(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027550
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】スパッタリング装置及び成膜方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
C23C14/34 C
C23C14/34 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130436
(22)【出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】早坂 遼一路
(72)【発明者】
【氏名】藤長 徹志
(72)【発明者】
【氏名】竹内 将人
(72)【発明者】
【氏名】沼田 幸展
(72)【発明者】
【氏名】半那 拓
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029BA03
4K029BA58
4K029CA05
4K029DA10
4K029DC04
4K029DC12
4K029DC34
4K029DC35
(57)【要約】
【課題】結晶欠陥の少なく、結晶配向性が良好な六方晶系の結晶膜をスパッタリング法により成膜することに適したスパッタリング装置を提供する。
【解決手段】ターゲット31が配置される真空チャンバ1を備え、真空チャンバ内でスパッタ面31aを臨むZ軸方向上方の空間を通過するようにX軸方向に沿って基板Sgを搬送する搬送ユニット7を備える。ターゲットのX軸方向前後に、当該ターゲットのY軸方向長さと同等以上の幅を持つと共にZ軸方向に沿ってのびる規制板6a,6bを夫々立設し、成膜面Sg1とのなす角度が所定値以下となって斜入射するスパッタ粒子の基板への付着が規制板で規制されるように構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットが配置される真空チャンバを備え、前記ターゲットのスパッタ面内で互いに直交する二軸をX軸方向及びY軸方向、X軸方向及びY軸方向に直交する方向をZ軸方向とし、前記真空チャンバ内で前記スパッタ面を臨むZ軸方向上方の空間を通過するようにX軸方向に沿って被処理基板を搬送する搬送ユニットを更に備え、
真空雰囲気の前記真空チャンバ内にスパッタガスを導入し、前記ターゲットに電力投入してプラズマ発生させ、プラズマで電離したスパッタガスのイオンにより前記スパッタ面をスパッタリングし、搬送ユニットによって被処理基板がX軸方向に搬送される間に、前記スパッタ面から所定の余弦則に従い飛散するスパッタ粒子を被処理基板に付着、堆積させて成膜するスパッタリング装置において、
前記ターゲットのX軸方向前後に、Z軸方向にのびる規制板を夫々立設し、前記被処理基板の成膜面とのなす角度(α)が所定値以下となって斜入射する前記スパッタ粒子の被処理基板への付着が前記規制板で規制されるように構成したことを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項2】
前記角度(α)の所定値が20°であることを特徴とする請求項1記載のスパッタリング装置。
【請求項3】
前記搬送ユニットが前記被処理基板をX軸方向前後に搬送自在であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のスパッタリング装置。
【請求項4】
ターゲットが配置される真空チャンバ内にて、前記ターゲットのスパッタ面内で互いに直交する二軸をX軸方向及びY軸方向、X軸方向及びY軸方向に直交する方向をZ軸方向として、前記真空チャンバ内で前記スパッタ面を臨むZ軸方向上方の空間を通過するようにX軸方向に沿って被処理基板を搬送し、真空雰囲気の前記真空チャンバ内にスパッタガスを導入し、前記ターゲットに電力投入してプラズマ発生させ、プラズマで電離したスパッタガスのイオンによりターゲットの前記スパッタ面をスパッタリングし、被処理基板が前記スパッタ面を臨むZ軸方向上方の空間を通過する間に、前記スパッタ面から所定の余弦則に従い飛散するスパッタ粒子を被処理基板に付着、堆積させて成膜する工程を含む成膜方法において、
前記ターゲットのX軸方向前後に立設した、Z軸方向にのびる規制板により前記被処理基板の成膜面とのなす角度が所定値以下となって斜入射する前記スパッタ粒子の前記被処理基板への付着を規制する工程を更に含むことを特徴とする成膜方法。
【請求項5】
前記角度(α)の所定値が20°であることを特徴とする請求項4記載の成膜方法。
【請求項6】
前記空間を複数回通過させて前記被処理基板に対して成膜する工程を更に含む請求項4または請求項5記載の成膜方法。
【請求項7】
