(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027352
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】無線通信システム、メインローブ方向算出装置及びメインローブ方向算出方法
(51)【国際特許分類】
H04W 16/28 20090101AFI20240222BHJP
H04W 84/06 20090101ALI20240222BHJP
G01S 3/42 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
H04W16/28
H04W84/06
G01S3/42 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130086
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504193837
【氏名又は名称】国立大学法人室蘭工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加納 寿美
(72)【発明者】
【氏名】松井 宗大
(72)【発明者】
【氏名】阿部 順一
(72)【発明者】
【氏名】山下 史洋
(72)【発明者】
【氏名】上羽 正純
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA15
5K067DD42
5K067DD44
5K067EE02
5K067EE08
5K067EE10
5K067FF03
5K067HH22
5K067KK02
(57)【要約】
【課題】飛翔体と地上局との間で行う無線通信におけるメインローブの方向を効率的に算出する。
【解決手段】一実施形態にかかる無線通信システムは、順次に変更された指向性アンテナの仰角それぞれに対し、指向性アンテナが送信又は受信する電力が、予め定められた指向性アンテナのサイドローブに相当する電力を超える指向性アンテナの方位角の範囲を検出する範囲検出部と、範囲検出部が検出した指向性アンテナの仰角それぞれに対する方位角の範囲それぞれと、指向性アンテナの既知のアンテナパターンとに基づいて、指向性アンテナのメインローブの方向を示す仰角及び方位角を算出する算出部とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無指向性アンテナを備える地上局と、仰角及び方位角を変更可能にされた指向性アンテナを備えて前記無指向性アンテナからの距離が一定となる水平な円軌道上を飛行する飛翔体とが相互に無線通信を行う無線通信システムにおいて、
順次に変更された前記指向性アンテナの仰角それぞれに対し、前記指向性アンテナが送信又は受信する電力が、予め定められた前記指向性アンテナのサイドローブに相当する電力を超える前記指向性アンテナの方位角の範囲を検出する範囲検出部と、
前記範囲検出部が検出した前記指向性アンテナの仰角それぞれに対する方位角の範囲それぞれと、前記指向性アンテナの既知のアンテナパターンとに基づいて、前記指向性アンテナのメインローブの方向を示す仰角及び方位角を算出する算出部と
を有することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
予め設定された前記指向性アンテナの仰角及び方位角を、前記算出部が算出した仰角及び方位角に合わせるように、前記指向性アンテナの仰角及び方位角を補正する補正部をさらに有すること
を特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
無指向性アンテナを備える地上局に対し、前記無指向性アンテナからの距離が一定となる水平な円軌道上を飛行して無線通信を行う飛翔体が備える仰角及び方位角を変更可能にされた指向性アンテナのメインローブ方向を算出するメインローブ方向算出装置において、
順次に変更された前記指向性アンテナの仰角それぞれに対し、前記指向性アンテナが送信又は受信する電力が、予め定められた前記指向性アンテナのサイドローブに相当する電力を超える前記指向性アンテナの方位角の範囲を検出する範囲検出部と、
前記範囲検出部が検出した前記指向性アンテナの仰角それぞれに対する方位角の範囲それぞれと、前記指向性アンテナの既知のアンテナパターンとに基づいて、前記指向性アンテナのメインローブの方向を示す仰角及び方位角を算出する算出部と
