(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027373
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】混合ガス供給方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/455 20060101AFI20240222BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240222BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20240222BHJP
B01F 35/82 20220101ALI20240222BHJP
B01F 23/10 20220101ALI20240222BHJP
【FI】
C23C16/455
H01L21/31 B
H01L21/318 B
B01F35/82
B01F23/10
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130121
(22)【出願日】2022-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 逸人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼ 洋志
(72)【発明者】
【氏名】幸田 祥人
(72)【発明者】
【氏名】神力 学
【テーマコード(参考)】
4G035
4G037
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4G035AB02
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(57)【要約】
【課題】成膜材料ガスを含む混合ガスを安定した濃度で供給可能な混合ガス供給方法を提供する。
【解決手段】成膜材料を含む混合溶液を収容する原料容器を用い、成膜材料のガスを少なくとも1種以上含む混合ガスを、混合ガス中の成膜材料の濃度を調整して供給する混合ガス供給方法であって、混合ガス中の成膜材料の濃度の設定値、キャリアガスの流量の設定値、及び原料容器内の圧力の設定値をそれぞれ決定し、原料容器内を設定した圧力に調節しながら、設定した流量のキャリアガスを原料容器に導入し、原料容器から成膜材料のガスを含む混合ガスを導出するとともに、混合ガス中の成膜材料の濃度を計測して計測値を得、混合ガス中の成膜材料の濃度の計測値と設定値との差分を算出し、差分に基づいて、原料容器内の圧力の設定値を更新する、混合ガス供給方法を選択する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜材料を含む混合溶液を収容する原料容器を用い、前記成膜材料のガスを少なくとも1種以上含む混合ガスを、前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度を調整して供給する混合ガス供給方法であって、
前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度の設定値、キャリアガスの流量の設定値、及び前記原料容器内の圧力の設定値をそれぞれ決定し、
前記原料容器内を設定した圧力に調節しながら、設定した流量の前記キャリアガスを前記原料容器に導入し、前記原料容器から前記成膜材料のガスを含む混合ガスを導出するとともに、
前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度を計測して計測値を得、
前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度の、前記計測値と前記設定値との差分を算出し、前記差分に基づいて、前記原料容器内の圧力の前記設定値を更新する、混合ガス供給方法。
【請求項2】
成膜材料を含む混合溶液を収容する原料容器を用い、前記成膜材料のガスを少なくとも1種以上含む混合ガスを、前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度を調整して供給する混合ガス供給方法であって、
前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度の設定値、キャリアガスの流量の設定値、及び前記原料容器内の圧力の設定値をそれぞれ決定し、
前記原料容器内を設定した圧力に調節しながら、設定した流量の前記キャリアガスを前記原料容器に導入し、前記原料容器から前記成膜材料のガスを含む混合ガスを導出するとともに、
前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度を計測して計測値を得、
前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度の、前記計測値と前記設定値との差分を算出し、前記差分に基づいて、前記キャリアガスの流量の前記設定値を更新する、混合ガス供給方法。
【請求項3】
成膜材料を含む混合溶液を収容する原料容器を用い、前記成膜材料のガスを少なくとも1種以上含む混合ガスを、前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度を調整して供給する混合ガス供給方法であって、
前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度の設定値、キャリアガスの流量の設定値、及び前記原料容器内の圧力の設定値をそれぞれ決定し、
前記原料容器内を設定した圧力に調節しながら、設定した流量の前記キャリアガスを前記原料容器に導入し、前記原料容器から前記成膜材料のガスを含む混合ガスを導出するとともに、
前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度を計測して計測値を得、
前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度の、前記計測値と前記設定値との差分を算出し、前記差分に基づいて、前記原料容器内の圧力の前記設定値、及び前記キャリアガスの流量の前記設定値の両方を更新する、混合ガス供給方法。
【請求項4】
前記成膜材料が、窒素含有化合物である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の混合ガス供給方法。
【請求項5】
前記混合溶液は、有機溶媒を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の混合ガス供給方法。
【請求項6】
超音波式ガス濃度計を用いて、前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度を計測し、前記計測値を得る、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の混合ガス供給方法。
【請求項7】
前記混合ガスに含まれる水分濃度が、1ppm以下である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の混合ガス供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合ガス供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスなどにおいて、金属薄膜、金属酸化膜、金属窒化膜は多くの工程で用いられている。例えば、金属窒化膜は、物理的、化学的、電気的及び機械的特性に起因して、多くの用途に幅広く用いられている。シリコン窒化膜(SiN)は、トランジスタを形成する際、ゲート絶縁膜やサイドウォールスペーサー等に用いられている。また、チタン窒化膜(TiN)、タンタル窒化膜(TaN)、及び窒化タングステン膜(WN)は、集積回路の配線のバリア膜などに用いられている。
