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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024026975
(43)【公開日】2024-02-29
(54)【発明の名称】Syk阻害剤および医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5025 20060101AFI20240221BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240221BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240221BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240221BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20240221BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240221BHJP
   C07D 495/04 20060101ALI20240221BHJP
   A61K 31/40 20060101ALI20240221BHJP
   A61K 31/55 20060101ALI20240221BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20240221BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20240221BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20240221BHJP
   A61K 31/495 20060101ALI20240221BHJP
   C07D 207/16 20060101ALN20240221BHJP
   C07D 295/15 20060101ALN20240221BHJP
   C07D 239/95 20060101ALN20240221BHJP
   C07D 295/155 20060101ALN20240221BHJP
【FI】
A61K31/5025
A61K45/00
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P7/04
A61P43/00 111
C07D495/04 105Z
A61K31/40
A61K31/55
A61K31/137
A61K31/167
A61K31/517
A61K31/495
C07D207/16
C07D295/15
C07D239/95
C07D295/155
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129604
(22)【出願日】2022-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】中林 淳
(72)【発明者】
【氏名】水本 真介
(72)【発明者】
【氏名】津村 享佑
(72)【発明者】
【氏名】大平 詩野
【テーマコード(参考)】
4C071
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C071AA01
4C071BB01
4C071CC02
4C071CC21
4C071DD40
4C071EE13
4C071FF05
4C071GG02
4C071GG06
4C071HH17
4C071HH28
4C071JJ01
4C071JJ08
4C071LL01
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA53
4C084ZA96
4C084ZB15
4C084ZC41
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC07
4C086BC31
4C086BC46
4C086BC50
4C086CB26
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA53
4C086ZA96
4C086ZB15
4C086ZC41
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA11
4C206GA31
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA53
4C206ZA96
4C206ZB15
4C206ZC41
(57)【要約】      (修正有)
【課題】新規なSyk阻害剤、上記Syk阻害剤を利用した医薬組成物を提供すること。
【解決手段】式(I)の化合物またはその塩を含む、Syk阻害剤。

[式中、Yは、NH、O、またはSであり、Rは、H、OH、NH、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル等から選択され、Rは、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アリールアルキル等から選択される。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物またはその塩を含む、Syk阻害剤。
【化1】
[式中、
Yは、NH、O、またはSであり、
は、以下の群から選択され:
【化2】
(式中、
XはCH、NH、S、またはOであり、
は、-H、-NH、-OH、-N(R,R)、-C(R1-7NR、-C(R1-7OR、またはN(R)NRであり、
ここで、R、R、R、Rは、H、(C1-C6)アルキル、O、S、およびNの核ヘテロ原子を有する若しくは有さない(C3-C8)シクロアルキル、置換または非置換のアリール、または置換または非置換のヘテロアリールであり、