を有することを特徴とするメインローブ方向算出装置。
【請求項4】
予め設定された前記指向性アンテナの仰角及び方位角を、前記算出部が算出した仰角及び方位角に合わせるように、前記指向性アンテナの仰角及び方位角を補正する補正部をさらに有すること
を特徴とする請求項3に記載のメインローブ方向算出装置。
【請求項5】
無指向性アンテナを備える地上局に対し、前記無指向性アンテナからの距離が一定となる水平な円軌道上を飛行して無線通信を行う飛翔体が備える仰角及び方位角を変更可能にされた指向性アンテナのメインローブ方向を算出するメインローブ方向算出方法において、
順次に変更された前記指向性アンテナの仰角それぞれに対し、前記指向性アンテナが送信又は受信する電力が、予め定められた前記指向性アンテナのサイドローブに相当する電力を超える前記指向性アンテナの方位角の範囲を検出する工程と、
検出した前記指向性アンテナの仰角それぞれに対する方位角の範囲それぞれと、前記指向性アンテナの既知のアンテナパターンとに基づいて、前記指向性アンテナのメインローブの方向を示す仰角及び方位角を算出する工程と
を含むことを特徴とするメインローブ方向算出方法。
【請求項6】
予め設定された前記指向性アンテナの仰角及び方位角と、算出した仰角及び方位角との差を算出する工程をさらに含むこと
を特徴とする請求項5に記載のメインローブ方向算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、メインローブ方向算出装置及びメインローブ方向算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)を用いた高高度擬似衛星(HAPS:High Altitude Platform Station、又はHigh Altitude Pseudo Satellite)などの飛行体(飛翔体)を媒体とする無線通信システムが検討されている。
【0003】
この種の無線通信システムでは、端末などの無線機は、飛翔体を経由して地上基地局(地上局)に接続し、ネットワークに接続する。このとき、飛翔体は、端末と地上基地局との間の媒体として通信のリレーを行う。つまり、当該無線通信システムには、地上基地局の設置が困難な海洋や山岳などにおいても通信サービスの提供を可能にするという利点がある。
【0004】
また、飛翔体を媒体とする無線通信システムでは、アンテナからのビーム方向を高精度に設定することが望ましい。
【0005】
例えば、飛翔体としての衛星が搭載するアンテナのアンテナパターンを短時間で測定するために、複数地点でのアンテナパターンを同時測定し、測定誤差を補正する方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】鈴木義規、外2名、「Short Time Measuring Method of Onboard Antenna Pattern and In-Orbit Test Results of Beam Forming Network on Engineering Test Satellite VIII」、電子情報通信学会論文誌、安心・安全な社会を支える衛星通信とその応用技術論文特集、2008年、B Vol.J91-B、No.12、pp.1569-1577
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
指向させるアンテナの主ビーム(メインローブ)方向は、指向させるアンテナのジンバルへの取り付け角誤差や、ジンバルの飛翔体への取り付け角誤差により、仰角・方位角共に設計した方向からずれることがある。
【0008】
アンテナの主ビームを高精度で設定するためには、アンテナを指向させるためのジンバルを制御し、予め定められた細かい角度幅で仰角及び方位角を変更して所定の範囲を走査したときの受信電力を測定することが一般的である。
【0009】
しかしながら、上述した方法では、所定の範囲の走査に多くの時間がかかってしまうという問題があった。
【0010】