【0003】
特に近年では、先端ロジックにおけるFin-FET(Fin Field-Effect Transistor)などの3次元トランジスタ構造の微細化や、3D-NANDの高集積化が一段と進み、集積回路の水平寸法、垂直寸法が縮小し続ける中で、サブnmオーダーの膜厚制御、ならびに良好なカバレッジ特性を有する薄膜形成技術が求められている。
【0004】
一般的に、化学気相成長法(CVD:Chemical Vapor Deposition)や原子層体積法(ALD:Atomic Layer Deposition)などにより薄膜を形成するためには、金属含有化合物、窒素含有化合物、酸化含有化合物、炭素含有化合物などの成膜材料をガス化させて供給する必要がある。しかしながら、成膜材料は低蒸気圧であることが多いため、気化した後に成膜反応炉に供給する必要がある。
【0005】
成膜材料を成膜反応炉に供給する方法として、特許文献1や特許文献2には、原料容器内をキャリアガスで通気し、バブリングすることで成膜材料の蒸気(成膜材料ガス)とキャリアガスとの混合ガスを供給する技術が開示されている。バブリング供給の場合、成膜材料の温度、及び原料容器内の圧力を一定に保ち、キャリアガス流量を制御することで、成膜材料ガスとキャリアガスとの混合ガスを安定した濃度で供給できる。
【0006】
また、非特許文献1には、成膜材料として無水ヒドラジンガスを安全に供給することが可能な「BRUTE Hydrazine」の技術が開示されている。この「BRUTE Hydrazine」は、無水ヒドラジンと溶媒とが混合した混合溶液であり、無水ヒドラジンに対して溶媒の蒸気圧が非常に低いため、無水ヒドラジンガスのみを安定的に供給できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2005-522869号公報
【特許文献2】特開2015-119045号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】D.Alvarez Jr.,et al.,ECS Transactions,77,219,2017.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1及び特許文献2に開示された技術では、成膜材料の温度、及び原料容器内の圧力を一定に保ち、キャリアガス流量を制御しても、混合ガスの供給直後において成膜材料ガスの濃度が変動し、均一な濃度(設定濃度)とならない課題がある。また、混合ガスの供給中、原料容器内において気化熱に伴う成膜材料の蒸気圧低下(成膜材料温度の低下)が生じ、混合ガス中の成膜材料ガス濃度が減少(変動)するという課題がある。
【0010】
また、非特許文献1に開示された混合溶液では、上述した課題に加えて、混合溶液を消費するにつれてヒドラジンガスの蒸気圧が減少し、ヒドラジンガスの濃度が低下するという課題がある。近年、半導体の微細化に伴う薄膜化がよりいっそう進む中で、供給中の混合ガス濃度変動は、薄膜の膜質に悪影響を及ぼすため、上述した課題を解決することが重要である。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、成膜材料ガスを含む混合ガスを安定した濃度で供給可能な混合ガス供給方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を備える。
[1] 成膜材料を含む混合溶液を収容する原料容器を用い、前記成膜材料のガスを少なくとも1種以上含む混合ガスを、前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度を調整して供給する混合ガス供給方法であって、
前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度の設定値、キャリアガスの流量の設定値、及び前記原料容器内の圧力の設定値をそれぞれ決定し、
前記原料容器内を設定した圧力に調節しながら、設定した流量の前記キャリアガスを前記原料容器に導入し、前記原料容器から前記成膜材料のガスを含む混合ガスを導出するとともに、
前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度を計測して計測値を得、
前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度の、前記計測値と前記設定値との差分を算出し、前記差分に基づいて、前記原料容器内の圧力の前記設定値を更新する、混合ガス供給方法。
[2] 成膜材料を含む混合溶液を収容する原料容器を用い、前記成膜材料のガスを少なくとも1種以上含む混合ガスを、前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度を調整して供給する混合ガス供給方法であって、
前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度の設定値、キャリアガスの流量の設定値、及び前記原料容器内の圧力の設定値をそれぞれ決定し、
前記原料容器内を設定した圧力に調節しながら、設定した流量の前記キャリアガスを前記原料容器に導入し、前記原料容器から前記成膜材料のガスを含む混合ガスを導出するとともに、
前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度を計測して計測値を得、
前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度の、前記計測値と前記設定値との差分を算出し、前記差分に基づいて、前記キャリアガスの流量の前記設定値を更新する、混合ガス供給方法。
[3] 成膜材料を含む混合溶液を収容する原料容器を用い、前記成膜材料のガスを少なくとも1種以上含む混合ガスを、前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度を調整して供給する混合ガス供給方法であって、
前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度の設定値、キャリアガスの流量の設定値、及び前記原料容器内の圧力の設定値をそれぞれ決定し、
前記原料容器内を設定した圧力に調節しながら、設定した流量の前記キャリアガスを前記原料容器に導入し、前記原料容器から前記成膜材料のガスを含む混合ガスを導出するとともに、
前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度を計測して計測値を得、
前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度の、前記計測値と前記設定値との差分を算出し、前記差分に基づいて、前記原料容器内の圧力の前記設定値、及び前記キャリアガスの流量の前記設定値の両方を更新する、混合ガス供給方法。
[4] 前記成膜材料が、窒素含有化合物である、[1]乃至[3]のいずれかに記載の混合ガス供給方法。
[5] 前記混合溶液は、有機溶媒を含む、[1]乃至[4]のいずれかに記載の混合ガス供給方法。
[6] 超音波式ガス濃度計を用いて、前記混合ガス中の前記成膜材料の濃度を計測し、前記計測値を得る、[1]乃至[5]のいずれかに記載の混合ガス供給方法。
[7] 前記混合ガスに含まれる水分濃度が、1ppm以下である、[1]乃至[6]のいずれかに記載の混合ガス供給方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の混合ガス供給方法は、成膜材料ガスを含む混合ガスを安定した濃度で供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態の混合ガス供給方法に適用可能な混合ガス供給装置の構成を示す系統図である。
【
図2】第2実施形態の混合ガス供給方法に適用可能な混合ガス供給装置の構成を示す系統図である。
【
