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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027372
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】混合ガス供給装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/448 20060101AFI20240222BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
C23C16/448
H01L21/31 B
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130120
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 逸人
(72)【発明者】
【氏名】曽根 大介
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 遼
(72)【発明者】
【氏名】幸田 祥人
(72)【発明者】
【氏名】今井 建一
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA11
4K030AA13
4K030AA18
4K030BA17
4K030BA18
4K030BA20
4K030BA38
4K030BA40
4K030CA04
4K030CA12
4K030EA01
4K030HA01
4K030JA05
4K030JA06
4K030JA09
4K030KA11
4K030KA25
4K030KA39
4K030KA41
4K030LA15
5F045AA15
5F045AB31
5F045AB33
5F045AC01
5F045AC02
5F045AC03
5F045AC04
5F045AC05
5F045AC12
5F045AC15
5F045AC16
5F045AC17
5F045EC09
5F045EE02
5F045EE05
5F045EE19
5F045GB06
5F045GB07
5F045GB15
(57)【要約】
【課題】成膜材料ガスを含む混合ガスを安全かつ安定的に供給可能な混合ガス供給装置を提供する。
【解決手段】成膜材料Sのガスを少なくとも1種以上含む混合ガスを、混合ガス中の成膜材料Sの濃度を調整して供給する混合ガス供給装置であって、成膜材料Sを収容する原料容器2と、原料容器2を加熱する第1加熱器3と、原料容器2にキャリアガスを導入するキャリアガス導入経路L1と、原料容器2から混合ガスを導出する混合ガス導出経路L2と、混合ガス導出経路L2を加熱する第2加熱器6と、混合ガス導出経路L2に位置し、原料容器2の圧力を調節する圧力調節装置8と、圧力調節装置8の一次側又は二次側の混合ガス導出経路L2に位置し、混合ガスの濃度又は流量を計測する混合ガス計測装置9と、混合ガス導出経路L2に位置する1以上のバッファータンク10とを備える、混合ガス供給装置1を選択する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜材料のガスを少なくとも1種以上含む混合ガスを、前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度を調整して供給する混合ガス供給装置であって、
前記成膜材料を収容する原料容器と、
前記原料容器を加熱する第1加熱器と、
前記原料容器にキャリアガスを導入するキャリアガス導入経路と、
前記原料容器から前記混合ガスを導出する混合ガス導出経路と、
前記混合ガス導出経路を加熱する第2加熱器と、
前記混合ガス導出経路に位置し、前記原料容器の圧力を調節する圧力調節装置と、
前記圧力調節装置の一次側又は二次側の前記混合ガス導出経路に位置し、前記混合ガスの濃度又は流量を計測する混合ガス計測装置と、
前記混合ガス導出経路に位置する1以上のバッファータンクと、を備える、混合ガス供給装置。
【請求項2】
前記バッファータンクは、前記混合ガス計測装置の二次側に位置する第1バッファータンクを含む、請求項1に記載の混合ガス供給装置。
【請求項3】
前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度を設定値に調整する混合ガス濃度調節装置をさらに備え、
前記混合ガス濃度調節装置は、前記混合ガス計測装置により得られた前記混合ガスの濃度の計測値と、前記混合ガス濃度調節装置に設定された前記設定値との差分を算出し、前記差分に基づいて、前記計測値が前記設定値となるように前記圧力調節装置の圧力設定値を更新する機能を有する、請求項2に記載の混合ガス供給装置。
【請求項4】
前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度を設定値に調整する混合ガス濃度調節装置と、
前記キャリアガス導入経路に位置するキャリアガス流量制御装置と、
前記キャリアガス流量制御装置に設定された前記キャリアガスの流量の設定値と、前記混合ガス計測装置によって計測された前記混合ガスの流量の計測値とに基づいて、前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度を演算して算出する混合ガス濃度演算装置と、をさらに備え、
前記混合ガス濃度調節装置は、前記混合ガス濃度演算装置により得られた前記混合ガスの濃度の算出値と、前記混合ガス濃度調節装置に設定された前記設定値との差分を算出し、前記差分に基づいて、前記算出値が前記設定値となるように前記圧力調節装置の圧力設定値を更新する機能を有する、請求項2に記載の混合ガス供給装置。
【請求項5】
前記バッファータンクは、前記圧力調節装置と前記混合ガス計測装置との間に位置する第2バッファータンクを含む、請求項3又は4に記載の混合ガス供給装置。
【請求項6】
前記第1加熱器の出力を調節する第1加熱器調節装置と、
前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度を設定値に調整する混合ガス濃度調節装置と、
前記キャリアガス導入経路に位置するキャリアガス流量制御装置と、
前記キャリアガス流量制御装置に設定された前記キャリアガスの流量の設定値と、前記混合ガス計測装置によって計測された前記混合ガスの流量の計測値とに基づいて、前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度を演算して算出する混合ガス濃度演算装置と、をさらに備え、
前記混合ガス濃度調節装置は、前記混合ガス計測装置により得られた前記混合ガスの濃度の計測値、又は前記混合ガス濃度演算装置により得られた前記混合ガスの濃度の算出値と、前記混合ガス濃度調節装置に設定された前記設定値との差分を算出し、前記差分に基づいて、前記計測値又は前記算出値が前記設定値となるように第1加熱器調節装置の出力の設定値を更新する機能を有する、請求項1に記載の混合ガス供給装置。
【請求項7】
前記キャリアガス導入経路に位置するキャリアガス流量制御装置と、
前記第1バッファータンク内の圧力を測定する圧力計と、
前記キャリアガス流量制御装置、及び前記混合ガス導出経路に位置する1以上の開閉弁を制御する供給制御装置と、をさらに備え、
前記供給制御装置は、前記圧力計の測定値に基づいて、前記キャリアガス流量制御装置の制御し、前記1以上の前記開閉弁の開度をそれぞれ制御する、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の混合ガス供給装置。
【請求項8】
前記第1バッファータンクの二次側の前記混合ガス導出経路に位置する混合ガス流量制御装置をさらに備える、請求項2に記載の混合ガス供給装置。
【請求項9】
前記第1バッファータンクの二次側の前記混合ガス導出経路に位置する混合ガス流量制御装置をさらに備える、請求項7に記載の混合ガス供給装置。
【請求項10】
前記成膜材料は、金属含有化合物、窒素含有化合物、炭素含有化合物、及び酸素含有化合物からなる群から選択される1種以上の化合物である、請求項1に記載の混合ガス供給装置。
【請求項11】
前記窒素含有化合物は、ヒドラジン化合物である、請求項10に記載の混合ガス供給装置。
【請求項12】
前記キャリアガス導入経路から分岐し、前記原料容器を迂回して前記混合ガス導出経路と合流するバイパス経路をさらに備える、請求項1に記載の混合ガス供給装置。