、R10、R11、R12、およびR13は、H、(C1-C6)アルキル、O、S、若しくはNの核ヘテロ原子を有する若しくは有さない(C3-C8)シクロアルキル;置換または非置換のアリール、または置換または非置換のヘテロアリールである)、
は、H、OH、NH、OR14、NR1415、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アリールアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アルケニル、およびアルキニルからなる群から選択され、
ここで、R14、R15は、H、(C1-C6)アルキル、O、S、Nの核ヘテロ原子を有する若しくは有さない(C3-C8)シクロアルキル、置換または非置換のアリール、または置換または非置換のヘテロアリールであり、
並びに
は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アリールアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アルケニル、およびアルキニルからなる群から選択される。]
【請求項2】
式(I)の化合物またはその塩を含む、Sykが関与する疾患の治療のための医薬組成物。
【化3】
[式中、
Yは、NH、O、またはSであり、
は、以下の群から選択され:
【化4】
(式中、
XはCH、NH、S、またはOであり、
は、-H、-NH、-OH、-N(R,R)、-C(R1-7NR、-C(R1-7OR、またはN(R)NRであり、
ここで、R、R、R、Rは、H、(C1-C6)アルキル、O、S、およびNの核ヘテロ原子を有する若しくは有さない(C3-C8)シクロアルキル、置換または非置換のアリール、または置換または非置換のヘテロアリールであり、
、R10、R11、R12、およびR13は、H、(C1-C6)アルキル、O、S、若しくはNの核ヘテロ原子を有する若しくは有さない(C3-C8)シクロアルキル;置換または非置換のアリール、または置換または非置換のヘテロアリールである)、
は、H、OH、NH、OR14、NR1415、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アリールアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アルケニル、およびアルキニルからなる群から選択され、
ここで、R14、R15は、H、(C1-C6)アルキル、O、S、Nの核ヘテロ原子を有する若しくは有さない(C3-C8)シクロアルキル、置換または非置換のアリール、または置換または非置換のヘテロアリールであり、
並びに
は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アリールアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アルケニル、およびアルキニルからなる群から選択される。]
【請求項3】
関節リウマチおよび特発性血小板減少性紫斑病からなる群から選択される疾患の治療のための請求項2に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チエノ-ピリダジン構造を有する化合物を含むSyk阻害剤および医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
非受容体型細胞内チロシンリン酸化酵素であるSpleen Tyrosine Kinase(Syk)は、B細胞の活性化やFc受容体を介した細胞内シグナル伝達系において不可欠な役割を果たしている。例えば、Sykは、肥満細胞や好塩基球等において、免疫グロブリンE受容体であるFcεRIシグナルに関与し、これらの細胞からのヒスタミン、ロイコトリエン等の炎症性メディエーターやサイトカイン産生を調節する一方、単球や樹状細胞等において、Fcγ受容体刺激による活性化シグナルを細胞内に伝達する役割を担っている(特許文献1)。また、Sykは、インテグリンやインターロイキン-13(IL-13)或いはインターロイキン-15(IL-15)等によるサイトカイン・シグナル伝達にも関与していることが報告されている。
【0003】
B細胞においては、細胞膜上に発現しているBCR(B細胞抗原受容体)を介して細胞内にシグナルが伝達されることにより、細胞の活性化および分化が引き起こされ、抗体産生へとつながる。Sykは、その活性化および分化過程に必須であることが報告されている。
【0004】
Sykを阻害することで、様々な細胞応答を抑制することが期待される。
例えば、即時型のアレルギー反応であるI型アレルギーでは、免疫グロブリンE(IgE)と高親和性IgE受容体であるFcεRIが結合し、そこにアレルゲンが結合することにより、FcεRIを活性化、炎症性メディエーターの放出を促すことにより、アレルギー症状を発現する。Sykの活性を阻害することは、FcεRIの活性化を抑制することを通して、I型アレルギーの代表的疾患である気管支喘息、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎等の治療に有用であると期待される。
また、Sykの活性を阻害することは、免疫B細胞の活性化・成熟化および抗体産生を抑制することを通して、I型アレルギー以外の免疫反応も制御できると考えられる。したがって、自己免疫疾患(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス等)、自己免疫性溶血性貧血、ネフローゼ症候群、接触性皮膚炎等に有効であることが期待される。また、Sykの活性を阻害することは、併せてマクロファージの活性化も抑制することが考えられるため、特発性血小板減少性紫斑病にも有効であることが期待される。
【0005】
更に、Sykの活性阻害は、免疫・炎症性疾患のみならず、B細胞を初めとしたリンパ球の活性化、増殖の抑制を通して、種々のリンパ腫やリンパ球性白血病の増殖性疾患の治療にも有効であることが期待される。また、骨髄細胞の増殖および分化を制御することにより、急性骨髄性白血病等にも有効であると期待される。
【0006】
