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特開2024-27242到来方向推定装置及び到来方向推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027242
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】到来方向推定装置及び到来方向推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 3/14 20060101AFI20240222BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
G01S3/14
H01Q21/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129873
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雄太
(72)【発明者】
【氏名】白戸 裕史
(72)【発明者】
【氏名】北 直樹
(72)【発明者】
【氏名】内田 大誠
(72)【発明者】
【氏名】新井 拓人
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰義
(72)【発明者】
【氏名】廣川 二郎
(72)【発明者】
【氏名】戸村 崇
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021AA07
5J021AA09
5J021HA01
5J021HA03
5J021HA04
(57)【要約】
【課題】推定にかかる時間を短縮し、かつ、接続方式によらず電波の到来方向を推定する。
【解決手段】到来方向推定装置は、アンテナ部と、バトラーマトリックス回路と、電力測定部と、推定部とを備える。アンテナ部は、複数のアンテナ素子を備える。アンテナ部と、バトラーマトリックス回路は、アンテナ部の複数のアンテナ素子それぞれが無線により受信した信号を入力し、入力した信号を到来方向毎に分離してバトラーマトリックス回路の複数の出力ポートそれぞれから出力する。複数の出力ポートは、各到来方向に対応する。電力測定部は、バトラーマトリックス回路の複数の出力ポートそれぞれから出力された信号の受信電力を測定する。推定部は、電力測定部により測定された複数の出力ポートそれぞれの受信電力と、到来方向ごとの電力パターンとの比較に基づいて信号の電波の到来方向を推定する。電力パターンは、複数の出力ポートそれぞれの受信電力を示す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナ素子を備えるアンテナ部と、
前記アンテナ部の複数のアンテナ素子それぞれが無線により受信した信号を入力し、入力した前記信号を到来方向毎に分離して前記到来方向それぞれに対応する複数の出力ポートから出力するバトラーマトリックス回路と、
前記バトラーマトリックス回路の複数の前記出力ポートそれぞれから出力された前記信号の受信電力を測定する電力測定部と、
前記電力測定部により測定された複数の前記出力ポートそれぞれの前記受信電力と、複数の前記出力ポートそれぞれの受信電力を示す電力パターンであって、到来方向ごとの前記電力パターンそれぞれとの比較に基づいて前記信号の電波の到来方向を推定する推定部と、
を備える到来方向推定装置。
【請求項2】
前記推定部は、異なる時間において推定された到来方向に基づいて前記信号を送信した装置の推定の移動速度を算出する、
請求項1に記載の到来方向推定装置。
【請求項3】
前記バトラーマトリックス回路の複数の前記出力ポートのうち一部の出力ポートを選択し、選択した前記出力ポートから出力された前記信号を前記電力測定部に出力する処理を、選択される前記出力ポートを切り替えながら行う選択部をさらに備える、
請求項1に記載の到来方向推定装置。
【請求項4】
前記アンテナ部は、複数の端末から符号分割多元接続方式、時分割多元接続方式又は周波数分割多元接続方式により送信された無線の信号を受信する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の到来方向推定装置。
【請求項5】
前記アンテナ部は、リニアアレイアンテナ又は2次元アレイアンテナである、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の到来方向推定装置。
【請求項6】
