(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026152
(43)【公開日】2024-02-28
(54)【発明の名称】光吸収異方性層、積層体、光学フィルム、画像表示装置、バックライトモジュール
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240220BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20240220BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20240220BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240220BHJP
H10K 77/10 20230101ALI20240220BHJP
H10K 50/85 20230101ALI20240220BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240220BHJP
F21V 5/00 20180101ALI20240220BHJP
F21V 5/08 20060101ALI20240220BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240220BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240220BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20240220BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20240220BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20240220BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240220BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B1/04
H10K50/86
H10K59/10
H10K77/10
H10K50/85
F21S2/00 431
F21V5/00 530
F21V5/00 600
F21V5/08
G09F9/30 308A
G09F9/00 324
G09F9/00 336J
G09F9/00 336G
G02F1/1335
G02F1/13 505
G02F1/13357
F21Y115:10
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023198385
(22)【出願日】2023-11-22
(62)【分割の表示】P 2021567239の分割
【原出願日】2020-12-11
(31)【優先権主張番号】P 2019236916
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020023354
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020182666
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】三戸部 史岳
(72)【発明者】
【氏名】西村 直弥
(72)【発明者】
【氏名】加藤 隆志
(72)【発明者】
【氏名】柴田 直也
(57)【要約】
【課題】 本発明は、二色性物質を含有し、正面から見た場合の透過率が高く、且つ、斜め方向の透過率を低くすることができる光吸収異方性層、積層体、光学フィルム、画像表示装置、および、バックライトモジュールを提供することを課題とする。
【解決手段】 液晶性化合物と、少なくとも1種類の二色性物質とを含み、二色性物質が膜面に対し垂直に配向している光吸収異方性層であって、光吸収異方性層の波長550nmにおける配向度が0.95以上である、光吸収異方性層。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光吸収異方性層と、前記光吸収異方性層に隣接して配置される配向膜(ただし、光配向膜を含まない)と、を含む光学フィルムであって、
前記光吸収異方性層が、液晶性化合物と、少なくとも1種類の二色性物質とを含み、
前記二色性物質が主面に対し垂直に配向しており、
前記光吸収異方性層の波長550nmにおける配向度が0.95以上であり、
前記二色性物質が、波長560~700nmの範囲に極大吸収波長を有する少なくとも1種の色素化合物を含み、
前記色素化合物が、式(1)で表される化合物である、光学フィルム。
【化1】
式(1)中、Ar1およびAr2はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基、または、置換基を有していてもよいナフチレン基を表す。
式(1)中、R1は、水素原子、炭素数1~20の置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルキルカーボネート基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アルキルウレイド基、アルキルリン酸アミド基、アルキルイミノ基、または、アルキルシリル基を表す。
前記アルキル基を構成する-CH
2-は、-O-、-CO-、-C(O)-O-、-O-C(O)-、-Si(CH
3)
2-O-Si(CH
3)
2-、-N(R1’)-、-N(R1’)-CO-、-CO-N(R1’)-、-N(R1’)-C(O)-O-、-O-C(O)-N(R1’)-、-N(R1’)-C(O)-N(R1’)-、-CH=CH-、-C≡C-、-N=N-、-C(R1’)=CH-C(O)-、または、-O-C(O)-O-によって置換されていてもよい。
R1が水素原子以外の基である場合、各基が有する水素原子は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-N(R1’)
2、アミノ基、-C(R1’)=C(R1’)-NO
2、-C(R1’)=C(R1’)-CN、または、-C(R1’)=C(CN)
2、によって置換されていてもよい。
R1’は、水素原子または炭素数1~6の直鎖もしくは分岐状のアルキル基を表す。各基において、R1’が複数存在する場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。
式(1)中、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミド基、アルキルスルホニル基、アリール基、アリールカルボニル基、アリールスルホニル基、アリールオキシカルボニル基、または、アリールアミド基を表す。
前記アルキル基を構成する-CH
2-は、-O-、-S-、-C(O)-、-C(O)-O-、-O-C(O)-、-C(O)-S-、-S-C(O)-、-Si(CH
3)
2-O-Si(CH
3)
2-、-NR2’-、-NR2’-CO-、-CO-NR2’-、-NR2’-C(O)-O-、-O-C(O)-NR2’-、-NR2’-C(O)-NR2’-、-CH=CH-、-C≡C-、-N=N-、-C(R2’)=CH-C(O)-、または、-O-C(O)-O-、によって置換されていてもよい。
R2およびR3が水素原子以外の基である場合、各基が有する水素原子は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OH基、-N(R2’)
2、アミノ基、-C(R2’)=C(R2’)-NO
2、-C(R2’)=C(R2’)-CN、または、-C(R2’)=C(CN)
2によって置換されていてもよい。
R2’は、水素原子または炭素数1~6の直鎖もしくは分岐状のアルキル基を表す。各基において、R2’が複数存在する場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。
R2およびR3は、互いに結合して環を形成してもよいし、R2またはR3は、Ar2と結合して環を形成してもよい。
【請求項2】
前記光吸収異方性層の波長420nmにおける配向度が0.93以上である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光学フィルムを有する、画像表示装置。
【請求項4】
表示部分に曲面部を有する、請求項3に記載の画像表示装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の光学フィルムを有する、視野角を切り替えることが可能な画像表示装置。
【請求項6】
視認側から、第一導光板、光フィルター素子、および、第二導光板を有し、
前記光フィルター素子が、請求項1または2に記載の光学フィルムである、
視野角を切り替えることが可能なバックライトモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光吸収異方性層、積層体、光学フィルム、画像表示装置、および、バックライトモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の覗き込み防止や視角制御のため、厚さ方向に吸収軸を持つ異方性光吸収層を使用する技術が知られている。例えば、特許文献1および2では二色性物質を含み、吸収軸とフィルム面の法線とのなす角が0~45°であるフィルムを用いた視角制御システムに関する偏光素子が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-145776号公報
【特許文献2】国際公開第2018/079854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、省エネや有機EL(エレクトロルミネッセンス)の寿命などの問題があり、膜面に対して正面方向の透過率が高いフィルムの要求が高くなってきている。
【0005】
本発明は、二色性物質を含み、正面方向から見た場合の透過率が高く、且つ、斜め方向から見た場合の透過率が低い、光吸収異方性層を提供することを課題とする。
また、本発明は、積層体、光学フィルム、画像表示装置、および、バックライトモジュールを提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、二色性物質が膜面に対し垂直に配向している光吸収異方性層の波長550nmにおける配向度を0.95以上にすることで、正面の透過率が高く、且つ、斜め方向の透過率を低くできることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
(1) 液晶性化合物と、少なくとも1種類の二色性物質とを含み、
二色性物質が膜面に対し垂直に配向している光吸収異方性層であって、
光吸収異方性層の波長550nmにおける配向度が0.95以上である、光吸収異方性層。
(2) 光吸収異方性層の波長420nmにおける配向度が0.93以上である、(1)に記載の光吸収異方性層。
(3) 液晶性化合物および少なくとも1種の二色性物質を含む領域Aと、領域Aよりも極角30°から見た斜め透過率が高い領域Bとを有する光吸収異方性層であって、
二色性物質が膜面に対し垂直に配向しており、
領域Aの波長550nmにおける配向度が0.95以上である、光吸収異方性層。
(4) 領域Aの極角30°から見た斜め透過率が10%以下であり、領域Bの極角30°から見た斜め透過率が80%以上である、(3)に記載の光吸収異方性層。
(5) (1)~(4)のいずれかに記載の光吸収異方性層と、二色性物質が膜面に対し水平に配向している偏光子層とが積層されている積層体。
(6) (1)~(4)のいずれかに記載の光吸収異方性層と、液晶性化合物および二色性物質が膜面に対し水平に配向している偏光子層とが積層されている積層体。
(7) (1)~(4)のいずれかに記載の光吸収異方性層、または、(5)もしくは(6)に記載の積層体を有する光学フィルム。
(8) (1)~(4)のいずれかに記載の光吸収異方性層、(5)もしくは(6)に記載の積層体、または、(7)に記載の光学フィルムを有する、画像表示装置。
(9) 表示部分に曲面部を有する、(8)に記載の画像表示装置。
(10) (3)または(4)に記載の光吸収異方性層を有する、視野角を切り替えることが可能な画像表示装置。
(11) (1)または(2)に記載の光吸収異方性層を有する、視野角を切り替えることが可能な画像表示装置。
(12) 視認側から、第一導光板、光フィルター素子、および、第二導光板を有し、
光フィルター素子が、(1)または(2)に記載の光吸収異方性層である、
視野角を切り替えることが可能なバックライトモジュール。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、二色性物質を含み、正面方向から見た場合の透過率が高く、且つ、斜め方向から見た場合の透過率が低い、光吸収異方性層を提供できる。
また、本発明によれば、積層体、光学フィルム、画像表示装置、および、バックライトモジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例のバックライトモジュールの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、平行および直交とは厳密な意味での平行および直交を意味するのではなく、平行または直交から±5°の範囲を意味する。
また、本明細書において、光吸収異方性層の法線方向に対する傾き角度(極角)と傾き方向(方位角)を変化させて透過率を測定した際に最も透過率の高い方向を透過率中心軸とし、透過率中心軸と光吸収異方性層の膜面(光吸収異方性層の主面)との角度がほぼ垂直であるとき、二色性物質が垂直に配向していると定義する。透過率中心軸と膜面との角度が垂直である配向とは、70~90°の範囲内となる配向を意味し、80~90°の範囲内となる配向が好ましく、85~90°の範囲内となる配向がより好ましい。
【0012】
また、本明細書において、液晶性組成物、液晶性化合物とは、硬化などにより、もはや液晶性を示さなくなったものも概念として含まれる。
【0013】
また、本明細書において、各成分は、各成分に該当する物質を1種単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上の物質を併用する場合、その成分についての含有量とは、特段の断りが無い限り、併用した物質の合計の含有量を指す。
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を表す表記であり、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を表す表記であり、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」または「メタクリロイル」を表す表記である。
【0014】
<光吸収異方性層の第1実施態様>
本発明の光吸収異方性層の第1実施態様は、液晶性化合物と、少なくとも1種類の二色性物質とを含み、二色性物質が膜面(光吸収異方性層の主面)に対し垂直に配向している光吸収異方性層であって、光吸収異方性層の波長550nmにおける配向度が0.95以上を満たす。
なお、上記光吸収異方性層の波長550nmにおける配向度は、光吸収異方性層を正面方向から見た場合の透過率がより高く、且つ、斜め方向から見た場合の透過率をより低くできる点(以下、単に「本発明の効果がより優れる点」ともいう。)で、0.96以上が好ましい。上限は特に制限されないが、1.00が挙げられる。
【0015】
上記波長550nmにおける配向度は以下の方法によって算出される。
AxoScan OPMF-1(オプトサイエンス社製)を用いて、波長550nmにおける光吸収異方性層の透過率を測定する。測定の際には、光吸収異方性層の法線方向に対する角度である極角を0~60°まで5°毎に変更しつつ、各極角における全方位角度での波長550nmにおける透過率を測定する。次に、表面反射の影響を除去した後、最も透過率の高い方位角および極角での透過率をTm(0)、最も透過率の高い方位角方向において、最も透過率の高い極角からさらに極角を40°傾けた角度での透過率をTm(40)とする。得られたTm(0)およびTm(40)から下記式により吸光度を算出し、A(0)およびA(40)を算出する。
A=-log(Tm)
ここで、Tmは透過率、Aは吸光度を表す。
算出したA(0)およびA(40)より、下記式で定義された配向度Sを算出する。
S=(4.6×A(40)-A(0))/(4.6×A(40)+2×A(0))
【0016】
本発明の光吸収異方性層の第1実施態様は、正面の透過率が高く、斜め方向の透過率を低くすることができる。これは以下の理由によると推定される。
斜め方向の透過率を低くするためには、光吸収異方性層の厚みを増やすことで実現できるが同時に正面の透過率が下がってしまう。波長550nmにおける光吸収異方性層の配向度を0.95以上にすることで、二色性物質の吸収軸が垂直方向からずれたものの存在頻度が下がると考えられる。それにより光吸収異方性層を正面方向から見た時の二色性物質による吸収を抑制できた結果、正面方向の透過率を高くできたと推定される。
【0017】
また、正面方向の色味をニュートラルにできる点で、光吸収異方性層の波長420nmにおける配向度が0.93以上を満たすことが好ましい。なかでも、正面方向の色味をよりニュートラルにできる点で、波長420nmにおける配向度は0.94以上が好ましい。上限は特に制限されないが、1.00が好ましい。
二色性物質を含む光吸収異方性層の色味制御については、通常、光吸収異方性層に含まれる二色性物質の添加量を調整することで行う。しかし、正面方向と斜め方向との色味を共にニュートラルの状態にすることは、二色性物質の添加量調整だけではできないことが分かった。正面方向と斜め方向との色味をニュートラルの状態にできない原因が、波長420nmの配向度が低いことであることが分かり、波長420nmにおける配向度を高配向度にすることで、正面方向と斜め方向との色味をニュートラルにできる。
【0018】
上記波長420nmにおける配向度の算出方法は、上述した波長550nmにおける配向度の算出方法における測定波長を550nmから420nmに変更した方法が挙げられる。
【0019】
[液晶性化合物]
光吸収異方性層は、液晶性化合物を含む。液晶性化合物を含むことで、二色性物質の析出を抑止しながら、二色性物質を高い配向度で配向させることができる。
液晶性化合物は、二色性を示さない液晶性化合物である。
液晶性化合物としては、低分子液晶性化合物および高分子液晶性化合物のいずれを用いることも可能であり、両方を併用することも好ましい。ここで、「低分子液晶性化合物」とは、化学構造中に繰り返し単位を有さない液晶性化合物のことをいう。また、「高分子液晶性化合物」とは、化学構造中に繰り返し単位を有する液晶性化合物のことをいう。
【0020】
低分子液晶性化合物としては、例えば、特開2013-228706号公報に記載されている液晶性化合物が挙げられる。低分子液晶性化合物としては、スメクチック相を示す液晶性化合物も好ましく用いることができる。
