(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026033
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】磁気検出装置、磁気検出ユニット、磁気検出システム、および、磁気検出ユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01R 33/02 20060101AFI20240220BHJP
G01R 33/09 20060101ALI20240220BHJP
G01D 5/245 20060101ALI20240220BHJP
H10N 59/00 20230101ALI20240220BHJP
H10N 50/10 20230101ALI20240220BHJP
【FI】
G01R33/02 U
G01R33/09
G01R33/02 N
G01D5/245 110L
G01D5/245 B
H10N59/00
H10N50/10 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065378
(22)【出願日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2022129199
(32)【優先日】2022-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牛田 彩希
【テーマコード(参考)】
2F077
2G017
5F092
【Fターム(参考)】
2F077NN03
2F077NN21
2F077PP11
2G017AA02
2G017AA10
2G017AC06
2G017AC07
2G017AC09
2G017AD55
5F092AB01
5F092AC04
5F092AC05
5F092AC06
5F092AC11
5F092BB46
5F092FA08
(57)【要約】
【解決手段】一方の主面側から磁石が挿入される穴部と、穴部に挿入された磁石を他方の主面側から係止して他方の主面側へと突出するのを抑止するための係止部とを有する基板と、他方の主面における穴部に対応する位置に実装された磁気センサとを備える磁気検出装置を提供する。基板は、第1基板と、他方の主面側から第1基板に貼り合わされた第2基板とを含んでもよい。穴部は、第1基板に形成された第1貫通孔であってもよい。係止部は、第2基板における第1貫通孔を塞ぐ領域を含んでもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の主面側から磁石が挿入される穴部と、前記穴部に挿入された前記磁石を他方の主面側から係止して前記他方の主面側へと突出するのを抑止するための係止部とを有する基板と、
前記他方の主面における前記穴部に対応する位置に実装された磁気センサと
を備える磁気検出装置。
【請求項2】
前記基板は、第1基板と、前記他方の主面側から前記第1基板に貼り合わされた第2基板とを含み、
前記穴部は、前記第1基板に形成された第1貫通孔であり、
前記係止部は、前記第2基板における前記第1貫通孔を塞ぐ領域を含む、
請求項1に記載の磁気検出装置。
【請求項3】
前記第2基板は、前記第1基板よりも薄い、
請求項2に記載の磁気検出装置。
【請求項4】
前記第2基板における前記第1貫通孔を塞ぐ領域の厚みは0.1mm以上0.6mm以下である、
請求項3に記載の磁気検出装置。
【請求項5】
前記第2基板における前記第1貫通孔を塞ぐ領域は、前記磁石が通り抜けることができない第2貫通孔を含む、
請求項2に記載の磁気検出装置。
【請求項6】
前記第1基板および前記第2基板は、接着剤で互いに接着されている、
請求項2に記載の磁気検出装置。
【請求項7】
前記第1基板および前記第2基板は、粘着シートによって互いに接着されている、
請求項6に記載の磁気検出装置。
【請求項8】
前記第1基板および前記第2基板のそれぞれの主面の外形を成す輪郭は、実質的に同一である、
請求項2に記載の磁気検出装置。
【請求項9】
前記第2基板は、少なくとも一部が強磁性体によって形成されており、
前記第2基板の主面の外形を成す輪郭は、前記第1基板の主面の外形を成す輪郭と実質的に同一またはそれよりも小さい、
請求項2に記載の磁気検出装置。
【請求項10】
前記係止部は、前記磁石を前記他方の主面側から係止する傾斜面を含む、
請求項1に記載の磁気検出装置。
【請求項11】
前記係止部は、前記磁石を前記他方の主面側から係止する段差を含む、
請求項1に記載の磁気検出装置。
【請求項12】
前記磁気センサは、磁気抵抗素子である、
請求項1に記載の磁気検出装置。
【請求項13】
前記磁気センサは、アンチモン化インジウム(InSb)を用いた半導体磁気抵抗素子(Semiconductor Magneto Resistive:SMR)である、
請求項12に記載の磁気検出装置。
【請求項14】
前記磁気センサは、前記一方の主面側から見た場合に、前記磁石の外形を成す輪郭で囲まれる範囲内に配置される、
請求項1に記載の磁気検出装置。
【請求項15】
前記磁石によって前記磁気センサに印加される磁束密度は、400mT以上である、
請求項1に記載の磁気検出装置。
【請求項16】
請求項1に記載の磁気検出装置と、
前記磁石と
を備え、
前記磁石は、磁極の作用面を除く面の少なくとも一部が、前記穴部の側面に接着剤で固定されている、
磁気検出ユニット。
【請求項17】
被検出ユニットと、
前記被検出ユニットに対向して設けられ、前記被検出ユニットの相対移動に伴う磁束密度の変化を検出する磁気検出ユニットと
を備え、
前記磁気検出ユニットは、
前記被検出ユニットに対向する側の反対側に設けられる磁石と、
前記反対側から前記磁石が挿入される穴部と、前記穴部に挿入された前記磁石を前記対向する側から係止して前記対向する側へと突出するのを抑止するための係止部とを有する基板と、
前記基板の前記対向する側における前記穴部に対応する位置に実装される磁気センサと
を有する、
磁気検出システム。
【請求項18】
前記磁石は、磁極の作用面を除く面の少なくとも一部が、前記穴部の側面に接着剤で固定されている、
