(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027368
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】受信装置、領域分割装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 27/00 20060101AFI20240222BHJP
H03M 13/19 20060101ALI20240222BHJP
H04L 27/38 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
H04L27/00 B
H03M13/19
H04L27/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130112
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100163511
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 啓太
(72)【発明者】
【氏名】島▲崎▼ 智拓
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 敬文
(72)【発明者】
【氏名】中川 孝之
【テーマコード(参考)】
5J065
【Fターム(参考)】
5J065AB03
5J065AC02
5J065AD07
5J065AE06
5J065AF03
5J065AG05
(57)【要約】
【課題】不均一コンスタレーションを適用した場合にも、LLRの計算量の低減を図る。
【解決手段】受信装置10は、不均一コンスタレーション上にマッピングされた、所定の変調方式により変調された信号を受信する受信装置であって、IQ平面を複数の領域に分割する領域分割部11と、複数の領域それぞれについて、当該領域に含まれる受信信号点との2乗ユークリッド距離の計算が必要なマッピング点を記憶する記憶部12と、複数の領域のうち、受信信号点が含まれる領域を判定する領域判定部13と、受信信号点を含むと判定された領域について記憶部12に記憶されているマッピング点ごとに2乗ユークリッド距離を計算し、計算した2乗ユークリッド距離に基づき、受信信号点のビットごとのLLRを計算するLLR計算部14と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IQ平面においてマッピング点が2次元的に不均一に配置された不均一コンスタレーション上にマッピングされた、所定の変調方式により変調された信号を受信する受信装置であって、
前記IQ平面を複数の領域に分割する領域分割部と、
前記複数の領域それぞれについて、当該領域に含まれる受信信号点との2乗ユークリッド距離の計算が必要なマッピング点を記憶する記憶部と、
前記複数の領域のうち、受信信号点が含まれる領域を判定する領域判定部と、
前記受信信号点を含むと判定された領域について前記記憶部に記憶されているマッピング点ごとに2乗ユークリッド距離を計算し、前記計算した2乗ユークリッド距離に基づき、前記受信信号点のビットごとの対数尤度比(LLR)を計算するLLR計算部と、を備える受信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の受信装置において、
前記記憶部は、前記複数の領域それぞれについて、前記受信信号点を構成するビットごとに、前記2乗ユークリッド距離の最小値探索が必要なマッピング点をさらに記憶し、
前記LLR計算部は、前記受信信号点を構成するビットごとに、前記受信信号点を含むと判定された領域について前記記憶部に記憶されているマッピング点のうち、前記2乗ユークリッド距離の最小値探索が必要であると前記記憶部に記憶されているマッピング点について計算した2乗ユークリッド距離の中で最小値探索を行い、前記最小値探索の結果に基づき前記LLRを計算する、受信装置。
【請求項3】
請求項1に記載の受信装置において、
前記領域分割部は、円、直線、楕円または隣り合うマッピング点の中点の近似曲線により、前記IQ平面を複数の領域に分割する、受信装置。
【請求項4】
請求項1に記載の受信装置において、
前記領域分割部は、各領域に含まれるマッピング点の数が均等になるように、前記IQ平面を複数の領域に分割する、受信装置。
