(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002706
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法、パターン硬化膜、及び半導体素子
(51)【国際特許分類】
G03F 7/023 20060101AFI20231228BHJP
C08F 12/14 20060101ALI20231228BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
G03F7/023
C08F12/14
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102067
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(72)【発明者】
【氏名】濱野 芳美
(72)【発明者】
【氏名】青木 優
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
4J100
【Fターム(参考)】
2H197AA04
2H197CA05
2H197CE10
2H197HA03
2H225AE03P
2H225AE05P
2H225AF05P
2H225AM13P
2H225AM15P
2H225AM22P
2H225AM23P
2H225AM95P
2H225AN57P
2H225CA11
2H225CB02
2H225CB06
2H225CC03
2H225CC21
4J100AB02Q
4J100AB07P
4J100CA04
4J100DA01
4J100FA03
4J100FA19
4J100JA38
(57)【要約】
【課題】高解像度の微細加工性能を有し、かつ、優れた機械強度を持つ硬化膜を形成可能な感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂と、(B)光により酸を生成する4位にスルホン酸エステルを有する化合物と、(C)アルコキシ基又はエポキシ基を有する熱により架橋反応が生じる化合物と、を含有する感光性樹脂組成物は高解像度で機械強度が優れ、更に(D)エラストマを含有させると耐熱性、機械強度がより向上する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂と、
(B)光により酸を生成する4位にスルホン酸エステルを有する化合物と、
を含有する、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂が、下記式(21)で表される化合物、下記式(22)で表される化合物、及び下記式(23)で表される化合物、からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構造を有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】
(一般式(21)中、R
21は水素原子又はメチル基を示し、R
22は炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基又は炭素数1~10のアルコキシ基を示し、aは0~3の整数を示し、bは1~3の整数を示す。aとbの合計は5以下である。)
【化2】
(一般式(22)中、R
23は水素原子又はメチル基を示し、R
24は炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基又は炭素数1~10のアルコキシ基を示し、cは0~3の整数を示す。R
24で表わされる炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基又は炭素数1~10のアルコキシ基としては、それぞれR
22と同様のものが例示できる。)
【化3】
(一般式(23)中、R
25は水素原子又はメチル基を示し、R
26は炭素数1~10のアルキル基又は炭素数1~10のヒドロキシアルキル基を示す。)
【請求項3】
前記(B)光により酸を生成する4位にスルホン酸エステルを有する化合物が、下記式(b0)で表される化合物と、下記式(b2)で表される化合物との縮合物を少なくとも含む、o-キノンジアジド化合物である、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【化4】
【化5】
【請求項4】
(C)熱により架橋反応が生じる化合物を更に含有する、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)熱により架橋反応が生じる化合物が、アルコキシ基又はエポキシ基を有する化合物である、請求項4に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
(D)エラストマを更に含有する、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物を基板の一部又は全面に塗布、乾燥し、樹脂膜を形成する工程と、
前記樹脂膜の一部又は全面を露光する工程と、
露光後の樹脂膜をアルカリ水溶液により現像してパターン樹脂膜を形成する工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱する工程と、を有する、パターン硬化膜の製造方法。
【請求項8】
パターンを有し、前記パターンが請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物の硬化物を含む、パターン硬化膜。
【請求項9】
請求項8に記載のパターン硬化膜を層間絶縁層又は表面保護層として備える、半導体素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法、パターン硬化膜、及び半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の高集積化、小型化に伴い、半導体素子の層間絶縁層は、耐熱性、機械特性、金属銅配線との密着性に加え、微細加工性、つまり高解像度が求められる。このような特性を併せ持つ絶縁層を形成するための材料としては、アルカリ可溶性樹脂を含有する感光性樹脂組成物が開発されている(例えば、特許文献1~4参照。)。これらの感光性樹脂組成物を基板上に塗布及び乾燥して樹脂膜を形成し、該樹脂膜を露光及び現像することでパターン樹脂膜(パターン形成された樹脂膜)が得られる。そして、上記パターン樹脂膜を加熱硬化することでパターン硬化膜(パターン形成された硬化膜)を形成でき、該パターン硬化膜は、層間絶縁層として用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-309885号公報
【特許文献2】特開2007-57595号公報
【特許文献3】特開2016-24306号公報
【特許文献4】国際公開第2010/073948号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
層間絶縁層に用いられる感光性樹脂組成物には、配線の高密度化に伴う微細加工性、及び多層化に伴う接続信頼性を高めるための機械強度が必要とされる。特に層間絶縁層に関する微細加工性は高解像性、高解像度を指し、これを達成することで半導体パッケージの高密度化が期待できる。しかし、従来の感光性絶縁材料においては、アスペクト比(本願では、膜厚/解像度とする)が1以下の感光性樹脂組成物が一般的であり、膜厚5~7μmに対して、解像度2~6μmが限界であった。今後、半導体素子の更なる高集積のため、層間絶縁材料にも更なる微細加工性が求められるとともに、解像度1μm、つまりアスペクト比5以上の高解像度を示すパターン硬化膜が必要とされる。
【0005】
本発明は、微細加工可能な高解像度1μmを示し、かつ、優れた機械強度を有する硬化膜を形成できる感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、下記[1]~[9]の実施形態を含むものである。
[1](A)フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂と、
(B)光により酸を生成する4位にスルホン酸エステルを有する化合物と、
を含有する、感光性樹脂組成物。
[2]上記(A)フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂が、下記式(21)で表される化合物、下記式(22)で表される化合物、及び下記式(23)で表される化合物、からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構造を有する、[1]項に記載の感光性樹脂組成物。
【0007】
【化1】
(一般式(21)中、R
21は水素原子又はメチル基を示し、R
22は炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基又は炭素数1~10のアルコキシ基を示し、aは0~3の整数を示し、bは1~3の整数を示す。aとbの合計は5以下である。)