請求項17に記載の磁気検出システム。
【請求項19】
前記磁石によって前記磁気センサに印加される磁束密度は、400mT以上である、
請求項17に記載の磁気検出システム。
【請求項20】
前記被検出ユニットは、前記磁気検出ユニット側に前記相対移動方向に沿って交互に配列された凹部および凸部を有する、
請求項17に記載の磁気検出システム。
【請求項21】
前記被検出ユニットは歯車である、
請求項20に記載の磁気検出システム。
【請求項22】
前記穴部は、前記反対側から見た場合に、前記磁石の外形を成す角形状の輪郭と相補的な角形状の輪郭を有し、
前記反対側から見た場合に、前記穴部の前記角形状の輪郭における複数の角部のうちの少なくとも1つは、前記穴部の前記角形状の主たる輪郭よりも外側に向かって凹んでいる、
請求項17に記載の磁気検出システム。
【請求項23】
前記基板は、第1基板と、前記被検出ユニットに対向する側から前記第1基板に貼り合わされた第2基板とを含み、
前記穴部は、前記第1基板に形成された第1貫通孔であり、
前記係止部は、前記第2基板における前記第1貫通孔を塞ぐ領域を含み、
前記第1基板および前記第2基板は、接着剤で互いに接着されており、
前記第1貫通孔の周囲には、前記第1基板および前記第2基板の間からはみ出る前記接着剤を受け入れる受け部が形成されている、
請求項17に記載の磁気検出システム。
【請求項24】
前記基板は、第1基板と、前記被検出ユニットに対向する側から前記第1基板に貼り合わされた第2基板とを含み、
前記穴部は、前記第1基板に形成された第1貫通孔であり、
前記係止部は、前記第2基板における前記第1貫通孔を塞ぐ領域を含み、
前記第1基板および前記第2基板は、接着剤で互いに接着されており、
前記反対側から見た場合に、前記第1基板および前記第2基板の間から前記第1貫通孔の内側に向かう前記接着剤のはみ出し範囲は、前記第1貫通孔の輪郭から0.2mm以内である、
請求項17に記載の磁気検出システム。
【請求項25】
一方の主面側から磁石が挿入される穴部と、前記穴部に挿入された前記磁石を他方の主面側から係止して前記他方の主面側へと突出するのを抑止するための係止部とを有する基板に対して、前記基板の前記他方の主面における前記穴部に対応する位置に磁気センサを実装することと、
前記基板の前記他方の主面側において、前記磁気センサに強磁性体または他の磁石を接近または接触させた状態で、前記穴部に前記磁石を挿入することにより、前記磁石の磁極の作用面を前記磁気センサに対して平行にすることと、
前記磁石の前記作用面を除く面の少なくとも一部と、前記穴部の側面との間に接着剤を注入して硬化させることにより、前記磁石を前記穴部の前記側面に固定することと
を備える磁気検出ユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気検出装置、磁気検出ユニット、磁気検出システム、および、磁気検出ユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「組付けられて一体化されたパッケージ8と磁石10とホルダ11とからなる磁気検出体3をケース2内に位置決めして配置した状態で、磁気検出体3を樹脂4により封止する」(段落0014)と記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2005-337865号公報
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、磁気検出装置を提供する。磁気検出装置は、一方の主面側から磁石が挿入される穴部と、前記穴部に挿入された前記磁石を他方の主面側から係止して前記他方の主面側へと突出するのを抑止するための係止部とを有する基板と、前記他方の主面における前記穴部に対応する位置に実装された磁気センサとを備える。
【0004】
上記の磁気検出装置において、前記基板は、第1基板と、前記他方の主面側から前記第1基板に貼り合わされた第2基板とを含んでもよい。上記の磁気検出装置において、前記穴部は、前記第1基板に形成された第1貫通孔であってもよい。上記の磁気検出装置において、前記係止部は、前記第2基板における前記第1貫通孔を塞ぐ領域を含んでもよい。
【0005】
上記何れかの磁気検出装置において、前記第2基板は、前記第1基板よりも薄くてもよい。
【0006】
上記何れかの磁気検出装置において、前記第2基板における前記第1貫通孔を塞ぐ領域の厚みは0.1mm以上0.6mm以下であってもよい。
【0007】
上記何れかの磁気検出装置において、前記第2基板における前記第1貫通孔を塞ぐ領域は、前記磁石が通り抜けることができない第2貫通孔を含んでもよい。
【0008】
上記何れかの磁気検出装置において、前記第1基板および前記第2基板は、接着剤で互いに接着されていてもよい。
【0009】
上記何れかの磁気検出装置において、前記第1基板および前記第2基板は、粘着シートによって互いに接着されていてもよい。
【0010】
上記何れかの磁気検出装置において、前記第1基板および前記第2基板のそれぞれの主面の外形を成す輪郭は、実質的に同一であってもよい。
【0011】
上記何れかの磁気検出装置において、前記第2基板は、少なくとも一部が強磁性体によって形成されていてもよい。上記何れかの磁気検出装置において、前記第2基板の主面の外形を成す輪郭は、前記第1基板の主面の外形を成す輪郭と実質的に同一またはそれよりも小さくてもよい。
【0012】
上記何れかの磁気検出装置において、前記係止部は、前記磁石を前記他方の主面側から係止する傾斜面を含んでもよい。
【0013】
上記何れかの磁気検出装置において、前記係止部は、前記磁石を前記他方の主面側から係止する段差を含んでもよい。
【0014】
上記何れかの磁気検出装置において、前記磁気センサは、磁気抵抗素子であってもよい。
【0015】
上記何れかの磁気検出装置において、前記磁気センサは、アンチモン化インジウム(InSb)を用いた半導体磁気抵抗素子(Semiconductor Magneto Resistive:SMR)であってもよい。
【0016】
