(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025976
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】レーザ照射装置及び計測システム
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20240220BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20240220BHJP
G01C 15/02 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
G01C15/00 103C
G02B26/10 Z
G01C15/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129383
(22)【出願日】2022-08-15
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大郷 毅
【テーマコード(参考)】
2H045
【Fターム(参考)】
2H045AA00
2H045AB01
2H045AB72
2H045AB81
2H045CA82
2H045DA02
2H045DA04
2H045DA12
(57)【要約】
【課題】照射距離が遠い場合でもレーザ光の光強度分布のピークが検出されやすくなる測距装置及び計測システムを提供する。
【解決手段】発散角を有し、かつ照射距離に応じてビームスポットのスポット径が広がるレーザ光を出射するレーザ光源と、レーザ光の照射方向を変化させることによりレーザ光のビームスポットを予め設定された主走査方向へ移動させる主走査と、ビームスポットを主走査方向と直交する副走査方向へ移動させる副走査とが可能な走査機構と、走査機構を制御するプロセッサと、を備えており、プロセッサは、ビームスポットが主走査方向における同じ位置を複数回通過する態様で走査機構に対して主走査を行わせる際に、主走査に加えて副走査を行わせることにより、同じ位置を通過する複数のビームスポットを、副走査方向で隣り合う複数のビームスポットの一部が重複する範囲で副走査方向に移動させる、レーザ照射装置。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発散角を有し、かつ照射距離に応じてビームスポットのスポット径が広がるレーザ光を出射するレーザ光源と、
前記レーザ光の照射方向を変化させることにより前記レーザ光の前記ビームスポットを予め設定された主走査方向へ移動させる主走査と、前記ビームスポットを前記主走査方向と直交する副走査方向へ移動させる副走査とが可能な走査機構と、
前記走査機構を制御するプロセッサと、を備えており、
前記プロセッサは、
前記ビームスポットが前記主走査方向における同じ位置を複数回通過する態様で前記走査機構に対して前記主走査を行わせる際に、前記主走査に加えて前記副走査を行わせることにより、前記同じ位置を通過する複数の前記ビームスポットを、前記副走査方向で隣り合う複数のビームスポットの一部が重複する範囲で前記副走査方向に移動させる、
レーザ照射装置。
【請求項2】
前記隣り合う複数のビームスポットにおいて重複する重複領域の面積の前記ビームスポットの面積に対する割合は、40%以上である、
請求項1に記載のレーザ照射装置。
【請求項3】
前記隣り合う複数のビームスポットのそれぞれの前記副走査方向の光強度分布である単独のビームプロファイルを合成した合成ビームプロファイルにおいて、前記副走査方向の中央位置が光強度分布のピークとなるように、前記重複領域の割合が設定されている、
請求項2に記載のレーザ照射装置。
【請求項4】
前記主走査において、前記ビームスポットが前記同じ位置を複数回通過する場合において、前記隣り合う複数の前記ビームスポットの前記副走査方向の間隔は同じである、
請求項1に記載のレーザ照射装置。
【請求項5】
前記副走査において、前記ビームスポットの前記副走査方向の移動範囲は予め設定されており、前記移動範囲の中心位置を基準に前記副走査方向の一方を正方向、他方を負方向とした場合において、前記正方向と前記負方向の移動量は同じである、
請求項1に記載のレーザ照射装置。
【請求項6】
前記副走査方向に沿った軸を基準軸とした場合において、前記走査機構は、前記基準軸回りの全方位に前記主走査が可能である、
請求項1に記載のレーザ照射装置。
【請求項7】
前記走査機構は、前記基準軸と交差する位置に配置された可動反射面を有する可動ミラー部を有し、
前記基準軸を法線とする面内で直交する2軸を第1軸及び第2軸とした場合において、
前記可動ミラー部は、前記第1軸と前記第2軸のそれぞれの軸回りで回転可能な2軸回転ミラーであり、かつ、前記可動反射面が前記基準軸と直交する位置を初期位置とした場合において、前記第1軸と前記第2軸のそれぞれの軸回りに前記初期位置を基準とする正方向及び負方向に回転することにより、前記レーザ光が出射する向きを前記基準軸の回りに円錐状に変化させる、
請求項6に記載のレーザ照射装置。
【請求項8】
前記可動ミラー部は、前記レーザ光が出射する向きを前記基準軸の回りに螺旋状に変化させる、
請求項7に記載のレーザ照射装置。
【請求項9】
前記可動ミラー部は、MEMSミラーである、
請求項8に記載のレーザ照射装置。
【請求項10】
前記レーザ光を出射させる出射光学系を有し、
前記出射光学系は、前記基準軸に対応する中央に前記レーザ光を通過させる開口が形成され、かつ前記軸を中心に前記基準軸と直交する径方向に広がる円環状の第1反射面を有する第1円環型反射ミラーを備え、
前記第1円環型反射ミラーは、前記可動反射面で反射した前記レーザ光を前記第1反射面によって反射する、
請求項7に記載のレーザ照射装置。
【請求項11】
前記出射光学系は、前記第1円環型反射ミラーの前記第1反射面によって反射された前記レーザ光を屈折させる屈折力を有する全方位レンズを備える、
請求項10に記載のレーザ照射装置。
【請求項12】
前記可動反射面の回転角を検出するための角度センサを備える、
請求項7に記載のレーザ照射装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12の何れか一項に記載のレーザ照射装置と、
前記レーザ照射装置が照射した前記レーザ光を受光して前記レーザ光の光強度分布を計測する受光装置と、を備える、
計測システム。
【請求項14】
前記受光装置は、前記光強度分布が計測された結果を表示するモニタを備えている、
請求項13に記載の計測システム。
【請求項15】
前記レーザ光が目標位置を示す指標として用いられる、
請求項13に記載の計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、レーザ照射装置及び計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高低角と水平角の情報を伝達する手段を有する本体、および、仮想面を設定する仮想面設定機能を有し、本体から伝達された情報をもとに仮想面に対する高低角差を表示もしくは出力する受光センサ装置から構成されるシステムが記載されている。
【0003】
特許文献2には、ビーム照射装置が記載されている。ビーム照射装置は、レーザ光を出射する光源と、光源から出射されたレーザ光が入射される収束レンズと、収束レンズを透過したレーザ光を目標領域において走査させるための走査部と、を備える。ビーム照射装置では、レーザチップのpn接合面が鉛直方向に平行となるようにレーザ光源が配されるとともに、レーザ光源の発光部の鉛直方向に平行な方向の長さによって、目標領域におけるレーザ光の鉛直方向の長さが設定され、レーザ光に対する収束レンズの波面収差が0.15λrms以下に設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-39755号公報
【特許文献2】特開2011-47832号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示の技術は、照射距離が遠い場合でもレーザ光の光強度分布のピークが検出されやすいレーザ照射装置及び計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の技術に係る第1の態様は、発散角を有し、かつ照射距離に応じてビームスポットのスポット径が広がるレーザ光を出射するレーザ光源と、レーザ光の照射方向を変化させることによりレーザ光のビームスポットを予め設定された主走査方向へ移動させる主走査と、ビームスポットを主走査方向と直交する副走査方向へ移動させる副走査とが可能な走査機構と、走査機構を制御するプロセッサと、を備えており、プロセッサは、ビームスポットが主走査方向における同じ位置を複数回通過する態様で走査機構に対して主走査を行わせる際に、主走査に加えて副走査を行わせることにより、同じ位置を通過する複数のビームスポットを、副走査方向で隣り合う複数のビームスポットの一部が重複する範囲で副走査方向に移動させる、レーザ照射装置である。
【0007】
本開示の技術に係る第2の態様は、隣り合う複数のビームスポットにおいて重複する重複領域の面積のビームスポットの面積に対する割合は、40%以上である、第1の態様に係るレーザ照射装置である。
【0008】
