前記仮接着の工程では、通常、前記部材とグラファイト複合シートとの界面に気泡が存在する。しかし、本発明のパターン状粘着テープを用いてグラファイト複合シートであれば、前記ローラー等により加圧した際に、前記気泡が速やかに前記界面から除去される。
【0110】
また、前記グラファイト複合シートには、その表面の傷つき等を防止することを目的として、表面保護フィルムが貼付されていることが多い。前記表面保護フィルムは、通常、前記グラファイト複合シートと前記部材とを貼付した後に、除去される。
【0111】
本発明のパターン状粘着テープであれば、前記気泡が除去された後は部材等の被着体と強固に接着できるため、前記表面保護フィルムをグラファイト複合シートから除去する際に、前記グラファイト複合シートの部材からの浮きや剥がれを引き起こしにくい。
【0112】
以上のとおり、本発明のパターン状粘着テープを用いて得られたグラファイト複合シートは、部材等の被着体との界面に気泡が存在することを防止できるため、前記気泡の存在によるパターン状粘着テープの熱抵抗値の増加を効果的に防止することができ、その結果、パターン状粘着テープの厚さ方向の熱伝導率を向上させることができる。
【0113】
(磁性シート固定用途での使用)
磁性シートは、電子機器を構成する部材から発せられた電磁波の外部への漏えいを遮断したり、外部で発生した電磁波が電子機器に影響を与えることを防止することを目的として、電子機器の内部に貼付されていることが多い。
【0114】
前記磁性シートとしては、例えばNi系フェライト磁性体粉末、Mg系フェライト磁性体粉末、Mn系フェライト磁性体粉末、Ba系フェライト磁性体粉末、Sr系フェライト磁性体粉末、Fe-Si合金粉末、Fe-Ni合金粉末、Fe-Co合金粉末、Fe-Si-Al合金粉末、Fe-Si-Cr合金粉末、鉄粉末、Fe系アモルファス、Co系アモルファス、Fe基ナノ結晶体等を用いて得られるシートを使用することができる。
【0115】
前記磁性シートとしては、一般に、比較的厚いものを使用した方が、良好な電磁波シールド特性を付与するうえで好ましい。
【0116】
本実施形態の粘着テープは、前記したとおり非常に薄型であるため、前記磁性シートとして最大限の厚膜を有するものを使用することができる。
【0117】
前記磁性シートは、良好な絶縁性と高強度とを付与することを目的として、その片面または両面にパターン状粘着テープが貼付された磁性複合シートの態様で使用されることが好ましい。
【実施例0118】
以下に、この発明の実施例を記載して、より具体的に説明する。
【0119】
(合成例)
「アクリル系共重合体の製造」
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、n-ブチルアクリレート74.9質量部、2-エチルヘキシルアクリレート10質量部、シクロヘキシルアクリレート10質量部、アクリル酸5質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.1質量部、及び、酢酸エチル100質量部を仕込み、攪拌下、窒素を吹き込みながら75℃まで昇温させた。
【0120】
次に、前記混合物に、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.1質量部を予め酢酸エチルに溶解した溶液を添加し、攪拌下、75℃で8時間ホールドした。
【0121】
次に、前記混合物を酢酸エチルで希釈し、200メッシュ金網でろ過することによって、不揮発分40質量%、重量平均分子量89万のアクリル共重合体溶液を得た。
アクリル重合体のガラス転移温度は-46.5℃であった。
【0122】
「粘着剤組成物の調製」
(調製例1)
