IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立化成株式会社の特許一覧

特開2024-2699熱可塑性樹脂成型用金型の洗浄剤及び洗浄方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002699
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂成型用金型の洗浄剤及び洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/72 20060101AFI20231228BHJP
   C11D 7/32 20060101ALI20231228BHJP
   C11D 7/22 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B29C33/72
C11D7/32
C11D7/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102054
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高島 浩一
(72)【発明者】
【氏名】鵜木 賢作
【テーマコード(参考)】
4F202
4H003
【Fターム(参考)】
4F202AM10
4F202AR06
4F202CA30
4F202CB01
4F202CS02
4H003DA05
4H003DA09
4H003DA12
4H003DA14
4H003DB01
4H003DC02
4H003EB02
4H003EB13
4H003EB17
4H003EB29
4H003EB37
4H003ED04
4H003ED30
4H003FA04
(57)【要約】
【課題】簡便な熱可塑性樹脂成型用金型の洗浄に用いうる、熱可塑性樹脂成型用金型の洗浄剤、及びこれを用いた洗浄方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性エラストマーと、アミン化合物及びアミド化合物からなる群より選択される少なくとも1つの含窒素化合物と、前記熱可塑性エラストマーを溶解可能な溶剤と、を含有し、金型に付与した後、前記金型内で熱可塑性樹脂材料を成型し、成型された前記熱可塑性樹脂材料を前記金型から除去することにより、前記金型を洗浄するために用いられる、熱可塑性樹脂成型用金型の洗浄剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマーと、アミン化合物及びアミド化合物からなる群より選択される少なくとも1つの含窒素化合物と、前記熱可塑性エラストマーを溶解可能な溶剤と、を含有し、金型に付与した後、前記金型内で熱可塑性樹脂材料を成型し、成型された前記熱可塑性樹脂材料を前記金型から除去することにより、前記金型を洗浄するために用いられる、熱可塑性樹脂成型用金型の洗浄剤。
【請求項2】
前記含窒素化合物が、プロピオン酸アミド、ブチルアミン、及びエタノールアミンからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の洗浄剤。
【請求項3】
前記溶剤の沸点が60℃~120℃である、請求項1に記載の洗浄剤。
【請求項4】
前記溶剤が、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、及びヘキサンからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の洗浄剤。
【請求項5】
さらに離型剤を含有する、請求項1に記載の洗浄剤。
【請求項6】
前記離型剤の融点が150℃以下である、請求項5に記載の洗浄剤。
【請求項7】
前記離型剤が、脂肪酸系離型剤、シリコーンオイル、及びポリエチレンからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項5に記載の洗浄剤。
【請求項8】
さらにフィラーを含有する、請求項1に記載の洗浄剤。
【請求項9】
噴射塗布用に構成されている、請求項1に記載の洗浄剤。
【請求項10】
熱可塑性エラストマーと、プロピオン酸アミドと、離型剤と、前記熱可塑性エラストマーを溶解可能な沸点60℃~120℃の溶剤と、を含有する、熱可塑性樹脂成型用金型の洗浄剤。
【請求項11】
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の洗浄剤を金型に付与することと、
前記洗浄剤を付与した後、前記金型内で熱可塑性樹脂材料を成型することと、
前記熱可塑性樹脂材料の成型物を前記金型から除去することと、
を含む、熱可塑性樹脂成型用金型の洗浄方法。
【請求項12】
前記洗浄剤の付与が、金型を成型装置から取り外さずに行われる、請求項11に記載の熱可塑性樹脂成型用金型の洗浄方法。
【請求項13】