本開示の技術に係る第3の態様は、隣り合う複数のビームスポットのそれぞれの副走査方向の光強度分布である単独のビームプロファイルを合成した合成ビームプロファイルにおいて、副走査方向の中央位置が光強度分布のピークとなるように、重複領域の割合が設定されている、第2の態様に係るレーザ照射装置である。
【0009】
本開示の技術に係る第4の態様は、主走査において、ビームスポットが同じ位置を複数回通過する場合において、隣り合う複数の前記ビームスポットの副走査方向の間隔は同じである、第1の態様に係るレーザ照射装置である。
【0010】
本開示の技術に係る第5の態様は、副走査において、ビームスポットの副走査方向の移動範囲は予め設定されており、移動範囲の中心位置を基準に副走査方向の一方を正方向、他方を負方向とした場合において、正方向と負方向の移動量は同じである、第1の態様に係るレーザ照射装置である。
【0011】
本開示の技術に係る第6の態様は、副走査方向に沿った軸を基準軸とした場合において、走査機構は、基準軸回りの全方位に主走査が可能である、第1の態様に係るレーザ照射装置である。
【0012】
本開示の技術に係る第7の態様は、走査機構は、基準軸と交差する位置に配置された可動反射面を有する可動ミラー部を有し、基準軸を法線とする面内で直交する2軸を第1軸及び第2軸とした場合において、可動ミラー部は、第1軸と第2軸のそれぞれの軸回りで回転可能な2軸回転ミラーであり、かつ、可動反射面が基準軸と直交する位置を初期位置とした場合において、第1軸と第2軸のそれぞれの軸回りに初期位置を基準とする正方向及び負方向に回転することにより、レーザ光が出射する向きを基準軸の回りに円錐状に変化させる、第6の態様に係るレーザ照射装置である。
【0013】
本開示の技術に係る第8の態様は、可動ミラー部は、レーザ光が出射する向きを基準軸の回りに螺旋状に変化させる、第7の態様に係るレーザ照射装置である。
【0014】
本開示の技術に係る第9の態様は、可動ミラー部は、MEMSミラーである、第8の態様に係るレーザ照射装置である。
【0015】
本開示の技術に係る第10の態様は、レーザ光を出射させる出射光学系を有し、出射光学系は、基準軸に対応する中央にレーザ光を通過させる開口が形成され、かつ基準軸を中心に軸と直交する径方向に広がる円環状の第1反射面を有する第1円環型反射ミラーを備え、第1円環型反射ミラーは、可動反射面で反射したレーザ光を第1反射面によって反射する、第7の態様に係るレーザ照射装置である。
【0016】
本開示の技術に係る第11の態様は、出射光学系は、第1円環型反射ミラーの第1反射面によって反射されたレーザ光を屈折させる屈折力を有する全方位レンズを備える、第10の態様に係るレーザ照射装置である。
【0017】
本開示の技術に係る第12の態様は、可動反射面の回転角を検出するための角度センサを備える、第7の態様に係るレーザ照射装置である。
【0018】
本開示の技術に係る第13の態様は、第1から第12の何れか一項の態様に係るレーザ照射装置と、レーザ照射装置が照射したレーザ光を受光してレーザ光の光強度分布を計測する受光装置と、を備える、計測システムである。
【0019】
本開示の技術に係る第14の態様は、受光装置は、光強度分布が計測された結果を表示するモニタを備えている、第13の態様に係る計測システムである。
【0020】
本開示の技術に係る第15の態様は、レーザ光が目標位置を示す指標として用いられる、第13の態様に係る計測システムである。
【発明の効果】
【0021】
本開示の技術によれば、照射距離が遠い場合でもレーザ光の光強度分布のピークが検出されやすくなるレーザ照射装置及び計測システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】レーザレベリングシステムの使用態様の一例を示す側面図である。
【
図2】レーザレベリングシステムの使用態様の一例を示す斜視図である。
【
図3】レーザ照射装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】可動ミラー部の概略構成の一例を示す斜視図である。
【
図5】可動ミラー部が歳差運動する様子を示す図である。
【
図7】出射光学系の一例を示す概略分解斜視図である。
【
図9】照射距離に応じたレーザ光のスポット径及びビームプロファイルの変化について説明する図である。
【
図10】レーザ光が照射される態様の一例を模式的に示した図である。
【
図11】レーザ光の照射方向の変化の一例を模式的に示した図である。
【
図12】本実施形態に係るレーザ光のビームプロファイルについて説明する図である。
【
図13】本実施形態に係るレーザ光が照射される態様の一例を模式的に示した図である。
【
図14】変形例に係る角度センサの位置関係について説明するための概略構成図である。
【
図15】変形例に係るレーザ光が照射される態様の一例を模式的に示した図である。
【
図16】変形例に係るレーザ光が照射される態様の一例を模式的に示した図である。
【
図17】レーザ光の照射方向の変化のその他の例を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
添付図面に従って本開示の技術に係る実施形態の一例について説明する。
【0024】
[第1実施形態]
一例として
図1に示すように、レーザレベリングシステム1は、レーザ照射装置2と、受光器3を備えている。レーザレベリングシステム1は、本開示の技術に係る「計測システム」の一例であり、レーザ照射装置2は、本開示の技術に係る「レーザ照射装置」の一例であり、受光器3は、本開示の技術に係る「受光装置」の一例である。
【0025】
レーザ照射装置2は、レーザ光Lを照射する。レーザ光Lは、本開示の技術に係る「レーザ光」の一例である。受光器3は、レーザ照射装置2が照射したレーザ光Lを受光する。レーザ光Lは、目標位置を示す指標として用いられる。より具体的には、本例のレーザレベリングシステム1は、目標位置となる鉛直方向の高さhを示す指標としてレーザ光Lをレーザ照射装置2から照射する。そして、レーザ照射装置2から照射されたレーザ光Lの高さに受光器3の高さを調整することにより、受光器3の高さを目標位置となる高さhに合わせるといった使い方がされる。レーザ照射装置2の設置位置は、レーザ光Lの高さが目標位置の高さhとなるように設定され、さらに、設置姿勢は、レーザ光Lの照射方向が水平方向となるように調整される。そのため、レーザ光Lは、高さhで水平方向に照射される。高さhは、例えば、水平方向に照射されるレーザ光Lの床面Fからの高さである。
【0026】
なお、本実施形態において、「鉛直方向」とは、完全な鉛直方向の他に、本開示の技術が属する技術分野で一般的に許容される誤差であって、本開示の技術の趣旨に反しない程度の誤差を含めた意味合いでの鉛直方向を指す。また、「水平方向」についても同様であり、完全な水平方向の他に、本開示の技術が属する技術分野で一般的に許容される誤差であって、本開示の技術の趣旨に反しない程度の誤差を含めた意味合いでの水平方向を指す。
【0027】
図1に示す例では、受光器3は、長尺の標尺4に取り付けられている。標尺4は、長手方向を鉛直方向に一致させる姿勢で配置されている。受光器3は、標尺4の長手方向に沿って移動可能とされており、本例においては鉛直方向に移動可能である。ユーザ(例えば、測量作業の従事者)は、受光器3を標尺4に沿って移動させることにより、受光器3の高さを調整することができる。受光器3の高さを、レーザ光Lを指標として調整することで、受光器3を目標位置となる高さhに合わせることができる。
【0028】
受光器3は、エリアセンサ3Aを備えている。エリアセンサ3Aは、複数の受光素子が1次元又は2次元に配列され受光面を有する。受光素子は、例えばフォトダイオードであり、受光するレーザ光Lを光電変換し、受光したレーザ光の光強度に応じた電気信号を出力する。受光器3は、エリアセンサ3Aの受光面でレーザ光Lを受光する。エリアセンサ3Aは、レーザ光Lの光強度に関して受光面内における空間分解能を有しており、受光面のサイズは、レーザ光LのビームスポットS(
図9参照)のサイズよりも十分に大きなサイズを有している。このため、受光器3は、受光面内におけるレーザ光Lの光強度分布を計測することが可能である。ビームスポットSは、レーザ光Lの光束において照射方向と直交する方向の断面をいい、本開示の技術に係る「ビームスポット」の一例である。また、レーザ光Lの光強度分布は、レーザ光Lの光束において、照射方向に直交する断面方向の光強度分布であり、本実施形態では、後述するようにこの光強度分布をビームプロファイルBPとも称する(
図9参照)。
【0029】
また、エリアセンサ3Aの受光面の形状は、本例では細長形状である。そのため、受光器3は、レーザ光Lの光強度分布として、少なくとも受光面の長手方向の光強度分布を計測することが可能である。本例において、受光器3は、エリアセンサ3Aの受光面の長手方向が鉛直方向と一致する姿勢で配置されているため、受光器3は、レーザ光の光強度分布として、鉛直方向の光強度分布を計測する。また、受光器3は、モニタ3Bを有している。モニタ3Bは、エリアセンサ3Aによって光強度分布が計測された結果を表示する。
【0030】
レーザ光Lの光強度分布は、例えば、照射方向に直交する断面において中心位置の光強度が最も高く、周辺に向かうほど光強度が低下する(
図9に示す模式