本発明は、飛翔体と地上局との間で行う無線通信におけるメインローブの方向を効率的に算出することができる無線通信システム、メインローブ方向算出装置及びメインローブ方向算出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様にかかる無線通信システムは、無指向性アンテナを備える地上局と、仰角及び方位角を変更可能にされた指向性アンテナを備えて前記無指向性アンテナからの距離が一定となる水平な円軌道上を飛行する飛翔体とが相互に無線通信を行う無線通信システムにおいて、順次に変更された前記指向性アンテナの仰角それぞれに対し、前記指向性アンテナが送信又は受信する電力が、予め定められた前記指向性アンテナのサイドローブに相当する電力を超える前記指向性アンテナの方位角の範囲を検出する範囲検出部と、前記範囲検出部が検出した前記指向性アンテナの仰角それぞれに対する方位角の範囲それぞれと、前記指向性アンテナの既知のアンテナパターンとに基づいて、前記指向性アンテナのメインローブの方向を示す仰角及び方位角を算出する算出部とを有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様にかかるメインローブ方向算出装置は、無指向性アンテナを備える地上局に対し、前記無指向性アンテナからの距離が一定となる水平な円軌道上を飛行して無線通信を行う飛翔体が備える仰角及び方位角を変更可能にされた指向性アンテナのメインローブ方向を算出するメインローブ方向算出装置において、順次に変更された前記指向性アンテナの仰角それぞれに対し、前記指向性アンテナが送信又は受信する電力が、予め定められた前記指向性アンテナのサイドローブに相当する電力を超える前記指向性アンテナの方位角の範囲を検出する範囲検出部と、前記範囲検出部が検出した前記指向性アンテナの仰角それぞれに対する方位角の範囲それぞれと、前記指向性アンテナの既知のアンテナパターンとに基づいて、前記指向性アンテナのメインローブの方向を示す仰角及び方位角を算出する算出部とを有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一態様にかかるメインローブ方向算出方法は、無指向性アンテナを備える地上局に対し、前記無指向性アンテナからの距離が一定となる水平な円軌道上を飛行して無線通信を行う飛翔体が備える仰角及び方位角を変更可能にされた指向性アンテナのメインローブ方向を算出するメインローブ方向算出方法において、順次に変更された前記指向性アンテナの仰角それぞれに対し、前記指向性アンテナが送信又は受信する電力が、予め定められた前記指向性アンテナのサイドローブに相当する電力を超える前記指向性アンテナの方位角の範囲を検出する工程と、検出した前記指向性アンテナの仰角それぞれに対する方位角の範囲それぞれと、前記指向性アンテナの既知のアンテナパターンとに基づいて、前記指向性アンテナのメインローブの方向を示す仰角及び方位角を算出する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、飛翔体と地上局との間で行う無線通信におけるメインローブの方向を効率的に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態にかかる無線通信システムの構成を例示する図である。
【
図2】(a)は、飛翔体の軌道を上方から見た場合の飛翔体が送出する電波と、アンテナとの位置関係を模式的に示す図である。(b)は、飛翔体の軌道を側方から見た場合の飛翔体が送出する電波と、アンテナとの位置関係を模式的に示す図である。
【
図3】範囲検出部が、指向性アンテナの仰角それぞれに対し、指向性アンテナのサイドローブに相当する電力を超える指向性アンテナの方位角の範囲を検出する動作を模式的に示す図である。
【
図4】メインローブ及びサイドローブの電力に対する閾値電力(閾値Pth)の大きさを例示する図である。
【
図5】算出部がメインローブの方向を示す仰角及び方位角を算出する方法を模式的に示す図である。
【
図6】無線通信システムを用いたメインローブ方向の算出方法を例示するフローチャートである。
【
図8】地上局と無線通信を行う飛翔体を正面から見た状態を示す図である。
【
図9】無線通信システムにおいて、飛翔体と地上局との間で行う無線通信におけるメインローブの方向を算出する方法を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、本発明がなされるに至った背景について、より具体的に説明する。
