IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立化成株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-蓄熱成形体、硬化性組成物及び物品 図1
  • 特開-蓄熱成形体、硬化性組成物及び物品 図2
  • 特開-蓄熱成形体、硬化性組成物及び物品 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025799
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】蓄熱成形体、硬化性組成物及び物品
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/14 20060101AFI20240216BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240216BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240216BHJP
   C08G 59/20 20060101ALI20240216BHJP
   C08K 7/22 20060101ALI20240216BHJP
   C08G 59/22 20060101ALN20240216BHJP
   C08G 65/331 20060101ALN20240216BHJP
   F28D 20/02 20060101ALN20240216BHJP
【FI】
C09K5/14 E
C08L101/00
C08L63/00 C
C08G59/20
C08K7/22
C08G59/22
C08G65/331
F28D20/02 D
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023204940
(22)【出願日】2023-12-04
(62)【分割の表示】P 2020519863の分割
【原出願日】2019-05-14
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/042164
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018093540
(32)【優先日】2018-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】松原 望
(72)【発明者】
【氏名】永井 晃
(72)【発明者】
【氏名】森本 剛
(72)【発明者】
【氏名】木沢 桂子
(72)【発明者】
【氏名】古川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】佐野 温子
(72)【発明者】
【氏名】横田 弘
(57)【要約】
【課題】蓄熱量及び成形性に優れる蓄熱成形体を提供すること。
【解決手段】樹脂と、前記樹脂中に分散され、蓄熱成分を内包したマイクロカプセルと、を含有し、樹脂が、水溶性エポキシ化合物の硬化物を含む、蓄熱成形体。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、前記樹脂中に分散され、蓄熱成分を内包したマイクロカプセルと、を含有し、
前記樹脂が、水溶性エポキシ化合物の硬化物を含む、蓄熱成形体。
【請求項2】
前記水溶性エポキシ化合物がグリシジルエーテル化合物である、請求項1に記載の蓄熱成形体。
【請求項3】
前記水溶性エポキシ化合物が下記式(1)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の蓄熱成形体。
【化1】

[式(1)中、nは1~22の整数を表す。]
【請求項4】
前記マイクロカプセルの含有量が、前記蓄熱成形体の全量を基準として10~80質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄熱成形体。
【請求項5】
前記マイクロカプセルの粒子径が0.2~100μmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の蓄熱成形体。
【請求項6】
前記樹脂の含有量が、前記蓄熱成形体の全量を基準として10~80質量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の蓄熱成形体。
【請求項7】
100J/g以上の蓄熱容量を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の蓄熱成形体。
【請求項8】
水溶性エポキシ化合物と、蓄熱成分を内包したマイクロカプセルと、を含有する硬化性組成物。
【請求項9】
前記水溶性エポキシ化合物がグリシジルエーテル化合物である、請求項8に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
前記水溶性エポキシ化合物が下記式(1)で表される化合物である、請求項8又は9に記載の硬化性組成物。
【化2】

[式(1)中、nは1~22の整数を表す。]
【請求項11】
硬化剤を更に含有する、請求項8~10のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
水を更に含有する、請求項8~11のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
請求項8~12のいずれか一項に記載の硬化性組成物の硬化物を含む、蓄熱成形体。
【請求項14】
熱源と、