前記合成例で得られたアクリル系共重合体100質量部に対し、不均一化ロジングリセリンエステル(軟化点125℃)を5部、重合ロジンペンタエリスリトールエステル(軟化点125℃)を15部、芳香族・脂肪族系炭化水素共重合樹脂(三井石油化学工業社製、商品名「FTR6125」、軟化点125℃)を15部、酢酸エチルで希釈して不揮発分32%のアクリル系粘着剤組成物を調製した。続いて前記粘着剤組成物100質量部とイソシアネート系架橋剤(DIC社製、商品名「NC40」):1.0部を加えて均一になるように攪拌して混合することにより、粘着剤組成物(a-1)を調製した。
【0123】
前記粘着剤組成物(a-1)を用いて、上記の評価方法で、伸長粘度、せん断粘度を評価した。その結果を表1に示す。
【0124】
「粘着剤組成物の調製」
(調製例2~6、比較調製例1~3)
酢酸エチルで希釈し、表1に示す不揮発分のアクリル系粘着剤組成物を調製した以外は、調製例1と同様な方法で粘着剤組成物(a-1)~(a-6)、(b-1)~(b-3)を調製した。
【0125】
前記粘着剤組成物(a-1)~(a-6)、(b-1)~(b-3)を用いて、調製例1と同様な方法で、伸長粘度、せん断粘度を評価した。その結果を表1に示す。
【0126】
(実施例1)
「PET25×1J0L」(ニッパ株式会社製、表面平滑なPETフィルムの表面にシリコーン系剥離処理面を有する剥離ライナー)に、ロールコーターを用いて前記調製例で得らえた粘着剤組成物(a-1)を塗布した後、100℃で1分間乾燥させることによって、厚さ1μmの粘着剤層を作製した。
【0127】
次に、前記粘着剤層を、支持体である「K100-2.0W」(三菱樹脂株式会社製、ポリエステルフィルム、厚さ2μm)の一方の面に転写することによって片面テープを得た。
【0128】
次に、前記片面テープを構成する前記支持体の他方の面に、グラビアコーターと、表1に示す版形状を有するグラビア版(版の凹がドット)を用いて、前記粘着剤組成物(a-1)をグラビア印刷によりドット状に塗布し、100℃で1分間乾燥させることによって、
図1に示す略ひし形形状において、内角の角度θ=90°である形状(略正方形形状)の厚さ3μmの粘着部を有する総厚さ6μmのパターン状粘着テープを得た。なお、前記粘着部のうち、任意の粘着部とそれに近接する粘着部との距離は、0.1mmであった。
また、電子顕微鏡観察(倍率100倍)で、粘着部(1個あたり)の面積、粘着部(b1)とそれに近接する粘着部(b2)との距離、粘着部を有する領域の割合を測定した。それらの結果を表2に示す。
【0129】
前記で得たパターン状粘着テープの前記粘着部を有する面に、「PET25×1J0L」(ニッパ株式会社製、表面平滑なPETフィルムの表面にシリコーン系剥離処理面を有する剥離ライナー)を重ねラミネーターで線圧3N/mmで貼付した。
【0130】
(実施例2~4、比較例1~2)
調製例2~4、比較調製例1~2で得られた粘着剤組成物(a-2)~(a-4)、(b-1)~(b-2)をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様な方法で、実施例2~4、比較例1~2のパターン状粘着テープを得た。実施例1と同様な方法で、得られたパターン状粘着テープを評価し、その結果を表2に示す。なお、比較例2は、グラビア印刷により版から支持体へ転移した粘着剤組成物が流動してしまい、粘着剤層がドット状にならずベタ状になり、パターン状粘着テープが得られなかった。
【0131】
(実施例5)
スクリーンコーターと表1に示す版形状を有するスクリーン版(版の孔がドット)とを用いたこと以外は、調製例5で得られた粘着剤組成物(a-5)を用いて、スクリーン印刷によりドット状に塗布した以外は、実施例1と同様な方法で、実施例5のパターン状粘着テープを得た。実施例1と同様な方法で、得られたパターン状粘着テープを評価し、その結果を表2に示す。
【0132】
(実施例6、比較例3)
調製例6、比較調製例3で得られた粘着剤組成物(a-6)、(b-3)をそれぞれ用いた以外は、実施例5と同様な方法で、実施例6、比較例3のパターン状粘着テープを得た。実施例1と同様な方法で、得られたパターン状粘着テープを評価し、その結果を表2に示す。なお、比較例3は、粘着剤組成物を支持体に印刷する前に、版から粘着剤組成物が流出してしまい、スクリーン印刷が出来ず、パターン状粘着テープの形成に至らなかった。