バトラーマトリックス回路が、複数のアンテナ素子それぞれが無線により受信した信号を入力し、入力した前記信号を到来方向毎に分離して前記到来方向それぞれに対応する複数の出力ポートから出力する受信ステップと、
前記バトラーマトリックス回路の複数の前記出力ポートそれぞれから出力された前記信号の受信電力を測定する電力測定ステップと、
前記電力測定ステップにおいて測定された複数の前記出力ポートそれぞれの前記受信電力と、複数の前記出力ポートそれぞれの受信電力を示す電力パターンであって、到来方向ごとの前記電力パターンそれぞれとの比較に基づいて前記信号の電波の到来方向を推定する推定ステップと、
を有する到来方向推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、到来方向推定装置及び到来方向推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波数帯での無線通信では、エリア範囲を拡大するためにビームフォーミングは必須の機能である。既存システムでは、基地局から端末へビームを向けるために、CSI(Channel State Information)フィードバックやビームスキャンなど、端末からのフィードバック通信が必要であり、効率的な通信方式の実現の観点から改善が望まれている。そこで、バトラーマトリックスによりDoA(Direction of Arrival)推定を行うことで、端末からのフィードバックを不要としながらビーム形成を実現する技術に関する検討が注目されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
また、2.4GHz帯域の電波周波数帯において、ビーム選択器と、直接拡散符号分割多元接続(DS-CDMA)と、ニューラルネットワーク(NN)とを活用して電波の到来方向を推定する技術がある(例えば、非特許文献2参照)。ビーム選択器には、電波が到来する角度別に受信電力を分離する機能を有するバトラーマトリックスが用いられる。DS-CDMAは、直接拡散符号を活用して複数ユーザの無線通信を多重する機能を有する。NNは、バトラーマトリックスによる電波の到来方向(DoA)毎の受信電力と、DS-CDMAとを入力として、伝搬の到来方向を推定する機能を有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】F. Muramatsu, K. Nishimori, R. Taniguchi, and T. Hiraguri, "Multi-Beam Massive MIMO with Beam-Selection Using Only Amplitude Information in Uplink Channel," in IEICE Transactions on Communications, Vol.E101-B, No.7, pp.1544-1551, July 2018, doi: 10.1587/transcom.2017CQP0005
【非特許文献2】K. A. Gotsis, K. Siakavara and J. N. Sahalos, "On the Direction of Arrival (DoA) Estimation for a Switched-Beam Antenna System Using Neural Networks," in IEEE Transactions on Antennas and Propagation, vol. 57, no. 5, pp. 1399-1411, May 2009, doi: 10.1109/TAP.2009.2016721.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した非特許文献2の技術は、CDMA(符号分割多元接続;Code Division Multiple Access)方式に限定されたDoA推定である。推定に用いるDoA毎の受信信号をバトラーマトリックスに接続されたスイッチを切り替えることにより取得するため、全DoAのデータ取得にスイッチ切替時間分を要する。加えて、DoA推定部に使用されるNNは事前の学習を要し、例えば、環境(場所)によって再学習が必要であることが想定される。