前記熱源と熱的に接触するように設けられた、請求項1~7及び13のいずれか一項に記載の蓄熱成形体と、を備える物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄熱成形体、硬化性組成物及び物品に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄熱材は、蓄えたエネルギーを必要に応じて熱として取り出すことのできる材料である。この蓄熱材は、省エネ、排熱利用、急激な温度上昇下降の抑制等を目的に、空調設備、床暖房設備、冷蔵庫、自動車内外装材、ICチップ等の電子部品、キャニスター等の自動車部品、保温容器などの用途で利用されている。
【0003】
蓄熱の方式としては、物質の相変化を利用した潜熱蓄熱が、熱量の大きさの点から広く利用されている。潜熱蓄熱としては、水-氷の相変化を利用したものがよく知られている。水-氷の相変化は、熱量の大きさでは有利であるが、相変化温度が大気下において0℃と限定されてしまうため、適用範囲も限定されてしまう。そのため、-30~120℃の相変化温度を有する潜熱蓄熱材料として、炭化水素が利用されている。
【0004】
しかし、相変化により液体となる炭化水素を蓄熱材として用いるためには、密閉性の高い容器又はフィルムに炭化水素を封入する必要がある。一方で、蓄熱材を容器に封入した場合、蓄熱材の適応場所が著しく限定される。そこで、現在では、メラミン樹脂等で形成された外殻(シェル)内に潜熱蓄熱材料を封入した蓄熱性マイクロカプセルが利用されている。
【0005】
蓄熱性マイクロカプセルは、例えば樹脂等の材料中に分散させて使用される。蓄熱性マイクロカプセルを使用する場合、省エネ、長時間の吸熱・放熱等を維持するために、樹脂中の蓄熱性マイクロカプセルの充填密度を大きくすることにより、蓄熱密度を大きくする必要がある。例えば特許文献1には、繊維構造体に蓄熱性マイクロカプセルを担持したものを加熱プレスすることにより、蓄熱密度が70J/cm以上である蓄熱性シートが開示されている。
【0006】
また、蓄熱性マイクロカプセルを含む蓄熱材は、例えば成形型に流し込むことでシート状に成形される場合がある。このような場合、成形時に蓄熱性マイクロカプセルが破損せず、蓄熱材料が漏洩しないことが要求される。例えば特許文献2には、塩化ビニル樹脂粒子及び蓄熱材を含有するビニルゾル塗工液のゾルキャスト膜を用いた蓄熱シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-142056号公報
【特許文献2】国際公開第2015/098739号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されているように、蓄熱密度を向上させるためには、例えば60質量%以上の蓄熱性マイクロカプセルを添加することが望ましい。一方で、添加量に比例して剛直性が高く成形性に劣る成形体になるため、蓄熱性マイクロカプセルの破損を防ぎつつ成形性を確保する観点からは、特許文献2に記載されているように、蓄熱性マイクロカプセルの添加量を例えば30質量%程度まで減少させる必要がある。つまり、大きな蓄熱量と優れた成形性とは互いにトレードオフの関係にあり、両方を同時に満足する蓄熱成形体を実現することは容易でない。
【0009】
そこで、本発明の一側面は、蓄熱量及び成形性に優れる蓄熱成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、蓄熱性マイクロカプセルと共に水溶性エポキシ化合物を用いることにより、蓄熱性マイクロカプセルを水に分散させた状態で蓄熱成形体の成形が可能となるため、蓄熱性マイクロカプセルの含有量を増やしても成形性を確保でき、その結果、大きな蓄熱量も得られることを見出した。
【0011】
本発明の一側面は、樹脂と、樹脂中に分散され、蓄熱成分を内包したマイクロカプセルと、を含有し、樹脂が、水溶性エポキシ化合物の硬化物を含む、蓄熱成形体である。この蓄熱成形体は、蓄熱量及び成形性に優れる。
【0012】
本発明の他の一側面は、水溶性エポキシ化合物と、蓄熱成分を内包したマイクロカプセルと、を含有する硬化性組成物である。この硬化組成物を用いることにより、上述した蓄熱量及び成形性に優れる蓄熱成形体が好適に得られる。
【0013】
上記の各側面において、水溶性エポキシ化合物は、グリシジルエーテル化合物であってよく、好ましくは、下記式(1)で表される化合物である。
【化1】

式(1)中、nは1~22の整数を表す。
【0014】
蓄熱成形体は、例えば曲面に貼り付けられて使用されることがあるため、適用対象の形状(例えば曲面)に応じて変形可能なように柔軟性を有していることが望ましいところ、水溶性エポキシ化合物が式(1)で表される化合物である場合、蓄熱量及び成形性に加えて、柔軟性にも優れる蓄熱成形体が得られる。
【0015】
蓄熱成形体において、マイクロカプセルの含有量は、蓄熱成形体の全量を基準として10~80質量%であってよく、マイクロカプセルの粒子径は、0.2~100μmであってよく、樹脂の含有量は、蓄熱成形体の全量を基準として10~80質量%であってよい。蓄熱成形体は、100J/g以上の蓄熱容量を有していてよい。
【0016】
硬化性組成物は、硬化剤を更に含有してよく、水を更に含有してよい。
【0017】
蓄熱成形体は、上記の硬化性組成物の硬化物を含んでよい。
【0018】
本発明の他の一側面は、熱源と、熱源と熱的に接触するように設けられた上記の蓄熱成形体と、を備える物品である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一側面によれば、蓄熱量及び成形性に優れる蓄熱成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】蓄熱成形体の一実施形態を示す断面図である。
