IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社J−オイルミルズの特許一覧

特開2024-26037麺用水分移行抑制剤、麺用水分移行抑制剤の製造方法、および麺の水分移行を抑制する方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026037
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】麺用水分移行抑制剤、麺用水分移行抑制剤の製造方法、および麺の水分移行を抑制する方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20240220BHJP
   A23D 9/00 20060101ALI20240220BHJP
   A23L 23/00 20160101ALI20240220BHJP
【FI】
A23L7/109 C
A23L7/109 B
A23D9/00 518
A23D9/00 510
A23L7/109 E
A23L23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095331
(22)【出願日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2022129143
(32)【優先日】2022-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(72)【発明者】
【氏名】長岡 優
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 舞子
(72)【発明者】
【氏名】廣島 理樹
【テーマコード(参考)】
4B026
4B036
4B046
【Fターム(参考)】
4B026DC02
4B026DC03
4B026DC06
4B026DG04
4B026DG05
4B026DG07
4B026DK02
4B026DK03
4B026DK10
4B026DP01
4B026DP03
4B026DP10
4B026DX01
4B036LC01
4B036LC05
4B036LE02
4B036LE04
4B036LE05
4B036LF01
4B036LF03
4B036LF07
4B036LG06
4B036LH38
4B036LP01
4B036LP11
4B036LP19
4B036LP24
4B046LA06
4B046LB04
4B046LB20
4B046LC01
4B046LC20
4B046LE15
4B046LG02
4B046LG10
4B046LG11
4B046LG14
4B046LG29
4B046LG42
4B046LG60
4B046LP42
4B046LP51
4B046LP56
4B046LP71
4B046LP80
(57)【要約】
【課題】 水分移行を抑制して麺の形状や食感を維持することができる麺用水分移行抑制剤を提供する。
【解決手段】 食用油脂とポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルとを含む油脂組成物を有効成分とする、麺用水分移行抑制剤である。また、麺の水分移行を抑制する方法であって、食用油脂とポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルとを含む油脂組成物を前記麺に付着させる工程と、ソースおよびスープから選ばれる1種を、油脂組成物を付着させた麺に接触させる工程と、を含む前記方法である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用油脂とポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルとを含む油脂組成物を有効成分とする、麺用水分移行抑制剤。
【請求項2】
前記ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルが、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル及びポリグリセリンオレイン酸エステルから選ばれる1種または2種である、請求項1に記載の麺用水分移行抑制剤。
【請求項3】
前記ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルのポリグリセリンの平均重合度が2以上8以下である、請求項1または2に記載の麺用水分移行抑制剤。
【請求項4】
前記油脂組成物中の前記ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルの含有量が0.05質量%以上5質量%以下である、請求項1または2に記載の麺用水分移行抑制剤。
【請求項5】
前記油脂組成物が、さらにプロピレングリコール脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルから選ばれる1種または2種を含む、請求項1または2に記載の麺用水分移行抑制剤。
【請求項6】
前記麺がソースおよびスープから選ばれる1種とともに用いられる、請求項1または2に記載の麺用水分移行抑制剤。
【請求項7】
食用油脂とポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルとを混合する工程を含む、麺用水分移行抑制剤の製造方法。
【請求項8】
麺の水分移行を抑制する方法であって、
食用油脂とポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルとを含む油脂組成物を前記麺に付着させる工程と、
ソースおよびスープから選ばれる1種を、油脂組成物を付着させた麺に接触させる工程と、を含む前記方法。
【請求項9】
前記水分移行が、ソースおよびスープから選ばれる1種から麺への水分移行である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