上記何れかの磁気検出装置において、前記磁気センサは、前記一方の主面側から見た場合に、前記磁石の外形を成す輪郭で囲まれる範囲内に配置されてもよい。
【0017】
上記何れかの磁気検出装置において、前記磁石によって前記磁気センサに印加される磁束密度は、400mT以上であってもよい。
【0018】
本発明の第2の態様においては、磁気検出ユニットを提供する。磁気検出ユニットは、上記何れかの磁気検出装置を備えてもよい。磁気検出ユニットは、前記磁石を備えてもよい。磁気検出ユニットにおいて、前記磁石は、磁極の作用面を除く面の少なくとも一部が、前記穴部の側面に接着剤で固定されていてもよい。
【0019】
本発明の第3の態様においては、磁気検出システムを提供する。磁気検出システムは、被検出ユニットと、前記被検出ユニットに対向して設けられ、前記被検出ユニットの相対移動に伴う磁束密度の変化を検出する磁気検出ユニットとを備え、前記磁気検出ユニットは、前記被検出ユニットに対向する側の反対側に設けられる磁石と、前記反対側から前記磁石が挿入される穴部と、前記穴部に挿入された前記磁石を前記対向する側から係止して前記対向する側へと突出するのを抑止するための係止部とを有する基板と、前記基板の前記対向する側における前記穴部に対応する位置に実装される磁気センサとを有する。
【0020】
上記の磁気検出システムにおいて、前記磁石は、磁極の作用面を除く面の少なくとも一部が、前記穴部の側面に接着剤で固定されていてもよい。
【0021】
上記何れかの磁気検出システムにおいて、前記磁石によって前記磁気センサに印加される磁束密度は、400mT以上であってもよい。
【0022】
上記何れかの磁気検出システムにおいて、前記被検出ユニットは、前記磁気検出ユニット側に前記相対移動方向に沿って交互に配列された凹部および凸部を有してもよい。
【0023】
上記何れかの磁気検出システムにおいて、前記被検出ユニットは歯車であってもよい。
【0024】
上記何れかの磁気検出システムにおいて、前記穴部は、前記反対側から見た場合に、前記磁石の外形を成す角形状の輪郭と相補的な角形状の輪郭を有してもよい。上記何れかの磁気検出システムにおいて、前記反対側から見た場合に、前記穴部の前記角形状の輪郭における複数の角部のうちの少なくとも1つは、前記穴部の前記角形状の主たる輪郭よりも外側に向かって凹んでいてもよい。
【0025】
上記何れかの磁気検出システムにおいて、前記基板は、第1基板と、前記被検出ユニットに対向する側から前記第1基板に貼り合わされた第2基板とを含んでもよい。上記何れかの磁気検出システムにおいて、前記穴部は、前記第1基板に形成された第1貫通孔であってもよい。上記何れかの磁気検出システムにおいて、前記係止部は、前記第2基板における前記第1貫通孔を塞ぐ領域を含んでもよい。上記何れかの磁気検出システムにおいて、前記第1基板および前記第2基板は、接着剤で互いに接着されていてもよい。上記何れかの磁気検出システムにおいて、前記第1貫通孔の周囲には、前記第1基板および前記第2基板の間からはみ出る前記接着剤を受け入れる受け部が形成されていてもよい。
【0026】
上記何れかの磁気検出システムにおいて、前記基板は、第1基板と、前記被検出ユニットに対向する側から前記第1基板に貼り合わされた第2基板とを含んでもよい。上記何れかの磁気検出システムにおいて、前記穴部は、前記第1基板に形成された第1貫通孔であってもよい。上記何れかの磁気検出システムにおいて、前記係止部は、前記第2基板における前記第1貫通孔を塞ぐ領域を含んでもよい。上記何れかの磁気検出システムにおいて、前記第1基板および前記第2基板は、接着剤で互いに接着されていてもよい。上記何れかの磁気検出システムにおいて、前記反対側から見た場合に、前記第1基板および前記第2基板の間から前記第1貫通孔の内側に向かう前記接着剤のはみ出し範囲は、前記第1貫通孔の輪郭から0.2mm以内であってもよい。
【0027】
本発明の第4の態様においては、磁気検出ユニットの製造方法を提供する。磁気検出システムの製造方法は、一方の主面側から磁石が挿入される穴部と、前記穴部に挿入された前記磁石を他方の主面側から係止して前記他方の主面側へと突出するのを抑止するための係止部とを有する基板に対して、前記基板の前記他方の主面における前記穴部に対応する位置に磁気センサを実装することと、前記基板の前記他方の主面側において、前記磁気センサに強磁性体または他の磁石を接近または接触させた状態で、前記穴部に前記磁石を挿入することにより、前記磁石の磁極の作用面を前記磁気センサに対して平行にすることと、前記磁石の前記作用面を除く面の少なくとも一部と、前記穴部の側面との間に接着剤を注入して硬化させることにより、前記磁石を前記穴部の前記側面に固定することとを備える。
【0028】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】第1実施形態による磁気検出システム10の模式的な側面図である。
【
図2】
図1に示す磁気検出システム10の部分拡大図である。
【
図3】第1実施形態による磁気検出装置100の模式的な平面図である。
【
図4】第1実施形態による磁気検出ユニット30の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図5】第2実施形態による磁気検出装置200の模式的な側面図である。
【
図6】第3実施形態による磁気検出装置300の模式的な側面図である。
【
図7】第4実施形態による磁気検出装置400の模式的な側面図である。
【
図8】第5実施形態による磁気検出装置500の模式的な側面図である。
【
図9】第6実施形態による磁気検出装置600の模式的な平面図である。
【
図11】
図9の線I-Iにおいて磁気検出装置600を仮想的に切断した模式的なYZ断面図である。
【
図12】第6実施形態による磁気検出装置600における第1基板611の第1貫通孔612を形成する方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0031】
図1は、第1実施形態による磁気検出システム10の模式図である。
図1の紙面に向かって左方向をZ軸正方向、上方向をY軸正方向、手前方向をX軸正方向と定義する。なお、
図1において、磁気検出ユニット30を破線の枠で示す。