【0008】
【化2】
(一般式(22)中、R
23は水素原子又はメチル基を示し、R
24は炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基又は炭素数1~10のアルコキシ基を示し、cは0~3の整数を示す。R
24で表わされる炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基又は炭素数1~10のアルコキシ基としては、それぞれR
22と同様のものが例示できる。)
【0009】
【化3】
(一般式(23)中、R
25は水素原子又はメチル基を示し、R
26は炭素数1~10のアルキル基又は炭素数1~10のヒドロキシアルキル基を示す。)
[3]上記(B)光により酸を生成する4位にスルホン酸エステルを有する化合物が、下記式(b0)で表される化合物と、下記式(b2)で表される化合物との縮合物を少なくとも含む、o-キノンジアジド化合物である、[1]又は[2]項に記載の感光性樹脂組成物。
【0010】
【0011】
【0012】
[4](C)熱により架橋反応が生じる化合物を更に含有する、[1]~[3]のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
[5]上記(C)熱により架橋反応が生じる化合物が、アルコキシ基又はエポキシ基を有する化合物である、[4]項に記載の感光性樹脂組成物。
[6](D)エラストマを更に含有する、[1]~[5]のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
[7][1]~[6]のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を基板の一部又は全面に塗布、及び乾燥し樹脂膜を形成する工程と、
上記樹脂膜の一部又は全面を露光する工程と、
露光後の樹脂膜をアルカリ水溶液により現像してパターン樹脂膜を形成する工程と、
上記パターン樹脂膜を加熱する工程と、を有する、パターン硬化膜の製造方法。
[8]パターンを有し、上記パターンが[1]~[6]のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物を含む、パターン硬化膜。
[9][8]に記載のパターン硬化膜を層間絶縁層又は表面保護層として備える、半導体素子。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、微細加工が可能で非常に高い解像度1μmを示し、優れた機械強度を有するパターン硬化膜を形成できる感光性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該感光性樹脂組成物を用いたパターン硬化膜及びその製造方法、半導体素子、並びに電子デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本明細書における「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」又は「メタクリル酸」を意味し、(メタ)アクリレート等の他の類似の表現においても同様である。本明細書において、「固形分」とは、感光性樹脂組成物に含まれる水、溶剤等の揮発する物質を除いた不揮発分のことであり、該樹脂組成物を乾燥させた際に、揮発せずに残る成分を示し、また室温(25℃)付近で液状、水飴状、及びワックス状のものも含む。
【0015】
本明細書において、「工程」との語は、独立した工程だけではなく、その工程の所期の作用が達成される限り、他の工程と明確に区別できない工程も含む。「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0016】
[感光性樹脂組成物]
一実施形態に係る感光性樹脂組成物は、(A)フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂(以下、「(A)成分」という場合がある。)と、(B)光により酸を生成する4位にスルホン酸エステルを有する化合物(以下、「(B)成分」という場合がある。)と、を含有する。本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、ポジ型感光性樹脂組成物として好適に用いることができる。以下、ポジ型感光性樹脂組成物の形態について、詳細に説明する。
【0017】
<(A)成分:フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂>
本明細書において、アルカリ可溶性樹脂は、アルカリ水溶液(現像液)に対して可溶である樹脂を意味する。なお、アルカリ水溶液とは、水酸化テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液、金属水酸化物水溶液、有機アミン水溶液等のアルカリ性の溶液である。一般には、濃度が2.38質量%のTMAH水溶液が現像に用いられる。(A)成分がアルカリ現像液に可溶であることは、例えば、以下のようにして確認することができる。
【0018】
樹脂を任意の溶剤に溶解して得られたワニスを、シリコンウェハ等の基板上にスピン塗布して形成することによって膜厚5μm程度の塗膜とする。これを20~25℃のTMAH水溶液、金属水酸化物水溶液、又は有機アミン水溶液のいずれかに浸漬する。この結果、塗膜が均一に溶解し得るとき、その樹脂はアルカリ現像液に可溶と見なすことができる。
【0019】
(A)成分は、アルカリ水溶液への溶解性、高解像性、機械特性の観点からフェノール性水酸基を有する樹脂であってもよい。
(A)成分が有するフェノール性水酸基は、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、又はp-クレゾールに由来する構造であってもよい。
(A)成分は、微細加工性と機械強度をより高めることからヒドロキシスチレン系樹脂として、下記式(21)で表される構造単位を有してもよい。
【0020】
【化6】
[一般式(21)中、R
21は水素原子又はメチル基を示し、R
22は炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基又は炭素数1~10のアルコキシ基を示し、aは0~3の整数を示し、bは1~3の整数を示す。aとbの合計は5以下である。]
【0021】
ヒドロキシスチレン系樹脂は、一般式(21)で表される構造単位を与えるモノマ等を重合させることで得ることができる。
一般式(21)において、R21で表わされる炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。これらの基は直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。また、R22で表わされる炭素数6~10のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。R21で表わされる炭素数1~10のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基、ヘプトキシ基、オクトキシ基、ノノキシ基、デコキシ基等が挙げられる。これらの基は直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【0022】
一般式(21)で表される構造単位を与えるモノマとしては、例えば、p-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、o-ヒドロキシスチレン、p-イソプロペニルフェノール、m-イソプロペニルフェノール、o-イソプロペニルフェノール等が挙げられる。これらのモノマはそれぞれ1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ヒドロキシスチレン系樹脂は、その製造方法に制限されないが、例えば、一般式(21)で示される構造単位を与えるモノマの水酸基をt-ブチル基、アセチル基等で保護して水酸基が保護されたモノマとし、水酸基が保護されたモノマを重合して重合体を得て、さらに得られた重合体を、公知の方法(酸触媒下で脱保護してヒドロキシスチレン系構造単位に変換すること等)で脱保護することにより得ることができる。
【0023】
ヒドロキシスチレン系樹脂は、一般式(21)で表される構造単位を与えるモノマのみからなる重合体又は共重合体であってもよく、一般式(21)で表される構造単位を与えるモノマとそれ以外のモノマとの共重合体であってもよい。ヒドロキシスチレン系樹脂が共重合体である場合、共重合体中の一般式(21)で示される構造単位の割合は、露光部のアルカリ現像液に対する溶解性の観点から、(A)成分100モル%に対して、10~100モル%が好ましく、20~97モル%がより好ましく、30~95モル%がさらに好ましく、50~95モル%が特に好ましい。