前記成型が射出成型である、請求項11に記載の熱可塑性樹脂成型用金型の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は熱可塑性樹脂成型用金型の洗浄剤及び洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成型、トランスファ成型、圧縮成型等のプラスチック成型の分野では、通常、金型を用いた成型が繰り返し行われる。成型回数を重ねるにつれ、金型内部に成型材料又はこれに由来する成分が蓄積し、金型汚れの原因となる。このような金型汚れは、成型品の離型性を低下させたり、外観不良の原因となりうる。また、汚れが更に堆積すると、成型品の寸法異常が発生する原因となる。
【0003】
熱硬化性樹脂材料成型用の金型汚れを洗浄するための方法として、金型用クリーニングシートを用いる方法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1及び特許文献2に記載の金型用クリーニングシートは、不織布等の基材に、未加硫ゴム系組成物又は熱硬化性樹脂系組成物を材料とするクリーニング部材を付与して作製されるシートである。当該金型用クリーニングシートを金型内に挟んで型締めし、加熱成型することによって、クリーニング部材にキャビティ内部の汚れを吸着させる。その後、金型クリーニングシートを脱型することによって汚れを金型クリーニング部材とともに除去することができる。かかる方法により、通常の成型条件を適用しつつ簡便な金型の洗浄が可能である。
【0004】
一方、熱可塑性樹脂材料の成型は、一般的に熱硬化性樹脂材料の成型と比べて低温で行われる。例えば、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂系材料の成型は170℃~180℃程度で行われるが、熱可塑性樹脂材料の成型は100℃程度で行われる。そのため、熱可塑性樹脂成型用金型に対して特許文献1に例示される金型用クリーニングシートを通常の成型条件で適用させることは困難である。また、一般的に熱可塑性樹脂成型用金型は複雑な形状を採っていることからも、充填性、離型性等の観点からクリーニングシートは適用し難い。
【0005】
熱可塑性樹脂成型用金型の洗浄方法としては、一般的に、成型装置から金型を外して洗浄液に浸漬し超音波洗浄する方法、ブラスト洗浄により金型汚れを除去する方法、溶剤等により汚れを拭き取ったり治具等で汚れを削り取ったりする手作業による方法などが行われている。しかしながら、これらの金型洗浄作業はいずれも洗浄前に成型装置から金型を脱着する作業工程を有し、作業が煩雑である。簡便な熱可塑性樹脂成型用金型の洗浄方法として、特許文献3には、金型に洗浄剤を付与した後、金型内で熱可塑性樹脂材料を成型し、成型物を前記金型から除去することで金型を洗浄する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-39773号公報
【特許文献2】特開2013-107287号公報
【特許文献3】特開2022-21883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、金型に洗浄剤を付与して熱可塑性樹脂材料を成型して行う金型の洗浄方法における洗浄剤に関する知見はこれまでに報告されていない。本開示は、簡便な熱可塑性樹脂成型用金型の洗浄に用いうる、熱可塑性樹脂成型用金型の洗浄剤、及びこれを用いた洗浄方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段は、以下の態様を含む。
<1> 熱可塑性エラストマーと、アミン化合物及びアミド化合物からなる群より選択される少なくとも1つの含窒素化合物と、前記熱可塑性エラストマーを溶解可能な溶剤と、を含有し、金型に付与した後、前記金型内で熱可塑性樹脂材料を成型し、成型された前記熱可塑性樹脂材料を前記金型から除去することにより、前記金型を洗浄するために用いられる、熱可塑性樹脂成型用金型の洗浄剤。
<2> 前記含窒素化合物が、プロピオン酸アミド、ブチルアミン、及びエタノールアミンからなる群より選択される少なくとも1つを含む、<1>に記載の洗浄剤。
<3> 前記溶剤の沸点が60℃~120℃である、<1>又は<2>に記載の洗浄剤。
<4> 前記溶剤が、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、及びヘキサンからなる群より選択される少なくとも1つを含む、<1>~<3>のいずれか1項に記載の洗浄剤。
<5> さらに離型剤を含有する、<1>~<4>のいずれか1項に記載の洗浄剤。
<6> 前記離型剤の融点が150℃以下である、<5>に記載の洗浄剤。
<7> 前記離型剤が、脂肪酸系離型剤、シリコーンオイル、及びポリエチレンからなる群より選択される少なくとも1つを含む、<5>又は<6>に記載の洗浄剤。
<8> さらにフィラーを含有する、<1>~<7>のいずれか1項に記載の洗浄剤。
<9> 噴射塗布用に構成されている、<1>~<8>のいずれか1項に記載の洗浄剤。
<10> 熱可塑性エラストマーと、プロピオン酸アミドと、離型剤と、前記熱可塑性エラストマーを溶解可能な沸点60℃~120℃の溶剤と、を含有する、熱可塑性樹脂成型用金型の洗浄剤。