請求項6記載の成膜方法であって、前記ターゲットがScとAlとを含み、希ガスと窒素含有ガスとをスパッタガスとして、反応性スパッタリングにより前記被処理基板にScAlN膜を成膜するものにおいて、
前記被処理基板が前記空間を通過させて成膜する際に、スパッタガスの流量を第1流量に設定して第1のScAlN膜を成膜する第1工程と、第1流量より多い第2流量に設定して真空チャンバ内の圧力を高めた上で第2のScAlN膜を成膜する第2工程とを含むことを特徴とする成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリング装置及び成膜方法に関し、より詳しくは、結晶欠陥の少なく、結晶配向性が良好な六方晶系の結晶膜(ScAlN膜)をスパッタリング法により成膜するためのものに関する。
【背景技術】
【0002】
ScAlN膜は、高い圧電定数を示し、機械的特性にも優れることから、通信用の高周波フィルタ等の各種デバイスにて圧電材料(圧電膜)として用いられている。このようなScAlN膜には、今後の通信の高周波化や周波数帯の近接化に向けて圧電性能の更なる向上が求められ、これには、ScAlN膜が良好な結晶性(欠陥の少ない六方晶系の結晶膜であること)及び応力制御性を有することが必要になる。
【0003】
従来、ScAlN膜あるいはAlN膜のような六方晶系の結晶膜の成膜には、生産性などを考慮して、スパッタリング装置が一般に利用されている(例えば、特許文献1参照)。従来例のスパッタリング装置は、ScとAlとを含む合金製のターゲットが配置される真空チャンバを備える。真空チャンバ内には、その成膜面がターゲットに対向する姿勢で被処理基板(以下、「基板」という)を保持するステージが設けられている。そして、ステージ上に基板を設置した状態で真空雰囲気の真空チャンバ内にスパッタガスを導入し、ターゲットに負の電位を持つ所定電力を投入する。すると、真空チャンバ内に発生するプラズマで電離された希ガスのイオンでターゲットがスパッタリングされ、ターゲットから所定の余弦則に従い飛散したスパッタ粒子が窒素分子と反応し、その反応生成物が基板の成膜面に付着、堆積することで基板の成膜面にScAlN膜が成膜される。
【0004】
上記従来例のスパッタリング装置では、例えば、ステージへの処理前の基板の搬入及びステージからの処理済みの基板の搬出工程があるため、生産性を高めるには限界がある。このため、基板を保持するキャリアを有する搬送ユニットを真空チャンバ内に設け、真空チャンバ内でターゲットのスパッタ面に平行な一方向に沿って基板を搬送し、スパッタ面を臨む空間を基板が通過する間に成膜することが考えられる。然し、このように成膜したScAlN膜は、結晶欠陥が多く、しかも、ScAlN膜の用途によっては、c軸が基板の成膜面に対して垂直方向(すなわち膜厚方向)に配向していることが好ましいが、その結晶配向性も劣化することが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-135618号公報
【特許文献2】特開2021-1382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、結晶欠陥の少なく、結晶配向性が良好な六方晶系の結晶膜をスパッタリング法により成膜することに適したスパッタリング装置及び成膜方法を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、ターゲットが配置される真空チャンバを備え、前記ターゲットのスパッタ面内で互いに直交する二軸をX軸方向及びY軸方向、X軸方向及びY軸方向に直交する方向をZ軸方向とし、前記真空チャンバ内で前記スパッタ面を臨むZ軸方向上方の空間を通過するようにX軸方向に沿って被処理基板を搬送する搬送ユニットを更に備え、真空雰囲気の前記真空チャンバ内にスパッタガスを導入し、前記ターゲットに電力投入してプラズマ発生させ、プラズマで電離したスパッタガスのイオンにより前記スパッタ面をスパッタリングし、搬送ユニットによって被処理基板がX軸方向に搬送される間に、前記スパッタ面から所定の余弦則に従い飛散するスパッタ粒子を被処理基板に付着、堆積させて成膜するスパッタリング装置において、前記ターゲットのX軸方向前後に、Z軸方向にのびる規制板を夫々立設し、前記被処理基板の成膜面とのなす角度(α)が所定値以下となって斜入射する前記スパッタ粒子の被処理基板への付着が前記規制板で規制されるように構成したことを特徴とする。この場合、前記角度(α)の所定値が20°とすればよく、また、前記搬送ユニットが前記被処理基板をX軸方向前後に搬送自在である構成を採用することができる。