【0024】
ヒドロキシスチレン系樹脂は、未露光部のアルカリ現像液に対する溶解阻害性をより向上させる観点から、さらに下記一般式(22)で表される構造単位を有するアルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。
【0025】
【化7】
[一般式(22)中、R
23は水素原子又はメチル基を示し、R
24は炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基又は炭素数1~10のアルコキシ基を示し、cは0~3の整数を示す。
R
24で表わされる炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基又は炭素数1~10のアルコキシ基としては、それぞれR
22と同様のものが例示できる。]
【0026】
一般式(22)で表される構造単位を有するアルカリ可溶性樹脂は、一般式(22)で表される構造単位を与えるモノマを用いることによって得られる。一般式(22)で表される構造単位を与えるモノマとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o-メトキシスチレン、m-メトキシスチレン、p-メトキシスチレン等の芳香族ビニル化合物などが挙げられる。これらのモノマはそれぞれ1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
ヒドロキシスチレン系樹脂が一般式(22)で示される構造単位を有するアルカリ可溶性樹脂である場合、未露光部のアルカリ現像液に対する溶解阻害性及びパターン硬化膜の機械特性の観点から、一般式(22)で示される構造単位の割合は(A)成分100モル%に対して、1~90モル%が好ましく、3~80モル%がより好ましく、5~70モル%がさらに好ましく、5~50モル%が特に好ましい。
また、ヒドロキシスチレン系樹脂は、弾性率を低くする観点から、さらに下記一般式(23)で表される構造単位を有するアルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。
【0028】
【化8】
[一般式(23)中、R
25は水素原子又はメチル基を示し、R
26は炭素数1~10のアルキル基又は炭素数1~10のヒドロキシアルキル基を示す。]
【0029】
一般式(23)で表される構造単位を有するアルカリ可溶性樹脂は、一般式(23)で表される構造単位を与えるモノマを用いることで得られる。一般式(23)で表される構造単位を与えるモノマとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシペンチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘプチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシノニル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル等が挙げられる。これらのモノマはそれぞれ1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
ヒドロキシスチレン系樹脂が一般式(23)で示される構造単位を有するアルカリ可溶性樹脂である場合、未露光部のアルカリ現像液に対する溶解阻害性、及びパターン硬化膜の機械特性を向上させる観点から、一般式(23)で示される構造単位の割合は(A)成分100モル%に対して、1~90モル%が好ましく、3~80モル%がより好ましく、5~70モル%がさらに好ましく、5~50モル%が特に好ましい。
【0031】
フェノール樹脂は、フェノール又はその誘導体とアルデヒド類との重縮合生成物である。重縮合は、通常、酸、塩基等の触媒存在下で行われる。酸触媒を用いた場合に得られるフェノール樹脂は、特にノボラック型フェノール樹脂と呼ばれる。ノボラック型フェノール樹脂としては、例えば、フェノール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、クレゾール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、キシレノール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、レゾルシノール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、フェノール-ナフトール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂等が挙げられる。
【0032】
フェノール樹脂を構成するフェノール誘導体としては、例えば、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、o-ブチルフェノール、m-ブチルフェノール、p-ブチルフェノール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール等のアルキルフェノール、メトキシフェノール、2-メトキシ-4-メチルフェノール等のアルコキシフェノール、ビニルフェノール、アリルフェノール等のアルケニルフェノール、ベンジルフェノール等のアラルキルフェノール、メトキシカルボニルフェノール等のアルコキシカルボニルフェノール、ベンゾイルオキシフェノール等のアリールカルボニルフェノール、クロロフェノール等のハロゲン化フェノール、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール等のポリヒドロキシベンゼン、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール、α-又はβ-ナフトール等のナフトール誘導体、p-ヒドロキシフェニル-2-エタノール、p-ヒドロキシフェニル-3-プロパノール、p-ヒドロキシフェニル-4-ブタノール等のヒドロキシアルキルフェノール、ヒドロキシエチルクレゾール等のヒドロキシアルキルクレゾール、ビスフェノールのモノエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールのモノプロピレンオキサイド付加物等のアルコール性水酸基含有フェノール誘導体、p-ヒドロキシフェニル酢酸、p-ヒドロキシフェニルプロピオン酸、p-ヒドロキシフェニルブタン酸、p-ヒドロキシ桂皮酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフェニル安息香酸、ヒドロキシフェノキシ安息香酸、ジフェノール酸等のカルボキシル基含有フェノール誘導体などが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
フェノール樹脂を構成するアルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、メトキシベンズアルデヒド、ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド、メトキシフェニルアセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、クロロアセトアルデヒド、クロロフェニルアセトアルデヒド、グリセルアルデヒド、グリオキシル酸、グリオキシル酸メチル、グリオキシル酸フェニル、グリオキシル酸ヒドロキシフェニル、ホルミル酢酸、ホルミル酢酸メチル、2-ホルミルプロピオン酸、2-ホルミルプロピオン酸メチル等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、パラホルムアルデヒド、トリオキサン等のホルムアルデヒドの前駆体、アセトン、ピルビン酸、レブリン酸、4-アセチルブチル酸、アセトンジカルボン酸、3,3’-4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸等のケトン類を反応に用いてもよい。
【0034】
(A)成分の重量平均分子量(Mw)は、アルカリ水溶液に対する溶解性、感光特性及びパターン硬化膜の機械特性のバランスを考慮すると、重量平均分子量で1000~500000が好ましく、2000~200000がより好ましく、2000~100000であることがさらに好ましい。ここで、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定し、標準ポリスチレン検量線より換算して得られる値である。
【0035】
<(B)成分:光により酸を生成する4位にスルホン酸エステルを有する化合物>