<11> <1>~<10>のいずれか1項に記載の洗浄剤を金型に付与することと、
前記洗浄剤を付与した後、前記金型内で熱可塑性樹脂材料を成型することと、
前記熱可塑性樹脂材料の成型物を前記金型から除去することと、
を含む、熱可塑性樹脂成型用金型の洗浄方法。
<12> 前記洗浄剤の付与が、金型を成型装置から取り外さずに行われる、<11>に記載の熱可塑性樹脂成型用金型の洗浄方法。
<13> 前記成型が射出成型である、<11>又は<12>に記載の熱可塑性樹脂成型用金型の洗浄方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、簡便な熱可塑性樹脂成型用金型の洗浄に用いうる、熱可塑性樹脂成型用金型の洗浄剤、及びこれを用いた洗浄方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示の実施形態は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示の実施形態を制限するものではない。
【0011】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において、「固形分」とは、溶剤を除く成分又はその量を意味する。
【0012】
≪洗浄剤≫
本開示の熱可塑性樹脂成型用金型の洗浄剤(以下、「本開示の洗浄剤」ともいう)は、熱可塑性エラストマーと、アミン化合物及びアミド化合物からなる群より選択される少なくとも1つの含窒素化合物と、前記熱可塑性エラストマーを溶解可能な溶剤と、を含有し、金型に付与した後、前記金型内で熱可塑性樹脂材料を成型することにより、前記金型を洗浄するために用いられる。本開示において、「熱可塑性エラストマーを溶解可能な溶剤」とは、25℃で、熱可塑性エラストマーが、十分量の溶剤に対して、固形分が目視で確認できなくなるまで溶解可能であることを意味する。
発明者は、熱可塑性樹脂成型用金型の簡便な洗浄方法として、金型に洗浄剤を付与し、当該金型内で熱可塑性樹脂材料を成型し、その後熱可塑性樹脂材料の成型物を金型から除去することによって、簡便に金型を洗浄できる方法を考案した。熱可塑性樹脂成型用金型の汚れは、主に、加熱されて溶融した樹脂から揮発する低分子の揮発ガス成分に由来するものであると考えられる。発明者は、かかる金型洗浄方法に好適な洗浄剤として、熱可塑性エラストマー、アミン化合物及びアミド化合物からなる群より選択される少なくとも1つの含窒素化合物と、溶剤と、を含有する洗浄剤を見出した。
【0013】
<熱可塑性エラストマー>
熱可塑性エラストマーは、溶剤中で溶解又は膨潤して金型内の汚れを吸着し、熱可塑性樹脂材料の成型時に加熱に伴い溶剤が気化し固化して樹脂材料に移行することで洗浄機能を発揮すると考えられる。熱可塑性エラストマーを用いると、固化しやすさ、離型性、固化物の伸び、及び洗浄性等の観点から、良好な洗浄剤が得られることが見出された。
【0014】
熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。なかでも、洗浄性等の観点からは、スチレン系熱可塑性エラストマーが好ましい。熱可塑性エラストマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン-エチレン-プロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、水素添加スチレン-エチレン-ブチレン-ブタジエン共重合体(SEBS)等が挙げられる。なかでも、スチレン-エチレン-ブチレン-ブタジエン共重合体(SEBS)又は水素添加スチレン-エチレン-ブチレン-ブタジエン共重合体(SEBS)が好ましく、水素添加スチレン-エチレン-ブチレン-ブタジエン共重合体(SEBS)がより好ましい。熱可塑性エラストマー全量に対するスチレン系熱可塑性エラストマーの割合は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
【0015】
熱可塑性エラストマーは、溶剤への溶解性が高いものが好ましい。例えば、熱可塑性エラストマーはメチルエチルケトン、トルエン等の溶剤へ溶解するものであることが好ましい。例えば、溶剤(メチルエチルケトン、トルエン等)に対する溶解性が良好であることが好ましい。これにより、含窒素化合物、及び他の任意成分の分散性が高まり、洗浄性が高まる傾向にある。
【0016】
洗浄剤の固形分全量に対する熱可塑性エラストマーの含有率は、特に制限されず、洗浄性の観点からは、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。また、固形化及び洗浄の観点からは、前記含有率は99質量%以下が好ましく、98質量%以下であってもよい。かかる観点から、前記含有率は70質量%~99質量%が好ましく、80質量%~99質量%がより好ましく、90質量%~99質量%がさらに好ましい。
【0017】