【請求項13】
前記混合ガス導出経路から分岐し、前記混合ガス導出経路内の前記混合ガスを排気する1以上の排気経路をさらに備える、請求項1に記載の混合ガス供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合ガス供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスなどにおいて、金属薄膜、金属酸化膜、金属窒化膜は多くの工程で用いられている。例えば、金属窒化膜は、物理的、化学的、電気的及び機械的特性に起因して、多くの用途に幅広く用いられている。シリコン窒化膜(SiN)は、トランジスタを形成する際、ゲート絶縁膜やサイドウォールスペーサー等に用いられている。また、チタン窒化膜(TiN)、タンタル窒化膜(TaN)、及び窒化タングステン膜(WN)は、集積回路の配線のバリア膜などに用いられている。
【0003】
特に近年では、先端ロジックにおけるFin-FET(Fin Field-Effect Transistor)などの3次元トランジスタ構造の微細化や、3D-NANDの高集積化が一段と進み、集積回路の水平寸法、垂直寸法が縮小し続ける中で、サブnmオーダーの膜厚制御、ならびに良好なカバレッジ特性を有する薄膜形成技術が求められている。
【0004】
一般的に、化学気相成長法(CVD:Chemical Vapor Deposition)や原子層体積法(ALD:Atomic Layer Deposition)などにより薄膜を形成するためには、金属含有化合物、窒素含有化合物、酸化含有化合物、炭素含有化合物などの成膜材料をガス化させて供給する必要がある。しかしながら、成膜材料は低蒸気圧であることが多いため、気化した後に成膜反応炉に供給する必要がある。
【0005】
成膜材料を成膜反応炉に供給する方法として、特許文献1や特許文献2には、原料容器内をキャリアガスで通気し、バブリングすることで成膜材料の蒸気(成膜材料ガス)とキャリアガスとの混合ガスを供給する技術が開示されている。バブリング供給の場合、成膜材料の温度、及び原料容器内の圧力を一定に保ち、キャリアガス流量を制御することで、成膜材料ガスとキャリアガスとの混合ガスを安定した濃度で供給できる。
【0006】
また、特許文献3には、容器内に充填された液体材料に浸る配管(ディップチューブ)と加圧用ガス配管とが設置されており、加圧用ガス配管への加圧用ガスの導入により容器内の液面が加圧され、液体材料がディップチューブを介して消費設備に供給される技術が開示されている。なお、特許文献3の場合、一般的に液体材料が供給された後は気化器などにより液体材料を気化させることで、成膜反応炉に安定した流量で供給できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2005-522869号公報
【特許文献2】特開2015-119045号公報
【特許文献3】特開2011-025104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び特許文献2に開示された技術では、成膜材料の温度、及び原料容器内の圧力を一定に保ち、キャリアガス流量を制御しても、混合ガスの供給直後において成膜材料ガスの濃度が変動し、均一な濃度(設定濃度)とならない課題がある。また、混合ガスの供給中、原料容器内において気化熱に伴う成膜材料の蒸気圧低下(成膜材料温度の低下)が生じ、混合ガス中の成膜材料ガス濃度が減少(変動)するという課題がある。
【0009】
なお、上述した蒸気圧変化による混合ガス中の成膜材料ガスの濃度変動については、原料容器内の圧力を制御する方法がある。しかしながら、原料容器内の圧力を変化させると混合ガス流量が変動し、成膜材料ガスの供給量(絶対量)が変動するおそれがある。
【0010】
また、特許文献3に開示された技術では、気化器により混合ガスの流量制御ができるため、混合ガスの濃度を一定にできるメリットがあるが、配管の継手部から液体材料が漏洩するおそれがある。液体材料が禁水性、高反応性、毒性などを有する場合、たとえ少量であったとしても、安全性に課題がある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、成膜材料ガスを含む混合ガスを安全かつ安定的に供給可能な混合ガス供給装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を備える。
[1] 成膜材料のガスを少なくとも1種以上含む混合ガスを、前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度を調整して供給する混合ガス供給装置であって、
前記成膜材料を収容する原料容器と、
前記原料容器を加熱する第1加熱器と、
前記原料容器にキャリアガスを導入するキャリアガス導入経路と、
前記原料容器から前記混合ガスを導出する混合ガス導出経路と、
前記混合ガス導出経路を加熱する第2加熱器と、
前記混合ガス導出経路に位置し、前記原料容器の圧力を調節する圧力調節装置と、
前記圧力調節装置の一次側又は二次側の前記混合ガス導出経路に位置し、前記混合ガスの濃度又は流量を計測する混合ガス計測装置と、
前記混合ガス導出経路に位置する1以上のバッファータンクと、を備える、混合ガス供給装置。
[2] 前記バッファータンクは、前記混合ガス計測装置の二次側に位置する第1バッファータンクを含む、[1]に記載の混合ガス供給装置。
[3] 前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度を設定値に調整する混合ガス濃度調節装置をさらに備え、
前記混合ガス濃度調節装置は、前記混合ガス計測装置により得られた前記混合ガスの濃度の計測値と、前記混合ガス濃度調節装置に設定された前記設定値との差分を算出し、前記差分に基づいて、前記計測値が前記設定値となるように前記圧力調節装置の圧力設定値を更新する機能を有する、[1]又は[2]に記載の混合ガス供給装置。
[4] 前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度を設定値に調整する混合ガス濃度調節装置と、
前記キャリアガス導入経路に位置するキャリアガス流量制御装置と、
前記キャリアガス流量制御装置に設定された前記キャリアガスの流量の設定値と、前記混合ガス計測装置によって計測された前記混合ガスの流量の計測値とに基づいて、前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度を演算して算出する混合ガス濃度演算装置と、をさらに備え、
前記混合ガス濃度調節装置は、前記混合ガス濃度演算装置により得られた前記混合ガスの濃度の算出値と、前記混合ガス濃度調節装置に設定された前記設定値との差分を算出し、前記差分に基づいて、前記算出値が前記設定値となるように前記圧力調節装置の圧力設定値を更新する機能を有する、[1]又は[2]に記載の混合ガス供給装置。
[5] 前記バッファータンクは、前記圧力調節装置と前記混合ガス計測装置との間に位置する第2バッファータンクを含む、[1]乃至[4]に記載の混合ガス供給装置。
[6] 前記第1加熱器の出力を調節する第1加熱器調節装置と、
前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度を設定値に調整する混合ガス濃度調節装置と、
前記キャリアガス導入経路に位置するキャリアガス流量制御装置と、
前記キャリアガス流量制御装置に設定された前記キャリアガスの流量の設定値と、前記混合ガス計測装置によって計測された前記混合ガスの流量の計測値とに基づいて、前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度を演算して算出する混合ガス濃度演算装置と、をさらに備え、
前記混合ガス濃度調節装置は、前記混合ガス計測装置により得られた前記混合ガスの濃度の計測値、又は前記混合ガス濃度演算装置により得られた前記混合ガスの濃度の算出値と、前記混合ガス濃度調節装置に設定された前記設定値との差分を算出し、前記差分に基づいて、前記計測値又は前記算出値が前記設定値となるように第1加熱器調節装置の出力の設定値を更新する機能を有する、[1]乃至[5]のいずれかに記載の混合ガス供給装置。
[7] 前記キャリアガス導入経路に位置するキャリアガス流量制御装置と、
前記第1バッファータンク内の圧力を測定する圧力計と、
前記キャリアガス流量制御装置、及び前記混合ガス導出経路に位置する1以上の開閉弁を制御する供給制御装置と、をさらに備え、