(B)成分である光により(光を受けることにより)酸を生成する4位にスルホン酸エステルを有する化合物は、感光性樹脂組成物において感光剤として機能する。(B)成分は、光照射を受けて酸を生成させ、光照射を受けた部分のアルカリ水溶液への可溶性を増大させる機能を有する。(B)成分としては、一般に光酸発生剤と称される化合物を用いることができる。(B)成分としては、例えば、o-キノンジアジド化合物、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、及びトリアリールスルホニウム塩が挙げられる。(B)成分は、これらの化合物のうちの1種のみからなるものであってもよく、また2種以上を含んで構成されるものであってもよい。これらの中で、感度が高いことから、(B)成分は、o-キノンジアジド化合物であってよい。
o-キノンジアジド化合物としては、例えば、o-キノンジアジドスルホニルクロリドと、ヒドロキシ化合物及び/又はアミノ化合物とを脱塩酸剤の存在下で縮合反応させることで得られるものを用いることができる。
o-キノンジアジドスルホニルクロリドとしては、例えば、ベンゾキノン-1,2-ジアジド-4-スルホニルクロリド、ナフトキノン-1,2-ジアジド-5-スルホニルクロリド、及びナフトキノン-1,2-ジアジド-6-スルホニルクロリドが挙げられる。
【0036】
ヒドロキシ化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、ピロガロール、ビスフェノールA、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-[4-{1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル}フェニル]エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’,3’-ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,3’,4’,5’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)プロパン、4b,5,9b,10-テトラヒドロ-1,3,6,8-テトラヒドロキシ-5,10-ジメチルインデノ[2,1-a]インデン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、及びトリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが挙げられる。
【0037】
アミノ化合物としては、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、o-アミノフェノール、m-アミノフェノール、p-アミノフェノール、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、及びビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンが挙げられる。
【0038】
これらの中でも、o-キノンジアジド化合物を合成する際の反応性が良好な観点、及び樹脂膜を露光する際に吸収する波長が適度な範囲に調整できる観点から、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-[4-{1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル}フェニル]エタンと1-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホニルクロリドとの縮合物、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-[4-{1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル}フェニル]エタンと1-ナフトキノン-2-ジアジド-4-スルホニルクロリドとの縮合物、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン又はトリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンと1-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホニルクロリドとの縮合物、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン又はトリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンと1-ナフトキノン-2-ジアジド-4-スルホニルクロリドとの縮合物であってもよい。
【0039】
(B1)成分:下記式(b0)で表される化合物と、下記式(b1)で表される化合物との縮合物である。
(B2)成分:下記式(b0)で表される化合物と、下記式(b2)で表される化合物との縮合物である。
b0:1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-[4-{1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル}
b1:1-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホニルクロリド
b2:1-ナフトキノン-2-ジアジド-4-スルホニルクロリド
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
脱塩酸剤としては、例えば、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、及びピリジンが挙げられる。
【0044】
o-キノンジアジドスルホニルクロリドと、ヒドロキシ化合物及び/又はアミノ化合物との配合は、o-キノンジアジドスルホニルクロリドが1モルに対して、ヒドロキシ基とアミノ基とのモル数の合計が0.5~1.0モルになるように配合されることが好ましい。脱塩酸剤とo-キノンジアジドスルホニルクロリドの好ましい配合割合は、0.95/1.00モル~1.00/0.95モル当量の範囲である。
上述の反応の好ましい反応温度は0~40℃、好ましい反応時間は1~10時間である。反応溶媒としては、例えば、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、又はN-メチルピロリドンが用いられる。
【0045】
(B)成分の含有量は、露光部と未露光部の溶解速度差が大きくなり、感度がより良好となる観点から、(A)成分100質量部に対して1~50質量部、3~35質量部、又は5~20質量部であってよい。
【0046】
<(C)成分:熱架橋剤>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、(C)成分として、熱架橋剤を更に含有してもよい。(C)成分は、パターン樹脂膜を加熱して硬化させる際に、(A)成分と反応して橋架け構造を形成し得る構造を有する化合物である。これにより、膜の脆さ、及び膜の溶融を防ぐことができる。(C)成分としては、例えば、フェノール性水酸基を有する化合物、アルコキシ基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物が挙げられる。
【0047】
ここでいう「フェノール性水酸基を有する化合物」には、(A)成分は包含されない。熱架橋剤としてのフェノール性水酸基を有する化合物は、熱架橋剤としてだけでなく、アルカリ水溶液で現像する際の露光部の溶解速度を増加させ、感度を向上させることができる。このようなフェノール性水酸基を有する化合物の重量平均分子量(Mw)は、アルカリ水溶液に対する溶解性、感光特性及び機械強度のバランスを考慮して、3000以下、2000以下、又は1500以下であってよい。
【0048】
アルコキシ基を有する化合物は、公知のものを用いることができる。アルコキシ基を有する化合物は、高い反応性と耐熱性を付与できることから、メトキシ基を有してよく、4つ以上のメトキシ基を有してよい。アルコキシ基を有する化合物は、露光部の溶解促進効果と硬化膜の機械強度のバランスに優れているため、下記式で表される化合物から選ばれる化合物であってよい。
【0049】
【0050】
エポキシ基を有する化合物としては、公知のものを用いることができる。エポキシ基を有する化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、複素環式エポキシ化合物、ハロゲン化エポキシ化合物、及びポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0051】
(C)成分として、上述した化合物以外に、例えば、ビス[3,4-ビス(ヒドロキシメチル)フェニル]エーテル、1,3,5-トリス(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ベンゼン等のヒドロキシメチル基を有する芳香族化合物、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス[4-(4’-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等のマレイミド基を有する化合物、ノルボルネン骨格を有する化合物、多官能アクリレート化合物、オキセタニル基を有する化合物、ビニル基を有する化合物、又はブロック化イソシアネート化合物を用いることもできる。