【0032】
磁気検出システム10は、回転体20と、磁気検出ユニット30とを備える。本実施形態による磁気検出システム10は、磁気検出ユニット30によって回転体20の回転角度、回転速度、回転方向、または回転数の少なくとも1つ等の回転動作を検出する。
【0033】
回転体20は、磁性体であって、凸部および/または凹部を有し、X軸方向に沿う回転軸を中心に回転する。回転体20は、例えば、回転軸に対して略直交する断面形状において凸部の頂点が回転軸を中心とする円周上に位置する。
【0034】
回転体20は、磁気検出ユニット30側に相対移動方向に沿って交互に配列された凹部および凸部を有してよい。回転体20は、例えば、歯車であってよく、歯車状の部品であってもよい。
図1は、回転体20が円盤状の形状を有し、当該円盤の円周における回転の移動方向に沿って凹部および凸部が交互に配列された例を示す。なお、回転体20は、被検出ユニットの一例である。
【0035】
磁気検出ユニット30は、回転体20のZ軸負側で回転体20に対向して設けられ、回転体20の相対移動に伴う磁束密度の変化を検出する。磁気検出ユニット30は、回転体20に対向する側の反対側に設けられる磁石Mと、回転体20に対向する側に設けられる磁気検出装置100とを備える。換言すると、磁気検出ユニット30において、Z軸負側から順に、磁石M、磁気検出装置100が配置される。なお、
図1においては、単に説明のため、磁石Mの側面全体が見えるよう磁気検出装置100の一部を透かして示し、以降の図においても同様とする。
【0036】
磁石Mは、予め定められた略一定の磁場を発生させる。磁石Mは、一例として、サマリウムコバルトを含む永久磁石であってもよく、永久磁石の残留磁束密度は約800mTであってもよい。
【0037】
磁石Mは、N極またはS極の磁極の作用面が回転体20の方向を向くように配置される。磁石Mは、回転体20が有する凸部および/または凹部に対して、発生させた磁場が届く程度に、回転体20に近接して配置される。
【0038】
磁気検出装置100は、回転体20と磁石Mとの間で磁石Mよりも回転体20に近接して配置され、回転体20が有する凸部および/または凹部に対向する。磁気検出装置100は、磁石Mから発生する磁力の磁束密度が、回転体20の凸部および/または凹部で変化するのを検出する。磁気検出装置100は、回転体20の回転に応じて変化する磁束密度に基づいて、回転体20の回転動作を検出する。
【0039】
図2は、
図1に示す磁気検出システム10の部分拡大図であり、
図3は、第1実施形態による磁気検出装置100の模式的な平面図である。なお、
図2では、
図1と同様に、磁気検出ユニット30を破線の枠で示す。
【0040】
磁気検出装置100は、基板110と、回転体20に対向する側に設けられる磁気センサ120とを備える。本実施形態において、基板110は、非磁性体の板状部材である。
図2に示すように、基板110は、第1基板111と、回転体20に対向する側から第1基板111に貼り合わされた第2基板114とを有する。
【0041】
本実施形態における第1基板111および第2基板114は、接着剤、例えば薄膜粘着フィルムのような粘着シートによって互いに接着されていてもよい。第1基板111および第2基板114は、粘着シートに代えてまたは加えて、液体の接着剤で互いに接着されていてもよい。
図2および
図3に示すように、第1基板111および第2基板114のそれぞれの主面の外形を成す輪郭は、実質的に同一であってもよい。これにより、第1基板111および第2基板114は、互いに向かい合う面の全体に亘って、互いに接着されていてもよい。
【0042】
第1基板111には、第1貫通孔112が形成されている。第1貫通孔112には、磁石Mが挿入されている。
図3では、第2基板114の側から視認できない第1貫通孔112および磁石Mをそれぞれ破線で示す。
【0043】
図2に示すように、磁石Mは、一例として、磁極の作用面を除く面の少なくとも一部が、第1貫通孔112の側面に接着剤Gで固定されている。なお、磁気検出システム10の動作時においては、磁性体である回転体20が常に磁気センサ120側に位置し、磁石Mは自身の磁力によって第2基板114に吸着したような状態にあるため、磁石Mを接着剤Gで第1貫通孔112の側面に固定しなくてもよい。なお、磁石Mは、接着剤G以外の他の手段によって第1貫通孔112の側面に固定されていてもよい。なお、第1貫通孔112は、基板110の一方の主面側から磁石Mが挿入される穴部の一例である。
【0044】
第2基板114は、係止部115を有する。係止部115は、第1基板111の第1貫通孔112に挿入された磁石Mを、第1基板111の回転体20に対向する側から係止する。これにより、係止部115は、磁石Mが第2基板114の回転体20に対向する側へと突出するのを抑止する。
【0045】
基板110において、係止部115と、上述の穴部の一例である第1貫通孔112との組み合わせは、磁石Mが基板110の回転体20に対向する側の反対側、すなわちZ軸負側の主面よりも、基板110の回転体20に対向する側、すなわちZ軸正側の主面に寄って位置することを可能にする一方で、磁石Mが磁気センサ120を回転体20側に押すことを防止する機能を有する、と定義してもよい。
【0046】
一例として、本実施形態における係止部115は、第2基板114における、第1基板111の第1貫通孔112を塞ぐ領域を含む。換言すると、第2基板114における第1基板111の第1貫通孔112を塞ぐ領域は、第1基板111の第1貫通孔112に挿入された磁石Mを第1基板111の回転体20に対向する側から係止する係止部115として機能する。より具体的には、第2基板114における第1基板111の第1貫通孔112に対応する領域には貫通孔が形成されておらず、第2基板114の係止部115は、磁石Mと磁気センサ120とを隔離する壁として、磁気センサ120が磁石Mによって回転体20側に押されることを不可能にしている。
図2および
図3には、係止部115に含まれる当該領域を破線の枠で示す。以降の図においても同様とする。
【0047】