前記供給制御装置は、前記圧力計の測定値に基づいて、前記キャリアガス流量制御装置の制御し、前記1以上の前記開閉弁の開度をそれぞれ制御する、[2]乃至[6]のいずれかに記載の混合ガス供給装置。
[8] 前記第1バッファータンクの二次側の前記混合ガス導出経路に位置する混合ガス流量制御装置をさらに備える、[2]乃至[7]に記載の混合ガス供給装置。
[9] 前記第1バッファータンクの二次側の前記混合ガス導出経路に位置する混合ガス流量制御装置をさらに備える、[7]に記載の混合ガス供給装置。
[10] 前記成膜材料は、金属含有化合物、窒素含有化合物、炭素含有化合物、及び酸素含有化合物からなる群から選択される1種以上の化合物である、[1]乃至[9]のいずれかに記載の混合ガス供給装置。
[11] 前記窒素含有化合物は、ヒドラジン化合物である、[10]に記載の混合ガス供給装置。
[12] 前記キャリアガス導入経路から分岐し、前記原料容器を迂回して前記混合ガス導出経路と合流するバイパス経路をさらに備える、[1]乃至[11]のいずれかに記載の混合ガス供給装置。
[13] 前記混合ガス導出経路から分岐し、前記混合ガス導出経路内の前記混合ガスを排気する1以上の排気経路をさらに備える、[1]乃至[12]のいずれかに記載の混合ガス供給装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明の混合ガス供給装置は、成膜材料ガスを含む混合ガスを、安全かつ安定的に供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の混合ガス供給装置の第1実施形態の構成を示す系統図である。
図2】本発明の混合ガス供給装置の第2実施形態の構成を示す系統図である。
図3】本発明の混合ガス供給装置の第3実施形態の構成を示す系統図である。
図4】本発明の混合ガス供給装置の第4実施形態の構成を示す系統図である。
図5】本発明の混合ガス供給装置の第5実施形態の構成を示す系統図である。
図6】本発明の混合ガス供給装置の第6実施形態の構成を示す系統図である。
図7】本発明の実施例1の結果を示す図である。
図8】本発明の比較例1の結果を示す図である。
図9】本発明の実施例2の結果を示す図である。
図10】本発明の実施例2の結果を示す図である。
図11】本発明の実施例3の結果を示す図である。
図12】本発明の実施例4の結果を示す図である。
図13】本発明の比較例2の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した一実施形態である混合ガス供給装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
また、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0016】
<第1実施形態>
先ず、本発明の混合ガス供給装置の第1実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、第1実施形態の混合ガス供給装置の構成を示す系統図である。
図1に示すように、本実施形態の混合ガス供給装置1は、原料容器2(2A,2B)、容器ヒータ(第1加熱器)3(3A,3B)、配管ヒータ(第2加熱器)6、圧力調節装置8、混合ガス計測装置9、第1バッファータンク(バッファータンク)10、第1圧力計11、第2圧力計(圧力計)12、検出器13、キャリアガス導入経路L1(L1A,L1B)、混合ガス導出経路L2(L2A,L2B)及びバイパス経路L3(L3A,L3B)を備える。
なお、本実施形態の混合ガス供給装置1は、容器ヒータ温度調節装置(第1加熱器調節装置)4、キャリアガス流量制御装置5、配管ヒータ温度調節装置(第2加熱器調節装置)7を、さらに備えていてもよい。
【0017】
本実施形態の混合ガス供給装置1は、成膜材料のガスを少なくとも1種以上含む混合ガスを、混合ガス中の成膜材料の濃度を調整して、例えば、後段の成膜装置100に供給する装置である。
【0018】
成膜装置100は、化学気相成長法に適用可能であれば、特に限定されない。成膜装置100としては、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置やALD(Atomic Layer Deposition)装置が挙げられる。
【0019】
原料容器2(2A,2B)は、内側に成膜材料Sを収容する容器(供給源)である。
原料容器2は、1つであってもよいし、2以上であってもよい。以下、本実施形態の混合ガス供給装置1では、2つの原料容器2A,2Bを用いる場合を一例として説明する。
また、本実施形態の混合ガス供給装置1では、2つの原料容器2A,2Bを一つずつ使用してもよいし、2つ同時に使用してもよい。ここで、2つの原料容器2A,2Bを一つずつ使用する場合、一方の容器が空になった後、他方の容器へ切り替えることで、成膜材料Sを連続して供給できる。また、2つの原料容器2A,2Bを同時に使用する場合、キャリアガスと成膜材料との接触面積が増大するため、混合ガス中の成膜材料ガスの濃度を上げることができる。なお、原料容器2の使用態様については、成膜装置100における成膜プロセスに合わせて、適切な方法を適宜選択できる。
【0020】
成膜材料Sは、常温常圧で液体または固体である材料であり、CVDやALDなどの薄膜形成プロセスに用いられる材料である。成膜材料Sは、金属含有化合物、窒素含有化合物、炭素含有化合物、及び酸素含有化合物からなる群から選択される、1種以上の化合物である。
【0021】
(金属含有化合物)
金属含有化合物は、特に限定されないが、シリコン(Si)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、バナジウム(V)、鉄(Fe)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、インジウム(In)、ハフニウム(Hf)、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)からなる群から選択される1つ以上の金属元素を含むものが挙げられる。
【0022】
金属含有化合物のうち、ハロゲン金属化合物であれば、TiCl、SiCl(HCDS:ヘキサクロロジシラン)、SiCl、SiHCl、SiHCl、SiHCl、SiI、SiHI、SiH、SiHI、TaCl、AlCl、GaCl、ZrCl、HfCl、MoOCl、MoCl、WF、WCl、WClの中から選択されるものが好ましい。
【0023】
また、金属含有化合物のうち、有機金属化合物であれば、TDMAT(テトラキスジメチルアミノチタン)、3DMAS(トリスジメチルアミノシラン、)BDEAS(ビスジエチルアミノシラン)、BTBAS(ビスターシャリーブチルアミノシラン)、DIPAS(ジイソプロピルアミノシラン)、PDMAT(ペンタキスジメチルアミノタンタル)、TMA(トリメチルアルミニウム)、TMG(トリメチルガリウム)、ハフニウム含有化合物、ジルコニウム含有化合物、コバルト含有化合物、ルテニウム含有化合物の中から選択されるものが好ましい。
【0024】
(窒素含有化合物)
窒素含有化合物は、特に限定されないが、例えば、アミン化合物、ヒドラジン化合物、アンモニアが挙げられる。
【0025】
アミン化合物としては、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、ターシャリーブチルアミンからなる群から選択される化合物が好ましい。
【0026】
ヒドラジン化合物としては、特に限定されないが、ヒドラジン(NH4)、モノメチルヒドラジン、ジメチルヒドラジン、ターシャリーブチルヒドラジン、フェニルヒドラジン、プロピルヒドラジンなどが挙げられる。ヒドラジン化合物としては、これらの群からいずれか1種を選択して用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0027】
一般的に、ヒドラジン化合物は、宇宙船の推進剤やロケットエンジンの燃料として使用されるように、爆発的な反応を生じることが知られている。加えて、ヒドラジンおよびモノメチルヒドラジンは毒性が高く、その許容濃度(TLV-TWA)は0.01ppmであり、半導体製造プロセスに用いられているアンモニア(許容濃度:25ppm)、ホスフィン(許容濃度:0.3ppm)、モノシラン(許容濃度:5ppm)よりも、大幅に低い。これらの性質は、化学薬品の危険性を示す規格であるNFPA(National Fire Protection Association)において、ヒドラジンが4-4-3(Health-Flammability-Instability)であり、モノメチルヒドラジンが4-3-2であることからも明らかであり、取扱う上で安全面に十分な配慮が求められる。このため、原料容器2は、密封容器であることが好ましい。