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明は、ターゲットが配置される真空チャンバ内にて、前記ターゲットのスパッタ面内で互いに直交する二軸をX軸方向及びY軸方向、X軸方向及びY軸方向に直交する方向をZ軸方向として、前記真空チャンバ内で前記スパッタ面を臨むZ軸方向上方の空間を通過するようにX軸方向に沿って被処理基板を搬送し、真空雰囲気の前記真空チャンバ内にスパッタガスを導入し、前記ターゲットに電力投入してプラズマ発生させ、プラズマで電離したスパッタガスのイオンによりターゲットの前記スパッタ面をスパッタリングし、被処理基板が前記スパッタ面を臨むZ軸方向上方の空間を通過する間に、前記スパッタ面から所定の余弦則に従い飛散するスパッタ粒子を被処理基板に付着、堆積させて成膜する工程を含む成膜方法において、前記ターゲットのX軸方向前後に立設した、Z軸方向にのびる規制板により前記被処理基板の成膜面とのなす角度が所定値以下となって斜入射する前記スパッタ粒子の被処理基板への付着を規制する工程を更に含むことを特徴とする。この場合、前記角度(α)の所定値が20°とすればよく、また、前記空間を複数回通過させて前記被処理基板に対して成膜する工程を更に含むことが好ましい。
【0009】
本発明において、前記ターゲットがScとAlとを含み、希ガスと窒素含有ガスとをスパッタガスとして、反応性スパッタリングにより前記被処理基板にScAlN膜を成膜するような場合、前記被処理基板が前記空間を通過させて成膜する際に、スパッタガスの流量を第1流量に設定して第1のScAlN膜を成膜する第1工程と、第1流量より多い第2流量に設定して真空チャンバ内の圧力を高めた上で第2のScAlN膜を成膜する第2工程とを含むことが好ましい。
【0010】
ここで、本発明者らは、鋭意研究を重ね、次のことを知見するのに至った。即ち、真空チャンバ内でX軸方向に沿って被処理基板を搬送し、スパッタ面を臨むZ軸上方の空間を基板が通過する間に、例えば六方晶系の結晶膜であるScAlN膜を成膜する場合、ターゲットのスパッタリングによりそのスパッタ面から所定の余弦則に従い飛散するスパッタ粒子の中には、基板の成膜面に対して斜入射するものがある。このとき、基板の成膜面とのなす角度が所定値以下で斜入射するスパッタ粒子が多くなると、成膜したScAlN膜は結晶欠陥が多くなることを知見するのに至った。
【0011】
そこで、本発明では、ターゲットのX軸方向前後に設けた規制板により、被処理基板の成膜面とのなす角度が所定値以下となって斜入射するスパッタ粒子を被処理基板に付着させないことで、結晶欠陥の少ない六方晶系の結晶膜としてのScAlN膜を成膜できる。この場合、被処理基板の成膜面への入射角αが20°以上のスパッタ粒子を付着させれば、確実に結晶欠陥を少なくできることが確認された。しかも、被処理基板に対して予め設定される膜厚で成膜する場合に、搬送ユニットにより被処理基板をX軸方向前方及びX軸方向後方に所定速度で搬送し、前記空間を複数回通過させて前記被処理基板に対して成膜すれば、通過させる回数が増える毎に(言い換えると、予め設定される膜厚のScAlN膜を、上記空間を一回だけ通過させて成膜する場合と比較して、前記空間を通過するときの被処理基板の速度が増加するにつれ)、C軸の配向性が向上することが確認された。このように成膜したScAlN膜は、TEMによって断面観察すると、移動成膜に伴う結晶の湾曲と、複数回の搬送に伴う層状構造を観察することができた。しかも、c軸ピークのXRDロッキングカーブ測定で半値幅が3°より小さい結晶性に優れた膜であることが確認された。
【0012】
ところで、ScAlN膜を通信用の高周波フィルタ等の各種デバイスにて圧電材料(圧電膜)として用いるような場合、ScAlN膜の持つ膜応力(残留応力)は可及的小さいことが好ましい。ここで、真空チャンバ内でX軸方向に沿って被処理基板を搬送し、スパッタ面を臨むZ軸上方の空間を基板が通過する間に、上記のようにしてScAlN膜を成膜する際に、例えば、所定の実効排気速度で真空排気される真空チャンバ内へのスパッタガスの導入量を所定値に設定し、真空チャンバ内を比較的低い圧力(例えば、0.15Pa)とした状態で成膜すると、結晶欠陥は小さくなるものの膜応力が大きくなる。他方で、真空チャンバ内を比較的高い圧力(例えば、0.45Pa)とした状態で成膜すると、膜応力を小さくできるものの、結晶欠陥が増加する。
【0013】