第2基板114の回転体20に対向する側における当該位置には、磁気センサ120が実装されている。磁気センサ120は、第2基板114上に形成されている不図示の電極にはんだ付けされており、当該電極は、
図3に示す、第2基板114上に形成された導体パターン116に電気的に接続されている。なお、磁気センサ120は、電極および導体パターン116を介して不図示の電源に接続され、電源から電圧を供給される。なお、磁気センサ120は、当該導体パターン116に代えてまたは加えて、例えば導線や電気配線などの他の電気的導通手段によって電源に接続されていてもよい。
【0048】
磁気センサ120は、感磁部121を有する。感磁部121は、磁石Mが発する磁場の大きさと向きを検知する。感磁部121は、例えば、磁気抵抗素子、ホール素子、コイル、リードスイッチなどを含んでもよい。
図2および
図3には、感磁部121を破線の枠で示し、以降の図においては図示を省略する。
【0049】
一例として、本実施形態における磁気センサ120の感磁部121は、磁気抵抗素子であってもよく、例えばアンチモン化インジウム(InSb)を用いた半導体磁気抵抗素子(Semiconductor Magneto Resistive:SMR)である。磁気センサ120の感磁部121は、SMRに代えてまたは加えて、他の磁気抵抗素子、例えば異方性磁気抵抗素子(Anisotropic Magneto Resistive:AMR)、巨大磁気抵抗素子(Giant Magneto Resistive:GMR)、トンネル磁気抵抗素子(Tunnel Magneto Resistive:TMR)などであってもよい。この場合、感磁部121は、回転体20の凸部および/または凹部の移動方向に沿って配列された、InSbから成る複数の抵抗体を含む。当該複数の抵抗体の間隔は、回転体20の凸部および/または凹部のピッチに応じて決定されたものであってもよい。なお、上述のInSbは、インジウムヒ素(InAs)やアルミインジウムアンチモン(AlInSb)などに比べて移動度が高く、SMRの材料として好適である。
【0050】
以上の説明から理解される通り、本実施形態の磁気検出ユニット30においては、Z軸負側から、磁石M、第1基板111、第2基板114、磁気センサ120の順に配置されている。
図2および
図3に示すように、磁気センサ120は、基板110一方の主面側から見た場合に、磁石Mの外形を成す輪郭で囲まれる範囲内に配置されてもよい。本実施形態において、磁石Mの大きさは、磁気センサ120に対して予め定められた大きさ以上の磁力を印加するために予め定められたサイズ以上とすることが必要とされるが、その一方で、磁気センサ120の大きさの下限に制約はないので、設計需要に応じて磁気センサ120を相対的に小型化することができる。磁気センサ120を小型化することにより、製造コストを下げることもでき、基板110上の磁気センサ120による専有面積が縮小することで他の部品の実装スペースを拡張することもできる。
【0051】
この場合、
図2および
図3に示すように、感磁部121は、基板110の一方の主面側から見た場合に、磁石Mの面内に含まれる。これにより、磁石Mの磁場を感磁部121の全体に亘って均等に印加することができる。なお、磁気センサ120は、基板110の一方の主面側から見た場合に、感磁部121を除く外周側の少なくとも一部の領域が磁石Mの面内に含まれていなくてもよい。
【0052】
第1基板111および第2基板114のZ軸方向の厚みはそれぞれ、略一定であってもよく、XY平面内の任意の箇所で部分的に変化していてもよい。
図2は、第1基板111の主たる厚みをT1で示し、第2基板114の主たる厚みをT2で示す。
【0053】
第2基板114は、第1基板111よりも薄くてよい。一例として、第2基板114における、第1基板111の第1貫通孔112を塞ぐ領域の厚みは、0.1mm以上0.6mm以下であってもよい。全体的にまたは部分的に0.1mm未満の厚みを有する第2基板114を製造することは困難であってもよい。第2基板114の当該領域の厚みを0.6mm以下にして、且つ、磁石Mとして例えば残留磁束密度が約800mTのサマリウムコバルトを含む永久磁石を用いることにより、磁石Mによって磁気センサ120に印加される磁束密度を400mT以上とすることができる。これにより、磁気センサ120の出力信号振幅(Vpp)を予め定められた大きさ以上とすることができ、よって、磁気センサ120による磁束密度変化の検出精度を予め定められた閾値以上とすることができる。
【0054】
なお、
図2においてD1で示す回転体20と磁気センサ120との間の距離は、例えば約0.2mmであってもよい。なお、当該距離をエアーギャップと称する場合がある。
【0055】
なお、
図3に示すように、略方形の外形を有する第1基板111および第2基板114の各主面の四隅には、第1基板111および第2基板114を他の装置やフレームなどに固定するための手段が挿通される孔が、両基板を貫通して形成されていてもよい。なお、基板110の外形、例えば第1基板111および第2基板114の外形は、上述の略方形に限られず、例えば円形、楕円形など任意の他の形状であってもよい。なお、
図3に示すように、第2基板114の回転体20に対向する側の主面に形成された複数の導体パターン116はそれぞれ、一端が磁気センサ120に接続され、他端が基板110の電源用電極に接続され、これによって磁気センサ120と上述の電源とを電気的に接続してもよい。
【0056】
ここで、本実施形態による磁気検出ユニット30との第1比較例として、基板に形成された貫通孔を覆うように磁気センサを配置し、当該貫通孔に磁石を挿入した磁気検出装置を想定する。当該磁気検出装置において、磁気センサは、磁気抵抗素子が樹脂パッケージによってパッケージングされた構成を有し、樹脂パッケージの裏面の中央領域にはリードフレームが露出している。磁気センサのリードフレームは、リードフレームの外縁側の数か所を基板上の電極にはんだ付けされている。磁気センサの基板側の主面における、基板の貫通孔を塞ぐ領域には、磁石が接着剤で固定されている。すなわち、磁気センサの基板側の主面に露出しているリードフレームの中央領域は、磁石によって覆われている。基板は、他の装置やフレームなどに固定されている。