図2】物品及びその製造方法の一実施形態を示す模式断面図である。
図3】物品の他の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を適宜参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0022】
図1は、蓄熱成形体の一実施形態を示す断面図である。図1に示すように、一実施形態に係る蓄熱成形体1は、樹脂2と、蓄熱成分を内包したマイクロカプセル(以下、単に「マイクロカプセル」又は「蓄熱性マイクロカプセル」ともいう)3とを含有している。マイクロカプセル3は、一次粒子又は凝集した状態で樹脂2中に分散している。蓄熱成形体1は、例えばシート状に成形されている。シート状の蓄熱成形体1の厚みは、例えば、0.1mm以上であってよく、5mm以下であってよい。
【0023】
樹脂2は、蓄熱成形体1のマトリックスを構成している。樹脂の含有量は、蓄熱成形体の全量を基準として、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、好ましくは80質量%以下であり、10~80質量%、30~80質量%、又は50~80質量%であってもよい。
【0024】
樹脂2は、水溶性エポキシ化合物の硬化物である。水溶性エポキシ化合物は、エポキシ基を有し、水100gに対して1g以上溶解する化合物である。なお、水溶性エポキシ化合物が水に溶解していることは目視により確認できる。水溶性エポキシ化合物は、例えば、室温(25℃)で液状であってよい。
【0025】
水溶性エポキシ化合物は、例えば、グリシジルエーテル化合物であってよい。グリシジルエーテル化合物は、例えば、多価アルコールの水酸基の一部又は全部における水素原子がグリシジル基で置換された化合物であってよい。多価アルコールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の2価アルコールであってよく、グリセロール等の3価アルコールであってよく、ソルビトール、ポリグリセロール等の4価以上のアルコールであってもよい。
【0026】
以上のような水溶性エポキシ化合物(グリシジルエーテル化合物)としては、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの水溶性エポキシ化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0027】
水溶性エポキシ化合物(グリシジルエーテル化合物)を構成する多価アルコールは、直鎖状であっても分岐状であってもよく、柔軟性に優れる観点から、好ましくは直鎖状である。同様の観点から、直鎖状の多価アルコールで構成される水溶性エポキシ化合物(グリシジルエーテル化合物)の含有量は、水溶性エポキシ化合物全量を基準として、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。
【0028】
水溶性エポキシ化合物の含有量は、蓄熱成形体の全量を基準として、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは40質量%以下であり、10~80質量%、30~80質量%、50~80質量%、10~60質量%、30~60質量%、50~60質量%、10~40質量%、又は30~40質量%であってもよい。
【0029】
水溶性エポキシ化合物は、蓄熱成形体1の柔軟性に優れる観点から、好ましくは、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル及びポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(これらをまとめて「(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル」ともいう)からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、蓄熱成形体1の柔軟性に更に優れる観点から、より好ましくは、下記式(1)で表される化合物である。
【化2】

式(1)中、nは1~22の整数を表す。n(重合度)は、好ましくは、1~13、1~9、1~5、10~22、14~22、又は18~22の整数であってよく、1又は22であってもよい。
【0030】
水溶性エポキシ化合物を硬化させるために、硬化剤を用いてもよく、硬化促進剤を更に用いてもよい。すなわち、樹脂2は、水溶性エポキシ化合物及び硬化剤を含む組成物の硬化物であってもよく、水溶性エポキシ化合物、硬化剤及び硬化促進剤を含む組成物の硬化物であってもよい。当該組成物は、例えば、熱によって硬化する熱硬化性組成物である。硬化剤及び硬化促進剤は、水溶性エポキシ化合物の種類に応じて適宜選択される。
【0031】
硬化剤としては、例えば、イソシアネート系硬化剤、フェノール系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、カルボン酸系硬化剤、アミン系硬化剤等が用いられる。
【0032】
硬化剤は、好ましくは、有機溶剤又は水に溶解する硬化剤であり、より好ましくは水に溶解する硬化剤(水溶性硬化剤)である。硬化剤は、好ましくは、水溶性イミダゾール系硬化剤、水溶性カルボン酸系硬化剤、水溶性アミン系硬化剤等の水溶性硬化剤である。これらの硬化剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0033】