そこで、本発明においては、スパッタガスの流量を第1流量に設定して第1のScAlN膜を成膜し、その後に、第1流量より多い第2流量に設定して真空チャンバ内の圧力を高めた上で第2のScAlN膜を積層する工程を採用することで、結晶欠陥を少なくしつつ可及的に小さい圧縮応力のScAlN膜が得られることが確認された。この場合、第1のScAlN膜の膜厚を第2のScAlN膜と比較して倍以上にすることが好ましく、例えば、前記第1のScAlN膜の膜厚を10nm以上とし、前記第2のScAlN膜の膜厚を1000nm以下としてもよい。これにより、基板面内で均一で小さな残留応力を有し(被処理基板面内の応力分布が±100MPa)、表面の欠陥が低減されたScAlN膜を成膜できることが確認された。なお、第1流量及び第2流量は、例えば、スパッタガス(アルゴンガス)の平均自由行程と、ターゲットと被処理基板との間のTS間距離とを考慮して適宜設定され、例えば、スパッタガスの平均自由行程がTS間距離の1/3以上となる場合を第1流量と、TS間距離の1/3以下となる場合を第2流量に設定される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)は、本発明の実施形態のスパッタリング装置を説明する断面図、(b)はその要部の拡大部。
【
図5】(a)及び(b)は、本発明の成膜方法により成膜されたScAlN膜のTEM画像。
【
図6】(a)及び(b)は、変形例に係るスパッタリング装置の一部を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、ターゲットを所定純度のScAl合金(スカンジウムーアルミニウム合金)製(例えば、所定純度のアルミニウムに5at%~40at%の範囲でスカンジウムを含むもの)とし、被処理基板(以下、「基板Sg」という)の成膜面Sg1にScAlN膜を成膜する場合を例に本発明のスパッタリング装置及び成膜方法の実施形態を説明する。以下においては、
図1を基準に、ターゲットが真空チャンバの底面に配置され、ターゲットのスパッタ面内で互いに直交する二軸をX軸方向及びY軸方向、X軸方向及びY軸方向に直交する方向をZ軸方向として説明する。
【0016】
図1及び
図2を参照して、本実施形態のスパッタリング装置SMは、反応性スパッタリング法による成膜が可能なメインチャンバ1を備え、メインチャンバ1のX軸方向前後には、上流側及び下流側のロードロックチャンバ2
1,2
2がゲートバルブGv
1,Gv
2を介して夫々連設されている。上流側及び下流側の各ロードロックチャンバ2
1,2
2には、その内部を真空排気する真空ポンプ21a,21bと、その内部を大気開放するベントバルブ22a,22bとが夫々設けられ、各ロードロックチャンバ2
1,2
2内を真空雰囲気と大気雰囲気とを速やかに切り換えることができる。メインチャンバ1にはまた、真空ポンプ11に通じる排気管12が接続されている。排気管12には、コンダクタンスバルブ13が設けられ、コンダクタンスバルブ13の開度調整により実行排気速度を可変としてもよい。
【0017】
メインチャンバ1にはスパッタリングカソード3が配置されている。スパッタリングカソード3は、平面視矩形のターゲット31を有する。ターゲット31の幅(Y軸方向の長さ)は、例えば、基板Sgより大きく設定されている(
図2参照)。そして、ターゲット31の下面にボンディング材を介してCu製のバッキングプレート32が接合され、絶縁材料33を介してメインチャンバ1の下内壁に、そのスパッタ面31aがZ軸方向上方を向く姿勢で配置されている。ターゲット31には、スパッタ電源34としてのDC電源からの負の出力34aが接続され、ターゲット31に対して負の電位を持つ所定電力を投入することができる。スパッタ電源34としては、公知の構造のDC電源に限られるものではなく、パルスDC電源、RF電源やAC電源といった他の公知のものを利用することができる。特に図示して説明しないが、メインチャンバ1内には、ターゲット31の周囲を囲うようしてアース接地のリング状部材が配置されている。また、ターゲット31のZ軸方向下方に位置させて公知の構造を有する磁石ユニット(図示せず)を設け、スパッタ面31aを貫通する漏洩磁場を作用させた状態でスパッタリングするようにしてもよい。
【0018】
メインチャンバ1の側壁には、ガス導入口4a,4bが設けられている。ガス導入口4a,4bは、図外のマスフローコントローラを介設したガス管41a,41bを介してガス源に連通し、アルゴンガスなどの希ガスと、窒素ガスなどの反応ガスとを含むスパッタガスを所定の流量でメインチャンバ1内に導入することができる。また、メインチャンバ1内でターゲット31のX軸方向前後には、ターゲット31のY軸方向長さと同等以上の幅を持つと共にZ軸方向にのびる前後一対の規制板6a,6bが立設されている。各規制板6a,6bは、夫々が矩形の輪郭を持つ同一の形態のものである。スパッタ面31aと基板とのTS間距離は、スパッタ面31aの輪郭及び面積や、スパッタ面31aから所定の余弦則に従い飛散するスパッタ粒子の飛散分布などを考慮して40~200mmの範囲に設定される。これにより、基板Sgの成膜面Sg1とのなす角度(即ち、入射角α)が所定値以下となって斜入射するスパッタ粒子の成膜面Sg1への付着を規制板6a,6bによって規制することができる。なお、ターゲットが平面視円形の輪郭を持つ場合、ターゲットの直径と同等以上の幅を持つように規制板のY軸方向長さを設定すればよい。