(C)成分の含有量は、硬化膜の耐熱性と塗布基板の反りの観点から、(A)成分100質量部に対して1~70質量部、2~50質量部、又は3~40質量部であってよい。
【0052】
<(D)成分:エラストマ>
本実施形態の樹脂組成物は、パターン硬化膜の柔軟性を向上する観点から、(D)成分としてエラストマを更に含有してもよい。(D)成分としては、例えば、スチレン系エラストマ、オレフィン系エラストマ、ウレタン系エラストマ、ポリエステル系エラストマ、ポリアミド系エラストマ、アクリル系エラストマ、及びシリコン系エラストマが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また(A)成分中にエラストマ成分の骨格を導入してもよい。
【0053】
アクリル系エラストマは、下記式(8)で表される構造単位を有していてもよい。アクリル系エラストマは、下記式(8)で表される構造単位を有することにより、(A)成分と(D)成分との相溶性が向上するため感光性樹脂組成物の白濁を充分に抑え、パターン硬化膜のヘイズ値を低くすることができると共に、機械強度をより向上できる。
【0054】
【化13】
[式(8)中、R
17は水素原子又はメチル基を示し、R
18は炭素数2~20のヒドロキシアルキル基を示す。]
【0055】
R18で示される炭素数2~20のヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシヘプチル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシノニル基、ヒドロキシデシル基、ヒドロキシウンデシル基、ヒドロキシドデシル基(ヒドロキシラウリル基という場合もある。)、ヒドロキシトリデシル基、ヒドロキシテトラデシル基、ヒドロキシペンタデシル基、ヒドロキシヘキサデシル基、ヒドロキシヘプタデシル基、ヒドロキシオクタデシル基、ヒドロキシノナデシル基、及びヒドロキシエイコシル基が挙げられる。これらの基は直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【0056】
式(8)中、(A)成分との相溶性及び機械強度をより向上させる観点から、R18は、炭素数2~15のヒドロキシアルキル基が好ましく、炭素数2~10のヒドロキシアルキル基がより好ましく、炭素数2~8のヒドロキシアルキル基が更に好ましい。
【0057】
式(8)で表される構造単位を与えるモノマとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシペンチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘプチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシノニル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシウンデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシドデシル((メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリルという場合もある。)、(メタ)アクリル酸ヒドロキシトリデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシテトラデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクタデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシノナデシル、及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシエイコシルが挙げられる。これらのモノマは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0058】
これらの中でも、(A)成分との相溶性、硬化膜の破断伸びをより向上させる観点から、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシペンチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘプチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシノニル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシウンデシル、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシドデシルを用いることが好ましい。
【0059】
(D)成分は、式(8)で表される構造単位のみからなるアクリル系エラストマであってもよく、式(8)で表される構造単位以外の構造単位を有するアクリル系エラストマであってもよい。式(8)で表される構造単位以外の構造単位を有するアクリル樹脂である場合、アクリル樹脂中の式(8)で表される構造単位の割合は、(D)成分の総量に対して、0.1~30.0モル%、0.3~20.0モル%、又は0.5~10.0モル%であってよい。
アクリル系エラストマは、下記式(9)で表される構造単位を更に有していてもよい。
【0060】
【化14】
[式(9)中、R
19は水素原子又はメチル基を示し、R
20は1級、2級又は3級アミノ基を有する1価の有機基を示す。]
【0061】
(D)成分が式(9)で表される構造単位を有することで、未露光部の現像液に対する溶解阻害性、及び金属基板に対する密着性をより向上できる。
式(9)で表される構造単位を有するアクリル系エラストマを与えるモノマとしては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、N-メチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N-エチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、1-メチルピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、(ピペリジン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、及び2-(ピペリジン-4-イル)エチル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのモノマは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0062】
これらの中でも、パターン硬化膜の基板への密着性、(A)成分との相溶性をより向上できる観点から、式(9)中、R20が下記式(10)で表される1価の有機基であることが好ましい。
【0063】
【化15】
[式(10)中、Yは炭素数1~5のアルキレン基を示し、R
21、R
22、R
23、R
24、及びR
25は各々独立に水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を示し、eは0~10の整数を示す。]
【0064】
式(9)中、R20が式(10)で表される1価の有機基で表される構造単位を与えるモノマとしては、例えば、ピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、1-メチルピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、(ピペリジン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、及び2-(ピペリジン-4-イル)エチル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中で、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリレートはFA-711MMとして、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イルメタクリレートはFA-712HMとして(いずれも昭和電工マテリアルズ株式会社製、商品名)、それぞれ商業的に入手可能であるため好ましい。
【0065】
(D)成分が式(10)で表される構造単位を有する場合、式(9)で表される構造単位の割合は、(A)成分との相溶性と現像液に対する溶解性の観点から、(D)成分の総量に対して、0.3~10.0モル%であることが好ましく、0.4~6.0モル%であることがより好ましく、0.5~5.0モル%であることが更に好ましい。
