(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002701
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】多層麺類、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20231228BHJP
【FI】
A23L7/109 B
A23L7/109 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102058
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】301049777
【氏名又は名称】日清製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 肇
【テーマコード(参考)】
4B046
【Fターム(参考)】
4B046LA05
4B046LB04
4B046LC02
4B046LC04
4B046LE06
4B046LG16
4B046LG20
4B046LG29
4B046LG44
4B046LP01
4B046LP10
4B046LP12
4B046LP15
4B046LP41
4B046LP64
4B046LP71
(57)【要約】
【課題】調理後時間が経っても良好な食感を有する麺類の提供。
【解決手段】2つのA層の間にB層が配置された積層構造を有し、該A層は、原料粉中に小麦粉を80質量%以上含有し、該B層は、原料粉中に小麦粉、及びさらにグルテンを含有し、かつ、該B層の原料粉は、該小麦粉の含有量が60質量%以上であり、該小麦粉と該グルテンの合計含有量が80質量%であり、小麦由来蛋白質の含有量が乾物質量換算で18.0~33.0質量%である、多層麺類。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層麺類であって、
2つのA層の間にB層が配置された積層構造を有し、
該A層は、原料粉中に小麦粉を80質量%以上含有し、
該B層は、原料粉中に小麦粉、及びさらにグルテンを含有し、かつ
該B層の原料粉は、該小麦粉の含有量が60質量%以上であり、該小麦粉と該グルテンの合計含有量が80質量%であり、小麦由来蛋白質の含有量が乾物質量換算で18.0~33.0質量%である、
多層麺類。
【請求項2】
前記B層の原料粉が前記グルテンを7質量%以上含有する、請求項1記載の多層麺類。
【請求項3】
前記A層の原料粉における小麦由来蛋白質の含有量が乾物質量換算でX質量%、かつ前記B層の原料粉における小麦由来蛋白質の含有量が乾物質量換算でY質量%であるとき、
20≧(Y-X)≧6.5
である、請求項1記載の多層麺類。
【請求項4】
前記B層が卵白を含有する、請求項1記載の多層麺類。
【請求項5】
前記A層と前記B層との厚みの比が、A層/B層/A層=0.3~4/1/0.3~4である、請求項1記載の多層麺類。
【請求項6】
中華麺である、請求項1記載の多層麺類。
【請求項7】
多層麺類の製造方法であって、
2つのA層用麺帯の間にB層用麺帯が配置された積層構造を有する多層麺帯を圧延及び切断して、2つのA層の間にB層が配置された積層構造を有する多層麺類を製造することを含み、
該A層は、原料粉中に小麦粉を80質量%以上含有し、
該B層は、原料粉中に小麦粉、及びさらにグルテンを含有し、かつ
該B層の原料粉は、該小麦粉の含有量が60質量%以上であり、該小麦粉と該グルテンの合計含有量が80質量%であり、小麦由来蛋白質の含有量が乾物質量換算で18.0~33.0質量%である、
方法。
【請求項8】
前記B層の原料粉が前記グルテンを7質量%以上含有する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記A層の原料粉における小麦由来蛋白質の含有量が乾物質量換算でX質量%、かつ前記B層の原料粉における小麦由来蛋白質の含有量が乾物質量換算でY質量%であるとき、
20≧(Y-X)≧6.5
である、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記B層が卵白を含有する、請求項7記載の方法。
【請求項11】