【0028】
(炭素含有化合物)
炭素含有化合物としては、特に限定されないが、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、炭化水素化合物、アルコール化合物、エーテル化合物、グリコール化合物、ケトン化合物からなる群から選択される1以上の化合物を用いることができる。
【0029】
(酸素含有化合物)
酸素含有化合物としては、特に限定されないが、水(HO)、過酸化水素(H)が挙げられる。
【0030】
なお、成膜材料Sは、2種類以上の液体を混合したものであっても良いし、固体を液体に溶解させたものであっても良い。
また、成膜材料のガスとは、成膜材料がガス化された状態のものを示す。
【0031】
容器ヒータ3(3A,3B)は、原料容器2(2A,2B)の周囲に位置し、原料容器2(2A,2B)内の成膜材料Sが所定の温度範囲となるように原料容器2(2A,2B)をそれぞれ加熱する。
容器ヒータ3(3A,3B)は、原料容器2(2A,2B)を加熱できるものであれば特に限定されない。容器ヒータ3(3A,3B)としては、ブリーズヒーター、マントルヒーター、ウォーターバス、オイルバスなどが挙げられる。これらの中でも、容器内の成膜材料Sを加温する際、均熱性および安全性の観点から、ウォーターバスやオイルバスを用いることが好ましい。
【0032】
容器ヒータ温度調節装置4は、容器ヒータ3(3A,3B)の出力を調節(制御)可能であれば、特に限定されない。なお、容器ヒータ温度調節装置4は、容器ヒータ3(3A,3B)の出力を調節(制御)する機能を有していればよく、容器ヒータ3(3A,3B)と一体化されていてもよい。
【0033】
容器ヒータ3(3A,3B)及び容器ヒータ温度調節装置4による原料容器2(2A,2B)を加熱する温度は、安全面、そして安定した成膜材料Sを供給させる観点から成膜材料Sが分解しない温度に設定することが好ましい。具体的には、室温(20℃)~200℃の範囲に設定することが好ましく、30~60℃の範囲であることがより好ましい。
【0034】
キャリアガス導入経路L1は、原料容器2にキャリアガスを導入する流路である。キャリアガス導入経路L1の基端は、図示略のキャリアガス供給源と接続されている。キャリアガス導入経路L1のガス流れ方向における先端は、原料容器2に接続されている。本実施形態では、キャリアガス導入経路L1の先端は経路L1A及び経路L1Bに分岐しており、経路L1Aが原料容器2Aに、経路L1Bが原料容器2Bに、それぞれ接続されている。これにより、本実施形態の混合ガス供給装置1によれば、キャリアガス導入経路L1を介して、原料容器2A,2Bにそれぞれキャリアガスを導入できる。
【0035】
キャリアガスは、特に限定されないが、成膜材料Sの種類に応じて適宜選択することができる。キャリアガスとしては、例えば、ヘリウム(He)、窒素(N)、アルゴン(Ar)等の希ガスや、水素(H)、及びアンモニア(NH)が挙げられる。キャリアガスとしては、これらのうち1種を選択して用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0036】
キャリアガス流量制御装置5は、キャリアガス導入経路L1に位置する。キャリアガス流量制御装置5は、キャリアガス導入経路L1に供給されるキャリアガスの流量を制御する。キャリアガス流量制御装置5は、流量の制御が可能であれば特に限定されない。キャリアガス流量制御装置5としては、例えば、マスフローコントローラ(MFC)や、開度の制御が可能な圧力調整器が挙げられる。
【0037】
キャリアガス導入経路L1に供給するキャリアガスの流量は、特に限定されるものではなく、適宜選択できるものである。キャリアガス流量制御装置5によるキャリアガスの流量の制御範囲としては、10~10000sccmの範囲であることが好ましい。
【0038】
混合ガス導出経路L2は、原料容器2から成膜材料Sのガスを少なくとも1種以上含む混合ガスを導出する流路である。混合ガス導出経路L2の基端は、原料容器2に接続されている。本実施形態では、混合ガス導出経路L2の基端は経路L2A及び経路L2Bに分岐しており、経路L2Aが原料容器2Aに、経路L2Bが原料容器2Bに、それぞれ接続されている。また、混合ガス導出経路L2の先端は、上述した成膜装置100と連通されている。これにより、本実施形態の混合ガス供給装置1によれば、原料容器2A,2Bからそれぞれ混合ガスを混合ガス導出経路L2に導出した後、後段の成膜装置100に混合ガスを供給できる。
【0039】
本実施形態の混合ガス供給装置1は、原料容器2にキャリアガス導入経路L1及び混合ガス導出経路L2が接続されているため、キャリアガス導入経路L1からキャリアガスを原料容器2(2A,2B)内に導入し、キャリアガスに同伴した成膜材料Sの気体(ガス)を混合ガスとして混合ガス導出経路L2に導出できる。
なお、原料容器2にキャリアガスを導入する際は、バブリングにより供給してもよいし、容器内の気相(すなわち成膜材料Sの蒸気)にキャリアガスを供給してもよい。
【0040】
混合ガスは、主成分として成膜材料Sのガスを少なくとも1種以上含む。混合ガスは、キャリアガスを含んでいてもよい。これらの中でも、蒸気圧が低く濃度制御が難しい観点から、混合ガスの主成分は、窒素含有化合物または金属含有化合物と、キャリアガスとであることが好ましい。
【0041】
配管ヒータ(第2加熱器)6は、キャリアガス導入経路L1のキャリアガス流量制御装置5以降の分岐した経路L1A,L1B及び混合ガス導出経路L2(L2A,L2B)を構成する配管の表面を覆うように設けられており、キャリアガス導入経路L1及び混合ガス導出経路L2を加熱する。
【0042】
配管ヒータ温度調節装置(第2加熱器調節装置)7は、配管ヒータ6の出力を調節(制御)可能であれば、特に限定されない。なお、配管ヒータ温度調節装置7は、配管ヒータ6の出力を調節(制御)する機能を有していればよく、配管ヒータ6と一体化されていてもよい。
【0043】
キャリアガス及び混合ガスの流路を構成する配管の温度は、成膜材料Sのガスが再液化・再固化しない温度とする必要があるため、原料容器2の温度よりも高いことが好ましい。これにより、混合ガス導出経路L2において成膜材料Sの再液化を防ぐことができ、成膜材料Sのガスを含む混合ガスを安全、かつ安定して混合ガス導出経路L2に流通できる。
【0044】
バイパス経路L3は、キャリアガス導入経路L1から分岐し、原料容器2を経由することなく迂回して混合ガス導出経路L2と合流する流路である。本実施形態の混合ガス供給装置1では、バイパス経路L3Aは、キャリアガス導入経路L1Aから分岐し、原料容器2Aを経由することなく迂回して混合ガス導出経路L2Aと合流する。同様に、バイパス経路L3Bは、キャリアガス導入経路L1Bから分岐し、原料容器2Bを経由することなく迂回して混合ガス導出経路L2Bと合流する。
【0045】
バイパス経路L3(L3A,L3B)を流路として選択することで、キャリアガス導入経路L1に流通するキャリアガスを原料容器2に導入することなく、原料容器2の二次側の混合ガス導出経路L2に供給できる。また、混合ガス導出経路L2に残留する成膜材料Sを含む気体(残留ガス)を除去する際、バイパス経路L3(L3A,L3B)を介してキャリアガスを供給することにより、残留ガスを効率的にパージ除去できる。
【0046】
本実施形態の混合ガス供給装置1では、各経路に1以上の開閉弁がそれぞれ設けられており、開閉弁の開閉状態を適宜選択することにより、目的に応じて任意の流路を形成可能となっていることが好ましい。
【0047】
第1圧力計11は、混合ガス導出経路L2に位置し、原料容器2(2A,2B)内の圧力を測定する。原料容器2内の圧力を検知することで、成膜材料Sの残量の把握や、容器内の異常を発見することができる。
【0048】
圧力調節装置8は、混合ガス導出経路L2に位置し、原料容器2(2A,2B)の圧力を調節する。圧力調節装置8は、原料容器2内の圧力に基づいて原料容器2内の圧力を調節可能であれば、特に限定されない。圧力調節装置8としては、例えば、背圧弁(バックブレッシャーレギュレーター;BPR)、オートプレッシャーレギュレータ、ピエゾバルブ、圧力コントロールシステムが挙げられる。