【0021】
高分子液晶性化合物としては、例えば、特開2011-237513号公報に記載されているサーモトロピック液晶性高分子が挙げられる。また、高分子液晶性化合物は、光吸収異方性膜の強度(特に、耐屈曲性)が優れるという観点から、末端に架橋性基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。架橋性基としては、例えば、特開2010-244038号公報の[0040]~[0050]段落に記載された重合性基が挙げられる。これらの中でも、反応性および合成適性の向上の観点から、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、オキセタニル基、または、スチリル基が好ましく、アクリロイル基、または、メタクリロイル基がより好ましい。
【0022】
本発明における光吸収異方性層が高分子液晶性化合物を含む場合、高分子液晶性化合物は、ネマチック液晶相を形成するのが好ましい。
ネマチック液晶相を示す温度範囲は、室温(23℃)~450℃が好ましく、取り扱いや製造適性の観点から、50~400℃が好ましい。
【0023】
液晶性化合物の含有量は、光吸収異方性層中の二色性物質の含有量100質量部に対して、25~2000質量部が好ましく、100~1300質量部がより好ましく、200~900質量部がさらに好ましい。液晶性化合物の含有量が上記範囲内にあることで、光吸収異方性層の配向度がより向上する。
液晶性化合物は、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。液晶性化合物が2種以上含まれる場合、上記液晶性化合物の含有量は、液晶性化合物の含有量の合計を意味する。
【0024】
液晶性化合物は、配向度がより優れる観点から、下記式(1L)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(1L)」とも言う)を含む高分子液晶性化合物であることが好ましい。
【0025】
【0026】
上記式(1L)中、P1は繰り返し単位の主鎖を表し、L1は単結合または2価の連結基を表し、SP1はスペーサー基を表し、M1はメソゲン基を表し、T1は末端基を表す。
【0027】
P1が表す繰り返し単位の主鎖としては、具体的には、例えば、下記式(P1-A)~(P1-D)で表される基が挙げられ、なかでも、原料となる単量体の多様性および取り扱いが容易である観点から、下記式(P1-A)で表される基が好ましい。
【0028】
【0029】
式(P1-A)~(P1-D)において、「*」は、式(1L)におけるL1との結合位置を表す。式(P1-A)~(P1-D)において、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基または炭素数1~10のアルコキシ基を表す。上記アルキル基は、直鎖または分岐のアルキル基であってもよいし、環状構造を有するアルキル基(シクロアルキル基)であってもよい。また、上記アルキル基の炭素数は、1~5が好ましい。
式(P1-A)で表される基は、(メタ)アクリル酸エステルの重合によって得られるポリ(メタ)アクリル酸エステルの部分構造の一単位であることが好ましい。
式(P1-B)で表される基は、エポキシ基を有する化合物のエポキシ基を開環重合して形成されるエチレングリコール単位であることが好ましい。
式(P1-C)で表される基は、オキセタン基を有する化合物のオキセタン基を開環重合して形成されるプロピレングリコール単位であることが好ましい。
式(P1-D)で表される基は、アルコキシシリル基およびシラノール基の少なくとも一方の基を有する化合物の縮重合によって得られるポリシロキサンのシロキサン単位であることが好ましい。ここで、アルコキシシリル基およびシラノール基の少なくとも一方の基を有する化合物としては、式SiR4(OR5)2-で表される基を有する化合物が挙げられる。式中、R4は、式(P1-D)におけるR4と同義であり、複数のR5はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~10のアルキル基を表す。
【0030】
L1は、単結合または2価の連結基である。
L1が表す2価の連結基としては、-C(O)O-、-OC(O)-、-O-、-S-、-C(O)NR3-、-NR3C(O)-、-SO2-、および、-NR3R4-などが挙げられる。式中、R3およびR4はそれぞれ独立に、水素原子、置換基W(後述)を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。
P1が式(P1-A)で表される基である場合には、配向度がより優れる観点から、L1は-C(O)O-で表される基が好ましい。
P1が式(P1-B)~(P1-D)で表される基である場合には、配向度がより優れる観点から、L1は単結合が好ましい。
【0031】
SP1が表すスペーサー基は、液晶性を発現しやすいことや、原材料の入手性などの観点から、オキシエチレン構造、オキシプロピレン構造、ポリシロキサン構造およびフッ化アルキレン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を含むことが好ましい。
ここで、SP1が表すオキシエチレン構造は、*-(CH2-CH2O)n1-*で表される基が好ましい。式中、n1は1~20の整数を表し、*は、上記式(1L)中のL1またはM1との結合位置を表す。n1は、配向度がより優れる観点から、2~10の整数であることが好ましく、2~4の整数であることがより好ましく、3であることがさらに好ましい。
また、SP1が表すオキシプロピレン構造は、配向度がより優れる観点から、*-(CH(CH3)-CH2O)n2-*で表される基が好ましい。式中、n2は1~3の整数を表し、*はL1またはM1との結合位置を表す。
また、SP1が表すポリシロキサン構造は、配向度がより優れる観点から、*-(Si(CH3)2-O)n3-*で表される基が好ましい。式中、n3は6~10の整数を表し、*はL1またはM1との結合位置を表す。
また、SP1が表すフッ化アルキレン構造は、配向度がより優れる観点から、*-(CF2-CF2)n4-*で表される基が好ましい。式中、n4は6~10の整数を表し、*はL1またはM1との結合位置を表す。
【0032】
M1が表すメソゲン基とは、液晶形成に寄与する液晶分子の主要骨格を示す基である。液晶分子は、結晶状態と等方性液体状態との中間の状態(メソフェーズ)である液晶性を示す。メソゲン基については特に制限はなく、例えば、「Flussige Kristalle in Tabellen II」(VEB Deutsche Verlag fur Grundstoff Industrie,Leipzig、1984年刊)、特に第7頁~第16頁の記載、および、液晶便覧編集委員会編、液晶便覧(丸善、2000年刊)、特に第3章の記載、を参照することができる。
メソゲン基としては、例えば、芳香族炭化水素基、複素環基、および脂環式基からなる群より選択される少なくとも1種の環状構造を有する基が好ましい。
メソゲン基は、配向度がより優れる観点から、芳香族炭化水素基を有するのが好ましく、2~4個の芳香族炭化水素基を有するのがより好ましく、3個の芳香族炭化水素基を有するのがさらに好ましい。
【0033】
メソゲン基としては、液晶性の発現、液晶相転移温度の調整、原料入手性および合成適性という観点、並びに、配向度がより優れる観点から、下記式(M1-A)または下記式(M1-B)で表される基が好ましく、式(M1-B)で表される基がより好ましい。
【0034】
【0035】
式(M1-A)中、A1は、芳香族炭化水素基、複素環基および脂環式基からなる群より選択される2価の基である。これらの基は、アルキル基、フッ化アルキル基、アルコキシ基または置換基Wで置換されていてもよい。
A1で表される2価の基は、4~6員環であることが好ましい。また、A1で表される2価の基は、単環でも、縮環であってもよい。
*は、SP1またはT1との結合位置を表す。
【0036】
A1が表す2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ナフチレン基、フルオレン-ジイル基、アントラセン-ジイル基およびテトラセン-ジイル基などが挙げられ、メソゲン骨格の設計の多様性や原材料の入手性などの観点から、フェニレン基またはナフチレン基が好ましく、フェニレン基がより好ましい。
【0037】
A1が表す2価の複素環基としては、芳香族および非芳香族のいずれであってもよいが、配向度がより向上するという観点から、2価の芳香族複素環基であることが好ましい。
2価の芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子および酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。
2価の芳香族複素環基の具体例としては、例えば、ピリジレン基(ピリジン-ジイル基)、ピリダジン-ジイル基、イミダゾール-ジイル基、チエニレン(チオフェン-ジイル基)、キノリレン基(キノリン-ジイル基)、イソキノリレン基(イソキノリン-ジイル基)、オキサゾール-ジイル基、チアゾール-ジイル基、オキサジアゾール-ジイル基、ベンゾチアゾール-ジイル基、ベンゾチアジアゾール-ジイル基、フタルイミド-ジイル基、チエノチアゾール-ジイル基、チアゾロチアゾール-ジイル基、チエノチオフェン-ジイル基、および、チエノオキサゾール-ジイル基などが挙げられる。
【0038】
A1が表す2価の脂環式基の具体例としては、シクロペンチレン基およびシクロへキシレン基などが挙げられる。
【0039】
式(M1-A)中、a1は1~10の整数を表す。a1が2以上である場合には、複数のA1は同一でも異なっていてもよい。
【0040】
式(M1-B)中、A2およびA3はそれぞれ独立に、芳香族炭化水素基、複素環基および脂環式基からなる群より選択される2価の基である。A2およびA3の具体例および好適態様は、式(M1-A)のA1と同様であるので、その説明を省略する。
式(M1-B)中、a2は1~10の整数を表し、a2が2以上である場合には、複数のA2は同一でも異なっていてもよく、複数のA3は同一でも異なっていてもよく、複数のLA1は同一でも異なっていてもよい。a2は、配向度がより優れる観点から、2以上の整数であることが好ましく、2であることがより好ましい。
式(M1-B)中、a2が1である場合には、LA1は2価の連結基である。a2が2以上である場合には、複数のLA1はそれぞれ独立に、単結合または2価の連結基であり、複数のLA1のうち少なくとも1つが2価の連結基である。a2が2である場合、配向度がより優れる観点から、2つのLA1のうち、一方が2価の連結基であり、他方が単結合であることが好ましい。
【0041】
式(M1-B)中、LA1が表す2価の連結基としては、-O-、-(CH2)g-、-(CF2)g-、-Si(CH3)2-、-(Si(CH3)2O)g-、-(OSi(CH3)2)g-(gは1~10の整数を表す。)、-N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-、-N=C(Z)-、-C(Z)2-C(Z’)2-、-C(O)-、-OC(O)-、-C(O)O-、-O-C(O)O-、-N(Z)C(O)-、-C(O)N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)O-、-O-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-、-N=C(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)N(Z”)-、-N(Z”)-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)-S-、-S-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-N=C(Z’)-(Z、Z’、Z”はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、シアノ基、または、ハロゲン原子を表す。)、-C≡C-、-N=N-、-S-、-S(O)-、-S(O)(O)-、-(O)S(O)O-、-O(O)S(O)O-、-SC(O)-、および、-C(O)S-などが挙げられる。なかでも、配向度がより優れる観点から、-C(O)O-が好ましい。LA1は、これらの基を2つ以上組み合わせた基であってもよい。
【0042】
M1の具体例としては、例えば以下の構造が挙げられる。なお、下記具体例において、「Ac」は、アセチル基を表す。
【0043】
【0044】
【0045】
T1が表す末端基としては、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基(ROC(O)-:Rはアルキル基)、炭素数1~10のアシルオキシ基、炭素数1~10のアシルアミノ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニルアミノ基、炭素数1~10のスルホニルアミノ基、炭素数1~10のスルファモイル基、炭素数1~10のカルバモイル基、炭素数1~10のスルフィニル基、炭素数1~10のウレイド基、および、(メタ)アクリロイルオキシ基含有基などが挙げられる。上記(メタ)アクリロイルオキシ基含有基としては、例えば、-L-A(Lは単結合または連結基を表す。連結基の具体例は上述したL1およびSP1と同じである。Aは(メタ)アクリロイルオキシ基を表す)で表される基が挙げられる。
T1は、配向度がより優れる観点から、炭素数1~10のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~5のアルコキシがより好ましく、メトキシ基がさらに好ましい。これらの末端基は、これらの基、または、上述の架橋性基によって、さらに置換されていてもよい。
T1の主鎖の原子数は、配向度がより優れる観点から、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~10がさらに好ましく、1~7が特に好ましい。T1の主鎖の原子数が20以下であることで、光吸収異方性層の配向度がより向上する。ここで、T1における「主鎖」とは、M1と結合する最も長い分子鎖を意味し、水素原子はT1の主鎖の原子数にカウントしない。例えば、T1がn-ブチル基である場合には主鎖の原子数は4であり、T1がsec-ブチル基である場合の主鎖の原子数は3である。
【0046】
繰り返し単位(1L)の含有量は、配向度がより優れる観点から、高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位100質量%に対して、20~100質量%が好ましい。
本発明において、高分子液晶性化合物に含まれる各繰り返し単位の含有量は、各繰り返し単位を得るために使用される各単量体の仕込み量(質量)に基づいて算出される。
繰り返し単位(1L)は、高分子液晶性化合物中において、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。なかでも、配向度がより優れる観点から、繰り返し単位(1L)が高分子液晶性化合物中に2種含まれているのがよい。
【0047】
高分子液晶性化合物が繰り返し単位(1L)を2種含む場合、配向度がより優れる観点から、一方(繰り返し単位A)においてT1が表す末端基がアルコキシ基であり、他方(繰り返し単位B)においてT1が表す末端基がアルコキシ基以外の基であることが好ましい。
上記繰り返し単位BにおいてT1が表す末端基は、配向度がより優れる観点から、アルコキシカルボニル基、シアノ基、または、(メタ)アクリロイルオキシ基含有基であることが好ましく、アルコキシカルボニル基、または、シアノ基であることがより好ましい。
高分子液晶性化合物中の上記繰り返し単位Aの含有量と高分子液晶性化合物中の上記繰り返し単位Bの含有量との割合(A/B)は、配向度がより優れる観点から、50/50~95/5であることが好ましく、60/40~93/7であることがより好ましく、70/30~90/10であることがさらに好ましい。
【0048】
また、高分子液晶性化合物は、繰り返し単位(1L)とももに、メソゲン基を有しない繰り返し単位を有していてもよい。メソゲン基を有しない繰り返し単位としては、式(1L)におけるM1が単結合である繰り返し単位が挙げられる。
高分子液晶性化合物がメソゲン基を有しない繰り返し単位を有する場合、配向度がより優れる観点から、高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位100質量%に対して、0質量%超30質量%以下が好ましく、10質量%超20質量%以下がより好ましい。
【0049】
高分子液晶性化合物の重量平均分子量(Mw)は、配向度がより優れる観点から、1000~500000が好ましく、2000~300000がより好ましい。高分子液晶性化合物のMwが上記範囲内にあれば、高分子液晶性化合物の取り扱いが容易になる。
特に、塗布時のクラック抑制の観点から、高分子液晶性化合物の重量平均分子量(Mw)は、10000以上が好ましく、10000~300000がより好ましい。
また、配向度の温度ラチチュードの観点から、高分子液晶性化合物の重量平均分子量(Mw)は、10000未満が好ましく、2000以上10000未満が好ましい。
ここで、本発明における重量平均分子量および数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)法により測定された値である。
・溶媒(溶離液):N-メチルピロリドン
・装置名:TOSOH HLC-8220GPC
・カラム:TOSOH TSKgelSuperAWM-H(6mm×15cm)を3本接続して使用
・カラム温度:25℃
・試料濃度:0.1質量%
・流速:0.35mL/min
・校正曲線:TOSOH製TSK標準ポリスチレン Mw=2800000~1050(Mw/Mn=1.03~1.06)までの7サンプルによる校正曲線を使用
【0050】
本明細書における置換基Wについて説明する。