一方、Sykは細胞接着分子であるインテグリンを介したシグナルにも関与することが知られている。Sykは、血小板において発現し、その活性化に関与することから、その阻害剤は血小板の活性化に伴う疾患の治療薬としても有効であると期待される。
Syk阻害活性を有する化合物が、数多く報告されており、関節リウマチおよび特発性血小板減少性紫斑病を対象とした臨床試験において、有効な化合物が報告されている(特許文献1)。
【0007】
一方、特許文献2には、プロテインキナーゼ、特に、チェックポイントキナーゼChk1/Chk2を阻害することができる化合物、および上記化合物を含む医薬組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2012/002577号パンフレット
【特許文献2】特表2013-505254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、新規なSyk阻害剤、および上記Syk阻害剤を利用した医薬組成物および治療方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、本明細書において定義する式Iの化合物が優れたSyk阻害活性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
<1> 式(I)の化合物またはその塩を含む、Syk阻害剤。
【化1】
[式中、
Yは、NH、O、またはSであり、
は、以下の群から選択され:
【化2】
(式中、
XはCH、NH、S、またはOであり、
は、-H、-NH、-OH、-N(R,R)、-C(R1-7NR、-C(R1-7OR、またはN(R)NRであり、
ここで、R、R、R、Rは、H、(C1-C6)アルキル、O、S、およびNの核ヘテロ原子を有する若しくは有さない(C3-C8)シクロアルキル、置換または非置換のアリール、または置換または非置換のヘテロアリールであり、
、R10、R11、R12、およびR13は、H、(C1-C6)アルキル、O、S、若しくはNの核ヘテロ原子を有する若しくは有さない(C3-C8)シクロアルキル;置換または非置換のアリール、または置換または非置換のヘテロアリールである)、
は、H、OH、NH、OR14、NR1415、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アリールアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アルケニル、およびアルキニルからなる群から選択され、
ここで、R14、R15は、H、(C1-C6)アルキル、O、S、Nの核ヘテロ原子を有する若しくは有さない(C3-C8)シクロアルキル、置換または非置換のアリール、または置換または非置換のヘテロアリールであり、
並びに
は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アリールアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アルケニル、およびアルキニルからなる群から選択される。]
<2> 式(I)の化合物またはその塩を含む、Sykが関与する疾患の治療のための医薬組成物。
【化3】
[式中、
Yは、NH、O、またはSであり、
は、以下の群から選択され:
【化4】
(式中、
XはCH、NH、S、またはOであり、
は、-H、-NH、-OH、-N(R,R)、-C(R1-7NR、-C(R1-7OR、またはN(R)NRであり、
ここで、R、R、R、Rは、H、(C1-C6)アルキル、O、S、およびNの核ヘテロ原子を有する若しくは有さない(C3-C8)シクロアルキル、置換または非置換のアリール、または置換または非置換のヘテロアリールであり、
、R10、R11、R12、およびR13は、H、(C1-C6)アルキル、O、S、若しくはNの核ヘテロ原子を有する若しくは有さない(C3-C8)シクロアルキル;置換または非置換のアリール、または置換または非置換のヘテロアリールである)、
は、H、OH、NH、OR14、NR1415、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アリールアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アルケニル、およびアルキニルからなる群から選択され、
ここで、R14、R15は、H、(C1-C6)アルキル、O、S、Nの核ヘテロ原子を有する若しくは有さない(C3-C8)シクロアルキル、置換または非置換のアリール、または置換または非置換のヘテロアリールであり、
並びに
は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アリールアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アルケニル、およびアルキニルからなる群から選択される。]
<3> 関節リウマチおよび特発性血小板減少性紫斑病からなる群から選択される疾患の治療のための<2>に記載の医薬組成物。
<4> 上記式(I)の化合物またはその塩をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む、Sykが関与する疾患の治療方法。
【0012】
<A> 上記式(I)の化合物またはその塩をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む、Sykを阻害する方法。
<B> Sykを阻害する治療において使用するための、上記式(I)の化合物またはその塩。
<C> Sykが関与する疾患の治療において使用するための、上記式(I)の化合物またはその塩。
<D> Syk阻害剤の製造のための、上記式(I)の化合物またはその塩の使用。
<E> Sykが関与する疾患の治療のための医薬組成物の製造のための、上記式(I)の化合物またはその塩の使用。
【発明の効果】
【0013】
本発明のSyk阻害剤は、優れたSyk阻害活性を有し、Sykが関与する疾患の治療のための医薬組成物として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を意味する。