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、推定にかかる時間を短縮し、かつ、接続方式によらず電波の到来方向を推定することができる到来方向推定装置及び到来方向推定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、複数のアンテナ素子を備えるアンテナ部と、前記アンテナ部の複数のアンテナ素子それぞれが無線により受信した信号を入力し、入力した前記信号を到来方向毎に分離して前記到来方向それぞれに対応する複数の出力ポートから出力するバトラーマトリックス回路と、前記バトラーマトリックス回路の複数の前記出力ポートそれぞれから出力された前記信号の受信電力を測定する電力測定部と、前記電力測定部により測定された複数の前記出力ポートそれぞれの前記受信電力と、複数の前記出力ポートそれぞれの受信電力を示す電力パターンであって、到来方向ごとの前記電力パターンそれぞれとの比較に基づいて前記信号の電波の到来方向を推定する推定部と、を備える到来方向推定装置である。
【0008】
本発明の一態様は、バトラーマトリックス回路が、複数のアンテナ素子それぞれが無線により受信した信号を入力し、入力した前記信号を到来方向毎に分離して前記到来方向それぞれに対応する複数の出力ポートから出力する受信ステップと、前記バトラーマトリックス回路の複数の前記出力ポートそれぞれから出力された前記信号の受信電力を測定する電力測定ステップと、前記電力測定ステップにおいて測定された複数の前記出力ポートそれぞれの前記受信電力と、複数の前記出力ポートそれぞれの受信電力を示す電力パターンであって、到来方向ごとの前記電力パターンそれぞれとの比較に基づいて前記信号の電波の到来方向を推定する推定ステップと、を有する到来方向推定方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、推定にかかる時間を短縮し、かつ、接続方式によらず電波の到来方向を推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態による通信システムの構成を示すブロック図である。
図2】同実施形態による電力パターン情報の例を示す図である。
図3】同実施形態による張出局の端末DoA推定処理を示すフロー図である。
図4】同実施形態による張出局の他の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による通信システムの構成を示すブロック図である。通信システムは、張出局1と、端末9とを有する。張出局1は、端末9と無線により通信する。図1においては端末9を1台のみ示しているが、端末9の台数は任意である。端末9は、移動可能である。
【0012】
張出局1は、端末9からの電波の到来方向を推定する到来方向推定装置の一例である。以下では、端末9からの電波の到来方向を、端末DoAと記載する。張出局1は、N本(Nは2以上の整数)のアンテナ2と、バトラーマトリックス回路3と、パワーメータ5と、DoA推定部6とを有する。N本のアンテナ2を、アンテナ2-1~2-Nとも記載する。
【0013】
アンテナ2は、無線の電波を送受信するアンテナ素子である。アンテナ2は、端末9から到来した無線信号を受信し、バトラーマトリックス回路3に出力する。バトラーマトリックス回路3は、N個のポート4を有する。N個のポート4を、ポート4-1~4-Nとも記載する。ポート4-1~4-Nはそれぞれ、異なるDoA、すなわち、異なる受信方向に対応する。バトラーマトリックス回路3は、ポート4毎にビームを形成する機能を有する。バトラーマトリックス回路3は、アンテナ2が無線により受信した信号を入力した場合には、DoA(受信方向)別に受信信号の電力を分離し、分離した信号をその信号のDoAに対応したポート4から出力する。パワーメータ5は、バトラーマトリックス回路3の各ポート4から出力された受信信号の電力値を導出する機能を有する。以下では、ポート4から出力された受信信号の電力値を、ポート4の電力値と記載する。
【0014】
DoA推定部6は、端末DoA推定を行う機能を有する。具体的には、DoA推定部6は、バトラーマトリックス回路3がDoA毎に各ポート4へ分離した無線信号の電力値の情報をパワーメータ5から受信する。DoA推定部6は、受信した各ポート4の電力値の情報と、事前に用意しておいたDoA毎の電力パターン情報との相関係数演算を行うことにより、バトラーマトリックス回路3のポート数(ビーム数)N以上の分解能で端末DoA推定を行う。電力パターン情報は、ポート4-1~4-Nそれぞれの電力値からなるパターンを示す。DoA推定部6は、記憶部7を有する。記憶部7は、異なる種類のDoAそれぞれの電力パターン情報を記憶する。このDoAの種類の数は、DoA測定分解能数に相当する。なお、記憶部7は、DoA推定部6の外部に備えられてもよい。
【0015】