油脂組成物を付着させる麺が茹で麺である、請求項8または9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麺用水分移行抑制剤、麺用水分移行抑制剤の製造方法、および麺の水分移行を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
そば、うどん、中華麺、パスタなどの麺類は、消費者の利便性を考慮して予めスープやソースとともに流通しているものも多い。しかし、それらの麺類は、スープやソースが水系のため、麺類が予め、それらに浸され、あるいは、かけられている場合、それらに含有する水分が保存中に麺類に移行し、麺類の食感を損なう問題があった。さらに、麺類が膨潤し、外観を損なうことがあった。
【0003】
ソースから麺への水分抑制をするための技術として、ブリックス度の異なる冷凍ソース層を、ブリックス度が一番高い冷凍ソース層を表層として、複数層重層して構成し、この構成された冷凍ソースのブリックス度の一番高い冷凍ソース層面と、冷凍麺塊面とを合わせて包装することを特徴とする、包装冷凍麺類が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-176803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では冷凍麺類に限定されており、冷凍以外で流通する麺類には適用できなかった。また、適用するソースを構成することが煩雑で合った。
【0006】
このように、従来の技術では、使用できる用途が限定的であるという場合があるという課題があった。そこで、本発明では、簡便で流通形態に依らない麺用水分抑制剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定のポリグリセリン脂肪酸エステルを含む油脂組成物が麺類の水分移行抑制に優れることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
食用油脂とポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルとを含む油脂組成物を有効成分とする、麺用水分移行抑制剤。
[2]
前記ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルが、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル及びポリグリセリンオレイン酸エステルから選ばれる1種または2種である、[1]に記載の麺用水分移行抑制剤。
[3]
前記ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルのポリグリセリンの平均重合度が2以上8以下である、[1]または[2]に記載の麺用水分移行抑制剤。
[4]
前記油脂組成物中の前記ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルの含有量が0.05質量%以上5質量%以下である、[1]乃至[3]いずれか一項に記載の麺用水分移行抑制剤。
[5]
前記油脂組成物が、さらにプロピレングリコール脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルから選ばれる1種または2種を含む、[1]乃至[4]いずれか一項に記載の麺用水分移行抑制剤。
[6]
前記麺がソースおよびスープから選ばれる1種とともに用いられる、[1]乃至[5]いずれか一項に記載の麺用水分移行抑制剤。
[7]
食用油脂とポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルとを混合する工程を含む、麺用水分移行抑制剤の製造方法。
[8]
麺の水分移行を抑制する方法であって、
食用油脂とポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルとを含む油脂組成物を前記麺に付着させる工程と、
ソースおよびスープから選ばれる1種を、油脂組成物を付着させた麺に接触させる工程と、を含む前記方法。
[9]
前記水分移行が、ソースおよびスープから選ばれる1種から麺への水分移行である、[8]に記載の方法。
[10]
油脂組成物を付着させる麺が茹で麺である、[8]または[9]に記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の麺用水分移行抑制剤を用いると麺の水分移行を抑制することができる。より具体的には、本発明の麺用水分移行抑制剤を付着させた麺への水分移行を抑制することにより、麺の形状や食感を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の麺用水分移行抑制剤、麺用水分移行抑制剤の製造方法、および麺の水分移行を抑制する方法の具体的な実施の形態を以下に説明する。
なお、本明細書において数値範囲の上限値及び下限値を示したときは、上限値及び下限値を適宜組み合わせることができ、それにより得られた数値範囲も開示しているものとする。
【0010】
本発明の麺用水分移行抑制剤は、主に麺の表面に付着して用いられることで麺の水分移行を抑制できるものである。より具体的には水系のスープやソース等から麺への水分移行を抑制することができる。麺への水分移行が抑制されることにより、麺が太くなることが抑制され、さらに麺が柔らかくなることが抑制される。
【0011】
本発明の麺用水分移行抑制剤は、食用油脂と、ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルを含有する油脂組成物を有効成分とする。ここで、ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルとは、ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルの構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸含量が80質量%超であるものを意味しており、好ましくは90質量%以上であるものを意味する。