【0015】
本発明で使用する化合物は、以下の式(I)の構造を有する。
【化5】
[式中、
Yは、NH、O、またはSであり、
は、以下の群から選択され:
【化6】
(式中、
XはCH、NH、S、またはOであり、
は、-H、-NH、-OH、-N(R,R)、-C(R1-7NR、-C(R1-7OR、またはN(R)NRであり、
ここで、R、R、R、Rは、H、(C1-C6)アルキル、O、S、およびN等の核ヘテロ原子を有する若しくは有さない(C3-C8)シクロアルキル、置換または非置換のアリール、または置換または非置換のヘテロアリールであり、
、R10、R11、R12、およびR13は、H、(C1-C6)アルキル、O、S、若しくはN等の核ヘテロ原子を有する若しくは有さない(C3-C8)シクロアルキル;置換または非置換のアリール、または置換または非置換のヘテロアリールである)、
は、H、OH、NH、OR14、NR1415、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アリールアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アルケニル、およびアルキニルからなる群から選択され、
ここで、R14、R15は、H、(C1-C6)アルキル、O、S、N等の核ヘテロ原子を有する若しくは有さない(C3-C8)シクロアルキル、置換または非置換のアリール、または置換または非置換のヘテロアリールであり、
並びに
は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アリールアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アルケニル、およびアルキニルからなる群から選択される。好ましくは、Rは、以下の群から選択される:
【化7】
(式中、
16、R17、およびR18は、以下の群から選択される:H;F、Cl、Br、I等のヘテロ原子;(C1-C8)アルキル;置換または非置換の(C3-C8)シクロアルキル、ここで、置換は(C1-C8)アルキル、(C3-C8)シクロアルキル、アリール、およびヘテロアリールからなる群から選択され;-OR19;-SR19;-NR1920;-S(O)R19;-S(O)19;-S(O)NR1920;-C(O)NR1920;-N(R19)C(O)R20;-N(R19)S(O)20;-N(R19)C(O)N(R2021);N(R19)C(O)OR20;置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリール、置換または非置換のアリールアルキル、置換または非置換のヘテロシクリル、置換または非置換のヘテロシクリルアルキル;置換または非置換のアルケニル、および置換または非置換のアルキニル、
ここで、R19、R20、およびR21は、独立に、H、(C1-C8)アルキル、(C3-C8)シクロアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のアルキルアリール、および置換または非置換のヘテロアリールから選択され、
或いは、R16、R17、およびR21は、N、O、およびSから選択される0~3個のヘテロ原子を含有する縮合環の部分であってよい。)]
【0016】
好ましくは、Yは、NHである。
好ましくは、Rは、以下の群から選択され:
【化8】
【0017】
(式中、XはCH、NH、S、またはOであり、Rは、-Hである)
【0018】
好ましくは、Rは、H、およびアルキルからなる群から選択される。
好ましくは、Rは、ハロゲンで置換されたフェニルである。
【0019】
上記の化合物は、特表2013-505254号公報(WO2011/035077、US2012/0232082)の0020段落に記載の一般スキームに例示するとおりに調製することができる。
【0020】
好ましい実施形態では、化合物は、式(II)の構造を有する。
【化9】
【0021】
[式中、R、R及びRは、上記式(I)におけるR、R及びRと同一であり、好ましい態様も上記式(I)におけるものと同一である。
【0022】
式(I)の化合物の一例としては、(S)-2-(3-フルオロフェニル)-4-(ピペリジン-3-イルアミノ)チエノ[2,3-d]ピリダジン-7-カルボキサミドを挙げることができる。
【0023】
アルキルとしては、C1―C12アルキルが挙げられ、好ましくはC1―C6アルキルであり、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、ヘプチルおよびオクチルなどが挙げられる。
アリールとしては、C6-C20アリールが挙げられ、好ましくはC6―C12アリールであり、フェニル、ナフチル、インダニルまたはインデニルなどが挙げられる。
ヘテロアリールとしては、O、S、およびNのヘテロ原子を有するC6-C20ヘテロアリールが挙げられ、好ましくはO、S、およびNのヘテロ原子を有するC6―C12ヘテロアリールである。
シクロアルキルとしては、C3-C10シクロアルキルが挙げられ、好ましくはC3―C6シクロアルキルであり、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルなどが挙げられる。
アリールアルキルとしては、C7―C30アリールアルキルが挙げられ、好ましくはC7―C15アリールアルキルであり、ベンジル、2-フェニルプロパン-2-イル、ジフェニルメチル、トリチル、フェネチルおよびナフチルメチルなどが挙げられる。
ヘテロシクリルとしては、O、S、およびNのヘテロ原子を有するC2―C10ヘテロシクリルが挙げられ、好ましくはO、S、およびNのヘテロ原子を有するC2―C6ヘテロシクリルである。
ヘテロシクリルアルキルとしては、O、S、およびNのヘテロ原子を有するC2―C10ヘテロシクリルアルキルが挙げられ、好ましくはO、S、およびNのヘテロ原子を有するC2―C6ヘテロシクリルアルキルである。