アンテナ2-1~2-Nからなるアンテナ部及びバトラーマトリックス回路3の構成には、リフレクトアレーアンテナを用いてもよく、給電ポート毎にビームの指向方向が異なるレンズアンテナを用いてもよく、その他のビーム選択型アンテナを用いてもよい。アンテナ2-1~2-Nからなるアンテナ部は、サブアレイ構成であってもよい。また、アンテナ部は、リニアアレイアンテナでもよく、2次元アレイアンテナでもよい。バトラーマトリックス回路3には、既存の2次元のバトラーマトリックスを使用可能である。
【0016】
張出局1は、端末9からの無線信号をCDMA方式で受信してもよく、TDMA(時分割多元接続;Time Division Multiple Access)方式で受信してもよく、FDMA(周波数分割多元接続;Frequency-Division Multiple Access)方式で受信してもよい。また、端末DoA推定に際して、張出局1と端末9とは同期がとれていなくてもよく、同期が取れていてもよい。
【0017】
DoA推定部6の機能の全て又は一部は、CPU(central processing unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサが、張出局1が有する記憶部からプログラムを読み出して実行することにより実現されてもよい。また、DoA推定部6の機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0018】
図2は、記憶部7に記憶される電力パターン情報の例を示す図である。DoA推定部6が相関係数計算用に事前に用いる電力パターン情報は、180°方向分の到来信号をバトラーマトリックス回路3の各ポート4-1~4-Nに分離した際のそれら分離された各信号の電力値のパターンを示す。図2に示す電力パターン情報の場合、全電力パターン情報における電力値の数は、ポート4の数N×DoA測定分解能数である。なお、ポート番号n(nは1以上N以下の整数)は、ポート4-nを示すポート識別情報である。各電力パターン情報が対応するDoAは、1次元的(水平方向)でもよく、2次元的(水平方向+垂直方向)でもよい。DoA測定分解能数がMであり、電力パターン情報に対応するDoAが1次元的な場合、DoAの種類は、例えば、水平方向に小さい順にa、a、…、aである(aは0°以上、かつ、aは180°以下)。電力パターン情報に対応するDoAが2次元的な場合、DoAの種類は、水平方向b及び垂直方向cの組み合わせで表される(mは1以上のM以下の整数、b及びcは0°以上かつ180°以下)。
【0019】
ポート4の電力値は、端末9からの無線信号の電波の到来方向である端末DoAと近いDoAに対応したポート4であるほど高いことが想定される。例えば、ポート4-n(nは1以上N以下の整数)に対応するDoA(以下、DoA#nと記載)とポート4-i(i≠n、iは1以上N以下の整数)に対応するDoA(以下、DoA#iと記載)とが隣接しているとする。端末DoAがDoA#nとDoA#iとの間である場合、ポート4-nの電力値、及び、ポート4-iの電力値は、他のポート4の電力値よりも高いことが想定される。さらには、DoA#iよりもDoA#nのほうが端末DoAに近い場合、ポート4-iの電力値よりもポート4-nの電力値の方が高いことが想定される。簡単のため、端末DoAが2つのポート4それぞれに対応したDoAの間である場合を例に説明したが、3つ以上のポート4それぞれに対応したDoAの間である場合も同様である。このように、端末DoAと近いDoAに対応したポート4ほど電力値が高いことを利用することにより、DoA測定分解能数をポート4の数Nよりも大きくすることができる。
【0020】
図3は、張出局1の端末DoA推定処理を示すフロー図である。張出局1は、図3に示す端末DoA推定処理を繰り返し実行する。例えば、張出局1は、端末DoA推定処理の開始トリガーを一定の周期間隔としてもよく、端末9の移動速度に合わせてもよい。
【0021】
アンテナ2は、無線信号を受信し、バトラーマトリックス回路3に出力する(ステップS1)。バトラーマトリックス回路3は、各アンテナ2が受信した無線信号を入力し、入力した無線信号をDoA毎に各ポート4へ分離して出力する(ステップS2)。パワーメータ5は、バトラーマトリックス回路3の各ポート4から出力された信号の電力値を測定する(ステップS3)。パワーメータ5は、ポート番号と、そのポート番号のポート4から出力された信号の電力値とを対応付けた測定結果情報をDoA推定部6へ出力する。パワーメータ5は、測定結果情報に、測定時刻を設定してもよい。
【0022】