アクリル系エラストマは、下記式(11)で表される構造単位を更に有していてもよい。アクリル系エラストマが式(11)で表される構造単位を有することで、硬化膜の耐熱衝撃性をより向上できる。
【0066】
【化16】
[式(11)中、R
26は水素原子又はメチル基を示し、R
27は炭素数4~20のアルキル基を示す。]
【0067】
R27で示される炭素数4~20のアルキル基としては、例えば、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基という場合もある。)、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、及びエイコシル基が挙げられる。これらの基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
【0068】
式(11)中、アルカリ溶解性、耐熱衝撃性、(A)成分との相溶性の観点から、R27が炭素数4~16のアルキル基であることが好ましく、炭素数4~12のアルキル基であることがより好ましく、炭素数4のアルキル基(n-ブチル基)であることが更に好ましい。
【0069】
式(11)で表されるモノマとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリルという場合もある。)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、及び(メタ)アクリル酸エイコシルが挙げられる。これらのモノマは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0070】
これらの中でも破断伸びをより向上させ、弾性率をより低くする観点から、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、又は(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリルともいう。)を用いることが好ましい。
【0071】
(D)成分が式(11)で表される構造単位を有する場合、式(11)で表される構造単位の割合は、(D)成分の総量に対して、50~93モル%であることが好ましく、55~85モル%であることがより好ましく、60~80モル%であることが更に好ましい。上記式(11)で表される構造単位の割合が50~93モル%であることにより、硬化膜の耐熱衝撃性をより向上させることができる。
【0072】
アクリル系エラストマは、下記式(12)で表される構造単位を更に有していてもよい。アクリル系エラストマが式(12)で表される構造単位を有することで、樹脂膜の露光部のアルカリ溶解性をより向上させることができる。
【0073】
【化17】
[式(12)中、R
28は水素原子又はメチル基を示す。]
【0074】
式(12)で表される構造単位を与えるモノマとしては、アクリル酸及びメタクリル酸が挙げられる。
(D)成分が式(12)で表される構造単位を有する場合、式(12)で表される構造単位の割合は、(D)成分の総量に対して、5~35モル%であることが好ましく、10~30モル%であることがより好ましく、15~25モル%であることが更に好ましい。上記式(12)で表される構造単位の組成比が5~35モル%であることにより、(A)成分との相溶性、及び露光部のアルカリ溶解性をより向上させることができる。
【0075】
アクリル系エラストマは、例えば、上記式(8)で表される構造単位を与えるモノマ、及び必要に応じて添加される式(9)、(11)又は(12)で表される構造単位を与えるモノマを配合し、乳酸エチル、トルエン、イソプロパノール等の溶剤中で攪拌し、必要に応じて加熱することにより得られる。
【0076】
アクリル系エラストマの合成に用いられるモノマは、式(8)、(9)、(11)、及び(12)で表される構造単位を与えるモノマ以外のモノマを更に含んでいてもよい。
【0077】
そのようなモノマとしては、例えば、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸4-メチルベンジル、アクリロニトリル、ビニル-n-ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、α-ブロモ(メタ)アクリル酸、α-クロル(メタ)アクリル酸、β-フリル(メタ)アクリル酸、β-スチリル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル、フマール酸、ケイ皮酸、α-シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、及びプロピオール酸が挙げられる。これらのモノマは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0078】
(D)成分の重量平均分子量(Mw)は、2000~100000、3000~60000、5000~50000、又は10000~40000であってよい。Mwが2000以上では硬化膜の熱衝撃性をより向上させ、100000以下であると(A)成分との相溶性及び現像性をより向上させることができる。
【0079】
(D)成分の含有量は、露光部のアルカリ溶解性、未露光部のアルカリ溶解阻害性、金属基板との密着性、及び耐熱衝撃性のバランスの観点から、(A)成分100質量部に対して1~50質量部、2~30質量部、又は3~20質量部であってよい。
【0080】
<その他の成分>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、上記(A)~(D)成分以外に、基板との密着性を向上させる接着助剤を含有してもよい。更に、溶剤、加熱により酸を生成する化合物、溶解促進剤、溶解阻害剤、カップリング剤、界面活性剤、及びレベリング剤等の成分を含有してもよい。
【0081】
(溶剤)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、溶剤を含有することにより、基板上への塗布を容易にし、均一な厚さの塗膜を形成できるという効果を奏する。溶剤としては、例えば、γ-ブチロラクトン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ベンジル、n-ブチルアセテート、エトキシエチルプロピオナート、3-メチルメトキシプロピオナート、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリルアミド、テトラメチレンスルホン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。溶剤は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、溶解性と塗布膜の均一性の観点から、乳酸エチル又はγ-ブチロラクトンを用いるのが好ましい。
【0082】
(接着助剤)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、接着助剤を含有してもよい。接着助剤を含有することにより、基板との密着性が良好なパターン硬化膜を備える感光性樹脂組成物を提供することができる。接着助剤は、下記式(7)で表される含窒素芳香族化合物を含んでいてよい。
【0083】
【化18】
[式(7)中、R
51は水素原子又は炭化水素基を示し、R
52は水素原子、アミノ基、又はフェニル基を示す。A及びBはそれぞれ独立に窒素原子、又は、炭素原子及びこれに結合した水素原子(C-H)を示す。]
【0084】
式(7)で表される含窒素芳香族化合物は、より基板への密着性を向上させる観点から、下記式(7a)で表される含窒素芳香族化合物であってもよい。式(7a)中のR52は式(7)のR52と同義である。
【0085】
【0086】
(E)成分としては、例えば、1H-テトラゾール、5-アミノテトラゾール、5-フェニルテトラゾール、及び5-メチルテトラゾールが挙げられる。これらの中でも、より良好な基板への密着性を与える観点から、(E)成分は、1H-テトラゾール又は5-アミノテトラゾールを含んでよい。
(E)成分の配合量は、良好な基板への密着性と感度を与える観点から、(A)成分100質量部に対して、0.01~20質量部、0.015~10質量部、又は0.02~7質量部であってよい。
【0087】
(加熱により酸を生成する化合物)
本願の一形態では、加熱により酸を生成する化合物を用いることにより、パターン樹脂膜を加熱する際に酸を発生させることが可能となり、(A)成分と(C)成分との反応、すなわち熱架橋反応が促進され、パターン硬化膜の耐熱性が向上する。
また、本願の他の一形態で用いる、加熱により酸を生成する化合物は、光照射によっても酸を発生するため、露光部のアルカリ水溶液への溶解性が増大する。よって、未露光部と露光部とのアルカリ水溶液に対する溶解性の差が更に大きくなり解像度をより向上させることができる。
【0088】