前記A層と前記B層との厚みの比が、A層/B層/A層=0.3~4/1/0.3~4である、請求項7記載の方法。
【請求項12】
前記多層麺類が中華麺である、請求項7記載の方法。
【請求項13】
請求項1~6のいずれか1項記載の多層麺類を加熱料理し、冷蔵することを含む、冷蔵調理済み麺類の製造方法。
【請求項14】
前記冷蔵調理済み麺類がレンジ加熱して喫食するための麺類である、請求項13記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層麺類、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
茹で麺は、茹で立てのときには、麺内部の水分勾配により麺の内外で食感に差(勾配)が生じることで食べ応えのある食感を有することができる。一方、茹で麺を保存すると、上記の水分勾配による食感の差は小さくなるため、食べ応えは低下する。
【0003】
麺の食感を向上させるため、複数の生地の層からなる多層麺類が提案されている。さらに、多層麺類の食感をより向上させる試みも行われている。例えば、特許文献1には、調理後時間が経過しても食感の良い麺として、澱粉類を主体とする原材料を用いて得られる外層と、小麦粉を主体としこれに蛋白質を添加した原材料を用いて得られる内層からなり、外層の厚さと内層の厚さの比率が、外層/内層/外層=1.5~2.5/1/1.5~2.5の範囲であり、外層に用いる原材料が、タピオカ澱粉を50~85質量%及びα化澱粉を5~15質量%含有する三層麺が記載されている。特許文献2には、A層及びB層からなり、A層が外層の片側又は両側を構成する多層調理麺において、A層及びB層のそれぞれに所定量の小麦粉とタピオカ澱粉からなる穀粉類を含みかつ所定の粗蛋白質含量を有する層を用い、A層の粗蛋白質含量及び加水量をB層の粗蛋白質含量より低くすることで、食感が良好で老化が遅い麺が得られることが記載されている。特許文献3には、内層用麺帯を2枚の外層用麺帯で挟んだ3層麺帯から得た麺線を糊化し、凍結する冷凍麺の製造方法において、内層用原料粉に強力粉を用い、外層用原料粉に準強力粉又は中力粉を用いること、これにより緩慢解凍後の食感の良好な冷凍麺を製造できることが記載されている。特許文献4には、A層及びB層からなる多層構造を有し、A層が外層を構成する多層麺であって、A層及びB層は、穀粉類、及び必要に応じて澱粉類を含有し、少なくともB層がデュラム小麦由来の精製蛋白を含有し、かつA層及びB層における穀粉類と澱粉類の合計量に対するデュラム小麦由来の精製蛋白の粗蛋白換算での含有量がそれぞれP及びQであるとき、Q≧Pである、多層麺が記載されている。特許文献5には、小麦粉35~60重量%、エーテル化リン酸架橋澱粉25~50重量%、グルテン5~15重量%を含む外層麺原料粉から製造した外層麺帯と、小麦粉0~20重量%、エーテル化リン酸架橋澱粉60~80重量%、グルテン15~25重量%を含む内層麺原料粉から製造した内層麺帯とから作製した三層麺帯を用いる、チルド中華麺の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-029273号公報
【特許文献2】特開2012-196168号公報
【特許文献3】特開2001-245618号公報
【特許文献4】特開2020-58273号公報
【特許文献5】特開2019-176814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、調理後時間が経っても良好な食感を有する麺類を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下を提供する。
〔1〕多層麺類であって、
2つのA層の間にB層が配置された積層構造を有し、
該A層は、原料粉中に小麦粉を80質量%以上含有し、
該B層は、原料粉中に小麦粉、及びさらにグルテンを含有し、かつ
該B層の原料粉は、該小麦粉の含有量が60質量%以上であり、該小麦粉と該グルテンの合計含有量が80質量%であり、小麦由来蛋白質の含有量が乾物質量換算で18.0~33.0質量%である、
多層麺類。
〔2〕前記B層の原料粉が前記グルテンを7質量%以上含有する、〔1〕記載の多層麺類。