洗浄剤の全量(溶剤を含む)に対する熱可塑性エラストマーの含有率は、特に制限されず、洗浄性の観点からは、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。また、固形化及び洗浄の観点からは、前記含有率は50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。かかる観点から、前記含有率は10質量%~50質量%が好ましく、20質量%~45質量%がより好ましく、30質量%~40質量%がさらに好ましい。
【0018】
<含窒素化合物>
洗浄剤は、アミン化合物及びアミド化合物からなる群より選択される少なくとも1つの含窒素化合物を含有する。含窒素化合物は、金型汚れの剥離又は分解を補助する成分として機能する。アミン化合物及びアミド化合物は、熱可塑性樹脂の溶融に伴い発生する低分子化合物と反応して分解することにより良好な洗浄性を発揮すると考えられる。洗浄性の観点からは、アミン化合物が好ましく、取り扱い性の観点からは、アミド化合物が好ましい。
アミン化合物としては、ブチルアミン、n-オクチルアミン、トリデシルアミン、sec-ブチルアミン、イソブチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、tert-ブチルアミン、3-メトキシプロピルアミン、N-メチルイソプロピルアミン、ジ(2-エチルヘキシル)アミン、ジシクロヘキシルアミン、トリス(2-エチルヘキシル)アミン、ジエチルアミン、ジトリデシルアミン等の第一級、第二級、又は第三級アミン;1,3-ジアミノプロパン、1,8-ジアミノオクタン、1,2-ジアミノプロパン等のジアミン;2-アミノエタノール、3-アミノ-1-プロパノール等のω-アミノアルカノール;1-アミノ-2-プロパノール、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、2-(ブチルアミノ)エタノール、2-(メチルアミノ)エタノール、2-(エチルアミノ)エタノール、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、1,1’-(N-メチルイミノ)ジ-2-プロパノール、N-ブチルジエタノールアミン、2,2’-(オクチルイミノ)ビスエタノール、2-(ジメチルアミノ)エタノール、3-(ジメチルアミノ)-1-プロパノール、1-ジメチルアミノ-2-プロパノール、2-ジエチルアミノエタノール、2-(ジブチルアミノ)エタノール等のアミノアルコール;グリシン等のアミノ酸;N-メチルエチレンジアミン、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ジアミノヘキサン等のポリアミン;2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール等の一置換エチレングリコール;モルホリン、4-メチルモルホリン、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、ビス(2-モルホリノエチル)エーテル等の環状アミン化合物などが挙げられる。
アミド化合物としては、プロピオン酸アミド、N-メチルホルムアミド等のアミド基含有化合物;カルバミン酸メチル等のカルバミン酸エステル;尿素、又は1-メチル尿素等の尿素誘導体などが挙げられる。なかでも、洗浄性の観点からは、プロピオン酸アミド、ブチルアミン、及びエタノールアミンからなる群より選択される少なくとも1つが好ましい。
含窒素化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、洗浄剤が脂肪酸アミドを含有する場合、当該脂肪酸アミドは、便宜上、離型剤に分類するものとする。
【0019】
洗浄剤中の固形分全量に対する含窒素化合物の含有率は、特に制限されず、洗浄性の観点からは、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、1.3質量%以上がさらに好ましい。また、固形化及び洗浄の観点からは、前記含有率は5.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がより好ましく、2.0質量%以下がさらに好ましい。かかる観点から、前記含有率は0.7質量%~5.0質量%が好ましく、1.0質量%~3.0質量%がより好ましく、1.5質量%~2.0質量%がさらに好ましい。
【0020】
洗浄剤の全量(溶剤を含む)に対する含窒素化合物の含有率は、特に制限されず、洗浄性の観点からは、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上がさらに好ましい。また、固形化及び洗浄の観点からは、前記含有率は2.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下がさらに好ましい。かかる観点から、前記含有率は0.1質量%~2.0質量%が好ましく、0.2質量%~1.5質量%がより好ましく、0.3質量%~1.0質量%がさらに好ましい。
【0021】
<溶剤>