加熱により酸を生成する化合物は、例えば、50~250℃の温度で加熱することにより酸を生成するものであることが好ましい。加熱により酸を生成する化合物としては、例えば、オニウム塩等の強酸と塩基とから形成される塩、及びイミドスルホナートが挙げられる。加熱により酸を生成する化合物を用いる場合の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1~30.0質量部、0.2~20.0質量部、又は0.5~10.0質量部であってよい。
【0089】
(溶解促進剤)
溶解促進剤を上述のポジ型感光性樹脂組成物に配合することによって、アルカリ水溶液で現像する際の露光部の溶解速度を増加させ、感度及び解像性を向上させることができる。溶解促進剤としては公知のものを用いることができる。溶解促進剤としては、例えば、カルボキシ基、スルホ基、又はスルホンアミド基を有する化合物が挙げられる。溶解促進剤を用いる場合の含有量は、アルカリ水溶液に対する溶解速度によって決めることができ、例えば、(A)成分100質量部に対して、0.01~30質量部とすることができる。
【0090】
(溶解阻害剤)
溶解阻害剤は(A)成分のアルカリ水溶液に対する溶解性を阻害する化合物であり、残膜厚、現像時間及びコントラストをコントロールするために用いられる。溶解阻害剤としては、例えば、ジフェニルヨードニウムニトラート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムニトラート、ジフェニルヨードニウムブロミド、ジフェニルヨードニウムクロリド、及びジフェニルヨードニウムヨージドが挙げられる。溶解阻害剤を用いる場合の含有量は、感度と現像時間の許容幅の観点から、(A)成分100質量部に対して0.01~20質量部、0.01~15質量部、又は0.05~10質量部であってよい。
【0091】
(カップリング剤)
カップリング剤を感光性樹脂組成物に配合することによって、形成されるパターン硬化膜の基板との接着性をより高めることができる。カップリング剤としては、例えば、有機シラン化合物、アルミキレート化合物が挙げられる。
有機シラン化合物としては、例えば、KBM-403、KBM-803、及びKBM-903(信越化学工業株式会社製、商品名)が挙げられる。カップリング剤を用いる場合の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1~20.0質量部又は0.5~10.0質量部であってよい。
【0092】
(界面活性剤、又はレベリング剤)
界面活性剤、又はレベリング剤を感光性樹脂組成物に配合することによって、塗布性をより向上させることができる。具体的には、例えば、界面活性剤又はレベリング剤を含有することで、ストリエーション(膜厚のムラ)をより防いだり、現像性をより向上させることができる。このような界面活性剤、又はレベリング剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、及びポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテルが挙げられる。市販品としては、例えば、メガファックF-171、F-565、及びRS-78(DIC株式会社製、商品名)、が挙げられる。
界面活性剤又はレベリング剤を用いる場合の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.001~5質量部又は0.01~3質量部であってよい。
【0093】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)等のアルカリ水溶液を用いて現像することが可能である。
【0094】
[パターン硬化膜及びパターン硬化膜の製造方法]
一実施形態に係るパターン硬化膜は、パターンを有し、パターンが上述の感光性樹脂組成物の硬化物を含む。パターン硬化膜は、上述の感光性樹脂組成物を加熱することにより得られる。以下、パターン硬化膜の製造方法について説明する。
【0095】
本実施形態に係るパターン硬化膜の製造方法は、上述の感光性樹脂組成物を基板の一部又は全面に塗布、乾燥し樹脂膜を形成する工程(塗布・乾燥(成膜)工程)と、樹脂膜の一部又は全面を露光する工程(露光工程)と、露光後の樹脂膜をアルカリ水溶液により現像してパターン樹脂膜を形成する工程(現像工程)と、パターン樹脂膜を加熱する工程(加熱処理工程)とを有する。以下、各工程について説明する。
【0096】
(塗布・乾燥(成膜)工程)
まず、本実施形態の感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して樹脂膜を形成する。この工程では、ガラス基板、半導体、金属酸化物絶縁体(例えば、TiO2、SiO2)、窒化ケイ素等の基板上に、本実施形態の感光性樹脂組成物を、スピナー等を用いて回転塗布し、塗膜を形成する。塗膜の厚さは特に制限されないが、0.1~40μmであってよい。この塗膜が形成された基板をホットプレート、オーブン等を用いて乾燥する。乾燥温度及び乾燥時間に特に制限はないが、80~140℃で1~7分間であってよい。これにより、基板上に樹脂膜が形成される。樹脂膜の厚さに特に制限はないが、0.1~40μmであってよい。
【0097】
(露光工程)
次に、露光工程では、基板上に形成した樹脂膜に、マスクを介して紫外線、可視光線、放射線等の活性光線を照射する。本実施形態の感光性樹脂組成物において、(A)成分はg、h、及びi線に対する透明性が高いので、g、h、i線のいずれか、又は全てを露光に用いることができる。
【0098】
(現像工程)
現像工程では、露光工程後の樹脂膜の露光部を現像液で除去することによって、樹脂膜がパターン化され、パターン樹脂膜が得られる。現像液としては、例えば、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)等のアルカリ水溶液が好適に用いられる。これらの水溶液の塩基濃度は、0.1~10.0質量%であってよい。上記現像液にアルコール類又は界面活性剤を添加して使用することもできる。これらはそれぞれ、現像液100質量部に対して、0.01~10.0質量部又は0.1~5.0質量部の範囲で配合してよい。現像液を用いて現像を行う場合は、例えば、シャワー現像、スプレー現像、浸漬現像、パドル現像等の方法によって、樹脂膜上を現像液で満たし、18~40℃の液温条件下、30~360秒間放置する。放置後、水洗し、スピン乾燥を行うことによってパターン樹脂膜を洗浄、乾燥する。
【0099】
(加熱処理工程)
次いで、加熱処理工程では、パターン樹脂膜を加熱処理することによって、パターン硬化膜を形成することができる。加熱処理工程における加熱温度は、半導体装置に対する熱によるダメージを充分に防止する観点から、300℃以下、270℃以下、又は250℃以下であってよい。
【0100】
加熱処理は、例えば、石英チューブ炉、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール、縦型拡散炉、赤外線加熱炉、電子線照射装置、マイクロ波照射装置等のオーブンを用いて行うことができる。また、大気中又は窒素等の不活性ガス雰囲気中のいずれを選択することもできるが、パターン樹脂膜の酸化を防ぐことができるので、不活性ガス雰囲気中で加熱処理を行うのが望ましい。上述の加熱温度の範囲は従来の加熱温度よりも低いため、支持基板及び半導体装置への熱ダメージを小さく抑えることができる。
したがって、本実施形態に係るパターン硬化膜の製造方法を用いることによって、電子デバイスを歩留まり良く製造することができる。また、プロセスの省エネルギー化につながる。さらに、本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物によれば、感光性ポリイミド等に見られる加熱処理工程における体積収縮(硬化収縮)が小さいため、寸法精度の悪化を防ぐことができる。
加熱処理工程における加熱処理時間は、ポジ型感光性樹脂組成物が硬化するのに充分な時間であればよく、作業効率との兼ね合いから概ね5時間以下に設定するのが好ましい。
【0101】
加熱処理は、上述のオーブンの他、マイクロ波照射装置又は周波数可変マイクロ波照射装置を用いて行うこともできる。これらの装置を用いることによって、基板及び半導体装置の温度を所望の温度(例えば、200℃以下)に保ちつつ、樹脂膜のみを効果的に加熱することが可能である(J.Photopolym.Sci.Technol.,18,327-332(2005)参照)。
【0102】
本実施形態に係るパターン硬化膜は、半導体素子の層間絶縁層、及び表面保護層として用いることができる。上述の感光性樹脂組成物の硬化膜から形成された層間絶縁層、表面保護層を備える半導体素子、及び該半導体素子を含む電子デバイスを作製することができる。半導体素子は、例えば、多層配線構造、再配線構造等を有する、メモリ、パッケージ等であってよい。電子デバイスとしては、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット型端末、パソコン、及びハードディスクサスペンションが挙げられる。本実施形態の感光性樹脂組成物により形成されるパターン硬化膜を備えることにより、信頼性に優れた半導体素子、及び電子デバイスを提供することができる。