【請求項5】
マッピング点が2次元的に不均一に配置された不均一コンスタレーション上にマッピングされたIQ平面を複数の領域に分割する領域分割装置であって、
前記IQ平面を複数の領域に分割する領域分割部と、
前記複数の領域それぞれについて、当該領域に含まれる受信信号点との2乗ユークリッド距離の計算が必要なマッピング点を記憶する記憶部と、を備える領域分割装置。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1に記載の受信装置として動作させるプログラム。
【請求項7】
コンピュータを、請求項5に記載の領域分割装置として動作させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置、領域分割装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
地上放送高度化方式あるいは地上放送高度化方式に対応したSTL(Studio to Transmitter Link)/TTL(Transmitter to Transmitter Link)伝送方式には、多値直交振幅変調(QAM(Quadrature Amplitude Modulation))OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)、およびLDPC(Low Density Parity Check:低密度パリティ検査)を使用することが想定されている。これらの伝送方式では、直交振幅変調されたシンボルのマッピング点間の距離を不均一にする不均一コンスタレーション(NUC:Non-Uniform Constellation)の技術を導入し、所要C/Nの低減が図られている。NUCは、変調多値数によって、一次元的にマッピング点が不均一な1次元NUCと、2次元的にマッピング点が不均一な2次元NUCとを適用することが検討されている。
【0003】
受信装置において、LDPC符号を復号する処理を行う場合、LDPC復号器への入力である軟判定情報として、対数尤度比(LLR:Log-Likelihood Ratio)が用いられる。LLRは1つのマッピング点に割り当てられたビット(64QAMであれば6bit)ごとに計算が必要であり、受信信号点(シンボル)に対して、すべてのマッピング点(64QAMであれば64点)との2乗ユークリッド距離を算出することで導出が可能となる。しかしながら、変調多値数が増加すると、2乗ユークリッド距離の計算量が増加し、回路実装の際に、回路リソースの枯渇が問題となる場合がある。LLRの計算量低減のために、特許文献1には、マッピング点間の距離が均一な均一コンスタレーション(UC:Uniform Constellation)において、受信信号点が含まれるIQ平面上の領域に応じた計算式を用いてLLRを計算する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、NUCではマッピング点の配置が不均一であるため、特許文献1に記載の技術を適用することは困難である。そのため、IQ平面においてマッピング点が2次元的に不均一に配置されたNUCを適用した場合にも、LLRの計算量の低減を図ることが求められている。
【0006】
本発明の目的は、上述した課題を解決し、IQ平面においてマッピング点が2次元的に不均一に配置されたNUCを適用した場合にも、LLRの計算量の低減を図ることができる受信装置、領域分割装置およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示に係るに係る受信装置は、IQ平面においてマッピング点が2次元的に不均一に配置された不均一コンスタレーション上にマッピングされた、所定の変調方式により変調された信号を受信する受信装置であって、前記IQ平面を複数の領域に分割する領域分割部と、前記複数の領域それぞれについて、当該領域に含まれる受信信号点との2乗ユークリッド距離の計算が必要なマッピング点を記憶する記憶部と、前記複数の領域のうち、受信信号点が含まれる領域を判定する領域判定部と、前記受信信号点を含むと判定された領域について前記記憶部に記憶されているマッピング点ごとに2乗ユークリッド距離を計算し、前記計算した2乗ユークリッド距離に基づき、前記受信信号点のビットごとの対数尤度比(LLR)を計算するLLR計算部と、を備える。