【0049】
なお、圧力調節装置8は、圧力計と圧力調節弁が一体化している機器であっても良いし、圧力計と圧力調節弁が別々の機器であっても良い。
別々の機器である場合としては、例えば、原料容器2内の圧力を測定する第1圧力計11と、圧力調節弁(開度調整可能な開閉弁、バタフライ弁等)とを用い、それぞれを連動させることで原料容器2内の圧力を調節する。
【0050】
混合ガス計測装置9は、混合ガス導出経路L2において圧力調節装置8の二次側に位置し、混合ガス導出経路L2内を流通する混合ガスの濃度又は流量を計測する装置である。混合ガス計測装置9としては、特に限定されないが、混合ガス中の成膜材料Sの濃度を測定可能なガス濃度計や、混合ガスの流量を測定可能な流量計の中から選択することが好ましい。
【0051】
混合ガス計測装置9として適用可能なガス濃度計としては、例えば、FT-IR、ND-IR、超音波式ガス濃度計、ガス濃度センサー、レーザー式ガス濃度計が挙げられる。
【0052】
混合ガス計測装置9として適用可能な流量計としては、例えば、マスフローメーター(MFM)、流量センサーが挙げられる。なお、混合ガス計測装置9として流量計を用いる場合、キャリアガス流量制御装置5によって制御されたキャリアガスの流量値と、流量計の測定値とに基づいて、混合ガス中における成膜材料Sのガスの流量および混合割合(混合ガス濃度)を算出できる。
【0053】
第1バッファータンク(バッファータンク)10は、混合ガス導出経路L2において混合ガス計測装置9の二次側に位置し、混合ガス導出経路L2内を流通する混合ガスを一時的に貯留する容器である。
第1バッファータンク10が、混合ガス導出経路L2において混合ガス計測装置9の二次側に位置することで、混合ガス濃度の均一化という効果が生じる。
第1バッファータンク10としては、混合ガスを貯留可能な密封容器であれば、特に限定されない。また、第1バッファータンク10の容量としては、特に限定されないが、1~100Lのものを適用可能であり、10~50Lのものが好ましい。
【0054】
本実施形態の混合ガス供給装置1では、第1バッファータンク10が分岐経路を介して混合ガス導出経路L2に位置する構成であるため、第1バッファータンク10の交換や洗浄などのメンテナンスを実施する際、混合ガス導出経路L2中に大気成分が混入しない運用が可能となる。
【0055】
なお、本実施形態の混合ガス供給装置1では、第1バッファータンク10が分岐経路を介して混合ガス導出経路L2に位置する構成を一例として説明したが、これに限定されない。例えば、分岐経路を介することなく、混合ガス導出経路L2に第1バッファータンク10を設ける構成としてもよい。
【0056】
第2圧力計(圧力計)12は、第1バッファータンク10内の圧力を測定する。第2圧力計12は、第1バッファータンク10に近接する位置に設けることが好ましい。これにより、第1バッファータンク10内の圧力異常を直ちに検知することができ、図示略の安全装置を作動させることができる。
【0057】
検出器13は、本実施形態の混合ガス供給装置1における安全機構の一部を構成する。検出器13としては、ガス漏洩検知器や漏液検知器などが挙げられる。検出器13と図示略の安全装置とを連動することにより、漏洩や漏液などの緊急時に各ガスの供給が自動的に遮断される構成とすることができる。
【0058】
本実施形態の混合ガス供給装置1では、圧力調節装置8と、混合ガス計測装置9との間で、有線又は無線で信号の送受信が可能とされている。これにより、本実施形態の混合ガス供給装置1は、混合ガス計測装置9によって混合ガス中のキャリアガスと成膜材料Sのガスとの混合割合を監視しながら、圧力調節装置8によって原料容器2(2A,2B)内の圧力を手動又は自動で制御することで、混合ガス中の成膜材料Sのガス濃度を所要の値に調節できる。
【0059】
具体的には、圧力調節装置8に設定した濃度(設定値)に対し、混合ガス計測装置9によって実測された濃度の計測値が足りなかった場合や、混合ガスを供給していくにつれて、実測された濃度の計測値が減少していった場合、混合ガス計測装置9から圧力調節装置8に対して圧力設定値を更新する制御信号が送信される。これにより、瞬時に圧力調節装置8の開度が開く方向に調節され、応答性良く設定した濃度の混合ガスを供給する。
【0060】
手動で原料容器2内の圧力を制御する場合は、混合ガス計測装置9によって実測された濃度に対し、設定した濃度になるよう、圧力調節装置8の手動操作によって原料容器2内の圧力の設定値を更新する。
手動と異なり、自動制御の場合の方が、瞬時に原料容器2内の圧力が調整できるため、好ましい。
【0061】
したがって、本実施形態の混合ガス供給装置1によれば、成膜材料Sのガスを少なくとも1種以上含む混合ガスを、混合ガス中の成膜材料Sの濃度を調整して、例えば、後段の成膜装置100に原料ガスの一部として供給することができる。
【0062】
また、本実施形態の混合ガス供給装置1によれば、混合ガス導出経路L2に第1バッファータンク10を備えるため、混合ガス導出経路L2に流れる混合ガスを一旦、第1バッファータンク10に貯留した後、二次側に供給できる。このように、第1バッファータンク10を介しながら混合ガスを供給するため、供給中に生じた圧力変動を抑制でき、混合ガスの濃度および流量を安定させることができる。
【0063】
<第2実施形態>
図2は、本発明の混合ガス供給装置の第2実施形態の構成を示す系統図である。
図2に示すように、第2実施形態の混合ガス供給装置21は、上述した混合ガス供給装置1の構成に、第2バッファータンク14、混合ガス流量制御装置15、真空ポンプ16及び排気経路L4A,L4Bを備える点で混合ガス供給装置1と異なっており、その他の構成は同一である。したがって、本実施形態の混合ガス供給装置21では、混合ガス供給装置1と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0064】
第2バッファータンク14は、混合ガス導出経路L2において圧力調節装置8と混合ガス計測装置9との間に位置し、混合ガス導出経路L2内を流通する混合ガスを一時的に貯留する容器である。
第2バッファータンク14が、混合ガス導出経路L2において圧力調節装置8と混合ガス計測装置9との間に位置することで、混合ガス計測装置9内の圧力変動と流量変動を抑制することができる。
第2バッファータンク14としては、混合ガスを貯留可能な密封容器であれば、特に限定されない。また、第2バッファータンク14の容量としては、特に限定されないが、1~100Lのものを適用可能であり、1~20Lのものが好ましい。
【0065】
本実施形態の混合ガス供給装置21では、第2バッファータンク14が分岐経路を介して混合ガス導出経路L2に位置する構成であるため、第2バッファータンク14の交換や洗浄などのメンテナンスを実施する際、混合ガス導出経路L2中に大気成分が混入しない運用が可能となる。
【0066】
なお、本実施形態の混合ガス供給装置21では、第2バッファータンク14が分岐経路を介して混合ガス導出経路L2に位置する構成を一例として説明したが、これに限定されない。例えば、分岐経路を介することなく、混合ガス導出経路L2に第2バッファータンク14を設ける構成としてもよい。
【0067】
混合ガス流量制御装置15は、混合ガス導出経路L2において、第1バッファータンク10の二次側に位置し、設定した濃度に調整された混合ガスの流量を制御する。
本実施形態の混合ガス供給装置21によれば、混合ガス導出経路L2に混合ガス流量制御装置15を備えるため、その上流側において濃度を制御するために生じる圧力変動や、その下流側において成膜装置100の反応炉で生じる圧力変動が生じたとしても、設定値に対して安定した流量で混合ガスを供給できる。
さらに、本実施形態の混合ガス供給装置21によれば、混合ガス流量制御装置15の上流側(一次側)に第1バッファータンク10が位置することで、圧力調節装置8により原料容器2内の圧力を制御する際に発生する急激な圧力変動を効果的に抑制できる。
【0068】
排気経路L4A,L4Bは、混合ガス導出経路L2から分岐し、混合ガス導出経路L2内の混合ガスをそれぞれ排気するための流路である。また、排気経路L4A,L4Bに真空ポンプ16をそれぞれ設けることで、混合ガス導出経路L2内の混合ガスをそれぞれ真空排気することができる。
【0069】