溶剤としては、25℃で熱可塑性エラストマーを溶解可能な溶剤を用いる。熱可塑性エラストマーが溶剤中に溶解することにより、洗浄剤中の成分の分散性が高まり、洗浄性が高まる傾向にある。溶剤の種類は、熱可塑性エラストマーの溶解性に応じて選択できる。
溶剤としては、有機溶剤が好ましく、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ヘキサン等が挙げられる。溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
一態様において、溶剤の沸点は60℃~120℃であることが好ましく、70℃~90℃であることがより好ましい。溶剤の沸点が上記範囲であると、金型を加熱した際に溶剤の揮発に伴い熱可塑性エラストマーがより好適に固化すると考えられる。金型に付着した汚れは、熱可塑性エラストマーの固化物に付着し、固化物として金型から除去されやすくなると考えられる。沸点が60℃~120℃の溶剤としては、トルエン(沸点110.6℃)、メチルエチルケトン(沸点79.6℃)、酢酸エチル(沸点77.1℃)、ヘキサン(沸点69℃)等が挙げられる。
溶剤を2種以上使用する場合、溶剤全体に占める沸点が60℃~120℃の溶剤の含有率は50体積%以上であることが好ましく、70体積%以上であることがより好ましく、90体積%以上であることがさらに好ましく、100体積%であることが特に好ましい。
【0023】
洗浄剤全量に対する溶剤の含有率は、使用形態により適宜設定できる。一態様において、付与の容易性及び均一な塗布性の観点からは、前記含有率は50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましい。また、固化しやすさの観点からは、前記含有率は85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下がさらに好ましい。かかる観点から、前記含有率は50質量%~85質量%が好ましく、55質量%~80質量%がより好ましく、60質量%~75質量%がさらに好ましい。
【0024】
<離型剤>
洗浄剤はさらに離型剤を含有してもよい。離型剤は特に制限されず、一般的に用いられる離型剤を用いてもよい。離型剤としては、脂肪酸系離型剤、シリコーンオイル、ポリエチレン等が挙げられる。離型剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
脂肪酸系離型剤としては、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル、脂肪酸アミド等が挙げられ、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸等の脂肪族カルボン酸;これらの脂肪族カルボン酸と炭素数30以下のアルコールとのエステル;オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミドなどが挙げられる。
シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等が挙げられる。
なかでも、離型性の観点からは、モンタン酸エステル、及びポリエチレンが好ましい。
【0026】
一態様において、離型剤の融点は150℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることがさらに好ましい。離型剤の融点が上記範囲であると、金型を加熱したときに金型汚れを好適に洗浄剤に移行させることができ、洗浄力が向上すると考えられる。
離型剤の融点は、JIS K 0064-1992に基づく融点測定法を用いて測定することができる。
【0027】
洗浄剤の固形分全量に対する離型剤の含有率は、特に制限されず、離型性の観点からは、0.7質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、1.2質量%以上がさらに好ましい。また、洗浄性の観点からは、前記含有率は5.0質量%以下が好ましく、4.0質量%以下がより好ましく、2.0質量%以下がさらに好ましい。かかる観点から、前記含有率は0.7質量%~5.0質量%が好ましく、1.0質量%~4.0質量%がより好ましく、1.2質量%~2.0質量%がさらに好ましい。
【0028】
洗浄剤全量(溶剤を含む)に対する離型剤の含有率は、特に制限されず、離型性の観点からは、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましい。また、洗浄性の観点からは、前記含有率は2.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下がさらに好ましい。かかる観点から、前記含有率は0.1質量%~2.0質量%が好ましく、0.2質量%~1.5質量%がより好ましく、0.5質量%~1.0質量%がさらに好ましい。
【0029】
<フィラー>