硬化剤は、水溶性エポキシ化合物との反応性に優れる観点から、好ましくは水溶性アミン系硬化剤である。水溶性エポキシ化合物が有機溶剤にも溶解する場合(例えば、水溶性エポキシ化合物が(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテルである場合)、硬化剤は、イソシアネート系硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤等の有機溶剤に溶解する硬化剤であってもよい。
【0034】
イソシアネート系硬化剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート(2,4-若しくは2,6-トリレンジイソシアネート、又はその混合物)(TDI)、フェニレンジイソシアネート(m-若しくはp-フェニレンジイソシアネート、又はその混合物)、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-、2,4’-若しくは2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、又はその混合物)(MDI)、4,4’-トルイジンジイソシアネート(TODI)、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(1,3-若しくは1,4-キシリレンジイソシアネート、又はその混合物)(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3-若しくは1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、又はその混合物)(TMXDI)、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼンなどが挙げられる。イソシアネート系硬化剤としては、トリメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート)、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプエート等の脂肪族ジイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート)、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(4,4’-、2,4’-または2,2’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、これらのtrans,trans-体、trans,cis-体、cis,cis-体、又はその混合物)(H12MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート(各種異性体又はその混合物)(NBDI)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,3-若しくは1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン又はその混合物)(H6XDI)等の脂環族ジイソシアネートなども挙げられる。
【0035】
フェノール系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’-ビフェニルフェノール、テトラメチルビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチル-4,4’-ビフェノール、ジメチル-4,4’-ビフェニルフェノール、1-(4-ヒドロキシフェニル)-2-[4-(1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル]プロパン、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類;1,1-ジ-4-ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類;クレゾール類;エチルフェノール類;ブチルフェノール類;オクチルフェノール類;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、フラン骨格含有フェノールノボラック樹脂等の各種ノボラック樹脂などが挙げられる。
【0036】
イミダゾール系硬化剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ-[1,2-a]ベンズイミダゾール、2,4-ジアミノ-6(2’-メチルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6(2’-ウンデシルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6(2’-エチル,4-メチルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6(2’-メチルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-3,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニル-3,5-ジシアノエトキシメチルイミダゾール等が挙げられる。イミダゾール系硬化剤は、水溶性に優れる観点から、好ましくは、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、又は1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾールである。
【0037】