図3】第3実施形態の混合ガス供給方法に適用可能な混合ガス供給装置の構成を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した一実施形態である混合ガス供給方法について、それに適用可能な混合ガス供給装置の構成と併せて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
また、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0016】
<第1実施形態>
(混合ガス供給装置)
先ず、本発明の混合ガス供給方法の第1実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、第1実施形態の混合ガス供給方法に適用可能な混合ガス供給装置の構成を示す系統図である。
図1に示すように、本実施形態の混合ガス供給方法に適用可能な混合ガス供給装置1は、原料容器2(2A,2B)、容器ヒータ(第1加熱器)3(3A,3B)、キャリアガス流量制御装置5、配管ヒータ(第2加熱器)6、圧力調節装置8、混合ガス濃度分析装置9、混合ガス濃度調節装置10、第1圧力計11、キャリアガス導入経路L1(L1A,L1B)、混合ガス導出経路L2(L2A,L2B)及びバイパス経路L3(L3A,L3B)を備えて、概略構成されている。
【0017】
本実施形態に適用可能な混合ガス供給装置1は、成膜材料のガスを少なくとも1種以上含む混合ガスを、混合ガス中の成膜材料の濃度を任意な値に調整して、例えば、後段の成膜装置(図示略)に供給する装置である。
なお、成膜装置は、化学気相成長法に適用可能であれば、特に限定されない。成膜装置としては、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置やALD(Atomic Layer Deposition)装置が挙げられる。
【0018】
原料容器2(2A,2B)は、内側に成膜材料Sを含む混合溶液を収容する容器(供給源)である。
原料容器2は、1つであってもよいし、2以上であってもよい。以下、本実施形態に適用可能な混合ガス供給装置1では、2つの原料容器2A,2Bを用いる場合を一例として説明する。
また、混合ガス供給装置1では、2つの原料容器2A,2Bを一つずつ使用してもよいし、2つ同時に使用してもよい。ここで、2つの原料容器2A,2Bを一つずつ使用する場合、一方の容器が空になった後、他方の容器へ切り替えることで、成膜材料Sを連続して供給できる。また、2つの原料容器2A,2Bを同時に使用する場合、キャリアガスと成膜材料との接触面積が増大するため、混合ガス中の成膜材料ガスの濃度を上げることができる。なお、原料容器2の使用態様については、後段の成膜装置(図示略)における成膜プロセスに合わせて、適切な方法を適宜選択できる。
【0019】
成膜材料Sは、常温常圧で液体または固体である材料であり、CVDやALDなどの薄膜形成プロセスに用いられる材料である。成膜材料Sは、金属含有化合物、窒素含有化合物、炭素含有化合物、及び酸素含有化合物からなる群から選択される、1種以上の化合物である。
【0020】
(混合溶液)
本実施形態では、成膜材料Sを含む混合溶液を収容する原料容器2を用いる。混合溶液は、特に制限されるものではないが、2液以上の混合溶液であり、窒素含有化合物を含む混合溶液であることが好ましい。なお、混合溶液には、有機溶媒が含まれてもよい。
【0021】
(金属含有化合物)
金属含有化合物は、特に限定されないが、シリコン(Si)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、バナジウム(V)、鉄(Fe)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、インジウム(In)、ハフニウム(Hf)、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)からなる群から選択される1つ以上の金属元素を含むものが挙げられる。
【0022】
金属含有化合物のうち、ハロゲン金属化合物であれば、TiCl4、Si2Cl6(HCDS:ヘキサクロロジシラン)、SiCl4、SiHCl3、SiH2Cl2、SiH3Cl、SiI4、SiHI3、SiH2I2、SiH3I、TaCl5、AlCl3、GaCl3、ZrCl4、HfCl4、MoO2Cl2、MoCl5、WF6、WCl6、WCl5の中から選択されるものが好ましい。
【0023】
また、金属含有化合物のうち、有機金属化合物であれば、TDMAT(テトラキスジメチルアミノチタン)、3DMAS(トリスジメチルアミノシラン、)BDEAS(ビスジエチルアミノシラン)、BTBAS(ビスターシャリーブチルアミノシラン)、DIPAS(ジイソプロピルアミノシラン)、PDMAT(ペンタキスジメチルアミノタンタル)、TMA(トリメチルアルミニウム)、TMG(トリメチルガリウム)、ハフニウム含有化合物、ジルコニウム含有化合物、コバルト含有化合物、ルテニウム含有化合物の中から選択されるものが好ましい。
【0024】
(窒素含有化合物)
窒素含有化合物は、特に限定されないが、例えば、アミン化合物、ヒドラジン化合物、アンモニアが挙げられる。
【0025】
アミン化合物としては、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、ターシャリーブチルアミンからなる群から選択される化合物が好ましい。
【0026】
ヒドラジン化合物としては、特に限定されないが、ヒドラジン(N2H4)、モノメチルヒドラジン、ジメチルヒドラジン、ターシャリーブチルヒドラジン、フェニルヒドラジン、プロピルヒドラジンなどが挙げられる。ヒドラジン化合物としては、これらの群からいずれか1種を選択して用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
これらのヒドラジン化合物のうち、「BRUETE Hydrazine」の主成分であるヒドラジン化合物であることが好ましく、ヒドラジン(N2H4)であることがより好ましい。
【0027】
一般的に、ヒドラジン化合物は、宇宙船の推進剤やロケットエンジンの燃料として使用されるように、爆発的な反応を生じることが知られている。加えて、ヒドラジンおよびモノメチルヒドラジンは毒性が高く、その許容濃度(TLV-TWA)は0.01ppmであり、半導体製造プロセスに用いられているアンモニア(許容濃度:25ppm)、ホスフィン(許容濃度:0.3ppm)、モノシラン(許容濃度:5ppm)よりも、大幅に低い。これらの性質は、化学薬品の危険性を示す規格であるNFPA(National Fire Protection Association)において、ヒドラジンが4-4-3(Health-Flammability-Instability)であり、モノメチルヒドラジンが4-3-2であることからも明らかであり、取扱う上で安全面に十分な配慮が求められる。このため、原料容器2は、密封容器であることが好ましい。
【0028】
(炭素含有化合物)
炭素含有化合物としては、特に限定されないが、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、炭化水素化合物、アルコール化合物、エーテル化合物、グリコール化合物、ケトン化合物からなる群から選択される1以上の化合物を用いることができる。
【0029】
(酸素含有化合物)
酸素含有化合物としては、特に限定されないが、水(H2O)、過酸化水素(H2O2)が挙げられる。
【0030】
(有機溶媒)
有機溶媒は、特に限定されるものではないが、炭化水素化合物、アルコール化合物、エーテル化合物、グリコール化合物、アミド化合物、ケトン化合物からなる群から適宜選択できる。
炭化水素化合物としては、プロパン、ブタン、ヘプタン、ペンタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジメチルスルホキシドが挙げられる。