図PF1及びPF2も参照)。光強度が最も高くなる位置を光強度分布のピークとすると、受光器3がレーザ光Lを受光している状態でも、受光器3の高さを変化させることにより、エリアセンサ3Aの受光面内におけるレーザ光Lのピークの位置は鉛直方向に変化する。受光器3は、エリアセンサ3Aによって光強度分布を計測することにより、受光面内におけるレーザ光Lのピークの位置を検出する。そして、受光器3は、一例として、エリアセンサ3Aの受光面内の予め設定された位置(例えば受光面の中心)に対して、レーザ光Lのピークの位置が鉛直方向の上下のどちらにずれているかを、光強度分布が計測された結果としてモニタ3Bに表示する。
図1に示す例では、モニタ3Bに鉛直方向上向きの三角形が表示されており、レーザ光Lの光強度分布のピークの位置が、エリアセンサ3Aの受光面の中心よりも鉛直方向上側に存在することを示している。このモニタ3Bの表示により、受光器3の高さが、目標位置となる高さhよりも低い位置であることが示される。ユーザは、モニタ3Bに表示された光強度分布の計測結果を確認しながら、受光器3の高さを調整する。こうして、レーザ光Lの光強度分布のピークの位置がエリアセンサ3Aの受光面の中心に位置するように受光器3の高さが調整される。
【0031】
レーザ照射装置2において、レーザ光Lの照射方向は一定ではなく、一例として
図2に示すように、レーザ照射装置2は、レーザ光Lの照射方向を変化させることにより、レーザ光Lを走査させる。本例のレーザレベリングシステム1においては、レーザ光Lは鉛直方向の高さの指標となるため、レーザ照射装置2は、レーザ光Lの高さをほぼ一定として、水平方向に照射方向を変化させる。このようにレーザ光Lを水平方向に走査させることにより、レーザ光Lの照射範囲に関して水平方向に幅を持たせることができる。これにより、レーザ光Lを受光する受光器3の設置範囲についても水平方向の自由度が広がる。
【0032】
レーザ照射装置2は、鉛直方向に沿った軸を回転軸として、レーザ光Lの照射方向を360°変更することができる。
図2に示す例では、レーザ照射装置2は、高さを高さhでほぼ一定に保った状態でレーザ光Lを水平方向に360°走査させる。本例において、水平方向の走査方向を主走査方向MDと称し、主走査方向MDの走査を主走査と称する。壁Wに向けてレーザ光Lを照射した場合は、主走査を行うことにより、壁Wにおけるレーザ光Lの照射位置が、高さhを保った状態で水平方向に移動する。例えば、照射方向を360°回転させる1回転の主走査を1回の主走査とすると、主走査は複数回行われる。例えば、レーザ光Lの主走査を高速で行い、これを複数回行うことにより、壁Wには水平方向に延びるレーザ光Lの軌跡が描かれる。本実施形態において、主走査方向MDと直交する走査方向を副走査方向SD(
図11参照)と称し、副走査方向SDの走査を副走査と称する。本例では主走査方向MDが水平方向であるため、副走査方向SDは鉛直方向である。後述するように、レーザ光Lは主走査に加えて僅かであるが副走査が行われる。
【0033】
一例として
図3に示すように、レーザ照射装置2は、光源10、走査機構11、出射光学系12、制御装置14、及びコリメータレンズ15を備える。走査機構11は、可動ミラー部20、及び可動ミラー部20を駆動するためのアクチュエータ35を含む。出射光学系12は、第1円環型反射ミラー40、及び全方位レンズ42を含む(
図8も参照)。
【0034】
光源10は、例えば、レーザ光Lを発光する半導体レーザであり、レーザダイオードとも称される。レーザ光は、例えば、波長690nmの可視光である。また、レーザ光は、例えば、出力のオンオフが周期的に繰り返されるパルス発振により出力されるレーザ光である。なお、光源10は、本開示の技術に係る「レーザ光源」の一例である。
【0035】
なお、光源10は、レーザダイオードに限られず、DPSS(Diode Pumped Solid State)レーザ、ファイバーレーザ等の各種構成のレーザ光源を用いることが可能である。また、レーザ光の波長は、上記の波長に限られず、波長690nm以外の可視域であってもよい。また、レーザ光Lの波長は、可視域に限られず、赤外域であってもよい。レーザ光Lの波長は、例えば850nmから1550nm帯の近赤外光までの波長でもよい。また、レーザ光Lは、パルス発振に限られず、連続発振であってもよい。
【0036】
図8にも示すように、可動ミラー部20は、コリメータレンズ15を経て入射したレーザ光Lを反射することにより、レーザ光Lを偏向する。可動ミラー部20から出射されたレーザ光Lは、出射光学系12に入射する。出射光学系12に入射したレーザ光Lは、第1円環型反射ミラー40で反射され、全方位レンズ42からレーザ照射装置2の外部に出射される。出射光学系12は、本開示の技術に係る「出射光学系」の一例であり、可動ミラー部20は、本開示の技術に係る「可動ミラー部」及び「MEMSミラー」の一例である。
【0037】
図3において、制御装置14は、光源10からのレーザ光Lの出射を制御する。また、制御装置14は、走査機構11の動作を制御する。すなわち、制御装置14は、可動ミラー部20を駆動するための駆動電圧をアクチュエータ35に供給する。制御装置14は、例えば、プロセッサ14Aと、RAM(Random Access Memory)14Bと、NVM(Non-volatile memory)14Cと、外部I/F(Inter Face)14Dとを備える。プロセッサ14A、RAM14B、NVM14C、及び外部I/F14Dは、バス14Eを介して電気的に接続されている。プロセッサ14Aは、本開示の技術に係る「プロセッサ」の一例である。
【0038】
例えば、プロセッサ14Aは、CPU(Central Processing Unit)を有しており、制御装置14の全体を制御する。また、RAM70は、一時的に情報が格納されるメモリであり、プロセッサ14Aによってワークメモリとして用いられる。NVM14Cは、各種プログラム及び各種パラメータ等を記憶する不揮発性の記憶装置である。NVM14Cの一例としては、フラッシュメモリ(例えば、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)及び/又はSSD(Solid State Drive))が挙げられる。なお、フラッシュメモリは、あくまでも一例に過ぎず、HDD(Hard Disk Drive)等の他の不揮発性の記憶装置であってもよいし、2種類以上の不揮発性の記憶装置の組み合わせであってもよい。
【0039】
外部I/F14Dは、制御装置14と、光源10及び走査機構11との間の情報の授受を司る。外部I/F14Dは、例えば、光源10に対してレーザ光Lを出射させるための信号を出力する。また、外部I/F14Dは、例えば、走査機構11に対して、走査機構11の動作を制御するための信号を出力する。
【0040】
なお、ここでは、制御装置14がレーザ照射装置2に含まれる形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、制御装置14は、レーザ照射装置2と電気的に接続された状態で、レーザ照射装置2の外部に設けられてもよい。
【0041】
また、制御装置14は、プロセッサ、NVM、及びRAMを含むコンピュータによって実現されているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、制御装置14は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)によって実現されてもよい。また、制御装置14は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)及び/又はPLC(Programmable Logic Controller)によって実現されるようにしてもよい。また、ASIC、FPGA、PLC、及びコンピュータのうちの2つ以上を組み合わせて実現されるようにしてもよい。すなわち、制御装置14は、ハードウェア構成とソフトウェア構成との組み合わせによって実現されるようにしてもよい。
【0042】
図4は、走査機構11の概略構成を示す。走査機構11は、一例として、SOI(Silicon On Insulator)基板をエッチング処理することにより形成されたマイクロミラーデバイスである。マイクロミラーデバイスは、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーデバイスとも称される。走査機構11として利用するMEMSミラーデバイスは、MEMSスキャナとも称される。また、MEMSミラーデバイスを利用した本例の可動ミラー部20は、MEMSミラーとも称される。走査機構11は、本開示の技術に係る「走査機構」の一例である。
【0043】
走査機構11は、可動ミラー部20、第1支持部21、第1可動枠22、第2支持部23、第2可動枠24、接続部25、及び固定枠26を有する。
【0044】
可動ミラー部20は、レーザ光Lを反射する可動反射面20Aを有する。可動反射面20Aは、可動ミラー部20の一面に設けられた、例えば、金(Au)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、又は銀の合金等の金属薄膜で形成されている。可動反射面20Aの形状は、例えば、a1軸とa2軸との交点を中心とした円形状である。可動反射面20Aは、本開示の技術に係る「可動反射面」の一例である。
【0045】
