(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027102
(43)【公開日】2024-02-29
(54)【発明の名称】分解性ポリマー
(51)【国際特許分類】
C08G 64/02 20060101AFI20240221BHJP
C08L 101/16 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
C08G64/02
C08L101/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131486
(22)【出願日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2022129758
(32)【優先日】2022-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度 国立研究開発法人科学技術振興機構 未来社会創造事業(探索研究、研究課題名「天然分子リコンストラクトによる分解性ポリマーの高機能化」、産業技術力強化法第17条の適用を受けるもの
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】福島 和樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 隆史
(72)【発明者】
【氏名】上田 哲也
【テーマコード(参考)】
4J029
4J200
【Fターム(参考)】
4J029AA09
4J029AB01
4J029AC01
4J029AD01
4J029AE06
4J029HC06
4J029JC021
4J029KE09
4J200AA02
4J200AA03
4J200BA05
4J200DA22
4J200EA01
(57)【要約】
【解決課題】
使用環境や水中では分解せず長期の安定使用ができる一方、特定の条件下において任意の時期に迅速な分解が達成できるポリマーを提供すること。
【解決手段】
以下の式(IIa)で表されるポリマーである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(1)で表されるモノマーを重合する工程を含む、ポリマーを調製する方法。
(式(1)において、
Rは、炭素数1~20のアルキル基、アルコキシル基で置換されているアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基、アリール基、エステル基、アミド基、カルバメート基、ウレア基、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、及びチオール基からなる群から選択され、
ここで、Rが、水酸基、アミノ基、カルボキシ基又はチオール基である場合は、保護基で保護されていてもよく、
Rが、炭素数1~20のアルキル基、アルコキシル基で置換されているアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基、アリール基である場合は、置換基を有してもよく;;
Mは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、ハロアルキル基、ホルミルアルキル基、シアノアルキル基、シアノ基、ホルミル基、及びアシル基からなる群から選択され;
Q
1、Q’
1、Q
2およびQ’
2は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ホルミル基、及びビニレン基からなる群から選択される。)
【請求項2】
重合開始時の前記モノマーの濃度が0.1~10mol/Lである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
重合開始後に、反応混合物中のポリマー組成が最大となる時点付近において反応を停止する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
Rが、-(CH2)2OCH3、-(CH2)2CH3、-CH3、-Ph(フェニル
基)又はアダマンチル基から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマーがポリトリメチレンカーボネート系のポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマーが、以下の式(I)で表されるポリマーである、請求項1に記載の方法。
(式(I)において、
R’は、水素原子、アセチル基、炭素数1~20のアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、又はアリールオキシカルボニル基であり;
Uは、重合に使用する開始剤の種類に応じて決まる様々なアルコールに由来する基であり;
nは、1~1000であり;
R、M、Q
1、Q’
1、Q
2及びQ’
2は、式(1)で定義した通りである。)
【請求項7】
(i)以下の式(II)で表されるポリマーを提供する工程、及び
(ii)前記ポリマーに、水酸基を活性化する触媒を添加する工程
を含む、前記ポリマーを分解する方法。
(式(II)において、
Rは、炭素数1~20のアルキル基、アルコキシル基で置換されているアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基、アリール基、エステル基、アミド基、カルバメート基、ウレア基、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、及びチオール基からなる群から選択され、
ここで、Rが、水酸基、アミノ基、カルボキシ基又はチオール基である場合は、保護基で保護されていてもよく、
Rが、炭素数1~20のアルキル基、アルコキシル基で置換されているアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基、アリール基である場合は、置換基を有してもよく;
Mは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、ハロアルキル基、ホルミルアルキル基、シアノアルキル基、シアノ基、ホルミル基、及びアシル基からなる群から選択され;
Q
1、Q’
1、Q
2およびQ’
2は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ホルミル基、及びビニレン基からなる群から選択され;
Uは、重合に使用する開始剤の種類に応じて決まる様々なアルコール又はアミンに由来する基であり;
nは、1~1000である。)
【請求項8】
前記触媒が、有機系の触媒である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
以下の式(Ia)で表されるポリマー。
(式(Ia)において、
R
1は、炭素数1~20のアルキル基、アルコキシル基で置換されているアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基、アリール基、エステル基、アミド基、カルバメート基、ウレア基、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、及びチオール基からなる群から選択され、
R
1が、炭素数1~20のアルキル基、アルコキシル基で置換されているアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基、アリール基である場合は、置換基を有してもよく;
R’は、水素原子、アセチル基、炭素数1~20のアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、又はアリールオキシカルボニル基であり;
Mは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、ハロアルキル基、ホルミルアルキル基、シアノアルキル基、シアノ基、ホルミル基、及びアシル基からなる群から選択され;
Q
1、Q’
1、Q
2およびQ’
2は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ホルミル基、及びビニレン基からなる群から選択され;
Uは、重合に使用する開始剤の種類に応じて決まる様々なアルコール又はアミンに由来する基であり;
nは、1~1000である。)
【請求項10】
R1が、-(CH2)2OCH3、-(CH2)2CH3、-CH3、-Ph(フェニ
ル基)又はアダマンチル基から選択される、請求項9に記載のポリマー。
【請求項11】
以下の式(IIa)で表されるポリマー。
(式(IIa)において、
R
1は、炭素数1~20のアルキル基、アルコキシル基で置換されているアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基、アリール基、エステル基、アミド基、カルバメート基、ウレア基、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、及びチオール基からなる群から選択され、
R
1が、炭素数1~20のアルキル基、アルコキシル基で置換されているアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基、アリール基である場合は、置換基を有してもよく;
R’は、水素原子、アセチル基、炭素数1~20のアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、又はアリールオキシカルボニル基であり;
Mは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、ハロアルキル基、ホルミルアルキル基、シアノアルキル基、シアノ基、ホルミル基、及びアシル基からなる群から選択され;
Q
1、Q’
1、Q
2およびQ’
2は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ホルミル基、及びビニレン基からなる群から選択され;
Uは、重合に使用する開始剤の種類に応じて決まる様々なアルコール又はアミンに由来する基であり;
nは、1~1000である。)
【請求項12】
R1が、-(CH2)2OCH3、-(CH2)2CH3、-CH3、-Ph(フェニ
ル基)又はアダマンチル基から選択される、請求項11に記載のポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリトリメチレンカーボネート系ポリマー、ポリトリメチレンカーボネート系ポリマーを製造する方法、及び当該ポリマーを分解する方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
海洋プラスチック問題や脱炭素社会への移行など、現在、高分子材料の原料と廃棄の問題は地球規模で取り組むべき課題として注目されている。生分解性ポリマーや再生可能資源由来ポリマーはその解決の一端となることが期待されている。
【0003】
ポリ-L-乳酸(PLLA)などの公知の生分解性ポリマーは水環境で徐々に分解が進行し、経時的に連続的な物性低下を示す。一方、再生可能資源由来のイソソルビドポリカーボネートは高強度・高耐熱性を達成しているが生分解性はないとされる。
また、最近海洋分解性ポリマーとして知られるポリカプロラクトンなどは比較的速い分解を示すが、分解途中で中程度の分子量のオリゴマーを生成し、これが水生微生物などの生態系に毒性を示すことも報告されている(非特許文献1)。
【0004】
このように、ポリマーの分解の時期と速度の制御は重要であり、長期の安定使用と任意の時期における迅速で低エネルギープロセスによる分解の両立、「オンデマンド分解」技術の実現が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】第71回高分子学会年次大会予稿集 2H05
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、使用環境や水中では分解せず長期の安定使用ができる一方、特定の条件下において任意の時期に迅速な分解が達成できるポリマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために検討する上で、ポリトリメチレンカーボネート(PTMC)に着目した。ポリトリメチレンカーボネートは酵素分解性を示すポリマーとして知られ、医療材料に利用されているが、通常使用の環境では安定で、一方で意図した時期に分解させられるものは報告されていない。本発明者らは、ポリトリメチレンカーボネートの骨格に、分解を誘導する仕組みを側鎖構造に含め、さらにその分解開始点をポリマー鎖の末端基に設定することで上記「オンデマンド分解」を実現できるのではないかと考え、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、