本実施形態の混合ガス供給装置21によれば、混合ガス導出経路L2において、圧力調節装置8の一次側に排気経路L4Aを備えるため、原料容器2の交換前にキャリアガスを用いて充圧する工程と真空排気する工程とを繰り返すことで、混合ガス導出経路L2に残留する成膜材料Sのガスを含む混合ガスを効率的にパージ除去できる。
【0070】
また、本実施形態の混合ガス供給装置21によれば、混合ガス導出経路L2において、混合ガス計測装置9の二次側に排気経路L4Bを備えるため、混合ガス計測装置9の二次側に残留する混合ガスを効率的にパージ除去できる。
【0071】
なお、パージ方法としては、上述したサイクルパージを繰り返す方法にかえて、キャリアガスを流通し続ける方法を適用してもよい。
【0072】
真空ポンプ16は、特に限定されないが、例えば、ドライ真空ポンプ、ダイヤフラムポンプ、ターボ分子ポンプ、スクロールポンプ、油回転ポンプ、バキュームジェネレーターが挙げられる。
【0073】
本実施形態の混合ガス供給装置21によれば、上述した混合ガス供給装置1と同様に、混合ガス計測装置9によって混合ガス中のキャリアガスと成膜材料Sのガスとの混合割合を監視しながら、圧力調節装置8によって原料容器2(2A,2B)内の圧力を制御することで、所定のガス濃度に調節された混合ガスを後段の成膜装置100に原料ガスの一部として安定的に供給できる。
【0074】
また、本実施形態の混合ガス供給装置21によれば、混合ガス導出経路L2に第1バッファータンク10及び第2バッファータンク14を備え、第1バッファータンク10及び第2バッファータンク14を介しながら混合ガスを供給するため、供給中に生じた圧力変動を抑制でき、混合ガスの濃度および流量を安定させることができる。
【0075】
また、本実施形態の混合ガス供給装置21によれば、混合ガス導出経路L2に1以上の排気経路L4A,L4Bを備えるため、原料容器2の交換を行う前や、メンテナンスで配管を開放する前に、混合ガス導出経路L2に残留する混合ガスをパージできる。これにより、安全に原料容器2の交換、及びメンテナンスを行うことができる。
【0076】
また、本実施形態の混合ガス供給装置21によれば、混合ガス導出経路L2に混合ガス流量制御装置15を備えるため、その上流側において濃度を制御するために生じる圧力変動や、その下流側において成膜装置100の反応炉で生じる圧力変動が生じたとしても、設定値に対して安定した流量で混合ガスを供給できる。これにより、混合ガス供給装置21の二次側に位置する成膜装置100に、混合ガスを安定した流量で供給できる。
【0077】
<第3実施形態>
図3は、本発明の混合ガス供給装置の第3実施形態の構成を示す系統図である。
図3に示すように、第3実施形態の混合ガス供給装置31は、上述した混合ガス供給装置21の構成において、混合ガス計測装置9が混合ガス濃度分析装置9Aであり、第2バッファータンク14にかえて混合ガス濃度調節装置17を備える点で混合ガス供給装置21と異なっており、その他の構成は同一である。したがって、本実施形態の混合ガス供給装置31では、混合ガス供給装置21と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0078】
混合ガス濃度調節装置17は、混合ガス中の成膜材料Sの濃度を設定値に調整する制御装置である。
混合ガス濃度調節装置17は、圧力調節装置8及び混合ガス濃度分析装置9Aと、有線又は無線によって信号を送受信可能とされている。具体的には、混合ガス濃度調節装置17は、混合ガス濃度分析装置9Aから濃度の計測値を受信し、圧力調節装置8に制御信号を送信する。
また、混合ガス濃度調節装置17は、混合ガス中の成膜材料Sの濃度を設定値として設定することができる。設定値は、作業者が混合ガス濃度調節装置17に直接入力してもよいし、有線又は無線によって信号を送信してもよい。
【0079】
また、混合ガス濃度調節装置17は、混合ガス濃度分析装置9Aにより得られた混合ガスの濃度の計測値と、混合ガス濃度調節装置17に設定された設定値との差分を算出し、得られた差分に基づいて、計測値(実測値)が設定値となるように、圧力調節装置8の圧力設定値を更新する機能を有する。
【0080】
具体的には、混合ガス濃度調節装置17に設定した濃度(設定値)に対し、混合ガス濃度分析装置9Aによって実測された濃度の計測値が足りなかった場合や、混合ガスを供給していくにつれて、実測された濃度の計測値が減少していった場合、混合ガス濃度調節装置17から圧力調節装置8に対して圧力設定値を更新する制御信号が送信される。これにより、瞬時に圧力調節装置8の開度が開く方向に調節され、応答性良く設定した濃度の混合ガスを供給することができる。
【0081】
実測された濃度の計測値が増加していった場合も同様に、混合ガス濃度調節装置17から圧力調節装置8に対して圧力設定値を更新する制御信号が送信される。これにより、瞬時に圧力調節装置8の開度が閉まる方向に調節され、応答性良く設定した濃度の混合ガスを供給することができる。
【0082】
本実施形態の混合ガス供給装置31によれば、上述した混合ガス供給装置1,21と同様の効果を奏することができる。
【0083】
また、本実施形態の混合ガス供給装置31によれば、圧力調節装置8及び混合ガス濃度分析装置9Aとの間で信号を送受信可能な混合ガス濃度調節装置17を備えるため、混合ガスの供給初期の濃度変動や、連続供給中の材料温度低下に伴う蒸気圧変動が生じた場合であっても、混合ガス濃度調節装置17に設定した濃度(設定値)の混合ガスを安定して供給することができる。
【0084】
<第4実施形態>
図4は、本発明の混合ガス供給装置の第4実施形態の構成を示す系統図である。
図4に示すように、第4実施形態の混合ガス供給装置41は、上述した混合ガス供給装置21の構成において、混合ガス計測装置9が混合ガス流量計9Bであり、混合ガス濃度調節装置17及び混合ガス濃度演算装置18を備える点で混合ガス供給装置21と異なっており、その他の構成は同一である。したがって、本実施形態の混合ガス供給装置41では、混合ガス供給装置21と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0085】
混合ガス濃度演算装置18は、混合ガス中の成膜材料Sの濃度を演算して算出する演算装置である。混合ガス濃度演算装置18は、キャリアガス流量制御装置5、混合ガス流量計9B及び混合ガス濃度調節装置17と、有線又は無線によって信号を送受信可能とされている。
【0086】
具体的には、混合ガス濃度演算装置18は、キャリアガス流量制御装置5に設定されたキャリアガスの流量の設定値、及び混合ガス流量計9Bによって計測された混合ガスの流量の計測値(実測値)を受信し、これらに基づいて混合ガス中の成膜材料Sの濃度を演算して算出する。そして、混合ガス濃度演算装置18は、上述した演算によって得られた濃度(算出値)を混合ガス濃度調節装置17に送信する。
【0087】
混合ガス濃度調節装置17は、混合ガス中の成膜材料Sの濃度を設定値に調整する制御装置である。
混合ガス濃度調節装置17は、圧力調節装置8及び混合ガス濃度演算装置18と、有線又は無線によって信号を送受信可能とされている。具体的には、混合ガス濃度調節装置17は、混合ガス濃度演算装置18から濃度の算出値を受信し、圧力調節装置8に制御信号を送信する。
また、混合ガス濃度調節装置17は、混合ガス中の成膜材料Sの濃度を設定値として設定することができる。設定値は、作業者が混合ガス濃度調節装置17に直接入力してもよいし、有線又は無線によって信号を送信してもよい。
【0088】
また、混合ガス濃度調節装置17は、混合ガス濃度演算装置18により得られた混合ガスの濃度の算出値と、混合ガス濃度調節装置17に設定された設定値との差分を算出し、得られた差分に基づいて、算出値が設定値となるように、圧力調節装置8の圧力設定値を更新する機能を有する。
【0089】
具体的には、混合ガス濃度調節装置17に設定した濃度(設定値)に対し、混合ガス濃度演算装置18によって算出された濃度の計測値が足りなかった場合や、混合ガスを供給していくにつれて、算出された濃度の計測値が減少していった場合、混合ガス濃度調節装置17から圧力調節装置8に対して圧力設定値を更新する制御信号が送信される。これにより、瞬時に圧力調節装置8の開度が開く方向に調節され、応答性良く設定した濃度の混合ガスを供給することができる。
【0090】
算出された濃度の計測値が増加していった場合も同様、混合ガス濃度調節装置18から圧力調節装置8に対して圧力設定値を更新する制御信号が送信される。これにより、瞬時に圧力調節装置8の開度が閉まる方向に調節され、応答性良く設定した濃度の混合ガスを供給することができる。