【0057】
このような第1比較例によれば、固定された基板に対して相対移動する被検出ユニットに磁気センサを対向させた状態で磁気検出装置を使用する場合、被検出ユニットを引き付けようとする磁石の磁力によって、磁気センサには被検出ユニット側に押す力が加わる。その結果、磁気センサを基板に固定している部分が断裂し、磁気センサが磁石と被検出ユニットとの間に挟まれるように被検出ユニット上に打ち付けられる事態が生じ得る。
【0058】
このような第1比較例によれば、また、磁気センサの基板側の主面に露出しているリードフレームの中央領域が磁石によって覆われているため、当該中央領域が電極などの熱伝導率が高い部材によって覆われている場合に比べて、磁気センサの放熱性が低い。
【0059】
本実施形態による磁気検出装置100との第2比較例として、貫通孔が形成されていない基板の一方の主面上に磁気センサを配置し、基板の他方の主面上の対応する位置に磁石を配置した磁気検出装置を想定する。当該磁気検出装置において、磁気センサは、数か所を基板上の電極にはんだ付けされている。磁石は、基板上に接着剤で固定されている。基板は、他の装置やフレームなどに固定されている。
【0060】
このような第2比較例によれば、基板の厚みは、強度を担保するために、1.4mm程度に設定される。すなわち、磁気センサと磁石との間の距離は1.4mm程度となる。このような距離を介して磁石から400mT以上の磁束密度を磁気センサに印加するためには、磁石として、永久磁石の中で磁力が最大のネオジウム磁石を用いたり、サイズの大きなサマリウムコバルト磁石を用いたりすることが必要とされる。
【0061】
しかしながら、ネオジウム磁石は、サマリウムコバルト磁石に比べて温度特性が悪く、磁気検出装置の周囲環境における発熱体、例えば磁気検出装置が取り付けられる工作機械のモータの温度が高くなるほど磁場が弱まり、これによって出力信号振幅(Vpp)が小さくなる。その結果、例えば被検出ユニットの非検出面の凹凸形状に起因する磁気検出装置と被検出ユニットとの間のエアーギャップ変動に対する角度誤差が大きくなり得、誤差を補正することが困難になり、磁束密度変化の検出精度が低下し得る。
【0062】
一方で、サイズの大きなサマリウムコバルト磁石を使う場合には、1.4mm程度の距離を介して400mT以上の磁束密度を磁気センサに印加するために、サマリウムコバルト磁石をかなり大型化する必要がある。このような大型のサマリウムコバルト磁石を備えた磁気検出装置は、大きさに制約があるエンコーダに搭載することが困難である。
【0063】
これに対して、本実施形態による磁気検出装置100によれば、一方の主面側から磁石Mが挿入される第1貫通孔112と、第1貫通孔112に挿入された磁石Mを他方の主面側から係止して当該他方の主面側へと突出するのを抑止するための係止部115とを有する基板110を備える。本実施形態による磁気検出装置100によれば、当該基板110の他方の主面における第1貫通孔112に対応する位置に実装された磁気センサ120を備える。
【0064】
このような構成を備える磁気検出装置100によれば、磁石Mと磁気センサ120との間の距離を、基板110の主たる厚み、例えば1.4mm程度よりも短くすること、例えば0.2mm程度にすることができる。磁石Mと磁気センサ120との間の距離を予め定められた長さよりも短くすることで、磁石Mとしてエンコーダに適用可能なサイズのサマリウムコバルト磁石を用いた場合であっても、磁石Mによって磁気センサ120に印加される磁束密度を400mT以上とすることができる。これにより、磁気センサ120の出力信号振幅(Vpp)を予め定められた大きさ以上とすることができ、その結果、上述の角度誤差を抑止して、磁気センサ120による磁束密度変化の検出精度を予め定められた閾値以上とすることができる。
【0065】
その一方で、磁気検出装置100によれば、磁石Mが基板110の被検出ユニットに対向する側へと突出するのを抑止することにより、磁気センサ120が被検出ユニット側へと押されるのを防止することができ、磁気センサ120が被検出ユニットに打ち付けられる事態を回避できる。
【0066】
また、本実施形態による磁気検出装置100において、基板110は、第1基板111と、回転体20に対向する側から第1基板111に貼り合わされた第2基板114とを有してもよく、第2基板114における第1基板111の第1貫通孔112を塞ぐ領域は係止部115として機能してもよい。この場合、第2基板114の回転体20に対向する側における当該領域には電極が設けられ、当該電極に磁気センサ120のリードフレームがはんだ付けされる。この場合にまた、磁気センサ120は、基板110一方の主面側から見た場合に、磁石Mの外形を成す輪郭で囲まれる範囲内に配置されてもよい。
【0067】
このような構成を備える磁気検出装置100によれば、上述の第1比較例と比べて、磁気センサ120の放熱性を向上することができる。このような構成を備える磁気検出装置100によればまた、磁気センサ120の大きさの下限に制約はないので、設計需要に応じて磁気センサ120を小型化することができ、磁気センサ120を小型化することにより、製造コストを下げることもでき、基板110上の磁気センサ120による専有面積を縮小することもでき、これにより他の部品の実装スペースを拡張することもできる。
【0068】
本出願の発明者等は、本実施形態による磁気検出装置100によって当該効果が得られることを検証するべく、それぞれの主面の外形を成す輪郭が実質的に同一の、互いに粘着シートによって貼り合わされた第1基板111および第2基板114を備える磁気検出装置100を用意し、プッシュプルゲージを用いて、第1基板111の第1貫通孔112に挿入した磁石Mに応力を印加する試験を行った。本出願の発明者等はまた、上述の第1比較例による磁気検出装置についても同様に試験を行った。
【0069】
試験の結果、第1比較例による磁気検出装置では、10N程度を印加した時点で、磁気センサを基板に固定するはんだ部分が剥がれて破壊され、本実施形態による磁気検出装置100では、30N程度を印加した時点でも、第1基板111と第2基板114とが剥がれないことが確認された。