[1]以下の式(1)で表されるモノマーを重合する工程を含む、ポリマーを調製する方法。
[2]
(式(1)において、
Rは、炭素数1~20のアルキル基、アルコキシル基で置換されているアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基、アリール基、エステル基、アミド基、カルバメート基、ウレア基、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、及びチオール基からなる群から選択され、
ここで、Rが、水酸基、アミノ基、カルボキシ基又はチオール基である場合は、保護基で保護されていてもよく、
Rが、炭素数1~20のアルキル基、アルコキシル基で置換されているアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基、アリール基である場合は、置換基を有してもよく;
Mは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、ハロアルキル基、ホルミルアルキル基、シアノアルキル基、シアノ基、ホルミル基、及びアシル基からなる群から選択され;
Q
1、Q’
1、Q
2およびQ’
2は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ホルミル基、及びビニレン基からなる群から選択される。)
[2]重合開始時の前記モノマーの濃度が0.1~10mol/Lである、[1]に記載の方法。
[3]重合開始後に、反応混合物中のポリマー組成が最大となる時点付近において反応を停止する、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]Rが、-(CH
2)
2OCH
3、-(CH
2)
2CH
3、-CH
3、-Ph(フェ
ニル基)又はアダマンチル基から選択される、[1]又は[2]に記載の方法。
[5]前記ポリマーがポリトリメチレンカーボネート系のポリマーである、[1]に記載の方法。
[6]前記ポリマーが、以下の式(I)で表されるポリマーである、[1]に記載の方法。
(式(I)において、
R’は、水素原子、アセチル基、炭素数1~20のアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、又はアリールオキシカルボニル基であり;
Uは、重合に使用する開始剤の種類に応じて決まる様々なアルコール又はアミンに由来する基であり;
nは、1~1000であり;
R、M、Q
1、Q’
1、Q
2及びQ’
2は、式(1)で定義した通りである。)
[7](i)以下の式(II)で表されるポリマーを提供する工程、及び
(ii)前記ポリマーに、水酸基を活性化する触媒を添加する工程
を含む、前記ポリマーを分解する方法。
(式(II)において、
Rは、炭素数1~20のアルキル基、アルコキシル基で置換されているアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基、アリール基、エステル基、アミド基、カルバメート基、ウレア基、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、及びチオール基からなる群から選択され、
ここで、Rが、水酸基、アミノ基、カルボキシ基又はチオール基である場合は、保護基で保護されていてもよく、
Rが、炭素数1~20のアルキル基、アルコキシル基で置換されているアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基、アリール基である場合は、置換基を有してもよく;
Mは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、ハロアルキル基、ホルミルアルキル基、シアノアルキル基、シアノ基、ホルミル基、及びアシル基からなる群から選択され;
Q
1、Q’
1、Q
2およびQ’
2は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ホルミル基、及びビニレン基からなる群から選択され;
Uは、重合に使用する開始剤の種類に応じて決まる様々なアルコール又はアミンに由来する基であり;
nは、1~1000である。)
[8]前記触媒が、有機系の触媒である、[7]に記載の方法。
[9]以下の式(Ia)で表されるポリマー。
(式(Ia)において、
R
1は、炭素数1~20のアルキル基、アルコキシル基で置換されているアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基、アリール基、エステル基、アミド基、カルバメート基、ウレア基、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、及びチオール基からなる群から選択され、
R
1が、炭素数1~20のアルキル基、アルコキシル基で置換されているアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基、アリール基である場合は、置換基を有してもよく;
R’は、水素原子、アセチル基、炭素数1~20のアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、又はアリールオキシカルボニル基であり;
Mは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、ハロアルキル基、ホルミルアルキル基、シアノアルキル基、シアノ基、ホルミル基、及びアシル基からなる群から選択され;
Q
1、Q’
1、Q
2およびQ’
2は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ホルミル基、及びビニレン基からなる群から選択され;
Uは、重合に使用する開始剤の種類に応じて決まる様々なアルコール又はアミンに対応する基であり;
nは、1~1000である。)
[10]R
1が、-(CH
2)
2OCH
3、-(CH
2)
2CH
3、-CH
3、-Ph(
フェニル基)又はアダマンチル基から選択される、[9]に記載のポリマー。
[11]以下の式(IIa)で表されるポリマー。
(式(IIa)において、
R
1は、炭素数1~20のアルキル基、アルコキシル基で置換されているアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基、アリール基、エステル基、アミド基、カルバメート基、ウレア基、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、及びチオール基からなる群から選択され、
R
1が、炭素数1~20のアルキル基、アルコキシル基で置換されているアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基、アリール基である場合は、置換基を有してもよく;
Mは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、ハロアルキル基、ホルミルアルキル基、シアノアルキル基、シアノ基、ホルミル基、及びアシル基からなる群から選択され;
Q
1、Q’
1、Q
2およびQ’
2は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ホルミル基、及びビニレン基からなる群から選択され;
Uは、重合に使用する開始剤の種類に応じて決まる様々なアルコール又はアミンに由来する基であり;
nは、1~1000である。)
[12]R
1が、-(CH
2)
2OCH
3、-(CH
2)
2CH
3、-CH
3、-Ph(フェニル基)又はアダマンチル基から選択される、[11]に記載のポリマー。
を提供するものである。
【0009】
本発明により、使用環境や水中では分解せず長期の安定使用ができる一方、特定の条件下において任意の時期に迅速な分解が達成できるポリマーを提供することができる。
また、本発明により、かかる特性を有するポリマーを効率的に製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のポリマー、及び本発明のポリマーの分解方法における分解機構の概略を示す。
【
図2】モノマー5aの開環重合(モノマー濃度1M)の反応15分における反応混合物の
1HNMRスペクトル(400MHz、CDCl
3)を示す。
【
図3】モノマー、開始剤、触媒濃度の異なるモノマー5aの開環重合における反応混合物組成の時間変化を示す。
【
図4】ポリマー6a-OHの均一系分解処理4時間後における
1HNMRスペクトル(400MHz、CDCl
3)を示す。
【
図5】ポリマー6a-OHの均一系分解処理30時間後における
1HNMRスペクトル(400MHz、CDCl
3)を示す。
【
図6】ポリマー6b-OHの均一系分解処理9時間後における
1HNMRスペクトル(4006Hz、CDCl
3)を示す。
【
図7】ポリマー6b-OHの均一系分解処理30時間後における
1HNMRスペクトル(400MHz、CDCl
3)を示す。
【
図8】
図8Aは、ポリマー6a-OH、6a-Ac、6b-OH、6b-Acの溶液中解重合処理におけるポリマー量の時間変化を示す。
図8Bは、30時間、溶液中解重合処理した各ポリマーの分解度を示す。
【
図9】各試料の重水中の
1HNMRスペクトル(400MHz、D
2O)を示す。a)はDBUの、b)は6a-Acの、c)は6b-Acの不均一系分解処理4日後における上澄み液についての結果を示す。
【
図10】24時間超純水に浸漬させたポリマー6a-AcのDSC測定を行った結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書中において、「アルキル」は直鎖状、分枝鎖状、環状、又はそれらの組み合わせからなる脂肪族炭化水素基のいずれであってもよい。アルキル基の炭素数は特に限定されないが、例えば、炭素数1~6個(C1~6)、炭素数1~10個(C1~10)、炭素数1~15個(C1~15)、炭素数1~20個(C1~20)である。炭素数を指定した場合は、その数の範囲の炭素数を有する「アルキル」を意味する。例えば、C1~8アルキルには、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、neo-ペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル等が含まれる。本明細書において、アルキル基は任意の置換基を1個以上有していてもよい。そのような置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、モノ若しくはジ置換アミノ基、置換シリル基、又はアシルなどを挙げることができるが、これらに限定されることはない。アルキル基が2個以上の置換基を有する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。アルキル部分を含む他の置換基(例えばアルコシ基、アリールアルキル基など)のアルキル部分についても同様である。
【0012】
本明細書において、ある官能基について「置換されていてもよい」と定義されている場合には、置換基の種類、置換位置、及び置換基の個数は特に限定されず、2個以上の置換基を有する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、スルホ基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、オキソ基などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。これらの置換基にはさらに置換基が存在していてもよい。このような例として、例えば、ハロゲン化アルキル基、ジアルキルアミノ基などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。
【0013】