【0008】
(2) (1)に記載の受信装置において、前記記憶部は、前記複数の領域それぞれについて、前記受信信号点を構成するビットごとに、前記2乗ユークリッド距離の最小値探索が必要なマッピング点をさらに記憶し、前記LLR計算部は、前記受信信号点を構成するビットごとに、前記受信信号点を含むと判定された領域について前記記憶部に記憶されているマッピング点のうち、前記2乗ユークリッド距離の最小値探索が必要であると前記記憶部に記憶されているマッピング点について計算した2乗ユークリッド距離の中で最小値探索を行い、前記最小値探索の結果に基づき前記LLRを計算する。
【0009】
(3) (1)または(2)に記載の受信装置において、前記領域分割部は、円、直線、楕円または隣り合うマッピング点の中点の近似曲線により、前記IQ平面を複数の領域に分割する。
【0010】
(4) (1)から(3)のいずれかに記載の受信装置において、前記領域分割部は、各領域に含まれるマッピング点の数が均等になるように、前記IQ平面を複数の領域に分割する。
【0011】
(5)本開示に係る領域分割装置は、マッピング点が2次元的に不均一に配置された不均一コンスタレーション上にマッピングされたIQ平面を複数の領域に分割する領域分割装置であって、前記IQ平面を複数の領域に分割する領域分割部と、前記複数の領域それぞれについて、当該領域に含まれる受信信号点との2乗ユークリッド距離の計算が必要なマッピング点を記憶する記憶部と、を備える。
【0012】
(6)本開示に係るプログラムは、コンピュータを、(1)から(4)のいずれかの受信装置として動作させる。
【0013】
(7)本開示に係るプログラムは、コンピュータを、(5)に記載の領域分割装置として動作させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る受信装置、送信システムおよびプログラムによれば、IQ平面においてマッピング点が2次元的に不均一に配置されたNUCを適用した場合にも、LLRの計算量の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の一実施形態に係る受信装置の構成例を示す図である。
【
図3A】
図1に示す領域分割部によるIQ平面の分割の一例を示す図である。
【
図3B】
図1に示す領域分割部によるIQ平面の分割の別の一例を示す図である。
【
図3C】
図1に示す領域分割部によるIQ平面の分割のさらに別の一例を示す図である。
【
図4A】
図1に示す領域分割部が作成する2乗ユークリッド距離計算候補テーブルの一例を示す図である。
【
図4B】
図1に示す領域分割部が作成する最小値探索候補テーブルの一例を示す図である。
【
図5】
図1に示す領域判定部による受信信号点を含む領域の判定について説明するための図である。
【
図6】
図1に示す領域判定部による、象限対象を利用した受信信号点の移動について説明するための図である。
【
図7】
図1に示すLLR計算部による2乗ユークリッド距離の計算の対象となるマッピング点の一例を示す図である。
【
図8A】
図1に示すLLR計算部による、ビットb0についての最小値探索の対象を示す図である。
【
図8B】
図1に示すLLR計算部による、ビットb1についての最小値探索の対象を示す図である。
【
図8C】
図1に示すLLR計算部による、ビットb2についての最小値探索の対象を示す図である。
【
図8D】
図1に示すLLR計算部による、ビットb3についての最小値探索の対象を示す図である。
【
図8E】
図1に示すLLR計算部による、ビットb4についての最小値探索の対象を示す図である。
【
図8F】
図1に示すLLR計算部による、ビットb5についての最小値探索の対象を示す図である。
【
図9A】
図1に示す受信装置における、変調方式が64QAMである場合の、2乗ユークリッド距離の計算量の一例を示す図である。
【
図9B】