アルコール化合物としては、メタノール、ジメチルエタノール、エタノール、プロパノール、メタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、プロパノールアミンが挙げられる。
エーテル化合物としては、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、クラウンエーテル、酢酸エチル、ジグリム、トリグリムが挙げられる。
グリコール化合物としては、エチレングリール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールが挙げられる。
アミド化合物としては、ホルムアミド、アセトアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、テトラメチル尿素、N-メトキシ-N-メチルアセトアミド、N-エチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアニリドが挙げられる。
ケトン化合物としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノンが挙げられる。
有機溶媒としては、これらの群からいずれか1種を選択して用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
なお、成膜材料Sは、2種類以上の液体を混合したものであっても良いし、固体を液体に溶解させたものであっても良い。
また、成膜材料のガスとは、成膜材料がガス化された状態のものを示す。
【0032】
容器ヒータ3(3A,3B)は、原料容器2(2A,2B)の周囲に位置し、原料容器2(2A,2B)内の成膜材料Sを含む混合溶液が所定の温度範囲となるように原料容器2(2A,2B)をそれぞれ加熱する。
容器ヒータ3(3A,3B)は、原料容器2(2A,2B)を加熱できるものであれば特に限定されない。容器ヒータ3(3A,3B)としては、ブリーズヒーター、マントルヒーター、ウォーターバス、オイルバスなどが挙げられる。これらの中でも、容器内の混合溶液を加温する際、均熱性および安全性の観点から、ウォーターバスやオイルバスを用いることが好ましい。
【0033】
容器ヒータ3(3A,3B)による原料容器2(2A,2B)を加熱する温度は、安全面、そして安定した成膜材料Sを供給させる観点から成膜材料Sが分解しない温度に設定することが好ましい。具体的には、室温(20℃)~200℃の範囲に設定することが好ましく、30~60℃の範囲であることがより好ましい。
【0034】
キャリアガス導入経路L1は、原料容器2にキャリアガスを導入する流路である。キャリアガス導入経路L1の基端は、図示略のキャリアガス供給源と接続されている。キャリアガス導入経路L1のガス流れ方向における先端は、原料容器2に接続されている。本実施形態では、キャリアガス導入経路L1の先端は経路L1A及び経路L1Bに分岐しており、経路L1Aが原料容器2Aに、経路L1Bが原料容器2Bに、それぞれ接続されている。これにより、本実施形態に適用可能な混合ガス供給装置1によれば、キャリアガス導入経路L1を介して、原料容器2A,2Bにそれぞれキャリアガスを導入できる。
【0035】
キャリアガスは、特に限定されないが、成膜材料Sの種類に応じて適宜選択することができる。キャリアガスとしては、例えば、ヘリウム(He)、窒素(N2)、アルゴン(Ar)等の希ガスや、水素(H2)、及びアンモニア(NH3)が挙げられる。キャリアガスとしては、これらのうち1種を選択して用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0036】
キャリアガス流量制御装置5は、キャリアガス導入経路L1に位置する。キャリアガス流量制御装置5は、キャリアガス導入経路L1に供給されるキャリアガスの流量を制御する。キャリアガス流量制御装置5は、流量の制御が可能であれば特に限定されない。キャリアガス流量制御装置5としては、例えば、マスフローコントローラ(MFC)や、開度の制御が可能な圧力調整器が挙げられる。
【0037】
キャリアガス導入経路L1に供給するキャリアガスの流量は、特に限定されるものではなく、適宜選択できるものである。キャリアガス流量制御装置5によるキャリアガスの流量の制御範囲としては、10~10000sccmの範囲であることが好ましい。
【0038】
混合ガス導出経路L2は、原料容器2から成膜材料Sのガスを少なくとも1種以上含む混合ガスを導出する流路である。混合ガス導出経路L2の基端は、原料容器2に接続されている。本実施形態では、混合ガス導出経路L2の基端は経路L2A及び経路L2Bに分岐しており、経路L2Aが原料容器2Aに、経路L2Bが原料容器2Bに、それぞれ接続されている。また、混合ガス導出経路L2の先端は、上述したように図示略の成膜装置等と連通されている。これにより、混合ガス供給装置1によれば、原料容器2A,2Bからそれぞれ混合ガスを混合ガス導出経路L2に導出した後、後段の成膜装置等に混合ガスを供給できる。
【0039】
混合ガス供給装置1は、原料容器2にキャリアガス導入経路L1及び混合ガス導出経路L2が接続されているため、キャリアガス導入経路L1からキャリアガスを原料容器2(2A,2B)内に導入し、キャリアガスに同伴した成膜材料Sの気体(ガス)を混合ガスとして混合ガス導出経路L2に導出できる。
なお、原料容器2にキャリアガスを導入する際は、バブリングにより供給してもよいし、容器内の気相(すなわち成膜材料Sの蒸気)にキャリアガスを供給してもよい。
【0040】
混合ガスは、主成分として成膜材料Sのガスを少なくとも1種以上含む。混合ガスは、キャリアガスを含んでいてもよい。これらの中でも、蒸気圧が低く濃度制御が難しい観点から、混合ガスの主成分は、窒素含有化合物または金属含有化合物と、キャリアガスとであることが好ましい。
【0041】
配管ヒータ(第2加熱器)6は、キャリアガス導入経路L1のキャリアガス流量制御装置5以降の分岐した経路L1A,L1B及び混合ガス導出経路L2(L2A,L2B)を構成する配管の表面を覆うように設けられており、キャリアガス導入経路L1及び混合ガス導出経路L2を加熱する。
【0042】
キャリアガス及び混合ガスの流路を構成する配管の温度は、成膜材料Sのガスが再液化・再固化しない温度とする必要があるため、原料容器2の温度よりも高いことが好ましい。これにより、混合ガス導出経路L2において成膜材料Sの再液化を防ぐことができ、成膜材料Sのガスを含む混合ガスを安全、かつ安定して混合ガス導出経路L2に流通できる。
【0043】
バイパス経路L3は、キャリアガス導入経路L1から分岐し、原料容器2を経由することなく迂回して混合ガス導出経路L2と合流する流路である。本実施形態に適用可能な混合ガス供給装置1では、バイパス経路L3Aは、キャリアガス導入経路L1Aから分岐し、原料容器2Aを経由することなく迂回して混合ガス導出経路L2Aと合流する。同様に、バイパス経路L3Bは、キャリアガス導入経路L1Bから分岐し、原料容器2Bを経由することなく迂回して混合ガス導出経路L2Bと合流する。
【0044】
バイパス経路L3(L3A,L3B)を流路として選択することで、キャリアガス導入経路L1に流通するキャリアガスを原料容器2に導入することなく、原料容器2の二次側の混合ガス導出経路L2に供給できる。また、混合ガス導出経路L2に残留する成膜材料Sを含む気体(残留ガス)を除去する際、バイパス経路L3(L3A,L3B)を介してキャリアガスを供給することにより、残留ガスを効率的にパージ除去できる。
【0045】
本実施形態に適用可能な混合ガス供給装置1では、各経路に1以上の開閉弁がそれぞれ設けられており、開閉弁の開閉状態を適宜選択することにより、目的に応じて任意の流路を形成可能となっていることが好ましい。
【0046】
第1圧力計11は、混合ガス導出経路L2に位置し、原料容器2(2A,2B)内の圧力を測定する。原料容器2内の圧力を検知することで、成膜材料Sを含む混合溶液の残量の把握や、容器内の異常を発見することができる。
【0047】