置換基Wとしては、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~12、さらに好ましくは炭素数1~8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、および、シクロヘキシル基などが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~12、さらに好ましくは炭素数2~8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリール基、2-ブテニル基、および、3-ペンテニル基などが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~12、さらに好ましくは炭素数2~8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、および、3-ペンチニル基などが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6~30、より好ましくは炭素数6~20、さらに好ましくは炭素数6~12のアリール基であり、例えば、フェニル基、2,6-ジエチルフェニル基、3,5-ジトリフルオロメチルフェニル基、スチリル基、ナフチル基、および、ビフェニル基などが挙げられる。)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0~20、より好ましくは炭素数0~10、さらに好ましくは炭素数0~6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、および、アニリノ基などが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~15であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、および、ブトキシ基などが挙げられる。)、オキシカルボニル基(好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~15、さらに好ましくは2~10であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、および、フェノキシカルボニル基などが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~10、さらに好ましくは2~6であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基、アクリロイル基、および、メタクリロイル基などが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~10、さらに好ましくは炭素数2~6であり、例えば、アセチルアミノ基、および、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~10、さらに好ましくは炭素数2~6であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7~20、より好ましくは炭素数7~16、さらに好ましくは炭素数7~12であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、さらに好ましくは炭素数1~6であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、および、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0~20、より好ましくは炭素数0~10、さらに好ましくは炭素数0~6であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、および、フェニルスルファモイル基などが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、さらに好ましくは炭素数1~6であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、および、フェニルカルバモイル基などが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、さらに好ましくは炭素数1~6であり、例えば、メチルチオ基、および、エチルチオ基などが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6~20、より好ましくは炭素数6~16、さらに好ましくは炭素数6~12であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、さらに好ましくは炭素数1~6であり、例えば、メシル基、および、トシル基などが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、さらに好ましくは炭素数1~6であり、例えば、メタンスルフィニル基、および、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、さらに好ましくは炭素数1~6であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、および、フェニルウレイド基などが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、さらに好ましくは炭素数1~6であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、および、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、および、ヨウ素原子などが挙げられる。)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、アゾ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1~30、より好ましくは炭素数1~12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、マレイミド基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、および、ベンズチアゾリル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3~40、より好ましくは炭素数3~30、さらに好ましくは炭素数3~24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、および、トリフェニルシリル基などが挙げられる。)、カルボキシ基、スルホン酸基、および、リン酸基などが挙げられる。
【0051】
[二色性物質]
本発明に用いられる二色性物質は、特に限定されず、可視光吸収物質(二色性色素、二色性アゾ化合物)、発光物質(蛍光物質、燐光物質)、紫外線吸収物質、赤外線吸収物質、非線形光学物質、カーボンナノチューブ、および、無機物質(例えば量子ロッド)などが挙げられ、従来公知の二色性物質(二色性色素)を使用することができる。
【0052】
特に好ましく用いられる二色性物質は、二色性アゾ色素化合物である。
二色性アゾ色素化合物は、特に限定されず、従来公知の二色性アゾ色素を使用することができるが、後述の化合物が好ましく用いられる。
【0053】
本発明において、二色性アゾ色素化合物とは、方向によって吸光度が異なる色素を意味する。
二色性アゾ色素化合物は、液晶性を示してもよいし、液晶性を示さなくてもよい。
二色性アゾ色素化合物が液晶性を示す場合には、ネマチック性またはスメクチック性のいずれを示してもよい。液晶相を示す温度範囲は、室温(約20℃~28℃)~300℃が好ましく、取扱い性および製造適性の観点から、50~200℃であることがより好ましい。
【0054】
本発明においては、色味調整の観点から、光吸収異方性層が、波長560~700nmの範囲に極大吸収波長を有する少なくとも1種の色素化合物(以下、「第1の二色性アゾ色素化合物」とも略す。)と、波長455nm以上560nm未満の範囲に極大吸収波長を有する少なくとも1種の色素化合物(以下、「第2の二色性アゾ色素化合物」とも略す。)とを少なくとも含むことが好ましく、具体的には、後述する式(1)で表される二色性アゾ色素化合物と、後述する式(2)で表される二色性アゾ色素化合物とを少なくとも含むことがより好ましい。
【0055】
本発明においては、3種以上の二色性アゾ色素化合物を併用してもよく、例えば、光吸収異方性層を黒色に近づける観点から、第1の二色性アゾ色素化合物と、第2の二色性アゾ色素化合物と、波長380nm以上455nm未満の範囲に極大吸収波長を有する少なくとも1種の色素化合物(以下、「第3の二色性アゾ色素化合物」とも略す。)とを併用することが好ましい。
【0056】
本発明においては、耐押圧性がより良好となる観点からは、二色性アゾ色素化合物が架橋性基を有していることが好ましい。
架橋性基としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、オキセタニル基、および、スチリル基などが挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0057】
(第1の二色性アゾ色素化合物)
第1の二色性アゾ色素化合物は、核である発色団と、発色団の末端に結合する側鎖と、を有する化合物であることが好ましい。
発色団の具体例としては、芳香族環基(例えば、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基)、および、アゾ基などが挙げられ、芳香族環基およびアゾ基の両方を有する構造が好ましく、芳香族複素環基(好ましくはチエノチアゾール基)と2つのアゾ基とを有するビスアゾ構造がより好ましい。
側鎖としては、特に限定されず、後述の式(1)のR1、R2およびR3で表される基が挙げられる。
【0058】
第1の二色性アゾ色素化合物は、波長560nm以上700nm以下の範囲に最大吸収波長を有する二色性アゾ色素化合物であり、光吸収異方性層の色味調整の観点から、波長560~650nmの範囲に最大吸収波長を有する二色性アゾ色素化合物であることが好ましく、波長560~640nmの範囲に最大吸収波長を有する二色性アゾ色素化合物であるのがより好ましい。
本明細書における二色性アゾ色素化合物の最大吸収波長(nm)は、二色性アゾ色素化合物を良溶媒中に溶解させた溶液を用いて、分光光度計によって測定される波長380~800nmの範囲における紫外可視光スペクトルから求められる。
【0059】
本発明においては、形成される光吸収異方性層の配向度が更に向上する観点から、第1の二色性アゾ色素化合物が、下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0060】
【0061】
式(1)中、Ar1およびAr2はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基、または、置換基を有していてもよいナフチレン基を表し、フェニレン基が好ましい。
【0062】
式(1)中、R1は、水素原子、炭素数1~20の置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルキルカーボネート基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アルキルウレイド基、アルキルリン酸アミド基、アルキルイミノ基、または、アルキルシリル基を表す。
上記アルキル基を構成する-CH2-は、-O-、-CO-、-C(O)-O-、-O-C(O)-、-Si(CH3)2-O-Si(CH3)2-、-N(R1’)-、-N(R1’)-CO-、-CO-N(R1’)-、-N(R1’)-C(O)-O-、-O-C(O)-N(R1’)-、-N(R1’)-C(O)-N(R1’)-、-CH=CH-、-C≡C-、-N=N-、-C(R1’)=CH-C(O)-、または、-O-C(O)-O-によって置換されていてもよい。
R1が水素原子以外の基である場合、各基が有する水素原子は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-N(R1’)2、アミノ基、-C(R1’)=C(R1’)-NO2、-C(R1’)=C(R1’)-CN、または、-C(R1’)=C(CN)2、によって置換されていてもよい。
R1’は、水素原子または炭素数1~6の直鎖もしくは分岐状のアルキル基を表す。各基において、R1’が複数存在する場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0063】
式(1)中、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミド基、アルキルスルホニル基、アリール基、アリールカルボニル基、アリールスルホニル基、アリールオキシカルボニル基、または、アリールアミド基を表す。
上記アルキル基を構成する-CH2-は、-O-、-S-、-C(O)-、-C(O)-O-、-O-C(O)-、-C(O)-S-、-S-C(O)-、-Si(CH3)2-O-Si(CH3)2-、-NR2’-、-NR2’-CO-、-CO-NR2’-、-NR2’-C(O)-O-、-O-C(O)-NR2’-、-NR2’-C(O)-NR2’-、-CH=CH-、-C≡C-、-N=N-、-C(R2’)=CH-C(O)-、または、-O-C(O)-O-、によって置換されていてもよい。
R2およびR3が水素原子以外の基である場合、各基が有する水素原子は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OH基、-N(R2’)2、アミノ基、-C(R2’)=C(R2’)-NO2、-C(R2’)=C(R2’)-CN、または、-C(R2’)=C(CN)2によって置換されていてもよい。
R2’は、水素原子または炭素数1~6の直鎖もしくは分岐状のアルキル基を表す。各基において、R2’が複数存在する場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。
R2およびR3は、互いに結合して環を形成してもよいし、R2またはR3は、Ar2と結合して環を形成してもよい。
【0064】
耐光性の観点からは、R1は電子吸引性基であることが好ましく、R2およびR3は電子供与性が低い基であることが好ましい。
このような基の具体例として、R1としては、アルキルスルホニル基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルキルスルホニルアミノ基、アルキルスルファモイル基、アルキルスルフィニル基、および、アルキルウレイド基などが挙げられ、R2およびR3としては、下記の構造の基などが挙げられる。なお下記の構造の基は、上記式(1)において、R2およびR3が結合する窒素原子を含む形で示す。
【0065】
【0066】
第1の二色性アゾ色素化合物の具体例を以下に示すが、これに限定されるものではない。
【0067】
【0068】
(第2の二色性アゾ色素化合物)
第2の二色性アゾ色素化合物は、第1の二色性アゾ色素化合物とは異なる化合物であり、具体的にはその化学構造が異なっている。
第2の二色性アゾ色素化合物は、二色性アゾ色素化合物の核である発色団と、発色団の末端に結合する側鎖と、を有する化合物であることが好ましい。
発色団の具体例としては、芳香族環基(例えば、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基)、および、アゾ基などが挙げられ、芳香族炭化水素基およびアゾ基の両方を有する構造が好ましく、芳香族炭化水素基と2つまたは3つのアゾ基とを有するビスアゾまたはトリスアゾ構造がより好ましい。
側鎖としては、特に限定されず、後述の式(2)のR4、R5またはR6で表される基が挙げられる。
【0069】
第2の二色性アゾ色素化合物は、波長455nm以上560nm未満の範囲に最大吸収波長を有する二色性アゾ色素化合物であり、光吸収異方性層の色味調整の観点から、波長455~555nmの範囲に最大吸収波長を有する二色性アゾ色素化合物であることが好ましく、波長455~550nmの範囲に最大吸収波長を有する二色性アゾ色素化合物であることがより好ましい。
特に、560~700nmの範囲に最大吸収波長を有する第1の二色性アゾ色素化合物と、455nm以上560nm未満の範囲に最大吸収波長を有する第2の二色性アゾ色素化合物と、を用いれば、光吸収異方性層の色味調整がより容易になる。
【0070】
第2の二色性アゾ色素化合物は、光吸収異方性層の配向度がより向上する点から、式(2)で表される化合物であるのが好ましい。
【0071】
【0072】
式(2)中、nは1または2を表す。
式(2)中、Ar3、Ar4およびAr5はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいナフチレン基または置換基を有していてもよい複素環基を表す。
複素環基としては、芳香族および非芳香族のいずれであってもよい。
芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子および酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。
芳香族複素環基の具体例としては、例えば、ピリジレン基(ピリジン-ジイル基)、ピリダジン-ジイル基、イミダゾール-ジイル基、チエニレン(チオフェン-ジイル基)、キノリレン基(キノリン-ジイル基)、イソキノリレン基(イソキノリン-ジイル基)、オキサゾール-ジイル基、チアゾール-ジイル基、オキサジアゾール-ジイル基、ベンゾチアゾール-ジイル基、ベンゾチアジアゾール-ジイル基、フタルイミド-ジイル基、チエノチアゾール-ジイル基、チアゾロチアゾール-ジイル基、チエノチオフェン-ジイル基、および、チエノオキサゾール-ジイル基などが挙げられる。
【0073】
式(2)中、R4の定義は、式(1)中のR1と同様である。
式(2)中、R5およびR6の定義はそれぞれ、式(1)中のR2およびR3と同様である。
【0074】
耐光性の観点からは、R4は電子吸引性基であることが好ましく、R5およびR6は電子供与性が低い基であることが好ましい。
このような基のうち、R4が電子吸引性基である場合の具体例は、R1が電子吸引性基である場合の具体例と同様であり、R5およびR6が電子供与性の低い基である場合の具体例は、R2およびR3が電子供与性の低い基である場合の具体例と同様である。
【0075】
第2の二色性アゾ色素化合物の具体例を以下に示すが、これに限定されるものではない。
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
(logP値の差)
logP値は、化学構造の親水性および疎水性の性質を表現する指標である。第1の二色性アゾ色素化合物の側鎖のlogP値と、第2の二色性アゾ色素化合物の側鎖のlogP値と、の差の絶対値(以下、「logP差」ともいう。)は、2.30以下が好ましく、2.0以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましく、1.0以下が特に好ましい。logP差が2.30以下であれば、第1の二色性アゾ色素化合物と第2の二色性アゾ色素化合物との親和性が高まって、配列構造をより形成しやすくなるため、光吸収異方性層の配向度がより向上する。
なお、第1の二色性アゾ色素化合物または第2の二色性アゾ色素化合物の側鎖が複数ある場合、少なくとも1つのlogP差が上記値を満たすことが好ましい。
ここで、第1の二色性アゾ色素化合物および第2の二色性アゾ色素化合物の側鎖とは、上述した発色団の末端に結合する基を意味する。例えば、第1の二色性アゾ色素化合物が式(1)で表される化合物である場合、式(1)中のR1、R2およびR3が側鎖であり、第2の二色性アゾ色素化合物が式(2)で表される化合物である場合、式(2)中のR4、R5およびR6が側鎖である。特に、第1の二色性アゾ色素化合物が式(1)で表される化合物であり、第2の二色性アゾ色素化合物が式(2)で表される化合物である場合、R1とR4とのlogP値の差、R1とR5とのlogP値の差、R2とR4とのlogP値の差、および、R2とR5とのlogP値の差のうち、少なくとも1つのlogP差が上記値を満たすことが好ましい。