図1に示す受信装置における、変調方式が256QAMである場合の、2乗ユークリッド距離の計算量の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本開示の一実施形態に係る受信装置10の構成例を示す図である。本実施形態に係る受信装置10は、IQ平面においてマッピング点が2次元的に不均一に配置された不均一コンスタレーション(NUC)上にマッピングされた、所定の変調方式により変調された信号を受信する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る受信装置10は、領域分割部11と、記憶部12と、領域判定部13と、LLR計算部14とを備える。領域分割部11および記憶部12は、領域分割装置20を構成する。なお、本実施形態においては、領域分割装置20が受信装置10に含まれる例を用いて説明するが、これに限られるものではなく、領域分割装置20は独立した装置として設けられてもよい。
【0019】
領域分割部11は、IQ平面上のマッピング点の配置(コンスタレーションマッピング)と、IQ平面の分割に関する設定とが入力される。上述したように、本実施形態においては、IQ平面においてマッピング点が2次元的に不均一に配置された不均一コンスタレーション(NUC)が用いられる。NUCでは、マッピング点の配置は、変調多値数および符号化率によって異なる。領域分割部11には、用いられる変調多値数および符号化率に応じたマッピング点の配置を示すコンスタレーションマッピングが入力される。また、IQ平面の分割に関する設定としては、例えば、IQ平面を分割する分割数、および、領域を区画する線の種別(円、直線など)が入力される。
【0020】
領域分割部11は、入力されたIQ平面の分割に関する設定に従って、IQ平面を複数の領域に分割する。ここで、領域分割部11は、各領域に含まれるマッピング点の数が概ね均等となるように、IQ平面を複数の領域に分割する。領域分割部11は、IQ平面の分割の仕方を示す領域分割情報を領域判定部13に出力する。
【0021】
また、領域分割部11は、入力されたコンスタレーションマッピングに基づき、複数の領域それぞれについて、当該領域に含まれる受信信号点との2乗ユークリッド距離の計算が必要なマッピング点(受信信号点との2乗ユークリッド距離が最小となる可能性があるマッピング点)を特定する。そして、領域分割部11は、複数の領域それぞれについて特定した、当該領域に含まれる受信信号点との2乗ユークリッド距離の計算が必要なマッピング点を示す2乗ユークリッド距離計算候補テーブルを作成し、記憶部12に記憶させる。
【0022】
また、領域分割部11は、入力されたコンスタレーションマッピングに基づき、複数の領域それぞれについて、受信信号点のビットごとに、2乗ユークリッド距離の最小値探索が必要なマッピング点(受信信号点の一のビットと、対応するビットとの2乗ユークリッド距離が最小となる可能性があるマッピング点)を特定する。そして、領域分割部11は、複数の領域それぞれについて、受信信号点のビットごとに特定した、2乗ユークリッド距離の最小値探索が必要なマッピング点を示す最小値探索候補テーブルを作成し、記憶部12に記憶させる。
【0023】
記憶部12は、領域分割部11により作成された2乗ユークリッド距離計算候補テーブルおよび最小値探索候補テーブルを記憶する。すなわち、記憶部12は、複数の領域それぞれについて、当該領域に含まれる受信信号点との2乗ユークリッド距離の計算が必要なマッピング点を記憶する。また、記憶部12は、複数の領域それぞれについて、受信信号点を構成するビットごとに、2乗ユークリッド距離の最小値探索が必要なマッピング点を記憶する。
【0024】
領域判定部13は、受信装置10で受信された、等価後の受信信号点が入力される。領域判定部13は、領域分割部11から出力された領域分割情報と、受信信号点の位相および振幅とに基づき、受信信号点が含まれる領域を特定する。領域判定部13は、IQ平面上での受信信号点の座標と、受信信号が含まれる領域の判定結果とをLLR計算部14に出力する。
【0025】
LLR計算部14は、領域判定部13により受信信号点を含むと判定された領域について、記憶部12の2乗ユークリッド距離計算候補テーブルに記憶されているマッピング点ごとに2乗ユークリッド距離を計算する。そして、LLR計算部14は、計算した2乗ユークリッド距離に基づき、受信信号点のビットごとの対数尤度比(LLR)を計算する。具体的には、LLR計算部14は、以下の式(1)に基づき、受信信号点r(x,y)のビットごとのLLR(L(b))を計算する。
【0026】
【0027】
【0028】