〔3〕前記A層の原料粉における小麦由来蛋白質の含有量が乾物質量換算でX質量%、かつ前記B層の原料粉における小麦由来蛋白質の含有量が乾物質量換算でY質量%であるとき、
20≧(Y-X)≧6.5
である、〔1〕又は〔2〕記載の多層麺類。
〔4〕前記B層が卵白を含有する、〔1〕~〔3〕のいずれか1項記載の多層麺類。
〔5〕前記A層と前記B層との厚みの比が、A層/B層/A層=0.3~4/1/0.3~4である、〔1〕~〔4〕のいずれか1項記載の多層麺類。
〔6〕中華麺である、〔1〕~〔5〕のいずれか1項記載の多層麺類。
〔7〕多層麺類の製造方法であって、
2つのA層用麺帯の間にB層用麺帯が配置された積層構造を有する多層麺帯を圧延及び切断して、2つのA層の間にB層が配置された積層構造を有する多層麺類を製造することを含み、
該A層は、原料粉中に小麦粉を80質量%以上含有し、
該B層は、原料粉中に小麦粉、及びさらにグルテンを含有し、かつ
該B層の原料粉は、該小麦粉の含有量が60質量%以上であり、該小麦粉と該グルテンの合計含有量が80質量%であり、小麦由来蛋白質の含有量が乾物質量換算で18.0~33.0質量%である、
方法。
〔8〕前記B層の原料粉が前記グルテンを7質量%以上含有する、〔7〕記載の方法。
〔9〕前記A層の原料粉における小麦由来蛋白質の含有量が乾物質量換算でX質量%、かつ前記B層の原料粉における小麦由来蛋白質の含有量が乾物質量換算でY質量%であるとき、
20≧(Y-X)≧6.5
である、〔7〕又は〔8〕記載の方法。
〔10〕前記B層が卵白を含有する、〔7〕~〔9〕のいずれか1項記載の方法。
〔11〕前記A層と前記B層との厚みの比が、A層/B層/A層=0.3~4/1/0.3~4である、〔7〕~〔10〕のいずれか1項記載の方法。
〔12〕前記多層麺類が中華麺である、〔7〕~〔11〕のいずれか1項記載の方法。
〔13〕〔1〕~〔6〕のいずれか1項記載の多層麺類を加熱料理し、冷蔵することを含む、冷蔵調理済み麺類の製造方法。
〔14〕前記冷蔵調理済み麺類がレンジ加熱して喫食するための麺類である、〔13〕記載の方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、調理後時間が経っても中心部にコシがあり、中心から表面にかけて食感に好ましい勾配(麺の内外での食感の差)がある、良好な食感を有する麺類を提供することができる。また、本発明により提供される麺類は、茹で伸びしにくく、調理後冷蔵して電子レンジで再加熱した後にも良好な食感を有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者は、多層麺類において、外層には主に小麦粉を配合し、かつ内層には主に小麦粉を配合するとともにグルテンを多量に配合することで、調理後時間が経っても良好な食感を有する麺類が得られることを見出した。グルテンを添加した麺類は従来製造されていたが(例えば特許文献5)、従来の麺類におけるグルテンは、一般に、澱粉を配合した麺類等の小麦粉の含有量が少ない麺類に対して、その作業性や食感を改善する目的で用いられていた。これに対し、本発明では、小麦粉を主体とする多層麺類の内層にさらにグルテンを多量に添加することで、該多層麺類の経時的な食感低下を改善することができる。
【0009】
本発明により提供される多層麺類の種類としては、特に限定されず、例えば、中華麺、うどん、冷や麦、そば、パスタ類などが挙げられ、このうち、中華麺及びうどんが好ましい。
【0010】
本発明の多層麺類は、2つのA層の間にB層が配置された積層構造を有する。すなわち、該積層構造において、該A層は該B層に対して外層であり、該B層は該A層に対して内層である。
【0011】
本発明の多層麺類において、該A層及び該B層の原料粉は小麦粉を含有する。該多層麺類の食感向上の観点から、該A層の原料粉における小麦粉の含有量は、該原料粉の全質量中、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上である。また、該B層の原料粉における小麦粉の含有量は、該原料粉の全質量中、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。該小麦粉は、麺類の製造に一般に使用されるものであればよく、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、全粒粉、ふすま粉、熱処理小麦粉(例えば、α化小麦粉、部分α化小麦粉、乾熱処理小麦粉等)などが挙げられる。これらの小麦粉は、いずれか1種又は2種以上の組み合わせで使用することができる。該A層及びB層の原料粉に含まれる小麦類の種類は、同じであっても異なっていてもよい。製麺性の観点からは、原料粉中の熱処理小麦粉の含有量は20質量%以下が好ましい。