【0070】
図4は、第1実施形態による磁気検出ユニット30の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図4のフローは、それぞれの主面の外形を成す輪郭が実質的に同一の、互いに粘着シートによって貼り合わされた第1基板111および第2基板114から成る基板110を用意することにより開始してもよい。
【0071】
基板110に対して、基板110のZ軸正側の主面における第1貫通孔112に対応する位置に磁気センサ120を実装する(ステップS101)。基板110のZ軸正側において、磁気センサ120に強磁性体または他の磁石M-1を接近または接触させた状態で、第1貫通孔112に磁石Mを挿入することにより、磁石Mの磁極の作用面を磁気センサ120に対して平行にする(ステップS102)。なお、ステップS102においては、他の磁石M-1に代えて、鉄などの強磁性体を用いてもよい。また、磁気センサ120に他の磁石M-1を接触させることに代えて、磁気センサ120に他の磁石M-1を接近させてもよい。
【0072】
磁石Mの作用面を除く面の少なくとも一部と、第1貫通孔112の側面との間に接着剤Gを注入して硬化させることにより、磁石Mを第1貫通孔112の側面に固定し(ステップS103)、これによって磁気検出ユニット30を完成させ、当該フローは終了する。なお、ステップS103においては、例えば、接着剤Gが硬化して磁石Mが第1貫通孔112の側面に固定された後に他の磁石M-1を取り除いてもよい。
【0073】
以上の第1実施形態による磁気検出装置100では、上述の穴部と係止部とを有する基板として、第1貫通孔112を有する第1基板111と、第1基板111の回転体20側に貼り合わされる薄い第2基板114との組み合わせを有する基板110を説明した。また、第1貫通孔112および第2基板114は、それぞれの主面の外形を成す輪郭が実質的に同一であるものとして説明した。上述の穴部と係止部とを有する基板の構造はこれらに限定されない。例えば、貼り合わせる2枚の基板は、それぞれの主面の外形を成す輪郭が互いに異なっていてもよい。上述の穴部と係止部とを有する基板は、単一の基板であってもよい。上述の穴部は、磁石MをZ軸負側から基板内部に挿入できる限りにおいて、連続的にまたは段階的に大きさが変化している貫通孔であってもよく、基板を貫通しない窪みまたは凹みであってもよい。
【0074】
図5は、第2実施形態による磁気検出装置200の模式的な側面図である。磁気検出装置200は、第1実施形態による磁気検出装置100と異なる点として、第2基板114を有する基板110に代えて、第2基板214を有する基板210を備える。磁気検出装置200における他の構成は、第1実施形態による磁気検出装置100の対応する構成と同様であってもよく、第1実施形態の対応する構成で用いた参照番号を用いて重複する説明を省略する。また、
図5においては、磁気検出装置200に含まれない磁石Mを破線で示す。これらは、以降の複数の実施形態における説明についても同様とする。
【0075】
基板210は、第1基板111と、第1基板111に貼り合わされる第2基板214を有する。第2基板214における係止部215は、第2基板114における、第1基板111の第1貫通孔112を塞ぐ領域を含み、当該領域は、磁石Mが通り抜けることができない第2貫通孔217を含む。このような構造の基板210を備える第2実施形態の磁気検出装置200によっても、第1実施形態の磁気検出装置100と同様の効果を奏する。
【0076】
図6は、第3実施形態による磁気検出装置300の模式的な側面図である。磁気検出装置300は、第1実施形態による磁気検出装置100と異なる点として、第2基板114を有する基板110に代えて、第2基板314を有する基板310を備える。
【0077】
基板310は、第1基板111と、第1基板111に貼り合わされる第2基板314を有する。第2基板314は、少なくとも一部が強磁性体によって形成されており、第2基板314の主面の外形を成す輪郭は、第1基板111の主面の外形を成す輪郭と実質的に同一またはそれよりも小さくてもよい。第2基板314は、一例として、鉄などの透磁率が高い材料を含む強磁性体によって形成されており、磁気センサ120と導通しないよう、表面が絶縁されていてもよい。
図6に示すように、一例として、第2基板314の当該輪郭は、第1基板111の当該輪郭よりも小さく、第2基板314の係止部315が第1基板111の第1貫通孔112を塞ぐ領域を含む限りにおいて、第2基板314自体が第1貫通孔112を塞ぐ程度の大きさであってもよい。このような構造の基板310を備える第3実施形態の磁気検出装置300によっても、第1実施形態の磁気検出装置100と同様の効果を奏する。第3実施形態の磁気検出装置300では更に、透磁率が高い材料を含む強磁性材料によって形成された第2基板314の集磁効果によって、磁石Mから発生する磁力の磁束密度の変化量が増加するため、第1実施形態の磁気検出装置100と比べて、磁気センサ120の出力信号振幅(Vpp)をより一層高めることができる。
【0078】
図7は、第4実施形態による磁気検出装置400の模式的な側面図である。磁気検出装置400は、第1実施形態による磁気検出装置100と異なる点として、第2基板114を有する基板110に代えて、単一の基板410を備える。
【0079】
基板410は、基板410のZ軸負側から磁石Mが挿入される貫通孔412と、貫通孔412に挿入された磁石MをZ軸正側から係止する係止部415とを含む。係止部415は、磁石MをZ軸正側から係止する傾斜面418を含む。貫通孔412と傾斜面418を含む係止部415との組み合わせは、連続的に大きさが変化している貫通孔、と定義してもよい。本実施形態における磁石Mは、係止部415の傾斜面418と相補的な形状を有する。すなわち、本実施形態における磁石Mは、少なくとも基板410の内部へ挿入される部分において、YZ平面内の断面形状がテーパー形状である。このような構造の基板410を備える第4実施形態の磁気検出装置400によっても、第1実施形態の磁気検出装置100と同様の効果を奏する。第4実施形態の磁気検出装置400では更に、第1実施形態の磁気検出装置100と比べて、基板410と磁石Mとの接着面積を拡大することができる。なお、磁石Mは、係止部415の傾斜面418と相補的な形状を有さなくてもよく、例えば他の実施形態と同様に、直方体形状を有してもよい。この場合でも、基板410の係止部415が傾斜面418を含むことにより、第1実施形態の磁気検出装置100と比べて、基板410と磁石Mとの接着面積を拡大することができる。