DoA推定部6は、測定結果情報から各ポート4の電力値を取得すると、これらの各ポート4の電力値を並べた情報と、記憶部7に記憶されている各電力パターン情報との相関係数を算出する(ステップS4)。DoA推定部6は、算出された相関係数に基づいて端末DoAを推定する(ステップS5)。例えば、DoA推定部6は、相関係数の値がしきい値以上の電力パターン情報に対応するDoAを、端末DoAの推定結果として得る。また、端末9の同時接続数が既知の場合、DoA推定部6は、相関係数の値が高いものから順に同時接続数と同じ数の電力パターン情報を選択し、選択した電力パターン情報それぞれに対応したDoAを端末DoAの推定結果として得てもよい。DoA推定部6は、推定結果を得た時刻又は測定結果情報に設定されている測定時刻と、端末DoAの推定結果とを対応付けた情報を記憶部7に書き込んでもよい。
【0023】
張出局1と複数の端末9とが非同期であって、それら複数の端末9が同一タイミングかつ同一周波数帯域で電波発射を行わない場合、DoA推定部6は、複数の端末9の端末DoAを推定可能である。TDMAやFDMAによる送信は、この一例である。この場合、無線信号に端末9の識別が設定されなくてもよい。FDMAの場合、各端末9は、同じ周波数帯の異なる周波数を用いて無線信号を送信する。パワーメータ5は、その周波数帯の信号の電力値を測定する。測定の結果、各端末9の端末DoAと近いDoAに対応したポート4の電力値にピークが出現する。よって、高い相関係数の電力パターン情報が端末9の数だけ得られる。また、FDMAの場合、パワーメータ5は、各端末9が使用する周波数毎に信号の電力値を測定してもよい。DoA推定部6は、周波数毎に、各ポート4の電力値を並べた情報と、各電力パターン情報との相関係数を算出した結果に基づいて、端末DoAを得る。
【0024】
なお、複数の端末9が同一タイミングに同一周波数帯域で電波発射を行った場合には、無線信号の一部が周波数振幅によって打ち消し合う可能性があるため、端末DoAの推定ができないことがある。これは、周波数振幅に基づいて電力値が測定される一方で、位相情報は利用されないことによる。また、張出局1と複数の端末9との同期が確立している場合は、各端末9を識別するコードが無線フレームに含まれていてもよい。この場合、DoA推定部6は、受信した無線フレームから取得した端末9のコードと、その端末9の端末DoAの推定結果と、時刻とを対応付けた情報を記憶部7に書き込んでもよい。
【0025】
張出局1は、速度推定部をさらに備えてもよい。速度推定部は、DoA推定部6による複数回の端末DoAの推定結果に基づいて、端末9の移動速度を推定する機能部である。例えば、速度推定部は、端末DoAの推定を行った時刻の差分と、推定された端末DoAの角度の差分とに基づいて、端末9の移動速度を推定する。なお、受信信号に端末9のコードが含まれている場合、速度推定部は、同じコードの端末9についてDoA推定部6が異なる時刻に推定した端末DoAを用いて移動速度を推定する。例えば、速度推定部は、同じコードの端末9の端末DoAの情報と、推定が行われた時刻の情報とを記憶部7から読み出して移動速度の推定に用いる。
【0026】
張出局1は、速度推定部により推定された端末9の速度に合わせて、図2に示すDoA推定処理の開始トリガー周期を調整してもよい。
【0027】
また、時間によってパワーを測定するポート4を切り替えてもよい。図4は、張出局1aの構成を示す図である。図4において、図1に示す張出局1と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。図4に示す張出局1aが、図1に示す張出局1と異なる点は、ビーム選択部8をさらに備える点である。ビーム選択部8は、バトラーマトリックス回路3のポート4を1ポートずつ切り替えて、ポート4から出力される受信信号をパワーメータ5へ送る。あるいは、ビーム選択部8は、複数のポート4の単位でパワーメータ5へ送る受信信号を切り替えてもよい。このように、パワーメータ5が同時に電力値の測定を行う信号の数を少なくすることができる。この場合、全てのポート4の電力値の測定を行うまでに、切り替え時間を余分に要することになる。また、ビーム選択部8は、バトラーマトリックス回路3のポート4のうち一部を任意に選択し、任意に選択したポート4から出力される受信信号のみをパワーメータ5へ送ってもよい。全てのポート4からの受信電力を用いる場合に対応する電力パターン情報に代えて、ビーム選択部8が任意に選択するバトラーマトリックス回路3のポート4からの受信電力を用いる場合に対応する電力パターン情報を記憶部7が保有することで、DoA推定部6が端末DoA推定を行う際の計算量を軽減することができる。例えば、端末9が高速で移動するために分解能を減らして端末DoA推定を行ってもよい場合に、ビーム選択部8を実装した張出局1aが用いられる。なお、ビーム選択部8を動作させる場合と、ビーム選択部8を動作させずに全てのポート4からの出力をパワーメータ5に送る場合とを切り替可能としてもよい。張出局1aの他の動作は、張出局1と同様である。