LLR計算部14は、受信信号点のビットごとのLLRの計算結果を、
図1においては不図示のLDPC復号器に出力する。
【0029】
本実施形態に係る受信装置10の動作についてより詳細に説明する。
【0030】
図2は、NUCの一例を示す図である。
図2においては、変調方式が64QAMであり、符号化率が12/16である場合のマッピング点の配置の例を示している。
図2に示すように、マッピング点が2次元的に(I軸方向およびQ軸方向)に不均一に配置されている。マッピング点の配置は、変調方式および符号化率によって異なる。なお、
図2においては主に、第1象限のマッピング点の配置を示している。
【0031】
まず、領域分割部11の動作について説明する。
【0032】
領域分割部11は、
図2に示すような、マッピング点が2次元的に不均一に配置されたIQ平面を、入力されたIQ平面の分割に関する設定に従って、複数の領域に分割する。
図3A~
図3Cは、領域分割部11によるIQ平面の分割の一例を示す図である。
図3A~
図3Cにおいては、変調方式が64QAMであり、符号化率が12/16である場合の、IQ平面の分割の例を示している。なお、詳細は後述するが、領域判定部13は、受信信号点が第1象限にない場合、象限対象を利用して、受信信号点を第1象限に移動させた上で、受信信号点が含まれる領域を判定する。したがって、
図3A~
図3Cにおいては、第1象限の分割例を示している。
【0033】
領域分割部11は、例えば、
図3Aに示すように、直線と円とを用いて、IQ平面(の第1象限)を4つの領域AREA1~4に分割する。具体的には、領域分割部11は、領域と領域との境界となるマッピング点同士の中点を基準とし原点を通る直線と、原点を中心とする円とで、IQ平面を4つの領域AREA1~4に分割する。
【0034】
また、領域分割部11は、例えば、
図3Bに示すように、直線と楕円とを用いて、IQ平面(の第1象限)を4つの領域AREA1~4に分割する。具体的には、領域分割部11は、領域と領域との境界となるマッピング点同士の中点を基準とし原点を通る直線と、原点を中心とする楕円とで、IQ平面を4つの領域AREA1~4に分割する。
【0035】
また、領域分割部11は、例えば、
図3Cに示すように、隣り合うマッピング点の中点の近似曲線を用いて、IQ平面(の第1象限)を4つの領域AREA1~4に分割する。具体的には、領域分割部11は、領域と領域との境界となるマッピング点同士の中点を基準とし、2本の近似曲線で、IQ平面を4つの領域AREA1~4に分割する。
【0036】
このように、領域分割部11は、円、直線、楕円または隣り合うマッピング点の中点の近似曲線により、各領域に含まれるマッピング点の数が概ね均等となるように、IQ平面を複数の領域に分割する。ここで、領域を区画する境界線の形状は、円、直線、楕円または近似曲線以外の、より複雑なものであってもよいが、領域を区画する境界線が複雑になると、領域判定部13による判定において誤りが生じるおそれがある。そのため、領域を区画する境界線としては、比較的単純な形状を有する、円、直線、楕円などを用いるのが好ましい。
【0037】
領域分割部11は、IQ平面を複数の領域(本実施形態では、4つの領域(AREA1~4))に分割すると、複数の領域それぞれについて、当該領域に含まれる受信信号点との2乗ユークリッド距離の計算が必要なマッピング点を示す2乗ユークリッド距離計算候補テーブルを作成する。
【0038】
図4Aは、2乗ユークリッド距離計算候補テーブルの一例を示す図である。
【0039】
図4Aに示すように、領域分割部11は、領域ごとに、当該領域に含まれる受信信号点との2乗ユークリッド距離の計算が必要なマッピング点の番号を示す2乗ユークリッド距離計算候補テーブルを作成する。
【0040】
また、領域分割部11は、複数の領域それぞれについて、受信信号点のビットごとに、2乗ユークリッド距離の最小値探索が必要なマッピング点を示す最小値探索候補テーブルを作成し、記憶部12に記憶させる。
【0041】
図4Bは、2乗ユークリッド距離計算候補テーブルの一例を示す図である。
【0042】