【0091】
本実施形態の混合ガス供給装置41によれば、上述した混合ガス供給装置1,21と同様の効果を奏することができる。
【0092】
また、本実施形態の混合ガス供給装置41によれば、圧力調節装置8及び混合ガス濃度演算装置18との間で信号を送受信可能な混合ガス濃度調節装置17を備えるため、混合ガスの供給初期の濃度変動や、連続供給中の材料温度低下に伴う蒸気圧変動が生じた場合であっても、混合ガス濃度調節装置17に設定した濃度(設定値)の混合ガスを安定して供給することができる。
【0093】
また、本実施形態の混合ガス供給装置41によれば、圧力調節装置8と混合ガス流量計9Bとの間に第2バッファータンク14を備えるため、圧力調節装置8により原料容器2内の圧力を制御する際に発生する流量変動や圧力変動を抑制し、所要の濃度の混合ガスを安定して供給することができる。
【0094】
<第5実施形態>
図5は、本発明の混合ガス供給装置の第5実施形態の構成を示す系統図である。
図5に示すように、第5実施形態の混合ガス供給装置51は、上述した混合ガス供給装置41の構成において、混合ガス濃度調節装置17が制御信号を送信する先が圧力調節装置8にかえて容器ヒータ温度調節装置4である点で異なっており、その他の構成は同一である。したがって、本実施形態の混合ガス供給装置51では、混合ガス供給装置41と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0095】
混合ガス濃度調節装置17は、混合ガス中の成膜材料Sの濃度を設定値に調整する制御装置である。
混合ガス濃度調節装置17は、容器ヒータ温度調節装置4及び混合ガス濃度演算装置18と、有線又は無線によって信号を送受信可能とされている。具体的には、混合ガス濃度調節装置17は、混合ガス濃度演算装置18から濃度の算出値を受信し、容器ヒータ温度調節装置4に制御信号を送信する。
また、混合ガス濃度調節装置17は、混合ガス中の成膜材料Sの濃度を設定値として設定することができる。設定値は、作業者が混合ガス濃度調節装置17に直接入力してもよいし、有線又は無線によって信号を送信してもよい。
【0096】
また、混合ガス濃度調節装置17は、混合ガス濃度演算装置18により得られた混合ガスの濃度の算出値と、混合ガス濃度調節装置17に設定された設定値との差分を算出し、得られた差分に基づいて、算出値が設定値となるように、容器ヒータ温度調節装置4の出力の設定値を更新する機能を有する。
【0097】
具体的には、混合ガス濃度調節装置17に設定した濃度(設定値)に対し、混合ガス濃度演算装置18により得られた混合ガスの濃度の算出値が足りなかった場合や、混合ガスを供給していくにつれて、混合ガス濃度の算出値が減少していった場合、混合ガス濃度調節装置17から容器ヒータ温度調節装置4に対して出力の設定値を更新する制御信号が送信される。ここで、成膜材料Sは、原料容器2の温度を高くするほど、その蒸気圧が高くなり、混合ガス中の成膜材料Sのガス濃度を高くすることができる。したがって、容器ヒータ3(3A,3B)の出力を上昇するように制御することで、原料容器2(2A,2B)を加温する方向に調節され、応答性良く設定した濃度の混合ガスを供給することができる。
【0098】
本実施形態の混合ガス供給装置51によれば、容器ヒータ温度調節装置4及び混合ガス濃度演算装置18との間で信号を送受信可能な混合ガス濃度調節装置17を備えるため、上述した混合ガス供給装置41と同様の効果を奏することができる。
【0099】
(第5実施形態の変形例)
第5実施形態の変形例は、上述した混合ガス供給装置51の構成において、混合ガス計測装置9が混合ガス濃度分析装置9Aであり、混合ガス濃度演算装置18が省略されている点で異なっており、その他の構成は同一である。
【0100】
混合ガス濃度調節装置17は、容器ヒータ温度調節装置4及び混合ガス濃度分析装置9Aと、有線又は無線によって信号を送受信可能とされている。具体的には、混合ガス濃度調節装置17は、混合ガス濃度分析装置9Aから濃度の計測値を受信し、容器ヒータ温度調節装置4に制御信号を送信する。
【0101】
また、混合ガス濃度調節装置17は、混合ガス濃度分析装置9Aにより得られた混合ガスの濃度の計測値と、混合ガス濃度調節装置17に設定された設定値との差分を算出し、得られた差分に基づいて、計測値(実測値)が設定値となるように、容器ヒータ温度調節装置4の出力の設定値を更新する機能を有する。
【0102】
具体的には、混合ガス濃度調節装置17に設定した濃度(設定値)に対し、混合ガス濃度分析装置9Aにより得られた混合ガスの濃度の計測値が足りなかった場合や、混合ガスを供給していくにつれて、混合ガス濃度の計測値が減少していった場合、混合ガス濃度調節装置17から容器ヒータ温度調節装置4に対して出力の設定値を更新する制御信号が送信される。
【0103】
ここで、成膜材料Sは、原料容器2の温度を高くするほど、その蒸気圧が高くなり、混合ガス中の成膜材料Sのガス濃度を高くすることができる。したがって、容器ヒータ3(3A,3B)の出力を上昇するように制御することで、原料容器2(2A,2B)を加温する方向に調節され、応答性良く設定した濃度の混合ガスを供給することができる。
【0104】
本実施形態の混合ガス供給装置51の変形例によれば、容器ヒータ温度調節装置4及び混合ガス濃度分析装置9Aとの間で信号を送受信可能な混合ガス濃度調節装置17を備えるため、上述した混合ガス供給装置51と同様の効果を奏することができる。
【0105】
<第6実施形態>
図6は、本発明の混合ガス供給装置の第6実施形態の構成を示す系統図である。
図6に示すように、第6実施形態の混合ガス供給装置61は、上述した混合ガス供給装置21の構成において、供給制御装置19を備える点で混合ガス供給装置21と異なっており、その他の構成は同一である。したがって、本実施形態の混合ガス供給装置61では、混合ガス供給装置21と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0106】
供給制御装置19は、キャリアガス流量制御装置5及び混合ガス導出経路L2に位置する1以上の開閉弁の開度を制御する。
【0107】
供給制御装置19は、キャリアガス流量制御装置5、混合ガス導出経路L2に位置する1以上の開閉弁、及び第2圧力計(圧力計)12と、有線又は無線によって信号を送受信可能とされている。具体的には、供給制御装置19は、第2圧力計12から第1バッファータンク10内の圧力の測定値を受信し、キャリアガス流量制御装置5及び1以上の開閉弁に制御信号を送信する。
具体的には、供給制御装置19は、第2圧力計12の測定値に基づいて、キャリアガス流量制御装置5のキャリアガス流量の設定値(または供給停止)、及び1以上の開閉弁の開度を制御することで、第2圧力計12の測定値(すなわち、第1バッファータンク10内の圧力)を所要の値となるように制御する。
【0108】
設定した圧力値に対し、第1バッファータンク10の圧力が足りなかった場合、第2圧力計12からキャリガス流量制御装置5の供給開始の制御信号、及び混合ガス導出経路L2に位置する1以上の開閉弁の「開」の制御信号が送信される。このように、第2圧力径12の測定値に応じて、キャリアガス流量制御装置5の供給停止と、1以上の開閉弁の開度(開閉)を瞬時に制御することで、第1バッファータンク10内の圧力が所要の値になるように制御できる。
【0109】
ところで、本実施形態の混合ガス供給装置61では、混合ガス導出経路L2において、混合ガスの濃度を制御するために生じる圧力変動や、成膜装置100の反応炉で生じる圧力変動などによって、混合ガスの流量が大きく変動する可能性がある。
そこで、混合ガス導出経路L2に混合ガス流量制御装置15を設けることで、当該混合ガス流量制御装置15の上流側および下流側のいずれにおいて圧力変動が生じたとしても、設定値に対して安定した流量で混合ガスを供給できる。
すなわち、混合ガス導出経路L2において、混合ガス流量制御装置15の上流側の圧力を所定の範囲内となるように制御することで、混合ガス導出経路L2を流通する混合ガスを安定な流量に制御することができる。
特に、混合ガス導出経路L2において、混合ガス流量制御装置15の上流側に第1バッファータンク10を設置している場合、圧力調節装置8によって原料容器2内の圧力を制御する際に発生する急激な圧力変動による影響を抑制できるため、より好ましい。
【0110】