【0012】
前記ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルが、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル及びポリグリセリンオレイン酸エステルから選ばれる1種または2種であることが好ましく、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルであることがより好ましい。
【0013】
前記ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルのポリグリセリンの平均重合度が2以上8以下であることが好ましく、2以上6以下であることがより好ましく、3以上6以下がさらに好ましく、3以上4以下がさらにより好ましい。
【0014】
前記油脂組成物中の前記ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルの含有量が0.05質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上4質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上3質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以上2質量%以下であることがさらにより好ましい。
【0015】
前記油脂組成物が、さらにプロピレングリコール脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルから選ばれる1種または2種を含むことが好ましい。
【0016】
前記プロピレングリコール脂肪酸エステルは、プロピレングリコール不飽和脂肪酸エステルであることが好ましく、プロピレングリコールオレイン酸エステルであることがより好ましい。
【0017】
前記ショ糖脂肪酸エステルの構成脂肪酸は、不飽和脂肪酸であることが好ましく、オレイン酸及びエルカ酸から選ばれる1種または2種であることがより好ましい。
【0018】
前記ショ糖脂肪酸エステルのHLBは、1以上3以下であることが好ましく、1以上2以下であることがより好ましい。
【0019】
前記油脂組成物中の、前記プロピレングリコール脂肪酸エステル及び前記ショ糖脂肪酸エステルから選ばれる1種または2種との含有量は、0.05質量%以上2質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上1質量%以下であることが好ましい。
【0020】
前記油脂組成物中の前記ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルと、前記プロピレングリコール脂肪酸エステル及び前記ショ糖脂肪酸エステルから選ばれる1種または2種との合計含有量は、0.1質量%以上7質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上4質量%以下であることがより好ましく、0.6質量%以上3質量%以下であることがさらに好ましい。麺への水分移行による硬さ低下を抑制する観点から、前記油脂組成物中の前記ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルと前記プロピレングリコール脂肪酸エステル及び前記ショ糖脂肪酸エステルから選ばれる1種または2種との合計含有量は、1質量%以上2.7質量%以下が好ましく、1.5質量%以上2.5質量%以下がより好ましく、2質量%以上2.5質量%以下がさらに好ましい。
【0021】
前記油脂組成物が含有する食用油脂は、食用として用いられている油脂であれば特に限定されない。前記食用油脂に用いられる原料油脂としては、たとえば、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、アマニ油、エゴマ油等の植物油脂、魚油、豚脂、牛脂、乳脂等の動物油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド、及びこれらに、エステル交換、水素添加、分別からなる群から選ばれる1または2以上の加工がなされた加工油脂等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。前記植物油脂には、高オレイン酸菜種油、高オレイン酸大豆油、高オレイン酸ヒマワリ油、高オレイン酸サフラワー油等のオレイン酸含量を高めるように品種改良された油糧由来の油脂を含む。
これら原料油脂のうち、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、パーム油およびパーム油の加工油脂からなる群から選択される1種または2種以上を含むことが好ましく、大豆油、菜種油、コーン油およびパームオレインからなる群から選択される1種または2種以上を含むことがより好ましく、大豆油、菜種油、コーン油およびパームオレインからなる群から選択される1種または2種以上であることがさらに好ましく、大豆油および菜種油からなる群から選択される1種または2種であることがさらにより好ましい。
【0022】
前記油脂組成物中の前記食用油脂の含有量は、93質量%以上99.9質量%以下であることが好ましく、96質量%以上99.5質量%以下であることが好ましく、97質量%以上99質量%以下であることが好ましく、97.5質量%以上98質量%以下であることが好ましい。
【0023】
本発明の麺用水分移行抑制剤中の前記油脂組成物の含有量に特に制限はないが、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上である。上限は100質量%以下である。