【0080】
図8は、第5実施形態による磁気検出装置500の模式的な側面図である。磁気検出装置500は、第1実施形態による磁気検出装置100と異なる点として、第2基板114を有する基板110に代えて、単一の基板510を備える。
【0081】
基板510は、基板510のZ軸負側から磁石Mが挿入される貫通孔512と、貫通孔512に挿入された磁石MをZ軸正側から係止する係止部515とを含む。係止部515は、磁石MをZ軸正側から係止する段差519を含む。貫通孔512と段差519を含む係止部515との組み合わせは、段階的に大きさが変化している貫通孔、と定義してもよい。このような構造の基板510を備える第5実施形態の磁気検出装置500によっても、第1実施形態の磁気検出装置100と同様の効果を奏する。
【0082】
図9は、第6実施形態による磁気検出装置600の模式的な平面図である。第6実施形態による磁気検出装置600は、第1実施形態による磁気検出装置100と異なる点として、基板110に代えて、第1基板611および第2基板114を有する基板610を備える。本実施形態における第1基板611および第2基板114は、液体もしくはフィルム状の接着剤で互いに接着されている。
【0083】
本実施形態の第1基板611は、第1実施形態の第1基板111と異なる点として、第1貫通孔112に代えて、第1貫通孔612が形成されている。第1貫通孔612には、磁石Mが挿入されている。
図9では、第1基板611の側から視認できない磁気センサ120および導体パターン116をそれぞれ破線で示す。
【0084】
図9に示すように、第1貫通孔612は、一方の主面側から見た場合に、磁石Mの外形を成す角形状の輪郭と相補的な角形状の輪郭を有してもよい。一方の主面側から見た場合に、第1貫通孔612の角形状の輪郭における複数の角部613のうちの少なくとも1つは、第1貫通孔612の角形状の主たる輪郭よりも外側に向かって凹んでいてもよい。図示の例では、第1貫通孔612は、一方の主面側から見た場合に、略方形の輪郭を有し、当輪郭における4つの角部613が、第1貫通孔612の略方形の主たる輪郭よりも外側に向かって凹んでいる。なお、上述の角形状という用語は、略方形や略矩形などを指してもよい。
【0085】
各角部613は、第1貫通孔612の周囲に形成されている受け部の一例であってもよい。当該受け部は、第1基板611および第2基板114の間からはみ出る接着剤を受け入れる。
【0086】
図10は、
図9に示す領域1000の拡大図である。
図10において、第1基板611および第2基板114の間からはみ出る接着剤を斜線領域Rで示す。
図10においては、単に説明を明確にするために、磁石M、磁気センサ120および導体パターン116の図示を省略し、第1基板611の第1貫通孔612の内部に第2基板114が露出した状態を示す。
【0087】
図10に示すように、一方の主面側から見た場合に、第1基板611および第2基板114の間から第1貫通孔612の内側に向かう接着剤のはみ出し範囲Dは、予め定められた範囲内になるように収められてもよく、例えば第1貫通孔612の輪郭から0.2mm以内である。
【0088】
図11は、
図9の線I-Iにおいて磁気検出装置600を仮想的に切断した模式的なYZ断面図である。
図11は、
図2と同様に、第1基板611の主たる厚みをT1で示し、第2基板114の主たる厚みをT2で示す。
図11においては更に、第1貫通孔612のY軸方向の幅をD2で示す。本実施形態において、一例として、T1は1.4mmであってもよく、T2は0.2mmであってもよく、D2は4.6mmであってもよい。
【0089】
図12は、第6実施形態による磁気検出装置600における第1基板611の第1貫通孔612を形成する方法の一例を示すフローチャートである。
図12のフローは、第1貫通孔612が形成されていない第1基板611を用意することにより開始してもよい。
【0090】
ルーター等の第1の切削工具を使用して、第1基板611のZ軸負側の主面の中央領域、すなわち、第1基板611に貼り合わされる第2基板114に磁気センサ120が実装される位置に対応する位置に、貫通孔615を形成する(ステップS201)。貫通孔615は、第1基板611の一方の主面側から見た場合に、磁石Mの外形を成す略方形の輪郭と相補的な略方形の輪郭を有する。ただし、ルーターの仕様上、貫通孔615の各角部を直角に仕上げることが困難である場合があり、貫通孔615に磁石Mを挿入する際に磁石Mの角が干渉して磁石Mを挿入できない可能性がある。そこで、第1の切削工具よりも小さな切削刃を有する第2の切削工具を使用して、貫通孔615の4つの角部を丸く仕上げ(ステップS202)、これによって、4つの角部613を有する第1貫通孔612を完成させ、当該フローは終了する。第1基板611は、4つの角部613を有する第1貫通孔612を備えることにより、磁石Mが干渉することを防止できる。
【0091】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0092】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0093】
10 磁気検出システム
20 回転体
30 磁気検出ユニット
100、200、300、400、500 磁気検出装置
110、210、310、410、510、610 基板
111、611 第1基板
112、612 第1貫通孔
114、214、314 第2基板
115、215、315、415、515 係止部
116 導体パターン
120 磁気センサ
121 感磁部
217 第2貫通孔
412、512 貫通孔
418 傾斜面
519 段差
G 接着剤
M 磁石
613 角部
615 貫通孔