【0081】
ここで、logP値は、化学構造の親水性および疎水性の性質を表現する指標であり、親疎水パラメータと呼ばれることがある。logP値は、ChemBioDraw UltraまたはHSPiP(Ver.4.1.07)などのソフトウェアを用いて計算できる。また、OECD Guidelines for the Testing of Chemicals,Sections 1,Test No.117の方法などにより、実験的に求めることもできる。本発明では特に断りのない限り、HSPiP(Ver.4.1.07)に化合物の構造式を入力して算出される値をlogP値として採用する。
【0082】
(第3の二色性アゾ色素化合物)
第3の二色性アゾ色素化合物は、第1の二色性アゾ色素化合物および第2の二色性アゾ色素化合物以外の二色性アゾ色素化合物であり、具体的には、第1の二色性アゾ色素化合物および第2の二色性アゾ色素化合物とは化学構造が異なっている。光吸収異方性層が第3の二色性アゾ色素化合物を含む場合、光吸収異方性層の色味の調整が容易になるという利点がある。
第3の二色性アゾ色素化合物の最大吸収波長は、380nm以上455nm未満であり、385~454nmが好ましい。
【0083】
第3の二色性アゾ色素化合物としては、下記式(6)で表される二色性アゾ色素が好ましい。
【0084】
【0085】
式(6)中、AおよびBは、それぞれ独立に、架橋性基を表す。
式(6)中、aおよびbは、それぞれ独立に、0または1を表す。波長420nmにおける配向度に優れる観点においては、aおよびbは、ともに0であることが好ましい。
式(6)中、a=0の場合にはL1は1価の置換基を表し、a=1の場合にはL1は単結合または2価の連結基を表す。また、b=0の場合にはL2は1価の置換基を表し、b=1の場合にはL2は単結合または2価の連結基を表す。
式(6)中、Ar1は(n1+2)価の芳香族炭化水素基または複素環基を表し、Ar2は(n2+2)価の芳香族炭化水素基または複素環基を表し、Ar3は(n3+2)価の芳香族炭化水素基または複素環基を表す。
式(6)中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、1価の置換基を表す。n1≧2である場合には複数のR1は互いに同一でも異なっていてもよく、n2≧2である場合には複数のR2は互いに同一でも異なっていてもよく、n3≧2である場合には複数のR3は互いに同一でも異なっていてもよい。
式(6)中、kは、1~4の整数を表す。k≧2の場合には、複数のAr2は互いに同一でも異なっていてもよく、複数のR2は互いに同一でも異なっていてもよい。
式(6)中、n1、n2およびn3は、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。ただし、k=1の場合にはn1+n2+n3≧0であり、k≧2の場合にはn1+n2+n3≧1である。
【0086】
式(6)において、AおよびBが表す架橋性基としては、例えば、特開2010-244038号公報の[0040]~[0050]段落に記載された重合性基が挙げられる。これらの中でも、反応性および合成適性の向上の観点から、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、オキセタニル基、または、スチリル基が好ましく、溶解性をより向上できるという観点から、アクリロイル基またはメタクリロイル基がより好ましい。
【0087】
式(6)において、a=0の場合にはL1は1価の置換基を表し、a=1の場合にはL1は単結合または2価の連結基を表す。また、b=0の場合にはL2は1価の置換基を表し、b=1の場合にはL2は単結合または2価の連結基を表す。
【0088】
L1およびL2が表す1価の置換基としては、二色性物質の溶解性を高めるために導入される基、または、色素としての色調を調節するために導入される電子供与性や電子吸引性を有する基が好ましい。
例えば、置換基としては、
アルキル基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~12、さらに好ましくは炭素数1~8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。)、
アルケニル基(好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~12、さらに好ましくは炭素数2~8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、2-ブテニル基、3-ペンテニル基などが挙げられる。)、
アルキニル基(好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~12、さらに好ましくは炭素数2~8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3-ペンチニル基などが挙げられる。)、
アリール基(好ましくは炭素数6~30、より好ましくは炭素数6~20、さらに好ましくは炭素数6~12のアリール基であり、例えば、フェニル基、2,6-ジエチルフェニル基、3,5-ジトリフルオロメチルフェニル基、ナフチル基、および、ビフェニル基などが挙げられる。)、
置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0~20、より好ましくは炭素数0~10、さらに好ましくは炭素数0~6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、および、アニリノ基などが挙げられる。)、
アルコキシ基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~15であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、および、ブトキシ基などが挙げられる。)、
オキシカルボニル基(好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~15、さらに好ましくは2~10であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、および、フェノキシカルボニル基などが挙げられる。)、
アシルオキシ基(好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~10、さらに好ましくは2~6であり、例えば、アセトキシ基およびベンゾイルオキシ基などが挙げられる。)、
アシルアミノ基(好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~10、さらに好ましくは炭素数2~6であり、例えば、アセチルアミノ基およびベンゾイルアミノ基などが挙げられる。)、
アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~10、さらに好ましくは炭素数2~6であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、
アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7~20、より好ましくは炭素数7~16、さらに好ましくは炭素数7~12であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、
スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、さらに好ましくは炭素数1~6であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、および、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる。)、
スルファモイル基(好ましくは炭素数0~20、より好ましくは炭素数0~10、さらに好ましくは炭素数0~6であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、および、フェニルスルファモイル基などが挙げられる。)、
カルバモイル基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、さらに好ましくは炭素数1~6であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、および、フェニルカルバモイル基などが挙げられる。)、
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、さらに好ましくは炭素数1~6であり、例えば、メチルチオ基、および、エチルチオ基などが挙げられる。)、
アリールチオ基(好ましくは炭素数6~20、より好ましくは炭素数6~16、さらに好ましくは炭素数6~12であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる。)、
スルホニル基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、さらに好ましくは炭素数1~6であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる。)、
スルフィニル基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、さらに好ましくは炭素数1~6であり、例えば、メタンスルフィニル基、および、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる。)、
ウレイド基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、さらに好ましくは炭素数1~6であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、および、フェニルウレイド基などが挙げられる。)、
リン酸アミド基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、さらに好ましくは炭素数1~6であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、および、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる。)、
ヘテロ環基(好ましくは炭素数1~30、より好ましくは1~12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、および、硫黄原子などのヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる。)、
シリル基(好ましくは、炭素数3~40、より好ましくは炭素数3~30、さらに好ましくは、炭素数3~24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる。)、
ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、および、ヨウ素原子などが挙げられる。)、
ヒドロキシ基、メルカプト基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、および、アゾ基、などを用いることができる。
これらの置換基は、さらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基を2つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
上記置換基がさらに上記置換基によって置換された基としては、例えば、アルコキシ基がアルキル基で置換された基である、RB-(O-RA)na-基が挙げられる。ここで、式中、RAは炭素数1~5のアルキレン基を表し、RBは炭素数1~5のアルキル基を表し、naは1~10(好ましくは1~5、より好ましくは1~3)の整数を表す。
これらの中でも、L1およびL2が表す1価の置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、および、これらの基がさらにこれらの基によって置換された基(例えば、上述したRB-(O-RA)na-基)が好ましく、アルキル基、アルコキシ基、および、これらの基がさらにこれらの基によって置換された基(例えば、上述したRB-(O-RA)na-基)がより好ましい。
【0089】
L1およびL2が表す2価の連結基としては、例えば、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-CO-O-、-CO-NRN-、-O-CO-NRN-、-NRN-CO-NRN-、-SO2-、-SO-、アルキレン基、シクロアルキレン基、および、アルケニレン基、ならびに、これらの基を2つ以上組み合わせた基などが挙げられる。
これらの中でも、アルキレン基と、-O-、-COO-、-OCO-および-O-CO-O-からなる群より選択される1種以上の基と、を組み合わせた基が好ましい。
ここで、RNは、水素原子またはアルキル基を表す。RNが複数存在する場合には、複数のRNは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0090】
二色性物質の溶解性がより向上するという観点からは、L1およびL2の少なくとも一方の主鎖の原子の数は、3個以上であることが好ましく、5個以上であることがより好ましく、7個以上であることがさらに好ましく、10個以上であることが特に好ましい。また、主鎖の原子の数の上限値は、20個以下であることが好ましく、12個以下であることがより好ましい。
一方で、光吸収異方性層の配向度がより向上するという観点からは、L1およびL2の少なくとも一方の主鎖の原子の数は、1~5個であることが好ましい。
ここで、式(6)におけるAが存在する場合には、L1における「主鎖」とは、L1と連結する「O」原子と、「A」と、を直接連結するために必要な部分を指し、「主鎖の原子の数」とは、上記部分を構成する原子の個数のことを指す。同様に、式(6)におけるBが存在する場合には、L2における「主鎖」とは、L2と連結する「O」原子と、「B」と、を直接連結するために必要な部分を指し、「主鎖の原子の数」とは、上記部分を構成する原子の数のことを指す。なお、「主鎖の原子の数」には、後述する分岐鎖の原子の数は含まない。
また、Aが存在しない場合には、L1における「主鎖の原子の数」とは、分岐鎖を含まないL1の原子の個数のことをいう。Bが存在しない場合には、L2における「主鎖の原子の数」とは、分岐鎖を含まないL2の原子の個数のことをいう。
具体的には、下記式(D1)においては、L1の主鎖の原子の数は5個(下記式(D1)の左側の点線枠内の原子の数)であり、L2の主鎖の原子の数は5個(下記式(D1)の右側の点線枠内の原子の数)である。また、下記式(D10)においては、L1の主鎖の原子の数は7個(下記式(D10)の左側の点線枠内の原子の数)であり、L2の主鎖の原子の数は5個(下記式(D10)の右側の点線枠内の原子の数)である。
【0091】
【0092】
L1およびL2は、分岐鎖を有していてもよい。
ここで、式(6)においてAが存在する場合には、L1における「分岐鎖」とは、式(6)におけるL1と連結する「O」原子と、「A」と、を直接連結するために必要な部分以外の部分をいう。同様に、式(6)においてBが存在する場合には、L2における「分岐鎖」とは、式(6)におけるL2と連結する「O」原子と、「B」と、を直接連結するために必要な部分以外の部分をいう。
また、式(6)においてAが存在しない場合には、L1における「分岐鎖」とは、式(6)におけるL1と連結する「O」原子を起点として延びる最長の原子鎖(すなわち主鎖)以外の部分をいう。同様に、式(6)においてBが存在しない場合には、L2における「分岐鎖」とは、式(6)におけるL2と連結する「O」原子を起点として延びる最長の原子鎖(すなわち主鎖)以外の部分をいう。
分岐鎖の原子の数は、3以下であることが好ましい。分岐鎖の原子の数が3以下であることで、光吸収異方性層の配向度がより向上するなどの利点がある。なお、分岐鎖の原子の数には、水素原子の数は含まれない。
【0093】
式(6)において、Ar1は(n1+2)価(例えば、n1が1である時は3価)、Ar2は(n2+2)価(例えば、n2が1である時は3価)、Ar3は(n3+2)価(例えば、n3が1である時は3価)、の芳香族炭化水素基または複素環基を表す。ここで、Ar1~Ar3はそれぞれ、n1~n3個の置換基(後述するR1~R3)で置換された2価の芳香族炭化水素基または2価の複素環基と換言できる。
Ar1~Ar3が表す2価の芳香族炭化水素基としては、単環であっても、2環以上の縮環構造を有していてもよい。2価の芳香族炭化水素基の環数は、溶解性がより向上するという観点から、1~4が好ましく、1~2がより好ましく、1(すなわちフェニレン基であること)がさらに好ましい。
2価の芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニレン基、アズレン-ジイル基、ナフチレン基、フルオレン-ジイル基、アントラセン-ジイル基およびテトラセン-ジイル基などが挙げられ、溶解性がより向上するという観点から、フェニレン基またはナフチレン基が好ましく、フェニレン基がより好ましい。
以下に、第3の二色性色素化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記具体例中、nは、1~10の整数を表す。
【0094】
【0095】
【0096】
420nmの配向度に優れる点では、第3の二色性アゾ色素化合物がラジカル重合性基を有さないことが好ましい。例えば、以下の構造が挙げられる。
【0097】
【0098】
第3の二色性アゾ色素化合物は、420nmの配向度に特に優れる点で、下記式(1-1)で表される構造を有する二色性物質であるのがより好ましい。
【0099】
【0100】
式(1-1)中、R1、R3、R4、R5、n1、n3、L1およびL2の定義はそれぞれ、式(1)のR1、R3、R4、R5、n1、n3、L1およびL2と同義である。
式(1-1)中、R21およびR22の定義はそれぞれ独立に、式(1)のR2と同義である。
式(1-1)中、n21およびn22の定義はそれぞれ独立に、式(1)のn2と同義である。
n1+n21+n22+n3≧1であり、n1+n21+n22+n3は、1~9が好ましく、1~5がより好ましい。
【0101】
以下に、二色性物質の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
二色性物質の含有量は、光吸収異方性層の全質量に対して、10~30質量%が好ましく、15~30質量%がより好ましく、18~28質量%がさらに好ましく、20~26質量%が特に好ましい。二色性物質の含有量が上記範囲内にあれば、光吸収異方性層を薄膜にした場合であっても、高配向度の光吸収異方性層を得ることができる。そのため、フレキシブル性に優れた光吸収異方性層が得られやすい。