本明細書中において、「アルコキシ基」とは、前記アルキル基が酸素原子に結合した構造であり、例えば直鎖状、分枝状、環状又はそれらの組み合わせである飽和アルコキシ基が挙げられる。例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、シクロプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、シクロブトキシ基、シクロプロピルメトキシ基、n-ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロプロピルエチルオキシ基、シクロブチルメチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロプロピルプロピルオキシ基、シクロブチルエチルオキシ基又はシクロペンチルメチルオキシ基等が好適な例として挙げられる。
【0014】
1.ポリマー
本発明の1つの態様は、以下の式(Ia)で表されるポリマーである(以下「本発明のポリマー1」とも言う。)。
【0015】
上記(Ia)の式で表されるポリマーは、側鎖に特定のエステル構造を導入したポリトリメチレンカーボネート系ポリマーである。側鎖にかかるエステル構造を有することにより、後述するように、長期の安定使用と任意の時期における迅速で低エネルギープロセスによる分解の両立(オンデマンド分解技術)を実現することが可能となる。
【0016】
式(I)において、R1は、炭素数1~20のアルキル基、アルコキシル基で置換されているアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基、アリール基、エステル基、アミド基、カルバメート基、ウレア基、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、及びチオール基からなる群から選択される。
R1の、炭素数1~20のアルキル基、アルコキシル基で置換されているアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基、アリール基は、置換基を有してもよい。置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、チオール基、スルホニル基、ホスホリル基、グアニジノ基等が挙げられる。
シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、アダマンチル基(1-アダマンチル基及び2-アダマンチル基)、エキソ-ノルボルニル基、エンド-ノルボニル基、2-ビシクロ[2.2.2]オクチル基などが挙げられる。
R1として、好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~3のアルコキシ基で置換されたアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいビシクロアルキル基又は置換基を有していてもよいトリシクロアルキル基である。
また、R1が置換基を有していてもよい炭素数1~3のアルコキシ基で置換されたアルキル基である場合は、分解性に加えて、生体適合性も発揮することができる点から特に好ましい。
【0017】
本発明の1つの好ましい側面において、R1は、メトキシエチル基(-(CH2)2OCH3)、n-プロピル基(-(CH2)2CH3)、メチル基(-CH3)、フェニル基、又はアダマンチル基(1-アダマンチル基及び2-アダマンチル基)である。
【0018】
式(I)において、R’は、水素原子、アセチル基、炭素数1~20のアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、又はアリールオキシカルボニル基である。
R’が水素原子である場合は、末端基がいずれも水酸基となり、後述するように、これが分解開始点として作用することで、長期の安定使用と任意の時期における迅速で低エネルギープロセスによる分解の両立(オンデマンド分解技術)を実現することが可能となる。
【0019】
式(I)において、Mは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、ハロアルキル基、ホルミルアルキル基、シアノアルキル基、シアノ基、ホルミル基及びアシル基からなる群から選択される。
【0020】
本発明の1つの好ましい側面において、Mは、水素原子である。
【0021】
式(1)において、Q1、Q’1、Q2およびQ’2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ホルミル基及びビニレン基からなる群から選択される。
【0022】
本発明の1つの好ましい側面において、Q1、Q’1、Q2およびQ’2は何れも水素原子である。
【0023】
式(Ia)において、Uは、重合に使用する開始剤の種類に応じて決まる様々なアルコールやアミンに由来する(対応する)基である。
例えば、[合成例1]~[合成例4]ではベンジルアルコール(BnOH)を開始剤として用いており、UはPh-CH2-O-となる。また、[合成実施例1]~[合成実施例8]ではモノマー中の水分がモノマーを開環し、その結果、脱炭酸を経て生じるモノマー由来の1,3-ジオール(2位の炭素は、-OCORで置換されている)が開始剤となり、Uの部分は、R’O-CH2-CH(OCOR)-CH2O-(R’は、実施例のスキーム3におけるR’を表す)となる。
【0024】
また、Uは、Y(-O)x-またはY(-N)x-で定義され、Yは置換基を含む炭素数1~20のアルキル基からなり、その置換基としては、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、エステル基、アミド基、カルバメート基、ウレア基、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、チオール基等が挙げられるが、置換基が水酸基、アミノ基、カルボキシ基、チオール基の場合は、ベンジル基、tert-ブチル基、tert-ブトキシカルボニル基、ペンタフルオロフェニル基、2-ニトロベンジル基、4-ニトロベンジル基、テトラヒドロピラニル基、2-ピリジニルスルフィド基等の保護基で保護されていてもよい。ここで、xは、1~100である。
ここで、Uが、Y(-O)x-で表され、xが2の場合は、(Ia)の式で表されるポリマーは以下の式(Ia-1)のように表すこともできる。
上記式で、m、m’は重合度であり、各々、1~500の範囲である。
また、R’=Hの場合は、以下の式で表される。
また、Uが、Y(-N)x-で表され、xが2の場合は、上記式で、O-Y-Oの部分が、N-Y-Nに置き代わった構造を有する。
また、xが3より大きい場合は、Yが更に-O-の結合を有する分岐状のポリマーとなることが理解できる。
【0025】
式(I)において、nは、1~1000である。
【0026】
式(I)のポリマーの分子量(数平均分子量)は、通常、100~1,000,000であり、好ましくは1,000~500,000である。
上記数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した値であり、標準物質としてはポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、またはポリエチレンオキシドが使用される。
【0027】
本発明のポリマー1の1つの好ましい側面は、式(I)においてR’が水素原子である、以下の式(IIa)で表されるポリマーである(以下「本発明のポリマー2」とも言う。)。
【0028】
【0029】
式(II)において、nは、1~1000である。
また、R1、M、Q1、Q’1、Q2、Q’2及びUは、式(Ia)のポリマーについて詳述したのと同様である。
【0030】
式(IIa)のポリマーの分子量(数平均分子量)は、式(Ia)のポリマーと同様に、通常、100~1,000,000であり、好ましくは1,000~500,000である。
【0031】
式(IIa)で表されるポリマーは、使用環境や水中では分解せず長期の安定使用ができる一方、特定の条件下において任意の時期に迅速な分解が達成できる、即ち、上記したオンデマンド分解を実現することが可能である。その詳細については後述する。
【0032】
2.ポリマーの調製方法
本発明のもう1つの態様は、以下の式(1)で表されるモノマーを重合する工程を含む、ポリマーを調製する方法である(以下「本発明の調製方法」とも言う)。
【0033】
【0034】
式(1)において、Rは、炭素数1~20のアルキル基、アルコキシル基で置換されているアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基、アリール基、エステル基、アミド基、カルバメート基、ウレア基、水酸基、アミノ基、カルボキシ基及びチオール基からなる群から選択される。シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、アダマンチル基(1-アダマンチル基及び2-アダマンチル基)、エキソ-ノルボルニル基、エンド-ノルボニル基、2-ビシクロ[2.2.2]オクチル基などが挙げられる。
ここで、Rが、水酸基、アミノ基、カルボキシ基又はチオール基である場合は、保護基で保護されていてもよい。保護基としては、例えば、ベンジル基、tert-ブチル基、tert-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、ペンタフルオロフェニル基、2-ニトロベンジル基、4-ニトロベンジル基、テトラヒドロピラニル基、2-ピリジニルスルフィド基、2,4-ジニトロフェニル基等が挙げられる。
また、Rの、炭素数1~20のアルキル基、アルコキシル基で置換されているアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基、アリール基は、置換基を有してもよい。置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、チオール基、スルホニル基、ホスホリル基、グアニジノ基等が挙げられるが、置換基が水酸基、アミノ基、カルボキシ基、チオール基、スルホニル基、ホスホリル基、グアニジノ基の場合は、上記の保護基で保護されていてもよい。
Rとして、好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~3のアルコキシ基で置換されたアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいビシクロアルキル基又は置換基を有していてもよいトリシクロアルキル基である。
【0035】
本発明の1つの好ましい側面において、Rは、メトキシエチル基(-(CH2)2OCH3)、n-プロピル基(-(CH2)2CH3)、メチル基(-CH3)、フェニル基、アダマンチル基(1-アダマンチル基及び2-アダマンチル基)である。
【0036】
式(1)において、Mは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、ハロアルキル基、ホルミルアルキル基、シアノアルキル基、シアノ基、ホルミル基及びアシル基からなる群から選択される。
【0037】
本発明の1つの好ましい側面において、Mは、水素原子である。
【0038】
式(1)において、Q1、Q’1、Q2およびQ’2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ホルミル基及びビニレン基からなる群から選択される。
【0039】
本発明の1つの好ましい側面において、Q1、Q’1、Q2およびQ’2は何れも水素原子である。
【0040】
本発明の調製方法において、重合開始時のモノマーの濃度が高いことが好ましい。具体的には、重合開始時における反応混合物中のモノマーの濃度が0.1~10mol/L(0.1~10M)であることが好ましく、0.5~5mol/L(0.5~5M)であることがより好ましく、1~5mol/L(1~5M)であることが更に好ましい。
理論に拘束されることを意図するものではないが、式(1)で表されるモノマーである6員環状カーボネートモノマーは、重合触媒(例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン等)により活性化されると、モノマー濃度が低いと、分子間反応に優先して分子内反応が起こり、熱力学的により安定な五員環状カーボネート化合物を生成し、開環重合が進行しにくい傾向にあることが判明した。ここで、Rの構造によってはモノマーの溶解性が変わるため、モノマーの種類によっては低濃度で重合する必要があるものもあるが、モノマーの濃度を上記の範囲で高濃度化することにより、分子間反応が起こり、開環重合を効率的に進行させることが可能である。
【0041】