酸無水物系硬化剤としては、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコール無水トリメリット酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の芳香族カルボン酸無水物;アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族カルボン酸の無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、ナジック酸無水物、ヘット酸無水物、ハイミック酸無水物等の脂環式カルボン酸無水物等が挙げられる。
【0038】
カルボン酸系硬化剤としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。
【0039】
アミン系硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジフェニルエーテル、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレン、m-キシリレンジアミン等の芳香族アミン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、イソフォロンジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルジシクロヘキシル)メタン、ポリエーテルジアミン等の脂肪族アミン;ジシアンジアミド、1-(o-トリル)ビグアニド等のグアニジン類などが挙げられる。アミン系硬化剤は、水溶性に優れる観点から、好ましくは、ジエチレントリアミン又はトリエチレンテトラミンである。
【0040】
硬化剤の含有量は、水溶性エポキシ化合物100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上又は1質量部以上であってよく、50質量部以下、20質量部以下、又は10質量部以下であってよい。
【0041】
蓄熱性マイクロカプセル3は、蓄熱成分と、蓄熱成分を内包する外殻(シェル)とを有している。蓄熱成分は、蓄熱可能な成分であればよく、例えば、相転移に伴う蓄熱性を有する成分であってよい。蓄熱成分としては、使用目的に応じて目標温度に適合する相転移温度を有するものが適宜選択される。蓄熱成分は、実用範囲で蓄熱効果を得る観点から、例えば-30~120℃に固相/液相の相転移を示す固相/液相転移点(融点)を有する。
【0042】
蓄熱成分は、例えば、鎖状の飽和炭化水素化合物(パラフィン系炭化水素化合物)、天然ワックス、石油ワックス、ポリエチレングリコール、糖アルコール等の有機化合物、又は、無機化合物の水和物、結晶構造変化を示す無機化合物等の無機化合物であってよい。蓄熱成分は、安価で毒性が低く、所望の相転移温度を有するものを容易に選択できる観点から、好ましくは鎖状の飽和炭化水素化合物(パラフィン系炭化水素化合物)である。なお、本明細書において、「鎖状」とは、直鎖状又は分岐鎖状を意味する。
【0043】
鎖状の飽和炭化水素化合物は、具体的には、n-デカン(C10(炭素数、以下同様)、-29℃(転移点(融点)、以下同様)、n-ウンデカン(C11、-25℃)、n-ドデカン(C12、-9℃)、n-トリデカン(C13、-5℃)、n-テトラデカン(C14、6℃)、n-ペンタデカン(C15、9℃)、n-ヘキサデカン(C16、18℃)、n-ヘプタデカン(C17、21℃)、n-オクタデカン(C18、28℃)、n-ナノデカン(C19、32℃)、n-エイコサン(C20、37℃)、n-ヘンイコサン(C21、41℃)、n-ドコサン(C22、46℃)、n-トリコサン(C23、47℃)、n-テトラコサン(C24、50℃)、n-ペンタコサン(C25、54℃)、n-ヘキサコサン(C26、56℃)、n-ヘプタコサン(C27、60℃)、n-オクタコサン(C28、65℃)、n-ノナコサン(C29、66℃)、n-トリアコンタン(C30、67℃)、n-テトラコンタン(C40、81℃)、n-ペンタコンタン(C50、91℃)、n-ヘキサコンタン(C60、98℃)、n-ヘクタン(C100、115℃)等であってよい。鎖状の飽和炭化水素化合物は、これらの直鎖状の飽和炭化水素化合物と同様の炭素数を有する分岐状の飽和炭化水素化合物であってもよい。鎖状の飽和炭化水素化合物は、これらの1種又は2種以上であってよい。
【0044】
これらの蓄熱成分を内包する外殻(シェル)は、好ましくは、蓄熱成分の転移点(融点)よりも充分に高い耐熱温度を有する材料で形成されている。外殻を形成する材料は、蓄熱成分の転移点(融点)に対して、例えば30℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは50℃以上の耐熱温度を有する。なお、耐熱温度は、示差熱熱重量同時測定装置(例えばTG-DTA6300(株式会社日立ハイテクサイエンス製))を用いて、マイクロカプセルの重量減少を測定した際に、1%重量減少した温度として定義される。
【0045】
外殻を形成する材料としては、蓄熱成形体の用途に応じた強度を有する材料が適宜選択される。外殻は、好ましくは、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリカ等で形成されていてよい。メラミン樹脂を主成分とする外殻を有するマイクロカプセルとしては、例えば三菱製紙株式会社製のサーモメモリーFP-16,FP-25,FP-31,FP-39、三木理研工業株式会社製のリケンレジンPMCD-15SP,25SP,32SP等が例示される。アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート樹脂)を主成分とする外殻を有するマイクロカプセルとしては、BASF社製のMicronalDS5001X,5040X等が例示される。シリカを主成分とする外殻を有するマイクロカプセルとしては、三木理研工業社製のリケンレジンLA-15,LA-25,LA-32等が例示される。