可動ミラー部20は、a1軸及びa2軸のそれぞれの軸周りに回転可能な2軸回転ミラーである。なお、a1軸は、本開示の技術に係る「第1軸」の一例であり、a2軸は、本開示の技術に係る「第2軸」の一例である。
【0046】
第1支持部21は、可動ミラー部20の外側に、a2軸を挟んで対向する位置にそれぞれ配置されている。第1支持部21は、a1軸上で可動ミラー部20と接続されており、可動ミラー部20をa1軸周りに揺動可能に支持している。本実施形態では、第1支持部21は、a1軸に沿って延伸したトーションバーである。
【0047】
第1可動枠22は、可動ミラー部20を取り囲む矩形状の枠体であって、a1軸上で第1支持部21を介して可動ミラー部20と接続されている。第1可動枠22の上には、a1軸を挟んで対向する位置にそれぞれ圧電素子30が形成されている。このように、第1可動枠22上に2つの圧電素子30が形成されることにより、一対の第1アクチュエータ31が構成されている。
【0048】
一対の第1アクチュエータ31は、a1軸を挟んで対向する位置に配置されている。第1アクチュエータ31は、可動ミラー部20に、a1軸周りの回転トルクを作用させることにより、可動ミラー部20をa1軸周りに揺動させる。
【0049】
第2支持部23は、第1可動枠22の外側に、a1軸を挟んで対向する位置にそれぞれ配置されている。第2支持部23は、a2軸上で第1可動枠22と接続されており、第1可動枠22及び可動ミラー部20を、a2軸周りに揺動可能に支持している。本実施形態では、第2支持部23は、a2軸に沿って延伸したトーションバーである。
【0050】
第2可動枠24は、第1可動枠22を取り囲む矩形状の枠体であって、a2軸上で第2支持部23を介して第1可動枠22と接続されている。第2可動枠24の上には、a2軸を挟んで対向する位置にそれぞれ圧電素子30が形成されている。このように、第2可動枠24上に2つの圧電素子30が形成されることにより、一対の第2アクチュエータ32が構成されている。
【0051】
一対の第2アクチュエータ32は、a2軸を挟んで対向する位置に配置されている。第2アクチュエータ32は、可動ミラー部20及び第1可動枠22に、a2軸の周りの回転トルクを作用させることにより、a2軸の周りに可動ミラー部20を揺動させる。
【0052】
接続部25は、第2可動枠24の外側に、a1軸を挟んで対向する位置にそれぞれ配置されている。接続部25は、a2軸上で第2可動枠24と接続されている。
【0053】
固定枠26は、第2可動枠24を取り囲む矩形状の枠体であって、a2軸上で接続部25を介して第2可動枠24と接続されている。
【0054】
以下の説明では、可動ミラー部20が傾斜していない状態における可動反射面20Aの法線方向をZ軸方向とし、Z軸方向に直交する一方向をX軸方向とし、Z軸方向及びX軸方向に直交する方向をY軸方向とする。
【0055】
一対の第1アクチュエータ31及び一対の第2アクチュエータ32が、上述のアクチュエータ35(
図3参照)に対応する。上述の制御装置14は、一対の第1アクチュエータ31と、一対の第2アクチュエータ32とに、それぞれ位相の異なる正弦波の駆動電圧を印加することにより、可動ミラー部20を歳差運動させる。
【0056】
図5は、可動ミラー部20が歳差運動する様子を示す。歳差運動とは、可動ミラー部20の可動反射面20Aの法線Nが円を描くように振れる運動である。すなわち、可動ミラー部20は、可動反射面20AがZ軸a
zと直交する位置を初期位置とした場合において、a
1軸及びa
2軸のそれぞれの軸回りに初期位置を基準とする正方向及び負方向に回転する。
【0057】
可動ミラー部20の可動反射面20Aは、Z軸a
zと交差する位置に配置されている。光源10から出射されたレーザ光Lは、Z軸a
zに沿って可動ミラー部20の中心に入射する。
図5に示すように歳差運動を行っている可動ミラー部20により偏向されたレーザ光Lは円を描くように可動ミラー部20から出射される。例えば、可動ミラー部20は、レーザ光Lが出射する向きをZ軸a
zの回りに円錐状に変化させる。このように、走査機構11は、可動ミラー部20の可動反射面20Aの姿勢を変化させることにより、レーザ光Lの向きを、基準軸に相当するZ軸a
zの回りの全方位に変化させる。なお、本実施形態において、「基準軸の回りの全方位」とは、Z軸a
zの周囲360°の他に、本開示の技術が属する技術分野で一般的に許容される誤差であって、本開示の技術の趣旨に反しない程度の誤差を含めた意味合いでの全方位を指す。
【0058】
図6~
図8は、出射光学系12の構成例を示す。
図6は、出射光学系12の概略斜視図である。
図7は、出射光学系12の概略分解斜視図である。
図8は、出射光学系12をZ軸a
zに沿って切断した概略断面図である。
【0059】
図6及び
図7に示すように、出射光学系12は、第1円環型反射ミラー40、及び全方位レンズ42を含む。第1円環型反射ミラー40は、Z軸a
zに対して回転対称な形状である。第1円環型反射ミラー40は、光源10から出射されたレーザ光Lの進行方向に沿って配置されている。
【0060】
第1円環型反射ミラー40には、Z軸azに対応する中央にレーザ光Lを通過させる開口40Aが形成されている。第1円環型反射ミラー40は、Z軸azを中心にZ軸azと直交する径方向に広がる円環状の第1反射面40Bを有している。第1反射面40Bは、第1円環型反射ミラー40において可動ミラー部20側に形成されている。また、第1反射面40BをZ軸azに平行な面で切断した断面形状は凸面形状である。第1円環型反射ミラー40は、本開示の技術に係る「第1円環型反射ミラー」の一例である。
【0061】
第1反射面40Bには、可動ミラー部20から出射されたレーザ光Lが入射する。第1反射面40Bは、入射したレーザ光Lを反射する。第1反射面40Bで反射したレーザ光Lの光路は、Z軸azから外側に向かう方向である。なお、Z軸azから外側に向かう方向とは、Z軸azとの交点を中心とした円の半径方向である。第1反射面40Bは、本開示の技術に係る「第1反射面」の一例である。
【0062】
全方位レンズ42は、Z軸azを中心とした円環形状である。全方位レンズ42は、Z軸azの回りの全方位にレーザ光Lを出射可能である。すなわち、全方位レンズ42は、レーザ光Lに対して透明とされている。全方位レンズ42は、本開示の技術に係る「全方位レンズ」の一例である。
【0063】
全方位レンズ42は、Z軸azに対して回転対称な形状である。全方位レンズ42には、中央に第1円環型反射ミラー40を収容するための空洞42Aが形成されている。全方位レンズ42は、第1円環型反射ミラー40より外側に配置されている。全方位レンズ42には、第1反射面40Bからレーザ光Lが入射する。
【0064】
図8に示すように、コリメータレンズ15を経由したレーザ光Lは、Z軸a
zに沿って進行する。レーザ光Lは、第1円環型反射ミラー40の開口40Aを通過して可動ミラー部20に入射する。可動ミラー部20に入射したレーザ光Lは、可動反射面20Aで反射される。可動ミラー部20から出射されたレーザ光Lは、第1円環型反射ミラー40の第1反射面40Bに入射する。
【0065】
第1反射面40Bに入射したレーザ光Lは、第1反射面40Bで反射される。第1反射面40Bから出射されたレーザ光Lは、Z軸azと直交する径方向外側に進行して全方位レンズ42に入射する。
【0066】
全方位レンズ42において、Z軸azに平行な方向に沿った断面形状(以下単に「縦断面形状」と称する)は、Z軸azの第2端E2の側から第1端E1の側へ向かって厚みtが増加する形状である。例えば、全方位レンズ42において、縦断面形状は、三角形状であるが、これはあくまでも一例に過ぎない。全方位レンズ42において縦断面形状は、台形状であってもよい。
【0067】
全方位レンズ42は、レーザ光Lを屈折させる屈折力を有する。全方位レンズ42は、第1反射面40Bから入射したレーザ光Lを屈折させて出射する。全方位レンズ42は、第2端E2の側から第1端E1の側へ向かって厚みtが増加しているため、第1反射面40Bから入射したレーザ光Lを第1端E1側に屈曲させる。例えば、
図8において示すレーザ光Lの光線を例に説明すると、全方位レンズ42は、第1反射面40Bで斜め下方に反射したレーザ光Lの照射方向を水平方向に近づける。
【0068】
第1反射面40Bは、例えば、金(Au)、アルミニウム(Al)、又は銀(Ag)化合物などの金属膜により形成されている。なお、第1反射面40Bは、多層反射膜により形成されていてもよい。
【0069】
全方位レンズ42は、アクリル、ポリカーボネート、又はゼオネクスなどの光学樹脂により形成されている。
【0070】
上述したように、レーザ照射装置2は、目標位置となる高さhの指標としてレーザ光Lを走査する。一例として
図9に示すように、レーザ照射装置2が照射するレーザ光Lの光強度分布であるビームプロファイルBPは、レーザ照射装置2から外部に出射した直後においては、
図9内の模式
図PF1に示すように、ビームスポットSのスポット径rの中心Cに急峻なピークPをもつ。スポット径rは、ビームスポットSの直径であり、本開示の技術に係る「スポット径」の一例である。そして、ビームプロファイルBPにおけるピークPの位置は、ビームスポットSの中心Cの位置に対応する。上述のとおり、受光器3は、エリアセンサ3Aによってレーザ光の、受光面内におけるビームプロファイルBPのピークPの位置を検出する。そして、受光器3は、ピークPの位置が受光面内の中心に対して上下方向にずれているか否かといった情報をモニタ3Bに表示する。受光器3が受光するレーザ光LのビームプロファイルBPが、