本発明の調製方法においては、モノマーの重合開始後に、反応混合物中のポリマー組成が最大となる時点付近において反応を停止する工程を含むことが好ましい。
理論に拘束されることを意図するものではないが、開環重合の反応が進むと、モノマー濃度が減少し、分子内反応が優先的に起こり分子間反応(重合反応)の進行が抑えられる傾向にある。そこで、反応混合物中のポリマー組成が最大となる時点付近において反応を停止すると、不純物である五員環状カーボネート化合物の生成量を低く抑えることができ、ポリマーの収量を最大化することが可能となるため好ましい。
【0042】
反応混合物中のポリマー組成が最大となる時点付近において反応を停止するためには、反応の進行をモニタリング(反応追跡)することが好ましい。具体的には、反応開始後における、反応混合物中の組成を所定の時間間隔で測定し、その測定値から反応混合物中のポリマー組成が最大となる時点を算出し、最適な反応停止時間を決定することができる。
反応混合物中のポリマー組成の測定は、実施例で詳述するように、反応混合物の1HNMRを測定して、反応混合物中におけるモノマー、ポリマー及び五員環状カーボネート化合物の組成(比率)を算出することにより行うことができる。この他、赤外分光法や高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーを組み合わせたリアルタイムモニタリングによっても同様の反応混合物の組成は算出可能である。
ここで、反応混合物中のポリマー組成が最大となる時間や条件はモノマーによって異なるが、モノマーの種類やその開始時の濃度に応じて、上記の反応追跡をすることにより最適な反応停止時間を決定することができる。
【0043】
反応を停止するには、重合に使用した触媒を不活性化させる試薬を添加することが好ましい。1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン等の有機塩基を重合触媒として使用した場合は、反応混合物中に酸を加えるのが好ましい。酸としては、例えば、安息香酸、無水酢酸等を使用することができる。また、重合触媒に有機酸を用いることも可能であり、その場合の停止剤はトリエチルアミンなどの塩基を使用することができる。
【0044】
反応を停止するのは、反応混合物中のポリマー組成が最大となる時点が好ましい。この場合、リアルタイムで反応追跡をして停止を直ちにできるシステムを構築して用いることができる。
また、反応を停止するのは、ポリマー組成が最大となる時点の前後とすることもできる。
具体的には、ポリマー組成が最大となる時点におけるポリマー組成が最大値の80%となる時間範囲内、即ち、反応開始後に、最初にポリマー組成が最大値の80%となる時間がT1で、ポリマー組成が最大となる時間がTmaxで、その後ポリマー組成が減少して再度最大値の80%となる時間がT2であるとすると、反応を停止する時間Tは、Tmaxである必要はなく、T1≦T≦T2であることが好ましい。
また、ポリマー組成が最大となる時点におけるポリマー組成が最大値の90%となる時間範囲内、即ち、反応開始後に、最初にポリマー組成が最大値の90%となる時間がT3で、ポリマー組成が最大となる時間がTmaxで、その後ポリマー組成が減少して再度最大値の90%となる時間がT4であるとすると、反応を停止する時間Tは、T3≦T≦T4であることが、ポリマー収量を最大化でき不純物の抑制も可能となるため更に好ましい。
したがって、本発明の調製方法においては、反応を停止するのは、反応混合物中のポリマー組成が最大となる時点付近、つまり、反応混合物中のポリマー組成が最大となる時点及び当該時点の前後、即ち、上記のT1≦T≦T2であることが好ましく、T3≦T≦T4であることが更に好ましい。
【0045】
本発明の調製方法においては、触媒の濃度が低いと高分子のポリマーを高収率で得ることが可能である。触媒の濃度としては、好ましくは、0.1~0.00001、より好ましくは0.05~0.001(触媒/モノマーに比)である。
【0046】
本発明の調製方法においては、式(1)のモノマーと触媒を溶媒中に添加して反応混合物を調製して、重合を行う。
溶媒としては、非プロトン性溶媒であればいずれの溶媒を使用することが可能である。例えば、重水素化クロロホルム(CDCl3)、塩化メチレン、クロロホルム、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン、ヘキサン、ジエチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
触媒としては、環状カーボネートやラクトンの重合に使用できる触媒であれば任意のものを使用することができる。例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノ-5-ネン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、4-ジメチルアミノピリジン、(-)-スパルテイン、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ジフェニルリン酸、N’-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-N-シクロヘキシルチオウレア、N’-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-N-フェニルウレア、N-ヘテロ環状カルベン類、これらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
開始剤としては、アルコール、アミンのいずれも使用することが可能である。例えば、ベンジルアルコール、4-メチルベンジルアルコール、1-ピレンブタノール、メタノール、エタノール、1-プロパノール、1-ブタノール、イソアミルアルコール、ラウリルアルコール、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,4-ベンゼンジメタノール、1,3-ベンゼンジメタノール、1,2-ベンゼンジメタノール、ブチルアミン、ヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ベンジルアミン、1,4-ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,2-ビス(アミノメチル)ベンゼン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
本発明の調製方法においては、反応混合物を調製した後、通常、室温(例えば10~30℃)で、所定時間静置させて反応させる。上記の通り、反応混合物中のポリマー組成が最大となる時点付近において酸を加えて反応を停止させた後は、室温(例えば10~30℃)で、所定時間攪拌し、反応を終了させる。その後、反応溶液を冷2-プロパノール等中に再沈殿させて、生成したポリマーを回収する。
【0050】
本発明の調製方法により、ポリトリメチレンカーボネート系のポリマーを得ることができる。
より具体的には、本発明の調製方法により、以下の式(I)で表されるポリマーを得ることができる。
【0051】
【0052】
式(I)において、R’は、水素原子、アセチル基、炭素数1~20のアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、又はアリールオキシカルボニル基である。
nは、1~1000である。
R、M、Q1、Q’1、Q2及びQ’2は、式(1)について詳述したのと同様である。
【0053】
式(I)において、Uは、重合に使用する開始剤の種類に応じて決まる様々なアルコール又はアミンに由来する(対応する)基である。
例えば、[合成例1]~[合成例4]ではベンジルアルコール(BnOH)を開始剤として用いており、UはPh-CH2-O-となる。また、[合成実施例1]~[合成実施例8]ではモノマー中の水分がモノマーを開環し、その結果、脱炭酸を経て生じるモノマー由来の1,3-ジオール(2位の炭素は、-OCORで置換されている)が開始剤となり、Uの部分は、R’O-CH2-CH(OCOR)-CH2O-(R’は、実施例のスキーム3におけるR’を表す)となる。
【0054】
また、Uは、Y(-O)x-またはY(-N)x-で定義され、Yは置換基を含む炭素数1~20のアルキル基からなり、その置換基としては、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、エステル基、アミド基、カルバメート基、ウレア基、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、チオール基等が挙げられるが、置換基が水酸基、アミノ基、カルボキシ基、チオール基の場合は、ベンジル基、tert-ブチル基、tert-ブトキシカルボニル基、ペンタフルオロフェニル基、2-ニトロベンジル基、4-ニトロベンジル基、テトラヒドロピラニル基、2-ピリジニルスルフィド基等の保護基で保護されていてもよい。ここで、xは、1~100である。
ここで、Uが、Y(-O)x-で表され、xが2の場合は、(I)の式で表されるポリマーは以下の式(I-1)のように表すこともできる。
上記式で、m、m’は重合度であり、各々、1~500の範囲である。
また、R’=Hの場合は、以下の式で表される。
また、Uが、Y(-N)x-で表され、xが2の場合は、上記式で、O-Y-Oの部分が、N-Y-Nに置き代わった構造を有する。
また、xが3より大きい場合は、Yが更に-O-の結合を有する分岐状のポリマーとなることが理解できる。
【0055】
3.ポリマーの分解方法
本発明のもう1つの態様は、(i)以下の式(II)で表されるポリマーを提供する工程、及び
(ii)前記ポリマーに、水酸基を活性化する触媒を添加する工程
を含む、前記ポリマーを分解する方法である(以下「本発明の分解方法」とも言う)。
【0056】
【0057】
式(II)において、nは、1~1000である。
また、R、M、Q1、Q’1、Q2及びQ’2は、式(1)のモノマーについて詳述したのと同様である。
Uは、式(I)で表されるポリマーについて詳述したのと同様である。
【0058】
本発明においては、潜在的には生分解性であるものの加水分解耐性の高いポリトリメチレンカーボネートの骨格に、式(II)で示すように、分解を誘導する仕組みを側鎖構造に含め、さらにその分解開始点をポリマー鎖の末端基に設定することで「オンデマンド分解」を実現することができる。
より詳しくは、溶液状態において、式(II)のポリマーは末端基構造がOHで、かつそのOH基を活性化するような触媒の存在下においては約1日程度以内にほぼ全ての分子鎖が1種の低分子量体(5員環状カーボネート)に分解される(
図1のグラフ中のポリマー1(OH)及びポリマー2(OH))。一方、同様の条件で既知の生分解性ポリマーであるPLLAやPTMCを処理しても分解は一切起こらない。式(II)のポリマーは末端基構造がOHであっても触媒が存在しない状態では分解せず安定にポリマー構造を維持する。また、末端のOH基を別の置換基(不活性化末端)に変換した場合は触媒存在下でもほぼ安定に存在する(
図1のグラフ中のポリマー1(Ac)およびポリマー2(Ac))。このため、OH基の末端構造と触媒添加または何らかの手法による触媒発生が「オンデマンド分解」の開始スイッチとなる。
理論に拘束されることを意図するものではないが、分解は、(i)活性化された末端のOHが側鎖とエステル交換し、(ii)生成した2級OHが続いて隣接する主鎖のカーボネート結合を攻撃し、5員環を生成する機構が考えられる。5員環形成により新たに生成したOH末端は同様の反応を連鎖的に繰り返す。このような形式の分解を「末端開始バックバイティング」型解重合という。5員環構造の熱力学的安定性により5員環カーボネート構造の重合が進行しにくいことから、この5員環の生成が迅速かつ連鎖的に分解が進行する駆動力となっていると考えられる。
【0059】
式(II)で表されるポリマーは、本発明の調製方法により式(II)で表されるポリマーを合成して提供することもでき、また、末端がOH基以外の基(アセチル基など)である式(I)で表されるポリマーを合成し、その末端基を加水分解等や熱や光、pHなどの刺激応答脱保護反応によりOH基に変換することにより式(II)で表されるポリマーを提供することができる。
【0060】
水酸基を活性化する触媒としては、有機系触媒、金属触媒のいずれも使用することができるが、有機系の触媒を使用することが環境負荷低減の点から好ましい。
【0061】