【0019】
スパッタリング装置SMは、上流側のロードロックチャンバ2
1からメインチャンバ1を経て下流側のロードロックチャンバ2
2まで基板Sgを所定速度で搬送するための搬送ユニット7を備える。搬送ユニット7は、基板Sgをその成膜面Sg1を開放した状態で保持するキャリア71と、上流側のロードロックチャンバ2
1、メインチャンバ1及びロードロックチャンバ2
2の内側壁にX軸方向に間隔を置いて設けられ、モータ72aにより正逆転自在な複数個の搬送ローラ72とを備える。そして、各搬送ローラ72を一方向に回転駆動することで、キャリア71で保持された基板SgがX軸方向前方(
図1中、左側から右側に向けて)に搬送され、各搬送ローラ72を他方向に回転駆動することで、キャリア71で保持された基板SgがX軸方向後方(
図1中、右側から左側に向けて)に搬送される。キャリア71の形態や、キャリア71への基板Sgの取付け、取外し方法としては公知のものが利用できるため、ここでは詳細な説明を省略する。また、搬送ユニット7として搬送ローラ72を用いるものを例に説明するが、これに限定されるものではなく、単軸ロボットやリニアモータを用いるものなど他の公知のもので構成することができる。以下に、上記スパッタリング装置SMを用い、基板Sgの成膜面にSg1に反応性スパッタリング法によりScAlN膜を予め設定される膜厚で成膜する成膜方法について説明する。
【0020】
先ず、図外にてキャリア71に基板Sgをセットし、この状態で大気雰囲気の上流側のロードロックチャンバ21に搬送して搬送ユニット7の各搬送ローラ72に受け渡し、上流側のロードロックチャンバ21内を真空ポンプ21aにより所定圧力まで真空排気する。このとき、両ゲートバルブGv1,Gv2が閉状態にあり、隔絶されたメインチャンバ1は、真空ポンプ11により所定圧力(例えば1×10-5Pa)まで真空排気された状態である。上流側のロードロックチャンバ21が真空ポンプ21aにより所定圧力まで真空排気されると、一方のゲートバルブGv1を開け、各搬送ローラ72の一方向に回転駆動して搬送ユニット7によってX軸方向前方へのキャリア71の搬送を開始する。このとき、メインチャンバ1内に、各ガス導入口4a,4bからアルゴンガス及び窒素ガスを含むスパッタガスが導入され、スパッタ電源34からターゲット31に電力投入され、スパッタ面31aのZ軸方向上方の空間1aにプラズマ雰囲気が形成される。すると、プラズマで電離したスパッタガスのイオンによりスパッタ面31aがスパッタリングされてスパッタ粒子が所定の余弦則に従い飛散する。そして、キャリア71で保持された基板Sgがスパッタ面31aを臨むZ軸方向上方の空間(即ち、プラズマ雰囲気が形成された空間1aの上方)を通過する間に、窒素分子と反応し、その反応生成物が基板Sgの成膜面Sg1に付着、堆積することで成膜面Sg1にScAlN膜が成膜される。
【0021】
ScAlN膜の成膜時には、前後一対の規制板6a,6bによって、基板Sgの成膜面Sg1とのなす角度αが所定値以下となって斜入射するスパッタ粒子(及び/または反応生成物)の成膜面Sg1への付着が防止されることになる。本実施形態では、間隔D1を1~100mmの範囲に設定して、角度αが20°以下になるスパッタ粒子の成膜面Sg1への付着が規制される。また、成膜時におけるアルゴンガスの流量が、20sccm~70sccmの範囲に、窒素ガスの流量が、50sccm~200sccmの範囲に夫々設定される(このとき、メインチャンバ内の圧力が0.1Pa~0.5Paの範囲となる)。スパッタ電源の投入電力は、3kW~10kWの範囲に設定され、搬送ユニットにより基板を搬送するときの速度は50mm/min~3000mm/minの範囲に設定される。
【0022】
次に、例えば、キャリア71の後端面が、後側の規制板6bの上方を横切ると、各モータ72aの回転を停止してキャリア71の搬送を一旦停止する。このとき、ターゲット31への電力投入及びスパッタガスの導入はそのまま継続する。そして、各モータ72aにより各搬送ローラ72を逆転させて搬送ユニット7によってX軸方向後方に向けてキャリア71を搬送する。これにより、空間1aの上方を通過する間に、上記と同様に、窒素分子との反応生成物が付着、堆積することで、ScAlN膜が積層(成膜)される。そして、キャリア71の前端面が、前側の規制板6aの上方を横切ると、同様に、キャリア71の搬送を一旦停止する。このとき、スパッタガスの導入とターゲット31への電力投入はそのまま継続し、各搬送ローラ72を再度正転させて搬送ユニット7によってX軸方向前方へのキャリアの搬送を開始する。これにより、キャリア71で保持された基板Sgが空間1aの上方を通過する間に、更に、ScAlN膜が積層(成膜)される。この操作が、ScAlN膜が予め設定される膜厚に達するまで繰り返される。最後に、ScAlN膜が所定膜厚になると、ゲートバルブGv2を開けた後、キャリア71が真空雰囲気の下流側のロードロックチャンバ22に搬送される。ゲートバルブGv2を閉じた後、大気雰囲気に戻され、成膜済みの基板Sgがキャリア71ごと回収される。