【0024】
本発明の麺用水分移行抑制剤は、上記成分以外にも麺用油脂組成物として一般的に配合される原材料を使用することができる。具体的には、例えば、pH調整剤、調味剤、着色料、香料、酸化防止剤、糖類、糖アルコール類、安定剤、前記ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステル、前記プロピレングリコール脂肪酸エステル及び前記ショ糖脂肪酸エステル以外の乳化剤等を使用することができる。これらの成分の量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができるが、例えば、麺用水分移行抑制剤中に10質量%以下含有させることができ、好ましくは0質量%以上3質量%以下、より好ましくは0質量%以上1質量%以下含有させることができる。
【0025】
前記麺は水分移行が抑制されるため、ソースおよびスープから選ばれる1種等とともに用いられる場合に好適である。
【0026】
本発明の麺用水分移行抑制剤の製造方法は、食用油脂とポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルとを混合する工程を含む。プロピレングリコール脂肪酸エステルをさらに混合する工程を含むことが好ましい。前記混合する工程は、周知の方法を採用することができる。前記混合する工程において、各成分の混合する量は、上述した各成分の含有量に合わせてもよい。
【0027】
本発明の麺の水分移行を抑制する方法は、食用油脂とポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルとを含む油脂組成物を前記麺に付着させる工程と、ソースおよびスープから選ばれる1種を、油脂組成物を付着させた麺に接触させる工程と、を含む。
【0028】
麺に付着させる前記工程において、麺に付着させる方法は特に限定するものではないが、噴霧、塗布、浸漬、和える等から適宜採用することができる。前記油脂組成物を付着させる麺としては、例えば、乾麺、生麺、フライ麺、熱風乾燥即席麺、凍結乾燥即席麺などを茹でた茹で麺であることが好ましい。また、スパゲティやマカロニ等のパスタ、中華麺、うどん、きしめん、素麺、冷や麦、そば、フォー、韓国冷麺、春雨、ワンタンであることが好ましく、パスタであることがより好ましい。
【0029】
麺が茹で麺である場合、前記油脂組成物の付着量は茹で麺100質量部に対して、0.5質量部以上5 質量部以下であることが好ましく、1質量部以上4質量部以下であることがより好ましく、1.5質量部以上3質量部以下であることがさらに好ましい。
【0030】
油脂組成物を付着させた麺に接触させる前記工程において、接触させるソースおよびスープは、水分を含むものであれば特に制限はない。前記ソースとしては、ミートソース、カルボナーラソースなどのパスタ用のソース、ケチャップ、ウスターソース、ホワイトソース、みそ、醤油、醤油ベースの和風たれなどのたれ類、甘酢あん、中華あんなどのあんかけ、ドレッシング等が挙げられる。前記スープとしては、ラーメンやスープパスタなどのスープ、麺つゆ等が挙げられ、ゼラチン、寒天等を用いてゲル状に成型したものも包含する。
【0031】
ソースおよびスープから選ばれる1種を、油脂組成物を付着させた麺に接触させる方法に特に制限はなく、麺に和える、麺にかける、麺に漬ける等から適宜採用することができる。
【0032】
麺に接触させる前記工程後に、それぞれの麺料理に合わせて、適宜必要な調理工程をおこなってもよい。そのような調理工程としては、煮込み工程、炒め工程等が挙げられる。
【実施例0033】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。
【0034】
(1)原料
水分移行抑制剤の調製に際し、以下のものを使用した。
【0035】
(1-1)原料油脂
大豆油:AJINOMOTO大豆のサラダオイル、株式会社J-オイルミルズ製
菜種油:AJINOMOTOさらさらキャノーラ油、株式会社J-オイルミルズ製
米油:AJINOMOTOこめ油、株式会社J-オイルミルズ製
【0036】
(1-2)ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステル
表1に記載のものを使用した。
【0037】
【表1】
【0038】
(1-3)プロピレングリコール脂肪酸エステル
PO-100V:プロピレングリコールオレイン酸エステル、理研ビタミン株式会社製
【0039】
(1-4)ショ糖脂肪酸エステル
O-170:リョートーシュガーエステルO-170(構成脂肪酸:オレイン酸、HLB:1)、三菱ケミカル株式会社製
ER-290:リョートーシュガーエステルER-290(構成脂肪酸:エルカ酸、HLB:2)、三菱ケミカル株式会社製
【0040】
(2)水分移行抑制剤の調製1
表2~表4の記載の配合にて、実施例の水分移行抑制剤は、60℃に加熱した原料油脂に、ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルを加え、実施例2-1~2-6についてはさらにプロピレングリコール脂肪酸エステルを加え、混合することにより調製した。
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
(3)ミートソーススパゲティの調製と評価1
下記の手順でミートソーススパゲティを調製した。
1)ボウルに各水分移行抑制剤4g(茹で上がりスパゲティ100質量部に対して2質量部)を測りとった。
2)7L鍋を用意し、沸騰水が5kgになるように調製し、茹で始める直前に塩50gを沸騰水に添加した。
3)スパゲティ(マ・マー スパゲティ1.8mm、株式会社日清製粉ウェルナ製)500gを2)の7L鍋入れ、11分茹でた。