図7は、無線通信システム1の構成例を示す図である。無線通信システム1は、飛翔体(飛行体)20を介して端末(又は移動局)3が地上局(地上基地局)4に接続されている。なお、地上局4は、インターネットなどのネットワーク5に接続されている。
【0017】
飛翔体20は、例えば固定翼型の無人航空機(UAV)などであり、端末3と地上局4との間でリレー通信を行い、地上局4を介してネットワーク5に常時接続されている。なお、飛翔体20は、衛星などと通信を行うものであってもよい。
【0018】
そして、飛翔体20は、機体の下部等に指向性アンテナ(
図8参照)を備え、端末3及び地上局4に対して電波を向けることにより、端末3及び地上局4それぞれとの間で通信リンクを張る。
【0019】
図8は、地上局4と無線通信を行う飛翔体20を正面から見た状態を示す図である。飛翔体20は、例えば垂直尾翼6、翼7、及び指向性アンテナ8を備え、当該飛翔体20よりも下方に位置する地上局4などに向けて指向性アンテナ8が電波を発射することにより、地上局4などと通信リンクを張る。指向性アンテナ8は、例えば飛翔体20の機体の下部に配置されている。
【0020】
また、指向性アンテナ8は、例えば2軸シンバルにより仰角及び方位角を制御可能にされている。また、指向性アンテナ8は、2軸ジンバルに取り付けられた角度測定器(図示せず)によって基準点からの仰角及び方位角を測定可能にされており、測定された仰角及び方位角を示す情報を送信可能にされている。また、指向性アンテナ8は、後述するコマンド信号などにより、仰角及び方位角を制御可能にされている。
【0021】
飛翔体20は、端末3と地上局4との間でリレー通信を行うため、端末3及び地上局4それぞれと通信リンクを張ることが可能である空中の領域に留まる必要がある。そこで、飛翔体20のような固定翼型の飛行体は、空中を旋回することにより、端末3及び地上局4それぞれと通信リンクを張ることが可能である空中の領域に留まる。
【0022】
図9は、無線通信システム1において、飛翔体20と地上局4との間で行う無線通信におけるメインローブの方向を算出する方法を模式的に示す図である。
【0023】
飛翔体20に設けられた指向させるアンテナの主ビーム方向は、指向させるアンテナのジンバルへの取り付け角の誤差や、ジンバルの飛翔体20への取り付け角の誤差により、仰角及び方位角共に設計された方向に対してずれることがある。
【0024】
飛翔体20と地上局4との間で行う無線通信におけるメインローブの方向を高精度で算出するためには、アンテナを指向させるためのジンバルを制御して、
図9に示したように予め定められた細かい角度幅で仰角及び方位角を順次に変更し、所定の範囲で走査したときの受信電力を測定する。
【0025】
メインローブの方向が設計された方向に対してずれている場合には、無線通信システム1は、メインローブの補正すべき角度を飛翔体20に対してフィードバックし、飛翔体20のアンテナ角度を補正する。
【0026】
図1は、一実施形態にかかる無線通信システム10の構成を例示する図である。
図1に示すように、一実施形態にかかる無線通信システム10は、飛翔体(飛行体)20と、メインローブ方向算出装置30とを有する。
【0027】
飛翔体20は、機体の下部等に指向性アンテナ(
図8参照)を備え、上空を旋回しながら、メインローブ方向算出装置30に接続されたアンテナ41,42に対して電波を向けることにより、メインローブ方向算出装置30との間で通信リンクを張る。例えば、飛翔体20は、仰角及び方位角を変更可能にされた指向性アンテナ8を備えてアンテナ41からの距離が一定となる水平な円軌道上を飛行する。
【0028】
アンテナ41は、例えば中継回線(ミリ波帯)用の棒状アンテナ(無指向性アンテナ)であり、メインローブ方向算出装置30が中継回線により送信する電波を受信する。受信機51は、アンテナ41を介して受信した電波の受信電力を測定し、測定した受信電力をメインローブ方向算出装置30に対して出力する。
【0029】
アンテナ42は、例えば169MHz帯のTT&C回線用の棒状アンテナ(無指向性アンテナ)であり、メインローブ方向算出装置30がTT&C回線により送受信するテレメトリ信号及びコマンド信号の電波を送受信する。受信機52は、アンテナ42を介して受信した電波から、飛翔体20に設けられた指向性アンテナ8の仰角及び方位角を取得し、取得した仰角及び方位角をメインローブ方向算出装置30に対して出力する。