【0133】
「粘着剤組成物の評価方法」
(不揮発分)
アクリル共重合体の不揮発分及び希釈に用いた酢酸エチルの量から、計算により粘着剤組成物の不揮発分を算出した。
【0134】
(伸長粘度、せん断粘度)
表1に示す、実施例1~6、比較例1~3の粘着剤組成物(a-1)~(a-6)、(b-1)~(b-3)について、それぞれ以下に示す方法により、伸長速度が4000s-1における伸長粘度と、せん断速度4000s-1におけるせん断粘度とを測定した。
伸長粘度は、JIS-7199(ISO 11443、ASTM D 3835)に記載されたキャピラリレオメータ評価方法に準拠して測定した。
【0135】
具体的には、ツインキャピラリ型の装置(Gottfert社製;RHEOGRAPH20)を用いた。長さ30mm、直径0.3mmのキャピラリダイと、長さ0.25mm、直径0.3mmのキャピラリダイとを組み合わせて用いた。
【0136】
そして、温度30℃、せん断速度1000~300000s-1で測定した見かけのせん断粘度(圧力)から、バーグレー補正を使用して圧力損失を除去し、真のせん断粘度を得た。得られた真のせん断粘度と圧力損失から、コグスウェル式を用いて伸長速度と対応した伸長粘度を求めた。
伸長速度4000s-1における伸長粘度、せん断速度4000s-1におけるせん断粘度の値を表1に示す。
【0137】
<グラファイト複合シートの作製>
縦100mm×横100mm×厚さ25μmのグラファイトシートの一方の面に、縦104mm×横104mm×厚さ5μmの片面パターン状粘着テープ「IL-05G」(DIC株式会社製)を貼り合せ、前記グラファイトシートの他方の面に、実施例及び比較例で得たパターン状粘着テープを縦104mm×横104mmの大きさに裁断したものを貼り合わせた。
【0138】
その際、前記パターン状粘着テープを構成する粘着剤層のうち、平滑な表面を有する粘着剤層がグラファイトシートと接する向きとなるようにした。
【0139】
次に、前記片面パターン状粘着テープ「IL-05G」の表面に、厚さ62μmの微粘着片面テープ「CPF50(25)-SP」(ニッパ株式会社製)を貼り合せることによって、グラファイト複合シートを得た。
【0140】
「パターン状粘着テープの評価方法」
(粘着剤層の計測)
電子顕微鏡(倍率100倍)を用いて、粘着部の形状、サイズなどを測定した。
ダイヤルゲージ(テスター産業製)を用いて、粘着部、粘着剤層、粘着テープの厚さを測定した。
【0141】
(粘着部形状の評価)
電子顕微鏡(倍率100倍)を用いて、粘着部(1個あたり)の面積、粘着部(b1)とそれに近接する粘着部(b2)との距離を測定した。粘着部の総面積から、粘着部を有する領域の割合を算出した。
【0142】
(接着力(貼付後1時間))
実施例及び比較例で得たパターン状粘着テープを20mm幅に切断し、その片側の粘着剤層を、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムで裏打ちしたものを試験片とした。前記裏打ちは、表面が平滑な粘着剤層の表面に対して行い、本発明の構成要件である粘着部(B)に相当する粘着剤層に対して行わないようにした。
【0143】
前記試験片を、清潔で平滑なステンレス板の表面に貼付し、その上面で2kgローラーを1往復させることで加圧したものを、JISZ-0237に準じ、23℃及び50%RHの条件下で1時間放置した後、23℃及び50%RHの雰囲気下でテンシロン引張試験機を用いて、ピール接着力(剥離方向:180°、引張速度:0.3m/min)を測定した。測定結果は、表の「接着力(貼付後1時間)」の欄に示した。
【0144】
(接着力(貼付後24時間))