【0046】
蓄熱成分の含有量は、マイクロカプセルの全量を基準として、蓄熱効果を更に高める観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは60質量%以上であり、蓄熱成分の体積変化によるマイクロカプセルの破損を抑制する観点から、好ましくは80質量%以下であり、20~80質量%又は60~80質量%であってもよい。
【0047】
蓄熱性マイクロカプセル3は、マイクロカプセルの熱伝導性、比重等を調節する目的で、外殻内に、黒鉛、金属粉、アルコール等を更に含んでいてもよい。
【0048】
蓄熱性マイクロカプセル3の粒子径(平均粒径)は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.5μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下であり、0.1~100μm、0.1~50μm、0.2~100μm、0.2~50μm、0.5~100μm、又は0.5~50μmであってもよい。蓄熱性マイクロカプセルの粒子径(平均粒径)は、レーザ回折式粒子径分布測定装置(例えばSALD-2300(株式会社島津製作所製)を用いて測定される。
【0049】
マイクロカプセル(粉体状態)の蓄熱容量は、より高い蓄熱密度を有する蓄熱性成形体を得ることができる観点から、好ましくは100J/g以上、より好ましくは150J/g以上、更に好ましくは200J/g以上である。蓄熱容量は、示差走査熱量測定(DSC)により測定される。
【0050】
マイクロカプセルの含有量は、蓄熱効果を更に高める観点から、蓄熱成形体の全量を基準として、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上である。マイクロカプセルの含有量は、蓄熱成形体からのマイクロカプセルの脱落を抑制する観点から、蓄熱成形体の全量を基準として、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。マイクロカプセルの含有量は、蓄熱成形体の全量を基準として、10~90質量%、10~85質量%、10~80質量%、30~90質量%、30~85質量%、30~80質量%、50~90質量%、50~85質量%、50~80質量%、60~90質量%、60~85質量%、又は60~80質量%であってよい。
【0051】
マイクロカプセルの製造方法については、界面重合法、in-situ重合法、液中硬化被覆法、コアセルベート法等の従来の公知の製造方法から、蓄熱成分及びシェルの材質等に応じて適切な方法を選択すればよい。
【0052】
蓄熱成形体1は、マイクロカプセル3と樹脂2との界面の接着性を向上させる観点から、好ましくは表面処理剤を更に含有する。表面処理剤は、例えば、カップリング剤であってよい。カップリング剤としては、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、フェニルシラン系カップリング剤、アルキルシラン系カップリング剤、アルケニルシラン系カップリング剤、アルキニルシラン系カップリング剤、ハロアルキルシラン系カップリング剤、シロキサン系カップリング剤、ヒドロシラン系カップリング剤、シラザン系カップリング剤、アルコキシシラン系カップリング剤、クロロシラン系カップリング剤、(メタ)アクリルシラン系カップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、イソシアヌレートシラン系カップリング剤、ウレイドシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、スルフィドシラン系カップリング剤、イソシアネートシラン系カップリング剤等が挙げられる。カップリング剤は、樹脂との反応性の観点から、好ましくはアミノシラン系カップリング剤である。
【0053】
蓄熱成形体1は、必要に応じて、その他の添加剤を更に含有することができる。その他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、着色剤、フィラー、結晶核剤、熱安定剤、熱伝導材、可塑剤、発泡剤、難燃剤、制振剤、難燃助剤(例えば金属酸化物)等が挙げられる。その他の添加剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0054】
本実施形態に係る蓄熱成形体1は、以上のような構成を備えることにより、例えば100J/g以上の蓄熱容量を有することができる。したがって、蓄熱成形体は、蓄熱材として好適に用いられる。
【0055】
また、この蓄熱成形体1は、柔軟性に優れている。本明細書において、「柔軟性に優れる」とは、蓄熱成形体1の長さ50mm×幅5mm×厚さ3mmの試験片に対し、試験片の長さ方向の一端を平面上に固定し他端を厚さ方向に持ち上げたときに、平面から他端までの高さが10mm以上となることを意味する。なお、蓄熱成形体1が長さ50mm×幅5mm×厚さ3mmより大きい場合は、当該蓄熱成形体1から所定の大きさの試験片を切り出せばよい。
【0056】
続いて、蓄熱成形体の製造方法について説明する。一実施形態に係る蓄熱成形体の製造方法は、上述した水溶性エポキシ化合物及びマイクロカプセルを含有する硬化性組成物を調製する調製工程と、硬化性組成物を成形する成形工程とを備える。
【0057】