図9内の模式
図PF1に示すように、急峻なピークPを有するビームプロファイルBPであれば、受光器3は、受光面内におけるピークPの位置を検出しやすい。
【0071】
しかしながら、レーザ光Lは、発散角を有する。この傾向は半導体レーザにおいて顕著である。レーザ光Lの光束は発散するため、レーザ光LのビームスポットSのスポット径rが、レーザ照射装置2から照射位置までの距離(すなわち、照射距離)に応じて広がる。例えば、
図9内の模式
図PF2に示すように、出射直後と比較して照射距離が遠く、スポット径rが広がった場合のビームプロファイルBPでは、出射直後のビームプロファイルBPと比較して、ピークPがなだらかになる。このため、ビームスポットSの中心Cにおける光強度と、ビームスポットSの周縁における光強度との差が小さくなる。例えば、中心Cと周縁の光強度の差が、受光器3における光強度の検出誤差の範囲内となると、受光器3は、受光面内においてピークPの位置がどこかを判別できなくなってしまう。照射距離に応じてスポット径rが拡大することに加えて、照射距離の二乗に反比例して光強度も減衰する。そのため、照射距離が遠い場合(例えば、照射距離が数百m~1000mの場合)、ピークPの位置が検出しにくくなるという現象は、特に顕著となる。
【0072】
一例として
図10に示すように、ビームスポットSが広がった状態(
図10に示すグラフおいて実線で示す)で走査されたレーザ光Lを受光器3において受光した場合を考える。この場合、ピークPに対応するビームスポットSの中心Cにおける光強度と、ビームスポットSの周縁における光強度との差が小さいため、受光器3において、ビームプロファイルBPにおけるピークPの位置を検出することが困難となる。このような場合は、受光器3のモニタ3Bにおいて、光強度分布の計測結果も表示不能となるため、受光器3が目標位置となる高さhに正確に合っているのか否か、あるいは、上下方向のどちらかにずれているのかをユーザが認識することが不可能となる。
【0073】
もちろん、モニタ3Bにおいて、レーザ光Lが受光面のどこかの位置で受光できているか否かの情報だけでも表示すれば、受光器3をおおよその高さhに合わせることは可能である。しかし、この場合は、レーザ光LのビームスポットSのスポット径rの範囲内の誤差が生じてしまう。スポット径rは、照射距離に応じて変化するため、照射距離が遠いほど誤差が大きくなる。そのため、本例のレーザレベリングシステム1は、このような誤差を許容することができない高精度な位置合わせ、すなわち、レーザ光のビームプロファイルBPにおけるピークPの位置を検出して、ピークPの位置を受光面の中心に合わせるといった高精度な位置合わせを可能にする。
【0074】
こうした高精度な位置合わせを実現するために、本例のレーザ照射装置2は、レーザ光Lの主走査を行う際に、副走査も行うことにより、照射距離が遠い場合でも、受光器3においてレーザ光LのピークPを検出しやすくしている。
【0075】
レーザ光の主走査と副走査は、次のように行われる。上述したように、可動ミラー部20は、歳差運動をする。さらに、レーザ光Lは、可動ミラー部20により反射角θが変更される。従って、可動ミラー部20は、歳差運動をしながら反射角θを変更することで、レーザ光Lの出射する向きをZ軸a
zに対して螺旋状に変化させる。すなわち、レーザ光Lの出射方向は、Z軸a
zの回りの全方位に変化しながら、Z軸方向にも変化する。
図11は、レーザ光Lの出射方向の螺旋状の変化を模式的に示したものであり、レーザ光Lの出射方向は、Z軸a
zを中心軸とする螺旋状の軌跡Rを示す。ここで、主走査方向MDは、軌跡RにおけるZ軸a
zの回りの走査方向であり、本例においては水平方向である。副走査方向SDは、Z軸a
zに沿った走査方向であり、本例では鉛直方向である。副走査方向SDは主走査方向MDに対して直交する。主走査方向MDは、本開示の技術に係る「主走査方向」の一例であり、副走査方向SDは、本開示の技術に係る「副走査方向」の一例である。
【0076】
一例として
図12に示すように、レーザ照射装置2は、ビームスポットSが主走査方向MD(本例では、水平方向)における同じ位置を複数回通過する態様で走査機構11に主走査を行わせる際に、主走査方向MDの主走査に加えて、副走査方向SD(本例では、鉛直方向)の副走査を行わせる。これにより、主走査方向MDにおける同じ位置を通過する複数のビームスポットSを、副走査方向SDで隣り合う複数のビームスポットSの一部が重複する範囲で、副走査方向SDに移動させることができる。
【0077】
主走査において、ビームスポットSは、主走査方向MDにおける同じ位置を複数回通過する。本例では、主走査は、Z軸a
zの回りの全方位に行われるため、全方位においてビームスポットSが複数回通過する。すなわち、本例では、主走査方向MDの同じ位置は全方位となる。
図2に示したように、レーザ照射装置2は、レーザ光Lの出射位置が目標位置である高さhとなる位置に設置される。一方、受光器3は、レーザ光Lの全方位の照射方向のうちのどこかに設置される。この状態で、レーザ照射装置2からレーザ光Lの照射を開始させ、レーザ光Lの照射方向を全方位に回転させる。そして、受光器3の高さが、レーザ光Lを受光可能な高さに調整されると、レーザ光LのビームスポットSは、受光器3を複数回通過することになる。受光器3は、複数回の主走査におけるそれぞれのレーザ光を受光することにより、複数回分のビームスポットSのビームプロファイルBPを計測する。
【0078】
図11及び
図12の例では、レーザ光Lの照射方向が、Z軸a
zの回りの全方位に3回転しており、主走査が3回行われた場合を示している。この場合は、1回目の主走査におけるレーザ光Lが受光器3において受光されると、第1ビームプロファイルBP1が得られる。次に、2回目の主走査におけるレーザ光Lが受光器3において受光されると、第2ビームプロファイルBP2が得られる。そして、3回目の主走査におけるレーザ光Lが受光器3において受光されて、第3ビームプロファイルBP3が得られる。なお、ここでは、3回の主走査が行われる形態例を挙げて説明したが、これはあくまでも一例にすぎず、5回以上の奇数回の主走査が行われてもよい。
【0079】
受光器3は、エリアセンサ3Aで受光したレーザ光LのビームプロファイルBPに応じた電気信号をデジタルデータに変換し、受光器3の図示しないメモリに一時的に保存する。一例として、受光器3は、3回の主走査における第1~第3ビームプロファイルBP1~3を保存する。そして、受光器3は、これらの第1~第3ビームプロファイルBP1~3を合成することで、合成ビームプロファイルIBPを得る。合成ビームプロファイルIBPにおいて、ピークPは、第1~第3ビームプロファイルBP1~3の各々のピークPよりも高くなる。第1~第3ビームプロファイルBP1~3は、本開示の技術に係る「ビームプロファイル」の一例であり、合成ビームプロファイルIBPは、本開示の技術に係る「合成ビームプロファイル」の一例である。
【0080】
一例として
図13に示すように、走査機構11は、レーザ光Lの照射方向を変化させることにより、ビームスポットSを予め設定された主走査方向MDへ移動させる主走査を行う。また、走査機構11は、主走査に加えて、主走査方向MDと直交する副走査方向SDにビームスポットSを移動させる副走査を行う。本実施形態において、「直交」とは、完全な直交の他に、本開示の技術が属する技術分野で一般的に許容される誤差であって、本開示の技術の趣旨に反しない程度の誤差を含めた意味合いでの直交を指す。
【0081】
すなわち、1回目の主走査におけるレーザ光LのビームスポットS1が、主走査方向MDに移動される。次に、2回目の主走査において、レーザ光LのビームスポットS2が、主走査方向MDに移動される。この場合、ビームスポットS2は、ビームスポットS1の一部と重複する範囲で、副走査方向SDに移動される。そして、3回目の主走査において、レーザ光LのビームスポットS3が、主走査方向MDに移動される。この場合、ビームスポットS3は、ビームスポットS2の一部と重複する範囲で、副走査方向SDに移動される。
【0082】
ここで、ビームスポットS1及びS2において重複する重複領域ORの面積のビームスポットS1の面積に対する割合は、40%以上となっている。割合が40%である場合、ビームスポットS1の外縁が、ビームスポットS2の中心Cに接する。これにより、合成ビームプロファイルIBPにおいて、副走査方向の中央位置(すなわち、ビームスポットS2の中心C)が、光強度分布のピークPとなっている。このように、重複領域ORの割合が設定されている。また、同じく重複領域ORの面積のビームスポットS2の面積に対する割合は、40%以上となっている。重複領域ORは、本開示の技術に係る「重複領域」の一例である。
【0083】
さらに、ビームスポットS2及びビームスポットS3において重複する重複領域ORの面積のビームスポットS2に対する割合についても同様に、40%以上となっている。また、重複領域ORの面積のビームスポットS3の面積に対する割合も、40%以上となっている。
【0084】
また、
図13に示すように、主走査において、ビームスポットSが同じ位置を複数回通過する場合において、隣り合う複数のビームスポットSの副走査方向の間隔は同じである。