【0023】
以上の実施形態によれば、結晶欠陥の少ない六方晶系の結晶膜としてのScAlN膜を成膜することができる。しかも、予め設定される膜厚のScAlN膜を、上記空間1aを一回だけ通過させて成膜する場合と比較して、より速いキャリア71の搬送速度で空間1aを複数回通過させて基板Sgの成膜面Sg1に成膜することで、C軸の配向性が向上させることができる。このように成膜したScAlN膜は、TEMによって断面観察すると、移動成膜に伴う結晶の湾曲と、複数回の搬送に伴う層状構造を観察することができた。しかも、c軸ピークのXRDロッキングカーブ測定で半値幅が3°より小さい結晶性に優れた膜であることが確認された。
【0024】
ところで、上記実施形態のように、搬送ユニット7によりX軸方向前後に複数回搬送して基板Sgの成膜面Sg1にScAlN膜を成膜すると、結晶欠陥は小さくなるものの膜応力が大きくなる場合がある。そこで、変形例に係る成膜方法では、上記同様、基板Sgがセットされたキャリア71が存する上流側のロードロックチャンバ21内が真空ポンプ21aにより所定圧力まで真空排気され、各搬送ローラ72の一方向に回転駆動して搬送ユニット7によってX軸方向前方へのキャリア71の搬送を最初に開始する際には、スパッタガスの流量を第1流量に設定してメインチャンバ1内を比較的低圧にした状態で第1のScAlN膜を成膜する(第1工程)。このときの第1のScAlN膜の膜厚は、膜応力を考慮して、10nm~500nmの範囲に設定されることが好ましい。また、成膜時におけるアルゴンガスの流量が10sccm~30sccmの範囲に、窒素ガスの流量が30sccm~100sccmの範囲に夫々設定される(このとき、メインチャンバ1内の圧力は0.1Pa~0.2Paの範囲になる)。また、このときのメインチャンバ1内の圧力は、当該圧力における平均自由行程がスパッタ面31aと基板SgとのTS間距離の1/3倍以上となるように設定されていることが好ましい。スパッタ電源の投入電力は、3kW~10kWの範囲に設定され、搬送ユニットにより基板Sgを搬送するときの速度は、50mm/min~3000mm/minの範囲に設定される。なお、空間1aの上方を一度通過させただけでは、第1のScAlN膜の膜厚が予め設定される膜厚に達しない場合には、上記同様、X軸方向前後に複数回搬送するようにしてもよい。
【0025】
次に、第1のScAlN膜の膜厚が所定値に達すると、キャリア71の搬送を一旦停止し、その停止位置に応じて、搬送ユニット7によってX軸方向前方または後方へのキャリアの搬送を開始する。このとき、スパッタガスの流量を第1流量より多い第2流量に設定してメインチャンバ1内を比較的高圧にした状態で第2のScAlN膜を成膜する(第2工程)。このときの第2のScAlN膜の膜厚は、第1のScAlN膜と比較して倍以上の200nm~1000nmの範囲に設定されることが好ましい。本実施形態では、例えば、第1のScAlN膜の膜厚を10nm以上、好ましくは、60nm~250nmの範囲、また、第2のScAlN膜の膜厚を1000nm以下とすればよい。この場合、第1のScAlN膜の膜厚が10nmより薄いと、良好な結晶性が得られない一方で、250nmより厚くなると、圧縮応力が大きくなる。他方、第2のScAlN膜の膜厚が1000nmより厚くなると、表面の欠陥が増加する。また、成膜時におけるアルゴンガスの流量が50sccm~100sccmの範囲に、窒素ガスの流量が150sccm~200sccmの範囲に夫々設定される(このとき、メインチャンバ内の圧力が0.3Pa~0.5Paの範囲となる)。このときのメインチャンバ内の圧力は、当該圧力における平均自由行程がスパッタ面31aと基板とのTS間距離の1/3倍以下となるように設定されることが好ましい。スパッタ電源の投入電力は、3kW~10kWの範囲に設定され、搬送ユニット7により基板を搬送するときの速度は、50mm/min~3000mm/minの範囲に設定される。なお、空間1aの上方を一度通過させただけでは、第1のScAlN膜の膜厚が所定値に達しない場合には、上記同様、X軸方向前後に複数回搬送するようにしてもよい。
【0026】
第2のScAlN膜の膜厚が所定値に達すると、ゲートバルブGv2を開けた後、キャリア71が真空雰囲気の下流側のロードロックチャンバ22に搬送される。ゲートバルブを閉じた後、大気雰囲気に戻され、成膜済みの基板Sgがキャリア71ごと回収される。これにより、均一で小さな膜(残留)応力を有し(被処理基板面内の応力分布が±100MPa)、表面の欠陥が低減されたScAlN膜を成膜することができ、しかも、第1のScAlN膜の膜厚で応力が制御できることが確認された。