金属触媒としては、オクチル酸スズ、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウム、亜鉛、鉄、コバルトのアルコキシド等が挙げられる。
【0062】
有機系の触媒としては、重合触媒として用いるラクトンや環状カーボネートに使用できる触媒全般を使用することが可能である。例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノ-5-ネン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、4-ジメチルアミノピリジン、(-)-スパルテイン、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ジフェニルリン酸、N’-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-N-シクロヘキシルチオウレア、N’-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-N-フェニルウレア、N-ヘテロ環状カルベン類、これらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものはない。
【0063】
本発明の分解方法において、「触媒を添加」することには、触媒を意識的に添加することに加えて、何らかの手法による触媒が発生して式(II)のポリマーと触媒が共存することも含まれる。何らかの手法による触媒が発生する場合として、例えば、光塩基発生剤や光酸発生剤、例えば2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが挙げられる。
【0064】
本発明の分解方法における上記した分解機構は側鎖の構造(R)に依らず起こり得る。したがって、側鎖Rの構造によりポリマーの物性(ガラス転移温度、接触角)や分解速度の制御が可能である。
理論に拘束されることを意図するものではないが、例えば、側鎖が極端に嵩高い場合はバックバイティング型解重合の挙動にも影響を与えることから、分解度を上げる点からは、Rとして極端に嵩高くない基、例えば、置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~3のアルコキシ基で置換されたアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基が好ましい。一方、分解度を抑える点からは、Rとして極端に嵩高い基、例えば、アダマンチル基(1-アダマンチル基及び2-アダマンチル基)などを用いることができる。
【0065】
本発明の分解方法は、溶液中(均一溶液)で行うことが好ましい。この場合、式(II)で表されるポリマーを溶媒(例えば、CDCl3、テトラヒドロフラン、塩化メチレン等)に溶解させて、触媒を添加して分解を行う。
また、本発明の分解方法は、不均一系で行うこともできる。この場合、式(II)で表されるポリマーを水、メタノールなどポリマーが不溶な溶媒に添加し、触媒を添加して分解を行う。
【0066】
本発明の分解方法により、式(II)で表されるポリマーを分解することにより、分解生成物である以下の式(2)及び/又は(3)で表される化合物が得られる。
【0067】
【0068】
式(2)、(3)において、R、M、Q1、Q’1、Q2及びQ’2は式(1)のモノマーについて詳述したのと同様である。
【0069】
式(2)及び/又は(3)の化合物から、これをさらに加水分解してグリセロールとRのついたカルボン酸に戻すことが可能であり、それらから式(1)のモノマーを合成することは可能である。このようにして得た式(1)の化合物を用いて更に式(I)のポリマーを得ることができる。このようにして、式(II)で表されるポリマーの分解生成物をリサイクルすることが可能である。
【実施例0070】
以下本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0071】
1.試薬及び評価方法
[試薬]
各試薬は特段の記載がない限り富士フィルム和光純薬、東京化成工業、シグマアルドリッチジャパン、関東化学のいずれかから購入し、そのまま使用した。ベンジルアルコール(BnOH)および1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)は東京化成工業から購入し、水素化カルシウムを用いて減圧蒸留したものを使用した。反応追跡用の重水素化クロロホルム(CDCl3)はシグマアルドリッチジャパンから購入し、水素化カルシウムを用いて蒸留したものを使用した。
【0072】
[測定機器]
合成した分子の構造の同定には核磁気共鳴(NMR)を使用し、日本電子株式会社製JEOL ECX-400によって1Hおよび13C NMR測定を行った。測定試料はCDCl3に溶解させ、内部標準として含まれるテトラメチルシラン(TMS)を0ppmとしてケミカルシフトを求めた。
元素分析にはパーキンエルマー社製CHN元素分析装置2400II型を使用した。
ポリマーの数平均分子量(Mn)および分子量分布(DM)はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって求めた。東ソー株式会社製高速GPC装置EcoSEC Elite HLC-8420GPCにTSK-gel column SuperMultiporeHZ-Mを接続し、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液としてカラム温度40℃、流速0.35ml/minにて測定した。
ポリマーの熱特性解析には示差走査熱量測定(DSC)を使用した。NETZSCH社製DSC3500 Siriusを使用し、窒素気流20 ml/min下にて昇温または冷却速度5℃/minとして測定した。
【0073】
2.モノマーの合成
(2-1)以下のスキーム1により、本発明のポリマーを重合するためのモノマー5a~5d(「化合物5a~5d」とも言う)を合成した。
【0074】
【0075】
(1)3-メトキシプロパノイルクロライド(化合物2a)の合成
200ml三ツ口フラスコをアルゴンガスにて置換し、3-メトキシプロパン酸 (3.0g、29mmol)、脱水ジクロロメタン(CH2Cl2;30ml)を加えた後、氷浴にて冷却し、塩化オキサリル(4.4g、35mmol)の脱水CH2Cl2溶液(20ml)を滴下した。その後、ジメチルホルムアミドを数滴加え、室温で一晩撹拌した。溶媒を留去し、黄色液体として化合物2aを得た(4.64g)。これ以上の精製は行わず、次の反応に使用した。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 3.70 (t, J = 5.9 Hz, CH2, 2H), 3.37 (s, CH3, 3H), 3.12 (t, J = 5.9 Hz, CH2, 2H)
【0076】
(2)(2s,5s)-2-フェニル-1,3-ジオキサン-5-イル3-メトキシプロパノアート(化合物3a)の合成
200ml三ツ口フラスコをアルゴンガスにて置換し、cis-1,3-O-ベンジリデングリセロール(化合物1;4.3g、24mmol)、脱水ピリジン(2.5ml、31mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP;58mg、0.47mmol)、脱水CH2Cl2(20ml)を加えた。次に、化合物2a(3.5g、29mmol)の脱水CH2Cl2(20ml)溶液を滴下し、室温で18時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を吸引ろ過し、得られたろ液に対して脱イオン水(50ml)で2回、5%炭酸ナトリウム水溶液(50ml)で1回、洗浄した。その後、有機層は硫酸マグネシウムで乾燥させた後に減圧留去し、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=3:7、Rf値=3.6)により精製し、無色透明な液体として化合物3aを得た(5.9g、92%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.46-7.56 (m, J = 7.7 Hz, Ar-H, 2H), 7.32-7.44 (m, J = 7.7 Hz, Ar-H, 3H), 5.55-5.59 (s, 1H), 4.74-4.80 (m, CH, 1H), 4.27-4.36 (m, CH2, 2H), 4.14-4.23 (m, CH2, 2H), 3.71 (t, J = 6.3 Hz, CH2, 2H), 3.37 (s, CH3, 3H), 2.72 (t, J = 6.1 Hz, CH2, 2H)
【0077】
(3)(2s,5s)-2-フェニル-1,3-ジオキサン-5-イル ブチレート(化合物3b)の合成
300ml三ツ口フラスコをアルゴンガスにて置換し、化合物1(5.0g、28 mmol)、トリエチルアミン(4.6ml、3.3mmol)、DMAP(76mg、0.62mmol)、脱水CH2Cl2(30ml)を加えた。次に、市販の塩化ブチリル(化合物2b;3.2ml、31mmol)の脱水CH2Cl2(20ml)溶液を滴下し、室温で一晩撹拌した。沈殿物を含む反応溶液はろ別し、そのろ液に対して、脱イオン水50mlで2回、5%炭酸ナトリウム水溶液(50ml)で1回、洗浄した。その後、有機層は硫酸マグネシウムで乾燥させた後に減圧留去し、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:4、Rf値=0.48)により精製し、無色透明な液体として化合物3bを得た(6.6g、84%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): 7.48-7.55 (m, Ar-H, 2H), 7.34-7.42 (m, Ar-H, 3H), 5.56 (s, Ph-CH, 1H), 4.74-4.72 (m, CH, 1H), 4.26-4.34 (m, CH2, 2H), 4.15-4.22 (m, CH2, 2H), 2.43 (t, J = 7.5 Hz, CH2, 2H), 1.71 (td, J = 15.0, 7.2 Hz, CH2, 2H), 0.98 (t, J = 7.5 Hz, CH3, 3H)
【0078】
(4)(2s,5s)-2-フェニル-1,3-ジオキサン-5-イル アセテート(化合物3c)の合成
200ml三ツ口フラスコをアルゴンガスにて置換し、cis-1,3-O-ベンジリデングリセロール(化合物1;5.0g、28mmol)、脱水ピリジン(3.0 ml、37mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP;73mg、0.60 mmol)、脱水CH2Cl2(30ml)を加えた。次に、化合物2c(2.6g、33mmol)の脱水CH2Cl2(20ml)溶液を滴下し、室温で23時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を吸引ろ過し、得られたろ液に対して5%炭酸ナトリウム水溶液(100ml)で1回、脱イオン水(100ml)で1回、飽和塩化ナトリウム水溶液(100ml)で1回、洗浄した。その後、有機層は硫酸マグネシウムで乾燥させた後に減圧留去し、エタノール中で再結晶して精製し、白色固体として化合物3cを得た(4.8g、78%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.48-7.56 (m, Ar-H, 2H), 7.32-7.42 (m, Ar-H, 3H), 5.57 (s, Ph-CH, 1H), 4.73-4.72 (m, CH, 1H), 4.26-4.35 (m, CH2, 2H), 4.14-4.24 (m, CH2, 2H), 2.18 (s, CH3, 3H)
【0079】
(5)(2s,5s)-2-フェニル-1,3-ジオキサン-5-イル ベンゾエート(化合物3d)の合成