図13の例では、1回目に通過するビームスポットS1と2回目に通過するビームスポットS2との間の副走査方向の移動量L1と、2回目に通過するビームスポットS2と3回目に通過するビームスポットS3との間の副走査方向の移動量L2が同じである。これにより、隣り合う複数のビームスポットSの副走査方向の間隔が同じになっている。
【0085】
また、副走査において、ビームスポットSの移動範囲MRは、予め設定されている。そして、移動範囲MRの中心位置を基準に、副走査方向SDの一方を正方向、他方を負方向とした場合において、正方向と負方向の移動量は同じである。
図13の例で示すように主走査が3回行われる場合には、移動範囲MRの中心位置が2回目のビームスポットS2となり、この中心位置を基準に1回目のビームスポットS1までの移動量L1と、3回目のビームスポットS3までの移動量L2とが同じとなる。もちろん、主走査が5回行われる場合は、3回目を基準に正方向と負方向の移動量が同じになる。
【0086】
そして、レーザ照射装置2は、ビームスポットSが移動範囲MRの上限又は下限に達した場合は、副走査方向SDの移動方向を逆方向に切り替える。これにより、同じ移動範囲MR内でレーザ光Lの走査が繰り返される。すなわち、合成ビームプロファイルIBPにおいて単一のビームスポットSにおけるビームプロファイルBPと比較してピークPが高くなる態様で、レーザ光Lの走査パターン(すなわち、主走査と副走査の組み合わせ)が繰り返される。
【0087】
以上説明したように、本実施形態に係るレーザ照射装置2では、主走査方向MDにビームスポットSが移動され、さらに、主走査方向MDと直交する副走査方向SDにビームスポットSが移動される。そして、ビームスポットSが主走査方向MDにおける同じ位置を複数回通過する態様で走査機構11に対して主走査を行わせる際に、主走査に加えて副走査を行わせることにより、同じ位置を通過する複数のビームスポットSを、副走査方向SDで隣り合う複数のビームスポットSの一部が重複する範囲で副走査方向SDに移動させる。複数のビームスポットSが重複すると、各ビームスポットSの光強度分布を表すビームプロファイルBPを合成した合成ビームプロファイルIBPにおいて、単一のビームスポットSにおけるビームプロファイルBPと比較してピークPが高くなる。従って、本構成によれば、従来と比較して、照射距離が遠い場合でもレーザ光Lの光強度分布のピークPが検出されやすい。上述したとおり、ピークPが検出できれば、ピークPを検出できない場合と比較して高精度な位置合わせが可能となる。本構成によれば、照射距離が遠い場合においても、光強度の減衰が少なく比較的ピークPの検出がしやすい照射距離が近い場合と同程度の精度で位置合わせを行うことが可能となる。
【0088】
また、本実施形態に係るレーザ照射装置2では、重複領域ORの面積の割合は、ビームスポットSの面積の40%以上とされていることで、合成ビームプロファイルIBPが副走査方向SDの中央位置がピークPとなる分布(例えば、正規分布)に近づけやすくなる。合成ビームプロファイルIBPが正規分布に近づくと、ピークPの位置を際立たせやすくなる。従って、本構成によれば、従来と比較して、照射距離が遠い場合でもレーザ光Lの光強度分布のピークPが検出されやすい。
【0089】
また、本実施形態に係るレーザ照射装置2では、合成ビームプロファイルIBPにおいて、副走査方向SDの中央位置が光強度分布のピークPとなるように重複領域ORの割合が設定されている。合成ビームプロファイルIBPが副走査方向SDの中央位置がピークPとなる光強度分布(例えば、正規分布)になると、ピークPの位置を際立たせやすくなる。従って、本構成によれば、従来と比較して、照射距離が遠い場合でもレーザ光Lの光強度分布のピークPが検出されやすい。
【0090】
また、本実施形態に係るレーザ照射装置2では、主走査において、ビームスポットSが同じ位置を複数回通過する場合において、隣り合う複数のビームスポットSの副走査方向SDの間隔は同じである。これにより、次のような効果が得られる。例えば、受光器3において、ビームスポットSのビームプロファイルBPを奇数回(例えば3回)取得して、取得した奇数回分のビームプロファイルを合成する場合を考える。隣り合うビームスポットSの副走査方向SDの間隔が同じなので、合成ビームプロファイルIBPの副走査方向SDの中央位置に1つのビームスポットSの中心Cが対応する。そして、中央位置のビームスポットSを基準に副走査方向SDの正方向及び負方向には同じ数のビームスポットSが位置するため、合成ビームプロファイルIBPは中央位置を基準として副走査方向SDで対称形となる。このため、ビームスポットSを偶数回(例えば、2回)通過させる場合と比較して、合成ビームプロファイルIBPが、副走査方向SDの中央位置がピークPとなる光強度分布(例えば、正規分布)に近づき、ピークPの位置を際立たせやすくなる。従って、本構成によれば、従来と比較して、照射距離が遠い場合でもレーザ光Lの光強度分布のピークPが検出されやすい。
【0091】
また、本実施形態に係るレーザ照射装置2では、ビームスポットSの副走査方向SDの移動範囲MRは、予め定められた範囲である。また、移動範囲MRの中心からの移動量L1及びL2は、同じとされている。このため、移動量L1及びL2が異なる場合と比較して、合成ビームプロファイルIBPが副走査方向SDの中央位置がピークPとなる光強度分布(例えば、正規分布)に近づき、ピークPの位置を際立たせやすくなる。従って、本構成によれば、従来と比較して、照射距離が遠い場合でもレーザ光Lの光強度分布のピークPが検出されやすい。
【0092】
また、本実施形態に係るレーザ照射装置2では、主走査方向MDがZ軸az回りの全方位とされているので、主走査の範囲がZ軸az回りの一定角度に限定されている場合と比較して、主走査の範囲が拡がる。従って、本構成によれば、主走査の範囲を考慮する必要がなくなり、レーザ照射装置2の操作性が向上する。
【0093】
また、本実施形態に係るレーザ照射装置2では、可動ミラー部20は、2軸の回転ミラーである。また、可動ミラー部20は、a1軸及びa2軸のそれぞれの軸回りに初期位置を基準とする正方向及び負方向に回転することにより、レーザ光Lが出射する向きを軸回りに円錐状に変化させる。従って、本構成によれば、傾斜した反射面をZ軸azに沿って上下させることで、レーザ光Lを出射する構成と比較して、レーザ照射装置2の小型化が実現される。
【0094】
また、本実施形態に係るレーザ照射装置2では、可動ミラー部20は、レーザ光Lが出射する向きを螺旋状に変化させる。従って、本構成によれば、傾斜した反射面をZ軸azに沿って上下させることでレーザ光Lを出射する構成と比較して、レーザ照射装置2の小型化が実現される。
【0095】
また、本実施形態に係るレーザ照射装置2では、可動ミラー部20は、MEMSミラーである。一般に、MEMSミラーは、モータで回転駆動されるミラーと比較して、高精度な回転角の制御が可能である。従って、本構成によれば、副走査方向SDのビームスポットSの移動を高精度に制御することができる。
【0096】
また、本実施形態に係るレーザ照射装置2では、出射光学系12は、第1円環型反射ミラー40を備えている。第1円環型反射ミラー40は、可動反射面20Aで反射したレーザ光Lを反射させる。このように、レーザ光Lは、第1反射面40Bによって光路が調整される。従って、本構成によれば、主走査方向MD及び/又は副走査方向SDにおけるレーザ光Lの照射範囲を調整することができる。
【0097】
また、本実施形態に係るレーザ照射装置2では、出射光学系12は、全方位レンズ42を備えている。レーザ光Lが全方位レンズ42を介して出射されることで、ビームスポットSの広がりが抑制される。従って、本構成によれば、広がりの抑制されたレーザ光Lを用いるので、副走査方向SDのビームスポットSの位置を高精度に制御することができる。
【0098】
また、本実施形態に係るレーザレベリングシステム1では、副走査方向SDに隣り合う複数のビームスポットSの一部が重複する。複数のビームスポットSが重複すると、各ビームスポットSのビームプロファイルBPを合成した合成ビームプロファイルIBPにおいて、単一のビームスポットSにおけるビームプロファイルBPと比較してピークPが高くなる。そして、受光器3は、レーザ光Lの強度分布を計測する。従って、本構成によれば、従来と比較して、照射距離が遠い場合でもレーザ光Lの光強度分布のピークPが検出されやすくなる。
【0099】
また、本実施形態に係るレーザレベリングシステム1では、受光器3は、モニタ3Bを備えている。モニタ3Bには、レーザ光Lの光強度分布が計測された結果に表示される。複数のビームスポットSが重複すると、各ビームスポットSのビームプロファイルBPを合成した合成ビームプロファイルIBPにおいて、単一のビームスポットSにおけるビームプロファイルBPと比較してピークPが高くなる。これにより、合成ビームプロファイルIBPにおけるピークPが検出されやすくなり、合成ビームプロファイルIBPに基づいて、受光器3の位置が調整される。従って、本構成によれば、受光器3の位置を調整することが容易になる。
【0100】
また、本実施形態に係るレーザレベリングシステム1では、レーザ光Lが目標位置を示す指標として用いられる。受光器3がレーザ光Lを受光した結果に基づいて、受光器3の位置が目標位置に調整される。複数のビームスポットSが重複すると、各ビームスポットSのビームプロファイルBPを合成した合成ビームプロファイルIBPにおいて、単一のビームスポットSにおけるビームプロファイルBPと比較してピークPが高くなる。これにより、合成ビームプロファイルIBPにおけるピークPが検出されやすくなる。従って、本構成によれば、従来と比較して、照射距離が遠い場合でもレーザ光Lの光強度分布のピークPが検出されやすくなる。