硬化性組成物は、水溶性エポキシ化合物及びマイクロカプセルに加えて、上述した硬化剤を更に含有してよく、上述した表面処理剤を更に含有してよく、水を更に含有してよい。硬化性組成物が水を含有する場合、水は、硬化性組成物中の水以外の成分と分離した状態であってよい。
【0058】
調製工程は、例えば、上述した各成分を自公転ミキサーで混合する混合工程を有している。例えば、硬化性組成物が、マイクロカプセル、水溶性エポキシ化合物及び硬化剤を含有する場合、混合工程では、例えば自公転ミキサーにより、まず、マイクロカプセルと水溶性エポキシ化合物とを1000~3000rpm、1~10分間の条件で混合し、次いで、硬化剤を加えて、1000~3000rpm、30秒間~10分間の条件で更に混合してよい。
【0059】
マイクロカプセルは、好ましくは、予め水に分散させた水分散液の状態で調製工程に供される。すなわち、調製工程においては、好ましくは、マイクロカプセルの水分散液と、水溶性エポキシ化合物と、水溶性硬化剤を含む硬化剤と、必要に応じて表面処理剤等のその他の成分とを用いて、硬化性組成物を調製する。水分散液中のマイクロカプセルの含有量は、例えば、10質量%以上であってよく、50質量%以下であってよい。
【0060】
硬化性組成物中の水溶性エポキシ化合物、マイクロカプセル及び硬化剤の含有量は、上述した蓄熱成形体中の水溶性エポキシ化合物、マイクロカプセル及び硬化剤の含有量と同様であってよい。ただし、「蓄熱成形体の全量を基準として」は、「硬化性組成物中の不揮発分全量を基準として」と読み替える。なお、「硬化性組成物中の不揮発分」とは、後述する揮発工程において揮発しない成分(例えば、水溶性エポキシ化合物、マイクロカプセル、硬化剤等)を意味する。
【0061】
調製工程では、混合工程の後に、必要に応じて、混合後の硬化性組成物を脱泡する脱泡工程を更に行ってもよい。脱泡工程では、例えば、1000~3000rpm、30秒間~10分間の条件で脱泡してよい。
【0062】
成形工程では、例えば、調製工程で得られた硬化性組成物を成形型に流し込み成形する。より具体的には、成形工程では、加熱溶融成形法、ゲルキャスティング法等の湿潤成形法によって、硬化性組成物を成形する。成形工程における成形方法は、マイクロカプセルが安価かつ入手容易な水分散系のマイクロカプセルである場合に好適である観点から、好ましくはゲルキャスティング法である。
【0063】
例えば硬化性組成物が水を含有する場合は、成形工程の後に、水を揮発させる揮発工程を更に実施してもよい。揮発工程では、例えば、20~30℃、大気圧の条件下で、1~10日間乾燥させてよく、60~100℃、負圧(例えば-0.05~-0.2MPa)の条件下で、1~7日間乾燥させてよく、これらの両方を実施してもよい。
【0064】
以上説明した蓄熱成形体1は、様々な分野に活用され得る。蓄熱成形体1は、例えば、自動車、建築物、公共施設、地下街等における空調設備(空調設備の効率向上)、工場等における配管(配管の蓄熱)、自動車のエンジン(当該エンジン周囲の保温)、電子部品(電子部品の昇温防止)、下着の繊維などに用いられる。
【0065】
次に、蓄熱成形体1を備える物品及びその製造方法について、蓄熱成形体1を設ける対象として電子部品を例に挙げて説明する。
【0066】
図2は、物品及びその製造方法の一実施形態を示す模式断面図である。一実施形態の物品の製造方法では、まず、図2(a)に示すように、蓄熱成形体を設ける対象である物品として電子部品11を用意する。電子部品11は、例えば、基板12と、基板12上に設けられた半導体チップ(熱源)13とを備えている。
【0067】
続いて、図2(b)に示すように、シート状の蓄熱成形体1を、基板12及び半導体チップ13上に、基板12及び半導体チップ13のそれぞれと熱的に接触するように配置する。
【0068】
これにより、基板12と、半導体チップ13と、基板12及び半導体チップ13上に設けられた蓄熱成形体1(硬化性組成物の硬化物)とを備える物品14Aが得られる。
【0069】
上記実施形態では、熱源13における露出した表面の全部を覆うように蓄熱成形体1を配置したが、他の一実施形態では、熱源における露出した表面の一部を覆うように蓄熱成形体を配置してもよい。
【0070】
図3(a)は、物品の他の一実施形態を示す模式断面図である。図3(a)に示すように、他の一実施形態に係る物品14Bでは、蓄熱成形体1は、例えば半導体チップ(熱源)13における露出した表面の一部に接触して(一部を覆うように)配置されていてよい。蓄熱成形体1が配置される場所(蓄熱成形体1が半導体チップ13に接触する場所)は、図3(a)では半導体チップ13の側面部分であるが、半導体チップ13のいずれの面上であってもよい。
【0071】
図3(b)は、物品の他の一実施形態を示す模式断面図である。図3(b)に示すように、他の一実施形態に係る物品14Cでは、蓄熱成形体1は、基板12における半導体チップ13が設けられた面とは反対側の面に配置されている。本実施形態では、蓄熱成形体1は、半導体チップ13に直接接していないが、基板12を介して半導体チップ13と熱的に接触している。蓄熱成形体1が配置される場所は、半導体チップ13に熱的に接触していれば、基板12のいずれの面上であってもよい。この場合でも、熱源(半導体チップ)13で発生する熱は、基板12を介して蓄熱成形体1に効率良く伝導し、蓄熱成形体1で好適に蓄えられる。
【実施例0072】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0073】
実施例で用いたシート状の蓄熱成形体は、以下のとおり、ゲルキャスティング法により作製した。比較例で用いたシート状の成形体は、常温常圧で硬化させた。各組成を表1に示す。
【0074】
(実施例1)