【0030】
なお、
図1に示した飛翔体20は、
図7,8を用いて説明した飛翔体20と実質的に同一であるとする。また、メインローブ方向算出装置30は、例えば
図7に示した地上局4の内部に設けられ、図示しない送信機を介して飛翔体20に電波を送信し、飛翔体20の各部を制御可能にされている。
【0031】
図2は、飛翔体20が送出する電波と、アンテナ41及びアンテナ42との位置関係を模式的に示す図である。
図2(a)は、飛翔体20の軌道を上方から見た場合の飛翔体20が送出する電波と、アンテナ41及びアンテナ42との位置関係を模式的に示す図である。
図2(b)は、飛翔体20の軌道を側方から見た場合の飛翔体20が送出する電波と、アンテナ41及びアンテナ42との位置関係を模式的に示す図である。
【0032】
飛翔体20は、アンテナ41(及びアンテナ42)を中心として、半径Rの円軌道上を飛行する。しかし、飛翔体20に設けられた指向性アンテナ8は、メインローブの方向が設計値に対して方位角方向及び仰角方向にずれることがある。
【0033】
メインローブ方向算出装置30(
図1)は、上述したように例えば地上局4の内部に設けられ、記憶部31、範囲検出部32、算出部33及び補正部34を有する。
【0034】
記憶部31は、閾値電力値(Pth)310及びアンテナパターン312などを記憶する。閾値電力値310は、飛翔体20の旋回半径及び高度により定まる距離に応じた伝搬損失、アンテナ41のサイドロープを超えるアンテナゲイン、並びに指向性アンテナ8からの送信出力などによって予め定められている。アンテナパターン312は、アンテナ41のビーム幅を含むアンテナパターンを示す情報であり、予め定め設定されている。
【0035】
範囲検出部32は、順次に変更された指向性アンテナ8の仰角それぞれに対し、指向性アンテナ8が送信又は受信する電力が、予め定められた指向性アンテナ8のサイドローブに相当する電力を超える指向性アンテナ8の方位角の範囲を検出し、算出部33に対して出力する。
【0036】
図3は、範囲検出部32が、指向性アンテナ8の仰角それぞれに対し、指向性アンテナ8のサイドローブに相当する電力を超える指向性アンテナ8の方位角の範囲を検出する動作を模式的に示す図である。
【0037】
メインローブ方向算出装置30は、指向性アンテナ8の仰角をある角度に固定した状態において、指向性アンテナ8を方位角方向(開始方位角~終了方位角)まで走査させつつ、受信電力を取得する。メインローブ方向算出装置30は、指向性アンテナ8を方位角方向(開始方位角~終了方位角)まで走査させ終えると、仰角を予め定められた幅で変更し、さらに指向性アンテナ8を方位角方向(開始方位角~終了方位角)まで走査させつつ、受信電力を取得する。
【0038】
例えば、範囲検出部32は、メインローブが存在する大まかな位置を検出するために、受信電力が閾値電力Pthを超えるまで、仰角の角度を予め定められた角度dθだけ増加させながら方位角方向に走査を行う。角度dθは、アンテナパターンにおいて、メインローブゲインからサイドローブゲインに到達するまでのビーム幅角度2Φの2分の1以下とする。
【0039】
図4は、メインローブ及びサイドローブの電力に対する閾値電力(閾値Pth)の大きさを例示する図である。
図4に示すように、閾値Pthは、サイドローブよりも大きい。例えば、範囲検出部32は、受信電力を閾値電力値310(閾値Pth)と比較し、受信電力が閾値Pthを超える範囲を検出するので、サイドローブの電力は閾値電力以下となり、メインローブによる電力のみの範囲を検出することができる。
【0040】
算出部33(
図1)は、範囲検出部32が検出した指向性アンテナ8の仰角それぞれに対する方位角の範囲それぞれと、指向性アンテナ8の既知のアンテナパターン(アンテナパターン312)とに基づいて、指向性アンテナ8のメインローブの方向を示す仰角及び方位角を算出する。
【0041】
図5は、算出部33がメインローブの方向を示す仰角及び方位角を算出する方法を模式的に示す図である。
図5において、横軸は方位角方向の角度を示し、縦軸は仰角方向の角度を示す。
【0042】
算出部33は、メインローブのゲインが閾値Pthを超える所定値となる方向をプロットした曲線(メインローブの裾野)が、メインローブの方向を中心とする真円と見なせる場合には、走査により受信電力がPthを超えた時の仰角角度をθ1とする。