圧力調節装置8は、混合ガス導出経路L2に位置し、原料容器2(2A,2B)の圧力を調節する。圧力調節装置8は、原料容器2内の圧力に基づいて原料容器2内の圧力を調節可能であれば、特に限定されない。圧力調節装置8としては、例えば、背圧弁(バックブレッシャーレギュレーター;BPR)、オートプレッシャーレギュレータ、ピエゾバルブ、圧力コントロールシステムが挙げられる。
【0048】
なお、圧力調節装置8は、圧力計と圧力調節弁が一体化している機器であっても良いし、圧力計と圧力調節弁が別々の機器であっても良い。
別々の機器である場合としては、例えば、原料容器2内の圧力を測定する第1圧力計11と、圧力調節弁(開度調整可能な開閉弁、バタフライ弁等)とを用い、それぞれを連動させることで原料容器2内の圧力を調節する。
【0049】
混合ガス濃度分析装置9は、混合ガス導出経路L2において圧力調節装置8の二次側に位置し、混合ガス導出経路L2内を流通する混合ガスの濃度を計測する装置である。混合ガス濃度分析装置9としては、特に限定されないが、混合ガス中の成膜材料Sの濃度を測定可能なガス濃度計の中から選択することが好ましい。
【0050】
混合ガス濃度分析装置9として適用可能なガス濃度計としては、例えば、FT-IR、ND-IR、超音波式ガス濃度計、ガス濃度センサー、レーザー式ガス濃度計が挙げられる。これらの中でも、超音波式ガス濃度計を用いることが好ましい。
【0051】
混合ガス濃度調節装置10は、混合ガス中の成膜材料Sの濃度を設定値に調整する制御装置である。
混合ガス濃度調節装置10は、圧力調節装置8及び混合ガス濃度分析装置9と、有線又は無線によって信号を送受信可能とされている。具体的には、混合ガス濃度調節装置10は、混合ガス濃度分析装置9から濃度の計測値を受信し、圧力調節装置8に制御信号を送信する。
【0052】
また、混合ガス濃度調節装置10は、混合ガス中の成膜材料Sの濃度を設定値として設定することができる。設定値は、作業者が混合ガス濃度調節装置10に直接入力してもよいし、有線又は無線によって信号を送信してもよい。
【0053】
また、混合ガス濃度調節装置10は、混合ガス濃度分析装置9により得られた混合ガスの濃度の計測値と、混合ガス濃度調節装置10に設定された設定値との差分を算出し、得られた差分に基づいて、計測値(実測値)が設定値となるように、圧力調節装置8の圧力設定値を更新する機能を有する。
【0054】
具体的には、混合ガス濃度調節装置10に設定した濃度(設定値)に対し、混合ガス濃度分析装置9によって実測された濃度の計測値が足りなかった場合や、混合ガスを供給していくにつれて、実測された濃度の計測値が減少していった場合、混合ガス濃度調節装置10から圧力調節装置8に対して圧力設定値を更新する制御信号が送信される。これにより、瞬時に圧力調節装置8の開度が開く方向に調節され、応答性良く設定した濃度の混合ガスを供給することができる。
【0055】
本実施形態に適用可能な混合ガス供給装置1によれば、圧力調節装置8及び混合ガス濃度分析装置9との間で信号を送受信可能な混合ガス濃度調節装置10を備えるため、混合ガスの供給初期の濃度変動や、連続供給中の材料温度低下に伴う蒸気圧変動が生じた場合であっても、混合ガス濃度調節装置10に設定した濃度(設定値)の混合ガスを安定して供給することができる。
【0056】
(混合ガス供給方法)
次に、本発明の混合ガス供給方法の第1実施形態について、
図1に示す混合ガス供給装置1を用いた場合を一例として説明する。
本実施形態の混合ガス供給方法は、成膜材料Sを含む混合溶液を収容する原料容器2(2A,2B)を用い、成膜材料Sのガスを少なくとも1種以上含む混合ガスを、混合ガス中の成膜材料の濃度を調整して供給する混合ガス供給方法であって、混合ガス中の成膜材料Sの濃度の設定値、キャリアガスの流量の設定値、及び原料容器2(2A,2B)内の圧力の設定値をそれぞれ決定し、原料容器2(2A,2B)内を設定した圧力に調節しながら、設定した流量のキャリアガスを原料容器2(2A,2B)に導入し、原料容器2(2A,2B)から成膜材料Sのガスを含む混合ガスを導出するとともに、混合ガス中の成膜材料Sの濃度を計測して計測値を得、混合ガス中の成膜材料Sの濃度の、計測値と設定値との差分を算出し、差分に基づいて、原料容器2(2A,2B)内の圧力の設定値を更新する。
【0057】
具体的には、先ず、混合ガス中の成膜材料Sの濃度の設定値、キャリアガスの流量の設定値、及び原料容器2(2A,2B)内の圧力の設定値をそれぞれ決定する。
混合ガス中の成膜材料Sの濃度の設定値は、作業者が混合ガス濃度調節装置10に直接入力するか、有線又は無線によって信号を送信して入力する。
キャリアガスの流量の設定値は、作業者がキャリアガス流量制御装置5に直接入力するか、有線又は無線によって信号を送信して入力する。
原料容器2(2A,2B)内の圧力の設定値は、作業者が圧力調節装置8に直接入力するか、有線又は無線によって信号を送信して入力する。なお、圧力調節装置8が混合ガス濃度調節装置10を介して制御される場合、原料容器2(2A,2B)内の圧力の設定値は、作業者が混合ガス濃度調節装置10に直接入力、あるいは有線又は無線によって信号を送信して入力する。
【0058】
次に、圧力調節装置8によって原料容器2(2A,2B)内を設定した圧力に調節しながら、キャリアガス導入経路L1を介して設定した流量のキャリアガスを原料容器2(2A,2B)に導入する。これにより、原料容器2(2A,2B)から成膜材料Sのガスを含む混合ガスを混合ガス導出経路L2に導出する。
【0059】
次に、混合ガス導出経路L2に導出される混合ガス中の成膜材料Sの濃度を、混合ガス濃度分析装置9を用いて計測して計測値を得る。
【0060】
混合ガス濃度調節装置10は、混合ガス濃度分析装置9で計測された混合ガス中の成膜材料Sの濃度の計測値を受信する。ここで、本実施形態のガス供給方法では、混合ガス濃度調節装置10において、混合ガス濃度分析装置9により得られた混合ガスの濃度の計測値と、混合ガス濃度調節装置10に設定された設定値との差分を算出し、得られた差分に基づいて、計測値(実測値)が設定値となるように、混合ガス濃度調節装置10から圧力調節装置8に制御信号を送信する。
【0061】
具体的には、混合ガス濃度調節装置10に設定した濃度(設定値)に対し、混合ガス濃度分析装置9によって実測された濃度の計測値が足りなかった場合や、混合ガスを供給していくにつれて、実測された濃度の計測値が減少していった場合、混合ガス濃度調節装置10から圧力調節装置8に対して圧力設定値を更新する制御信号が送信される。これにより、瞬時に圧力調節装置8の開度が開く方向に調節され、応答性良く設定した濃度の混合ガスを供給することができる。
【0062】
本実施形態のガス供給方法によれば、混合ガス中の成膜材料Sの濃度を計測して計測値を得、混合ガス中の成膜材料Sの濃度の、計測値と設定値との差分を算出し、差分に基づいて、原料容器2(2A,2B)内の圧力の設定値を更新するため、混合ガスの供給初期の濃度変動や、連続供給中の材料温度低下に伴う蒸気圧変動が生じた場合であっても、混合ガス濃度調節装置10に設定した濃度(設定値)の混合ガスを安定して供給することができる。
【0063】
また、本実施形態のガス供給方法によれば、成膜材料として「BRUTE Hydrazine」のような混合溶液を用いた場合、「BRUTE Hydrazine」を消費するにつれてヒドラジンガスの蒸気圧が減少したとしても、連動して圧力調節装置8の圧力設定値が調節されるため、設定した混合ガス濃度を安定して供給することができる。
【0064】
<第2実施形態>
(混合ガス供給装置)
図2は、第2実施形態の混合ガス供給方法に適用可能な混合ガス供給装置の構成を示す系統図である。
図2に示すように、第2実施形態の混合ガス供給方法に適用可能な混合ガス供給装置21は、混合ガス導出経路L2における混合ガス濃度分析装置9が圧力調節装置8の一次側(上流側)に位置し、混合ガス濃度調節装置10に代えて混合ガス濃度調節装置20を備える点で上述した混合ガス供給装置1と異なっており、その他の構成は同一である。したがって、本実施形態に適用可能な混合ガス供給装置21では、混合ガス供給装置1と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