第1の二色性アゾ色素化合物の含有量は、光吸収異方性層中の二色性物質全体の含有量100質量部に対して、40~90質量部が好ましく、45~75質量部がより好ましい。
第2の二色性アゾ色素化合物の含有量は、光吸収異方性層中の二色性物質全体の含有量100質量に対して、6~50質量部が好ましく、8~35質量部がより好ましい。
第3の二色性アゾ色素化合物の含有量は、光吸収異方性層中の二色性アゾ色素化合物の含有量100質量に対して、3~35質量部が好ましく、5~35質量部がより好ましい。
第1の二色性アゾ色素化合物と、第2の二色性アゾ色素化合物と、および必要に応じて用いられる第3の二色性アゾ色素化合物と、の含有比は、光吸収異方性層の色味調整するために、任意に設定することができる。ただし、第1の二色性アゾ色素化合物に対する第2の二色性アゾ色素化合物の含有比(第2の二色性アゾ色素化合物/第1の二色性アゾ色素化合物)は、モル換算で、0.1~10が好ましく、0.1~2がより好ましく、0.1~0.5がさらに好ましい。第1の二色性アゾ色素化合物に対する第2の二色性アゾ色素化合物の含有比が上記範囲内にあれば、配向度が高められる。
【0106】
本発明における光吸収異方性層は、例えば、上記液晶性化合物および二色性物質を含む光吸収異方性層形成用組成物を用いて作製できる。
光吸収異方性層形成用組成物は、液晶性化合物および二色性物質以外の成分を含んでいてもよく、例えば、溶媒、垂直配向剤、界面改良剤、重合性成分、および、重合開始剤(例えば、ラジカル重合開始剤)などが挙げられる。この場合、本発明における光吸収異方性層は、液状成分(溶媒など)以外の固形成分を含む。
【0107】
界面改良剤としては、後述する実施例欄に記載の界面改良剤を用いることができる。
光吸収異方性層形成用組成物が界面改良剤を含む場合、界面改良剤の含有量は、光吸収異方性層形成用組成物中の上記二色性物質と上記液晶性化合物との合計100質量部に対して、0.001~5質量部が好ましい。
【0108】
重合性成分としては、アクリレートを含む化合物(例えば、アクリレートモノマー)が挙げられる。この場合、本発明における光吸収異方性層は、上記アクリレートを含む化合物を重合させて得られるポリアクリレートを含む。
重合性成分としては、例えば、特開2017-122776号公報の[0058]段落に記載の化合物が挙げられる。
光吸収異方性層形成用組成物が重合性成分を含む場合、重合性成分の含有量は、光吸収異方性層形成用組成物中の上記二色性物質と上記液晶性化合物との合計100質量部に対して、3~20質量部が好ましい。
【0109】
液晶性化合物を用いる場合、例えば、ゲストホスト型液晶セルの技術を利用して、ホスト液晶の配向に付随させて二色性物質の分子を、上記のような所望の配向にすることができる。具体的には、ゲストとなる二色性物質と、ホスト液晶となる液晶性化合物とを混合し、ホスト液晶を配向させるとともに、その液晶分子の配向に沿って二色性物質の分子を配向させて、その配向状態を固定することで、本発明における光吸収異方性層を作製することができる。
【0110】
本発明における光吸収異方性層の光吸収特性の使用環境による変動を防止するために、二色性物質の配向を、化学結合の形成によって固定するのが好ましい。例えば、ホスト液晶、二色性物質、または所望により添加される重合性成分の重合を進行させることで、配向を固定することができる。
【0111】
また、一対の基板に、二色性物質と液晶性化合物(ホスト液晶)とを少なくとも含む液晶層を有するゲストホスト型液晶セルそのものを、本発明における光吸収異方性層として利用してもよい。ホスト液晶の配向(およびそれに付随する二色性物質の配向)は、基板内面に形成された配向膜によって制御することができ、電界などの外部刺激を与えない限り、その配向状態は維持され、本発明における光吸収異方性層の光吸収特性を一定にすることができる。
【0112】
[垂直配向剤]
垂直配向剤としては、ボロン酸化合物、および、オニウム塩が挙げられる。
【0113】
ボロン酸化合物としては、式(30)で表される化合物が好ましい。
【0114】
【0115】
式(30)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換のアリール基、または、置換もしくは無置換のヘテロ環基を表す。
R3は、(メタ)アクリル基を含む置換基を表す。
ボロン酸化合物の具体例としては、特開2008-225281号公報の[0023]~[0032]段落に記載の一般式(I)で表されるボロン酸化合物が挙げられる。
ボロン酸化合物としては、以下に例示する化合物も好ましい。
【0116】
【0117】
オニウム塩としては、式(31)で表される化合物が好ましい。
【0118】
【0119】
式(31)中、環Aは、含窒素複素環からなる第4級アンモニウムイオンを表す。X-は、アニオンを表す。L1は、2価の連結基を表す。L2は、単結合、または、2価の連結基を表す。Y1は、5または6員環を部分構造として有する2価の連結基を表す。Zは、2~20のアルキレン基を部分構造として有する2価の連結基を表す。P1およびP2は、それぞれ独立に、重合性エチレン性不飽和結合を有する一価の置換基を表す。
オニウム塩の具体例としては、特開2012-208397号公報の[0052]~[0058]段落に記載のオニウム塩、特開2008-026730号公報の[0024]~[0055]段落に記載のオニウム塩、および、特開2002-037777号公報に記載のオニウム塩が挙げられる。
【0120】
光吸収異方性層形成用組成物(光吸収異方性層)中の垂直配向剤の含有量は、液晶性化合物全質量に対して、0.1~400質量%が好ましく、0.5~350質量%がより好ましい。
垂直配向剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。垂直配向剤が2種以上を用いられる場合、それらの合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0121】
[垂直配向に適したレベリング剤]
光吸収異方性層形成用組成物(光吸収異方性層)は、以下のレベリング剤を含むことが好ましい。光吸収異方性層形成用組成物(光吸収異方性層)がレベリング剤を含むと、光吸収異方性層の表面にかかる乾燥風による面状の荒れを抑制し、二色性物質がより均一に配向する。
レベリング剤は特に制限されず、フッ素原子を含むレベリング剤(フッ素系レベリング剤)、または、ケイ素原子を含むレベリング剤(ケイ素系レベリング剤)が好ましく、フッ素系レベリング剤がより好ましい。
【0122】
フッ素系レベリング剤としては、脂肪酸の一部がフルオロアルキル基で置換された多価カルボン酸の脂肪酸エステル類、および、フルオロ置換基を有するポリアクリレート類が挙げられる。特に、二色性物質および液晶性化合物として棒状化合物を用いる場合、二色性物質および液晶性化合物の垂直配向を促進する観点から、式(40)で表される化合物由来の繰り返し単位を含むレベリング剤が好ましい。
【0123】
式(40)
【0124】
【0125】
R0は、水素原子、ハロゲン原子、または、メチル基を表す。
Lは、2価の連結基を表す。Lとしては、炭素数2~16のアルキレン基が好ましく、上記アルキレン基において隣接しない任意の-CH2-は、-O-、-COO-、-CO-、または、-CONH-に置換されていてもよい。
nは、1~18の整数を表す。
【0126】
式(40)で表される化合物由来の繰り返し単位を有するレベリング剤は、さらに他の繰り返し単位を含んでいてもよい。
他の繰り返し単位としては、式(41)で表される化合物由来の繰り返し単位が挙げられる。
【0127】
式(41)
【0128】
【0129】
R11は、水素原子、ハロゲン原子、または、メチル基を表す。
Xは、酸素原子、硫黄原子、または、-N(R13)-を表す。R13は、水素原子、または、炭素数1~8のアルキル基を表す。
R12は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、または、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。上記アルキル基の炭素数は、1~20が好ましい。上記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、および、環状のいずれであってもよい。
また、上記アルキル基の有していてもよい置換基としては、ポリ(アルキレンオキシ)基、および、重合性基が挙げられる。重合性基の定義は、上述した通りである。
【0130】
レベリング剤が、式(40)で表される化合物由来の繰り返し単位、および、式(41)で表される化合物由来の繰り返し単位を含む場合、式(40)で表される化合物由来の繰り返し単位の含有量は、レベリング剤が含む全繰り返し単位に対して、10~90モル%が好ましく、15~95モル%がより好ましい。
レベリング剤が、式(40)で表される化合物由来の繰り返し単位、および、式(41)で表される化合物由来の繰り返し単位を含む場合、式(41)で表される化合物由来の繰り返し単位の含有量は、レベリング剤が含む全繰り返し単位に対して、10~90モル%が好ましく、5~85モル%がより好ましい。
【0131】
また、レベリング剤としては、上述した式(40)で表される化合物由来の繰り返し単位に代えて、式(42)で表される化合物由来の繰り返し単位を含むレベリング剤も挙げられる。
【0132】
式(42)
【0133】
【0134】
R2は、水素原子、ハロゲン原子、または、メチル基を表す。
L2は、2価の連結基を表す。
nは、1~18の整数を表す。
【0135】
レベリング剤の具体例としては、特開2004-331812号公報の[0046]~[0052]段落に例示される化合物、および、特開2008-257205号公報の[0038]~[0052]段落に記載の化合物が挙げられる。
【0136】
光吸収異方性層形成用組成物(光吸収異方性層)中のレベリング剤の含有量は、液晶性化合物全質量に対して、0.001~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましい。
レベリング剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。レベリング剤が2種以上を用いられる場合、それらの合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0137】
[重合開始剤]
光吸収異方性層形成用組成物は、重合開始剤を含むことが好ましい。
重合開始剤としては特に制限はないが、感光性を有する化合物、すなわち光重合開始剤であることが好ましい。
光重合開始剤としては、各種の化合物を特に制限なく使用できる。光重合開始剤の例には、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号および同2951758号の各明細書)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報および米国特許第4239850号明細書)、オキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書)、o-アシルオキシム化合物(特開2016-027384号公報[0065]段落)および、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63-40799号公報、特公平5-029234号公報、特開平10-095788号公報および特開平10-029997号公報)などが挙げられる。
このような光重合開始剤としては、市販品も用いることができ、BASF社製のイルガキュア-184、イルガキュア-907、イルガキュア-369、イルガキュア-651、イルガキュア-819、イルガキュア-OXE-01およびイルガキュア-OXE-02などが挙げられる。
【0138】
光吸収異方性層形成用組成物が重合開始剤を含む場合、重合開始剤の含有量は、光吸収異方性層形成用組成物中の上記二色性物質と上記液晶性化合物との合計100質量部に対し、0.01~30質量部が好ましく、0.1~15質量部がより好ましい。重合開始剤の含有量が0.01質量部以上であることで、光吸収異方性膜の耐久性が良好となり、30質量部以下であることで、光吸収異方性膜の配向度がより良好となる。
重合開始剤は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。重合開始剤を2種以上含む場合、その合計量が上記範囲内であるのが好ましい。
【0139】
[溶媒]
光吸収異方性層形成用組成物は、作業性などの観点から、溶媒を含むのが好ましい。
溶媒としては、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、および、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロピラン、および、ジオキソランなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(例えば、シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、および、トリメチルベンゼンなど)、ハロゲン化炭素類(例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、および、クロロトルエンなど)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、および、乳酸エチルなど)、アルコール類(例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、イソペンチルアルコール、ネオペンチルアルコール、ジアセトンアルコール、および、ベンジルアルコールなど)、セロソルブ類(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、および、1,2-ジメトキシエタンなど)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、および、N-エチルピロリドンなど)、および、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジンなど)などの有機溶媒、ならびに、水が挙げられる。これの溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの溶媒のうち、ケトン類(特にシクロペンタノン、シクロヘキサノン)、エーテル類(特にテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロピラン、および、ジオキソラン)、および、アミド類(特に、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、および、N-エチルピロリドン)が好ましい。
光吸収異方性層形成用組成物が溶媒を含む場合、溶媒の含有量は、光吸収異方性層形成用組成物の全質量に対して、80~99質量%が好ましく、83~98質量%がより好ましく、85~96質量%がさらに好ましい。
溶媒が2種以上含まれる場合、上記溶媒の含有量は、溶媒の含有量の合計を意味する。
【0140】
<光吸収異方性層の形成方法>
光吸収異方性層の形成方法は特に限定されず、上述した光吸収異方性層形成用組成物を塗布して塗布膜を形成する工程(以下、「塗布膜形成工程」ともいう。)と、塗布膜に含まれる液晶性成分を配向させる工程(以下、「配向工程」ともいう。)と、をこの順に含む方法が挙げられる。
なお、液晶性成分とは、上述した液晶性化合物だけでなく、上述した二色性物質が液晶性を有している場合は、液晶性を有する二色性物質も含む成分である。
光吸収異方性層としては、光吸収異方性層形成用組成物を用いて得られる層であることが好ましく、光吸収異方性層形成用組成物を用いて得られる塗布膜に対して硬化処理を施して得られる層(硬化層)であることがより好ましい。
【0141】
[塗布膜形成工程]
塗布膜形成工程は、光吸収異方性層形成用組成物を塗布して塗布膜を形成する工程である。
上述した溶媒を含む光吸収異方性層形成用組成物を用いたり、光吸収異方性層形成用組成物を加熱などによって溶融液などの液状物としたものを用いたりすることにより、光吸収異方性層形成用組成物を塗布することが容易になる。
なお、光吸収異方性層形成用組成物中に含まれる各種成分の含有量は、上述した光吸収異方性層中における各成分の含有量となるように調整されることが好ましい。
光吸収異方性層形成用組成物の塗布方法としては、具体的には、例えば、ロールコーティング法、グラビア印刷法、スピンコート法、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、スプレー法、および、インクジェット法などの公知の方法が挙げられる。
【0142】
[配向工程]
配向工程は、塗布膜に含まれる液晶性成分を配向させる工程である。これにより、光吸収異方性層が得られる。
配向工程は、乾燥処理を有していてもよい。乾燥処理によって、溶媒などの成分を塗布膜から除去することができる。乾燥処理は、塗布膜を室温下において所定時間放置する方法(例えば、自然乾燥)によって行われてもよいし、加熱および/または送風する方法によって行われてもよい。
ここで、光吸収異方性層形成用組成物に含まれる液晶性成分は、上述した塗布膜形成工程または乾燥処理によって、配向する場合がある。例えば、光吸収異方性層形成用組成物が溶媒を含む塗布液として調製されている態様では、塗布膜を乾燥して、塗布膜から溶媒を除去することで、光吸収異方性を持つ塗布膜(すなわち、光吸収異方性膜)が得られる。
乾燥処理が塗布膜に含まれる液晶性成分の液晶相への転移温度以上の温度により行われる場合には、後述する加熱処理は実施しなくてもよい。
【0143】
塗布膜に含まれる液晶性成分の液晶相への転移温度は、製造適性の面から10~250℃が好ましく、25~190℃がより好ましい。上記転移温度が10℃以上であると、液晶相を呈する温度範囲にまで温度を下げるための冷却処理などが必要とならず、好ましい。また、上記転移温度が250℃以下であると、一旦液晶相を呈する温度範囲よりもさらに高温の等方性液体状態にする場合にも高温を要さず、熱エネルギーの浪費、ならびに、基板の変形および変質などを低減できるため、好ましい。
【0144】
配向工程は、加熱処理を有することが好ましい。これにより、塗布膜に含まれる液晶性成分を配向させることができるため、加熱処理後の塗布膜を光吸収異方性膜として好適に使用できる。
加熱処理は、製造適性の面から10~250℃が好ましく、25~190℃がより好ましい。また、加熱時間は、1~300秒が好ましく、1~60秒がより好ましい。
【0145】
配向工程は、加熱処理後に実施される冷却処理を有していてもよい。冷却処理は、加熱後の塗布膜を室温(20~25℃)程度まで冷却する処理である。これにより、塗布膜に含まれる液晶性成分の配向を固定することができる。冷却手段としては、特に限定されず、公知の方法により実施できる。