200ml三ツ口フラスコをアルゴンガスにて置換し、cis-1,3-O-ベンジリデングリセロール(化合物1;5.0g、28mmol)、トリエチルアミン(4.6ml、3.3mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP;7.2mg、0.059mmol)、脱水CH2Cl2(31ml)を加えた。次に、化合物2d(4.3g、31mmol)の脱水CH2Cl2(20ml)溶液を滴下し、室温で19時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を吸引ろ過し、得られたろ液に対して脱イオン水(50ml)で2回、洗浄した。その後、有機層は硫酸マグネシウムで乾燥させた後に減圧留去し、エタノール中で再結晶して精製し、白色固体として化合物3dを得た(4.4g、56%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.13-8.21 (m, Ar-H, 2H), 7.33-7.63 (m, Ar-H, 8H), 5.63 (s, Ph-CH, 1H), 4.94-5.01 (s, CH, 1H), 4.39-4.49 (m, CH2, 2H), 4.24-4.34 (m, CH2, 2H)
【0080】
(6)1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル 3-メトキシプロパノエート(化合物4a)の合成
300mlナスフラスコに、化合物3a(5.9g、22mmol)と80%酢酸水溶液(178ml)を加えて室温で48時間撹拌した。その後溶媒を減圧留去し、残った液体をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=95:5)にて精製した。生成物は、化合物4aと化合物4’aの混合物として得られ(3.1 g)、このまま次の合成に使用した。
【0081】
(7)1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル ブチラート(化合物4b)の合成
300mlナスフラスコに、化合物3b(3.0g、11mmol)と80%酢酸水溶液(30ml)を加えて室温で3日間撹拌した。その後溶媒を減圧留去し、残った液体をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=95:5)で精製した。生成物は、化合物4bと化合物4’bの混合物として得られ(1.4g)、このまま次の合成に使用した。
【0082】
(8)1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル アセテート(化合物4c)の合成
200mlナスフラスコに、化合物3c(2.7g、12mmol)と80%酢酸水溶液(80ml)を加えて室温で3日間撹拌した。その後溶媒を減圧留去し、残った液体をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=95:5)で精製した。生成物は、化合物4cと化合物4’cの混合物として得られ(1.2g)、このまま次の合成に使用した。
【0083】
(9)1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル ベンゾエート(化合物4d)の合成
300mlナスフラスコに、化合物3d(1.8g、6.4mmol)、塩化スズ(II)(1.8g、9.6mmol)を加えて室温で2日間撹拌した。次に、飽和塩化ナトリウム水溶液(100ml)で1回、洗浄した。その後、有機層は硫酸ナトリウムで乾燥させた後に減圧留去し、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=95:5)で精製した。生成物は、化合物4dと化合物4’dの混合物として得られ(0.48g)、このまま次の合成に使用した。
【0084】
(10)2-オキソ-1,3-ジオキサン-5-イル 3-メトキシプロパノエート(化合物5a)
30mlシュレンクチューブをアルゴンガスにて置換した後、化合物4aと化合物4’aの混合物(0.54g)、クロロギ酸エチル(1.2g、11mmol)、脱水テトラヒドロフラン(THF:10ml)を加えて氷浴にて冷却し、1時間撹拌した。トリエチルアミン(1.6ml、12mmol)の脱水THF溶液(4ml)を15分かけて滴下した。その後さらに室温で約1時間撹拌し、生じた沈殿をろ別し、得られたろ液を濃縮した。残渣はCH2Cl2(50ml)に溶解させ、飽和塩化ナトリウム水溶液(50ml)で洗浄した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=7:3)で精製し、無色透明な油状物質として5aを得た(0.31g、50%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 5.22-5.28 (m, CH, 1H), 4.56-4.67 (m, CH2, 2H), 4.45-4.54 (m, CH2, 2H), 3.68 (t, J = 6.1 Hz, CH2, 2H), 3.36 (s, CH3, 3H), 2.68 (t, J = 6.1 Hz, CH2, 2H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 170.9, 147.3, 69.8, 67.6, 62.6, 58.9, 35.0
元素分析: 計算値(%) C 47.06, H 5.92; 実測値(%) C 46.75, H 5.91
【0085】
(11)2-オキソ-1,3-ジオキサン-5-イル ブチラート(化合物5b)
300ml三ツ口ナスフラスコをアルゴンガスにて置換した後、化合物4bと化合物4’bの混合物(1.4g)とクロロギ酸エチル(3.3g、31mmol)、脱水THF(27ml)を加えて氷浴にて冷却し、15分撹拌した。トリエチルアミン(4.6ml、33mmol)の脱水THF溶液(10ml)を5分かけて滴下した。その後、室温で約1時間撹拌し、生じた沈殿をろ別し、得られたろ液を濃縮した。残渣はCH2Cl2(50ml)に溶解させ、塩化ナトリウム水溶液(50ml)で洗浄した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)で精製し、白色固体として化合物5bを得た(0.54g、33%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 5.17-5.24 (m, CH, 1H), 4.56-4.66 (m, CH2, 2H), 4.43-4.52 (m, CH2, 2H), 2.40 (t, J = 7.5 Hz, CH2, 2H), 1.69 (td, J = 14.8, 7.4 Hz, CH2, 2H), 0.98 (t, J = 7.5 Hz, CH3, 3H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 172.9, 147.3, 69.9, 62.3, 35.9, 18.3, 13.6
【0086】
(12)2-オキソ-1,3-ジオキサン-5-イル アセテート(化合物5c)
200ml三ツ口ナスフラスコをアルゴンガスにて置換した後、化合物4cと化合物4’cの混合物(1.2g)とクロロギ酸エチル(3.3g、31mmol)、脱水THF(26ml)を加えて氷浴にて冷却し、30分撹拌した。トリエチルアミン(4.6ml、33mmol)の脱水THF(12ml)溶液を10分かけて滴下した。その後、室温で約2時間撹拌し、生じた沈殿をろ別し、得られたろ液を濃縮した。残渣はCH2Cl2(50ml)に溶解させ、塩化ナトリウム水溶液(50ml)で洗浄した。有機層は硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)で精製し、白色固体として5cを得た(0.45g、33%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 5.17-5.23 (m, CH, 1H), 4.58-4.66 (m, CH2, 2H), 4.45-4.53 (m, CH2, 2H), 2.17 (s, CH3, 3H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 170.2, 147.3, 69.9, 62.5, 20.9
【0087】
(13)2-オキソ-1,3-ジオキサン-5-イル ベンゾエート(化合物5d)
200ml三ツ口ナスフラスコをアルゴンガスにて置換した後、化合物4dと化合物4’dの混合物(0.48g)とクロロギ酸エチル(0.95g、8.7mmol)、脱水THF(8.1ml)を加えて氷浴にて冷却し、30分撹拌した。トリエチルアミン(1.3ml、9.3mmol)の脱水THF溶液(3.1ml)を10分かけて滴下した。その後、室温で約2時間撹拌し、生じた沈殿をろ別し、得られたろ液を濃縮した。残渣はCH2Cl2(30ml)に溶解させ、塩化ナトリウム水溶液(30ml)で洗浄した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=6:4)で精製し、白色固体として化合物5dを得た(0.15g、27%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.02-8.13 (m, Ar-H, 2H), 7.59-7.69 (m, Ar-H, 1H), 7.42-7.55 (m, Ar-H, 2H), 5.44-5.50 (m, CH, 1H), 4.59-4.77 (m, CH2, 4H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 165.7, 147.4, 134.1, 130.0, 128.8, 128.6, 70.0, 63.0
【0088】
(2-2)上記のスキーム1により、Rがアダマンチル基である、本発明のポリマーを重合するためのモノマー5e(「化合物5e」とも言う)を合成した。
【0089】
(1)(2s,5s)-2-フェニル-1,3-ジオキサン-5-イル アダマンタン-1-カルボキシレート(化合物3e)の合成
200ml三ツ口フラスコをアルゴンガスにて置換し、cis-1,3-O-ベンジリデングリセロール(化合物1;1.0g、5.6mmol)、トリエチルアミン(1.2ml、8.3mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP;68mg、0.56mmol)、脱水CH2Cl2(10ml)を加えた。次に、化合物2e(6.4g、33mmol)の脱水CH2Cl2(10ml)溶液を氷浴下で滴下し、室温で16時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を吸引ろ過し、得られたろ液に対して5%炭酸ナトリウム水溶液(20ml)、脱イオン水(50ml)で2回、洗浄した。その後、有機層は硫酸マグネシウムで乾燥させた後に減圧留去し、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:9)によって精製し、白色固体として化合物3eを得た(0.8g、42%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.60-7.44 (m, Ar-H, 2H), 7.44-7.31 (m, Ar-H, 3H), 5.53 (s, Ph-CH, 1H), 4.68-4.64 (m, OCH, 1H), 4.28-4.09 (m, CH2, 4H), 1.94-2.08 (m, Ad, 9H), 1.78-1.67 (m, Ad, 6H).
【0090】
(2)1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル アダマンタン-1-カルボキシレート(化合物4e)の合成
300mlナスフラスコに、化合物3e(4.8g、14mmol)と85%酢酸水溶液(158ml)を加えて室温で65時間撹拌した。その後、真空乾燥により溶媒を除去し、残渣をジクロロメタン(50ml)に溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で1回、洗浄した。その後、有機層は硫酸マグネシウムで乾燥させた後に減圧留去し、カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=95:5)で精製した。生成物は、化合物4eと化合物4’eの混合物として得られ(3.2g)、このまま次の合成に使用した。
【0091】
(3)2-オキソ-1,3-ジオキサン-5-イル アダマンタン-1-カルボキシレート(化合物5e)