【実施例0103】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0104】
実施例、及び比較例で用いた材料について以下に示す。
((A)成分)
A1:4-ヒドロキシスチレン/スチレン=85/15(モル比)の共重合体(重量平均分子量(Mw)=30000、群栄化学工業株式会社製、商品名「レヂトップ」)
A2:4-ヒドロキシスチレン/スチレン=85/15(モル比)の共重合体(重量平均分子量(Mw)=10000、丸善石油化学株式会社製、商品名「マルカリンカーCST」)
A3:4-ヒドロキシスチレン/スチレン=70/30(モル比)の共重合体(重量平均分子量(Mw)=10000、丸善石油化学株式会社製、商品名「マルカリンカーCST」)
なお、重量平均分子量(Mw)は、それぞれゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を用いて、標準ポリスチレン換算により求めた。
【0105】
具体的には、以下の装置及び条件にて重量平均分子量(Mw)を測定した。
測定装置
検出器:株式会社日立製作所製L4000UV
ポンプ:株式会社日立製作所製L6000
カラム:株式会社日立ハイテク製Gelpack GL-S300MDT-5×2本
測定条件
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
LiBr(0.03mol/L)、H3PO4(0.06mol/L)
流速:1.0mL/分、検出器:UV270nm
試料0.5mgに対して溶媒[THF/DMF=1/1(容積比)]1mLの溶液を用いて測定した。
【0106】
((B)成分)
B1:1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-[4-{1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル}フェニル]エタンの1-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホン酸エステル(エステル化率約90%、ダイトーケミックス株式会社製、商品名「PA28」)
B2:1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-[4-{1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル}フェニル]エタンの1-ナフトキノン-2-ジアジド-4-スルホン酸エステル(ダイトーケミックス株式会社製、商品名「4C-PA-28」)
【0107】
((C)成分)
C1:4,4’-[1-[4-[1-[4-ヒドロキシ-3,5-ビス(メトキシメチル)フェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビス[2,6-ビス(メトキシメチル)フェノール](本州化学工業株式会社製、商品名「HMOM-TPPA」)
C2:ヘキサキス(メトキシメチル)メラミン(株式会社三和ケミカル製、商品名「ニカラックMW-30HM」)
【0108】
((D)成分)
D1:攪拌機、窒素導入管及び温度計を備えた100mLの三つ口フラスコに、乳酸エチル55gを秤取し、別途に秤取した重合性単量体(アクリル酸n-ブチル(BA)34.7g、アクリル酸ラウリル(LA)2.2g、アクリル酸(AA)3.9g、アクリル酸ヒドロキシブチル(HBA)2.6g、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリレート(商品名:FA-711MM、昭和電工マテリアルズ株式会社製)1.7g、及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.29gを加えた。室温(25℃)にて約160min-1の攪拌回転数で攪拌しながら、窒素ガスを400mL/分の流量で30分間流し、溶存酸素を除去した。その後、窒素ガスの流入を止め、フラスコを密閉し、恒温水槽にて約25分で65℃まで昇温した。同温度を10時間保持して重合反応を行い、アクリル樹脂であるD1を得た。このときの重合率は99%であった。D1の重量平均分子量(Mw)は、約22000であった。なお、D1における重合性単量体のモル比は下記のとおりである。
BA/LA/AA/HBA/FA711MM=69/2/20/5/4(mol%)
【0109】
(実施例1~7)
表1に示した配合量の(A)、(B)及び(C)成分、溶剤として乳酸エチルを配合し、これを0.2μm孔のポリテトラフルオロエチレン製フィルターを用いて加圧ろ過して、感光性樹脂組成物を調製した。
【0110】
(比較例1~3)
表2に示した配合量の(A)、(B)及び(C)成分を用いた以外は、実施例と同様にして、感光性樹脂組成物を調製した。
【0111】
[感光性樹脂組成物の評価]
(外観)
感光性樹脂組成物の外観を目視で観察し、透明であれば「A」、若干白濁していれば「B」、酷く白濁していれば「C」と判定した。感光性樹脂組成物の外観判定が「A」又は「B」であれば、感光性樹脂組成物を用いて形成したパターン硬化膜を有する半導体装置を製造する際の、基板上に記された位置合わせのための目印を視認することができる。
【0112】
(現像後残膜率)
現像後残膜率は、現像前の樹脂膜の膜厚と現像後のパターン膜の膜厚とから下記式により算出した。
現像後残膜率(%)=(現像後のパターン膜の膜厚/現像前の樹脂膜の膜厚)×100
現像後の残膜率が大きいと、アルカリ現像液による未露光部の溶解量を低減させることができる。そのため、露光部の溶解に必要な露光量の調整の裕度が向上する。つまり、ポジ型の感光性樹脂組成物において、溶解コントラストが向上するため、高解像度を達成することができる。
【0113】
(解像度)
感光性樹脂組成物をシリコン基板上にスピンコートして、120℃で3分間加熱し、膜厚6~8μmの塗膜を形成した。次いで、i線ステッパー(キヤノン株式会社製、商品名「FPA-3000iW」)を用いて、1μmから100μmまでのホールパターンを有するマスクを介してi線(365nm)で縮小投影露光した。露光量は、100mJ/cm2~1500mJ/cm2で行った。露光後、2.38%のTMAH水溶液を用いて現像し、水でリンスしてパターン樹脂膜を得た。
上記パターン樹脂膜をイナートガスオーブン(光洋サーモシステム株式会社製、商品名「INH-9CD-S」)を用い、窒素雰囲気中、室温(25℃)から1時間掛けて温度230℃まで昇温後、温度を保持して2時間加熱処理を行い、膜厚約5μmの解像度評価用のパターン硬化膜を作製した。パターン硬化膜の、1μmから100μmまでのホールパターン中、開口している最小サイズを微細加工性の解像度とした。開口しているパターンサイズが小さい程、解像性に優れ微細加工が可能となる。
【0114】
(破断伸び、破断強度)
感光性樹脂組成物をシリコン基板上にスピンコートして、120℃で4分間加熱し、膜厚約11~12μmの塗膜を形成した。その後、この塗膜をプロキシミティ露光機(キヤノン株式会社製、商品名「PLA-600FA」)を用いて、マスクを介して全波長で、1000mJ/cm2の条件で露光を行った。露光後、TMAHの2.38%水溶液を用いて現像を行い、10mm幅のパターン樹脂膜を得た。その後、パターン樹脂膜を、イナートガスオーブン(INH-9CD-S)を用い、窒素雰囲気中、室温(25℃)から1時間掛けて温度230℃まで昇温後、温度を保持して2時間加熱処理を行い、膜厚約10μmの機械強度測定用のパターン硬化膜を得た。
【0115】
硬化膜をシリコン基板から剥離し、剥離した硬化膜の破断伸びを株式会社島津製作所製、オートグラフAGS-H100Nを用いて測定した。試料の幅は10mm、膜厚は約10μm、チャック間は20mmとした。引っ張り速度は5mm/分で、環境温度は室温(25℃)とした。同一条件で得た硬化膜から得た5本の試験片の測定値上位3点の平均を、破断伸び及び破断強度とした。
【0116】
【0117】
【0118】
(B2)成分を含有する実施例の樹脂組成物は、パターン硬化膜厚5μmにおいて、1μmのパターンを開口でき、非常に高い解像度を示した。
また、高い破断強度を有するパターン硬化膜を形成することができた。一方、(B1)成分のみを含有する比較例1~3の樹脂組成物は2μmのパターンは開口できたが、1μmのパターンは開口できなかった。
【0119】
(実施例12~14)
表3に示した配合量の(A)~(D)成分を用いた以外は、実施例1~7と同様にして、感光性樹脂組成物を調製した。
【0120】
【0121】
実施例12~14の感光性樹脂組成物は、(D)成分を更に含有することにより、パターン硬化膜の強度、及び破断伸びが更に向上した。