【0027】
本発明の効果を確認するために、基板Sgを矩形のガラス基板、ターゲットを基板より一回り大きな輪郭を持つ矩形のScAl(Sc=30at%)合金製とし、上記スパッタリング装置SMを用いて次の実験を行った。成膜条件として、前後一対の規制板6a,6bと基板Sgの成膜面Sg1との間の間隔D1を10mm、TS距離を110mmに設定した。また、真空雰囲気の真空チャンバ1内に導入するアルゴンガスの流量を20sccm、窒素ガスの流量を60sccm(このときのメインチャンバ1内の圧力は0.15Pa)に、スパッタ電源34の投入電力を6kWに夫々設定した。そして、搬送ユニット7により基板Sgを保持したキャリア71をX軸方向前方に搬送し、その後端面が、後側の規制板6bの上方を横切ると一回搬送、キャリア71の搬送を一旦停止した後、キャリア71をX軸方向後方に搬送し、その前端面が、前側の規制板6aの上方を横切ると二回搬送、これの繰り返しをn回搬送とし、本発明実験1では、一回搬送、八回搬送及び百回搬送により予め設定された膜厚のScAlN膜を夫々成膜した。この場合、予め設定される膜厚を500nmとし、搬送回数に応じて搬送速度を適宜変えるようにした。なお、比較実験として、上記スパッタリング装置SMから前後一対の規制板6a,6bを取外し、上記と同条件で一回搬送、八回搬送及び百回搬送によりScAlN膜を夫々成膜した。
【0028】
図3(a)~(c)は、上記実験により得られた各ScAlN膜をc軸ピークのXRDロッキングカーブ測定したときのグラフとそのSEM画像とを併記したものであり、
図3(a)が一回搬送、
図3(b)が八回搬送、
図3(c)が百回搬送である。
図4(a)~(c)は、比較実験の各ScAlN膜をc軸ピークのXRDロッキングカーブ測定したときのグラフとそのSEM画像とを併記したものであり、同様に、
図4(a)が一回搬送、
図4(b)が八回搬送、
図4(c)が百回搬送である。これによれば、比較実験では、搬送回数が増加すればする程、c軸配向が良好になっていることが判るが、SEM画像から搬送回数に関係なく、結晶欠陥が多いことが判る。それに対して、発明実験1では、搬送回数が増加すればするほど、比較実験のものと比較してc軸配向がより一層良好になり、しかも、SEM画像から結晶欠陥を可及的に少なくでき、c軸ピークのXRDロッキングカーブ測定で半値幅が3°より小さい結晶性に優れたScAlN膜が得られることが判る。また、発明実験1で複数回搬送により成膜したScAlN膜の断面をTEM画像で観察すると、
図5に示すように、複数回搬送に伴ううねり(BF像)や、基板の搬送回数分の層状構造を持つことが確認された(HAADF像)。
【0029】
次に、発明実験2として、アルゴンガスの流量を20sccm、窒素ガスの流量を60sccm(このときのメインチャンバ1内の圧力は0.15Pa)に設定し、上記に従い、125nmの膜厚でScAlN膜を成膜した(試料1)。また、アルゴンガスの流量を60sccm、窒素ガスの流量を180sccm(このときのメインチャンバ1内の圧力は0.45Pa)に設定し、上記に従い、875nmの膜厚でScAlN膜を成膜した(試料2)。更に、メインチャンバ1内の圧力を0.15Paに設定して125nmの膜厚でScAlN膜を成膜した後、メインチャンバ1内の圧力は0.45Pa)に変更して875nmの膜厚でScAlN膜を積層した(試料3)。そして、各試料1~3についてX軸方向及びY軸方向における膜応力の平均値を測定したところ、試料1では、X軸方向における応力が約-1000MPaで、Y軸方向における応力が約-750MPaであった。なお、試料1のSEM画像から結晶欠陥は少ないことが確認された。また、試料2では、X軸方向における応力が約-200MPaで、Y軸方向における応力が約-60MPaであったが、試料2のSEM画像から結晶欠陥が増加することが確認された。最後に、試料3では、X軸方向における応力が約-60MPaで、Y軸方向における応力が約-40MPaであり、膜応力を更に小さくでき、しかも、X軸方向及びY軸方向における膜応力の差も小さくできること及び試料3のSEM画像から結晶欠陥が殆どないことが確認された。この結果から、基板面内で均一で小さな残留応力を有し(被処理基板面内の応力分布が±100MPa)、表面の欠陥が低減されたScAlN膜を成膜できることが判る。また、第1のScAlN膜の膜厚で応力が制御できることも確認された。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術思想の範囲を逸脱しない限り、種々の変形が可能である。