【0101】
(第1変形例)
本第1変形例では、レーザ照射装置2は、可動ミラー部20の可動反射面20Aの回転角を検出する角度センサ50を備えている。
【0102】
図14は、レーザ照射装置2の構成例を示す断面斜視図である。
図14に示すように、角度センサ50は、可動反射面20Aの反対側の面(すなわち、裏面20B)の側に配置されている。角度センサ50は、可動ミラー部20の可動反射面20Aのa
1軸及びa
2軸のそれぞれの軸回りの回転角を検出する。なお、角度センサ50は、本開示の技術に係る「角度センサ」の一例である。
【0103】
角度センサ50は、角度検出用光源51、角度変更部材52、及び検出素子53を有する。角度検出用光源51は、検出光Ldを角度変更部材52に向かって出射する。例えば、角度検出用光源51は、レーザ光源であり、検出光Ldは、レーザ光である。角度変更部材52は、反射面52Aを有する部材である。反射面52Aは、検出光Ldを可動ミラー部20の可動反射面20Aの裏面20Bに向かって反射する。
【0104】
反射面52Aで反射された検出光Ldは、裏面20Bでさらに反射される。ここで、可動反射面20Aが、ある回転角となっているとき、裏面20Bは、可動反射面20Aに応じた回転角となっている。従って、裏面20Bで反射された検出光Ldは、可動反射面20Aの回転角に応じた方向に反射されることになる。
【0105】
裏面20Bで反射された検出光Ldは、検出素子53に入射する。検出素子53は、検出光Ldを検出した位置に応じた信号を出力する。検出素子53は、例えば、Z軸azに沿った方向に法線を有する受光面53Aを備えた二次元ラインセンサである。制御装置14は、検出素子53から出力された信号に基づいて、可動反射面20Aの回転角を算出する。
【0106】
以上説明したように、本第1変形例に係るレーザ照射装置2では、可動反射面20Aの回転角を検出するための角度センサ50が設けられている。これにより、可動反射面20Aの回転角の検出結果に基づいて、回転角を調整することが実現される。回転角を調整することで、レーザ光Lの出射方向が調整される。従って、本構成によれば、副走査方向SDのビームスポットSの位置を高精度に制御することができる。
【0107】
(第2変形例)
上記第1実施形態では、奇数回(例えば、3回)の主走査が行われる形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。本第2変形例では、偶数回の主走査が行われる。
【0108】
一例として
図15に示すように、偶数回の主走査が行われる。
図15に示す例では、2回の主走査が行われる例が示されている。先ず、1回目の走査におけるレーザ光Lが受光器3において受光されて、第1ビームプロファイルBP1が得られる。次に、2回目の走査におけるレーザ光Lが受光器3において受光されて、第2ビームプロファイルBP2が得られる。なお、ここでは、2回の主走査が行われる形態例を挙げて説明したが、これはあくまでも一例にすぎず、4回以上の偶数回の主走査が行われてもよい。
【0109】
第1ビームプロファイルBP1及び第2ビームプロファイルBP2は、受光器3において一時的に保存される。第1ビームプロファイルBP1及び第2ビームプロファイルBP2が合成されることで、合成ビームプロファイルIBPが得られる。合成ビームプロファイルIBPにおいて、ピークPは、第1ビームプロファイルBP1及び第2ビームプロファイルBP2の各々のピークPよりも高くなる。合成ビームプロファイルIBPにおけるピークPの位置は、目標位置となる高さhに対応している。
【0110】
すなわち、1回目の主走査におけるレーザ光LのビームスポットS1が、主走査方向MDに移動される。次に、2回目の主走査において、レーザ光LのビームスポットS2が、主走査方向MDに移動される。この場合、ビームスポットS2は、ビームスポットS1の一部と重複する範囲で、副走査方向SDに移動される。ビームスポットS1及びS2において重複する重複領域ORの面積のビームスポットS1の面積に対する割合は、40%以上となっている。また、同じく重複領域ORの面積のビームスポットS2の面積に対する割合は、40%以上となっている。
【0111】
以上説明したように、本第2変形例に係るレーザ照射装置2では、主走査が偶数回(例えば、2回)行われる。主走査が2回行われる場合であっても、主走査方向MDにビームスポットSが移動され、さらに、主走査方向MDと直交する副走査方向SDにビームスポットSが移動される。そして、ビームスポットSが主走査方向MDにおける同じ位置を複数回通過する態様で走査機構11に対して主走査を行わせる際に、主走査に加えて副走査を行わせることにより、同じ位置を通過する複数のビームスポットSを、副走査方向SDで隣り合う複数のビームスポットSの一部が重複する範囲で副走査方向SDに移動させる。複数のビームスポットSが重複すると、各ビームスポットSの光強度分布を表すビームプロファイルBPを合成した合成ビームプロファイルIBPにおいて、単一のビームスポットSにおけるビームプロファイルBPと比較してピークPが高くなる。従って、本構成によれば、従来と比較して、照射距離が遠い場合でもレーザ光Lの光強度分布のピークPが検出されやすくなる。
【0112】
(第3変形例)
上記第1実施形態では、ビームスポットSの副走査方向SDの移動量L1及びL2が同じである形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。第3変形例では、移動量L1及びL2は、異なっている。
【0113】
一例として
図16に示すように、走査機構11は、主走査に加えて、主走査方向MDと直交する副走査方向SDにビームスポットSを移動させる副走査を行う。副走査において、ビームスポットSの移動範囲MRは、予め設定されている。そして、ビームスポットS1とビームスポットS2の間の移動量L1と、ビームスポットS2とビームスポットS3との間の移動量L2とは、異なっている。
図16に示す例では、移動量L2が、移動量L1よりも大きくなるように設定されている。
【0114】
すなわち、1回目の主走査におけるレーザ光LのビームスポットS1が、主走査方向MDに移動される。次に、2回目の主走査において、レーザ光LのビームスポットS2が、主走査方向MDに移動される。この場合、ビームスポットS2は、ビームスポットS1の一部と重複する範囲で、副走査方向SDに移動量L1分、移動する。そして、3回目の走査において、レーザ光LのビームスポットS3が、主走査方向MDに移動される。この場合、ビームスポットS3は、ビームスポットS2の一部と重複する範囲で、副走査方向SDに移動量L2分、移動する。
【0115】
第1~第3ビームプロファイルBP1~3は、受光器3において一時的に保存される。第1~第3ビームプロファイルBP1~3が合成されることで、合成ビームプロファイルIBPが得られる。合成ビームプロファイルIBPにおいて、ピークPは、第1~第3ビームプロファイルBP1~3の各々のピークPよりも高くなる。合成ビームプロファイルIBPにおけるピークPの位置は、目標位置となる高さhに対応している。
【0116】
以上説明したように、本第3変形例に係るレーザ照射装置2では、ビームスポットSの副走査方向の移動量L1及びL2が異なっている。移動量L1及びL2が異なっている場合であっても、主走査方向MDにビームスポットSが移動され、さらに、主走査方向MDと直交する副走査方向SDにビームスポットSが移動される。そして、ビームスポットSが主走査方向MDにおける同じ位置を複数回通過する態様で走査機構11に対して主走査を行わせる際に、主走査に加えて副走査を行わせることにより、同じ位置を通過する複数のビームスポットSを、副走査方向SDで隣り合う複数のビームスポットSの一部が重複する範囲で副走査方向SDに移動させる。複数のビームスポットSが重複すると、各ビームスポットSの光強度分布を表すビームプロファイルBPを合成した合成ビームプロファイルIBPにおいて、単一のビームスポットSにおけるビームプロファイルBPと比較してピークPが高くなる。従って、本構成によれば、従来と比較して、照射距離が遠い場合でもレーザ光Lの光強度分布のピークPが検出されやすくなる。
【0117】
(第4変形例)
上記第1実施形態では、レーザ照射装置2から出射されるレーザ光Lの軌跡Rが螺旋状である形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。螺旋状以外のレーザ光Lの軌跡Rの例を、
図17に示す。
図17に示す例では、
図11に示す螺旋状の例と異なり、レーザ光Lの出射方向がZ軸a
zの回りで回転する間は、出射方向をZ軸a
zの方向に変化させない。そして、出射方向がZ軸a
zの回りで1回転以上した後、出射方向をZ軸a
zの方向に移動させる。このように出射方向のZ軸a
zの回りの回転と、Z軸a
zの方向の移動とを段階的に行うようにしてもよい。
【0118】
レーザ光Lの出射方向を
図17のように変化させる場合は、次のように可動ミラー部20を駆動する。まず、可動ミラー部20のZ軸a