洗浄剤はさらにフィラーを含有してもよい。フィラーの混合によって、加熱したときに洗浄剤が固化して汚れを吸着しやすくなると考えられる。フィラーとしては、熱可塑性樹脂との吸着性の観点からは、無機フィラーが好ましい。無機フィラーとしては、シリカ粒子、炭酸カルシウム、タルクが挙げられる。フィラーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
洗浄剤の固形分全量に対するフィラーの含有率は、特に制限されず、洗浄剤の固化しやすさの観点からは、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。また、洗浄剤成分の混合性の観点からは、前記含有率は15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。かかる観点から、前記含有率は1質量%~15質量%が好ましく、5質量%~10質量%よりが好ましい。
【0031】
洗浄剤の全量(溶剤を含む)に対するフィラーの含有率は、特に制限されず、洗浄剤の固化しやすさの観点からは、0.3質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。また、洗浄剤成分の混合性の観点からは、前記含有率は5.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がより好ましい。かかる観点から、前記含有率は0.3質量%~5.0質量%が好ましく、1.0質量%~3.0質量%よりが好ましい。
【0032】
<他の成分>
本開示の洗浄剤は、熱可塑性エラストマー、含窒素化合物、溶剤、並びに必要に応じて用いられる離型剤、及びフィラーの他に、他の成分を含有していてもよい。かかる他の成分としては、熱可塑性エラストマー以外の重合体成分等が挙げられる。かかる他の成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
本開示の洗浄剤の全質量に対する、熱可塑性エラストマー、含窒素化合物、溶剤、並びに必要に応じて用いられるフィラー、及び離型剤の合計量は、上述した各成分の特性を好適に発揮し、良好な洗浄性を得る観点からは、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
【0034】
好ましい一態様において、洗浄剤は、熱可塑性エラストマーと、プロピオン酸アミドと、離型剤と、前記熱可塑性エラストマーを溶解可能な沸点60℃~120℃の溶剤と、を含有していてもよい。各成分の好ましい態様及びさらに含まれていてもよい成分の詳細は上述の通りである。
【0035】
〔洗浄剤の性状及び形態〕
洗浄剤の性状は特に制限されず、液状(エマルション、懸濁液、泡状(ムース状)、霧状等の分散系、及び非分散系を含む)、ペースト状等が挙げられる。簡便に塗布が可能である観点から、洗浄剤は液状であることが好ましい。
洗浄剤は、後述の噴射塗布を行うために、噴射塗布用に形成されていることが好ましい。
【0036】
≪熱可塑性樹脂成型用金型の洗浄方法≫
本開示の洗浄剤は、本開示の熱可塑性樹脂成型用金型の洗浄方法(以下、「本開示の洗浄方法」ともいう)に用いてもよい。本開示の洗浄方法は、上述の本開示の洗浄剤を金型に付与することと(「洗浄剤付与工程」ともいう)、前記洗浄剤を付与した後、前記金型内で熱可塑性樹脂材料を成型することと(「成型工程」ともいう)、前記熱可塑性樹脂材料の成型物を前記金型から除去することと(「成型物除去工程」ともいう)、を含む。かかる方法によれば、例えば金型の脱着を伴わずに金型を洗浄できるため、金型の洗浄工程を大幅に簡便化できる。
【0037】
金型の洗浄の頻度は特に制限されず、汚れの付着状態に応じて適宜設定することができる。一例において、金型の洗浄の頻度は、10回~1000回の成型あたり1回であってもよく、80回~500回の成型あたり1回であってもよく、100回~300回の成型あたり1回であってもよい。上記成型回数には、洗浄のための成型も含む。
【0038】
<洗浄剤付与工程>
洗浄剤付与工程では、金型に本開示の洗浄剤を付与する。
洗浄剤の付与方法は特に制限されず、刷毛、スポンジ、布等を用いた塗布、噴射塗布(例えば、洗浄剤を液状、霧状又は泡状に噴射するスプレー塗布)などが挙げられる。簡便に洗浄剤を付与できる観点からは、噴射塗布が好ましい。スプレー塗布を行う場合のスプレーの方式は特に制限されず、エアスプレー、エアレススプレー等であってもよい。簡便性の観点から、洗浄剤の付与は、金型を成型装置から取り外さずに行うことが好ましい。
【0039】
洗浄剤は、金型のキャビティ形成部(すなわち、金型が成型材料と接する部分)に少なくとも付与されていればよい。洗浄剤の付与量は、金型のキャビティ形成部に可能な限りまんべんなく付与される量とすることが好ましい。
【0040】
<成型工程>
金型に洗浄剤を付与した後、金型内で熱可塑性樹脂材料を成型する。成型方法は特に制限されず、射出成型、トランスファ成型、圧縮成型、ブロー成型等が挙げられる。例えば、射出成型用金型は一般的に複雑なキャビティ形状を有するところ、本開示の金型洗浄方法は、複雑なキャビティ形状を有する金型にも好適に適用することができる。また、例えば横開きの金型の場合、クリーニングシート等のシートを挟みこんでも他の治具等で固定しなければ落下してしまうが、本開示の金型の洗浄方法によれば、洗浄剤の適用が可能なため、横開きの金型にも簡便に適用できる点で有用である。