実施例及び比較例で得たパターン状粘着テープを20mm幅に切断し、その片側の粘着剤層を、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムで裏打ちしたものを試験片とした。前記裏打ちは、表面が平滑な粘着剤層の表面に対して行い、本発明の構成要件である粘着部(B)に相当する粘着剤層に対して行わないようにした。
【0145】
前記試験片を、清潔で平滑なステンレス板の表面に貼付し、その上面で2kgローラーを用いて1往復させることで加圧したものを、JISZ-0237に準じ、23℃及び50%RHの条件下で24時間放置した後、23℃及び50%RHの雰囲気下でテンシロン引張試験機を用いて、ピール接着力(剥離方向:180°、引張速度:0.3m/min)を測定した。測定結果は、表の「接着力(貼付後24時間)」の欄に示した。
【0146】
(保持力)
実施例及び比較例で得たパターン状粘着テープを20mm幅に切断し、その片側の粘着剤層を、厚さ50μmのアルミ箔で裏打ちしたものを試験片とした。前記裏打ちは、表面が平滑な粘着剤層の表面に対して行い、本発明の構成要件である粘着部(B)に相当する粘着剤層に対して行わないようにした。
【0147】
前記試験片を、清潔で平滑なステンレス板の表面に20mm×20mmの貼付面積となるように貼付し、その上面で2kgローラーを用いて1往復させることで加圧したものを、JISZ-0237に準じ、23℃及び50%RHの条件下で1時間放置した後、100℃の雰囲気下でせん断方向に100gの荷重をかけ、24時間後のテープのずれ距離を測定した。測定結果は、表の「保持力」の欄に示した。
【0148】
[気泡の抜けやすさ1(除去しやすさ)の評価方法]
グラファイト複合シートの剥離ライナーを剥離し、23℃及び50%RH雰囲気下、前記粘着部の表面に縦200mm×横200mmのアルミニウム板を置き、アルミニウム板の上から10Nを荷重した状態で5秒放置することによって仮貼付物を得た。
【0149】
次に、前記仮貼付物を反転させた後、グラファイト複合シート側の面から2kgローラーを1往復させることでそれらを加圧することによって積層体を得た。
【0150】
上記方法で前記積層体を10個作製した。前記積層体を構成する前記グラファイト複合シートの粘着剤層とアルミニウム板との間に気泡が存在するか否かを、グラファイトシートの膨らみを目視で観察することによって確認した。前記方法で気泡の存在を確認できなかった積層体の数に基づいて、前記気泡の抜けやすさを評価した。
【0151】
[気泡の抜けやすさ2(除去しやすさ)の評価方法]
グラファイト複合シートの剥離ライナーを剥離することによって現れた粘着部の表面に、「PET25X1J0L」(ニッパ株式会社製、離型処理面が平滑な離型ライナー、Ra=0.03μm)を貼付し、ラミネーターを用いて線圧3N/mmの条件で加圧した後、23℃の環境下に1日放置した。
【0152】
その後、前記「PET25X1J0L」を剥離し、23℃及び50%RH雰囲気下、前記剥離によって現れた粘着部の表面に縦200mm×横200mmのアルミニウム板を置き、アルミニウム板の上から10Nを荷重した状態で5秒放置することによって仮貼付物を得た。
【0153】
次に、前記仮貼付物を反転させた後、グラファイト複合シート側の面から2kgローラーを1往復させることでそれらを加圧することによって積層体を得た。
【0154】
上記方法で前記積層体を10個作製した。前記積層体を構成する前記グラファイト複合シートの粘着部とアルミニウム板との間に気泡が存在するか否かを、グラファイトシートの膨らみを目視で観察することによって確認した。前記方法で気泡の存在を確認できなかった積層体の数に基づいて、前記気泡の抜けやすさを評価した。
【0155】
(微粘着フィルムを剥離した際のグラファイト複合シートの浮きの有無)
前記グラファイト複合シートを構成する片面パターン状粘着テープ「IL-05G」(DIC株式会社製)の表面に、微粘着フィルム(厚さ75μmのPETフィルムの片面にシリコーン系微粘着剤層を有するもの:粘着力=0.05N/20mm)を貼り合せた積層品を、アルミニウム板に載置し、2kgローラーでその表面を1往復させることによってそれらを貼付した。