zに対する傾斜角を一定に保った状態で、可動ミラー部20の歳差運動を行わせる。そして、出射方向が1回転以上した後に、歳差運動を一旦停止し、可動ミラー部20の傾斜角を変化させる。傾斜角を変化させた後、再び歳差運動を開始させる。こうした動作を繰り返すことにより、可動ミラー部20の傾斜角を段階的に変化させれば、
図17に示すように、Z軸a
zの方向の出射方向の移動が行われる。
【0119】
なお、上記各実施形態では、走査機構11において、可動ミラー部20が圧電駆動方式で駆動される形態例を挙げて説明したが、本開示の技術は、これに限定されない。可動ミラー部20が電磁駆動方式、又は静電駆動方式で駆動されてもよい。
【0120】
また、上記各実施形態では、全方位レンズ42の縦断面形状が、三角形状又は台形状である形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。全方位レンズ42及び45の縦断面形状は、矩形状であってもよい。
【0121】
また、上記各実施形態では、全方位レンズ42が屈折力を有する形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、全方位レンズ42として、屈折力を有さず、かつレーザ光Lに対して透明な部材が用いられてもよい。
【0122】
また、上記各実施形態では、可動ミラー部20へのレーザ光Lの入射方向はZ軸方向であるが、レーザ光Lの入射方向はZ軸方向には限定されず、Z軸方向に交差する方向であってもよい。
【0123】
また、上各実施形態の出射光学系12の一部分を切り出すことにより、レーザ光Lの走査範囲を、例えば270°又は180°としたレーザ照射装置2を構成することも可能である。
【0124】
また、上記各実施形態では、レーザレベリングシステム1を用いて、基準となる高さhを示す指標となるレーザ光Lが受光器3で検出されることより、いわゆる水平出しが行われる形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。レーザレベリングシステム1を用いて、水平出しとともに、又は水平出しに代えて、垂直出しが行われてもよい。
【0125】
以上に示した記載内容及び図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。例えば、上記の構成、機能、作用、及び効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用、及び効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容及び図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことは言うまでもない。また、錯綜を回避し、本開示の技術に係る部分の理解を容易にするために、以上に示した記載内容及び図示内容では、本開示の技術の実施を可能にする上で特に説明を要しない技術常識等に関する説明は省略されている。
【0126】
本明細書において、「A及び/又はB」は、「A及びBのうちの少なくとも1つ」と同義である。つまり、「A及び/又はB」は、Aだけであってもよいし、Bだけであってもよいし、A及びBの組み合わせであってもよい、という意味である。また、本明細書において、3つ以上の事柄を「及び/又は」で結び付けて表現する場合も、「A及び/又はB」と同様の考え方が適用される。
【0127】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願および技術規格は、個々の文献、特許出願および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【0128】
上記実施形態に関し、さらに以下の付記を追加する。
【0129】
<付記1>
発散角を有し、かつ照射距離に応じてビームスポットのスポット径が広がるレーザ光を出射するレーザ光源と、
上記レーザ光の照射方向を変化させることにより上記レーザ光の上記ビームスポットを予め設定された主走査方向へ移動させる主走査と、上記ビームスポットを上記主走査方向と直交する副走査方向へ移動させる副走査とが可能な走査機構と、
上記走査機構を制御するプロセッサと、を備えており、
上記プロセッサは、
上記ビームスポットが上記主走査方向における同じ位置を複数回通過する態様で上記走査機構に対して上記主走査を行わせる際に、上記主走査に加えて上記副走査を行わせることにより、上記同じ位置を通過する複数の上記ビームスポットを、上記副走査方向で隣り合う複数のビームスポットの一部が重複する範囲で上記副走査方向に移動させる、
レーザ照射装置。
<付記2>
上記隣り合う複数のビームスポットにおいて重複する重複領域の面積の上記ビームスポットの面積に対する割合は、40%以上である、
付記1に記載のレーザ照射装置。
<付記3>
上記隣り合う複数のビームスポットのそれぞれの上記副走査方向の光強度分布である単独のビームプロファイルを合成した合成ビームプロファイルにおいて、上記副走査方向の中央位置が光強度分布のピークとなるように、上記重複領域の割合が設定されている、
付記1又は付記2に記載のレーザ照射装置。
<付記4>
上記主走査において、上記ビームスポットが上記同じ位置を複数回通過する場合において、上記隣り合う複数の上記ビームスポットの上記副走査方向の間隔は同じである、
付記1から付記3の何れか一項に記載のレーザ照射装置。
<付記5>
上記副走査において、上記ビームスポットの上記副走査方向の移動範囲は予め設定されており、上記移動範囲の中心位置を基準に上記副走査方向の一方を正方向、他方を負方向とした場合において、上記正方向と上記負方向の移動量は同じである、
付記1から付記4の何れか一項に記載のレーザ照射装置。
<付記6>
上記副走査方向に沿った軸を基準軸とした場合において、上記走査機構は、上記基準軸回りの全方位に上記主走査が可能である、
付記1から付記5の何れか一項に記載のレーザ照射装置。
<付記7>
上記走査機構は、上記基準軸と交差する位置に配置された可動反射面を有する可動ミラー部を有し、
上記基準軸を法線とする面内で直交する2軸を第1軸及び第2軸とした場合において、
上記可動ミラー部は、上記第1軸と上記第2軸のそれぞれの軸回りで回転可能な2軸回転ミラーであり、かつ、上記可動反射面が上記基準軸と直交する位置を初期位置とした場合において、上記第1軸と上記第2軸のそれぞれの軸回りに上記初期位置を基準とする正方向及び負方向に回転することにより、上記レーザ光が出射する向きを上記基準軸の回りに円錐状に変化させる、
付記6に記載のレーザ照射装置。
<付記8>
上記可動ミラー部は、上記レーザ光が出射する向きを上記基準軸の回りに螺旋状に変化させる、
付記7に記載のレーザ照射装置。
<付記9>
上記可動ミラー部は、MEMSミラーである、
付記8に記載のレーザ照射装置。
<付記10>
上記レーザ光を出射させる出射光学系を有し、
上記出射光学系は、上記基準軸に対応する中央に上記レーザ光を通過させる開口が形成され、かつ上記基準軸を中心に上記軸と直交する径方向に広がる円環状の第1反射面を有する第1円環型反射ミラーを備え、
上記第1円環型反射ミラーは、上記可動反射面で反射した上記レーザ光を上記第1反射面によって反射する、
付記7から付記9の何れか一項に記載のレーザ照射装置。
<付記11>
上記出射光学系は、上記第1円環型反射ミラーの上記第1反射面によって反射された上記レーザ光を屈折させる屈折力を有する全方位レンズを備える、
付記10に記載のレーザ照射装置。
<付記12>
上記可動反射面の回転角を検出するための角度センサを備える、
付記7から付記11の何れか一項に記載のレーザ照射装置。
<付記13>
付記1から付記12の何れか一項に記載のレーザ照射装置と、
上記レーザ照射装置が照射した上記レーザ光を受光して上記レーザ光の光強度分布を計測する受光装置と、を備える、
計測システム。
<付記14>
上記受光装置は、上記光強度分布が計測された結果を表示するモニタを備えている、
付記13に記載の計測システム。
<付記15>
上記レーザ光が目標位置を示す指標として用いられる、
付記13又は付記14に記載の計測システム。
【符号の説明】
【0130】
1 レーザレベリングシステム
2 レーザ照射装置
3 受光器
3A エリアセンサ
3B モニタ
4 標尺
10 光源
11 走査機構
12 出射光学系
14 制御装置
14A プロセッサ
14B RAM
14C NVM
14D 外部I/F
14E バス
15 コリメータレンズ
20 可動ミラー部
20A 可動反射面
20B 裏面
21 第1支持部
22 第1可動枠
23 第2支持部
24 第2可動枠
25 接続部
26 固定枠
30 圧電素子
31 第1アクチュエータ
32 第2アクチュエータ
35 アクチュエータ
40 第1円環型反射ミラー
40A 開口
40B 第1反射面
42 全方位レンズ
42A 空洞
50 角度センサ
51 検出用光源
52 角度変更部材
52A 反射面
53 検出素子
53A 受光面
BP,BP1,BP2,BP3 ビームプロファイル
C 中心
E1 第1端
E2 第2端
F 床面
IBP 合成ビームプロファイル
L レーザ光
Ld 検出光
L1,L2 移動量
MD 主走査方向
MR 移動範囲
N 法線
OR 重複領域
P ピーク
PF1、PF2 ビームプロファイルBPの模式図
r スポット径
S,S1,S2,S3 ビームスポット
SD 副走査方向
θ 反射角
t 厚み
R 軌跡
W 壁