【0041】
成型工程は、金型への洗浄剤の付与後であって、当該洗浄剤が付与されている状態で行われる限り、その時期は特に限定されない。例えば、洗浄剤の付与後、0分後~60分後に成型を開始してもよく、1分後~30分後に成型を開始してもよく、5分後~10分後に成型を開始してもよい。
【0042】
成型条件は特に制限されない。一態様において、成型温度(すなわち金型の設定温度)は10℃~140℃であってもよく、60℃~140℃であってもよく、60℃~120℃であってもよい。また、成型時間は熱可塑性樹脂の成型温度等に応じて適宜設定することができる。
成型温度、成型時間等の成型条件は、洗浄対象の金型を用いて工業生産される成型品の成型条件と同一としてもよい。これにより、金型洗浄時及び工業生産用の成型品の生産時に成型条件の再設定を行う必要がなく、簡便に金型の洗浄を行うことができる。また、金型の洗浄では成型物自体の特性を考慮する必要がないことから、作業時間の短縮、コスト低減等のため、金型洗浄における成型条件を通常の成型条件から変更してもよい。
【0043】
本開示において、洗浄用に用いる「熱可塑性樹脂材料」とは、熱可塑性樹脂を含む成型材料を表し、熱可塑性樹脂自体に限らず、熱可塑性樹脂に加えて着色剤、充填材、酸化防止剤、難燃剤、離型剤等の任意の追加成分を含む熱可塑性樹脂組成物をも包含する。
【0044】
熱可塑性樹脂の種類は特に限定されず、一般的な成型材料として用いられる熱可塑性樹脂を適用することができる。本開示の金型洗浄方法において、洗浄用に用いる熱可塑性樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ビニル重合系ポリマー等が挙げられる。
【0045】
洗浄用に用いる熱可塑性樹脂材料の種類は、洗浄対象の金型を用いて工業生産される成型品の樹脂材料と同じであるか、少なくとも一部の樹脂成分が共通するものであることが好ましい。金型汚れは金型の樹脂成型部(キャビティ)全面に付着するところ、複雑な形状を有する金型内にも樹脂材料が十分に充填され、かつ離型されることにより、特に良好な洗浄が可能であると考えられる。ここで、金型洗浄用の熱可塑性樹脂材料として、通常の成型に用いられる樹脂材料と同様の材料を用いることによって、金型内への充填及び離型を特に良好に行うことができると考えられる。また、通常の成型に用いられる樹脂材料と同様の材料を用いることによって、金型内に異種成分が混入する可能性を低減することができる。工業生産される成型品の樹脂材料と少なくとも一部の樹脂成分が共通する熱可塑性樹脂材料を金型洗浄用に用いる場合には、工業生産される成型品の樹脂材料中の樹脂成分のうちの50質量%以上が、金型洗浄用の熱可塑性樹脂材料に含まれていることが好ましく、70質量%以上が含まれていることがより好ましく、90質量%以上が含まれていることがさらに好ましい。
【0046】
<成型物除去工程>
熱可塑性樹脂材料の成型後、熱可塑性樹脂材料の成型物を前記金型から除去する。これにより、成型物とともに金型内の汚れを除去することができる。成型物の金型からの除去は成型方法に応じて通常行われる方法によって行うことができる。
【0047】
<他の工程>
本開示の金型洗浄方法は、洗浄剤付与工程、成型工程、成型物除去工程に加えて、他の工程を含んでいてもよい。例えば、本開示の金型洗浄方法は、成型物除去工程の後に、布、ブラシ等によって、洗浄剤の残渣成分、樹脂成型材料の残渣物等を除去する工程、工業用の成型を再開する前のダミーショットによる外観検査確認工程等を含んでいてもよい。
【0048】
金型洗浄方法の具体的態様は、例えば特開2022-21883号公報を参照できる。例えば、可動側金型と固定側金型とからなる金型を備える射出成型機において、可動側金型及び固定側金型を射出成型機に設置した状態で、可動側金型を開き、金型のキャビティ側表面に洗浄剤を適量噴射塗布する。金型に付着した汚れは、洗浄剤により剥離又は分解し、金型との接着力が弱まる。次に、金型内に熱可塑性樹脂材料を投入し、通常通りの成型条件で成型する。金型温度は例えば60℃~140℃であり、成型時間は熱可塑性樹脂の成型温度等に応じて適宜設定される。成型後、金型を開き、成型物を押し出すことで離型する。このとき、金型に付着していた汚れは成型物に吸着されて、金型から除去される。
【0049】
一般的に、熱可塑性樹脂成型用の射出成型機では、金型内部に付着した汚れを除去するため、射出成型機から金型を取り外して洗浄を行うが、本開示の金型洗浄方法によれば、金型を射出成型機に設置したまま洗浄作業を行うことができる。また、上記の例のように成型条件の設定を通常通りの設定とすることで、作業効率がより高まる。
【0050】
上記の例では、射出成型機の洗浄の一例を示しているが、本開示の金型洗浄方法は上記の例に制限されない。例えば、本開示の金型洗浄方法はトランスファ成型、圧縮成型、ブロー成型等にも好適に適用可能である。また、金型洗浄における成型条件を通常の成型条件から変更してもよい。洗浄剤の付与方法は、噴射塗布に限定されず、例えば刷毛、スポンジ、布等を用いて塗布してもよい。