混合ガス濃度調節装置20は、混合ガス中の成膜材料Sの濃度を設定値に調整する制御装置である。
混合ガス濃度調節装置20は、キャリアガス流量制御装置5及び混合ガス濃度分析装置9と、有線又は無線によって信号を送受信可能とされている。具体的には、混合ガス濃度調節装置20は、混合ガス濃度分析装置9から濃度の計測値を受信し、キャリアガス流量制御装置5に制御信号を送信する。
【0066】
また、混合ガス濃度調節装置20は、混合ガス中の成膜材料Sの濃度を設定値として設定することができる。設定値は、作業者が混合ガス濃度調節装置20に直接入力してもよいし、有線又は無線によって信号を送信してもよい。
【0067】
また、混合ガス濃度調節装置20は、混合ガス濃度分析装置9により得られた混合ガスの濃度の計測値と、混合ガス濃度調節装置20に設定された設定値との差分を算出し、得られた差分に基づいて、計測値(実測値)が設定値となるように、キャリアガス流量制御装置5のキャリアガスの流量設定値を更新する機能を有する。
【0068】
具体的には、混合ガス濃度調節装置20に設定した濃度(設定値)に対し、混合ガス濃度分析装置9によって実測された濃度の計測値が足りなかった場合や、混合ガスを供給していくにつれて、実測された濃度の計測値が減少していった場合、混合ガス濃度調節装置20からキャリアガス流量制御装置5に対して流量設定値を更新する制御信号が送信される。これにより、瞬時にキャリアガス流量制御装置5によってキャリアガスの流量が調節され、応答性良く設定した濃度の混合ガスを供給することができる。
【0069】
より具体的には、例えば、混合ガス濃度調節装置20に設定した濃度(設定値)に対して濃度が濃い場合、キャリアガス流量が多くなるように、キャリアガス流量制御装置5において流量設定値が更新される。キャリアガス流量が多くなると、混合ガスの濃度はその分だけ希釈され、濃度が薄くなる方向に働く。
一方、設定値に対して濃度が薄い場合、キャリアガス流量が少なるようにキャリアガス流量制御装置5において流量設定値が更新される。キャリアガス流量が少なくなると、混合ガスの希釈量が少なくなるため、濃度が濃くなる方向に働く。
このように、本実施形態に適用可能な混合ガス供給装置によれば、瞬時にキャリアガス流量が調整されるため、応答性良く設定した濃度の混合ガスを供給する。
【0070】
また、本実施形態に適用可能な混合ガス供給装置21によれば、キャリアガス流量制御装置5及び混合ガス濃度分析装置9との間で信号を送受信可能な混合ガス濃度調節装置20を備えるため、混合ガスの供給初期の濃度変動や、連続供給中の材料温度低下に伴う蒸気圧変動が生じた場合であっても、混合ガス濃度調節装置20に設定した濃度(設定値)の混合ガスを安定して供給することができる。
【0071】
(混合ガス供給方法)
次に、本発明の混合ガス供給方法の第2実施形態について、
図2に示す混合ガス供給装置21を用いた場合を一例として説明する。
本実施形態の混合ガス供給方法は、成膜材料Sを含む混合溶液を収容する原料容器2(2A,2B)を用い、成膜材料Sのガスを少なくとも1種以上含む混合ガスを、混合ガス中の成膜材料の濃度を調整して供給する混合ガス供給方法であって、混合ガス中の成膜材料Sの濃度の設定値、キャリアガスの流量の設定値、及び原料容器2(2A,2B)内の圧力の設定値をそれぞれ決定し、原料容器2(2A,2B)内を設定した圧力に調節しながら、設定した流量のキャリアガスを原料容器2(2A,2B)に導入し、原料容器2(2A,2B)から成膜材料Sのガスを含む混合ガスを導出するとともに、混合ガス中の成膜材料Sの濃度を計測して計測値を得、混合ガス中の成膜材料Sの濃度の、計測値と設定値との差分を算出し、差分に基づいて、キャリアガスの流量の設定値を更新する。
【0072】
具体的には、先ず、混合ガス中の成膜材料Sの濃度の設定値、キャリアガスの流量の設定値、及び原料容器2(2A,2B)内の圧力の設定値をそれぞれ決定する。
混合ガス中の成膜材料Sの濃度の設定値は、作業者が混合ガス濃度調節装置20に直接入力するか、有線又は無線によって信号を送信して入力する。
キャリアガスの流量の設定値は、作業者がキャリアガス流量制御装置5に直接入力するか、有線又は無線によって信号を送信して入力する。なお、キャリアガス流量制御装置5が混合ガス濃度調節装置20を介して制御される場合、キャリアガスの流量の設定値は、作業者が混合ガス濃度調節装置20に直接入力、あるいは有線又は無線によって信号を送信して入力する。
原料容器2(2A,2B)内の圧力の設定値は、作業者が圧力調節装置8に直接入力するか、有線又は無線によって信号を送信して入力する。
【0073】
次に、圧力調節装置8によって原料容器2(2A,2B)内を設定した圧力に調節しながら、キャリアガス導入経路L1を介して設定した流量のキャリアガスを原料容器2(2A,2B)に導入する。これにより、原料容器2(2A,2B)から成膜材料Sのガスを含む混合ガスを混合ガス導出経路L2に導出する。
【0074】
次に、混合ガス導出経路L2に導出される混合ガス中の成膜材料Sの濃度を、混合ガス濃度分析装置9を用いて計測して計測値を得る。
【0075】
混合ガス濃度調節装置20は、混合ガス濃度分析装置9で計測された混合ガス中の成膜材料Sの濃度の計測値を受信する。ここで、本実施形態のガス供給方法では、混合ガス濃度調節装置20において、混合ガス濃度分析装置9により得られた混合ガスの濃度の計測値と、混合ガス濃度調節装置20に設定された設定値との差分を算出し、得られた差分に基づいて、計測値(実測値)が設定値となるように、混合ガス濃度調節装置30からキャリアガス流量制御装置5に制御信号を送信する。
【0076】
具体的には、混合ガス濃度調節装置20に設定した濃度(設定値)に対し、混合ガス濃度分析装置9によって実測された濃度の計測値が足りなかった場合や、混合ガスを供給していくにつれて、実測された濃度の計測値が減少していった場合、混合ガス濃度調節装置20からキャリアガス流量制御装置5に対してキャリアガスの流量の設定値を更新する制御信号が送信される。これにより、瞬時にキャリアガス流量制御装置5によってキャリアガスの流量が調節され、応答性良く設定した濃度の混合ガスを供給することができる。
【0077】
本実施形態のガス供給方法によれば、混合ガス中の成膜材料Sの濃度を計測して計測値を得、混合ガス中の成膜材料Sの濃度の、計測値と設定値との差分を算出し、差分に基づいて、キャリアガスの流量の設定値を更新するため、混合ガスの供給初期の濃度変動や、連続供給中の材料温度低下に伴う蒸気圧変動が生じた場合であっても、混合ガス濃度調節装置20に設定した濃度(設定値)の混合ガスを安定して供給することができる。
【0078】
また、本実施形態のガス供給方法によれば、成膜材料として「BRUTE Hydrazine」のような混合溶液を用いた場合、「BRUTE Hydrazine」を消費するにつれてヒドラジンガスの蒸気圧が減少したとしても、連動してキャリアガスの流量が調節されるため、設定した混合ガス濃度を安定して供給することができる。
【0079】
<第3実施形態>
(混合ガス供給装置)
図3は、第3実施形態の混合ガス供給方法に適用可能な混合ガス供給装置の構成を示す系統図である。
図3に示すように、第3実施形態の混合ガス供給方法に適用可能な混合ガス供給装置31は、混合ガス導出経路L2における混合ガス濃度分析装置9が圧力調節装置8の一次側(上流側)に位置し、混合ガス濃度調節装置10に代えて混合ガス濃度調節装置30を備える点で上述した混合ガス供給装置1と異なっており、その他の構成は同一である。したがって、本実施形態に適用可能な混合ガス供給装置31では、混合ガス供給装置1と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0080】