本実施形態の混合ガス供給装置61によれば、キャリアガス流量制御装置5、混合ガス導出経路L2に位置する1以上の開閉弁、及び第2圧力計(圧力計)12と連動する供給制御装置19を備え、混合ガス流量制御装置15の上流側の第1バッファータンク10内の圧力を所定の範囲内となるように制御するため、混合ガス導出経路L2を流通する混合ガスを安定な流量に制御することができる。
【0111】
以上説明したように、第1~第6実施形態の混合ガス供給装置1,21,31,41,51,61によれば、成膜材料Sのガスを含む混合ガスを、安全かつ安定的に供給できる。
【0112】
なお、上述した第1~第6実施形態の混合ガス供給装置1,21,31,41,51,61を用いる場合、混合ガスに含まれるHO濃度が、0.1ppm以下であることが好ましい。
混合ガス中の水分濃度が高い場合には、混合ガス供給装置1,21,31,41,51,61が、吸着剤や分離膜等を含む精製器を備える構成としてもよい。
【0113】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【実施例0114】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0115】
(実施例1)
混合ガス供給装置として、図1に示す混合ガス供給装置1を用いて、混合ガスの供給試験を行った。試験条件は、以下の通り。
・キャリアガス:窒素(N
・キャリアガス流量:3000sccm
・成膜材料S:ヒドラジン(N
・混合ガス中の成膜材料Sの濃度(混合ガス濃度):5体積%
・容器内圧力:混合ガス計測装置9の濃度の計測値にもとづいて圧力調節装置8を制御
【0116】
結果を図7に示す。図7において、X軸は供給時間(min)を、第1Y軸は混合ガス濃度(体積%)を、第2Y軸は容器内圧力(kPa)を、それぞれ示す。
図7に示すように、第1バッファータンク10を設置し、圧力調節装置8によって原料容器2内の圧力を調節することで、混合ガス濃度を5体積%で安定的に供給することができた。
【0117】
(比較例1)
混合ガス供給装置として、図1に示す混合ガス供給装置1から第1バッファータンク10を省いた装置を用いて、混合ガスの供給試験を行った。試験条件は、以下の通り。
・キャリアガス:窒素(N
・キャリアガス流量:1000sccm
・成膜材料S:ヒドラジン(N
・混合ガス中の成膜材料Sの濃度(混合ガス濃度):5体積%
・容器内圧力:30kPa
【0118】
結果を図8に示す。図8において、X軸は供給時間(min)を、Y軸は混合ガス濃度(体積%)を、それぞれ示す。
図8に示すように、第1バッファータンク10を有さず、原料容器2内の圧力を調節しない比較例1では、混合ガス濃度を5体積%で安定的に供給できなかった。
具体的には、供給直後に、混合ガス中の成膜材料Sのガスの濃度変動が大きく、濃度が一定ではなかった。これは、原料容器2内に溜まっていた蒸気圧相当の成膜材料Sのガスがキャリアガスと一緒に排出されたため、供給直後の濃度が高くなったためである。
また、混合ガスを長時間供給すると、混合ガス中の成膜材料Sのガスの濃度が低下した。これは、混合ガスの供給中、原料容器2内において気化熱に伴うヒドラジンの蒸気圧が低下したためである。
【0119】
(実施例2)
混合ガス供給装置として、図3に示す混合ガス供給装置31を用いて、混合ガスの供給試験を行った。試験条件は、以下の通り。
・キャリアガス:窒素(N
・キャリアガス流量:3000sccm
・成膜材料S:ヒドラジン(N
・混合ガス中の成膜材料Sの濃度(混合ガス濃度):5体積%
・容器内圧力:混合ガス濃度調節装置17により、混合ガス計測装置9の濃度の計測値にもとづいて圧力調節装置8を自動制御
【0120】
結果を図9及び図10に示す。図9において、X軸は供給時間(min)を、Y軸は混合ガス濃度(体積%)を、それぞれ示す。図10において、X軸は供給時間(min)を、Y軸は容器内圧力(kPa)を、それぞれ示す。
図9に示すように、第1バッファータンク10を設置し、混合ガス濃度調節装置17によって原料容器2内の圧力を自動調節することで、混合ガス濃度を5体積%で安定的に供給することができた。
また、図10に示すように、混合ガス濃度調節装置17における設定値5体積%を保持するため、原料容器2内の圧力が圧力調節装置8によって徐々に減少していくことが確認された。
【0121】
(実施例3)
混合ガス供給装置として、図4に示す混合ガス供給装置41を用いて、混合ガスの供給試験を行った。試験条件は、以下の通り。
・キャリアガス:窒素(N
・キャリアガス流量:3000sccm
・成膜材料S:ヒドラジン(N
・混合ガス中の成膜材料Sの濃度(混合ガス濃度):5体積%
・容器内圧力:混合ガス濃度調節装置17により、混合ガス濃度演算装置18の算出値にもとづいて圧力調節装置8を自動制御
【0122】
結果を図11に示す。図11において、X軸は供給時間(min)を、第1Y軸は混合ガス濃度(体積%)を、第2Y軸は容器内圧力(kPa)を、それぞれ示す。
図11に示すように、第1バッファータンク10を設置し、混合ガス濃度調節装置17によって原料容器2内の圧力を自動調節することで、混合ガス濃度を5体積%で安定的に供給することができた。
また、図11に示すように、混合ガス濃度調節装置17における設定値5体積%を保持するため、原料容器2内の圧力が圧力調節装置8によって徐々に減少していくことが確認された。
【0123】
(実施例4)
混合ガス供給装置として、図6に示す混合ガス供給装置61を用い、ALDプロセスを想定し供給工程と停止工程とを繰り返した時の流量安定性を評価した。試験条件は、以下の通り。
・キャリアガス:窒素(N)・キャリアガス流量:3000sccm
・成膜材料S:ヒドラジン(N
・混合ガス流量:3.00(slm)
・容器内圧力:70kPa
・供給時間:30秒供給、30秒停止
・繰り返し回数:10回
【0124】
結果を図12に示す。図12において、X軸は供給時間(min)を、第1Y軸は容器内圧力(kPa)を、第2Y軸は混合ガス流量(slm)を、それぞれ示す。
図12に示すように、第1バッファータンク10を設置し、供給制御装置19によって第1バッファータンク内の圧力を監視しながら、キャリアガス供給とバルブの開閉を制御することで、混合ガスを設定した流量で安定的に供給することができた。
また、図12に示すように、第1バッファータンク10を設置に伴う圧力変動抑制により、原料容器2内の圧力についても安定化することが確認された。
【0125】
(比較例2)
混合ガス供給装置として、図6に示す混合ガス供給装置61から第1バッファータンク10を省いた装置を用い、ALDプロセスを想定し供給工程と停止工程とを繰り返した時の流量安定性を評価した。試験条件は、以下の通り。
・キャリアガス:窒素(N
・キャリアガス流量:3000sccm
・成膜材料S:ヒドラジン(N
・混合ガス流量:3.00(slm)
・容器内圧力:70kPa
・供給時間:30秒供給、30秒停止
・繰り返し回数:10回
【0126】
結果を図13に示す。図13において、X軸は供給時間(min)を、第1Y軸は容器内圧力(kPa)を、第2Y軸は混合ガス流量(slm)を、それぞれ示す。
図13に示すように、第1バッファータンク10を設けない場合、供給制御装置19によって混合ガス流量を制御しても、混合ガスを設定した流量で安定的に供給することができなかった。
また、図13に示すように、第1バッファータンク10を設けないため、原料容器2内の急激な圧力変動を抑制できないことが確認された。
【符号の説明】
【0127】
1,21,31,41,51,61 混合ガス供給装置
2,2A,2B 原料容器
3,3A,3B 容器ヒータ(第1加熱器)
4 容器ヒータ温度調節装置(第1加熱器調節装置)
5 キャリアガス流量制御装置
6 配管ヒータ(第2加熱器)
7 配管ヒータ温度調節装置(第2加熱器調節装置)
8 圧力調節装置
9 混合ガス計測装置
9A 混合ガス濃度分析装置
9B 混合ガス流量計
10 第1バッファータンク(バッファータンク)
11 第1圧力計
12 第2圧力計(圧力計)
13 検出器
14 第2バッファータンク
15 混合ガス流量制御装置
16 真空ポンプ
17 混合ガス濃度調節装置
18 混合ガス濃度演算装置
19 供給制御装置
L1,L1A,L1B キャリアガス導入経路
L2,L2A,L2B 混合ガス導出経路
L3,L3A,L3B バイパス経路
L4A,L4B 排気経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13