アルケニルとしては、C2―C12アルケニルルが挙げられ、好ましくはC2―C6アルケニルであり、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、1,3-ブタジエニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニルおよびオクテニルなどが挙げられる。
アルキニルとしては、C2―C12アルキニルが挙げられ、好ましくはC2―C6アルキニルであり、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニルおよびオクチニルなどが挙げられる。
【0024】
本明細書において「置換」という場合における置換基としては、以下の置換基群αから選択される置換基を挙げることができる。
【0025】
置換基群α:
ハロゲン原子;シアノ基;ニトロ基;オキソ基;保護されていてもよいカルボキシル基;保護されていてもよいヒドロキシル基;保護されていてもよいアミノ基;夫々、置換基群β1-1から選択される置換基を少なくとも1つ有してもよい、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-8シクロアルキル、アリール、C1-6アルコキシ、アリールオキシ、アシル、C1-6アルキルスルホニル、アリールスルホニルもしくはヘテロアリール
【0026】
置換基群β:
ハロゲン原子;シアノ基;ニトロ基;オキソ基;保護されていてもよいカルボキシル基;保護されていてもよいヒドロキシル基;保護されていてもよいアミノ基;または、夫々、ハロゲン原子を少なくとも1つ有してもよい、C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6アルコキシ、アリールもしくはヘテロアリール
【0027】
式(I)の化合物は、特表2013-505254号公報に記載されており、特表2013-505254号公報に記載の方法により製造することができる。
【0028】
式(I)の化合物において、塩の形態を取り得る化合物は、塩として使用することもできる。式(I)の化合物の塩としては、塩基性基または酸性基における塩を挙げることができる。
上記した塩の中で、好ましい塩としては、薬理学的に許容される塩が挙げられる。
式(I)の化合物において、異性体(例えば、光学異性体、幾何異性体および互変異性体など)が存在する場合、これらの異性体も使用することができる。また、溶媒和物、水和物および種々の形状の結晶が存在する場合、これらの溶媒和物、水和物および種々の形状の結晶も使用することができる。
【0029】
本発明は、式(I)の化合物またはその塩を含む、Sykが関与する疾患の治療のための医薬組成物を提供する。
【0030】
本発明のSyk阻害剤および医薬組成物は、液体、半固体または固体の形態とすることができる。医薬組成物の形態としては、例えば注射剤とすることができる。
【0031】
本発明のSyk阻害剤および医薬組成物は、式(I)の化合物またはその塩に加えて、薬学的に許容できる添加物(例えば、担体、増量剤、溶媒、賦形剤、界面活性物質、染色料、保存料、崩壊剤、減摩剤、滑沢剤、着香料および/または結合剤等)を含んでいてもよい。
【0032】
本発明のSyk阻害剤および医薬組成物の投与方法は、特に限定されず、経口投与または非経口投与のいずれでもよい。
【0033】
投与方法、投与量および投与回数は、患者の年齢、体重および症状に応じて適宜選択することができる。
【0034】
本発明の医薬組成物は、式(I)の化合物またはその塩を含有することを特徴とする。本発明の医薬組成物は、Syk関連疾患の治療のための医薬組成物として好適に使用することができる。
Syk関連疾患としては、例えば、関節リウマチが挙げられる。本発明の医薬組成物は、これらの疾患の処置のための医薬組成物として好適に使用することができる。
【0035】
本発明は、式(I)の化合物またはその塩をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む、Sykが関与する疾患の治療方法を提供する。式(I)の化合物またはその塩は、その治療有効量を必要とする患者に投与することができる。
【0036】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例0037】
後記の表1および2に示す化合物1~8は、ナミキ商事株式会社より購入した。
【0038】
<実施例1>Syk酵素アッセイ
Syk酵素アッセイは、ADP-Glo+SYK Kinase Enzyme System(Promega社)を用い、プロトコルに従って実施した。
【0039】
Syk蛋白質と所定の濃度の試験化合物(化合物1~8)を含む3μL反応液(1.5 ng Syk、40mmol/L Tris、20mmol/L MgCl、50μmol/Lジチオトレイトール(DTT)、0.1mg/mlウシ血清アルブミン(BSA)、pH7.5)を2分間振盪した後、室温で8分間静置した。その後、基質ペプチドであるPoly(4:1 Glu、Tyr)Peptide(終濃度0.2mg/mL)とATP(終濃度10μmol/L)を含む水溶液を2μL添加し、2分間振盪後、さらに58分間室温で静置して酵素反応を行った。
【0040】
次に、ADP-Glo Reagentを5μL添加し、2分間振盪後さらに38分間室温で静置した。その後、Kinase Detection Reagentを10μL添加して反応させ、2分間振盪後さらに28分間室温で静置した。Ensight (PerkinElmer社)を用いてルシフェリンの発光量を積算時間0.5秒の条件で測定し、酵素反応によるADPの産生量を測定した。Syk阻害活性は、1-(ADP産生量/元のATP量)として求めた。さらに化合物1については、複数の試験化合物濃度のSyk阻害活性にシグモイド型の関数をフィッティングし、IC50を求めた。
【0041】
その結果、以下の化合物1が優れたSyk阻害活性 (IC50=3.3nmol/L)を示した。
【0042】
【表1】
【0043】
また、以下の化合物2~8も比較的強いSyk阻害活性を示した。
【0044】
【表2】