以上の工程によって、光吸収異方性膜を得ることができる。
なお、本態様では、塗布膜に含まれる液晶性成分を配向する方法として、乾燥処理および加熱処理などを挙げているが、これに限定されず、公知の配向処理によって実施できる。
【0146】
[他の工程]
光吸収異方性層の形成方法は、上記配向工程後に、光吸収異方性層を硬化させる工程(以下、「硬化工程」ともいう。)を有していてもよい。
硬化工程は、例えば、光吸収異方性層が架橋性基(重合性基)を有している場合には、加熱および/または光照射(露光)によって実施される。このなかでも、硬化工程は光照射によって実施されることが好ましい。
硬化に用いる光源は、赤外線、可視光および紫外線など、種々の光源を用いることが可能であるが、紫外線であることが好ましい。また、硬化時に加熱しながら紫外線を照射してもよいし、特定の波長のみを透過するフィルタを介して紫外線を照射してもよい。
露光が加熱しながら行われる場合、露光時の加熱温度は、液晶膜に含まれる液晶性成分の液晶相への転移温度にもよるが、25~140℃であることが好ましい。
また、露光は、窒素雰囲気下で行われてもよい。ラジカル重合によって液晶膜の硬化が進行する場合において、酸素による重合の阻害が低減されるため、窒素雰囲気下で露光することが好ましい。
【0147】
光吸収異方性層の厚さは、特に限定されないが、後述する本発明の積層体を偏光素子に用いた場合のフレキシブル性の観点から、100~8000nmであることが好ましく、300~5000nmであることがより好ましい。
【0148】
<光吸収異方性層の第2実施態様>
本発明の光吸収異方性層の第2実施態様は、液晶性化合物および少なくとも1種の二色性物質を含む領域Aと、領域Aよりも極角30°から見た斜め透過率が高い領域Bとを有する光吸収異方性層であって、二色性物質が膜面(光吸収異方性層の主面)に対し垂直に配向しており、領域Aの波長550nmにおける配向度が0.95以上である。
光吸収異方性層の第2実施態様は、面内方向において、領域Aと領域Bとの2つの領域を有する。領域Aは、上述した光吸収異方性層の第1実施態様と同様の構成を有する。つまり、領域Aは、上述した液晶性化合物および二色性物質を含む。また、領域A中において二色性物質は膜面に対して垂直に配向しており、領域Aは所定の配向度を示す。
領域Bは、領域Aよりも極角30°から見た斜め透過率が高い領域である。つまり、領域Aを極角30°から見た斜め透過率と、領域Bを極角30°から見た斜め透過率とを比較した場合、領域Bを極角30°から見た斜め透過率のほうが高い。
上記斜め透過率は、波長550nmにおける透過率を意味する。
領域Bは、空間であってもよいし、領域Aと同じく液晶性化合物が含まれる領域であってもよい。領域Bには二色性物質が含まれていてもよいが、上述したように、領域Aと領域Bとが所定の透過率の関係を満たすように、二色性物質の含有量が調整される。領域B中における二色性物質の含有量は、領域B全質量に対して、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0質量%がさらに好ましい。
【0149】
領域Aの極角30°から見た斜め透過率は10%以下であることが好ましく、領域Bの極角30°から見た斜め透過率は80%以上であることが好ましい。
【0150】
光吸収異方性層の第2実施態様においては、一部の領域で(偏光の)視野角依存性を強めたり弱めたりすることが可能となる。これにより、視野角依存性を強めた領域にのみ機密度の高い情報を表示したりすることもできる。また、表示装置として視野角依存性を自在に制御することにより、意匠性に優れた設計も可能となる。マイクロLED(light emitting diode)などの表示装置において発光部から周辺領域への光漏れを防止するために、発光部以外の領域を上記領域Bにし、発光部を上記領域Aとするパターニングにすることで画面の中の明暗のコントラストを高めることも可能である。
【0151】
なお、光吸収異方性層中における領域Aと領域Bとの配置位置は特に制限されず、使用目的に応じて、適宜配置できる。例えば、領域Aと領域Bとを交互にストライプ状に配置してもよいし、光吸収異方性層の一部を領域Bとして、他の全ての領域を領域Aとしてもよい。
【0152】
光吸収異方性層の第2実施態様の形成方法は特に制限されず、WO2019/176918号公報に記載されているような公知の各種の方法が利用可能である。一例として、光吸収異方性層の厚さを面内で制御する方法、光吸収異方性層中の二色性色素化合物を偏在させる方法、および、光学的に均一な光吸収異方性層を後加工する方法などが挙げられる。
光吸収異方性層の厚さを面内で制御する方法としては、リソグラフィを利用する方法、インプリントを利用する方法、および、凹凸構造を有する基材に光吸収異方性層を形成する方法などが挙げられる。
光吸収異方性層中の二色性色素化合物を偏在させる方法としては、溶剤浸漬により二色性色素を抽出する方法(ブリーチング)が挙げられる。
さらに、光学的に均一な光吸収異方性層を後加工する方法としては、レーザー加工などによって、平坦な光吸収異方性層の一部を裁断する方法が挙げられる。
【0153】
<積層体>
本発明の積層体は、上述した光吸収異方性層(第1実施態様および第2実施態様)と、二色性物質を水平に配向させた偏光子層を積層した積層体である。これにより、斜めの光の透過率を下げることが可能となり、視野角を狭めることによりプライバシーフィルムなどの用途で用いることができる。
二色性物質を水平に配向させた偏光子層は、特に限定されない。ポリビニルアルコールやその他の高分子樹脂に二色性物質を染着して延伸することで水平に配向させた偏光子でもよいし、本発明の光吸収異方性層のように液晶性化合物の配向を活用して二色性物質を水平に配向させた偏光子でもよいが、延伸を行わず、液晶の配向性を利用して二色性物質を配向させた偏光子が好ましい。
液晶の配向性を利用して二色性物質を配向させた偏光子は、厚みが0.1~5μm程度と非常に薄層化できること、特開2019-194685号公報に記載されているように折り曲げた時のクラックが入りにくいことや熱変形が小さいこと、および、特許6483486号公報に記載されるように50%を超えるような透過率の高い偏光板でも耐久性に優れることなど、多くの長所を有する。
これらの長所を生かして、高輝度や小型軽量が求められる用途、微細な光学系用途、曲面を有する部位への成形用途、および、フレキシブルな部位への用途が可能である。
【0154】
[バリア層]
本発明の積層体は、光吸収異方性層とともに、バリア層を有していることが好ましい。
ここで、バリア層は、ガス遮断層(酸素遮断層)とも呼ばれ、大気中の酸素などのガス、水分、または、隣接する層に含まれる化合物などから本発明の光吸収異方性層を保護する機能を有する。
バリア層については、例えば、特開2014-159124号公報の[0014]~[0054]段落、特開2017-121721号公報の[0042]~[0075]段落、特開2017-115076号公報の[0045]~[0054]段落、特開2012-213938号公報の[0010]~[0061]段落、および、特開2005-169994号公報の[0021]~[0031]段落の記載を参照できる。
【0155】
[屈折率調整層]
本発明の積層体は、光吸収異方性層の高屈折率に起因する内部反射が問題となる場合がある。その場合に、屈折率調整層が存在することが好ましい。屈折率調整層は、光吸収異方性層に接するように配置される層であり、波長550nmにおける面内平均屈折率が1.55~1.70である。いわゆるインデックスマッチングを行うための屈折率調整層であることが好ましい。
【0156】
<光学フィルム>
本発明の光学フィルムは、上述した光吸収異方性層、または、上述した積層体を有する。
光学フィルムは、光吸収異方性層および積層体以外の他の部材を有していてもよい。
【0157】
[透明基材フィルム]
本発明の光学フィルムは、透明基材フィルムを有してもよい。
透明基材フィルムとしては、公知の透明樹脂フィルム、透明樹脂板、および、透明樹脂シートなどを用いることができ、特に限定はない。透明樹脂フィルムとしては、セルロースアシレートフィルム(例えば、セルローストリアセテートフィルム(屈折率1.48)、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム)、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、シクロオレフィン系フィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、および、(メタ)アクリルニトリルフィルムなどが挙げられる。
【0158】
その中でも、透明性が高く、光学的に複屈折が少なく、製造が容易であり、偏光板の保護フィルムとして一般に用いられているセルロースアシレートフィルムが好ましく、セルローストリアセテートフィルムがより好ましい。
透明基材フィルムの厚さは、通常20~100μmである。
本発明においては、透明基材フィルムがセルロースエステル系フィルムであり、かつ、その膜厚が20~70μmであるのが好ましい。
また、透明基材としてポリアクリル系フィルムまたはハードコート層を設けた高硬度フィルムを用いることで、他部材との貼合工程(たとえば直線偏光板など)や、画像表示装置へ組み込む工程で、本発明の光吸収異方性層が傷つくのを防止することができる。
また、透明基材として、ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはシクロオレフィン系フィルムなどの低透湿性・低酸素透過性フィルムを用いることで、光吸収異方性層の高温高湿耐性や耐光性を向上させることができる。
【0159】
[配向膜]
本発明の光学フィルムは、透明基材フィルムと光吸収異方性層との間に、配向膜を有していてもよい。
配向膜は、配向膜上において二色性物質を所望の配向状態とすることができるのであれば、どのような層でもよい。
例えば、多官能アクリレート化合物から形成される膜やポリビニルアルコールを用いてもよい。特に、ポリビニルアルコールが好ましい。
【0160】
本発明の光吸収異方性層、積層体、および、光学フィルムを、視野角の角度依存性を制御するために、光学異方性フィルムや旋光子と組み合わせて用いることも可能である。
【0161】
<光学フィルムの製造方法>
本発明の光学フィルムの製造方法の一例としては、上記光吸収異方性層形成用組成物を上記透明基材フィルム上に塗布して塗布膜を形成する工程と、上記塗布膜に含まれる液晶性成分を配向させて上記光吸収異方性層を得る工程と、上記光吸収異方性層に隣接するように保護層を形成する工程と、をこの順に含む方法が挙げられる。
各工程は、公知の方法にしたがって実施でき、特に限定されるものではない。
なお、液晶性成分とは、上述した液晶性化合物だけでなく、上述した二色性物質が液晶性を有している場合は、液晶性を有する二色性物質も含む成分である。
【0162】
[粘着層]
本発明の積層体および光学フィルムは、粘着層を有していてもよい。
粘着層は通常の液晶表示装置に使用されるものと同様の透明で光学的に等方性の接着剤であることが好ましく、通常は感圧型接着剤が使用される。
【0163】
粘着層には、母材(粘着剤)、導電性粒子、および必要に応じて用いられる熱膨張性粒子の他に、架橋剤(例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤など)、粘着付与剤(例えば、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、および、油溶性フェノール樹脂など)、可塑剤、充填剤、老化防止剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、光安定剤、並びに、酸化防止剤などの適宜な添加剤を配合してもよい。
【0164】
粘着層の厚みは特に制限されず、20~500μmが好ましく、20~250μmがより好ましい。粘着層の厚みが20μm以上の場合、必要な接着力やリワーク適性が得られやすく、粘着層の厚みが500μm以下の場合、画像表示装置の周辺端部から粘着剤がはみ出したり、滲み出すことをより抑制できる。
【0165】
粘着層の形成には、例えば、母材、導電性粒子、および必要に応じて、熱膨張性粒子、添加剤、および、溶媒などを含むコーティング液を被塗布物に直接塗布して剥離ライナーを介して圧着する方法、適当な剥離ライナー(剥離紙など)上にコーティング液を塗布して熱膨張性粘着層を形成し、これを被塗布物上に圧着転写(移着)する方法などが挙げられる。
【0166】
[接着層]
本発明の積層体および光学フィルムは、接着層を有していてもよい。
接着層に含まれる接着剤は、貼り合わせた後の乾燥や反応により接着性を発現する。
例えば、ポリビニルアルコール系接着剤(PVA系接着剤)は、乾燥により接着性が発現し、材料同士を接着することが可能となる。
反応により接着性を発現する硬化型接着剤の具体例としては、(メタ)アクリレート系接着剤のような活性エネルギー線硬化型接着剤やカチオン重合硬化型接着剤が挙げられる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。(メタ)アクリレート系接着剤における硬化性成分としては、例えば、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、および、ビニル基を有する化合物が挙げられる。また、カチオン重合硬化型接着剤としては、エポキシ基またはオキセタニル基を有する化合物も使用できる。エポキシ基を有する化合物は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するものであれば特に限定されず、一般に知られている各種の硬化性エポキシ化合物を用いることができる。好ましいエポキシ化合物として、分子内に少なくとも2個のエポキシ基と少なくとも1個の芳香環を有する化合物(芳香族系エポキシ化合物)や、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有し、そのうちの少なくとも1個は脂環式環を構成する隣り合う2個の炭素原子との間で形成されている化合物(脂環式エポキシ化合物)などが例として挙げられる。
中でも、加熱変形耐性の観点から、紫外線照射で硬化する紫外線硬化型接着剤が好ましく用いられる。
【0167】
接着層および粘着層の各層には、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、および、ニッケル錯塩系化合物などの紫外線吸収剤で処理する方式により紫外線吸収能をもたせたものであってもよい。
【0168】
フィルムへの粘着層や接着層の付設は、適宜な方式で行いうる。例えば、トルエンや酢酸エチルなどの適宜な溶剤の単独物または混合物からなる溶媒に、ベースポリマーまたはその組成物を溶解または分散させた10~40重量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式などの適宜な展開方式でフィルム上に直接付設する方式、または、セパレータ上に粘着層を形成してそれを移着する方式が挙げられる。
【0169】
粘着層および接着層は、異なる組成または種類などのものの重畳層としてフィルムの片面または両面に設けることもできる。また、両面に設ける場合に、フィルムの表裏において異なる組成、種類、および、厚さなどの粘着層とすることもできる。
【0170】
また、接着剤や粘着剤を付設する前に、接着性の向上などを目的として、接着剤や粘着剤が配置される被対象物の表面改質処理を行ってもよい。具体的な処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理、および、ケン化処理などが挙げられる。
【0171】
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置は、上述した本発明の光吸収異方性層、上述した本発明の積層体、または、上述した本発明の光学フィルムを有する。
本発明の光学フィルムは、二色性物質を用いた従来公知の視野角制御フィルムと比較して、正面透過率が高く、かつ、斜め透過率が低いため、狭視野角を実現するために有用性が高い。視野角制御フィルムとしては、3M社製ライトコントロールフィルムも良く知られているが、厚みが大きいことや周期的な構造に起因するモアレが生じやすいことなどの課題を有するため、本発明の光学フィルムに置き換えて使用することで、画像表示装置の画質向上、薄層化、小型化、および、意匠性向上に寄与することができる。
本発明の画像表示装置に用いられる表示素子は特に限定されず、例えば、液晶セル、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」と略す。)表示パネル、および、プラズマディスプレイパネルなどが挙げられる。
これらのうち、液晶セルまたは有機EL表示パネルであるのが好ましく、液晶セルであるのがより好ましい。すなわち、本発明の画像表示装置としては、表示素子として液晶セルを用いた液晶表示装置、表示素子として有機EL表示パネルを用いた有機EL表示装置であるのが好ましく、液晶表示装置であるのがより好ましい。
【0172】
[液晶表示装置]
本発明の画像表示装置の一例である液晶表示装置としては、上述した本発明の光吸収異方性層と、液晶セルと、を有する態様が好ましく挙げられる。より好適には、上述した本発明の積層体(ただし、λ/4板を含まない)と、液晶セルと、を有する液晶表示装置が挙げられる。
なお、本発明においては、液晶セルの両側に設けられる偏光素子のうち、フロント側の偏光素子として本発明の積層体を用いるのが好ましく、フロント側およびリア側の偏光素子として本発明の積層体を用いるのがより好ましい。
以下に、液晶表示装置を構成する液晶セルについて詳述する。
【0173】
(液晶セル)
液晶表示装置に利用される液晶セルは、VA(Vertical Alignment)モード、OCB(Optically Compensated Bend)モード、IPS(In-Plane-Switching)モード、または、TN(Twisted Nematic)モードであることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、さらに60~120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT(Thin Film Transistor)液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2-176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n-ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58~59(1998)記載)および(4)SURVIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。また、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、およびPSA(Polymer-Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006-215326号公報、および、特表2008-538819号公報に詳細な記載がある。