図4Bに示すように、領域分割部11は、受信信号点のビット(64QAMの場合、b0~b5の6ビット)ごとに、受信信号点がどの領域(AREA1~4)に含まれるかに応じて、2乗ユークリッド距離の最小値探索が必要なマッピング点の番号を示す2乗ユークリッド距離計算候補テーブルを作成する。ここで、領域分割部11は、受信信号点のビットが「0」である場合に2乗ユークリッド距離の最小値探索が必要なマッピング点を示す2乗ユークリッド距離計算候補テーブルと、受信信号点のビットが「1」である場合に2乗ユークリッド距離の最小値探索が必要なマッピング点を示す2乗ユークリッド距離計算候補テーブルと、を作成する。
【0043】
次に、領域判定部13の動作について説明する。
図5は、領域判定部13による、受信信号点が含まれる領域の判定について説明するための図である。
図5においては、
図4Aを参照して説明した、IQ平面が、原点を通る直線L(L:Q=I)と原点を中心とする円C(C:I
2+Q
2=0.98
2)とで4つの領域(AREA1~4)に分割された例を示している。
【0044】
領域判定部13は、
図5に示すように、領域判定部13は、受信信号点の振幅および位相に基づき、受信信号点が含まれる領域を特定する。
図5においては、受信信号点がAREA3に含まれる例を示している。
【0045】
なお、受信信号点が第1象限以外に存在する場合がある。この場合、領域判定部13は、
図6に示す象限対象の関係を利用して、第1象限以外に存在する受信信号点を第1象限に移動させ、受信信号点が含まれる領域を特定する。なお、
図6においては、第1象限以外に存在する信号点が同じ線種の第1象限の信号点に移動することを示している。
【0046】
次に、LLR計算部14の動作について説明する。
【0047】
LLR計算部14は、記憶部12に記憶されている2乗ユークリッド距離計算候補テーブルを参照して、受信信号点が含まれる領域に対応して記憶されているマッピング点を呼び出す。
図7に示すように受信信号点がAREA3に含まれる場合、LLR計算部14は、
図4Aに示す2乗ユークリッド距離計算候補テーブルを参照して、AREA3に対応して記憶されているマッピング点の番号(0~11,15,16,20,22,32~34,42)を読み出す。そして、LLR計算部14は、番号を読み出した各マッピング点(
図7)と、受信信号点との2乗ユークリッド距離を計算する。
【0048】
次に、LLR計算部14は、記憶部12に記憶されている最小値探索候補テーブルを参照し、受信信号点のビットごとに、2乗ユークリッド距離の最小値探索が必要なマッピング点を読み出す。
【0049】
図4Bを参照すると、受信信号点がAREA3に含まれる場合、受信信号点の1番目のビットb0(MSB:most significant bit)を0とすると、ビットb0と、番号が0~3,5,7,10,11,15それぞれのマッピング点の1番目のビットとの2乗ユークリッド距離から最小値探索を行う必要がある。また、受信信号点がAREA3に含まれる場合、受信信号点の1番目のビットb0を1とすると、ビットb0と、番号が32~34,42それぞれのマッピング点の1番目のビットとの2乗ユークリッド距離から最小値探索を行う必要がある。したがって、LLR計算部14は、b0=0とした場合、ビットb0と、
図8Aに示す、番号が0~3,5,7,10,11,15それぞれのマッピング点の1番目のビットとの2乗ユークリッド距離から最小値探索を行う。また、LLR計算部14は、b0=1とした場合、ビットb0と、
図8Aに示す、番号が32~34,42それぞれのマッピング点の1番目のビットとの2乗ユークリッド距離から最小値探索を行う。
【0050】
また、
図4Bを参照すると、受信信号点がAREA3に含まれる場合、受信信号点の2番目のビットb1を0とすると、ビットb1と、番号が0~3,5,7,10,11,15それぞれのマッピング点の2番目のビットとの2乗ユークリッド距離から最小値探索を行う必要がある。また、受信信号点がAREA3に含まれる場合、受信信号点の2番目のビットb1を1とすると、ビットb1と、番号が16,20,22それぞれのマッピング点の2番目のビットとの2乗ユークリッド距離から最小値探索を行う必要がある。したがって、LLR計算部14は、b1=0とした場合、ビットb1と、
図8Bに示す、番号が0~3,5,7,10,11,15それぞれのマッピング点の2番目のビットとの2乗ユークリッド距離から最小値探索を行う。また、LLR計算部14は、b1=1とした場合、ビットb1と、
図8Bに示す、番号が16,20,22それぞれのマッピング点の2番目のビットとの2乗ユークリッド距離から最小値探索を行う。