300ml三ツ口ナスフラスコをアルゴンガスにて置換した後、化合物4eと化合物4’eの混合物(2.5g)とクロロギ酸エチル(3.8g、35mmol)、脱水THF(38ml)を加えて氷浴にて冷却し、30分撹拌した。トリエチルアミン(4.2ml、30mmol)の脱水THF溶液(8.1ml)を10分かけて滴下した。その後、室温で約1時間撹拌し、生じた沈殿をろ別し、得られたろ液を濃縮した。残渣はCH2Cl2(50ml)に溶解させ、飽和塩化ナトリウム水溶液(50ml)で洗浄した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=4:6)で精製し、白色固体として化合物5eを得た(0.88g、32%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 5.21-5.10 (m, OCH, 1H), 4.67-4.53 (m, CH2, 2H), 4.52-4.37 (m, CH2, 2H), 2.55-1.58 (m, Ad, 15H).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 176.8, 147.4, 69.9, 62.1, 41.0, 38.6, 36.3, 27.8.
【0092】
3.ポリマーの合成
以下のスキーム2およびスキーム3により、本発明のポリマー6a~6eを合成した。ここで、重合条件を検討するために、種々の条件でモノマー5aの開環重合試験を行った。
【0093】
【0094】
3-1.重合条件の検討
[合成例1]
(条件1)モノマー5aの開環重合(モノマー濃度:0.1M)
アルゴンガス雰囲気下のグローブボックス内にて、2mlバイアルにモノマー5a (21mg、0.1mmol)、予め蒸留しておいたCDCl3に溶解させて調製したBnOH(1.8×10-2M、0.1ml)およびDBU(1.9×10-2M、0.14ml)溶液、CDCl3(0.76ml)を加えて室温にて静置した。その後、所定の時間に一部を取り出し、少量の安息香酸で反応を停止しCDCl3で希釈したものを1HNMRにて測定し、モノマー転化を確認した。
【0095】
[合成例2]
(条件2)モノマー5aの開環重合(モノマー濃度:1M)
アルゴンガス雰囲気下のグローブボックス内にて、2mlバイアルにモノマー5a (49mg、0.24mmol)、蒸留済みCDCl3にて調製したBnOH(0.1 M、0.05ml)およびDBU(9.9×10-2M、0.05ml)溶液、CDCl3(0.16ml)を加えて室温にて静置した。その後、所定の時間に一部を取り出し、少量の安息香酸で反応を停止しCDCl3で希釈したものを1HNMRにて測定し、モノマー転化を確認した。
【0096】
[合成例3]
(条件3)モノマー5aの開環重合(モノマー濃度:1M)
アルゴンガス雰囲気下のグローブボックス内にて、2mlバイアルにモノマー5a (150mg、0.74mmol)、蒸留済みCDCl3にて調製したBnOH(7.3×10-2M、0.05ml)およびDBU(7.2×10-2M、0.05ml)溶液、CDCl3(0.65ml)を加えて室温にて静置した。その後、所定の時間に一部を取り出し、少量の安息香酸で反応を停止しCDCl3で希釈したものを1HNMRにて測定し、モノマー転化を確認した。
【0097】
[合成例4]
(条件4)モノマー5aの開環重合(モノマー濃度:3M)
アルゴンガス雰囲気下のグローブボックス内にて、2mlバイアルにモノマー5a (101mg、0.49mmol)、蒸留済みCDCl3にて調製したBnOH(7.2×10-2M、0.035ml)およびDBU(7.3×10-2M、0.035ml)溶液、CDCl3(0.093ml)を加えて室温にて静置した。その後、所定の時間に一部を取り出し、少量の安息香酸で反応を停止しCDCl3で希釈したものを1H NMRにて測定し、モノマー転化を確認した。
【0098】
[実施例1]
5aの開環重合における反応混合物組成の時間変化の評価
図2は、5aの開環重合(モノマー濃度1M)の反応15分における反応混合物の
1HNMRスペクトル(400MHz、CDCl
3)を示す。
図2に示されているようにモノマー5aの開環重合の反応混合物にはポリマー6aと副生成物5’aが含まれる。4.8~5.4ppmにそれぞれの特徴的なシグナルが見られ、これらの積分比から各時間における反応混合物の組成を計算し、
図2のようにプロットした。
【0099】
図3は、モノマー、開始剤、触媒濃度の異なる5aの開環重合における反応混合物組成の時間変化を示す。ここで、
図3の(a)~(d)は、上記の(条件1)~(条件4)での結果であり、各条件は以下の通りである。
図3(a):[5a]
0=0.1M、5a/BnOH/DBU=50/1/1(条件1)
図3(b):[5a]
0=1M、5a/BnOH/DBU=50/1/1(条件2)
図3(c):[5a]
0=1M、5a/BnOH/DBU=200/1/1(条件3)
図3(d):[5a]
0=3M、5a/BnOH/DBU=200/1/1(条件4)
【0100】
図3からわかるように、モノマー、開始剤、触媒の濃度によって、モノマーの転化速度ならびに反応混号物の組成、特にポリマー6aの最大生成量が変化している。これより、5aの重合についてはモノマー濃度を3Mとし、重合開始後35分に停止させることでポリマー収量を最適化した。反応混合物中のポリマー組成が最大となる時間や条件はモノマーによって異なるため、モノマー5b、5c、5dについてはそれぞれについて同様の反応追跡を行い、最適な反応停止時間を決定した。モノマー5bおよび5cではモノマー5a同様に3Mの高モノマー濃度条件で、ポリマー生成量が80%程度となった。モノマー5dはCH
2Cl
2への溶解性が低く、1Mの条件でも反応は不均一系で進行し、重合の進行に伴い均一溶液となった。このため、5dの重合は実際は1M以下のモノマー濃度で進行しているが、副生成物の5’dの生成量は低く抑えられ、ポリマー6dの最大生成量は80%以上となった。このように、側鎖の構造によって、ポリマー収量を最大化させる最適なモノマー濃度の範囲も変化することが示唆されている。
【0101】
3-2.各ポリマーの合成実験
[合成実施例1]
ポリ(2-オキソ-1,3-ジオキサン-5-イル 3-メトキシプロパノエート)(6a-OH)の合成(モノマー濃度:3M)
アルゴンガス雰囲気下のグローブボックス内にて、2 mlバイアルにモノマー5a(200mg、0.98mmol)、蒸留済みCDCl3(0.70ml)、水素化カルシウム(少量)を加えて数時間攪拌し、モノマーの予備乾燥を行った。PTFE製フィルター(0.2μm)で溶液をろ過し、一度濃縮した後、蒸留済みCDCl3にて調製したDBU(9.9×10-2M、0.05ml)溶液、CDCl3(0.28ml)を加え、室温にて35分静置した。その後、少量の安息香酸を反応溶液に加えて、3時間攪拌し反応を停止させた。これを冷2-プロパノール中に2回再沈殿させ、透明な粘性体として6a-OHを得た(89mg、45%)。
1H-NMR (396 MHz, CDCl3): δ 5.26-5.34 (m, CH), 4.23-4.43 (m, CH2), 3.65 (t, J = 6.3 Hz, CH2), 3.34 (s, CH3), 2.62 (t, J = 6.3 Hz, CH2)
GPC : Mn 11,900 g/mol, DM = 1.17
【0102】
[合成実施例2]
ポリ(2-オキソ-1,3-ジオキサン-5-イル 3-メトキシプロパノエート) (6a-Ac)の合成(モノマー濃度:3M)
アルゴンガス雰囲気下のグローブボックス内にて、2mlバイアルにモノマー5a (301mg、1.48mmol)、蒸留済みCDCl3(0.78ml)、水素化カルシウム(少量)を加えて数時間攪拌し、モノマーの予備乾燥を行った。PTFE製フィルター(0.2μm)で溶液をろ過し、一度濃縮した後、蒸留済みCDCl3にて調製したDBU(0.14M、0.05ml)溶液、CDCl3(0.42ml)を加え、室温にて35分静置した。その後、少量の無水酢酸を反応溶液に加えて、一晩攪拌し反応を停止させた。これを冷2-プロパノール中に再沈殿させ、透明な粘性体として6a-Acを得た(217mg、72%)。
1H-NMR (396 MHz, CDCl3): δ 5.23-5.40 (m, CH), 4.22-4.48 (m, CH2), 3.65 (t, J = 6.1 Hz, CH2), 3.34 (s, CH3), 2.62 (t, J = 6.1 Hz, CH2)
GPC : Mn 12,000 g/mol, DM = 1.16
DSC: Tg ‐13°C
【0103】
[合成実施例3]
ポリ(2-オキソ-1,3-ジオキサン-5-イル ブチレート)(6b-OH)の合成(モノマー濃度:3M)
アルゴンガス雰囲気下のグローブボックス内にて、2mlバイアルにモノマー5b (149mg、0.79mmol)、蒸留済みCDCl3にて調製したDBU(6.8×10-2M、0.06ml)溶液、CDCl3(0.2ml)を加え、室温にて80分静置した。その後、少量の安息香酸とCDCl3(約2ml)を反応溶液に加えて、1時間攪拌し反応を停止させた。これをメタノール中に再沈殿させ、透明な粘性体として6b-OHを得た(131mg、88%)。
1H-NMR (396 MHz, CDCl3): δ 5.23-5.36 (m, CH), 4.14-4.51 (m, CH2), 2.33 (t, J = 7.2 Hz, CH2), 1.66 (td, J = 14.7, 7.2 Hz, CH2), 0.95 (t, J = 7.5 Hz, CH3)
GPC : Mn 29,300 g/mol, DM = 1.34
【0104】
[合成実施例4]
ポリ(2-オキソ-1,3-ジオキサン-5-イル ブチレート)(6b-Ac)の合成(モノマー濃度:3M)
アルゴンガス雰囲気下のグローブボックス内にて、2mlバイアルにモノマー5b(149mg、0.79mmol)、蒸留済みCDCl3にて調製したDBU(6.6×10-2M、0.06ml)溶液、CDCl3(0.2ml)を加え、室温にて80分静置した。その後、少量の無水酢酸とCDCl3(約2ml)を反応溶液に加えて、一晩攪拌し反応を停止させた。これをメタノール中に再沈殿させ、透明な粘性体として6b-Acを得た(141mg、95%)。
1H-NMR (396 MHz, CDCl3): δ 5.24-5.34 (m, CH), 4.16-4.46 (m, CH2), 2.33 (t, J = 7.5 Hz, CH2), 1.66 (td, J = 14.8, 7.4 Hz, CH2), 0.95 (t, J = 7.2 Hz, CH3)
GPC : Mn 34,900 g/mol, DM = 1.33
DSC: Tg ‐5°C
【0105】
[合成実施例5]
ポリ(2-オキソ-1,3-ジオキサン-5-イル アセテート)(6c-OH)の合成(モノマー濃度:3M)
アルゴンガス雰囲気下のグローブボックス内にて、2mlバイアルにモノマー5c(130mg、0.81mmol)、蒸留済みCDCl3にて調製したDBU(0.1 M、0.04ml)溶液、CDCl3(0.23ml)を加え、室温にて30分静置した。その後、安息香酸(7.48mg)とCDCl3(約2ml)を反応溶液に加えて、1時間攪拌し反応を停止させた。これをメタノール中に再沈殿させ、透明なポリマーとして6c-OHを得た(75mg、58%)。
1H-NMR (396 MHz, CDCl3): δ 5.23-5.33 (m, CH), 4.19-4.49 (m, CH2), 2.11 (s, CH3)
GPC : Mn 11,600 g/mol, DM = 1.13
【0106】
[合成実施例5a]
ポリ(2-オキソ-1,3-ジオキサン-5-イル アセテート)(6c-OH)の合成2(モノマー濃度:3M)
アルゴンガス雰囲気下のグローブボックス内にて、2mlバイアルにモノマー5c (200mg、1.25mmol)、蒸留済みCDCl3にて調製したDBU(0.1 M、0.06ml)溶液、CDCl3(0.36ml)を加え、室温にて2時間静置した。その後、安息香酸(4.37mg)とCDCl3(約2ml)を反応溶液に加えて、1時間攪拌し反応を停止させた。これをメタノール中に再沈殿させ、透明なポリマーとして6c-OHを得た(156mg、78%)。
1H-NMR (396 MHz, CDCl3): δ 5.23-5.33 (m, CH), 4.19-4.49 (m, CH2), 2.11 (s, CH3)
GPC : Mn 42,100 g/mol, DM = 1.64
合成実施例5よりもポリマー6c-OHの高分子量体を得ることができた。
【0107】
[合成実施例6]
ポリ(2-オキソ-1,3-ジオキサン-5-イル アセテート)(6c-Ac)の合成(モノマー濃度:3M)