【実施例0051】
次に本開示の実施形態を実施例により具体的に説明するが、本開示の実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
1.洗浄剤の調製
以下の成分を下表に示す配合(質量部)で混合し、実施例及び比較例の洗浄剤を調製した。ビーカー内に溶剤を入れ、その他の各成分を添加して混合撹拌した。
【0053】
[比較用重合体]
比較用重合体1:アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR) グレードT4103 (JSR株式会社)
比較用重合体2:アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR) グレードN237H (JSR株式会社)
比較用重合体3:アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR) グレードN239SV(JSR株式会社)
比較用重合体4:アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR) グレードN250S (JSR株式会社)
【0054】
[熱可塑性エラストマー]
熱可塑性エラストマー1:水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)タフテック(登録商標)P2000(旭化成株式会社)
熱可塑性エラストマー2:水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)タフテック(登録商標)H1043(旭化成株式会社)
【0055】
[溶剤]
溶剤1:メチルエチルケトン(MEK)
溶剤2:トルエン
【0056】
[含窒素化合物]
含窒素化合物1:N,N-ジブチルアミノエタノールアミン
含窒素化合物2:プロピオン酸アミド
含窒素化合物3:2-(2-アミノエトキシ)エタノール
【0057】
[その他の添加物]
過酸化物:パーヘキサ(登録商標)C-40(日油株式会社)
離型剤:モンタン酸エステル
【0058】
2.評価
〔混合性の評価〕
各成分を混合した際の分離状態及び粘度上昇を、目視及び触感により確認した。
A:分離は観察されず、粘度はスプレー塗布に問題ないレベルであった
B:分離が観察されたが、粘度はスプレー塗布に問題ないレベルであった
C:スプレー塗布に適さないほどの粘度上昇が観察された
【0059】
〔固化しやすさの評価〕
約0.1gの洗浄剤を簡易汚れプレートにスポイドで塗布し、90℃、5分の加熱により洗浄剤を固化させた。固化物を剥離し、固化物の硬さを触感により評価した。
A:十分に固化し、破れにくい
B:固化したが、破れやすい
C:固化が不十分
【0060】
〔離型性の評価〕
約0.1gの洗浄剤を簡易汚れプレートにスポイドで塗布し、90℃、5分の加熱により洗浄剤を固化させた。固化物を剥離し、簡易汚れプレートに残留した固化物の量を目視で確認した。
A:固化物の残留が観察されなかった
B:固化物が少量残留した(約5体積%未満)
C:固化物が多量に残留した(約10体積%以上)
【0061】
〔伸びの評価〕
約0.1gの洗浄剤を簡易汚れプレートにスポイドで塗布し、90℃、5分の加熱により洗浄剤を固化させた。固化物を剥離したときのちぎれやすさを以下の基準で評価した。
A:固化物がちぎれずに1回で剥離できた
B:固化物がちぎれたが、剥離できた
C:固化物が剥離できなかった
【0062】
〔洗浄性の評価〕
ポリフェニレンサルファイド(PPS)から発生する揮発ガス成分であることが知られるビス(4-クロロフェニル)スルフィドを、120℃でプレートに塗布し、冷却固化させた。プレート上に約0.1gの洗浄剤をスポイドで塗布し、90℃、5分の加熱により洗浄剤を固化させた。固化物を剥離し、プレートの状態を目視で確認した。
A:汚れが全て除去された
B:汚れが一部除去されたが、一部残留した
C:汚れが多く残留した
【0063】
〔初期粘度の評価〕
各成分を混合した際の初期粘度を目視で評価した。
A:初期粘度が低い
B:初期粘度が中程度
C:初期粘度が高い
【0064】
〔膜厚みの評価〕
洗浄剤が固化した際の膜厚みを目視で評価した。
A:膜厚みが厚い
B:膜厚みが中程度
C:膜厚みが薄い
【0065】
各実施例及び比較例における洗浄剤の組成及び評価結果を下表に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
実施例1~7では、固化しやすさ、離型性、伸び、及び洗浄性のいずれの評価も優れており、洗浄剤として良好な性質を示すことがわかった。また、初期粘度及び膜厚みの評価も良好であった。
比較例1~14では、固化しやすさ、離型性、又は伸びのいずれかの評価が劣っていた。また、比較例15では、熱可塑性エラストマーが溶剤に溶解せず、洗浄剤として適さないことがわかった。