【0156】
前記貼付から1分後に、前記微粘着フィルムを5m/minの速度で、前記グラファイト複合シートの表面に対して180°方向に剥離した後、前記グラファイト複合シートがアルミニウム板の表面から浮いたか否かを目視で評価した。実施例及び比較例で得たグラファイト複合シートそれぞれにつき10個の積層品を作製し、上記試験を行った。上記試験によって前記アルミニウム板の表面からのグラファイト複合シートの浮きが確認できなかった積層品の数を、下記表に記載した。
【0157】
(外観の評価方法)
前記グラファイト複合シートをアルミニウム板に貼付し、蛍光灯下で、前記グラファイト複合シートの上面30cmの位置から観察したときに、粘着部の形状を視認できるか否かを基準に評価した。前記粘着部の形状がまったく視認できなかったものを「◎」、前記形状の一部をわずかに視認できたものを「○」、前記形状を明確に視認できたものを「×」と評価した。なお、比較例2、3は、粘着部が形成されず、粘着部としての形状を上記方法で視認できないことから、評価せず「-」とした。
[粘着部の個数]
粘着部の個数は、パターン状粘着テープの任意の範囲(流れ方向5cm及び幅5cmの正方形)を電子顕微鏡で観察し数えることによって求めた。
【0158】
【0159】
【0160】
表中の「略ひし形(θ=90°)」は、パターン状粘着テープの流れ方向に向いた角部の角度が90°(幅方向に向いた角部の角度が90°)であるひし形状の粘着部をさす(
図1)。換言すれば、表中の「略ひし形(θ=90°)」とは、
図1に示す粘着部の形状(略ひし形状)において、内角の角度θが90°である形状(略正方形形状)をさす。
【0161】
(考察)
伸長粘度が所定の範囲内にある粘着剤組成物は、パターン状粘着テープを製造する際の印刷版からの転移性が良好であり、保形性及び形状精度が良好な粘着部を形成することができた。そのため、実施例のパターン状粘着テープは、気泡の抜けやすさ及び接着力に優れる。また、実施例のパターン状粘着テープは、グラファイト複合シートに貼合したときに浮きが生じにくかった。
一方、伸長粘度が所定の範囲内に無い粘着剤組成物は、パターン状粘着テープを製造する際の版からの転移性や、転移後の粘着部の保形性及び形状精度が劣った。そのため、比較例のパターン状粘着テープは、気泡の抜けやすさと接着性との両立を図ることが困難であった。
詳述すると、比較例1では、粘着剤組成物の伸長粘度が高すぎるため、版から支持体に粘着剤組成物を転移する際に粘着剤組成物が版から出にくく転移性が劣った。その結果、得られた粘着部は、版形状(ドット形状)とは異なる形状になり寸法も小さく、形状精度が低下した。そのため比較例1のパターン状粘着テープでは粘着部(B)が版形状(ドット形状)に対応する略ひし形(θ=90°)ではなく、円形に近い形状となり、転移による形状変化に伴い粘着部(B)の大きさも小さくなったため面積割合が小さくなった(被着体との接着面積が減少した)。その結果、比較例1のパターン状粘着テープは、接着力が得られなかった。
また、比較例2では、粘着剤組成物の伸長粘度が低すぎるため、版から支持体に粘着剤組成物を転移する際に、粘着剤組成物が支持体上で流動して、粘着部の形状を保持できなかった。そのため、比較例2の粘着テープでは粘着剤層が平滑であり、粘着部(B)の形状が保持できずに粘着部(B)の間が埋まってしまいベタ状になった(パターン状の非粘着部領域が形成されなかった)。その結果、比較例2の粘着テープは、気泡の抜け道がなく、気泡の抜けやすさが著しく悪かった。
比較例3では、粘着剤組成物の伸長粘度が低すぎるため、粘着剤組成物が版に載せてから支持体に転移させるまでの間、版上で粘着剤組成物を保持できず、支持体上に粘着部を形成できなかった。
【0162】
実施例6において、粘着部(B)の寸法が版のドット寸法よりも大きくなり、粘着部(B)の間の距離が狭くなったため、他の実施例と比較して気泡の抜けやすさが劣った。