混合ガス濃度調節装置30は、混合ガス中の成膜材料Sの濃度を設定値に調整する制御装置である。
混合ガス濃度調節装置30は、キャリアガス流量制御装置5、圧力調節装置8及び混合ガス濃度分析装置9と、有線又は無線によって信号を送受信可能とされている。具体的には、混合ガス濃度調節装置30は、混合ガス濃度分析装置9から濃度の計測値を受信し、キャリアガス流量制御装置5及び圧力調節装置8に制御信号を送信する。
【0081】
また、混合ガス濃度調節装置30は、混合ガス中の成膜材料Sの濃度を設定値として設定することができる。設定値は、作業者が混合ガス濃度調節装置30に直接入力してもよいし、有線又は無線によって信号を送信してもよい。
【0082】
また、混合ガス濃度調節装置30は、混合ガス濃度分析装置9により得られた混合ガスの濃度の計測値と、混合ガス濃度調節装置30に設定された設定値との差分を算出し、得られた差分に基づいて、計測値(実測値)が設定値となるように、圧力調節装置8の圧力設定値、及びキャリアガス流量制御装置5のキャリアガスの流量設定値の両方を更新する機能を有する。
【0083】
具体的には、混合ガス濃度調節装置30に設定した濃度(設定値)に対し、混合ガス濃度分析装置9によって実測された濃度の計測値が足りなかった場合や、混合ガスを供給していくにつれて、実測された濃度の計測値が減少していった場合、混合ガス濃度調節装置30から、圧力調節装置8に対して圧力設定値を更新する制御信号、あるいはキャリアガス流量制御装置5に対して流量設定値を更新する制御信号が送信される。これにより、瞬時に圧力調節装置8の開度が開く方向に、あるいは瞬時にキャリアガス流量制御装置5によってキャリアガスの流量が、それぞれ調節され、応答性良く設定した濃度の混合ガスを供給することができる。
【0084】
より具体的には、例えば、混合ガス濃度調節装置30に設定した濃度(設定値)に対し、混合ガス濃度分析装置9によって実測された濃度が濃い場合、圧力調節装置8の圧力設定値が、容器内圧力が高くなる方向に更新される。また、同時に、キャリアガス流量制御装置5のキャリアガスの流量設定値が、キャリアガス流量が多くなる方向に更新される。
このように、本実施形態に適用可能な混合ガス供給装置31によれば、容器内圧力およびキャリアガス流量の両方の設定値が変更されることで、瞬時に容器内圧力が設定値まで到達するため、応答性良く設定した濃度の混合ガス供給を供給できる。
【0085】
また、本実施形態に適用可能な混合ガス供給装置31によれば、キャリアガス流量制御装置5、圧力調節装置8及び混合ガス濃度分析装置9との間で信号を送受信可能な混合ガス濃度調節装置30を備えるため、混合ガスの供給初期の濃度変動や、連続供給中の材料温度低下に伴う蒸気圧変動が生じた場合であっても、混合ガス濃度調節装置30に設定した濃度(設定値)の混合ガスを安定して供給することができる。
【0086】
(混合ガス供給方法)
次に、本発明の混合ガス供給方法の第3実施形態について、
図3に示す混合ガス供給装置31を用いた場合を一例として説明する。
本実施形態の混合ガス供給方法は、成膜材料Sを含む混合溶液を収容する原料容器2(2A,2B)を用い、成膜材料Sのガスを少なくとも1種以上含む混合ガスを、混合ガス中の成膜材料の濃度を調整して供給する混合ガス供給方法であって、混合ガス中の成膜材料Sの濃度の設定値、キャリアガスの流量の設定値、及び原料容器2(2A,2B)内の圧力の設定値をそれぞれ決定し、原料容器2(2A,2B)内を設定した圧力に調節しながら、設定した流量のキャリアガスを原料容器2(2A,2B)に導入し、原料容器2(2A,2B)から成膜材料Sのガスを含む混合ガスを導出するとともに、混合ガス中の成膜材料Sの濃度を計測して計測値を得、混合ガス中の成膜材料Sの濃度の、計測値と設定値との差分を算出し、差分に基づいて、原料容器2(2A,2B)内の圧力設定値、及びキャリアガスの流量設定値の両方を更新する。
【0087】
具体的には、先ず、混合ガス中の成膜材料Sの濃度の設定値、キャリアガスの流量の設定値、及び原料容器2(2A,2B)内の圧力の設定値をそれぞれ決定する。
混合ガス中の成膜材料Sの濃度の設定値は、作業者が混合ガス濃度調節装置30に直接入力するか、有線又は無線によって信号を送信して入力する。
キャリアガスの流量の設定値は、作業者がキャリアガス流量制御装置5に直接入力するか、有線又は無線によって信号を送信して入力する。なお、キャリアガス流量制御装置5が混合ガス濃度調節装置30を介して制御される場合、キャリアガスの流量の設定値は、作業者が混合ガス濃度調節装置30に直接入力、あるいは有線又は無線によって信号を送信して入力する。
原料容器2(2A,2B)内の圧力の設定値は、作業者が圧力調節装置8に直接入力するか、有線又は無線によって信号を送信して入力する。なお、圧力調節装置8が混合ガス濃度調節装置30を介して制御される場合、原料容器2(2A,2B)内の圧力の設定値は、作業者が混合ガス濃度調節装置30に直接入力、あるいは有線又は無線によって信号を送信して入力する。
【0088】
次に、圧力調節装置8によって原料容器2(2A,2B)内を設定した圧力に調節しながら、キャリアガス導入経路L1を介して設定した流量のキャリアガスを原料容器2(2A,2B)に導入する。これにより、原料容器2(2A,2B)から成膜材料Sのガスを含む混合ガスを混合ガス導出経路L2に導出する。
【0089】
次に、混合ガス導出経路L2に導出される混合ガス中の成膜材料Sの濃度を、混合ガス濃度分析装置9を用いて計測して計測値を得る。
【0090】
混合ガス濃度調節装置30は、混合ガス濃度分析装置9で計測された混合ガス中の成膜材料Sの濃度の計測値を受信する。ここで、本実施形態のガス供給方法では、混合ガス濃度調節装置30において、混合ガス濃度分析装置9により得られた混合ガスの濃度の計測値と、混合ガス濃度調節装置20に設定された設定値との差分を算出し、得られた差分に基づいて、計測値(実測値)が設定値となるように、混合ガス濃度調節装置30からキャリアガス流量制御装置5及び圧力調節装置8の両方に制御信号を送信する。
【0091】
具体的には、混合ガス濃度調節装置30に設定した濃度(設定値)に対し、混合ガス濃度分析装置9によって実測された濃度の計測値が足りなかった場合や、混合ガスを供給していくにつれて、実測された濃度の計測値が減少していった場合、混合ガス濃度調節装置30から、キャリアガス流量制御装置5に対してはキャリアガスの流量の設定値を更新する制御信号が、圧力調節装置8に対しては原料容器2(2A,2B)内の圧力の設定値を更新する制御信号が、それぞれ送信される。これにより、瞬時にキャリアガス流量制御装置5によってキャリアガスの流量が調節され、応答性良く設定した濃度の混合ガスを供給することができる。
【0092】
本実施形態のガス供給方法によれば、混合ガス中の成膜材料Sの濃度を計測して計測値を得、混合ガス中の成膜材料Sの濃度の、計測値と設定値との差分を算出し、差分に基づいて、原料容器2(2A,2B)内の圧力設定値、及びキャリアガスの流量設定値の両方を更新するため、混合ガスの供給初期の濃度変動や、連続供給中の材料温度低下に伴う蒸気圧変動が生じた場合であっても、混合ガス濃度調節装置30に設定した濃度(設定値)の混合ガスを安定して供給することができる。
【0093】
また、本実施形態のガス供給方法によれば、成膜材料として「BRUTE Hydrazine」のような混合溶液を用いた場合、「BRUTE Hydrazine」を消費するにつれてヒドラジンガスの蒸気圧が減少したとしても、連動してキャリアガスの流量が調節されるため、設定した混合ガス濃度を安定して供給することができる。
【0094】
以上説明したように、混合ガス供給装置1,21,31を用いた第1~第3実施形態の混合ガス供給方法によれば、成膜材料Sのガスを含む混合ガスを所要の濃度で安定的に供給できる。
【0095】
なお、上述した第1~第3実施形態の混合ガス供給方法では、混合ガスに含まれるH2O濃度が、0.1ppm以下であることが好ましい。