アルゴンガス雰囲気下のグローブボックス内にて、2mlバイアルにモノマー5c (130mg、0.81mmol)、蒸留済みCDCl3にて調製したDBU(0.1 M、0.04ml)溶液、CDCl3(0.23ml)を加え、室温にて30分静置した。その後、少量の無水酢酸とCDCl3(約2ml)を反応溶液に加えて、一晩攪拌し反応を停止させた。これをメタノール中に再沈殿させ、透明なポリマーとして6c-Acを得た(141mg、94%)。
1H-NMR (396 MHz, CDCl3): δ 5.22-5.33 (m, CH), 4.23-4.47 (m, CH2), 2.09-2.14 (s, CH3)
GPC : Mn 11,500 g/mol, DM = 1.14
DSC: Tg 23°C
【0108】
[合成実施例6a]
ポリ(2-オキソ-1,3-ジオキサン-5-イル アセテート)(6c-Ac)の合成2(モノマー濃度:3M)
アルゴンガス雰囲気下のグローブボックス内にて、2mlバイアルにモノマー5c (150mg、0.94mmol)、蒸留済みCDCl3にて調製したDBU(0.12 M、0.04ml)溶液、CDCl3(0.27ml)を加え、室温にて4時間静置した。その後、少量の無水酢酸とCDCl3(約2ml)を反応溶液に加えて、一晩攪拌し反応を停止させた。これをメタノール中に再沈殿させ、透明なポリマーとして6c-Acを得た(101mg、67%)。
1H-NMR (396 MHz, CDCl3): δ 5.23-5.33 (m, CH), 4.19-4.49 (m, CH2), 2.11 (s, CH3)
GPC : Mn 51,700 g/mol, DM = 1.93
合成実施例6よりもポリマー6c-Acの高分子量体を得ることができた。
【0109】
[合成実施例7]
ポリ(2-オキソ-1,3-ジオキサン-5-イル ベンゾエート)(6d-OH)の合成(モノマー濃度:1M)
アルゴンガス雰囲気下のグローブボックス内にて、2mlバイアルにモノマー5d(200mg、0.90mmol)、蒸留済みCDCl3にて調製したDBU(0.09M、0.08ml)溶液、CDCl3(0.82ml)を加え、室温にて240分静置した。その後、安息香酸(10mg)とCDCl3(約2ml)を反応溶液に加えて、1晩攪拌し反応を停止させた。これをメタノール中に再沈殿させ、透明なポリマーとして6d-OHを得た(105mg、52%)。
1H-NMR (396 MHz, CDCl3): δ 7.93-8.01 (m, Ar-H), 7.48-7.56 (m, Ar-H), 7.33-7.43 (m, Ar-H), 5.43-5.52 (m, CH), 4.31-4.51 (m, CH2)
GPC : Mn 27,100 g/mol, DM = 1.53
【0110】
[合成実施例7a]
ポリ(2-オキソ-1,3-ジオキサン-5-イル ベンゾエート) (6d-OH)の合成2(モノマー濃度:1M)
アルゴンガス雰囲気下のグローブボックス内にて、2mlバイアルにモノマー5d (150mg、0.68mmol)、蒸留済みCDCl3にて調製したDBU(0.08M、0.04ml)溶液、CDCl3(0.65ml)を加え、室温にて220分静置した。その後、酢酸数滴とCDCl3(約2ml)を反応溶液に加えて、70分攪拌し反応を停止させた。これをメタノール中に再沈殿させ、透明なポリマーとして6d-OHを得た(129mg、89%)。
1H-NMR (396 MHz, CDCl3): δ 7.93-8.01 (m, Ar-H), 7.48-7.56 (m, Ar-H), 7.33-7.43 (m, Ar-H), 5.43-5.52 (m, CH), 4.31-4.51 (m, CH2)
GPC : Mn 40,000 g/mol, DM = 1.29
合成実施例7よりもポリマー6d-OHの高分子量体を得ることができた。
【0111】
[合成実施例8]
ポリ(2-オキソ-1,3-ジオキサン-5-イル ベンゾエート) (6d-Ac)の合成(モノマー濃度:1M)
アルゴンガス雰囲気下のグローブボックス内にて、2mlバイアルにモノマー5d (150mg、0.68mmol)、蒸留済みCDCl3にて調製したDBU(0.09M、0.06ml)溶液、CDCl3(0.63ml)を加え、室温にて210分間静置した。その後、少量の無水酢酸とCDCl3(約2ml)を反応溶液に加えて、1晩攪拌し反応を停止させた。これをメタノール中に2回再沈殿させ、透明なポリマーとして6d-Acを得た(99mg、66%)。
1H-NMR (396 MHz, CDCl3): δ 7.92-8.03 (m, Ar-H), 7.47-7.57 (m, Ar-H), 7.32-7.43 (m, Ar-H), 5.39-5.58 (m, CH), 4.23-4.58 (m, CH2)
GPC : Mn 26,300 g/mol, DM = 1.49
DSC: Tg 51°C
[合成実施例9]
ポリ(2-オキソ-1,3-ジオキサン-5-イル アダマンタン-1-カルボキシレート)(6e-OH)の合成(モノマー濃度:3M)
アルゴンガス雰囲気下のグローブボックス内にて、2mlバイアルにモノマー5e (149mg、0.53mmol)、蒸留済みCDCl3にて調製したDBU(0.07M、0.04ml)溶液、CDCl3(0.14ml)を加え、室温にて80分静置した。その後、安息香酸(8.4mg)とCDCl3(約2ml)を反応溶液に加えて、60分攪拌し反応を停止させた。これをメタノール中に再沈殿させ、透明なポリマーとして6e-OHを得た(124mg、83%)。
1H-NMR (396 MHz, CDCl3): δ 5.32-5.18 (m, OCH), 4.47-4.41 (m, CH2), 2.11-1.61 (m, Ad).
GPC : Mn 52,100 g/mol, DM = 1.19
【0112】
[合成実施例10]
ポリ(2-オキソ-1,3-ジオキサン-5-イル アダマンタン-1-カルボキシレート)(6e-Ac)の合成(モノマー濃度:3M)
アルゴンガス雰囲気下のグローブボックス内にて、2mlバイアルにモノマー5e (150mg、0.54mmol)、蒸留済みCDCl3にて調製したDBU(0.07M、0.04ml)溶液、CDCl3(0.14ml)を加え、室温にて80分間静置した。その後、少量の無水酢酸とCDCl3(約2ml)を反応溶液に加えて、1時間攪拌し反応を停止させた。これをメタノール中に3回再沈殿させ、透明なポリマーとして6e-Acを得た(149mg)。
1H-NMR (396 MHz, CDCl3): δ 5.33-5.19 (m, OCH), 4.50-4.12 (m, CH2), 2.21-1.61 (m, Ad).
GPC : Mn 48,900 g/mol, DM = 1.20
DSC: Tg 85°C
【0113】
[比較例1]
ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC-OH)の合成
アルゴンガス雰囲気下のグローブボックス内にて、2mlバイアルにトリメチレンカーボネート(TMC;200mg、2.0mmol)、1-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-3-シクロヘキシル-2-チオウレア(TU:36mg、0.097mmol)、脱水CH2Cl2(0.41ml)を加えた。さらに、BnOHの脱水CH2Cl2溶液(9.3×10-2M、0.1ml)を加えた後、DBUの脱水CH2Cl2溶液(0.2M、0.5ml)を加え、1晩攪拌した。その後、安息香酸(63mg)を反応溶液に加えて、5時間攪拌し反応を停止させた。これをメタノール中に再沈殿させ、PTMC-OHを得た(160mg、80%)。
GPC : Mn 17,200 g/mol, DM = 1.16
【0114】
[比較例2]
ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC-Ac)の合成
アルゴンガス雰囲気下のグローブボックス内にて、2mlバイアルにTMC(300mg、2.9mmol)、TU(54mg、0.15mmol)、脱水CH2Cl2(1.3ml)を加えた。さらに、BnOHの脱水CH2Cl2溶液(0.14M、0.11 ml)を加えた後、DBUの脱水CH2Cl2溶液(0.15M、0.22ml)を加え、4日間攪拌した。その後、少量の無水酢酸を反応溶液に加えて、1晩攪拌し反応を停止させた。これをメタノール中に再沈殿させ、PTMC-Acを得た(255mg、85%)。
GPC : Mn 11,200 g/mol, DM = 1.15
【0115】
[実施例1]
均一溶液中での分解実験
以下のスキームによる各ポリマーの分解実験を行った。
【0116】
【0117】
CDCl3に各ポリマー(6a-OH、6a-Ac、6b-OH、6b-Ac、PTMC-OH、PTMC-Ac)を25-30mg溶解させ、そのモノマーユニットの0.5%に相当するDBUを加え、室温で攪拌した。所定の時間において各反応溶液を20-50μl取り出し、安息香酸によって反応を停止させた後、約2mlのCDCl3に希釈し、1HNMR測定を行った。5’のシグナルとポリマーのシグナルの積分比から分解度を算出した。
【0118】
また、同様の条件でポリマー6c-ОH、6c-Ac、6d-OH、6d-Ac、6e-OH、6e-AcをCDCl3中、DBUで30時間処理し、その時点の分解度を比較した。
【0119】
図4は、ポリマー6a-OHの均一系分解処理4時間後における
1HNMRスペクトル(400MHz、CDCl
3)を示す。
図5は、ポリマー6a-OHの均一系分解処理30時間後における
1HNMRスペクトル(400MHz、CDCl
3)を示す。
図6は、ポリマー6b-OHの均一系分解処理9時間後における
1HNMRスペクトル(4006Hz、CDCl
3)を示す。
図7は、ポリマー6b-OHの均一系分解処理30時間後における
1HNMRスペクトル(400MHz、CDCl
3)を示す。
図8Aは、ポリマー6a-OH、6a-Ac、6b-OH、6b-Acの溶液中解重合処理におけるポリマー量の時間変化を示す。
図8Bは、30時間、溶液中解重合処理した各ポリマーの分解度を示す。
【0120】
図8Aに示されるように、末端基構造がOHであるポリマー6a-OH、6b-OHは、触媒(DBU)の存在下においては約1日程度以内にほぼ全ての分子鎖が1種の低分子量体(5員環状カーボネート)に分解されることが分かる。一方、末端がAc基であるポリマー6a-Ac、6b-Acは触媒存在下でもほぼ安定に存在する。このため、OH基の末端構造と触媒添加が「オンデマンド分解」の開始スイッチとなることが示される。
また、一定時間後の5’の生成量を分解度として示した
図8Bからも末端基がOHである6c-OH、6d-OHは、7割以上が分解され、末端基がAcの6c-Ac、6d-Acではその分解が大きく抑制されていることが示されている。一方、6e-OHでは、分解が2割程度となり、側鎖が極端に嵩高い場合はバックバイティング型解重合の挙動にも影響を与えることがわかる。ただし、6a-6dのポリマーについてはその分解度は末端基の構造の影響を強く受けることが示されている。
【0121】
[実施例2]
不均一系での分解実験
各ポリマー(6a-Ac、6b-Ac、PTMC-Ac)10mgに対して、重水1mlを添加し、モノマーユニットの50%に相当するDBUを加え、40℃で攪拌した。所定の時間において各反応溶液の上澄み液の1HNMR測定を行った。DBUの積分値をもとに重水可溶部の重量%を算出した。
【0122】
図9は、各試料の重水中の
1HNMRスペクトル(400MHz、D
2O)を示す。ここで、a)はDBUの、b)は6a-Acの、c)は6b-Acの不均一系分解処理4日後における上澄み液についての結果を示す。
【0123】
表1に、6a-Ac、6b-Ac、PTMC-Acの処理時間1、4、7日における分解率(%)を示した。
【0124】
【0125】
[実施例3]
ポリマーの含水特性の評価
<ポリマー6a-Acの含水状態における熱特性解析>
生体適合性ポリマーには特殊な水和水が含まれることが最近報告されている。24時間超純水に浸漬させたポリマー6a-AcのDSC測定を行った。
図10に示されるように、冷却過程にて-40℃付近に結晶化する水の存在が見られた。これは、抗血栓性が確認されている先行技術(Biomacromolecules, 2017, 18, 3834-3843; ACS Biomater. Sci. Eng., 2021, 7, 472-481)の脂肪族ポリカーボネートと同様の結果を示している。このことから6aの抗血栓性材料として応用できる可能性が示唆される。