【0012】
本発明の多層麺類において、前記B層の原料粉は、前記小麦粉に加えて、さらにグルテンを含有する。グルテンは、市販されているものを使用することができる。該多層麺類の食感向上の観点から、該B層の原料粉におけるグルテンの含有量は、該原料粉の全質量中、好ましくは7質量%以上、より好ましくは8質量%以上であり、他方、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。例えば、該B層の原料粉におけるグルテンの含有量は、該原料粉の全質量中、好ましくは7~25質量%であり、より好ましくは8~20質量%である。
【0013】
前記B層の原料粉における小麦粉とグルテンの合計含有量は、該原料粉の全量中、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上である。一方、前記A層の原料粉は、小麦粉に加えてグルテンを含有していてもよいが、含有してなくともよい。
【0014】
本発明の多層麺類において、前記B層の原料粉における小麦由来蛋白質の含有量は、乾物質量換算で、好ましくは18.0~33.0質量%であり、より好ましくは18.0~30.0質量%である。該B層の原料粉は、前記A層の原料粉と比べて、小麦由来蛋白質の含有量が多い。より詳細には、該A層の原料粉における小麦由来蛋白質の含有量(乾物質量換算)をX(質量%)、該B層の原料粉における小麦由来蛋白質の含有量(乾物質量換算)をY(質量%)とするとき、好ましくは20≧(Y-X)≧6.5である。
【0015】
本明細書において、原料粉における小麦由来蛋白質の乾物質量換算での含有量とは、該原料粉の乾物質量に対する、該原料粉中の小麦粉に含有される蛋白質の量と、該原料粉中のグルテンに含有される蛋白質の量との総量(質量%)をいう。本明細書において、原料粉の乾物質量とは、常圧加熱乾燥法(日本食品標準成分表2015年版(七訂)分析マニュアル[www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1368931.htm]第1章を参照)に従って測定した原料粉の乾燥後質量をいう。また本明細書において、小麦粉及びグルテンに含有される蛋白質の量は、燃焼法(日本食品標準成分表2015年版(七訂)分析マニュアル第1章参照)に従って測定された値である。
【0016】
前記A層及びB層の原料粉は、必要に応じて、麺類の製造に用いることができる他の成分をさらに含有していてもよい。当該他の成分としては、小麦粉以外の他の穀粉類、澱粉類、大豆蛋白質、乳蛋白質、卵黄粉、卵白粉、全卵粉、脱脂粉乳等の蛋白質素材、ならびに、油脂類、かんすい、焼成カルシウム、食物繊維、食塩、糖類、甘味料、香辛料、調味料、ビタミン、ミネラル、栄養強化剤、色素、香料、デキストリン(難消化性含む)、膨張剤、増粘剤、乳化剤、保水剤、保存剤、酵素剤、pH調整剤、酸化還元剤などが挙げられる。これらの他の成分は、製造する麺類に所望される性質にあわせて適宜組み合わせて使用することができる。
【0017】
前記小麦粉以外の他の穀粉類の例としては、特に限定されず、米粉、大麦粉、モチ大麦粉、そば粉、大豆粉、コーンフラワー、オーツ麦粉、ライ麦粉、ふすま粉などが挙げられる。これらの穀粉類は、いずれか1種又は2種以上の組み合わせで使用することができる。該A層及びB層の原料粉におけるこれら他の穀粉類の含有量及び種類は、同じであっても異なっていてもよい。例えば、該A層又はB層の一方のみが該他の穀粉類を含有していてもよく、又は、該A層又はB層の両方が該他の穀粉類を含有していてもよく、又は、該A層又はB層がそれぞれ異なる種類もしくは量の該他の穀粉類を含有していてもよい。
【0018】