【0051】
また、
図4Bを参照すると、受信信号点がAREA3に含まれる場合、受信信号点の3番目のビットb2を0とすると、ビットb2と、番号が0~3,5,7それぞれのマッピング点の3番目のビットとの2乗ユークリッド距離から最小値探索を行う必要がある。また、受信信号点がAREA3に含まれる場合、受信信号点の3番目のビットb2を1とすると、ビットb2と、番号が10,11,15それぞれのマッピング点の3番目のビットとの2乗ユークリッド距離から最小値探索を行う必要がある。したがって、LLR計算部14は、b2=0とした場合、ビットb2と、
図8Cに示す、番号が0~3,5,7それぞれのマッピング点の3番目のビットとの2乗ユークリッド距離から最小値探索を行う。また、LLR計算部14は、b2=1とした場合、ビットb2と、
図8Cに示す、番号が10,11,15それぞれのマッピング点の3番目のビットとの2乗ユークリッド距離から最小値探索を行う。
【0052】
また、
図4Bを参照すると、受信信号点がAREA3に含まれる場合、受信信号点の4番目のビットb3を0とすると、ビットb3と、番号が0~3,5,7,10,11それぞれのマッピング点の4番目のビットとの2乗ユークリッド距離から最小値探索を行う必要がある。また、受信信号点がAREA3に含まれる場合、受信信号点の4番目のビットb3を1とすると、ビットb3と、番号が4,5,7,15それぞれのマッピング点の4番目のビットとの2乗ユークリッド距離から最小値探索を行う必要がある。したがって、LLR計算部14は、b3=0とした場合、ビットb3と、
図8Dに示す、番号が0~3,5,7,10,11それぞれのマッピング点の4番目のビットとの2乗ユークリッド距離から最小値探索を行う。また、LLR計算部14は、b3=1とした場合、ビットb3と、
図8Dに示す、番号が4,5,7,15それぞれのマッピング点の4番目のビットとの2乗ユークリッド距離から最小値探索を行う。
【0053】
また、
図4Bを参照すると、受信信号点がAREA3に含まれる場合、受信信号点の5番目のビットb4を0とすると、ビットb4と、番号が0,1,5,8,9それぞれのマッピング点の5番目のビットとの2乗ユークリッド距離から最小値探索を行う必要がある。また、受信信号点がAREA3に含まれる場合、受信信号点の5番目のビットb4を1とすると、ビットb4と、番号が2,3,7,10,11,15それぞれのマッピング点の5番目のビットとの2乗ユークリッド距離から最小値探索を行う必要がある。したがって、LLR計算部14は、b4=0とした場合、ビットb4と、
図8Eに示す、番号が0,1,5,8,9それぞれのマッピング点の5番目のビットとの2乗ユークリッド距離から最小値探索を行う。また、LLR計算部14は、
図8Eに示すように、b4=1とした場合、ビットb4と、番号が2,3,7,10,11,15それぞれのマッピング点の5番目のビットとの2乗ユークリッド距離から最小値探索を行う。
【0054】
また、
図4Bを参照すると、受信信号点がAREA3に含まれる場合、受信信号点の6番目のビットb5を0とすると、ビットb5と、番号が0,2,4,6,10それぞれのマッピング点の6番目のビットとの2乗ユークリッド距離から最小値探索を行う必要がある。また、受信信号点がAREA3に含まれる場合、受信信号点の6番目のビットb5を1とすると、ビットb5と、番号が1,3,5,7,11,15それぞれのマッピング点の6番目のビットとの2乗ユークリッド距離から最小値探索を行う必要がある。したがって、LLR計算部14は、b5=0とした場合、ビットb5と、
図8Fに示す、番号が0,2,4,6,10それぞれのマッピング点の6番目のビットとの2乗ユークリッド距離から最小値探索を行う。また、LLR計算部14は、b5=1とした場合、ビットb5と、
図8Fに示す、番号が1,3,5,7,11,15それぞれのマッピング点の5番目のビットとの2乗ユークリッド距離から最小値探索を行う。
【0055】