混合ガス中の水分濃度が高い場合には、混合ガス供給装置1,21,31が、吸着剤や分離膜等を含む精製器を備える構成としてもよい。
【0096】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【実施例0097】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0098】
(実施例1)
混合ガス供給装置として、
図1に示す混合ガス供給装置1を用いて、混合ガスの供給試験を行った。試験条件は、以下の通り。
・キャリアガス: 窒素(N
2)
・キャリアガス流量: 3000sccm
・混合溶液: ヒドラジン(N
2H
4):溶媒=50:50
・混合ガス中の成膜材料Sの濃度(混合ガス濃度): 5体積%
・容器内圧力:混合ガス濃度分析装置9の濃度の計測値と設定値との差分に基づいて圧力調節装置8を自動制御
【0099】
結果を
図4及び
図5に示す。
図4において、X軸は供給時間(min)を、Y軸は混合ガス中のヒドラジンの濃度(体積%)を示す。
図5において、X軸は供給時間(min)を、Y軸は容器内圧力(kPa)を示す。
図4に示すように、混合ガス濃度分析装置9の濃度の計測値と設定値との差分に基づいて圧力調節装置8を自動制御することで、混合ガス濃度を5体積%で安定的に供給することができた。
図5に示すように、混合ガス濃度を5体積%で安定的に供給するため、供給時間の経過とともに容器内圧力が徐々に減少することが確認できた。
【0100】
(比較例1)
混合ガス供給装置として、
図1に示す混合ガス供給装置1を用いて、混合ガスの供給試験を行った。試験条件は、以下の通り。
・キャリアガス: 窒素(N
2)
・キャリアガス流量: 3000sccm
・混合溶液: ヒドラジン(N
2H
4):溶媒=50:50
・混合ガス中の成膜材料Sの濃度(混合ガス濃度): 5体積%
・容器内圧力:圧力調節装置8により、75kPaに一定制御
【0101】
結果を
図6及び
図7に示す。
図6において、X軸は供給時間(min)を、Y軸は混合ガス中のヒドラジンの濃度(体積%)を示す。
図7において、X軸は供給時間(min)を、Y軸は容器内圧力(kPa)を示す。
図7に示すように、容器内圧力を75kPaで一定とした場合、
図6に示すように、混合ガス濃度が徐々に減少し、5体積%に保持できないことが確認できた。
【0102】
(比較例2)
混合ガス供給装置として、
図1に示す混合ガス供給装置1を用いて、混合ガスの供給試験を行った。試験条件は、以下の通り。
・キャリアガス: 窒素(N
2)
・キャリアガス流量: 3000sccm
・混合溶液1: ヒドラジン(N
2H
4):溶媒=50:50
・混合溶液2: ヒドラジン(N
2H
4):溶媒=30:70
・容器内圧力:圧力調節装置8により、54kPaに一定制御
【0103】
結果を
図8に示す。
図8において、X軸は供給時間(min)を、Y軸は混合ガス中のヒドラジンの濃度(体積%)を示す。
図8に示すように、容器内圧力を54kPaで一定とした場合、混合溶液2の方が混合溶液1よりも、混合ガス中のヒドラジンの濃度(体積%)が低いことが分かった。これは、混合溶液2の方が混合溶液1よりもヒドラジンガス蒸気圧が低いためである。
すなわち、混合溶液1において、ヒドラジンガスとして消費していった場合、混合溶液中の溶媒比率が上昇(例えば、ヒドラジン(N
2H
4):溶媒=30:70)することになり、ヒドラジンガスの蒸気圧が徐々に減少する。結果として、容器内の圧力値やキャリアガス流量を一定にした場合、ヒドラジンガス濃度も減少する。
【0104】
(実施例2)
混合ガス供給装置として、
図1に示す混合ガス供給装置1を用い、ALDプロセスを想定し供給工程と停止工程とを繰り返した時の流量安定性を評価した。試験条件は、以下の通り。
・キャリアガス:窒素(N
2)
・キャリアガス流量:3000sccm
・混合溶液: ヒドラジン(N
2H
4):溶媒=50:50
・混合ガス中の成膜材料Sの濃度(混合ガス濃度): 5体積%
・混合ガス流量:3.00(slm)
・容器内圧力:混合ガス濃度分析装置9の濃度の計測値と設定値との差分に基づいて圧力調節装置8を自動制御
・供給時間:30秒供給、30秒停止
・繰り返し回数:10回
【0105】
結果を
図9及び
図10に示す。
図9において、X軸は供給時間(min)を、Y軸は混合ガス中のヒドラジンの濃度(体積%)を示す。
図10において、X軸は供給時間(min)を、Y軸は容器内圧力(kPa)を示す。
図9に示すように、混合ガス濃度分析装置9の濃度の計測値と設定値との差分に基づいて圧力調節装置8を自動制御することで、混合ガス濃度を5体積%で安定的に供給することができた。
図10に示すように、混合ガス濃度を5体積%で安定的に供給するため、供給時間の経過とともに容器内圧力が徐々に変化することが確認できた。
【0106】
(実施例3)
実施例2の混合溶液を消費し続けて、混合溶液におけるヒドラジン残留量が減少した時の濃度安定性評価を行った。
試験条件は、以下の通り。
・キャリアガス:窒素(N2)
・キャリアガス流量:3000sccm
・混合溶液: ヒドラジン(N2H4):溶媒=30:70
・混合ガス中の成膜材料Sの濃度(混合ガス濃度): 5体積%
・混合ガス流量:3.00(slm)
・容器内圧力:混合ガス濃度分析装置9の濃度の計測値と設定値との差分に基づいて圧力調節装置8を自動制御
・供給時間:30秒供給、30秒停止
・繰り返し回数:10回
【0107】
結果を
図11及び
図12に示す。
図11において、X軸は供給時間(min)を、Y軸は混合ガス中のヒドラジンの濃度(体積%)を示す。
図12において、X軸は供給時間(min)を、Y軸は容器内圧力(kPa)を示す。
図11に示すように、実施例2の場合よりもヒドラジンガスの蒸気圧は低い条件であるが、混合ガス濃度分析装置9の濃度の計測値と設定値との差分に基づいて圧力調節装置8を自動制御することで、混合ガス濃度を5体積%で安定的に供給することができた。
図12に示すように、混合ガス濃度を5体積%で安定的に供給するため、実施例2の場合よりも容器内圧力が低く設定されることが確認できた。
【0108】
(比較例3)
混合ガス供給装置として、
図1に示す混合ガス供給装置1を用い、ALDプロセスを想定し供給工程と停止工程とを繰り返した時の流量安定性を評価した。試験条件は、以下の通り。
・キャリアガス:窒素(N
2)
・キャリアガス流量:3000sccm
・混合溶液: ヒドラジン(N
2H
4):溶媒=50:50
・混合ガス流量:3.00(slm)
・容器内圧力:圧力調節装置8により、65kPaに一定制御
・供給時間:30秒供給、30秒停止
・繰り返し回数:20回
【0109】
結果を
図13に示す。
図13において、X軸は供給時間(min)を、Y軸は混合ガス中のヒドラジンの濃度(体積%)を示す。
図13に示すように、混合ガスの供給開始からしばらくの間は、混合ガス濃度を5体積%で安定的に供給することができた。
【0110】
(比較例4)
比較例3の混合溶液を消費し続けて、混合溶液におけるヒドラジン残留量が減少した時の濃度安定性評価を行った。
試験条件は、以下の通り。
・キャリアガス:窒素(N2)
・キャリアガス流量:3000sccm
・混合溶液: ヒドラジン(N2H4):溶媒=30:70
・混合ガス流量:3.00(slm)
・容器内圧力:圧力調節装置8により、65kPaに一定制御
・供給時間:30秒供給、30秒停止
・繰り返し回数:20回
【0111】
結果を
図14に示す。
図14において、X軸は供給時間(min)を、Y軸は混合ガス中のヒドラジンの濃度(体積%)を示す。
図14に示すように、比較例3の混合溶液を消費し続けた場合、混合溶液中のヒドラジンの残量が減少するため、ヒドラジンガスの蒸気圧が減少する。混合溶液中のヒドラジン濃度が(ヒドラジン:溶媒=30:70)となるまでヒドラジンガスを消費し続けると、混合ガス中のヒドラジンガス濃度が減少し、比較例3よりもヒドラジン濃度が低下することが確認できた。