4)茹でたスパゲティをざるに移してから、1分間流水で粗熱をとり、水を切って3分ほど静置した。静置後の茹でたスパゲティの、後述する(3-1)及び(3-2)の測定方法にて測定した硬さは133.509g、太さは2.2309mmであった。
5)1)のボウルに4)の茹でたスパゲティを200g入れ、30秒間水分移行抑制剤をスパゲティに和えた。
6)5)の和えたスパゲティに25℃のミートソース(あえるパスタソース ミートソース フォン・ド・ヴォー仕立て、キユーピー株式会社製)を80gかけた。
【0045】
調製したミートソーススパゲティはラップをかけた後、25℃で2日間保存した。保存後のミートソーススパゲティから、ミートソースがかかっているスパゲティを抜き出し、ミートソースを紙タオルでふき取った後、テクスチャーアナライザー(TA.XT.plus、Stable Micro Systems社製)を用い、下記の条件にてスパゲティの硬さと太さを測定した。各測定値の、(3)の4)で測定した値に対する割合である硬さ変化の割合および太さ変化の割合を表2~4に示した。
【0046】
[スパゲティの硬さと太さの測定条件]
テクスチャーアナライザーの設定:
プローブ A/LKB-F
Test Mode Compression
Target Mode Strain
Strain 0.99
Triger Type Auto(Force)
Triger Force 5g
Test Speed 0.5mm/sec
プローブと台が接する高さを0mmと設定した。一旦プローブを上昇させ、プローブのナイフに対して垂直方向になるようにスパゲティを1本、台の上に載せてから測定を開始した。Triggerが起動した時点の高さをスパゲティの太さ、Test Mode中の最大応力をスパゲティの硬さとした。
【0047】
表2~4に示したように、対照例1を使用したスパゲティと比較して、ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルを含む水分移行抑制剤を使用したスパゲティの方が、ミートソースをかけてから2日後のスパゲティの硬さが維持され、スパゲティの太さの増加が抑えられていた(実施例1-1~1-9、2-1~2-6、3-1~3-2)。このことからポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルを含む水分移行抑制剤をスパゲティに和えることでミートソース中の水分がスパゲティへ移行することを抑制できることが明らかとなった。
【0048】
ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルとしてポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを使用した場合(実施例1-1~1-3)では、818JCを使用するとスパゲティの硬さの維持と太さの増加抑制に特に効果があり、水分移行抑制効果が高いと言える(実施例1-3)。使用する原料油脂を大豆油から菜種油や米油に変更しても同じように効果があることが確認できた(実施例3-1~3-2)。また、水分移行抑制剤中の818JCは配合量を増やす(実施例1-7)と、さらに効果が高まることがわかった。818JCをポリグリセリンオレイン酸エステルと併用して使用する(実施例1-8~1-9)と水分移行による硬さの低下抑制に対して効果が高いことがわかった。
【0049】
ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルとしてポリグリセリンオレイン酸エステルを使用した場合(実施例1-4~1-5)では、PO-3Sを使用するとスパゲティの硬さの維持と太さの増加抑制に対して特に有効であり、水分移行抑制効果が高いと言える(実施例1-5)。
【0050】
818JCとPO-100Vとを使用した場合、水分移行抑制剤中の818JCとPO-100Vとの合計含有量が2質量%以上であると、スパゲティの硬さの維持と太さの増加抑制に顕著な効果があり、水分移行抑制効果が特に高いと言える(実施例2-3、実施例2-5)。
【0051】
DO-100VとPO-100Vとを使用(実施例2-6)すると、DO-100Vだけを使用(実施例1-4)した場合と比較して、スパゲティの硬さの維持と太さの増加抑制効果が高く、水分移行抑制効果が高まることがわかった。
【0052】
(4)水分移行抑制剤の調製2
表5の記載の配合にて、実施例の水分移行抑制剤は、60℃に加熱した原料油脂に、ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルを加え、実施例4-2~4-5についてはさらにショ糖脂肪酸エステルを加え、混合することにより調製した。
【0053】
【表5】
【0054】
(5)ミートソーススパゲティの調製と評価2
前述した「(3)ミートソーススパゲティの調製と評価1」と同じ方法により、ミートソーススパゲティの調製及び評価を行った。ただし、静置後の茹でたスパゲティの硬さは128.474g、太さは2.575mmであった。硬さ変化の割合および太さ変化の割合を表5に示した。
【0055】
表5に示したように、対照例2を使用したスパゲティと比較して、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含む水分移行抑制剤を使用したスパゲティの方が、ミートソースをかけてから2日後のスパゲティの硬さが維持され、スパゲティの太さの増加が抑えられていた(実施例4-1~4-5)。なかでも、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルに加え、ショ糖脂肪酸エステルを0.5質量%~1質量%含む水分移行抑制剤を使用すると、スパゲティの硬さの維持と太さの増加抑制に顕著な効果があり、水分移行抑制効果が特に高いことがわかった(実施例4-2~4-5)。
【0056】
この出願は、令和4年8月15日に出願された特願2022-129143号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。