前記澱粉類の例としては、特に限定されず、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、米澱粉などの未加工澱粉、及びそれらを加工(例えば、架橋化、リン酸化、アセチル化、エーテル化、酸化、α化など)した加工澱粉が挙げられる。これらの未加工澱粉及び加工澱粉は、いずれか1種又は2種以上の組み合わせで使用することができる。好ましくは、該澱粉類はタピオカ澱粉である。また好ましくは、該澱粉類は加工澱粉である。より好ましくは、該澱粉類は加工タピオカ澱粉であり、さらに好ましくは、アセチル化、エーテル化及び架橋化からなる群より選択される1種以上の加工を行った加工タピオカ澱粉である。
【0019】
前記A層及びB層の原料粉における澱粉類の含有量及び種類は、同じであっても異なっていてもよい。例えば、該A層又はB層の一方のみが澱粉類を含有していてもよく、又は、該A層又はB層の両方が澱粉類を含有していてもよく、又は、該A層又はB層がそれぞれ異なる種類もしくは量の澱粉類を含有していてもよい。好ましくは、該A層及びB層の原料粉における澱粉類の含有量は、該原料粉の全質量中、好ましくは0~20質量%であり、より好ましくは0~10質量%である。
【0020】
前記A層及びB層の原料粉における前記他の成分の合計含有量は、該原料粉の全質量中、好ましくは0~20質量%、より好ましくは0~10質量%である。
【0021】
好ましくは、本発明の多層麺類において、前記B層は卵白を含有する。卵白は、全卵から卵黄を除外した成分をそのまま又は乾燥させたものを使用することができる。例えば、該B層の原料粉に乾燥卵白(卵白粉等)を添加するか、又は該B層の生地を混捏する際に液状の卵白を添加すればよい。該B層における卵白の含有量は、原料粉(乾燥卵白を含む)の全質量に対する乾燥卵白の質量に換算して、好ましくは0.1~1質量%である。
【0022】
本発明の多層麺類は、基本的には、従来の多層麺類の製造方法と同様の手順で製造することができる。好適には、前述した組成で小麦粉、ならびに必要に応じてグルテン及び他の成分を含有する前記A層及びB層の原料粉のそれぞれに、常法に従って水分を添加し、混捏することにより、A層用生地及びB層用生地を調製する。該生地の調製に用いられる水分としては、麺生地の調製に通常用いられる練水、例えば水、塩水、かん水、酸性溶液などを用いることができる。該A層及びB層の原料粉への練水の添加量は、練水の水分量として、該原料粉100質量部あたり25~50質量部である。
【0023】
次いで、得られたA層用生地及びB層用生地をそれぞれ圧延して、A層用麺帯及びB層用麺帯を作製する。該B層用麺帯を該A層用麺帯で両側から挟み込んで、2つのA層用麺帯の間にB層用麺帯が配置された積層構造を有する多層麺帯を作製する。該多層麺帯を圧延し、切断することにより、2つのA層の間にB層が配置された積層構造を有する多層麺類を製造することができる。麺帯の圧延と切断の手段としては、公知の方法を使用することができる。例えば、圧延と製麺の手段としては、押出し、ロールによる圧延と切出し、などが挙げられるが、特に限定されない。麺帯の圧延と切断には、市販の製麺機を使用することができる。
【0024】
本発明の多層麺類における2つのA層とB層との厚さの比は、好ましくは、A層:B層:A層=0.3~4/1/0.3~4、より好ましくは、A層:B層:A層=0.3~1.2:1:0.3~1.2、さらに好ましくはA層:B層:A層=0.3~1:1:0.3~1である。A層に対してB層の厚さが薄くなりすぎると、得られた多層麺類の食感が充分に向上しない場合がある。2つのA層の厚みは、互いに異なっていてもよいが、同程度であることが好ましい。該多層麺類におけるA層とB層の厚さの比は、該麺類の製造工程においてA層用麺帯とB層用麺帯の厚さの比を変更することによって調整することができる。
【0025】
本発明の多層麺類は、2つのA層の間にB層を含む三層以上の積層構造を有していればよい。一例において、該多層麺類は、2つのA層と、その間のB層からなる三層麺である。別の一例において、当該多層麺類は、2つのA層と、その間の2層以上のB層とを有する四層以上の麺であってもよい。好ましくは、該多層麺類は三層麺である。該B層が2層以上である場合、各々のB層は、前述したB層の原料粉の組成の範囲内において、組成の異なる生地から調製されていてもよい。