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶性分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の吸収軸は直交している。光学補償シートを用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10-54982号公報、特開平11-202323号公報、特開平9-292522号公報、特開平11-133408号公報、特開平11-305217号公報、および、特開平10-307291号公報などに開示されている。
【0174】
[有機EL表示装置]
本発明の画像表示装置の一例である有機EL表示装置としては、例えば、視認側から、上述した本発明の光吸収異方性層と、水平配向偏光子と、λ/4板と、有機EL表示パネルと、をこの順で有する態様が好適に挙げられる。
また、有機EL表示パネルは、電極間(陰極および陽極間)に有機発光層(有機エレクトロルミネッセンス層)を挟持してなる有機EL素子を用いて構成された表示パネルである。有機EL表示パネルの構成は特に制限されず、公知の構成が採用される。
【0175】
[曲面画像表示装置]
本発明の曲面画像表示装置の一例としては、特開2017-181821号公報、特開2017-181819号公報、特開2017-102456号公報、および、特開2014-095901号公報などに開示されている。
曲面画像表示装置は、表示部分に曲面部を有する。本発明の光吸収異方性層は剛性が小さいため、上記表示部分の曲面部に沿うように、形状を変形することができる。つまり、本発明の光吸収異方性層はそれ自体に曲面部を有するように、変形させることができる。
なお、本発明の積層体および光学フィルムに関しても、剛性が低いため、上記表示部分の曲面部に沿うように、形状を変形することができる。つまり、本発明の積層体および光学フィルムはそれ自体に曲面部を有するように、変形させることができる。
【0176】
[視野角切り替え可能な画像表示装置(視野角を切り替えることが可能な画像表示装置)]
本発明の光吸収異方性層、積層体、および、光学フィルムを用いることで、光の射出角度を狭くすることが可能となる。視野角切り替え可能な画像表示装置は、様々な方式が知られているが、狭い射出角度の光を生成する目的で、本発明の光吸収異方性層、積層体、および、光学フィルムを用いることができる。
例えば、本発明の光吸収異方性層、積層体、および、光学フィルムを用いて狭い射出角度の光を生成した後、特開平9-105907号公報に記載のように、光の拡散有無を制御する素子を通過させ、狭視野角/広視野角を切り替えできる。
または、特開2017-098246号公報に記載のように、視認側から、逆プリズムシート、比較的大きな入射角度で上記逆プリズムシートへ光を入射する第一導光板(逆プリズムシートからの出射光は狭視野角)、斜めからの入射光を吸収し狭い射出角度の光を比較的小さな入射角度で上記逆プリズムシートへ光を入射する光フィルター素子と第二導光板(逆プリズムシートからの出射光は狭視野角)からなる狭視野角/広視野角切り替えバックライトシステムにおいて、上記光フィルター素子として、本発明の光吸収異方性層、積層体や光学フィルムを用いることができる。
また、本発明の光吸収異方性層と水平配向偏光子の間に、液晶セルなどの位相差変調素子を配置して、狭視野角/光視野角切り替えを行うこともできる。例えば、位相差変調セルとしてVAモードまたはECBモードの液晶セルを使用すると、液晶セル中の液晶が垂直配向している状態においては狭視野角になり、液晶セル中の液晶が傾斜配向すると広視野角モードとなり、セルの電圧印可有無で狭視野角/広視野角を制御できる。
また、位相差変調セルとして、IPSモードの液晶セルを使用も考えられる。電圧無印可時の液晶セルの配向方向と、水平配向偏光子の吸収軸方向は平行または垂直方向になるようにし、電圧印可によって液晶セルの配向方向を変化させることで、狭視野角から広視野角へと視野角を切り替えることができる。
また、後述の実施例7のように、本発明の請求項3、4で記載の領域A、領域Bを、発光画素毎にパターニングし、発光画素毎の点灯を制御することで、狭視野角/広視野角を切り替えすることが可能となる。
【実施例0177】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、および、操作などは本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明は以下の実施例に限定され制限されるものではない。
【0178】
<実施例1>
色素が垂直方向に配向した光吸収異方性層を下記のように作製した。
【0179】
[透明支持体1の作製]
セルロースアシレートフィルム1(厚み40μmのTAC基材;TG40 富士フイルム社)の表面をアルカリ液で鹸化し、その上に配向層形成用塗布液1をワイヤーバーで塗布した。塗膜が形成された支持体を60℃の温風で60秒間、さらに100℃の温風で120秒間乾燥し、配向層を形成し、配向層付きTACフィルムを得た。
配向層の膜厚は1μmであった。
【0180】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(配向層形成用塗布液1)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記の変性ポリビニルアルコール 3.80質量部
・開始剤Irg2959 0.20質量部
・水 70質量部
・メタノール 30質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0181】
【0182】
[光吸収異方性層P1の形成]
得られた配向層PA1上に、下記の光吸収異方性層形成用組成物P1をワイヤーバーで連続的に塗布し、塗布層P1を形成した。
次いで、塗布層P1を140℃で30秒間加熱し、塗布層P1を室温(23℃)になるまで冷却した。
次いで、塗布層P1を80℃で60秒間加熱し、再び室温になるまで冷却した。
その後、塗布層P1に対して、LED灯(中心波長365nm)を用いて照度200mW/cm2の照射条件で2秒間照射することにより、配向層1上に光吸収異方性層P1を作製した。
塗布層P1の膜厚は3μm、光吸収異方性層P1の波長550nmにおける配向度は、0.96であった。
これを光吸収異方性フィルム1とした。
【0183】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
光吸収異方性層形成用組成物P1の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記二色性物質D-1 0.40質量部
・下記二色性物質D-2 0.15質量部
・下記二色性物質D-3 0.63質量部
・下記高分子液晶性化合物P-1 3.65質量部
・重合開始剤
IRGACUREOXE-02(BASF社製) 0.040質量部
・下記化合物E-1 0.060質量部
・下記化合物E-2 0.060質量部
・下記界面活性剤F-1 0.010質量部
・下記界面活性剤F-2 0.015質量部
・シクロペンタノン 47.00質量部
・テトラヒドロフラン 47.00質量部
・ベンジルアルコール 1.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0184】
二色性物質D-1
【0185】
【0186】
二色性物質D-2
【0187】
【0188】
二色性物質D-3
【0189】
【0190】
高分子液晶性化合物P-1
【0191】
【0192】
化合物E-1
【0193】
【0194】
化合物E-2
【0195】
【0196】
界面活性剤F-1
【0197】
【0198】
界面活性剤F-2
【0199】
【0200】
[積層体A1の作製]
国際公開第2015/166991号記載の片面保護膜付偏光板02と同様の方法で、偏光子の厚さが8μmで、偏光子の片面がむき出しの偏光板1を作製した。
偏光板1の偏光子がむき出し面と、上記で作製した光吸収異方性フィルム1の光吸収異方性層表面をコロナ処理し、下記のPVA接着剤1を用いて貼合し、積層体A1を作製した。
【0201】
(PVA接着剤1の調製)
アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂(平均重合度:1200,ケン化度:98.5モル%,アセトアセチル化度:5モル%)100質量部に対し、メチロールメラミン20質量部を、30℃の温度条件下に、純水に溶解し、固形分濃度3.7質量%に調整した水溶液を調製した。
【0202】
[画像表示装置A1の作製]
IPSモードの液晶表示装置であるiPad Air(登録商標) Wi-Fiモデル 16GB (APPLE社製)を分解し、液晶セルを取り出した。液晶セルから視認側偏光板を剥離し、視認側偏光板を剥離した面に、上記作製した積層体A1を、偏光板1側が液晶セル側になるようにして、下記の粘着剤シート1を用いて貼合した。このとき、偏光板1の吸収軸の方向は、製品に貼合されていた視認側偏光板の吸収軸と同じになるように貼合した。貼合後、組み立て直し、画像表示装置A1を作製した。
【0203】
(粘着剤シート1の作製)
以下の手順に従い、アクリレート系ポリマーを調製した。
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル95重量部、アクリル酸5重量部を溶液重合法により重合させて、平均分子量200万、分子量分布(Mw/Mn)3.0のアクリレート系ポリマーA1を得た。
【0204】
次に、得られたアクリレート系ポリマーA1(100質量部)に加えて、コロネートL(トリレンジイソシアネ-トのトリメチロールプロパン付加物の75質量%酢酸エチル溶液、1分子中のイソシアネート基数:3個、日本ポリウレタン工業株式会社製)(1.0質量部)、および、シランカップリング剤KBM-403(信越化学工業社製)(0.2質量部)を混合し、最後に全固形分濃度が10質量%となるように酢酸エチルを添加して、粘着剤形成用組成物を調製した。この組成物を、シリコーン系剥離剤で表面処理したセパレートフィルムにダイコーターを用いて塗布し90℃の環境下で1分間乾燥させ、アクリレート系粘着剤シート(粘着剤シート1)を得た。粘着剤シート1の膜厚は25μm、粘着剤シート1の貯蔵弾性率は0.1MPaであった。
【0205】
<実施例2>
光吸収異方性層形成用組成物P1を光吸収異方性層形成用組成物P2に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の画像表示装置A2を作製した。
【0206】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
光吸収異方性層形成用組成物P2の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記二色性物質D-4 0.40質量部
・上記二色性物質D-2 0.15質量部
・上記二色性物質D-3 0.63質量部
・上記高分子液晶性化合物P-1 3.65質量部
・重合開始剤
IRGACUREOXE-02(BASF社製) 0.040質量部
・上記化合物E-1 0.060質量部
・上記化合物E-2 0.060質量部
・上記界面活性剤F-1 0.010質量部
・上記界面活性剤F-2 0.015質量部
・シクロペンタノン 47.00質量部
・テトラヒドロフラン 47.00質量部
・ベンジルアルコール 1.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0207】
二色性物質D-4
【0208】
【0209】
<実施例3>
光吸収異方性層形成用組成物P1を光吸収異方性層形成用組成物P3に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の画像表示装置A3を作製した。
【0210】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
光吸収異方性層形成用組成物P3の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記二色性物質D-1 0.40質量部
・上記二色性物質D-2 0.15質量部
・上記二色性物質D-3 0.63質量部
・下記高分子液晶性化合物P-2 3.20質量部
・下記低分子液晶性化合物M-1 0.45質量部
・重合開始剤
IRGACUREOXE-02(BASF社製) 0.040質量部
・下記化合物E-1 0.060質量部
・下記化合物E-2 0.060質量部
・下記界面活性剤F-1 0.010質量部
・下記界面活性剤F-2 0.015質量部
・シクロペンタノン 47.00質量部
・テトラヒドロフラン 47.00質量部
・ベンジルアルコール 1.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0211】
高分子液晶性化合物P-2
【0212】
【0213】
低分子液晶性化合物M-1
【0214】
【0215】
<実施例4>
光吸収異方性層形成用組成物P1を光吸収異方性層形成用組成物P4に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の画像表示装置A4を作製した。
【0216】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
光吸収異方性層形成用組成物P4の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記二色性物質D-5 0.40質量部
・上記二色性物質D-2 0.15質量部
・上記二色性物質D-3 0.63質量部
・上記高分子液晶性化合物P-1 3.65質量部
・重合開始剤
IRGACUREOXE-02(BASF社製) 0.040質量部
・上記化合物E-1 0.060質量部
・上記化合物E-2 0.060質量部
・上記界面活性剤F-1 0.010質量部
・上記界面活性剤F-2 0.015質量部
・シクロペンタノン 47.00質量部
・テトラヒドロフラン 47.00質量部
・ベンジルアルコール 1.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0217】
二色性物質D-5
【0218】
【0219】
<実施例5>
[セルロースアシレートフィルム1の作製]
(コア層セルロースアシレートドープの作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、コア層セルロースアシレートドープとして用いるセルロースアセテート溶液を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
コア層セルロースアシレートドープ
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・アセチル置換度2.88のセルロースアセテート 100質量部
・特開2015-227955号公報の実施例に
記載されたポリエステル化合物B 12質量部
・下記化合物F 2質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 430質量部
・メタノール(第2溶剤) 64質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0220】
化合物F
【0221】
【0222】
(外層セルロースアシレートドープの作製)
上記のコア層セルロースアシレートドープ90質量部に下記のマット剤溶液を10質量部加え、外層セルロースアシレートドープとして用いるセルロースアセテート溶液を調製した。
【0223】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤溶液
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製) 2質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 76質量部
・メタノール(第2溶剤) 11質量部
・上記のコア層セルロースアシレートドープ 1質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0224】
(セルロースアシレートフィルム2の作製)
上記コア層セルロースアシレートドープと上記外層セルロースアシレートドープとを平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した後、上記コア層セルロースアシレートドープとその両側に外層セルロースアシレートドープとを3層同時に流延口から20℃のドラム上に流延した(バンド流延機)。
次いで、溶剤含有率略20質量%の状態でフィルムをドラム上から剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をテンタークリップで固定し、横方向に延伸倍率1.1倍で延伸しつつ乾燥した。
その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、更に乾燥し、厚み20μmの光学フィルムを作製し、これをセルロースアシレートフィルム2とした。得られたセルロースアシレートフィルム2の面内レターデーションは0nmであった。
【0225】
[透明支持体2の作製]
後述する光配向層形成用塗布液PA1を、ワイヤーバーで連続的に上記セルロースアシレートフィルム2上に塗布した。塗膜が形成された支持体を140℃の温風で120秒間乾燥し、続いて、塗膜に対して偏光紫外線照射(10mJ/cm2、超高圧水銀ランプ使用)することで、光配向層PA1を形成し、光配向層付きTACフィルムを得た。光配向層PA1の膜厚は0.3μmであった。
【0226】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(光配向層形成用塗布液PA1)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
下記記重合体PA-1 100.00質量部
下記酸発生剤PAG-1 5.00質量部
下記酸発生剤CPI-110TF 0.005質量部
イソプロピルアルコール 16.50質量部
酢酸ブチル 1072.00質量部
メチルエチルケトン 268.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0227】
重合体PA-1
【0228】
【0229】
酸発生剤PAG-1
【0230】
【0231】
酸発生剤CPI-110F
【0232】
【0233】
[偏光子層1の形成]
得られた光配向層PA1上に、下記の偏光子層形成用組成物1をワイヤーバーで連続的に塗布し、塗布層1を形成した。
次いで、塗布層1を140℃で30秒間加熱し、塗布層1を室温(23℃)になるまで冷却した。
次いで、得られた塗布層1を80℃で60秒間加熱し、再び室温になるまで冷却した。