このように、LLR計算部14は、受信信号点を構成するビットごとに、受信信号点を含むと判定された領域について記憶部12に記憶されているマッピング点のうち、2乗ユークリッド距離の最小値探索が必要であると記憶部12に記憶されているマッピング点について計算した2乗ユークリッド距離の中で最小値探索を行い、最小値探索の結果に基づきLLRを計算する。なお、上述したように、LLR計算部14は、受信信号点が第1象限以外に存在する場合、象限対象を利用して、受信信号点を第1象限に移動させる。この場合、LLR計算部14は、受信信号点が実際に存在する象限に合うように、ビットb0およびビットb1について、計算したLLRの符号を調整する。
【0056】
図9Aは、変調方式が64QAMである場合の、受信信号点のビットの値を「0」とした場合の最小値探索を行うマッピング点の数(0系列比較数)の最大値と、受信信号点のビットの値を「1」とした場合の最小値探索を行うマッピング点の数(1系列比較数)の最大値と、2乗ユークリッド距離を計算するマッピング点の数(2乗ユークリッド距離計算数)とを示す図である。
図9Aにおいては、符号化率が11/16であり、円(C=0.95)と直線(L=1)とでIQ平面を分割した場合、符号化率が12/16であり、円(C=0.98)と直線(L=1)とでIQ平面を分割した場合、符号化率が13/16であり、円(C=0.98)と直線(L=1)とでIQ平面を分割した場合、および、符号化率が14/16であり、直線(I=0.6,Q=0.6)でIQ平面を分割した場合の、計算量を示している。なお、Cは円の半径であり、Lは直線の傾きである。
【0057】
図9Aに示すように、本実施形態に係る受信装置10によれば、いずれの場合も、2乗ユークリッド距離の計算が必要なマッピング点の数は20点以下となっており、すべての信号点(64点)について2乗ユークリッド距離を計算する場合と比べて、計算量を1/3以下に低減することができた。
【0058】
図9Bは、変調方式が256QAMである場合の、受信信号点のビットの値を「0」とした場合の最小値探索を行うマッピング点の数(0系列比較数)の最大値と、受信信号点のビットの値を「1」とした場合の最小値探索を行うマッピング点の数(1系列比較数)の最大値と、2乗ユークリッド距離を計算するマッピング点の数(2乗ユークリッド距離計算数)とを示す図である。
図9Bにおいては、符号化率が11/16であり、円(C=0.88)と直線(L=1.03)とでIQ平面を分割した場合、符号化率が12/16であり、円(C=0.9)と直線(L=1)とでIQ平面を分割した場合、符号化率が13/16であり、円(C=0.92)と直線(L=1)とでIQ平面を分割した場合、および、符号化率が14/16であり、円(C=0.9)と直線(L=0.95)とでIQ平面を分割した場合の、計算量を示している。なお、Cは円の半径であり、Lは直線の傾きである。
【0059】
図9Bに示すように、本実施形態に係る受信装置10によれば、いずれの場合も、2乗ユークリッド距離の計算が必要なマッピング点の数は52点以下となっており、すべての信号点(256点)について2乗ユークリッド距離を計算する場合と比べて、計算量を1/5程度に低減することができた。
【0060】
したがって、本実施形態に係る受信装置10によれば、IQ平面においてマッピング点が2次元的に不均一に配置されたNUCを適用した場合にも、LLRの計算量の低減を図ることができる。
【0061】
実施形態では特に触れていないが、コンピュータを、受信装置10または領域分割装置20として動作させるプログラムが提供されてもよい。また、プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROM、DVD-ROMなどの記録媒体であってもよい。
【0062】
あるいは、受信装置10または領域分割装置20が行う各処理を実行するためのプログラムを記憶するメモリ、および、メモリに記憶されたプログラムを実行するプロセッサによって構成され、受信装置10または領域分割装置20に搭載されるチップが提供されてもよい。
【0063】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨および範囲内で、多くの変更および置換が可能であることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形および変更が可能である。例えば、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0064】
10 受信装置
11 領域分割部
12 記憶部
13 領域判定部
14 LLR計算部
20 領域分割装置