【0043】
また、算出部33は、仰角角度θ1での走査中に最初に閾値Pthを超えたときの方位角角度をψ1とし、閾値Pthを超えた後、最初に閾値Pthを下回ったときの方位角角度をψ2とする。
【0044】
そして、算出部33は、メインローブの方向となる仰角を下式(1)、(2)を用いて算出し、方位角を下式(3)を用いて算出する。
【0045】
【0046】
閾値Pthを超える所定値となる方向をプロットした曲線(メインローブの裾野)が、メインローブの方向を中心とする真円と見なせない楕円又はその他の幾何学形状である場合には、算出部33は、当該幾何学形状を表す方程式に基づいてメインローブの方向を算出する。
【0047】
補正部34は、予め設定された指向性アンテナ8の仰角及び方位角(例えば指向性アンテナ8の設計上の仰角及び方位角)を、算出部33が算出した仰角及び方位角に合わせるように、指向性アンテナ8の仰角及び方位角を補正する。例えば、補正部34は、指向性アンテナ8の仰角及び方位角の設計値に対する算出値の差を算出し、算出した差を補正値とする。当該補正値がメインローブ方向算出装置30(又は地上局4)から飛翔体20へ送信(フィードバック)されると、飛翔体20は、指向性アンテナ8の仰角及び方位角を修正する。
【0048】
次に、無線通信システム10を用いたメインローブ方向の算出方法について説明する。
図6は、無線通信システム10を用いたメインローブ方向の算出方法を例示するフローチャートである。
図6に示すように、まず、アンテナ41を中心として一定半径Rで飛翔体20を旋回飛行させる(S100)。
【0049】
次に、メインローブ方向算出装置30は、飛翔体20の指向性アンテナ8に対する走査のために、仰角の初期値、方位角の開始角度及び方位角の終了角度を設定する(S102)。
【0050】
メインローブ方向算出装置30は、設定仰角で方位角方向に走査して受信電力Pを測定する(S104)。
【0051】
メインローブ方向算出装置30は、受信電力Pが閾値Pthよりも大きいか否かを判定し、大きい場合(S106:Yes)にはS110の処理に進み、その他の場合(S106:No)にはS108の処理進む(S106)。
【0052】
メインローブ方向算出装置30は、仰角を変更(変更幅dθ)し、S104の処理に戻る(S108)。
【0053】
そして、メインローブ方向算出装置30は、受信電力が閾値Pthよりも大きいときの方位角、その後に受信電力が閾値Pth以下となったときの方位角、このときの仰角、及び、既知のアンテナパターンに基づいて、主ビーム(メインローブ)方向を示す仰角及び方位角を算出する(S110)。
【0054】
このように、無線通信システム10は、順次に変更された指向性アンテナ8の仰角それぞれに対し、指向性アンテナ8が送信(又は受信)する電力が、予め定められた指向性アンテナ8のサイドローブに相当する電力を超える指向性アンテナ8の方位角の範囲を検出し、検出した指向性アンテナ8の仰角それぞれに対する方位角の範囲それぞれと、指向性アンテナ8の既知のアンテナパターンとに基づいて、指向性アンテナ8のメインローブの方向を示す仰角及び方位角を算出する。
【0055】
よって、無線通信システム10は、仰角及び方位角方向の走査回数を削減させ、走査時間を短縮させて、飛翔体20と地上局4(メインローブ方向算出装置30)との間で行う無線通信におけるメインローブの方向を効率的に算出することができる。
【0056】
なお、メインローブ方向算出装置30が有する各機能は、それぞれ一部又は全部がハードウェアによって構成されてもよいし、CPU等のプロセッサが実行するプログラムとして構成されてもよい。
【0057】
すなわち、メインローブ方向算出装置30は、コンピュータとプログラムを用いて実現することができ、プログラムを記憶媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【符号の説明】
【0058】
1,10・・・無線通信システム、3・・・端末、4・・・地上局、8・・・指向性アンテナ、20・・・飛翔体(飛行体)、30・・・メインローブ方向算出装置、31・・・記憶部、32・・・範囲検出部、33・・・算出部、34・・・補正部、41,42・・・アンテナ、51,52・・・受信機、310・・・閾値電力値、312・・・アンテナパターン