【0026】
以上の手順により、本発明の多層麺類の生麺を製造することができる。製造した多層麺類は、生麺、半乾燥麺、乾麺、茹麺や蒸麺等のα化麺、冷凍麺などの形態にして保存、流通、販売することができる。一実施形態において、本発明の多層麺類は、生麺のまま提供される。別の一実施形態において、本発明の多層麺類は、蒸し、茹でなど加熱調理された状態で提供される。
【0027】
好ましい実施形態においては、前記本発明の多層麺類を用いて製造された冷蔵調理済み麺類が提供される。該冷蔵調理済み麺類は、前記本発明の多層麺類、好ましくは生麺を、加熱料理し、冷蔵することにより製造することができる。製造された冷蔵調理済み麺類は、冷たいまま喫食してもよいが、電子レンジ加熱、湯煎などにより再加熱して喫食することが好ましい。好ましくは、当該冷蔵調理済み麺類は、レンジ加熱して喫食するための麺類である。本発明の多層麺類は、茹で伸びしにくいため、調理後時間が経っても、例えば加熱調理し冷蔵した状態でも、さらには冷蔵後、電子レンジで再加熱した後にも、良好な食感を有することができる。
【実施例0028】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0029】
(材料)
中力粉:蛋白質量10.0質量%、水分14.0質量%
強力粉:蛋白質量12.0質量%、水分14.0質量%
加工澱粉(エーテル架橋タピオカ澱粉):蛋白質量0.0質量%、水分14.0質量%
グルテン(AグルG、グリコ栄養食品):蛋白質量85.0質量%、水分6.0質量%
乾燥卵白(サンキララRS、太陽化学):水分7.0質量%
【0030】
試験1 中華麺
1)単層麺の製造
表1に示す組成で原料粉に練水を加え、減圧(-0.093MPa)下で混捏して生地を調製した。該生地を、製麺ロールを用いて圧延して麺帯を作製し、切り刃(♯18角)で切出して麺線(麺厚1.6mm)を製造した。
【0031】
2)多層麺の製造
A層:表1~2に示す組成で原料粉に練水を加え、減圧(-0.093MPa)下で混捏して生地を調製した。該生地を圧延して厚さ6mmのA層用麺帯を得た。
B層:表1~2に示す組成で原料粉に練水を加え、減圧(-0.093MPa)下で混捏して生地を調製した。該生地を圧延して厚さ6mmのB層用麺帯を得た。
2枚のA層用麺帯の間にB層用麺帯を配置して積層し、圧延して三層麺帯とした後、切り刃(♯18角)で切出して麺線(麺厚1.6mm)を製造した。A層/B層/A層の厚さ比は1/1/1とした。
【0032】
3)評価
得られた中華麺を歩留りが約165%となるように茹でた。得られた茹で中華麺を容器に充填し、4℃で24時間冷蔵保存した。保存後の麺を、ゲル状スープとともに75℃になるまで電子レンジで加熱した。加熱後の麺を10名の訓練されたパネラーにより下記評価基準で官能評価し、その平均点を求めた。結果を表1~2に示す。表1~2に示すA層とB層の小麦由来蛋白質含有量は、原料粉に用いたものと同じ小麦粉及びグルテンの蛋白質含有量(燃焼法により測定)に基づいて算出した。
<評価基準>
(食感;コシ)
5点:麺の中心部に非常にコシがあり、非常に良好
4点:麺の中心部にコシがあり、良好
3点:麺の中心部にややコシがあり、やや良好
2点:麺の中心部にコシがやや欠け、やや不良
1点:麺の中心部にコシが欠け、不良
(食感の勾配)
5点:麺の中心から表面にかけての食感の勾配が非常に良好
4点:麺の中心から表面にかけての食感の勾配が良好
3点:麺の中心から表面にかけての食感の勾配が、やや小さいかやや大きく、やや良好
2点:麺の中心から表面にかけての食感の勾配が小さいか大きく、やや不良
1点:麺の中心から表面にかけての食感の勾配が無いか過度であり、不良
(電子レンジ加熱後の茹で伸び)
5点: 茹で伸びが非常に少なく、非常に良好
4点: 茹で伸びが少なく、良好
3点: 茹で伸びがやや少なく、やや良好
2点: 茹で伸びがやや強く、やや不良
1点: 茹で伸びが強く、不良
【0033】
【0034】
【0035】
試験2 中華麺
A層とB層の厚さ比を表3のとおり変更した以外は、試験1と同様の手順で多層の中華麺を製造し、評価した。評価結果を製造例1-5の結果とともに表3に示す。
【0036】