50mLのポリプロピレン容器に、水溶性エポキシ化合物としてエチレングリコールジグリシジルエーテル(式(1)におけるnが1である化合物、デナコールEX810、ナガセケムテックス株式会社製)25.4質量部、蓄熱性マイクロカプセルの水分散液(蓄熱性マイクロカプセルの含有量:40質量%、三木理研工業株式会社製、平均粒径:2.7μm、蓄熱成分の融点:5℃)175質量部を加え、自転公転ミキサーで2000rpm、2分間攪拌混合し、水溶性エポキシ化合物とマイクロカプセルの混合分散液を作製した。この混合分散液に、硬化剤としてジエチレントリアミン(東京化成株式会社製)4.6質量部を添加し、2000rpm、1分間攪拌混合し、2200rpm、30秒間脱泡することで、硬化性組成物を作製した。この硬化性組成物を用いて、ゲルキャスティング法により成形体を得た。具体的には、硬化性組成物を成形型へ注型後、その場ゲル化反応により固化させ、湿潤な硬化体を得た。得られた硬化体を25℃にて3日間乾燥後、80℃、-0.1MPaの負圧の条件下で3日間真空乾燥し、蓄熱成形体を得た。
【0075】
(実施例2)
水溶性エポキシ化合物としてポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(式(1)におけるnが22である化合物、デナコールEX861、ナガセケムテックス株式会社製)28.9質量部、硬化剤としてジエチレントリアミン1.1質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして蓄熱成形体を作製した。
【0076】
(実施例3)
水溶性エポキシ化合物としてソルビトールポリグリシジルエーテル(デナコールEX614、ナガセケムテックス株式会社製)26.7質量部、硬化剤としてエチレントリアミン3.3質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして蓄熱成形体を作製した。
【0077】
(比較例1)
50mLのポリプロピレン容器に、水に不溶なエポキシ樹脂としてエポマウント(リファインテック株式会社製)29.1質量部、ジエチレントリアミン0.9質量部、蓄熱性マイクロカプセル(パウダー状)70質量部を加え、自転公転ミキサーで2000rpm、3分間攪拌混合し、エポキシ樹脂とマイクロカプセルの混合物を作製した。この混合物は液状分の極端に少ない塊であり、成形加工できなかった。
【0078】
(比較例2)
50mLのポリプロピレン容器に、水に不溶なエポキシ樹脂としてエポマウント(リファインテック株式会社製)67.9質量部、蓄熱性マイクロカプセル(パウダー状)30質量部を加え、自転公転ミキサーで2000rpm、3分間攪拌混合し、エポキシ樹脂とマイクロカプセルの混合液を作製した。この混合分散液に硬化剤としてジエチレントリアミン2.1質量部を添加し、2000rpm、1分30秒間攪拌脱泡することで、ワニスを作製した。このワニスを金属製成形容器に流し込み、24時間25℃にて硬化させ、蓄熱成形体を作製した。
【0079】
[成形性の評価]
成形体を作製できた場合(実施例1~3及び比較例2)を「A」、成形体を作製できなかった場合(比較例1)を「B」として、成形性を評価した。結果を表1に示す。
【0080】
[蓄熱量の評価]
実施例1~3及び比較例2の各蓄熱成形体を、示差走査熱量測定計(パーキンエルマー社製、型番DSC8500)を用いて測定し、蓄熱量を算出した。具体的には、10℃/分で100℃まで昇温し、100℃で5分間保持した後、10℃/分の速度で-30℃まで降温し、次いで-30℃で3分間保持した後、10℃/分の速度で100℃まで再び昇温して熱挙動を測定した。融解ピークの面積を蓄熱量とした。結果を表1に示す。
【0081】
[柔軟性の評価]
実施例1~3及び比較例2の各蓄熱成形体から、長さ50mm×幅5mm×厚さ3mmの試験片を作製した。試験片の長さ方向の一端を平面上に固定し、他端を厚さ方向に持ち上げたときに、蓄熱成形体が破損せずに平面から他端までの高さが10mm以上となるように持ち上げられた場合を「A」、そうでない場合を「B」として、柔軟性を評価した。結果を表1に示す。
【0082】
[液漏れ及び揮発性の評価]
実施例1~3及び比較例2の各蓄熱成形体について、80℃の温度にて大気雰囲気下で1000時間静置前後の重量変化を測定し、重量減少率(%)を測定した。結果を表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
実施例に示すように、本発明の蓄熱成形体は、蓄熱量及び成形性に優れており、加えて、液漏れ及び揮発を抑制できる。また、水溶性エポキシ化合物として、上記式(1)で表される化合物を用いた場合(実施例1,2)、それ以外の水溶性エポキシ化合物を用いた場合(実施例3)に比べて、柔軟性にも優れる蓄熱成形体が得られる。
【0085】
一方、水溶性エポキシ化合物ではないエポキシ樹脂を用い、実施例1~3と同量のマイクロカプセルを用いた場合(比較例1)、成形体を作製することができない。また、水溶性エポキシ化合物ではないエポキシ樹脂を用い、成形体を作製できる程度にマイクロカプセルの量を減らした場合(比較例2)、実施例1~3に比べて蓄熱量に劣る。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の一側面の蓄熱成形体は、蓄熱量及び成形性に優れているため、充分な蓄熱効果を示す成形体として使用可能である。また、本発明の他の一側面の蓄熱成形体は、柔軟性にも優れているため、住宅、自動車等の曲面に貼り付けて使用することも可能である。
【符号の説明】
【0087】
1…蓄熱成形体、2…樹脂、3…蓄熱性マイクロカプセル、11…電子部品、12…基板、13…半導体チップ(熱源)、14A,14B,14C…物品。
図1
図2
図3