その後、LED灯(中心波長365nm)を用いて照度200mW/cm2の照射条件で2秒間照射することにより、光配向層PA1上に偏光子層1を作製した。偏光子層1の膜厚は1.6μmであった。
【0234】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
偏光子層形成用組成物1の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記二色性物質D-1 0.25質量部
・上記二色性物質D-2 0.36質量部
・上記二色性物質D-3 0.59質量部
・上記高分子液晶性化合物P-2 2.21質量部
・上記低分子液晶性化合物M-1 1.36質量部
・重合開始剤
IRGACUREOXE-02(BASF社製) 0.200質量部
・下記界面活性剤F-3 0.026質量部
・シクロペンタノン 46.00質量部
・テトラヒドロフラン 46.00質量部
・ベンジルアルコール 3.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0235】
界面活性剤F-3
【0236】
【0237】
[配向層1の形成]
偏光子層1の表面をコロナ処理した後、上記配向層形成用塗布液1をワイヤーバーで連続的に塗布した。その後、100℃の温風で2分間乾燥することにより、偏光子層1上に厚み1.0μmのポリビニルアルコール(PVA)配向層1が形成された。
【0238】
[光吸収異方性層P1の形成]
得られた配向層1の上に、上記光吸収異方性層形成用組成物P1をワイヤーバーで連続的に塗布し、塗布層P1を形成した。
次いで、塗布層P1を140℃で30秒間加熱し、塗布層P1を室温(23℃)になるまで冷却した。
次いで、得られた塗布層P1を80℃で60秒間加熱し、再び室温になるまで冷却した。
その後、LED灯(中心波長365nm)を用いて照度200mW/cm2の照射条件で2秒間照射することにより、配向層1上に光吸収異方性層P1を作製し、積層体A5とした。塗布層P1の膜厚は3μm、光吸収異方性層P1の波長550nmにおける配向度は0.96であった。
【0239】
[画像表示装置A5の作製]
IPSモードの液晶表示装置であるiPad Air(登録商標) Wi-Fiモデル 16GB (APPLE社製)を分解し、液晶セルを取り出した。液晶セルから視認側偏光板を剥離し、視認側偏光板を剥離した面に、上記作製した積層体A5を、セルロースアシレートフィルム2側が液晶セル側になるようにして、上記粘着剤シート1を用いて貼合した。このとき、偏光子層1の吸収軸の方向は、製品に貼合されていた視認側偏光板の吸収軸と同じになるように貼合した。貼合後、組み立て直し、画像表示装置A5を作製した。
【0240】
<比較例1>
光吸収異方性層形成用組成物P1を光吸収異方性層形成用組成物P5に変更した以外は、実施例1と同様にして画像表示装置B1を作製した。
【0241】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
光吸収異方性層形成用組成物P5の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記二色性物質D-5 8.71質量部
・下記二色性物質D-6 10.59質量部
・下記高分子液晶性化合物P-3 44.13質量部
・重合開始剤
IRGACUREOXE-02(BASF社製) 0.040質量部
・上記化合物E-1 0.800質量部
・上記化合物E-2 0.800質量部
・上記界面活性剤F-2 0.960質量部
・シクロペンタノン 793.90質量部
・テトラヒドロフラン 140.10質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0242】
二色性物質D-6
【0243】
【0244】
高分子液晶性化合物P-3
【0245】
【0246】
<比較例2>
光吸収異方性層の膜厚を3μmから4.5μmになるように変更した以外は、比較例1と同様にして画像表示装置B2を作製した。
【0247】
<性能の評価>
(1)配向度の評価
得られた異方性光吸収層の波長550nmにおける配向度は以下の方法によって算出した。
AxoScan OPMF-1(オプトサイエンス社製)を用いて、測定の際に、光吸収異方性層の法線方向に対する角度である極角を0~90°まで5°毎に変更しつつ、各極角における全方位角度での波長550nmでの透過率を測定した。次に、表面反射の影響を除去した後、最も透過率の高い方位角および極角での透過率をTm(0)、最も透過率の高い方位角方向において、最も透過率の高い極角からさらに極角を40°傾けた角度での透過率をTm(40)とする。得られたTm(0)およびTm(40)から下記式により吸光度を算出し、A(0)およびA(40)を算出した。
A=-log(Tm)
ここで、Tmは透過率、Aは吸光度を表す。
算出したA(0)およびA(40)より、下記式で定義された波長550nmにおける配向度Sを算出した。
S=(4.6×A(40)-A(0))/(4.6×A(40)+2×A(0))
上記波長を550nmから420nmに変更することにより、波長420nmにおける配向度Sを算出した。
【0248】
(2)透過率と色味の評価
上記作製した画像表示装置A1を、測定機(EZ-Contrast XL88、ELDIM社製)を用いて、白表示画面の極角0°(正面方向)の輝度Y(0)A1、極角30°(斜め方向)の輝度Y(30)A1、極角0°の色味a*(0)A1、色味b*(0)A1、極角30°の色味a*(30)A1、色味b*(30)A1を測定した。
また、画像表示装置A1の作製において、光吸収異方性層がない偏光板を液晶セルに貼合以外は、実施例1と同様にして、画像表示装置Cを作製し、上記記載と同様にして、白表示画面の極角0°(正面方向)の輝度Y(0)C、極角30°(斜め方向)の輝度Y(30)Cを測定した。光吸収異方性層を含まない画像表示装置Cの輝度と比較することで、正面透過率T0(T(0))および斜め透過率T30(T(30))を求めた。
具体的には、下記式を用いて算出し、下記の基準で透過率を評価した。
T(0)={Y(0)A1/Y(0)C}×100
T(30)={Y(30)A1/Y(30)C}×100
A:極角0°(正面)透過率が80%以上、
且つ、極角30°(斜め)透過率が10%以下。
B:極角0°(正面)透過率が80%より低く、
且つ、極角30°(斜め)透過率が10%以下。
または、極角0°(正面)透過率が80%以上、
且つ、極角30°(斜め)透過率が10%より高い。
または、極角0°(正面)透過率が80%より低く、
且つ、極角30°(斜め)透過率が10%より高い。
【0249】
また、色味評価については、下記式を用いて算出し、下記の基準で色味を評価した。
|a*b*|= √(a*(0)A12+b*(0)A12)
+√(a*(30)A12+b*(30)A12)
AA:|a*b*|が12未満
A:|a*b*|が12以上15未満
B:|a*b*|が15以上
【0250】
画像表示装置A1の代わりに、画像表示装置A2~A5、B1~B2を使用して、上記と同様の手順に従って、透過率と色味の評価を実施した。
【0251】
なお、実施例1~5で得られた光吸収異方性層においては、二色性物質が膜面に対し垂直に配向していた。垂直に配向の定義は、上述した通りである。
【0252】
表1中、「550nm配向度」は、光吸収異方性層の波長550nmにおける配向度を表し、「420nm配向度」は、光吸収異方性層の波長420nmにおける配向度を表す。
「透過率」欄の「正面」欄は、正面透過率を表し、「30°」欄は、極角30°(斜め)透過率を表す。
【0253】
【0254】
[曲面加工適正確認]
曲面を有するスマートフォン(Galaxy Note9 サムスン製)の表示画面に、実施例1で作製した積層体A1を、偏光板1側を貼合側にして、市販の粘着剤SK2057(綜研化学製)を用いて貼合した。積層体A1は膜厚が100μm以下で剛性が低いため、表示画面の曲面部分においても、気泡などが入らず、きれいに貼合できた。
続いて、本発明の光学フィルムと同様の性能を持つ、市場に多く普及しているルーバータイプの光学フィルム(3MTM セキュリティ/プライバシーフィルターPF12 H2シリーズ)を上記スマートフォンの表示画面上に、市販の粘着剤SK2057(綜研化学製)を用いて貼合した。ルーバータイプの光学フィルムは、膜厚が500μmで剛性が高いため、表示画面の曲面部分において、気泡が入ってしまい、きれいに貼合することができなかった。
【0255】
<実施例6>
[光吸収異方性層の形成]
領域Aと領域Bのパターンを有する光吸収異方性層を下記のように作製した。
実施例1の配向層PA1上に、上記の光吸収異方性層形成用組成物P1をワイヤーバーで連続的に塗布し、塗布層P1を形成した。
次いで、塗布層P1を140℃で30秒間加熱し、塗布層P1を室温(23℃)になるまで冷却した。
次いで、得られた塗布層P1を80℃で60秒間加熱し、再び室温になるまで冷却した。
その後、高圧水銀灯が出射する光を、マスクを介して、照度28mW/cm2の照射条件で60秒間照射することにより、配向膜PA上に、面内に液晶性化合物の硬化領域と未硬化領域とを有する光吸収異方性層を作製した。なお、マスクは、領域Aとして縦10mm×横50mmの長方形の光透過部を有する、遮光部(領域B)と光透過部とを有するマスクパターンとした。
作製した面内に液晶性化合物の硬化領域(領域A)と未硬化領域(領域B)とを有する光吸収異方性層を有するフィルムを、エタノール中に3分間浸漬して、重合していない液晶性化合物を洗浄除去し、面内に偏光度の異なる領域Aおよび領域Bを有するパターン光吸収異方性層を有する光吸収異方性フィルム6を形成した。
領域Aにおいては、二色性物質が膜面に対し垂直に配向していた。垂直に配向の定義は、上述した通りである。
また、領域Aにおける波長550nmにおける配向度は0.96であり、波長420nmにおける配向度は0.94であった。
さらに、領域Aは、極角30°透過率が10%以下であり、正面透過率が80%以上であった。領域Bは、極角30°透過率も正面透過率も80%以上であった。
【0256】
[積層体A6の作製]
国際公開第2015/166991号記載の片面保護膜付偏光板02と同様の方法で、偏光子の厚さが8μmで、偏光子の片面がむき出しの偏光板1を作製した。
上記偏光板1の偏光子がむき出し面と、作製した光吸収異方性フィルム6の光吸収異方性層表面を上記粘着剤シート1を用いて貼合し、積層体A6を作製した。
【0257】
[画像表示装置A6の作製]
上記画像表示装置A1と同様にして、積層体A1を積層体A6に変更して、画像表示装置A6を作製した。領域Aの部分のみが狭視野角であり、正面からのみはっきりと視認できた。
【0258】
<実施例7>
[光吸収異方性層の形成]
領域Aと領域Bのパターンを有する光吸収異方性層を下記のように作製した。
実施例1の配向層PA1上に、上記の光吸収異方性層形成用組成物P1をワイヤーバーで連続的に塗布し、塗布層P1を形成した。
次いで、塗布層P1を140℃で30秒間加熱し、塗布層P1を室温(23℃)になるまで冷却した。
次いで、得られた塗布層P1を80℃で60秒間加熱し、再び室温になるまで冷却した。
その後、高圧水銀灯が出射する光を、マスクを介して、照度28mW/cm2の照射条件で60秒間照射することにより、配向膜上に、面内に液晶性化合物の硬化領域と未硬化領域とを有する光吸収異方性層を作製した。なお、マスクは、領域Aとして縦85μm×横50mmの長方形の光透過部を有し、領域Bとして縦85μm×横50mmの長方形の遮光部を有し、領域Aと領域Bが交互に配置され、縦方向50mmの長さを有するマスクパターンを使用した。
作製した面内に液晶性化合物の硬化領域(領域A)と未硬化領域(領域B)とを有する光吸収異方性層を有するフィルムを、エタノール中に3分間浸漬して、重合していない液晶性化合物を洗浄除去し、面内に偏光度の異なる領域Aおよび領域Bを有する光吸収異方性層を有する光吸収異方性フィルム7を形成した。
領域Aにおいては、二色性物質が膜面に対し垂直に配向していた。垂直に配向の定義は、上述した通りである。
また、領域Aにおける波長550nmにおける配向度は0.96であり、波長420nmにおける配向度は0.94であった。
さらに、領域Aは、極角30°透過率が10%以下であり、正面透過率が80%以上であった。領域Bは、極角30°透過率も正面透過率も80%以上であった。
【0259】
[積層体A7の作製]
国際公開第2015/166991号記載の片面保護膜付偏光板02と同様の方法で、偏光子の厚さが8μmで、偏光子の片面がむき出しの偏光板1を作製した。
上記偏光板1の偏光子がむき出し面と、作製した光吸収異方性フィルム7の光吸収異方性層表面を粘着剤SK2057(綜研化学製)を用いて貼合し、積層体A7を作製した。
【0260】
[画像表示装置A7の作製]
Samsung製スマートフォン GaLaxy S4を分解し、EL基板に貼合されている偏光板を剥離した。偏光板を剥離したEL基板上に、粘着剤SK2057(綜研化学製)を用いてピュアエースWR W142(帝人製)と上記記載の積層体A7を、ピュアエースWR W142がEL基板側、また、積層体A7の光吸収異方性フィルム7側が視認側になるように貼合した。この時、積層体A7の領域Aと領域BがEL基板の画素に対して、一致するように貼合した。
【0261】
作製した画像表示装置A7に、領域Aに重なる画素だけに画像を表示させる画像αと、領域Bに重なる画素だけに画像を表示させる画像βを用意した。画像αを表示させた場合、画像表示装置A7に貼合されたフィルムの吸収軸に対して、極角30°の方向から画像を見た時、画像が暗くなり、画像を認識できなくなった。また、画像βを表示させた場合、画像表示装置A7に貼合されたフィルムの吸収軸に対して、極角30°の方向から画像を見た時、明るさの変化が小さく、画像を認識できた。したがって、パターン光吸収異方性フィルム7を使用することで、視野角を切り替えられる画像表示装置を作製できることを確認できた。
【0262】
<実施例8>
特開2017-098246号公報の実施例を参考に、光フィルター素子140を実施例1で作製した光吸収異方性フィルム1として、視野角切り替え可能なバックライトモジュールを作製した。
図1は、本発明の一実施例のバックライトモジュールの概略図である。
図1を参照すると、本実施例のバックライトモジュール100は第一面光源アセンブリー110、第二面光源アセンブリー120、第一光学シート130および光フィルター素子140を含む。
第一面光源アセンブリー110は第一発光ユニット111および第一導光板112を含み、第一導光板112は対向する第一出光面114と第一底面115、および第一出光面114と第一底面115との間に位置する第一入光面113を有し、第一発光ユニット111が第一導光板112の第一入光面113の近傍に位置する。
第二面光源アセンブリー120は第一面光源アセンブリー110の上方に位置し、かつ第二発光ユニット121および第二導光板122を含み、第二導光板122は対向する第二出光面124と第二底面125、および第二出光面124と第二底面125との間に位置する第二入光面123を有し、第二発光ユニット121は第二導光板122の第二入光面123の近傍に位置する。
第一光学シート130は第二面光源アセンブリー120の上方に位置し、かつ第一方向(例えば、X軸方向)に配列された複数のプリズムピラー131を含み、プリズムピラー131の先端132が第二面光源アセンブリー120に向っている。本実施例において、プリズムピラー131の軸延伸方向が第二方向(例えば、Z軸方向)へ延伸し、かつ第一方向が第二方向に垂直である。光フィルター素子140は第一面光源アセンブリー110と第二面光源アセンブリー120との間に位置し、かつ光フィルター素子140は所定の入射角度範囲内の入射光線を透過させる。
第一発光ユニット111は光線を提供し、この光線が第一入光面113から第一導光板112内に進入し、第一導光板112は光線を変換して、第一導光板112の第一出光面114から出射する第一面光源にする。第二発光ユニット121は光線を提供し、この光線が第二入光面123から第二導光板122内に進入し、第二導光板122は光線を変換して、第二導光板122の第二出光面124から出射する第二面光源にする。
第一発光ユニット111と第二発光ユニット121は、例えば、いずれも基板(図示せず)および基板上に配置された複数の発光素子(図示せず)、例えば発光ダイオードを含むが、これに限定されない。本発明は、第一発光ユニット111および第二発光ユニット121の種類について限定しない。また、第一導光板112の第一底面115および第二導光板122の第二底面125において、光線が第一出光面114および第二出光面124から出射される際の光の型を調整するための微構造(図示せず)を設けることができる。上記微構造は網点、溝などであってもよいが、これに限定されない。
第一光学シート130は、例えば、逆プリズムシートまたは逆プリズムシート構造を有する複合式光学シートであり、入射角度の異なる光線が第一光学シート130から出射させる際に異なる出射角度になるようにできる。プリズムピラー131の第一表面133から入射される光線を例にすると、入射角度が比較的に大きい場合、光線が第二表面134まで屈折され、かつ第二表面134に反射された後、比較的に小さい出射角度で第一光学シート130の出光側135から出射される。入射角度が比較的に小さい場合、光線が屈折された後そのまま比較的に大きい出射角度で第一光学シート130の出光側135から出射される。また、各プリズムピラー131の軸延伸方向が、例えばZ軸方向と平行である。各プリズムピラー131の先端132に面取り処理、例えば丸面取りが施してもよい。
具体的に言うと、第一発光ユニット111がオンの時、光線L1は主に比較的に小さい入射角度で第一光学シート130のプリズムピラー131の第一表面133および第二表面134に入射されるため、比較的に大きい出射角度で第一光学シート130の出光側135から出射される。第二発光ユニット121がオンの時、光線L2は主に比較的に大きい入射角度で
図1の第一光学シート130のプリズムピラー131の第一表面133および第二表面134に入射されるため、比較的に小さい出射角度で第一光学シート130の出光側135から出射される。第一発光ユニット111と第二発光ユニット121が共にオンの時、出射角度が比較的に大きい光線L1と出射角度が比較的に小さい光線L2は第一光学シート130の出光側135から出射され、重なった後、広視角面光源を形成することができる。従って、第一発光ユニット111と第二発光ユニット121が共にオンの時、広視角モードと定義することができる。一方、第一発光ユニット111がオフで、第二発光ユニット121がオンの時、出射角度が比較的に小さい光線L2が第一光学シート130の出光側135から出射された後、狭視角面光源が形成される。従って、第二発光ユニット121がオンで、かつ第一発光ユニット111がオフの時、狭視角モードと定義することができる。つまり、
図1に記載のバックライトモジュールは、視野角を切り替えることが可能なバックライトモジュールに該当する。
以上より、光フィルター素子140として、本発明の光吸収異方性フィルム1を用いることで、正面輝度が高く、視野角切り替え可能なバックライトモジュールとなることを確認した。