上記実施形態では、メインチャンバ1にロードロックチャンバ21,22を連設したものを例に説明したが、ターゲット31のスパッタ面31aを臨む空間を基板Sgの搬送ができるものであれば、スパッタリング装置SMの形態はこれに限定されるものではない。例えば、所謂カルーセル式、ドラム式または巻取式といったターゲットと基板が相対的に移動する他のスパッタリング装置にも本発明は広く適用することができる。また、上記実施形態では、結晶欠陥の少なく、結晶配向性が良好な六方晶系の結晶膜としてScAlN膜を成膜するものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、同様の六方晶系であるAlN膜の成膜にも本発明は適用することができる。
【0031】
また、上記実施形態では、応力制御のためにスパッタガスの流量を変化させるものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、コンダクタンスバルブ13の開度を調整してメインチャンバ1内の圧力を変更するようにしてもよい。更に、上記実施形態では、単一のターゲット(カソードユニット)が配置されたスパッタリング装置を用いる場合の成膜方法について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、真空チャンバ内でX軸方向に沿って複数個のターゲットが配置されているようなものにも本発明の成膜方法を応用することができる。
【0032】
更に、上記実施形態では、メインチャンバ1に配置したスパッタリングカソード3のターゲット31が単一であるものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、ターゲットの複数枚をX軸方向に所定間隔で並設したものにも本発明は適用することができる。この場合、TS間距離やスパッタ面からの飛散分布などを考慮して、設置する規制板の数を適宜変更することができる。例えば、2枚の矩形のターゲット310a,310bを並設した例を示す
図6(a)のように、各規制板60a,60bの上端と基板Sgとの間の間隔D2が比較的短いような場合には、一方のターゲット310aのX軸方向一側及び他方のターゲット310bのX軸方向他側に夫々一対の規制板60a,60bを配置すればよい。この場合、X軸方向前方に搬送される基板Sgの前端面が、一方の規制板60aの上方を横切るまでは、一方のターゲット310aから、所定値(即ち、入射角α=20°)以下となって斜入射するスパッタ粒子の成膜面Sg1への付着が規制板60aで規制される。一方で、他方のターゲット310bから、所定値(例えば、入射角α1=約10°)以下で斜入射するスパッタ粒子も成膜面Sg1に到達することになる。但し、規制板60aと基板Sgとの間の距離D2が比較的短い場合にはこのような所定の余弦則に従い飛散するスパッタ粒子の量が少ないため無視することができる。基板Sgの前端領域が規制板60aの上方を横切って一方のターゲット310aの上方まで達したような状態では、基板Sgの前端領域には、既に、主に一方のターゲット310aから飛散する、入射角が所定値を超えたスパッタ粒子が成膜面Sg1に付着、堆積している。このため、他方のターゲット310bからの膜入射の角度規制をすることなく、結晶欠陥の少ない六方晶系の結晶膜を成膜することが可能になる。
【0033】
他方、上記同様の例を示す
図6(b)のように、各規制板60a,60bの上端と基板Sgとの間の間隔D3が比較的長いような場合には、一方のターゲット310aのX軸方向一側及び他方のターゲット310bのX軸方向他側に夫々一対の規制板60a,60bを配置すると共に、両ターゲット310a,310bの間に追加の規制板60cを設けることができる。この場合、X軸方向前方に搬送される基板Sgの前端面が、一方の規制板60aの上方を横切るまでは、一方のターゲット310aから、所定値(即ち、入射角α=20°)以下となって斜入射するスパッタ粒子の成膜面Sg1への付着が規制板60aで規制されるものの、他方のターゲット310bからも、上記所定値より僅かに角度が小さいスパッタ粒子が成膜面Sg1に斜入射することになる。このような場合、追加の規制板60cにより所定値(例えば、入射角α2=15°)以下となって斜入射するスパッタ粒子の成膜面Sg1への付着を規制することができる。追加の規制板60cの高さは、一対の規制板60a,60bと同等である必要はなく、適宜設定することができる。
【符号の説明】
【0034】
SM…スパッタリング装置、1…メインチャンバ(真空チャンバ)、1a…空間、31,310a,310b…ターゲット、31a…スパッタ面、6a,6b,60a,60b,60c…規制板、7…搬送ユニット、72…搬送ローラ、72a…モータ、Sg…基板(被処理基板)。