【0028】
上述した本実施形態の張出局は、以下の特徴を有する。すなわち、張出局は、CDMA、TDMA、FDMAなどの多元接続方式を問わず、端末DoAの推定が実施可能である。また、張出局は、バトラーマトリックス回路の全ポートから受信信号を一括して遅延なく取得し、その全て又は一部を端末DoAの推定に使用可能である。すなわち、バトラーマトリックス回路のスイッチングが不要のため、推定処理の高速化を図ることができる。また、端末が移動している場合であっても精度よく端末DoAの推定が可能である。加えて、張出局は、機械学習のような環境別の事前学習が不要でありながら、バトラーマトリックス回路のポート数(ビーム数)以上の分解能でDoA推定が可能である。さらには、NNのように、異なる無線伝搬環境ごとに設定を最適化する必要が無いことから、実運用への適用が容易である。
【0029】
以上説明した実施形態によれば、到来方向推定装置は、アンテナ部と、バトラーマトリックス回路と、電力測定部と、推定部とを備える。到来方向推定装置は、例えば、実施形態の張出局1、1aに対応する。アンテナ部は、複数のアンテナ素子を備える。バトラーマトリックス回路は、アンテナ部の複数のアンテナ素子それぞれが無線により受信した信号を入力し、入力した信号を到来方向(受信方向)毎に分離して各到来方向に対応する複数の出力ポートから出力する。出力ポートは、例えば、実施形態のポート4に対応する。電力測定部は、バトラーマトリックス回路の複数の出力ポートそれぞれから出力された信号の受信電力を測定する。電力測定部は、例えば、実施形態のパワーメータ5に対応する。推定部は、電力測定部により測定された複数の出力ポートそれぞれの受信電力と、到来方向ごとの電力パターンとの比較に基づいて信号の電波の到来方向を推定する。電力パターンは、複数の出力ポートそれぞれの受信電力を示す。推定部は、例えば、実施形態のDoA推定部6に対応する。
【0030】
推定部は、異なる時間において推定された到来方向に基づいて、信号を送信した装置の推定の移動速度を算出してもよい。この場合、推定部は、例えば、実施形態の速度推定部に対応する。
【0031】
到来方向推定装置は、選択部をさらに備えてもよい。選択部は、例えば、実施形態のビーム選択部8に対応する。選択部は、バトラーマトリックス回路の複数の出力ポートのうち一部の出力ポートを選択し、選択した出力ポートから出力された信号を電力測定部に出力する処理を、選択される出力ポートを切り替えながら行う。
【0032】
アンテナ部は、複数の端末から符号分割多元接続方式、時分割多元接続方式又は周波数分割多元接続方式により送信された無線の信号を受信する。また、アンテナ部は、リニアアレイアンテナ又は2次元アレイアンテナでもよい。
【0033】
上述した到来方向推定装置の推定部の機能をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、推定部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。コンピュータシステムは、例えば、プロセッサや、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。推定部のプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。到来方向推定装置の推定部のプログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0034】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明してきたが、上記実施の形態は本発明の例示に過ぎず、本発明が上記実施の形態に限定されるものではないことは明らかである。したがって、本発明の技術思想及び範囲を逸脱しない範囲で構成要素の追加、省略、置換、その他の変更を行ってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1、1a 張出局
2-1~2-N アンテナ
3 バトラーマトリックス回路
4-1~4-N ポート
5 パワーメータ
6 DoA推定部
7 記憶部
8 ビーム選択部
9 端末
図1
図2
図3
図4